特許異議申立
2024-700637
洗い落とし式水洗大便器
- 審判番号
- 2024-700637
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-029682
- 登録番号
- 7409408
- 請求日
- 2024年07月08日
- 審決日
- 2026年02月09日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】TOTO株式会社
- 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
- 【権利者代理人】須田 洋之
- 【権利者代理人】山崎 一夫
- 【権利者代理人】弟子丸 健
- 【権利者代理人】山本 泰史
- 【権利者代理人】鈴木 博子
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 岡崎 彦哉
- 審判官 有家 秀郎
- 分類
- P1651.841-ZB (E03D) / P1651.113-ZB (E03D) / P1651.121-ZB (E03D) / P1651.16 -ZB (E03D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条の2、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第36条、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7409408号発明「洗い落とし式水洗大便器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7409408号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7409408号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、令和4年2月28日に出願され、令和5年12月25日にその特許権の設定登録がされ、令和6年1月9日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、同年7月8日に、特許異議申立人 藤江 桂子(以下「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され、本件特許の請求項1ないし3に係る特許について、特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立て以降の経緯の概要は、以下のとおりである。
・令和6年 9月19日付け 取消理由通知書
・ 同年11月25日 特許権者より意見書及び訂正請求書の提出
・ 同年12月24日 申立人より意見書の提出
・令和7年 2月21日付け 訂正拒絶理由通知書
・ 同年 3月31日 特許権者より意見書の提出
・ 同年 4月21日付け 取消理由通知書(決定の予告)
・ 同年 6月24日 特許権者より意見書及び訂正請求書の提出
・ 同年 8月 8日 申立人より意見書の提出
・ 同年 9月26日付け 取消理由通知書(決定の予告)
・ 同年12月 1日 特許権者より意見書及び訂正請求書の提出
・ 同年12月11日付け 訂正拒絶理由通知書
・令和8年 1月15日 特許権者より意見書の提出
なお、令和6年11月25日にされた訂正の請求、及び令和7年6月24日にされた訂正の請求は、同年12月1日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。
第2 訂正の適否
特許権者は、令和7年12月1日に訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)を提出し、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。
その後、当審からの訂正拒絶理由通知(以下「訂正拒絶理由通知」という。)に対して、特許権者は令和8年1月15日に意見書を提出した。本件訂正請求書に対する手続補正書は提出されていない。
以下に、本件訂正の適否について検討する。
1 本件訂正の趣旨及び内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7409408号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。」というものである。
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「上記ボウル部の汚物受け面の後方面の凹部は、その横方向幅が、上記ツボ部の最大横方向幅よりも狭く形成されている請求項1に記載の洗い落とし式水洗大便器。」と記載されているのを、「洗浄水により洗浄して汚物を排出する洗い落とし式水洗大便器であって、汚物を受ける汚物受け面と、この汚物受け面の上部に形成されたリム部と、上記汚物受け面の下部に形成されその内部に溜水面が形成されるツボ部と、を備えたボウル部と、上記リム部に沿って洗浄水を吐水する第1吐水口及び第2吐水口と、上記ボウル部の底部に接続された排水管路と、を有し、上記第1吐水口及び第2吐水口からリム部に沿って吐水された洗浄水の主流は、汚物受け面の前方側を旋回する前方主流と、汚物受け面の後方側を旋回する後方主流を形成し、この汚物受け面を旋回して溜水面へ流入し、上記ボウル部の汚物受け面の後方面は、汚物受け面の左右側面よりも深く凹んだ凹部を備え、この後方面の下端は、その横方向のツボ部の左右側面の上端よりも下方まで延び、上記ボウル部の汚物受け面の後方面の凹部は、その横方向の中心が上下方向に沿って凹形状に形成され、この後方面の凹部は、上記後方面の下端に相当する凸形状の接続部によりツボ部の後面に接続され、上記後方面と上記接続部は変曲点により滑らかに接続され、上記ツボ部の左右側面の上端は略一定の高さを有し、この略一定の高さの上端が前記後方面の凹部まで延び、上記ボウル部の汚物受け面の後方面の凹部は、その横方向幅が、上記ツボ部の最大横方向幅よりも狭く形成されている、洗い落とし式水洗大便器。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「上記ツボ部の後面の上方位置の曲率半径R1と、下方位置の曲率半径R2では、下方位置の曲率半径R2の方が上方位置の曲率半径R1より小さくなるように形成されている請求項1又は2に記載の洗い落とし式水洗大便器。」と記載されているのを、「上記ツボ部の後面の上方位置の曲率半径R1と、下方位置の曲率半径R2では、下方位置の曲率半径R2の方が上方位置の曲率半径R1より小さくなるように形成されている請求項2に記載の洗い落とし式水洗大便器。」に訂正する。
2 訂正拒絶理由通知により通知した訂正拒絶理由の要旨
当審が通知した訂正拒絶理由の要旨は、次のとおりである。
本件訂正は、訂正事項1-3により、一群の請求項1-3についてするものであるところ、訂正事項2に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した範囲内においてするものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではない。
したがって、訂正事項2を含む、一群の請求項1-3についてする本件訂正は、認めることができない。
3 訂正の適否の判断
(1)訂正の単位(一群の請求項)について
訂正前の請求項2及び3は、直接的または間接的に引用する請求項1の記載を訂正する訂正事項1によって連動して訂正されるから、請求項1-3は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、本件訂正は、訂正事項1-3により、一群の請求項1-3について訂正を行うものである。
(2)訂正事項2による新規事項の追加の有無について
事案に鑑み、訂正事項2について、新規事項の追加の有無について、判断する。
訂正事項2において、「ツボ部の左右側面の上端」について、「上記ツボ部の左右側面の上端は略一定の高さを有し、この略一定の高さの上端が前記後方面の凹部まで延び」と特定したことは、下記(3)に示すとおり、本件明細書等に記載も示唆もされておらず、自明とも言えない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではない。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではない。
(3)新規事項の追加についての具体的判断
ア 訂正事項2の根拠に関する特許権者の具体的な主張
訂正事項2に係る訂正のうち、「ツボ部の左右側面の上端」について、「上記ツボ部の左右側面の上端は略一定の高さを有し、この略一定の高さの上端が前記後方面の凹部まで延び」と特定した根拠に関し、特許権者は、本件明細書等の段落【0025】の記載、【図5】及び【図9】である旨を主張している。
そして特許権者は、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である旨を、主張している(本件訂正請求書の第6頁第20行~第7頁第3行)。
イ 本件明細書等における記載及び図示の検討
(ア)本件明細書等における記載及び図示
本件明細書等の段落【0013】~【0027】の記載、【図4】、【図5】、【図9】及び【図10】の図示は、次のとおりである(下線は当審において付した)。
a 「【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器について説明する。先ず、最初に、図1及び図2により、洗い落とし式水洗大便器の基本構造を説明する。図1は本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器の平面断面図であり、図2は図1のII-II線に沿って見た縦断面図である。以下の説明では、洗い落とし式水洗大便器を単に「水洗大便器」という。
【0014】
図1及び図2に示すように、水洗大便器1は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器である。水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、この便器本体2を洗浄する洗浄水を貯水する貯水タンク4とを備えている。便器本体2は、前方側にボウル部6を備え、後方上部には、その上流端に設けられた開口部7が貯水タンク4に連通する共通通水路8が形成されている。さらに、ボウル部6の後方下部に汚物を排出するための排水管路10が形成されている。
ここで、本明細書において、使用者から見て、水洗大便器の手前側を前側、奥側を後方、右側を右側、左側を左側、として説明する。
【0015】
上述した貯水タンク4は、排水弁12を備え、使用者が操作レバー(図示せず)を開操作することにより、排水弁12が開き、貯水タンク4内の洗浄水が便器本体2に供給されるようになっている。
なお、本実施形態においては、貯水タンク4以外に、洗浄水の水源として、水道水直圧式のものや、フラッシュバルブを用いたものでもよく、さらに、ポンプを使用して洗浄水を供給するものであってもよい。
【0016】
ボウル部6は、ボウル形状の汚物受け面16と、汚物受け面16の上方に形成されたリム部18と、汚物受け面16の下方に形成されその内部に溜水面20を形成するツボ部22を備えている。ここで、ツボ部22の溜水面20は、略三角形であり、上面視で前後方向が160mm~180mm、幅方向が125mm~145mmであり、従来の洗い落とし式水洗大便器の溜水面よりも大きく(拡大されて)形成されている。また、ツボ部22は、上面視で前後方向が20cm~24cmであり、横方向が15cm~19cmの大きさで溜水面20よりも卵型(前側が先細の楕円形状)の略三角形を形成している。
【0017】
ボウル部6のリム部18には、前方から見て左側の前方側に、洗浄水を吐水する第1吐水口24が、さらに、前方から見て右側の後方側に、洗浄水を吐水する第2吐水口26が形成されている。上述した共通通水路8は、下流側に向けて、第1通水路28と第2通水路30とに分岐し、第1通水路28は第1吐水口24まで延び、第2通水路30は第2吐水口26まで延び、貯水タンク4から洗浄水を第1吐水口24と第2吐水口26に供給するようになっている。ここで、第1吐水口24と第2吐水口26は、同一の方向に旋回する旋回流を形成する向きに洗浄水を吐水するようになっている。本実施形態の場合は、反時計回りの旋回流を形成している。
なお、本実施形態において、吐水口は、1つでも良く、さらに、2つ以上(例えば3つ)であってもよい。
【0018】
次に、図3により、本発明の第1実施形態による水洗大便器の溜水面について説明する。図3に示すように、説明の便宜上、ツボ部22の内部に形成された溜水面20の領域は、前後方向に延びる左右方向(幅方向)の中心線A1と、幅方向に延びる前後方向の中心線A2により、4つの領域に分割されており、これらの4つの領域について説明する。具体的には、溜水面20は、左後方側の第1領域S1、右後方側の第2領域S2、右前方側の第3領域S3、及び、左前方側の第4領域S4を含むようになっている。なお、本実施形態では、溜水面20を4つの領域に分割したが、ツボ部22を同様に4つの領域に分割してもよい。
【0019】
次に、図4乃至図6により、水洗大便器1の汚物受け面16、ツボ部22の具体的な形状等について説明する。図4は本実施形態による洗い落とし式水洗大便器を斜め上方から見た斜視断面図であり、図5は図2の部分拡大縦断面図である、図6は図1の部分拡大平面断面図である。
【0020】
先ず、図4に示すように、ボウル部6の汚物受け面16の後方面40は、汚物受け面16の左右側面16aよりも、深く凹んだ凹部40aを備えている。この凹部40aを備えた後方面40の下端40bは、ツボ部22の右側面22aと左側面22bの上端22cよりも下方まで延びている。
【0021】
図5に示すように、ボウル部6の汚物受け面16の後方面40は、ツボ部22の後面22dと接続部42を介して接続されている。ここで、汚物受け面16の後方面40は、上下方向に沿って凹形状であり、接続部42が凸形状であり、後方面40と接続部42は変局点により滑らかに接続されている。この接続部42が、汚物受け面16の後方面40の下端40bに相当する。
【0022】
図6に示すように、平面視で、ボウル部6の汚物受け面16の後方面40の凹部40aの横方向幅W2は、ツボ部22の最大横方向幅W1よりも狭くなるように形成されている。
【0023】
次に、図2、図7及び図8により、ツボ部22の後面22dの形状について説明する。図7は図2のVII-VII線に沿って見た断面図であり、図8は図2のVIII-VIII線に沿って見た断面図である。
図7に示すように、ツボ部22の後面22dの上方位置は、曲率半径R1により形成され、図8に示すように、ツボ部22の後面22dの下方位置は、曲率半径R2により形成されている。ここで、曲率半径R2の方が曲率半径R1よりも小さな値となっている(R1>R2)。このため、図8に示すように、ツボ部22の後面22dの下方位置の曲率半径R2が、排水管路10の入口10aの後方側の曲率半径と近い値となり、ツボ部22から排水管路10へ流出する洗浄水の流れが円滑となる。
【0024】
次に、図9及び図10により、洗浄水の流れの様子を説明する。図9は本実施形態による洗い落とし式水洗大便器の吐水口から吐水された洗浄水の後方主流の流れの様子を示す斜視断面図であり、図10は本実施形態による洗い落とし式水洗大便器の吐水口から吐水された洗浄水の前方主流の流れの様子を示す斜視断面図である。
【0025】
先ず、図9に示すように、第2吐水口26から吐水された洗浄水の後方主流F2は、汚物受け面16の後方面40を通過するが、このとき、凹部41aにより、汚物受け面16上を続けて旋回することなく、ツボ部22の左側側面22bに沿って流れ、上述した溜水面20の第4領域S4と第3領域S3にほぼ流入(流下)する。また、後方主流F2は、左側面22bの高さが略一定な上端22cの左側面22bに沿って流れ、上端22cの前方に向けて低くなる傾斜部で、上端22cを沿った流れが上端22cの変化点により乖離し、左側側面22bから溜水面20へ流入する方向へ変化することにより、より一層上述した溜水面20の第4領域S4と第3領域S3にほぼ流入(流下)させることができる。
【0026】
次に、図10に示すように、第1吐水口24から吐水された洗浄水の前方主流F1は、汚物受け面16からツボ部22の右側面22aに沿って流れ、次に、汚物受け面16の後方面40の凹部40aに衝突して、前方主流F1の流れ方向が前後方向から横方向にベクトル変換され、前方主流F1は、上述した溜水面20の第2領域S2と第1領域S1に流流入(流下)する。
【0027】
以下、上述した本発明の実施形態による水洗大便器の作用効果を説明する。
先ず、本実施形態による水洗大便器1においては、ボウル部6の汚物受け面16の後方面40が、汚物受け面16の左右側面16aよりも深く凹んだ凹部40aを備え、この後方面40が、ツボ部22の左右側面22a、22bの上端22cよりも下方まで延びているので、洗浄水の前方主流F1は、ツボ部22の側面を通り汚物受け面16の後方面40に到達し、この後方面40で流れの方向が変わり、そのまま汚物受け面16の後方面40に沿って溜水面20へ流入する流れとなる。その結果、本実施形態によれば、洗浄水の前方主流F1を、汚物受け面16を旋回して溜水面20へ流入するよりも早く溜水面20へ誘導することができるので、前方主流F1と後方主流F2を溜水面20へほぼ同じタイミングで誘導することができ、それにより、浮遊系汚物の排出性能を向上させることができる。」
b 【図4】「
[図:0001435157000001.jpg]
」
c 【図5】「
[図:0001435157000002.jpg]
」
d 【図9】「
[図:0001435157000003.jpg]
」
e 【図10】「
[図:0001435157000004.jpg]
」
(イ)理解または看取される事項
上記本件明細書等の記載及び図示から、次の事項が理解または看取される。
a 図番に関し、本件明細書において、「ツボ部」は「22」、「ツボ部」の「右側面」は「22a」、「ツボ部」の「左側面」は「22b」、「ツボ部」の「左側面」及び「右側面」の「上端」は「22c」、「ツボ部」の「後面」は「22d」とされている。また、「汚物受け面」の「後方面」は「40」、「後方面」の「凹部」は「40a」とされている。
b ツボ部22の左側面22bの上端22cの高さに関し、本件明細書の段落【0025】には、「後方主流F2は、左側面22bの高さが略一定な上端22cの左側面22bに沿って流れ、」という記載がある。ツボ部22の右側面22aの上端22cの高さについて、本件明細書に直接の記載はない。
c 【図1】~【図10】の全ての図面は、同じ第1実施形態に関する。【図9】及び【図10】における図番「22d」は、ツボ部の左右側面の上端を「22c」とし、ツボ部の後面を「22d」とする本件明細書の記載と、整合しない。
d 「汚物受け面16」、「リム部18」及び「ツボ部22」を備える「ボウル部6」の全体は、「リム部18」の「左側の前方側」に「第1吐水口24」が、「右側の前方側」に「第1吐水口24」が形成されており、左右対称な構造でないことは明らかである。
e 【図4】では、ツボ部22の右側面22aの上端22cの後端近傍と凹部40aの右端との間隔は、左側面側の上端22cの後端近傍と凹部40aの左端との間隔より、大きいと、看取される。また、ツボ部22の右側面22aの上端22cの後端近傍は、凹部40aより手前側かつ上方に位置する様子が、看取される。
【図10】について、図番「22d」を「22c」の誤記と理解した場合にも、同様である。
f 【図9】では、図番「22d」を「22c」の誤記と解した場合、ツボ部22の右側面側の上端の後端近傍に比較して、凹部40aの方が、上方かつ前方に突出している様子が、看取される。
g 【図4】、【図5】、【図9】及び【図10】、並びにその他の図面を考慮しても、「ツボ部22」の「左右側面」の「上端22c」が、【図5】でみてかなり低い位置にある「ツボ部22」の「後面22d」へと、どのように接続または遷移するのか、看取することはできない。
また、本件明細書においても、「ツボ部22」の「左右側面」の「上端22c」が、「ツボ部22」の「後面22d」へと、どのように接続または遷移するのかは、説明されていない。
そして、「ツボ部22」は、左右及び後方が「左右側面」及び「後面22d」からなり、「ツボ部22」の「上端」は、「左右側面」では「上端22c」となり、後面ではから「後面22d」の「上端」となるところ、「ツボ部22」の「上端」が、「左右側面」の「上端22c」から「後面22d」の「上端」に至るうえで、高さを変えることなく「汚物受け面16」の「後方面40」の「凹部40a」まで延びた後に「汚物受け面16」の「後方面40」の左右両端で不連続に急激に落ち込んで「ツボ部22」の「後方面22d」に至るのか、それとも、「ツボ部22」の「左右側面」の「上端22c」が「ツボ部22」の「後方面22d」に至るうえで、「汚物受け面16」の「後方面40」の手前で徐々に高さが変わる領域あるいは明確な上端が認識されない遷移領域が介在するのかは、本件明細書には何ら説明されていない。
h 【図4】、【図5】、【図9】及び【図10】、並びにその他の図面を考慮しても、「ツボ部22」の「左右側面」の「上端22c」が、「ツボ部22」の「後面22d」より上にある「凹部40a」の近傍で、どのように変化するのか、看取することはできない。
【図5】における「上端22c」の線の左端部も、「汚物受け面16」の「後面40」の少し手前で途切れており、【図2】、【図4】、【図9】及び【図10】との関係を考慮しても、【図5】のみが他の図より正確であって概略図ではないということはできず、また、【図5】で「汚物受け面16」の「後面40」の少し手前で「上端22c」の線の左端部が途切れた様子から、「ツボ部22」の「左右側面」の「上端22c」が、高さを変えることなく「汚物受け面16」の「後方面40」の「凹部40a」まで延びた後に、「汚物受け面16」の「後方面40」の左右両端で不連続に急激に落ち込む等により、ずっと低い位置にある「ツボ部22」の「後方面22d」に至ることが示されているとはいえない。
また、本件明細書においても、「ツボ部22」の「左右側面」の「上端22c」が、「ツボ部22」の「後面22d」より上にある「凹部40a」の近傍で、どのように変化するのかは、説明されていない。
ウ 「上記ツボ部の左右側面の上端は略一定の高さを有し、この略一定の高さの上端が前記後方面の凹部まで延び」ることが、本件明細書等から導出されるか
(ア)段落【0025】の記載について
特許権者が上記訂正の根拠と主張する段落【0025】には、「左側面22bの高さが略一定な上端22c」と記載されている。
しかしながら、上記段落【0025】の記載は、【図9】に言及して、「後方主流F2」がツボ部の「左側面22bに沿って流れ」ることを説明するうえでの記載であるから、ツボ部22の左側面22bの上端22cについて、後方主流F2が流れる近傍で一部に高さが略一定の箇所があることを示していても、当該段落【0025】の記載から、ツボ部22の後方面22dがかなり低い位置にあるにもかかわらず、略一定の高さの上端22cが、汚物受け面16の後方面40の凹部40aまで延びることを示す具体的な根拠を見いだすことはできない。
また、上記段落【0025】の記載から、ツボ部22の右側面22aの上端22cについて、ツボ部22の後方面22dがかなり低い位置にあるにもかかわらず、略一定の高さの上端22cが、汚物受け面16の後方面40の凹部40aまで延びることを示す具体的な根拠を見いだすことはできない。
(イ)本件明細書の他の記載について
本件明細書の段落【0025】以外の箇所について、ツボ部22の左側面22bの上端22c、及び右側面22の上端22cの両方に関し、ツボ部22の後方面22dがかなり低い位置にあるにもかかわらず、略一定の高さの上端22cが、汚物受け面16の後方面40の凹部40aまで延びることを示す記載はない。
(ウ)図面の図示について
【図1】~【図10】は、一つの実施形態に関する図であるところ、特許権者が上記訂正の根拠とする【図5】及び【図9】を含めて、ツボ部22の右側面22a、左側面22bの各上端22cの高さ、及び汚物受け面16の後方面40の凹部40aとの関係について、上記イ(イ)c及びe~gに指摘したとおり、整合しない点がある。
そして、これらの図を総合して考慮しても、ツボ部22の左側面22bの上端22c、及び右側面22の上端22cの両方に関し、ツボ部22の後方面22dがかなり低い位置にあるにもかかわらず、略一定の高さの上端22cが汚物受け面16の後方面40の凹部40aまで延びることを示しているとはいえない。
(エ)技術常識を考慮して
技術常識を考慮しても、上記のような本件明細書等の記載及び図示において、「ツボ部22」の「左右側面」の「上端22c」が、「ツボ部22」の「後面22d」より上にある「汚物受け面16」の「後方面40」の「凹部40a」の近傍で、どのように変化するかが示されているとはいえず、ツボ部22の左側面22bの上端22c、及び右側面22の上端22cの両方に関し、ツボ部22の後方面22dがかなり低い位置にあるにもかかわらず、略一定の高さの上端22cが汚物受け面16の後方面40の凹部40aまで延びることが、導かれるものではない。
エ 小括
したがって、訂正事項2において、「上記ツボ部の左右側面の上端は略一定の高さを有し、この略一定の高さの上端が前記後方面の凹部まで延び」という特定を追加したことは、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
(4)特許権者の意見書における主張について
ア 特許権者の意見書における主張
特許権者は令和8年1月15日提出の意見書の「第1 訂正拒絶理由通知書に対する反論」において、訂正事項2に関し、以下の旨を述べて、新規事項ではないと主張している(第2頁第2行~第4頁第10行)。
(ア)一般的に、水洗大便器のボウル部は、全面が曲面で形成されているので、その形状を図示する場合、図面において、その曲面の形状を実線のみにより正確に記載するのは、困難である場合が多い。特に、斜視図は正確に記載することが難しく、一方、断面図は比較的正確に記載することができる。
(イ)段落【0025】の記載から、当業者は、少なくとも左側面22bの上端22cの高さは略一定であると理解する。
(ウ)縦断面図であり、最も正確な図5(及び図2)には、右側面22aの上端22cの後方面40に近い部分の高さが略一定となることが示されている。斜視図である図9には、右側面22aの上端22cと左側面22bの上端22cが、平面視にすればほぼ左右対称となる様子が示されている。
(エ)当業者は、上記(ア)~(ウ)等を総合的に判断し、本件明細書及び図面に、「上記ツボ部の左右側面の上端は略一定の高さを有し、この略一定の高さの上端が上記後方面の凹部まで延び」との特定事項が記載されていると認識する。
(オ)したがって、訂正事項2において、「上記ツボ部の左右側面の上端は略一定の高さを有し、この略一定の高さの上端が前記後方面の凹部まで延び」という特定を追加したことは、新規事項の追加ではない。
イ 上記主張についての検討
上記請求人の主張について、検討する。
請求人が上記ア(ア)に主張するように、全面が曲面で形成されている水洗大便器のボウル部について、図面の実線によって、曲面の形状が正確に示されているとは言えない場合が多いところ、上記(3)ウ(ウ)に指摘したように、「上端22c」と「凹部40a」との位置関係が互いに整合しない各図について、【図5】が厳密に正確であって、他の図の整合しない箇所が誤りであるということはできない。
また、特許権者が最も正確であると主張する本件明細書等の【図5】において、ツボ部22の上端22cを示す実線の左端は、汚物受け面16の後方面40の少し手前で途切れている。
本件明細書等の【図5】において、ツボ部22の上端22cを示す実線の左端が汚物受け面16の後方面40の少し手前で途切れた様子が、実線が途切れているにもかかわらず、「ツボ部の左右側面の上端」が「略一定の高さの上端」として汚物受け面16の「後方面40」の「凹部40a」まで延びることを示しているとはいえない。
特許権者が言及する、本件明細書等の段落【0025】の記載も、上記(3)ウ(ア)に指摘したとおり、後方主流F2が流れる近傍で、ツボ部22の左側面22bの上端22cの一部に、高さが略一定の箇所があることを示していても、略一定の高さの上端22cが、汚物受け面16の後方面40の凹部40aまで延びることを示すとはいえない。
そして、本件明細書等の記載を総合して考慮しても、「上記ツボ部の左右側面の上端は略一定の高さを有し、この略一定の高さの上端が前記後方面の凹部まで延び」という特定を追加したことが新規事項の追加であるか否かについて、上記(3)に示した判断を変更すべき事情は見いだせない。
(5)訂正事項2による新規事項追加のまとめ
上記(2)~(4)のとおりであるから、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合しない。
(6)一群の請求項1-3に係る訂正について
本件訂正は、上記(1)のとおり、訂正事項1-3により、一群の請求項1-3についてするものであるところ、上記(2)~(5)のとおり、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではない。
したがって、訂正事項2を含む、一群の請求項1-3についてする訂正は、訂正事項1及び訂正事項3について検討するまでもなく、認めることができない。
4 訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、認めることができない。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められないので、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、それぞれ、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、下記のとおりのものと認められる(以下、それぞれ「本件発明1」などという。)。
なお、当審において、適宜に改行を加え、各構成に分説を付した。
「【請求項1】
(A)洗浄水により洗浄して汚物を排出する洗い落とし式水洗大便器であって、
(B)汚物を受ける汚物受け面と、
(C)この汚物受け面の上部に形成されたリム部と、
(D)上記汚物受け面の下部に形成されその内部に溜水面が形成されるツボ部と、
(E)を備えたボウル部と、
(F)上記リム部に沿って洗浄水を吐水する1つ又は複数の吐水口と、
(G)上記ボウル部の底部に接続された排水管路と、を有し、
(H)上記吐水口からリム部に沿って吐水された洗浄水の主流は、汚物受け面の前方側を旋回する前方主流と、汚物受け面の後方側を旋回する後方主流を形成し、この汚物受け面を旋回して溜水面へ流入し、
(I)上記ボウル部の汚物受け面の後方面は、汚物受け面の左右側面よりも深く凹んだ凹部を備え、この後方面の下端は、ツボ部の左右側面の上端よりも下方まで延び、
(J)上記ボウル部の汚物受け面の後方面の凹部は、上下方向に沿って凹形状に形成され、この後方面の凹部は、上記後方面の下端に相当する凸形状の接続部によりツボ部の後面に接続されている、
(K)洗い落とし式水洗大便器。
【請求項2】
(L)上記ボウル部の汚物受け面の後方面の凹部は、その横方向幅が、上記ツボ部の最大横方向幅よりも狭く形成されている
請求項1に記載の洗い落とし式水洗大便器。
【請求項3】
(M)上記ツボ部の後面の上方位置の曲率半径R1と、下方位置の曲率半径R2では、下方位置の曲率半径R2の方が上方位置の曲率半径R1より小さくなるように形成されている
請求項1又は2に記載の洗い落とし式水洗大便器。」
第4 証拠方法、特許異議申立理由の概要、及び先の取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
1 証拠方法
申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
(以下、申立人の提出した甲第1号証を、甲1という。甲第2号証以下についても同様。)
(1)申立書に添付して提出
・甲1: 特開2023-102352号公報
(令和5年7月25日公開;
特願2022-2768号の公開公報)
・甲2: 特開2018-44401号公報
(平成30年3月22日公開)
・甲3: 特開2015-196960号公報
(平成27年11月9日公開)
・甲4: 特開2020-51052号公報
(令和2年4月2日公開)
・甲5: 特開2018-112004号公報
(平成30年7月19日公開)
・甲6: 特開2015-68126号公報
(平成27年4月13日公開)
・甲7: 特開2017-166315号公報
(平成29年9月21日公開)
・甲8: 特開2021-38635号公報
(令和3年3月11日公開)
・甲9: 特開2014-114633号公報
(平成26年6月26日公開)
・甲10:特開2021-116541号公報
(令和3年8月10日公開)
(2)令和7年8月8日提出の意見書に添付して提出
・参考資料1:特開2014-37723号公報
(平成26年2月27日公開)
2 特許異議申立理由の概要
申立人が申立書において主張する申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)甲1を主たる証拠とした拡大先願
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願の日前に出願がされ、本件特許の出願後に甲1により出願公開がされた他の特許出願である、特願2022-2768号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書第17頁第1行~第26頁最終行)。
(2)甲2を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如
本件特許の請求項1及び請求項3に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明である。
また、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書第27頁第1行~第41頁最終行)。
(3)甲3を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明である。
また、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書第42頁第1行~第52頁最終行)。
(4)甲4を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如
本件特許の請求項1及び請求項3に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明である。
また、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明及び甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書第53頁第1行~第64頁最終行)。
(5)明確性要件違反
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、発明が明確でないから、これらの発明に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである(申立書第65頁第1行~第68頁第2行)。
(6)サポート要件違反
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、この発明に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである(申立書第68頁第3行~同頁第15行)。
3 先の取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
上記第2のとおり、本件訂正は認められないところ、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載される、本件発明1ないし3に係る特許について、令和7年4月21日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
なお、令和7年9月26日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由は、同年6月24日提出の訂正請求書による訂正(当審注;同年12月1日に本件訂正請求書が提出されたことにより、取り下げられたものとみなされる)が認められた場合の取消理由であるから、ここでは本件発明1ないし3に係る特許を対象として、令和7年4月21日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要を示す。
(1)甲1を主たる証拠とした拡大先願(以下、「取消理由1」という。)
本件発明1ないし3は、本件特許の出願の日前に出願がされ、本件特許の出願後に甲1により出願公開がされた他の特許出願である、特願2022-2768号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)甲2を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如(以下、「取消理由2」という。)
本件発明1及び本件発明3は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明である。
また、本件発明1及び本件発明3は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)甲3を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如(以下、「取消理由3」という。)
本件発明1ないし3は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明である。
また、本件発明1ないし3は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
上記第4の3に示した取消理由1ないし3について、以下に判断する。
1 証拠について
事案に鑑み、甲1~甲3の記載についてみる。
(1)甲1
甲1は、本件特許の出願日より前に出願された、特願2022-2768号(以下、「先願」という。)の、公開特許公報である。
先願の出願人及び発明者は、本件特許に係る出願の出願人及び発明者と、同一ではない。
ア 記載及び図示
甲1には、次の記載及び図示がある(下線は、当審において付した。以下、同
様。)。
(ア)「【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態1の大便器を示す平面図である。
【図2】図1の矢視D-D断面を示す断面図である。
【図3】図1の矢視E-E断面を示す断面図である。
【図4】図1の矢視D-D断面を示す断面斜視図である。
【図5】図1の矢視A-A断面の要部を示す断面図である。
【図6】図1の矢視B-B断面の要部を示す断面図である。
【図7】図1の矢視C-C断面の要部を示す断面図である。
【図8】図1の矢視D-D断面の要部を示す断面図である。
【図9】便鉢部内の洗浄水の流れを示した斜視図である。」
(イ)「【0010】
<実施形態1>
実施形態1の大便器1は、図1から図4に示すように、便鉢部10、便器排水路110、上壁部120、タンク載置部130、及び周壁部140を備えている。大便器1は、一体成形された陶器製である。便鉢部10は、上端から下方に向けて、リム部20、第1連結部40、鉢部60、第2連結部80、及び凹部90の順に設けられている。」
(ウ)「【0012】
リム内壁部21の後部は、図1から図3に示すように、後述する給水空間150Sの前側壁部22を構成している。リム内壁部21は、後部の左右中央よりも左側に周方向に長いリム吐水口25が形成されている。リム吐水口25は、リム内壁部21を前後方向に貫通している。給水空間150S内において後述する洗浄水分配管150から吐出された洗浄水は、リム吐水口25から便鉢部10内に向けて吐水される。」
(エ)「【0018】
第1連結部40の後側領域の第1連結面40Aは、図1に示すように、中央連結面47と、中央連結面47の左右両端縁から左右外方向に拡がる左右連結面49と、を有している。中央連結面47は、平面視において、後述する凹部90内に形成される溜水面WSの左右両端WL,WRから便鉢部10の左右中心線CL1に平行に延びる一対の仮想平行線P1,P1の間に拡がっている。溜水面WSの左右両端WL,WRは、溜水面WSの外周縁であって、便鉢部10の左右中心線CL1から左右方向に最も離れた部分である。」
(オ)「【0023】
鉢部60は、図1から図8に示すように、第1連結部40の下端周縁部に連続している。汚物受け面60Aは、鉢部60の便鉢部10の内側上方向を向いた面であり、外周縁から下方内側に向けて斜めに傾斜して拡がっている。汚物受け面60Aは、便鉢部10の左右中心線CL1を含む鉛直面に対して対称形状である。
【0024】
鉢部60の後側領域における汚物受け面60Aは、図1に示すように、平面視において、一対の仮想平行線P1.P1の間に拡がる中央汚物受け面61と、中央汚物受け面61の左右両端縁から左右外方向に拡がる左右汚物受け面63と、を有している。中央汚物受け面61の上端縁61Tは、図6から図8に示すように、中央連結面47の下端縁47Lに連続している。左右汚物受け面63の上端縁63Tは、左右連結面49の下端縁49Lに連続している。
【0025】
鉛直断面形状であって、図1の矢視A-A断面における左右汚物受け面63の傾斜角度は、約26.8度である(図5参照)。左右汚物受け面63の傾斜角度は、鉛直断面形状において、左右汚物受け面63の上端縁63Tと下端縁63Lとを結んだ直線の傾斜角度である。
【0026】
鉛直断面形状であって、図1の矢視B-B断面における中央汚物受け面61の傾斜角度は、約32.6度である(図6参照)。鉛直断面形状であって、図1の矢視C-C断面における中央汚物受け面61の傾斜角度は、約34.1度である(図7参照)。鉛直断面形状であって、図1の矢視D-D断面における中央汚物受け面61の傾斜角度は、約34.5度である(図8参照)。中央汚物受け面61の傾斜角度は、鉛直断面形状において、中央汚物受け面61の上端縁61Tと下端縁61Lとを結んだ直線の傾斜角度である。
【0027】
汚物受け面60Aは、便鉢部10の左右中心線CL1を含む鉛直面に対して対称形状である。このため、鉢部60の後側領域における汚物受け面60Aは、左右両端縁から左右中央に向けて、鉛直断面形状における傾斜角度が徐々に急になっている。鉛直断面形状において、中央汚物受け面61の傾斜角度は、左右汚物受け面63の傾斜角度よりも急である。
【0028】
鉢部60の後側領域における汚物受け面60Aは、図3から図8に示すように、上端縁から下端縁に向けて前方に傾斜しつつ、左右両端縁から左右中央部に向けて下方にも傾斜している。鉢部60の後側領域の汚物受け面60Aの下端縁は、下方に膨らむように湾曲し、左右中央が最も低くなっている(図3及び図4参照)。
【0029】
第2連結部80は、鉢部60の下端周縁部に連続している。第2連結部80は、鉢部60の下端周縁に沿って一周している。第2連結面80Aは、第2連結部80の便鉢部10の内方向を向いた面である。第2連結面80Aは、上端周縁から下方内側に向けて傾斜角度が徐々に急になるように湾曲しながら拡がっている。第2連結面80Aは、便鉢部10の左右中心線CL1を含む鉛直面に対して対称形状である。
【0030】
凹部90は、図2から図4に示すように、側壁部91及び底壁部93を有している。凹部90の側壁部91は、第2連結部80の下端周縁部に連続している。凹部90の側壁面91Aは、側壁部91の凹部90の内方向を向いた面であり、便鉢部10の下部を一周している。凹部90の側壁面91Aは、図1に示すように、平面視において、前端部の曲率半径が後端部の曲率半径よりも小さい略楕円形状である。凹部90の側壁面91Aは、下方に向けて僅かに内側に傾斜している。」
(カ)「【0032】
便器排水路110は、図2に示すように、便鉢部10の凹部90の下端部に上流端部が連続し、凹部90の底壁部93に形成された流出口95に連通している。便器排水路110の上流部は、便鉢部10の凹部90の下部とともに溜水部Wを形成している。溜水部Wは封水が貯留される部分である。溜水面WSは、凹部90の底壁面93Aよりも僅かに上方に位置する。便器排水路110の下流端部は、図示しない排水接続管の上流端部に接続される。排水接続管の下流端部は図示しない床面に開口する排水管に接続される。」
(キ)「【0036】
この大便器1は、便器洗浄を実行すると、図9に示すように、洗浄水分配管150の第1流出口150Rから突出された洗浄水と、第2流出口150Lから突出された洗浄水との一部が合流しつつリム吐水口25から便鉢部10内に向けて吐水される。第1流出口150Rから突出された洗浄水は、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って旋回する第1主流F1を形成する。第2流出口150Lから突出された洗浄水は、リム吐水口25から直接的に凹部90へ後方から流入する第2主流F2を形成する。第1主流F1は、便鉢部10内を一周すると、第2主流F2とともに後方から凹部90へ流入する。
【0037】
この大便器1は、第1連結部40の後側領域の第1連結面40A、及び鉢部60の後側領域における汚物受け面60Aが左右両端縁から左右中央に向けて、鉛直断面形状における傾斜角度が徐々に急になっている。さらに、この大便器1は、鉢部60の後側領域における汚物受け面60Aが上端縁から下端縁に向けて前方に傾斜しつつ、左右両端縁から左右中央部に向けて下方にも傾斜している。このため、この大便器1は、リム吐水口25から吐水され、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って一周した第1主流F1が、第1連結部40及び鉢部60の後側領域において、後方から凹部90に流入する流れに変化する。この大便器1は、第1主流F1と第2主流F2とが後方から凹部90に流入するため、汚物を良好に排出することができる。」
(ク)【図1】
「
[図:0001435157000005.jpg]
」
(ケ)【図2】
「
[図:0001435157000006.jpg]
」
(コ)【図3】
「
[図:0001435157000007.jpg]
」
(サ)【図4】
「
[図:0001435157000008.jpg]
」
(シ)【図5】
「
[図:0001435157000009.jpg]
」
(ス)【図6】
「
[図:0001435157000010.jpg]
」
(セ)【図7】
「
[図:0001435157000011.jpg]
」
(ソ)【図8】
「
[図:0001435157000012.jpg]
」
(タ)【図9】
「
[図:0001435157000013.jpg]
」
イ 図より看取される事項
(ア)段落【0025】及び【0026】の記載、並びに、【図5】-【図8】の断面図が【図1】の矢視A-A断面からD-D断面に対応することを踏まえると、【図3】及び【図4】における中央汚物受け面61の下端縁と左右汚物受け面63の下端縁の上下関係、並びに、【図5】-【図8】において汚物受け面60Aの下端が、断面位置に左右汚物受け面63の下端縁63Lが現れる【図5】から、断面位置に中央汚物受け面61の下端縁61Lが現れる【図6】-【図8】に向かって、低い位置となる様子より、中央汚物受け面61の下端縁61Lは、左右汚物受け面63の下端縁63Lより、低くなっていることが、看取される。
(イ)段落【0029】及び【0030】の記載を踏まえると、【図2】より、第2連結面80Aの上縁及び下縁は、後端部の下端が、凹部90の側方の領域におけるより下方まで延びることが、看取される。
(ウ)段落【0023】、【0029】-【0030】の記載を踏まえると、【図6】-【図8】より、中央汚物受け面61は、上下断面でみて凹み形状であり、上下断面でみて凸形状の第2連結面80Aを経て、凹部90の後部の側壁部91につながることが、看取される。
(エ)段落【0032】の記載を踏まえると、【図2】及び【図4】より、便器排水路110は、便鉢部10の凹部90の下端部の後部に上流端部が連続し、便器排水路110の径は、凹部90の径より小さいことが、看取される。
(オ)段落【0036】の記載を踏まえると、【図9】より、第1主流F1は、汚物受け面60Aの前方側及び後方側を旋回することが、看取される。
ウ 記載された発明
上記ア及びイより、先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「先願の当初明細書等」という)には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されており、甲1発明は甲1により本件特許出願後に出願公開されている。なお、各構成に分説を付し、関連する段落番号または図面を括弧書きで付した。
<甲1発明>
「(甲1A)便器洗浄を実行すると、洗浄水が凹部90に流入し、汚物を排出することができる、大便器1であって、(【0036】、【0037】)
(甲1B)大便器1は、便鉢部10、便器排水路110を有し、(【0010】)
(甲1C)便鉢部10は、上端から下方に向けて、リム部20、第1連結部40、鉢部60、第2連結部80、及び凹部90の順に設けられており、(【0010】)
(甲1D)リム内壁部21に形成されたリム吐水口25から便鉢部10内に向けて吐水が行われ、(【0012】)
(甲1E)凹部90内に溜水面WSが形成され、一対の仮想平行線P1,P1は、凹部90内に形成される溜水面WSの左右両端WL,WRから便鉢部10の左右中心線CL1に平行に延びるものであり、(【0018】)
(甲1F)汚物受け面60Aは、鉢部60の便鉢部10の内側上方向を向いた面であり、(【0023】)
(甲1G)汚物受け面60Aのうち、鉢部60の後側領域における汚物受け面60Aは、一対の仮想平行線P1.P1の間に拡がる中央汚物受け面61と、中央汚物受け面61の左右両端縁から左右外方向に拡がる左右汚物受け面63と、を有しており、(【0023】、【0024】)
(甲1H)中央汚物受け面61の下端縁61Lは、左右汚物受け面63の下端縁63Lより、低くなっており(【0025】、【0026】、【図1】、【図3】-【図8】)、
(甲1I)鉢部60の後側領域における汚物受け面60Aは、左右両端縁から左右中央に向けて、鉛直断面形状における傾斜角度が徐々に急になっており、鉢部60の後側領域の汚物受け面60Aの下端縁は、下方に膨らむように湾曲し、左右中央が最も低くなっており、(【0027】、【0028】)
(甲1J)鉢部60の下端周縁部に連続し、鉢部60の下端周縁に沿って一周している、第2連結部80の第2連結面80Aは、上端周縁から下方内側に向けて傾斜角度が徐々に急になるように湾曲しながら拡がっており、(【0029】)
(甲1K)凹部90は、側壁部91及び底壁部93を有しており、凹部90の側壁部91は、第2連結部80の下端周縁部に連続しており、(【0030】)
(甲1L)第2連結面80Aの上縁及び下縁は、後端部の下端が、凹部90の側方の領域におけるより下方まで延び、(【図2】)
(甲1M)中央汚物受け面61は、上下断面でみて凹み形状であり、上下断面でみて凸形状の第2連結面80Aを経て、凹部90の後部の側壁部91につながり、(【図6】-【図8】)
(甲1N)便器排水路110は、便鉢部10の凹部90の下端部の後部に上流端部が連続し、便器排水路110の径は、凹部90の径より小さく、(【0032】、【図2】、【図4】)
(甲1O)便器洗浄を実行すると、リム吐水口25から吐水される第1流出口150Rからの洗浄水は、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って旋回する第1主流F1を形成し、第2流出口150Lからの洗浄水は、第2主流F2を形成し、第1主流F1は、便鉢部10内を一周すると、第2主流F2とともに凹部90へ流入し、(【0036】)
(甲1P)第1主流F1は、汚物受け面60Aの前方側及び後方側を旋回する(【図9】)、
(甲1Q)大便器1。」
(2)甲2
ア 記載及び図示
甲2には、次の記載及び図示がある。
(ア)「【0024】
図1及び図2に示すように、本実施形態の水洗大便器1は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器であり、便器本体2を備え、この便器本体2には、洗浄水源である貯水タンク(図示せず)を介して、洗浄水が導入されるようになっている。便器本体2は、表面に釉薬層が形成された陶器製であり、下部にスカート部6が形成され、上半分のうち前方にボウル部8が形成されている。また、ボウル部8の後方上部には、貯水タンク(図示せず)の排水口に接続される共通通水路10が形成され、さらに、ボウル部8の後方下部に汚物を排出するための排水トラップ管路12が形成されている。」
(イ)「【0026】
ボウル部8は、ボウル形状の汚物受け面16と、上縁に位置するリム部18と、汚物受け面16の下方に形成された壺部20とを備えている。ここで、リム部18の内周面18aは、図2に示すように、内側に向かってオーバーハングした形状となっており、後述する水平方向に旋回する洗浄水が外部へ飛び出ないようになっている。
【0027】
ボウル部8のリム部18の内周面の、前方から見て左側の中央部には、洗浄水を吐水するリム吐水部である第1リム吐水口22が形成され、前方から見て右側後方側(下流側)には、液膜吐水部である第2リム吐水口24が形成されている。これらの第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24は、水平面上同一方向(図1では反時計回りの方向)に洗浄水を吐出するように向けられており、第1リム吐水口22から吐出された洗浄水は、汚物受け面16上に、水平方向に旋回する旋回流を形成するようになっている。」
(ウ)「【0030】
つぎに、図2に示すように、排水トラップ管路12は、壺部20の底面36と接続し且つ後方下方へ延びる導入管路32と、上昇管路34aと、下降管路34bとから形成されている。
この導入管路32は、壺部20の底面36と滑らかな連続湾曲面として繋がっており、壺部20から導入管路32に流入した洗浄水が導入管路32内をスムーズに流れるようになっている。
【0031】
つぎに、図1及び図2に示すように、ボウル部8の壺部20は、上述したように、溜水水位Wより下方に位置する底面36と、この底面36と汚物受け面16の下縁部とを接続する側壁面38とを備えている。また、この底面36は、導入管路32の入口32aよりも前方の領域に形成され、ほぼ水平に形成されている。この底面36は、後方に向けて下方に傾斜させてもよい。壺部20の後方は、底部36は形成されず側壁面38が形成され、この側壁面38が導入管路32の入口32aと連続するように形成されている。
【0032】
さらに、図1に示すように、汚物受け面16の後部であって、壺部20とボウル部8の後端部(汚物受け面16の後縁部)との間の領域には、ボウル部8の後方に向かって幅が広くなる概ね扇形の凹部40が壺部20と連なるように形成されている。このように、汚物受け面16に凹部40を形成したことにより、凹部40の両端には段部40a、40bが夫々形成され、これらの段部40a、40bは壺部20の稜線と滑らかに連続している。本実施形態においては、第2リム吐水口24は、水洗大便器1の前方から見てボウル部8の後方右側に設けられ、左方向に洗浄水を吐出するので、凹部40の段部40a、40bのうち段部40b(本実施形態においては、左側の段部)が第2リム吐水口24と対向するように向けられている。従って、本実施形態においては、第2リム吐水口24と対向するように向けられた段部40bが、第2リム吐水口24から吐出した洗浄水が衝突し、衝突した洗浄水を壺部20の側壁面38に沿って落下させる洗浄水ガイド部として機能する。ここで、段部40bは壺部に向かうにしたがってその角度が大きく、深くなるように形成されているため、洗浄水をガイドする際、液膜状の吐水を滑らかに壺部に向けることがでる。このように、洗浄水ガイド部(段部40b)に衝突し、壺部20の側壁面38に沿って落下した洗浄水は、壺部20の中の溜水に縦方向の旋回流を誘発する。なお、本実施形態においては、第2リム吐水口24と左側の段部40bとの間の最短距離は約160mmであり、好ましくは、これらの間の最短距離は約130mm~約200mmに形成する。」
(エ)「【0034】
図3に示すように、汚物受け面16に凹部40を設けたことにより形成される両側の段部40a、40bは、壺部20の両側上縁の側部稜線20a、20b(壺部20の両側側部の側壁面38と汚物受け面16の内周が交わる線)と滑らかに連続している。また、壺部20の後ろ側上縁と凹部40の底面40cも滑らかに交わり、壺部20の後ろ側の後部稜線20cを形成している。さらに、凹部40の左右方向の幅は、壺部20の後部稜線20cにおいて最も狭く、後方に向かって広くなり、汚物受け面16の後端部において最も広くなっている。換言すれば、段部40aと40bの間の左右方向の隔たりは、汚物受け面16の後端部において最も大きく、壺部20の側部稜線20a、20bとの接続部において最も小さくなる。また、凹部40の底面40cは、汚物受け面16の後端部から壺部20に向かって下るように傾斜しており、凹部40の深さは、汚物受け面16の後端部において最も浅く、壺部20の後部稜線20cにおいて最も深くなっている。即ち、段部40a、40bは、汚物受け面16の後端部(汚物受け面16の最外周)において最も段差が小さく、壺部20に近づくにつれて段差が大きくなっている。
【0035】
なお、本実施形態においては、凹部40の前端部(壺部20に連なる部分)における幅は約115mmであり、壺部20の最大幅とほぼ同一に形成されている。また、凹部40の後端部(リム部18の内周面18aに接する部分)における幅は約195mmである。好ましくは、凹部の後端部における幅は約100mm~約240mmに形成し、壺部の中心に対して中心角約38゜~約110゜の範囲に凹部を形成する。さらに、本実施形態においては、凹部40の深さは最深部で約18mm、好ましくは、最深部の深さは約10mm~約30mmに形成する。」
(オ)「【0038】
これに対して、液膜吐水部である第2リム吐水口24は、図3に示すように、ボウル部8の右側後端部の、凹部40が設けられた領域の内側に形成されている。また、第2通水路28の底面は、第2リム吐水口24近傍より、第2リム吐水口24からの吐出方向に向かって下り傾斜しており、この傾斜面は凹部40の底面40cと滑らかに連続し、壺部20へ向かう下り傾斜面42を形成する。即ち、第1リム吐水口22から吐出された洗浄水は、第1リム吐水口22の床面とほぼ連続した概ね水平な導水路30によって導かれるのに対し、第2リム吐水口24には、その床面と連続した概ね水平な導水路は設けられておらず、第2リム吐水口24からの洗浄水は、第2リム吐水口24の底面とほぼ連続し、洗浄水の吐出方向に下り傾斜した下り傾斜面42に沿って吐出される。
【0039】
このように、下り傾斜面42に沿って吐出されると、洗浄水は重力とコアンダ効果によって下り傾斜面42に張り付くように液膜状に広がりながら斜め下方に流れ(図3の矢印F1)、第2リム吐水口24と対向するように設けられた左側の段部40b(洗浄水ガイド部)に衝突する。即ち、第1リム吐水口22から概ね水平な導水路30に沿って吐出された洗浄水が線状になって導水路30上を流れ、汚物受け面16上に少しずつ流下するのとは異なり、第2リム吐水口24から下り傾斜面42に吐出された洗浄水は、液膜状となって第2リム吐水口24から斜め下方に流下する。本実施形態においては、第2リム吐水口24からの吐水方向(汚物受け面16の周方向)の傾斜が傾斜角約13゜の下り傾斜面42に沿って洗浄水を吐出させることにより、吐出された洗浄水を液膜状にしている。なお、傾斜角5゜~20゜の下り傾斜面に沿って洗浄水を吐出させることにより、洗浄水を液膜状にすることができる。また、リム吐水口の断面形状を扁平にすることによっても、吐出された洗浄水を液膜状にすることができる。
【0040】
第2リム吐水口24から斜め下方に流下して、洗浄水ガイド部である段部40bに衝突した洗浄水は、段部40bに沿って汚物受け面16の中央に向かって流下する。ここで、段部40bと壺部20の側部稜線20bは、滑らかに連なるように形成されているので、段部40bに沿って流下した洗浄水は、液膜の状態を保ったまま、壺部20の左側の側壁面38に沿って壺部20の中に流下する(図3の矢印F2)。このように、第2リム吐水口24から吐出された洗浄水の多くは、吐出される際の水勢、及び段部40bに沿って流下(落下)する際の重力によって勢いよく壺部20に流入する。強い水勢で壺部20に流入した大量の洗浄水は、壺部20内の溜水に縦方向の旋回流を強力に誘発する。また、液膜吐水部である第2リム吐水口24から液膜状になって吐水され、洗浄水ガイド部(段部40b)によって壺部20の中に導かれた液膜状の洗浄水は、第1リム吐水口22から吐水される線状のような一般的な洗浄水よりも、水平方向の旋回成分を効果的に相殺し、強力な縦方向の旋回流を形成することができる。これにより、壺部20の溜水に浮遊していた汚物が強力に溜水内に沈められ、汚物は排水トラップ管路12を通って効率良く排出される。
【0041】
次に、図10及び図11を主に参照して、本実施形態による水洗大便器1における洗浄動作を説明する。図10は本発明の実施形態による水洗大便器の洗浄水の流れの様子を示す概略平面図であり、図11は、本発明の実施形態による水洗大便器の洗浄水の流れの様子を示す概略断面図である。
【0042】
先ず、使用者が操作スイッチ(図示せず)をON操作すると、貯水タンクの排水口(図示せず)が開き、洗浄水が、便器本体2の共通通水路10内に流入し、この共通通水路10から分岐した第1通水路26及び第2通水路28を経て、第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24のそれぞれから吐水される。
【0043】
第1リム吐水口22から吐水された洗浄水は、ボウル部8のリム部18の内周に形成された導水路30に沿って、まず、前方に向けて流れ、ボウル部8の前方端を通過した後は、後方に向けて流れる水平方向の旋回流を形成する(図10の矢印F3)。このとき、洗浄水の一部は、旋回しながらボウル部8の中央に向けて落下し(図10、図11の矢印F4)、汚物受け面16を洗浄する。また、第2リム吐水口24からも洗浄水が吐水され、その多くの部分が、第2リム吐水口24に対向して設けられた段部40b(洗浄水ガイド部)に衝突する(図10の矢印F5)。段部40bに衝突した洗浄水は、この段部40bを形成する斜面と滑らかに連続して設けられた壺部20左側の側壁面38に沿って、壺部20の溜水内に落下する。壺部20に流入した洗浄水は、壺部20内の溜水に縦方向の旋回流(図10、図11の矢印F6)を引き起こし、溜水に浮遊していた汚物を溜水の中に沈め、沈められた汚物は、導入管路32の入口32aを通って排水トラップ管路12から排出される。」
(カ)【図1】
「
[図:0001435157000014.jpg]
」
(キ)【図2】
「
[図:0001435157000015.jpg]
」
(ク)【図3】
「
[図:0001435157000016.jpg]
」
(ケ)【図10】
「
[図:0001435157000017.jpg]
」
(コ)【図11】
「
[図:0001435157000018.jpg]
」
イ 図より看取される事項
(ア)段落【0030】の記載を踏まえると、【図2】より、導入管路32の径は、壺部20の径より小さいことが、看取される。
(イ)段落【0031】及び【0032】の記載を踏まえると、【図2】より、壺部20の中の溜水は溜水水位Wを有することが、看取される。
(ウ)段落【0034】の記載を踏まえると、【図2】より、壺部20の後ろ側上縁と凹部40の底面40cも滑らかに交わり、壺部20の後ろ側の後部稜線20cを形成し、凹部40の底面40cの下端までの上下断面は凹形状であり、上下断面で凸形状の壺部20の後ろ側上縁を経て、壺部20の後ろ側内壁に至ることが、看取される。
(エ)段落【0032】、【0038】、【0039】、【0040】及び【0043】の記載を踏まえると、【図3】及び【図10】より、第2リム吐水口24からの洗浄水は、凹部40の底面40cと滑らかに連続し、壺部20へ向かう下り傾斜面42に沿って吐出されると、汚物受け面16の後部である凹部40を下り傾斜面42に張り付くように斜め下方に流れ(F1)、洗浄水の多くは凹部40の端部である段部40bに衝突し(F5)、壺部20の左側の側壁面38に沿って壺部20の中に流下(F2)することが、看取される。
ウ 記載された発明
上記ア及びイより、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。なお、各構成に分説を付し、関連する段落番号または図面を括弧書きで付した。
<甲2発明>
「(甲2A)洗浄水の流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器である水洗大便器1であって、(【0024】)
(甲2B)ボウル部8の後方下部に汚物を排出するための排水トラップ管路12が形成されており、(【0024】)
(甲2C)ボウル部8は、ボウル形状の汚物受け面16と、上縁に位置するリム部18と、汚物受け面16の下方に形成された壺部20とを備え、(【0026】)
(甲2D)リム部18の内周面に形成された第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24は、水平面上同一方向(反時計回りの方向)に洗浄水を吐出するように向けられており、第1リム吐水口22から吐出された洗浄水は、汚物受け面16上に、水平方向に旋回する旋回流を形成するようになっており、(【0027】)
(甲2E)排水トラップ管路12の導入管路32は、壺部20の底面36と滑らかな連続湾曲面として繋がっており、壺部20から導入管路32に流入した洗浄水が導入管路32内をスムーズに流れるようになっており、導入管路32の径は、壺部20の径より小さく、(【0030】、【図2】)
(甲2F)壺部20は、底面36と、この底面36と汚物受け面16の下縁部とを接続する側壁面38とを備え、底面36は、導入管路32の入口32aよりも前方の領域に形成され、壺部20の後方は、底部36は形成されず側壁面38が形成され、この側壁面38が導入管路32の入口32aと連続するように形成されており、(【0031】)
(甲2G)壺部20の中の溜水は溜水水位Wを有し、(【0031】、【0032】、【図2】)
(甲2H)汚物受け面16の後部であって、壺部20と汚物受け面16の後縁部との間の領域には、ボウル部8の後方に向かって幅が広くなる概ね扇形の凹部40が壺部20と連なるように形成され、汚物受け面16に凹部40を形成したことにより、凹部40の両端には段部40a、40bが夫々形成され、(【0032】)
(甲2I)汚物受け面16に凹部40を設けたことにより形成される両側の段部40a、40bは、壺部20の両側上縁の側部稜線20a、20b(壺部20の両側側部の側壁面38と汚物受け面16の内周が交わる線)と滑らかに連続し、(【0034】)
(甲2J)壺部20の後ろ側上縁と凹部40の底面40cも滑らかに交わり、壺部20の後ろ側の後部稜線20cを形成し、凹部40の底面40cの下端までの上下断面は凹形状であり、上下断面で凸形状の壺部20の後ろ側上縁を経て、壺部20の後ろ側内壁に至り、(【0034】、【図2】)
(甲2K)凹部40の左右方向の幅は、壺部20の後部稜線20cにおいて最も狭く、後方に向かって広くなり、凹部40の前端部(壺部20に連なる部分)における幅は、壺部20の最大幅とほぼ同一に形成されており、(【0034】、【0035】)
(甲2L)第2リム吐水口24からの洗浄水は、凹部40の底面40cと滑らかに連続し、壺部20へ向かう下り傾斜面42に沿って吐出されると、汚物受け面16の後部である凹部40を下り傾斜面42に張り付くように斜め下方に流れ(F1)、洗浄水の多くは凹部40の端部である段部40bに衝突し(F5)、壺部20の左側の側壁面38に沿って壺部20の中に流下(F2)し、(【0038】、【0039】、【0040】、【0043】、【図3】、【図10】)
(甲2M)第1リム吐水口22から吐水された洗浄水は、ボウル部8のリム部18の内周に形成された導水路30に沿って、まず、前方に向けて流れ、ボウル部8の前方端を通過した後は、後方に向けて流れる水平方向の旋回流を形成し(F3)、洗浄水の一部は、旋回しながらボウル部8の中央に向けて落下し(F4)、汚物受け面16を洗浄する、(【0043】)
(甲2N)洗い落し式便器である水洗大便器1。(【0024】)」
(3)甲3
ア 記載及び図示
甲3には、次の記載及び図示がある。
(ア)「【0020】
図1及び図2に示すように、水洗便器1は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器であり、便器本体2を備え、この便器本体2には、洗浄水源であるジェットポンプ機構を備えた貯水タンク(図示せず)を介して、洗浄水が導入されるようになっている。便器本体2は、表面に釉薬層が形成された陶器製であり、下部にスカート部6が形成され、上半分のうち前方にボウル部8が形成されている。また、ボウル部8の後方上部には、ジェットポンプ機構を備えた貯水タンクの排水口に接続される共通通水路10が形成され、さらに、ボウル部8の後方下部に汚物を排出するための排水管路12が形成されている。」
(イ)「【0022】
ボウル部8は、ボウル形状の汚物受け面16と、上縁に位置するリム部18と、汚物受け面16の下方に形成された凹部20とを備えている。ここで、リム部18の内周面18aは、図2~図7に示すように、内側に向かってオーバーハングした形状となっており、後述する旋回する洗浄水が外部へ飛び出ないようにな
っている。
【0023】
ボウル部8のリム部18の内周面の前方から見て左側の中央部の少し後方側に、洗浄水を吐水する第1リム吐水口22が形成され、前方から見て右側後方側(下流側)に、第2リム吐水口24が形成されている。これらの第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24は、同一方向(図1では反時計回りの方向)に旋回する旋回流を形成するようになっている。」
(ウ)「【0027】
つぎに、図2に示すように、排水管路12は、凹部20の底面36と接続し且つ後方下方へ延びる導入管路32と、この導入管路32と接続し上方へ延びる排水トラップ管路34とを備えている。また、排水トラップ管路34は、上昇管路34aと下降管路34bとから形成されている。
この導水管路32は、凹部20の底面36と滑らかな連続湾曲面として繋がっており、凹部20から導入管路32に流入した洗浄水が導入管路32内をスムーズに流れるようになっている。
【0028】
つぎに、図1及び図2に示すように、ボウル部8の凹部20は、上述したように、溜水水位Wより下方に位置する底面36と、この底面36と汚物受け面16の下縁部とを接続する壁面38とを備えている。また、この底面36は、導入管路32の入口32aよりも前方の領域に形成され、また、底面36の側方領域が凹部20の前後方向中心より後方まで延びて形成されている。この底面36の後方まで延びて形成された側方領域は、後述する誘導部(後方側凹部40、第1誘導路42)により形成される洗浄水の流れが凹部20へと流入する側(前方から見て右側方領域)の一方側のみに形成するようにしてもよい。さらに、凹部20の底部36は、ほぼ水平に形成されている。この底面36は、後方に向けて下方に傾斜させてもよい。凹部20の後方は、底部36は形成されず壁面38が形成され、この壁面38が導入管路32の入口32aと連続するように形成されている。」
(エ)「【0030】
先ず、図1及び図9に示すように、汚物受け面16の後方側汚物受け面16bの凹部20の後方側の領域には、本発明の誘導部の第1例である後方側凹部40が形成されている。この後方側凹部40は、便器本体2の前後方向に延びる中心軸線CLに沿って、後方側から凹部20に向けて前方に延びるように形成されている。また、後方側凹部40の側面40a,40bは、凹部20の壁面38ともほぼ同一面で連続して形成されている。なお、この後方側凹部40は、左右方向対称に形成する必要はなく、非対称に形成してもよい。」
(オ)「【0032】
図9から図11に示すように、後方側汚物受け面16bの後方側凹部40は、便器本体2の前後方向に延びる中心線CLの位置であるG位置でその曲率半径Rが最大となり(R=100mm)となり、また、後方側汚物受け面16bの前方領域であるA位置及びM位置でその曲率半径Rが最小となる(R=30mm)。このため、後方側凹部40のリム部18の上面からの距離(深さ)Hは、G位置で最大となり(H=120mm)、A位置及びM位置で最小となる(H=80mm)。
【0033】
このため、後方側凹部40は、図8に示すように、中心であるG位置において、最大の曲率半径(R=100mm)となるので、その位置において、リム部18の上面からの距離(深さ)Hが最大となり、中心であるG位置において、もっとも凹み量が大きくなっている。」
(カ)「【0041】
第1リム吐水口22から吐水された洗浄水は、ボウル部8のリム部18の内周面18aに形成された導水路30に沿って、まず、前方に向けて流れ、ボウル部8の前方端を通過した後は、後方に向けて流れる。このとき、洗浄水の一部は、旋回しながらボウル部8を落下し、汚物受け面16を洗浄する。また、第2リム吐水口24からも洗浄水が吐水され、その一部が旋回しながらボウル部8を落下し、汚物受け面16を洗浄する。
【0042】
また、本実施形態においては、洗浄水がリム部18の内周面18aに沿って旋回するための導水路30が形成され、この導水路30が第1リム吐水口22からボウル部8の前方端に向かって下方へ徐々に傾斜し、前方端から後方側に向かって上方へ徐々に傾斜するように形成されているので、第1リム吐水口22から吐水され導水路30に沿って流れる洗浄水M1の相当量は、ボウル部8の前方側より排水管路12の導入管路32の入口32aに向けて流れる大流量の主流M11を形成する。さらに、第1リム吐水口22から吐水された洗浄水M1の一部は、引き続き、導水路30を流れ、第2リム吐水口24まで到達する流れM12となる。この洗浄水の流れM12は、第2リム吐水口24の手前の導水路30において、第2誘導路44により、流れが下方に向けられ、凹部20に向けて流下する。
【0043】
次に、第2リム吐水口24から吐水された洗浄水の主流M2は、汚物受け面16の後方側汚物受け面16bの導水路30を流れる。このとき、主流M2の一部は、後方側凹部40を通過するとき、後方側凹部40により流れの方向が下方に向けられ、凹部20に向けて流下する流れM21となる。さらに、主流M2の一部は、導水路30を流れ、第1リム吐水口22に到達する主流M22となる。この主流M22は、第1リム吐水口22の手前の導水路30において、第1誘導路42により、流れが下方に向けられ、凹部20に向けて流下し凹部20に横方向から流入する。」
(キ)【図1】
「
[図:0001435157000019.jpg]
」
(ク)【図2】
「
[図:0001435157000020.jpg]
」
(ケ)【図9】
「
[図:0001435157000021.jpg]
」
(コ)【図16】
「
[図:0001435157000022.jpg]
」
(サ)【図17】
「
[図:0001435157000023.jpg]
」
イ 図より看取される事項
(ア)段落【0027】の記載を踏まえると、【図2】より、導入管路32の径は凹部20の径より小さいことが、看取される。
(イ)段落【0028】の記載を踏まえると、【図2】より、凹部20の中の溜水は溜水水位Wを有することが、看取される。
(ウ)段落【0030】の記載を踏まえると、【図2】より、後方側凹部40は、上下断面で凹形状であり、上下断面で凸形状の部分を経て、凹部20の後ろ側の壁面38に至ることが、看取される。
ウ 記載された発明
上記ア及びイより、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。なお、各構成に分説を付し、関連する段落番号または図面を括弧書きで付した。
<甲3発明>
「(甲3A)洗浄水を導入し流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器である水洗便器1であって、(【0020】)
(甲3B)ボウル部8の後方下部に汚物を排出するための排水管路12が形成されており、(【0020】)
(甲3C)ボウル部8は、ボウル形状の汚物受け面16と、上縁に位置するリム部18と、汚物受け面16の下方に形成された凹部20とを備えており、(【0022】)
(甲3D)リム部18の内周面に形成された、洗浄水を吐水する第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24は、同一方向(反時計回りの方向)に旋回する旋回流を形成するようになっており、(【0023】)
(甲3E)排水管路12の導入管路32は、凹部20の底面36と滑らかな連続湾曲面として繋がっており、凹部20から導入管路32に流入した洗浄水が導入管路32内をスムーズに流れるようになっており、導入管路32の径は凹部20の径より小さく、(【0027】、【図2】)
(甲3F)凹部20は、底面36と、この底面36と汚物受け面16の下縁部とを接続する側壁面38とを備え、底面36は、導入管路32の入口32aよりも前方の領域に形成され、凹部20の後方は、底部36は形成されず壁面38が形成され、この壁面38が導入管路32の入口32aと連続するように形成されており、(【0028】)
(甲3G)凹部20の中の溜水は溜水水位Wを有し、(【0028】、【図2】)
(甲3H)汚物受け面16の後方側汚物受け面16bの凹部20の後方側の領域には、後方側凹部40が形成されており、後方側凹部40の側面40a,40bは、凹部20の壁面38ともほぼ同一面で連続して形成されており、(【0030】)
(甲3I)後方側汚物受け面16bの後方側凹部40は、便器本体2の前後方向に延びる中心線CLの位置であるG位置でその曲率半径Rが最大となり、後方側汚物受け面16bの前方領域であるA位置及びM位置でその曲率半径Rが最小となり、後方側凹部40のリム部18の上面からの距離(深さ)Hは、G位置で最大となり、A位置及びM位置で最小となり、中心であるG位置において、もっとも凹み量が大きくなっており、(【0032】、【0033】)
(甲3J)後方側凹部40は、上下断面で凹形状であり、上下断面で凸形状の部分を経て、凹部20の後ろ側の壁面38に至り、(【図2】)
(甲3K)第1リム吐水口22から吐水された洗浄水は、ボウル部8のリム部18の内周面18aに形成された導水路30に沿って、まず、前方に向けて流れ、ボウル部8の前方端を通過した後は、後方に向けて流れ、第1リム吐水口22から吐水され導水路30に沿って流れる洗浄水M1の相当量は、ボウル部8の前方側より排水管路12の導入管路32の入口32aに向けて流れる大流量の主流M11を形成し、第1リム吐水口22から吐水された洗浄水M1の一部は、引き続き、導水路30を流れ、流れM12となり、流れが下方に向けられ、凹部20に向けて流下し、(【0041】、【0042】)
(甲3L)第2リム吐水口24から吐水された洗浄水の主流M2は、汚物受け面16の後方側汚物受け面16bを流れ、主流M2の一部は、後方側凹部40を通過するとき、後方側凹部40により流れの方向が下方に向けられ、凹部20に向けて流下する流れM21となり、さらに、主流M2の一部は、導水路30を流れる主流M22となり、流れが下方に向けられ、凹部20に向けて流下する、(【0043】)、
(甲3M)洗い落し式便器である水洗便器1。」
2 拡大先願について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)構成Aについて
甲1発明において、甲1Aより「便器洗浄を実行すると、洗浄水が凹部90に流入し、汚物を排出することができる、大便器1」である構成は、本件発明1において、「洗浄水により洗浄して汚物を排出する洗い落とし式水洗大便器」である構成Aに、相当する。
(イ)構成B及び構成Eについて
甲1発明において、甲1Bより備える「便鉢部10」は、本件発明1において、構成Eに係る「ボウル部」に、相当する。
甲1発明において、甲1C及び甲1Fより、「便鉢部10」が備える「鉢部60」が「汚物受け面60A」を有する構成は、本件発明1において、構成Eに係る「ボウル部」が、構成Bに係る「汚物を受ける汚物受け面」を備える構成に、相当する。
(ウ)構成C及び構成Eについて
甲1発明において、甲1C及び甲1Fより、「便鉢部10」が「リム部20」を備え、「リム部20」より「下方」に、「汚物受け面60A」を有する「鉢部60」を備える構成は、本件発明1において、構成Eに係る「ボウル部」が、構成Cに係る「この汚物受け面の上部に形成されたリム部」を備える構成に、相当する。
(エ)構成D及び構成Eについて
甲1発明において、甲1C、甲1E及び甲1Fより、「便鉢部10」が「汚物受け面60A」を有する「鉢部60」より下方に「凹部90」を備え、「凹部90内に溜水面WSが形成され」る構成は、本件発明1において、構成Eに係る「ボウル部」が、構成Dに係る「上記汚物受け面の下部に形成されその内部に溜水面が形成されるツボ部」を備える構成に、相当する。
(オ)構成Fについて
甲1発明において、甲1Oより、「第1流出口150Rからの洗浄水は、便鉢部10内をリム内壁面21Aに沿って旋回する」ように「吐水」を行う「リム吐水口25」は、本件発明1において、構成Fに係る「上記リム部に沿って洗浄水を吐水する1つ又は複数の吐水口」に、相当する。
(カ)構成Gについて
甲1発明において、甲1Nより、「便器排水路110は、便鉢部10の凹部90の下端部の後部に上流端部が連続」する構成は、本件発明1において、「上記ボウル部の底部に接続された排水管路」を有する構成Gに、相当する。
(キ)構成Hについて
甲1発明は、甲1O及び甲1Pより、「リム吐水口25から吐水される第1流出口150Rからの洗浄水」が形成する「第1主流F1」が、「便鉢部10内を一周」し「汚物受け面60Aの前方側及び後方側を旋回」して「凹部90へ流入」する構成を有する。
甲1発明が有する上記構成は、「便鉢部10内を一周」して「汚物受け面60Aの前方側及び後方側を旋回」する「第1主流F1」について、「汚物受け面60Aの前方側」を「旋回」する部分と、「汚物受け面60A」の「後方側」を「旋回」する部分とを有することが明らかであること、及び、「第1主流F1」が「凹部90へ流入」すれば、「凹部90内」の「溜水面WS」に流入することは明らかであることを踏まえると、本件発明1において、「上記吐水口からリム部に沿って吐水された洗浄水の主流は、汚物受け面の前方側を旋回する前方主流と、汚物受け面の後方側を旋回する後方主流を形成し、この汚物受け面を旋回して溜水面へ流入」する、構成Hに、相当する。
(ク)構成Iについて
甲1発明において、甲1G及び甲1Hより、「鉢部60の後側領域における汚物受け面60A」が、「中央汚物受け面61と、中央汚物受け面61の左右両端縁から左右外方向に拡がる左右汚物受け面63と、を有して」おり、「中央汚物受け面61の下端縁61Lは、左右汚物受け面63の下端縁63Lより、低くなって」いる構成は、本件発明1における構成Iのうち、「上記ボウル部の汚物受け面の後方面は、汚物受け面の左右側面よりも深く凹んだ凹部を備え」る構成に、相当する。
甲1発明において、甲1F、甲1J及び甲1Kより、「第2連結部80の第2連結面80A」は、「汚物受け面60A」を有する「鉢部60の下端周縁部」から「凹部90の側壁部91」へと連続する「湾曲」した面であるから、「汚物受け面60A」から「凹み部90」への遷移曲面ということができる。
そして、「汚物受け面60A」から「凹み部90」への遷移曲面ということができる「第2連結面80A」について、甲1Lより、「第2連結面80Aの上縁及び下縁は、後端部の下端が、凹部90の側方の領域におけるより下方まで延び」ていることからすると、甲1発明において、「第2連結面80Aの上縁及び下縁」の、いずれを「汚物受け面60A」と「凹み部90」との境界とみても、「汚物受け面60A」の「後端部の下端」は、「凹み部90」の側方の領域における上端より、下方まで延びていることとなる。
甲1発明において、「第2連結面80Aの上縁及び下縁」の、いずれを「汚物受け面60A」と「凹み部90」との境界とみても、「汚物受け面60A」の「後端部の下端」は、「凹み部90」の側方の領域における上端より、下方まで延びていることとなる構成は、本件発明1における構成Iのうち、「上記ボウル部の汚物受け面」について、「この後方面の下端は、ツボ部の左右側面の上端よりも下方まで延び」る構成に、相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明1の構成Iに相当する構成を有している。
(ケ)構成Jについて
甲1発明において、甲1Mより、「中央汚物受け面61は、上下断面でみて凹み形状であ」る構成は、本件発明1における構成Jのうち、「上記ボウル部の汚物受け面の後方面の凹部は、上下方向に沿って凹形状に形成され」ている構成に、相当する。
甲1発明において、甲1Jより、「鉢部60の下端周縁部に連続し、鉢部60の下端周縁に沿って一周している、第2連結部80の第2連結面80A」は、「上端周縁から下方内側に向けて傾斜角度が徐々に急になるように湾曲しながら拡がって」いるから、上下方向の断面で凸形状ということができ、本件発明1の構成Jにおける、「凸形状の接続部」に、相当する。
甲1発明において、甲1F、甲1J及び甲1Kより、「第2連結部80の第2連結面80A」は、「汚物受け面60A」を有する「鉢部60の下端周縁部」から「凹部90の側壁部91」へと連続する「湾曲」した面であるから、「汚物受け面60A」から「凹み部90」への遷移曲面ということができる。
そして、甲1発明において、「汚物受け面60A」から「凹み部90」への遷移曲面ということができる「第2連結面80A」について、「汚物受け面60A」の下端の領域とも言い得ることを踏まえると、甲1Mより、「中央汚物受け面61」が「上下断面でみて凹み形状であり、上下断面でみて凸形状の第2連結面80Aを経て、凹部90の後部の側壁部91につなが」る構成は、本件発明1における構成Jのうち、「この後方面の凹部は、上記後方面の下端に相当する凸形状の接続部によりツボ部の後面に接続されている」構成に、相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明1の構成Jに相当する構成を有している。
(コ)小括
上記(ア)~(ケ)のとおり、甲1発明は、本件発明1の全ての構成に相当する構成を有する。
イ 判断
上記アのとおり、本件発明1と甲1発明とは、全ての点で一致する。
したがって、本件発明1は、先願の当初明細書等に記載され、本件特許の出願後に甲1により出願公開がされた、甲1発明である。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであり、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2は、本件発明1の構成を有し、さらに構成Lを付加したものである。
(ア)構成Lについて
本件発明2において付加された構成Lについて、対比する。
甲1発明において、甲1E及び甲1Gより、「一対の仮想平行線P1.P1の間に拡がる中央汚物受け面61」について、「一対の仮想平行線P1.P1」が「凹部90内に形成される溜水面WSの左右両端WL,WRから便鉢部10の左右中心線CL1に平行に延びるもの」であることを踏まえると、「中央汚物受け面61」の左右方向幅は、「凹み部90」の最大横幅、及び/又は、「凹み部90」と「汚物受け面60A」との遷移領域となる「第2連結面80A」の最大横幅より、小さいことが明らかである。
甲1発明において、「中央汚物受け面61」の左右方向幅が、「凹み部90」の最大横幅、及び/又は、「凹み部90」と「汚物受け面60A」との遷移領域となる「第2連結面80A」の最大横幅より、小さい構成は、本件発明2において、「上記ボウル部の汚物受け面の後方面の凹部は、その横方向幅が、上記ツボ部の最大横方向幅よりも狭く形成されている」構成Lに、相当する。
(イ)その余の構成について
本件発明2が有する本件発明1の構成については、上記(1)に対比・判断したとおりである。
(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)のとおり、甲1発明は、本件発明2の全ての構成に相当する構成を有する。
イ 判断
上記アのとおり、本件発明2と甲1発明とは、全ての点で一致する。
したがって、本件発明2は、先願の当初明細書等に記載され、本件特許の出願後に甲1により出願公開がされた、甲1発明である。
よって、本件発明2に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであり、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。
(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2の構成を有し、さらに構成Mを付加したものである。
(ア)構成Mについて
本件発明3において付加された構成Mについて、対比する。
甲1発明において、甲1Nより、「便器排水路110は、便鉢部10の凹部90の下端部の後部に上流端部が連続し、便器排水路110の径は、凹部90の径より小さ」いところ、より径が小さい「便器排水路110」へとスムーズにつながるよう、「凹部90」の「後部」について、曲率半径は「下端部」に向かって小さくなることが、明らかである。
甲1発明において、「凹部90」の「後部」について、曲率半径は「下端部」に向かって小さくなることが明らかである構成は、本件発明3において、「上記ツボ部の後面の上方位置の曲率半径R1と、下方位置の曲率半径R2では、下方位置の曲率半径R2の方が上方位置の曲率半径R1より小さくなるように形成されている」構成Mに、相当する。
(イ)その余の構成について
本件発明3が有する本件発明1又は本件発明2の構成については、上記(1)及び(2)に対比・判断したとおりである。
(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)のとおり、甲1発明は、本件発明3の全ての構成に相当する構成を有する。
イ 判断
上記アのとおり、本件発明3と甲1発明とは、全ての点で一致する。
したがって、本件発明3は、先願の当初明細書等に記載され、本件特許の出願後に甲1により出願公開がされた、甲1発明である。
よって、本件発明3に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであり、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。
3 甲2を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)構成Aについて
甲2発明において、甲2Aより「洗浄水の流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器である水洗大便器1」である構成は、本件発明1において、「洗浄水により洗浄して汚物を排出する洗い落とし式水洗大便器」である構成Aに、相当する。
(イ)構成B及び構成Eについて
甲2発明において、甲2Cより備える「ボウル部8」は、本件発明1において、構成Eに係る「ボウル部」に、相当する。
甲2発明において、甲2Cより、「ボウル部8」が「汚物受け面16」を備える構成は、本件発明1において、構成Eに係る「ボウル部」が、構成Bに係る「汚物を受ける汚物受け面」を備える構成に、相当する。
(ウ)構成C及び構成Eについて
甲2発明において、甲2Cより、「ボウル部8」が「汚物受け面16」を備えたうえで、「上縁に位置するリム部18」を備える構成は、「リム部18」が「汚物受け面16」より上部となることが明らかであることを踏まえると、本件発明1において、構成Eに係る「ボウル部」が、構成Cに係る「この汚物受け面の上部に形成されたリム部」を備える構成に、相当する。
(エ)構成D及び構成Eについて
甲2発明において、甲2C及び甲2Gより、「ボウル部8」が「汚物受け面16の下方に形成された壺部20」を備え、「壺部20の中」に「溜水水位Wを有」する「溜水」が形成される構成は、本件発明1において、構成Eに係る「ボウル部」が、構成Dに係る「上記汚物受け面の下部に形成されその内部に溜水面が形成されるツボ部」を備える構成に、相当する。
(オ)構成Fについて
甲2発明において、甲2Dより、「リム部18の内周面に形成された第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24」は、「水平面上同一方向(反時計回りの方向)に洗浄水を吐出するように向けられており、第1リム吐水口22から吐出された洗浄水は、汚物受け面16上に、水平方向に旋回する旋回流を形成するようになって」いるから、「第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24」の吐水の方向が「リム部18の内周面」に沿う方向となることを踏まえると、本件発明1において、構成Fに係る「上記リム部に沿って洗浄水を吐水する1つ又は複数の吐水口」に、相当する。
(カ)構成Gについて
甲2発明において、甲2Bより、「ボウル部8の後方下部に汚物を排出するための排水トラップ管路12が形成されて」いる構成は、本件発明1において、「上記ボウル部の底部に接続された排水管路」を有する構成Gに、相当する。
(キ)構成Hについて
甲2発明において、甲2Lより、「第2リム吐水口24からの洗浄水」は、「汚物受け面16の後部である凹部40を下り傾斜面42に張り付くように斜め下方に流れ(F1)、洗浄水の多くは凹部40の端部である段部40bに衝突し(F5)、壺部20の左側の側壁面38に沿って壺部20の中に流下(F2)し」ているから、「洗浄水の多く」である主流が、「汚物受け面の後部である凹部40」を「端部である段部40bに衝突」するまで回って、「壺部20の中」の溜水に流下している。甲2発明において、「第2リム吐水口24からの洗浄水」の「多く」である主流が、「汚物受け面の後部である凹部40」を「端部である段部40bに衝突」するまで回って、「壺部20の中」の溜水に流下する構成は、本件発明1の構成Hのうち、「上記吐水口からリム部に沿って吐水された洗浄水の主流」が「汚物受け面の後方側を旋回する後方主流を形成し、この汚物受け面を旋回して溜水面へ流入」する構成に、相当する。
甲2発明において、甲2Mより、「第1リム吐水口22から吐水された洗浄水」は、「ボウル部8のリム部18の内周に形成された導水路30に沿って、まず、前方に向けて流れ、ボウル部8の前方端を通過した後は、後方に向けて流れる水平方向の旋回流を形成し(F3)、洗浄水の一部は、旋回しながらボウル部8の中央に向けて落下し(F4)、汚物受け面16を洗浄」しているから、「第1リム吐水口22」からの「洗浄水」の主な流れとして、「リム部18の内周に」「沿って」流れる「旋回流」「(F3)」を形成し、「汚物受け面16」の前方を旋回して「ボウル部8の中央」の壺部20内の溜水に落下する流れがあることが明らかである。甲2発明において、「第1リム吐水口22」からの「洗浄水」の主な流れとして、「リム部18の内周に」「沿って」流れる「旋回流」「(F3)」を形成し、「汚物受け面16」の前方を旋回して「ボウル部8の中央」の壺部20内の溜水に落下する流れがあることが明らかである構成は、本件発明1の構成Hのうち、「上記吐水口からリム部に沿って吐水された洗浄水の主流」が「汚物受け面の前方側を旋回する前方主流」を「形成し、この汚物受け面を旋回して溜水面へ流入」する構成に、相当する。
したがって、甲2発明は、本件発明1の構成Hに相当する構成を有する。
(ク)構成Iについて
甲2発明において、甲2Hより有する、「汚物受け面16の後部であって、壺部20と汚物受け面16の後縁部との間の領域」は、本件発明1における構成Iのうち、「上記ボウル部の汚物受け面の後方面」に、相当する。
甲2発明において、甲2Hより有する、「凹部40」は、本件発明1における構成Iのうち、「凹部」に、相当する。
甲2発明において、甲2Hより、「後部」の「汚物受け面16に凹部40を形成したことにより、凹部40の両端には段部40a、40bが夫々形成され」ているところ、「汚物受け面16」のうち、「汚物受け面16に凹部40を形成したことにより、凹部40の両端に」形成される「段部40a、40b」より前の部分であり、甲2Iより、「段部40a、40b」と「滑らかに連続」する、「壺部20の両側上縁の側部稜線20a、20b(壺部20の両側側部の側壁面38と汚物受け面16の内周が交わる線)」より左右外側の部分は、「汚物受け面16」のうち「後部」で「凹部40」が形成される領域より前であり、かつ「壺部20」の「側部」の左右外側の領域であるから、本件発明1における構成Iのうち、「汚物受け面の左右側面」に、相当する。
甲2発明において、甲2Iより有する、「段部40a、40b」と「滑らかに連続」する「壺部20の両側上縁の側部稜線20a、20b(壺部20の両側側部の側壁面38と汚物受け面16の内周が交わる線)」は、本件発明1における構成Iのうち、「ツボ部の左右側面の上端」に、相当する。
甲2発明において、甲2H及び甲2Iより、「汚物受け面16」のうち「後部」に形成される「凹部40」が、「段部40a、40b」より前で「壺部20の両側上縁の側部稜線20a、20b」より外側の部分より、「段部40a、40b」を介する分だけ、上下方向に高さが低くなっていることが明らかである構成は、本件発明1の構成Iのうち、「上記ボウル部の汚物受け面の後方面」の「凹部」が、「汚物受け面の左右側面よりも深く凹んだ」構成に、相当する。
また、甲2発明において、甲2H及び甲2Iより、「汚物受け面16」のうち「後部」に形成される「凹部40」の下端が、「段部40a、40b」と「滑らかに連続」する「壺部20の両側上縁の側部稜線20a、20b」より、「段部40a、40b」を介する分だけ、高さ方向に低いことが明らかである構成は、本件発明1の構成Iのうち、「上記ボウル部」について、「この後方面の下端は、ツボ部の左右側面の上端よりも下方まで延び」る構成に、相当する。
したがって、甲2発明は、本件発明1の構成Iに相当する構成を有する。
(ケ)構成Jについて
甲2発明において、甲2Jより、「凹部40」について、「凹部40の底面40cの下端までの上下断面は凹形状であり、上下断面で凸形状の壺部20の後ろ側上縁を経て、壺部20の後ろ側内壁に至」る構成は、本件発明1において、「上記ボウル部の汚物受け面の後方面の凹部は、上下方向に沿って凹形状に形成され、この後方面の凹部は、上記後方面の下端に相当する凸形状の接続部によりツボ部の後面に接続されている」構成Jに、相当する。
(コ)構成Kについて
甲2発明において、甲2Nより、「洗い落し式便器である水洗大便器1」である構成は、本件発明1において、「洗い落とし式水洗大便器」である構成Kに、相当する。
(サ)小括
上記(ア)~(コ)のとおり、甲2発明は、本件発明1の全ての構成に相当する構成を有する。
イ 判断
上記アのとおり、本件発明1と甲2発明とは、全ての点で一致する。
また、仮に若干の相違点があったとしても、当該相違点は設計事項程度である。
したがって、本件発明1は、甲2発明であり、特許法29条1項3号の規定に該当する。
また、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法29条1項または2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)本件発明3について
ア 対比
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2の構成を有し、さらに構成Mを付加したものである。
(ア)構成Mについて
本件発明3において付加された構成Mについて、対比する。
甲2発明において、甲2Eより、「排水トラップ管路12の導入管路32は、壺部20の底面36と滑らかな連続湾曲面として繋がって」おり、「導入管路32の径は、壺部20の径より小さ」いところ、より径が小さい「導入管路32」へとスムーズにつながるよう、「壺部20」の後部について、曲率半径は下端部に向かって小さくなることが、明らかである。
甲2発明において、「壺部20」の後部について、曲率半径は下端部に向かって小さくなることが明らかである構成は、本件発明3において、「上記ツボ部の後面の上方位置の曲率半径R1と、下方位置の曲率半径R2では、下方位置の曲率半径R2の方が上方位置の曲率半径R1より小さくなるように形成されている」構成Mに、相当する。
(イ)その余の構成について
本件発明3が有する本件発明1の構成については、上記(1)に対比・判断したとおりである。
(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)のとおり、甲2発明は、本件発明3の全ての構成に相当する構成を有する。
イ 判断
上記アのとおり、本件発明3と甲2発明とは、全ての点で一致する。
また、仮に若干の相違点があったとしても、当該相違点は設計事項程度である。
したがって、本件発明3は、甲2発明であり、特許法29条1項3号の規定に該当する。
また、本件発明3は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである
よって、本件発明3に係る特許は、特許法29条1項または2項に違反してされたものであり、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。
4 甲3を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
(ア)構成Aについて
甲3発明において、甲3Aより「洗浄水を導入し流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器である水洗便器1」である構成は、本件発明1において、「洗浄水により洗浄して汚物を排出する洗い落とし式水洗大便器」である構成Aに、相当する。
(イ)構成B及び構成Eについて
甲3発明において、甲3Cより備える「ボウル部8」は、本件発明1において、構成Eに係る「ボウル部」に、相当する。
甲3発明において、甲3Cより、「ボウル部8」が「ボウル形状の汚物受け面16」を備える構成は、本件発明1において、構成Eに係る「ボウル部」が、構成Bに係る「汚物を受ける汚物受け面」を備える構成に、相当する。
(ウ)構成C及び構成Eについて
甲3発明において、甲3Cより、「ボウル部8」が「汚物受け面16」を備えたうえで、「上縁に位置するリム部18」を備える構成は、「リム部18」が「汚物受け面16」より上部となることが明らかであることを踏まえると、本件発明1において、構成Eに係る「ボウル部」が、構成Cに係る「この汚物受け面の上部に形成されたリム部」を備える構成に、相当する。
(エ)構成D及び構成Eについて
甲3発明において、甲3C及び甲3Gより、「ボウル部8」が「汚物受け面16の下方に形成された凹部20」を備え、「凹部20の中」に「溜水水位Wを有」する「溜水」が形成される構成は、本件発明1において、構成Eに係る「ボウル部」が、構成Dに係る「上記汚物受け面の下部に形成されその内部に溜水面が形成されるツボ部」を備える構成に、相当する。
(オ)構成Fについて
甲3発明において、甲3Dより、「リム部18の内周面に形成された、洗浄水を吐水する第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24」は、「同一方向(反時計回りの方向)に旋回する旋回流を形成するようになって」いるから、「第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24」の吐水の方向が「リム部18の内周面」に沿う方向となることは明らかであることを踏まえると、本件発明1において、構成Fに係る「上記リム部に沿って洗浄水を吐水する1つ又は複数の吐水口」に、相当する。
(カ)構成Gについて
甲3発明において、甲3Bより、「ボウル部8の後方下部に汚物を排出するための排水管路12が形成されて」いる構成は、本件発明1において、「上記ボウル部の底部に接続された排水管路」を有する構成Gに、相当する。
(キ)構成Hについて
甲3発明において、甲3Kより、「第1リム吐水口22から吐水された洗浄水」が、「ボウル部8のリム部18の内周面18aに形成された導水路30に沿って、まず、前方に向けて流れ、ボウル部8の前方端を通過した後は、後方に向けて流れ、第1リム吐水口22から吐水され導水路30に沿って流れる洗浄水M1の相当量は、ボウル部8の前方側より排水管路12の導入管路32の入口32aに向けて流れる大流量の主流M11を形成し、第1リム吐水口22から吐水された洗浄水M1の一部は、引き続き、導水路30を流れ、流れM12となり、流れが下方に向けられ、凹部20に向けて流下」する構成は、本件発明1の構成Hのうち、「上記吐水口からリム部に沿って吐水された洗浄水の主流」が「汚物受け面の前方側を旋回する前方主流」を「形成し、この汚物受け面を旋回して溜水面へ流入」する構成に、相当する。
甲3発明において、甲3Lより、「第2リム吐水口24から吐水された洗浄水の主流M2」が、「汚物受け面16の後方側汚物受け面16bを流れ、主流M2の一部は、後方側凹部40を通過するとき、後方側凹部40により流れの方向が下方に向けられ、凹部20に向けて流下する流れM21となり、さらに、主流M2の一部は、導水路30を流れる主流M22となり、流れが下方に向けられ、凹部20に向けて流下する」構成は、本件発明1の構成Hのうち、「上記吐水口からリム部に沿って吐水された洗浄水の主流」が「汚物受け面の後方側を旋回する後方主流を形成し、この汚物受け面を旋回して溜水面へ流入」する構成に、相当する。
したがって、甲3発明は、本件発明1の構成Hに相当する構成を有する。
(ク)構成Iについて
甲3発明において、甲3Hより有する、「汚物受け面16の後方側汚物受け面16bの凹部20の後方側の領域」は、本件発明1における構成Iのうち、「上記ボウル部の汚物受け面の後方面」に、相当する。
甲3発明において、甲3Hより有する、「汚物受け面16の後方側汚物受け面16bの凹部20の後方側の領域」に形成された「後方側凹部40」は、本件発明1における構成Iのうち、「上記ボウル部の汚物受け面の後方面」が備える「凹部」に、相当する。
甲3発明において、甲3Iより、「後方側汚物受け面16bの後方側凹部40」について、「リム部18の上面からの距離(深さ)H」が、「便器本体2の前後方向に延びる中心線CLの位置であるG位置」で「最大」となり、「後方側汚物受け面16bの前方領域であるA位置及びM位置」で「最小」となる構成は、「後方側汚物受け面16bの前方領域であるA位置及びM位置」より若干前の「汚物受け面16」に比較して、「後方側凹部40」内の「深さ」が概して深くなることが明らかであることを踏まえると、本件発明1における構成Iのうち、「上記ボウル部の汚物受け面の後方面」の「凹部」が、「汚物受け面の左右側面よりも深く凹んだ」構成に、相当する。
甲3発明において、甲3Hより、「後方側凹部40の側面40a,40bは、凹部20の壁面38ともほぼ同一面で連続して形成されて」いる構成は、「後方側凹部40」の下端より高い位置にある「側面40a,40b」に対して、「凹部20の壁面38」が「同一面で連続」するからには、「側面40a、40b」と「連続」する「凹部20の壁面38」の上端に比較して、「後方側凹部40」の下端が低い位置となることが明らかであることを踏まえると、本件発明1における構成Iのうち、「上記ボウル部の汚物受け面」について、「この後方面の下端は、ツボ部の左右側面の上端よりも下方まで延び」る構成に、相当する。
したがって、甲3発明は、本件発明1の構成Iに相当する構成を有する。
(ケ)構成Jについて
甲3発明において、甲3Jより、「後方側凹部40は、上下断面で凹形状であり、上下断面で凸形状の部分を経て、凹部20の後ろ側の壁面38に至」る構成は、本件発明1において、「上記ボウル部の汚物受け面の後方面の凹部は、上下方向に沿って凹形状に形成され、この後方面の凹部は、上記後方面の下端に相当する凸形状の接続部によりツボ部の後面に接続されている」構成Jに、相当する。
(コ)構成Kについて
甲3発明において、甲3Mより、「洗い落し式便器である水洗便器1」である構成は、本件発明1において、「洗い落とし式水洗大便器」である構成Kに、相当する。
(サ)小括
上記(ア)~(コ)より、本件発明1と甲3発明とは、全ての点で一致する。
イ 判断
上記アのとおり、本件発明1と甲3発明とは、全ての点で一致する。
また、仮に若干の相違点があったとしても、当該相違点は設計事項程度である。
したがって、本件発明1は、甲3発明であり、特許法29条1項3号の規定に該当する。
また、本件発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法29条1項または2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2は、本件発明1の構成を有し、さらに構成Lを付加したものである。
(ア)構成Lについて
本件発明2において付加された構成Lについて、対比する。
甲3発明において、甲3Hより、「凹部20の後方側の領域」に形成された「後方側凹部40」について、「後方側凹部40の側面40a,40bは、凹部20の壁面38ともほぼ同一面で連続して形成されて」いるから、「後方側凹部40の側面40a,40b」は「凹部20の後方側」の「凹部20の壁面38」とほぼ同じ左右幅であり、「凹部20」の左右幅が最大となる箇所の最大横幅より狭くなることが自然であると解される。
したがって、甲3発明は、本件発明2において、「上記ボウル部の汚物受け面の後方面の凹部は、その横方向幅が、上記ツボ部の最大横方向幅よりも狭く形成されている」構成Lに、相当する構成を有している。
(イ)その余の構成について
本件発明2が有する本件発明1の構成については、上記(1)に対比・判断したとおりである。
(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)のとおり、甲3発明は、本件発明2の全ての構成に相当する構成を有する。
イ 判断
上記アのとおり、本件発明2と甲3発明とは、全ての点で一致する。
また、仮に若干の相違点があったとしても、当該相違点は設計事項程度である。
したがって、本件発明2は、甲3発明であり、特許法29条1項3号の規定に該当する。
また、本件発明2は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明2に係る特許は、特許法29条1項または2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。
(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2の構成を有し、さらに構成Mを付加したものである。
(ア)構成Mについて
本件発明3において付加された構成Mについて、対比する。
甲3発明において、甲3Eより、「排水管路12の導入管路32は、凹部20の底面36と滑らかな連続湾曲面として繋がって」おり、「導入管路32の径は、凹部20の径より小さ」いところ、より径が小さい「導入管路32」へとスムーズにつながるよう、「凹部20」の後部について、曲率半径は下端部に向かって小さくなることが、明らかである。
甲3発明において、「凹部20」の後部について、曲率半径は下端部に向かって小さくなることが明らかである構成は、本件発明3において、「上記ツボ部の後面の上方位置の曲率半径R1と、下方位置の曲率半径R2では、下方位置の曲率半径R2の方が上方位置の曲率半径R1より小さくなるように形成されている」構成Mに、相当する。
(イ)その余の構成について
本件発明3が有する本件発明1または本件発明2の構成については、上記(1)及び(2)に対比・判断したとおりである。
(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)のとおり、甲3発明は、本件発明3の全ての構成に相当する構成を有する。
イ 判断
上記アのとおり、本件発明3と甲3発明とは、全ての点で一致する。
また、仮に若干の相違点があったとしても、当該相違点は設計事項程度である。
したがって、本件発明3は、甲3発明であり、特許法29条1項3号の規定に該当する。
また、本件発明3は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明3に係る特許は、特許法29条1項または2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。
5 特許権者の意見書における主張について
(1)特許権者の意見書による主張
特許権者は、令和6年11月25日提出の意見書において、同日にされた訂正の請求を根拠として、同訂正後の請求項2及び3に係る特許は取り消されない旨を主張している。
また特許権者は、令和7年3月31日提出の意見書において、令和6年11月25にされた訂正の請求は、認められるべき旨を主張している。
また特許権者は、令和7年6月24日提出の意見書において、同日にされた訂正の請求を根拠として、同訂正後の請求項2及び3に係る特許は取り消されない旨を主張している。
また特許権者は、令和7年12月1日提出の意見書において、同日にされた本件訂正の請求を根拠として、本件訂正後の請求項2及び3に係る特許は取り消されない旨を主張している。
そして特許権者は、令和8年1月15日提出の意見書において、「第1」として本件訂正が認められるべき旨を主張するとともに、「第2 令和7年6月24日付け訂正請求書により訂正された請求項2に係る発明(本件発明2)について」(第4頁11行~第15頁第4行)において、本件訂正が認められなかった場合にも、令和7年6月24日付け訂正請求書により訂正された請求項2に係る発明及び請求項3に係る発明は取り消されない旨を主張している。
(2)上記主張についての検討
令和6年11月25にされた訂正の請求、及び令和7年6月24日にされた訂正の請求は、同年12月1日に新たな訂正の請求として本件訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。
そして、上記第2のとおり、本件訂正は認められない。
したがって、上記(1)において、本件特許が取り消されるべきでない旨をいう特許権者の主張は、特許法120条の5第7項により取り下げられたものとみなされる訂正の請求、または上記第2のとおり認められない本件訂正の請求を根拠とした主張であり、本件発明1~3に係る特許が取り消されるべきか否かについて、上記1~4の判断を左右するものではない。
6 まとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3に係る特許は、甲1を主たる証拠とした拡大先願の取消理由1のとおり、特許法29条の2の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明1及び本件発明3に係る特許は、甲2を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如の取消理由2のとおり、特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明1ないし3に係る特許は、甲3を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如の取消理由3のとおり、特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
第6 結び
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700637