特許異議申立
2024-700882
金属セラミック基材を製造するための方法及び炉
- 審判番号
- 2024-700882
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-093572
- 登録番号
- 7449981
- 請求日
- 2024年09月13日
- 審決日
- 2025年03月31日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ヘレーウス エレクトロニクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
- 【権利者代理人】林 一好
- 【異議申立人】安藤 宏
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 猛
- 審判官 相澤 啓祐
- 審判官 佐藤 陽一
- 分類
- P1651.113-Y (B32B) / P1651.121-Y (B32B) / P1651.536-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7449981号発明「金属セラミック基材を製造するための方法及び炉」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7449981号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7449981号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和 4年 6月 9日(パリ条約による優先権主張 2021年 6月29日(EP)欧州特許庁)の出願(特願2022-93572号。以下「本願」という。)であって、令和 6年 3月 6日にその特許権の設定登録がなされ、同年 3月14日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和 6年 9月13日に、請求項1~10(全請求項)に係る特許に対し、特許異議申立人である安藤 宏(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~10に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1~10に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」といい、これらを総称して「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
「【請求項1】
金属セラミック基材を製造するための方法であって、
a)積層体を準備するステップであって、前記積層体が、
a1)セラミック体と、
a2)金属箔と、
a3)前記セラミック体及び前記金属箔と接触したはんだ材料であって、前記はんだ材料が、
(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と、
(ii)700℃未満の融点を有する金属と、
(iii)活性金属とを含む、はんだ材料と
を含有する、積層体を準備するステップと、
b)前記積層体を加熱するステップであって、前記積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過する、前記積層体を加熱するステップと
を含み、
銀の割合が、前記はんだ材料の総金属重量に対して、3.0重量パーセント未満であり、
前記少なくとも700℃の融点を有する金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、50~90重量パーセント、前記700℃未満の融点を有する金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、5~45重量パーセント、前記活性金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、1~20重量パーセントであり、
前記積層体を加熱するステップで加熱が起こり、前記はんだ材料による前記セラミック体と前記金属箔との間の一体的接合が形成される、方法。
【請求項2】
前記セラミック体のセラミックが、窒化アルミニウムセラミック、窒化ケイ素セラミック、及び酸化アルミニウムセラミックからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属箔の前記金属が、銅であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも700℃の融点を有する前記金属が、銅であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
700℃未満の融点を有する前記金属が、錫、ビスマス、インジウム、ガリウム、亜鉛、アンチモン、及びマグネシウムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記活性金属が、ハフニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、及びセリウムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
非酸化性雰囲気が、前記加熱ゾーン内に存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
窒素雰囲気が、前記加熱ゾーン内に存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記積層体がピーク温度-50℃に少なくとも相当する温度に曝される持続期間を指すピーク温度加熱持続期間が、30分以下であり、前記ピーク温度は、積層体において測定される最大温度であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記積層体が、100℃の温度から開始して、ピーク温度に到達するために必要とする期間を示す昇温持続期間が、60分以下であり、前記ピーク温度は、積層体において測定される最大温度であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第14号証を提出し、以下の申立理由1~5により、本件特許の請求項1~10に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
1 申立理由1(明確性要件)
本件発明1~10については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(サポート要件)
本件発明1~10については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(実施可能要件)
本件発明1~10については、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
4 申立理由4(新規性、進歩性)
(1)本件発明1~7は、甲第1号証に記載された発明である。
(2)本件発明1~7は、甲第1号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明8は、甲第1号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5、7、9、11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
以上のとおり、これらの発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
5 申立理由5(新規性、進歩性)
(1)本件発明1~7は、甲第12号証に記載された発明である。
(2)本件発明1~7は、甲第12号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第12号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明8は、甲第12号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第12号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明9は、甲第12号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、あるいは、甲第12号証に記載された発明及び甲第2~11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明10は、甲第12号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、あるいは、甲第12号証に記載された発明及び甲第2~5、7、9、11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
以上のとおり、これらの発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
6 証拠方法
甲第1号証:特表2020-527461号公報
甲第2号証:特開平3-290378号公報
甲第3号証:国際公開第2018/199060号
甲第4号証:特開平7-187839号公報
甲第5号証:特開2004-115310号公報
甲第6号証:特開2003-55058号公報
甲第7号証:特開平5-32463号公報
甲第8号証:特開2002-274964号公報
甲第9号証:特開平11-157952号公報
甲第10号証:特開平10-245267号公報
甲第11号証:特開平2-196074号公報
甲第12号証:特開2003-283064号公報
甲第13号証:日本金属学会編、「改訂2版 金属データブック」、丸善株式会社、昭和59年 1月30日、p.10、11、24、25
甲第14号証:田中俊一郎、「活性金属法によるセラミックスの接合」、溶接技術、1989年9月号、p.84~89
第4 当審における判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1(明確性要件)
(1)「加熱ゾーンを通過する」について
ア 申立人は、特許異議申立書の第48ページ第26行~第49ページ第19行において、概略以下のように主張する。
本件特許発明1では、積層体を加熱するステップにおいて「加熱ゾーンを通過する」ことが発明特定事項とされている。
本技術分野における当業者の技術常識を踏まえれば、加熱によりセラミック体と金属箔との間の接合を形成する場合に、積層体を非加熱の領域から加熱された領域に積層体を搬送することは必須であるから、「加熱ゾーンを通過する」ことも必須である。
そうすると、「加熱ゾーンを通過する」ことは、例えば、本件明細書において比較例で用いられるバッチ炉も含まれることになる。
したがって、その技術的意味や技術的範囲が明細書を考慮しても明確でない、「加熱ゾーンを通過する」との記載は第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。この点、請求項1を引用する請求項2~10も同様である。
イ(ア)以下、検討すると、「通過」という用語の意味は、「ある場所を通り過ぎること」である(デジタル大辞泉)。例えば、「通過駅」とは、「列車が停車しないで、通り過ぎて行く駅」を意味するものである(精選版 日本国語大辞典)。
そうすると、「積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過する」の意味は、積層体が加熱のための加熱ゾーンに停止することなく、加熱ゾーンを通り過ぎることであると理解できる。
(イ)この点、本件明細書には、以下の記載がある。なお、下線は強調のために当合議体が付与した(以降同様)。
a 「好ましい実施形態によれば、このために、積層体と加熱ゾーンとの相対的運動が起こり、ここで、積層体及び加熱ゾーンは、最初に、互いへ向かう相対的運動を実行し、通過後に、互いから離れる相対的運動を実行する。」(段落【0043】)
b 「積層体が加熱ゾーンを通過する場合、加熱ゾーン内の温度、及び積層体が加熱ゾーンを通過する速度は、理想的には、積層体の構造及び寸法に一致することができ、このため、セラミック体と金属箔との間の一体的接合の形成のために必要なエネルギー入力のみが起こる。」(段落【0046】)
c 「好ましい実施形態によれば、積層体は、連続炉において加熱され、ここで、積層体は、加熱中に、連続炉の加熱ゾーンを通過する。」(段落【0049】)
d 「比較例は、実施例1と類似して実施されたが、積層体は、連続炉の代わりに、バッチ炉において加熱された。このために、積層体は、バッチ炉内に置かれ、加熱された。」(段落【0072】)
上記a~cの記載によれば、好ましい実施形態では、積層体は、加熱中に、連続炉の加熱ゾーンを通過するものであり、その際、積層体及び加熱ゾーンは、最初に、互いへ向かう相対的運動を実行し、通過後に、互いから離れる相対的運動を実行するものである。そして、積層体が加熱ゾーンを通過する際、積層体は速度を有しているから、加熱ゾーンの中で停止しないと解される。
また、上記dの記載によれば、積層体を、連続炉の代わりに、バッチ炉において加熱する態様は比較例とされており、バッチ炉において加熱する態様は、「加熱ゾーンを通過する」態様ではないと理解できる。
そうすると、本件明細書の記載を参酌しても、上記(ア)と同様、「積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過する」の意味は、積層体が加熱のための加熱ゾーンに停止することなく、加熱ゾーンを通り過ぎることであると理解できる。
ウ 以上によれば、「加熱ゾーンを通過する」の用語の意味は、それ自体明確であり、本件明細書の記載を参酌しても、矛盾を生じるものでもないから、この点について、本件特許の請求項1~10の記載は明確である
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(2)「ピーク温度加熱持続期間」について
ア 申立人は、特許異議申立書の第49ページ第20行~第50ページ第1行において、概略以下のように主張する。
本件特許発明9では、「少なくともピーク温度-50℃に相当する温度に曝される持続期間を指すピーク温度加熱持続期間」が発明特定事項とされている。また、本件特許明細書【0056】には、「ピーク温度加熱持続期間とは、好ましくは、積層体が、加熱中に、ピーク温度-50℃に少なくとも相当する温度に曝される期間」の記載があり、この中の「加熱」について、昇温することを意味するのか、室温よりも高温とすることを意味するのか不明である。
イ 以下、検討すると、本件特許の請求項9の記載における、「ピーク温度加熱持続期間」は、「少なくともピーク温度-50℃に相当する温度に曝される持続期間を指す」から、「ピーク温度加熱持続期間」が、「少なくともピーク温度-50℃に相当する温度」である限り、昇温時のみならず降温時も含むことは明らかである。
ウ 以上によれば、本件特許の請求項9の記載は明確である。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)申立理由1(明確性要件)のまとめ
以上のとおり、本件発明1~10について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。
したがって、申立理由1(明確性要件)によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(サポート要件)
(1)ア 本件発明が解決しようとする課題は、「増加した熱及び電流伝導率を有する金属セラミック基材が、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、活性金属とを含有するはんだ材料を使用して得られ得る方法を提供すること」であると認められる(段落【0007】)。
イ 一方、本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
(ア)「銀の移行に関連する問題を回避するために、銀を含まないはんだを、金属箔をセラミック体に結合するために使用することが有利であり得る。これらのはんだは、例えば、高融点金属(特に、銅)、低融点金属(ビスマス、インジウム、又は錫など)、及び活性金属(チタンなど)をベースにする。このような技法は、例えば、独国特許出願公開第102017114893(A1)号に提案されている。」(段落【0004】)
(イ)「パワーエレクトロニクスの分野における着実に増加する要求に起因して、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、活性金属とを含有するはんだ材料を使用して製造された金属セラミック基材の熱及び電流伝導率を更に改善する必要性の増大もある。」(段落【0005】)
(ウ)「金属セラミック基材の熱及び電流伝導率を増加させるための以前の手法は、金属層とセラミック層との間の結合層の組成を変化させることに注目してきた。しかしながら、結合層の組成が変更されないままである場合、これは、いくつかの理由から、有利であり得る。したがって、例えば、結合層の所与の組成は、理想的には、熱及び電流伝導率以外の技術的要件を満たすことができる、又は生成するのに容易であることができる、又は更には、より費用効果があることができる。したがって、好適な方法の方策によって、結合層の所与の組成で、金属セラミック基材の熱及び電流伝導率を改善することが有利である。」(段落【0006】)
(エ)「好ましい実施形態によれば、少なくとも700℃の融点を有する金属の割合は、はんだ材料の総金属重量に対して、50~90重量パーセント、より好ましくは55~90重量パーセント、特に好ましくは65~90重量パーセント、非常に特に好ましくは70~90重量パーセントである。更に好ましい実施形態によれば、700℃未満の融点を有する金属の割合は、はんだ材料の総金属重量に対して、5~45重量パーセント、より好ましくは5~40重量パーセント、特に好ましくは5~30重量パーセント、非常に特に好ましくは5~25重量パーセントである。更に別の好ましい実施形態によれば、活性金属の割合は、はんだ材料の総金属重量に対して、1~20重量パーセント、より好ましくは1~15重量パーセント、特に好ましくは1~12重量パーセント、非常に特に好ましくは1~10重量パーセントである。
はんだ材料は、好ましくは、銀を含まない、又は低銀である。したがって、銀の比は、はんだ材料の総金属重量に対して、好ましくは3.0重量パーセント未満、特に好ましくは1.0重量パーセント未満、非常に特に好ましくは0.2重量パーセント未満である。銀の非存在又は少量の銀のみの存在は、完成した金属セラミック基材内の結合層の縁部における銀の移行が回避され得る又は低減され得ることを意味する。驚くべきことに、本発明による方法はまた、このような低減された銀含有量で、金属セラミック基材の電流及び熱伝導率を改善することができることが見出された。これは、はんだのベースとしての銀の置き換えに起因して、このような金属セラミック基材が、実際には、他の材料特性を有する独立した結合クラスをもたらし、これが、部分的に、他のはんだ構成要素及び修正された接合条件に関する適応を必要とすることがあることにおいて、驚くべきことである。」(段落【0020】、【0021】)
(オ)「驚くべきことに、積層体が、加熱のための加熱ゾーンを通過するときに、改善された熱及び電流伝導率を有する金属セラミック基材が得られ得ることが見出された。」(段落【0045】)
(カ)「理論に拘束されないが、これは、エネルギー入力の目標制御が加熱ゾーンの通過によって達成され得るということに起因し得る。積層体が加熱ゾーンを通過する場合、加熱ゾーン内の温度、及び積層体が加熱ゾーンを通過する速度は、理想的には、積層体の構造及び寸法に一致することができ、このため、セラミック体と金属箔との間の一体的接合の形成のために必要なエネルギー入力のみが起こる。これは、過度のエネルギー入力がたびたび、金属箔内への少なくとも700℃の融点を有する金属及び700℃未満の融点を有する金属の増加した拡散につながり、これが最終的に、完成した金属セラミック基材における電流及び熱伝導率の減少を生じさせ得ることを防止する。更に、温度及び加熱ゾーン内に含まれたガス(例えば、不活性ガス)の均一な分配が、加熱ゾーンの通過の際に、確実にされる。結果として、複数の金属セラミック基材が本発明による方法を使用して製造されたときに、(例えば、バッチ炉を使用する)従来の方法と比較して、製造された金属セラミック基材の品質のより低いばらつきが発生する。これに関して、加熱ゾーンの通過による積層体の加熱は、(例えば、バッチ炉における)静的な加熱よりも有利であることが証明された。」(段落【0046】)
(キ)「実施例では、金属セラミック基材が、様々な条件下で製造された。それぞれの場合において、セラミック体と、金属箔と、セラミック体及び金属箔と接触したはんだ材料とを含有する積層体が、準備され、次いで、加熱された。はんだ材料は、銅、錫、及びチタンを金属として含有する標準的なペーストであった。次いで、電流及び熱伝導率が、定性的に評価された。同等の結果(comparable results)がまた、他の材料の組み合わせで達成され得る。」(段落【0067】)
(ク)「実施例1
金属セラミック基材の製造のために、最初に、31.67重量パーセントのSnCu0.7粉末、7.24重量パーセントの水素化チタン、及び、Texanolを含有する9.50重量パーセントの有機賦形剤が、35Hzで20分間、スタンドミキサーにおいて混合された。次いで、51.59重量パーセントの銅粉末が、徐々に(in increments)添加された。このようにして生成された混合物は、均質なペーストが得られるまで高速で撹拌された。
このようにして生成されたペーストを使用して、セラミック体は、セラミック体の対向する表面上で、銅箔に両側上で接合された。このために、(Tosiba Materialsから入手可能な)寸法177.8×139.7×0.32mmを有し、同一の前面及び後面特性(front and rear properties)を有するセラミック体が、それぞれの場合において使用された。ペーストは、寸法137×175mm2の領域内のこのようなセラミック体の後側上に、165メッシュスクリーンによってスクリーン印刷され、125℃で15分間予備乾燥を受けた。予備乾燥後のペーストの厚さは、35±5μmであった。次いで、このようにして生成された配置(arrangement)は、反転され、ペーストは、同様に、セラミック体の前側上に印刷され、予備乾燥を受けた。次いで、ペーストが両側上に提供されたセラミックには、両側上で、99.99%の純度及び174×137×0.3mmの寸法を有する無酸素高導電性銅から作製された銅箔が提供されて、銅箔-予備乾燥済みペースト-セラミック-予備乾燥済みペースト-銅箔の構造を有する積層体が得られた。
次いで、積層体は、連続炉において加熱された。このために、最初に、グラファイト箔が適用された炭化ケイ素板が、連続炉のコンベヤチェーン上に置かれた。積層体は、グラファイト箔上に置かれ、次いで、該積層体は、更なるグラファイト箔で覆われ、該積層体には、更なる炭化ケイ素板(重量=600g)で重みがかけられた。その後、構造体は、コンベヤチェーン上で連続炉の加熱ゾーンを通過して運搬された。(Temperatur Messelemente Hettstedt GmbH社製のタイプK熱電対で、積層体において測定された)ピーク温度は、935℃であった。次いで、このようにして得られた金属セラミック基材は、室温に冷却されて、金属セラミック基材が得られ、金属セラミック基材は、両側上で結合層により銅層に結合されたセラミック層を含有した。」(段落【0068】~【0070】)
(ケ)「実施例2
実施例2は、実施例1に類似して実施されたが、(Temparatur Messelemente Hettstedt GmbH社製のタイプK熱電対を使用して、積層体において測定された)ピーク温度は、910℃であった。」(段落【0071】)
(コ)「比較例
比較例は、実施例1と類似して実施されたが、積層体は、連続炉の代わりに、バッチ炉において加熱された。このために、積層体は、バッチ炉内に置かれ、加熱された。(Temperatur Messelemente Hettstedt GmbH社製のタイプK熱電対で、積層体において測定された)ピーク温度は、910℃であった。」(段落【0072】)
(サ)「次いで、実施例において得られた金属セラミック基材の熱及び電流伝導率は、以下のように評価された。
【表1】
[図:0001422451000001.jpg]
金属セラミック基材の伝導率は、本発明による方法が使用されたときに、著明に改善され得ることが見出された。理論に拘束されないが、これは、加熱ゾーンの一時的な通過のみに起因して、従来の方法とは対照的に、本発明による方法は、正確な目標エネルギー入力を可能し、該エネルギー入力は、一方では、一体的接合の形成を確実にするのに十分に高いが、他方では、はんだ材料から金属箔内への金属の深い浸透を防止することに起因し得る。したがって、700℃未満の融点を有する金属(実施例において、錫)が、本発明による方法では、従来の方法による場合よりも金属箔内に深く浸透しないことを示すことが可能であった。実施例1及び実施例2において得られた金属セラミック基材について、深さ方向分析(depth profile analysis)は、銅箔内への錫の拡散が、比較例の金属セラミック基材と比較して、30%超で低減されたことを示した。したがって、実施例1及び実施例2において、完成した金属セラミック基材の伝導率は、より少なく損なわれている。」(段落【0073】~【0075】)
ウ そして、上記イの発明の詳細な説明の記載によれば、
はんだ材料を、
(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と、
(ii)700℃未満の融点を有する金属と、
(iii)活性金属とを含む、はんだ材料であって、
銀の割合が、前記はんだ材料の総金属重量に対して、3.0重量パーセント未満であり、
前記少なくとも700℃の融点を有する金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、50~90重量パーセント、前記700℃未満の融点を有する金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、5~45重量パーセント、前記活性金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、1~20重量パーセントであるはんだ材料とし(上記イ(ア)、(イ)、(エ)、(ク)、(ケ))、
セラミック体と、金属箔と、セラミック体及び金属箔と接触したはんだ材料とを含有する積層体を、準備し(上記イ(キ))、
前記積層体を加熱するステップであって、前記積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過する、前記積層体を加熱するステップを含むことで(上記イ(オ)、(カ)、(ク)、(コ))、
前記積層体を加熱するステップで加熱が起こり、前記はんだ材料による前記セラミック体と前記金属箔との間の一体的接合が形成され、本件発明の課題が解決できることが認識できる(上記イ(ウ)、(カ)、(サ))。
エ そうすると、上記ウの事項の全てを発明特定事項として備える本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件発明の課題を解決できることが認識できる。
(2)「はんだ材料」について
ア 申立人は、特許異議申立書の第44ページ第18行~第46ページ第14行において、概略以下のように主張する。
対象セラミックスに応じて、特定のはんだ材料の系でしかはんだ材料として成立し得ないことは技術常識であり、本件特許明細書では「銅、錫、及びチタンを金属として含有する標準的なペースト」からなる「はんだ材料」として、「31.67重量パーセントのSnCu0.7粉末、7.24重量パーセントの水素化チタン、及び、Texanolを含有する9.50重量パーセントの有機賦形剤が、35Hzで20分間、スタンドミキサーにおいて混合された。次いで、51.59重量パーセントの銅粉末が、徐々に(in increments)添加された。このようにして生成された混合物」から生成されたペーストの一例でのみ、本件特許発明の課題を解決できたことは当業者には理解される。しかしながら、対象セラミックの入手先がメーカだけ単に開示されただけであって、対象セラミックの限定もなく、あらゆる「(i)少なくとも700℃の融点を有する金属」、「(ii)700℃未満の融点を有する金属」、「(iii)活性金属」の組み合わせにおいても、本件特許発明の課題を解決できるとは、当業者には到底理解不可能である。仮に本件特許明細書における考察が正しいとしても、当業者が理解できることは少なくとも「(ii)700℃末満の融点を有する金属」が錫(Sn)であり、「(i)少なくとも700℃の融点を有する金属」が銅(Cu)であるから、銅薄膜への拡散が低減されたと理解する。なおこの場合、銅(Cu)と錫(Sn)と組み合わせ可能なはんだ材料の活性金属は、必然的に制限され、積層体及び半導体材料のあらゆる組み合わせにおいても、本件特許発明によって上記課題が解決できるとは理解不可能である。
したがって、本件特許発明1の範囲には課題を解決できない範囲が含まれるのであり、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載、技術常識により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
また、本件特許明細書では具体的なセラミック体が不明であり、請求項2であっても同様に、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
請求項1を引用する本件特許発明1~10についても同様である。
イ 以下、検討すると、上記(1)で述べたとおり、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。また、本件特許の請求項1の記載を引用する本件発明2~10についても同様である。
なお、「セラミックスの接合」(甲第14号証)の観点からみると、本件発明1~10は、実際に「前記積層体を加熱するステップで加熱が起こり、前記はんだ材料による前記セラミック体と前記金属箔との間の一体的接合が形成される」場合に特定された発明であるから、このような「一体的接合」が形成されない適用不可能なセラミック体とはんだ材料との組み合わせは含まれない。
ウ 以上によれば、本件特許の請求項1~10の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)「加熱ゾーンを通過する」について
ア 申立人は、特許異議申立書の第46ページ第15行~第47ページ下から第5行において、概略以下のように主張する。
請求項1に記載される「積層体が加熱ゾーンを通過する」ことは、字句どおりに解釈すれば、積層体を加熱雰囲気(加熱ゾーン)である連続炉内へ導入してその後回収するプロセスであっても、バッチ炉内へ導入してその後回収するプロセスであっても、いずれの態様も含まれる。
この点、本件特許明細書に記載される銅箔内への錫の拡散を抑制するためには、本件特許発明の課題を解決できたことを示す実施例1及び2に記載されるように「連続炉において加熱され」ることにより「加熱ゾーンの一時的な通過」を実現することが少なくとも必須の要件であると当業者は理解する。一方、他の条件を揃えたうえでバッチ炉を用いた比較例では、本件特許発明の課題を解決できていない。実施例以外の本件特許明細書にある記載から、あるいは技術常識を考慮したとしても「積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過」しさえすれば、本件特許発明の課題を解決することができると当業者が理解することは不可能である。
そうすると、本件特許発明においては、「連続炉において加熱され」ることにより「加熱ゾーンの一時的な通過」を実現された場合にはじめて、本件特許発明の課題が解決できたと当業者は理解する。
したがって、本件特許発明1の範囲には課題を解決できない範囲が含まれるのであり、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載、技術常識により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
請求項1を引用する本件特許発明1~10についても同様である。
イ 以下、検討すると、上記1(1)で述べたとおり、「積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過する」の意味は、積層体が加熱のための加熱ゾーンに停止することなく、加熱ゾーンを通り過ぎることであると理解できるから、「積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過する」ことに、積層体をバッチ炉内へ導入してその後回収するプロセスは含まれない。
よって、「積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過する」ことに、積層体をバッチ炉内へ導入してその後回収するプロセスが含まれることを前提とする、申立人の上記主張は採用できない。
そして、上記(1)で述べたとおり、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。また、本件特許の請求項1の記載を引用する本件発明2~10についても同様である。
ウ 以上によれば、本件特許の請求項1~10の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである。
(4)「加熱持続期間」について
ア 申立人は、特許異議申立書の第47ページ下から第4行~第48ページ第5行において、「本件特許発明9では「加熱持続期間」を発明特定事項としているが、本件特許明細書の実施例では、加熱に関して、ピーク温度のみが記載されており、当該加熱持続期間について何らの言及もされておらず、本件特許発明9によって課題を解決できたと認識することは不可能である。」と主張する。
イ 以下、検討すると、上記(1)で述べたとおり、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
一方、本件発明9は、本件特許の請求項1の記載を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、申立人の上記アの主張にかかわらず、本件発明9についても同様に、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
ウ 以上によれば、本件特許の請求項9の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(5)「昇温持続期間」について
ア 申立人は、特許異議申立書の第48ページ第6~15行において、「本件特許発明10では「昇温持続期間」を発明特定事項としているが、本件特許明細書の実施例では、加熱に関して、ピーク温度のみが記載されており、実施例では当該昇温持続期間について何らの言及もされておらず、本件特許発明10によって課題を解決できたと認識することは不可能である。」と主張する。
イ 以下、検討すると、上記(1)で述べたとおり、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
一方、本件発明10は、本件特許の請求項1の記載を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、申立人の上記アの主張にかかわらず、本件発明10についても同様に、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
ウ 以上によれば、本件特許の請求項10の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(6)申立理由2(サポート要件)のまとめ
以上のとおり、本件発明1~10について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって、申立理由2(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(実施可能要件)
(1)ア 申立人は、特許異議申立書の第50ページ第2行~第51ページ第19行において、概略以下のように主張する。
例えば本件特許発明1において、活性金属がチタンである場合、本件特許明細書の記載によれば、「少なくとも700℃の融点を有する金属」と、「700℃未満の融点を有する金属」との組み合わせとして「銅、ニッケル、タングステン、及びモリブデン」と、「錫、ビスマス、インジウム、ガリウム、亜鉛、アンチモン、及びマグネシウムからなる群」との中から任意に組み合わせ可能であると解されるが、このような組み合わせの中から実現可能な組み合わせは、甲第14号証によれば、本件特許明細書の実施例と実証された唯一の例と同様に、銅・錫・チタンの組み合わせのみである。これ以外の任意の金属元素の組み合わせによってはんだ材料を用意する時点で、当業者にとって過度の試行錯誤を要するのであり、本件特許発明1の生産方法を使用することは実施できない。
したがって、本件特許発明1は実施不可能な範囲を含むものであるから、本件特許発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
請求項1を引用する本件特許発明2~10についても同様である。
イ 以下検討すると、「セラミックスの接合」(甲第14号証)の観点からみると、本件発明1~10は、実際に「前記積層体を加熱するステップで加熱が起こり、前記はんだ材料による前記セラミック体と前記金属箔との間の一体的接合が形成される」場合に特定された発明であるから、そもそも、このような「一体的接合」が形成されない実施不可能な範囲を含むものではない。
また、申立人が述べるとおり、「甲第14号証によれば、はんだ材料に利用可能な金属元素の組み合わせは制限されることが技術常識である」から、当業者であれば、甲第14号証等の技術常識を踏まえ、実現可能な組み合わせを過度の試行錯誤を要することなく選択し、本件発明1~10を実施することができると認められる。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(2)申立理由3(実施可能要件)のまとめ
以上のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1~10について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
したがって、申立理由3(実施可能要件)によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由4(新規性、進歩性)
(1)甲第1号証に記載された発明
本願の優先日前に公知となった甲第1号証には、「活性ハンダ付けのためのハンダ付け材料、及び活性ハンダ付け方法」(発明の名称)に関する記載があり、その請求項1、9、11の記載を前提に、段落【0014】、【0026】の記載に着目すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
金属箔(3)をキャリア層(2)、詳細にはセラミックを含むキャリア層(2)に接着する方法であって、
実質的に、
-64重量%の銅、34重量%のマンガン、及び2重量%のチタン、
-64重量%の銅、34重量%のインジウム、及び2重量%のチタン、
-75重量%の銅、23重量%の錫、及び2重量%のチタン、
-69重量%の銅、13重量%の錫、16重量%のインジウム、及び2重量%のチタン、
-66重量%の銅、16重量%の錫、16重量%のマンガン、及び2重量%のチタン、
-66重量%の銅、16重量%のインジウム、16重量%のマンガン、及び2重量%のチタン、または、
-69重量%の銅、12重量%の錫、7重量%のマンガン、10重量%のインジウム、及び2重量%のチタンであり、
別途0.5重量%未満の不可避の不純物を有し、
かつ実質的に銀を含まない、ハンダ付け材料(1)が使用され、
接着は、1000℃未満のハンダ付け温度で実施される、方法。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における「キャリア層(2)、詳細にはセラミックを含むキャリア層(2)」、「金属箔(3)」及び「ハンダ付け材料(1)」は、それぞれ、本件発明1における、「セラミック体」、「金属箔」及び「はんだ材料」に相当する。
(イ)甲1発明の「ハンダ付け材料(1)」は、金属箔(3)をキャリア層(2)、詳細にはセラミックを含むキャリア層(2)に接着するために用いられるものであるから、二者を接着する前に、「ハンダ付け材料(1)」が二者と接触し、また、「ハンダ付け材料(1)」を含む三者は、積層体の状態にあると認められる。
そうすると、甲1発明は、「キャリア層(2)、詳細にはセラミックを含むキャリア層(2)」及び「金属箔(3)」と接触した「ハンダ付け材料(1)」を含有する積層体を準備するステップ(以下「甲1の積層体を準備するステップ」という。)を含むものであり、当該「甲1の積層体を準備するステップ」は、本件発明1おける、「a)積層体を準備するステップであって、前記積層体が、a1)セラミック体と、a2)金属箔と、a3)前記セラミック体及び前記金属箔と接触したはんだ材料」「とを含有する、積層体を準備するステップ」に相当する。
(ウ)甲1発明は、「甲1の積層体を準備するステップ」の後、1000℃未満のハンダ付け温度で接着を実施するものであるが、本件発明1も、積層体を準備するステップの後、「積層体を加熱するステップ」を有し、「前記積層体を加熱するステップで加熱が起こり、前記はんだ材料による前記セラミック体と前記金属箔との間の一体的接合が形成され」、その結果、「金属セラミック基材」が製造されるのであるから、甲1発明における「金属箔(3)をキャリア層(2)、詳細にはセラミックを含むキャリア層(2)に接着する方法であって、」「甲1の積層体を準備するステップ」を含み、「接着は、1000℃未満のハンダ付け温度で実施される、方法。」は、本件発明1における「金属セラミック基材を製造するための方法であって、」「a)積層体を準備するステップ」と、「b)前記積層体を加熱するステップと」「を含み、」「前記積層体を加熱するステップで加熱が起こり、前記はんだ材料による前記セラミック体と前記金属箔との間の一体的接合が形成される、方法。」に相当する。
(エ)甲1発明における、「ハンダ付け材料(1)」の選択肢の中で、
「実質的に、」
「-75重量%の銅、23重量%の錫、及び2重量%のチタン、」「であり、
別途0.5重量%未満の不可避の不純物を有し、
かつ実質的に銀を含まない、ハンダ付け材料(1)」に着目すると、銅及び錫の融解点は、甲第13号証を参照すると、それぞれ、約1356[K](=1083[℃])、約505[K](=232[℃])である。また、チタンは、本件発明1における、活性金属に含まれる元素である(本件明細書の段落【0019】)。
そうすると、甲1発明における「ハンダ付け材料(1)」が、
「実質的に、」
「-75重量%の銅、23重量%の錫、及び2重量%のチタン、」「であり、
別途0.5重量%未満の不可避の不純物を有し、
かつ実質的に銀を含まない、ハンダ付け材料(1)」であることは、
本件発明1における「はんだ材料」が、
「(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と、
(ii)700℃未満の融点を有する金属と、
(iii)活性金属とを含む、はんだ材料」であるとの条件を満たすものである。
(オ)甲第1号証には、「「実質的に銀を含まない」とは、詳細にはハンダ付け材料が、不純物の範囲の銀含有量、すなわちハンダ付け材料の0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、特に好ましくは0.05重量%未満の銀含有量を有することを意味する。」(段落【0012】)と記載されているから、甲1発明における、「ハンダ付け材料(1)」が、「実質的に銀を含まない」ことは、本件発明1における「はんだ材料」が、「銀の割合が、前記はんだ材料の総金属重量に対して、3.0重量パーセント未満であ」ることに相当する。
(カ)甲1発明における「ハンダ付け材料(1)」の化学組成が、
「実質的に、」
「-75重量%の銅、23重量%の錫、及び2重量%のチタン、」「であり、
別途0.5重量%未満の不可避の不純物を有し、
かつ実質的に銀を含まない、ハンダ付け材料(1)」であることは、
本件発明1における「はんだ材料」が、
「前記少なくとも700℃の融点を有する金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、50~90重量パーセント、前記700℃未満の融点を有する金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、5~45重量パーセント、前記活性金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、1~20重量パーセントであ」るとの条件を満たすものである。
(キ)以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「金属セラミック基材を製造するための方法であって、
a)積層体を準備するステップであって、前記積層体が、
a1)セラミック体と、
a2)金属箔と、
a3)前記セラミック体及び前記金属箔と接触したはんだ材料であって、前記はんだ材料が、
(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と、
(ii)700℃未満の融点を有する金属と、
(iii)活性金属とを含む、はんだ材料と
を含有する、積層体を準備するステップと、
b)前記積層体を加熱するステップと
を含み、
銀の割合が、前記はんだ材料の総金属重量に対して、3.0重量パーセント未満であり、
前記少なくとも700℃の融点を有する金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、50~90重量パーセント、前記700℃未満の融点を有する金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、5~45重量パーセント、前記活性金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、1~20重量パーセントであり、
前記積層体を加熱するステップで加熱が起こり、前記はんだ材料による前記セラミック体と前記金属箔との間の一体的接合が形成される、方法。」である点で一致するとともに、以下の点において相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「積層体を加熱するステップ」が、「積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過する」ステップであるのに対し、甲1発明は、「接着は、1000℃未満のハンダ付け温度で実施される」ものの、「キャリア層(2)、詳細にはセラミックを含むキャリア層(2)」及び「金属箔(3)」と接触した「ハンダ付け材料(1)」を含有する積層体が、「加熱のための加熱ゾーンを通過する」のか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点1について
a 相違点1が実質的な相違点であるかについて
(a)甲第1号証には、接着時の加熱において、「キャリア層(2)、詳細にはセラミックを含むキャリア層(2)」及び「金属箔(3)」と接触した「ハンダ付け材料(1)」を含有する積層体が、加熱のための加熱ゾーンを通過することが記載されていないから、甲1発明の接着時の加熱において、当該積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過するかは不明である。また、技術常識を考慮しても、甲1発明の接着時の加熱において、「キャリア層(2)、詳細にはセラミックを含むキャリア層(2)」及び「金属箔(3)」と接触した「ハンダ付け材料(1)」を含有する積層体が、加熱のための加熱ゾーンを通過するかは不明である。
よって、相違点1は、実質的な相違点である。
(b)申立人は、特許異議申立書の第34ページ第18~26行において、「甲第1号証には加熱ゾーンを通過するかどうかの加熱方式に関する明示的な記載はない。しかしながら、甲第1号証の例えば段落【0031】には、「接着は、例えば銅箔などの金属箔と、例えば窒化アルミニウムセラミックなどのセラミック基板との間で、約650~1000℃の温度で、ハンダ付け材料1を使用して形成される」と記載されている。このことから、甲1発明において、このような状況を実現するためには、加熱のための非加熱の領域から加熱された領域に積層体を搬送することは必須であるから、「加熱ゾーンを通過する」こともまた、必至である。したがって、上記一応の相違点は実質的な相違点とはいえない。」と主張する。
しかしながら、「搬送」とは、「運び送ること」を意味するに過ぎず、「通過すること」を含む概念ではないから、加熱された領域に積層体を搬送することが必須であるとしても、「加熱ゾーンを通過する」ことが必至であるとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
b 相違点1の容易想到性について
(a)甲第2~5号証には、以下の事項が記載されている。
・甲第2号証の記載事項
「[実施例]
第1表に示すように、セラミックス基板として99.5%、96%及び92%アルミナ焼結体とサファイア(アルミナ単結晶)を準備すると共に、接合される銅板として厚さ0.3mmのタフピッチ銅板(酸素濃度280ppm)と、比較材としての無酸素銅板(酸素濃度8ppm)とを予め用意した。
接合に使用される炉は、コンベア式の連続炉であり、昇温速度ならびに降温速度各々10、20、50及び100℃/分と変化させて試験を行った。」(第4ページ右上欄第17行~左下欄第6行)
・甲第3号証の記載事項
「実施例
[0031]実施例1
厚み0.32mmの窒化ケイ素基板に、Ag粉末(福田金属箔粉工業社製「AgC-BO」)88質量部及びCu粉末(福田金属箔粉工業社製「SRC-Cu-20」)12質量部の合計100質量部に対して、TiH2粉末(大阪チタニウムテクノロジーズ社製「TSH-350」)を2.5質量部、Sn粉末(三津和薬品化学社製「すず粉末(-325mesh)」)を4質量部混合したろう材ペーストを塗布量8mg/cm2となるようにロールコーターで塗布した。その後、窒化ケイ素基板の一方の面に回路形成用銅板を、他方の面に放熱板形成用銅板(いずれも厚み0.8mmの無酸素銅板)を重ね、窒素雰囲気下のローラー搬送式連続加熱炉(開口部寸法W500mm×H70mm、炉長3m)へ投入した。搬送速度は10cm/分とし、表1に示す接合条件となるようにヒーターの設定温度を調整して窒化ケイ素基板と銅板を接合した。接合した銅板にエッチングレジストを印刷し、塩化第二銅溶液でエッチングして回路パターンを形成した。さらにフッ化アンモニウム/過酸化水素溶液でろう材層、窒化物層を除去した。」
・甲第4号証の記載事項
「【0024】次に、上記ろう材ペーストの塗布層上に、厚さ0.3mmのリン脱酸銅板を配置し、これを窒素雰囲気中にて700℃×10分の条件下で、連続炉(トンネル炉)を用いて熱処理し、窒化アルミニウム基板と銅板とを接合させて、目的とする窒化アルミニウム-銅接合基板を得た。この接合基板を後述する特性評価に供した。」
・甲第5号証の記載事項
「【0028】
[実施例1]
図1に示すように、アルミナからなる敷板10上に、45mm×67mm×0.635mmの大きさの96%アルミナからなるセラミックス基板12を載せ、その上面に40mm×50mm×0.2mmの大きさの2Ni-12Mn-Cu合金からなるマンガニン板14を直接配置し、窒素ガスを流したベルト式トンネル炉に入れて、最高温度975℃で10分間加熱した後、冷却して金属-セラミックス接合体を得た。このようにして得られた金属-セラミックス接合体についてピール強度を測定したところ、ピール強度は5kg/cm以上であり、電子部材として十分に強固な接合が得られたことがわかった。また、マンガニン板の変質はなく、精密抵抗体として使用可能な電子部品を作製することができた。」
(b)上記(a)に摘記したとおり、金属-セラミック接合体の技術分野において、接合を連続炉で行うことは周知技術であると認められる(その一方で、接合をバッチ炉で行うことも周知技術である(甲第7号証の段落【0013】~【0015】、甲第11号証の実施例1等を参照)。)から、甲1発明において、接着を連続炉で行うこと、すなわち、接着の際に、「キャリア層(2)、詳細にはセラミックを含むキャリア層(2)」及び「金属箔(3)」と接触した「ハンダ付け材料(1)」を含有する積層体が、「加熱のための加熱ゾーンを通過する」ことについて、一応の動機付けがあるといえる。
しかしながら、本件発明1は、「積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過する」ことにより、セラミック体と金属箔との間の一体的接合の形成のために必要なエネルギー入力のみが起き、これが最終的に、完成した金属セラミック基材における電流及び熱伝導率の減少を生じさせ得ることを防止し、結果として、複数の金属セラミック基材が本発明による方法を使用して製造されたときに、(例えば、バッチ炉を使用する)従来の方法と比較して、製造された金属セラミック基材の品質のより低いばらつきが発生する(本件明細書の段落【0046】)という、当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。
そして、このような効果は、積層体を連続炉において加熱した実施例1、2と、バッチ炉において加熱した比較例との比較により裏付けられるものである(本件明細書の段落【0067】~【0075】、表1)。
以上のとおり、接合をバッチ炉で行うことも周知技術であること、また、「積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過する」本件発明1が、バッチ炉を使用する従来の方法と比較して、当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏することを考慮すれば、甲1発明の接着時の加熱において、「キャリア層(2)、詳細にはセラミックを含むキャリア層(2)」及び「金属箔(3)」と接触した「ハンダ付け材料(1)」を含有する積層体が、「加熱のための加熱ゾーンを通過する」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
(c)申立人は、特許異議申立書の第34ページ第27~29行において、「仮に「加熱ゾーンを通過する」ことが実質的な相違点であるとしても、ろう接法において積層体を加熱する際に加熱ゾーンを通過するようにすることは、当業者が適宜選択すべき設計的事項に過ぎない。」と主張する。
しかしながら、申立人は具体的な根拠を何ら示していないから。申立人の上記主張は採用できない。
また、申立人は、特許異議申立書の第34ページ第30~34行において、「本件特許発明において「加熱ゾーンを通過する」ことが、仮に連続炉を用いることを意味するのであっても、例えば、ろう接法においてコンベア式の連続加熱炉を用いることは甲第2号証のP.4左下欄4~5行目、甲第3号証の段落【0031】、甲第4号証の段落【0024】及び甲第5号証の段落【0028】に開示された周知技術である。」と主張する。
しかしながら、上記(b)で述べたとおりであるから、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件特許の請求項1の記載を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~7についても同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて、あるいは、第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明8について
ア 甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
「つぎに、セラミック体の銅回路形成面に56mm×32mm×0.3mmの無酸素銅板(酸素量10ppm)を、また放熱銅板形成面に56mm×32mm×0.15mmの無酸素銅板(酸素量10ppm)を接触配置してから、表1、表2に示される酸素濃度の窒素雰囲気下で、接合温度、接合時間、酸素濃度、昇温速度、降温速度、接合圧力を表1、表2のように変化させ接合を行った。そして、銅回路形成面には所定形状の回路パターンを、放熱銅板形成面に放熱板パターンを形成させるように、レジストインクをスクリーン印刷してから銅板と接合層のエッチングを行い、無電解Ni-Pメッキ(厚み3μm)を行って回路基板を作製した。」(段落【0024】)
「【表1】
[図:0001422451000002.jpg]
」(段落【0026】)
イ 一方、本件発明8は、本件特許の請求項1の記載を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、上記甲第6号証の記載を考慮しても、本件発明8についても同様に、甲第1号証に記載された発明に基いて、あるいは、第1号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明9について
ア(ア)甲第2号証には、上記(2)イ(ア)b(a)に摘記した事項が記載されている。
(イ)甲第6号証には、上記(4)アに摘記した事項が記載されている。
(ウ)また、甲第7~11号証には、以下の事項が記載されている。
a 甲第7号証の記載事項
「ろう接は5×10-5torrの真空中、圧力0.75MPa、加熱および冷却速度20℃/min、保持温度923K~1173K、保持時間10分間の条件で行った。このようにろう接した接合体を図1に示す治具で剪断強度を測定し、その結果を図2に示した。(段落【0015】)
b 甲第8号証の記載事項
「本発明においては、昇温開始から750℃までの昇温速度と、750℃から室温等の取り出し温度までの冷却速度も重要であり、いずれも300℃/時間以上とする。昇温速度が300℃/時間未満の速度であると、ろう材が酸化されてしまい、接合が不十分となる。冷却速度が300℃/時間未満であると、特に600℃以上の温度範囲ではろう材層中のAgやSn等の成分が銅板側へ拡散し、回路基板の信頼性が低下する。また、600℃よりも低温域において冷却速度が遅いことは生産性の向上につながらない。(段落【0016】)
c 甲第9号証の記載事項
「次いで、真空度0.1Torr以下の真空下、600℃以上の昇温を最大出力で行い(昇温速度は約20℃/分)、表1の条件で赤外線加熱をした後、600℃までを自然放冷(降温速度は約20℃/分)し、その後は2℃/分の速度で冷却して回路基板を製造した。(段落【0025】)
d 甲第10号証の記載事項
「次いで、一方の面には60mm×36mm×0.3mmの銅板を、また他方の面には60mm×36mm×0.15mmの銅板をそれぞれ接触配置してから、真空度1×10-5Torr以下の真空下、温度700℃からの速度を15℃/分として820℃まで昇温し、その温度で30分保持した後、2℃/分の降温速度で冷却して接合体を製造した。(段落【0024】)
e 甲第11号証の記載事項
「〔実施例1〕
金属部材として厚さ0.3mmの無酸素銅板を20mm角に切出したものを用意した。ろう材はシート状に厚さ50μmに圧延された活性金属ろう(GTEプロダクツコーポレーションのWESGOディビジョンにより製造された「クジル」)で銅27.5重量%、チタン2.0重量%、残部が銀からなる組成のものを前述のフィレット部の幅が0~約2.0mmになるようにそれぞれ所定のサイズに切断して使用した。セラミックス部材として、市販の96%アルミナからなり厚さ0.635mm、大きさ46×32mmのアルミナ基板を準備した。
次いで、銅板を活性金属ろうを介してアルミナ基板の両面に配置した後、熱処理炉で接合した。
接合に用いた炉は、油拡散ポンプを持った抵抗加熱式眞空加熱処理炉で、加熱、温度保持、冷却は1×10-4Torrの真空中で行なった。
炉の温度条件は20℃/分で昇温し、825℃で10分間保持後、20℃/分で降温し、炉内が外気温度と同等の温度になったところで接合体を取り出した。」(第3ページ右下欄第1行~第4ページ左上欄第1行)
イ 一方、本件発明9は、本件特許の請求項1の記載を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、上記甲第2、6~11号証の記載を考慮しても、本件発明9についても同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、あるいは、第1号証に記載された発明及び甲第2~11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)本件発明10について
ア(ア)甲第2号証には、上記(2)イ(ア)b(a)に摘記した事項が記載されている。
(イ)甲第7、9、11号証には、上記(5)ア(ウ)に摘記した事項が記載されている。
イ 一方、本件発明10は、本件特許の請求項1の記載を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、上記甲第2、7、9、11号証の記載を考慮しても、本件発明10についても同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、あるいは、第1号証に記載された発明及び第2~5、7、9、11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(7)申立理由4(新規性、進歩性)のまとめ
以上のとおり、本件発明1~7は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。本件発明1~7は、甲第1号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。本件発明8は、甲第1号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。本件発明9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。本件発明10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5、7、9、11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由4(新規性、進歩性)によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由5(新規性、進歩性)
(1)甲第12号証に記載された発明
本願の優先日前に公知となった甲第12号証には、「セラミック回路基板及びその製造方法」(発明の名称)に関する記載があり、その請求項3の記載を前提に、特に、実施例3に着目すると、次の発明(以下「甲12発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲12発明>
セラミック基板上に、厚さ0.40mmのCuを主成分とした金属回路板及び放熱板を、全質量100質量%に対して、18.0質量%Sn、3.0質量%Ti、及び残部Cu(79.0質量%)からなり、Agを含有しない金属組成となるろう材層を介して配置した後、1070℃×35分の活性ろう付けによって接合しその後、接合された金属回路板をパターン形成して所定の金属回路を形成し、次いで、該金属回路のパターン間に露出した上記ろう材及びセラミック基板の基材との反応によって形成された導電性の反応層を除去するセラミック回路基板の製造方法。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲12発明とを対比する。
(ア)甲12発明における「セラミック基板」及び「ろう材」は、それぞれ、本件発明1における、「セラミック体」及び「はんだ材料」に相当する。
また、本件発明1の「金属箔」は、「好ましくは0.01~10mmの範囲」「の厚さを有する」(本件明細書の段落【0014】)から、甲12発明における「厚さ0.40mmのCuを主成分とした金属回路板及び放熱板」は、本件発明1における「金属箔」に相当する。
(イ)甲12発明のセラミック回路基板の製造方法では、セラミック基板上に、厚さ0.40mmのCuを主成分とした金属回路板及び放熱板を、ろう材層を介して配置した後、活性ろう付けによって接合されるから、ろう材と、セラミック基板並びに金属回路板及び放熱板が接触し、また、ろう材層を介して、セラミック基板と金属回路板及び放熱板が、積層体の状態にあると認められる。
そうすると、甲12発明は、「セラミック基板」及び「金属回路板及び放熱板」と接触した「ろう材」を含有する積層体を準備するステップ(以下「甲12の積層体を準備するステップ」という。)を含むものであり、当該「甲12の積層体を準備するステップ」は、本件発明1おける、「a)積層体を準備するステップであって、前記積層体が、a1)セラミック体と、a2)金属箔と、a3)前記セラミック体及び前記金属箔と接触したはんだ材料」「とを含有する、積層体を準備するステップ」に相当する。
(ウ)甲12発明は、「甲12の積層体を準備するステップ」の後、「1070℃×35分の活性ろう付けによって」、「セラミック基板」と「金属回路板及び放熱板」とが、「接合」するものであるが、本件発明1も、積層体を準備するステップの後、「積層体を加熱するステップ」を有し、「前記積層体を加熱するステップで加熱が起こり、前記はんだ材料による前記セラミック体と前記金属箔との間の一体的接合が形成され」、その結果、「金属セラミック基材」が製造されるのであるから、甲12発明における「甲12の積層体を準備するステップ」を含み、「1070℃×35分の活性ろう付けによって接合」することを含む、「セラミック回路基板の製造方法。」は、本件発明1における「金属セラミック基材を製造するための方法であって、」「a)積層体を準備するステップ」と、「b)前記積層体を加熱するステップと」「を含み、」「前記積層体を加熱するステップで加熱が起こり、前記はんだ材料による前記セラミック体と前記金属箔との間の一体的接合が形成される、方法。」に相当する。
(エ)甲12発明の「ろう材」は、「全質量100質量%に対して、18.0質量%Sn、3.0質量%Ti、及び残部Cu(79.0質量%)からなり、Agを含有しない金属組成」を有するものであるが、Cu及びSnの融解点は、甲第13号証を参照すると、それぞれ、約1356[K](=1083[℃])、約505[K](=232[℃])である。また、Tiは、本件発明1における、活性金属に含まれる元素である(本件明細書の段落【0019】)。
そうすると、甲12発明における「ろう材」が、「全質量100質量%に対して、18.0質量%Sn、3.0質量%Ti、及び残部Cu(79.0質量%)からなり、Agを含有しない金属組成」であることは、
本件発明1における「はんだ材料」が、
「(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と、
(ii)700℃未満の融点を有する金属と、
(iii)活性金属とを含む、はんだ材料」であるとの条件を満たすものである。
(オ)甲12発明における「ろう材」が、「Agを含有しない」ことは、本件発明1における「はんだ材料」が、「銀の割合が、前記はんだ材料の総金属重量に対して、3.0重量パーセント未満であ」ることに相当する。
(カ)甲12発明における「ろう材」の化学組成が、「全質量100質量%に対して、18.0質量%Sn、3.0質量%Ti、及び残部Cu(79.0質量%)からなり、Agを含有しない金属組成」であることは、通常、質量%と重量%とが同じ値であることを踏まえると、
本件発明1における「はんだ材料」が、
「前記少なくとも700℃の融点を有する金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、50~90重量パーセント、前記700℃未満の融点を有する金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、5~45重量パーセント、前記活性金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、1~20重量パーセントであ」るとの条件を満たすものである。
(キ)以上によれば、本件発明1と甲12発明とは、
「金属セラミック基材を製造するための方法であって、
a)積層体を準備するステップであって、前記積層体が、
a1)セラミック体と、
a2)金属箔と、
a3)前記セラミック体及び前記金属箔と接触したはんだ材料であって、前記はんだ材料が、
(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と、
(ii)700℃未満の融点を有する金属と、
(iii)活性金属とを含む、はんだ材料と
を含有する、積層体を準備するステップと、
b)前記積層体を加熱するステップと
を含み、
銀の割合が、前記はんだ材料の総金属重量に対して、3.0重量パーセント未満であり、
前記少なくとも700℃の融点を有する金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、50~90重量パーセント、前記700℃未満の融点を有する金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、5~45重量パーセント、前記活性金属の割合は、前記はんだ材料の総金属重量に対して、1~20重量パーセントであり、
前記積層体を加熱するステップで加熱が起こり、前記はんだ材料による前記セラミック体と前記金属箔との間の一体的接合が形成される、方法。」である点で一致するとともに、以下の点において相違する。
<相違点2>
本件発明1は、「積層体を加熱するステップ」が、「積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過する」ステップであるのに対し、甲12発明は、「1070℃×35分の活性ろう付けによって接合」されるものの、「セラミック基板」及び「金属回路板及び放熱板」と接触した「ろう材」を含有する積層体が、「加熱のための加熱ゾーンを通過する」のか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点2について
a 相違点2が実質的な相違点であるかについて
(a)甲第12号証には、活性ろう付け時の加熱において、「セラミック基板」及び「金属回路板及び放熱板」と接触した「ろう材」を含有する積層体が、加熱のための加熱ゾーンを通過することが記載されていないから、甲12発明の活性ろう付け時の加熱において、当該積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過するかは不明である。また、技術常識を考慮しても、甲12発明の活性ろう付け時の加熱において、「セラミック基板」及び「金属回路板及び放熱板」と接触した「ろう材」を含有する積層体が、加熱のための加熱ゾーンを通過するかは不明である。
よって、相違点2は、実質的な相違点である。
(b)申立人は、特許異議申立書の第40ページ下から第5行~第41ページ第7行において、「甲第12号証には加熱ゾーンを通過するかどうかの加熱方式に関する明示的な記載はないものの、甲第12号証の例えば段落【0016】において「上記セラミック基板と上記金属回路板及び放熱板との接合は、ペース卜ろう材を使用する場合、このペーストろう材をセラミック基板の両面又は片面に印刷、乾燥後、真空下で上記セラミック基板の両面に各々金属回路板、放熱板を配置し、或いは、片面のみにペーストろう材が印刷されているときは、ペーストろう材が印刷された面に金属回路板を配置し、その状態で加熱することにより行うことができる。」ことが記載されている。このことから、このような状況を実現するためには加熱のための非加熱の領域から加熱された領域に積層体を搬送することは必須であるから、「加熱ゾーンを通過する」ことは必至である。したがって、上記一応の相違点は実質的な相違点とはいえない。」と主張する。
しかしながら、「搬送」とは、「運び送ること」を意味するに過ぎず、「通過すること」を含む概念ではないから、加熱された領域に積層体を搬送することが必須であるとしても、「加熱ゾーンを通過する」ことが必至であるとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
b 相違点2の容易想到性について
相違点2は、実質的に相違点1と同じであるから、上記4(2)イ(ア)bで述べた理由と同様に、接合をバッチ炉で行うことも周知技術であること、また、「積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過する」本件発明1が、バッチ炉を使用する従来の方法と比較して、当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏することを考慮すれば、甲12発明の活性ろう付け時の加熱において、「セラミック基板」及び「金属回路板及び放熱板」と接触した「ろう材」を含有する積層体が、「加熱のための加熱ゾーンを通過する」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
(3)本件発明2~10について
上記4(3)~(6)で述べた理由と同様の理由により、本件発明2~7は、甲第12号証に記載された発明であるとはいえない。本件発明2~7は、甲第12号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第12号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。本件発明8は、甲第12号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第12号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。本件発明9は、甲第12号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、あるいは、甲第12号証に記載された発明及び甲第2~11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。本件発明10は、甲第12号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、あるいは、甲第12号証に記載された発明及び甲第2~5、7、9、11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立理由5(新規性、進歩性)のまとめ
したがって、申立理由5(新規性、進歩性)によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700882