特許異議申立
2024-700864
遊技機
- 審判番号
- 2024-700864
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-022617
- 登録番号
- 7496848
- 請求日
- 2024年09月10日
- 審決日
- 2025年08月05日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社三共
- 【権利者代理人】重信 和男
- 【権利者代理人】石川 好文
- 【権利者代理人】林 修身
- 【権利者代理人】大久保 岳彦
- 【異議申立人】日本電動式遊技機特許 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人平木国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼川 康史
- 審判官 蔵野 いづみ
- 審判官 大浜 康夫
- 分類
- P1651.113-YAA(A63F) / P1651.121-YAA(A63F) / P1651.537-YAA(A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7496848号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7496848号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
特許第7496848号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7496848号(以下「本件特許」という。)は、令和4年2月17日に出願されたものであって(特願2022-22617)、令和6年5月30日に特許権の設定登録がなされ、同年6月7日にその特許掲載公報が発行された。
その後、同年9月10日に、特許異議申立人である日本電動式遊技機特許株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和7年3月4日付けで取消理由が通知され、特許権者からその指定期間内である同年4月21日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、その後、同年6月6日に申立人による意見書の提出がされたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを求める、というものである。
請求人が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記所定カットイン表示が表示されるときおよび前記特定カットイン表示が表示されるときのいずれかにおいても前記特定楽曲の再生は継続され、該所定カットイン表示および該特定カットイン表示の表示が終了した後も該特定楽曲の再生は継続され、」とあるのを、
「前記所定カットイン表示が表示されるときおよび前記特定カットイン表示が表示されるときのいずれにおいても前記特定楽曲の再生は継続され、該所定カットイン表示および該特定カットイン表示の表示が終了した後も該特定楽曲の再生は継続され、」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記所定カットイン表示が表示されるときに、該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、音量を維持するように出力され、」とあるのを、
「前記所定カットイン表示が表示されるときに、該所定カットイン表示を開始するときの前記特定楽曲の音の音量が該所定カットイン表示を開始する前の前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、該所定カットイン表示を開始するときの該所定カットイン表示に対応する音の音量が前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、かつ該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、該所定カットイン表示が表示される期間にわたり音量を維持するように出力され、」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「前記特定カットイン表示が表示されるときに、該特定カットイン表示に対応する音の方が前記特定楽曲の音よりも優先されるように出力される、」とあるのを、
「前記特定カットイン表示が表示されるときに、該特定カットイン表示を開始するときの前記特定楽曲の音の音量が該特定カットイン表示を開始する前の前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、該特定カットイン表示を開始するときの該特定カットイン表示に対応する音の音量が前記特定楽曲の音の音量よりも大きい音量とすることで、該特定カットイン表示に対応する音の方が前記特定楽曲の音よりも優先されるように出力される、」に訂正する。
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落0006に
「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
演出を実行可能な演出実行手段を備え、
前記演出実行手段は、歌声が含まれる特定楽曲が用いられ、前記有利状態に制御するか否かを報知する報知演出を実行可能であり、
前記報知演出において所定カットイン表示および特定カットイン表示を含む複数種類のカットイン表示のうちからいずれかのカットイン表示を表示可能であり、
前記特定カットイン表示の方が、前記所定カットイン表示よりも前記有利状態に制御される期待度が高く、
前記所定カットイン表示が表示されるときおよび前記特定カットイン表示が表示されるときのいずれかにおいても前記特定楽曲の再生は継続され、該所定カットイン表示および該特定カットイン表示の表示が終了した後も該特定楽曲の再生は継続され、
前記所定カットイン表示が表示されるときに、該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、音量を維持するように出力され、
前記特定カットイン表示が表示されるときに、該特定カットイン表示に対応する音の方が前記特定楽曲の音よりも優先されるように出力される、
ことを特徴としている。
・・・」とあるのを、
「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
演出を実行可能な演出実行手段を備え、
前記演出実行手段は、歌声が含まれる特定楽曲が用いられ、前記有利状態に制御するか否かを報知する報知演出を実行可能であり、
前記報知演出において所定カットイン表示および特定カットイン表示を含む複数種類のカットイン表示のうちからいずれかのカットイン表示を表示可能であり、
前記特定カットイン表示の方が、前記所定カットイン表示よりも前記有利状態に制御される期待度が高く、
前記所定カットイン表示が表示されるときおよび前記特定カットイン表示が表示されるときのいずれにおいても前記特定楽曲の再生は継続され、該所定カットイン表示および該特定カットイン表示の表示が終了した後も該特定楽曲の再生は継続され、
前記所定カットイン表示が表示されるときに、該所定カットイン表示を開始するときの前記特定楽曲の音の音量が該所定カットイン表示を開始する前の前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、該所定カットイン表示を開始するときの該所定カットイン表示に対応する音の音量が前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、かつ該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、該所定カットイン表示が表示される期間にわたり音量を維持するように出力され、
前記特定カットイン表示が表示されるときに、該特定カットイン表示を開始するときの前記特定楽曲の音の音量が該特定カットイン表示を開始する前の前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、該特定カットイン表示を開始するときの該特定カットイン表示に対応する音の音量が前記特定楽曲の音の音量よりも大きい音量とすることで、該特定カットイン表示に対応する音の方が前記特定楽曲の音よりも優先されるように出力される、
ことを特徴としている。
・・・」に訂正する。
2 訂正の目的、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の「前記所定カットイン表示が表示されるときおよび前記特定カットイン表示が表示されるときのいずれかにおいても前記特定楽曲の再生は継続され」について、「所定カットイン表示が表示されるとき」または「特定カットイン表示が表示されるとき」のいずれか一方において特定楽曲の再生は継続されることを意味するのか、「所定カットイン表示が表示されるとき」および「特定カットイン表示が表示されるとき」の両方において特定楽曲の再生は継続されることを意味するのか明瞭に記載されているとはいえなかった。
そして、訂正事項1に係る訂正は、「いずれかにおいても」という記載を、「いずれにおいても」にするものであって、訂正事項1により、「所定カットイン表示が表示されるとき」および「特定カットイン表示が表示されるとき」の両方において特定楽曲の再生は継続されることを明瞭にするものといえ、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の図12-25(A)の「楽曲(BGM)出力(音量レベル)」と「特定カットインの音量(音量レベル)」の記載、図12-25(B)の「楽曲(BGM)出力(音量レベル)」と「所定カットインの音量(音量レベル)」の記載とも整合する。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1に係る訂正は、上記アで検討した図12-25(A)、(B)の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1に係る訂正は、上記アのとおり、訂正前の「前記所定カットイン表示が表示されるときおよび前記特定カットイン表示が表示されるときのいずれかにおいても前記特定楽曲の再生は継続され」との記載では、「所定カットイン表示が表示されるとき」または「特定カットイン表示が表示されるとき」のいずれか一方において特定楽曲の再生は継続されることを意味するのか、「所定カットイン表示が表示されるとき」および「特定カットイン表示が表示されるとき」の両方において特定楽曲の再生は継続されることを意味するのか明瞭ではなかったものを、「所定カットイン表示が表示されるとき」および「特定カットイン表示が表示されるとき」の両方において特定楽曲の再生は継続されることを明瞭にするものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2、3について
ア 訂正の目的
(ア)訂正前の特許請求の範囲の請求項1の上記「前記所定カットイン表示が表示されるときに、該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、音量を維持するように出力され、」に対応する実施例(以下「訂正事項2の訂正前の記載に対応する実施例」という。)、「前記特定カットイン表示が表示されるときに、該特定カットイン表示に対応する音の方が前記特定楽曲の音よりも優先されるように出力される、」に対応する実施例(以下「訂正事項3の訂正前の記載に対応する実施例」という。)について、本件特許明細書等には次の事項が記載されている(下線は当審において付した。以下同様。)。
「【0702】
図12-25(A)は、楽曲の音量については、t10~t13の途中まで楽曲の音量1~5段階のうちの4段階の音量で出力されていることを示しており、t13の途中からt15までで音量は低下していき、t15~t17まで音量が0となった状態である。その後、t17から楽曲を4段階の音量で再出力し。図柄停止までに徐々に音量をさげていくことを表している。図柄停止する手前で音量を0にしそのまま楽曲の出力を停止させる。
【0703】
図12-25(A)は、燃えるムム&ジャムカットイン演出の音量について、t10~t13まで音量は0であり、出力されていない状態である。またt13~t14で5段階の音量で出力されている状態である。t13~t14の期間において、楽曲の音量よりも燃えるムム&ジャムカットイン演出の音量のほうが大きいので、楽曲も出力されているが、楽曲は聴き取りづらい、もしくは聴こえない状態である。
【0704】
ボタンの促進音の音量について、t10~t12まで音量は0であり、t12~t13にかけてボタンが表示されるので、ボタンの促進音が出力される。該ボタンの促進音は、4段階の音量で出力される。t12~t13の期間において、楽曲の音量とボタンの促進音の音量が同じであるので、遊技者は楽曲の音とボタンの促進音の音を聞き取ることができる。その後t13~t15までは音量を再度0とし、t15~t17の期間で再度ボタンの促進音を出力する。その時の音量はt12~t13のときよりも大きい5段階の音量で出力される。そうすることによって、SPリーチ演出中の途中で表示されるボタン表示よりも当否が後半の部分で表示されるボタンの促進音の音量を大きくすることで、遊技者の高揚感を高めることができる。
【0705】
図12-25(A)と図12-25(B)の演出の流れは同じであるので、相違点について説明する。図12-25(A)のt13~t14の期間よりも図12-25(B)のt13~t14の期間のほうが短く設定されている。燃えるムム&ジャムカットイン演出のほうが大当り遊技状態に制御される割合が高いので、所定カットイン演出の実行期間よりも燃えるムム&ジャムカットイン演出の実行期間を長くすることで、遊技者に期待度の高い演出であることを認識させることができる。」
「
[図:0001429003000001.jpg]
」
本件特許明細書等の【0702】~【0705】、図12-25(B)の記載に照らせば、訂正事項2の訂正前の記載に対応する実施例は、所定カットイン表示がt13~t14において表示され、楽曲の音量について、t10~t14で4段階の音量で出力され、所定カットインの音量について、t13~t14で4段階の音量で出力されることである。
また、【0702】~【0705】、図12-25(A)の記載に照らせば、訂正事項3の訂正前の記載に対応する実施例は、特定カットイン表示がt13~t14において表示され、楽曲の音量について、t10~t13の途中まで4段階の音量で出力され、t13の途中からt15までで音量は低下していき、特定カットインの音量について、t13~t14で5段階の音量で出力されることである。
(イ)そうすると、訂正事項2について、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記所定カットイン表示が表示されるときに、該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、音量を維持するように出力され」ることについてみれば、本件特許明細書等の「所定カットイン表示がt13~t14において表示され、楽曲の音量について、t10~t14で4段階の音量で出力され、所定カットインの音量について、t13~t14で4段階の音量で出力されること」が対応するといえる。
しかし、訂正事項2の訂正前の記載について、「所定カットイン表示が表示されるとき」と「音量を維持するように出力され」る期間との関係が不明であり、かつ、「所定カットイン表示に対応する音」と「特定楽曲の音」とがどのような対応関係にあれば、「該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、」「音量を維持するように出力され」ることとなるのか、、特許請求の範囲の記載から直ちに理解することが困難であり、訂正前の特許請求の範囲の請求項1と本件特許明細書等の記載との関係で不合理を生じて不明瞭となっていた。
そこで、訂正事項2の訂正前の記載である「前記所定カットイン表示が表示されるときに、該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、音量を維持するように出力され、」という記載の本来の意味を明らかにするために、「該所定カットイン表示を開始するときの前記特定楽曲の音の音量が該所定カットイン表示を開始する前の前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、該所定カットイン表示を開始するときの該所定カットイン表示に対応する音の音量が前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であ」ることを限定するとともに、該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、音量を維持するように出力される期間について「該所定カットイン表示が表示される期間にわた」ることを限定することにより、訂正前の特許請求の範囲の請求項1と本件特許明細書等の記載との関係で不合理を解消するものである。
また、訂正事項3について、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記特定カットイン表示が表示されるときに、該特定カットイン表示に対応する音の方が前記特定楽曲の音よりも優先されるように出力される」ことについてみれば、本件特許明細書等の「特定カットイン表示がt13~t14において表示され、楽曲の音量について、t10~t13の途中まで4段階の音量で出力され、t13の途中からt15までで音量は低下していき、特定カットインの音量について、t13~t14で5段階の音量で出力されること」が対応するといえる。
しかし、訂正事項3の訂正前の記載について、「特定カットイン表示に対応する音」および「特定楽曲の音」という2種類の音について、どのように出力することが、「優先されるように出力される」ことになるのか、特許請求の範囲の記載から直ちに理解することが困難であり、訂正前の特許請求の範囲の請求項1と本件特許明細書等の記載との関係で不合理を生じて不明瞭となっていた。
そこで、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記特定カットイン表示が表示されるときに、該特定カットイン表示に対応する音の方が前記特定楽曲の音よりも優先されるように出力される」という記載の本来の意味を明らかにするために、上記2種類の音の出力が「優先されるように出力される」ことについて、「該特定カットイン表示を開始するときの前記特定楽曲の音の音量が該特定カットイン表示を開始する前の前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、該特定カットイン表示を開始するときの該特定カットイン表示に対応する音の音量が前記特定楽曲の音の音量よりも大きい音量とすることで」あると限定することにより、訂正前の特許請求の範囲の請求項1と本件特許明細書等の記載との関係で不合理を解消するものである。
したがって、訂正事項2、3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2、3に係る訂正は、上記アで検討した【0702】~【0705】、図12-25(A)(B)の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項2、3に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2に係る訂正は、上記アのとおり、訂正前の「前記所定カットイン表示が表示されるときに、該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、音量を維持するように出力され、」という記載の本来の意味を明らかにするために、「該所定カットイン表示を開始するときの前記特定楽曲の音の音量が該所定カットイン表示を開始する前の前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、該所定カットイン表示を開始するときの該所定カットイン表示に対応する音の音量が前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であ」ることを限定するとともに、該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、音量を維持するように出力される期間について「該所定カットイン表示が表示される期間にわた」ることを限定する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
また、訂正事項3に係る訂正は、上記アのとおり、訂正前の「前記特定カットイン表示が表示されるときに、該特定カットイン表示に対応する音の方が前記特定楽曲の音よりも優先されるように出力される」という記載の本来の意味を明らかにするために、上記2種類の音の出力が「優先されるように出力される」ことについて、「該特定カットイン表示を開始するときの前記特定楽曲の音の音量が該特定カットイン表示を開始する前の前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、該特定カットイン表示を開始するときの該特定カットイン表示に対応する音の音量が前記特定楽曲の音の音量よりも大きい音量とすることで」あると限定する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
したがって、訂正事項2、3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4に係る訂正は、訂正事項1~訂正事項3に係る訂正により、本件特許明細書等の【0006】の記載が特許請求の範囲の請求項1の記載と整合が取れなくなったことを是正するものである。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4に係る訂正は、上記(1)~(2)で検討した訂正事項1~訂正事項3に係る訂正と同様に、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
よって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)小括
上記(1)~(3)で検討したとおり、本件訂正請求による訂正事項1~4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
第3 本件発明について
上記第2のとおり、訂正後の特許請求の範囲について本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1に係る発明は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、本件特許の請求項1に係る発明を「本件発明」という。また、符号A等は分説のため合議体が付し、符号A等により分説された発明特定事項を、以下「特定事項A」等という。)。
本件発明
「【請求項1】
A 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 演出を実行可能な演出実行手段を備え、
C 前記演出実行手段は、歌声が含まれる特定楽曲が用いられ、前記有利状態に制御するか否かを報知する報知演出を実行可能であり、
D 前記報知演出において所定カットイン表示および特定カットイン表示を含む複数種類のカットイン表示のうちからいずれかのカットイン表示を表示可能であり、
E 前記特定カットイン表示の方が、前記所定カットイン表示よりも前記有利状態に制御される期待度が高く、
F 前記所定カットイン表示が表示されるときおよび前記特定カットイン表示が表示されるときのいずれにおいても前記特定楽曲の再生は継続され、該所定カットイン表示および該特定カットイン表示の表示が終了した後も該特定楽曲の再生は継続され、
G 前記所定カットイン表示が表示されるときに、該所定カットイン表示を開始するときの前記特定楽曲の音の音量が該所定カットイン表示を開始する前の前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、該所定カットイン表示を開始するときの該所定カットイン表示に対応する音の音量が前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、かつ該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、該所定カットイン表示が表示される期間にわたり音量を維持するように出力され、
H 前記特定カットイン表示が表示されるときに、該特定カットイン表示を開始するときの前記特定楽曲の音の音量が該特定カットイン表示を開始する前の前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、該特定カットイン表示を開始するときの該特定カットイン表示に対応する音の音量が前記特定楽曲の音の音量よりも大きい音量とすることで、該特定カットイン表示に対応する音の方が前記特定楽曲の音よりも優先されるように出力される、
I 遊技機。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して、合議体が令和7年3月4日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)取消理由2(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)取消理由3(進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証:特開2020-192126号公報
甲第2号証:特開2013-192699号公報
(以下、甲第1号証、甲第2号証をそれぞれ「甲1」、「甲2」という。)
2 取消理由1(サポート要件)について
取消理由1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「前記所定カットイン表示が表示されるとき、該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、音量を維持するように出力され」るという記載に対する指摘であった。
この記載は、本件訂正請求による訂正事項2において削除されたのに併せて、上記第2の1(2)に示したとおりの訂正がされ、上記第2の2(2)、(3)に示したのと同様に、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
してみれば、当審において令和7年3月4日付けで特許権者に通知した取消理由1は解消した。
3 取消理由2(明確性)について
取消理由2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「前記所定カットイン表示が表示されるときに」という記載に対する指摘であった。
この記載は、本件訂正請求による訂正事項2において、上記第2の1(2)に示したとおりの訂正がされ、上記第2の2(2)に示したとおり、訂正前の特許請求の範囲の請求項1と本件特許明細書等の記載との関係で不合理を生じて不明瞭となっていたものを解消したから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
してみれば、当審において令和7年3月4日付けで特許権者に通知した取消理由2は解消した。
4 取消理由3(進歩性)について
(1) 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
ア 記載事項
甲1には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
「【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。また、以下の説明では、「前」「後」「左」「右」「上」「下」とは、特に断りのない限り、図1に示すように遊技機10を正面側(遊技者側)から見た状態で指称するものとする。
なお、以降の説明における「有利(有利度)」とは、遊技者に対して有利であることを指し、さらに、特に断りがない限り、いわゆるプレミア画像等の演出面を除き、賞球(遊技媒体)の獲得量(遊技球の払い出しに限らず、メダルの払い出しを含む)に関して有利であることを指す。
・・・
【0036】
遊技機10は操作ハンドル31の回転操作量(例えば回転角度)の大小によって遊技球の打ち出しの強弱をつけることが可能になっており、より弱く打ち出された遊技球が転動する第1流路X(いわゆる左打ち)、より強く打ち出された遊技球が転動する第2流路Y(いわゆる右打ち)、のいずれか一方を遊技球が転動するように各種障害物が遊技領域50aに配置されている。
・・・
【0039】
大入賞口55の上方には特別電動役物65が配設されている。特別電動役物65は、大入賞口55への入賞が容易である開放状態または入球が困難である閉鎖状態に可換に遷移する部材であり、特別電動役物ソレノイド66により開放状態または閉鎖状態のいずれかに遷移する。
より具体的には、特別電動役物65は、後述する特図当否判定によって大当りが導出されたことに起因して設定される大当り遊技の少なくとも一部において開放状態になり、これに伴って大入賞口55への入賞が許容される。このように、特別電動役物65が開放状態である場合には、大入賞口55への入賞が容易となるため、賞球を獲得できる機会が大幅に増大する大当り遊技は、有利な遊技状態であると言える。
大当り遊技では、特別電動役物65の開放状態と閉鎖状態が交互に設定され、1回の開放状態(「ラウンド」と称する場合があり、1回の大当りで発生するラウンドの総数を「ラウンド数」と称する場合がある)は、あらかじめ定められた数(本実施形態では、10)の遊技球が大入賞口55に入賞したことに基づいて終了し、特別電動役物65が閉鎖状態となる。
なお、1回の開放状態は、あらかじめ定められた数の遊技球が大入賞口55に入賞するのに十分な時間(本実施形態では、30s(秒))が経過したことに基づいても終了する。
ここで、1回のラウンドにおいて、10球の遊技球が入賞したことに基づいて特別電動役物65が開放状態から閉鎖状態に設定される場合に、すぐに閉鎖状態となることはできない。そのため、1回のラウンドにおいて、10球を超える遊技球が大入賞口55に入賞する場合が発生し、当該入賞をオーバー入賞と称する場合がある。」
「【0059】
第1副制御基板200は、主制御基板100からの演出制御コマンドに基づき遊技演出に関する各種の演算処理を行うCPU201、演出制御プログラムや各種抽選テーブル等のデータを記憶したROM202、一時記憶領域となるワークエリアやバッファメモリとして機能するRAM203と、周辺基板や各デバイスとの間の信号を入出力するI/Oポート204と、を備え、これらが内部バスを介して相互に接続され、CPU201がROM202に記憶された制御プログラムに従って遊技演出に係る主要な制御を実行するように構成されている。
なお、第1副制御基板200は、演出ボタン37およびカーソルボタン38に電気的に接続されており、当該操作部の操作を検知可能に構成されている。【0060】
また、第1副制御基板200は、主制御基板100からの演出制御コマンドに基づく演出制御処理にて、第2副制御基板300へ表示させる画像を指示する画像制御コマンド、輝度の調整を指示する輝度調整コマンド、音声制御基板310へ出力させる音声を指示する音声制御コマンド、音量の調整を指示する音量調整コマンド、枠ランプ35等の各種ランプの点灯を制御するためのランプ制御データ、および可動装飾体22やサブ表示部82等の可動体の可動を制御するための可動制御データ等を生成する。
ここで、第1副制御基板200は、第2副制御基板300および音声制御基板310と双方向通信が可能に接続されており、各制御コマンド(画像制御コマンド、輝度調整コマンド、音声制御コマンド、音量調整コマンド)が第1副制御基板200から第2副制御基板300または音声制御基板310へ送信される一方、その応答として、当該制御コマンドを正常に受信できた旨を示す応答コマンド(ACKコマンド)が各制御基板(第2副制御基板300、音声制御基板310)から第1副制御基板200へ送信される。
・・・
【0062】
第2副制御基板300は、第1副制御基板200からの画像制御コマンドに基づき画像演出に関する各種の演算処理を行うCPU301と、画像制御プログラムや各種データ等を記憶したROM302と、一時記憶領域となるワークエリアやバッファメモリとして機能するRAM303と、周辺基板や各デバイスとの間の信号を入出力するI/Oポート304とを備えており、CPU301がROM302に記憶された制御プログラムに従って画像演出に係る主要な制御を実行するように構成されている。
その他、第2副制御基板300には、図示省略するが、CPU301から受信した制御信号に基づき、後述する演出内容決定手段225によって決定された演出の内容に沿った画像データを生成するVDPと、CPU301から受信した制御信号に基づき当該演出の内容に沿った音響データを生成する音源ICとを搭載している。VDPは、いわゆる画像プロセッサであり、CPU301からの指示に応じて画像ROMに記憶された画像データを読み込み、これを画像処理して生成した画像データを、メイン表示部81やサブ表示部82へ送信する。また、このVDPには、画像ROMから読み出された画像データの展開・加工に使用される高速のVRAMが接続されている。」
「【0119】
本実施形態では、通常モードにおいて、現在設定されている通常モードの種類に関わらず、図9(a)および図9(b)で示した特図変動パターンのそれぞれに対し、互いに異なる一の演出ルートが対応する。そして、これらの演出ルートは、今回の図柄変動における特図当否判定の結果がハズレであること(大当りではないこと)を報知するハズレ演出ルートと、今回の図柄変動における特図当否判定の結果が大当りであることを報知する大当り演出ルートに大別される。さらに、ハズレ演出ルートには、発展演出が実行されない非発展ハズレ演出ルートと、発展演出が実行される発展ハズレ演出ルートがある。ここで、発展演出とは、装飾図柄がリーチ状態(一つの図柄列を除いて装飾図柄が停止表示され、残りの図柄列が変動表示されている状態)となった以降に、今回の図柄変動における特図当否判定の結果が大当りであるか否かを報知する演出を指し、本実施形態では、互いに内容が異なる発展演出A~発展演出Cの3種類が存在する。これらの発展演出は、大当り演出ルートにおいても実行される。以下、各特図変動パターンに対応する演出ルートの内容を説明する。
・・・
【0128】
また、発展演出A~発展演出Cの実行中には、それぞれの発展演出に対応する態様で、メイン表示部81による画像の表示、スピーカ33による音声(BGM)の出音、および枠ランプ35によるランプの点灯が実行される。なお、詳細は後述するが、発展演出に係る遊技の興趣向上を目的として、各発展演出の終盤に(今回の図柄変動における特図当否判定の結果が大当りであるか否かを報知する直前に)、当該発展演出の終了後に装飾図柄が図柄揃いで停止表示されること、すなわち、当該特図当否判定の結果が大当りであることに対する期待度を示唆するカットイン演出が実行される。カットイン演出では、当該演出に対応する態様でメイン表示部81による画像の表示、スピーカ33による音声の出音、および枠ランプ35によるランプの点灯が実行される。
また、図柄変動が開始されてから各発展演出が開始されるまで、すなわち、図柄変動が開始されてから装飾図柄がリーチ状態を構成するまでの期間では、いずれの発展演出中とも異なる態様で、メイン表示部81による画像の表示、スピーカ33による音声(BGM)の出音、および枠ランプ35によるランプの点灯が実行される。」
「【0151】
上述の通り、カットイン演出は、発展演出の終盤に実行される演出であり、発展演出Aまたは発展演出Bの実行中において、その種類には、弱カットイン演出と、強カットイン演出とがある。そして、図12(a)および図12(b)に示す通り、カットイン演出は、演出ボタン37の操作により実行される。そして、カットイン演出が実行されるにあたっては、メイン表示部81の表示領域に、演出ボタンの操作を促すボタン画像bgが表示されるとともに、当該操作の受付期間(有効期間)を示すメーター画像mgが表示される。メーター画像は、表示開始時には全体が黒色で表示され、当該黒色の領域の面積(長さ)が時間経過とともに減少するように構成されており、当該黒色の領域の面積によって演出ボタンに対する操作の受付期間が示される。
・・・
【0155】
このように、本実施形態では、現在設定されている通常モードの種類に関わらず、特図当否判定の結果が大当りである場合には、弱カットイン演出よりも高い割合で強カットイン演出が決定され易い。そのため、強カットイン演出は、弱カットイン演出よりも大当り当選期待度が高いと言える。
・・・
【0160】
図14に示す通り、発展演出Aまたは発展演出Bの実行中に強カットイン演出が実行される場合には、当該カットイン演出の実行期間に加え、当該実行期間に繋がる期間においても、当該発展演出に対応するBGM(以下、単に「発展演出用のBGM」と称する)の出音が規制される。
具体的には、発展演出が開始されたタイミングt11において発展演出用のBGMの再生が開始されるとともに当該BGMの出音が開始され、タイミングt12において当該BGMに係る出音の規制が開始される。なお、図14において、出音の規制がなされている期間は、タイミングチャートにおいて破線で示しており、これは、図15および図16においても同様である。
その後のタイミングt13において強カットイン演出の実行に係る演出ボタン37に対する操作を受け付ける受付期間(以下、「操作受付期間」と称する)が開始され、図14の例では、当該操作受付期間中のタイミングt14において演出ボタン37の操作がなされている。なお、タイミングt14においても、タイミングt12から継続して発展演出用のBGMに係る出音の規制が継続している。さらに、タイミングt14では、強カットイン演出に係る音声(「強カットイン演出音」と表現する場合もある)の再生が開始されるとともに当該音声の出音が開始される。
その後のタイミングt15では、強カットイン演出に係る音声の再生が停止されて当該音声の出音が終了するとともに、発展演出用のBGMの出音規制が終了し、当該BGMの出音が再開される。タイミングt16では、発展演出が終了する。
【0161】
このように、本実施形態では、発展演出Aまたは発展演出Bの実行中に強カットイン演出が実行される場合には、当該カットイン演出の実行期間、すなわち、当該カットイン演出に係る音声の出音期間に加え、当該カットイン演出が開始される手前の期間T1において、発展演出用のBGMの出音を規制している。
これにより、発展演出Aまたは発展演出Bの実行中に実行される強カットイン演出に係る音声を認識させ易くすることができる。
なお、当該効果を奏するにあたり、発展演出用のBGMの出音規制を終了するタイミングは、本実施形態のように、強カットイン演出に係る音声の再生が停止されて当該音声の出音が終了するタイミングとしてもよいが、発展演出用のBGMの出音規制を終了するタイミングは、当該音声の出音が終了するタイミングより後のタイミングであって発展演出が終了するタイミングよりも前のタイミングであれば、いずれのタイミングでもよい。
【0162】
ここで、本実施形態における出音の規制とは、対象となる音声(BGM)の再生を停止することなく、規制前の音声よりも当該音声を遊技者等が聴覚で認識し難くすることを指す。具体的には、本実施形態に係る出音の規制は、対象となる音声に係る音声再生チャネルの音量特定データを、規制前の音量(音量指示データによって指示される音量)よりも低い音量(音量0を含む)とすることで実現される。これは、上述の単位音声データの合成時に、出音の規制対象となる音声再生チャネルに係る単位音声データを合成しないことでも実現できる。そして、本実施形態に係る出音が規制されないとは、音量指示データによって指示される音量によって出音されることを指す。
また、出音の規制は、対象となる音声に係る音声再生チャネルの再生状態を一時停止にすることで実現されてもよい。ただし、対象となる音声に係る音声再生チャネルの再生状態を再生停止とすることは、本実施形態における出音の規制に当たらない。
そのため、強カットイン演出に係る音声の再生が停止されて出音が再開された発展演出用のBGMは、再開されたタイミングでの再生位置、または規制が開始されたタイミングでの再生位置から、出音が規制されることなく出音されることとなる。これにより、遊技者に対し、発展演出Aまたは発展演出Bに係る発展演出用のBGM(特に、当該BGMに係る尺全体)を聴覚でより認識させ易くすることができる。
・・・
【0169】
次に、図15に示す通り、発展演出Aまたは発展演出Bの実行中に弱カットイン演出が実行される場合にも、発展演出Aまたは発展演出Bの実行中に強カットイン演出が実行される場合と同様に、弱カットイン演出の実行期間に加え、当該実行期間に繋がる期間においても、当該発展演出に対応するBGMの出音が規制される。なお、以下の説明では、発展演出Aまたは発展演出Bの実行中に強カットイン演出が実行される場合と共通する部分について適宜説明を省略する。
具体的には、発展演出が開始されたタイミングt21において発展演出用のBGMの再生が開始されるとともに当該BGMの出音が開始され、発展演出が開始されたタイミングを基準として上述のタイミングt12よりも後ろのタイミングとなるタイミングt22において当該BGMに係る出音の規制が開始される。
その後のタイミングt23において弱カットイン演出の実行に係る演出ボタン37の操作受付期間が開始され、図15の例では、当該受付期間中のタイミングt24において演出ボタン37の操作がなされている。なお、タイミングt24においても、タイミングt22から継続して発展演出用のBGMに係る出音の規制が継続している。さらに、タイミングt24では、弱カットイン演出に係る音声(「弱カットイン演出音」と表現する場合もある)の再生が開始されるとともに当該音声の出音が開始される。
その後のタイミングt25では、弱カットイン演出に係る音声の再生が停止されて当該音声の出音が終了するとともに、発展演出用のBGMの出音規制が終了し、当該BGMの出音が再開される。タイミングt26では、発展演出が終了する。
【0170】
このように、本実施形態では、発展演出Aまたは発展演出Bの実行中に弱カットイン演出が実行される場合にも、発展演出Aまたは発展演出Bの実行中に強カットイン演出が実行される場合と同様に、当該カットイン演出の実行期間、すなわち、当該カットイン演出に係る音声の出音期間に加え、当該カットイン演出が開始される手前の期間T2において、発展演出用のBGMの出音を規制している。
これにより、発展演出Aまたは発展演出Bの実行中に実行される弱カットイン演出に係る音声を認識させ易くすることができる。」
「
[図:0001429003000002.jpg]
」
「
[図:0001429003000003.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記アから、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、特定事項A等に概ね対応させたa等を含む符号を付した。
「a 遊技者に対して有利であり(【0009】)、賞球を獲得できる機会が大幅に増大する大当り遊技を実行する(【0039】)遊技機10であって(【0036】)、
b 第1副制御基板200は、主制御基板100からの演出制御コマンドに基づき遊技演出に関する各種の演算処理を行うCPU201を備え(【0059】)、また、第1副制御基板200は、主制御基板100からの演出制御コマンドに基づく演出制御処理にて、第2副制御基板300へ表示させる画像を指示する画像制御コマンドを生成し(【0060】)、第2副制御基板300は、第1副制御基板200からの画像制御コマンドに基づき画像演出に関する各種の演算処理を行うCPU301を備えており、CPU301がROM302に記憶された制御プログラムに従って画像演出に係る主要な制御を実行し(【0062】)、
c 第2副制御基板300は画像データをメイン表示部81へ送信し(【0062】)、今回の図柄変動における特図当否判定の結果が大当りであるか否かを報知する演出を指す発展演出A~発展演出Cを実行し(【0119】)、発展演出A~発展演出Cの実行中には、それぞれの発展演出に対応する態様で、メイン表示部81による画像の表示、スピーカ33による音声(BGM)の出音が実行され(【0128】)、
d、e カットイン演出は、発展演出の終盤に実行される演出であり、発展演出Aまたは発展演出Bの実行中において、その種類には、弱カットイン演出と、強カットイン演出とがあり(【0151】)、特図当否判定の結果が大当りである場合には、弱カットイン演出よりも高い割合で強カットイン演出が決定され易く(【0155】)、
f 発展演出Aまたは発展演出Bの実行中に弱カットイン演出が実行される場合(【0169】)及び強カットイン演出(【0160】)が実行される場合、当該カットイン演出の実行期間に加え、当該実行期間に繋がる期間においても、当該発展演出に対応するBGMの出音が規制され(【0160】、【0169】)、出音の規制は規制前の音量よりも低い音量とすることで実現され(【0162】)され、弱カットイン演出及び強カットイン演出に係る音声の再生が停止されて当該音声の出音が終了するとともに、発展演出用のBGMの出音規制が終了し、当該BGMの出音が再開され(【0160】、【0169】)、
g 弱カットイン演出の実行期間に加え、当該実行期間に繋がる期間においても、当該発展演出に対応するBGMの出音が規制され、弱カットイン演出に係る音声の再生が開始されるとともに当該音声の出音が開始され(【0169】)、出音の規制は規制前の音量よりも低い音量とすることで実現され(【0162】)、
h 強カットイン演出が実行される場合には、当該カットイン演出の実行期間に加え、当該実行期間に繋がる期間においても、当該発展演出に対応するBGMの出音が規制され(【0160】)、BGMの出音を規制前の音量よりも低い音量とすることで強カットイン演出に係る音声を認識させ易くすることができる(【0161】、【0162】)、
i 遊技機10(【0036】)。」
(2) 甲2の記載事項、認定事項及び甲2に記載された事項
ア 記載事項
甲2には、以下の記載がある。
「【0012】
以下、パチンコ遊技機(以下、単に「パチンコ機」という)の一実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図3等に示すように、パチンコ機10は、当該パチンコ機10の外郭を構成する外枠11を備えており、この外枠11の一側部に内枠12が開閉可能に支持されている。尚、図3では便宜上、遊技盤30面上に配設される釘や役物、前面枠セット14に取付けられるガラスユニット137等を省略して示している。」
「【0370】
さらに、効果音のうち、「グループB」のものよりも演出効果が低いもの(「グループB」のものに比して派手さがない、示唆する内容が大当たりの発生とほとんど関係がない或いは信頼度が低い、頻繁に発生する等)は「通常効果音」として「グループD」に配属されている。
・・・
【0435】
図42に示すように、先ず、通常モードであって、デモ画面表示が行われている無音の状態から、「t1」のタイミングで変動開始コマンドを受けた場合には、通常BGMを出力するべくBGMチャンネルCH3が大ボリューム「VH」とされる。一方、第1及び第2効果音チャンネルCH1、CH2は全ミュート「V0」のままである。その後、タイミング「t2」で弱予告の導出に伴って、通常効果音を出力するべく第1効果音チャンネルCH1についても大ボリューム「VH」とされる。さらに、「t3」のタイミングで強演出効果音の出力のために第2効果音チャンネルCH2が大ボリューム「VH」とされ、これに伴い、第1効果音チャンネルCH1、及びBGMチャンネルCH3が小ボリューム「VL」とされる。「t4」のタイミングで通常効果音及び強演出効果音の出力期間が終了すると、BGMチャンネルCH3が大ボリューム「VH」に復帰する。
・・・
【0445】
以上詳述したように、本実施形態によれば、複数パターンの音声が同時に出力される場合に、当該複数の音声パターンのランクの組合わせに応じて、各パターンの音声のボリュームを変更する音声制御部264を備えている。例えば、「ランクL4」の通常BGMが出力されている最中に、「ランクL4」の通常効果音を重ねて出力する場合には、通常BGMの音声ボリュームの変更がないものの、「ランクL3」の強演出効果音を重ねて出力する場合には、通常BGMの音声ボリュームが基準よりも小さくなる(小ボリューム「VL」に半減する)といった具合である。従って、サブ制御装置262(CPU551)では、音声パターンを決定し、その旨を音声制御部264に出力する処理を行うだけで、該音声パターンに対応する音声をスピーカSPから出力させるとともに、既に出力されている音声のボリュームをも変更することができるようになっている。従って、サブ制御装置262において、音声パターンの組合わせに応じて既に出力されている音声のボリュームを変更させるための別途の指令を出力しなくても済み、サブ制御装置262の制御の負担を軽減することができる。」
「
[図:0001429003000004.jpg]
」
イ 認定事項
【0445】の「「ランクL4」の通常BGMが出力されている最中に、「ランクL4」の通常効果音を重ねて出力する場合には、通常BGMの音声ボリュームの変更がないものの、「ランクL3」の強演出効果音を重ねて出力する場合には、通常BGMの音声ボリュームが基準よりも小さくなる」との記載及び図42から、通常効果音と通常BGMのみを重ねて出力する期間(t2~t3)において、通常効果音と通常BGMのいずれもが、大ボリューム「VH」を維持することが記載されていると認められる(以下「認定事項」という。)。
ウ 甲2に記載された事項
上記ア、イより、甲2には以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「示唆する内容が大当たりの発生の信頼度が低い通常効果音(【0370】)と通常BGMのみを重ねて出力する期間において、通常効果音と通常BGMのいずれもが、大ボリューム「VH」を維持し(認定事項)、強演出効果音を重ねて出力する場合には、強演出効果音が大ボリューム「VH」とされ(【0435】)、通常BGMの音声ボリュームが小ボリューム「VL」になる(【0445】)パチンコ機10(【0012】)。」
(3)対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
ア 特定事項A、Iについて
甲1発明aの「遊技者に対して有利であり、賞球を獲得できる機会が大幅に増大する大当り遊技を実行する遊技機10」は、本件発明の「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明の特定事項A、Iを備える。
イ 特定事項Bについて
甲1発明bの「主制御基板100からの演出制御コマンドに基づき遊技演出に関する各種の演算処理を行うCPU201を備え」た「第1副制御基板200」及び「第1副制御基板200からの画像制御コマンドに基づき画像演出に関する各種の演算処理を行うCPU301を備え」た「第2副制御基板300」は、いずれも演出に関する各種の演算処理を行う手段であるから、本件発明の「演出実行手段」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明の特定事項Bを備える。
ウ 特定事項Cについて
上記イより、甲1発明bの「第1副制御基板200」及び「第2副制御基板300」は、本件発明の「演出実行手段」に相当することに加え、甲1発明cの「特図当否判定の結果が大当りであるか否かを報知する演出を指す発展演出A~発展演出C」は、本件発明の「有利状態に制御するか否かを報知する報知演出」に相当する。
また、甲1発明cは「それぞれの発展演出に対応する態様で、メイン表示部81による画像の表示、スピーカ33による音声(BGM)の出音が実行され」ることから、本件発明の特定事項Cと甲1発明は、演出実行手段は、特定楽曲が用いられ、有利状態に制御するか否かを報知する報知演出を実行可能である点で共通する。
エ 特定事項D、Eについて
上記ウより、甲1発明cの「特図当否判定の結果が大当りであるか否かを報知する演出を指す発展演出A~発展演出C」は、本件発明の「有利状態に制御するか否かを報知する報知演出」に相当することに加え、甲1発明d、eの「弱カットイン演出」、「強カットイン演出」はそれぞれ、本件発明の「所定カットイン表示」、「特定カットイン表示」に相当する。
そして、甲1発明d、eの「特図当否判定の結果が大当りである場合には、弱カットイン演出よりも高い割合で強カットイン演出が決定され易」いことは、本件発明の「特定カットイン表示の方が、前記所定カットイン表示よりも前記有利状態に制御される期待度が高」いことに相当する。
よって、甲1発明は、本件発明の特定事項D、Eを備える。
オ 特定事項Fについて
(ア)上記エより、甲1発明d、eの「弱カットイン演出」、「強カットイン演出」はそれぞれ、本件発明の「所定カットイン表示」、「特定カットイン表示」に相当する。
ここで、甲1発明fにおいて、「弱カットイン演出が実行される場合及び強カットイン演出が実行される場合、当該カットイン演出の実行期間に加え、当該実行期間に繋がる期間においても、当該発展演出に対応するBGMの出音が規制され」ており、また、「出音の規制は規制前の音量よりも低い音量とすることで実現され」ることから「出音が規制」されているものの「BGM」の再生が継続していることは明らかである。
したがって、甲1発明fの「弱カットイン演出が実行される場合及び強カットイン演出が実行される場合、当該カットイン演出の実行期間に加え、当該実行期間に繋がる期間においても、当該発展演出に対応するBGMの出音が規制され」ることは、本件発明の「前記所定カットイン表示が表示されるときおよび前記特定カットイン表示が表示されるときのいずれにおいても前記特定楽曲の再生は継続され」ることに相当する。
(イ)甲1発明fの「弱カットイン演出及び強カットイン演出に係る音声の再生が停止されて当該音声の出音が終了するとともに、発展演出用のBGMの出音規制が終了し、当該BGMの出音が再開され」ることは、本件発明の「該所定カットイン表示および該特定カットイン表示の表示が終了した後も該特定楽曲の再生は継続され」ることに相当する。
してみれば、甲1発明は、本件発明の特定事項Fを備える。
カ 特定事項Gについて
甲1発明gにおいて、「弱カットイン演出の実行期間に加え、当該実行期間に繋がる期間においても、当該発展演出に対応するBGMの出音が規制され、弱カットイン演出に係る音声の再生が開始されるとともに当該音声の出音が開始され」ており、また、上記オ(ア)の説示を踏まえると、本件発明の特定事項Gと甲1発明は、所定カットイン表示が表示されるときに、所定カットイン表示を開始するときの特定楽曲と所定カットイン表示を開始する前の特定楽曲が出音を継続し、所定カットイン表示に対応する音および特定楽曲の音いずれもが、所定カットイン表示が表示される期間にわたり出音を継続するように出力する点で共通する。
キ 特定事項Hについて
上記エより、甲1発明d、eの「強カットイン演出」は、本件発明の「特定カットイン表示」に相当する。
そして、甲1発明hにおいて、「強カットイン演出が実行される場合には、当該カットイン演出の実行期間に加え、当該実行期間に繋がる期間においても、当該発展演出に対応するBGMの出音が規制され、BGMの出音を規制前の音量よりも低い音量とすることで強カットイン演出に係る音声を認識させ易くすることができる」とあり、本件発明の特定事項Hと甲1発明は、特定カットイン表示が表示されるときに、特定カットイン表示を開始するときの特定楽曲と特定カットイン表示を開始する前の特定楽曲が出音を継続し、特定カットイン表示を開始するときの特定カットイン表示に対応する音の音量が特定楽曲の音の音量よりも大きい音量とすることで、特定カットイン表示に対応する音の方が特定楽曲の音よりも優先されるように出力される点で共通する。
ク 一致点・相違点
上記ア~キから、本件発明と甲1発明は、
「A 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 演出を実行可能な演出実行手段を備え、
C’前記演出実行手段は、特定楽曲が用いられ、前記有利状態に制御するか否かを報知する報知演出を実行可能であり、
D 前記報知演出において所定カットイン表示および特定カットイン表示を含む複数種類のカットイン表示のうちからいずれかのカットイン表示を表示可能であり、
E 前記特定カットイン表示の方が、前記所定カットイン表示よりも前記有利状態に制御される期待度が高く、
F 前記所定カットイン表示が表示されるときおよび前記特定カットイン表示が表示されるときのいずれにおいても前記特定楽曲の再生は継続され、該所定カットイン表示および該特定カットイン表示の表示が終了した後も該特定楽曲の再生は継続され、
G’前記所定カットイン表示が表示されるときに、所定カットイン表示を開始するときの特定楽曲と所定カットイン表示を開始する前の特定楽曲が出音を継続し、所定カットイン表示に対応する音および特定楽曲の音いずれもが、所定カットイン表示が表示される期間にわたり出音を継続するように出力され、
H’前記特定カットイン表示が表示されるときに、特定カットイン表示を開始するときの特定楽曲と特定カットイン表示を開始する前の特定楽曲が出音を継続し、特定カットイン表示を開始するときの特定カットイン表示に対応する音の音量が特定楽曲の音の音量よりも大きい音量とすることで、特定カットイン表示に対応する音の方が特定楽曲の音よりも優先されるように出力される、
I 遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1](特定事項C)
「特定楽曲」に関して、本件発明では、「歌声が含まれる特定楽曲が用いられ」るのに対し、甲1発明では、BGMに「歌声が含まれる」かどうか不明である点。
[相違点2](特定事項G)
本件発明では、「前記所定カットイン表示が表示されるときに、該所定カットイン表示を開始するときの前記特定楽曲の音の音量が該所定カットイン表示を開始する前の前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、該所定カットイン表示を開始するときの該所定カットイン表示に対応する音の音量が前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、かつ該所定カットイン表示に対応する音および前記特定楽曲の音いずれもが、該所定カットイン表示が表示される期間にわたり音量を維持するように出力され」るのに対し、甲1発明では、弱カットイン演出が表示されるときに、弱カットイン表示を開始するときのBGMと弱カットイン表示を開始する前のBGMが出音を継続し、弱カットイン表示に対応する音およびBGMの音いずれもが、弱カットイン表示が表示される期間にわたり出音を継続するように出力されているものの、弱カットイン表示を開始するときのBGMの音の音量が弱カットイン表示を開始する前のBGMの音の音量と同じ音量であるか不明であり、弱カットイン表示を開始するときの弱カットイン表示に対応する音の音量がBGMの音の音量と同じ音量であるか不明であり、かつ弱カットイン表示に対応する音およびBGMの音いずれもが、弱カットイン表示が表示される期間にわたり音量を維持するように出力されているのか不明である点。
[相違点3](特定事項H)
本件発明では、「前記特定カットイン表示が表示されるときに、該特定カットイン表示を開始するときの前記特定楽曲の音の音量が該特定カットイン表示を開始する前の前記特定楽曲の音の音量と同じ音量であり、該特定カットイン表示を開始するときの該特定カットイン表示に対応する音の音量が前記特定楽曲の音の音量よりも大きい音量とすることで、該特定カットイン表示に対応する音の方が前記特定楽曲の音よりも優先されるように出力される」ているのに対し、甲1発明では、強カットイン表示が表示されるときに、強カットイン表示を開始するときのBGMと強カットイン表示を開始する前のBGMが出音を継続し、強カットイン表示を開始するときの強カットイン表示に対応する音の音量がBGMの音の音量よりも大きい音量とすることで、強カットイン表示に対応する音の方がBGMよりも優先されるように出力されているものの、強カットイン表示を開始するときのBGMの音の音量が強カットイン表示を開始する前のBGMの音の音量と同じ音量で出力されているのか不明である点。
(4)判断
事案に鑑み相違点2から検討する。
上記(2)ウのとおり、甲2記載事項は、「示唆する内容が大当たりの発生の信頼度が低い通常効果音と通常BGMのみを重ねて出力する期間において、通常効果音と通常BGMのいずれもが、大ボリューム「VH」を維持し、強演出効果音を重ねて出力する場合には、強演出効果音が大ボリューム「VH」とされ、通常BGMの音声ボリュームが小ボリューム「VL」になるパチンコ機10。」である。
そして、甲2記載事項は、通常効果音または強演出効果音を出力する場合に、重ねて出力する通常BGMの音量を音声パターンの組合わせに応じた音量で出力をすることから、通常効果音を出力する場合または強演出効果音を出力する場合と通常BGMの音声パターンの組合わせの関係は一体のものであって、通常効果音と重ねて出力する通常BGMの音量のみを抽出することはできない。
また、甲1発明において、弱カットイン演出の実行期間及び実行期間に繋がる期間のBGMの音量は規制されており、甲2記載事項は、通常効果音を出力する期間において、通常BGMの音量が規制されていない。このような甲1発明の規制されたBGMの音量制御に甲2記載事項の規制されていないBGMの音量制御を適用することはできない。
そうすると、甲1発明に甲2記載事項を適用することができず、相違点2に係る本件発明の構成には至らないものであるから、本件発明は、甲1発明及び甲2記載事項から当業者が容易に発明し得たものではない。
(5)小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、甲1発明及び甲2記載事項から当業者が容易に発明し得たものではない。
(6)申立人の主張について
申立人は、令和7年6月6日提出の意見書の第5頁第19行~第6頁第4行において、以下のとおり主張する。
「甲1号証の【図15】においては、弱カットイン演出の前後でも、同様に、出音の規制が可能であることが記載されており、また出音の規制の程度が任意であることが甲1号証の記載(【0162】)から想定されるから、対象となる音声(BGM)の再生を停止することなく、規制前の音声よりも当該音声を遊技者等が聴覚で認識し難くするという本件訂正発明の狙いを実現するために、対象となる音声(BGM)が同等の音量での出音が選択可能であることは当業者の想定の範囲内である(同等の音量でも一定程度聴覚で認識し難くする作用があることは音響学的にも自明である。)。
仮にそうでなくとも、甲2号証には、異議申立書においても述べたとおり、その段落【0435】、【図42】等に記載されているように、報知演出実行中(BGM出力中)に、他の演出(予告等)の実行に対応した効果音を出力中のBGMと同レベルの維持することが記載されている。そして、それは周知技術である。したがつて、甲2号証には、「所定カットイン表示を開始するときの該所定カットイン表示に対応する音の音量が特定楽曲の音の音量と同じ音量」であることが記載されているといえる。そうすると、甲2号証の構成態様を前記甲1号証における弱カットイン演出開始の際の当業者が選択可能な態様の一つとして同じ態様を採用し、そのことにより前記i)の構成を実現することも、これもまた当業者が容易になし得ることである。
さらに、仮にそれでもなお相違するものであるとされた場合であっても、弱カットイン演出の際には、強カットイン演出の開始の際とは全く異なる態様として、単に甲2号証に記載の構成態様を採用することにより、前記i)の構成を実現することも、前記本件訂正発明の狙いを念頭におけば、当業者が容易になし得ることである。」
しかしながら、上記(3)クにおいて検討したとおり、相違点2は実質的な相違点であるので、本件発明は甲1発明ではなく、新規性を有している。
また、上記(4)において検討したとおり、甲1発明に甲2記載事項を適用することができず、相違点2の構成には至らないものであるから、本件発明は、甲1発明及び甲2記載事項から当業者が容易に想到し得るものではない。
よって、申立人の上記主張は採用できない
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当すると主張している。
しかしながら、上記第4の4(3)クで検討したとおり、相違点2は実質的な相違点であるので、本件発明は甲1発明ではなく、新規性を有している。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700864