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特許異議申立

2025-700854

遊技機

審判番号
2025-700854
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-145410
登録番号
7693470
請求日
2025年08月29日
審決日
2026年03月24日
公報発行日
2026年04月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社三共
  • 【異議申立人】日本電動式遊技機特許 株式会社
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人平木国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 渋谷 知子
  • 審判官 山崎 仁之
  • 審判官 太田 恒明
分類
P1651.55 -Y (A63F) / P1651.537-Y (A63F) / P1651.4 -Y (A63F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第114条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第113条第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号、特許法第39条第1項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7693470号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7693470号の請求項1に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7693470号(以下「本件特許」という。)は、令和3年9月7日に特許出願され(特願2021-145410号)、令和7年6月9日にその特許権の設定登録がされ、同月17日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許の請求項1に係る特許に対して、同年8月29日に特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。なお、本件特許発明における符号A等は分説のため当審で付与した。分説された本件特許発明の発明特定事項を、符号に基づき以下「発明特定事項A」等という。 「 【請求項1】 A 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 B 演出を実行する演出制御手段と、 C 表示手段と、 D 音出力手段と、 E 可動体と、を備え、 F 前記可動体は、第1位置から前記第1位置よりも前記表示手段を被覆する位置である第2位置に移動可能であり、 G 前記演出制御手段は、 H 前記有利状態に制御されるか否かを示唆する示唆演出の映像として所定映像を前記表示手段に表示可能であり、 I 前記所定映像のうち特定シーンが表示されたときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させることが可能であり、 J 前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知されて前記有利状態に制御開始された後に、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、 K 前記特定映像において前記特定シーンが表示されたときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させず、 L 前記示唆演出が実行されているときに、特別演出を実行可能であり、 M 前記所定映像として、前記特別演出に関する特別演出映像と、遊技の進行に関連する遊技情報表示と、を前記表示手段に表示可能であり、 N 前記特定映像において、前記特別演出映像と、前記遊技情報表示と、を表示させず、 O 前記示唆演出において、前記特別演出が実行されないときよりも、前記特別演出が実行されるときの方が前記有利状態に制御される割合が高い、 P ことを特徴とする遊技機。」 第3 申立理由の概要 申立人による申立理由の概要は、次のとおりである。 ・特許法第17条の2第3項(請求項1)(特許法第113条第1号) 本件特許は、本件特許に係る特許出願についての令和6年10月3日、及び令和7年4月8日提出の手続補正書による補正が、新規事項の追加を含むものであるので、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである(新規事項要件)。 したがって、本件特許は、特許法第113条第1号の規定に該当し、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。 ・特許法第36条第6項第1号及び第2号(請求項1)(特許法第113条第4号) 本件特許は、特許を受けようとする発明が明確でなく、また、発明の詳細な説明に記載されていないので、特許法第36条第6項第1号(サポート要件)及び特許法第36条第6項第2号(明確性要件)に規定する要件も満たしていない特許出願に対してされたものである。 したがって、本件特許は、特許法第113条第4号の規定に該当し、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。 ・特許法第39条第1項(請求項1)(特許法第113条第2号) 本件特許に係る発明は、先の出願に係る発明と同一であるので、特許法第39条第1項(同一性)に規定する要件も満たしていない特許出願に対してされたものである。 したがって、本件特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。 第4 証拠 1 証拠一覧 申立人により、特許異議申立書とともに提出された証拠は、次のとおりである。 甲第1号証:本件特許に係る特願2021-145410号について令和6年10月3日に提出された上申書 甲第2号証:本件特許に係る特願2021-145410号について令和6年10月3日に提出された手続補正書 甲第3号証:本件特許に係る特願2021-145410号について令和7年4月8日に提出された手続補正書 甲第4号証:本件特許に係る特願2021-145410号についての願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(特開2023-38602号公報) 甲第5号証:本件特許に係る特願2021-145410号について令和7年4月8日に提出された意見書 甲第6号証:特願2021-129721号(特許第7480093号公報) 甲第7号証:新村出編、「広辞苑第七版」、株式会社岩波書店、2018年1月12日、p.1455,p.2495、p.2980 以下、申立人の提出した「甲第1号証」等を「甲1」等という。 2 各証拠について (1)甲1 甲1は本件特許の特許権者が令和6年10月3日に提出した上申書であるところ、甲1には次の事項が記載されている。 ア 「1.本願発明について 本願発明の根拠は、出願当初の明細書等の段落0434、0876、0882等に基づきます。」 (2)甲2 甲2は本件特許の特許権者が令和6年10月3日に提出した手続補正書であるところ、甲2には次の事項が記載されている。 ア 「【手続補正1】 【補正対象書類名】 特許請求の範囲 【補正対象項目名】 全文 【補正方法】 変更 【補正の内容】 【書類名】特許請求の範囲 【請求項1】 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 演出を実行する演出制御手段と、 表示手段と、 音出力手段と、 可動体と、を備え、 前記可動体は、第1位置から前記第1位置よりも前記表示手段を被覆する位置である第2位置に移動可能であり、 前記演出制御手段は、 前記有利状態に制御されるか否かを示唆する示唆演出の映像として所定映像を前記表示手段に表示可能であり、 前記所定映像のうち特定シーンが表示されているときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させることが可能であり、 前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知された後、前記有利状態に制御されたときに、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、 前記特定映像において前記特定シーンが表示されたときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させず、 前記示唆演出が実行されているときに、特別演出を実行可能であり、 前記所定映像として、前記特別演出に関する特別演出映像と、遊技の進行に関連する遊技情報表示と、を前記表示手段に表示可能であり、 前記特定映像において、前記特別演出映像と、前記遊技情報表示と、を表示させず、 前記示唆演出において、前記特別演出が実行されないときよりも、前記特別演出が実行されるときの方が前記有利状態に制御される割合が高い、 ことを特徴とする遊技機。」 (3)甲3 甲3は本件特許の特許権者が令和7年4月8日に提出した手続補正書であるところ、甲3には次の事項が記載されている。 ア 「【手続補正1】 【補正対象書類名】 特許請求の範囲 【補正対象項目名】 全文 【補正方法】 変更 【補正の内容】 【書類名】特許請求の範囲 【請求項1】 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 演出を実行する演出制御手段と、 表示手段と、 音出力手段と、 可動体と、を備え、 前記可動体は、第1位置から前記第1位置よりも前記表示手段を被覆する位置である第2位置に移動可能であり、 前記演出制御手段は、 前記有利状態に制御されるか否かを示唆する示唆演出の映像として所定映像を前記表示手段に表示可能であり、 前記所定映像のうち特定シーンが表示されたときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させることが可能であり、 前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知されて前記有利状態に制御開始された後に、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、 前記特定映像において前記特定シーンが表示されたときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させず、 前記示唆演出が実行されているときに、特別演出を実行可能であり、 前記所定映像として、前記特別演出に関する特別演出映像と、遊技の進行に関連する遊技情報表示と、を前記表示手段に表示可能であり、 前記特定映像において、前記特別演出映像と、前記遊技情報表示と、を表示させず、 前記示唆演出において、前記特別演出が実行されないときよりも、前記特別演出が実行されるときの方が前記有利状態に制御される割合が高い、 ことを特徴とする遊技機。」 (4)甲4 甲4は本件特許に係る特願2021-145410号における願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を掲載した公開特許公報であるところ、甲4には次の事項が記載されている(ここでの下線は当審にて付した。)。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 演出を実行する演出制御手段と、 表示手段と、 可動体と、を備え、 前記可動体は、第1位置から前記第1位置よりも前記表示手段を被覆する位置である第2位置に移動可能であり、 前記演出制御手段は、 前記有利状態に制御されるか否かを示唆する示唆演出の映像として所定映像を前記表示手段に表示可能であり、 前記所定映像のうち特定シーンが表示されているときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させることが可能であり、 前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知された後、前記有利状態に制御されたときに、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、 前記特定映像において前記特定シーンが表示されたときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させることを制限する ことを特徴とする遊技機。」 イ 「【0006】 本手段の遊技機は、 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 演出を実行する演出制御手段(演出制御用CPU120)と、 表示手段(画像表示装置5)と、 可動体(可動体YM)と、を備え、 前記可動体は、第1位置(後退位置)から前記第1位置よりも前記表示手段を被覆する位置である第2位置(進出位置)に移動可能であり、 前記演出制御手段は、 前記有利状態に制御されるか否かを示唆する示唆演出の映像として所定映像(SPリーチの演出映像)を前記表示手段に表示可能であり、 前記所定映像のうち特定シーンが表示されているときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させることが可能であり(SPリーチの後半第2パートの第3チャンスアップ演出の演出映像が表示されているときに、可動体YMを後退位置から進出位置に移動させており)、 前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知された後、前記有利状態に制御されたときに、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり(大当りラウンド期間に、SPリーチの後半第2パートの第3チャンスアップ演出の演出映像を含むリプレイ映像を表示させており)、 前記特定映像において前記特定シーンが表示されたときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させることを制限する(SPリーチの後半第2パートの第3チャンスアップ演出の演出映像を含むリプレイ映像が表示されているときに、可動体YMを後退位置から進出位置に移動させない) ことを特徴とする。」 ウ 「【0356】 演出制御用CPU120は、特別図柄の変動表示が開始されたことに対応して、飾り図柄の変動表示を画面中央領域で開始させるとともに、小図柄の変動表示を画面左上領域で開始させる。また、特別図柄の変動表示が終了して表示結果が導出表示されたことに対応して、表示結果となる飾り図柄の組合せを画面中央領域に確定停止させるとともに、表示結果となる小図柄の組合せを画面左上領域に確定停止させる。 【0357】 演出制御用CPU120は、変動パターンがスーパーリーチ(SPリーチ)の変動パターンである場合、リーチ状態が成立した後、SPリーチに発展するタイミング(バトル演出に移行するタイミング)で、リーチ態様となった飾り図柄の組合せを非表示とするか又は縮小表示させる。なお、小図柄に関しては、SPリーチの発展前後において画面左上領域で継続して変動表示させている。」 エ 「【0434】 図9-19(1)に示したように、第1チャンスアップ演出が実行される場合の方が、第1チャンスアップ演出が実行されない場合よりも大当り期待度が高くなっている。」 オ 「【0496】 [10R大当りの大当りラウンド遊技の演出例] 図9-23は、大当り種別が「10R大当り」(「図柄10R時短大当り」、「小当り経由10(9)R時短大当り」)であるときの大当り遊技状態の大当りラウンド期間における各種演出の演出態様を示す説明図である。 …… 【0502】 次いで、図9-23(3)に示すように、CPU103が特別可変入賞球装置7の大入賞口を開放状態としたタイミングで、演出制御用CPU120は、大当りラウンド演出を実行し、画像表示装置5の画面に大当りラウンド画像を表示させる。この大当りラウンド画像は、画面左上部の大当りラウンド数に対応したラウンド表示(本例では、「1Round」の文字)と、画面右下部の大当り遊技で付与された賞球数を示す賞球数表示(本例では、「00450pt」)と、画面左下部の楽曲選択促進表示(本例では、十字キーを模したアイコン)と選択中楽曲表示(本例では、音符を模した画像と「楽曲A」の文字)と、を含む画像と、画面全体のミュージックビデオ(本例では、映像(A)MV)と、が表示されている。 …… 【0505】 次いで、図9-23(5)に示すように、CPU103が4ラウンド目に対応した特別可変入賞球装置7の大入賞口を開放状態としたタイミングで、演出制御用CPU120は、リプレイ予告演出を終了し、画像表示装置5の画面中央からリプレイ予告表示(本例では、「次ラウンドバトルリプレイ」の文字)を消去させるとともに、リプレイ演出を実行し、リプレイ映像RVを表示させる。 …… 【0508】 このとき、画面左上部の大当りラウンド数に対応したラウンド表示(本例では、「4Round」の文字)と、画面右下部の大当り遊技で付与された賞球数を示す賞球数表示(本例では、「00900pt」)と、画面左下部の楽曲選択促進表示(本例では、十字キーを模したアイコン)と選択中楽曲表示(本例では、音符を模した画像と「楽曲A」の文字)と、を含む画像と、が表示されている。」 カ 「【0876】 手段8の遊技機は、 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 演出を実行する演出制御手段(演出制御用CPU120)と、 表示手段(画像表示装置5)と、 可動体(可動体YM)と、を備え、 前記可動体は、第1位置(後退位置)から前記第1位置よりも前記表示手段を被覆する位置である第2位置(進出位置)に移動可能であり、 前記演出制御手段は、 前記有利状態に制御されるか否かを示唆する示唆演出の映像として所定映像(SPリーチの演出映像)を前記表示手段に表示可能であり、 前記所定映像のうち特定シーンが表示されているときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させることが可能であり(SPリーチの後半第2パートの第3チャンスアップ演出の演出映像が表示されているときに、可動体YMを後退位置から進出位置に移動させており)、 前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知された後、前記有利状態に制御されたときに、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり(大当りラウンド期間に、SPリーチの後半第2パートの第3チャンスアップ演出の演出映像を含むリプレイ映像を表示させており)、 前記特定映像において前記特定シーンが表示されたときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させることを制限する(SPリーチの後半第2パートの第3チャンスアップ演出の演出映像を含むリプレイ映像が表示されているときに、可動体YMを後退位置から進出位置に移動させない) ことを特徴とする遊技機。 …… 【0882】 手段11の遊技機は、 手段8から手段10の何れかに記載の遊技機であって、 前記演出制御手段は、前記示唆演出が実行されているときに、特別演出(チャンスアップ演出)を実行可能であり、 前記特別演出が実行されないときよりも、前記特別演出が実行されるときの方が前記有利状態に制御される割合が高く、 前記演出制御手段は、 前記所定映像として、前記特別演出に関する特別演出映像を前記表示手段に表示可能であり(SPリーチの演出映像として、チャンスアップ演出に関連する演出映像を表示可能であり)、 前記特定映像において、前記特別演出映像を表示させることを制限する(リプレイ映像では、チャンスアップ演出に関連する演出映像の表示を制限する) ことを特徴とする遊技機。」 キ 図9-14 「 [図:0001434180000001.jpg] 」 ク 図9-16 「 [図:0001434180000002.jpg] 」 ケ 図9-23 「 [図:0001434180000003.jpg] 」 (5)甲5 甲5は本件特許の特許権者が令和7年4月8日に提出した意見書であるところ、甲5には次の事項が記載されている。 ア 「2.補正の内容 上記拒絶理由に対しまして、本意見書と同日付で提出しました手続補正書により、審査係属中の請求項1に対して、明細書等の記載事項に基づいて、「・・・前記所定映像のうち特定シーンが表示されたときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させることが可能であり、前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知されて前記有利状態に制御開始された後に、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、・・・」とする補正αを行いました。 なお、上記補正αは、出願当初における明細書及び図面の全体的記載を勘案し、記載の明確性を向上させるために、用語の統一及び表現の整合を図ったものであります。 ゆえに、補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載した事項の範囲内であります。」 イ 「3.新規事項、サポート要件のご指摘について 拒絶理由通知書において新規事項、サポート要件のご指摘を受けた「前記所定映像として、前記特別演出に関する特別演出映像と、遊技の進行に関連する遊技情報表示と、を前記表示手段に表示可能であり、前記特定映像において、前記特別演出映像と、前記遊技情報表示と、を表示させず、」の構成について、補正の根拠、発明の詳細な説明の対応箇所を説明いたします。 まず、明細書の段落[0356]、[0357]、図面の図9-14、図9-16には、飾り図柄の変動表示を画像表示装置5の画面中央領域で開始させるとともに、小図柄の変動表示を画像表示装置5の画面左上領域で開始させ、その後、SPリーチの後半第2パートの第3チャンスアップ演出を経由して特別図柄の変動表示が終了したことに対応して、飾り図柄の変動表示の結果を画像表示装置5の画面中央領域で表示し、小図柄の変動表示の結果を画像表示装置5の画面左上領域で表示する旨が記載されております。 また、明細書の段落[0502]、図面の図9-23には、大当りラウンド演出実行中(SPリーチの後半第2パートの第3チャンスアップ演出を含むリプレイ演出中)に、小図柄表示を画像表示装置5の画面左上領域に表示させることなく、現在の大当りラウンド数に対応したラウンド表示を画像表示装置5の画面左上領域に表示する旨が記載されております。 このように、上記した「前記所定映像として、前記特別演出に関する特別演出映像と、遊技の進行に関連する遊技情報表示と、を前記表示手段に表示可能であり、前記特定映像において、前記特別演出映像と、前記遊技情報表示と、を表示させず、」の構成は、明細書に記載した事項の範囲内となり、対応する箇所も発明の詳細な説明にサポートされているため、拒絶理由の(理由1)、(理由2)は解消されたものと思料いたします。」 (6)甲6 甲6は令和3年8月6日に出願された特願2021-129721号に係る特許第7480093号公報であるところ、甲6の請求項1に記載された発明(以下「先願発明」という。)は以下のとおりである。なお、先願発明における符号a等は分説のため当審で付与した。分説された先願発明の発明特定事項を、符号に基づき以下「発明特定事項a」等という。 ア 「【請求項1】 a 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 b 演出を実行する演出制御手段と、 c 表示手段と、 d 可動体と、を備え、 e 前記可動体は、第1位置から前記第1位置よりも前記表示手段を被覆する位置である第2位置に移動可能であり、 f 前記演出制御手段は、 g 前記有利状態に制御されるか否かを示唆する示唆演出の映像として所定映像を前記表示手段に表示可能であり、 h 前記所定映像のうち特定シーンが表示されているときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させることが可能であり、 i 前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知された後、前記有利状態に制御されたときに、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、 j 前記特定映像において前記特定シーンが表示されたときに、前記可動体を前記第1位置から前記第2位置に移動させず、 k 前記示唆演出が実行されているときに、特別演出を実行可能であり、 l 前記所定映像として、前記特別演出に関する特別演出映像を前記表示手段に表示可能であり、 m 前記特定映像において、前記特別演出映像を表示させず、 n 前記示唆演出において、前記特別演出が実行されないときよりも、前記特別演出が実行されるときの方が前記有利状態に制御される割合が高い、 o ことを特徴とする遊技機。」 (7)甲7 甲7には、次の事項が記載されている。 ア 「じょう-ほう……【情報】(information)1(当審注:1は丸囲みの1)ある事柄についてのしらせ。」 イ 「ひょう-じ……【表示】1(当審注:1は丸囲みの1)外部へあらわし示すこと。」 ウ 「ゆう-ぎ……【遊技】1(当審注:1は丸囲みの1)遊びのわざ。遊芸のわざ。」 第5 申立理由について 1 新規事項、明確性、及びサポート要件について(その1) (1)当審の判断 ア 新規事項について 本件特許発明の発明特定事項M~Nは、本件特許に係る特願2021-145410号における願書に最初に添付した特許請求の範囲には記載されていなかったものの、令和6年10月3日に提出された手続補正書によって特許請求の範囲に追加され、令和7年4月8日に提出された手続補正書によっても特許請求の範囲に維持されているものである。 本件特許発明の発明特定事項M~Nのうち、「前記所定映像として、前記特別演出に関する特別演出映像」「を前記表示手段に表示可能であ」ること、及び「前記特定映像において、前記特別演出映像」「を表示させ」ないことは、本件特許に係る特願2021-145410号における願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件当初明細書等」という。)における【0882】に記載されている(上記第4の2(4)参照。)。 また、本件当初明細書等では、【0356】~【0357】、図9-14、及び図9-16に、特別図柄の変動表示に対応して小図柄の変動表示を画像表示装置5の画面左上領域で表示すること、及び特別図柄の変動表示中に実行されるSPリーチの発展前後においても小図柄変動表示を継続して画像表示装置5の画面左上領域で表示することが記載されている(上記第4の2(4)参照。)。ここで、技術常識を踏まえると、本件当初明細書等に記載された「小図柄」の表示は、本件特許発明の「遊技の進行に関連する遊技情報表示」に対応する。 さらに、本件当初明細書等の【0496】、【0505】、【0508】、及び図9-23には、大当り遊技状態の大当りラウンド期間におけるリプレイ演出においてリプレイ映像RVを表示させる際に、画像表示装置5の画面左上部には、大当りラウンド数に対応したラウンド表示(「4Round」の文字)を表示し、小図柄は表示させないことが記載されている(上記第4の2(4)参照。)。 そうすると、「前記所定映像として、」「遊技の進行に関連する遊技情報表示」「を前記表示手段に表示可能であ」ること、及び「前記特定映像において、」「前記遊技情報表示」「を表示させ」ないことは、本件当初明細書等では、【0356】~【0357】、【0496】、【0505】、【0508】、図9-14、図9-16、及び図9-23に記載されているといえ、本件当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 イ 明確性について 本件特許の請求項1に記載された「遊技情報表示」は、文言からは、「遊技におけるある事柄の知らせを外部にあらわし示すもの」と解される。また、本件特許発明の発明特定事項Mによれば、「遊技情報表示」は「遊技の進行に関連する」ことが特定されているから、「遊技の進行に関連する事柄の知らせを外部にあらわし示すもの」と解される。 また、上記アで述べたことと同様に、本件特許の願書に添付した明細書及び図面における【0356】~【0357】、【0496】、【0505】、【0508】、図9-14、図9-16、及び図9-23には、本件特許発明の発明特定事項M~Nにおける「遊技情報表示」に対応する「小図柄」の表示に関する事項が記載されている。そして、「小図柄」の表示が「遊技の進行に関連する事柄の知らせを外部にあらわし示すもの」であることは明らかであるから、本件特許発明の発明特定事項M~Nの記載は、本件特許の願書に添付した明細書及び図面の記載とも整合する。 したがって、本件特許発明の発明特定事項M~Nが第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはできない。 ウ サポート要件について 上記アで述べたことと同様に、本件特許の願書に添付した明細書及び図面における【0356】~【0357】、【0496】、【0505】、【0508】、図9-14、図9-16、及び図9-23には、本件特許発明の発明特定事項M~Nにおける「遊技情報表示」に対応する「小図柄」の表示に関する事項が記載されている。 したがって、本件特許発明の発明特定事項M~Nによって、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明ではないということはできない。 (2)申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は、特許異議申立書の第4頁第16行~第10頁第4行における「(4-1)新規事項要件、サポート要件及び明確性要件について(1)」において、おおむね以下のような主張をしている。 本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載のうち、構成M)及びN)に係る記載は、 M) 前記所定映像として、前記特別演出に関する特別演出映像と、遊技の進行に関連する遊技情報表示と、を前記表示手段に表示可能であり、 N) 前記特定映像において、前記特別演出映像と、前記遊技情報表示と、を表示させず、 であるのに対して、出願当初の明細書等の特許請求の範囲には、構成M)及びN)に相当する記載はない。 そこで、出願当初の明細書等を参酌するに、構成M)及びN)等における「遊技情報表示」に関する記載はない。 この点、出願人(特許権者)は、前記上申書(甲1)において、本願発明の根拠は、出願当初の明細書等の段落0434、0876、0882等に基づくことを述べている。 しかし、出願人の指摘する上記明細書の各段落の記載を見ても、「遊技情報表示」を定義する記載も、関連すると示唆される記載もない。 さらに、この点に関し、出願人は、前記2回目の手続補正書に伴って提出された意見書(甲5)において説明を行っているが、その説明は、「遊技情報表示」そのものの説明にはなっておらず、出願人が何を説明しようとしているのか判然としないし、これによって何が審査官が新規事項及びサポート要件違反はないとの判断に傾けて特許査定に到ったのかも不明である。 少なくとも、客観的にみると、この意見書の記載からいえることは、出願人は、「遊技情報表示」には、「飾り図柄の変動表示」、「小図柄の変動表示」、「特別図柄の変動表示」、「小図柄表示」及び「ラウンド表示」は含まれるとしているだけで、特に「小図柄(の)表示」を念頭においているようにもうかがえるが、そこに含まれるのは「小図柄(の)表示」だけなのか、例示されたこれらの表示だけなのか、それ以外のも含むのか、は全く確定しないものである。 そうすると、以上のとおり、特許請求の範囲の記載によっても判別つかず、また、明細書の記載等によって定義付けられるものでもないので、定法にしたがい、一般常識を元に「遊技情報表示」を解釈してみると、「遊技情報表示」とは、本件特許発明が遊技機に関するものであることを考慮すれば、「遊技機のある事柄の知らせを外部にあらわし示すこと」と理解される。 そして、遊技機において、「遊技機のある事柄の知らせを外部にあらわし示すこと」に該当するものは無数に存在し、凡そ遊技機にかかる何らかの知らせを示すものであれば全て含まれることとなる。 以上のとおりであるから、「遊技情報表示」の意味は極めて広範なものであり、当初明細書等に記載されていない事項を多く含むこととなる。 したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された「遊技情報表示」の用語並びに「遊技情報表示」に係る構成M)及びN)は、本件特許に係る出願当初の明細書に記載されたものではなく、そのような、事項を追加し、維持する前記最初の補正及び2回目の補正は、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてした補正に該当しない。 このことは、特許庁発行「審査ハンドブック」の「付属書A」の「事例1」に記載されている、「パチンコ機」における上位概念化、削除又は変更の新規事項要件違反例の考え方とも整合しており、本件特許は明らかな要件違反に当たるものである。 また、そうでなくとも、請求項1に記載された発明は不明瞭であり、かつ、明細書に記載されていない発明であることは明らかである。 イ 申立人の主張に対する当審の判断 (ア)新規事項について 申立人は、一般常識を元に「遊技情報表示」を解釈してみると、「遊技情報表示」とは、本件特許発明が遊技機に関するものであることを考慮すれば、「遊技機のある事柄の知らせを外部にあらわし示すこと」と理解され、遊技機において、「遊技機のある事柄の知らせを外部にあらわし示すこと」に該当するものは無数に存在し、凡そ遊技機にかかる何らかの知らせを示すものであれば全て含まれることとなるから、「遊技情報表示」の意味は極めて広範なものであり、当初明細書等に記載されていない事項を多く含むこととなる等と主張する。 しかしながら、本件特許発明の「遊技情報表示」は、本件特許発明の発明特定事項Mにおいて「遊技の進行に関連する」ことが特定されているから、申立人の主張は「遊技情報表示」の解釈において誤りがある。 そして、上記(1)で述べたように、「遊技情報表示」は、本件当初明細書等に記載されており、本件当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 よって、申立人の主張は採用できない。 (イ)明確性について 申立人の主張には、本件特許発明が不明瞭であることの具体的な事情が示されていない。 そして、上記(1)で述べたように、本件特許発明の発明特定事項M~Nが第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはできない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (ウ)サポート要件について 申立人の主張には、本件特許発明は明細書に記載されていない発明であることの具体的な事情が示されていない。 そして、上記(1)で述べたように、本件特許発明の発明特定事項M~Nによって、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明ではないということもできない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明の発明特定事項M~Nは、本件当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入したものではなく、令和6年10月3日に提出された手続補正書や令和7年4月8日に提出された手続補正書でした補正が、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないということはできない。 また、本件特許発明の発明特定事項M~Nによっては、本件特許発明が明確でないとも、本件特許発明が発明の詳細な説明に記載されていないとも、いうことはできない。 2 新規事項、明確性、及びサポート要件について(その2) (1)当審の判断 ア 新規事項について 本件特許発明の発明特定事項Jは、本件特許に係る特願2021-145410号における願書に最初に添付した特許請求の範囲、及び令和6年10月3日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲では「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知された後、前記有利状態に制御されたときに、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、」(以下「補正前の発明特定事項J」という。)と記載されていたものを、令和7年4月8日に提出された手続補正書によって「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知されて前記有利状態に制御開始された後に、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、」(以下「補正後の発明特定事項J」という。)との記載に補正されたものである。 補正後の発明特定事項Jは、示唆演出において有利状態に制御されることが報知されて有利状態に制御開始された後の期間に、特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であることを意味すると解される。 そして、補正後の発明特定事項Jに関して、大当りラウンド期間に、SPリーチの後半第2パートの第3チャンスアップ演出の演出映像を含むリプレイ映像を表示させることは、本件当初明細書等における【0006】、及び【0876】に記載されている(上記第4の2(4)参照。)。 また、本件当初明細書等における【0496】、【0505】、及び図9-23には、大当り遊技状態の大当りラウンド期間におけるリプレイ演出においてリプレイ映像RVを表示させることが記載されている(上記第4の2(4)参照。)。 してみると、補正後の発明特定事項Jによっては、本件当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入したということはできない。 イ 明確性について 補正後の発明特定事項Jは、上記アで述べたように解されるから、補正後の発明特定事項Jが、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはできない。 ウ サポート要件について 補正後の発明特定事項Jは、上記アで述べたよう本件当初明細書等に記載されているから、補正後の発明特定事項Jによって、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明でないということはできない。 (2)申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は、特許異議申立書の第10頁第5行~第12頁第18行における「(4-2)新規事項要件、サポート要件及び明確性要件について(2)」において、おおむね以下のような主張をしている。 本件特許に係る出願は、構成要件J)に関して、最初の補正前は、「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知された後、前記有利状態に制御されたときに、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、」とされていたのに対して、最初の補正後は、「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知されて前記有利状態に制御開始された後に、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、」とされたことにより、前者では「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知された」後、「前記有利状態に制御された」ときを定めていたのに対して、後者では「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知されて前記有利状態に制御開始された」後に、と言い換えられている。 しかし、これにより、定められる時は、明らかに異なってくるところ、本件特許に係る出願の関連する明細書段落【0876】、【0877】及び【0888】には、「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知された後、前記有利状態に制御されたときに、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、」とする記載を裏付ける記載しかなく、構成J)に関し、「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知されて前記有利状態に制御開始された後に、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、」とする記載は他にもない。 したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された構成J)は、本件特許に係る出願当初の明細書に記載されたものではなく、そのような、事項を追加し、維持する前記最初の補正及び2回目の補正は、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてした補正に該当しない。 また、そうでなくとも、請求項1に記載された発明は不明瞭であり、かつ、明細書に記載されていない発明であることは明らかである。 イ 申立人の主張に対する当審の判断 (ア)新規事項について 補正前の発明特定事項J「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知された後、前記有利状態に制御されたときに、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であり、」には「とき」という表現があることから、示唆演出において有利状態に制御されることが報知された後で、かつ有利状態に制御された時点に、特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であることを意味するのか、示唆演出において有利状態に制御されることが報知された後で、かつ有利状態に制御された期間に、特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であることを意味するのか、必ずしも明らかでなかった。 これに対し、補正後の発明特定事項Jは、「ときに」を「後に」としたことにより、示唆演出において有利状態に制御されることが報知された後で、かつ有利状態に制御開始された後の期間に、特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であることが明確になった。 申立人は、本件当初明細書等に記載された「とき」を「時点」と解して、補正前の発明特定事項Jでは「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知された」後、「前記有利状態に制御された」ときを定めていたのに対して、補正後の発明特定事項Jでは「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知されて前記有利状態に制御開始された」後に、と言い換えられていることにより、定められる時は明らかに異なってくる等と主張したのかも知れないが、「とき」という表現には、時点を意味する場合のほかに期間を意味する場合があり、本件当初明細書等には、示唆演出において有利状態に制御されることが報知された後で、かつ有利状態に制御された期間に、特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であることが記載されていたことは、上記(1)で述べたとおりである。 よって、申立人の主張は採用できない。 (イ)明確性について 申立人の主張には、本件特許発明が不明瞭であることの具体的な事情が示されていない。 そして、上記(1)で述べたように、本件特許発明の発明特定事項Jが第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはできない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (ウ)サポート要件について 申立人の主張には、本件特許発明は明細書に記載されていない発明であることの具体的な事情が示されていない。 そして、上記(1)で述べたように、本件特許発明の発明特定事項Jによって、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明ではないということもできない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明における補正後の発明特定事項Jは、本件当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入したものではなく、令和7年4月8日に提出された手続補正書でした補正は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないということはできない。 また、本件特許発明における補正後の発明特定事項Jによっては、本件特許発明が明確でないとも、本件特許発明が発明の詳細な説明に記載されていないとも、いうことはできない。 3 先願について (1)当審の判断 ア 対比 本件特許発明と先願発明(上記第4の2(6)を参照。)とを対比すると、先願発明の発明特定事項a~h、j~k、及びn~oは、それぞれ、本件特許発明の発明特定事項A~C、E~I、K~L、及びO~Pに相当する。 そうすると、本件特許発明と先願発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 <相違点1(発明特定事項D)> 本件特許発明は、「音出力手段」を備えるのに対し、 先願発明は、そのように構成されていない点。 <相違点2(発明特定事項J)> 本件特許発明では、「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知されて前記有利状態に制御開始された後に、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であ」るのに対し、 先願発明では、「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知された後、前記有利状態に制御されたときに、前記特定シーンを少なくとも含む特定映像を表示可能であ」る点。 <相違点3(発明特定事項M,N)> 本件特許発明と先願発明とは、「前記所定映像として、前記特別演出に関する特別演出映像」「を前記表示手段に表示可能であり、」かつ、「前記特定映像において、前記特別演出映像」「を表示させ」ない点で共通するものの、 本件特許発明では、「前記所定映像として、」「遊技の進行に関連する遊技情報表示」「を前記表示手段に表示可能であり、」かつ、「前記特定映像において、」「前記遊技情報表示」「を表示させ」ないのに対し、 先願発明は、そのように構成されていない点。 イ 相違点3についての判断 事案に鑑み、相違点3について検討する。 本件特許発明の発明特定事項Hにおける「所定映像」は、「前記有利状態に制御されるか否かを示唆する示唆演出の映像」である。 また、本件特許発明の発明特定事項Jにおける「前記特定シーン」は、本件特許発明の発明特定事項Iにおける「前記所定映像のうち特定シーン」であるところ、本件特許発明の発明特定事項Jにおける「特定映像」は、「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知されて前記有利状態に制御開始された後に、」「表示可能であ」る「前記特定シーンを少なくとも含む特定映像」である。 ここで、遊技の進行に関連する遊技情報表示を表示手段に表示可能とすることは、文献を例示するまでもなく周知技術であるから、先願発明において、「有利状態に制御されるか否かを示唆する示唆演出の映像」である「所定映像」として遊技の進行に関連する遊技情報表示を表示手段に表示可能となすことは、単なる周知技術の付加であるおそれがある。 しかしながら、先願発明においてそのようになすならば、「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知されて前記有利状態に制御開始された後に、」「表示可能であり、」「前記特定シーン(前記所定映像のうち特定シーン)を少なくとも含む特定映像」においても、遊技情報表示を表示手段に表示することになるため、先願発明に上記周知技術を付加したとしても、「特定映像において、」「遊技情報表示」「を表示させ」ないとの特定事項を備えた本件特許発明には到達しない。 してみると、「有利状態に制御されるか否かを示唆する示唆演出の映像」である「所定映像」として遊技の進行に関連する遊技情報表示を表示手段に表示可能とするにもかかわらず、「前記示唆演出において前記有利状態に制御されることが報知されて前記有利状態に制御開始された後に、」「表示可能であり、」「前記特定シーン(前記所定映像のうち特定シーン)を少なくとも含む特定映像」において、遊技情報表示を表示手段に表示させないようにすることは、単なる周知技術の付加であるとは認められない。 よって、相違点3は実質的な相違点である。 (2)申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は、特許異議申立書の第12頁第19行~第14頁第14行における「(4-3)先後願(同一性)」において、おおむね以下のような主張をしている。 本件特許と先の特許を対比すると、相違点は次の通りである。 相違点)本件特許発明が「M) 前記所定映像として、前記特別演出に関する特別演出映像と、遊技の進行に関連する遊技情報表示と、を前記表示手段に表示可能であり、N) 前記特定映像において、前記特別演出映像と、前記遊技情報表示と、を表示させず、」というものであるのに対して、先の特許が「M) 前記特定映像において、前記特別演出映像を表示させず、」としている点。 ここで、先の特許も、所定画像として特別演出に関する特別演出映像を備えていることは自明の構成であるから、前記相違点は実質的には次のものとなる。 相違点’)本件特許発明が「M) 前記所定映像として、遊技の進行に関連する遊技情報表示と、を前記表示手段に表示可能であり、N) 前記特定映像において、前記遊技情報表示と、を表示させず、」というものであるのに対して、先の特許が「遊技情報表示」の取り扱いに関して何ら限定していない点。 そうすると、「遊技情報表示」は、前記したとおりの意味であって、凡そどのような表示も含むのであるから、仮にそれが新規事項でないならば、この遊技機の演出の分野における様々な演出の実態を考慮すると、当業者には、「遊技情報表示」に含まれる各種の表示は設計上の事項に過ぎない。 したがって、前記相違点、すなわち前記相違点’は実質的な相違点にはならないので、両特許の発明の構成に実質的な差異はなく、その差異により特許発明の目的及び効果に顕著な差異を奏せしめるものでもないから、両特許の発明は実質的に同一の発明である。 イ 申立人の主張に対する当審の判断 上記(1)で述べたことから、相違点3は実質的な相違点ではないとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (3)小括 以上のとおり、相違点3が実質的な相違点であるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明は先願発明と同一ではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由によっては取り消すことができない。 また、他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700854

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