特許異議申立
2024-700848
保護素子および保護回路
- 審判番号
- 2024-700848
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-210841
- 登録番号
- 7444587
- 請求日
- 2024年09月06日
- 審決日
- 2025年09月03日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】デクセリアルズ株式会社
- 【権利者代理人】田▲崎▼ 聡
- 【権利者代理人】阿部 茂輝
- 【権利者代理人】荒 則彦
- 【権利者代理人】細川 文広
- 【権利者代理人】松本 裕幸
- 【異議申立人】株式会社 クレス
- 審判長/審判官
- 審判長 中屋 裕一郎
- 審判官 小川 恭司
- 審判官 山田 由希子
- 分類
- P1651.113-YAA(H01H) / P1651.121-YAA(H01H) / P1651.537-YAA(H01H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7444587号発明「保護素子および保護回路」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7444587号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~5〕、〔2、6〕、〔7、10~12〕、〔8、13〕、〔9、14〕について訂正することを認める。
特許第7444587号の請求項1~4、7~11に係る特許を維持する。
特許第7444587号の請求項5~6、12~14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概略
特許第7444587号の請求項1~14に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和元年11月21日(優先権主張 平成30年11月26日)を出願日とする出願であり、手続の経緯は、概ね、次のとおりである。
令和 6年 2月27日 特許権の設定登録
令和 6年 3月 6日 特許掲載公報
令和 6年 9月 6日 特許異議申立人株式会社クレス(以下「特許異議申立人」という。)による特許異議の申立て
令和 6年11月29日付け 取消理由通知書
令和 7年 1月31日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 7年 2月28日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和 7年 5月 2日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 7年 6月24日 特許異議申立人による意見書の提出
以下、令和7年5月2日に提出された訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。なお、令和7年1月31日に提出された訂正請求書は、取り下げられたものと見なす(特許法120条の5第7項)。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は、特許第7444587号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1において、「前記第1電極部の熱特性および第2電極部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護素子。」を、「前記第1電極部の熱特性および第2電極部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含み、前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第2電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、保護素子。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項3、4についても同様に訂正する。なお、請求項1の記載を引用する請求項5は、訂正事項3により削除される。)
(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項2において、「前記第1導通部の熱特性および前記第2導通部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護素子。」を、「前記第1導通部の熱特性および前記第2導通部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含み、前記第1導通部の幅方向断面積が前記第2導通部の幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1導通部を形成する材料の熱伝導率が前記第2導通部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、保護素子。」に訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項6は、訂正事項4により削除される。)
(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(訂正事項5)
特許請求の範囲の請求項7において、「前記第1電極部の熱特性および第2電極部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護回路。」を、「前記第1電極部の熱特性および第2電極部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含み、前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第2電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、保護回路。」に訂正する。
(請求項7の記載を引用する請求項10、11についても同様に訂正する。なお、請求項7の記載を引用する請求項12は、訂正事項8により削除される。)
(訂正事項6)
特許請求の範囲の請求項8において、「前記第1導通部の熱特性および前記第2導通部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護回路。」を「前記第1導通部の熱特性および前記第2導通部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含み、前記第1導通部の幅方向断面積が前記第2導通部の幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1導通部を形成する材料の熱伝導率が前記第2導通部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、保護回路。」に訂正する。
(請求項8の記載を引用する請求項13は、訂正事項9により削除される。)
(訂正事項7)
特許請求の範囲の請求項9において、「前記第1接続部の熱特性および前記第2接続部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護回路。」を、「前記第1接続部の熱特性および前記第2接続部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含み、前記第1接続部の長さが前記第2接続部の長さよりも長いか、および/または、前記第1接続部の幅方向断面積が前記第2接続部の幅方向断面積よりも小さい、保護回路。」に訂正する。
(請求項9の記載を引用する請求項14は、訂正事項10により削除される。)
(訂正事項8)
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(訂正事項9)
特許請求の範囲の請求項13を削除する。
(訂正事項10)
特許請求の範囲の請求項14を削除する。
2 本件訂正の適否について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1について訂正前の請求項5で限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1について訂正前の請求項5で限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正後の請求項1における「前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第2電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい」という事項は、願書に添付した明細書の【0039】に記載された事項であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正前の請求項1について特許異議申立がされているので、訂正事項1に関して独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2について訂正前の請求項6で限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項2について訂正前の請求項6で限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正後の請求項2における「前記第1導通部の幅方向断面積が前記第2導通部の幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1導通部を形成する材料の熱伝導率が前記第2導通部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい」という事項は、願書に添付した明細書の【0042】~【0044】に記載された事項であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正前の請求項2について特許異議申立がされているので、訂正事項2に関して独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3~4について
ア 訂正の目的について
訂正事項3~4は、訂正前の請求項5~6を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3~4は、訂正前の請求項5~6を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3~4は、訂正前の請求項5~6を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正前の請求項5~6について特許異議申立がされているので、訂正事項3~4に関して独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項7について訂正前の請求項12で限定し、発明が不明瞭となる「前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい」との記載を「前記第2電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい」と訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、訂正前の請求項7について訂正前の請求項12で限定し、不明瞭であった記載を明瞭な記載とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正後の請求項7における「前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第2電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい」という事項は、願書に添付した明細書の【0039】に記載された事項であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正前の請求項7について特許異議申立がされているので、訂正事項5に関して独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項8について訂正前の請求項13で限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、訂正前の請求項8について訂正前の請求項13で限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正後の請求項8における「前記第1導通部の幅方向断面積が前記第2導通部の幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1導通部を形成する材料の熱伝導率が前記第2導通部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい」という事項は、願書に添付した明細書の【0042】~【0044】に記載された事項であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正前の請求項8について特許異議申立がされているので、訂正事項6に関して独立特許要件は課されない。
(6)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項9について訂正前の請求項14で限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、訂正前の請求項9について訂正前の請求項14で限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正後の請求項9における「前記第1接続部の長さが前記第2接続部の長さよりも長いか、および/または、前記第1接続部の幅方向断面積が前記第2接続部の幅方向断面積よりも小さい」という事項は、願書に添付した明細書の【0059】に記載された事項であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正前の請求項9について特許異議申立がされているので、訂正事項7に関して独立特許要件は課されない。
(7)訂正事項8~10について
ア 訂正の目的について
訂正事項8~10は、訂正前の請求項12~14を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8~10は、訂正前の請求項12~14を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8~10は、訂正前の請求項12~14を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正前の請求項12~14について特許異議申立がされているので、訂正事項12~14に関して独立特許要件は課されない。
(8)一群の請求項について
本件訂正前の請求項3~5は請求項1を直接又は間接的に引用する関係であるから、請求項1、3~5は一群の請求項である。
本件訂正前の請求項6は請求項2を直接的に引用する関係であるから、請求項2、6は一群の請求項である。
本件訂正前の請求項10~12は請求項7を直接又は間接的に引用する関係であるから、請求項7、10~12は一群の請求項である。
本件訂正前の請求項13は請求項8を直接的に引用する関係であるから、請求項8、13は一群の請求項である。
本件訂正前の請求項14は請求項9を直接的に引用する関係であるから、請求項9、14は一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、請求項1及び3~5、請求項2及び6、請求項7及び10~12、請求項8及び13、請求項9及び14について訂正することを求めるものであるから、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに当該請求がされたものである。
(9)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであって、同条第9項において準用する同法第126条第5項~第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~5〕、〔2、6〕、〔7、10~12〕、〔8、13〕、〔9、14〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記「第2」のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~14に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される次のとおりである。
【請求項1】
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
前記第1電極部が、第2電極部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1電極部の熱特性および第2電極部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含み、
前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第2電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、保護素子。
【請求項2】
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
前記第1電極部と外部回路とを導通する第1導通部と、
前記第2電極部と外部回路を導通する第2導通部と、
を更に有し、
前記第1導通部が、前記第2導通部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1導通部の熱特性および前記第2導通部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含み、
前記第1導通部の幅方向断面積が前記第2導通部の幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1導通部を形成する材料の熱伝導率が前記第2導通部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、保護素子。
【請求項3】
前記第1ヒューズエレメントが、第2ヒューズエレメントの熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1ヒューズエレメントの熱特性および前記第2ヒューズエレメントの熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の保護素子。
【請求項4】
前記第1ヒューズエレメントの長さが前記第2ヒューズエレメントの長さよりも長いか、前記第1ヒューズエレメントの幅方向断面積が前記第2ヒューズエレメントの幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1ヒューズエレメントを形成する材料の熱伝導率が前記第2ヒューズエレメントを形成する材料の熱伝導率よりも小さい、請求項3に記載の保護素子。
【請求項5】
(削 除)
【請求項6】
(削 除)
【請求項7】
並列接続された複数の保護素子を備える保護回路であって、
複数の保護素子を構成する各保護素子は、
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記複数の保護素子を構成する複数の前記第1ヒューズエレメントが同極に接続されており、
前記複数の保護素子の各々を構成する前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、当該保護素子における前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
前記第1電極部が、第2電極部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1電極部の熱特性および第2電極部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含み、
前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第2電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、保護回路。
【請求項8】
並列接続された複数の保護素子を備える保護回路であって、
複数の保護素子を構成する各保護素子は、
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記複数の保護素子を構成する複数の前記第1ヒューズエレメントが同極に接続されており、
前記複数の保護素子の各々を構成する前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、当該保護素子における前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
前記複数の保護素子を構成する各保護素子は、
前記第1電極部と外部回路とを導通する第1導通部と、
前記第2電極部と外部回路とを導通する第2導通部と、
を更に有し、
前記第1導通部が、前記第2導通部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1導通部の熱特性および前記第2導通部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含み、
前記第1導通部の幅方向断面積が前記第2導通部の幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1導通部を形成する材料の熱伝導率が前記第2導通部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい、保護回路。
【請求項9】
並列接続された複数の保護素子を備える保護回路であって、
複数の保護素子を構成する各保護素子は、
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記複数の保護素子を構成する複数の前記第1ヒューズエレメントが同極に接続されており、
前記複数の保護素子の各々を構成する前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、当該保護素子における前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
複数の前記第1電極部と外部回路との間に配設された複数の第1接続部と、
複数の前記第2電極部と外部回路との間に配設された複数の第2接続部と、
を更に備え、
前記複数の保護素子の各々を構成する前記第1ヒューズエレメントに接続された前記第1接続部は、当該保護素子の前記第2ヒューズエレメントに接続された前記第2接続部の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1接続部の熱特性および前記第2接続部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含み、
前記第1接続部の長さが前記第2接続部の長さよりも長いか、および/または、前記第1接続部の幅方向断面積が前記第2接続部の幅方向断面積よりも小さい、保護回路。
【請求項10】
前記第1ヒューズエレメントが、前記第2ヒューズエレメントの熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1ヒューズエレメントの熱特性および前記第2ヒューズエレメントの熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、請求項7に記載の保護回路。
【請求項11】
前記第1ヒューズエレメントの長さが前記第2ヒューズエレメントの長さよりも長いか、前記第1ヒューズエレメントの幅方向断面積が前記第2ヒューズエレメントの幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1ヒューズエレメントを形成する材料の熱伝導率が、前記第2ヒューズエレメントを形成する材料の熱伝導率よりも大きい、請求項10に記載の保護回路。
【請求項12】
(削 除)
【請求項13】
(削 除)
【請求項14】
(削 除)
第4 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対し通知した取消理由は、概ね、次のとおりである。
1 進歩性
本件の請求項1、3~4に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基いて、請求項2に係る発明は甲第1号証に記載された発明(及び周知技術1)に基いて、請求項7、10~11に係る発明は甲第1号証に記載された発明及び周知技術2に基いて、請求項8~9に係る発明は甲第1号証に記載された発明(、周知技術1)及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~4、7~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 明確性
請求項12に係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 証拠の記載
特許異議申立人提出の証拠方法は以下のとおりである。
甲第1号証:特開2012-59719号公報
甲第2号証:特許第4095426号公報
甲第3号証:特許第6797565号公報
甲第4号証:特許第6707377号公報
甲第5号証:特開2015-35281号公報
以下、「甲第1号証」を「甲1」などという。
1 甲1について
(1)甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載又は示されている。
「【背景技術】
【0002】
過電流だけでなく過電圧も防止するために使用できる保護素子として、基板上に発熱抵抗体と低融点金属体(ヒューズエレメント)とを積層した保護素子が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2等参照。)。これら特許文献1及び特許文献2に記載された保護素子においては、異常時に発熱抵抗体に通電がなされ、当該発熱抵抗体が発熱することによってヒューズエレメントが溶融する。そして、この保護素子においては、溶融したヒューズエレメントが、当該ヒューズエレメントが載置されている電極表面に対する濡れ性のよさに起因して電極上に引き寄せられる。その結果、保護素子においては、ヒューズエレメントが溶断されて電流が遮断されることになる。」
「【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、特定の通電経路のみから通電があった場合であっても、確実に全てのヒューズエレメントを溶断した後に発熱抵抗体の発熱を停止させることができる保護素子を提供することを目的とする。」
「【0014】
この実施の形態は、異常時に低融点金属体(ヒューズエレメント)の溶断によって電流を遮断する保護素子である。特に、この保護素子は、ベース基板上に形成された通電経路の入力となる複数の電極間に複数のヒューズエレメントが配設された構成とされ、各ヒューズエレメントの溶断時間を制御することにより、特定の通電経路から通電があった場合には、全てのヒューズエレメントを溶断した後に発熱抵抗体の発熱を停止させることができるものである。
【0015】
まず、本発明の具体的な内容の説明に先立って、本発明を適用する保護素子の基本的な構成について説明する。
【0016】
保護素子は、図1に平面図及び図2に断面図を示すように、所定の大きさのベース基板11上に、溶断によって電流を遮断するヒューズエレメント12と、異常時に発熱してヒューズエレメント12を溶融するための発熱抵抗体(ヒーター)13とが近接して配設されている。」
「【0024】
また、ヒューズエレメント用電極14a,14b,14c及び発熱抵抗体用電極15には、それぞれ、特に図示しないが、外部端子としての役割を果たすリードが接続されている。このリードは、扁平加工線や丸線等の金属製の線材からなり、半田付けや溶接等によってヒューズエレメント用電極14a,14b,14c及び発熱抵抗体用電極15のそれぞれに取り付けることにより、これらと電気的に接続される。保護素子においては、このようなリード付きの形態を採用する場合、リードの位置を左右対称にすることにより、取り付け作業時に取り付け面を意識することなく作業することが可能となる。」
「【0027】
このような保護素子の回路構成は、図3に示すように表現することができる。すなわち、保護素子は、3つのヒューズエレメント用電極14a,14b,14c間に、低融点金属体からなる2つのヒューズエレメント12a,12bが架け渡されるように配設され、中央のヒューズエレメント用電極14bと発熱抵抗体用電極15との間に発熱抵抗体13が接続されて構成される。すなわち、この保護素子は、両側のヒューズエレメント用電極14a,14cのいずれか又は両方から中央のヒューズエレメント用電極14bへと向かう2つの経路が通電経路とされる。
【0028】
したがって、この保護素子においては、2つの通電経路の双方から通電がなされ、発熱抵抗体13が発熱すると、ヒューズエレメント用電極14a,14b間のヒューズエレメント12aと、ヒューズエレメント用電極14b,14c間のヒューズエレメント12bとが溶断し、被保護装置への通電を遮断するとともに、発熱抵抗体13への通電も遮断する。
【0029】
さて、本発明においては、このような保護素子におけるヒューズエレメント12a,12bのそれぞれの溶断時間を制御することにより、2つの通電経路のうち特定の通電経路から通電があった場合には、全てのヒューズエレメント12a,12bを溶断した後に発熱抵抗体13の発熱を停止させる。特に、保護素子は、「必ず最後に溶断するヒューズエレメント」を特定することができる構成とし、少なくともそのヒューズエレメントが接続されている通電経路から通電があった場合には、その他の全てのヒューズエレメントを先に溶断する。」
「【0031】
まず、第1の方法は、各ヒューズエレメント12a,12bの断面積(幅及び/又は厚み)等、物理的形状に差を設けることである。例えば、保護素子においては、ヒューズエレメント12bの断面積よりもヒューズエレメント12aの断面積を大きくすることにより、ヒューズエレメント12aの溶断時間を、ヒューズエレメント12bの溶断時間よりも長くすることができる。また、保護素子においては、ヒューズエレメント12aとヒューズエレメント12bとの形状そのものを異なるものとすることによっても、これらヒューズエレメント12a,12bのそれぞれの溶断時間を異なるものとすることができる。
【0032】
また、第2の方法は、各ヒューズエレメント12a,12bから発熱抵抗体13までの距離に差を設けることである。例えば、保護素子においては、ヒューズエレメント12bから発熱抵抗体13までの距離よりも、ヒューズエレメント12aから発熱抵抗体13までの距離を長くすることにより、ヒューズエレメント12aの溶断時間を、ヒューズエレメント12bの溶断時間よりも長くすることができる。なお、これらヒューズエレメント12a,12bのそれぞれから発熱抵抗体13までの距離は、平面上での間隔のみを意味するものではなく、発熱抵抗体13を熱源とする伝熱経路となる絶縁膜16の厚み方向の間隔等、3次元的な空間距離を意味する。したがって、保護素子においては、例えば、絶縁膜16の厚みを、ヒューズエレメント用電極14a,14b間とヒューズエレメント用電極14b,14b間とで変化させることにより、ヒューズエレメント12a,12bのそれぞれから発熱抵抗体13までの距離に差を設けてもよく、また、ヒューズエレメント12a,12bのうち一方のヒューズエレメントを、絶縁膜16から浮くような形状にフォーミングする等してヒューズエレメント12a,12bのそれぞれから発熱抵抗体13までの距離に差を設けてもよい。
【0033】
さらに、第3の方法は、各ヒューズエレメント12a,12bと、これらヒューズエレメント12a,12bが溶融した場合に流れ込むこととなるヒューズエレメント用電極14a,14b,14cとの濡れ性に差を設けることである。例えば、保護素子においては、ヒューズエレメント12bと、このヒューズエレメント12bが溶融した場合に流れ込むこととなるヒューズエレメント用電極14b,14cとの濡れ性よりも、ヒューズエレメント12aと、このヒューズエレメント12aが溶融した場合に流れ込むこととなるヒューズエレメント用電極14a,14bとの濡れ性を低下させるようにすることにより、ヒューズエレメント12aの溶断時間を、ヒューズエレメント12bの溶断時間よりも長くすることができる。このような濡れ性は、ヒューズエレメント用電極14a,14b,14cの金属組成を調整することによって変化させることができ、また、ヒューズエレメント12a,12bの金属組成を調整することによっても変化させることができる。
【0034】
さらにまた、第4の方法は、各ヒューズエレメント12a,12b又は発熱抵抗体13に近接する部位の熱容量、熱伝導性や放熱性等、熱的性質に差を設けることである。例えば、保護素子においては、ヒューズエレメント12aに近接する部位の熱容量よりも、ヒューズエレメント12bに近接する部位の熱容量を小さくすることにより、ヒューズエレメント12aの溶断時間を、ヒューズエレメント12bの溶断時間よりも長くすることができる。このような熱的性質は、例えば、ヒューズエレメント12a,12bのうち一方のヒューズエレメント用の電極近傍に銅塊等の他の金属体を接続したり、ベース基板11の一部の内層に金属層を設けたり、ベース基板11の一部にガラス材等を多く混合したりする等の方法によって変化させることができる。
【0035】
また、第5の方法は、各ヒューズエレメント12a,12bの融点に差を設けることである。例えば、保護素子においては、ヒューズエレメント12bの融点よりも、ヒューズエレメント12aの融点を高くするように、低融点金属体を選択することにより、ヒューズエレメント12aの溶断時間を、ヒューズエレメント12bの溶断時間よりも長くすることができる。」
「 図1 図2 図3
[図:0001429992000001.jpg]
」
(2)【0027】【0028】と図3から、ヒューズエレメント12bおよびヒューズエレメント12aは直列接続されていること、発熱抵抗体13はヒューズエレメント12bとヒューズエレメント12aとの間に接続されていること、ヒューズエレメント12bのヒューズエレメント12aとは反対側にヒューズエレメント用電極14cが接続されていること、ヒューズエレメント12aのヒューズエレメント12bとは反対側にヒューズエレメント用電極14aが接続されていること、ヒューズエレメント用電極14bはヒューズエレメント12bとヒューズエレメント12aとの間に接続され、且つ発熱抵抗体13と直列接続されているとことがわかる。
(3)甲1に記載されている発明
上記(1)及び(2)を総合すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。
(甲1-1発明)
「直列接続されているヒューズエレメント12bおよびヒューズエレメント12aと、
前記ヒューズエレメント12bと前記ヒューズエレメント12aとの間に接続されている発熱抵抗体13と、
前記ヒューズエレメント12bの前記ヒューズエレメント12aとは反対側に接続されているヒューズエレメント用電極14cと、
前記ヒューズエレメント12aの前記ヒューズエレメント12bとは反対側に接続されているヒューズエレメント用電極14aと、
前記ヒューズエレメント12bと前記ヒューズエレメント12aとの間に接続され、且つ前記発熱抵抗体13と直列接続されているヒューズエレメント用電極14b、とを有し、
過電流だけでなく過電圧も防止するために、前記ヒューズエレメント12aの溶断時間を前記ヒューズエレメント12bの溶断時間よりも長くすることができ、
各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位の熱的性質に差を設け、
各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位の熱的性質は、熱伝導性や熱容量を含む、保護素子。」
(甲1-2発明)
「前記ヒューズエレメント用電極14c及び前記ヒューズエレメント用電極14aには外部端子としての役割を果たすリードが接続されている、甲1-1発明の保護素子。」
2 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0003】
図9の符号100は、従来技術の電池装置を示しており、充放電可能な蓄電装置105と、スイッチ素子104と、制御回路106とを有している。」
「【0020】
図11の符号101は、複数個(ここでは3個)の保護回路U1~U3が並列接続されている。」
「 図11
[図:0001429992000002.jpg]
」
3 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載又は示されている。
「(45)発行日 令和2年12月9日(2020.12.9)」(1頁左側2行目)
4 甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が記載又は示されている。
「(45)発行日 令和2年6月10日(2020.6.10)」(1頁左側2行目)
5 甲5の記載事項
甲5には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0059】
[接続電極の幅]
ここで、接続電極25(A1),25(A2),25(P2)は、図3、図6に示すように、接続対象となる保護素子3の外部接続端子21(A1),21(A2),21(P2)の幅と略同じ幅で形成されている。これにより、回路基板2は、実装領域Rにおける熱容量の大きな電極パターンの面積を必要最小限に抑え、保護素子3からの放熱を抑制して効率よく可溶導体13を加熱、溶断することができる。
【0060】
[第2の形態]
また、回路基板2は、接続電極25(A1),25(A2)の実装領域R外の幅を、実装領域R内における幅よりも拡幅してもよい。例えば、図7に示すように、回路基板2は、接続電極25(A1),25(A2)の実装領域R内の幅W1を保護素子3の外部接続端子21(A1),21(A2)と略同じ幅に形成するとともに、実装領域R外の幅W2を絶縁基板11の第1、第2の辺11b,11cと同じ幅に形成してもよい。
【0061】
このように、回路基板2は、接続電極25(A1),25(A2)の幅を、実装領域R内においては保護素子3の外部接続端子21(A1),21(A2)と略同じに狭く形成することで、保護素子3の下部に形成された電極を必要最小限に抑えて放熱を抑制することができる。また、回路基板2は、接続電極25(A1),25(A2)の幅を、実装領域R外において拡幅し、保護素子3の絶縁基板11と略同じ幅に形成することで、保護素子3からの放熱を抑制しながら、回路基板2の熱容量を増大させて高定格化に対する熱対策を図り、また接続電極25(A1),25(A2)の低抵抗化による高定格化を図ることができる。
【0062】
接続電極25(A1),25(A2)は、保護素子3の放熱抑制と、回路基板2の高定格化及び低抵抗化を図るために、図7に示すように、実装領域Rの直前で幅狭となるように形成することが好ましい。
【実施例4】
【0063】
次いで、第4の実施例について説明する。第4の実施例では、実装領域Rの内における接続電極25(A1),25(A2)の幅を変えた保護回路基板1を用意し、各可溶導体13の溶断時間を測定した。
【0064】
比較例4に係る回路基板120は、図8に示すように、接続電極25(A1),25(A2)の幅Wを、実装領域Rの内外にわたって絶縁基板11の第1、第2の辺11b,11cの幅と同幅(4mm)で形成した。一方、実施例4に係る回路基板2は、実装領域R内においては保護素子3の外部接続端子21(A1),21(A2)と略同幅(2mm)で、実装領域R外においては絶縁基板11の第1、第2の辺11b,11cの幅と同幅(4mm)で形成した(図7参照)。また、実施例4及び比較例4に係る保護素子としては、上述した保護素子3を用いた。
【0065】
そして、実施例4及び比較例4に係る保護素子3の各発熱体14に10Wの電力を印加し、可溶導体13の溶断時間を比べたところ、比較例4に係る保護素子3では、可溶導体13の溶断時間が3.5secであったのに対して、実施例4に係る保護素子3では、可溶導体13の溶断時間が。1.6secとなり、速溶断性に優れていることが分かった。
【0066】
また、実施例4と比較例4に係る保護回路基板に、それぞれ5A通電させたときの、保護素子3の温度を測定したところ、実施例4及び比較例4ともに55℃と同じであった。
【0067】
すなわち、比較例4では、接続電極25(A1),25(A2)が幅広に形成され、保護素子3の実装領域R内に、必要以上の面積で熱容量の大きな電極パターンが形成されているため、絶縁基板11の下方へより多くの熱が放熱され、発熱体14の熱が効率よく可溶導体13へ伝わらなかった。これに対して、実施例4では、実装領域R内においては、接続電極25(A1),25(A2)が外部接続端子21(A1),21(A2)と略同幅で幅狭に形成されているため、絶縁基板11の下方への放熱が抑制され効率よく可溶導体13を加熱することができたことによる。
【0068】
一方、5A通電時の保護素子3の温度は、実施例4及び比較例4ともに55℃と同じであり、保護素子3の温度上昇率は同等であり、通常使用時における放熱性は同等であることが分かる。
【0069】
なお、比較例4の構成において、接続電極25(A1),25(A2)に、実装領域R内の外部接続端子21(A1),21(A2)と接続する領域を除いてカバーレイを形成し、絶縁を図った場合も、10W印加時の可溶導体13の溶断時間は、カバーレイを形成しない場合と同じであった。これより、カバーレイによって実装領域R内における接続電極25(A1),25(A2)の露出面積を調整しても、放熱抑制効果はみられないことが分かった。
【0070】
[第3の形態]
なお、上述した実施の形態では、接続電極25(A1),25(A2)の実装領域R外の幅W2を、絶縁基板11の第1、第2の辺11b,11cと同じ幅に形成したが、図9に示すように、保護回路基板1は、実装領域Rを除いて、回路基板2の広範囲にわたって接続電極25(A1),25(A2)を形成してもよい。
【0071】
図9に示すように、回路基板2は、接続電極25(A1),25(A2)の実装領域R内の幅W1を保護素子3の外部接続端子21(A1),21(A2)と略同じ幅に形成するとともに、実装領域R外の幅W2を回路基板2の幅方向に亘って広範に形成してもよい。
【0072】
これにより、保護回路基板1は、電子機器の高容量化、高定格化に伴い通電電流が高くなった場合にも、発熱の抑制、あるいは放熱の促進を効率よく行うことができる。また、保護回路基板1は、回路基板2の実装領域Rを除く広範囲に接続電極25(A1),25(A2)を広げるとともに、必要な個所には、適宜カバーレイの形成、ソルダーレジストの印刷などにより絶縁を図ってもよい。
【0073】
この場合も、保護回路基板1は、保護素子3の実装領域Rにおいては、接続電極25(A1),25(A2)の幅W1を外部接続端子21(A1),21(A2)と略同等とするとともに、他の不要電極を形成しないことにより、絶縁基板11の下方への放熱を抑制し、効率よく可溶導体13を加熱することができる。
【実施例5】
【0074】
次いで、第5の実施例について説明する。図9、図10に示すように、第5の実施例では、第4の実施例に比して、実装領域R外における接続電極25(A1),25(A2)の幅を大幅に広げ、回路基板2の広範囲にわたって形成した点で異なる。
【0075】
すなわち、図10に示すように、第5の実施例の比較例5に係る回路基板130は、接続電極25(A1),25(A2)の幅Wを、実装領域Rの内外にわたって回路基板2の幅方向に亘って広範に(W=12mm)で形成した。一方、図9に示すように、第5の実施例の実施例5に係る回路基板2は、実装領域R内の幅W1を保護素子3の外部接続端子21(A1),21(A2)と略同幅(W1=2mm)とし、実装領域R外の幅W2を回路基板2の幅方向に亘って広範に(W2=12mm)で形成した。また、実施例5及び比較例5に係る保護素子としては、上述した保護素子3を用いた。
【0076】
そして、実施例5及び比較例5に係る保護素子3の各発熱体に10Wの電力を印加し、可溶導体13の溶断時間を比べたところ、比較例5に係る保護素子3では、可溶導体13の溶断時間が5.8secであったのに対して、実施例5に係る保護素子3では、可溶導体13の溶断時間が。2.4secとなり、速溶断性に優れていることが分かった。
【0077】
また、実施例5と比較例5に係る保護回路基板に、それぞれ5A通電させたときの、保護素子3の温度を測定したところ、実施例45は42℃、比較例5では41℃であった。
【0078】
第5の実施例においても、比較例5では、保護素子3の実装領域R内に、必要以上の面積で電極パターンが形成されているため、絶縁基板11の下方より多くの熱が放熱され、発熱体14の熱が効率よく可溶導体13へ伝わらなかった。これに対して、実施例5では、実装領域R内においては、接続電極25(A1),25(A2)が外部接続端子21(A1),21(A2)と略同幅で幅狭に形成されているため、絶縁基板11の下方への放熱が抑制され効率よく可溶導体13を加熱することができた。
【0079】
また、5A通電時の保護素子3の温度は、実施例5で42℃、比較例5で41℃と、保護素子3の温度上昇率は同等であり、通常使用時における放熱性は同等であることが分かる。
【0080】
なお、比較例5に係る回路基板130の構成において、図11に示すように、実装領域R内の接続電極25(A1),25(A2),25(P2)の外部接続端子21(A1),21(A2),21(P2)と接続する領域を除いてカバーレイ131を形成し、絶縁を図った場合も、10W印加時の可溶導体13の溶断時間は5.7secと、カバーレイ131を形成しない場合(図10参照)とほぼ同じであった。これより、カバーレイによって実装領域R内における接続電極25(A1),25(A2),25(P2)の露出面積を調整しても、放熱抑制効果はみられないことが分かった。
【0081】
なお、5A通電時の保護素子3の温度は、比較例5では41℃であるのに対し、カバーレイを付した場合、43℃と上昇し、通常使用時における放熱性は、カバーレイ131を付した場合にやや悪化することが分かる。」
「 図6 図7 図8
[図:0001429992000003.jpg]
図9 図10
[図:0001429992000004.jpg]
」
6 当審で追加する文献6(特開2017-117774号公報)の記載事項
文献6は、甲3の公開公報である。文献6には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0004】
第1、第2の電極81,82は、絶縁基板85の裏面85bに設けられた第1、第2の実装電極91,92とスルーホール90を介して接続されている。」
「 図31
[図:0001429992000005.jpg]
」
7 当審で追加する文献7(特開2017-174592号公報)の記載事項
文献7は、甲4の公開公報である。文献7には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0079】
[ヒューズ素子]
ヒューズ素子60は、(中略)絶縁基板2を貫通する孔として形成され、第1の表面電極3及び第2の表面電極4と、第1の裏面電極3a及び第2の裏面電極4aとをそれぞれ接続し、絶縁基板2の表面2aと裏面2bの間での電流経路となる第1の貫通導電部15及び第2の貫通導電部16とを備え(後略)」
「 図13
[図:0001429992000006.jpg]
」
第6 取消理由通知に記載した取消理由について
1 進歩性について
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1-1発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、甲1-1発明の「ヒューズエレメント12b」は本件発明1の「第1ヒューズエレメント」に相当し、以下同様に、「ヒューズエレメント12a」は「第2ヒューズエレメント」に、「発熱抵抗体13」は「ヒーター」に、「ヒューズエレメント用電極14c」は「第1電極部」に、「ヒューズエレメント用電極14a」は「第2電極部」に、「ヒューズエレメント用電極14b」は「第3電極部」に、「過電流だけでなく過電圧も防止するために」という事項は「前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに」という事項に、「前記ヒューズエレメント12aの溶断時間を前記ヒューズエレメント12bの溶断時間よりも長くすることができ」という事項は「前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており」という事項に、それぞれ相当する。
甲1-1発明の「各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位の熱的性質に差を設け、各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位の熱的性質は、熱伝導性や熱容量を含み」という事項と本件発明1の「前記第1電極部が、第2電極部の熱特性とは異なる熱特性を有し、前記第1電極部の熱特性および第2電極部の熱特性は熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む」という事項とは、「第1部位が、第2部位の熱特性とは異なる熱特性を有し、前記第1部位の熱特性および第2部位の熱特性は熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む」点で共通する。
したがって、本件発明1と甲1-1発明とは次の一致点及び相違点を有する。
<一致点1>
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
第1部位が、第2部位の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1部位の熱特性および第2部位の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護素子。
<相違点1-1>
第1の部位と第2の部位に関し、本件発明1は「第1電極部」と「第2電極部」であるのに対し、甲1-1発明では「各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位」である点。
<相違点1-2>
本件発明1は「前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第2電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい」のに対し、甲1-1発明では、各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位を形成する材料の熱伝導率が明らかではない点。
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
甲2、甲5、のいずれにも、電極部を形成する材料の熱伝導率を変えることで、ヒューズエレメントの溶断速度をコントロールすることは記載も示唆もされていない。
そして、本件発明は、相違点1-2に係る構成を備えることで、第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aに過電流が流れたときに、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも先に遮断され、極めて簡単な構成で、安全性を更に向上することができる(【0039】参照。)、という効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲1-1発明及び甲2、甲5に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(2)本件発明2について
本件発明2と甲1-2発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記(1)で検討した相当関係に加えて、甲1-2発明の「前記ヒューズエレメント用電極14c及び前記ヒューズエレメント用電極14aには外部端子としての役割を果たすリードが接続されており」という事項は、本件発明2の「前記第1電極部と外部回路とを導通する第1導通部と、前記第2電極部と外部回路を導通する第2導通部と、を更に有し
」という事項に相当する。
また、甲1-2発明の「各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位の熱的性質に差を設け、各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位の熱的性質は、熱伝導性や熱容量を含む」という事項と本件発明2の「前記第1導通部が、第2導通部の熱特性とは異なる熱特性を有し、前記第1導通部の熱特性および第2導通部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含み」という事項とは、「第1部位が、第2部位の熱特性とは異なる熱特性を有し、前記第1部位の熱特性および第2部位の熱特性は熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む」点で共通する。
したがって、本件発明2と甲1-2発明とは次の一致点及び相違点を有する。
<一致点2>
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
前記第1電極部と外部回路とを導通する第1導通部と、
前記第2電極部と外部回路を導通する第2導通部と、
を更に有し、
第1部位が、第2部位の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1部位の熱特性および第2部位の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護素子。
<相違点2-1>
第1の部位と第2の部位に関し、本件発明2は「前記第1導通部」と「前記第2導通部」であるのに対し、甲1-2発明では「各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位」である点。
<相違点2-2>
本件発明2は「前記第1導通部の幅方向断面積が前記第2導通部の幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1導通部を形成する材料の熱伝導率が前記第2導通部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい」のに対し、甲1-2発明では、各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位の幅方向断面積や、当該近接する部位を形成する材料の熱伝導率が明らかではない点。
事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
甲2、甲5のいずれにも、導通部の幅方向断面積や、導通部を形成する材料の熱伝導率を変えることで、ヒューズエレメントの溶断速度をコントロールすることは記載も示唆もされていない。
そして、本件発明は、相違点2-2に係る構成を備えることで、第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aに過電流が流れたときに、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも確実に先に遮断され、極めて簡単な構成で、安全性を更に向上することができる。(【0044】参照。)、という効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、甲1-2発明及び甲2、甲5に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(3)本件発明3~4について
本件発明3~4も、本件発明1の<相違点1-2>と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲1-1発明及び甲2、甲5に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(4)本件発明7について
本件発明7と甲1-1発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記(1)で検討した相当関係を踏まえれば、次の一致点及び相違点を有する。
<一致点7>
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
第1部位が、第2部位の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1部位の熱特性および第2部位の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護素子。
<相違点7-1>
第1の部位と第2の部位に関し、本件発明7は「第1電極部」と「第2電極部」であるのに対し、甲1-1発明では「各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位」である点。
<相違点7-2>
本件発明7は、「並列接続された複数の保護素子を備える保護回路であって、複数の保護素子を構成する各保護素子は、」第1ヒューズエレメントや第2ヒューズエレメント等を有し、「前記複数の保護素子を構成する複数の前記第1ヒューズエレメントが同極に接続されており、前記複数の保護素子の各々を構成する」第1ヒューズエレメント及び第2ヒューズエレメントに過電流が流れたときに第1ヒューズエレメントが先に遮断されるように構成されているのに対し、甲1-1発明は保護素子単体である点。
<相違点7-3>
本件発明7は「前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第2電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい」のに対し、甲1-1発明では、各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位を形成する材料の熱伝導率が明らかではない点。
事案に鑑み、相違点7-3について検討する。
相違点7-3は、上記(1)における相違点1-2と実施的に同じであり、相違点1-2については、上記(1)で検討した通りである。
したがって、本件発明7は、甲1-1発明及び甲2、甲5に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(5)本件発明8について
本件発明8と甲1-2発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記(2)で検討した相当関係を踏まえれば、次の一致点及び相違点を有する。
<一致点8>
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
前記第1電極部と外部回路とを導通する第1導通部と、
前記第2電極部と外部回路を導通する第2導通部と、
を更に有し、
第1部位が、第2部位の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1部位の熱特性および第2部位の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護素子。
<相違点8-1>
第1の部位と第2の部位に関し、本件発明8は「前記第1導通部」と「前記第2導通部」であるのに対し、甲1-2発明では「各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位」である点。
<相違点8-2>
本件発明8は、「並列接続された複数の保護素子を備える保護回路であって、複数の保護素子を構成する各保護素子は、」第1ヒューズエレメントや第2ヒューズエレメント等を有し、「前記複数の保護素子を構成する複数の前記第1ヒューズエレメントが同極に接続されており、前記複数の保護素子の各々を構成する」第1ヒューズエレメント及び第2ヒューズエレメントに過電流が流れたときに第1ヒューズエレメントが先に遮断されるように構成されており、「前記複数の保護素子を構成する各」保護素子が第1導通部等を有しているのに対し、甲1-2発明は保護素子単体である点。
<相違点8-3>
本件発明8は「前記第1導通部の幅方向断面積が前記第2導通部の幅方向断面積よりも小さいか、および/または、前記第1導通部を形成する材料の熱伝導率が前記第2導通部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい」のに対し、甲1-2発明では、各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位の幅方向断面積や、当該近接する部位を形成する材料の熱伝導率が明らかではない点。
事案に鑑み、相違点8-3について検討する。
相違点8-3は、上記(2)における相違点2-2と実施的に同じであり、相違点2-2については、上記(2)で検討した通りである。
したがって、本件発明8は、甲1-2発明及び甲2、甲5に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(6)本件発明9について
本件発明9と甲1-2発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記(1)で検討した相当関係に加えて、甲1-2発明の「前記ヒューズエレメント用電極14c及び前記ヒューズエレメント用電極14aには外部端子としての役割を果たすリードが接続されており」という事項は、本件発明9の「複数の前記第1電極部と外部回路との間に配設された複数の第1接続部と、複数の前記第2電極部と外部回路との間に配設された複数の第2接続部と、を更に備え」という事項に相当する。
また、甲1-2発明の「各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位の熱的性質に差を設け、各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位の熱的性質は、熱伝導性や熱容量を含む」という事項と本件発明9の「前記複数の保護素子の各々を構成する前記第1ヒューズエレメントに接続された前記第1接続部は、当該保護素子の前記第2ヒューズエレメントに接続された前記第2接続部の熱特性とは異なる熱特性を有し、前記第1接続部の熱特性および前記第2接続部の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含み」という事項とは、「第1部位が、第2部位の熱特性とは異なる熱特性を有し、前記第1部位の熱特性および第2部位の熱特性は熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む」点で共通する。
したがって、本件発明9と甲1-2発明とは次の一致点及び相違点を有する。
<一致点9>
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
を有し、
前記第1ヒューズエレメントおよび前記第2ヒューズエレメントに過電流が流れたとき、又は、保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、前記第1ヒューズエレメントが前記第2ヒューズエレメントよりも先に遮断されるように構成されており、
複数の前記第1電極部と外部回路との間に配設された複数の第1接続部と、
複数の前記第2電極部と外部回路との間に配設された複数の第2接続部と、
を更に備え、
第1部位が、第2部位の熱特性とは異なる熱特性を有し、
前記第1部位の熱特性および第2部位の熱特性は、熱抵抗および熱容量の少なくとも一方を含む、保護素子。
<相違点9-1>
第1の部位と第2の部位に関し、本件発明9は「前記第1ヒューズエレメントに接続された前記第1接続部」と「前記第2ヒューズエレメントに接続された前記第2接続部」であるのに対し、甲1-2発明では「各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位」である点。
<相違点9-2>
本件発明9は、「並列接続された複数の保護素子を備える保護回路であって、複数の保護素子を構成する各保護素子は、」第1ヒューズエレメントや第2ヒューズエレメント等を有し、「前記複数の保護素子を構成する複数の前記第1ヒューズエレメントが同極に接続されており、前記複数の保護素子の各々を構成する」第1ヒューズエレメント及び第2ヒューズエレメントに過電流が流れたときに第1ヒューズエレメントが先に遮断されるように構成されており、「前記複数の保護素子を構成する各」保護素子が第1接続部等を有しているのに対し、甲1-2発明は保護素子単体である点。
<相違点9-3>
本件発明9は「前記第1接続部の長さが前記第2接続部の長さよりも長いか、および/または、前記第1接続部の幅方向断面積が前記第2接続部の幅方向断面積よりも小さい」のに対し、甲1-2発明では、各ヒューズエレメント12a,12b又は前記発熱抵抗体13に近接する部位の長さや幅方向断面積が明らかではない点。
事案に鑑み、相違点9-3について検討する。
甲2、甲5のいずれにも、接続部の長さや幅方向断面積を変えることで、ヒューズエレメントの溶断速度をコントロールすることは記載も示唆もされていない。
そして、本件発明は、相違点9-3に係る構成を備えることで、第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aに過電流が流れたとき、又は、保護回路1に接続された二次電池33に過電圧が印加されたときに、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも確実に先に遮断され、極めて簡単な構成で、安全性を更に向上することができる(【0059】参照。)、という効果を奏するものである。
したがって、本件発明9は、甲1-2発明及び甲2、甲5に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(7)本件発明10~11について
本件発明10~11も、本件発明7の<相違点7-3>と同一の構成を備えるものであるから、本件発明7と同じ理由により、当業者であっても、甲1-2発明及び甲2、甲5に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
2 明確性について
本件訂正前の請求項12には「前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率が、前記第1電極部を形成する材料の熱伝導率よりも小さい」と記載されており、同じもの同士を比較しているにもかかわらず熱伝導率が異なるような記載されているとなっているため、発明を合理的に理解することができず、発明が明確でなかったが、本件訂正により請求項12は削除されたため、当該取消理由は解消した。
3 特許異議申立人の主張について
(1)特許異議申立人は令和7年6月24日に提出した意見書において、次の主張をしている。
ア 進歩性について
参考資料1(特開平9-320445号公報)の【0007】には「溶断特性と言うのは、電流値と溶断時間との関係を表すものであり、電流保護素子配線部の伝熱特性に置き換えることができる。すなわち、電流保護素子配線部に通電した時の発熱量と周りの部材への放熱量とのバランスにより、溶断するまでの温度上昇度が決定し溶断時間が決まるのである。この溶断時間に影響する因子は、抵抗値、伝熱面積、熱伝達率である。抵抗値は、発熱量に対する因子であり、抵抗値が大きいと溶断時間は短くなるし、小さいと溶断時間は長くなる。伝熱面積と熱伝達率は放熱量に対する因子であり、それらが大きいと溶断時間は長くなるし、小さいと溶断時間は短くなる。」と記載されており、参考資料2(特開2010-219063号公報)の【0003】には「ヒューズエレメントの発熱量と周りの部材への放熱量とのバランスにより、溶断するまでの温度上昇が決定し、溶断時間が決まる」と記載されている。また、参考資料3(「熱伝導率とは」https://cend.jp/heat_primer/thermal_conductivity.html)の「1.熱伝導率とは」の式(1)にも記載されているとおり、導体を流れる熱量Qは、熱伝導率λを小さくすることで小さくなり、断面積Sを小さくすることで小さくなり、長さdxが大きいほど小さくなることは技術常識である。これらのことから、本件発明1~2、7~9は甲1-1発明又は甲1-2発明と、周知技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 実施可能要件について
本件発明1~2、7~9のようにヒータを発熱させてヒータ素子の直上近傍の部分のヒューズエレメントを加熱、溶断するメカニズムをもつ保護素子では、電極部、導通部、接続部の熱的性質に差を設けたとしても、ヒューズエレメントにおけるヒータ近傍部分に与える熱影響が小さく、ヒータの加熱動作時においてヒューズエレメントの溶断順序を制御できない可能性がある。そして、本件特許の発明の詳細な説明には、どのようなメカニズムにより第2ヒューズエレメントよりも先に第1ヒューズエレメントが先に遮断されるのかについては一切記載されていないから、発明の詳細な説明は、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
(2)当審における判断
ア 進歩性について
上記意見書において主張している参考資料1~3のいずれにも、ヒューズエレメントの溶断速度をコントロールするために、電極部を形成する材料の熱伝導率を変えること、導通部の幅方向断面積や導通部を形成する材料の熱伝導率を変えること、接続部の長さや幅方向断面積を変えることは、記載も示唆もされていない。むしろ、参考資料2の【0003】には、特許異議申立人が引用した記載に続いて「ヒューズエレメント周りの部材の材質や伝熱面積については、具体的に検討されておらず、ヒューズエレメントから周りの部材への放熱量を制御する手段や方法についても示されていない。」と記載されている。
したがって、参考資料1~3を勘案しても、本件発明1~2、7~9は甲1-1発明又は甲1-2発明と、周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、上記(1)アの特許異議申立人の主張を採用することはできない。
イ 実施可能要件について
実施可能要件についての主張は、当該意見書において提示された実質的に新たな理由であるところ、訂正により追加された事項についての見解ではないから、当該実質的に新たな理由は採用しない。
しかし、予備的に検討すると、発明の詳細な説明の【0049】には「例えば、(1)第1接続部31の熱抵抗が、第2接続部32の熱抵抗よりも大きいか、(2)第1接続部31の熱容量が、第2接続部32の熱容量よりも小さいか、あるいは(3)上記(1)~(2)の双方を満たすことが好ましい。」と記載され、【0050】には「第1接続部31の幅方向断面積が、第2接続部32の幅方向断面積よりも小さく、第1接続部31の熱抵抗が第2接続部32の熱抵抗よりも大きいため、」「保護回路に接続された二次電池に過電圧が印加されたときに、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも先に遮断される。」と記載されている。そして、電極部や導通部についても第1ヒューズエレメント側と第2ヒューズエレメント側とで熱伝導率や幅方向断面積等に差を設けて熱抵抗や熱容量を変えることで、接続部の場合と同様のメカニズムによって第1ヒューズエレメント12Aを第2ヒューズエレメント13Aよりも先に遮断させることは、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく実施することができるといえる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、上記(1)イの特許異議申立人の主張を採用することはできない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由は、次のとおりである。
(1)本件発明1~6は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)本件発明2は、甲1に記載された発明、甲3及び甲4に記載されている周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(3)本件発明5~6、12~14は、甲1に記載された発明及び周知技術・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
2 当審における判断
(1)新規性(上記1(1))について
上記第6の1(1)~(3)において検討した通り、本件発明1、3~4は甲1-1発明と相違点1-1及び1-2で相違し、本件発明2は甲1-2発明と相違点2-1及び2-2で相違する。したがって、本件発明1、3~4は甲1-1発明ではなく、本件発明2は甲1-2発明ではない。
したがって、本件発明1~4は、特許法29条1項3号に該当しないから、当該請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものではない。
また、本件の請求項5~6は、本件訂正により削除されたから、本件の請求項5~6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
(2)進歩性(上記1(2))について
甲3~4の特許公報の発行日は上記第5の3~4に摘記したとおり、それぞれ令和2年12月9日、令和2年6月10日であって、甲3~4は本件特許の優先日である平成30年11月26日よりも後に発行された刊行物であるから、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物ではない。したがって、甲3~4に記載されている事項は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明とは認められないから、甲3~4を証拠として、本件発明2は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということはできない。
そこで、甲3~4に代えて、文献6~7を加えて以下検討する。
本件発明2と甲1-2発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記第6の1(2)で検討した通り、相違点2-1及び相違点2-2において相違する。
事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
甲2、甲5、当審で追加する文献6~7のいずれにも、導通部の幅方向断面積や、導通部を形成する材料の熱伝導率を変えることで、ヒューズエレメントの溶断速度をコントロールすることは記載も示唆もされていない。
そして、本件発明は、相違点2-2に係る構成を備えることで、「第1ヒューズエレメント12Aおよび第2ヒューズエレメント13Aに過電流が流れたときに、第1ヒューズエレメント12Aが第2ヒューズエレメント13Aよりも確実に先に遮断され、極めて簡単な構成で、安全性を更に向上することができる。」(【0044】参照。)、という効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、甲1-2発明及び甲2、甲5、文献6~7に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
よって、請求項2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
(3)進歩性(上記1(3))について
本件の請求項5~6、12~14は、本件訂正により削除されたから、本件の請求項5~6、12~14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件の請求項1~4、7~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1~4、7~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項5~6、12~14は本件訂正により削除された。これにより、請求項5~6、12~14に係る特許に対する特許異議の申立は、申立の対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700848