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特許異議申立

2024-700238

保護素子

審判番号
2024-700238
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-156078
登録番号
7344857
請求日
2024年03月13日
審決日
2025年06月04日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】ショット日本株式会社
  • 【権利者代理人】西村 竜平
  • 【権利者代理人】齊藤 真大
  • 【権利者代理人】中村 惇志
  • 【権利者代理人】上村 喜永
  • 【権利者代理人】前田 治子
  • 【異議申立人】横沢 聡
審判長/審判官
  • 審判長 小川 恭司
  • 審判官 内田 博之
  • 審判官 尾崎 和寛
分類
P1651.113-ZAA(H01H) / P1651.121-ZAA(H01H) / P1651.537-ZAA(H01H) / P1651.851-ZAA(H01H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第113条第2号、特許法第113条第4号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7344857号発明「保護素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7344857号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、8、9及び10について訂正することを認める。 特許第7344857号の請求項1~10に係る特許を取り消す。

理由

理 由 1 手続の経緯 特許第7344857号の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和2年9月17日に出願され、令和5年9月6日にその特許権の設定登録がされ、令和5年9月14日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年3月13日 : 特許異議申立人横沢聡(以下、「特許異議申 立人」という。)による請求項1~10に係 る特許に対する特許異議の申立て 令和6年6月 3日付け : 取消理由通知書 令和6年8月 2日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和6年9月20日 : 異議申立人による意見書の提出 令和6年12月20日付け: 取消理由通知書(決定の予告) 上記令和6年12月20日付け取消理由通知書に対して、特許権者の応答はなかった。 2 訂正の適否 (1)訂正の内容 令和6年8月2日に提出された訂正請求書で特許権者が請求する訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所)。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記主電極、前記通電電極、前記ヒューズエレメント、または前記絶縁体の何れか1つ以上に排気路を有し、」と記載されているのを、「少なくとも前記通電電極に排気路を有し、」に訂正する(請求項1を引用する請求項2~7も同様に訂正する)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「前記排気路は、前記ヒューズエレメントの溶断動作時に前記フラックスから発生するガスを排気するように構成されている、」と記載されているのを、「前記排気路は、前記ヒューズエレメントの直下から、前記ヒューズエレメントの外縁を越えて周囲にまで伸びて形成されており、前記ヒューズエレメントの溶断動作時に前記フラックスから発生するガスを排気するように構成されている、」に訂正する(請求項1を引用する請求項2~7も同様に訂正する)。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8に「前記主電極、前記通電電極、前記ヒューズエレメント、または前記絶縁体の何れか1つ以上に排気路を有し」と記載されているのを、「少なくとも前記通電電極に排気路を有し」に訂正する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項8に「前記発熱体は、前記主電極と前記通電電極とは前記絶縁体の異なった板面に設けられている」と記載されているのを、「当該排気路が前記ヒューズエレメントの直下から、前記ヒューズエレメントの外縁を越えて周囲にまで伸びて形成されており、前記発熱体は、前記主電極と前記通電電極とは前記絶縁体の異なった板面に設けられている」に訂正する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9に「前記主電極、前記通電電極、前記ヒューズエレメント、または前記絶縁体の何れか1つ以上に排気路を有し」と記載されているのを、「少なくとも前記通電電極に排気路を有し」に訂正する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項10に「前記主電極、前記通電電極、前記ヒューズエレメント、または前記絶縁体の何れか1つ以上に排気路を有し」と記載されているのを、「少なくとも前記通電電極に排気路を有し」に訂正する。 (2)一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~7については、請求項2~7はそれぞれ請求項1の記載を引用しているものであるから、本件訂正のうち訂正事項1及び2は、一群の請求項1~7について請求されている。したがって、本件訂正は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。 (3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1 訂正事項1は、請求項1の「排気路」について、排気路が形成されている箇所を、訂正前の「主電極、通電電極、ヒューズエレメント、または絶縁体の何れか1つ以上」から、訂正後において「少なくとも通電電極」に限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書」ということがある。)の段落、【0010】には、「・・・(略)・・・通電電極14の一部に設けた切欠部からなる排気路16を有する。・・・(略)・・・」と記載され、また、段落【0011】には、「・・・(略)・・・通電電極24は、切欠部からなる排気路26aを有し、・・・(略)・・・」と記載され、また、段落【0012】には、「・・・(略)・・・通電電極34は、切欠部からなる溝状の排気路36a・・・(略)・・・とを有し・・・(略)・・・」と記載され、さらに、段落【0013】には、「・・・(略)・・・通電電極44の一部に設けた切欠部からなる排気路46を有する。・・・(略)・・・」と記載されている。また、【図1】、【図2】、【図3】、【図4】には、それぞれ、通電電極14、24、34、44に排気路16、26a、36a、46が記載されている。 したがって、訂正事項1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 訂正事項1は、請求項1の「排気路」について、排気路が形成されている箇所を、訂正前の「主電極、通電電極、ヒューズエレメント、または絶縁体の何れか1つ以上」から、訂正後において「少なくとも通電電極」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項1の「排気路」について、「前記排気路は、前記ヒューズエレメントの直下から、前記ヒューズエレメントの外縁を越えて周囲にまで伸びて形成されており」との記載により、訂正後において、排気路がどのような態様で形成されているかを具体的に特定し、更に限定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 排気路の態様として、当初明細書等の【図1】、【図2】、【図3】、【図4】には、それぞれ、通電電極14、24、34、44に形成された排気路16、26a、36a、46が、ヒューズエレメント15、25、35、45の直下から、ヒューズエレメント15、25、35、45の外縁を越えて周囲にまで伸びていることが記載されている。 したがって、訂正事項2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 訂正事項2は、排気路の態様を具体的に特定し限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項3 訂正事項3は、請求項8の「排気路」について、排気路が形成されている箇所を、訂正前の「主電極、通電電極、ヒューズエレメント、または絶縁体の何れか1つ以上」から、訂正後において「少なくとも通電電極」に限定するものであり、訂正事項1と同様の訂正である。 したがって、上記アでの説示と同様の理由により、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 訂正事項4 訂正事項4は、請求項8の「排気路」について、「前記排気路は、前記ヒューズエレメントの直下から、前記ヒューズエレメントの外縁を越えて周囲にまで伸びて形成されており」との記載により、訂正後において、排気路がどのような態様で形成されているかを具体的に特定し、更に限定するものであり、訂正事項2と同様の訂正である。 したがって、上記イでの説示と同様の理由により、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ 訂正事項5 訂正事項5は、請求項9の「排気路」について、排気路が形成されている箇所を、訂正前の「主電極、通電電極、ヒューズエレメント、または絶縁体の何れか1つ以上」から、訂正後において「少なくとも通電電極」に限定するものであり、訂正事項1と同様の訂正である。 したがって、上記アでの説示と同様の理由により、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 カ 訂正事項6 訂正事項6は、請求項10の「排気路」について、排気路が形成されている箇所を、訂正前の「主電極、通電電極、ヒューズエレメント、または絶縁体の何れか1つ以上」から、訂正後において「少なくとも通電電極」に限定するものであり、訂正事項1と同様の訂正である。 したがって、上記アでの説示と同様の理由により、訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)小括 上記のとおり、訂正事項1~6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、8、9及び10について訂正することを認める。 3 取消理由の概要 訂正前の請求項1~10に係る特許に対して、当審が令和6年6月3日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1)(新規性)本件の請求項1、3~7、9及び10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された下記の甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であり、本件の請求項1~3、7及び8に係る発明は、件特許出願前に日本国内において頒布された下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件の請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2)(進歩性)本件の請求項1、3~7、9及び10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された下記の甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基いて、本件の請求項1~4、7及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された下記の甲第3号証に記載された発明に基いて、本件の請求項2及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された下記の甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明並びに甲第4号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証:特開2014-127270号公報 甲第2号証:特開2017-4943号公報 甲第3号証:特開2018-156959号公報 甲第4号証:特開2013-239405号公報 甲第1号証~甲第4号証は、それぞれ、特許異議申立人の提出した甲第1号証~甲第4号証である。 4 当審の判断 (1)訂正後の請求項1~10に係る発明 本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 主電極と発熱体とを設けた絶縁体と、前記発熱体に通電するために前記絶縁体に設けた通電電極と、前記主電極と前記通電電極の間を電気接続したヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントの表面に塗布されたフラックスと、を備え、 少なくとも前記通電電極に排気路を有し、 前記排気路は、前記ヒューズエレメントの直下から、前記ヒューズエレメントの外縁を越えて周囲にまで伸びて形成されており、前記ヒューズエレメントの溶断動作時に前記フラックスから発生するガスを排気するように構成されている、保護素子。 【請求項2】 前記発熱体は、前記主電極と前記通電電極とは前記絶縁体の異なった板面に設けられた請求項1に記載の保護素子。 【請求項3】 前記発熱体と前記主電極と前記通電電極は、前記絶縁体の同じ板面に設けられた請求項1に記載の保護素子。 【請求項4】 前記排気路は、該当部位の一部を切り欠いた切欠部からなる請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の保護素子。 【請求項5】 前記排気路は、溝状である請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載の保護素子。 【請求項6】 前記排気路は、スリット状である請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載の保護素子。 【請求項7】 前記排気路は、貫通孔である請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載の保護素子。 【請求項8】 主電極と発熱体とを設けた絶縁体と、前記発熱体に通電するために前記絶縁体に設けた通電電極と、前記主電極と前記通電電極の間を電気接続したヒューズエレメントとを備え、少なくとも前記通電電極に排気路を有し、当該排気路が前記ヒューズエレメントの直下から、前記ヒューズエレメントの外縁を越えて周囲にまで伸びて形成されており、前記発熱体は、前記主電極と前記通電電極とは前記絶縁体の異なった板面に設けられている保護素子。 【請求項9】 主電極と発熱体とを設けた絶縁体と、前記発熱体に通電するために前記絶縁体に設けた通電電極と、前記主電極と前記通電電極の間を電気接続したヒューズエレメントとを備え、少なくとも前記通電電極に排気路を有し、前記排気路は溝状である、保護素子。 【請求項10】 主電極と発熱体とを設けた絶縁体と、前記発熱体に通電するために前記絶縁体に設けた通電電極と、前記主電極と前記通電電極の間を電気接続したヒューズエレメントとを備え、少なくとも前記通電電極に排気路を有し、前記排気路はスリット状である、保護素子。」 (2)特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項について ア 甲第3号証の記載 甲第3号証には次の記載がある(下線は当審で付したもの)。 「【0001】 本発明は、電流経路を溶断することにより、電流経路上に接続された回路を保護する保護素子及びバッテリパックに関する。」 「【0014】 [第1の実施の形態] 本発明が適用された保護素子1は、図1に示すように、第1の絶縁基板10と、第1の絶縁基板10の表面10aに搭載された可溶導体13とを有し、第1の絶縁基板10の表面10aには、溶融した可溶導体13を吸引する吸引孔20が開口されている。そして、保護素子1は、外部回路に組み込まれることにより、可溶導体13が当該外部回路の電流経路の一部を構成し、定格を超える過電流によって溶断することにより電流経路を遮断するものである。 【0015】 第1の絶縁基板10は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって方形状に形成される。その他、第1の絶縁基板10は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。 【0016】 第1の絶縁基板10の表面10aの相対向する両端部には、第1、第2の電極11,12が形成されている。第1、第2の電極11,12は、それぞれ、Cu配線等の導電パターンによって形成され、表面に適宜、酸化防止対策としてSnメッキ等の保護層が設けられている。また、第1、第2の電極11,12は、第1の絶縁基板10の側面を介して裏面10bに至る導電層11b,12bを介して、裏面10bに形成された第1、第2の外部接続電極11a,12aと接続されている。保護素子1は、第1、第2の外部接続電極11a,12aが外部回路を構成する回路基板に接続されることにより、当該回路基板の電流経路上に接続される。そして、保護素子1は、第1、第2の電極11,12間にわたって後述する可溶導体13が搭載されることにより、可溶導体13が第1、第2の外部接続電極11a,12aを介して回路基板の電流経路の一部となる。 【0017】 また、第1の絶縁基板10は、第1、第2の電極11,12の間に、吸引孔20が形成されている。吸引孔20は、可溶導体13が過電流による自己発熱により溶融すると、毛管現象によってこの溶融導体13aを吸引し、溶融導体13aの体積を減少させるものである(図2参照)。保護素子1は、大電流用途に対応するために可溶導体13の断面積を増大させることにより、溶融量が増大した場合にも、吸引孔20に吸引させることで、溶融導体13aの体積を減少させることができる。これにより、保護素子1は、遮断時のアーク放電による溶融導体13aの飛散を軽減し、絶縁抵抗の低下を防止し、また、可溶導体13の搭載位置の周辺回路への付着による短絡故障を防止することができる。 【0018】 吸引孔20は、内面に導電層21が形成されている。導電層21が形成されることにより、吸引孔20は、溶融導体13aを吸引しやすくすることができる。導電層21は、例えば銅、銀、金、鉄、ニッケル、パラジウム、鉛、錫のいずれか、又はいずれかを主成分とする合金によって形成され、吸引孔20の内面を電解メッキや導電ペーストの印刷等の公知の方法により形成することができる。また、導電層21は、複数の金属線や、導電性を有するリボンの集合体を吸引孔20内に挿入することにより形成してもよい。 【0019】 また、吸引孔20は、第1の絶縁基板10の厚さ方向に貫通する貫通孔として形成されることが好ましい。これにより、吸引孔20は、溶融導体13aを第1の絶縁基板10の裏面10b側まで吸引することができ、より多くの溶融導体13aを吸引し、溶断部位における溶融導体13aの体積を減少させることができる。なお、吸引孔20は、非貫通孔として形成してもよい。 【0020】 第1の絶縁基板10の表面10aには、吸引孔20の導電層21と接続された表面電極22が形成されている。表面電極22は、可溶導体13が接続される支持電極となる。また、表面電極22は、導電層21と連続することにより、可溶導体13が溶融すると、溶融導体13aが凝集し吸引孔20内に導きやすくする。 【0021】 また、第1の絶縁基板10の裏面10bには、吸引孔20の導電層21と接続された裏面電極23が形成されている。裏面電極23は、導電層21と連続することにより、可溶導体13が溶融すると、吸引孔20を介して移動した溶融導体13aが凝集する(図3参照)。これにより、保護素子1は、より多くの溶融導体13aを吸引し、溶断部位における溶融導体13aの体積を減少させることができる。 【0022】 なお、保護素子1は、吸引孔20を複数形成することにより、可溶導体13の溶融導体13aを吸引する経路を増やし、より多くの溶融導体13aを吸引することで、溶断部位における溶融導体13aの体積を減少させるようにしてもよい。 【0023】 次いで、可溶導体13について説明する。可溶導体13は、第1及び第2の電極11,12間にわたって実装され、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、第1の電極11と第2の電極12との間の電流経路を遮断するものである。」 「【0032】 なお、可溶導体13は、酸化防止、及び溶断時の濡れ性の向上等のため、フラックス14が塗布されている。また、保護素子1は、第1の絶縁基板10がカバー部材15に覆われることによりその内部が保護されている。カバー部材15は、上記第1の絶縁基板10と同様に、たとえば、熱可塑性プラスチック,セラミックス,ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。」 「【0042】 [発熱体] また、本発明が適用された保護素子は、図6に示すように、第1の絶縁基板10に可溶導体13を溶断する発熱体25を設けてもよい。なお、以下の説明において上述した保護素子1と同じ部材については同じ符号を付して、その詳細を省略する。 【0043】 発熱体25が設けられた保護素子24は、例えばバッテリパックに組み込まれると、過電流時における可溶導体13の自己溶断に加え、バッテリセルの過電圧を検知して発熱体25を通電、発熱させ、可溶導体13を溶断させることにより、バッテリパックの充放電経路を遮断することができる。 【0044】 発熱体25は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばW、Mo、Ru等からなる。これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合してペースト状にしたものを、第1の絶縁基板10の表面10aにスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成する。 【0045】 発熱体25は、第1の絶縁基板10の表面10a上において絶縁層26に被覆されている。絶縁層26上には、表面電極22が積層される。絶縁層26は、発熱体25の保護及び絶縁を図るとともに、発熱体25の熱を効率よく表面電極22及び可溶導体13へ伝えるために設けられ、例えばガラス層からなる。表面電極22は、発熱体25によって加熱されることにより、可溶導体13の溶融導体13aを凝集しやすくするとともに、吸引孔20内へ吸引させやすくすることができる。 【0046】 発熱体25は、一端が表面電極22と接続され、表面電極22を介して、表面電極22上に搭載された可溶導体13と電気的に接続される。また、発熱体25は、他端が図示しない発熱体電極と接続されている。発熱体電極は、第1の絶縁基板10の表面10aに形成されるとともに、裏面10bに形成された第3の外部接続電極27(図9参照)と接続され、この第3の外部接続電極27を介して外部回路と接続される。そして、保護素子1は、外部回路を構成する回路基板に実装されることにより、第3の外部接続電極27を介して発熱体25が回路基板に形成された発熱体25への給電経路に組み込まれる。 【0047】 また、図7に示すように、保護素子24は、発熱体25を第1の絶縁基板10の裏面10bに形成してもよい。発熱体25は、第1の絶縁基板10の裏面10bに形成されるとともに、裏面10b上において絶縁層26に被覆される。絶縁層26上には、裏面電極23が積層される。 【0048】 発熱体25は、一端が裏面電極23と接続され、吸引孔20に形成された導電層21及び表面電極22を介して、表面電極22上に搭載された可溶導体13と電気的に接続される。また、発熱体25は、他端が図示しない発熱体電極を介して第3の外部接続電極27と接続される。 【0049】 発熱体25を第1の絶縁基板10の裏面10bに形成することにより、保護素子24は、裏面電極23が発熱体25によって加熱されることにより、より多くの溶融導体13aを凝集しやすくなる。したがって、保護素子24は、表面電極22から導電層21を介して裏面電極23へ溶融導体13aを吸引する作用を促進させ、確実に可溶導体13を溶断することができる。」 「【0064】 [第2の実施の形態] [保護素子の構成] 次いで、第2の実施の形態について説明する。図11(A)及び図11(B)に示すように、保護素子50は、第1及び第2の外部電極51,52と、第1及び第2の外部電極51,52間にわたって積層された可溶導体53と、可溶導体53に接続され、可溶導体53の溶融導体53aを吸引する吸引部材54とを備える。吸引部材54は、第1、第2の外部電極51,52間に配設された絶縁基板55と、絶縁基板55の表面55aに形成され、可溶導体53の一部と接続された表面電極56と、絶縁基板55に設けられた発熱体57と、絶縁基板55の厚さ方向に設けられ、表面電極56と連続する貫通孔58とを備える。保護素子50は、発熱体57が発熱することにより可溶導体53を溶融させる。このとき、保護素子50は、吸引部材54によって可溶導体53が溶融した溶融導体53aを吸引し、確実に可溶導体53を溶断させ、第1の外部電極51と第2の外部電極52との間の電流経路を遮断する。 【0065】 第1及び第2の外部電極51,52は、保護素子50を外部回路に接続する接続端子であり、保護素子50の内部で可溶導体53を介して接続されている。第1及び第2の外部電極51,52は、保護素子50の外筐体に支持されることにより保護素子50の内外にわたって配設されている。なお、第1及び第2の外部電極51,52は、吸引部材54の絶縁基板55上に形成してもよく、或いは絶縁基板55と隣接あるいは一体となったエポキシ樹脂等からなる絶縁素材に形成するようにしてもよい。」 「【0069】 発熱体57は、ガラス等の絶縁部材62によって覆われ、この絶縁部材62を介して発熱体57に対向するように発熱体引出電極63が配置される。この絶縁部材62は、発熱体57が内部に一体的に積層された積層基板であってもよい。また、発熱体57は、後述する裏面電極64の両側に設ける他に、裏面電極64の一方の側のみ、又は、裏面電極64を囲むように設けてもよい。 【0070】 絶縁基板55の表面55aには表面電極56が形成されている。表面電極56は、半田等の接続材料を介して、第1、第2の外部電極51,52間を接続する可溶導体53と接続されている。また、表面電極56は、絶縁基板55の厚さ方向に形成された貫通孔58と連続されている。表面電極56は、可溶導体53が発熱体57の発熱により溶融すると、溶融導体53aが凝集し、毛管現象により貫通孔58内に吸引させることができる。これにより、保護素子50は、大電流用途に対応するために可溶導体53の断面積を増大させた場合にも、溶融導体53aが絶縁基板55の表面55a上に過剰に凝集することが無く、確実に第1、第2の外部電極51,52間の電流経路を遮断することができる。 【0071】 図11(A)に示すように、貫通孔58は、表面電極56の幅方向に中央に設けられている。なお、貫通孔58は、複数設けてもよい。ここでは、複数の貫通孔58が直線状に一列に並んで設けられている。」 「【0076】 絶縁基板55の裏面55bに設けられる発熱体引出電極63は、裏面55bの裏面電極64と重畳して電気的に接続される。また、発熱体引出電極63は、裏面電極64,貫通孔58及び予備ハンダ66、表面電極56を介して可溶導体53と接続され、一端に形成されたタブ63aが第1の発熱体電極59に接続されている。」 「【0094】 なお、図20に示すように、貫通孔58は、図11(B)に示すように、直線状に一列設ける場合の他、図20(A)に示すように、2列にしても良いし、それ以上設けても良い。また、図20(B)に示すように、複数の貫通孔で構成するのではなく、細長いスリット58aで構成するようにしても良く、複数本であってもよい。」 「【図1】 [図:0001427923000001.jpg] 」 「【図2】 [図:0001427923000002.jpg] 」 「【図3】 [図:0001427923000003.jpg] 」 「【図6】 [図:0001427923000004.jpg] 」 「【図7】 [図:0001427923000005.jpg] 」 「【図11】 [図:0001427923000006.jpg] 」 「【図13】 [図:0001427923000007.jpg] 」 「【図14】 [図:0001427923000008.jpg] 」 「【図20】 [図:0001427923000009.jpg] 」 イ 甲第3号証に記載の発明1 上記アの甲第3号証の段落【0014】~【0023】、【0032】、【0042】~【0049】、【図1】~【図3】、【図6】、及び、【図7】の記載からすれば次の事項が認定できる。 保護素子24の第1の絶縁基板10の表面10aには、第1及び第2の電極11,12と、表面電極22が形成されている(段落【0016】、【0020】、及び、【0042】)。また、保護部材24の第1の絶縁基板10の裏面10bには、発熱体25が形成されている(段落【0047】)。さらに、保護素子24の表面電極22は発熱体25に通電するためのものである(段落【0048】)。さらにまた、保護部材24には、第1、第2の外部電極11,12と表面電極22の間を電気接続する可溶導体13が搭載されており(段落【0016】、【0020】及び、【0023】)、この可溶導体13にはフラックス14が塗布されている(段落【0032】)。 保護部材24に形成された吸引孔20は、表面電極22が支持している可溶導体13の溶融導体13aを表面電極22を通して吸引するものであること(段落【0014】、【0017】~【0020】)、及び、【図6】、【図7】の記載から、甲第3号証の保護部材24の表面電極22には、第1の絶縁基板10の表面10aに開口された吸引孔20に連続する孔が形成されている。 上記認定事項より、甲第3号証には次の発明(以下、「甲3発明1」という。)が記載されているといえる。 [甲3発明1] 「表面10aに第1及び第2の外部電極11,12と裏面10bに発熱体25を形成した第1の絶縁基板10と、前記発熱体25に通電するために前記第1の絶縁基板10の表面10aに形成した表面電極22と、前記第1及び第2の外部電極11,12と前記表面電極22の間を電気接続した可溶導体13と、前記可溶導体13に塗布されたフラックスと、を備えた保護素子24であって、 前記表面電極22には、第1の絶縁基板10の表面10aに開口された吸引孔20に連続する孔が形成されている、保護素子24。」 (ア) 本件発明9について a 対比 本件発明9と甲3発明1とを対比する。 甲3発明1の「第1及び第2の外部電極11,12」、「発熱体25」、「第1の絶縁基板10」、「表面電極22」、「可溶導体13」、及び、「保護素子24」は、それぞれ、本件発明9の「主電極」、「発熱体」、「絶縁体」、「通電電極」、「ヒューズエレメント」、及び、「保護素子」に相当する。 そして、ある構成を「形成」することは、ある構成を設けることといえるから、上記を踏まえると、甲3発明1の「表面10aに第1及び第2の外部電極11,12と裏面10bに発熱体25を形成した第1の絶縁基板10」は、本件発明9の「主電極と発熱体とを設けた絶縁体」に、また、甲3発明1の「前記第1の絶縁基板10の表面10aに形成した表面電極22」は、本件発明9の「絶縁体に設けた通電電極」に相当する。 本件発明9の「排気路」が、何を排気するものかについては何ら特定されていない。そうすると、甲3発明1の「第1の絶縁基板10の表面10aに開口された吸引孔20に連続する孔」は、孔形状であるという点において、本件発明9における「排気路」となんら構造上の違いはない。 したがって、甲3発明1の「前記表面電極22には、第1の絶縁基板10の表面10aに開口された吸引孔20に連続する孔が形成されている」ことは、本件発明9の「少なくとも前記通電電極に排気路を有し」ていることに相当する。 以上のとおりであるから、本件発明9と甲3発明1との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 <一致点1> 「主電極と発熱体とを設けた絶縁体と、前記発熱体に通電するために前記絶縁体に設けた通電電極と、前記主電極と前記通電電極の間を電気接続したヒューズエレメントとを備え、少なくとも前記通電電極に排気路を有している、保護素子。」 <相違点1> 本件発明9の「排気路」は、「溝状」とされているのに対し、甲3発明1の「第1の絶縁基板10の表面10aに開口された吸引孔20に連続する孔」とされている点。 b 判断 甲第3号証には、保護素子50の発熱体57に通電するために絶縁体55の表面55aに形成された表面電極56に、絶縁体55の表面55aに開口された細長いスリット58aに連続する細長いスリットを形成するという技術的事項(以下、「甲3技術的事項」という。)が記載されており(段落【0094】及び【図20】(B))、甲3発明1の「吸引孔20に連続する孔」をスリット状(溝状)とすることの記載乃至示唆があるといえる。 したがって、甲3発明1の「吸引孔20に連続する孔」をスリット状(溝状)とし、もって、相違点1に係る本件発明9の構成となすことは甲第3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たことといえる。 そして、本件発明9の奏する作用効果は、甲3発明1及び甲第3号証に記載された技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず格別顕著なものということはできない。 したがって、本件発明9は、甲3発明1及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)本件発明10について 本件発明10は、本件発明9の「排気路は溝状である」ことに換えて、「排気路はスリット状である」とした点を除き、本件発明9と同じである。 したがって、上記(ア)aでの対比関係を踏まえると、本件発明10と甲3発明1とは、本件発明10の「排気路」は、「スリット状」とされているのに対し、甲3発明1の「第1の絶縁基板10の表面10aに開口された吸引孔20に連続する孔」とされている点で相違(以下、「相違点1-1」という。)し、その余の点で一致する。 上記相違点1-1は、上記(ア)bの相違点1と実質的に同じ(「溝状」と「スリット状」とで形状として大差ない。)であるから、上記ア(イ)での説示と同様の理由により、甲3発明1において、相違点1-1に係る本件発明10の構成となすことは当業者であれば容易に想到し得たことといえる。 よって、本件発明10は、甲3発明1及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 甲第3号証に記載の発明2 上記アの甲第3号証の段落【0064】、【0065】、【0070】、【0071】、【0076】、【0094】、【図11】、【図13】、【図14】、及び、【図20】の記載からすれば次の事項が認定できる。 吸引部材54の絶縁基板55の表面に、第1及び第2の外部電極51,52 と、表面電極56が形成されている(段落【0064】、【0065】、及び、【図11】)。また、吸引部材54の絶縁基板55には、発熱体57が設けられている(段落【0064】)。さらに、吸引部材54の表面電極56は発熱体57に通電するためのものである(段落【0076】、【図11】)。さらにまた、吸引部材54には、第1、第2の外部電極51,52と表面電極56の間を電気接続する可溶導体53が搭載されている(段落【0064】、【0065】、及び、【0070】)。 吸引部材54は絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58を備え、この貫通孔58は、可溶導体53の溶融導体53aを表面電極56を通して吸引するものであり(段落【0064】、【0070】)、甲第3号証の吸引部材54の表面電極56には、絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58に連続する孔が形成されている(段落【0070】、及び【図11】。) 吸引部材54の絶縁基板55に備えられた貫通孔58aは、可溶導体53の真下から、可溶導体53の外縁を越えて周囲にまで伸びるスリットとして形成されている(段落【0094】、及び、【図20】(B))。 吸引部材54の表面に形成された表面電極56に形成された、吸引部材54の絶縁基板55に備えられた貫通孔58aに連続する孔も、貫通孔58aと同じスリットである。 上記認定事項より、甲第3号証には次の発明(以下、「甲3発明2」という。)も記載されているといえる。 [甲3発明2] 「表面に第1及び第2の外部電極51,52を形成し、発熱体57を設けた絶縁基板55と、 前記発熱体57に通電するために前記絶縁基板55の表面に形成した表面電極56と、前記第1及び第2の外部電極51,52と前記表面電極22の間を電気接続した可溶導体53と、を備えた吸引部材54であって、 前記表面電極56には、絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58aに連続する孔が形成され、 前記表面電極56に形成された、絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58aに連続する孔は、可溶導体53の真下から、可溶導体53の外縁を越えて周囲にまで伸びるスリットとして形成されている、吸引部材54。」 (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲3発明2とを対比する。 甲3発明2の「第1及び第2の外部電極51,52」、「発熱体57」及び「絶縁基板55」は、それぞれ、本件発明1の「主電極」、「発熱体」及び「絶縁体」に相当する。また、甲3発明2の「形成」することは、本件発明1の「設け」ることに相当する。 したがって、甲3発明2の「表面に第1及び第2の外部電極51,52を形成し、発熱体57を設けた絶縁基板55」は、本件発明1の「主電極と発熱体とを設けた絶縁体」に相当する。 甲3発明2の「表面電極56」は、本件発明1の「通電電極」に相当するから、甲3発明2の「前記発熱体57に通電するために前記絶縁基板55の表面に形成した表面電極56」は、本件発明1の「前記発熱体に通電するために前記絶縁体に設けた通電電極」に相当する。 甲3発明2の「絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58aに連続する孔」は、路状構造といえるから、本件発明1の「排気路」との対比において、「路」との限度で一致する。 したがって、甲3発明2の「前記表面電極56には、絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58aに連続する孔が形成され」ていることは、本件発明1の「少なくとも前記通電電極に排気路を有し」ていることとの対比において、「少なくとも前記通電電極に路を有し」ているとの限度で一致する。 甲3発明2の「前記表面電極56に形成された、絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58aに連続する孔は、可溶導体53の真下から、可溶導体53の外縁を越えて周囲にまで伸びるスリットとして形成されている」ことは、本件発明1の「前記排気路は、前記ヒューズエレメントの真下から、前記ヒューズエレメントの外縁を越えて周囲にまで伸びて形成されている」こととの対比において、「前記路は、前記ヒューズエレメントの真下から、前記ヒューズエレメントの外縁を越えて周囲にまで伸びて形成されている」との限度で一致する。 甲3発明2の「吸引部材54」は、可溶導体53が溶融した溶融導体53aを吸引し、確実に可溶導体53を遮断させ、第1の外部電極51と第2の外部電極52との間の電流経路を遮断するものであるから(段落【0064】)、本件発明1の「保護素子」に相当する。 以上のとおりであるから、本件発明1と甲3発明2との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 <一致点2> 「主電極と発熱体とを設けた絶縁体と、前記発熱体に通電するために前記絶縁体に設けた通電電極と、前記主電極と前記通電電極の間を電気接続したヒューズエレメントと、を備え、 少なくとも前記通電電極に路を有し、 前記排気路は、前記ヒューズエレメントの直下から、前記ヒューズエレメントの外縁を越えて周囲にまで伸びて形成されている、保護素子。」 <相違点2> 本件発明1は、「前記ヒューズエレメントの表面に塗布されたフラックスと、を備え」ているのに対し、甲3発明2の「可溶導体53」は、このような特定がされていない点。 <相違点3> 本件発明1は、「路」が「排気路」であり、「前記ヒューズエレメントの溶断動作時に前記フラックスから発生するガスを排気するように構成されている」のに対し、甲3発明2の「絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58aに連続する孔」は、このような特定がされていない点。 b 判断 相違点2と相違点3は密接に関連しているので併せて判断する。 甲第3号証の段落【0032】には、「可溶導体13は、酸化防止、及び溶断時の濡れ性の向上等のため、フラックス14が塗布されている。」との記載があり、また、保護素子のヒューズエレメントの表面にフラックスを塗布することは、例を挙げるまでもなく周知、慣用の技術的事項であるといえる。 したがって、甲3発明2において、可溶導体53の表面にフラックスを塗布し、もって、相違点2に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことといえる。 甲3発明2において、可溶導体53の表面にフラックスが塗布された構成とすると、可溶導体53の加熱溶断時に、「絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58aに連続する孔」を通じて「貫通孔58a」に溶融導体53aが吸引される際に、フラックスから発生したガスが、溶融導体53aと一緒に排出されることとなる。 つまり、相違点3に係る本件発明1の構成は、相違点2に係る本件発明1の構成となすことで自ずと達成されることとなる。 そして、相違点2に係る本件発明1の構成となすことが上述のように当業者であれば容易に想到し得たといえることから、相違点3に係る本件発明1の構成も当業者であれば容易に想到し得たことといえる。 また、本件発明1の奏する作用効果は、甲3発明2及び甲第3号証に記載された技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず格別顕著なものということはできない。 したがって、本件発明1は、甲3発明2及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)本件発明2について 甲第3号証の【図7】には、発熱体25が、第1及び第2の電極11,12と表面電極22とは、第1の絶縁基板10の異なった板面に設けられているものが記載されている。 したがって、本件発明2は、甲3発明2及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ウ)本件発明3について 甲第3号証の【図6】には、発熱体25が、第1及び第2の電極11,12と表面電極22とは、第1の絶縁基板10の同じ板面に設けられているものが記載されている。 したがって、本件発明3は、甲3発明2及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (エ)本件発明4について 甲3発明2の「絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58aに連続する孔」は、「表面電極56」の部位の一部を切り欠いたものとして構成されているといえる(【図11】、【図14】及び【図20】(B))。 したがって、本件発明4は、甲3発明2及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (オ)本件発明5~7について 甲3発明2の「前記表面電極に形成された、絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58aに連続する孔」は、「可溶導体53の真下から、可溶導体53の外縁を越えて周囲にまで伸びるスリットとして形成されて」おり、溝状又はスリット状であるといえる。 また、甲3発明2の「前記表面電極56に形成された、絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58aに連続する孔」は、表面電極56を貫通している(【図11】及び【図14】)。 したがって、本件発明5~7は、甲3発明2及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (カ)本件発明8について a 対比 本件発明8と甲3発明2とを対比する。 上記(ア)aでの対比を踏まえると、本件発明8と甲3発明2との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 <一致点3> 「主電極と発熱体とを設けた絶縁体と、前記発熱体に通電するために前記絶縁体に設けた通電電極と、前記主電極と前記通電電極の間を電気接続したヒューズエレメントとを備え、少なくとも前記通電電極に路を有し、当該排気路が前記ヒューズエレメントの直下から、前記ヒューズエレメントの外縁を越えて周囲にまで伸びて形成されている、保護素子。」 <相違点4> 本件発明8の「発熱体」は、「前記主電極と前記通電電極とは前記絶縁体の異なった板面に設けられている」とされているのに対し、甲3発明2の「発熱体57」は、「絶縁基板55」に「設け」られている点。 <相違点5> 本件発明8は、「路」が「排気路」であるのに対し、甲3発明2の「絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58aに連続する孔」は、このような特定がされていない点。 b 判断 (a)相違点4について 甲第3号証の【図7】には、発熱体25が、第1及び第2の電極11,12と表面電極22とは、第1の絶縁基板10の異なった板面に設けられているものが記載されている。 この甲第3号証の記載を参考に、甲3発明2の「発熱体57」を、絶縁基板55の第1及び第2の外部電極51,52及び表面電極56を形成した面とは異なった板面に設けるよう構成することは当業者であれば容易に想到し得たことといえる。 (b)相違点5について 本件発明8の「排気路」と、甲3発明2の「絶縁基板55の表面に開口された貫通孔58aに連続する孔」は、構成上の差異はなく(なお、本件発明8のヒューズエレメントはその表面にフラックスが塗布されているとの特定はされていない。)、相違点5は実質的な相違点ではない。 (c)作用効果について そして、本件発明8の奏する作用効果は、甲3発明2及び甲第3号証に記載された技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず格別顕著なものということはできない。 したがって、本件発明8は、甲3発明2及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (キ)本件発明9について スリットは溝であるといえる。そうすると、上記(カ)b(b)での説示及び上記(ア)aでの対比を踏まえると、本件発明9と甲3発明2との間に相違点はなく、本件発明9は甲3発明2であるといえる。 仮に、本件発明9と甲3発明2との間に相違点が存在するとしても、かかる相違点は当業者であれば容易に想到しうる構成上の微差であるといえ、本件発明9は、甲3発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ク) 本件発明10について 上記(カ)b(b)での説示及び上記(ア)aでの対比を踏まえると、本件発明10と甲3発明2との間に相違点はなく、本件発明10は甲3発明2であるといえる。 仮に、本件発明10と甲3発明2との間に相違点が存在するとしても、かかる相違点は当業者であれば容易に想到しうる構成上の微差であるといえ、本件発明10は、甲3発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)特許法第36条第6項第1号について 本件発明は、保護素子の電極周辺部はフラックスから生成したガスが滞留しやすい構成となっているため、ヒューズエレメントに塗布されたフラックスの生成ガスの気泡により、ヒューズエレメントの板面が振動したり、ヒューズエレメントが所定位置より移動したりすることがあり、加熱によって流動性が増したフラックスがヒューズエレメントの塗布面から脱落ないし流失してしまう恐れがあったという従来技術の課題認識の下、保護素子のフラックスから生成するガスの影響を軽減して、フラックスがヒューズ合金表面から流出し難いようにした電気・電子機器の保護素子を提供することを目的とするものといえる(本件特許の明細書の段落【0005】及び【0006】)。 そして、本件特許の明細書には、ヒューズエレメントの表面にフラックスが塗布されている保護素子を前提としたものが発明の実施の形態として記載されている一方、ヒューズエレメントの表面にフラックスが塗布されていないものは、一切記載も示唆もされていない。 ここで、請求項8~10には、「ヒューズエレメントの表面に塗布されたフラックスとを備え」との発明特定事項が記載されていないから、本件発明8~10は、ヒューズエレメントの表面にフラックスを塗布していない保護素子(そもそも発明が解決しようとする課題が存在しないもの)も含まれることとなる。 したがって、本件発明8~10は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 5 むすび 以上のとおり、本件発明9及び10は、甲第3号証に記載された発明であるといえ、本件発明9及び10に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するにもかかわらずされたものである。 また、本件発明1~10は、甲第3号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 さらに、本件発明8~10は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件発明8~10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たさない発明に対してされたものでもある。 したがって、本件発明1~10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件発明8~10に係る特許は、特許法第113条第4号にも該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700238

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