特許異議申立
2024-700221
保護素子および保護回路
- 審判番号
- 2024-700221
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-134872
- 登録番号
- 7340979
- 請求日
- 2024年03月08日
- 審決日
- 2024年06月10日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】デクセリアルズ株式会社
- 【権利者代理人】田▲崎▼ 聡
- 【権利者代理人】荒 則彦
- 【権利者代理人】細川 文広
- 【権利者代理人】松本 裕幸
- 【異議申立人】株式会社 クレス
- 審判長/審判官
- 審判長 中屋 裕一郎
- 審判官 小川 恭司
- 審判官 尾崎 和寛
- 分類
- P1651.121-Y (H01H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7340979号発明「保護素子および保護回路」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7340979号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概略
特許第7340979号の請求項1~5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は、概ね、次のとおりである。
令和 元年 7月22日 出願
令和 5年 8月31日 特許権の設定登録
令和 5年 9月 8日 特許掲載公報の発行
令和 6年 3月 8日 特許異議申立人株式会社クレス(以下「特許異議申立人」という。)による特許異議の申立て
第2 本件発明
特許第7340979号の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」などとし、まとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
並列接続された複数の保護素子を備える保護回路であって、
複数の保護素子を構成する各保護素子は、
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
前記第3電極部に接続され、且つ前記ヒーターよりも低い抵抗値を有する導通部と、
前記導通部に接続され、且つ外部の保護回路と接続可能に設けられた第4電極部と、
を有し、
前記複数の保護素子が並列接続され、
前記複数の保護素子に設けられた複数の前記第4電極部同士を接続するバイパス回路を有し、
前記導通部が、前記基板に設けられた複数のスルーホールで構成される、保護回路。
【請求項2】
前記導通部の融点が、前記第1ヒューズエレメント及び前記第2ヒューズエレメントのいずれの融点よりも高い、請求項1に記載の保護回路。
【請求項3】
前記導通部が、銀(Ag)で構成される、請求項1又は2に記載の保護回路。
【請求項4】
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントが、基板の一方の主面側に配置され、
前記ヒーターが、前記基板の他方の主面側に配置される、請求項1に記載の保護回路。
【請求項5】
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントが、基板の一方の主面側に配置され、
前記ヒーターが、前記基板の一方の主面側であって、且つ前記第1ヒューズエレメント及び前記第2ヒューズエレメントの下方に配置される、請求項1に記載の保護回路。
第3 申立理由の概要
1 特許異議申立人が主張する申立理由
特許異議申立人は、証拠として甲第1号証~甲第7号証を提出し、請求項1~5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~5に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
2 証拠方法
特許異議申立人提出の証拠方法は以下のとおりである。証拠番号に従い、「甲1」などという。
甲1:特許第4095426号公報
甲2:特許第6707377号公報
甲3:特許第6797565号公報
甲4:特許第6811590号公報
甲5:特開2017-228379号公報
甲6:特開2018-18623号公報
甲7:特開2019-29244号公報
第4 証拠の記載
1 甲1
(1)甲1の記載事項
ア 甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繰り返し充放電が可能な二次電池の技術分野にかかり、特に、保護回路を内蔵する二次電池に関する。」
「【0009】
ヒータhは、2個の抵抗発熱素子ra、rbの並列接続回路によって構成されており、二個のフューズfa、fbが互いに接続された接続点を符号Pで表すと、ヒータhの一端は、接続点Pに接続されており、他端は、スイッチ素子104を介して第2の出力端子112(及び蓄電装置105の負電圧側の端子)に接続されている。
【0010】
図10の符号ta、tb、tcは保護回路Uの端子であり、それらのうち、符号ta、tbは、フューズfa、fbの直列接続回路の両端であって、それぞれ蓄電装置105の正電圧側の端子に接続された端子と、第2の出力端子111に接続された端子である。」
「【0030】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、保護回路の動作後の残存電流が小さい二次電池装置を提供することにある。」
「【0036】
【発明の実施の形態】
図1の符号1は、本発明の第一例の二次電池装置を示している。第一例の二次電池装置1は、上記従来技術の二次電池装置101が有する部品を全て有しており、再述すると、上記二次電池装置101と同様に、スイッチ素子4と、蓄電装置5と、制御回路6と、第1、第2の出力端子11、12と、複数の保護回路U1~U3とを有しており、更に、整流素子D1~D3を有している。
【0037】
各保護回路U1~U3の内部構成は同じであり、図10に示されている。各保護回路U1~U3は直列接続された二個のフューズfa、fbを有しており、蓄電装置5の正電圧側の端子と第1の出力端子11とは、複数の保護回路U1~U3内のフューズfa、fbの直列接続回路によって接続されている。即ち、フューズfa、fbの直列接続回路は並列接続されている。」
「【0040】
各保護回路U1~U3内には、一端が、フューズfa、fb同士の接続点Pに接続されたヒータhが設けられている。」
「【0055】
図5は本発明の第三例の二次電池装置3を示している。この二次電池装置3は、各保護回路U1~U3内の接続点P同士が接続されている他は、従来技術の二次電池回路101の構成と同じである。
【0056】
この二次電池装置3では、制御回路6が過電圧を検出し、スイッチ素子4を導通させた場合の動作は、上記従来技術の二次電池装置101や、第一例の二次電池装置1と同じである。
【0057】
他方、第1、第2の出力端子11、12間が短絡され、各保護回路U1~U3内のフューズfa、fbに流れた大きな短絡電流が流れた場合、先ず、各保護回路U1~U3内のフューズfa、fbのいずれか一方が切断される。この状態を図6に示す。
【0058】
この第三例の二次電池装置101でも、全ての保護回路U1~U3内で蓄電装置5側のフューズfaが溶断するか、又は全ての保護回路U1~U3内で出力端子11側のフューズfbが溶断すると電流は流れなくなるが、出力端子11側のフューズfbが溶断した保護回路U1と、蓄電装置5側のフューズfaが溶断した保護回路U2とが混在すると、短絡電流と同じ大きさの過渡電流が流れ続ける。
【0059】
即ち、フューズfa、fbが混在して残存すると、蓄電装置5の正電圧側の端子が、残存する蓄電装置5側のフューズfaと、残存する第1の出力端子11側のフューズfbとによって第1の出力端子11に接続されるため、異なる保護回路U1、U2内で残存するフューズfa、fbを通って過渡電流が流れる。図6の符号I3はその過渡電流を示している。
【0060】
この過渡電流I3はヒータhを通らないため、短絡電流と同程度の大電流であり、過渡電流が流れるフューズfa、fbの少なくともいずれか一方は自己発熱によって溶断する。図7は蓄電装置5側のフューズfaが溶断した場合である。
【0061】
出力端子11側のフューズfbが残存する保護回路と、蓄電装置5側のフューズfaが残存する保護回路とが混在する限り過渡電流I3は流れ、結局、この過渡電流I3によって、各保護回路U1~U3内の蓄電装置5側のフューズfaの全部か、又は、出力端子11側のフューズfbが全部溶断し、過渡電流I3は流れなくなる。
【0062】
この状態では、二個のフューズfa、fbの少なくとも一方の側が全部溶断した状態であるため、蓄電装置5の正電圧側の端子と第1の出力端子11との間を接続する経路は存在せず、残存電流も流れなくなる。
【0063】
なお、保護回路U1~U3の構造を説明すると、図8(a)、(b)はその概略構成を説明するための図面であり、図8(a)は平面図、同図(b)はそのA-A線切断面図である。
【0064】
符号31~35は、Ag-Pdペーストを印刷し、850℃、30分の焼成により形成した電極であり、それぞれ、端子ta、tb、tc、及び接続点Pが構成されている。
【0065】
符号41は、低融点金属箔(Sn:Sb=95:5、液相点240℃)であり、フューズ電極34よりも右方と左方がそれぞれフューズfa、fbになっている。」
【0066】
符号42は、抵抗発熱素子ra、rbを構成する抵抗体であり、酸化ルテニウム系の抵抗ペーストを上記電極31~34上から印刷し、焼成して形成している。抵抗発熱素子ra、rbの抵抗値は5Ωである。
【0067】
図8(b)の符号40はアルミナセラミックス製のベース基板であり、厚さ0.5mm、平面形状は5mm×3mmである。」
「 図6 図8 図10
[図:0001412312000001.jpg]
」
イ 【0010】及び【0064】の記載から、電極31,32は端子ta、tbを構成していることが理解され、図10から、フューズfaのフューズfbとは反対側に接続された端子taと、フューズfbのフューズfaとは反対側に接続された端子tbと、が看取される。
ウ 【0040】における「フューズfa、fb同士の接続点Pに接続されたヒータhが設けられている。」との記載、【0065】における「フューズ電極34よりも右方と左方がそれぞれフューズfa、fbになっている。」との記載を踏まえれば、図10から、フューズfaとフューズfbとの間に接続され、且つ抵抗発熱素子ra、rbを構成する抵抗体42と直列接続された、接続点Pを構成しているフューズ電極34が看取される。
エ 図10から、接続点Pと、抵抗発熱素子raと抵抗発熱素子rbとの接続点とを接続する導通路が看取される。【0040】及び【0065】の記載を踏まえて図8と図10を併せ見ると、図10における接続点Pが図8におけるフューズ電極34に対応し、図10における抵抗発熱素子raと抵抗発熱素子rbとの接続点が図8における電極35に対応していると理解されるところ、図10から看取される、接続点Pと、抵抗発熱素子raと抵抗発熱素子rbとの接続点とを接続する導通路は、フューズ電極34と電極と電極35とを接続する導通路といえる。そして、図8からは、フューズ電極34、抵抗発熱素子raと抵抗発熱素子rbとの接続点である電極35、、フューズfa及びフューズfbになっている低融点金属箔41、抵抗体42及び電極31~33はベース基板40の上側の面に設けられていることが看取され、フューズ電極34と電極35の双方がベース基板40の上側の面に設けられていることにかんがみれば、フューズ電極34と電極35を接続する導通路もベース基板40の上側の面に設けられているものと認められる。
(2)甲1発明
上記(1)を総合すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「並列接続された複数の保護回路U1~U3を備える二次電池装置3であって、
複数の保護回路U1~U3を構成する各保護回路は、
直列接続された二個のフューズfa及びフューズfbと、
前記フューズfaと前記フューズfbとの間に接続された抵抗発熱素子ra、rbを構成する抵抗体42と、
前記フューズfaのフューズfbとは反対側に接続された端子taを構成している電極31と、
前記フューズfbのフューズfaとは反対側に接続された端子tbを構成している電極32と、
前記フューズfaと前記フューズfbとの間に接続され、且つ前記抵抗発熱素子ra、rbを構成する抵抗体42と直列接続された、接続点Pを構成しているフューズ電極34と、
前記フューズ電極34に接続された導通路と、
前記導通路に接続され、且つ各保護回路を接続している接続点Pを構成しているフューズ電極34と、
を有し、
前記複数の保護回路U1~U3が並列接続され、
前記複数の保護回路U1~U3に設けられた複数の接続点Pを構成しているフューズ電極34同士を接続するバイパス回路を有し、
前記フューズ電極34、抵抗発熱素子raと抵抗発熱素子rbとの接続点である電極35、前記フューズ電極34と前記電極35とを接続する前記導通路、フューズfa及びフューズfbになっている低融点金属箔41、抵抗体42及び電極31~33はベース基板40の上側の面に設けられている、
二次電池装置3。」
2 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載又は示されている。
「(45)発行日 令和2年6月10日(2020.6.10)」(1頁左側2行目)
3 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載又は示されている。
「(45)発行日 令和2年12月9日(2020.12.9)」(1頁左側2行目)
4 甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が記載又は示されている。
「(45)発行日 令和3年1月13日(2021.1.13)」(1頁左側2行目)
5 甲5の記載事項
甲5には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0001】
本発明は電気・電子機器の回路保護素子に関する。」
「 図2 図3
[図:0001412312000002.jpg]
」
6 甲6の記載事項
甲6には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0001】
本発明は電気・電子機器の保護素子に関する。」
「 図2 図3
[図:0001412312000003.jpg]
」
7 甲7の記載事項
甲7には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0001】
本発明は、電気・電子機器の保護素子に関する。」
「 図2
[図:0001412312000004.jpg]
」
8 当審で追加する文献8(特開2017-174592号公報)の記載事項
文献8は、甲2の公開公報である。文献8には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0047】
図3(B)に示す第1の側面導電部3cは、図3(A)に示す第1の側面導電部3bと比較して、絶縁基板2の第1の側面2cにおいて、凹部の面積を広くとることができ、結果として電流経路の幅を広げて電気抵抗値を低減することが可能となり、大電流に対応するために好適である。」
「【0070】
ヒューズ素子40では、第1の側面導電部3b及び第2の側面導電部4bを、それぞれ第1の側面導電部3b2,第1の側面導電部3b3及び第2の側面導電部4b2,第2の側面導電部4bの複数構成としたため、電流経路が複数個所となり、電流経路全体として電気抵抗値を低減することが可能となる。従ってヒューズ素子40は、電流経路の電気抵抗値の低減によって大電流に対応することが可能となる。」
「【0085】
ヒューズ素子60は、絶縁基板2の第1の側面2c及び第2の側面2dに加え、絶縁基板2を貫通する電流経路を有しており、電流経路全体として電気抵抗値を低減させるため大電流に対応することが容易となる。」
「【0092】
ここで、第1の貫通導電部15及び第2の貫通導電部16は、スルーホールであり、特に孔内部を導電材料で充填した穴埋めスルーホールとすることで、電流経路全体での電気抵抗値の低減効果を高めることが可能である。」
「 図3 図9 図12
[図:0001412312000005.jpg]
」
9 当審で追加する文献9(特開2017-117774号公報)の記載事項
文献9は、甲3の公開公報である。文献9には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0022】
なお、第1、第2の実装電極18,19は、スルーホール20に代えて、又はスルーホール20ともに絶縁基板10の第1、第2の側縁10c,10dにキャスタレーションを設け、当該キャスタレーションを介しても第1、第2の電極11,12と導通させてもよい。また、第1、第2の実装電極18,19は、スルーホール20やキャスタレーションを介して導通を取るスペースを確保するとともに回路基板への接続面積を広げて接続強度や所定の定格を確保するために、十分な面積を備え、また、素子全体のヒューズ抵抗の低抵抗化(例えば7mΩ)が図られている。」
「【0081】
[変形例]
ここで、大電流に対応させるためにヒューズ素子の定格向上を図るためには、可溶導体13自体の低抵抗化のみならず、絶縁基板10の表面10aに形成された第1、第2の電極11,12から絶縁基板10の裏面10bに形成された第1、第2の実装電極18,19に至る電流経路の低抵抗化が求められている。」
「【0097】
[キャスタレーション]
なお、ヒューズ素子70は、図28に示すように、小型化の要請や製造コスト等の条件次第で、第1、第2の電極11,12にさらにキャスタレーション74を形成してもよい。この場合、キャスタレーション74と導電スルーホール20とは強度確保のため所定の間隔(例えば導電スルーホール20の開口径の半分以上)を空けて設けることが好ましい。ヒューズ素子70は、第1、第2の電極11,12に、導電スルーホール20に加えてキャスタレーション74を設けることにより、さらに導通抵抗を低下させるとともにフィレットの形成により実装強度を向上させることができ、またフィレットを確認することで外部回路基板72への実装確認を容易に行うことができる。」
「 図28
[図:0001412312000006.jpg]
」
10 当審で追加する文献10(特開2018-78046号公報)の記載事項
文献10は、甲4の公開公報である。文献10には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0030】
また、第1の発熱体電極18は、孔部25を介して絶縁基板10の裏面10fに形成された外部接続電極18bと接続されている。孔部25は、図3に示すように第3の側面10cに形成されたキャスタレーションとして形成してもよく、第3の側面10cからやや内側に形成されたスルーホールとして形成してもよく、あるいはキャスタレーション及びスルーホールを併用してもよい。また、孔部25は、1又は複数形成してもよい。」
「【0050】
ここで、Bについて補足すると、孔部25が複数ある場合は、発熱体14の第3の側縁10c側の端部と最も発熱体14側に位置する孔部25の外縁との最短距離をいう。図8は、第1の発熱体電極18に設ける孔部25として、第3の側縁10cからやや内側に形成したスルーホールを有する保護素子1を示す平面図である。図8に示す保護素子1では、孔部25の外縁は、このスルーホールの外縁となる。」
「 図8
[図:0001412312000007.jpg]
」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「保護回路U1~U3」は本件発明1の「保護素子」に相当し、以下同様に、「二次電池装置3」は「保護回路」に、「フューズfa」は「第1ヒューズエレメント」に、「フューズfb」は「第2ヒューズエレメント」に、「抵抗発熱素子ra、rbを構成する抵抗体42」は「ヒーター」に、「端子taを構成している電極31」は「第1電極部」に、「端子tbを構成している電極32」は「第2電極部」に、「接続点Pを構成しているフューズ電極34」は「第3電極部」に、「導通路」は「導通部」に、「各保護回路を接続している」という事項は「外部の保護回路と接続可能に設けられた」という事項に、それぞれ相当する。
甲1発明の「前記導通路に接続され、且つ各保護回路を接続している接続点Pを構成しているフューズ電極34」と本件発明1の「前記導通部に接続され、且つ外部の保護回路と接続可能に設けられた第4電極部」とは、「前記導通部に接続され、且つ外部の保護回路と接続可能に設けられた所定の電極部」という点で共通する。
甲1発明の「前記複数の保護回路U1~U3に設けられた複数の接続点Pを構成しているフューズ電極34同士を接続するバイパス回路」と本件発明1の「前記複数の保護素子に設けられた複数の前記第4電極部同士を接続するバイパス回路」とは、「前記複数の保護素子に設けられた複数の前記所定の電極部同士を接続するバイパス回路」という点で共通する。
したがって、両者は、
「並列接続された複数の保護素子を備える保護回路であって、
複数の保護素子を構成する各保護素子は、
直列接続された第1ヒューズエレメントおよび第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続されたヒーターと、
前記第1ヒューズエレメントの前記第2ヒューズエレメントとは反対側に接続された第1電極部と、
前記第2ヒューズエレメントの第1ヒューズエレメントとは反対側に接続された第2電極部と、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に接続され、且つ前記ヒーターと直列接続された第3電極部と、
前記第3電極部に接続された導通部と、
前記導通部に接続され、且つ外部の保護回路と接続可能に設けられた所定の電極部と、
を有し、
前記複数の保護素子が並列接続され、
前記複数の保護素子に設けられた複数の前記所定の電極部同士を接続するバイパス回路を有する、
保護回路。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1の導通部は「前記ヒーターよりも低い抵抗値を有する」とともに「前記基板に設けられた複数のスルーホールで構成される」ものであるのに対し、甲1発明の導通路の抵抗値は明らかではなく、フューズ電極34と電極35とを接続する導通路を含めてフューズ電極34、抵抗発熱素子raと抵抗発熱素子rbとの接続点である電極35、フューズfa及びフューズfbになっている低融点金属箔41、抵抗体42及び電極31~33はベース基板40の上側の面に設けられている点。
<相違点2>
所定の電極部に関し、本件発明1は「第4電極部」であるのに対し、甲1発明は「接続点Pを構成しているフューズ電極34」である点。
(2)甲1~甲7に基づく判断
甲2~甲4の特許公報の発行日は、上記第4の2~4に摘記したとおり、それぞれ令和2年6月10日、令和2年12月9日、令和3年1月13日であって、甲2~甲4は本件特許の出願日である令和元年7月22日よりも後に発行された刊行物であるから、本件特許の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物ではない。
したがって、甲2~甲4に記載されている事項は、本件特許の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明とは認められないから、甲2~甲4を証拠として、本件発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということはできない。
(3)甲1、甲5~7及び当審で追加する文献8~10に基づく判断
相違点1について検討する。
一般的にスルーホールは基板の異なる面にそれぞれ設けられている電極同士を電気的に接続するためのものであるところ、甲1発明では、フューズ電極34、抵抗発熱素子raと抵抗発熱素子rbとの接続点である電極35、前記フューズ電極34と前記電極35とを接続する導通路、フューズfa及びフューズfbになっている低融点金属箔41、抵抗体42及び電極31~33は全てベース基板40の上側の面に設けられているから、フューズ電極34と電極35とを接続している導通路を、ベース基板40に設けられたスルーホールとして構成することは、技術的に合理性を欠くことになる。また、甲1には、導通路をスルーホールで構成することについて記載も示唆もされていない。
したがって、上記第4の8~10(文献8~文献10の摘記事項)から、基板を挟んで設けられる2つの電極の導通部が基板に設けられた複数のスルーホールで構成されることが周知技術(以下「周知技術1」という。)であったとしても、甲1発明の導通路に直接、周知技術1を適用する動機付けはない。
次に、上記第4の5~7(甲5~甲7の摘記事項)から、ヒータを、ヒューズエレメントとともに基板の上面に設けたり、ヒューズエレメントとは別に基板の下面に設けたりすることは周知技術(以下「周知技術2」という。)といえるから、周知技術2も含めて検討する。基板にスルーホールを設ける必要性が生じるのは、基板の異なる面にそれぞれ設けられている電極同士を電気的に接続しなければならない状況が前提となるから、甲1発明に周知技術1を適用するとしたら、まず、甲1発明に周知技術2を適用して抵抗体42をベース基板40の下側の面へ移設し、当該移設によって生じる、ベース基板40の下側の面に設けられた電極35と、ベース基板40の上側の面に設けられたフューズ電極34とを電気的に接続しなければならない状況となった後である。そして、周知技術2の適用によって生じた、基板の異なる面に設けられることとなったフューズ電極34と電極35とをどのように接続するかという新たな課題を解決するために、さらに、周知技術1を直列的に適用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、甲1発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、たとえ当業者であっても容易に想到し得たこととはいえない。
次に、相違点2について検討する。
本件発明1の第4電極部は、スルーホールで形成される導通部によって第3電極部と接続されていることから、第4電極部は基板に対して第3電極部とは異なる面に設けられていることが理解される。一方、甲1発明の、接続点Pを構成しているフューズ電極34はベース基板40に対して他の電極等と同じ面に設けられている。
ここで、周知技術2はヒータをヒューズエレメントとは別に基板の下面に設けたりする技術であって、パイパス回路の接続箇所を基板の下面へ設けたりすることを示す技術ではないから、仮に周知技術2を甲1発明に適用できたとしても、ただちに、パイパス回路の接続箇所も、接続点Pを構成しているフューズ電極34から他の位置(周知技術2の適用よってヒータと一緒にベース基板40の下側の面へ移動する電極35の位置等)へ変更することにはならない。また、甲1発明におけるバイパス回路はフューズfa及びフューズfbになっている低融点金属41に流れる電流を他の保護回路へ導くための回路であるから、バイパス回路の接続箇所を、甲1発明における二個のフューズfa、fbが互いに接続された接続点Pを構成しているフューズ電極34から離れた位置にある、導通路の先の電極35に敢えて変更するべき動機付けもない。したがって、周知技術2が存在しても、甲1発明に基いて相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、たとえ当業者であっても容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明1は、相違点1及び相違点2に係る発明特定事項を備えることにより、「過電流を確実に防止して安全性を向上することができ、且つ従来よりも簡単な装置構成でコスト低減を実現することができ、更には装置の故障率を低減することができる。」(【0022】参照)という格別の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲1発明、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を引用するものであるから、上記1に示した理由と同様の理由により、甲1発明、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700221