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特許異議申立

2024-700817

熱伝導性組成物、及び積層体の製造方法

審判番号
2024-700817
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-128350
登録番号
7445065
請求日
2024年08月28日
審決日
2024年12月04日
公報発行日
2025年01月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】デクセリアルズ株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人ITOH
  • 【異議申立人】落合 克弘
審判長/審判官
  • 審判長 恩田 春香
  • 審判官 大橋 達也
  • 審判官 中野 浩昌
分類
P1651.121-Y (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7445065号発明「熱伝導性組成物、及び積層体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7445065号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7445065号の請求項1~9に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和5年8月7日に出願され、令和6年2月27日にその特許権の設定登録がされ、同年3月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年8月28日に特許異議申立人 落合 克弘(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 硬化成分と、硬化剤と、金属フィラーと、を含有し、 前記金属フィラーが、銀粒子、銅粒子、銀被覆銅粒子、及び銅被覆銀粒子から選択される少なくとも1種であり、 前記金属フィラーにおける粒径1μm以下の粒子の体積充填率が、5体積%以上であり、 前記金属フィラーの体積充填率が、30体積%以上90体積%以下であることを特徴とする熱伝導性組成物。 【請求項2】 前記金属フィラーの体積充填率が、50体積%以上80体積%以下である請求項1に記載の熱伝導性組成物。 【請求項3】 前記金属フィラーにおける粒径1μm以下の粒子の体積充填率が、8体積%以上である請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。 【請求項4】 前記硬化成分が、オキシラン環化合物及びオキセタン化合物の少なくともいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。 【請求項5】 前記硬化成分が、オキシラン環化合物であり、 前記硬化剤が、イミダゾール系硬化剤である請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。 【請求項6】 分子内に、フェノキシ構造、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリアミド構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有するポリマーを更に含有する請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。 【請求項7】 基材上に、請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物を付与する工程と、 前記熱伝導性組成物を加熱する工程と、 を含むことを特徴とする積層体の製造方法。 【請求項8】 前記熱伝導性組成物上に、第2の硬化成分、第2の硬化剤、第2の熱伝導性粒子、及び低融点金属粒子を含有する第2の熱伝導性組成物を付与する工程を更に含み、 前記加熱する工程が、前記熱伝導性組成物、及び前記第2の熱伝導性組成物を加熱する工程である請求項7に記載の積層体の製造方法。 【請求項9】 前記基材が、シリコン基材である請求項7に記載の積層体の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として甲第1号証~甲第3号証(以下、「甲1」~「甲3」という。)を提出し、以下の理由により、請求項1~9に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1)申立理由1(進歩性) 本件発明1~9は、甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ここで、特許異議申立書の10~11頁の「5 証拠方法」に記載された甲2(特開2020-194974号公報)の記載内容は、特許異議申立書の8頁~9頁等における記載と異なっており、特許異議申立書の8頁~9頁等における記載は、申立人が令和5年8月28日に提出した特開2020-164974号公報に対応しており、甲2の公報番号の誤記であることが明らかであるため、特開2020-164974号公報を甲2として以下記載する。 [証拠方法] 甲1:特開2003-193021号公報 甲2:特開2020-164974号公報 甲3:特開2004-335872号公報 第4 甲号証の記載、甲号証に記載された発明等 1 甲1(特開2003-193021号公報) (1)甲1の記載 甲1には以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 「【0005】本発明は、160℃での溶融粘度が10Pa・s以上10000Pa・s以下の樹脂を使用し、その樹脂中に30~80体積%の熱伝導性に優れるフィラーを加えることにより、極めて高い熱伝導率を示すにも関わらず、従来の課題であった、流動性の低下や、フィルムの強度、熱応力の緩和の作用、耐熱性や耐湿性の低下などがない、接着フィルムを提供することを目的とする。」 「【0011】本発明に使用される、接着性樹脂は、160℃での溶融粘度が10Pa・s以上10000Pa・s以下である必要がある。また、160℃での溶融粘度が100Pa・s以上1000Pa・s以下の場合、フィルムの強度が高く、打ち抜き加工などの加工性が高い点でより好ましい。160℃での溶融粘度が10Pa・s未満の場合、接着時の樹脂の流動が大きすぎるため、適当な膜厚を保持できないなどにより、接着性や耐熱性が低下する点で好ましくない。また、160℃での溶融粘度が10000Pa・s超の場合、接着時の樹脂の流動が不足するため、接着性や耐熱性が低下する点で好ましくない。160℃での溶融粘度はメルトインデックサ、ムーニー粘度計等を使用して測定できる。 【0012】本発明に使用される接着性樹脂としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と、これら樹脂の硬化剤が挙げられる。また、接着性樹脂は、更に、その他の高分子量成分、硬化促進剤、触媒、添加剤、カップリング剤等を含有していてもよい。 【0013】エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を呈するものであればよく、二官能以上(1分子中にエポキシ基を2個以上含有)で、好ましくは重量平均分子量が300~5000未満、より好ましくは300~3000未満のエポキシ樹脂が使用できる。なお、本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。二官能エポキシ樹脂(1分子中にエポキシ基を2個含有するエポキシ樹脂)としては、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型エポキシ樹脂等が例示される。ビスフェノールA型又はビスフェノールF型エポキシ樹脂は、油化シェルエポキシ株式会社から、エピコート807、エピコート827、エピコート828という商品名で市販されている。また、ダウケミカル日本株式会社からは、D.E.R.330、D.E.R.331、D.E.R.361という商品名で市販されている。さらに、東都化成株式会社から、YD8125、YDF8170という商品名で市販されている。」 「【0031】本発明の接着フィルムは、上記の接着剤樹脂及び高熱伝導フィラーを含有する接着剤組成物をキャリアフィルム上にフィルム状に形成させて得ることができる。接着剤組成物の各成分を溶剤に溶解ないし分散してワニスとし、キャリアフィルム上に塗布、加熱し溶剤を除去することにより、接着剤層をキャリアフィルム上に形成して得られる。加熱の条件は、接着性樹脂を完全に硬化させることなく、溶剤を除去することができる条件であれば特に制限はなく、例えば、80~140℃で5~60分間加熱することにより溶剤を除去する。また、加熱より、接着性樹脂は全く硬化しなくてもよく、また、B-ステージ程度まで硬化してもよい。このようにして形成される接着フィルム中の残存溶媒量は3重量%以下であることが好ましく、1.5重量%以下であることがより好ましい。 【0032】キャリアフィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルムが使用できる。」 「【0037】 【実施例】以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。 実施例1 接着性樹脂: エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量175、東都化成株式会社製商品名YD-8125を使用)45重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量210、東都化成株式会社製商品名YDCN-703を使用)15重量部、エポキシ樹脂の硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製商品名プライオーフェンLF2882を使用)40重量部及び硬化促進剤としてイミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業株式会社製キュアゾール2PZ-CNを使用)0.5重量部からなる組成物に溶剤としてMEKを加え、溶解、混合した。これに熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー(Chemet製AA-0101、熱伝導率420W/mK、平均粒径:8.3μm)2200重量部を加え、3本ロールを用いて混練した後、667Pa(5Torr)以下で10分間脱泡処理を行い、ペースト組成物を得た。これにエポキシ基含有アクリルゴム(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量25万、グリシジルメタクリレート単位含量3重量%、Tgは-7℃、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR-860P-3)66重量部を加えてさらに混合し、ワニスを作製した。このワニスを真空脱気した後、厚さ75μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、90℃20分間、120℃で5分間加熱乾燥して膜厚が60μmの塗膜とし、接着フィルムを作製した。接着フィルム中の残存溶媒量は、0.5重量%であり、銀の含有量は56体積%であった。 【0038】銀フィラーを配合しない以外は上記と同様にして調製したワニスを用い、上記と同様にして膜厚が60μmの接着性樹脂の塗膜とし、次いで170℃で1時間加熱硬化させて接着性樹脂の硬化物とし、その貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置(レオロジ社製、DVE-V4)を用いて測定(サンプルサイズ:長さ20mm、幅4mm、膜厚60μm、昇温速度5℃/分、引張りモード、10Hz、自動静荷重)した結果、25℃で600MPa、260℃で35MPaであった。また、接着性樹脂の160℃での溶融粘度は400Pa・sであった。 【0039】実施例2 熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー(徳力化学(株)製TCG-1、熱伝導率420W/mK、平均粒径:2.0μm)2200重量部を用いた他は実施例1と同様にして、接着フィルムを作製した。 【0040】比較例1 銀フィラーを500重量部にした他は実施例1と同様にして、接着フィルムを作製した。この時の接着フィルム中の銀含有量は25体積%であった。 【0041】評価方法:接着強度:8×8mmの接着フィルムをAgめっき付き銅リードフレーム上に160℃で加熱して貼付け、接着フィルムを貼り付けたリードフレームへ、温度300℃、圧力0.12MPa、時間5秒で、半導体素子をマウントし、180℃で2時間加熱して硬化し、接着した。これを自動接着力試験装置(日立化成工業(株)製)を用い、260℃における引き剥がし強さ(kgf)を測定した。熱伝導率:実施例1、2及び比較例1で調整したワニスを用いて塗膜を形成し、次いで180℃、5時間加熱処理し、10×10×0.5mmの試験片を得た。この試験片の熱拡散率をレーザーフラッシュ法(真空理工製TC-7000)で測定し、さらにこの熱拡散率と、示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー製Pyris1)で得られた比熱容量とアルキメデス法で得られた比重の積より熱伝導率を算出した。 【0042】 【表1】 [図:0001418262000001.jpg] 【0043】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の高熱伝導接着フィルムは熱伝導性に優れ、接着性、信頼性にも優れるため、半導体用途の接着フィルムとして有効である。」 (2)ア 上記(1)の【0039】には、「実施例2 熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー(徳力化学(株)製TCG-1、熱伝導率420W/mK、平均粒径:2.0μm)2200重量部を用いた他は実施例1と同様にして、接着フィルムを作製した。」との記載があり、上記(1)の【0037】には、「実施例1」「熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー(Chemet製AA-0101、熱伝導率420W/mK、平均粒径:8.3μm)2200重量部」との記載があるから、実施例2は、実施例1の「熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー(Chemet製AA-0101、熱伝導率420W/mK、平均粒径:8.3μm)」の代わりに、「熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー(徳力化学(株)製TCG-1、熱伝導率420W/mK、平均粒径:2.0μm)を用いるものといえる。 イ 上記(1)の【0032】には、「キャリアフィルムとしては」「ポリエチレンテレフタレートフィルム」「が使用できる」との記載があるから、同【0037】の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」はキャリアフィルムである。 (3)甲1に記載された発明 上記(1)及び(2)から、甲1には、実施例2について、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(当審注:括弧内は根拠となる甲1の段落番号等である。)。 「エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤としてフェノールノボラック樹脂、及び硬化促進剤としてイミダゾール系硬化促進剤からなる組成物に溶剤としてMEKを加え、溶解、混合して接着性樹脂とし、(【0037】) 当該接着性樹脂に、熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー(平均粒径:2.0μm)を加え、混練した後、脱泡処理を行い、ペースト組成物を得て、これにエポキシ基含有アクリルゴムを加えてさらに混合し、ワニスを作製し、このワニスを真空脱気した後、キャリアフィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、加熱乾燥して膜厚が60μmの塗膜として作製された接着フィルムであって、(【0037】、上記(2)ア、イ) 接着フィルム中の銀の含有量は56体積%であり、(【0037】) 接着フィルムをAgめっき付き銅リードフレーム上に加熱して貼付け、接着フィルムを貼り付けたリードフレームへ、半導体素子をマウントし、加熱して硬化し、接着するものであり、(【0041】) エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂であり、硬化して接着作用を呈し、(【0012】、【0013】) 160℃での溶融粘度が10Pa・s以上10000Pa・s以下の接着性樹脂を使用し、熱伝導性に優れるフィラーを加えることにより、極めて高い熱伝導率を示すにも関わらず、従来の課題であった、流動性の低下や、フィルムの強度、熱応力の緩和の作用、耐熱性や耐湿性の低下などがない、(【0005】、【0011】) 接着フィルム。」 2 甲2(特開2020-164974号公報) 甲2には以下の記載がある。 「【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明の第1の観点は、銀粉と、脂肪酸銀と、脂肪族アミンとを含む銀ペーストであって、前記銀粉は、粒径が100nm以上500nm未満である第1銀粒子を55体積%以上95体積%以下の範囲で含み、粒径が50nm以上100nm未満である第2銀粒子を5体積%以上40体積%以下の範囲で含み、粒径が50nm未満である第3銀粒子を5体積%以下の範囲で含むことを特徴とする。 【0008】 本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、樹脂を更に含むことを特徴とする。 【0009】 本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、溶媒を更に含むことを特徴とする。 【0010】 本発明の第4の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に脂肪酸銀の少なくとも一部と脂肪族アミンの少なくとも一部とが反応して形成される錯体を含むことを特徴とする。 【0011】 本発明の第5の観点は、脂肪酸銀、脂肪族アミン及び溶媒を、前記脂肪酸銀と前記脂肪族アミンと前記溶媒との合計量を100質量%としたときに、前記脂肪酸銀が0.1質量%~40質量%、前記脂肪族アミンが0.1質量%~60質量%、前記溶媒が80質量%以下の割合で混合して混合物を得る工程と、前記混合物を30℃~100℃に加熱して撹拌した後に冷却して混合溶液を得る工程と、前記混合溶液と銀粉とを混練して銀ペーストを得る工程とを含む銀ペーストの製造方法であって、前記銀粉が、粒径が100nm以上500nm未満である第1銀粒子を55体積%以上95体積%以下の範囲で含み、粒径が50nm以上100nm未満である第2銀粒子を5体積%以上40体積%以下の範囲で含み、粒径が50nm未満である第3銀粒子を5体積%以下の範囲で含むことを特徴とする。 【0012】 本発明の第6の観点は、第1部材と第2部材とを用意する工程と、第1部材及び/又は第2部材の表面に、第1ないし第4の観点のいずれかに記載の銀ペースト又は請求項5に記載の方法で製造された銀ペーストを塗布して銀ペースト層を形成する工程と、第1部材と第2部材とを銀ペースト層を介して積層して積層体を作製する工程と、積層体を加熱することにより銀ペースト層中の第1銀粒子と第2銀粒子と第3銀粒子を焼結させて接合層を形成させ、第1部材と第2部材とが接合層を介して接合された接合体を作製する工程とを含む接合体の製造方法である。 【発明の効果】 【0013】 本発明の第1の観点の銀ペーストでは、銀粉が、粒径が100nm以上500nm未満である第1銀粒子を55体積%以上95体積%以下の範囲で含み、粒径が50nm以上100nm未満である第2銀粒子を5体積%以上40体積%以下の範囲で含み、粒径が50nm未満である第3銀粒子を5体積%以下の範囲で含むので、前記銀粉が比較的広い粒度分布を有することによって、焼結の際に、第1~第3銀粒子同士の隙間が小さく緻密になることで、ボイドの少ない接合層を作製できる。 【0014】 本発明の第2の観点の銀ペーストでは、この銀ペーストが樹脂を更に含むので、銀ペーストを用いて作製された接合層の冷熱サイクル特性を向上できる。 【0015】 本発明の第3の観点の銀ペーストでは、この銀ペーストが溶媒を更に含むので、銀ペーストの粘度を調整して塗布等の作業を容易にすることができるという優れた効果が得られる。 【0016】 本発明の第4の観点の銀ペーストでは、脂肪酸銀の少なくとも一部と脂肪族アミンの少なくとも一部とが反応して形成される錯体を含むので、焼成時に前記錯体から微細な銀が析出し、この析出した銀が銀ペースト中の第1銀粒子と第2銀粒子と第3銀粒子との間を埋めることで、銀ペーストを用いて作製される接合層がより緻密化して、その熱伝導特性を飛躍的に向上させることができる。 【0017】 本発明の第5の観点の銀ペーストの製造方法では、脂肪酸銀、脂肪族アミン及び溶媒を所定の割合で混合した混合物を加熱して撹拌した後に冷却して混合溶液を調製し、この混合溶液と銀粉とを混練して銀ペーストを調製し、前記銀粉が、粒径が100nm以上500nm未満である第1銀粒子を55体積%以上95体積%以下の範囲で含み、粒径が50nm以上100nm未満である第2銀粒子を5体積%以上40体積%以下の範囲で含み、粒径が50nm未満である第3銀粒子を5体積%以下の範囲で含むので、前記と同様に、前記銀粉が比較的広い粒度分布を有することによって、焼結の際に、第1~第3銀粒子同士の隙間が小さく緻密になることで、ボイドの少ない接合層を作製できる。 【0018】 本発明の第6の観点の接合体の製造方法では、第1部材と第2部材とを、前記銀ペーストを塗布した銀ペースト層を挟んで積層して積層体を作製し、この積層体を加熱することで銀ペースト層中の第1銀粒子と第2銀粒子と第3銀粒子を焼結させて接合層を形成し、第1部材と第2部材とがこの接合層を介して接合された接合体を作製したので、接合体を接合する接合層はボイドが少なく、この方法で製造された接合体の熱伝導特性及び冷熱サイクル特性を向上できる。」 「【0028】 銀ペーストは、更に樹脂又は溶媒のいずれか一方又は双方を含むことが好ましい。樹脂としては、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、及びそれらの混合物等が挙げられる。エポキシ系樹脂には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、及びそれらの混合物等があり、シリコーン系樹脂には、メチルシリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、ポリエステル変性シリコーン樹脂、及びそれらの混合物等があり、アクリル系樹脂には、アクリレート系モノマー樹脂等がある。これらの樹脂は、銀ペーストの加熱によって硬化し、その硬化体が、銀粉末の焼結体の空隙に充填される。熱硬化性樹脂組成物の硬化体が、銀粉末の焼結体の空隙に充填されることによって、接合層の機械的強度が向上し、更に冷熱サイクル負荷時における接合強度の低下が抑えられる。前記樹脂の含有量は銀ペースト全体を100質量%としたときに0.1質量%~3質量%の範囲内であってもよい。前記樹脂の含有量が0.1質量%未満であると接合層の機械的強度が向上しないおそれがあり、3質量%を超えると銀粉の焼結が妨げられ接合層の機械的強度が低下するおそれがある。前記樹脂の含有量は、好ましくは0.2質量%~2.5質量%の範囲内であってもよく、更に好ましくは0.3質量%~2.0質量%の範囲内であってもよい。」 「【0036】 <実施例1> 先ず、酢酸銀(脂肪酸銀)、アミノデカン(脂肪族アミン)及びブチルカルビトールアセテート(溶媒)を用意し、脂肪酸銀、脂肪族アミン及び溶媒の合計量を100質量%としたとき、酢酸銀(脂肪酸銀)22質量%、アミノデカン(脂肪族アミン)41.3質量%、ブチルカルビトールアセテート(溶媒)36.7質量%の割合で取り分け、これらをスターラーの撹拌子とともにガラス製の容器に入れた。そして、50℃に加熱したホットプレートに前記容器を載せ、スターラーの撹拌子を300rpmで回転させながら、1時間撹拌して混合液を調製した。次いで、この混合液が貯留された容器をホットプレートから降ろしてこの混合液の温度を室温まで下げた。これにより脂肪酸銀・脂肪族アミン混合溶液(以下、単に混合溶液と呼ぶ)を調製した。この混合溶液を実施例1とした。」 「【0045】 表5に示すNo.1の銀粉(第1~第3銀粒子の混合物/凝集体)は次のようにして調製した。先ず、D10、D50及びD90がそれぞれ20nm、50nm及び100nmである銀微粒子と、D10、D50及びD90がそれぞれ150nm、300nm及び500nmである銀微粒子とを用意した。銀微粒子のD10、D50及びD90は、銀微粒子の粒度分布曲線から求めた。銀微粒子の粒度分布曲線は、後述する動的光散乱法により測定した。なお、用意したD10、D50及びD90がそれぞれ20nm、50nm及び100nmである銀微粒子(原料粉A)と、D10、D50及びD90がそれぞれ150nm、300nm及び500nmである銀微粒子(原料粉B)とを、質量比で1:3の割合にて混合し、銀微粒子混合物を得た。原料粉A、Bは、次のようにして製造することができる。原料粉Aは、例えば、硝酸銀とクエン酸と水酸化カリウムとを、硝酸銀中の銀イオンに対して等モル比(1:1:1)となるよう蒸留水中で混合して懸濁液を作製した。この懸濁液に、銀イオン1に対して2のモル比で酢酸ヒドラジンを加える。酢酸ヒドラジンを加えた懸濁液を40℃の液温で反応させ、得られた反応液スラリーから洗浄、回収、乾燥することで得ることができる。原料粉Bは、例えば、硝酸銀水溶液とアンモニア水と蒸留水を混合し銀濃度が22g/Lである銀アンミン水溶液を調製し、この銀アンミン水溶液に、還元液を加え、生じた銀粒子スラリーを洗浄、回収、乾燥することで得られた。なお、還元液は、ヒドロキノン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液との混合液であり、酸化還元電位がAg/AgCl基準で-380mVとなるように調製された液である。」 「【0067】 【表5】 [図:0001418262000002.jpg] 」 「【0076】 <実施例34及び35> 実施例34及び35の銀ペーストは、混合溶液及び樹脂として、表1及び表6に示す種類のものを用いるとともに、銀粉、混合溶液及び樹脂を、表6に示すような割合でそれぞれ配合した。樹脂は、混合溶液と銀粉を混合する際に添加し、これらとともに混錬した。なお、表6に示した配合以外は、実施例15と同様にして、銀ペーストを調製した。 【0077】 <比較試験4及び評価> 実施例17、実施例34及び実施例35の銀ペーストを用いて、比較試験2と同様に接合体をそれぞれ作製し、これらの接合体の接合強度を比較試験2と同様に測定した。また、実施例17、実施例34及び実施例35の銀ペーストを用いて、比較試験2と同様に銀焼成膜をそれぞれ作製し、これらの銀焼成膜の熱拡散率を比較試験2と同様に測定した。更に、実施例17、実施例34及び実施例35の接合体について冷熱サイクル試験を行っ た後に、これらの接合体の接合強度を比較試験2と同様に測定した。前記冷熱サイクル試験は、気相法を用いて、-40℃に20分保持した後に、+150℃に20分保持する操作を1000サイクル繰返すことにより行った。その結果を表6及び表7に示す。 【0078】 なお、表6中の樹脂の種類の欄において、『D1』はエポキシ系熱硬化性樹脂組成物を示し、『D2』はシリコーン系熱硬化性樹脂組成物を示す(いずれも常温で液状、硬化温度:140~150℃)。また、表6中の銀粉末の種類の欄において、No.1は表5のNo.1の銀粉末であり、混合溶液は表1の実施例1の混合溶液である。更に、表6において、樹脂の配合割合は銀ペーストを100質量%としたときの割合である。 【0079】 【表6】 [図:0001418262000003.jpg] 」 3 甲3(特開2004-335872号公報) 甲3には以下の記載がある。 「【0038】 (実施例1) 下記に示す材料・手順で本実施例の熱伝導性材料を作製した。 【0039】 先ず、旭電化社製の酸無水物硬化剤“KRM-291-5”(品番)100重量部に対して、有機酸である無水こはく酸をそれぞれ、5重量部、10重量部、20重量部、30重量部溶解させて4種類の溶液を調製した。この溶液に対して、それぞれエポキシ樹脂の主剤として大日本インキ社製のビスフェノールF型エポキシ“EXA-830LVP”(品番)50重量部と同社製のナフタレン型エポキシ“HP-4032D”(品番)50重量部、硬化促進剤として四国化成社製のイミダゾール“1M2EZ”(品番)0.5重量部、およびカップリング剤である信越化学社製の“KBM-403”(品番)1重量部と“A-166”(品番)1重量部とを混合し、4種類のベース樹脂を作製した。 【0040】 次に、ベース樹脂とフィラーの総量に対して、フィラーの割合が50体積%となるようにベース樹脂にフィラーを添加して混合した。フィラーとしては、エポキシ樹脂の硬化温度(150℃~200℃)より高い融点を有する第1のフィラーとして平均粒子径100μmのCu(融点:1083℃)、エポキシ樹脂の硬化温度より低い融点を有する第2のフィラーとして平均粒子径20μm~40μmの42Sn-58Bi合金(融点:138℃)を用い、これらの配合比率(重量比)を第1のフィラー/第2のフィラー=2/8とした。」 第5 申立理由1(進歩性)について 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明において、「エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂であり、硬化して接着作用を呈」するものであるから、甲1発明の「エポキシ樹脂として」の「ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂」は、本件発明1の「硬化成分」に相当する。 イ 甲1発明の「フェノールノボラック樹脂」は、「エポキシ樹脂の硬化剤として」のものであるから、本件発明1の「硬化剤」に相当する。 ウ(ア)甲1発明の「熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー(平均粒径:2.0μm)」は、扁平銀フィラーであり金属フィラーといえるから、本件発明1の「金属フィラー」に相当する。 また、甲1発明の「熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー(平均粒径:2.0μm)」は、粒径を有する点で銀粒子といえるから、本件発明1の「金属フィラー」とは、「銀粒子」である点で共通する。 (イ)甲1発明の「接着フィルム」は、「接着性樹脂に、熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー(平均粒径:2.0μm)を加え、混練した後、脱泡処理を行い、ペースト組成物を得て、これにエポキシ基含有アクリルゴムを加えてさらに混合し、ワニスを作製し、このワニスを真空脱気した後、キャリアフィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、加熱乾燥して膜厚が60μmの塗膜として作製され」たものであり、「接着フィルム中の銀の含有量は56体積%」であるから、作製された接着フィルム中の銀の含有量は扁平銀フィラーの含有量といえる。また、「含有量は56体積%」であることは、体積充填率が30体積%以上90体積%以下であることといえるから、甲1発明と本件発明1とは、「体積充填率が、30体積%以上90体積%以下である」点で共通する。 エ 甲1発明の「接着フィルム」は、「エポキシ樹脂」、「エポキシ樹脂の硬化剤」、「硬化促進剤」を少なくとも含み、「極めて高い熱伝導率を示」すものであるから、熱伝導性組成物といえる点で、本件発明1の「熱伝導性組成物」に相当する。 オ 上記ア~エの検討によれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点1を有する。 [一致点] 「硬化成分と、硬化剤と、金属フィラーと、を含有し、 前記金属フィラーが、銀粒子であり、 前記金属フィラーの体積充填率が、30体積%以上90体積%以下であることを特徴とする熱伝導性組成物。」 [相違点1] 「金属フィラー」について、本件発明1では、「金属フィラーにおける粒径1μm以下の粒子の体積充填率が、5体積%以上であり」との構成を備えるのに対し、甲1発明の「熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー(平均粒径:2.0μm)」は、そのような構成を備えていない点。 (2)相違点1についての判断 ア 甲1発明の「熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー(平均粒径:2.0μm)」は、平均粒径が2.0μmではあるが、当該熱伝導性フィラーにおける「粒径1μm以下の粒子」については不明であるから、扁平銀フィラーにおける粒径1μm以下の粒子の体積充填率が5体積%以上であるものではない。 したがって、相違点1は実質的な相違点である。 イ(ア)上記第4の2より、甲2には以下の事項が記載されている(以下、括弧内は根拠となる甲2の段落番号である。)。 「銀粉と、脂肪酸銀と、脂肪族アミンとを含む銀ペースト(【0007】)を塗布して銀ペースト層を形成する工程と、第1部材と第2部材とを銀ペースト層を介して積層して積層体を作製する工程と、積層体を加熱することにより銀ペースト層中の第1銀粒子と第2銀粒子と第3銀粒子を焼結させて接合層を形成させ、第1部材と第2部材とが接合層を介して接合された接合体を作製する工程とを含む接合体の製造方法(【0012】)であって、 銀粉が、粒径が100nm以上500nm未満である第1銀粒子を55体積%以上95体積%以下の範囲で含み、粒径が50nm以上100nm未満である第2銀粒子を5体積%以上40体積%以下の範囲で含み、粒径が50nm未満である第3銀粒子を5体積%以下の範囲で含むので、前記銀粉が比較的広い粒度分布を有することによって、焼結の際に、第1~第3銀粒子同士の隙間が小さく緻密になることで、ボイドの少ない接合層を作製でき(【0013】)、 脂肪酸銀の少なくとも一部と脂肪族アミンの少なくとも一部とが反応して形成される錯体を含むので、焼成時に前記錯体から微細な銀が析出し、この析出した銀が銀ペースト中の第1銀粒子と第2銀粒子と第3銀粒子との間を埋めることで、銀ペーストを用いて作製される接合層がより緻密化して、その熱伝導特性を飛躍的に向上させることができ(【0016】)、 銀ペーストは、更にエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、及びそれらの混合物等の樹脂を含むことが好ましく、これらの樹脂は、銀ペーストの加熱によって硬化し、その硬化体が、銀粉末の焼結体の空隙に充填され、熱硬化性樹脂組成物の硬化体が、銀粉末の焼結体の空隙に充填されることによって、接合層の機械的強度が向上し、更に冷熱サイクル負荷時における接合強度の低下が抑えられる(【0028】)、 接合体の製造方法。」 (イ)甲2に記載された事項における「接合層」は、「第1部材と第2部材とを銀ペースト層を介して積層して」「作製」された「積層体」「を加熱することにより銀ペースト層中の第1銀粒子と第2銀粒子と第3銀粒子を焼結させて」「形成」させたものであり、また、「接合」することは「接着」することであるといえる。 そうすると、甲2に記載された事項における銀ペーストは、銀粒子の焼結により第1部材と第2部材とを接着するものといえる。 (ウ)一方、甲1発明の「接着フィルム」は、「接着フィルムをAgめっき付き銅リードフレーム上に加熱して貼付け、接着フィルムを貼り付けたリードフレームへ、半導体素子をマウントし、加熱して硬化し、接着するもの」であり、「接着フィルム」の「接着性樹脂」に含まれる「エポキシ樹脂」は、「熱硬化性樹脂であり、硬化して接着作用を呈」するものであるから、接着フィルムによる接着は、熱硬化性樹脂の硬化によるものといえ、扁平銀フィラーである銀粒子の焼結によるものではないといえる。 また、接着フィルムにより接着されるAgめっき付き銅リードフレーム、半導体素子はそれぞれ、第1部材、第2部材といえる。 そうすると、甲1発明の「接着フィルム」は、熱硬化性樹脂組成物の硬化により第1部材と第2部材とを接着するものであり、銀粒子の焼結により第1部材と第2部材とを接着するものでないといえる。 (エ)上記(イ)~(ウ)の検討によれば、熱硬化性樹脂組成物の硬化により第1部材と第2部材とを接着するものであり、銀粒子の焼結により第1部材と第2部材とを接着するものでない甲1発明の接着フィルムにおける扁平銀フィラーに代えて、銀粒子の焼結により第1部材と第2部材とを接着する甲2の銀ペーストにおける銀粒子を採用する動機がないといえ、甲1発明に、甲2に記載された事項を適用して、相違点1に係る本件発明1の構成を得ることを当業者が容易になし得たということはできない。 (3)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書(8頁~9頁)の「ウ(ア)」において、「一方、甲第2号証の段落0079(表6)に記載の実施例34には、段落0067(表5)に記載のNo.1(粒径100nm以上500nm未満が80体積%、粒径50nm以上100nm未満が17.5体積%、50nm未満が2.5体積%)の銀粒子を添加したエポキシ系熱硬化性樹脂組成物(D1)が記載され、当該銀粒子は粒径が1μm以下であることが明確であり、段落0080(表7)には熱拡散率(W/m・K)が良好であることが記載されている。甲第2号証の銀粒子を甲第1号証に組み合わせることで構成要件A~Eを充足する。 よって、甲第1号証と甲第2号証には構成要件A~Eが記載されており、甲1発明と甲2発明から本件特許発明1は容易に成し得るものである。」と主張する。 イ 上記アの主張について検討する。 (ア)甲2の記載を摘記した上記第4の2の【0076】には、「実施例34及び35の銀ペーストは、混合溶液及び樹脂として、表1及び表6に示す種類のものを用いるとともに、銀粉、混合溶液及び樹脂を、表6に示すような割合でそれぞれ配合した。」との記載があり、同【0078】【表6】には、「実施例34」の行において、「銀粉末」「種類」「No.1」、「混合溶液」「種類」「実施例1」、「樹脂」「種類」「D1」との記載がある。 ここで、「銀粉末」「種類」「No.1」については、同【0045】において「表5に示すNo.1の銀粉(第1~第3銀粒子の混合物/凝集体)」と記載されており、「混合溶液」「種類」「実施例1」については、同【0036】において「脂肪酸銀・脂肪族アミン混合溶液(以下、単に混合溶液と呼ぶ)を調製した。この混合溶液を実施例1とした。」と記載されており、「樹脂」「種類」「D1」については、同【0078】において「なお、表6中の樹脂の種類の欄において、『D1』はエポキシ系熱硬化性樹脂組成物」と記載されている。 そうすると、同【0076】に記載された実施例34の銀ペーストは、第1~第3銀粒子の混合物/凝集体である銀粉、脂肪酸銀・脂肪族アミン混合溶液、エポキシ系熱硬化性樹脂組成物が配合された銀ペーストである。 (イ)銀ペーストに配合される上記脂肪酸銀・脂肪族アミン混合溶液における脂肪酸銀及び脂肪族アミンは、同【0016】における「脂肪酸銀の少なくとも一部と脂肪族アミンの少なくとも一部とが反応して形成される錯体を含むので、焼成時に前記錯体から微細な銀が析出し、この析出した銀が銀ペースト中の第1銀粒子と第2銀粒子と第3銀粒子との間を埋めることで、銀ペーストを用いて作製される接合層がより緻密化して、その熱伝導特性を飛躍的に向上させることができる」との記載によれば、微細な銀を析出させて、第1~第3銀粒子の間を埋めるために用いられるものといえる。 (ウ)上記(ア)、(イ)の検討によれば、同【0076】に記載された実施例34の銀ペーストは、第1~第3銀粒子の混合物/凝集体である銀粉、脂肪酸銀・脂肪族アミン混合溶液、エポキシ系熱硬化性樹脂組成物が配合された銀ペーストであり、ここで、脂肪酸銀・脂肪族アミンは、微細な銀を析出させて、第1~第3銀粒子の間を埋めるために用いられるものであるところ、甲2に記載の実施例34の銀ペーストの組成のうち、銀を析出させる脂肪酸銀・脂肪族アミン混合溶液を考慮せず、銀粒子の技術事項のみを一般化して抽出して、甲1発明の「熱伝導性フィラー 扁平銀フィラー」を代替させることは適当ではないといえる。 また、上記(2)イ(オ)に記載したとおり、甲1発明において、甲2に記載された事項を適用する動機付けもない。 (エ)以上より、申立人の上記(ア)の主張は採用できない。 (4)小括 以上から、本件発明1は、甲1発明、甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件発明2~9について 本件発明2~9は、いずれも本件発明1の全ての構成を有するものであるから、甲3の記載を参照した当業者であっても上記1で検討したのと同様の理由により、本件発明2~9は、甲1発明、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 したがって、申立理由1は理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700817

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