特許異議申立
2023-701072
樹脂組成物、半導体用配線層積層体及び半導体装置
- 審判番号
- 2023-701072
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-154409
- 登録番号
- 7259907
- 請求日
- 2023年10月05日
- 審決日
- 2024年08月28日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社レゾナック
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】平野 裕之
- 【権利者代理人】中塚 岳
- 【異議申立人】株式会社 クレス
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 中野 浩昌
- 審判官 棚田 一也
- 分類
- P1651.121-YAA(H01L) / P1651.161-YAA(H01L) / P1651.536-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7259907号発明「樹脂組成物、半導体用配線層積層体及び半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7259907号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。
特許第7259907号の請求項1~4、7~11、13、14、16に係る特許を維持する。
特許第7259907号の請求項5、6、12、15に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7259907号の請求項1~16に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2017年(平成29年)9月26日(優先権主張 平成28年9月26日、平成29年1月23日)を国際出願日とする特許出願(特願2018-540352号)の一部を、令和3年9月22日に新たな特許出願としたものであって、令和5年4月10日にその特許権の設定登録がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許についての異議申立ての経緯は以下のとおりである。
令和 5年10月 5日 特許異議申立人 株式会社クレス(以下「申立人1」という。)による請求項1に係る特許についての特許異議の申立て
令和 5年10月16日 特許異議申立人 弁理士法人朝日奈特許事務所(以下「申立人2」という。)による請求項1~16に係る特許についての特許異議の申立て
令和 6年 1月19日付け 当審による取消理由通知書
令和 6年 3月22日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和 6年 4月17日 特許権者による訂正請求書に対する手続補正書及び意見書に対する手続補正書の提出
令和 6年 4月24日付け 特許法第120条の5第5項の通知書
なお、申立人1及び申立人2は、令和6年4月24日付けの通知書に対する応答期間内に意見書を提出していない。
第2 訂正について
1 訂正の内容
特許権者が令和6年3月22日に提出し、同年4月17日に手続補正がされた訂正請求書(以下「訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、「特許第7259907号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~16について訂正することを求める。」ことを請求の趣旨とし、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示すため当審が付したものである。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記樹脂組成物の硬化物の破断伸びが5~200%であり、前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である、樹脂組成物。」とあるのを、
「前記硬化性樹脂が、少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物であり、
前記マレイミド化合物が、下記式(VIII)で表される化合物であり、
【化1】
[図:0001417620000001.jpg]
[式中、Z1は、2価の炭化水素基を表す。]
180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の破断伸びが5~200%であり、
前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である、樹脂組成物。」
と訂正する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、7~11、13、14、16も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記硬化性樹脂が、少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有する、請求項1に記載の樹脂組成物。」とあるのを、
「前記硬化性樹脂が、少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物であり、
前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が、前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化性フィルムを、シリコンウェハ上に100℃でラミネートし、その状態で前記硬化性フィルムを180℃で2時間の加熱により硬化した硬化物における塩化物イオンの濃度である、請求項1に記載の樹脂組成物。」
と訂正する。
(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4、7~10も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「請求項2~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」とあるのを、「請求項2~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」と訂正する。
(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~10も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に「請求項2~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」とあるのを、「請求項2~4、7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」と訂正する。
(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9、10も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に「請求項2~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」とあるのを、「請求項2~4、7、8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」と訂正する。
(請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。)
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に「請求項2~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」とあるのを、「請求項2~4、7~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」と訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項13に「前記樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が120~240℃である、請求項11又は12に記載の樹脂組成物。」とあるのを、「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物のガラス転移温度が120~240℃である、請求項11に記載の樹脂組成物。」と訂正する。
(請求項13の記載を直接的又は間接的に引用する請求項14、16も同様に訂正する。)
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項14に「前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの誘電率が3.0以下である、請求項11~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」とあるのを、「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の10GHzでの誘電率が3.0以下である、請求項11又は13に記載の樹脂組成物。」と訂正する。
(請求項14の記載を引用する請求項16も同様に訂正する。)
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項15を削除する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項16に「前記樹脂組成物の硬化物の5%重量減少温度が300℃以上である、請求項11~15のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」とあるのを、「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の5%重量減少温度が300℃以上である、請求項11、13、14のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」と訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「樹脂組成物」について、
「前記硬化性樹脂が、少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物であり、
前記マレイミド化合物が、下記式(VIII)で表される化合物であり、
【化1】
[図:0001417620000002.jpg]
[式中、Z1は、2価の炭化水素基を表す。]
180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の破断伸びが5~200%であり、
前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である、樹脂組成物。」
という事項のうちの下線部の事項を付加して樹脂組成物を限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1のうち、訂正前の「前記樹脂組成物の硬化物」を「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物」とする訂正は、下記第5の3の取消理由3(明確性)を解消するためのものでもあるから、同項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には、以下の記載がある。(この項の下線は当審で付した。)
「【0025】
硬化性樹脂は、一実施形態(以下「第1実施形態」という)において、少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物(以下、単に「マレイミド化合物」ともいう)である。」
「【0046】
マレイミド化合物は、より具体的には、一実施形態において、例えば、下記式(VIII)で表される化合物であってよく、下記式(IX)で表される化合物であってよい。
【化10】
[図:0001417620000003.jpg]
【化11】(省略)
式中、Z1、Z2及びZ3は、それぞれ独立に上述した2価の炭化水素基を表し、(以下省略)」
「【0133】
樹脂組成物の硬化物の破断伸びは、配線層間絶縁層の反りを低減できる観点から、例えば5%以上である。銅配線への応力を緩和できる観点から、上記破断伸びは、10%以上であることが好ましい。配線層積層体の温度サイクル信頼性を向上できる観点から、上記破断伸びは、15%以上であることがより好ましい。上記破断伸びは、200%以下であってもよい。樹脂組成物の硬化物の破断伸びは、5~200%、10~200%、又は15~200%であってもよい。上記破断伸びは、180℃で2時間の加熱により樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物を、長さ30mm、幅5mmに切断することによって作製したサンプルを用いて測定することができる。破断伸びは、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、商品名:EZ-S)を用いて、送り速度:5mm/minに設定して測定される。」
そうすると、上記アで樹脂組成物及びその硬化物を限定した事項は、本件明細書の上記記載に基づくものであるから、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否か
上記アのとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1の「樹脂組成物」を限定するものであって、カテゴリ-や対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項2の「樹脂組成物」について、
「前記硬化性樹脂が、少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物であり、
前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が、前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化性フィルムを、シリコンウェハ上に100℃でラミネートし、その状態で前記硬化性フィルムを180℃で2時間の加熱により硬化した硬化物における塩化物イオンの濃度である、請求項1に記載の樹脂組成物。」
という事項のうちの下線部の事項を付加して樹脂組成物を限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
本件明細書には、上記(1)イの段落0025に加え、以下の記載がある。(この項の下線は当審で付した。)
「【0127】
樹脂組成物の硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率は、以下の手順で測定することができる。樹脂組成物の膜厚10μmの硬化性フィルムを、シリコンウェハ上に100℃でラミネートし、その状態で硬化性フィルムを180℃で2時間の加熱により硬化する。シリコンウエハ及び樹脂組成物の硬化膜の積層体であるサンプルを、130℃、相対湿度85%の恒温恒湿槽(エスペック社製EHS-221MD)内で200時間静置する。その後、恒温恒湿層内の温度を50℃まで低下させてからサンプルを取り出し、シリコンウェハから硬化膜を削り取る。得られた硬化物サンプルの加熱による重量減少率を、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、昇温速度10℃/分、窒素フロー(400mL/分)、温度25~150℃の条件で測定する。150℃まで加熱した時点の質量減少率(測定前の硬化物サンプル質量に対する比率)を、吸湿率(質量%)として記録する。
【0128】
樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度は、絶縁信頼性の観点から5ppm以下であることが好ましく、銅配線の変色を抑制できる点で3ppm以下であることがより好ましい。塩化物イオンの濃度は以下の手順で測定できる。硬化物サンプル1g、及び抽出液としての超純水10gをテフロン(登録商標)製耐熱容器に入れ、130℃で5時間加熱する。その後、抽出液をろ過してから、イオンクロマトグラフィーで分析する。得られたクロマトグラムにおいて、溶出時間0~30分に検出されたピークを溶出物の総量とみなし、9.6分付近の塩化物イオンのピーク面積から、硬化物サンプル中の塩化物イオンの質量を求める。求められた塩化物イオンの質量の、硬化物サンプルの質量に対する割合を、硬化物における塩化物イオンの濃度(ppm)として算出する。(以下省略)」
上記本件明細書の記載からみて、段落0128で塩化物イオンの質量を求める硬化物サンプルは、段落0127に記載された「樹脂組成物の膜厚10μmの硬化性フィルムを、シリコンウェハ上に100℃でラミネートし、その状態で硬化性フィルムを180℃で2時間の加熱により硬化」したサンプルを意味していることは明らかである。
したがって、訂正事項2は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否か
上記アのとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項2の樹脂組成物を限定するものであって、カテゴリ-や対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(3)訂正事項3、4、9、12について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3、4、9、12は、それぞれ請求項5、6、12、15を削除するものであるから、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
上記アのとおり、訂正事項3、4、9、12は、それぞれ請求項5、6、12、15を削除するものであるから、いずれも本件明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否か
上記アのとおり、訂正事項3、4、9、12は、それぞれ請求項5、6、12、15を削除するものであるから、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(4)訂正事項5~8について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5~8は、いずれも訂正前に請求項7~10でそれぞれ引用していた請求項のうち、訂正事項3、4により請求項5、6が削除されたことに伴い、それぞれ訂正前に引用していた請求項から請求項5、6の引用を削除して限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
上記アのとおり、訂正事項5~8は、訂正事項3、4により請求項5、6が削除されたことに伴う訂正であるから、いずれも本件明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否か
上記アのとおり、訂正事項5~8は、訂正事項3、4により請求項5、6が削除されたことに伴う訂正であるから、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(5)訂正事項10について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項10は、訂正前の請求項13の「前記樹脂組成物の硬化物」を「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物」に限定する(以下「訂正事項10-1」という。)とともに、訂正前の請求項13で引用していた請求項から、訂正事項9により削除された請求項12の引用を削除して限定する(以下「訂正事項10-2」という。)ものである。
また、訂正事項10-1は、下記第5の3の取消理由3(明確性)を解消するためのものでもある
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項10-1について、本件明細書には以下の記載がある。(この項の下線は当審で付した。)
「【0132】
樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、180℃で2時間の加熱により樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物を、長さ30mm、幅4mmに切断して作製したサンプルを用いて測定される。測定はユービーエム社製動的粘弾性測定装置を用い、チャック間距離20mm、周波数10Hz、昇温速度5℃/分で40~260℃の温度範囲で実施し、tanδが最大値を示す温度をガラス転移温度として記録する。」
そうすると、訂正事項10-1で限定する「前記樹脂組成物の硬化物」についての事項は、本件明細書の上記記載に基づくものであるから、訂正事項10-1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項10-2は、訂正事項9により請求項12が削除されたことに伴う訂正であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否か
訂正事項10-1は、訂正前の請求項13の「前記樹脂組成物の硬化物」を限定するものであって、カテゴリ-や対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項10-2は、訂正事項9により請求項12が削除されたことに伴う訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(6)訂正事項11について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項11は、訂正前の請求項14の「前記樹脂組成物の硬化物」を「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物」に限定する(以下「訂正事項11-1」という。)とともに、訂正前の請求項14で引用していた請求項から、訂正事項9により削除された請求項12の引用を削除して限定する(以下「訂正事項11-2」という。)ものである。
また、訂正事項11-1は、下記第5の3の取消理由3(明確性)を解消するためのものでもある。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項11-1について、本件明細書には以下の記載がある。(この項の下線は当審で付した。)
「【0129】
配線層間のクロストークを抑制できる点で、配線層間絶縁層(樹脂組成物の硬化物)の10GHzでの誘電率は、3.6以下、3.2以下、又は3.0以下であることが好ましく、更に電気信号の信頼性を向上できる点で2.8以下であることがより好ましい。当該誘電率は、1.0以上であってよい。当該誘電率は、180℃で2時間の加熱により樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物を、長さ60mm、幅2mmに切断して30℃で6時間真空乾燥した試験片を用いて測定することができる。」
そうすると、訂正事項11-1で限定する「前記樹脂組成物の硬化物」についての事項は、本件明細書の上記記載に基づくものであるから、訂正事項11-1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項11-2は、訂正事項9により請求項12が削除されたことに伴う訂正であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否か
訂正事項11-1は、訂正前の請求項14の「前記樹脂組成物の硬化物」を限定するものであって、カテゴリ-や対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項11-2は、訂正事項9により請求項12が削除されたことに伴う訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(7)訂正事項13について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項13は、訂正前の請求項16の「前記樹脂組成物の硬化物」を「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物」に限定する(以下「訂正事項13-1」という。)とともに、訂正前の請求項16で引用していた請求項から、訂正事項9、12により削除された請求項12、15の引用を削除して限定する(以下「訂正事項13-2」という。)ものである。
また、訂正事項13-1は、下記第5の3の取消理由3(明確性)を解消するためのものでもある。
したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項13-1について、本件明細書には以下の記載がある。(この項の下線は当審で付した。)
「【0134】
樹脂組成物の硬化物の5%重量減少温度は、耐熱信頼性の観点から、例えば300℃以上である。第1の配線層間絶縁層17の5%重量減少温度は、180℃で2時間の加熱により樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物をサンプルとして、示差熱熱重量同時測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、商品名:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度:10℃/min、窒素フロー:400ml/minの条件下で測定することができる。」
そうすると、訂正事項13-1で限定する「前記樹脂組成物の硬化物」についての事項は、本件明細書の上記記載に基づくものであるから、訂正事項13-1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項13-2は、訂正事項9、12により請求項12、15が削除されたことに伴う訂正であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否か
訂正事項13-1は、訂正前の請求項16の「前記樹脂組成物の硬化物」を限定するものであって、カテゴリ-や対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項13-2は、訂正事項9、12により請求項12、15が削除されたことに伴う訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(8)独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1~16に対して特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~13による訂正後の請求項1~16についての、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 本件訂正についての小括
以上のとおり、本件訂正は適法にされたものであるから、特許第7259907号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正すること認める。
第3 本件発明
上記第2で検討したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明16」といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、
銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂が、少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物であり、
前記マレイミド化合物が、下記式(VIII)で表される化合物であり、
【化1】
[図:0001417620000004.jpg]
[式中、Z1は、2価の炭化水素基を表す。]
180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の破断伸びが5~200%であり、
前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化性樹脂が、少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物であり、
前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が、前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化性フィルムを、シリコンウェハ上に100℃でラミネートし、その状態で前記硬化性フィルムを180℃で2時間の加熱により硬化した硬化物における塩化物イオンの濃度である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭化水素基が、炭素数4以上の主鎖を有する鎖状のアルキレン基を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記炭化水素基の炭素数が8以上である、請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記炭化水素基が、下記式(II)で表される基である、請求項2~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化2】
[図:0001417620000005.jpg]
[式中、R2及びR3は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、R4及びR5は、それぞれ独立にアルキル基を表す。]
【請求項8】
前記硬化剤が光ラジカル重合開始剤を含む、請求項2~4、7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物を更に含有する、請求項2~4、7、8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
カップリング剤を更に含有する、請求項2~4、7~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
熱可塑性樹脂を更に含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】(削除)
【請求項13】
180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物のガラス転移温度が120~240℃である、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の10GHzでの誘電率が3.0以下である、請求項11又は13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】(削除)
【請求項16】
180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の5%重量減少温度が300℃以上である、請求項11、13、14のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」
第4 特許異議申立書に記載された特許異議申立理由について
1 申立人1による特許異議申立理由
申立人1は、以下の甲第1号証、甲第2号証(以下、それぞれ「1甲1」、「1甲2」という。)を提出するとともに、特許異議申立書(以下「特許異議申立書1」という。)において、以下の申立理由を主張している。
(1)新規性について
本件請求項1に係る発明は、1甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(以下「1申立理由1」という。)
(2)進歩性について
本件請求項1に係る発明は、1甲1に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(以下「1申立理由2」という。)
(3)拡大先願について
本件請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた1甲2に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をしたものと同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。(以下「1申立理由3」という。)
(4)サポート要件について
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下「1申立理由4」という。)
(5)証拠方法
1甲1:特開2006-169351号公報
1甲2:特願2017-58753号(特開2017-179364号公報)
2 申立人2による特許異議申立理由
申立人2は、以下の甲第1号証~甲第6号証(以下、それぞれ「2甲1」~「2甲6」という。)を提出するとともに、特許異議申立書(以下「特許異議申立書2」という。)において、以下の申立理由を主張している。
(1)進歩性について
ア 本件請求項1~16に係る発明は、2甲1に記載された発明と、2甲3~2甲6に記載された技術事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(以下「2申立理由1(1)」という。)
イ 本件請求項1~7、10~16に係る発明は、2甲2に記載された発明と、2甲1及び2甲3~2甲6に記載された技術事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~7、10~16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(以下「2申立理由1(2)」という。)
(2)実施可能要件について
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下「2申立理由2」という。)
(3)サポート要件について
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下「2申立理由3」という。)
(4)明確性について
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下「2申立理由4」という。)
(5)証拠方法
2甲1:特開2013-83958号公報
2甲2:特開2014-224855号公報
2甲3:特開昭61-263195号公報
2甲4:国際公開第2015/199219号
2甲5:特開2006-169351号公報(1甲1と同じ)
2甲6:国際公開第2016/114286号
第5 取消理由通知に記載した取消理由について
訂正前の請求項1~16に係る特許に対して、当審が令和6年1月19日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1 進歩性について
(1)本件請求項1に係る発明は、1甲1に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(以下「取消理由1(1)」という。)
(2)本件請求項1に係る発明は、2甲1に記載された発明、2甲3~2甲5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項2~16に係る発明は、2甲1に記載された発明及び事項、2甲3~2甲5に記載された周知技術並びに2甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(以下「取消理由1(2)」という。)
(3)本件請求項1に係る発明は、2甲2に記載された発明及び2甲3~2甲5に記載された周知技術に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(以下「取消理由1(3)」という。)
2 拡大先願について
本件請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた1甲2に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をしたものと同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。(以下「取消理由2」という。)
3 明確性について
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下「取消理由3」という。)
第6 取消理由及び特許異議申立理由についての当審の判断
1 甲号証の記載と甲号証に記載された発明等
(1)1甲1の記載と1甲1に記載された発明
ア 1甲1の記載
1甲1には以下の記載がある。(下線は当審において付した。以下も同様。)
「【0002】
近年、電子機器の小型化、薄型化、高速化への対応から、FPC、TAB及びCOFといったフレキシブル配線板の配線ピッチはより一層ファイン化し、それにともなって配線厚みも薄膜化してきている。配線間の絶縁信頼性を維持するために配線上には、通常、絶縁性の熱硬化性樹脂ペーストが塗布、硬化されている。しかし、40μmピッチ以下のファインピッチ配線となった場合、従来の熱硬化性樹脂ペーストを用いても高温高湿条件下で配線に電圧を印加すると配線間の絶縁性が低下し、また硬化膜中のイオン性不純物として特に塩素イオンが配線金属のマイグレーションを促進するため、長時間にわたって絶縁信頼性を維持できない問題がある。(以下省略)」
「【0006】
本発明は、配線パターン部の全てがメッキ処理されたフレキシブル配線板の表面保護膜として、硬化温度が120℃以下であり、硬化膜としたものの塩素イオン濃度が20ppm以下である(A)熱硬化性樹脂100重量部、(B)無機微粒子100~1000重量部及び(C)無機イオン交換体0.1~20重量部を含有する熱硬化性樹脂ペーストに関する。
また本発明は、引張り弾性率が25℃で1.0GPa以下で、引張り伸び率が25℃で20%以上であることを特徴とする前記の熱硬化性樹脂ペーストに関する。
また本発明は、硬化膜としたものの5%熱重量減少温度が250℃以上であることを特徴とする前記の熱硬化性ペーストに関する。
さらに本発明は、前記の熱硬化性樹脂ペーストを保護膜として用いた配線パターン部の全てがメッキ処理されたフレキシブル配線板に関する。
【0007】
本発明の熱硬化性樹脂ペーストは、高温高湿条件下でのファインピッチ配線の絶縁信頼性を維持し、保護膜端部へのメッキ成分の浸透が無くかつ配線へメッキ層が拡散して無くなることなく、フレキシブル配線板用保護膜として必要な低反り性、柔軟性、封止材との密着性、耐溶剤性及び耐薬品性、耐熱性、電気特性、耐湿性、作業性及び経済性に優れるものである。
また、本発明の熱硬化性樹脂ペーストを用いたフレキシブル配線板は、上記の優れた特性を兼ね備えたフレキシブル配線板である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の熱硬化性樹脂ペーストは、前記のような硬化温度が120℃以下であり、硬化膜としたものの塩素イオン濃度が20ppm以下である(A)熱硬化性樹脂100重量部及び(B)無機微粒子100~1000重量部及び(C)無機イオン交換体0.1~20重量部を必須成分として含有する。
本発明における(A)成分として用いられる熱硬化性樹脂は、上記のように硬化温度が120℃以下のものであれば、特に制限はない。硬化温度が120℃を超えると、配線へメッキ層が拡散してメッキ層が無くなる傾向がある。また硬化膜としたものの塩素イオン濃度が20ppmを超えると高温高湿条件下で電圧印加されたファインピッチ配線間の絶縁性が低下する傾向がある。さらに硬化膜としたものの引張り弾性率が25℃で0.5GPaを超えると反り性、柔軟性が低下する傾向があり、硬化膜としたものの引張り伸び率が25℃で50%未満であると柔軟性が低下し、耐折性が低下する傾向がある。」
「【0039】
本発明の熱硬化性樹脂ペーストには、硬化性を向上させるために、各種エポキシ樹脂を添加することも出来る。(以下省略)」
「【0045】
実施例1
攪拌機、油水分離器付き冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた5リットルの四つ口フラスコに、(b)成分としてPLACCEL CD-220(ダイセル化学(株)製1,6-ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオールの商品名)1000.0g(0.50モル)及び4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネート250.27g(1.00モル)と、γ-ブチロラクトン833.51gを仕込み、140℃まで昇温した。140℃で5時間反応させ、ジイソシアネート[一般式(I)において、Rがすべてヘキサメチレン基を示し、Xがジフェニルメタン基を示し、m=13、n=1であるジイソシアネート]を得た。
更に、この反応液に(a’)成分として3,3‘,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物358.29g(1.00モル)、(c)成分として4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネート125.14g(0.50モル)及びγ-ブチロラクトン584.97gを仕込み、160℃まで昇温した後、7時間反応させて、数平均分子量が30,000の樹脂を得た。得られた樹脂をγ-ブチロラクトンで希釈し、粘度65Pa・s、不揮発分40重量%のポリイミド樹脂溶液を得た。なお、(b)成分/(c)成分のモル比は、0.5/0.5である。
得られたポリイミド樹脂溶液1000gにB-30(堺化学工業(株)製商品名、平均粒子径0.3μm、表面処理硫酸バリウム微粒子)600gとIXE-600(東亞合成(株)製商品名、アンチモンビスマス系イオン交換体8gとγ-ブチロラクトン900gを加え、まず粗混練し、次いで高速3本ロールを用いて3回混練を繰り返して本混練を行い、均一に微粒子が分散したポリイミド樹脂ペーストを得た。このペーストは粘度50Pa・s、TI値2.8であった。
【0046】
実施例2
実施例1で得られたポリイミド樹脂ペーストの樹脂分100重量部に対してYH-434(東都化成(株)製アミン型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量約120、エポキシ基4個/分子)10重量部を加え、γ-ブチロラクトンで希釈して、粘度38Pa・s、TI値2.9、不揮発分40重量%のポリイミド樹脂ペーストを得た。」
「【0056】
(5)塩素イオン濃度
ポリテトラフルオロエチレン板上に得られたポリイミド樹脂ペースト約10gを塗布し、空気雰囲気下、120℃で120分加熱する。得られた硬化物を粉砕し、粉砕試料3gとイオン交換水3gを容器に入れて密栓し、121℃、2.0265×105Pa、20時間煮沸抽出後、抽出液中の塩素イオン濃度をイオンクロマト法によって測定した。
【0057】
(6)耐マイグレーション性
厚さ38μmのポリイミドフィルムと厚さ12μmのCu櫛歯電極の配線ピッチが40μmピッチの2層フレキシブル基材をSnメッキする。この基材上に、得られたポリイミド樹脂ペーストを印刷し、空気雰囲気下、120℃で120分加熱する。得られた試験片(塗膜厚さ:15μm)の配線に85℃/85%RH環境下で60Vの電圧を印加し、1000時間後の絶縁抵抗値について下記の基準で評価した。
○:絶縁抵抗108以上
×:絶縁抵抗108未満
【0058】
(7)引張り弾性率及び伸び率
得られたポリイミド樹脂ペーストを90℃で15分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃
で120分又は160℃で60分加熱し、膜厚約30μm、幅10mm、長さ60mmの硬化膜を形成する。得られた硬化膜を用いてチャック間長さ20mm、引張り速度5mm/分の条件で引張り試験を行い、引張り弾性率及び引張り伸び率を求めた。
【0059】
(8)5%重量減少温度
得られたポリイミド樹脂ペーストを90℃で15分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で120分又は160℃で60分加熱し、膜厚約30μmの硬化膜を形成する。得られた硬化膜を用いて、空気雰囲気中、10℃/分の昇温速度にてTG-DTA法により、5%重量減少温度を測定した。
【0060】
【表1】
[図:0001417620000006.jpg]
【0061】
【表2】
[図:0001417620000007.jpg]
」
イ 1甲1に記載された発明
上記アの【0006】によれば、1甲1には、「配線パターン部の全てがメッキ処理されたフレキシブル配線板の表面保護膜として、硬化温度が120℃以下であり、硬化膜としたものの塩素イオン濃度が20ppm以下である(A)熱硬化性樹脂100重量部、(B)無機微粒子100~1000重量部及び(C)無機イオン交換体0.1~20重量部を含有する熱硬化性樹脂ペースト」について記載されているところ、その実施例2(同【0046】)に関し、次の発明(以下「1甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「配線パターン部の全てがメッキ処理されたフレキシブル配線板の表面保護膜として形成するためのポリイミド樹脂ペーストであって、(【0006】、【0046】)
熱硬化性樹脂としてのポリイミド樹脂と、
無機微粒子としての表面処理硫酸バリウム微粒子と、
無機イオン交換体としてのアンチモンビスマス系イオン交換体と、を含み、(【0045】)
さらに、硬化性を向上させるためのアミン型エポキシ樹脂を含み、(【0039】、【0046】)
ポリイミド樹脂ペーストの硬化物の塩素イオン濃度が2ppmであり、(【0056】、【表1】)、
ポリイミド樹脂ペーストの硬化膜の引張り伸び率が135%である(【0058】、【表2】)
ポリイミド樹脂ペースト。」
(2)1甲2の記載と1甲2に記載された発明
ア 1甲2に係る出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載
1甲2には以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、ポリアミドの製造方法、それを用いた感光性樹脂組成物、硬化膜、層間絶縁膜、半導体保護膜、半導体電子部品および半導体装置の製造方法に関する。」
「【0016】
本発明は、(A)活性カルボン酸化合物と、(B)ジアミン化合物とを反応させるポリアミド樹脂の製造方法であって、前記(A)活性カルボン酸化合物が一般式(1)~(4)のいずれかで表される構造の少なくともいずれかを有し、前記ポリアミド樹脂が脂肪族基を有することを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法である。一般式(1)~(4)のいずれかで表される構造の少なくともいずれかを有する(A)活性カルボン酸化合物を用いることにより、特許文献3に開示されているようなジクロリド酸誘導体を用いなくとも、ポリアミド樹脂を重合することが可能となる。このため、ジクロリド酸誘導体を用いてポリアミド樹脂を重合する場合に必要となる、イオン交換体を用いた塩素イオンの除去工程を必要としない。これにより、従来の技術に対して製造工程が少なくなり、より簡易に塩素イオンの少ないポリアミド樹脂を製造することができる。残留塩素イオンを低減することにより、残留残渣に由来するデバイスの機能の低下を抑制することができる。さらに、脂肪族基を有することにより、ポリアミド酸の閉環反応時に、溶解性の低下に起因する沈殿物の生成を抑制することができる。また、硬化膜としたときにストレスを抑制し、伸度を向上させることができる。」
「【0069】
本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂と(C)感光剤を混合することにより、感光性樹脂組成物(ワニス)を得ることができる。
【0070】
感光剤としては、光酸発生剤、光重合性化合物が挙げられる。光酸発生剤を含有することにより、ポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。光重合性化合物を混合することにより、ネガ型の感光性樹脂組成物を得ることができる。」
「【0114】
本発明の製造方法により得られる硬化膜は、半導体素子の表面保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などの用途に好適に用いられる。・・・(中略)・・・特に、近年の半導体素子の電極や多層配線、回路基板の配線は、構造のさらなる微細化に伴い、銅電極、銅配線、バンプを有する半導体装置が主流となっており、銅やバリアメタルのエッチング、レジストのパターン形成時、フラックスなど多くの薬液に触れる状態となっている。本発明の製造方法により得られる硬化膜はこれらの薬液に対して高い耐性を有するため、そのような電極、配線の保護膜として特に好ましく用いられる。」
「【実施例】
【0121】
以下、実施例を挙げて本発明の製造方法により得られるポリイミド樹脂を用いた樹脂組成物を説明するが、これらの例によって限定されるものではない。まず、各実施例および比較例における評価方法について説明する。評価には、あらかじめ1μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルター(住友電気工業(株)製)で濾過した感光性樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)を用いた。
【0122】
(1)ポリマー中の残留塩素イオンの評価
ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂の塩素イオン量を次に示す方法により測定し、評価を行った。まず、実施例1~11および比較例1~4により得られた樹脂1gをポリエチレン瓶にとり、超純水100cm3を加えて室温で36時間静置し、イオン成分を抽出した。これをディスクフィルター(ミリポア製0.45μm PVDF)でろ過した。抽出液について、下記条件のイオンクロマトグラフ分析法によって塩素イオンの分析を行い、試料からの抽出量を求めた。試料を用いずに同様の操作を行いブランク溶液とした。このとき塩素イオンの濃度が5ppm以下を合格として○、それより多い場合を不合格として×とした。(以下省略)
【0123】(省略)
【0124】
(3)伸度の評価
各実施例および比較例により得られたワニスから、上記(2)低ストレス性の評価と同様の方法により熱硬化膜を得た。得られた硬化膜を45質量%のフッ化水素酸に5分間浸漬し、ウエハから熱硬化膜を剥離した。この膜を幅1cm、長さ9cmの短冊状に切断し、“テンシロン”(登録商標)RTM-100((株)オリエンテック製)を用いて、室温23.0℃、湿度45.0%RH下、引張速度50mm/分の条件で引っ張り、破断点伸度の測定を行った。測定は1検体につき10枚の短冊について行い、上位5点の数平均値を求めた。破断点伸度の数平均値が90%以上の場合をきわめて良好(S)、70%以上90%未満の場合を良好(A)、30%以上70%未満の場合を可(B)、30%未満の場合を不良(C)と評価した。」
「【0131】
実施例1
(1)ポリアミド樹脂(A)の合成
乾燥窒素気流下、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以降、BAHFと呼ぶ)(Mw:360)(18.31g、0.050モル)をNMP100gに溶解させた。ここに、合成例1により得られたジイミダゾリド化合物(a)(7.43g、0.023モル)、合成例2により得られたジイミダゾリド化合物(b)(6.76g、0.023モル)をNMP25gとともに加えて、85℃で3時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、酢酸(13.20g、0.25モル)をNMP25gとともに加えて、室温で1時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水1.5Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、50℃の通風乾燥機で3日間乾燥し、ポリアミド樹脂(A)の粉末を得た。
【0132】
(2)ワニスの作製
得られたポリアミド樹脂(A)10gに、下記式で表される光酸発生剤を2.0g、架橋剤としてHMOM-TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)0.5g、MW-100LM(商品名、(株)三和ケミカル製))0.5g、溶剤としてγ-ブチロラクトン20gを遊星式撹拌脱泡装置で撹拌溶解させてワニスを作製した。
【0133】
【化16】
[図:0001417620000008.jpg]
【0134】
実施例2
・・・(中略)・・・実施例1の(1)ポリアミド樹脂(A)の合成と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂(B)の粉末を得た。ポリアミド樹脂(A)にかえてポリアミド樹脂(B)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてワニスを作製した。
【0135】
実施例3
・・・(中略)・・・実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂(C)の粉末を得た。ポリアミド樹脂(A)にかえてポリアミド樹脂(C)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてワニスを作製した。
【0136】
実施例4
・・・(中略)・・・実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂(D)の粉末を得た。ポリアミド樹脂(A)にかえてポリアミド樹脂(D)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてワニスを作製した。
【0137】
実施例5
・・・(中略)・・・実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂(E)の粉末を得た。ポリアミド樹脂(A)にかえてポリアミド樹脂(E)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてワニスを作製した。
【0138】
実施例6
反応温度を85℃から120℃に変更したこと以外は実施例5と同様にしてポリアミド樹脂(F)の粉末を得た。ポリアミド樹脂(A)にかえてポリアミド樹脂(F)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてワニスを作製した。
【0139】
実施例7
・・・(中略)・・・実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂(G)の粉末を得た。ポリアミド樹脂(A)にかえてポリアミド樹脂(G)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてワニスを作製した。
【0140】
実施例8
・・・(中略)・・・実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂(H)の粉末を得た。ポリアミド樹脂(A)にかえてポリアミド樹脂(H)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてワニスを作製した。
【0141】
実施例9
・・・(中略)・・・実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂(I)の粉末を得た。ポリアミド樹脂(A)にかえてポリアミド樹脂(I)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてワニスを作製した。
【0142】
実施例10
・・・(中略)・・・実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂(J)の粉末を得た。ポリアミド樹脂(A)にかえてポリアミド樹脂(J)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてワニスを作製した。
【0143】
実施例11
反応温度を85℃から70℃に変更したこと以外は実施例10と同様にしてポリアミド樹脂(K)の粉末を得た。ポリアミド樹脂(A)にかえてポリアミド樹脂(K)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてワニスを作製した。」
「【0150】
【表2】
[図:0001417620000009.jpg]
」
イ 1甲2に記載された発明
上記アの【0069】によれば、1甲2には、「ポリアミド樹脂と(C)感光剤を混合することにより」得られる「感光性樹脂組成物(ワニス)」について記載されており、同【0114】によれば、その硬化膜は、半導体素子の銅配線を有する高密度実装用多層配線の層間絶縁膜の用途に好適に用いられるものであるところ、その実施例1~11(同【0131】~【0143】)は、ポリアミド樹脂と、感光剤として光酸発生剤と、架橋剤としてHMOM-TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)0.5g、MW-100LM(商品名、(株)三和ケミカル製))とを含む感光性樹脂組成物(同【0070】、【0132】)についてのものであり、1甲2には前記実施例1~11に関する次の発明(以下「1甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「ポリアミド樹脂と、感光剤として光酸発生剤と、架橋剤としてHMOM-TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製、MW-100LM(商品名、(株)三和ケミカル製))とを含む感光性樹脂組成物であって、(【0070】、【0132】)
ポリアミド樹脂の残留塩素イオン含有量が2ppmであり、(【0122】、【表2】)
感光性樹脂組成物の熱硬化物の伸度は72~110%であり、(【0124】、【表2】)
硬化膜は、多層配線は銅配線が主流である、半導体素子の高密度実装用多層配線の層間絶縁膜の用途に好適に用いられる(【0114】)
感光性樹脂組成物。」
(3)2甲1の記載と2甲1に記載された発明
ア 2甲1の記載
2甲1には以下の記載がある。
「【請求項1】
(I)環状イミド結合とダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)とを有するビスマレイミド化合物、(II)光重合開始剤、及び(III)ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4個以上有するケイ素化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(I)ビスマレイミド化合物が、ダイマー酸から誘導されたジアミン(A)と、テトラカルボン酸二無水物と、マレイン酸無水物とを反応させて得られたビスマレイミド化合物、又は、ダイマー酸から誘導されたジアミン(A)と、ダイマー酸から誘導されたジアミン(A)以外の有機ジアミン(B)と、テトラカルボン酸二無水物と、マレイン酸無水物とを反応させて得られたビスマレイミド化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(I)ビスマレイミド化合物が、下記一般式(1):
【化1】
[図:0001417620000010.jpg]
[式(1)中、R1は、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)を示し、R2は、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)以外の2価の有機基(b)を示し、R3は、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)、及びダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)以外の2価の有機基(b)からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R4及びR5は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ4価の有機基を示し、mは1~30の整数であり、nは0~30の整数であり、mが2以上の場合には複数あるR1及びR4はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合には複数あるR2及びR5はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
で表わされるビスマレイミド化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。」
「【請求項8】
硬化後の引張弾性率が2GPa以下となることを特徴とする請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
硬化温度が60~230℃であることを特徴とする請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を光硬化又は光熱硬化させて得られるものであることを特徴とする硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物を表面保護膜、層間絶縁膜、及び再配線層の絶縁膜からなる群から選択される少なくとも1種として備えることを特徴とする半導体素子。」
「【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、比較的低露光量での微細なパターン形成が可能であり、従来のような高温での熱硬化を必要とせず、引張弾性率が十分に小さく、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性に優れた硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物、それを用いた硬化物及び半導体素子を提供することを目的とする。
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、感光性樹脂組成物において、特定のビスマレイミド化合物、光重合開始剤、及び特定のケイ素化合物とを組み合わせて用いることにより、比較的低露光量での微細なパターン形成が可能となり、また、熱硬化を必要とせず、必要に応じて熱硬化せしめる場合であっても従来のような高温での熱硬化を必要としないことを見出した。さらに、このような感光性樹脂組成物を用いることにより得られる硬化物は、引張弾性率が十分に小さく、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性に優れており、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、及び再配線層の絶縁膜等として特に好適に用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、(I)環状イミド結合とダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)とを有するビスマレイミド化合物、(II)光重合開始剤、及び(III)ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4個以上有するケイ素化合物を含有することを特徴とするものである。」
「【0049】
これらの中でも、本発明に係る(II)光重合開始剤としては、・・・(中略)・・・従って、より効率的にラジカルを発生させることができ、露光波長310~436nm(より好ましくは365nm)における反応性が高くなるという観点から、本発明に係る(II)光重合開始剤としては、オキシム構造及びチオキサントン構造からなる群から選択される少なくともいずれか1種の構造を有する化合物であることがさらに好ましい。
【0050】
このような(II)光重合開始剤としては、例えば、オキシム構造を有する1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](BASFジャパン製、「IRGACURE OXE-01」)、・・・(中略)・・・が挙げられる。このような光によるラジカル生成能力が高い光重合開始剤は、通常のアクリル化合物等の光重合に用いる場合には反応性が高すぎて反応の制御が難しくなる傾向にあるが、本発明においては好適に用いることができる。」
「【0053】
また、本発明に係る(III)ケイ素化合物としては、得られる硬化物における無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性がさらに向上するという観点から、メチル基、エチル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、3,4-エポキシシクロヘキシル基等の有機基をさらに有することが好ましい。また、このような有機基を有する場合、その1分子あたりの平均含有量は2~30個であることが好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合にはさらなる密着性の向上が期待できない傾向にあり、他方、前記上限を超えるものは合成が困難となる傾向にある。」
「【0068】
本発明に係る(III)ケイ素化合物としては、市販のものを適宜用いてもよく、例えば、信越化学化学工業株式会社製の「KR-513」(ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数の平均値:1分子あたり4個以上、有機基:アクリル基)、「X-40-2655A」(ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数の平均値:1分子あたり4個以上、有機基:メタクリル基)、「X-40-1059A」(ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数の平均値:1分子あたり4個以上、有機基:エポキシ基)、「X-12-984S」(ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数:1分子あたり4個以上、有機基:エポキシ基)を用いてもよい。また、本発明に係る(III)ケイ素化合物としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は前記(I)ビスマレイミド化合物、前記(II)光重合開始剤、及び前記(III)ケイ素化合物を含有する。本発明の感光性樹脂組成物においては、前記(II)光重合開始剤の含有量が、前記(I)ビスマレイミド化合物100質量部に対して0.1~15質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、露光時において、光照射による2量化反応が十分に進行せず、現像時に重合膜が無機表面保護膜から剥離する傾向にある。他方、前記上限を超える場合には、反応が進行しすぎて未露光部の重合反応が進行してしまうため、微細なパターンを形成することが困難となる傾向にある。」
「【0073】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物としては、さらに、多官能重合性化合物を含有していてもよい。前記多官能重合性化合物とは、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基等の重合性官能基を複数有する化合物を指す。前記多官能重合性化合物を含有せしめることにより、感光性樹脂組成物の光に対する感度をより高めることができる。前記多官能重合性化合物としては、光重合による架橋反応をより起こしやすいという観点から、多官能アクリレートが好ましい。(以下省略)」
「【0080】
次いで、前記現像により得られた所定のパターンを有する重合膜を加熱して硬化せしめることにより、所定のパターンを有する硬化膜(硬化物)を得ることができる。前記加熱温度(硬化温度)としては、60~230℃であることが好ましく、150~230℃であることがより好ましい。また、前記加熱時間としては、30~120分間であることが好ましい。なお、前記硬化温度とは、本発明において、前記露光時に未反応で残っているマレイミド基を熱反応によって熱硬化せしめるのに必要な温度のことを指す。このような熱硬化反応により前述の光重合において未反応であったマレイミド基を架橋せしめるが、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合には、従来のポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体のように硬化温度を高くする必要がない。これは、本発明に係る(I)ビスマレイミド化合物においては脱水閉環反応が不要である。」
「【0082】
また、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた硬化膜においては、引張弾性率が2GPa以下となり、より好ましくは1GPa以下、さらに好ましくは0.05~0.8GPaとなる。このように本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた硬化物は前記硬化温度が十分に低く、且つ、引張弾性率が十分に低いため、シリコンウェハー等の基板のそりが発生せず、その後の工程におけるハンドリング性に優れたものとなる。なお、本発明において、前記引張弾性率は、オリエンテック社製「テンシロンRTA-250」を用い、温度23℃、引張速度5mm/minの条件で測定することにより求めることができる。
【0083】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた硬化膜においては、割れを抑制することができるという観点から、破断伸度が20~200%であることが好ましい。なお、本発明において、前記破断伸度は、オリエンテック社製「テンシロンRTA-250」を用い、温度23℃、引張速度5mm/minの条件で測定することにより求めることができる。」
「【0095】
(実施例1)
先ず、(I)成分としてビスマレイミド化合物1(DESIGNER MOLECURES Inc.製、「BMI-3000」、固形分100%)100質量部、(II)成分として光重合開始剤1(BASFジャパン製、「IRGACURE OXE-01」)1質量部、及び(III)成分としてケイ素化合物1(信越化学工業株式会社製、「X-40-2655A」)0.25質量部を、固形分濃度が50質量%となるように溶剤(キシレン)に添加し、攪拌機により十分に攪拌して固形分を溶解せしめた。次いで、この溶解液を1μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、不溶物を除去して感光性樹脂組成物を得た。」
「【0099】
(実施例4)
(III)成分としてケイ素化合物3(信越化学工業株式会社製、「X-12-984S」)を0.5質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価を行った結果、必要露光量1500mJ/cm2において開口径20μm(アスペクト比0.5)のパターンが形成されたことが確認された。また、機械物性評価を行った結果、得られた硬化膜における引張弾性率は92MPaであり、破断伸度は101%であった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表1に示す。さらに、得られた感光性樹脂組成物を用いて密着性評価を行った結果を表3に示す。」
「【0102】
(実施例7)
(III)成分としてケイ素化合物2を1質量部用い、さらに、多官能重合性化合物(共栄社化学株式会社製、「ライトアクリレートDCP-A」)を5質量部加えたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価を行った結果、必要露光量1000mJ/cm2において開口径25μm(アスペクト比0.4)のパターンが形成されたことが確認された。また、機械物性評価を行った結果、得られた硬化膜における引張弾性率は92MPaであり、破断伸度は46%であった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表1に示す。」
「【0107】
【表1】
[図:0001417620000011.jpg]
」
「【産業上の利用可能性】
【0112】
以上説明したように、本発明によれば、比較的低露光量(2000mJ/cm2以下)での微細なパターン形成が可能であり、従来のような高温での熱硬化を必要とせず、引張弾性率が十分に小さく、無機表面保護膜(窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜等)や、導電性の金属製配線材料(銅等)との密着性に優れた硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物、それを用いた硬化物及び半導体素子を提供することが可能となる。」
イ 2甲1に記載された発明
上記アの【請求項1】によれば、2甲1には、「(I)環状イミド結合とダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)とを有するビスマレイミド化合物、(II)光重合開始剤、及び(III)ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4個以上有するケイ素化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物」について記載されており、同【0010】、【0112】の記載によれば、感光性樹脂組成物を用いることにより得られる硬化物は、導電性の金属製配線材料(銅等)との密着性に優れ、層間絶縁膜として特に好適に用いることができるものであるところ、その実施例4(同【0099】)に関し、次の発明(以下「2甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「ビスマレイミド化合物1(DESIGNER MOLECURES Inc.製、「BMI-3000」、固形分100%)と、
光重合開始剤1(BASFジャパン製、「IRGACURE OXE-01」)と、
ケイ素化合物3(信越化学工業株式会社製、「X-12-984S」)と、を含む、感光性樹脂組成物であって、(【0095】、【0099】、【表1】)
硬化膜における破断伸度が101%(【0099】、【表1】)であり、
感光性樹脂組成物を用いることにより得られる硬化物は、導電性の金属製配線材料(銅等)との密着性に優れ、層間絶縁膜として特に好適に用いることができる、(【0010】、【0112】)
感光性樹脂組成物。」
(4)2甲2の記載と2甲2に記載された発明
ア 2甲2の記載
2甲2には以下の記載がある。
「【請求項1】
(a)下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミドイミド樹脂と、
(b)光により酸を発生する化合物と、
(c)熱架橋剤と、
(d)溶剤と、を含有する感光性樹脂組成物。
【化1】
[図:0001417620000012.jpg]
(一般式(1)中、R1は、下記一般式(2)で表される二価の有機基のいずれかであり、n1は1~20、n2は1~50、n3は1~70、n4は1~5、n5は1~10、n6は1~5を示す。R2は二価の有機基である。)
【化2】
[図:0001417620000013.jpg]
」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、感光特性、現像時の樹脂膜の基板への密着性が良好であり、アルカリ水溶液で現像可能なポリアミドイミド樹脂含有組成物は、未だ得られていない。また、半導体装置は、さらなる信頼性が求められているため、例えば耐衝撃試験等のクラック耐性を高める観点から、高い破断伸びが求められている。またパターン硬化膜形成後の半導体装置の製造工程における種々の高温プロセスに対する耐性という観点から、良好な耐熱性が求められている。」
「【0083】
まず、図1に示す構造体100を準備する。構造体100は、回路素子を有するSi基板等の半導体基板1と、回路素子が露出する所定のパターンを有し半導体基板1を被覆するシリコン酸化膜等の保護膜2と、露出した回路素子上に形成された第1導体層3と、保護膜2及び第1導体層3上にスピンコート法等により成膜されたポリイミド樹脂等からなる層間絶縁層4とを備える。」
「【0088】
なお、上述の実施形態では2層の配線構造を有する半導体装置の製造方法を示したが、3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上述の工程を繰り返して行い、各層を形成することができる。すなわち、層間絶縁層4を形成する各工程、及び表面保護層8を形成する各工程を繰り返すことによって、多層のパターンを形成することが可能である。また、上記例において、表面保護層8のみでなく、層間絶縁層4も本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成することが可能である。」
「【0105】
(感光性樹脂組成物の調製)
(実施例1)
一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミドイミド樹脂として合成したA1を10g、(b)光により酸を発生する化合物として1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンの1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名「TPPA528」)1.5g、(c)熱架橋剤としてヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(株式会社三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW-30HM」)1.5gを(d)溶剤としてのN-メチルピロリドン14gに溶解し、感光性樹脂組成物を調製した。
【0106】
(実施例2)
上述のA1の代わりにA2を使用した以外は実施例1と同様な操作方法で感光性樹脂組成物を調製した。」
「【0113】
【表2】
[図:0001417620000014.jpg]
【0114】
実施例1~2のように、特定の構造単位を有するポリマーを含有する感光性樹脂組成物を加熱して得られた硬化膜は、破断伸びが良好であり、かつ耐熱性も良好であった。一方、比較例1のように、一般式(1)で表される脂肪族ジアミン類を含有しないポリマーの場合、解像性、硬化膜の破断伸び率は低下することが分かった。また、比較例2のポリイミドは、溶解性が高いために解像できず、被膜を得ることが出来なかった。」
イ 2甲2に記載された発明
上記アの【請求項1】によれば、2甲2には、
「(a)下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミドイミド樹脂と、
(b)光により酸を発生する化合物と、
(c)熱架橋剤と、
(d)溶剤と、を含有する感光性樹脂組成物。
【化1】
[図:0001417620000015.jpg]
(一般式(1)中、R1は、下記一般式(2)で表される二価の有機基のいずれかであり、n1は1~20、n2は1~50、n3は1~70、n4は1~5、n5は1~10、n6は1~5を示す。R2は二価の有機基である。)
【化2】
[図:0001417620000016.jpg]
」(上記「一般式(1)で表される構造単位」を、以下「特定の構造単位」という。)について記載されており、同【0083】、【0088】によれば、感光性樹脂組成物は、導体層上に層間絶縁膜を形成することが可能であるものであるところ、その実施例1(同【0105】)に関し、次の発明(以下「2甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「特定の構造単位を有するポリアミドイミド樹脂と、
光により酸を発生する化合物として1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンの1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名「TPPA528」)と、
熱架橋剤としてヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(株式会社三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW-30HM」)と、を含む、感光性樹脂組成物であって、(【0105】)
感光性樹脂組成物を加熱して得られた硬化膜は、破断伸びが70%であり、(【表2】、【0114】)
感光性樹脂組成物を用いて層間絶縁層を形成することが可能である(【0088】)
感光性樹脂組成物。」
(5)2甲3~2甲5の記載と周知技術
ア 2甲3の記載
2甲3には以下の記載がある。
「〔従来の技術〕
半導体集積回路または混成集積回路における多層配線構造体に用いられる層間絶縁膜は、従来、SiO2等の高純度の無機材料を使用してきた。しかしながら、素子の高集積化に伴い配線層を複数層に形成する必要が生じたため、段差成形性の優れた有機材料が提案された。・・・(中略)・・・高い塩素イオンの感光性ポリイミド前駆体を用いて多層配線構造体を製造した場合、アルミニウム等の金属で出来た導体層を腐食させ、素子特性の低下および長期間使用する場合の信頼性を著しく損なう問題を生じさせる。」(第2頁左上欄第13行~左下欄第15行)
「さらに他の添加剤や溶媒においても、再結晶法、イオン交換法、蒸留等により高純度にすることができる。塩素イオン濃度が5ppm以上の場合、配線部の腐食が大きくなり、Al等の導体が使用できない。さらに、塩素イオン含有量が1ppm以下であることが好ましい。」(第8頁左下欄第3行~第9行)
イ 2甲4の記載
2甲4には以下の記載がある。
「[0171] 本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ハロゲン原子の含有量が、配線腐食性の観点から、500ppm未満が好ましく、300ppm未満が好ましく、200ppm未満が特に好ましい。中でも、ハロゲンイオンの状態で存在するものは、5ppm未満が好ましく、1ppm未満がさらに好ましく、0.5ppm未満が特に好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子および臭素原子が挙げられる。塩素原子および臭素原子、あるいは塩化物イオンおよび臭化物イオンの合計がそれぞれ上記範囲であることが好ましい。」
「[0173]<熱硬化性樹脂組成物の用途>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、耐熱性及び絶縁性に優れる硬化膜を形成できるので、半導体デバイスの絶縁膜、再配線用層間絶縁膜などに好ましく用いることができる。特に、3次元実装デバイスにおける再配線用層間絶縁膜などに好ましく用いることができる。」
ウ 2甲5の記載
2甲5は上記アの1甲1と同じ文献であり、上記(1)アの【0002】及び【表1】の記載がある。
エ 周知技術
上記ア~ウに記載されているように、次の事項(以下「周知技術」という。)は周知である。
(周知技術)
「配線の腐食を抑制するため、層間絶縁膜を形成する樹脂硬化物における塩素イオンの含有量を5ppm未満とすること。」
(6)2甲6の記載
2甲6には以下の記載がある。
「[0030][樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物を含有する。
[0031]<(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物>(以下省略)」
「[0106](熱可塑性樹脂)
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂フィルムの取扱い性を高める観点から、熱可塑性樹脂を更に含有してもよい。熱可塑性樹脂の種類は特に限定されず、分子量も限定されないが、(A)成分との相溶性をより高める点から、数平均分子量(Mn)が200~60000であることが好ましい。」
「[0115] 本実施形態の樹脂組成物の硬化物の比誘電率は特に限定されないが、高周波帯で好適に用いる観点から、10GHzでの比誘電率は3.6以下であることが好ましく、3.1以下であることがより好ましく、3.0以下であることが更に好ましい。比誘電率の下限については特に限定はないが、例えば、1.0程度であってもよい。また、高周波帯で好適に用いる観点から、本実施形態の樹脂組成物の硬化物の誘電正接は0.004以下であることが好ましく、0.003以下であることがより好ましい。比誘電率の下限については特に限定はなく、例えば、0.0001程度であってもよい。比誘電率及び誘電正接は下記実施例で示す方法で測定できる。」
「[0154] なお、表1及び2における各材料の略号等は、以下のとおりである。
・・・(中略)・・・
(3)BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]
(以下省略)」
「[0157] なお、上記(A)成分として用いた化合物の推定される構造は以下のとおりである。下記式(XII-1)~(XII-3)がそれぞれ上記(1)~(3)に対応し、・・・(中略)・・・式(XII-1)~(XII-3)において、nは1~10の整数を表す。」
「[0158]
・・・(中略)・・・
[化29]
[図:0001417620000017.jpg]
」
2 新規性、進歩性について
(1)1甲1を主引例とする取消理由1(1)、1申立理由1及び1申立理由2について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と上記1(1)イの1甲1発明とを対比する。
a 1甲1発明の「ポリイミド樹脂ペースト」は、「樹脂組成物」といえる点で本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。
b 1甲1発明の「熱硬化性樹脂としてのポリイミド樹脂」は、「硬化性樹脂」といえる点で本件発明1の「硬化性樹脂」に相当するところ、両者は後述の相違点1-3を有する。
なお、1甲1発明の「ポリイミド樹脂ペースト」に含まれる「無機微粒子としての表面処理硫酸バリウム微粒子」、「無機イオン交換体としてのアンチモンビスマス系イオン交換体」及び「硬化性を向上させるためのアミン型エポキシ樹脂」は、それぞれの機能からみて本件発明1の「硬化剤」とはいえない。
c 本件発明1の「層間絶縁層」は、本件明細書に、
「【0155】 ・・・(中略)・・・第1の配線層間絶縁層17は、配線層41(第1の配線層)と配線層42(第2の配線層)との間に、銅配線13と第2の有機絶縁層22とを仕切るように設けられている。(以下省略)
【0156】 ・・・(中略)・・・第2の配線層間絶縁層18は、第2の配線層42の基板11とは反対側の主面に露出した銅配線14の表面と接しながら、第2の配線層42上に設けられている。第2の配線層間絶縁層18は、第1の配線層間絶縁層17と同様の材料を含んでおり、且つ、第1の配線層間絶縁層17と同様の特性を有している。」と記載されているように、第1の配線層41と第2の配線層42の間に設けられた絶縁層だけでなく、第2の配線層42のみに接する絶縁層も含むものといえる。
そうすると、1甲1発明の「配線パターン部の全てがメッキ処理されたフレキシブル配線板の表面保護膜」と、本件発明1の「銅配線と接する層間絶縁層」とは、「配線と接する層間絶縁層」である点で共通する。
したがって、1甲1発明の「配線パターン部の全てがメッキ処理されたフレキシブル配線板の表面保護膜として形成するためのポリイミド樹脂ペースト」と、本件発明1の「銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物」とは、「配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物」である点で共通する。
d 1甲1発明の「ポリイミド樹脂ペーストの硬化膜の引張り伸び率が135%である」ことと、本件発明1の「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の破断伸びが5~200%であ」ることとは、「前記樹脂組成物」「の硬化物の破断伸びが5~200%であ」る点で共通する。
また、1甲1発明の「ポリイミド樹脂ペーストの硬化物の塩素イオン濃度が2ppmであ」ることは、本件発明1の「前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である」ことに相当する。
e 上記a~dによれば、本件発明1と1甲1発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
[一致点]
「硬化性樹脂を含有し、
配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物の硬化物の破断伸びが5~200%であり、前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である、樹脂組成物。」
[相違点1]
<相違点1-1>
本件発明1は、「樹脂組成物」が「硬化剤」を含有するのに対し、1甲1発明は、硬化剤を含有することが特定されていない点。
<相違点1-2>
本件発明1の「樹脂組成物」は、「銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる」のに対し、1甲1発明では、「ポリイミド樹脂ペースト」を用いて形成する「フレキシブル配線板の表面保護膜」と接する配線が銅配線であるとの特定がされていない点。
<相違点1-3>
本件発明1の「硬化性樹脂」は、
「少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物であり、
前記マレイミド化合物が、下記式(VIII)で表される化合物であり、
【化1】
[図:0001417620000018.jpg]
[式中、Z1は、2価の炭化水素基を表す。]」
ものであるのに対し、1甲1発明では、「熱硬化性樹脂としてのポリイミド樹脂」である点。
<相違点1-4>
本件発明1では、破断伸びを測定する硬化物が、「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物」であるのに対し、1甲1発明では、硬化物についてこの点が特定されていない点。
(イ)判断
事案に鑑み、まず相違点1-3について検討すると、本件発明1の「硬化性樹脂」と1甲1発明の「熱硬化性樹脂としてのポリイミド樹脂」は、組成が異なるから、相違点1-3は実質的な相違点である。
そして、1甲1発明の「熱硬化性樹脂」として、相違点1-3に係る本件発明1の硬化性樹脂を採用することは、1甲1に記載されておらず、また、配線層間絶縁層を形成するために用いられる樹脂組成物に関する技術分野における技術常識であることを示す証拠も示されていないことから、当業者であっても、1甲1発明に基づいて、相違点1-3に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたものとはいえない。
(ウ)本件発明1についての小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、1甲1発明ではないし、1甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)2甲1を主引例とする取消理由1(2)及び2申立理由1(1)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と上記1(3)イの2甲1発明とを対比する。
a 2甲1発明の「感光性樹脂組成物」は、「樹脂組成物」といえる点で、本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。
b 2甲1発明の「感光性樹脂組成物」は、感光性、すなわち光硬化性を有する樹脂であるといえる点で本件発明1の「硬化性樹脂」に相当するところ、2甲1発明の「感光性樹脂組成物」に含まれる「ビスマレイミド化合物1(DESIGNER MOLECURES Inc.製、「BMI-3000」、固形分100%)」は、2甲6によれば、以下の構造を有するから、本件発明1と2甲1発明は、後述の相違点2-1を有する。
[図:0001417620000019.jpg]
また、2甲1発明の「光重合開始剤1(BASFジャパン製、「IRGACURE OXE-01」)」は、本件発明1の「硬化剤」に相当する。
c 2甲1発明の「硬化物」が、「導電性の金属製配線材料(銅等)との密着性に優れ、層間絶縁膜として特に好適に用いることができる」ことは、銅配線と接する層間絶縁膜として用いることを想定したものに他ならないから、本件発明1の「樹脂組成物」が、「銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる」ことに相当する。
d 2甲1発明が「硬化膜における破断伸度は101%であ」ることと、本件発明1の「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の破断伸びが5~200%であ」ることとは、「前記樹脂組成物」「の硬化物の破断伸びが5~200%であ」る点で共通する。
なお、2甲1発明には、前記硬化膜における塩化物イオン濃度についての特定がない。
e 上記a~dによれば、本件発明1と2甲1発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
[一致点]
「硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、
銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物の硬化物の破断伸びが5~200%である、樹脂組成物。」
[相違点2]
<相違点2-1>
本件発明1の「硬化性樹脂」は、
「少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物であり、
前記マレイミド化合物が、下記式(VIII)で表される化合物であり、
【化1】
[図:0001417620000020.jpg]
[式中、Z1は、2価の炭化水素基を表す。]」
ものであるのに対し、1甲1発明では、「ビスマレイミド化合物1(DESIGNER MOLECURES Inc.製、「BMI-3000」、固形分100%)」である点。
<相違点2-2>
本件発明1では、破断伸びを測定する硬化物が、「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物」であるのに対し、2甲1発明では、硬化物についてこの点が特定されていない点。
<相違点2-3>
本件発明1では、「前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である」のに対し、2甲1発明では、硬化物における塩化物イオンの濃度について特定されていない点。
(イ)判断
相違点2-1について検討する。
a 2甲1発明は、ビスマレイミド化合物(BMI-3000)と「ケイ素化合物3(信越化学工業株式会社製、「X-12-984S」)と、を含む、感光性樹脂組成物」である。
そして、2甲1の【0009】の「比較的低露光量での微細なパターン形成が可能であり、従来のような高温での熱硬化を必要とせず、引張弾性率が十分に小さく、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性に優れた硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物、それを用いた硬化物及び半導体素子を提供することを目的とする。」との記載、同【0010】の「上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、感光性樹脂組成物において、特定のビスマレイミド化合物、光重合開始剤、及び特定のケイ素化合物とを組み合わせて用いることにより、比較的低露光量での微細なパターン形成が可能となり、また、熱硬化を必要とせず、必要に応じて熱硬化せしめる場合であっても従来のような高温での熱硬化を必要としないことを見出した。」との記載、及び同【0011】の「すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、(I)環状イミド結合とダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)とを有するビスマレイミド化合物、(II)光重合開始剤、及び(III)ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4個以上有するケイ素化合物を含有することを特徴とするものである。」との記載によれば、2甲1発明において、ビスマレイミド化合物(BMI-3000)、すなわち2甲6にその構造が記載されたビスマレイミド化合物は、「(I)環状イミド結合とダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)とを有するビスマレイミド化合物」に該当し、「比較的低露光量での微細なパターン形成が可能であり、従来のような高温での熱硬化を必要とせず、引張弾性率が十分に小さく、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性に優れた硬化物を得る」という課題を解決するための必須の化合物である。
b 一方、本件発明1の硬化性樹脂は、環状イミド結合を有していないから、2甲1発明のマレイミド化合物である「(I)環状イミド結合とダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)とを有するビスマレイミド化合物」に該当しない。
そうすると、2甲1発明の「ビスマレイミド化合物(BMI-3000)に代えて、「(I)環状イミド結合とダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)とを有するビスマレイミド化合物」に該当せず、2甲1に記載された課題を解決できない相違点2-1に係る本件発明1の硬化性樹脂を採用する動機付けはないといえる。
さらに、2甲3~2甲5には、相違点1-2に係る本件発明1の硬化性樹脂についての記載はない。
c したがって、当業者であっても、2甲1発明と2甲3~2甲6に記載された事項に基づいて、相違点2-1に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたとはいえない。
(ウ)本件発明1についての小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、2甲1発明及び2甲3~2甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~4、7~11、13、14、16について
本件発明2~4、7~11、13、14、16は、本件発明1を減縮した発明であって、上記ア(イ)で検討した相違点2-1に係る本件発明1の構成を備えるから、本件発明1と同様に、2甲1発明及び2甲3~2甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)2甲2を主引例とする取消理由1(3)及び2申立理由1(2)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と上記1(4)イの2甲2発明を対比する。
a 2甲2発明の「感光性樹脂組成物」は、「樹脂組成物」といえる点で本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。
b 2甲2発明の「感光性樹脂組成物」に含まれる「特定の構造単位を有するポリアミドイミド樹脂」は、感光性、すなわち光硬化性を有する樹脂であるといえる点で本件発明1の「硬化性樹脂」に相当するところ、両者は、後述の相違点3-2を有する。
また、2甲2発明の「光により酸を発生する化合物として1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンの1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名「TPPA528」)」及び「熱架橋剤としてヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(株式会社三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW-30HM」)」は、いずれも本件発明1の「硬化剤」に相当する。
c 2甲2発明の「感光性樹脂組成物」が「導体層上に層間絶縁層を形成することが可能である」ことは、感光性樹脂組成物が、導体層上、すなわち配線上に層間絶縁層を形成するために用いられることといえるから、本件発明1の「銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる」こととは、「配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる」点で共通する。
d 2甲2発明の「感光性樹脂組成物を加熱して得られた硬化膜は、破断伸びが70%であ」ることと、本件発明1の「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の破断伸びが5~200%であ」ることとは、「前記樹脂組成物」「の硬化物の破断伸びが5~200%であ」る点で共通する。
なお、2甲2発明には、前記硬化膜における塩化物イオン濃度についての特定がない。
e 上記a~dによれば、本件発明1と2甲2発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
[一致点]
「硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、
配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物の硬化物の破断伸びが5~200%である、樹脂組成物。」
[相違点3]
<相違点3-1>
本件発明1の「樹脂組成物」は、「銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる」のに対し、2甲2発明では、「感光性樹脂組成物」を用いて形成する「層間絶縁層」と接する導体層(配線)が銅配線であるとの特定がされていない点。
<相違点3-2>
本件発明1の「硬化性樹脂」は、
「少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物であり、
前記マレイミド化合物が、下記式(VIII)で表される化合物であり、
【化1】
[図:0001417620000021.jpg]
[式中、Z1は、2価の炭化水素基を表す。]」
ものであるのに対し、2甲2発明では、「特定の構造単位を有するポリアミドイミド樹脂」である点。
<相違点3-3>
本件発明1では、破断伸びを測定する硬化物が、「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物」であるのに対し、2甲2発明では、硬化物についてこの点が特定されていない点。
<相違点3-4>
本件発明1では、「前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である」のに対し、2甲2発明では、硬化物における塩化物イオンの濃度について特定されていない点。
(イ)判断
事案に鑑み、まず相違点3-2について検討すると、2甲2発明の「感光性樹脂組成物」として、相違点3-2に係る本件発明1の硬化性樹脂を採用することは、2甲1~2甲6に記載されておらず、また、この技術分野において技術常識であることを示す証拠も示されていないことから、当業者であっても、2甲2発明及び2甲1~2甲6に基づいて、相違点3-2に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたものとはいえない。
(ウ)本件発明1についての小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、2甲2発明及び2甲1~2甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~4、7、10、11、13、14、16について
本件発明2~4、7、10、11、13、14、16は、本件発明1を減縮した発明であって、上記ア(イ)で検討した相違点3-2に係る本件発明1の構成を備えるから、本件発明1と同様に、2甲2発明及び2甲1~2甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 拡大先願(取消理由2及び1申立理由3)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と上記1(2)イの1甲2発明とを対比する。
a 1甲2発明の「感光性樹脂組成物」は、「樹脂組成物」といえる点で本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。
b 1甲2発明の「感光性樹脂組成物」に含まれる「ポリアミド樹脂」は、感光性、すなわち光硬化性を有する樹脂といえる点で本件発明1の「硬化性樹脂」に相当するところ、両者は、後述の相違点4-1を有する。
また、1甲2発明の「感光剤として光酸発生剤」及び「架橋剤としてHMOM-TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製、MW-100LM(商品名、(株)三和ケミカル製))」は、いずれも本件発明1の「硬化剤」に相当する。
c 1甲2発明の「硬化膜は、半導体素子の銅配線を有する高密度実装用多層配線の層間絶縁膜の用途に好適に用いられる」ことは、本件発明1の「銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる」ことに相当する。
d 1甲2発明の「感光性樹脂組成物の熱硬化物の伸度は72~110%であ」ることと、本件発明1の「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の破断伸びが5~200%であ」ることとは、「前記樹脂組成物」「の硬化物の破断伸びが5~200%であ」る点で共通する。
e 上記a~dによれば、本件発明1と1甲2発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
[一致点]
「硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、
銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物の硬化物の破断伸びが5~200%である、樹脂組成物。」
[相違点4]
<相違点4-1>
本件発明1の「硬化性樹脂」は、
「少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物であり、
前記マレイミド化合物が、下記式(VIII)で表される化合物であり、
【化1】
[図:0001417620000022.jpg]
[式中、Z1は、2価の炭化水素基を表す。]」
ものであるのに対し、1甲2発明では、「ポリアミド樹脂」である点。
<相違点4-2>
本件発明1では、破断伸びを測定する硬化物が、「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物」であるのに対し、1甲2発明では、硬化物についてこの点が特定されていない点。
<相違点4-3>
「塩化物イオンの濃度」について、本件発明1では、「前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である」と特定されているのに対し、1甲2発明では、「ポリアミド樹脂の残留塩素イオン含有量が2ppmであり」と特定されている点。
イ 判断
相違点4-1について検討すると、本件発明1と1甲2発明とは、硬化性樹脂の組成が異なるから、実質的な相違点である。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、1甲2発明と同一ではない。
4 実施可能要件(2申立理由2)について
(1)申立人2は、特許異議申立書2の87頁17行~89頁10行において、「本件の特許明細書における発明の詳細な説明の記載及び本件の出願時の技術常識に基づいて、本件特許発明1における「樹脂組成物」を全ての態様にわたって製造することは困難であると認められるため、本件の特許明細書における発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合するとはいえない。」(89頁2~6行)旨主張している。
(2)本件明細書には、本件発明1のマレイミド化合物について、以下の記載がある。(下線は当審で付した。)
「【0046】
マレイミド化合物は、より具体的には、一実施形態において、例えば、下記式(VIII)で表される化合物であってよく、…
【化10】
[図:0001417620000023.jpg]
【化11】(省略)
式中、Z1…は、…2価の炭化水素基を表し、(以下省略)
【0047】
マレイミド化合物は、例えば市販品を購入して使用可能である。市販品としては、例えば、式(VIII)で表されるマレイミド化合物である、BMI-TMH,BMI-1000,BMI-1000H,BMI-1100,BMI-1100H,BMI-2000,BMI-2300,BMI-3000,BMI-3000H,BMI-4000,BMI-5100,BMI-7000,BMI-7000H(いずれも商品名、大和化成工業株式会社製)、BMI,BMI-70,BMI-80(いずれも商品名、ケイ・アイ化成株式会社製)等が挙げられる。(以下省略)」
「【0051】
第1実施形態に係る硬化剤は、光ラジカル重合開始剤を含んでいてよい。すなわち、樹脂組成物は、一実施形態において、マレイミド化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含有する。」
「【0189】
<材料A>
(中略)実施例1の配線層間絶縁層57(材料Aの硬化物)は、吸湿率が1.0質量%以下、塩化物イオン濃度が3ppm以下、破断伸びが150%、40℃における貯蔵弾性率が60MPaであった。」
「【0191】
上述した測定評価用試料50の絶縁信頼性を確認するため、以下に説明する高加速度寿命試験(HAST:Highly Accelerated Stress Test)を行った。この試験では、湿度85%、130℃の条件下において第1の接続配線55cと第2の接続配線55dとに3.3Vの電圧を印加し、所定の時間にわたって静置した。これにより、時間経過に伴う第1の配線55aと、第2の配線55bとの絶縁性の変化を測定した。この試験では、第1の配線55aと第2の配線55bとの間の抵抗値が、試験開始から200時間経過時に1×106Ω以上であれば評価Aとし、試験開始から200時間経過前に1×106Ω未満となれば評価Bとした。実施例1の高加速度寿命試験の結果を、下記表1に示す。」
「【0195】
<材料B>
(中略)実施例4の配線層間絶縁層57(材料Bの硬化物)は、吸湿率が1.0質量%以下、塩化物イオン濃度が3ppm以下、破断伸びが70%、40℃における貯蔵弾性率が180MPaであった。」
「【0198】
<材料C>
(中略)実施例6の配線層間絶縁層57(材料Cの硬化物)は、吸湿率が1.0質量%以下、塩化物イオン濃度が5ppm以下、破断伸びが3%、40℃における貯蔵弾性率が11GPaであった。」
「【0206】
【表1】
[図:0001417620000024.jpg]
」
「【0211】
(実施例7~13)
以下の各成分を表1に示す組成となるように、25℃で30分間以上攪拌した後、#200のナイロンメッシュ(目開き:75μm)でろ過して、樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0212】(省略)
【0213】
(A-2)成分:下記式で表されるマレイミド化合物の混合物
【化22】
[図:0001417620000025.jpg]
【化23】
[図:0001417620000026.jpg]
【0214】
(B)成分:(メタ)アクリロイル基を有する化合物(新中村化学工業株式会社製、商品名:A-DCP)
(C)成分:光ラジカル重合開始剤(BASF社製、商品名:Irgacure907)
(D-1)成分:エポキシ基を有するシランカップリング剤(信越化学工業株式会社社製、商品名:X-12-984S)
(D-2)成分:エポキシ基を有するシランカップリング剤(信越化学工業株式会社社製、商品名:KBM-403)
【0215】
各実施例の樹脂組成物(ワニス)について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。」
「【0221】
【表2】
[図:0001417620000027.jpg]
」
(3)上記(2)の記載に基づき、申立人2の上記(1)の主張について検討する。
本件発明1の樹脂組成物は、硬化性樹脂と硬化剤を含むところ、【表2】に記載された実施例11~13の硬化性樹脂は、【0051】、【0213】及び【0214】の記載を参照すると、構造式が【化22】で示されるマレイミド化合物と【化23】で示されるマレイミド化合物の混合物を用い、硬化剤として、光ラジカル重合開始剤(BASF社製、商品名:Irgacure907)を用いるものである。
そして、【化22】及び【化23】で示されるマレイミド化合物は、いずれも本件発明1のマレイミド化合物に該当する。
また、実施例11~13は、【表2】によれば、硬化物の伸び率が35~45%であり、本件発明1の破断伸びが5~200%であることに該当する。
さらに、【表2】のb-HAST耐性は、測定評価用試料の絶縁信頼性を確認するための指標であるところ、【表1】において「評価A」とされた材料A~Cを用いた実施例1~6は、いずれも硬化物の塩化物イオン濃度が5ppm以下であることから、同様に「A評価」である実施例11~13についても、硬化物の塩化物イオン濃度は5ppm以下であるといえ、これは本件発明1の硬化物における塩化物イオン濃度が5ppm以下であることに該当する。
したがって、本件発明1は、実施例11~13として実施することができるから、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
よって、申立人2の上記(1)の主張は採用できない。
5 サポート要件(1申立理由4及び2申立理由3)について
(1)1申立理由4について
ア 申立人1は、申立人1は、特許異議申立書1(15頁下から3行目~16頁13行)において、「本件特許発明1は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであり、サポート要件を満たさない。」(16頁11~13行)と主張する。
イ 申立人1の上記主張について検討する。
本件明細書には、「トレンチ法によって配線層内に微細な配線を形成する際には、低コスト化且つ配線抵抗の上昇抑制を図るために、例えば、高い導電性を有する銅が用いられ」、「銅配線を形成した場合、銅が有機絶縁層内に拡散」し、「この場合、拡散した銅を介して銅配線同士が短絡するおそれがあり、配線層の絶縁信頼性に課題がある」(本件明細書【0009】)ことから、「良好な絶縁信頼性を有する配線層間絶縁層」「を好適に形成できる樹脂組成物を提供すること」(同【0010】)を解決すべき課題とし、「硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物」(同【0011】)について、「樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度」を「絶縁信頼性の観点から5ppm以下」(同【0128】)とすることで、上記課題を解決することが記載されている。
そして、本件発明1は、「硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物」における、
「前記硬化性樹脂が、少なくとも2つのマレイミド基と、2価の炭化水素基とを有するマレイミド化合物であり、
前記マレイミド化合物が、下記式(VIII)で表される化合物であり、
【化1】
[図:0001417620000028.jpg]
[式中、Z1は、2価の炭化水素基を表す。]
180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の破断伸びが5~200%」である「樹脂組成物」について、
「前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である」ことが特定されているから、当業者であれば、本件発明1により上記課題を解決することができることを認識できる。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
よって、申立人1の上記アの主張は採用できない。
(2)2申立理由3について
ア 申立人2は、硬化物の破断伸びと硬化物における塩化物イオンの濃度について(特許異議申立書2の89頁12行~90頁19行)、「本件の発明の詳細な説明に記載された具体例を、本件特許発明1に規定された全ての硬化性樹脂とすべての硬化剤とを含む範囲に対してまで、拡張ないし一般化することはできない」(90頁14~16行)旨主張するが、上記(1)イで検討したとおり、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であるから、申立人2の上記主張は採用できない。
イ 申立人2は、樹脂組成物の硬化物の厚さについて(90頁20行~92頁12行)、「硬化物における塩化物イオンの濃度に関して、樹脂組成物の硬化物の厚さが特定されていない」(91頁9~10行)こと及び「硬化物の破断伸びに関して、樹脂組成物の硬化物の厚さが特定されていない」(同22~23行)ことから、「本件特許発明1で規定された樹脂組成物の硬化物の破断伸びと樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度を満たすことで、本件特許の発明の課題を解決できるかについて、当業者が認識できるとは言えない」(92頁7~9行)旨主張するが、本件発明1は、上記(1)イで検討したとおり、「前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である」ことが特定されているから、当業者であれば、本件発明1により上記課題を解決することができることを認識でき、また、本件発明1には、「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の破断伸びが5~200%」であることが特定されているから、申立人2の上記主張は採用できない。
ウ 申立人2は、樹脂組成物の硬化物の製膜条件について(92頁13行~94頁1行)、「本件特許発明1は、樹脂組成物の硬化物の製膜条件を本件の特許明細書に記載された条件から変更すると、樹脂組成物の硬化物の破断伸びも変化するため、・・・(中略)・・・本件特許発明1は、本件特許発明の課題を解決できない範囲も包含する蓋然性が高い」こと(93頁5~9行)、及び「本件特許発明1は、樹脂組成物の硬化物の製膜条件を本件の特許明細書に記載された条件から変更すると、樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度も変化するため、・・・(中略)・・・本件特許発明1は、本件特許発明の課題を解決できない範囲も包含する蓋然性が高い」(同18~22行)ことから、「本件特許発明1で規定された樹脂組成物の硬化物の破断伸びと、樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度とを満たすことで、本件特許の発明の課題を解決できるかについて、当業者が認識できるとは言えない」(同23~25行)旨主張するが、本件発明1には、「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の破断伸びが5~200%」であることが特定されており、また、当業者であれば、樹脂組成物を硬化させる際に、塩化物イオンが入り込むような条件下で硬化させることは想定しておらず、樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度は、樹脂組成物に由来する塩化物イオンの濃度を特定していると一義的に理解できるから、申立人2の上記主張は採用できない。
6 明確性(取消理由3及び2申立理由4)について
(1)取消理由3について
ア 取消理由3の概要
(ア)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明は、樹脂組成物の硬化物の破断伸びと塩化物イオンの濃度を特定した、硬化前の樹脂組成物の発明であるといえる。
ここで、一般に、樹脂組成物を硬化させる際の製造条件によって、硬化物の機械的特性は変わるものであるから、同じ樹脂組成物であっても、硬化物の製造条件によっては、硬化物の破断伸びが、請求項1に係る発明で特定されている「5~200%」である範囲に包含される場合も、包含されない場合もあると考えられる。
また、樹脂組成物を硬化させる際に、塩化物イオンが入り込むことはあり得るものであるから、同じ樹脂組成物であっても、硬化物の製造条件によっては、硬化物の塩化物イオンの濃度が、請求項1に係る発明で特定されている「5ppm以下」である範囲に包含される場合も、包含されない場合もあると考えられる。
そうすると、硬化物の破断伸びと塩化物イオンの濃度を特定しても、硬化前の樹脂組成物を特定していることにはならない。
また、硬化物の樹脂組成物が、請求項1に係る発明に該当するか否かを明確に判断することはできない。
したがって、樹脂組成物の硬化物の破断伸びと塩化物イオンの濃度を特定している、硬化前の樹脂組成物の発明である請求項1に係る発明は明確でない。
(イ)請求項2~16に係る発明について
請求項1の発明特定事項を引用する請求項2~16に係る発明についても、上記(1)と同様の点が指摘される。
また、請求項12に係る発明の「樹脂組成物の硬化物の40℃における貯蔵弾性率」、請求項13に係る発明の「樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度」、請求項14に係る発明の「樹脂組成物の硬化物の10GHzでの誘電率」、請求項15に係る発明の「樹脂組成物の硬化物の10GHzでの誘電正接」及び請求項16に係る発明の「樹脂組成物の硬化物の5%重量減少温度」は、いずれも硬化物の製造条件に依存するから、上記(1)と同様の理由により、これらの事項により特定される硬化前の樹脂組成物は明確でない。
したがって、請求項2~16に係る発明も明確でない。
イ 判断
(ア)本件発明1について
本件訂正により、請求項1に、「180℃で2時間の加熱により前記樹脂組成物を硬化して得た厚さ300μmの硬化物の破断伸びが5~200%であ」ると、「硬化物」の製造条件及び厚さが特定された。
また、当業者であれば、樹脂組成物を硬化させる際に、塩化物イオンが入り込むような条件下で硬化させることは想定していないから、「前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度」は、樹脂組成物に由来する塩化物イオンの濃度を特定していると一義的に理解できる。
したがって、本件発明1についての取消理由は解消した。
(イ)本件発明2~4、7~11、13、14、16について
請求項1の発明特定事項を引用する請求項2~4、7~11、13、14、16に係る発明についても、上記(ア)と同様である。
また、本件訂正により、本件発明13、14及び16の「硬化物」の製造条件及び厚さが、本件発明1と同様に特定された。
そして、当業者であれば、樹脂組成物を硬化させる際に、塩化物イオンが入り込むような条件下で硬化させることは想定していないから、「前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度」は、樹脂組成物に由来する塩化物イオンの濃度を特定していると一義的に理解できる。
したがって、本件発明2~4、7~11、13、14、16についての取消理由は解消した。
(2)2申立理由4について
ア 申立人2は、特許異議申立書2の94~95頁において、本件発明1は、以下の各点について明確でない旨主張している。
(ア)硬化物の破断伸びに関して、樹脂組成物の硬化物の厚さが特定されていない。(94頁8~19行)
(イ)塩化物イオンの濃度に関して、樹脂組成物の硬化物の厚さが特定されていない。(94頁20行~95頁8行)
(ウ)硬化物における塩化物イオンの濃度の下限値が特定されていない。(95頁9~13行)
イ 申立人2の主張について以下検討する。
(ア)上記ア(ア)の主張について
本件発明1は、「厚さ300μmの硬化物」と特定されているから、申立人2の上記ア(ア)の主張は採用できない。
(イ)上記ア(イ)の主張について
本件発明1は、樹脂組成物の硬化物の塩化物イオン濃度を特定するものであり、塩化物イオンの濃度は硬化物の厚さに依存しない。そうすると、塩化物イオンの濃度を特定するために硬化物の厚さを特定する必要はないから、申立人2の上記ア(イ)の主張は採用できない。
(ウ)上記ア(ウ)の主張について
本件発明1は、上記5(1)イで検討したとおり、「樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度」を「絶縁信頼性の観点から5ppm以下」とすることで、本件明細書に記載された配線層間絶縁層の絶縁信頼性に関する上記課題を解決するものであるから、塩化物イオンの濃度の下限値を特定する必要はないことは明らかである。
したがって、申立人2の上記ア(ウ)の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1~4、7~11、13、14、16についての特許は、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書1に記載した申立理由、及び特許異議申立書2に記載した申立理由によっては取り消すことはできない。
また、本件請求項5、6、12、15は、本件訂正により削除されたため、請求項5、6、12、15に係る特許に対する特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701072