特許異議申立
2024-700266
保護素子
- 審判番号
- 2024-700266
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-071449
- 登録番号
- 7349954
- 請求日
- 2024年03月25日
- 審決日
- 2025年01月17日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ショット日本株式会社
- 【権利者代理人】西村 竜平
- 【権利者代理人】齊藤 真大
- 【権利者代理人】中村 惇志
- 【権利者代理人】上村 喜永
- 【権利者代理人】前田 治子
- 【異議申立人】横沢 聡
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 尾崎 和寛
- 審判官 内田 博之
- 分類
- P1651.113-YAA(H01H) / P1651.121-YAA(H01H) / P1651.536-YAA(H01H) / P1651.537-YAA(H01H) / P1651.851-YAA(H01H) / P1651.852-YAA(H01H) / P1651.853-YAA(H01H) / P1651.857-YAA(H01H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7349954号発明「保護素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7349954号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~7〕、9、10、〔11~19〕、20、21、22、〔28~31〕、及び32について訂正することを認める。
特許第7349954号の請求項1~32に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7349954号の請求項1~32に係る特許についての出願は、令和2年4月13日に出願され、令和5年9月14日にその特許権の設定登録がされ、令和5年9月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和6年3月25日に特許異議申立人横沢聡(以下、「特許異議申立人)という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和6年6月12日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和6年8月7日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、令和6年10月25日に意見書を提出した。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所。)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆している保護素子」と記載されているのを、「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子」に訂正する
(請求項1を引用する請求項3、5~7も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記コーティング層は、前記動作フラックス自体が自らその表面を皮膜化して形成した請求項1に記載の保護素子」と記載されているのを、「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、前記コーティング層は、前記動作フラックス自体が自らその表面を皮膜化して形成した保護素子」に訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記コーティング層は、シート状コーティング材から構成された請求項1に記載の保護素子」と記載されているのを、「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、前記コーティング層は、シート状コーティング材から構成された保護素子」に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に「前記コーティング層は、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなる保護素子」と記載されているのを、「前記コーティング層は、熟硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなり、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に「前記動作フラックスは、少なくとも前記電極部間を接続する前記ヒューズエレメントの接続部位に部分的に塗布されている保護素子」と記載されているのを、「前記動作フラックスは、少なくとも前記電極部間を接続する前記ヒューズエレメントの接続部位に部分的に塗布されており、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子」に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11に「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆している保護素子」と記載されているのを、「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子」に訂正する(請求項11を引用する請求項12~19も同様に訂正する)。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項16に「請求項11ないし請求項15の何れか1つに記載の保護素子」と記載されているのを、「請求項15記載の保護素子」に訂正する。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項17に「請求項11ないし請求項16の何れか1つに記載の保護素子」と記載されているのを、「請求項15または請求項16に記載の保護素子」に訂正する。
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項18に「請求項11ないし請求項16の何れか1つに記載の保護素子」と記載されているのを、「請求項15または請求項16に記載の保護素子」に訂正する。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項19に「請求項11ないし請求項16の何れか1つに記載の保護素子」と記載されているのを、「請求項15または請求項16に記載の保護素子」に訂正する。
サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項20に「前記コーティング層は、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなる保護素子」と記載されているのを、「前記コーティング層は、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなり、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子」に訂正する。
シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項21に「前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントの上面の前記通電電極と重なる部位と、前記通電電極から前記主電極の端面に達するまでの電極間隙部と重なる部位とに塗布されている保護素子」と記載されているのを、「前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントの上面の前記通電電極と重なる部位と、前記通電電極から前記主電極の端面に達するまでの電極間隙部と重なる部位とに塗布されており、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子」に訂正する。
ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項22に「前記第1の可溶性金属または前記第2の可溶性金属は、少なくとも銀、銅の何れかまたは両方を含む錫基合金」と記載されているのを、「前記ヒューズエレメントは、第1の可溶性金属と第2の可溶性金属の複合材からなり、前記第1の可溶性金属または前記第2の可溶性金属は、少なくとも銀、銅の何れかまたは両方を含む錫基合金」に訂正する。
セ 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項22に「前記第1の可溶性金属または前記第2の可溶性金属は、少なくとも銀、銅の何れかまたは両方を含む錫基合金である保護素子」と記載されているのを、「前記第1の可溶性金属または前記第2の可溶性金属は、少なくとも銀、銅の何れかまたは両方を含む錫基合金であり、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子」に訂正する。
ソ 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項28に「請求項23ないし請求項27の何れか1つに記載の保護素子」と記載されているのを、「請求項27記載の保護素子」に訂正する。
タ 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項29に「請求項23ないし請求項28の何れか1つに記載の保護素子」と記載されているのを、「請求項27または請求項28に記載の保護素子」に訂正する。
チ 訂正事項17
特許請求の範囲の請求項30に「請求項23ないし請求項28の何れか1つに記載の保護素子」と記載されているのを、「請求項27または請求項28に記載の保護素子」に訂正する。
ツ 訂正事項18
特許請求の範囲の請求項31に「請求項23ないし請求項29の何れか1つに記載の保護素子」と記載されているのを、「請求項27または請求項28に記載の保護素子」に訂正する。
テ 訂正事項19
特許請求の範囲の請求項32に「前記動作フラックスは、熱硬化性樹脂成分を配合または添加しており、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記動作フラックスが前記表面から流出しないように保持した前記硬化性樹脂成分からなる皮膜状のコーティング層を形成する保護素子」と記載されているのを、「前記動作フラックスは、熱硬化性樹脂成分を配合または添加しており、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記動作フラックスが前記表面から流出しないように保持した前記熱硬化性樹脂成分からなる皮膜状のコーティング層を形成する保護素子」に訂正する。
(2)一群の請求項について
本件訂正請求の訂正事項1~3は、一群の請求項〔1~7〕に対して、訂正事項4は、請求項9に対して、訂正事項5は、請求項10に対して、訂正事項6~10は、一群の請求項〔11~19〕に対して、訂正事項11は、請求項20に対して、訂正事項12は、請求項21に対して、訂正事項13及び14は、請求項22に対して、訂正事項15~18は、一群の請求項〔28~31〕に対して、及び訂正事項19は、請求項32に対してされたものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する、一群の請求項があるときは一群の請求項ごとに訂正請求がされたものである。
(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る特許発明の「コーティング層」が、「前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆している」と特定されていたのを、「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」 との記載により、訂正後の請求項1に係る発明におけるコーティング層の構成をより具体的に特定し、更に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「願書に添付した明細書等」という。)の明細書の段落【0016】の「動作フラックス16は、必ずしもヒューズエレメント15の露出表面の全面に塗布する必要はなく、ヒューズエレメント15の少なくとも動作上必要とされる部位に部分的に塗布するだけでもよい。」との記載があり、当該記載と【図3】(a)及び【図4】(a)の記載から、動作フラックスがヒューズエレメントの表面の一部を露出するように塗布されていることが記載されている。また、明細書の段落【0012】には、「本発明に係るコーティング層の形成は、動作フラックスを可溶合金のヒューズエレメントに塗布した後、前記動作フラックスの表面に、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂を更に被覆し、これを硬化させることで形成することができる。また、動作フラックスに前記樹脂成分を配合または添加して、動作フラックス自体が、自らその表面を皮膜化できるようにすることもできる。」との記載があり(下線は当審で付したもの。)、ヒューズエレメントの表面に塗布された動作フラックスの範囲と、当該動作フラックスを被覆しているコーティング層の範囲が同じ範囲であることが記載されている。
したがって、訂正事項1の「前記コーティング層は」、「前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」という事項は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であるといえる。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、コーティング層の構成を特定する事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
そして、訂正事項2が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
そして、訂正事項3が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項9に係る発明の「コーティング層」が、「熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなる」と特定されていたのを、「前記コーティング層は、熟硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなり、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」 との記載により、訂正後の請求項9に係る発明におけるコーティング層の構成をより具体的に特定し、更に限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア(イ)及び(ウ)での説示と同様の理由により、訂正事項4は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求範囲を拡張し、又は変更するものでない。
オ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的
訂正前の請求項10に係る発明は、「コーティング層」について、「前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し」との特定がされているが、「コーティング層」と「ヒューズエレメント」との関係は直接特定されていない。
訂正事項5は、「前記動作フラックスは、少なくとも前記電極部間を接続する前記ヒューズエレメントの接続部位に部分的に塗布されており、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」との記載により、訂正後の請求項10に係る発明におけるコーティング層の構成をヒューズエレメントとの関係から具体的に特定し、更に限定するものである。
したがって、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア(イ)及び(ウ)と同様の理由により、訂正事項5の「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」という事項は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であるといえ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
カ 訂正事項6について
(ア)訂正の目的
訂正事項6は、訂正前の請求項11に係る発明が、「コーティング層」の構成について「前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆している」と特定されていたのを、訂正後の請求項11において、「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」とし、コーティング層の構成をより具体的に特定し、更に限定するものである。
したがって、訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア(イ)及び(ウ)と同様の理由により、訂正事項6の「前記コーティング層は」、「前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」という事項は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であるといえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
キ 訂正事項7について
訂正前の請求項16は請求項11~15の記載を引用する記載であるところ、訂正後の請求項16は請求項15を引用するものであり、引用する請求項の数を減少させるものなので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、訂正事項7が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
ク 訂正事項8について
訂正前の請求項17は請求項11~16の記載を引用する記載であるところ、訂正後の請求項17は請求項15または請求項16を引用するものであり、引用する請求項の数を減少させるものなので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、訂正事項8が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
ケ 訂正事項9について
訂正前の請求項18は請求項11~16の記載を引用する記載であるところ、訂正後の請求項18は請求項15または請求項16を引用するものであり、引用する請求項の数を減少させるものなので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、訂正事項9が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
コ 訂正事項10について
訂正前の請求項19は請求項11~16の記載を引用する記載であるところ、訂正後の請求項19は請求項15または請求項16を引用するものであり、引用する請求項の数を減少させるものなので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、訂正事項10が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
サ 訂正事項11について
(ア)訂正の目的
訂正事項11は、訂正前の請求項20に係る発明の「コーティング層」が、「熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなる」と特定されていたのを、「前記コーティング層は、熟硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなり、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」 との記載により、訂正後の請求項9に係る発明におけるコーティング層の構成をより具体的に特定し、更に限定するものである。
したがって、訂正事項11は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア(イ)及び(ウ)での説示と同様の理由により、訂正事項11は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
シ 訂正事項12について
訂正前の請求項21に係る発明は、「コーティング層」について、「前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し」との特定がされているが、「コーティング層」と「ヒューズエレメント」との関係は直接特定されていない。
訂正事項12は、「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」との記載により、訂正後の請求項21に係る発明におけるコーティング層の構成をヒューズエレメントとの関係から具体的に特定し、更に限定するものである。
したがって、訂正事項12は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア(イ)及び(ウ)と同様の理由により、訂正事項12の「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」という事項は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であるといえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
ス 訂正事項13について
(ア)訂正の目的
訂正前の請求項22には、「前記第1の可溶性金属」及び「前記第2の可溶性金属」との記載があるが、これより前に、「第1の可溶性金属」及び「第2の可溶性金属」は記載されておらず、前述の「前記第1の可溶性金属」及び「前記第2の可溶性金属」との記載は明瞭でない。
これに対して、訂正後の請求項22は、「前記ヒューズエレメントは、第1の可溶性金属と第2の可溶性金属の複合材からなり、前記第1の可溶性金属または前記第2の可溶性金属は、少なくとも銀、銅の何れかまたは両方を含む錫基合金」との記載により、「前記第1の可溶性金属」及び「前記第2の可溶性金属」との記載を明瞭とするものである。
したがって、訂正事項13は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正後の請求項22は、「ヒューズエレメント」が「第1の可溶性金属と第2の可溶性金属」からなるとして、「ヒューズエレメント」の材料を具体的に特定しさらに限定するものである。
したがって、訂正事項13は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
願書に添付した明細書等の段落【0016】には、「・・・(前略)・・・第1の可溶性金属15aと第2の可溶性金属15bの複合材からなるヒューズエレメント15と、・・・(後略)・・・」との記載があるから、訂正事項13は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項13は、ヒューズエレメントの材料を特定する事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
セ 訂正事項14について
(ア)訂正の目的
訂正前の請求項22に係る発明は、「コーティング層」について、「前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し」との特定がされているが、「コーティング層」と「ヒューズエレメント」との関係は直接特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項22は、「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」との記載により、訂正後の請求項22に係る発明におけるコーティング層の構成をヒューズエレメントとの関係から具体的に特定し、更に限定するものである。
したがって、訂正事項14は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア(イ)及び(ウ)と同様の理由により、訂正事項14の「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」という事項は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であるといえ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
ソ 訂正事項15について
訂正前の請求項28は請求項23~27の記載を引用する記載であるところ、訂正後の請求項28は請求項27を引用するものであり、引用する請求項の数を減少させるものなので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、訂正事項15が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
タ 訂正事項16について
訂正前の請求項29は請求項23~28の記載を引用する記載であるところ、訂正後の請求項29は請求項27または請求項28を引用するものであり、引用する請求項の数を減少させるものなので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、訂正事項15が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
チ 訂正事項17について
訂正前の請求項30は請求項23~28の記載を引用する記載であるところ、訂正後の請求項30は請求項27または請求項28を引用するものであり、引用する請求項の数を減少させるものなので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、訂正事項17が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
ツ 訂正事項18について
訂正前の請求項31は請求項23~29の記載を引用する記載であるところ、訂正後の請求項31は請求項27または請求項28を引用するものであり、引用する請求項の数を減少させるものなので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、訂正事項18が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
テ 訂正事項19について
(ア)訂正の目的
訂正前の請求項32の、「前記硬化性樹脂成分」との記載より前に、「硬化性樹脂成分」は記載されていないが、当該記載の前には「熱硬化性樹脂成分」との記載がある。したがって、当該「前記硬化性樹脂成分」は、「前記熱硬化性樹脂成分」の誤記であることは当業者には明らかである。
よって、訂正事項19は、誤記の訂正を目的とするものでもある。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項19は、訂正前の請求項32における誤記を訂正するものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号~第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、9、10、〔11~19〕、20、21、22、〔28~31〕、及び32について訂正することを認める。
3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~32に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明32」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~32に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子。
【請求項2】
少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し
前記動作フラックスは前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、
前記コーティング層は、前記動作フラックス自体が自らその表面を皮膜化して形成した保護素子。
【請求項3】
前記コーティング層は、前記動作フラックス以外の液状のコーティング材を前記動作フラックスの表面に、更に被覆した後これを成膜して形成した請求項1に記載の保護素子。
【請求項4】
少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、
前記コーティング層は、シート状コーティング材から構成された保護素子。
【請求項5】
前記コーティング層は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、又は、電子線硬化性樹脂からなる請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項6】
前記コーティング層は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなる請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項7】
前記動作フラックスは、少なくとも前記電極部間を接続する前記ヒューズエレメントの接続部位に部分的に塗布されている請求項1ないし請求項6の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項8】
少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記コーティング層は、前記動作フラックス自体が自らその表面を皮膜化して形成した保護素子。
【請求項9】
少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記コーティング層は、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなり、
前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子。
【請求項10】
少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記動作フラックスは、少なくとも前記電極部間を接続する前記ヒューズエレメントの接続部位に部分的に塗布されており、
前記コーティング層は前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子。
【請求項11】
絶縁基板に、発熱素子と、少なくとも一対の主電極と、前記発熱素子の通電電極とが設けられており、
前記主電極と前記通電電極の上に設けたヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子。
【請求項12】
前記コーティング層は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、又は、電子線硬化性樹脂からなる請求項11に記載の保護素子。
【請求項13】
前記コーティング層は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなる請求項11に記載の保護素子。
【請求項14】
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントの上面の前記通電電極と重なる部位と、前記通電電極から前記主電極の端面に達するまでの電極間隙部と重なる部位とに塗布された請求項11ないし請求項13の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項15】
前記ヒューズエレメントは、第1の可溶性金属と第2の可溶性金属の複合材からなる請求項11ないし請求項14の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項16】
前記第1の可溶性金属または前記第2の可溶性金属は、少なくとも銀、銅の何れかまたは両方を含む錫基合金である請求項15記載の保護素子。
【請求項17】
前記第1の可溶性金属および前記第2の可溶性金属の少なくとも何れかが、無鉛錫系はんだ材である請求項15または請求項16に記載の保護素子。
【請求項18】
前記第1の可溶性金属および前記第2の可溶性金属の少なくとも何れかが、Agを3~4質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag合金、Cuを0.5~0.7質量%さらに必要に応じてAgを0~1質量%含有し残部がSnからなるSn-Cu-Ag合金、Ag3~4質量%さらにCuを0.5~1質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag-Cu合金、Biを10~600質最%含有し残部がSnからなるSn-Bi合金から選択された合金材である請求項15または請求項16に記載の保護素子。
【請求項19】
前記第1の可溶性金属および前記第2の可溶性金属の少なくとも何れかが、96.5Sn-3.5Ag合金、99.25Sn-0.75Cu合金、96.5Sn-3Ag-0.5Cu合金、95.5Sn-4Ag-0.5Cu合金、42Sn-58Bi合金から選択された合金材である請求項15または請求項16に記載の保護素子。
【請求項20】
絶縁基板に、発熱素子と、少なくとも一対の主電極と、前記発熱素子の通電電極とが設けられており、
前記主電極と前記通電電極の上に設けたヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記コーティング層は、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなり、
前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子。
【請求項21】
絶縁基板に、発熱素子と、少なくとも一対の主電極と、前記発熱素子の通電電極とが設けられており、
前記主電極と前記通電電極の上に設けたヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントの上面の前記通電電極と重なる部位と、前記通電電極から前記主電極の端面に達するまでの電極間隙部と重なる部位とに塗布されており、
前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子。
【請求項22】
絶縁基板に、発熱素子と、少なくとも一対の主電極と、前記発熱素子の通電電極とが設けられており、
前記主電極と前記通電電極の上に設けたヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記ヒューズエレメントは、第1の可溶性金属と第2の可溶性金属の複合材からなり、
前記第1の可溶性金属または前記第2の可溶性金属は、少なくとも銀、銅の何れかまたは両方を含む錫基合金であり、
前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している保護素子。
【請求項23】
絶縁基板に発熱素子と、少なくとも一対の主電極と、前記発熱素子の通電電極とが設けられており、
前記主電極と前記通電電極の上に設けたヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、硬化性樹脂成分を配合または添加しており、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記動作フラックスが前記表面から流出しないように保持した前記硬化性樹脂成分からなる皮膜状のコーティング層を形成し、
前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆している保護素子。
【請求項24】
前記コーティング層は、前記動作フラックスの表面が硬化することで成膜される請求項23に記載の保護素子。
【請求項25】
前記硬化性樹脂成分は、エポキシ樹脂からなる請求項23または請求項24に記載の保護素子。
【請求項26】
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントの上面の前記通電電極と重なる部位と、前記通電電極から前記主電極の端面に達するまでの電極間隙部と重なる部位とに塗布された請求項23ないし請求項25の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項27】
前記ヒューズエレメントは、第1の可溶性金属と第2の可溶性金属の複合材からなる請求項23ないし請求項26の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項28】
前記第1の可溶性金属または前記第2の可溶性金属は、少なくとも銀、銅の何れかまたは両方を含む錫基合金である請求項27記載の保護素子。
【請求項29】
前記第1の可溶性金属および前記第2の可溶性金属の少なくとも何れかが、無鉛錫系はんだ材である請求項27または請求項28に記載の保護素子。
【請求項30】
前記第1の可溶性金属および前記第2の可溶性金属の少なくとも何れかが、Agを3~4質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag合金、Cuを0.5~0.7質量%さらに必要に応じてAgを0~1質量%含有し残部がSnからなるSn-Cu-Ag合金、Agを3~4質量%さらにCuを0.5~1質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag-Cu合金、Biを10~60質量%含有し残部がSnからなるSn-Bi合金から選択された合金材である請求項27または請求項28に記載の保護素子。
【請求項31】
前記第1の可溶性金属および前記第2の可溶性金属の少なくとも何れかが、96.5Sn-3.5Ag合金、99.25Sn-0.75Cu合金、96.5Sn-3Ag-0.5Cu合金、95.5Sn-4Ag-0.5Cu合金、42Sn-58Bi合金から選択された合金材である請求項27または請求項28に記載の保護素子。
【請求項32】
絶縁基板に発熱素子と、少なくとも一対の主電極と、前記発熱素子の通電電極とが設けられており、
前記主電極と前記通電電極の上に設けたヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、熱硬化性樹脂成分を配合または添加しており、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記動作フラックスが前記表面から流出しないように保持した前記熱硬化性樹脂成分からなる皮膜状のコーティング層を形成する保護素子。」
4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1~32に係る特許に対して、当審が令和6年6月12日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
ア 取消理由1 (新規性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきである。
イ 取消理由2 (進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり取り消されるべきである。
ウ 取消理由3 (明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり取り消されるべきである。
●新規性について
・請求項 1及び11
・引用文献
下記甲第1号証
・請求項 9
・引用文献
下記甲第6号証又は甲第7号証
●進歩性について
・請求項 1、3、5~7、9~22
・引用文献
甲第1号証:特開2001-325869号公報
甲第3号証:特開2010-140710号公報
甲第6号証:特開2009-37935号公報
甲第7号証:特開2000-348583号公報
甲第8号証:特開2010-3665号公報
甲第9号証:特開2018-156959号公報
甲第10号証:特開2014-130685号公報
甲第11号証:特開2015-79608号公報
上記各甲号証は、それぞれ、異議申立人の提出した各甲号証である。
●明確性について
・請求項 16~19、22、28~32
・理由
本件特許の請求項16は、請求項11~15の何れか一項の記載を引用するものであるところ、請求項11~14では、「第1の可溶性金属」及び「第2の可性金属」が特定されていないから、請求項16の「前記第1の可溶性金属」及び「前記第2の可溶性金属」との記載は明確でない。
したがって、本件特許16は明確でない。
請求項16を直接又は間接的に引用する本件特許17~19についても同様である。
本件特許の請求項22における「前記第1の可溶性金属」及び「前記第2の可溶性金属」との記載より前に、「第1の可溶性金属」及び「第2の可溶性金属」は記載されていないから、請求項22の「前記第1の可溶性金属」及び「前記第2の可溶性金属」との記載は明確でない。
したがって、本件特許22は明確でない。
本件特許の請求項28は、請求項23~27の何れか一項の記載を引用するものであるところ、請求項23~26では、「第1の可溶性金属」及び「第2の可溶性金属」が特定されていないから、請求項28の「前記第1の可溶性金属」及び「前記第2の可溶性金属」との記載は明確でない。
したがって、本件特許28は明確でない。
請求項28を直接又は間接的に引用する本件特許29~31についても同様である。
本件特許の請求項32の記載における「前記硬化性樹脂成分」との記載より前に、「硬化性樹脂成分」は記載されていないから、請求項32の「前記硬化性樹脂成分」との記載は明確でない。
したがって、本件特許32は明確でない。
(2)各甲号証の記載
ア 甲第1号証
甲第1号証には次の記載がある(下線は当審で付したもの。以下同様。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、異常時に発熱体が発熱し、低融点金属体が溶断する保護素子に関する。
【0002】
【従来の技術】過電流だけでなく過電圧も防止するために使用できる保護素子として、基板上に発熱体と低融点金属体を積層した保護素子が知られている(特許2790433号公報、特開平8-161990号公報等)。このタイプの保護素子では、異常時に、発熱体に通電がなされ、発熱体が発熱することにより低融点金属が溶融し、溶融した低融点金属体が、該低融点金属体が載置されている電極表面を濡らすことにより溶断する。
【0003】図1は、このような保護素子1pを用いた過電圧防止装置の一例の回路図であり、図2は、この保護素子1pの平面図(同図(a))及び断面図(同図(b))である。
【0004】この保護素子1pは基板2上に、抵抗ペーストの塗布などにより形成される発熱体3、絶縁層4、ヒューズ材料からなる低融点金属体5が積層された構造を有している。図中、6a、6bは発熱体用電極であり、このうち電極6bが低融点金属体5の中央部の電極(中間電極)7cと接続し、その接続部位を挟んで低融点金属体5が2つの部位5a、5bに区分される。7a、7bは低融点金属体用電極である。また、8は固形フラックス等からなり、低融点金属体5の表面酸化を防止するために低融点金属体5を封止している内側封止部であり、9は低融点金属体5よりも高融点又は高軟化点を有する材料からなり、低融点金属体5の溶断時に溶融物が保護素子外へ流出することを防止する外側封止部である。」
「【図2】
[図:0001422421000001.jpg]
」
イ 甲第3号証
甲第3号証には次の記載がある。
「【0001】
本発明は、合金型温度ヒューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
合金型温度ヒューズは、リード導体間に低融点合金エレメントを溶接し、該低融点合金エレメントにフラックスを塗布し、このフラックス塗布低融点合金エレメントを封止材で封止した構成である。
この封止は、低融点合金エレメントに塗布したフラックスを溶融させることのない温度で行う必要があり、常温硬化樹脂で封止することが安全である。」
「【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明する。
図1-1は本発明に係る合金型温度ヒューズを示す斜視図、図1-2は図1-1におけるイ-イ断面図である。
図1-1及び図1-2において、1,1は一対の帯状リード導体であり、ニッケル導体、銅導体等を使用できる。ニッケル導体の表面には、Sn、Au、Cu、Ag等をメッキまたはクラッドすることができ、銅導体には、全面または低融点合金片が溶接される部分以外に銅移行阻止膜として、Niをメッキまたはクラッドすることができ、更にNiの上にSn、Au、Cu、Ag等をメッキすることもできる。
2は低融点合金エレメントであり、上面は両端部に至るほど接線角を大きくした曲面とし、中間部の一部20を対向するリード導体先端々面11,11間に入り込ませ、両端部のそれぞれを各帯状リード導体1,1の端部上面に溶接してある。低融点合金エレメントの材質としては、In-Bi系、Sn-In-Bi系、これらの合金系に機械的強度の向上や温度特性の調整のためにCu、Ag、Sb、Zn等の元素を0.1~4.0質量%添加したものを使用できる。
低融点合金エレメントの対向するリード導体先端々面間への入り込み体積は低融点合金エレメント全体積の10~20%とされる。入り込み部分20の下面と帯状リード導体1,1の下面とをほぼ面一にすることもできる。
3は低融点合金エレメントに塗布したフラックスであり、ロジン、ロジンに活性剤、例えばカルボン酸を添加したものを使用できる。
【0009】
図1-1及び図1-2において、4,4は上下の絶縁フィルムであり、PET、PC、PEN等のエンジニアリングプラスチックフィルム、ガラスクロス基材エポキシ樹脂フィルム等を使用できる。一枚もので挾んで使用するものを用いることもできる。
5は嫌気性硬化樹脂と紫外線硬化樹脂との混合物であり、上下フィルム間の空間を埋めており、上側フラックス31、上側フラックス31に対する低融点合金エレメント2の露出面、下側フラックス32が混合物5に接している。嫌気性硬化樹脂とは、室温でラジカル重合可能な多価アクリル酸エステルまたはその混合物、例えばテトラエチレングリコールのジメタクリレートとこの混合物に対する酸素の作用を断った時点から遊離ラジカルが発生して多価アクリル酸エステルのラジカル重合を開始させ、重合を維持または促進させる物質とを組み合わせたものであり、一般には、有機過酸化物またはヒドロベルオキシド、例えばクミルヒドロペルオキシドとジメチルバラトルイデンとを組み合わせたものであり、アクリレートオリゴマー系樹脂を使用できる。紫外線硬化樹脂にはメタクリレートオリゴマー系樹脂を使用できる。
嫌気性硬化樹脂:紫外線硬化樹脂の体積比は5:1~5:3とすることが望ましい。」
「【図1-2】
[図:0001422421000002.jpg]
」
ウ 甲第6号証
甲第6号証には次の記載がある。
「【0001】
本発明は基板型の抵抗付き温度ヒューズに関するものである。」
「【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1の(イ)は本発明に係る基板型抵抗付き温度ヒューズを示す一部欠切平面図、図1の(ロ)は図1の(イ)におけるロ-ロ断面図、図1の(ハ)は図1の(イ)におけるハ-ハ断面図ある。
図1において、1は耐熱性・熱良伝導性の絶縁基板であり、セラミックス基板を使用できる。
2,2は一対の可溶合金エレメント接続用膜電極であり、導体ペースト(導電粒子とバインダーと溶媒との混合液)、例えば、Agペースト、Ag-Pdペースト、Cuペースト、Auペーストの印刷・焼付けにより設けることができる。3は可溶合金エレメント接続用膜電極2,2間に溶接により接続した可溶合金エレメントであり、鉛フリー合金、例えばIn-Bi-Sn系合金、In-Bi-Sn-Cu系合金、In-Bi-Sn-Ag系合金等を使用することが好ましい。
4,4、4,4は可溶合金エレメント3を挾む両側のそれぞれに設けた一対の抵抗接続用膜電極であり、前記の可溶合金エレメント接続用膜電極2と同様に導体ペースト(導電粒子とバインダーと溶媒との混合液)、例えば、Agペースト、Ag-Pdペースト、Cuペースト、Auペーストの印刷・焼付けにより設けることができる。5は抵抗接続用膜電極間4,4に設けた膜抵抗であり、抵抗ペースト(抵抗粒子、例えば酸化金属粒子とバインダーと溶媒との混合液)、例えば酸化ルテニウム粒子を抵抗粒子とするものの印刷・焼付けにより形成できる。
6は膜抵抗5上に設けたガラス保護膜であり、ガラス粒子をアルコール等の溶媒に分散させたティスパージョンの印刷・焼付けにより形成できる。
Aは可溶合金エレメント及び該エレメントの各端近傍の可溶合金エレメント接続用膜電極部分を覆ってガラス保護膜に接触させることなくフラックスを塗布するための手段、図示の例では前記基板1の片面に各ガラス保護膜6の可溶合金エレメント側縁端と可溶合金エレメント3との間に設けた堤部であり、堤部底面で各ガラス保護膜の前記縁端を覆うように、または各ガラス保護膜の縁端を堤部の外側に位置させるように、しかも堤部の長手方向両端のそれぞれを抵抗接続用膜電極4を越えさせるようにして設けてある。この堤部の高さは、フラックスに対する濡れ性に左右され(濡れ性の低いものほど薄くできる)、ペースト厚みで5μm~1000μmとされる。この堤部Aは、基板1と同一材質のロッド、例えばセラミックスロッドの接着固定、基板に一体成形、基板よりもフラックスに対する濡れ性の低い膜の形成例えばガラスペーストの印刷焼付け、硬化性樹脂例えばエポキシ樹脂の盛り付け等により設けることができる。
【0012】
7は可溶合金エレメント及び可溶合金エレメント各端近傍の可溶合金エレメント接続用膜電極部分に塗布したフラックスであり、堤部A,A間の間に塗布してあり、ガラス保護膜6とは接触していない。フラックスには、ロジン、またはロジンに活性剤として有機酸、例えばアジエピン酸等のカルボン酸、有機塩化物、有機臭化物を添加したものを使用できる。フラックスの塗布には、常温では固体のフラックスを加熱により溶融させ、これを滴下塗布して冷却固化させる方法を用いることができる。
8は絶縁基板1の片面に設けた絶縁保護層であり、例えばエポキシ樹脂溶液の滴下塗布・硬化により設けることができる。この硬化温度は、フラックスの融点未満である。
9,・・・は各膜電極に接続したリード導体である。」
「【図1】
[図:0001422421000003.jpg]
」
エ 甲第7号証
甲第7号証には次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は合金型温度ヒューズに関し、リチウムイオン二次電池等の異常昇温の未然防止に有用なものである。」
「【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1の(イ)は本発明に係る合金型温度ヒューズの一例を示す図面、図1の(ロ)は図1の(イ)におけるロ-ロ断面図である。図1において、1は耐熱性及び良熱伝導性の絶縁板、例えばセラミックス板である。2,2は絶縁板1上に設けた導電ペ-ストの焼付け電極、3,3は各電極2,2に接続したニッケル帯状リード導体、4は電極2,2間に接続した低融点可溶合金片であり、各電極2の表面を研磨したうえで各電極2とリード導体3との接続、電極2,2間への低融点可溶合金片4の接続を行っている。5は低融点可溶合金片4上に塗布したフラツクス、6はフラックス塗布低融点可溶合金片を封止した樹脂層である。この樹脂層6の表面に機械的強度の大なる補強板を固着して封止層全体の厚みを薄くすることもできる。
【0015】図2の(イ)は本発明に係る合金型温度ヒューズの別例を示す図面、図2の(ロ)は図2の(イ)におけるロ-ロ断面図である。図2において、1は耐熱性及び良熱伝導性の絶縁板、例えばセラミックス板である。2,2は絶縁板1上に設けた導電ペーストの焼付け電極、3,3は各電極2,2に接続したニッケル帯状リード導体、4は電極2,2間に接続した低融点可溶合金片であり、各電極2の表面を研磨したうえで各電極2とリード導体3との接続、電極2,2間への低融点可溶合金片4の接続を行っている。5は低融点可溶合金片上に塗布したフラツクスである。61はフラックス塗布低融点可溶合金片を封止したプラスチックフィルムであり、絶縁基板1を挾み周辺部をヒートシール等により封止してある。これらのプラスチックフィルムの使用に代え、熱収縮性のプラチチックチュ-ブを絶縁板に挿通し、これを熱収縮させることもできる。また、フラックス塗布低融点可溶合金片を樹脂塗布層で覆ったうえで、プラスチックフィルムまたは熱収縮性プラチチックチュ-ブによる最終的な封止を行うことも可能である。」
「【図1】
[図:0001422421000004.jpg]
」
「【図2】
[図:0001422421000005.jpg]
」
オ 甲第8号証
甲第8号証には次の記載がある。
「【0001】
この発明は、過大な電流または電圧が印加された場合に、その熱により可溶導体が溶断し電流を遮断する保護素子とそれを用いた二次電池装置に関する。」
「【0003】
一方、近年の携帯機器等の電子機器の小型化に伴い、この種の保護素子にも小型化・薄型化が要求され、さらに動作の安定性と高速化が求められ、その手段として絶縁基板上に低融点金属体の可溶導体を配置するとともに、これを絶縁カバー部材で封止し、可溶導体にはフラックスを塗布して成るものがある。このフラックスは、可溶導体の表面の酸化防止を図るとともに、可溶導体の加熱時に迅速に安定に溶断するように設けられている。」
「【0010】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたもので、可溶導体上のフラックスを安定に所定の位置に保持可能であり、異常時における可溶導体の的確な溶断を可能にした保護素子とそれを用いた二次電池装置を提供することを目的とする。」
「【0050】
次に、この発明の保護素子の第6実施形態について図12を基にして説明する。ここで、上述の実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この発明の実施形態の絶縁カバー部材14の内面14aは、図12に示すように、絶縁カバー部材14の突条部20等に加えて、可溶導体13の両端部に凸部34を設けたものである。これにより、さらにフラックス19の保持効果が高まる。」
「【0055】
次に、この発明の保護素子の第9実施形態について図16を基にして説明する。ここで、上述の実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この発明の実施形態の絶縁カバー部材14は、上述の実施形態と同様に絶縁カバー部材14に透孔である開口部36を形成し、その絶縁カバー部材14の表面に透明なフィルム40を貼り付けたものである(図16(a))。また、多数の透孔から成る開口部37を形成し、その絶縁カバー部材14の表面に透明なフィルム40を貼り付けたものでも良い(図16(b))。この場合も、多数の透孔の開口部37を形成した絶縁カバー部材14の内面14aに、突条部20を形成しても良く、さらに、可溶導体13の周囲に凸部34を形成しても良い(図16(b))。」
「【図16】
[図:0001422421000006.jpg]
」
カ 甲第9号証
甲第9号証には次の記載がある。
「【0001】
本発明は、電流経路を溶断することにより、電流経路上に接続された回路を保護する保護素子及びバッテリパックに関する。」
「【0118】
[可溶導体の構成]
上述したように、可溶導体13,53は、低融点金属と高融点金属とを含有してもよい。低融点金属としては、Snを主成分とするPbフリーハンダなどのハンダを用いることが好ましく、高融点金属としては、Ag、Cu又はこれらを主成分とする合金などを用いることが好ましい。このとき、可溶導体13,53は、図28(A)に示すように、内層として高融点金属層90が設けられ、外層として低融点金属層91が設けられた可溶導体を用いてもよい。この場合、可溶導体13,53は、高融点金属層90の全面が低融点金属層91によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。高融点金属層90や低融点金属層91による被覆構造は、メッキ等の公知の成膜技術を用いて形成することができる。」
「【0120】
また、可溶導体13,53は、図29に示すように、高融点金属層90と低融点金属層91とが積層された積層構造としてもよい。
【0121】
この場合、可溶導体13は、図29(A)に示すように、第1、第2の電極11,12や表面電極22、あるいは第1、第2の外部電極51,52や表面電極56に接続される下層と、下層の上に積層される上層からなる2層構造として形成され、下層となる高融点金属層90の上面に上層となる低融点金属層91を積層してもよく、反対に下層となる低融点金属層91の上面に上層となる高融点金属層90を積層してもよい。あるいは、可溶導体13,53は、図29(B)に示すように、内層と内層の上下面に積層される外層とからなる3層構造として形成してもよく、内層となる高融点金属層90の上下面に外層となる低融点金属層91を積層してもよく、反対に内層となる低融点金属層91の上下面に外層となる高融点金属層90を積層してもよい。」
「【図29】
[図:0001422421000007.jpg]
」
キ 甲第10号証
甲第10号証には次の記載がある。
「【0001】
本発明は、電気装置を保護する保護素子、より詳しくは、電気装置内で過剰の電流が流れた場合に、その電流の流れを遮断するヒューズ素子に関する。」
「【0008】
本発明のヒューズ素子は、少なくとも1つの高融点金属により形成される高融点金属層および少なくとも1つの低融点金属により形成される低融点金属層が積層され、各金属層の電流の流れ方向に沿った長さが実質的に等しいヒューズエレメントを有する。本発明のヒューズ素子は、このようなヒューズエレメントを有していればその形態は特に限定されず、例えば管ヒューズ、平型ヒューズ、薄膜ヒューズ等の形態であってもよい。
【0009】
上記高融点金属および低融点金属としては、導電性であれば特に限定されるものではなく、例えば、Ni、Cu、Ag、Au、Al、Zn、Rh、Ru、Ir、Pd、Pt、Ni-Au合金、Ni-P合金、Ni-B合金、Sn、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag-Cu-Bi合金、Sn-Ag-Cu-Bi-In合金、Sn-Ag-Bi-In合金、Sn-Ag-Cu-Sb合金、Sn-Sb合金、Sn-Cu-Ni-P-Ge合金、Sn-Cu-Ni合金、Sn-Ag-Ni-Co合金、Sn-Ag-Cu-Co-Ni合金、Su-Bi-Ag合金、Sn-Zn合金、Sn-In合金、Sn-Cu-Sb合金、Sn-Fe合金、Zn-Ni合金、Zn-Fe合金、Zn-Co合金、Zn-Co-Fe合金、Sn-Zn合金、Pd-Ni合金およびSn-Bi合金が挙げられる。」
「【0011】
また、上記の高融点金属を用いる場合、上記低融点金属としては、特に限定するものではないが、例えば、Sn、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag-Cu-Bi合金、Sn-Ag-Cu-Bi-In合金、Sn-Ag-Bi-In合金、Sn-Ag-Cu-Sb合金、Sn-Sb合金、Sn-Cu-Ni-P-Ge合金、Sn-Cu-Ni合金、Sn-Ag-Ni-Co合金、Sn-Ag-Cu-Co-Ni合金、Su-Bi-Ag合金、Sn-Zn合金およびSn-Bi合金が挙げられ、特にSn、Sn-Cu合金またはSn-Bi合金が好ましい。
【0012】
なお、「高融点金属」における「高融点」および「低融点金属」における「低融点」とは、相対的なものであることに注意されたい。すなわち、本発明のヒューズ素子のヒューズエレメントの各層を形成する金属のうち、最も融点の高い金属が「高融点金属」に該当し、最も融点の低い金属が「低融点金属」に該当する。
【0013】
上記高融点金属層および低融点金属層は、積層されて成る。この高融点金属層および低融点金属層は、それぞれ1層ずつであってもよいが、2つ以上の高融点金属層および/または2つ以上の低融点金属層を有していてもよい。また、その積層順は特に限定されない。例えば、低融点金属層の間に1つの高融点金属層が位置するように、または高融点金属層の間に1つの低融点金属層が位置するように積層されていてもよい。さらには、一方の金属層の周囲を他方の金属層が囲むように、例えば高融点金属層の周囲を低融点金属層が囲むように積層してもよい。」
ク 甲第11号証
甲第11号証には次の記載がある。
「【0001】
本発明は、可融性の低融点金属材と、この低融点金属材に可溶性の金属構造材との金属複合材からなる保護素子用ヒューズエレメント材およびそれを利用した電気・電子機器の回路保護素子に関する。」
「【0015】
図1の(a)および(b)に示す保護素子用ヒューズエレメント材10または保護素子用ヒューズエレメント材20には、低融点金属材11として183℃以上260℃以下のはんだ付け作業温度において溶融可能な可融性金属を利用でき、例えばSn-5Sb合金材(溶融温度236-240℃)、Sn材(溶融温度232℃)、Sn-0.7Cu合金材(溶融温度227℃)、Sn-3.5Ag合金材(溶融温度221℃)、Sn-3.8Ag-1.2Cu合金材(溶融温度217℃)、Sn-3.0Ag-0.5Cu合金材(溶融温度217~219℃)、Sn-2.5Ag-0.5Cu-1Bi合金材(溶融温度214~221℃)、Sn-3.5Ag-2.5Bi-2.5In合金材(溶融温度190~210℃)、Sn-3.5Ag-0.5Bi-8.0In合金材(溶融温度170~206℃)、Sn-58Bi合金材(溶融温度139℃)、In-10Sn-2Ag-0.5Bi合金材(133℃)などの金属材や合金材が好適に利用できる。そして棒状または平板状に形成した低融点金属材11の表面を、該接合作業温度において溶融しない可溶性の金属皮膜、例えばAg材、Au材、Cu材、Ni材、Au合金材、Ag合金材、Cu合金材、Ni合金材などの金属構造材12で覆った金属複合材によって本発明に係る保護素子用ヒューズエレメント材を構成する。すなわち低融点金属材11の外周面を覆って金属構造材12を設ける。上述の低融点金属材11の表面に金属構造材12を設ける手段は、特に限定されず低融点金属材11に金属構造材12を固着できればよい。例えば、金属構造材12はクラッド、電気めっき、無電解めっき、圧着、真空蒸着、溶射、ロジン等の易融性材料による接着などの手段で低融点金属材11の表面に固着できる。なお、図1の(b)に示す保護素子用ヒューズエレメント材20は、低融点金属材11の表面に設ける金属構造材12が、液相の低融点金属材11の表面張力にうち勝つに足りる皮膜強度を有する場合には、図1の(c)に示すように、低融点金属材11の片面のみに金属構造材12を皮膜形成した保護素子用ヒューズエレメント材30に変形することができる。
【0016】
図1の(d)および(e)に示す保護素子用ヒューズエレメント材40または保護素子用ヒューズエレメント材50にも低融点金属材11として183℃以上260℃以下のはんだ付け作業温度において溶融可能な可融性金属を利用でき、例えばSn-5Sb合金材(溶融温度236-240℃)、Sn材(溶融温度232℃)、Sn-0.7Cu合金材(溶融温度227℃)、Sn-3.5Ag合金材(溶融温度221℃)、Sn-3.8Ag-1.2Cu合金材(溶融温度217℃)、Sn-3.0Ag-0.5Cu合金材(溶融温度217~219℃)、Sn-2.5Ag-0.5Cu-1Bi合金材(溶融温度214~221℃)、Sn-3.5Ag-2.5Bi-2.5In合金材(溶融温度190~210℃)、Sn-3.5Ag-0.5Bi-8.0In合金材(溶融温度170~206℃)、Sn-58Bi合金材(溶融温度139℃)、In-10Sn-2Ag-0.5Bi合金材(133℃)などの金属材や合金材が好適に利用できる。この場合は、該接合作業温度において溶融しない可溶性の細線、例えばAg材、Au材、Cu材、Ni材、Au合金材、Ag合金材、Cu合金材、Ni合金材など金属構造材12の細線材の外周を、前述の低融点金属材11で覆った金属複合材、または該線材をさらに圧延したテープ状の金属複合材によって本発明に係る保護素子用ヒューズエレメント材を構成する。上述の金属構造材12の表面に低融点金属材11を設ける手段は、特に限定されず低融点金属材11に金属構造材12を固着できればよい。例えば、低融点金属材11は被覆伸線、巻回被覆などの手段で金属構造材12の線材表面に固着できる。」
「【図1】
[図:0001422421000008.jpg]
」
(3)当審の判断
ア 特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項について
ア)甲第1号証を主たる証拠として
(ア)甲第1号証に記載の発明
甲第1号証の段落【0004】及び【図2】の記載から、次の事項が認定できる。
保護素子1pを構成する基板2上には、発熱体3と、一対の低融点金属体用電極7a、7bと、中間電極7cとが積層されている。
低融点金属体用電極7a、7bと中間電極7cとの上には、低融点金属体5が積層されている。
固形フラックス8が低融点金属体5を封止している。
外側封止部9は、低融点金属体5及び固形フラックス8を封止している。
外側封止部9は、低融点金属体5の両端部において低融点金属体5に接している。
上記認定事項より、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
[甲1発明]
「基板2上に、発熱体3と、一対の低融点金属体用電極7a、7bと、中間電極7cとが積層されており、
前記低融点金属体用電極7a、7bと前記中間電極7cとの上には低融点金属体5が積層されており、
固形フラックス8が前記低融点金属体5を封止しており、
外側封止部9が前記低融点金属体5及び前記固形フラックス8を封止している保護素子1pであって、
前記外側封止部9は、低融点金属体5の両端部において低融点金属体5に接している、
保護素子1p。」
(イ)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「基板2」、及び「一対の低融点金属体用電極7a、7bと、中間電極7c」は、それぞれ本件発明1の「絶縁性の支持体」、及び「2つ以上の電極部」に相当する。
甲1発明の、一対の低融点金属体用電極7a、7bと、中間電極7cを基板2上に積層することは、基板2が一対の低融点金属体用電極7a、7bと、中間電極7cとを支持しているといえるから、甲1発明の「基板2上に、発熱体3と、一対の低融点金属体用電極7a、7bと、中間電極7cとが積層されて」いることは、本件発明1の「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部」を「有する」ことに相当する。
甲1発明の「低融点金属体5」は、本件発明1の「ヒューズエレメント」に相当する。そして、甲1発明の「前記低融点金属体用電極7a、7bと前記中間電極7cとの上には低融点金属体5が積層されて」いることは、これにより、低融点金属体用電極7a、7bと中間電極7cは、低融点金属体5により接続されていることとなるから、本件発明1の「前記電極部間を接続したヒューズエレメントと」を「有する」ことに相当する。
甲1発明の「固形フラックス8」は、本件発明1の「動作フラックス」に相当する。そして、甲1発明の「固形フラックス8が前記低融点金属体5を封止して」いることは、低融点金属体5の表面に固形フラックス8を塗布することによって低融点金属体5を覆って封止しているといえるから、本件発明1の「前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスを有し」ていることに相当する。
甲1発明の「外側封止部9」は、「低融点金属体5及び固形フラックス8を封止している」ものであり、被膜状のコーティング層といえ(【図2】(b))、本件発明1の「コーティング層」に相当する。また、甲1発明の「外側封止部9」は、低融点金属体5及び固形フラックス8を封止して、低融点金属体5の溶断時に溶融物が保護素子外へ流出することを防止するものであること(段落【0004】)から見て、低融点金属体5が溶断動作するまで、固形フラックス8が低融点金属体5の表面から流出しないよう保持する機能を有することは当業者には明らかであるといえる。そして、甲1発明の「外側封止部9」は、「低融点金属体5及び固形フラックス8を封止している」ものであり、固形フラックス8の方からみれば、固形フラックス8は、外側封止部材9により封止されている、つまり固形フラックス8は、外側封止部材9を有し、この外側封止部材9により封止されているともいえる(動作フラックスがコーティング層を有していることの態様として、本件特許明細書の段落【0015】には、「上記コーティング層は、・・・動作フラックス塗布後に動作フラックス以外のコーティング剤を動作フラックスの表面に、更に被覆して形成してもよい。」と記載されている。)。
そうしてみると、甲1発明の「外側封止部9」が、「低融点金属体5及び固形フラックス8を封止している」ことは、本件発明1の「動作フラックス」が、「コーティング層を有」していることに相当する。
したがって、甲1発明の「外側封止部9が前記低融点金属体5及び前記固形フラックス8を封止している」ことは、本件発明1の「前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有」していることに相当する。
甲1発明の「前記外側封止部9は、低融点金属体5の両端部において低融点金属体5に接している」ことは、これにより、「外側封止部9が前記低融点金属体5及び前記固形フラックス8を封止している」(「封止」とは隙間なく包むことをいう)といえる、すなわち、低融点金属体5の両端部において、外側封止部9が低融点金属体5に固着することにより固形フラックス8を被覆しているといえるから、本件発明1の「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆している」ことに相当する。
甲1発明の「保護素子1p」は、本件発明1の「保護素子」に相当する。
以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点1>
「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆している保護素子。
<相違点1>
本件発明1では、「前記コーティング層は」、「前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」とされているのに対し、甲1発明では、「外側封止部9が、前記低融点金属体5及び前記固形フラックス8を封止している」とされている点。
b 判断
(a)新規性について
相違点1は、構成上の微差または当業者が適宜なし得る設計上の一事項とはいえないから、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明1は、甲1発明とはいえない。
(b)進歩性について
甲1発明の「外側封止部9」は、低融点金属体5の溶断時に溶融物が保護素子外へ流出することを防止するものである(甲第1号証の段落【0004】、参照。)。
かかる外側封止部材9の機能からすると、仮に、外側封止部9が、低融点金属体5の表面が一部露出するように、低融点金属体を被覆しているよう構成すると、低融点金属体5の溶断時に溶融物が保護素子外へ流出してしまう虞が生じる。
したがって、甲1発明において、外側封止部9で低融点金属体5及び固形フラックス8を封止するにあたって、低融点金属体5の表面を一部露出させる動機付けはないから、「外側封止部9」を、低融点金属体5の表面が一部露出するように、低融点金属体を被覆しているよう構成することは、当業者であっても容易に想到しえたこととはいえない。
また、甲第3号証には、合金温度ヒューズ(保護素子)において、低融点合金エレメント2の表面に塗布したフラックス3を被覆し、低融点合金エレメント2が溶断動作するまで表面から流出しないように保持する混合物5が、低融点合金エレメント2の露出面に接している技術的事項(以下、「甲3技術的事項」という。)が記載されている(段落【0002】、【0008】、【0009】、及び【図1-2】)。
この甲3技術的事項の「混合物5」は、低融点合金エレメント2の表面が一部露出するように当該低融点合金エレメント2を被覆するものではないから、甲3技術的事項を甲1発明に適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。
ところで、甲第8号証には、保護素子10の可溶導体13の周囲に凸部34を形成することによってフラックス19が可溶導体13の表面の一部が露出するように塗布されている技術的事項(以下、「甲8技術的事項」という。)が記載されている(段落【0055】及び【図16】(b))。
しかしながら、甲8技術的事項は、フラックス19が可溶導体13が溶断動作するまで可溶導体13の表面から流出しないように保持するコーティング層を有するものではないから、甲1発明に甲8技術的事項を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成に至らない。
また、甲8技術的事項は、可溶導体13の表面の一部が露出されている(可溶導体13の表面に何も存在しない領域がある)構成を示唆すものであるといえる。しかしながら、甲1発明の「外側封止部9」を、低融点金属体5の表面が一部露出するように、低融点金属体を被覆しているよう構成することは、甲1発明の「外側封止部9」の機能を滅失させる虞があるといえることは上記に説示のとおりであり、甲8技術的事項によって、可溶導体13の表面の一部を露出させることの示唆があることからといって、この示唆に基づいて、甲1発明の「外側封止部9」を低融点金属体5の表面が一部露出するように、低融点金属体を被覆しているよう構成する動機付けはないといえる。
なお、甲第6、7、9~11号証にも、相違点1に係る本件発明1の構成については記載も示唆もされていない(上記(2)ウ、エ、カ~ク、参照。)。
そして、本件発明1は、相違点1に係る構成を有することにより、ヒューズエレメントの動作上必要とされる部位にフラックスを保持できるという格別の作用効果を奏する(本件明細書の段落【0016】)。
よって、本件発明1は、甲1発明又は甲1発明及び甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件発明3及び5~7について
本件発明3及び5~7は、少なくとも本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定したものである。
したがって、本件発明3と甲1発明との間には、少なくとも相違点1が存在することとなる。そして、係る相違点1が、当業者が容易に想到しうるものでないということは上記(イ)b(b)で説示のとおりである。
よって、本件発明3及び5~7は、甲1発明に基いて、又は、甲1発明及び甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)本件発明9について
a 対比
本件発明9と甲1発明とを対比する。
上記(イ)aを踏まえると、本件発明9と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点2>
「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有している保護素子。」
<相違点1-1>
本件発明9では、「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」とされているのに対し、甲1発明では、「外側封止部9が、前記低融点金属体5及び前記固形フラックス8を封止している」とされている点。
<相違点2-1>
本件発明9では、「コーティング層は、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂から」なるものとされているのに対し、甲1発明の「外側封止部9」は、
このような特定がなされていない点。
b 判断
(a)新規性について
相違点1-1及び2-1は、構成上の微差または当業者が適宜なし得る設計上の一事項とはいえないから、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明9は、甲1発明とはいえない。
(b)進歩性について
事案に鑑み相違点1-1について検討する。
相違点1-1は、上記(イ)aの相違点1と実質的に同じである。上記(イ)b(b)での説示のとおり、相違点1に係る本件発明1の構成に想到することは当業者といえども甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて、容易に想到し得たことではなから、同様の理由により、相違点1-1に係る本件発明9の構成となすことは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(オ)本件発明10について
本件発明10は、本件発明9と同じ「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」との発明特定事項を有するものである。
そして、かかる発明特定事項が、甲1発明に基いて、あるいは、甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得ないことは上記(エ)b(b)のとおりである。
したがって、本件発明10は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(カ)本件発明11について
本件発明11は、本件発明1と同じ「前記コーティング層は、・・・前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」との発明特定事項を有するものである。
そして、かかる発明特定事項が、実質的な相違点であること、及び、甲1発明に基いて、あるいは、甲1発明及び甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得ないことは上記(イ)b(a)(b)のとおりである。
したがって、本件発明10は、甲1発明とはいえないし、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(キ)本件発明12~19について
本件発明12~19は、本件発明1と同じ「前記コーティング層は、・・・前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」との発明特定事項を有するものである。
そして、かかる発明特定事項が、甲1発明に基いて、あるいは、甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得ないことは上記(イ)b(b)のとおりである。
したがって、本件発明12~19は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ク)本件発明20~22について
本件発明20~22は、「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」との発明特定事項を有するものである。
そして、かかる発明特定事項が、甲1発明に基いて、あるいは、甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得ないことは上記(イ)b(b)及び(エ)b(b)のとおりである。
したがって、本件発明20~22は、甲1発明又は甲1発明及び甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ)甲第6号証を主たる証拠として
(ア)甲第6号証に記載の発明
甲第6号証の段落【0011】、【0012】及び【図1】の記載から、次の事項が認定できる。
基板型抵抗付温度ヒューズを構成する絶縁基板1上には、一対の可溶合金エレメント接続用膜電極2,2が設けられている。
可溶合金エレメント接続用膜電極2,2間には可溶合金エレメント3が溶接により接続されている。
可溶合金エレメント3の表面にはフラックス7が塗布されている。
フラックス7は、絶縁基板1の片面に設けた絶縁保護層8で覆われている。
絶縁保護層8は、エポキシ樹脂溶液の滴下塗布・硬化により設けられている。
上記認定事項より、甲第6号証には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されているといえる。
[甲6発明]
「絶縁基板1上に設けられた、一対の可溶合金エレメント接続用膜電極2,2と、
前記可溶合金エレメント接続用膜電極2,2間を接続した可溶合金エレメント3と、
前記可溶合金エレメント3の表面に塗布されたフラックス7と、を有する基板型抵抗付温度ヒューズであって、
前記フラックス7は、絶縁基板1の片面に設けられた絶縁保護層8で覆われており、
前記絶縁保護層8は、エポキシ樹脂溶液の滴下塗布・硬化により設けられている、
基板型抵抗付温度ヒューズ。」
(イ)本件発明9について
a 対比
本件発明9と甲6発明とを対比する。
甲6発明の「絶縁基板1」、「可溶合金エレメント接続用膜電極2,2」、「可溶合金エレメント3」、及び「フラックス7」は、それぞれ本件発明9の「絶縁性の支持体」、「電極部」、「ヒューズエレメント」、及び「動作フラックス」に相当する。
甲6発明の「一対の可溶合金エレメント接続用膜電極2,2」は、「絶縁基板1上に設け」られることにより、絶縁基板1上に支持されているといえるから、甲6発明の「絶縁基板1状に設けられた、一対の可溶合金エレメント接続用膜電極2,2」は、本件発明9の「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部」に相当する。
甲6発明の「前記可溶合金エレメント接続用膜電極2,2間を接続した可溶合金エレメント3」は、本件発明9の「前記電極部間を接続したヒューズエレメント」に相当する。
甲6発明の「前記可溶合金エレメント3の表面に塗布されたフラックス7」は、本件発明9の「前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックス」に相当する。
甲6発明の「絶縁保護層8」は、「フラックス7」を覆うものであり、被膜状のコーティング層といえ、本件発明9の「コーティング層」に相当する。また、甲6発明の「絶縁保護層8」は、「前記可溶合金エレメント3の表面に塗布されたフラックス7」を「エポキシ樹脂溶液の滴下塗布・硬化により設」ることにより、覆うものであるから、可溶合金エレメント3が溶断動作するまで、フラックス7が可溶合金エレメント3の表面から流出しないよう保持する機能を有することは当業者には明らかであるといえる。
したがって、甲6発明の「前記フラックス7は、絶縁基板1の片面に設けられた絶縁保護層8で覆われており、前記絶縁保護層8は、エポキシ樹脂溶液の滴下塗布・硬化により設けられている」ことは、本件発明1の「前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有」していることに相当する。
甲6発明の「エポキシ樹脂」は、本件発明9の「熱硬化性樹脂」に相当するから、甲6発明の「前記絶縁保護層8は、エポキシ樹脂溶液の滴下塗布・硬化により設けられている」ことは、本件発明9の「前記コーティング層は、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなる」ことに相当する。
甲6発明の「基板型抵抗付温度ヒューズ」は、本件発明9の「保護素子」に相当する。
以上のとおりであるから、本件発明9と甲6発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点3>
「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記コーティング層は、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなる保護素子。」
<相違点1-2>
本件発明9では、「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」とされているのに対し、甲6発明では、「前記絶縁保護層8は、エポキシ樹脂溶液の滴下塗布・硬化により設けられている」とされている点。
b 判断
(a)新規性について
相違点1-2は、構成上の微差または当業者が適宜なし得る設計上の一事項とはいえないから、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明9は、甲6発明とはいえない。
(b)進歩性について
甲6発明の「絶縁保護層8」は、基板1の片面の全面に設けられており(甲第6号証の段落【0002】、【0012】、及び【図1】~【図3】、参照。)、基板型抵抗付温度フューズを絶縁保護するものといえるから、当該絶縁保護層8を基板型抵抗付温度フューズ(の中央)に設けられた可溶合金エレメント3の表面の一部を露出させるような形態とすれば、基板型抵抗付温度フューズの絶縁性が損なわれてしまうこととなる。
したがって、甲6発明の「絶縁保護層8」を、可溶合金エレメント3の表面が一部露出するように、可溶合金エレメント3を被覆しているよう構成することは、当業者であっても容易に想到しえたこととはいえない。
ところで、甲第8号証には、保護素子10の可溶導体13の周囲に凸部34を形成することによってフラックス19が可溶導体13の表面の一部が露出するように塗布されている技術的事項(以下、「甲8技術的事項」という。)が記載されている(段落【0055】及び【図16】(b))。
しかしながら、甲8技術的事項は、フラックス19が可溶導体13が溶断動作するまで可溶導体13の表面から流出しないように保持するコーティング層を有するものではないから、甲6発明に甲8技術的事項を適用しても、相違点1-2に係る本件発明1の構成に至らない。
また、甲8技術的事項は、可溶導体13の表面の一部が露出されている(可溶導体13の表面には何も存在しない)構成を示唆すものであるといえる。しかしながら、甲6発明の「絶縁保護層8」を、可溶合金エレメント3の表面が一部露出するように、可溶合金エレメント3を被覆しているよう構成することは、甲6発明の「絶縁保護層8」の基板型抵抗付温度ヒューズを絶縁保護する機能を滅失させる虞があるといえることは上記に説示のとおりであり、甲8技術的事項によって、可溶導体13の表面の一部を露出させることの示唆があることからといって、この示唆に基づいて、甲6発明の「絶縁保護層8」を可溶合金エレメント3の表面が一部露出するように、可溶合金エレメント3を被覆しているよう構成する動機付けはないといえる。
なお、甲第3、7、9~11号証にも、相違点1に係る本件発明1の構成については記載も示唆もされていない。
そして、本件発明9は、相違点1-2に係る構成を有することにより、ヒューズエレメントの動作上必要とされる部位にフラックスを保持できるという格別の作用効果を奏する(本件明細書の段落【0016】)。
よって、本件発明9は、甲6発明に基づいて、又は、甲6発明及び甲第3、6~11号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ)甲第7号証を主たる証拠として
(ア)甲第7号証に記載の発明
甲第7号証の段落【0014】、【0026】及び【図1】の記載から、次の事項が認定できる。
合金型温度ヒューズを構成する絶縁板1上には、一対の電極2,2が設けられている。
電極2,2間には低融点可溶合金片4が接続されている。
低融点可溶合金片4上にはフラックス5が塗布されている。
樹脂層6が、フラックス5塗布された低融点可溶合金片4を封止している。
樹脂層6は、ビスフェノール系エポキシ樹脂を塗布することにより設けられている。
上記認定事項より、甲第7号証には、次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されているといえる。
[甲7発明]
「絶縁板1上に設けられた、一対の電極2,2と、
前記電極2,2間を接続した低融点可溶金属片4と、
前記低融点可溶金属片4上に塗布されたフラックス5と、を有する合金型温度ヒューズであって、
前記フラックス5が塗布された低融点可溶金属片4は、樹脂層6で封止されており、
前記樹脂層6は、ビスフェノール系エポキシ樹脂を塗布することにより設けられている、
合金型温度ヒューズ。」
(イ)本件発明9について
a 対比
本件発明9と甲7発明とを対比する。
甲7発明の「絶縁板1」、「電極2,2」、「低融点可溶金属片4」、及び「フラックス5」は、それぞれ本件発明9の「絶縁性の支持体」、「電極部」、「ヒューズエレメント」、及び「動作フラックス」に相当する。
甲7発明の「一対の電極2,2」は、「絶縁板1上に設け」られることにより、絶縁板1上に支持されているといえるから、甲7発明の「絶縁板1上に設けられた、一対の電極2,2」は、本件発明9の「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部」に相当する。
甲7発明の「前記電極2,2間を接続した低融点可溶金属片4」は、本件発明9の「前記電極部間を接続したヒューズエレメント」に相当する。
甲7発明の「前記低融点可溶金属片4上に塗布されたフラックス5」は、本件発明9の「前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックス」に相当する。
甲7発明の「樹脂層6」は、「前記フラックス5が塗布された低融点可溶金属片4」を「封止」するものであり、被膜状のコーティング層といえ、本件発明9の「コーティング層」に相当する。また、甲7発明の「樹脂層6」は、「ビスフェノール系エポキシ樹脂を塗布することにより設け」ることにより「前記フラックス5が塗布された低融点可溶金属片4」を「封止」するものであるから、低融点可溶金属片4が溶断動作するまで、フラックス5が低融点可溶金属片4上から流出しないよう保持する機能を有することは当業者には明らかであるといえる。
したがって、甲7発明の「前記フラックス5が塗布された低融点可溶金属片4は、樹脂層6で封止されており、前記樹脂層6は、ビスフェノール系エポキシ樹脂を塗布することにより設けられている」ことは、本件発明1の「前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有」していることに相当する。
甲7発明の「ビスフェノール系エポキシ樹脂」は、本件発明9の「熱硬化性樹脂」に相当するから、甲7発明の「前記樹脂層6は、ビスフェノール系エポキシ樹脂を塗布することにより設けられている」ことは、本件発明9の「前記コーティング層は、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなる」ことに相当する。
甲7発明の「合金型温度ヒューズ」は、本件発明9の「保護素子」に相当する。
以上のとおりであるから、本件発明9と甲7発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点3’>
「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記コーティング層は、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなる保護素子。」
<相違点1-3>
本件発明9では、「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」とされているのに対し、甲7明では、「前記樹脂層6は、ビスフェノール系エポキシ樹脂を塗布することにより設けられている」とされている点。
b 判断
(a)新規性について
相違点1-3は構成上の微差または当業者が適宜なし得る設計上の一事項とはいえないから、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明9は、甲7発明とはいえない。
(b)進歩性について
甲7発明の「樹脂層6」は、フラックス塗布低融点可溶合金片4を封止するものであるから(甲第7号証の段落【0014】、参照。)、当該樹脂層6を低融点可溶合金片4の表面の一部を露出させるような形態とすれば、低融点可溶合金片4を封止するという機能が損なわれてしまうこととなる。
したがって、甲7発明の「樹脂層6」を、低融点可溶金属片4の表面が一部露出するように、低融点可溶金属片4を被覆しているよう構成することは、当業者であっても容易に想到しえたこととはいえない。
ところで、甲第8号証には、保護素子10の可溶導体13の周囲に凸部34を形成することによってフラックス19が可溶導体13の表面の一部が露出するように塗布されている技術的事項(以下、「甲8技術的事項」という。)が記載されている(段落【0055】及び【図16】(b))。
しかしながら、甲8技術的事項は、フラックス19が可溶導体13が溶断動作するまで可溶導体13の表面から流出しないように保持するコーティング層を有するものではないから、甲6発明に甲8技術的事項を適用しても、相違点1-3に係る本件発明1の構成に至らない。
また、甲8技術的事項は、可溶導体13の表面の一部が露出されている(可溶導体13の表面には何も存在しない)構成を示唆すものであるといえる。しかしながら、甲7発明の「樹脂層6」を、低融点可溶金属片4の表面が一部露出するように、低融点可溶金属片4を被覆しているよう構成することは、甲7発明の「樹脂層6」の低融点可溶金属片4を封止するという機能を滅失させる虞があるといえることは上記に説示のとおりであり、甲8技術的事項によって、可溶導体13の表面の一部を露出させることの示唆があることからといって、この示唆に基づいて、甲7発明の「樹脂層6」を低融点可溶金属片4の表面が一部露出するように、低融点可溶金属片4を被覆しているよう構成する動機付けはないといえる。
なお、甲第3、6、9~11号証にも、相違点1-3に係る本件発明1の構成については記載も示唆もされていない。
そして、本件発明9は、相違点1-3に係る構成を有することにより、ヒューズエレメントの動作上必要とされる部位にフラックスを保持できるという格別の作用効果を奏する(本件明細書の段落【0016】)。
よって、本件発明9は、甲7発明に基づいて、又は、甲7発明及び甲第3、6、8~11号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 特許法第36条第6項第2号について
(ア)請求項16~19は直接的又は間接的に必ず請求項15を引用しているから、請求項16~19に記載の「前記第1の可溶性金属」及び「前記第2の可溶性金属」が指し示す対象は明らかであり、請求項16~19に係る発明は明確である。
(イ)請求項22に記載の「前記第1の可溶性金属」及び「前記第2の可溶性金属」は、それより前に記載されている「第1の可溶性金属」及び「第2の可溶性金属」のことであることは明らかであるから、請求項22に係る発明は明確である。
(ウ)請求項28~31は直接的又は間接的に必ず請求項27を引用しているから、請求項28~31に記載の「前記第1の可溶性金属」及び「前記第2の可溶性金属」が指し示す対象は明らかであり、請求項28~31に係る発明は明確である。
(エ)請求項32の「前記熱硬化性樹脂成分」は、それより前に記載されている「熱硬化性樹脂成分」のことであることは明らかであるから、請求項32に係る発明は明確である。
ウ 特許異議申立人の意見について
(ア)訂正要件について
特許異議申立人は、意見書において、本件訂正請求の訂正事項1について、「訂正事項1では、コーティング層が、ヒューズエレメントの表面が一部露出するようにヒューズエレメントを被覆していると規定するのみで、ヒューズエレメントのどの部位が露出されているかが規定されておらず、例えばヒューズエレメントの通電電極34,44や電極間隙部と重なる部位が露出されている構成も含む。しかし、このような構成は特許明細書には記載されていない。したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内おいてしたものではない。」(第2頁第9行~第16行)と主張する。
しかしながら、訂正事項1の「前記コーティング層は」、「前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」という事項は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の事項であるといえることは、上記2(3)ア(イ)で説示のとおりであり、特許異議申立人の主張は採用できない。
また、特許異議申立人は、意見書において、本件訂正請求の訂正事項2について、「訂正後の請求項2には、コーティング層は、動作フラックス自体が自らその表面を皮膜化して形成する点が規定されているが、動作フラックス自体がコーティング層を形成する構成は特許明細書に記載されていない、したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内おいてしたものではない。」(第5頁第24行~第29行)と主張する。
しかしながら、本件特許の明細書の段落【0012】の「本発明に係るコーティング層の形成は、・・・(中略)・・・動作フラックスに前記樹脂成分を配合または添加して、動作フラックス自体が、自らその表面を皮膜化できるようにすることもできる。」と記載からすれば、動作フラックスに樹脂成分を配合または添加したものを動作フラックス自体とし、このような樹脂成分を配合または添加した動作フラックス自体が自らその表面を皮膜化することによりコーティング層を形成する構成が、願書に添付した明細書等には記載されているといえる。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(イ)進歩性について
特許異議申立人は、意見書において、「コーティング層をヒューズエレメントの表面が一部露出するように部分的に塗布することは、当業者が必要に応じて適宜定めうる事項である。したがって、訂正後の本件発明1は、訂正前の本件発明7と同様に、甲1発明及び甲8技術的事項1に基づいて、または、甲1発明、甲3技術的事項1、及び、甲8技術的事項1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」(第3頁第13行~第18行)と主張する。
しかしながら、甲1発明の「外側封止部9」を、低融点金属体5の表面が一部露出するように、低融点金属体を被覆しているよう構成することが、当業者であっても容易に想到しえたこととはいえないこと、甲8技術的事項を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成に至らないこと、及び、甲1発明の「外側封止部9」を低融点金属体5の表面が一部露出するように、低融点金属体を被覆しているよう構成する動機付けがないことは、上記4(3)ア ア)(イ)b(b)で説示のとおりである。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
また、特許異議申立人は、意見書において、「甲第6号証には、フラックス7を可溶合金エレメント及び可溶合金エレメント各端近傍の可溶合金エレメント接続用膜電極部分に塗布すること、フラックス7の塗布には、常温では固体のフラックスを加熱により溶融させ、これを滴下塗布して冷却固化させる方法を用いることができることが記載されている(甲第6号証【0012】)。このフラックス7は、溶融状態から冷却固化(すなわち自然硬化)されることで、フラックス7自体が自らその表面を被膜化しているといえる。・・・(中略)・・・したがって、訂正後の請求項2に係る発明は、甲1発明及び甲第6号証に記載されたフラックス7に関する技術的事項に基づいて、または、甲1発明、甲3技術的事項1、及び、甲第6号証に記載されたフラックス7に関する技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」(第6頁第10行~第27行)と主張し、また、「請求項8は、文理解釈上、動作フラックスに被覆ないし添加された熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂の各樹脂成分ではなく、動作フラックス自体がその表面を被膜化することを規定していると解されるが、この点は、甲第6号証(特開2009-37935号公報)に記載されている。・・・(中略)・・・したがって、請求項8に係る発明は、甲1発明及び甲第6号証に記載されたフラックス7に関する技術的事項に基づいて、または、甲1発明、甲3技術的事項1、及び、甲第6号証に記載されたフラックス7に関する技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」(第9頁第21行~第10頁第11行)とも主張する。
しかしながら、甲第6号証の段落【0012】の「フラックス7の塗布には、常温では固体のフラックスを加熱により溶融させ、これを滴下塗布して冷却固化させる方法を用いることができる。」との記載からすれば、甲第6号証のフラックス7は、常温では内部まで固化された固体であり、表面が皮膜化されたものとはいえず、訂正後の請求項2及び8の「コーティング層は」、「表面を被膜化して形成した」ものに相当するものではない。また、甲第6号証の上記記載からすれば、甲第6号証のフラックス7は、可溶合金エレメント3が溶融する温度ではフラックス7も溶融し可溶合金エレメント3の表面から流出できる状態であると解されるから、訂正後の請求項2及び8の「前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないよう保持する皮膜状のコーティング層を有し」に相当するものでもない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(ウ)サポート要件及び実施可能要件について
特許異議申立人は、意見書において、「訂正事項1では、コーティング層が、ヒューズエレメントの表面が一部露出するようにヒューズエレメントを被覆していると規定するのみで、ヒューズエレメントのどの部位が露出されているかが規定されておらず、例えばヒューズエレメントの通電電極34, 44や電極間隙部と重なる部位が露出されている構成も含む。しかし、このような構成は特許明細書には記載されていない。動作フラックスは、ヒューズエレメントの正常な溶断を保障するため、ヒューズ合金の表面に塗布されるものである(本件特許明細書【0004】)。そして、動作フラックスの塗布部位を変形する例として、動作フラックス16,26をヒューズエレメント35,45の上面の通電電極34,44と重なる部位と、通電電極34,44から主電極33,43の端面に達するまでの電極間隙部(径間部)と重なる部位とに塗布する例が記載されている(【0023】、【0024】、図3、図4)。以上によれば、ヒューズエレメントの露出部位が特定されていない訂正後の本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。したがって、訂正後の請求項1はサポート要件を満たさない。」(第3頁第20行~第4頁第10行)と主張する。
しかしながら、ヒューズエレメントの一部のいずれの部位かがコーティング層で被覆されていれば、コーティング層が一切設けられていないものに比べて、動作フラックスのヒューズエレメントの表面からの流出を少なからず防止する機能を発揮でききることは当業者であれば理解できるといえ、ヒューズエレメントの露出部位を特定しなくとも、ヒューズエレメントが溶断動作するまで、動作フラックスのヒューズエレメントの表面からの流出を防ぐという機能を発揮できるといえる。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
また、特許異議申立人は、意見書において、「請求項23は、動作フラックスは、硬化性樹脂成分を配合または添加していること、硬化性樹脂成分からなる皮膜状のコーティング層を形成していること、コーティング層はヒューズエレメントに固着していることが記載されている。「硬化性樹脂成分」は、動作フラックスに配合または添加されることから、未硬化の状態であると解される。そして、請求項23では、この「硬化性樹脂成分」からなるコーティング層が形成され、また、この「硬化性樹脂成分」からなるコーティング層がヒューズエレメントに固着する。本件特許発明の課題は、保護素子が過酷な熱環境下に曝されてもヒューズ合金表面に塗布したフラックスがヒューズ合金表面から流出しないようにした電気・電子機器の保護素子を提供することにある(本件特許明細書【0010】)。しかし、「硬化性樹脂成分」からなるコーティング層は、フラックスが流出しないようにすることはできない。また、動作フラックスに配合または添加された硬化性樹脂成分が、どのようにフラックスの内部ではなく表面に皮膜状のコーティング層を形成し、さらにヒューズエレメントに固着するのか、特許明細書には、具体的な硬化性樹脂の材料や硬化性樹脂の配合比、動作フラックスにおける硬化性樹脂成分の相溶性、硬化条件等を挙げて実証されているわけでもなく、出願時の技術常識を考慮しても当業者において理解できない。したがって、請求項23に係る発明は、課題解決手段が反映されておらず、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)を満たしていない。」(第16頁第5行~第29行)とも主張する。
しかしながら、請求項23の「前記硬化性樹脂成分からなる皮膜状のコーティング層」は、皮膜状とされているから、硬化性樹脂成分が硬化し皮膜状になった状態であり、このような皮膜状のコーティング層が、保護素子が過酷な熱環境下に曝されてもヒューズ合金表面に塗布したフラックスがヒューズ合金表面から流出しないように作用し、本件発明の課題が解決できることは当業者には明らかである(なお、この点に関しては、後記5(3)も参照。)。
なお、本件特許明細書の段落【0012】には「本発明に係るコーティング層の形成は、自然硬化、熱、紫外線照射、電子線照射のほか、湿度、アルコールやアンモニアまたはアミンなどの反応性蒸気に曝すなどして成膜してもよい。」と皮膜状のコーティング層の形成手段が記載されており、具体的な硬化性樹脂の材料や硬化性樹脂の配合比、動作フラックスにおける硬化性樹脂成分の相溶性、硬化条件等を挙げていなくても、当業者における技術常識を踏まえれば、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をするまでもなく皮膜状のコーティング層をフラックスの表面に形成する方法が当業者に理解できる程度に記載されているといえる。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)甲第1号証を主たる証拠とした特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲第1号証を主たる証拠として、概略次のように主張する。
訂正前の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
訂正前の請求項3に係る発明、請求項8に係る発明、請求項10に係る発明、請求項20に係る発明、請求項23に係る発明、請求項24に係る発明、及び請求項32に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。
請求項8、請求項23、請求項24、及び請求項32に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項25に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項26に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証または甲第5号証に記載された技術的事項、及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項27に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証または甲第5号証に記載された技術的事項、及び甲第9号証または甲第10号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項28及び請求項30に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証または甲第5号証に記載された技術的事項、及び甲第10号証または甲第11号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項29に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証または甲第5号証に記載された技術的事項、及び甲第9号証、甲第10号証または甲第11号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項31に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証または甲第5号証に記載された技術的事項、及び甲第11号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項3、請求項8、請求項10、請求項20、及び請求項23~請求項32に係る特許は取り消されるべきである。
以下、上記主張について検討する。
ア 請求項2に係る発明について
(ア)対比
訂正後の請求項2に係る発明(本件発明2)と甲1発明とを対比する。
上記4(3)ア ア)(イ)aを踏まえると、本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点4>
「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、
前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆している保護素子。」
<相違点3>
本件発明2は、「前記コーティング層は、前記動作フラックス自体が自らその表面を皮膜化して形成した」とされているのに対し、甲1発明の「外側封止部材9」は、このような特定がされていない点。
(イ)判断
特許異議申立人が提出した甲第4号証(特開2020-49493号公報)には、次の記載がある(下線は当審で付したもの。)。
「【請求項1】
リフローはんだ付けまたは熱圧着により、融点が130℃以上240℃以下のはんだ合金からなるはんだバンプを有する電子部品を電子基板に接合させる場合に用いる熱硬化性フラックス組成物であって、
(A)オキセタン化合物と、(B)温度20℃において液状のカルボキシル基含有化合物と、を含有し、
前記(A)成分が、(A1)1分子中に2つのオキセタン環を有する二官能オキセタン化合物を含有する
ことを特徴とする熱硬化性フラックス組成物。」
「【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の熱硬化性フラックス組成物において、
(C)エポキシ樹脂を、さらに含有する
ことを特徴とする熱硬化性フラックス組成物。」
「【0027】
本実施形態の熱硬化性フラックス組成物は、必要に応じて、前記(A)成分および(B)成分の他に、(C)エポキシ樹脂および(D)硬化剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有してもよい。
【0028】
[(C)成分]
本実施形態に用いる(C)エポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を適宜用いることができる。この(C)成分により、硬化物のガラス転移点を高めたり、耐衝撃性を高めたりすることができる。また、この(C)成分により、熱硬化性フラックス組成物の硬化温度を調整できる。
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型などのエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらのエポキシ樹脂は、硬化物の耐衝撃性の観点から、ゴム変性されたものであることが好ましい。さらに、これらのエポキシ樹脂は、常温で液状のものを含有することが好ましく、常温で固形のものを用いる場合には、常温で液状のものと併用することが好ましい。
また、(C)成分は、硬化物のガラス転移点を高め、耐衝撃性を高めるという観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。」
これらの記載からすれば、甲第4号証には、「リフローはんだ付けまたは熱圧着により、はんだ合金からなるはんだバンプを有する電子部品を電子基板に接合させる場合に用いる熱硬化性フラックス組成物であって、当該熱硬化性フラックスがエポキシ樹脂を含有するという技術的事項」(以下、「甲4技術的事項」という。)が記載されている。
また、特許異議申立人の提出した甲第5号証(特開2020-40120号公報)には、次の記載がある(下線は当審で付したもの。)。
「【請求項1】
ジェットディスペンサーを用いてはんだ組成物を塗布し、レーザー光を用いてはんだ付けを行う際に用いるはんだ組成物であって、
前記はんだ組成物は、(A)樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤および(D)チクソ剤を含有するフラックス組成物と、(E)はんだ粉末とを含有し、
前記(A)成分は、(A1)ロジン系樹脂および(A2)アクリル系樹脂を含有し、
前記(C)成分は、(C1)炭素数6~14のジカルボン酸と炭素数1~3のアルコールとのエステル化合物、および、(C2)炭素数2~10のジオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する
ことを特徴とするジェットディスペンサー用はんだ組成物。」
「【0006】
そこで、本発明は、ジェットディスペンサーにより塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、チップ立ちおよびフラックス飛散の発生を抑制でき、しかも、フラックス洗浄の必要がないレーザーはんだ付け用はんだ組成物、並びに、それを用いた電子基板の製造方法を提供することを目的とする。」
「【0014】
前記フラックス組成物の配合量は、はんだ組成物100質量%に対して、10質量%以上25質量%以下であることが好ましく、12質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、12質量%以上18質量%以下であることが特に好ましい。フラックスの配合量が10質量%未満の場合(はんだ粉末の配合量が90質量%を超える場合)には、ジェットディスペンサーでの塗布性が不十分となる傾向にあり、他方、フラックスの配合量が25質量%を超える場合(はんだ粉末の配合量が75質量%未満の場合)には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にある。
【0015】
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)樹脂は、(A1)ロジン系樹脂および(A2)アクリル系樹脂を含有する。このように(A1)成分および(A2)成分を併用することにより、電子基板上に残るフラックス残さに、クラックなどが生じることを抑制できる。そして、フラックス残さに水分などが入り込むことを抑制できるので、フラックス残さの絶縁信頼性を向上できる。」
「【0050】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のはんだ組成物を用いた場合(実施例1~7)には、ジェットディスペンサーにより塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、チップ立ちおよびフラックス飛散の発生を抑制できることが確認された。また、本発明のはんだ組成物を用いた場合には、絶縁信頼性試験後のフラックス残さにクラックもなく、絶縁信頼性が高いことから、フラックス洗浄の必要がないことが確認された。」
これらの記載からすれば、甲第5号証には、「ジェットディスペンサーを用いてはんだ組成物を塗布し、レーザー光を用いてはんだ付けを行う際に用いるはんだ組成物であって、当該はんだ組成物が、アクリル系樹脂を含んだフラックス組成物とはんだ粉末を含有するという技術的事項」(以下、「甲5技術的事項」という。)が記載されている。
ここで、甲4技術的事項の熱硬化性フラックス組成物は、エポキシ樹脂を含有することにより、フラックス組成物自体が全体的に硬化するものであり、フラックス組成物の表面を皮膜化するものではないから、甲1発明に甲4技術的事項を適用しても相違点3に係る本件発明2の構成に至ることはできない。
また、甲5術的事項は、所定の成分(アクリル系樹脂を含んだ樹脂とはんだ粉末)を含有するはんだ組成物とすることにより、ジェットディスペンサーにより塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、チップ立ちおよびフラックス飛散の発生を抑制でき、しかも、フラックス洗浄の必要がないレーザーはんだ付け用はんだ組成物を提供できるものとしたのであり(段落【0006】、及び【0050】)、このようなはんだ組成物から、フラックス組成物だけを抽出し、甲1発明に適用する動機付けはない。また、甲5技術的事項のフラックス組成物は、はんだ粉末を含んだフラックス組成物自体が全体的に硬化するものであり、クラック組成物の表面を皮膜化するものではないから、仮に、甲1発明に甲5技術的事項を適用しても相違点3に係る本件発明2の構成に至ることはできない。
よって、本件発明2は、甲1発明及び甲第4、5証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 請求項3に係る発明について
訂正後の請求項3に係る発明(本件発明3)は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定したものである。
本件発明1と甲1発明との間には、上記4(3)ア ア)(イ)aで示した相違点1が存在し、この相違点1は、上記4(3)ア ア)(イ)bで説示のとおり、実質的な相違点であるといえるから、本件発明3は、甲1発明とはいえない。
ウ 請求項8に係る発明について
(ア)対比
本件発明8と甲1発明とを対比する(なお、請求項8は、本件訂正請求によっては訂正されていない)。
上記4(3)ア ア)(イ)aを踏まえると、本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点4>
「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有している
保護素子。」
<相違点3-1>
本件発明3は、「前記コーティング層は、前記動作フラックス自体が自らその表面を皮膜化して形成した」とされているのに対し、甲1発明の「外側封止部材9」は、このような特定がされていない点。
(イ)判断
a 相違点3-1は、構成上の微差または当業者が適宜なし得る設計上の一事項とはいえないから、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明3は、甲1発明とはいえない。
b 相違点3-1は、上記ア(ア)の相違点3と実質的に同じである。
したがって、上記ア(イ)と同様の理由により、甲1発明において、相違点3-1に係る本件発明1の構成となすことは、甲第4号証及び甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到しえたこととはいえない。
よって、本件発明3は、甲1発明及び甲第4、5証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 請求項10に係る発明について
(ア)対比
訂正後の請求項10に係る発明(本件発明10)と甲1発明とを対比する。
上記4(3)ア ア)(イ)aを踏まえると、本件発明10と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点6>
「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有している
保護素子。」
<相違点4>
本件発明10は、「前記動作フラックスは、少なくとも前記電極部間を接続する前記ヒューズエレメントの接続部位に部分的に塗布されて」いるとされているのに対し、甲1発明は、「固形フラックス8が前記低融点金属体5を封止して」いるとされている点。
<相違点1-4>
本件発明10では、「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」とされているのに対し、甲1発明では、「外側封止部9が、前記低融点金属体5及び前記固形フラックス8を封止している」とされている点。
(イ)判断
相違点1-4は、相違点1-1と実質的に同じであり、実質的な相違点であるといえるから、本件発明10は甲1発明とはいえない。
オ 請求項20に係る発明について
(ア)対比
訂正後の請求項20に係る発明(本件発明20)と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「基板2」、「発熱体3」、「一対の低融点金属体用電極7a、7b」、及び「中間電極7c」は、それぞれ本件発明20の「絶縁基板」、「発熱素子」、「一対の主電極」、及び「発熱素子の通電電極」に相当する。
そうすると、甲1発明の「基板2上に、発熱体3と、一対の低融点金属体用電極7a、7bと、中間電極7cとが積層されて」いることは、本件発明20の「絶縁基板に、発熱素子と、少なくとも一対の主電極と、前記発熱素子の通電電極とが設けられて」いることに相当する。
したがって、上記4(3)ア ア)(イ)aを踏まえると、本件発明20と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点7>
「絶縁基板に、発熱素子と、少なくとも一対の主電極と、前記発熱素子の通電電極とが設けられており、
前記主電極と前記通電電極の上に設けたヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有している保護素子。」
<相違点2-2>
本件発明20では、「コーティング層は、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂から」なるものとされているのに対し、甲1発明の「外側封止部9」は、このような特定がなされていない点。
<相違点1-5>
本件発明20では、「前記コーティング層は前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」とされているのに対し、甲1発明では、「外側封止部9が、前記低融点金属体5及び前記固形フラックス8を封止している」とされている点。
(イ)判断
a 相違点1-5は、相違点1-1と実質的に同じであり、実質的な相違点であるといえるから、本件発明10は甲1発明とはいえない。
b また、上記4(3)ア ア)(エ)b(b)及び4(3)ア ア)(イ)b(b)を踏まえると、甲1発明において相違点1-5に係る構成に想到することは当業者といえども容易に想到し得たこととはいえない。
また、甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証にも相違点1-5に係る構成は記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明20は、甲1発明又は甲1発明、甲第4号証または甲第5号証及び甲第6号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 請求項23に係る発明について
(ア)対比
本件発明23と甲1発明とを対比する(なお、請求項23は、本件訂正請求によっては訂正されていない)。
甲1発明の「基板2」、「発熱体3」、「一対の低融点金属体用電極7a、7b」、及び「中間電極7c」は、それぞれ本件発明23の「絶縁基板」、「発熱素子」、「一対の主電極」、及び「発熱素子の通電電極」に相当する。
そうすると、甲1発明の「基板2上に、発熱体3と、一対の低融点金属体用電極7a、7bと、中間電極7cとが積層されて」いることは、本件発明23の「絶縁基板に、発熱素子と、少なくとも一対の主電極と、前記発熱素子の通電電極とが設けられて」いることに相当する。
甲1発明の「低融点金属体5」は、本件発明23の「ヒューズエレメント」に相当する。そして、甲1発明の「前記低融点金属体用電極7a、7bと前記中間電極7cとの上には低融点金属体5が積層されて」いることは、これにより、低融点金属体用電極7a、7bと中間電極7cは、低融点金属体5により接続されていることとなるから、本件発明23の「前記電極部間を接続したヒューズエレメントと」を「有する」ことに相当する。
甲1発明の「固形フラックス8」は、本件発明23の「動作フラックス」に相当する。そして、甲1発明の「固形フラックス8が前記低融点金属体5を封止して」いることは、低融点金属体5の表面に固形フラックス8を塗布することによって低融点金属体5を覆って封止しているといえるから、本件発明23の「前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスを有し」ていることに相当する。
甲1発明の「外側封止部9」は、「低融点金属体5及び固形フラックス8を封止している」ものであり、被膜状のコーティング層といえ(【図2】(b))、本件発明1の「コーティング層」に相当する。また、甲1発明の「外側封止部9」は、低融点金属体5及び固形フラックス8を封止して、低融点金属体5の溶断時に溶融物が保護素子外へ流出することを防止するものであること(段落【0004】)から見て、低融点金属体5が溶断動作するまで、固形フラックス8が低融点金属体5の表面から流出しないよう保持する機能を有することは当業者には明らかであるといえる。そして、甲1発明の「外側封止部9」は、「低融点金属体5及び固形フラックス8を封止している」ものであり、固形フラックス8の方からみれば、固形フラックス8は、外側封止部材9により封止されている、つまり固形フラックス8は、外側封止部材9を有し、この外側封止部材9により封止されているともいえる(動作フラックスがコーティング層を有していることの態様として、本件特許明細書の段落【0015】には、「上記コーティング層は、・・・動作フラックス塗布後に動作フラックス以外のコーティング剤を動作フラックスの表面に、更に被覆して形成してもよい。」と記載されている。)。
そうしてみると、甲1発明の「外側封止部9」が、「低融点金属体5及び固形フラックス8を封止している」ことは、本件発明1の「動作フラックス」が、「コーティング層を有」していることに相当する。
したがって、甲1発明の「外側封止部9が前記低融点金属体5及び前記固形フラックス8を封止している」ことは、本件発明23の「前記動作フラックスは、硬化性樹脂成分を配合または添加しており、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記動作フラックスが前記表面から流出しないように保持した前記硬化性樹脂成分からなる皮膜状のコーティング層を形成」していることとの対比において、「前記動作フラックスは。前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を形成し」ていることの限度で一致する。
甲1発明の「前記外側封止部9は、低融点金属体5の両端部において低融点金属体5に接している」ことは、これにより、「外側封止部9が前記低融点金属体5及び前記固形フラックス8を封止している」(「封止」とは隙間なく包むことをいう)といえる、すなわち、低融点金属体5の両端部において、外側封止部9が低融点金属体5に固着することにより固形フラックス8を被覆しているといえるから、本件発明23の「前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆している」ことに相当する。
甲1発明の「保護素子1p」は、本件発明23の「保護素子」に相当する。
以上のとおりであるから、本件発明23と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点8>
「絶縁基板に発熱素子と、少なくとも一対の主電極と、前記発熱素子の通電電極とが設けられており、
前記主電極と前記通電電極の上に設けたヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記動作フラックスが前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を形成し、
前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆している保護素子。」
<相違点5>
本件発明23の「コーティング層」は、「動作フラックス」に「添加」された「硬化性樹脂成分」から「形成」されているものであるのに対し、甲1発明の「外側封止部9」は、このような特定がされていない点。
(イ)判断
a 相違点5は、構成上の微差または当業者が適宜なし得る設計上の一事項とはいえないから、実質的な相違点といえる。
本件発明23は甲1発明とはいえない。
b 上記ウ(イ)で述べたとおり、甲第4号証には、甲4技術的事項が記載されおり、また、甲第5号証には、甲5技術的事項が記載されている。
ここで、甲4技術的事項の熱硬化性フラックス組成物は、エポキシ樹脂を含有することにより、フラックス組成物自体が全体的に硬化するものであり、フラックス組成物の表面を皮膜化し、コーティング層を形成するものではないから、甲1発明に甲4技術的事項を適用しても相違点5に係る本件発明23の構成に至ることはできない。
また、甲5術的事項は、所定の成分(アクリル系樹脂を含んだ樹脂とはんだ粉末)を含有するはんだ組成物とすることにより、ジェットディスペンサーにより塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、チップ立ちおよびフラックス飛散の発生を抑制でき、しかも、フラックス洗浄の必要がないレーザーはんだ付け用はんだ組成物を提供できるものとしたのであり(段落【0006】、及び【0050】)、このようなはんだ組成物から、フラックス組成物だけを抽出し、甲1発明に適用する動機付けはない。また、甲5技術的事項のフラックス組成物は、はんだ粉末を含んだフラックス組成物自体が全体的に硬化するものであり、フラックス組成物の表面を皮膜化し、コーティング層を形成するものではないから、仮に、甲1発明に甲5技術的事項を適用しても相違点5に係る本件発明23の構成に至ることはできない。
そして、本件発明23は、本件発明1と同様に、相違点5に係る構成を有することにより、ヒューズエレメントの動作上必要とされる部位にフラックスを保持できるという格別の作用効果を奏する(本件明細書の段落【0016】)。
よって、本件発明23は、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
キ 請求項24に係る発明について
本件発明24(請求項24は、本件訂正によっては訂正されていない。)は、本件発明23の発明特定事項を全て含み更に限定したものである。
上記カ(イ)で説示のとおり、本件発明23が甲1発明とはいえないし、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様の理由により、本件発明24も同様の理由により甲1発明とはいえなし、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ク 請求項25に係る発明について
本件発明25(請求項25は、本件訂正によっては訂正されていない。)は、少なくとも本件発明23の発明特定事項を全て含み更に限定するものである。
上記カ(イ)で説示のとおり、本件発明23は、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様の理由により、本件発明25も、甲1発明及び甲第4号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ケ 請求項26に係る発明について
本件発明26(請求項26は、本件訂正請求によっては訂正されていない。)は、少なくとも本件発明23の発明特定事項を全て含み更に限定するものである。
上記カ(イ)で説示のとおり、本件発明23は、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様の理由により、本件発明26も、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、甲第8号証にも、相違点5に係る本件発明26の構成については、記載も示唆もされていない(上記4(2)オ、参照。)。
したがって、本件発明26は、甲1発明、甲第4号証又は甲第5号証に記載された技術的事項、及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
コ 請求項27に係る発明について
本件発明27(請求項27は、本件訂正請求によっては訂正されていない。)は、少なくとも本件発明23の発明特定事項を全て含み更に限定するものである。
上記カ(イ)で説示のとおり、本件発明23は、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様の理由により、本件発明27も、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、甲第9号証及び甲第10号証にも、相違点5に係る本件発明26の構成については、記載も示唆もされていない(上記4(2)カ及びキ、参照。)。
したがって、本件発明27は、甲1発明、甲第4号証または甲第5号証に記載された技術的事項、及び甲第9号証または甲第10号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
サ 請求項28及び請求項30に係る発明について
訂正後の請求項28に係る発明(本件発明28)及び訂正後の請求項30に係る発明(本件発明30)は、少なくとも本件発明23の発明特定事項を全て含み更に限定するものである。
上記カ(イ)で説示のとおり、本件発明23は、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様の理由により、本件発明28及び本件発明30も、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、甲第10号証及び甲第11号証にも、相違点5に係る本件発明28及び相違点5に係る本件発明30の構成については、記載も示唆もされていない(上記4(2)キ及びク、参照。)。
したがって、本件発明28及び本件発明30は、甲1発明、甲第4号証または甲第5号証に記載された技術的事項、及び甲第10号証または甲第11号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
シ 請求項29に係る発明について
訂正後の請求項29に係る発明(本件発明29)は、少なくとも本件発明23の発明特定事項を全て含み更に限定するものである。
上記カ(イ)で説示のとおり、本件発明23は、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様の理由により、本件発明29も、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、甲第9号証、甲第10号証及び甲第11号証にも、相違点5に係る本件発明29の構成については、記載も示唆もされていない(上記4(2)カ、キ及びク参照。)。
したがって、本件発明29は、甲1発明、甲第4号証または甲第5号証に記載された技術的事項、及び甲第9号証、甲第10号証または甲第11号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ス 請求項31に係る発明について
訂正後の請求項31に係る発明(本件発明31)は、少なくとも本件発明23の発明特定事項を全て含み更に限定するものである。
上記カ(イ)で説示のとおり、本件発明23は、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様の理由により、本件発明31も、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、甲第11号証にも、相違点5に係る本件発明31の構成については、記載も示唆もされていない(上記4(2)ク、参照。)。
したがって、本件発明31は、甲1発明、甲第4号証または甲第5号証に記載された技術的事項、及び甲第11号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
セ 請求項32に係る発明について
(ア)対比
本件発明32と甲1発明とを対比する(なお、請求項32は、本件訂正請求によっては訂正されていない)。
上記カ(ア)を踏まえると、本件発明32と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点9>
「絶縁基板に発熱素子と、少なくとも一対の主電極と、前記発熱素子の通電電極とが設けられており、
前記主電極と前記通電電極の上に設けたヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有し、
前記動作フラックスは、前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記動作フラックスが前記表面から流出しないように保持する前記熱硬化性樹脂成分からなる皮膜状のコーティング層を形成する
保護素子。」
<相違点5-1>
本件発明32の「コーティング層」は、「動作フラックス」に「添加」された「熱硬化性樹脂成分」から「形成」されているものであるのに対し、甲1発明の「外側封止部9」は、このような特定がされていない点。
(イ)判断
a 相違点5-1は、構成上の微差または当業者が適宜なし得る設計上の一事項とはいえないから、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明32は甲1発明とはいえない。
b 相違点5-1は、硬化性樹脂を熱硬化性樹脂と特定するものであるから、実質的には相違点5と変わりはない。そうすると、上記カ(イ)bで説示と同様の理由により、相違点5に係る本件発明32の構成は、甲第4号証及び甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものではなく、また、本件発明32の奏する作用効果も格別顕著なものであるといえる。
したがって、本件発明32は、甲1発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)甲第2号証を主たる証拠とした特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲第2号証を主たる証拠として、概略次のように主張する。
訂正前の請求項1に係る発明、請求項3に係る発明、請求項4に係る発明及び請求項11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明である。
訂正前の請求項1~請求項7、請求項9、及び請求項11~請求項19に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、または甲第2号証に記載された発明に甲第3号証~甲第11号証のいずれかに記載の技術的事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
以下、特許異議申立人の甲第2号証を主たる証拠とした特許異議申立理由について検討する。
ア 甲第2号証の記載
特許異議申立人の提出した甲第2号証(特開2017-188310号公報)には、次の記載がある(下線は当審で付したもの。)。
「【0001】
本発明は、複合金属材からなる保護素子用のヒューズエレメントおよびそれを利用した電気・電子機器の保護素子に関する。」
「【0003】
このような保護素子に適用されるヒューズ素子には、例えば、特許文献1に記載されるように、無鉛金属複合材のヒューズエレメントであって、この保護素子を外部回路板に表面実装する際のはんだ付け作業温度において、溶融可能な易融性の低融点金属材と、液相の低融点金属材に溶解可能な難融性の金属構造材とから成り、低融点金属材と金属構造材とを一体成形することで、はんだ付け作業で液相化した低融点金属材を固相の金属構造材ではんだ付け作業が終わるまで支えて保持することを特徴とするヒューズエレメントがある。このヒューズエレメントの低融点金属材と金属構造材とは互いに固着成形され、はんだ付け作業の熱で液相化した低融点金属材を該作業温度で固相の金属構造材で、一定時間溶断しないように界面張力を利用して付着させ支えて保持しながら、液相の低融点金属材でヒューズエレメントを保護素子の電極パターンに接合できるように工夫されている。そして、少なくともはんだ付け作業の間、ヒューズエレメントの形状を維持してヒューズエレメントがはんだ付け作業温度で誤動作するのを防止する。この保護素子は、被保護装置に実装されるとヒューズエレメントの金属構造材が、はんだ付けの熱で媒質である低融点金属材中に拡散または溶解され希薄化しているので、設置環境の異常過熱や内蔵する抵抗発熱素子のヒータ加熱により容易に消失し、以後溶断を妨げることなく動作できるようになっている。」
「【0009】
本発明の別の観点によると、上記ヒューズエレメントを用いた保護素子が提供される。本発明に係る保護素子は、該ヒューズエレメントとパターン電極を有する絶縁基板とを準備する準備工程、絶縁基板に接合フラックスを塗布する接合フラックス塗布工程、接合フラックスを塗布した絶縁基板またはヒューズエレメントのパターン電極と接合材とを互いに接触させて絶縁基板に載置するマウント工程、ヒューズエレメントを載置した絶縁基板を183℃以上400℃未満の接合作業温度で接合材を溶融させてパターン電極に一括接合させる接合工程、接合したヒューズエレメントに動作用の溶断フラックスを塗布する溶断フラックス塗布工程、溶断フラックスを塗布した絶縁基板上のヒューズエレメントをキャップ状蓋体で覆ってパッケージングするパッケージング工程により組み立てられる。本発明に係るヒューズエレメントは、絶縁基板の表面に設けたパターン電極に接合され、保護素子のヒューズエレメントとして使用される。このヒューズエレメントは、予め接合フラックスを塗布したヒューズエレメントの接合材と絶縁基板のパターン電極とを互いに接触させて絶縁基板に載置し、前述の接合作業温度で接合材を溶融させることによりパターン電極に一括接合される。その際、溶融した接合材はヒューズエレメントとパターン電極とを接合させる。中間構造材は、接合作業温度で固体を維持するのでヒューズエレメントの形状を保ったまま被覆材および接合材中に一部を拡散または溶解させながら、液相の接合材によってパターン電極に固着される。その後、ヒューズエレメントに溶断フラックスを塗布し、その上をキャップ状蓋体で覆ってパッケージングし保護素子とする。その後、この保護素子は、例えば二次電池などの保護回路等に実装され、最高温度が183℃以上300℃以下程度の温度ではんだ付けされることとなる。このはんだ付けの熱で、保護素子に内蔵されたヒューズエレメントの中間構造材は、被覆材および接合材に、再び拡散または溶解されるが、溶断誤動作することなくヒューズエレメントの形状を保ったまま実装できる。」
「【0014】
本発明に係るヒューズエレメント10は、図1に示すように、金属に拡散または溶解し易い固体金属からなる中間構造材11と、この中間構造材11の少なくとも片面に可溶性の金属からなる被覆材12と、さらに中間構造材11のもう一方の面に可溶金属からなる接合材13とを備え、中間構造材11は、接合作業温度を超える第1の溶融温度を有し、被覆材12は、中間構造材11より溶融温度が低い第2の溶融温度を有し、接合材13は、接合作業温度で溶融し、かつ、第2の溶融温度以下の第3の溶融温度を有することを特徴とする。
【0015】
このヒューズエレメント10の中間構造材11は、接合作業温度で被覆材12および接合材13の固相または液相に拡散若しくは溶解しやすい金属材からなるが、少なくとも接合作業の間、ヒューズエレメント10が溶断しないよう形状を支えて保持する構造材として機能する。ヒューズエレメント10の被覆材12は、中間構造材11の露出面を覆って腐食性ガスや水分から遮蔽するとともに、第2の溶融温度未満の温度においては、中間構造材11と共にヒューズエレメント10が溶断しないよう保持する構造材の機能し、第2の溶融温度以上の温度においては、液相と成って中間構造材11を溶食してヒューズエレメント10が動作可能な状態にする機能を有する。被覆材12は、このヒューズエレメント10の所定の溶断温度で溶融できれば、接合作業では必ずしも溶融せずともよい。ヒューズエレメント10の接合材13は、このヒューズエレメント10を保護素子の絶縁基板に設けたパターン電極に接合するロウ材またははんだ材として機能するとともに、第3の溶融温度以上の温度で中間構造材11を溶食してヒューズエレメント10を動作可能の状態にする機能を有する。接合材13は、接合作業時に溶融することはもとより、ヒューズエレメント10の所定の溶断温度においても溶融する。
【0016】
中間構造材11には、183℃以上400℃未満の接合作業温度において固体を維持できる拡散性の溶質金属、例えばAg、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金が好適に利用できる。そして、中間構造材11の片面に設ける被覆材12は、例えばSnまたはSn合金(一例を挙げるとSn-Ag合金、Sn-Bi合金、Sn-Cu合金、Sn-Zn合金、Sn-Sb合金など)が好適である。さらに、中間構造材11のもう一方の面に設ける接合材13は、例えばSn-Ag合金、Sn-Bi合金、Sn-Cu合金、Sn-Zn合金、Sn-Sb合金、Sn-Ag-Bi合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag-In合金、Sn-Zn-Al合金、Sn-Zn-Bi合金、Zn-Al合金または前記合金にAu、Ni、Ge、Ga、Mg、Pをさらに添加した合金などが利用できる。中間構造材11の表面に被覆材12および接合材13を設ける手段は、特に限定されず中間構造材11に被覆材12および接合材13を固着できればよい。例えば、被覆材12および接合材13はクラッド、めっき、溶融コート、圧着、ロジンなどの可融性樹脂による接着などの手段で中間構造材11の表面に固着できる。また、本発明に係るヒューズエレメントは、接合材12の積層界面に予め接合フラックスを内蔵させた複合金属材としてもよい。
【0017】
本発明に係る保護素子は、上述したヒューズエレメント10を用いて製造される。図2ないし図5の保護素子を製造できれば、その製造方法は特定の工法に限定されない。例えば、上記ヒューズエレメント10と、パターン電極を有する絶縁基板とを準備する準備工程、ヒューズエレメントまたは絶縁基板に接合フラックスを塗布する接合フラックス塗布工程、接合フラックスを適用した絶縁基板のパターン電極とヒューズエレメントの接合材とを互いに接触させて絶縁基板に載置するマウント工程、ヒューズエレメントを載置した絶縁基板を183℃以上400℃未満の接合作業温度で接合材を溶融させてパターン電極に一括接合させる接合工程、接合したヒューズエレメントに動作用の溶断フラックスを塗布する溶断フラックス塗布工程、溶断フラックスを塗布した絶縁基板上のヒューズエレメントをキャップ状の蓋体で覆ってパッケージングするパッケージング工程により組み立てられる。例えば、予め接合フラックスを塗布したヒューズエレメント10は、その接合材13と、絶縁基板のパターン電極22とを互いに接触させて絶縁基板21に載置され、最高温度が183℃以上400℃未満の温度プロファイルに設定されたリフロー炉に通し接合材13を溶融させることによりパターン電極22に一括接合される。このとき溶融した接合材13は、中間構造材11およびパターン電極22に相互拡散され中間構造材11とパターン電極22とを接合させる。中間構造材11は、リフロー温度で固体を維持するので形状を保ったままパターン電極22に接合される。その後、接合したヒューズエレメント10に動作用の溶断フラックスを塗布し、絶縁基板上のヒューズエレメント10をキャップ状蓋体25で覆ってパッケージングして保護素子とする。
【0018】
上述の接合工程に適用される加熱手段は、絶縁基板に載置したヒューズエレメントを該作業温度に一括加熱できれば、どのような方法、装置を用いても差し支えない。例えば、高温バッチ炉を用いた加熱、ホットプレートを用いた加熱、リフロー炉を用いた加熱などが好適に利用できる。また、接合フラックス塗布工程は、接合工程の加熱下においてパターン電極とヒューズエレメントの金属材表面の酸化膜等を除去し接合表面を活性化する目的で予め接合フラックスを塗布するもので、パターン電極とヒューズエレメントの金属材表面を活性化できるのであれば、他の活性化手段を代替使用でき、接合フラックス塗布工程を省略または代替することができる。例えば、水素還元炉、蟻酸還元炉など活性化ガスを用いたリフロー炉を用いる場合には、接合フラックス塗布工程を省略しても差し支えない。また、ヒューズエレメントの積層面に予め接合フラックスを内蔵させた場合も、接合フラックス塗布工程を省略して差し支えない。
【0019】
本発明に係る保護素子は、該ヒューズエレメントを利用した保護素子であり、図2に示すように、絶縁基板21と、この絶縁基板21の表面に設けた複数のパターン電極22と、このパターン電極22に電気接続したヒューズエレメント10と、このヒューズエレメント10の上部を覆ったキャップ状蓋体25とを備え、ヒューズエレメント10は、金属に拡散または溶解し易い固体金属からなる中間構造材11と、この中間構造材11の少なくとも片面に可溶性の金属からなる被覆材12と、さらに中間構造材11のもう一方の面に可溶金属からなる接合材13を備え、中間構造材11は、接合作業温度を超える第1の溶融温度を有し、被覆材12は、中間構造材11より溶融温度が低い第2の溶融温度を有し、接合材13は、接合作業温度で溶融し、かつ、第2の溶融温度以下の第3の溶融温度を有することを特徴とする。」
「【0022】
本発明に係る実施例1のヒューズエレメント10は、図1に示すように、厚さ5μmのAgからなる第1の溶融温度が962℃の中間構造材11と、この中間構造材11の上面に厚さ3μmのSnからなる第2の溶融温度が232℃の被覆材12と、さらに中間構造材11の下面に、厚さ87μmのSn-3Ag-0.5Cu合金からなる第3の溶融温度が219℃の接合材13とを電気めっきにより設けた複合材で構成される。
【0023】
本発明に係る保護素子は、実施例1のヒューズエレメント10を利用した保護素子であり、図2に示すように、ヒューズエレメント10は、予め接合フラックス(図示せず)を塗布したヒューズエレメント10の接合材13と、絶縁基板21のパターン電極22とを互いに接触させて絶縁基板21に載置され、温度プロファイルを余熱温度180~190℃で滞留時間45秒、225℃以上の滞留時間30秒ピーク温度235℃に設定したリフロー炉に通し接合材13を溶融させることによりパターン電極22に一括接合した後、接合したヒューズエレメント10に溶断フラックスを塗布し、絶縁基板上のヒューズエレメントを耐熱プラスチック製の蓋体25で覆って、このキャップ状の蓋体25と絶縁基板21とをエポキシ系樹脂で固定して保護素子とする。」
「【0025】
本発明に係る実施例3の保護素子30は、実施例1のヒューズエレメント10を利用した保護素子であり、図4に示すように、アルミナ・セラミック製の絶縁基板31と、この絶縁基板31の上下面に設けた複数のAg合金製パターン電極32と、このパターン電極32と電気接続され絶縁基板31の下面に設けた抵抗発熱素子34と、該絶縁基板31の上面のパターン電極32に電気接続したヒューズエレメント10と、このヒューズエレメント10の上部を覆って絶縁基板31に固着した液晶ポリマー製のキャップ状蓋体35とを備え、ヒューズエレメント10は、厚さ5μmのAgからなる第1の溶融温度が962℃の中間構造材11と、この中間構造材11の上面に厚さ3μmのSnからなる第2の溶融温度が232℃の被覆材12と、さらに中間構造材11の下面に、厚さ87μmのSn-3Ag-0.5Cu合金からなる第3の溶融温度が219℃の接合材13とを設けた複合金属材からなり、接合材13を溶融してパターン電極32に接合してある。パターン電極32は、基板上下面のパターン電極32を電気接続するAg合金のハーフ・スルーホール33を有する。図示しないが、抵抗発熱素子34の表面はガラス・オーバーグレーズを施している。
【0026】
本発明に係る実施例4の保護素子40は、保護素子30を変形した保護素子である。図5に示すように、アルミナ・セラミック製の絶縁基板41と、この絶縁基板41の上下面に設けた複数のAg合金製パターン電極42と、このパターン電極42と電気接続され絶縁基板41の上面に設けた抵抗発熱素子44と、この抵抗発熱素子44に当接して絶縁基板41の上面のパターン電極42に電気接続したヒューズエレメント10と、このヒューズエレメント10の上部を覆って絶縁基板41に固着した液晶ポリマー製の蓋体45とを備え、ヒューズエレメント10は、厚さ5μmのAgからなる第1の溶融温度が962℃の中間構造材11と、この中間構造材11の上面に厚さ3μmのSnからなる第2の溶融温度が232℃の被覆材12と、さらに中間構造材11の下面に、厚さ87μmのSn-3Ag-0.5Cu合金からなる第3の溶融温度が219℃の接合材13とを設けた複合金属材からなり、接合材13を溶融してパターン電極42に接合してある。パターン電極42は、基板上下面のパターン電極42を電気接続するAg合金のハーフ・スルーホール43を有する。図示しないが、実施例4の抵抗発熱素子44の表面はガラス・オーバーグレーズを施している。」
「【図1】
[図:0001422421000009.jpg]
」
「【図4】
[図:0001422421000010.jpg]
」
「【図5】
[図:0001422421000011.jpg]
」
イ 甲第2号証に記載の発明
甲第2号証の記載から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
[甲2発明]
「アルミナ・セラミック製の絶縁基板31と、この絶縁基板31の上下面に設けた複数のAg合金製パターン電極32と、
このパターン電極32と電気接続され絶縁基板31の下面に設けた抵抗発熱素子34と、
該絶縁基板31の上面のパターン電極32に電気接続した、溶断フラックスが塗布されたヒューズエレメント10と、
を備えた保護素子30。」
ウ 本件発明1について(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「絶縁基板31」、及び「パターン電極32」は、それぞれ本件発明1の「絶縁性の支持体」、及び「電極部」に相当する。
甲2発明の「絶縁基板31の上下面に設ける」ことは、本件発明1の「絶縁性の支持体に支持される」ことに相当し、甲2発明の「複数」は、本件発明1の「2つ以上」に相当する。
したがって、甲2発明の「アルミナ・セラミック製の絶縁基板31と、この絶縁基板31の上下面に設けた複数のAg合金製パターン電極32」は、本件発明1の「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部」に相当する。
甲2発明の「該絶縁基板31の上面のパターン電極32に電気接続したヒューズエレメント10」は、本件発明1の「前記電極部間を接続したヒューズエレメント」に相当する。
甲2発明の「溶断フラックス」は、本件発明1の「動作フラックス」に相当する。また、甲2発明の「ヒューズエレメント10」は、「溶断フラックス」が「塗布」されているから、甲2発明は、ヒューズエレメント10の表面に塗布された溶断フラックスを有しているといえる。
したがって、甲2発明の「溶断フラックスが塗布されたヒューズエレメント10と、を備え」ることは、本件発明1の「前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスを有」することに相当する。
甲2発明の「保護素子30」は、本件発明1の「保護素子」に相当する。
以上のとおりであるから、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点A>
「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有する保護素子。」
<相違点A>
本件発明1の「動作フラックス」は、「前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」とされているのに対し、甲2発明の「溶断フラックス」は、このような特定がされていない点。
(イ)判断
a 新規性について
相違点Aは、構成上の微差または当業者が適宜なし得る設計上の一事項とはいえないから、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明1は甲2発明とはいえない。
b 進歩性について
上記4(3)ア ア)(イ)から、甲第1号証には、甲1発明が記載されているといえる。
甲1発明の「外側封止部9」は、低融点金属体5の溶断時に溶融物が保護素子外へ流出することを防止するものであり、低融点金属体5の表面が一部露出するように当該低融点金属体5を被覆するものではない(甲第1号証の段落【0004】、参照。)。
このような甲1発明を甲2発明に適用しても、相違点Aに係る本件発明1の構成には至らない。
また、甲第3号証には、合金温度ヒューズ(保護素子)において、低融点合金エレメント2の表面に塗布したフラックス3を被覆し、低融点合金エレメント2が溶断動作するまで表面から流出しないように保持する混合物5が、低融点合金エレメント2の露出面に接している技術的事項(以下、「甲3技術的事項」という。)が記載されている(段落【0002】、【0008】、【0009】、及び【図1-2】)。
この甲3技術的事項の「混合物5」は、低融点合金エレメント2の表面が一部露出するように当該低融点合金エレメント2を被覆するものではないから、甲3技術的事項を甲2発明に適用しても、相違点Aに係る本件発明1の構成には至らない。
そして、本件発明1は、相違点Aに係る構成を有することにより、ヒューズエレメントの動作上必要とされる部位にフラックスを保持できるという格別の作用効果を奏する(本件明細書の段落【0016】)。
よって、本件発明1は、甲2発明及び甲1発明に基いて、又は甲2発明及び甲第3号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲2発明とを対比する。
上記ウ(ア)を踏まえると、本件発明2と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点A>
「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有する
保護素子。」
<相違点B>
本件発明2の「前記動作フラックス」は、「前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、前記コーティング層は、前記動作フラックス自体が自らその表面を皮膜化して形成した」とされているのに対し、甲2発明の「溶断フラックス」は、このような特定がされていない点。
(イ)判断
上記(1)ア(イ)bで述べたとおり、甲第4号証には、甲4技術的事項が記載されている。
また、同じく、甲第5号証には、甲5技術的事項が記載されている。
ここで、甲4技術的事項の熱硬化性フラックス組成物は、エポキシ樹脂を含有することにより、フラックス組成物自体が全体的に硬化するものであり、クラック組成物の表面を皮膜化し、コーティング層を形成するものではないから、甲2発明に甲4技術的事項を適用しても相違点Bに係る本件発明2の構成に至ることはできない。
また、甲5術的事項は、所定の成分(アクリル系樹脂を含んだ樹脂とはんだ粉末)を含有するはんだ組成物とすることにより、ジェットディスペンサーにより塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、チップ立ちおよびフラックス飛散の発生を抑制でき、しかも、フラックス洗浄の必要がないレーザーはんだ付け用はんだ組成物を提供できるものとしたのであり(段落【0006】、及び【0050】)、このようなはんだ組成物から、フラックス組成物だけを抽出し、甲2発明に適用する動機付けはない。また、甲5技術的事項のフラックス組成物は、はんだ粉末を含んだフラックス組成物自体が全体的に硬化するものであり、クラック組成物の表面を皮膜化し、コーティング層を形成するものではないから、仮に、甲2発明に甲5技術的事項を適用しても相違点Bに係る本件発明2の構成に至ることはできない。
そして、本件発明2は、本件発明1と同様に、相違点Bに係る構成を有することにより、ヒューズエレメントの動作上必要とされる部位にフラックスを保持できるという格別の作用効果を奏する(本件明細書の段落【0016】)。
よって、本件発明2は、甲2発明及び甲第4号証または甲第5号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定するものである。
上記ウ(イ)で説示のとおり、本件発明1が甲2発明とはいえないから、同様の理由により本件発明3も甲2発明とはいえない。
また、上記ウ(ア)での対比を踏まえると、本件発明3と甲2発明との間には、少なくとも上記ウ(ア)の相違点Aが存在するところ、甲第6号証には、かかる相違点Aについては記載も示唆もされていない(上記4(2)ウ、参照。)。
したがって、本件発明3は、甲2発明及び甲第6号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件発明4について
(ア)対比
本件発明4と甲2発明とを対比する。
上記ウ(ア)を踏まえると、本件発明4と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点A>
「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有する
保護素子。」
<相違点C>
本件発明4の「前記動作フラックス」は、「前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、前記コーティング層は、シート状コーティング材から構成され」ているのに対し、甲2発明の「溶断フラックス」は、このような特定がされていない点。
(イ)判断
a 新規性について
相違点Cは、構成上の微差または当業者が適宜なし得る設計上の一事項とはいえないから、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明4は甲2発明とはいえない。
b 進歩性について
甲第2号証には、相違点Cについては記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明4は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
キ 本件発明5及び6について
本件発明5及び6は、少なくとも本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定したものである。
したがって、本件発明5及び6と甲2発明との間には、少なくとも相違点Aが存在することとなる。
上記ウ(イ)bで説示のとおり、甲3技術的事項を甲2発明に適用しても、相違点Aに係る本件発明1の構成には至らないから、同様の理由により、甲3技術的事項を甲2発明に適用しても、相違点Aに係る本件発明5及び6の構成には至らない。
また、甲第6号証及び甲第7号証にも、相違点Aに係る本件発明5及び6の構成については、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明5及び6は、甲2発明及び甲第3号証、甲第6号証または甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ク 本件発明7について
本件発明7は、少なくとも本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定したものである。
したがって、本件発明7と甲2発明との間には、少なくとも相違点Aが存在することとなる。
上記ウ(イ)bで説示のとおり、甲3技術的事項を甲2発明に適用しても、相違点Aに係る本件発明1の構成には至らないから、同様の理由により、甲3技術的事項を甲2発明に適用しても、相違点Aに係る本件発明7の構成には至らない。
また、甲第8号証にも、相違点Aに係る本件発明7の構成については、記載も示唆もされていない(上記4(3)ア ア)(イ)b(b)を参照。)。
したがって、本件発明7は、甲2発明及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ケ 本件発明9について
(ア)対比
本件発明9と甲2発明とを対比する。
上記ウ(ア)を踏まえると、本件発明9と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点A>
「少なくとも絶縁性の支持体に支持された2つ以上の電極部と、
前記電極部間を接続したヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有する
保護素子。」
<相違点D>
本件発明9の「前記動作フラックス」は、「前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、アクリル樹脂、又は、アクリルエステル樹脂からなり、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」とされているのに対し、甲2発明の「溶断フラックス」は、このような特定がされていない点。
(イ)判断
上記ウ(イ)bで述べたように、甲第3号証には、甲3技術的事項が記載されている。
この甲3技術的事項の「混合物5」は、低融点合金エレメント2の表面が一部露出するように当該低融点合金エレメント2を被覆するものではないから、甲3技術的事項を甲2発明に適用しても、相違点Eに係る本件発明9の構成には至らない。
また、上記4(3)ア イ)(イ)b(b)で述べたように、甲6発明の「絶縁保護層8」は、基板1の片面の全面に設けられており(甲第6号証の段落【0002】、【0012】、及び【図1】~【図3】、参照。)、基板型抵抗付温度フューズを絶縁保護するものといえるから、当該絶縁保護層8を基板型抵抗付温度フューズ(の中央)に設けられた可溶合金エレメント3の表面の一部を露出させるような形態とすれば、基板型抵抗付温度フューズの絶縁性が損なわれてしまうこととなる。
したがって、甲6発明の「絶縁保護層8」を、可溶合金エレメント3の表面が一部露出するように、可溶合金エレメント3を被覆しているよう構成することは、当業者であっても容易に想到しえたこととはいえず、甲2発明に甲6発明を適用しても、相違点Dに係る本件発明9の構成には至らない。
さらに、上記4(3)ア ウ)(イ)b(b)で述べたように、甲7発明の「樹脂層6」は、フラックス塗布低融点可溶合金片4を封止するものであるから(甲第7号証の段落【0014】、参照。)、当該樹脂層6を低融点可溶合金片4の表面の一部を露出させるような形態とすれば、低融点可溶合金片4を封止するという機能が損なわれてしまうこととなる。
したがって、甲7発明の「樹脂層6」を、低融点可溶金属片4の表面が一部露出するように、低融点可溶金属片4を被覆しているよう構成することは、当業者であっても容易に想到しえたこととはいえず、甲2発明に甲6発明を適用しても、相違点Dに係る本件発明9の構成には至らない。
そして、本件発明9は、相違点Eに係る構成を有することにより、ヒューズエレメントの動作上必要とされる部位にフラックスを保持できるという格別の作用効果を奏する(本件明細書の段落【0016】)。
よって、本件発明9は、甲2発明及び甲第3号証、甲第6号証又は甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
コ 本件発明11について
(ア)対比
本件発明11と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「絶縁基板31」、「抵抗発熱素子34」、「ヒューズエレメント10」、「溶断フラックス」、及び「保護素子30」は、それぞれ本件発明11の「絶縁基板」、「発熱素子」、「ヒューズエレメント」、「動作フラックス」、及び「保護素子」に相当する。
甲2発明の、絶縁基板31の上下面には、複数のパターン電極32が設けられているところ、「該絶縁基板31の上面のパターン電極32」には、「溶断フラックスが塗布されたヒューズエレメント10」が「電気接続」されているとともに、絶縁基板31の下面に設けた」「抵抗発熱素子34」が、「このパターン電極32と電気接続され」ているから、ヒューズエレメント10及び抵抗発熱素子34の機能を合わせ考えると、甲2発明の「該絶縁基板31の上面のパターン電極32」は、本件発明11の「少なくとも一対の主電極」と「発熱素子の通電電極」に相当し、甲2発明の「該絶縁基板31の上面のパターン電極32に電気接続した」、「ヒューズエレメント10」は、本件発明11の「前記主電極と前記通電電極の上に設けたヒューズエレメント」に相当する。
甲2発明の「溶断フラックス」を「ヒューズエレメント」に「塗布」することは、本件発明11の「ヒューズエレメントの表面に」「動作フラックス」を「塗布」することに相当する。
以上のとおりであるから、本件発明11と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
<一致点B>
「絶縁基板に、発熱素子と、少なくとも一対の主電極と、前記発熱素子の通電電極とが設けられており、
前記主電極と前記通電電極の上に設けたヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントの表面に塗布した動作フラックスとを有している
保護素子。」
<相違点E>
本件発明11の「動作フラックス」は、「前記ヒューズエレメントが溶断動作するまで前記表面から流出しないように保持する皮膜状のコーティング層を有し、前記コーティング層は、前記ヒューズエレメントに固着して前記動作フラックスを被覆しており、前記ヒューズエレメントの表面が一部露出するように当該ヒューズエレメントを被覆している」ものであるのに対し、甲2発明の「溶断フラックス」は、このような特定がされていない点。
(イ)判断
a新規性について
相違点Eは、構成上の微差または当業者が適宜なし得る設計上の一事項とはいえないから、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明11は甲2発明とはいえない。
b進歩性について
上記4(3)ア ア)(イ)b(b)で述べたように、甲第3号証には、甲3技術的事項が記載されている。
この甲3技術的事項の「混合物5」は、低融点合金エレメント2の表面が一部露出するように当該低融点合金エレメント2を被覆するものではないから、甲3技術的事項を甲2発明に適用しても、相違点Fに係る本件発明11の構成には至らない。
そして、本件発明11は、相違点Eに係る構成を有することにより、ヒューズエレメントの動作上必要とされる部位にフラックスを保持できるという格別の作用効果を奏する(本件明細書の段落【0016】)。
よって、本件発明11は、甲2発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
サ 本件発明12及び13について
本件発明12及び13は、本件発明11の発明特定事項を全て含み更に限定したものである。
したがって、本件発明12及び13と甲2発明との間には、少なくとも相違点Eが存在することとなる。
上記サ(イ)bで説示のとおり、甲3技術的事項を甲2発明に適用しても、相違点Eに係る本件発明11の構成には至らないから、同様の理由により、甲3技術的事項を甲2発明に適用しても、相違点Fに係る本件発明12及び13の構成には至らない。
また、甲第6号証及び甲第7号証にも、相違点Eに係る本件発明5及び6の構成については、記載も示唆もされていない(上記4(2)ウ及びエ)。
したがって、本件発明12及び13は、甲2発明及び甲第3号証、甲第6号証または甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
シ 本件発明14について
本件発明14は、少なくとも本件発明11の発明特定事項を全て含み更に限定するものである。
したがって、本件発明14と甲2発明との間には、少なくとも相違点Eが存在することとなる。
上記4(3)ア ア)(イ)b(b)で述べたように、甲第8号証には、保護素子10の可溶導体13の周囲に凸部34を形成することによってフラックス19が可溶導体13の表面の一部が露出するように塗布されているという、甲8技術的事項が記載されている。
しかしながら、甲8技術的事項は、フラックス19が可溶導体13が溶断動作するまで可溶導体13の表面から流出しないように保持するコーティング層を有するものではないから、甲2発明に甲8技術的事項を適用しても、相違点Eに係る本件発明14の構成に至らない。
したがって、本件発明14は、甲2発明及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ス 本件発明15~19について
本件発明15~19は、少なくとも本件発明11の発明特定事項を全て含み更に限定するものである。
したがって、本件発明15~19と甲2発明との間には、少なくとも相違点Eが存在することとなる。
甲第9号証、甲第10号証、及び甲第11号証には、ヒューズエレメントを第1の可溶性金属と第2の可溶性金属の複合材から構成するという技術的事項が記載されている(上記4(2)カ、キ、及びク)。
しかしながら、甲第9号証、甲第10号証、及び甲第11号証のいずれにも、相違点Eに係る本件発明15~19の構成については記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明15は、甲2発明及び甲第9号証または甲第10号証に記載された技術的事項に基いて、また、本件発明16、及び18は、甲2発明及び甲第10号証または甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、さらに、本件発明17は、甲2発明及び甲第9号証、甲第10号証または甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、加えて、本件発明19は、甲2発明及び甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
セ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲2発明の絶縁基板、パターン電極22、中間構造材11、中間構造材11と接合材12の積層界面に予め内蔵したフラックスは、それぞれ特許発明1の絶縁性の支持体、電極部、ヒューズエレメント、動作フラックスに相当する。甲2発明の中間構造材11に積層される接合材12は、中間構造材11との積層界面にフラックスを内蔵していることから、中間構造材11が溶断動作するまで中間構造材11の表面から流出しないように保持する機能を有する。また、接合材12は、溶融コートやロジンなどの可融性樹脂による接着などの手段で中間構造材11に固着されている。以上のことから、接合材12は、特許発明1のコーティング層に相当する。したがって、特許発明1と甲2発明とに相違点は無く、特許発明1は新規性を有しない。仮に相違点を有するとしても、設計事項に過ぎない。」と主張する(特許異議申立書第71頁第18行~第28行)。
しかしながら、甲第2号証の段落【0016】~【0023】、【図1】、及び【図2】の記載内容、特に、段落【0017】の「例えば、予め接合フラックスを塗布したヒューズエレメント10は、その接合材13と、絶縁基板のパターン電極22とを互いに接触させて絶縁基板21に載置され、最高温度が183℃以上400℃未満の温度プロファイルに設定されたリフロー炉に通し接合材13を溶融させることによりパターン電極22に一括接合される。このとき溶融した接合材13は、中間構造材11およびパターン電極22に相互拡散され中間構造材11とパターン電極22とを接合させる。中間構造材11は、リフロー温度で固体を維持するので形状を保ったままパターン電極22に接合される。その後、接合したヒューズエレメント10に動作用の溶断フラックスを塗布し、絶縁基板上のヒューズエレメント10をキャップ状蓋体25で覆ってパッケージングして保護素子とする。」との記載、及び段落【0023】の「本発明に係る保護素子は、実施例1のヒューズエレメント10を利用した保護素子であり、図2に示すように、ヒューズエレメント10は、予め接合フラックス(図示せず)を塗布したヒューズエレメント10の接合材13と、絶縁基板21のパターン電極22とを互いに接触させて絶縁基板21に載置され、温度プロファイルを余熱温度180~190℃で滞留時間45秒、225℃以上の滞留時間30秒ピーク温度235℃に設定したリフロー炉に通し接合材13を溶融させることによりパターン電極22に一括接合した後、接合したヒューズエレメント10に溶断フラックスを塗布し、絶縁基板上のヒューズエレメントを耐熱プラスチック製の蓋体25で覆って、このキャップ状の蓋体25と絶縁基板21とをエポキシ系樹脂で固定して保護素子とする。」との記載(下線は、当審で付したもの。)からすれば、甲2発明の「ヒューズエレメント10」に固着された接合材13に塗布された接合フラックスは、ヒューズエレメント10をパターン電極22に接合する際に、接合を補助するために利用されるものであって、保護素子30の保護作動時、すなわち、ヒューズエレメント10が溶断動作するまでヒューズエレメント10の表面から動作フラックスが流出しないように保持する機能を果たすものではない(本件発明1の「動作フラックス」に相当するのは、甲2発明の(ヒューズエレメント10をパターン電極22に接合した後に、ヒューズエレメント10に塗布される)「溶断フラックス」である。)。
したがって、ヒューズエレメント10に固着された接合材13に塗布された「接合フラックス」を本件発明1の「動作フラックス」に相当することを前提とした特許異議申立人の主張は採用できない。
(3)実施可能要件及びサポート要件について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「硬化性樹脂が添加されたフラックスの具体的な構成、すなわちフラックス及び硬化性樹脂の種類及びこれらの配合が不明である。また、フラックス表面にコーティング層を成膜するための条件、例えば熱硬化性樹脂を配合するならば加熱条件(加熱手段、ピーク温度や加熱時間などの加熱プロファイル、ヒューズエレメントや実装ハンダの融点との関係等) 、光硬化性樹脂を配合するならば光照射条件(照射手段、照射光の波長、照度や積算光量等)が不明である。したがって、どのようにして動作フラックスの表面を皮膜化させるのか不明であり、また液状のコーティング材の成分を成膜させるのか不明である。動作フラックスに硬化性樹脂を添加ないし配合した場合、フラックス内部も硬化すると考えられ、どのように動作フラックスの表面のみにコーティング層を形成できるのか不明である。本件明細書には、これらの点について何ら記載がなく、「コーティング層」に対応する技術的手段が単に抽象的又は機能的に記載されているだけで、具現すべき材料、工程等が不明瞭であり、且つ出願時の技術常識に基づいても理解できず、特許発明を実施することができない。したがって、特許発明1-32は実施可能要件を満たさない。また、本件特許発明は、上記のように「コーティング層」に対応する技術的手段が単に抽象的又は機能的に記載されているだけで、具現すべき材料、工程等が不明瞭であり、且つ出願時の技術常識に基づいても理解できない。どのようなフラックスに本件明細書で特定されている程度のどのような硬化性樹脂をどのような配合比で含有させても、又はどのようなコーティング材を被覆しても、且つどのような硬化条件下でも、「コーティング層」が形成されるとはいえないことから、発明の課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えていることは明らかである。したがって、特許発明1-32はサポート要件を満たさない。」と主張する(第93頁第6行~第29行)。
まず、実施可能要件について検討する。
本件特許の明細書の段落【0012】には、動作フラックスの表面を皮膜化させることに関し、「本発明に係るコーティング層の形成は、動作フラックスを可溶合金のヒューズエレメントに塗布した後、前記動作フラックスの表面に、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂を更に被覆し、これを硬化させることで形成することができる。また、動作フラックスに前記樹脂成分を配合または添加して、動作フラックス自体が、自らその表面を皮膜化できるようにすることもできる。本発明に係るコーティング層の形成は、自然硬化、熱、紫外線照射、電子線照射のほか、湿度、アルコールやアンモニアまたはアミンなどの反応性蒸気に曝すなどして成膜してもよい。」と記載されている。
この明細書及び図面に記載された発明の実施についての記載と、出願時の熱硬化性樹脂の硬化に関する当業者の技術常識とに基づいて、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、動作フラックスの表面を成膜化させることができるから、たとえ、本件特許の発明の詳細な説明に、硬化性樹脂が添加されたフラックスの具体的な構成、フラックス表面にコーティング層を成膜するための具体的な条件が記載されていないとしても、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
次に、サポート要件について検討する。
本件特許の解決しようとする課題は、「保護素子が過酷な熱環境下に曝されてもヒューズ合金表面に塗布したフラックスがヒューズ合金表面から流出しないように」することといえる(本件特許の明細書の段落【0009】)。
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、かかる課題を解決するために、「前記ヒューズエレメントの少なくとも動作上必要とされる部位に塗布した動作フラックスとを有し、前記動作フラックスは、溶断動作するまで前記部位の表面からに前記フラックスが流出しないように保持するためのコーティング層を有する」という手段を採用したものといえる(本件特許の明細書の段落【0010】)
そして、本件特許の請求項1~32には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための上記手段が、発明特定事項として反映されている。
したがって、本件特許の請求項1~32に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、特許請求の範囲の記載は発明の詳細な説明に記載したものであることという要件を満足する。
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許申立理由によっては、本件請求項1~32に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~32に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700266