特許異議申立
2024-700789
樹脂粒子及びその用途
- 審判番号
- 2024-700789
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-169290
- 登録番号
- 7443614
- 請求日
- 2024年08月21日
- 審決日
- 2025年06月11日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】松本油脂製薬株式会社
- 【異議申立人】東レ 株式会社
- 【異議申立人代理人】伴 俊光
- 【異議申立人代理人】細田 浩一
- 【異議申立人】野崎 彩
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 淺野 美奈
- 審判官 加藤 友也
- 分類
- P1651.537-YAA(C08L) / P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7443614号発明「樹脂粒子及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7443614号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕について訂正することを認める。
特許第7443614号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7443614号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、令和5年9月29日(優先権主張 令和4年10月5日)の出願であって、令和6年2月26日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年3月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年8月21日に特許異議申立人 東レ株式会社(以下、「特許異議申立人A」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4)がされ、同年9月5日に特許異議申立人 野崎 彩(以下、「特許異議申立人B」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4)がされ、同年10月28日付けで取消理由が通知され、同年12月13日に特許権者 松本油脂製薬株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月23日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、令和7年2月4日に特許異議申立人Bから意見書が提出され、特許異議申立人Aからは何ら応答がなく、同年3月24日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年5月9日に特許権者から訂正請求がされるとともに意見書が提出されたものである。
なお、令和6年12月13日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、既に特許異議申立人A及びBに意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和7年5月9日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第6及び7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断し、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときといえるから、特許異議申立人A及びBに再度の意見書の提出の機会を与えていない。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和7年5月9日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、真比重が0.90~1.5g/cm3であり、
前記生分解性樹脂(A)が、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂粒子。」と記載されているのを、「生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり、
前記生分解性樹脂(A)が、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂粒子。
(真球度の測定方法)
走査型電子顕微鏡にて1000倍で粒子を観察し、任意の30個の粒子について短径と長径を測定する。各粒子について短径/長径を計算し、30個の粒子の平均値を真球度とする。
(真比重の測定方法)
100mLメスフラスコの重量aを計量し、次に試料を1gメスフラスコに加え重量bを計量する。これにイソプロピルアルコールを100mLの標線まで正確に加え全重量cを計量する。これとは別に、メスフラスコの空重量xを計量し、これにイソプロピルアルコールを標線まで正確に加え全重量yを計量する。これらの計量した値から、以下の数式(5)により真比重を算出する。
真比重=(b-a)×(y-x)/{100×[(y-x)-(c-b)]} (5)」に訂正する。併せて、請求項1の記載を引用する請求項3及び4も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、真比重が0.90~1.5g/cm3であり、
融解エンタルピーが20~140J/gである樹脂粒子。」と記載されているのを、「生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり、
融解エンタルピーが20~140J/gである樹脂粒子(但し、ポリアミド粒子を除く)。
(真球度の測定方法)
走査型電子顕微鏡にて1000倍で粒子を観察し、任意の30個の粒子について短径と長径を測定する。各粒子について短径/長径を計算し、30個の粒子の平均値を真球度とする。
(真比重の測定方法)
100mLメスフラスコの重量aを計量し、次に試料を1gメスフラスコに加え重量bを計量する。これにイソプロピルアルコールを100mLの標線まで正確に加え全重量cを計量する。これとは別に、メスフラスコの空重量xを計量し、これにイソプロピルアルコールを標線まで正確に加え全重量yを計量する。これらの計量した値から、以下の数式(5)により真比重を算出する。
真比重=(b-a)×(y-x)/{100×[(y-x)-(c-b)]} (5)」に訂正する。併せて、請求項2の記載を引用する請求項3及び4も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の【0060】に「(真比重の測定)
100mLメスフラスコの重量aを計量し、次に試料を1gメスフラスコに加え重量bを計量した。これにイソプロピルアルコールを100mLの標線まで正確に加え全重量cを計量した。これとは別に、メスフラスコの空重量xを計量し、これにイソプロピルアルコールを標線まで正確に加え全重量yを計量した。これらの計量した値から、以下の数式(5)により真比重を算出した。
真比重=(b-a)×(y-x)/{100×(y-x)-(c-b)} (5)
この測定方法で、樹脂粒子の真比重を測定した。」と記載されているのを、「(真比重の測定)
100mLメスフラスコの重量aを計量し、次に試料を1gメスフラスコに加え重量bを計量した。これにイソプロピルアルコールを100mLの標線まで正確に加え全重量cを計量した。これとは別に、メスフラスコの空重量xを計量し、これにイソプロピルアルコールを標線まで正確に加え全重量yを計量した。これらの計量した値から、以下の数式(5)により真比重を算出した。
真比重=(b-a)×(y-x)/{100×[(y-x)-(c-b)]} (5)
この測定方法で、樹脂粒子の真比重を測定した。」に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「生分解性樹脂(A)」の選択肢から「ポリアミド系樹脂」を除くとともに「真球度」及び「真比重」がどのような測定方法で測定されたものであるかを明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2についての訂正について
訂正事項2による請求項2についての訂正は、「樹脂粒子」から「ポリアミド粒子」を除くとともに「真球度」及び「真比重」がどのような測定方法で測定されたものであるかを明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項3及び4についての訂正について
訂正事項1及び2による請求項3及び4についての訂正は、請求項1及び2についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び2による請求項3及び4についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)願書に添付した明細書の【0060】についての訂正について
訂正事項3による願書に添付した明細書の【0060】についての訂正は、「真比重」を算出する式に、当業者の技術常識からみて明らかな誤記があったのを、正しいものに訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、訂正事項3による願書に添付した明細書の【0060】についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1及び2による請求項1ないし4についての訂正並びに訂正事項3による願書に添付した明細書の【0060】についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1、2又は3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1及び2による請求項1ないし4についての訂正並びに訂正事項3による願書に添付した明細書の【0060】についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし4は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1及び2による請求項1ないし4についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正事項3による願書に添付した明細書の【0060】についての訂正は、当該訂正に係る請求項の全て(請求項1ないし4)について訂正請求が行われており、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
さらに、特許異議申立人A及びBからの特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし4に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり、
前記生分解性樹脂(A)が、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂粒子。
(真球度の測定方法)
走査型電子顕微鏡にて1000倍で粒子を観察し、任意の30個の粒子について短径と長径を測定する。各粒子について短径/長径を計算し、30個の粒子の平均値を真球度とする。
(真比重の測定方法)
100mLメスフラスコの重量aを計量し、次に試料を1gメスフラスコに加え重量bを計量する。これにイソプロピルアルコールを100mLの標線まで正確に加え全重量cを計量する。これとは別に、メスフラスコの空重量xを計量し、これにイソプロピルアルコールを標線まで正確に加え全重量yを計量する。これらの計量した値から、以下の数式(5)により真比重を算出する。
真比重=(b-a)×(y-x)/{100×[(y-x)-(c-b)]} (5)
【請求項2】
生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり、
融解エンタルピーが20~140J/gである樹脂粒子(但し、ポリアミド粒子を除く)。
(真球度の測定方法)
走査型電子顕微鏡にて1000倍で粒子を観察し、任意の30個の粒子について短径と長径を測定する。各粒子について短径/長径を計算し、30個の粒子の平均値を真球度とする。
(真比重の測定方法)
100mLメスフラスコの重量aを計量し、次に試料を1gメスフラスコに加え重量bを計量する。これにイソプロピルアルコールを100mLの標線まで正確に加え全重量cを計量する。これとは別に、メスフラスコの空重量xを計量し、これにイソプロピルアルコールを標線まで正確に加え全重量yを計量する。これらの計量した値から、以下の数式(5)により真比重を算出する。
真比重=(b-a)×(y-x)/{100×[(y-x)-(c-b)]} (5)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂粒子を含む、化粧料。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の樹脂粒子を含む、コーティング組成物。」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等
1 特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等
令和6年8月21日に特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書A」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
(1)申立理由A1(甲第A1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)証拠方法
甲第A1号証:特開2020-100846号公報
甲第A2号証:実験成績証明書、2024年8月9日、東レ株式会社従業員小宮
甲第A3号証:特許第6758730号公報
証拠の表記は、特許異議申立書Aの記載におおむね従った。以下、順に「甲A1」のようにいう。
2 特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等
令和6年9月5日に特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書B」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
(1)申立理由B1(甲第B1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由B2(甲第B2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由B3(甲第B3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B3号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)申立理由B4(甲第B4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B4号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(5)申立理由B5(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明が解決しようとする課題は、「環境に優しく、透明性及びすべり性に優れた樹脂粒子を提供することを目的とする。」(段落【0004】)である。
本件特許の明細書の【0008】、【0037】、【0064】~【0070】の記載から、課題を解決する樹脂粒子として開示されているのは、特定の生分解性樹脂(A)(ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート)と、特定の界面活性剤(ソルビタンモノラウレートやソルビタンモノステアレート等)と、特定の水溶性高分子(ポリビニルアルコール)と、水とを、それぞれ特定量用い、段落【0037】に記載される方法で得られた樹脂粒子だけである。一方で、本件特許の請求項1では、体積平均粒子径、真球度、比表面積、オレイン酸吸油量、真比重及び生分解性樹脂(A)を構成するポリマー種類が特定されるだけであり、本件特許の請求項2では、体積平均粒子径、真球度、比表面積、オレイン酸吸油量、真比重及び融解エンタルピーが特定されるだけである。
本件特許の請求項1の樹脂粒子について、少なくとも体積平均粒子径、真球度、比表面積及びオレイン酸吸油量を特定の範囲とする構成について特定されていない。これらについては、樹脂粒子に含まれる生分解性樹脂(A)を特定すれば達成されるものではなく、製造方法を含む種々の要因を検討し調整する必要があることが明らかである。
本件特許の請求項2の樹脂粒子について、少なくとも体積平均粒子径、真球度、比表面積、オレイン酸吸油量、真比重及び融解エンタルピーを特定の範囲とする構成について特定されていない。これらについては、樹脂粒子が生分解性樹脂(A)を含むと特定すれば達成されるものではなく、製造方法を含む種々の要因を検討し調整する必要があることが明らかである。
したがって、本件特許の請求項1、2に記載された樹脂粒子全体については、明細書に限定的な例示があったとしても技術的裏付けとして不十分であり、発明の詳細な説明に記載されているということはできない。これより、本件特許の明細書に記載されているといえる樹脂粒子は、本件特許の請求項1及び2に記載されている樹脂粒子のうちのごく一部のものにすぎない。
よって、本件特許の請求項1、2は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えるものである。さらに、技術常識に照らしても、発明の詳細な説明の内容を、本件特許の請求項1、2に記載されている範囲まで一般化することはできない。
本件特許の請求項3及び4についても、引用する請求項1又は2と同様に、当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えるものである。さらに、技術常識に照らしても、発明の詳細な説明の内容を、本件特許の請求項3及び4に記載されている範囲まで一般化することはできない。
(6)申立理由B6(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許の請求項1、2に記載された樹脂粒子全体については、明細書に限定的な例示があったとしても技術的裏付けとして不十分であり、本件特許の明細書の実施例で具体的に開示された樹脂粒子以外の、本件特許の請求項1、2に記載された樹脂粒子についての発明を実施するためには、当業者が過度の試行錯誤を必要とすることは明らかである。
さらに、本件特許の請求項3に記載された化粧料についての発明及び請求項4に記載されたコーティング組成物についての発明を実施するためには、引用する請求項1又は2と同様に、当業者が過度の試行錯誤を必要とすることは明らかである。
(7)申立理由B7(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許の請求項1に記載されている樹脂粒子は、
(a)「生分解性樹脂(A)を含む」こと、
(b)「生分解性樹脂(A)が、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族一芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む」こと、
(c)体積平均粒子径、真球度、比表面積、オレイン酸吸油量及び真比重が特定の範囲であること、
を要件とするものである。
本件特許の請求項1において、要件(c)を満たすための樹脂粒子の構成として記載されているのは、要件(a)及び要件(b)のみであり、それ以外の要件について何ら規定されていない。一方、技術常識を踏まえても、樹脂粒子が、要件(a)及び要件(b)を満たしさえすれば、要件(c)を満たすということは困難である。そして、請求項1には、要件(a)及び要件(b)に加えて、どのような要件・構成等を備えれば、要件(c)を満たすことが可能となるのか、課題を解決するための手段が一切何も規定されておらず、発明が明確ではない。
本件特許の請求項2に記載されているポリマー粒子は、
(d)「生分解性樹脂(A)を含む」こと、
(e)体積平均粒子径、真球度、比表面積、オレイン酸吸油量、真比重及び融解エンタルピーが特定の範囲であること、
を要件とするものである。
本件特許の請求項2において、要件(e)を満たすための樹脂粒子の構成として記載されているのは、要件(d)のみであり、それ以外の要件について何ら規定されていない。
一方、技術常識を踏まえても、樹脂粒子が、要件(d)を満たしさえすれば、要件(e)を満たすということは困難である。そして、請求項2には、要件(d)に加えて、どのような要件・構成等を備えれば、要件(e)を満たすことが可能となるのか、課題を解決するための手段が一切何も規定されておらず、発明が明確ではない。
本件特許の請求項3及び4についても、引用する請求項1又は2と同様に、課題を解決するための手段が一切何も規定されておらず、発明が明確ではない。
(8)証拠方法
甲第B1号証:国際公開第2020/095702号
甲第B2号証:国際公開第2020/262509号
甲第B3号証:特開2016-222897号公報
甲第B4号証:特開2021-66704号公報
甲第B5号証:繊維学会誌,Vol.29, No.7, p.T-285~T-289,https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1944/29/7/29_7_T285/_pdf/-char/ja、1973年7月10日(発行日)、2008年11月28日(J-STAGE公開日)、社団法人繊維学会
甲第B6号証:環境資源工学,vol.68,No.3,p.143-149
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rpsj/68/3/68_143/_pdf/-char/ja、2022年6月1日(J-STAGE公開日)、一般社団法人 環境資源工学会
甲第B7号証:国際公開第2009/001525号
甲第B8号証:登録実用新案第3228876号公報
甲第B9号証:特開2022-69328号公報
甲第B10号証:特表2012-515243号公報
甲第B11号証:特表2011-503250号公報
甲第B12号証:国際公開第2009/107772号
証拠の表記は、特許異議申立書Bの記載におおむね従った。以下、順に「甲B1」のようにいう。なお、甲B1は甲A1の原出願(特願2019-561328号)の国際公開公報であり、甲A1と同内容の文献である。
第5 取消理由(決定の予告)の概要
令和7年3月24日付けで通知された取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。
(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許の請求項1及び2には「真球度が0.9~1.0であり」及び「真比重が0.90~1.5g/cm3であり」と記載されている。
ここで、「真球度」について、本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0057】に「(真球度の測定)
走査型電子顕微鏡にて1000倍で粒子を観察し、任意の30個の粒子について短径と長径を測定した。各粒子について短径/長径を計算し、30個の粒子の平均値を真球度とした。例えば、短径と長径の比が1.0の場合、真球度は1.0となる。」と記載され、任意の30個の粒子について短径/長径を計算し、30個の粒子の平均値を「真球度」としているが、甲B3においては「真球度」を「樹脂粒子を撮像した画像と同じ投影面積を有する真円の直径から算出した周囲長を、樹脂粒子を撮像した画像の周囲長で除した値である。」(甲B3の【0032】)としている。
すなわち、「真球度」という用語の示すものが、本件特許発明1及び2と甲B3に記載されたものとで異なることになる。
また、「真比重」について、発明の詳細な説明の【0061】に「(真比重の測定)
100mLメスフラスコの重量aを計量し、次に試料を1gメスフラスコに加え重量bを計量した。これにイソプロピルアルコールを100mLの標線まで正確に加え全重量cを計量した。これとは別に、メスフラスコの空重量xを計量し、これにイソプロピルアルコールを標線まで正確に加え全重量yを計量した。これらの計量した値から、以下の数式(5)により真比重を算出した。
真比重=(b-a)×(y-x)/{100×(y-x)-(c-b)} (5)
この測定方法で、樹脂粒子の真比重を測定した。」と記載されており、特許権者は令和6年12月13日に提出された意見書において、本件特許発明1における「真比重」は乙第2号証(上記意見書に添付されて提出されたものである。)に記載された「真密度」ではなく、「見掛け密度」のことである旨主張している。
しかし、「真比重」が、「真密度」のことではなく、「見掛け密度」のことであるというのは、当業者の技術常識に反するものである。
そうすると、請求項1及び2に「真球度」及び「真比重」の測定方法が記載されていない以上、請求項1及び2に記載された事項により特定される本件特許発明1及び2がどのようなものか当業者といえども理解できない。
したがって、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
また、本件特許の請求項1又は2の記載を直接又は間接的に引用して特定する本件特許発明3及び4についても同様であり、本件特許発明3及び4に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
よって、本件特許発明1ないし4は明確であるとはいえない。
第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
取消理由(決定の予告)及び申立理由B7(明確性要件)はいずれも明確性要件であるから、取消理由(決定の予告)と併せて申立理由B7(明確性要件)も検討する。
1 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
2 明確性要件の判断
取消理由(決定の予告)で指摘した明確性要件違反は、発明の詳細な説明の【0057】に記載された「真球度」の測定方法及び【0060】に記載された「真比重」の測定方法が、本件訂正前の請求項1及び2に記載されていないことに起因するものであるところ、本件訂正により、請求項1及び2それぞれに、【0057】に記載された「真球度」の測定方法及び【0060】に記載された「真比重」の測定方法が記載されたことから、取消理由(決定の予告)で指摘した明確性要件違反は解消した。
そこで、改めて検討するに、本件特許の請求項1ないし4の記載は、それら自体に不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明1ないし4に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
3 特許異議申立人Bの申立理由B7における主張について
特許異議申立人Bの申立理由B7における主張について検討する。
特許異議申立人Bの申立理由B7における主張は、要するに、本件特許の請求項1及び2に発明の課題を解決するための手段が一切何も規定されていないから、本件特許発明1及び2は明確でないというものであるが、発明の課題を解決するための手段が請求項に記載されているかどうかは明確性要件の判断と関係がない。なお、下記第7 5のとおり、請求項1及び2には、発明の課題を解決するための手段は記載されており、一切何も規定されていないとはいえない。
したがって、特許異議申立人Bの申立理由B7における主張は採用できない。
4 むすび
したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取消理由(決定の予告)及び申立理由B7によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由(決定の予告)として採用しなかった特許異議申立書A及びBに記載した特許異議申立ての理由について
取消理由(決定の予告)として採用しなかった特許異議申立書A及びBに記載した特許異議申立ての理由は、申立理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性)、申立理由B1(甲B1に基づく新規性・進歩性)、申立理由B2(甲B2に基づく新規性・進歩性)、申立理由B3(甲B3に基づく新規性・進歩性)、申立理由B4(甲B4に基づく新規性・進歩性)、申立理由B5(サポート要件)、申立理由B6(実施可能要件)及び申立理由B7(明確性要件)である。
なお、申立理由B7(明確性要件)については上記第6において検討したとおりである。また、甲A1及び甲B1は実質的に同内容の文献であるから、申立理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性)と申立理由B1(甲B1に基づく新規性・進歩性)は併せて検討する。
1 申立理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性)及び申立理由B1(甲B1に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲A1に記載された事項等
ア 甲A1に記載された事項
甲A1には、「ポリアミド微粒子」に関しておおむね次のとおり記載されている。下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。
・「【請求項1】
ポリアミド4またはポリアミド3の単量体(A)をポリマー(B)の存在下、重合しポリアミド微粒子を製造する方法であって、重合開始時にポリアミド4またはポリアミド3の単量体(A)とポリマー(B)が均一に溶解しており、重合後にポリアミド4またはポリアミド3の微粒子が析出する際、単量体(A)とポリマー(B)の溶解度パラメーター差の二乗が0~25、かつポリアミドとポリマー(B)の溶解度パラメーター差の二乗が0~20の範囲であるポリアミド微粒子の製造方法。」
・「【請求項13】
ポリアミドがポリアミド4またはポリアミド3であり、数平均粒子径が0.1~300μm、粒子径分布指数が3.0以下、真球度が90以上、アマニ油吸油量が100mL/100g以下であるポリアミド微粒子。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が平滑で真球中実な生分解性を有するポリアミド微粒子に関する。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、表面が平滑で真球中実な生分解性を有するポリアミド微粒子を得ることを課題とする。」
・「【発明の効果】
【0018】
本発明の表面が平滑で真球中実な生分解性を有するポリアミド微粒子は、良好な滑り性を示し、塗料、接着剤、インク、トナー光拡散剤、液晶用スペーサー、艶消し剤、ポリマーアロイ用添加剤、各種触媒の担体、クロマトグラフィー担体、自動車部品、航空機部品、電子部品、化粧品の添加剤および医療用担体などに好適に利用できる。更に高い生分解性を有するため、使用後の廃棄が容易となり、環境負荷を低減できる。」
・「【0021】
本発明の生分解性を有するポリアミドとは、ポリアミド4またはポリアミド3である。高い耐熱性を有する点からポリアミド4が好ましい。また、これらは本発明の範囲を損なわなければ、他の共重合体を含んでいても良い。
【0022】
本発明の生分解性を有するポリアミド微粒子の数平均粒子径は、0.1~300μmの範囲である。数平均粒子径が300μmを超えると、粒子から作製した塗膜表面が不均質になる。ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、30μm以下が特に好ましい。数平均粒子径が0.1μm未満であると、粒子同士の凝集が発生する。ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、0.3μm以上が好ましく、0.7μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましく、2μm以上が特に好ましく、3μm以上が最も好ましい。
【0023】
本発明におけるポリアミド微粒子の粒子径分布を示す粒子径分布指数は、3.0以下である。粒子径分布指数が3.0を超えると、塗料や化粧品用途において流動性に劣り、塗膜表面の均質性が損なわれる。粒子径分布指数は2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.3以下がさらに好ましく、1.2以下が特に好ましい。また、その下限値は、理論上1である。
【0024】
なお、ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に100個の粒子直径を特定し、その算術平均を求めることにより算出することが出来る。上記写真において、真円状でない場合、即ち楕円状のような場合は、粒子の最大径をその粒子径とする。粒子径を正確に測定するためには、少なくとも1,000倍以上、好ましくは、5,000倍以上の倍率で測定する。また粒子径分布指数は、上記で得られた粒子径の値を、下記数値変換式に基づき、決定される。
【0025】
【数1】
[図:0001426826000001.jpg]
【0026】
なお、Di:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
【0027】
本発明のポリアミド微粒子は、真球中実な形状に加えて表面が平滑な形態であるため、化粧品や塗料に良好な滑り性や流動性を付与することが可能である。
【0028】
ポリアミド微粒子の真球性を示す真球度は、90以上である。真球度が90に満たない場合には、化粧品や塗料の用途において、より滑らかな感触を与えることができない。真球度は、好ましくは92以上、より好ましくは95以上、さらに好ましくは97以上、特に好ましくは98以上である。またその上限値は、100である。
【0029】
なお、ポリアミド微粒子の真球度は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に30個の粒子を観察し、その短径と長径から下記数式に従い、決定される。
【0030】
【数2】
[図:0001426826000002.jpg]
【0031】
なお、S:真球度、a:長径、b:短径、n:測定数30とする。
【0032】
ポリアミド微粒子の中実性と表面の平滑性とは、ポリアミド微粒子がアマニ油を吸収する量で表すことが可能である。即ち、表面が平滑であるほど表面に孔の存在しない微粒子となり、アマニ油の吸収量を示すアマニ油吸油量が少なくなる。また、中実であるほど、例えば中空粒子のように、内部にアマニ油を担持できなくなるため、吸油量が少なくなる。本発明のポリアミド微粒子のアマニ油吸油量は、100mL/100g以下である。ポリアミド微粒子のアマニ油吸油量が100mL/100gを超えると、中空や多孔質粒子となり、化粧品や塗料に良好な流動性を与えることができない。ポリアミド微粒子のアマニ油吸油量は90mL/100g以下が好ましく、80mL/100g以下がより好ましく、70mL/100g以下がさらに好ましく、60mL/100g以下が特に好ましい。アマニ油吸油量の下限は0mL/100g以上である。
【0033】
なお、アマニ油吸油量は、日本工業規格(JIS規格)JIS K 5101(2004)「顔料試験方法 精製あまに油法」に準じて測定される。
【0034】
また表面の平滑性は、ガス吸着によるBET比表面積によっても表すことが可能であり、表面が平滑であるほど、BET比表面積は小さくなる。具体的には、10m2/g以下であることが好ましく、より好ましくは5m2/g以下であり、さらに好ましくは3m2/g以下であり、特に好ましくは1m2/g以下であり、最も好ましくは0.5m2/g以下である。
【0035】
なおBET比表面積は、日本工業規格(JIS規格)JIS R 1626(1996)「気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準じて測定される。」
・「【実施例】
【0072】
以下本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
(1)平均粒子径および粒子径分布指数
ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に100個の粒子直径を特定し、その算術平均を求めることにより算出した。上記写真において、真円状でない場合、即ち楕円状のような場合は、粒子の最大径をその粒子径とした。また粒子径分布指数は、上記で得られた粒子径の値を、下記数値変換式に基づき算出した。
【0074】
【数4】
[図:0001426826000003.jpg]
【0075】
なお、Di:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
【0076】
(2)真球度
ポリアミド微粒子の真球度は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に30個の粒子を観察し、その短径と長径から下記数式に従い算出した。
【0077】
【数5】
[図:0001426826000004.jpg]
【0078】
なお、S:真球度、a:長径、b:短径、n:測定数30とする。
【0079】
(3)アマニ油吸油量
日本工業規格(JIS規格)JIS K 5101(2004)「顔料試験方法 精製あまに油法」に準じ、ポリアミド微粒子約100mgを時計皿の上に精秤し、精製アマニ油(関東化学株式会社製)をビュレットで1滴ずつ徐々に加え、パレットナイフで練りこんだ後に、試料の塊ができるまで滴下-練りこみを繰り返し、ペーストが滑らかな硬さになった点を終点とし、滴下に使用した精製アマニ油の量から吸油量(mL/100g)を算出した。
【0080】
(4)BET比表面積
日本工業規格(JIS規格)JIS R 1626(1996)「気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に従い、日本ベル製BELSORP-maxを用いて、ポリアミド微粒子約0.2gをガラスセルに入れ、80℃で約5時間減圧脱気した後に、液体窒素温度におけるクリプトンガス吸着等温線を測定し、BET法により算出した。
【0081】
(5)ポリアミド微粒子を構成するポリアミドの結晶化温度と融点
TAインスツルメント社製示差走査熱量計(DSCQ20)を用いて、窒素雰囲気下、30℃からポリアミドの融点を示す吸熱ピークまで20℃/分の速度で昇温した後に1分間保持し、20℃/分の速度で30℃まで温度を冷却させる際に出現する発熱ピークの頂点を結晶化温度とした。30℃から20℃/分で昇温した際の吸熱ピークを融点とした。測定に要したポリアミド微粒子は約8mgである。」
・「【0085】
[実施例1]
100mLのオートクレーブに4-アミノ酪酸(和光純薬工業株式会社製特級、SP値21.0計算)4g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000、SP値21.3)6g、溶媒として水10gを加え密封後、窒素で10kg/cm2まで置換した。窒素を放出させながら系の圧力を0.1kg/cm2に調整後、温度を240℃まで昇温させた。この際、系の圧力が10kg/cm2に達した後、圧が10kg/cm2を維持するよう水蒸気を微放圧させながら制御した。温度が240℃に達した後に、0.2kg/cm2・分の速度で放圧させ重合を開始した。この時点で内溶液は均一透明であった。温度を255℃まで上昇させながら系内の圧力を0kg/cm2にまで低下させ、0kg/cm2になると同時に窒素を1時間流しながら加熱を維持し重合を完了させた。なお重合後は、内溶液が懸濁していた。窒素を再度10kg/cm2まで充填後、室温まで冷却させた。得られた固形物に水を加え80℃に加熱し、溶解物を溶かした。得られたスラリー液のろ過を行い、ろ上物に水40gを加え、80℃で洗浄を行った。その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、粉末を2.8g得た。また、200μm超の凝集物は存在しなかった。得られた粉末の融点はポリアミド4と同様の265℃、結晶化温度は230℃であり、分子量は45,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド4粉末は真球の微粒子形状であり、数平均粒子径は10.1μm、粒子径分布指数は1.31、真球度は97、アマニ油吸油量は65mL/100g、BET比表面積は0.75m2/gであり、R=1.1で中実な形態である。生分解性の評価では1か月後に30%分解した。なおポリアミド4のSP値は、22.9である。また、得られたポリアミド4微粒子の特性を表1、走査型電子顕微鏡写真の結果を図1に示す。」
・「【0090】
[実施例6]
100mLのオートクレーブに2-ピロリドン(和光純薬工業株式会社製特級、SP値22.5計算)4g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000、分子量18,600、SP値21.3)6g、触媒として水素化ナトリウム0.1gを加え、窒素置換を行った後に、温度を210℃で1時間反応させた。室温まで冷却後、実施例1と同様の方法で粒子の洗浄、単離を行い、粉末を3.2gで得た。重合開始時点では均一溶液、重合後は懸濁溶液であった。得られた粉末の融点はポリアミド4と同様の265℃、結晶化温度は231℃であり、分子量は82,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド4粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は5.4μm、粒子径分布指数1.58、真球度は95、アマニ油吸油量は60mL/100gであり、生分解性の評価では1か月後に25%分解した。また、得られたポリアミド4微粒子の特性を表1に示す。
【0091】
[実施例7]
ポリエチレングリコールをポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社1級3000、分子量5,200、SP値18.7)、水素化ナトリウムをカリウム-tert-ブトキシド、N-アシル-カプロラクタム0.1gの使用、温度を210℃から50℃に変更した以外は、実施例6と同様の方法で重合した。洗浄溶媒には、イソプロパノールを用い粉末を2.2g得た。得られた粉末の融点はポリアミド4と同様の260℃、結晶化温度は232℃であり、分子量は17,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド4粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は5.8μm、粒子径分布指数1.12、真球度は90、アマニ油吸油量は76mL/100gであり、生分解性の評価では1か月後28%分解した。また、得られたポリアミド4微粒子の特性を表1、走査型電子顕微鏡写真の結果を図2に示す。
【0092】
[実施例8]
分子量の異なるポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社1級4000、分子量7,000、SP値18.7)に変更した以外は、実施例7と同様の方法で重合し、粉末を2.5g得た。得られた粉末の融点はポリアミド4と同様の260℃、結晶化温度は233℃であり、分子量は23,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド4粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は5.2μm、粒子径分布指数1.13、真球度は90、アマニ油吸油量は75mL/100gであり、生分解性の評価では1か月後に30%分解した。また、得られたポリアミド4微粒子の特性を表1に示す。
【0093】
[実施例9]
分子量の異なるポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社1級1000、分子量2,500、SP値18.7)に変更した以外は、実施例7と同様の方法で重合し、粉末を2.2g得た。得られた粉末の融点はポリアミド4と同様の262℃、結晶化温度は234℃であり、分子量は15,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド4粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は25.8μm、粒子径分布指数1.82、真球度は90、アマニ油吸油量は72mL/100gであり、生分解性の評価では1か月後に27%分解した。また、得られたポリアミド4微粒子の特性を表1に示す。」
・「【0097】
【表1】
[図:0001426826000005.jpg]
」
・「【図1】
[図:0001426826000006.jpg]
」
イ 甲A1に記載された発明
(ア)甲A1発明a
甲A1に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲A1には次の発明(以下、「甲A1発明a」という。)が記載されていると認める。
<甲A1発明a>
「100mLのオートクレーブに4-アミノ酪酸(和光純薬工業株式会社製特級、SP値21.0計算)4g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000、SP値21.3)6g、溶媒として水10gを加え密封後、窒素で10kg/cm2まで置換し、窒素を放出させながら系の圧力を0.1kg/cm2に調整後、温度を240℃まで昇温させ、この際、系の圧力が10kg/cm2に達した後、圧が10kg/cm2を維持するよう水蒸気を微放圧させながら制御し、温度が240℃に達した後に、0.2kg/cm2・分の速度で放圧させ重合を開始し、温度を255℃まで上昇させながら系内の圧力を0kg/cm2にまで低下させ、0kg/cm2になると同時に窒素を1時間流しながら加熱を維持し重合を完了させ、窒素を再度10kg/cm2まで充填後、室温まで冷却させ、得られた固形物に水を加え80℃に加熱し、溶解物を溶かし、得られたスラリー液のろ過を行い、ろ上物に水40gを加え、80℃で洗浄を行い、その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、得た、真球の微粒子形状であり、数平均粒子径は10.1μm、粒子径分布指数は1.31、真球度は97、アマニ油吸油量は65mL/100g、BET比表面積は0.75m2/gである2.8gの粉末。」
(イ)甲A1発明b
甲A1に記載された事項を、特に【請求項13】、【0022】、【0023】、【0028】、【0032】及び【0034】に関して整理すると、甲A1には次の発明(以下、「甲A1発明b」という。)が記載されていると認める。
<甲A1発明b>
「生分解性樹脂であるポリアミド4を含み、数平均粒子径が1μm以上50μm以下であり、粒子径分布指数が3.0以下であり、比表面積が3m2/g以下であり、真球度が90以上100以下であり、アマニ油吸油量が100mL/100g以下であるポリアミド微粒子。」
(2)甲A1発明aとの対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲A1発明aを対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「生分解性樹脂(A)を含み、比表面積が0.7~3.0m2/gである樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A1-1a―1>
本件特許発明1においては、「体積平均粒子径が1~50μmであり、下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり」、「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり」と特定されているのに対し、甲A1発明aにおいては、そのようには特定されていない点(当審注:「下記測定方法」については上記第3の【請求項1】を参照。以下、同様。)。
<相違点A1-1a―2>
本件特許発明1においては、「前記生分解性樹脂(A)が、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂粒子」と特定されているのに対し、甲A1発明aにおいては、「100mLのオートクレーブに4-アミノ酪酸(和光純薬工業株式会社製特級、SP値21.0計算)4g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000、SP値21.3)6g、溶媒として水10gを加え密封後、窒素で10kg/cm2まで置換し、窒素を放出させながら系の圧力を0.1kg/cm2に調整後、温度を240℃まで昇温させ、この際、系の圧力が10kg/cm2に達した後、圧が10kg/cm2を維持するよう水蒸気を微放圧させながら制御し、温度が240℃に達した後に、0.2kg/cm2・分の速度で放圧させ重合を開始し、温度を255℃まで上昇させながら系内の圧力を0kg/cm2にまで低下させ、0kg/cm2になると同時に窒素を1時間流しながら加熱を維持し重合を完了させ、窒素を再度10kg/cm2まで充填後、室温まで冷却させ、得られた固形物に水を加え80℃に加熱し、溶解物を溶かし、得られたスラリー液のろ過を行い、ろ上物に水40gを加え、80℃で洗浄を行い、その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、得た」「粉末」と特定されている点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点A1-1a―2について検討する。
甲A1発明aにおいて「100mLのオートクレーブに4-アミノ酪酸(和光純薬工業株式会社製特級、SP値21.0計算)4g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000、SP値21.3)6g、溶媒として水10gを加え密封後、窒素で10kg/cm2まで置換し、窒素を放出させながら系の圧力を0.1kg/cm2に調整後、温度を240℃まで昇温させ、この際、系の圧力が10kg/cm2に達した後、圧が10kg/cm2を維持するよう水蒸気を微放圧させながら制御し、温度が240℃に達した後に、0.2kg/cm2・分の速度で放圧させ重合を開始し、温度を255℃まで上昇させながら系内の圧力を0kg/cm2にまで低下させ、0kg/cm2になると同時に窒素を1時間流しながら加熱を維持し重合を完了させ、窒素を再度10kg/cm2まで充填後、室温まで冷却させ、得られた固形物に水を加え80℃に加熱し、溶解物を溶かし、得られたスラリー液のろ過を行い、ろ上物に水40gを加え、80℃で洗浄を行い、その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、得た」樹脂はポリアミド系樹脂であり、本件特許発明1において特定される「ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種」ではないから、相違点A1-1a―2は実質的な相違点である。
また、甲A1には、上記ポリアミド系樹脂を「ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種」にする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもない。
したがって、甲A1発明aにおいて相違点A1-1a―2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「透明性及びすべり性に優れる。」及び「環境に優しい」(本件特許の発明の詳細な説明の【0006】)という、甲A1発明a並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A1発明aであるとはいえないし、甲A1発明a並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2について
(ア)対比
本件特許発明2と甲A1発明aを対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「生分解性樹脂(A)を含み、表面積が0.7~3.0m2/gである樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点A1-2a―1>
本件特許発明2においては、「体積平均粒子径が1~50μmであり、下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり」、「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり、
融解エンタルピーが20~120J/gである」と特定されているのに対し、甲A1発明aにおいては、そのようには特定されていない点。
<相違点A1-2a―2>
本件特許発明2においては、「樹脂粒子(但し、ポリアミド粒子を除く)」と特定されているのに対し、甲A1発明aにおいては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点A1-2a―2について検討する。
甲A1発明aにおいて「100mLのオートクレーブに4-アミノ酪酸(和光純薬工業株式会社製特級、SP値21.0計算)4g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000、SP値21.3)6g、溶媒として水10gを加え密封後、窒素で10kg/cm2まで置換し、窒素を放出させながら系の圧力を0.1kg/cm2に調整後、温度を240℃まで昇温させ、この際、系の圧力が10kg/cm2に達した後、圧が10kg/cm2を維持するよう水蒸気を微放圧させながら制御し、温度が240℃に達した後に、0.2kg/cm2・分の速度で放圧させ重合を開始し、温度を255℃まで上昇させながら系内の圧力を0kg/cm2にまで低下させ、0kg/cm2になると同時に窒素を1時間流しながら加熱を維持し重合を完了させ、窒素を再度10kg/cm2まで充填後、室温まで冷却させ、得られた固形物に水を加え80℃に加熱し、溶解物を溶かし、得られたスラリー液のろ過を行い、ろ上物に水40gを加え、80℃で洗浄を行い、その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、得た」「粉末」はポリアミド粒子であり、本件特許発明1において特定される「樹脂粒子(但し、ポリアミド粒子を除く)」ではないから、相違点A1-2a―2は実質的な相違点である。
また、甲A1には、上記「粉末」を「樹脂粒子(但し、ポリアミド粒子を除く)」とする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもない。
したがって、甲A1発明aにおいて相違点A1-2a―2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明2は「透明性及びすべり性に優れる。」及び「環境に優しい」という、甲A1発明a並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲A1発明aであるとはいえないし、甲A1発明a並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明3及び4について
本件特許発明3及び4はいずれも請求項1又は2を引用して特定するものであり、本件特許発明1又は2における発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は2と同様に、甲A1発明aであるとはいえないし、甲A1発明a並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
なお、特許異議申立人Aは、実施例8に関して整理した発明に基づく新規性・進歩性も主張しているが、実施例8に関して整理した発明と本件特許発明1ないし4のいずれかと対比した場合も、相違点A1-1a―2又は相違点A1-2a―2と同じ相違点があることから、同様に判断される。
(3)甲A1発明bとの対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲A1発明bを対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「生分解性樹脂(A)を含み、比表面積が0.7~3.0m2/gである樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A1-1b―1>
本件特許発明1においては、「体積平均粒子径が1~50μmであり、下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり」、「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり」と特定されているのに対し、甲A1発明bにおいては、そのようには特定されていない点。
<相違点A1-1b―2>
本件特許発明1においては、「前記生分解性樹脂(A)が、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む」と特定されているのに対し、甲A1発明bにおいては、「ポリアミド微粒子」と特定されている点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点A1-1b―2について検討する。
相違点A1-1b―2が実質的な相違点であることは明らかである。
そして、甲A1には、上記「ポリアミド微粒子」をポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種の微粒子にする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもない。
したがって、甲A1発明bにおいて相違点A1-1b―2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「透明性及びすべり性に優れる」及び「環境に優しい」という、甲A1発明b並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A1発明bであるとはいえないし、甲A1発明b並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2について
(ア)対比
本件特許発明2と甲A1発明bを対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「生分解性樹脂(A)を含み、比表面積が0.7~3.0m2/gである樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点A1-2b―1>
本件特許発明2においては、「体積平均粒子径が1~50μmであり、下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり」、「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり、
融解エンタルピーが20~120J/gである」と特定されているのに対し、甲A1発明bにおいては、そのようには特定されていない点。
<相違点A1-2b―2>
本件特許発明2においては、「樹脂粒子(但し、ポリアミド粒子を除く)」と特定されているのに対し、甲A1発明bにおいては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点A1-2b―2について検討する。
相違点A1-2b―2が実質的な相違点であることは明らかである。
また、甲A1には、上記「ポリアミド微粒子」を「樹脂粒子(但し、ポリアミド粒子を除く)」をする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもない。
したがって、甲A1発明bにおいて相違点A1-2b―2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明2は「透明性及びすべり性に優れる」及び「環境に優しい」という、甲A1発明b並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲A1発明bであるとはいえないし、甲A1発明b並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明3及び4について
本件特許発明3及び4はいずれも請求項1又は2を引用して特定するものであり、本件特許発明1又は2における発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は2と同様に、甲A1発明bであるとはいえないし、甲A1発明b並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)申立理由A1及び申立理由B1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A1及び申立理由B1によっては取り消すことはできない。
2 申立理由B2(甲B2に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲B2に記載された事項等
ア 甲B2に記載された事項
甲B2には、「生分解性樹脂粒子及びそれを含有する外用剤」に関しておおむね次のとおり記載されている。
・「背景技術
[0002] 樹脂粒子は、大きな比表面積及び粒子の構造を利用して、各種材料の改質及び改良に用いられている。主要用途としては、ファンデーション、制汗剤、スクラブ剤等の化粧品用の配合剤、塗料用艶消し剤、レオロジー改質剤、ブロッキング防止剤、滑り性付与剤、光拡散剤、医療用診断検査剤等の各種剤、自動車材料、建築材料等の成形品への添加剤等の用途が挙げられる。樹脂粒子としては、例えば、ウレタン、アクリル、シリコーン、ポリエチレン等が挙げられる。」
・「[0007] 本発明の課題は、粒子径が小さく、肌に適用した場合、肌への付着性と肌上での軽やかな伸びに優れる生分解性樹脂粒子及びそれを含有する外用剤を提供することである。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明は、下記の[1]、[2]に関する。
[1]ポリヒドロキシアルカノエートからなる生分解性樹脂粒子であり、粒子中に含まれるCa成分量が10~10,000ppmであり、体積平均粒子径が2~50μmであり、BET比表面積が0.8~10m2/gであり、アマニ油吸油量が50~300ml/100gである、生分解性樹脂粒子。
[2][1]に記載の生分解性樹脂粒子を含む、外用剤。」
・「[0010][図1]実施例1の生分解性樹脂粒子のSEM写真である。」
・「[0012] 本発明の生分解性樹脂粒子は体積平均粒子径が2~50μmである。体積平均粒子径が2μmより小さいと肌への滑りが悪くなる事がある。体積平均粒子径が50μmより大きいと、外用剤などで肌に使用した際に感触が悪くなる傾向がある。好ましい範囲は3~45μm、より好ましい範囲は5~35μm、更に好ましい範囲は8~30μm、更に好ましい範囲は8~25μm、更に好ましい範囲は8~20μmである。体積平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定される。」
・「[0014] 本発明の生分解性樹脂粒子はBET比表面積が0.8~10m2/gである。比表面積が0.8より低いと粒子の比重が重くなり、沈降し易くなる為、外用剤の調液時のハンドリング性が低下し、好ましくない。比表面積が10m2/gより高いと、表面が大きな凹凸構造あるいは多孔質形状となるため、粒子強度が低く、保存安定性が低下する為、好ましくない。好ましい範囲は0.9~8m2/g、より好ましい範囲は1~5m2/gである。BET比表面積は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
[0015] 本発明の生分解性樹脂粒子はアマニ油吸油量が50~300ml/100gである。アマニ油吸油量が50ml/100gより低いと、肌への滑り性が低下する事がある。吸油量が300ml/100gより高いと、外用剤やリキッドファンデーションの調液時に粘度増加しやすく、ハンドリング性が著しく低下する為好ましくない。好ましい範囲は55~250ml/100g、より好ましい範囲は60~200ml/100gである。アマニ油吸油量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。」
・「[0022] 上記製造方法によれば、通常生分解性樹脂の微粒子化法でよく用いられる皮膚刺激性のある有機溶媒(例えば、キシレン、トルエン、n-メチルピロリドン、クロロホルム、塩化メチレン、ジオキソラン、THF等)を用いることなく、安全性の高いアルコール溶媒を使用しており、球状で、小粒子径で、粒度分布の狭い生分解性樹脂粒子を製造できる。また、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートは、生分解性を有し、かつ低皮膚刺激性であるため、化粧品のような用途で用いる際の残留による悪影響を抑制できる。加えて、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートは、高温で生分解性樹脂を溶解又は可塑化するが、常温では生分解性樹脂を溶解しないので、これらアルコール系溶媒を容易に再利用でき、工業的に有利である。この製造方法により得られた生分解性樹脂粒子は、他の製造方法により得られた粒子に比べ、吸油特性に優れるという効果を有する。」
・「[0060]製造例1
2Lの石英ガラスポットミルに5mmジルコニアビーズ3,500g、シランカップリング剤で処理された炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、ACTIFORT700;1次粒子径:20nm)100g、イオン交換水450g、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)450gを添加したものをボールミル回転架台で周速100rpmで24時間処理する事で炭酸カルシウム分散液を得た。」
・「[0062]実施例1
撹拌翼及び温度計を取り付けた2Lオートクレーブに生分解性樹脂として3-ヒドロキシヘキサノエートと3-ヒドロキシブチレートとの共重合体樹脂(Danimer社製DAN-01210;融点Tmax142℃)を120g、溶媒として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール486g、イオン交換水486g、分散安定剤として製造例1で得られた炭酸カルシウム分散液120gを投入し、回転数600rpmで攪拌しながら内温が142℃となるように加熱し、142℃到達後、60分乳化した。その後、撹拌回転数を維持したまま30℃まで1時間かけて冷却し、懸濁液を得た。得られた懸濁液に20%塩酸を50g(必要モル数の1.14倍)加え、10分間攪拌して炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離機(タナベウィルテック社製)を用いて生分解性樹脂粒子を分離し、得られた生分解性樹脂粒子を樹脂の添加量に対して20倍量のイオン交換水を用いて洗浄した。次に、得られた生分解性樹脂粒子を60℃、真空度0.05MPaの条件にて20時間に亘って乾燥した。目開き45μmのスクリーンを設置した分級機(東洋ハイテック社製 商品名「ハイボルターNR300」)を用意した。分級機を用いて生分解性樹脂粒子を相対湿度が20%の空気雰囲気下にて分級した。生分解性樹脂粒子を相対湿度が20%の空気の流れにのせて、生分解性樹脂粒子をスクリーンに衝突させ、スクリーンの網目を通過しない粒子を除去することによって粒径の大きな粒子を除去し、生分解性樹脂を得た。」
・「[0076] 実施例1~8及び比較例1~5で使用した原料の種類、量、及び乳化温度と、実施例1~8及び比較例1~5で得られた生分解樹脂粒子における体積平均粒子径、変動係数、BET比表面積、アマニ油吸油量、10%圧縮強度、灰分、Ca成分量、及び実施例1~8及び比較例1~5で得られた生分解性樹脂粒子を配合したファンデーションの付着性、及び伸びの官能評価を表1、2にまとめて示す。
[0077]
[表1]
[図:0001426826000007.jpg]
」
・「
[図:0001426826000008.jpg]
」
イ 甲B2に記載された発明
甲B2に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲B2には次の発明(以下、「甲B2発明」という。)が記載されていると認める。
<甲B2発明>
「撹拌翼及び温度計を取り付けた2Lオートクレーブに生分解性樹脂として3-ヒドロキシヘキサノエートと3-ヒドロキシブチレートとの共重合体樹脂(Danimer社製DAN-01210;融点Tmax142℃)を120g、溶媒として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール486g、イオン交換水486g、分散安定剤として炭酸カルシウム分散液(2Lの石英ガラスポットミルに5mmジルコニアビーズ3,500g、シランカップリング剤で処理された炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、ACTIFORT700;1次粒子径:20nm)100g、イオン交換水450g、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)450gを添加したものをボールミル回転架台で周速100rpmで24時間処理する事で得た炭酸カルシウム分散液。)120gを投入し、回転数600rpmで攪拌しながら内温が142℃となるように加熱し、142℃到達後、60分乳化し、その後、撹拌回転数を維持したまま30℃まで1時間かけて冷却し、懸濁液を得、得られた懸濁液に20%塩酸を50g(必要モル数の1.14倍)加え、10分間攪拌して炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離機(タナベウィルテック社製)を用いて生分解性樹脂粒子を分離し、得られた生分解性樹脂粒子を樹脂の添加量に対して20倍量のイオン交換水を用いて洗浄し、次に、得られた生分解性樹脂粒子を60℃、真空度0.05MPaの条件にて20時間に亘って乾燥し、目開き45μmのスクリーンを設置した分級機(東洋ハイテック社製 商品名「ハイボルターNR300」)を用いて生分解性樹脂粒子を相対湿度が20%の空気雰囲気下にて分級し、生分解性樹脂粒子を相対湿度が20%の空気の流れにのせて、生分解性樹脂粒子をスクリーンに衝突させ、スクリーンの網目を通過しない粒子を除去することによって粒径の大きな粒子を除去し、得た、体積平均粒子径が17.72μm、BET比表面積が1.83m2/g、アマニ油吸油量が101mg/100gである生分解性樹脂。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲B2発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり、
前記生分解性樹脂(A)が、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点B2-1>
本件特許発明1においては「下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり」、「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり」と特定されているのに対し、甲B2発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点B2-1について検討する。
特許権者が令和6年12月13日に提出した意見書に添付された乙第1号証(実験成績証明書)によると、甲B2発明の認定の根拠となった実施例1の「下記測定方法で測定される真球度」は0.8と計算される。
そうすると、相違点B2-1は実質的な相違点である。
また、甲B2には、甲B2発明において、「下記測定方法で測定される真球度」を「0.9~1.0」とする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもない。
したがって、甲B2発明において相違点B2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「透明性及びすべり性に優れる」及び「環境に優しい」という、甲B2発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲B2発明であるとはいえないし、甲B2発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
なお、特許異議申立人Bは、令和7年2月4日に提出された意見書において、「しかしながら、乙第1号証の測定方法は、SEM写真中で短径及び長径の測定が可能な全粒子25個の測定を行っただけのものであり、本件特許の明細書で規定される真球度の測定方法と同じものではないから、乙第1号証で主張する数値を、本件特許の真球度というべきものではない。
さらに、本件特許においては、短径及び長径の測定手段・数字の取扱等について何ら規定されておらず、乙第1号証の真球度の測定方法と本件特許の真球度の測定方法が同じであるということはできない。そもそも、乙第1号証で使用した甲第B2号証の図1のSEM写真は、不鮮明なもので、このようなSEM写真に基づく主張は、到底採用できるものではない。
甲B2発明の粒子は、甲第2号証の段落0022(摘記2d)にあるとおり、「球状の粒子」であり、球状であるとされていることを踏まえると、その真球度は1.0に近いものであるか、0.9以上であるといえる。
これより、甲B2発明の粒子の真球度が0.9~1.0ではない旨の特許権者の主張は、到底採用できるものではない。」(上記意見書第4ページ)旨主張する。
そこで、検討する。
特許権者の主張は、甲B2発明における「下記測定方法で測定される真球度」は「0.9~1.0」ではないことについて、粒子の個数は若干少ないものの具体的な証拠(乙第1号証(実験成績証明書))に基づくものであるのに対し、特許異議申立人Bの上記主張は、甲B2発明における「下記測定方法で測定される真球度」が「0.9~1.0」であることの具体的な証拠を示すものではないし、また、「球状」と概して表現される形状であれば「下記測定方法で測定される真球度」は必ず「0.9以上である」ことが当業者の技術常識であることの証拠を示している訳でもない。
したがって、特許異議申立人Bの上記主張は採用することはできない。
(3)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2と甲B2発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、比表面積が0.7~3.0m2/gである樹脂粒子(但し、ポリアミド粒子を除く)。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点B2-2>
本件特許発明2においては「下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり」、「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり、
融解エンタルピーが20~140J/gである」と特定されているのに対し、甲B2発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点B2-2について検討する。
上記(2)アのとおり、甲B2発明の認定の根拠となった実施例1の「下記測定方法で測定される真球度」は0.8と計算される。
そうすると、相違点B2-2は実質的な相違点である。
また、甲B2には、甲B2発明において、「下記測定方法で測定される真球度」を「0.9~1.0」とする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもない。
したがって、甲B2発明において相違点B2-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明2は「透明性及びすべり性に優れる」及び「環境に優しい」という、甲B2発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明2は甲B2発明であるとはいえないし、甲B2発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明3及び4について
本件特許発明3及び4はいずれも請求項1又は2を引用して特定するものであり、本件特許発明1又は2における発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は2と同様に、甲B2発明であるとはいえないし、甲B2発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)申立理由B2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由B2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由B3(甲B3に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲B3に記載された事項等
ア 甲B3に記載された事項
甲B3には、「熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子、その製造方法及びその用途」に関しておおむね次のとおり記載されている。
・「【請求項1】
真球度が0.90~1.00、かつ光散乱指数が0.5~1.0、かつアマニ油吸油量が30~150mL/100gである熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である請求項1に記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクタム、ナイロン12及びナイロン6からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、生分解性を有し、かつポリエステル系樹脂及びポリエーテル系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である請求項1~3のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子が、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3メチル-1-ブチルアセテート(アルコキシ基の炭素数は1~5個)を含む溶媒、水及び分散安定剤の存在下、熱可塑性樹脂を100℃以上の温度で乳化・分散し、その後冷却することで得られる熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子を配合した化粧料。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子を配合したコーティング材料。」
・「【0015】
更に、略球状粒子は、1~500μmの体積平均粒子径を有することが好ましい。略球状粒子は用途に応じて様々な粒子径を使用することができる。例えば、ファンデーション用途の場合は3~20μm、スクラブ剤の場合は、200~500μm、塗料用途の場合は3~100μm等、用途に応じて適宜選択することができる。平均粒子径の測定法は、実施例の欄に記載する。」
・「【0017】
本発明の製造方法は、一般に粒子化が困難である生分解性を有し、かつポリエステル系樹脂及びポリエーテル系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂にも適用できる。そのような樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトン等のポリエステル系樹脂が挙げられる。」
・「【0031】
(真球度の測定)
フロー式粒子像分析装置(商品名「FPIA(登録商標)-3000S」、シスメックス社製)を用いて測定する。
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mLに、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩0.05gを加えて界面活性剤水溶液を得る。その後、上記界面活性剤水溶液に、測定対象の樹脂粒子群0.2gを加え、分散機としてBRANSON社製の超音波分散機「BRANSON SONIFIER 450」(出力400W、周波数20kHz)を用いて超音波を5分間照射して、樹脂粒子群を界面活性剤水溶液中に分散させる分散処理を行い、測定用の分散液を得る。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した上記フロー式粒子像分析装置を用い、上記フロー式粒子像分析装置に使用するシース液としては、パーティクルシース(商品名「PSE-900A」、シスメックス社製)を使用する。上記手順に従い調整した測定用の分散液を上記フロー式粒子像分析装置に導入し、下記測定条件にて測定する。
【0032】
測定モード:HPF測定モード
粒子径の測定範囲:2.954μm~30.45μm
粒子の真球度の測定範囲:0.5~1.0
粒子の測定個数:1000個
測定にあたっては、測定開始前に標準ポリマー粒子群の懸濁液(例えば、Thermo Fisher Scientific社製の「5200A」(標準ポリスチレン粒子群をイオン交換水で希釈したもの))を用いて上記フロー式粒子像分析装置の自動焦点調整を行う。なお、真球度は、樹脂粒子を撮像した画像と同じ投影面積を有する真円の直径から算出した周囲長を、樹脂粒子を撮像した画像の周囲長で除した値である。」
・「【0036】
(アマニ油吸油量の測定)
樹脂粒子のアマニ油吸油量は、JIS K 5101-13-2-2004の測定方法を参考にして、煮アマニ油に代えて精製アマニ油を使用し、終点の判断基準を変更した(「測定板を垂直に立てた時にペースト(樹脂粒子及び生成アマニ油の混錬物)が流動を始める」点に変更した)方法によって、測定する。アマニ油吸油量の測定の詳細は、以下の通りである。
(A)装置及び器具
測定板:300×400×5mmより大きい平滑なガラス板
パレットナイフ(ヘラ):鋼製又はステンレス製の刃を持った柄つきのもの
化学はかり(計量器):10mgオーダーまで計れるもの
ビュレット:JIS R 3505:1994に規定する容量10mLのもの
(B)試薬
精製アマニ油:ISO 150:1980に規定するもの(今回は一級アマニ油(和光純薬工業社製)を用いる)
【0037】
(C)測定方法
(1)樹脂粒子1gを測定板上の中央部に取り、精製アマニ油をビュレットから一回に4、5滴ずつ、徐々に樹脂粒子の中央に滴下し、その都度、樹脂粒子及び精製アマニ油の全体をパレットナイフで充分練り合わせる。
(2)上記の滴下及び練り合わせを繰り返し、樹脂粒子及び精製アマニ油の全体が固いパテ状の塊になったら1滴ごとに練り合わせて、精製アマニ油の最後の1滴の滴下によりペースト(樹脂粒子及び精製アマニ油の混練物)が急激に軟らかくなり、流動を始める点を終点とする。
(3)流動の判定
精製アマニ油の最後の1滴の滴下により、ペーストが急激に軟らかくなり、測定板を垂直に立てた時にペーストが動いた場合に、ペーストが流動していると判定する。測定板を垂直に立てた時もペーストが動かない場合には、更に精製アマニ油を1滴加える。
(4)終点に達したときの精製アマニ油の消費量をビュレット内の液量の減少分として読み取る。
(5)1回の測定時間は7~15分以内に終了するように実施し、測定時間が15分を超えた場合は再測定し、規定の時間内で測定を終了した時の数値を採用する。
【0038】
(D)アマニ油吸油量の計算
下記式により試料100g当たりのアマニ油吸油量を計算する。
O=(V/m)×100
ここで、O:アマニ油吸油量(mL/100g)、m:樹脂粒子の重量(g)、V:消費した精製アマニ油の容量(mL)」
・「【0042】
(実施例1)
300mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R) 品番:FZ71PD)を20g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)60g、イオン交換水100g、分散剤として10%第三リン酸カルシウム水溶液(太平化学産業社製TCP-10U)20g、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.24gを投入し、反応温度(加熱撹拌温度)120℃、撹拌回転数400rpmにて90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0043】
(実施例2)
300mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R) 品番:FZ71PD)を20g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)60g、イオン交換水120g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)1.5gを分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数400rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0044】
(実施例3)
300mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R) 品番:FZ71PD)を40g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)60g、イオン交換水100g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)3gを分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数400rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0045】
(実施例4)
300mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R) 品番:FZ71PD)を20g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)60g、イオン交換水120g、界面活性剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェノルエーテル(第一工業製薬社製 製品名;ノイゲンEA-167)を0.12g、分散剤として、疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)1.5gを分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数400rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0046】
(実施例5)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R) 品番:FZ71PD)を120g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)360g、イオン交換水720g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)を6g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数400rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0047】
(実施例6)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R) 品番:FZ71PD)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)420g、イオン交換水540g、分散剤として疎水性シリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)を18g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数600rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0048】
(実施例7)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R) 品番:FZ91PD)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)480g、イオン交換水480g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL((R)R972)を18g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数600rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0049】
(実施例8)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R) 品番:FZ71PD)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)480g、イオン交換水480g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R976S)を12g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数600rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0050】
(実施例9)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R) 品番:FZ71PD)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)480g、イオン交換水240g、分散剤として10%第三リン酸カルシウム水溶液(太平化学産業社製 TCP-10U)240g、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.48gを投入し、反応温度(加熱撹拌温度)120℃、撹拌回転数600rpmにて90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで 30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0051】
(実施例10)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリ乳酸(ユニチカ社製 テラマック(R) 品番:TE-2500)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィット ファイングレード)480g、イオン交換水480g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)を18g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度140℃、撹拌回転数600rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付することで略球状粒子を得た。
【0052】
(実施例11)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂として3-ヒドロキシブチレート/3-ヒドロキシヘキサノエートの共重合体(カネカ社製 カネカバイオポリマーアオニレックス(R) 品番:X131A)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)480g、イオン交換水480g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)974)を24g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度130℃、撹拌回転数600rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急例(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付することで略球状粒子を得た。
【0053】
(比較例1)
アイカ工業社製ガンツパール GMX-0810を用いて各種測定を行った。
【0054】
(比較例2)
300mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R) 品番:FZ71PD)を20g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)60g、イオン交換水120g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)1.5gを分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度90℃、撹拌回転数400rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出したところ、ペレット形状のまま残っており、微粒子化することができなかった。
実施例で得られた略球状粒子の各種物性を下記表に示す。
【0055】
【表1】
[図:0001426826000009.jpg]
」
イ 甲B3に記載された発明
甲B3に記載された事項を、特に【請求項1】、【請求項3】、【請求項4】、【0015】及び【0017】に関して整理すると、甲B3には次の発明(以下、「甲B3発明」という。)が記載されていると認める。
<甲B3発明>
「ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクタム等の生分解性のポリエステル系樹脂を含み、真球度が0.90~1.00であり、アマニ油吸油量が30~150mL/100gであり、体積平均粒子径が1~500μm(ファンデーション用途の場合は3~20μm、塗料用途の場合は3~100μm)である略球状樹脂粒子。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲B3発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、
前記生分解性樹脂(A)が、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点B3-1>
本件特許発明1においては「下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり」、「比表面積が0.7~3.0m2/gであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり」と特定されているのに対し、甲B3発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点B3-1について検討する。
本件特許発明1における「下記測定方法で測定される真球度」は「走査型電子顕微鏡にて1000倍で粒子を観察し、任意の30個の粒子について短径と長径を測定する。各粒子について短径/長径を計算し、30個の粒子の平均値を真球度とする。」ことにより測定される。
他方、甲B3発明における「真球度」は、甲3の【0031】及び【0032】によると、「樹脂粒子を撮像した画像を同じ投影面積を有する真円の直径から算出した周囲長を、樹脂粒子を撮像した画像の周囲長で除した値」である。
そうすると、両者は測定方法が異なるものであるから、甲3発明において「真球度」が「0.90~1.00」であるとしても、本件特許発明1における「下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0」という発明特定事項を満たす蓋然性が高いとはいえない。
したがって、相違点B3-1は実質的な相違点である。
また、甲B3には、甲B3発明において、「下記測定方法で測定される真球度」を「0.9~1.0」とする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもない。
したがって、甲B3発明において相違点B3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「透明性及びすべり性に優れる」及び「環境に優しい」という、甲B3発明並びに甲B3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲B3発明であるとはいえないし、甲B3発明並びに甲B3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
なお、特許異議申立人Bは、令和7年2月4日に提出された意見書において、「特許権者は、甲B3発明における真球度は、いわゆる円形度のことであり、本件発明1及び本件発明2の真球度とは異なるものである旨主張している。
しかしながら、本件発明1及び本件発明2では「真球度」と規定されているだけであるから、このような主張は到底採用できるものではない。」(上記意見書第7ページ)及び「甲第B3号証において、真球度は、「樹脂粒子撮像した画像を同じ投影面積を有する真円の直径から算出した周囲長を、樹脂粒子を撮像した画像の周囲長で除した値である」とされている。すなわち、甲第B3号証において、真球度が1.0の場合、粒子を撮像した画像の周囲長と、真円の直径から算出した周囲長が同じとなることから、粒子を撮像した画像は真円になるといえる。甲B3発明の粒子は、真球度が0.928~0.985、特に、最大で0.985という、極めて1に近い数値をとることを考慮すると、粒子を撮像した画像は、ほぼ真円になっているといえ、これより、甲B3発明の粒子は、ほぼ球状の粒子であるということができ、このような粒子の真球度は、本件発明1及び本件発明2で規定する真球度の範囲「0.9~1.0」の範囲にあるといえる。」(上記意見書第8ページ)旨主張する。
そこで、検討する。
本件訂正により、本件特許発明1及び2における「真球度」は「下記測定方法で測定される」ものであることが特定された。
また、甲B3発明の粒子の「真球度」が、本件特許発明1及び2における「真球度」の測定方法である「下記測定方法」で測定した場合に、「0.9~1.0」の範囲にあることの具体的な証拠は何ら示されておらず、また、「樹脂粒子を撮像した画像を同じ投影面積を有する真円の直径から算出した周囲長を、樹脂粒子を撮像した画像の周囲長で除した値」が「0.9~1.0」であれば「下記測定方法で測定される真球度」は必ず「0.9~1.0」の範囲にあることが当業者の技術常識であることの証拠が示されている訳でもない。
したがって、特許異議申立人Bの上記主張は採用することはできない。
(3)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2と甲B3発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmである樹脂粒子(但し、ポリアミド粒子を除く)。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点B3-2>
本件特許発明2においては「下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり、
融解エンタルピーが20~140J/gである」と特定されているのに対し、甲B3発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
上記(2)イのとおり、甲3発明において「真球度」が「0.90~1.00」であるとしても、本件特許発明2における「下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0」という発明特定事項を満たす蓋然性が高いとはいえない。
したがって、相違点B3-2は実質的な相違点である。
また、甲B3には、甲B3発明において、「下記測定方法で測定される真球度」を「0.9~1.0」とする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもない。
したがって、甲B3発明において相違点B3-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明2は「透明性及びすべり性に優れる」及び「環境に優しい」という、甲B3発明並びに甲B3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明2は甲B3発明であるとはいえないし、甲B3発明並びに甲B3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明3及び4について
本件特許発明3及び4はいずれも請求項1又は2を引用して特定するものであり、本件特許発明1又は2における発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は2と同様に、甲B3発明であるとはいえないし、甲B3発明並びに甲B3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)申立理由B3についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由B3によっては取り消すことはできない。
4 申立理由B4(甲B4に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲B4には、「複合粒子及びその製造方法」に関しておおむね次のとおり記載されている。
・「【請求項1】
セルロースと、界面活性剤及び/又は水溶性高分子とを含む複合粒子であって、
前記界面活性剤及び/又は前記水溶性高分子の含有量が、前記セルロース100重量部に対して0.2~50重量部であり、
下記条件1を満たす、複合粒子。
条件1:乾式法により測定される複合粒子の平均粒子径DD50と、湿式法により測定される複合粒子の平均粒子径DW50の比(DD50/DW50)が、下記式(1)の関係を有する。
0.6≦(DD50/DW50)≦1.8 式(1)
【請求項2】
前記DW50が1~100μmである、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
吸油量が20~200ml/100gである、請求項1又は2に記載の複合粒子。」
・「【0025】
本発明の複合粒子のDW50は、特に限定されないが、好ましくは1~100μであると好ましい。DW50が1μm未満であると、粒子としての機能が不足することがある。一方、DW50が100μm超であると、皮膚感覚に劣ることがある。
DW50は、より好ましくは1~50μm、さらに好ましくは1~40μm、特に好ましくは1~30μm、最も好ましくは1~20μmである。
【0026】
本発明の複合粒子の吸油量は、特に限定されないが、20~200ml/100gであると好ましい。吸油量が20ml/100g未満であると、化粧料へ配合した場合にべたつきを感じることがある。一方、吸油量が200ml/100g超であると、すべり性に劣ることがある。吸油量の下限は、より好ましくは40ml/100g、さらに好ましくは50ml/100g、最も好ましくは60ml/100gである。一方、吸油量の上限は、より好ましくは190ml/100g、さらに好ましくは180ml/100g、最も好ましくは160ml/100gである。
なお、複合粒子の吸油量の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。」
・「【0029】
本発明の複合粉体の円形度は、特に限定されないが、0.4~1.0であると好ましい。円形度が0.4未満であると、形状がいびつであることがあり、また、偏平度が高くなりすぎることがあり、肌上でのすべり性が劣ることがある。複合粉体の円形度は、より好ましくは0.5~1.0、さらに好ましくは0.55~1.0、特に好ましくは0.6~1.0である。
なお、複合粉体の円形度の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。」
・「【実施例】
【0039】
以下に、本発明の複合粒子の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例、及び比較例の粒子又は粉体について次に示す要領で物性を測定し、さらに評価を行った。
【0040】
(乾式法による平均粒子径の測定)
乾式型レーザー回折式粒度分布測定装置(マスタサイザー3000、Malvern社製)を使用し、乾式測定法により測定した。平均粒子径は体積基準測定によるD50値を採用した。
【0041】(湿式法による平均粒子径の測定)
湿式型レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布計(型式9320-HRA)、日機装株式会社製)を使用し、湿式測定法により測定した。平均粒子径は体積基準測定によるD50値採用した。
【0042】
(吸水量、吸油量の測定)
JIS-K5101吸油量の測定法に基づき、吸水量測定はイオン交換水を、吸油量測定はオレイン酸を用いて測定した。」
・「【0044】
(円形度の測定)
粒子分析画像装置(モフォロギG3、Malvern社製)を使用し、画像解析法により測定した。」
・「【0046】
〔実施例1〕
イオン交換水10000重量部と精製した木材パルプ由来のセルロース粉末(湿式法による平均粒子径25.2μm)100重量部とポリビニルアルコール(分子量22000)10重量部を含有した分散液をダイノミル装置にて処理することにより処理液を得た。処理液の擬似粒度分布曲線における平均粒子径は12.2μmであった。
得られた処理液(pH6.7)をスプレードライヤー(入口温度;200℃、出口温度;80℃)にて噴霧乾燥し、複合粒子1を得た。得られた複合粒子1の物性を表1に示す。
感触評価において、全てに項目において数値が大きく、感触に優れる結果であった。」
・「【0056】
【表1】
[図:0001426826000010.jpg]
」
イ 甲B4に記載された発明
甲B4に記載された事項を、特に請求項1ないし3、【0025】、【0026】、【0029】、【0041】、【0042】及び【0044】に関して整理すると、甲B4には次の発明(以下、「甲B4発明」という。)が記載されていると認める。
<甲B4発明>
「セルロースと、界面活性剤及び/又は水溶性高分子とを含む複合粒子であって、湿式法により測定される複合粒子の平均粒子径DW50が1~100μm、より好ましくは1~50μmであり、オレイン酸を用いて測定した吸油量が20~200ml/100gであり、粒子分析画像装置(モフォロギG3、Malvern社製)を使用し、画像解析法により測定した円形度が0.4~1.0、特に好ましくは0.6~1.0である複合粒子。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲B4発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、
前記生分解性樹脂(A)が、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点B4-1>
本件特許発明1においては「下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり」、「下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり」と特定されているのに対し、甲B4発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点B4-1について検討する。
甲B4発明においては、「画像解析法により測定した円形度が0.4~1.0、特に好ましくは0.6~1.0である」と特定されているが、「画像解析法により測定した円形度」が本件特許発明1における「下記測定方法で測定される真球度」と同じものであるか不明であるし、仮に同じものであるとしても、甲4発明における「0.4~1.0、特に好ましくは0.6~1.0」という数値範囲は、「0.9~1.0」と比べて広すぎるし、甲B4の【0056】の【表1】に記載された実施例では「0.9~1.0」の数値範囲に入るものは一つもない。
そうすると、甲4発明において「画像解析法により測定した円形度」が「0.4~1.0、特に好ましくは0.6~1.0」であるとしても、本件特許発明1における「下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0」という発明特定事項を満たす蓋然性が高いとはいえない。
したがって、相違点B4-1は実質的な相違点である。
また、甲B4には、甲B4発明において、「下記測定方法で測定される真球度」を「0.9~1.0」とする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもない。
したがって、甲B4発明において相違点B4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「透明性及びすべり性に優れる」及び「環境に優しい」という、甲B4発明並びに甲B4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲B4発明であるとはいえないし、甲B4発明並びに甲B4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2と甲B4発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gである樹脂粒子(但し、ポリアミド粒子を除く)。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点B4-2>
本件特許発明2においては「下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり」、「下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3であり、
融解エンタルピーが20~140J/gである」と特定されているのに対し、甲B4発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
上記(2)イのとおり、甲4発明において「画像解析法により測定した円形度」が「0.4~1.0、特に好ましくは0.6~1.0」であるとしても、本件特許発明2における「下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0」という発明特定事項を満たす蓋然性が高いとはいえない。
したがって、相違点B4-2は実質的な相違点である。
また、甲B4には、甲B4発明において、「下記測定方法で測定される真球度」を「0.9~1.0」とする動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもない。
したがって、甲B4発明において相違点B4-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明2は「透明性及びすべり性に優れる」及び「環境に優しい」という、甲B4発明並びに甲B4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明2は甲B4発明であるとはいえないし、甲B4発明並びに甲B4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明3及び4について
本件特許発明3及び4はいずれも請求項1又は2を引用して特定するものであり、本件特許発明1又は2における発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は2と同様に、甲B4発明であるとはいえないし、甲B4発明並びに甲B4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)申立理由B4についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由B4によっては取り消すことはできない。
5 申立理由B5(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の特許請求の範囲(以下、「特許請求の範囲」という。)の記載は上記第3のとおりである。
発明の詳細な説明の【0001】ないし【0004】によると、本件特許発明1及び2の解決しようとする課題は「環境に優しく、透明性及びすべり性に優れた樹脂粒子を提供すること」であり、本件特許発明3の解決しようとする課題は「該樹脂粒子を含む、化粧料を提供すること」であり、本件特許発明4の解決しようとする課題は「該樹脂粒子を含む、コーティング組成物を提供すること」である(以下、総称して「発明の課題」という。)。
発明の詳細な説明の【0005】には「本願発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、生分解性樹脂(A)を含み、特定の形状であり、特定の性質を示す樹脂粒子であると、透明性及びすべり性に優れた樹脂粒子を得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の<1>~<6>の態様が含まれる。
<1> 生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、真比重が0.90~1.5g/cm3である樹脂粒子。
<2> 前記生分解性樹脂(A)が、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種である、<1>に記載の樹脂粒子。
<3> 前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、<2>に記載の樹脂粒子。
<4> 融解エンタルピーが20~140J/gである、<1>~<3>のいずれかに記載の樹脂粒子。
<5> <1>~<4>のいずれかに記載の樹脂粒子を含む、化粧料。
<6> <1>~<4>のいずれかに記載の樹脂粒子を含む、コーティング組成物。」と記載され、同【0008】には「本発明の樹脂粒子は、生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0であり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、真比重が0.90~1.5である樹脂粒子であって、透明性及びすべり性に優れるものであり、環境にやさしいものである。」と記載されている。
発明の詳細な説明の【0009】には「樹脂粒子の体積平均粒子径」が「1~50μm」であると「すべり性に優れる」ことが記載され、同【0012】には「樹脂粒子の真球度」が「0.9~1.0」であると「すべり性が優れる」ことが記載され、同【0013】には「樹脂粒子の比表面積」が「0.7~3.0m2/d」であると「透明性及びすべり性に優れる」ことが記載され、同【0014】には「樹脂粒子のオレイン酸の吸油量」が「30~150mL/100g」であると「透明性及びすべり性に優れる」ことが記載され、同【0016】には「樹脂粒子の真比重」が「0.90~1.5g/cm3」であると「透明性が優れる」ことが記載されている。
発明の詳細な説明の【0057】には「真球度」の測定方法が記載され、同【0060】には「真比重」の測定方法が記載されている。
発明の詳細な説明の【0064】ないし【0071】において、「生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3である樹脂粒子」という条件を満たす実施例1ないし5が上記条件を満たさない比較例1よりも、粒子透明性及びすべり性に優れることを確認している。
そうすると、発明の詳細な説明の記載から、当業者は「生分解性樹脂(A)を含み、体積平均粒子径が1~50μmであり、下記測定方法で測定される真球度が0.9~1.0であり、比表面積が0.7~3.0m2/gであり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、下記測定方法で測定される真比重が0.90~1.5g/cm3である樹脂粒子」、「該樹脂粒子を含む、化粧料」及び「該樹脂粒子を含む、コーティング組成物」は発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1及び2は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「樹脂粒子」をさらに限定したものであり、本件特許発明3は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「化粧料」をさらに限定したものであり、本件特許発明4は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「コーティング組成物」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし4に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(3)特許異議申立人Bの申立理由B5における主張について
特許異議申立人Bの申立理由B5における主張について検討する。
特許異議申立人Bの申立理由B5における主張は、要するに、本件特許の請求項1に体積平均粒子径、真球度、比表面積及びオレイン酸吸油量を特定の範囲とする構成を特定する記載がなく、同請求項2に体積平均粒子径、真球度、比表面積、オレイン酸吸油量、真比重及び融解エンタルピーを特定の範囲とする構成を特定する記載がないから、発明の詳細な説明の内容を、本件特許の請求項1及び2に記載されている範囲まで一般化することはできないというものである。
しかし、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲は上記(2)のとおりであり、体積平均粒子径、真球度、比表面積、オレイン酸吸油量、真比重及び融解エンタルピーを特定の範囲とする構成の有無は当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲とは関係がない。
また、本件特許発明1ないし4で特定される発明特定事項を有しているだけでは発明の課題を解決できないことについて具体的な証拠が示されている訳でもない。
したがって、特許異議申立人Bの申立理由B5における主張は採用できない。
(4)申立理由B5についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由B5によっては取り消すことはできない。
6 申立理由B6(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし4は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
発明の詳細な説明には本件特許発明1ないし4の各発明特定事項について具体的に記載されており、本件特許発明1ないし4の製造方法、用途及び実施例についても具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし4を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし4に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人Bの申立理由B6における主張について
特許異議申立人Bの申立理由B6における主張について検討する。
特許異議申立人Bの申立理由B6における主張は、要するに、発明の詳細な説明に記載された実施例以外の本件特許発明1及び2に含まれる樹脂粒子を実施するためには、当業者が過度の試行錯誤を必要とするというものである。
しかし、上記(2)のとおり、発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし4の製造方法及び実施例について具体的に記載されていることから、これらの記載を考慮すれば、当業者であれば過度の試行錯誤を要することなく、実施例以外の本件特許発明1及び2に含まれる樹脂粒子を実施することができるといえる。
また、本件特許発明1及び2に含まれる樹脂粒子で当業者が実施できないものがあることについて具体的な証拠が示されている訳でもない。
したがって、特許異議申立人Bの申立理由B6における主張は採用できない。
(4)申立理由B6についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由B6によっては取り消すことはできない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、取消理由(決定の予告)並びに特許異議申立書A及びBに記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700789