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特許異議申立

2024-700894

粒子、及びその用途

審判番号
2024-700894
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-519598
登録番号
7454108
請求日
2024年09月18日
審決日
2025年08月18日
公報発行日
2025年11月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】松本油脂製薬株式会社
  • 【異議申立人】野崎 彩
  • 【異議申立人】赤塚 正樹
審判長/審判官
  • 審判長 植前 充司
  • 審判官 松本 陶子
  • 審判官 柴田 昌弘
分類
P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7454108号発明「粒子、及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7454108号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。 特許第7454108号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7454108号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)12月15日(優先権主張 令和4年1月18日、同年9月28日)を国際出願日とする出願であって、令和6年3月12日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、令和6年9月18日に特許異議申立人 野崎 彩(以下、「特許異議申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし7)がされ、同年同月19日に特許異議申立人 赤塚 正樹(以下、「特許異議申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし7)がされ、同年12月16日付けで取消理由が通知され、令和7年2月12日に特許権者 松本油脂製薬株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月27日付けで手続補正指令がなされ、同年3月5日に手続補正書(方式)が特許権者から提出され、同年同月14日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、これに対し同年4月14日に特許異議申立人Aから意見書が提出され、特許異議申立人Bからは応答がなかったものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和7年2月12日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「 レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される体積基準の平均粒子径が0.5~100μmであり、圧縮凝集率が0~25%であり、かつ、圧縮回復率が60~100%であり、有機ポリマーを含み、界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含む粒子(但し、黒色アクリロニトリル系重合体粉末を除く)であり、 前記粒子に占める有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%であり 、 前記有機ポリマーが熱可塑性樹脂及びセルロースから選ばれる少なくとも1種である、粒子。」 と記載されているのを、 「レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される体積基準の平均粒子径が0.5~100μmであり、圧縮凝集率が0~25%であり、かつ、圧縮回復率が60~100%であり、熱可塑性樹脂及びセルロースから選ばれる少なくとも1種である有機ポリマーを含み、界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含む粒子であって 、 前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリビニル系樹脂が、ポリ塩化ビニル及びポリ酢酸ビニルから選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリアクリル系樹脂が、ポリメタクリル酸メチル及びポリ(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリスチレン系樹脂が、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル/スチレン共重合体及びポリスチレンエラストマーから選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、低分子量ポリオレフィン及びポリオレフィンエラストマーから選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸、ポリプロピオラクトン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートヒドロキシカプロエート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートラクテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリヒドロキシブチレートバリレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシアシル)、ポリヒドロキシアシル、ポリグリコール酸及び乳酸-グリコール酸共重合体から選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリエーテル系樹脂が、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアセタール、ポリエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリアミド系樹脂が、ナイロン1、ナイロン3、ナイロン4、ポリカプロアミド、ポリ-ω-アミノヘプタン酸、ポリ-9-アミノノナン酸、ポリウンデカンアミド、ポリラウリンラクタム、ポリエチレンジアミンアジパミド、ポリテトラメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンジアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカミド、ポリオクタメチレンア ジパミド、ポリデカメチレンアジパミド、ポリデカメチレンセバカミド、ポリドデカメチレンドデカミド及びメタキシレンジアミン-6ナイロンから選ばれる少なくとも1種であり、 前記セルロース系樹脂が、セルロースアセテート及び酢酸酪酸セルロースから選ばれる少なくとも1種であり、 前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であり、 前記アニオン界面活性剤が、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、脂肪酸アルカリ金属塩、アルキルスルホコハク酸エステル塩及びN-アシルアミノ酸塩類から選ばれる少なくとも1種であり、 前記カチオン界面活性剤が、第4級アンモニウム塩及びアルキルアミン塩から選ばれる少なくとも1種であり、 前記ノニオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレンオキサイド付加アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、多価アルコールと1価脂肪酸とのエステル化合物、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、高級脂肪酸PEGグリセリル類、高級脂肪酸ソルビタン類、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリンエーテル、ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル、アルキルポリグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル及びポリソルベート類から選ばれる少なくとも1種であり、 前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アラビアガム、タマリンドガム、ペクチン、プルラン、カゼイン、キサンタンガム、カラギナン、トラガントガム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも1種であり、 前記粒子に占める前記有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%である、粒子(但し、黒色アクリロニトリル系重合体粉末及び前記有機ポリマーの重量割合が100重量%である粒子を除く)。」に訂正する。請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の粒子。」 と記載されているのを、 「前記熱可塑性樹脂が、前記ポリアクリル系樹脂及び前記ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記界面活性剤が、前記アニオン界面活性剤、前記カチオン界面活性剤及び前記ノニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の粒子。」に訂正する。請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~7も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 願書に添付した明細書の段落【0037】の記載について、 「前記ポリビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらのポリビニル系樹脂は1種又は2種以上を併用してもよい。」 と記載されているのを、 「前記ポリビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらのポリビニル系樹脂は1種又は2種以上を併用してもよい。」 に訂正する。 (4)訂正事項4 願書に添付した明細書の段落【0056】の記載について、 「前記有機ポリマーは、前記熱可塑性樹脂、前記熱硬化性樹脂及びセルロース以外の有機ポリマー(以下、その他の有機ポリマーと呼ぶことがある。)を含んでもよい。 その他の有機ポリマーとしては、例えば、パラフィン類、シリコーンオイル類、ポリアルキレンオキサイド及び水溶性高分子が挙げられ、具体的には流動パラフィン等のパラフィン類;ジメチルシリコーン等のシリコーンオイル類;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アラビアガム、タマリンドガム、ペクチン、プルラン、カゼイン、キサンタンガム、カラギナン、トラガントガム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロプルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等の水溶性高分子等が挙げられる。 その他の有機ポリマーは、圧縮凝集率を低くできる点で水溶性高分子を含むと好ましい。 水溶性高分子は、圧縮凝集率をより低くできる点でポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロプルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、から選ばれる少なくとも1つを含むと好ましく、ポリビニルアルコールを含むとより好ましい。その他の有機ポリマーは1種又は2種以上を併用してもよい。」 と記載されているのを、 「前記有機ポリマーは、前記熱可塑性樹脂、前記熱硬化性樹脂及びセルロース以外の有機ポリマー(以下、その他の有機ポリマーと呼ぶことがある。)を含んでもよい。 その他の有機ポリマーとしては、例えば、パラフィン類、シリコーンオイル類、ポリアルキレンオキサイド及び水溶性高分子が挙げられ、具体的には流動パラフィン等のパラフィン類;ジメチルシリコーン等のシリコーンオイル類;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アラビアガム、タマリンドガム、ペクチン、プルラン、カゼイン、キサンタンガム、カラギナン、トラガントガム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等の水溶性高分子等が挙げられる。 その他の有機ポリマーは、圧縮凝集率を低くできる点で水溶性高分子を含むと好ましい。 水溶性高分子は、圧縮凝集率をより低くできる点でポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、から選ばれる少なくとも1つを含むと好ましく、ポリビニルアルコールを含むとより好ましい。その他の有機ポリマーは1種又は2種以上を併用してもよい。」 に訂正する。 (5)一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし7について、請求項2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項1ないし7に対応する訂正後の請求項1ないし7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の適否の判断 (1)訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた3つの「有機ポリマー」という用語の対応関係を複数の選択肢のうちの1つに限定するとともに、「有機ポリマー」、「界面活性剤」及び「水溶性高分子」が、それぞれ具体的にどのような化合物から選ばれるかを特定し、さらに、請求項1に記載された粒子から有機ポリマーの重量割合が100重量%である粒子を除くものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許の明細書の【0035】~【0053】には有機ポリマーを構成する熱可塑性樹脂及びセルロースについて、同【0056】には水溶性高分子について、同【0059】には界面活性剤について、それぞれ訂正後の請求項1に記載された具体的な化合物が記載されており、訂正事項1に係る請求項1の訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 訂正事項1による、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7の訂正についても同様である。 (イ)訂正事項2について 訂正事項2に係る請求項2の訂正は、訂正前の請求項2に記載された熱可塑性樹脂の選択肢をさらに限定することに加え、界面活性剤の種類を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 訂正事項2による、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし7の訂正についても同様である。 (ウ)訂正事項3について 訂正事項3に係る明細書の【0037】の訂正は、訂正事項1に係る請求項1の訂正に伴い、ポリビニル系樹脂の例からポリビニルアルコールを削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項3に係る明細書の【0037】の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 (エ)訂正事項4について 訂正事項4に係る明細書の【0056】の訂正は、水溶性高分子として例示された「ヒドロキシプロプルセルロース」との誤記を、「ヒドロキシプロピルセルロース」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とする訂正である。 そして、訂正事項4に係る明細書の【0056】の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 (2)独立特許要件について 特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし7に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 3 訂正請求についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される体積基準の平均粒子径が0.5~100μmであり、圧縮凝集率が0~25%であり、かつ、圧縮回復率が60~100%であり、熱可塑性樹脂及びセルロースから選ばれる少なくとも1種である有機ポリマーを含み、界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含む粒子であって 、 前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリビニル系樹脂が、ポリ塩化ビニル及びポリ酢酸ビニルから選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリアクリル系樹脂が、ポリメタクリル酸メチル及びポリ(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリスチレン系樹脂が、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル/スチレン共重合体及びポリスチレンエラストマーから選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、低分子量ポリオレフィン及びポリオレフィンエラストマーから選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸、ポリプロピオラクトン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートヒドロキシカプロエート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートラクテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリヒドロキシブチレートバリレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシアシル)、ポリヒドロキシアシル、ポリグリコール酸及び乳酸-グリコール酸共重合体から選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリエーテル系樹脂が、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアセタール、ポリエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリアミド系樹脂が、ナイロン1、ナイロン3、ナイロン4、ポリカプロアミド、ポリ-ω-アミノヘプタン酸、ポリ-9-アミノノナン酸、ポリウンデカンアミド、ポリラウリンラクタム、ポリエチレンジアミンアジパミド、ポリテトラメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンジアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカミド、ポリオクタメチレンア ジパミド、ポリデカメチレンアジパミド、ポリデカメチレンセバカミド、ポリドデカメチレンドデカミド及びメタキシレンジアミン-6ナイロンから選ばれる少なくとも1種であり、 前記セルロース系樹脂が、セルロースアセテート及び酢酸酪酸セルロースから選ばれる少なくとも1種であり、 前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であり、 前記アニオン界面活性剤が、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、脂肪酸アルカリ金属塩、アルキルスルホコハク酸エステル塩及びN-アシルアミノ酸塩類から選ばれる少なくとも1種であり、 前記カチオン界面活性剤が、第4級アンモニウム塩及びアルキルアミン塩から選ばれる少なくとも1種であり、 前記ノニオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレンオキサイド付加アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、多価アルコールと1価脂肪酸とのエステル化合物、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、高級脂肪酸PEGグリセリル類、高級脂肪酸ソルビタン類、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリンエーテル、ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル、アルキルポリグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル及びポリソルベート類から選ばれる少なくとも1種であり、 前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アラビアガム、タマリンドガム、ペクチン、プルラン、カゼイン、キサンタンガム、カラギナン、トラガントガム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも1種であり、 前記粒子に占める前記有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%である、粒子(但し、黒色アクリロニトリル系重合体粉末及び前記有機ポリマーの重量割合が100重量%である粒子を除く)。 【請求項2】 前記熱可塑性樹脂が、前記ポリアクリル系樹脂及び前記ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記界面活性剤が、前記アニオン界面活性剤、前記カチオン界面活性剤及び前記ノニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の粒子。 【請求項3】 真球度が0.6~1.0である、請求項1又は2に記載の粒子。 【請求項4】 体積基準測定による頻度の累積が90%の粒子径(D90)を平均粒子径(D50)で除した値(D90/D50)が1.0~3.5である、請求項1又は2に記載の粒子。 【請求項5】 前記粒子が生分解性を有する、請求項1又は2に記載の粒子。 【請求項6】 請求項1又は2に記載の粒子を含む、化粧料。 【請求項7】 請求項1又は2に記載の粒子を含む、コーティング組成物。」 第4 特許異議申立書等に記載した申立ての理由の概要 1 令和6年9月18日に特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等 令和6年9月18日に特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書A」という。)に記載した特許異議申立の理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 なお、申立て理由の番号は、当審において付したものである。 (1)申立理由A1(甲第A1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲第A1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由A2(甲第A2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲第A2号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由A3(甲第A3号証を主たる証拠とする・進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲第A3号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由A4(甲第A4号証を主たる証拠とする・進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲第A4号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由A5(甲第A5号証を主たる証拠とする・進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲第A5号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由A6(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許の請求項1には、圧縮凝集率及び圧縮回復率を特定の範囲とするための構成について、実質的に何ら特定されていない。そして、本件特許の明細書において、圧縮凝集率及び圧縮回復率を特定の範囲とするための手段等は何も記載されていないし、技術常識から当業者に明らかであるともいえない。したがって、明細書に限定的な例示があったとしても技術的裏付けとして不十分であり、本件特許の請求項1に記載された樹脂粒子全体が、発明の詳細な説明に記載されているということはできない。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7に係る発明についても同様である。 (7)申立理由A7(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 本件特許の請求項1では、粒子を構成する樹脂、界面活性剤及び水溶性高分子の種類と量比が特定されていない。そして、本件特許の明細書には、粒子の圧縮凝集率及び圧縮回復率を特定の範囲とするための手段等は何も記載されていないし、このような手段が技術常識から当業者に明らかであるともいえない。そうすると、本件特許の請求項1に係る発明を実施するためには、製造方法を含む種々の要因を検討し調整する必要がある。 したがって、明細書に限定的な例示があったとしても、技術的裏付けが不十分であり、実施例で具体的に開示された粒子以外の本件特許の請求項1に記載された発明を実施するためには、当業者であっても過度の試行錯誤を要することは明らかである。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7に係る発明についても同様である。 イ 本件特許の請求項1に係る発明は、「界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含む粒子」であり、「有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%」であるが、本件特許の明細書には、有機ポリマーの重量割合をどのような測定法・分析法等で得るのかが記載されていない。本件特許の請求項1に係る発明は、粒子が界面活性剤及び水溶性高分子を極めて微量含む場合を含むものであり、体積基準の平均粒子径が0.5~100μmである微細な粒子中の微量成分の測定を実施するためには、当業者であっても過度の試行錯誤を必要とすることは明らかである。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7に係る発明についても同様である。 (8)申立理由A8(明確性) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 ア 本件特許の請求項1には、「有機ポリマーを含み、界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含む粒子」と記載されており、本件特許発明1の粒子は「界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含む」ものであるから、粒子に占める有機ポリマーの重量割合は100%になり得ないが、同請求項1には「前記粒子に占める有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%であり」と記載されており、有機ポリマーの重量割合が100重量%である態様を包含しているので、請求項1の記載が技術的に矛盾しており、本件特許発明1が、有機ポリマーのみからなり、他の成分を一切含まない実施形態を含むか否かが明確でない。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7に係る発明についても同様である。 イ 本件特許発明1は、(i)「レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される体積基準の平均粒子径が0.5~100μm」であること、(ii)「圧縮凝集率が0~25%であり、かつ、圧縮回復率が60~100%」であること、(iii)「有機ポリマーを含み、界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含む粒子(但し、黒色アクリロニトリル系重合体粉末を除く)であり、前記粒子に占める有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%」であること、(iv)「前記有機ポリマーが熱可塑性樹脂及びセルロースから選ばれる少なくとも1種」であること、を要件とするものであるが、要件(i)、要件(iii)及び要件(iv)に加えて、どのような要件・構成等を備えれば、要件(ii)を満たすことが可能となるのか、課題を解決するための手段が規定されておらず、発明が明確ではない。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7に係る発明についても同様である。 ウ 本件特許発明1の粒子は「界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含む粒子」であり、「有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%」であるが、粒子中の各成分を測定する方法が特定されておらず、当技術分野の技術常識を踏まえると、測定法・分析法によって界面活性剤や水溶性高分子の含有量の数値が変動することが周知であるので、本件特許発明1が、具体的に有機ポリマーをどのような重量割合で含むものまで包含するのかが発明が明確でない。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7に係る発明についても同様である。 (9)証拠方法 甲第A1号証:国際公開第2016/080530号 甲第A2号証:国際公開第2017/195642号 甲第A3号証:特開2004-99883号公報 甲第A4号証:国際公開第2020/095702号 甲第A5号証:特開2021-66704号公報 甲第A6号証:特開2022-7985号公報 なお、証拠の表記については、概ね特許異議申立書Aの記載にしたがった。以下、順に「甲A1」のようにいう。 2 令和6年9月19日に特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等 令和6年9月19日に特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書B」という。)に記載した特許異議申立の理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 なお、申立て理由の番号は、当審において付したものである。 (1)申立理由B1(甲第B1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲第B1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、甲第B1号証は、甲A1と同一の文献である。 (2)申立理由B2(甲第B2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲第B2号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、甲第B2号証は、甲A2と同一の文献である。 (3)申立理由B3(甲第B3号証を主たる証拠とする・進歩性) 本件特許発明1ないし4、6及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし4、6及び7に係る発明は、甲第B3号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4、6及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由B4(甲第B4号証を主たる証拠とする・進歩性) 本件特許発明1ないし4、6及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし4、6及び7に係る発明は、甲第B4号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4、6及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由B5(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 下記の甲第B1号証ないし甲第B4号証に記載された「粒子」は、D90/D50等の値や、用いる熱可塑性樹脂、界面活性剤及び水溶性高分子の種類、その製造方法等が本件特許の明細書に記載されたものと重複しているので、甲第B1号証ないし甲第B4号証に記載された「粒子」が、「圧縮凝集率が0~25%であり、かつ、圧縮回復率が60~100%」を満たさないと認定されるのであれば、本件特許の明細書の実施例1~10に具体的に示されている方法以外の方法で、「圧縮凝集率が0~25%であり、かつ、圧縮回復率が60~100%」を満たすものを製造するためには、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤が必要となると認められる。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7に係る発明についても同様である。 (6)申立理由B6(明確性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 ア 本件特許の請求項1には「有機ポリマーを含み、界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含む粒子」と記載されており、本件特許発明1の粒子は、界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含むものと認められるが、同請求項1には「前記粒子に占める有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%」と記載されており、本件特許発明1の粒子が有機ポリマーを100%含む態様を包含しており、請求項1の記載が整合していないので、本件特許発明1が、有機ポリマーのみからなり、他の成分を一切含まない実施形態を含むか否かが明確でない。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7に係る発明についても同様である。 イ 本件特許の請求項1に記載された「界面活性剤」は、本件特許の明細書の【0059】の記載からみて、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩などの高分子タイプの界面活性剤を含むものであり、本件特許の請求項1に記載された「水溶性高分子」は、本件特許の明細書の【0056】の記載からみて、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を含むものであるが、本件特許の明細書の【0037】及び【0056】には、ポリビニルアルコールやポリアルキレンオキサイドが「有機ポリマー」の具体例として記載されており、請求項1に記載された「有機ポリマー」と、「界面活性剤」及び「水溶性高分子」とを明確に区別することができないので、本件特許発明1が、「粒子に占める有機ポリマーの重量割合」を算出する際に、高分子タイプの界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性高分子を有機ポリマーの重量に含めるのか否かが明確でない。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7に係る発明についても同様である。 (5)証拠方法 甲第B1号証:国際公開第2016/080530号 甲第B2号証:国際公開第2017/195642号 甲第B3号証:国際公開第2015/045448号 甲第B4号証:国際公開第2013/089050号 なお、証拠の表記については、概ね特許異議申立書Bの記載にしたがった。以下、順に「甲B1」のようにいう。 第5 取消理由の概要 令和6年12月16日付けで通知された取消理由の概要は次のとおりである。 取消理由(明確性) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 本件特許の請求項1に記載された「界面活性剤」は、本件特許の明細書の【0059】の記載からみて、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩などの高分子タイプの界面活性剤を含むものであり、本件特許の請求項1に記載された「水溶性高分子」は、本件特許の明細書の【0056】の記載からみて、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を含むものであるが、本件特許の明細書の【0037】及び【0056】には、ポリビニルアルコールやポリアルキレンオキサイドが「有機ポリマー」の具体例として記載されているので、請求項1に記載された「有機ポリマー」と、「界面活性剤」及び「水溶性高分子」とを明確に区別することができず、上記「有機ポリマー」が具体的にどのような化合物まで包含するものであるのかが明確でない。 その結果、本件特許の請求項1に記載された「前記粒子に占める有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%であ」るという発明特定事項が、具体的にどのような成分組成を有する粒子まで含むものであるのかが明確でない。 したがって、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえる。本件特許発明2ないし7についても同様である。 第6 当審の判断 当審は、取消理由並びに申立理由A1ないしA8及び取消理由B1ないしB6には、以下のとおり理由がないと判断する。なお、取消理由は、上記申立理由A8のうちアとおおむね同旨であり、上記申立理由B6のア及びイとおおむね同旨である。 1 取消理由(明確性)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 (2)明確性要件の判断 請求項1には、有機ポリマー、界面活性剤及び水溶性高分子について化合物の選択肢がそれぞれ列挙されており、有機ポリマー、界面活性剤及び水溶性高分子の選択肢に重複はないので、有機ポリマー、界面活性剤及び水溶性高分子は、互いに明確に区別することができるといえる。そして、請求項1には「但し、黒色アクリロニトリル系重合体粉末及び前記有機ポリマーの重量割合が100重量%である粒子を除く」と記載されており、有機ポリマーを100重量%含む粒子が除外されているから、界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含むとしても、各成分の重量の総和が100重量%を超える様な態様を含まないことは明らかである。 よって、本件特許の請求項1の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7についても同様である。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人Aは、令和7年4月14日に提出された意見書において、訂正後の請求項1では、「前記粒子に占める有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%であり」と定義される一方で「(但し、黒色アクリロニトリル系重合体粉末及び前記有機ポリマーの重量割合が100重量%である粒子を除く)」と定義されており、粒子を占める有機ポリマーの重合割合について「100重量%」の場合を包含するのか否かが依然として明確になっているとはいえないと主張している。 しかし、訂正後の請求項1には「前記有機ポリマーの重量割合が100重量%である粒子を除く」と記載されているのであるから、粒子を占める有機ポリマーの重合割合について「100重量%」の場合を包含しないことは明らかであるから、特許異議申立人Aの上記主張は採用することができない。 (4)取消理由についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないので、同法第113条第4号に該当せず、取消理由によっては取り消すことができない。 2 申立理由A1(甲A1を主たる証拠とする新規性・進歩性)及び申立理由B1(甲B1を主たる証拠とする新規性・進歩性)について 甲A1と甲B1は同一の文献であるから、申立理由A1及び申立理由B1について併せて検討する。 (1)甲A1に記載された事項等 ア 甲A1に記載された事項 甲A1には、「真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子および化粧品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様である。 ・「[請求項1] ポリエステル樹脂が水に分散された真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体であって、前記ポリエステル樹脂の粒子平均粒径は1~1000μmの範囲内であり、その真球度は粒子の長径/短径の平均値(アスペクト比)として1.00~1.10の範囲内であり、単分散性は、平均粒径と標準偏差からの変動係数として8%以下であり、 前記分散体中には、前記ポリエステル樹脂とともに、 分散剤として、(A)平均分子量500万以上2500万以下のアニオン性高分子化合物と(B)ポリビニルアルコールとを質量比(A/B)で1/10~1/99の範囲の割合で含有し、 前記分散体は、その粘度が、0.1~5Pa・sの範囲内であることを特徴とする真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体。 [請求項2] 前記分散剤(A)(B)の合計質量は、前記ポリエステル樹脂に対しての質量比として0.1~20%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体。」 ・「[請求項7] 請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体の製造方法であって、ポリエステル樹脂と、前記分散剤(A)(B)もしくは前記分散剤(A)(B)と粘度調整剤とを、水、有機溶媒とともに混合攪拌することを特徴とする真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体の製造方法。」 ・「[請求項10] 請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体から樹脂粒子を分離、洗浄、そして乾燥して得られたものであることを特徴とする真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子。 [請求項11] 請求項10に記載の真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子を含有することを特徴とする化粧品。」 ・「技術分野 [0001] 本発明は、真球度が高く、かつ単分散性のポリエステル樹脂水系分散体とその製造方法並びに流動性と耐水性を有する真球状単分散ポリエステル樹脂粒子と、これを用いた化粧品に関するものである。」 ・「発明が解決しようとする課題 [0012] 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の問題点を解消して、簡単かつ安価に、有用な真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子と真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子の水系分散体を安定して実現することのできる新しい技術手段を提供することを課題としている。また、さらには、本発明は、得られた真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子が有する流動性や潤滑性を利用し、耐水性が良好で滑らかな感触で肌に違和感を与えない、伸展性やスクラブ効果の良好な化粧品を提供することを課題としている。」 ・「[0013] 本発明は、上記課題を解決するものとして、ポリエステル樹脂が水に分散された真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体であって、前記ポリエステル樹脂の粒子平均粒径は1~1000μmの範囲内であり、その真球度は粒子の長径/短径の平均値(アスペクト比)として1.00~1.10の範囲内であり、単分散性は、平均粒径と標準偏差からの変動係数として8%以下であり、 前記分散体中には、前記ポリエステル樹脂とともに、 分散剤として、(A)平均分子量500万以上2500万以下のアニオン性高分子化合物と(B)ポリビニルアルコールとを質量比(A/B)で1/10~1/99の範囲の割合で含有し、 前記分散体は、その粘度が、0.1~5Pa・sの範囲内であることを特徴とする真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体を提供する。 [0014] また、本発明は、前記ポリエステル樹脂と、前記分散剤(A)(B)もしくは前記分散剤(A)(B)と粘度調整剤とを、水、有機溶媒とともに混合攪拌することを特徴とする真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体の製造方法を提供する。 [0015] そして本発明は、前記の真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体から樹脂粒子を分離、洗浄、そして乾燥して得られたものであることを特徴とする真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子と、 この真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子を含有することを特徴とする化粧品も提供する。」 ・「図面の簡単な説明 [0017][図1] 実施例1の粒子状態として、(a)レーザー回折型粒度分布測定装置での測定チャート、(b)電子顕微鏡写真である。 [図2]比較例1の粒子状態として、(a)レーザー回折型粒度分布測定装置での測定チャート、(b)電子顕微鏡写真である。 [図3]実施例20の樹脂粒子の電子顕微鏡写真である。 [図4]比較例11の凍結粉砕法による樹脂粒子の電子顕微鏡写真である。」 ・「発明を実施するための形態 [0018] 本発明において、ポリエステル樹脂としては、植物由来のもの、生分解性のものをはじめとして、各種のものでよく、例えば代表例としては、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル、ポリカプロラクトン、カプロラクトンと他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。 [0019] 本発明においては、ポリエステル樹脂粒子が水に安定に分散した安定な水分散体を形成するために、前記のとおり、分散剤として(A)平均分子量500万以上2500万以下のアニオン性高分子化合物と(B)ポリビニルアルコールとを質量比(A/B)で1/10~1/99の範囲内で含有するものとする。」 ・「[0027] アニオン性高分子化合物としては、前記したものの中から平均分子量500万以上2500万以下のものを選択して用いるが、具体例としては、前記アニオン性高分子化合物のうち、不飽和モノカルボン酸系単量体やその中和物の少なくとも1種を主成分とする重合体が好ましく、特にアミド系単量体と、不飽和モノカルボン酸系単量体やその中和物との共重合体が好ましく、例えば、(メタ)アクリルアミド/(メタ)アクリル酸ナトリウム共重合体が好ましい。」 ・「[0037] 本発明の水系分散体においては、ポリエステル樹脂粒子の平均粒径は1~1000μmの範囲内である。また、その真球度は、粒子の長径/短径の平均値(アスペクト比)として1.00~1.10の範囲内であり、単分散性は、平均粒径と標準偏差からの変動係数として8%以下である。 [0038] このような本発明の真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子の水系分散体については、ポリエステル樹脂と、前記分散剤(A)(B)、もしくは前記分散剤(A)(B)と粘度調整剤とを、水媒体とともに混合攪拌することで製造することができる。 [0039] 例えば、攪拌装置を有する密閉槽を用い、ポリエステル樹脂、平均分子量500万以上2500万以下のアニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコール、必要に応じてさらに粘度調整剤と水を同時に仕込み、加熱攪拌しながら加圧してポリエステル樹脂を分散させる加圧分散法、加圧下で保持されている熱水中に、ポリエステル樹脂、アニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコール、必要に応じてさらに粘度調整剤を含む溶融物を添加攪拌して分散させる直接分散法、ポリエステル樹脂を加熱溶融させ、これにアニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコール、必要に応じてさらに粘度調整剤を含む水溶液を添加攪拌してポリエステル樹脂を水に分散させる転相法、有機溶媒、水、ポリエステル樹脂、アニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコール、必要に応じてさらに粘度調整剤を添加攪拌して分散させた後、有機溶媒を除去する方法、ポリエステル樹脂の有機溶媒溶液中に、アニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコール、必要に応じてさらに粘度調整剤を含む水溶液を添加攪拌して分散させた後、有機溶媒を除去する方法等により得ることができる。 [0040] 前記以外の方法でもポリエステル樹脂の水系分散体を得ることができる方法であれば適宜採用することができるが、ポリエステル樹脂の幅広い種類に適応が可能な点、加水分解の進行を考慮すると、例えば、攪拌装置を有する密閉槽に、有機溶媒、水、前記したポリエステル樹脂、アニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコール、必要に応じてさらに粘度調整剤を仕込み、攪拌しながら昇温し、固体原料を溶解、分散させた後、冷却し、その後、減圧下に有機溶媒を除去することにより得る方法、あるいは、攪拌装置を有する密閉槽に、有機溶媒、ポリエステル樹脂を仕込み攪拌昇温し溶解したポリエステル樹脂溶解溶液に、別の攪拌槽に水、アニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコール、必要に応じてさらに粘度調整剤を仕込み、溶解した水溶液を前記密閉槽に添加し、攪拌、樹脂溶解温度以上に昇温しながら分散させた後、冷却し、その後、減圧下に有機溶媒を除去することにより得る方法が好ましい。」 ・「[0045] 本発明の真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子は、前記真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体から樹脂粒子を分離し、洗浄、そして乾燥することにより得ることができる。 [0046] 前記真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体から樹脂粒子を分離する方法としては特に限定はされず、固体と液体の分離ができればよく、例えば、遠心沈降機、圧濾装置などの分離装置を単独または組み合わせて使用することにより分離することができる。遠心沈降機としては、縦型バスケット型、スクリューデカンター型等の遠心沈降機が挙げられる。圧濾装置としては、遠心濾過機などの重力濾過機、加圧濾過機、真空濾過機等が挙げられる。また、分離に際し必要に応じて、前記真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散液に硫酸ナトリウム、食塩などの無機塩、乳酸、酢酸、クエン酸などの有機酸等の沈降促進剤を添加した後、分離しても良い。 [0047] 洗浄は、分離して得た樹脂粒子に、水/アルコ-ル混合溶媒をポリエステル樹脂(仕込み)に対して100~200質量%添加して、25~40℃、1~2時間攪拌を行い、樹脂粒子表面の分散剤、粘度調整剤を脱離させ、必要に応じてさらに前記沈降促進剤を添加した後、樹脂粒子を分離する。洗浄溶媒である水/アルコール混合溶媒のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、TBA(ターシャリーブタノール)、ブタンジオール、ヘキサノール、エチルヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられ、一般的な洗浄に用いられるメタノール、エタノール、IPAなどと水との混合溶媒が好ましい。」 ・「[0049] 本発明の真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子においては、多くの分野に好ましく使用され、各用途において物性の改質・向上、利用範囲の拡大、さらに新たな効果の発現が期待される理由から、前記のとおりその平均粒径は、1~1000μm、好ましくは1~850μmであり、単分散性は、レーザー回折型粒度分布測定装置を用いて測定した平均粒径と標準偏差から求めた変動係数によって指標することができ、変動係数が8%以下、好ましくは5%以下である。平均粒径の別の好ましい例としては、1~50μmである。 [0050] 真球度は、電子顕微鏡撮影によって得られた樹脂粒子の写真画像を、コンピュータなどを用いて画像処理・解析して計測した樹脂粒子の長径と短径の比によって指標することができ、長径/短径の平均値(アスペクト比)が1.00~1.10、好ましくは1.00~1.05である。 [0051] 本発明のポリエステル樹脂粒子は、平滑表面で真球度が高く、単分散性であるとともに撥水性であるため、産業上、各種用途で極めて有用かつ実用的に利用することが可能である。具体的には、ルースパウダー、ファンデーション、おしろい、水おしろい、フェイスパウダー、コンシーラー、ドーラン、眉墨、マスカラ、アイライン、アイシャドウ、アイシャドウベース、ノーズシャドウ、口紅、グロス、頬紅等のメイクアップ化粧品、洗顔料、クレンジング、コールドクリーム、化粧水、乳液、美容液、クリーム、サンスクリーン剤、アフターシェーブローション、シェービングソープ、シェービングオイル、ケミカルピーリング剤等のスキンケア化粧品、シャンプー、ドライシャンプー、コンディショナー、リンス、リンスインシャンプー、トリートメント、ヘアトニック、整髪料、髪油、ポマード、ヘアカラーリング剤等のヘアケア化粧品、マニキュア、ベースコート、トップコート等のネイルケア化粧品、香水、オーデコロン、デオドラント、ベビーパウダー、歯磨き粉、洗口液、リップクリーム、ボディソープ、ハンドソープ、石けん等のアメニティ化粧品のような化粧品の添加剤、液晶表示装置用スペーサー、トナー用添加剤、電子写真現像用トナー、塗料等のレオロジー改質剤・添加剤、粉体塗料用材料、自動車材料、建築材料等の成形品への機械特性改良剤、フィルム、繊維等の機械特性改良剤、ラピッドプロトタイピング、ラピッドマニュファクチャリング等の樹脂成形体用原料、フラッシュ成形用材料、プラスティックゾル用ペーストレジン、粉ブロッキング材、粉体の流動性・平滑性向上剤、潤滑剤、ゴム配合剤、研磨剤、増粘剤、濾剤および濾過助剤、ゲル化剤、凝集剤、吸油剤、離型剤、プラスティックフィルム・シートの滑り性向上剤、ブロッキング防止剤、光沢調節剤、つや消し仕上げ剤、光拡散剤、表面高硬度向上剤、靭性向上剤、クロマトグラフィー用充填剤、マイクロカプセル用助剤、ドラッグデリバリーシステム・診断薬等の医療用材料、医療用診断検査剤、香料・農薬の保持剤、化学反応用触媒およびその担持体、ガス吸着剤、イオン交換樹脂、セラミック加工用焼結材、測定・分析用の標準粒子、食品工業分野用の粒子等に用いることができる。本発明の真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子は、特に皮膚に対する親和性に優れ、且つ撥水性の良好な化粧品に用いる流動性・平滑性・伸展性向上成分として優れている。また、本発明の真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子は、特に皮膚に対して低刺激、低損傷で、且つ毛穴への侵入や皮膚摩擦の効果が安定・良好であり、汚れや角質をおとす化粧品に用いるスクラブ剤として優れている。」 ・「[0055] 1.真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体の調製 実施例及び比較例において、ポリエステル樹脂、分散剤、粘度調整剤として次のものを用いた。 〔ポリエステル樹脂〕 ポリエステル樹脂A:ポリスチレン換算Mw20万、メルトフローレート(MFR:JIS K7210-1999、温度190℃、荷重2.16kgf)8.0、引張破断強度73MPa、融点164℃の市販のポリ乳酸樹脂(結晶性) ポリエステル樹脂B:ポリスチレン換算Mw18万、メルトフローレート(MFR:JIS K7210-1999、温度190℃、荷重2.16kgf)2.5、引張破断強度68MPaの市販のポリ乳酸樹脂(非結晶性) ポリエステル樹脂C:ポリスチレン換算Mw22万、メルトフローレート(MFR:JIS K7210-1999、温度190℃、荷重2.16kgf)1.5、引張破断強度57MPa、融点115℃の市販のポリブチレンサクシネート樹脂 ポリエステル樹脂D:ポリスチレン換算Mw16万、メルトフローレート(MFR:JIS K7210-1999、温度190℃、荷重2.16kgf)4.5、引張破断強度50MPa、融点87℃の市販のブタンジオール-コハク酸/アジピン酸/乳酸四元共重合体 〔分散剤〕 分散剤(A)(アニオン性高分子化合物) アニオン性高分子化合物A:ポリアクリル酸-アクリルアミド(質量比で80:20)共重合体(平均分子量1800万) アニオン性高分子化合物B:ポリメタクリル酸-アクリルアミド(質量比で90:10)共重合体(平均分子量800万) アニオン性高分子化合物C:ポリアクリル酸-メタクリルアミド(質量比で85:15)共重合体(平均分子量2500万) アニオン性高分子化合物D:ポリアクリル酸-アクリルアミド(質量比で80:20)共重合体(平均分子量400万) 分散剤(B)(ポリビニルアルコール) ポリビニルアルコールA:鹸化度80%、平均分子量11万 ポリビニルアルコールB:鹸化度89%、平均分子量24万 ポリビニルアルコールC:鹸化度73%、平均分子量5万 〔粘度調整剤〕 粘度調整剤A:キサンタンガム(DSP五協フード&ケミカル(株)製、エコーガム) 粘度調整剤B:ヒドロキシエチルセルロース(住友精化(株)製、SW-25F) <実施例1~21、比較例1~5> 表1~表4に示した成分割合で、密閉分散槽に仕込み、ポリエステル樹脂Aを用いた場合は120℃、ポリエステル樹脂B~Dを用いた場合は70℃に加熱して所定の攪拌分散装置を用いた分散方法によって分散後、40℃まで急冷した。その後、減圧下に酢酸エチルを除去してポリエステル樹脂水系分散体を得た。 〔分散方法〕 分散方法A:攪拌翼形状として上下2枚のパドル翼を有する攪拌装置により、所定の翼比、周速にて、1時間攪拌した。 分散方法B:攪拌翼形状としてパドル翼1枚とアンカー翼を有する攪拌装置により、所定の翼比、周速にて、1時間攪拌した。 分散方法C:プライミクス(株)製ホモミキサーMARKIIを用いて、10,000r.p.m.の回転数で、3分間撹拌した。 [0056] また、ポリエステル樹脂水系分散体の調製時の分散工程中(混合攪拌時における加熱分散、冷却後)および水系分散体(酢酸エチル除去後)の粘度、安定性について、以下のようにして測定、評価を行った。結果を表1~表4に示す。 〔粘度〕 分散工程中、水系分散体の粘度測定は、B型粘度計(東機産業(株)製、TVB-10M)を用いて行い、測定条件は各粘度に応じてローターNo.M1~M4、及び回転数6、12、30、60rpmより適宜選択し、25℃における粘度を測定した。 〔安定性〕 分散工程中、水系分散体の安定性は、目視により次の基準で評価した。 評価基準 ◎:凝集や沈降は認められない ○:攪拌を停止すると一部凝集あるいは沈降を生じている △:凝集や沈降がわずかに認められる ×:分離または凝集を生じている 2.真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子の調製方法 得られた水系分散体からポリエステル樹脂粒子を調製するため、樹脂水系分散液に硫酸ナトリウムを適量添加した後真空濾過して得たケーキ状物に、イオン交換水/アルコール混合溶剤をポリエステル樹脂(仕込み)に対して100質量%添加して、25℃、1時間攪拌を行い、樹脂粒子表面の分散剤、粘度調整剤を脱離させた後、樹脂粒子を濾別する洗浄操作を2回行った。その後濾別した樹脂粒子を気流乾燥機を用いて40℃、6時間乾燥しポリエステル樹脂粒子を得た。 [0057] また、ポリエステル樹脂粒子の粒子状態(平均粒径、分散度、真球度)について、以下のようにして測定、評価を行った。結果を表1~表4に示す。 〔粒子状態〕 粒子の平均粒径、単分散度は、レーザー回折型粒度分布測定装置(島津製作所(株)製、SALD-2300型、屈折率1.45-0.00i)を用いて測定した。単分散度は、平均粒径と標準偏差から求めた変動係数にて評価した。 [0058] 真球度は、電子顕微鏡(日本電子(株)製、JCM-5000)撮影によって得られた樹脂粒子の写真を画像処理・解析して計測した樹脂粒子(50個)の長径と短径の比の平均値(アスペクト比)で評価した。」 ・「[0060] [表1] [図:0001429005000001.jpg] [0061][表2] [図:0001429005000002.jpg] [0062] [表3] [図:0001429005000003.jpg] 」 ・「[図1] [図:0001429005000004.jpg] [図:0001429005000005.jpg] 」 イ 甲A1に記載された発明 甲A1に記載された事項を、特に、請求項1を引用する請求項10並びに実施例15について整理すると、甲A1には、次の発明(以下、順に「甲A1発明」及び「甲B1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A1発明> 「ポリエステル樹脂が水に分散された真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体であって、前記ポリエステル樹脂の粒子平均粒径は1~1000μmの範囲内であり、その真球度は粒子の長径/短径の平均値(アスペクト比)として1.00~1.10の範囲内であり、単分散性は、平均粒径と標準偏差からの変動係数として8%以下であり、 前記分散体中には、前記ポリエステル樹脂とともに、 分散剤として、(A)平均分子量500万以上2500万以下のアニオン性高分子化合物と(B)ポリビニルアルコールとを質量比(A/B)で1/10~1/99の範囲の割合で含有し、 前記分散体は、その粘度が、0.1~5Pa・sの範囲内であることを特徴とする真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体から樹脂粒子を分離、洗浄、そして乾燥して得られたものである真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子。」 <甲B1発明> 「表3の実施例15に示した成分割合(表3の実施例15については上記アを参照。)で、密閉分散槽に仕込み、70℃に加熱して所定の攪拌分散装置を用いた分散方法によって分散後、40℃まで急冷した後、減圧下に酢酸エチルを除去して得られたポリエステル樹脂水系分散体に硫酸ナトリウムを適量添加した後真空濾過して得たケーキ状物に、イオン交換水/アルコール混合溶剤をポリエステル樹脂(仕込み)に対して100質量%添加して、25℃、1時間攪拌を行い、樹脂粒子表面の分散剤、粘度調整剤を脱離させた後、樹脂粒子を濾別する洗浄操作を2回行った後、濾別した樹脂粒子を気流乾燥機を用いて40℃、6時間乾燥して得たポリエステル樹脂粒子。」 (2)本件特許発明1について ア 本件特許発明1について 本件特許発明1は、その構成が長文のため、以下のとおり分節して対比・検討を行うこととする。各分節に対応する本件特許発明1の各構成は、分節ごとに「構成A」のようにいう。以下、甲A1以外の文献との対比・検討においても同様である。 【請求項1】 A:レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される体積基準の平均粒子径が0.5~100μmであり、 B:圧縮凝集率が0~25%であり、かつ、圧縮回復率が60~100%であり、 C:熱可塑性樹脂及びセルロースから選ばれる少なくとも1種である有機ポリマーを含み、 D:界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含む E:粒子であって 、 C-1:前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリビニル系樹脂が、ポリ塩化ビニル及びポリ酢酸ビニルから選ばれる少なくとも1種であり、 C-1-1:前記ポリアクリル系樹脂が、ポリメタクリル酸メチル及びポリ(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリスチレン系樹脂が、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル/スチレン共重合体及びポリスチレンエラストマーから選ばれる少なくとも1種であり、 C-1-2:前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、低分子量ポリオレフィン及びポリオレフィンエラストマーから選ばれる少なくとも1種であり、 C-1-3:前記ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸、ポリプロピオラクトン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートヒドロキシカプロエート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートラクテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリヒドロキシブチレートバリレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシアシル)、ポリヒドロキシアシル、ポリグリコール酸及び乳酸-グリコール酸共重合体から選ばれる少なくとも1種であり、 C-1-4:前記ポリエーテル系樹脂が、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアセタール、ポリエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも1種であり、 C-1-5:前記ポリアミド系樹脂が、ナイロン1、ナイロン3、ナイロン4、ポリカプロアミド、ポリ-ω-アミノヘプタン酸、ポリ-9-アミノノナン酸、ポリウンデカンアミド、ポリラウリンラクタム、ポリエチレンジアミンアジパミド、ポリテトラメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンジアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカミド、ポリオクタメチレンア ジパミド、ポリデカメチレンアジパミド、ポリデカメチレンセバカミド、ポリドデカメチレンドデカミド及びメタキシレンジアミン-6ナイロンから選ばれる少なくとも1種であり、 C-2:前記セルロース系樹脂が、セルロースアセテート及び酢酸酪酸セルロースから選ばれる少なくとも1種であり、 D-1:前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であり、 D-1-1:前記アニオン界面活性剤が、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、脂肪酸アルカリ金属塩、アルキルスルホコハク酸エステル塩及びN-アシルアミノ酸塩類から選ばれる少なくとも1種であり、 D-1-2:前記カチオン界面活性剤が、第4級アンモニウム塩及びアルキルアミン塩から選ばれる少なくとも1種であり、 D-1-3:前記ノニオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレンオキサイド付加アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、多価アルコールと1価脂肪酸とのエステル化合物、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、高級脂肪酸PEGグリセリル類、高級脂肪酸ソルビタン類、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリンエーテル、ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル、アルキルポリグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル及びポリソルベート類から選ばれる少なくとも1種であり、 D-2:前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アラビアガム、タマリンドガム、ペクチン、プルラン、カゼイン、キサンタンガム、カラギナン、トラガントガム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも1種であり、 F:前記粒子に占める前記有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%である粒子 G:(但し、黒色アクリロニトリル系重合体粉末及び前記有機ポリマーの重量割合が100重量%である粒子を除く)。 イ 甲A1発明について (ア)対比 甲A1発明の「ポリエステル樹脂」は、本件特許発明1の「ポリエステル系樹脂」に相当し、甲A1発明の「ポリビニルアルコール」は、本件特許発明1の「ポリビニルアルコール」に相当し、甲A1発明の「粒子平均粒径」は、本件特許発明1の「平均粒子径」に相当する。また、甲A1には、単分散性について、レーザー回折型粒度分布測定装置を用いて測定した平均粒径と標準偏差から求めた変動係数を指標することが記載されているので(甲A1の[0049])、甲A1発明における平均粒子径は、レーザー回折型粒度分布測定装置を用いて測定したものであるといえ、甲A1発明の平均粒子径は1~1000μmの範囲内であるから、1~100μmの限りにおいて、本件特許発明1の「レーザー回折型粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の平均粒子径が0.5~100μmであり」という発明特定事項を甲A1発明は満たすといえる。さらに、甲A1発明の粒子は、黒色アクリロニトリル系重合体粉末でないことは明らかである。 そうすると、両者は、以下の点で一致する。 <一致点> 「A:レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される体積基準の平均粒子径が1~100μmであり、 C:熱可塑性樹脂及びセルロースから選ばれる少なくとも1種である有機ポリマーを含む、 E:粒子であって、 C-1:前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種である、粒子 G':(但し、黒色アクリロニトリル系重合体粉末を除く)。」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1-1-1> 本件特許発明1の粒子は、さらに、「B:圧縮凝集率が0~25%であり、かつ、圧縮回復率が60~100%」であるのに対し、甲A1発明の粒子は、圧縮凝集率及び圧縮回復率が不明である点。 <相違点1-1-2> 本件特許発明1の粒子は「D:界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含む」のに対し、甲A1発明の粒子は、界面活性剤及び水溶性高分子を含むか否かが明確でない点。 <相違点1-1-3> 本件特許発明1の粒子は、ポリエステル系樹脂が「構成C-1-3から選ばれる少なくとも1種」であるのに対し、甲A1発明の粒子は、ポリエステル系樹脂としてどのような樹脂を用いるのかが特定されていない点。 <相違点1-1-4> 本件特許発明1の粒子は「F:前記粒子に占める前記有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%である」のに対し、甲A1発明の粒子は、粒子に占める有機ポリマーの重量割合が特定されていない点。 <相違点1-1-5> 本件特許発明1の粒子は「前記有機ポリマーの重量割合が100重量%である粒子を除く」ものであるのに対し、甲A1発明の粒子は、有機ポリマーの重量割合が100重量%である粒子を含むか否かが特定されていない点。 (イ)判断 上記相違点1-1-1について検討する。 甲A1には、甲A1発明の粒子の圧縮凝集率及び圧縮回復率が記載されていない。そして、甲A1発明の粒子が本件特許発明1の構成Bを満たすといえる具体的な根拠があるわけではないから、相違点1-1-1は実質的な相違点である。 そして、甲A1及び他の証拠をみても、甲A1発明において、本件特許発明1の構成Bを満たすようにする動機付けがない。 よって、甲A1発明において、相違点1-1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)特許異議申立人Aの主張について 特許異議申立人Aは、特許異議申立書A(61頁)及び令和7年4月14日に提出した意見書(7頁)において、甲A1発明の粒子は、本件特許の明細書の[0067]に記載された製造方法で製造されているので、製造方法において実質的な差異がなく、甲A1発明の粒子は本件特許発明1の構成Bを満たすといえること並びに粒子の製造方法、組成、測定方法等からみて、甲A1発明と本件特許発明1には実質的な相違点がないといえることを主張している。 しかし、本件特許の明細書の[0067]には、「本発明の粒子は、例えば、粒子を構成する成分と、界面活性剤と、水溶性高分子と、水とを混合し、予備混合液を得る工程1と、工程1で得られた予備混合液を加熱攪拌し、加熱分散液を得る工程2と、工程2で得られた加熱分散液を冷却する工程3とを含む方法で製造することができる。」と、本件特許発明の粒子が工程1~3を含む方法で製造できること並びに上記工程1~3で行う事項の概略が記載されているにすぎないから、甲A1発明の粒子が本件特許の明細書の[0067]に記載された製造方法で製造されていることをもって、甲A1発明の粒子が本件特許発明1の構成Bを満たすとはいえない。また、甲A1発明の粒子が、本件特許の実施例と同じ条件で作製されたものでもない。さらに、甲A1発明は、例えば、上記相違点1-1-2ないし1-1-5において、その組成が本件特許発明1と同一であるとはいえないから、粒子の製造方法、組成、測定方法等からみて、甲A1発明の粒子が本件特許発明1の構成Bを満たすとはいうことはできない。そして、甲A1及び他の証拠の記載をみても、甲A1発明において、粒子の圧縮凝集率及び圧縮回復率に着目して、本件特許発明1の構成Bを満たすようにする動機付けも見当たらない。 したがって、特許異議申立人Aの上記主張は、上記(イ)の判断に影響するものではない。 ウ 甲B1発明について (ア)対比 甲B1発明の「ポリエステル樹脂C:ポリブチレンサクシネート樹脂」は、本件特許発明1の「ポリブチレンサクシネート」に相当し、甲B1発明の「分散剤(B):ポリビニルアルコールA」は、本件特許発明1の「ポリビニルアルコール」に相当し、甲B1発明の「平均粒径」は、レーザー回折型粒度分布測定装置を用いて測定したものであるから(甲A1の[0057])、本件特許発明1の「レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される平均粒子径」に相当する。そして、甲B1発明における平均粒子径は、3.22μmであるから、本件特許発明1の「レーザー回折型粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の平均粒子径が0.5~100μmであり」という発明特定事項を満たすといえる。さらに、甲B1発明の粒子は、黒色アクリロニトリル系重合体粉末でないことは明らかである。 そうすると、両者は、以下の点で一致する。 <一致点> 「A:レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される体積基準の平均粒子径が1~100μmであり、 C:熱可塑性樹脂及びセルロースから選ばれる少なくとも1種である有機ポリマーを含む、 E:粒子であって、 C-1:前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、 C-1-3:前記ポリエステル系樹脂が、構成C-1-3から選ばれる少なくとも1種である粒子 G':(但し、黒色アクリロニトリル系重合体粉末を除く)。」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1-2-1> 本件特許発明1の粒子は、さらに、「B:圧縮凝集率が0~25%であり、かつ、圧縮回復率が60~100%」であるのに対し、甲B1発明の粒子は、圧縮凝集率及び圧縮回復率が不明である点。 <相違点1-2-2> 本件特許発明1の粒子は「D:界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含む」のに対し、甲B1発明の粒子は、界面活性剤及び水溶性高分子を含むか否かが明確でない点。 <相違点1-2-3> 本件特許発明1の粒子は「F:前記粒子に占める前記有機ポリマーの重量割合が97.3重量%~100重量%である」のに対し、甲B1発明の粒子は、粒子に占める有機ポリマーの重量割合が特定されていない点。 <相違点1-1-4> 本件特許発明1の粒子は「前記有機ポリマーの重量割合が100重量%である粒子を除く」ものであるのに対し、甲B1発明の粒子は、有機ポリマーの重量割合が100重量%である粒子を含むか否かが特定されていない点。 (イ)判断 上記相違点1-2-1について検討する。相違点1-2-1は、相違点1-1-1と実質的に同じ内容であるから、上記イ(イ)と同様に判断される。 よって、相違点1-2-1は実質的な相違点であり、甲B1発明において、相違点1-2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (ウ)特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは特許異議申立書B(23~24頁)において、本件特許の明細書の[0017]等の記載から、本件特許発明1の構成Bを満たすためには、以下の(a)~(g)の点が重要であり、甲B1発明は、このうち、少なくとも(c)~(e)を満たしており、(f)は明示的には記載されていないものの満たしていると考えられ、(a)~(b)を満たしている蓋然性が高く、(g)以外は全て満たしているといえるから、本件特許発明1の構成Bを満たす蓋然性が高いと主張している。 (a)D90/D50が1.0~3.5である (b)D10/D50が0.1~1.0である (c)本件特許発明2で規定した熱可塑性樹脂を用いる (d)製造時に水溶性高分子及び/又はアニオン・ノニオン界面活性剤を用いる (e)製造時に水溶性高分子及び/又は界面活性剤を混合する (f)水溶性高分子及び/又は界面活性剤が粒子表面に存在する (g)製造時に有機溶剤を用いない しかし、特許異議申立人Bが認めるとおり、甲B1発明が上記(a)~(g)を全て満たしているということはできないし、仮に、甲B1発明が上記(a)~(g)を全て満たしているとしても、熱可塑性樹脂、界面活性剤及び水溶性高分子の種類やその使用量、製造時の温度や有機溶剤の使用の有無等の条件などによって、得られる粒子の圧縮凝集率や圧縮回復率は変化するものと認められるから、甲B1発明の粒子は、本件特許発明1の構成Bを満たす蓋然性が高いということはできない。 よって、特許異議申立人Bの上記主張は採用することができない。 (3)本件特許発明2ないし7について 本件特許発明2ないし7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲A1発明及び甲B1発明ではなく、甲A1発明又は甲B1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2ないし7もまた、甲A1発明及び甲B1発明ではなく、甲A1発明又は甲B1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)申立理由A1及び申立理由B1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1ないし7は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由A1及び申立理由B1によっては取り消すことはできない。 3 申立理由A2(甲A2を主たる証拠とする新規性・進歩性)及び申立理由B2(甲B2を主たる証拠とする新規性・進歩性)について 甲A2と甲B2は同一の文献であるから、申立理由A2及び申立理由B2について併せて検討する。 (1)甲A2に記載された発明等 ア 甲A2に記載された事項 甲A2には、「化粧料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「請求の範囲 [請求項1] 脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を含む化粧料であって、 前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子は、体積平均粒子径が2~30μmであり、かつ粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下、粒子径30μmを超える粒子の割合が6体積%以下の粒子である、化粧料。」 ・「[0014] 前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子における脂肪族ポリエステル系樹脂の割合は、90質量%以上(例えば、90~100質量%)が好ましく、より好ましくは95質量%以上である。 [0015] 前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子の体積平均粒子径は2~30μmであり、下限は4μm(すなわち4μm以上)が好ましく、上限は20μm(すなわち20μm以下)が好ましい。体積平均粒子径を2μm以上とすることにより、得られる化粧料の塗布時の伸びがいっそう良好となる傾向がある。また、体積平均粒子径を30μm以下とすることにより、得られる化粧料の塗布時の感触性(異物感のなさ、ソフト感、きしみ感が無い、すべり性、滑らかさ)がいっそう良好となる傾向がある。なお、前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子の体積平均粒子径は、0.1gを水10gに分散させたうえで、電気検知式粒度分布測定装置(例えば、ベックマンコールター社製の商品名コールターマルチサイザー)を用いて測定される。」 ・「[0028] 製造例1 300mL容の撹拌機付き耐圧容器に脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンサクシネート、デュロメーター固さ(ショアD)60)100g、重量平均分子量15500のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(株式会社ADEKAの商品名:プルロニックF108)15gおよび水135gを仕込み密閉した。引き続き、毎分500回転で撹拌しながら、180℃まで昇温し、容器内を180℃に保って撹拌した後、50℃まで冷却して脂肪族ポリエステル系樹脂の水分散体を取り出した。以上の一連の操作においては、脂肪族ポリエステル系樹脂に100℃以上の熱履歴が加わる時間を30分程度以下に制御した。上記で得られた水分散体を濾過、乾燥および分級処理を実施し、脂肪族ポリエステル系樹脂の球状粒子を得た。得られた脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンサクシネート)粒子は、体積平均粒子径が11.9μm、粒子径1μm未満の粒子の割合が2.0体積%、粒子径30μmを超える粒子の割合が0.4体積%であり、10%変位圧縮強度が6MPa(デュロメーター固さ(ショアD)60)、円形度96であった。」 ・「[0039] 製造例4 300mL容の撹拌機付き耐圧容器に脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンサクシネート、デュロメーター固さ(ショアD)60)100g、重量平均分子量15500のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(株式会社ADEKAの商品名:プルロニックF108)25gおよび水125gを仕込み密閉した。引き続き、毎分750回転で撹拌しながら、180℃まで昇温し、容器内を180℃に保って撹拌した後、50℃まで冷却して脂肪族ポリエステル系樹脂の水分散体を取り出した。以上の一連の操作においては、脂肪族ポリエステル系樹脂に100℃以上の熱履歴が加わる時間を30分程度以下に制御した。上記で得られた水分散体について濾過、乾燥および分級処理を実施し、脂肪族ポリエステル系樹脂の球状粒子を得た。得られた脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンサクシネート)粒子は、体積平均粒子径が8.8μm、粒子径1μm未満の粒子の割合が12.0体積%、粒子径30μmを超える粒子の割合が0.2体積%であり、10%変位圧縮強度が6MPa(デュロメーター固さ(ショアD)60)、円形度97であった。 [0040] 製造例5 製造例4において、脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンサクシネート)に代えて、脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸、デュロメーター固さ(ショアD)75)を用いたこと、および容器内温度を190℃にした以外は製造例4と同様にして、脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を得た。得られた脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸)粒子は、体積平均粒子径が5.6μm、粒子径1μm未満の粒子の割合が11.0体積%、粒子径30μmを超える粒子の割合が0.5体積%であり、10%変位圧縮強度が20MPa(デュロメーター固さ(ショアD)73)、円形度95であった。 [0041] 製造例6 300mL容の撹拌機付き耐圧容器に脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンサクシネート、デュロメーター固さ(ショアD)60)100g、重量平均分子量15500のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(株式会社ADEKAの商品名:プルロニックF108)10gおよび水140gを仕込み密閉した。引き続き、毎分500回転で撹拌しながら、140℃まで昇温し、容器内を140℃に保って撹拌した後、50℃まで冷却して脂肪族ポリエステル系樹脂の水分散体を取り出した。以上の一連の操作においては、脂肪族ポリエステル系樹脂に100℃以上の熱履歴が加わる時間を30分程度以下に制御した。上記で得られた水分散体について濾過、乾燥および分級処理を実施し、脂肪族ポリエステル系樹脂の球状粒子を得た。得られた脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンサクシネート)粒子は、体積平均粒子径が24.6μm、粒子径1μm未満の粒子の割合が1.1体積%、粒子径30μmを超える粒子の割合が4.5体積%であり、10%変位圧縮強度が6MPa(デュロメーター固さ(ショアD)60)、円形度95であった。 [0042] 製造例7 製造例6において、脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンサクシネート)に代えて、脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸、デュロメーター固さ(ショアD)75)を用いたこと、および容器内温度を175℃にした以外は製造例6と同様にして、脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を得た。得られた脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸)粒子は、体積平均粒子径が22.4μm、粒子径1m未満の粒子の割合が1.7体積%、粒子径30μmを超える粒子の割合が5.1体積%であり、10%変位圧縮強度が20MPa(デュロメーター固さ(ショアD)73)、円形度93であった。」 ・「[0055] 製造例12 300mL容の撹拌機付き耐圧容器に脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンサクシネート、デュロメーター固さ(ショアD)60)100g、けん化度78-81、重合度2000のポリビニルアルコール(クラレの商品名:PVA420)35gおよび水115gを仕込み密閉した。引き続き、毎分500回転で撹拌しながら、180℃まで昇温し、容器内を180℃に保って撹拌した後、50℃まで冷却して脂肪族ポリエステル系樹脂の水分散体を取り出した。以上の一連の操作においては、脂肪族ポリエステル系樹脂に100℃以上の熱履歴が加わる時間を30分程度以下に制御した。上記で得られた水分散体について濾過、乾燥および分級処理を実施し、脂肪族ポリエステル系樹脂の球状粒子を得た。得られた脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンサクシネート)粒子は、体積平均粒子径が15.5μm、粒子径1μm未満の粒子の割合が1.0体積%、粒子径30μmを超える粒子の割合が0.2体積%であり、10%変位圧縮強度が6MPa(デュロメーター固さ(ショアD)60)、円形度96であった。」 イ 甲A2に記載された発明 甲A2に記載された事項を、特に製造例1、4ないし7及び12について整理すると、甲A2には、次の発明(以下、「甲A2発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A2発明> 「体積平均粒子径が11.9μm、8.8μm、5.6μm、24.6μm、22.4μm又は15.5μmである、製造例1、4ないし7及び12で得られた脂肪族ポリエステル系樹脂粒子(当審注:製造例1、4ないし7及び12については、上記アを参照。)。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点2> 本件特許発明1の粒子は、「B:圧縮凝集率が0~25%であり、かつ、圧縮回復率が60~100%」であるのに対し、甲A2発明の粒子は、圧縮凝集率及び圧縮回復率が不明である点。 イ 判断 上記相違点2について検討する。 甲A2には、甲A2発明の粒子の圧縮凝集率及び圧縮回復率が記載されていない。そして、甲A2発明の粒子が本件特許発明1の構成Bを満たすといえる具体的な根拠があるわけではないから、相違点2は実質的な相違点である。 そして、甲A2及び他の証拠をみても、甲A2発明において、本件特許発明1の構成Bを満たすようにする動機付けがない。 よって、甲A2発明において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、本件特許発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲A2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 特許異議申立人Aの主張について 特許異議申立人Aは、特許異議申立書A(64頁)及び令和7年4月14日付け意見書(7頁)において、甲A2発明の粒子は、本件特許の明細書の[0067]に記載された製造方法で製造されているので、製造方法において実質的な差異がなく、甲A2発明の粒子は本件特許発明1の構成Bを満たすといえること並びに粒子の製造方法、組成、測定方法等からみて、甲A2発明と本件特許発明1には実質的な相違点がないといえることを主張している。 しかし、本件特許の明細書の[0067]については、上記2(2)イ(ウ)でも言及したとおり、本件特許発明の粒子が工程1~3を含む方法で製造できること並びに上記工程1~3で行う事項の概略が記載されているにすぎないから、甲A2発明の粒子が本件特許の明細書の[0067]に記載された製造方法で製造されていることをもって、甲A2発明の粒子が本件特許発明1の構成Bを満たすとはいえない。また、甲A2発明の粒子が、本件特許の実施例と同じ条件で作製されたものでもない。さらに、甲A2発明は、その組成が本件特許発明1と同一であるとはいえないから、粒子の製造方法、組成、測定方法等からみて、甲A2発明の粒子が本件特許発明1の構成Bを満たすとはいうことはできない。そして、甲A2及び他の証拠の記載をみても、甲A2発明において、粒子の圧縮凝集率及び圧縮回復率に着目して、本件特許発明1の構成Bを満たすようにする動機付けも見当たらない。 したがって、特許異議申立人Aの上記主張は、上記イの判断に影響するものではない。 エ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは特許異議申立書B(28~29頁)において、本件特許の明細書の[0017]等の記載から、本件特許発明1の構成Bを満たすためには、上記2(2)ウ(ウ)に記載した(a)~(g)の点が重要であり、甲A2発明は、このうち、少なくとも(a)、(c)~(e)及び(g)を満たしており、(f)は明示的には記載されていないものの満たしていると考えられ、(b)を満たしている蓋然性が高く、(a)~(g)を全て満たしているといえるから、本件特許発明1の構成Bを満たす蓋然性が高いと主張している。 しかし、特許異議申立人Bの上記主張を踏まえても、甲A2発明が上記(a)~(g)を全て満たしているということはできないし、仮に、甲A2発明が上記(a)~(g)を全て満たしているとしても、熱可塑性樹脂、界面活性剤及び水溶性高分子の種類やその使用量、製造時の温度や有機溶剤の使用の有無等の条件などによって、得られる粒子の圧縮凝集率や圧縮回復率は変化するものと認められるから、甲A2発明の粒子は、本件特許発明1の構成Bを満たす蓋然性が高いということはできない。 よって、特許異議申立人Bの上記主張は採用することができない。 (3)本件特許発明2ないし7について 本件特許発明2ないし7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲A2発明ではなく、甲A2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2ないし7もまた、甲A2発明ではなく、甲A2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)申立理由A2及び申立理由B2についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1ないし7は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由A2及び申立理由B2によっては取り消すことはできない。 4 申立理由A3ないしA5(それぞれ、甲A3ないし甲A5を主たる証拠とする新規性・進歩性)並びに申立理由B3及びB4(それぞれ、甲B3及びB4を主たる証拠とする新規性・進歩性)について (1) 本件特許発明1について ア 対比・判断 甲A3ないし甲A5のそれぞれに記載された発明並びに甲B3及び甲B4のそれぞれに記載された発明と、本件特許発明1とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違している。 <相違点3> 本件特許発明1の粒子は、「B 圧縮凝集率が0~25%であり、かつ、圧縮回復率が60~100%」であるのに対し、甲A3ないし甲A5並びに甲B3及び甲B4のそれぞれに記載された発明の粒子は、圧縮凝集率及び圧縮回復率が不明である点。 上記相違点3について検討する。 甲A3ないし甲A5並びに甲B3及び甲B4には、粒子の圧縮凝集率及び圧縮回復率が記載されていない。そして、甲A3ないし甲A5並びに甲B3及び甲B4のそれぞれに記載された粒子が本件特許発明1の構成Bを満たすといえる具体的な根拠があるわけではないから、相違点3は実質的な相違点である。 そして、甲A3ないし甲A5、甲B3及び甲B4並びに他の証拠をみても、甲A3ないし甲A5並びに甲B3及び甲B4のそれぞれに記載された発明において、本件特許発明1の構成Bを満たすようにする動機付けがない。 よって、甲A3ないし甲A5並びに甲B3及び甲B4のそれぞれに記載された発明において、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、本件特許発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲A3ないし甲A5並びに甲B3及び甲B4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Aの主張について 特許異議申立人Aは、特許異議申立書A(66~71頁)及び令和7年4月14日付け意見書(7頁)において、甲A3及び甲A5に記載された発明の粒子は、本件特許の明細書の[0067]に記載された製造方法で製造されているので、製造方法において実質的な差異がなく、甲A3及び甲A5に記載された発明の粒子は本件特許発明1の構成Bを満たすといえること、甲A4に記載された発明の粒子は、粒子同士の凝集の発生がなく、良好な滑り性を示し、流動性に優れ塗膜表面の均質性に優れるものであり、粒子を構成する樹脂及び体積平均粒子径に差異がなく、真球度やD90/D50に差異がなく、化粧料やコーティング組成物に含まれるもので用途にも差異がないことから、本件特許の明細書の[0015]の記載からみて、甲A4に記載された発明の粒子は本件特許発明1の構成Bを満たすといえること並びに粒子の製造方法、組成、測定方法等からみて、甲A3ないし甲A5に記載された発明と本件特許発明1には実質的な相違点がないといえることを主張している。 しかし、本件特許の明細書の[0067]については、上記2(2)イ(ウ)でも言及したとおり、本件特許発明の粒子が工程1~3を含む方法で製造できること並びに上記工程1~3で行う事項の概略が記載されているにすぎないから、甲A3及び甲A5に記載された発明の粒子が本件特許の明細書の[0067]に記載された製造方法で製造されていることをもって、甲A3及び甲A5に記載された発明の粒子が本件特許発明1の構成Bを満たすとはいえない。また、甲A3及び甲A5に記載された発明の粒子が、本件特許の実施例と同じ条件で作製されたものでもない。さらに、甲A3及び甲A5に記載された発明は、その組成が本件特許発明1と同一であるとはいえないから、粒子の製造方法、組成、測定方法等からみて、甲A3及び甲A5に記載された発明の粒子が本件特許発明1の構成Bを満たすとはいうことはできない。また、甲A4に記載された発明の粒子が、本件特許の実施例と同じ条件で作製されたものでもないし、甲A4に記載された発明の粒子の滑り性等の特性や用途、粒子を構成する樹脂並びに体積平均粒子径などの物性が本件特許発明1のものと重複しているとしても、熱可塑性樹脂、界面活性剤及び水溶性高分子の種類やその使用量、製造時の温度や有機溶剤の使用の有無等の条件などによって、得られる粒子の圧縮凝集率や圧縮回復率は変化するものと認められるから、特許異議申立人Aが主張するように、甲A4に記載された発明の粒子は、本件特許発明1の構成Bを満たすということはできない。 そして、甲A3ないしA5及び他の証拠の記載をみても、甲A3ないし甲A5に記載された発明において、粒子の圧縮凝集率及び圧縮回復率に着目して、本件特許発明1の構成Bを満たすようにする動機付けも見当たらない。 したがって、特許異議申立人Aの上記主張は、上記アの判断に影響するものではない。 ウ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは特許異議申立書B(32~33頁、37~38頁)において、本件特許の明細書の[0017]等の記載から、本件特許発明1の構成Bを満たすためには、上記2(2)ウ(ウ)に記載した(a)~(g)の点が重要であり、甲B3及び甲B4に記載された発明は、このうち、少なくとも(c)~(e)及び(g)を満たしており、(f)は明示的には記載されていないものの満たしていると考えられ、(a)及び(b)を満たしている蓋然性が高く、(a)~(g)を全て満たしているといえるから、本件特許発明1の構成Bを満たす蓋然性が高いと主張している。 しかし、特許異議申立人Bの上記主張を踏まえても、甲B3及び甲B4に記載された発明が上記(a)~(g)を全て満たしているということはできないし、仮に、甲A2発明が上記(a)~(g)を全て満たしているとしても、熱可塑性樹脂、界面活性剤及び水溶性高分子の種類やその使用量、製造時の温度や有機溶剤の使用の有無等の条件などによって、得られる粒子の圧縮凝集率や圧縮回復率は変化するものと認められるから、甲B3及びB4に記載された発明の粒子は、本件特許発明1の構成Bを満たす蓋然性が高いということはできない。 よって、特許異議申立人Bの上記主張は採用することができない。 (3)本件特許発明2ないし7について 本件特許発明2ないし7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲B3及び甲B4に記載された発明ではなく、甲B3及び甲B4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2ないし7もまた、甲B3及び甲B4に記載された発明ではなく、甲B3及び甲B4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)申立理由A3ないしA5並びに申立理由B3及びB4についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1ないし7は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由A3ないしA5並びに申立理由B3及びB4によっては取り消すことはできない。 5 申立理由A6(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)本件特許発明が解決しようとする課題 本件特許の明細書の【0004】及び【0011】の記載からみて、本件特許発明1ないし5が解決しようとする課題は、「滑り性に優れ、ソフトな触感を有する粒子を提供する」ことであり、本件特許発明6が解決しようとする課題は、「滑り性に優れ、ソフトな触感を有する化粧料を提供する」ことであり、本件特許発明7が解決しようとする課題は、「滑り性に優れ、ソフトな触感を有するコーティング組成物を提供する」ことであると認められる(以下、これらの課題をまとめて「発明の課題」という。)。 (4)サポート要件の判断 本件特許の明細書の【0021】、【0025】、【0026】、【0028】~【0031】、【0034】~【0053】、【0056】、【0059】、【0063】、【0082】には、本件特許発明1ないし7に対応する記載がある。そして、同【0028】~【0030】には、平均粒子径(D50)、圧縮凝集率及び圧縮回復率について具体的な調整すべき範囲が、その理由とともに記載されており、同【0067】~【0073】には、粒子の製造時に界面活性剤や水溶性高分子を用いることにより、圧縮凝集率が低く、圧縮回復率が高い粒子が得られることが記載されており、同【0083】~【0105】にはこれらの条件を満たす実施例1~10の粒子が滑り性、ソフト感、広がり性に優れることが記載され、これらの条件を満たさない比較例1~4の粒子では滑り性、ソフト感、広がり性が劣り、塗布性に問題が生じることが記載されている。 そうすると、当業者は、平均粒子径(D50)、圧縮凝集率及び圧縮回復率が【0028】~【0030】に記載された条件を満たし、界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含み、有機ポリマーを所定の重量割合で含む粒子との特定事項を満たすものであれば、滑り性に優れ、ソフトな触感を有するとの発明の課題を解決できると認識する。 そして、本件特許発明1は、上記発明の課題を解決できると認識できる特定事項のすべてを満たすものであるから、当業者が、発明の詳細な説明の記載から、本件特許の発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 したがって、本件特許の明細書の上記記載並びに出願時の技術常識を踏まえれば、当業者であれば本件特許発明1の構成を満たせば本発明の課題が解決できるものと理解する。本件特許発明1の発明特定事項のすべてを有し、さらに限定するものである本件特許発明2ないし7についても同様である。 よって、本件特許発明1ないし7に記載された発明は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を充足する。 (5)特許異議申立人の主張 特許異議申立人Aは特許異議申立書A(81~82頁)及び令和7年4月14日付け意見書(8~9頁)において、上記第4 1(6)の主張をしているので、検討する。 本件特許の明細書の【0029】、【0030】には、圧縮凝集率及び圧縮回復率が所定の範囲であることにより、滑り性やソフトな触感に優れることがその理由とともに記載されており、同【0036】~【0053】、【0056】、【0059】には、熱可塑性樹脂、水溶性高分子及び界面活性剤として使用できる化合物が具体的に記載されており、同【0067】~【0073】には、粒子の製造時に界面活性剤や水溶性高分子を用いることにより、圧縮凝集率が低く、圧縮回復率が高い粒子が得られることが記載されており、同【0083】~【0105】にはこれらの条件を満たす実施例1~10の粒子が滑り性、ソフト感、広がり性に優れることが具体的に記載されているのであるから、本件特許の明細書において、圧縮凝集率及び圧縮回復率を特定の範囲とするための手段等は何も記載されていないという特許異議申立人Aの主張は、採用することができない。また、圧縮凝集率及び圧縮回復率を特定の範囲とするための構成が特許請求の範囲に記載されていないことのみをもって、サポート要件を満たしていないとすることはできない。 よって、特許異議申立人Aの上記主張は、上記(4)の判断に影響するものではない。 (6)申立理由A6についてのむすび 上記(4)及び(5)に記載したとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由A6によって取り消すことはできない。 6 申立理由A7及び申立理由B5(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 上記第3のとおり、本件特許発明1ないし7は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載を要する。 (2)実施可能要件の判断 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、熱可塑性樹脂、水溶性高分子及び界面活性剤として使用できる化合物が具体的に記載されており(【0036】~【0053】、【0056】、【0059】)、本件特許発明の粒子を製造する方法が記載されており(【0067】~【0080】)、本件特許発明1ないし5の発明特定事項を満たす具体的な実施例が示されており、【表1】の実施例1ないし10の粒子の評価結果から、平均粒子径、圧縮凝集率及び圧縮回復率を所定の範囲とし、有機ポリマーと、界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を所定の割合で含有する粒子であれば、滑り性、ソフト感、広がり性に優れることが示されている。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし7を生産及び使用することができる程度の記載があるといえ、本件特許発明1ないし7に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 (3)異議申立人の主張について ア 異議申立人Aの主張について 特許異議申立人Aは特許異議申立書A(82~84頁)及び令和7年4月14日付け意見書(9~10頁)において、上記第4 1(7)の主張をしているので、検討する。 本件特許の明細書には、上記(2)で記載した事項が記載されているので、粒子の圧縮凝集率及び圧縮回復率を特定の範囲とするための手段等は何も記載されていないという特許異議申立人Aの主張は、採用することができない。また、本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし7を生産及び使用することができることは上記(2)で検討したとおりであるから、本件特許の請求項1において、粒子を構成する樹脂、界面活性剤及び水溶性高分子の種類と量比が本件特許発明を実施することができないほど特定されていないということはできない。 また、本件特許発明の粒子は、有機ポリマーの重量割合が97.3%以上であり、界面活性剤及び水溶性高分子が微粒子中の微量成分の測定であるとしても、一定程度の量を集めれば過度の試行錯誤を要することなく分析できるといえる。 よって、特許異議申立人Aの上記主張は、上記(2)の判断に影響するものではない。 イ 異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは特許異議申立書B(42~43頁)において、上記第4 2(5)の主張をしているので、検討する。 上記2(2)ウ(ウ)に記載した(a)~(g)を全て満たす粒子が本件特許発明1の構成Bを満たさない場合があるとしても、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし7を生産及び使用することができる程度の記載があれば、実施可能要件を充足するといえる。そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし7を生産及び使用することができることは上記(2)で検討したとおりである。 よって、特許異議申立人Bの上記主張は採用することができない。 (4)申立理由A7及び申立理由B5についてのむすび 上記(2)及び(3)に記載したとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由A7及び申立理由B5によって取り消すことはできない。 7 申立理由A8(明確性)について 申立理由A8のうち、取消理由において採用しなかった部分について検討する。 (1)明確性要件の判断基準 上記第6 1(1)に記載のとおりである。 (2)明確性要件の判断 特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりであるところ、その記載は明確であり、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載とも整合している。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人Aは特許異議申立書A(84~86頁)及び令和7年4月14日付け意見書(9~10頁)において、上記第4 1(7)の主張をしているので、検討する。 特許異議申立人Aは、どのような要件・構成等を備えれば、本件特許発明1の構成を満たすことが可能となるのか、課題を解決するための手段が請求項1には一切記載されておらず、発明が明確でないと主張するが、本件特許の明細書の【0085】には、圧縮凝集率及び圧縮回復率の測定方法が記載されており、請求項の記載自体は明確である。 また、本件特許発明の粒子は、有機ポリマーの重量割合が97.3%以上であり、界面活性剤及び水溶性高分子が微粒子中の微量成分の測定であるとしても、一定程度の量を集めれば分析できるといえるから、測定法・分析法が明記していないとしても、第三者に不測の不利益を与えるほど不明確でなるとはいえない。 (4)申立理由A8についてのむすび 上記(2)及び(3)に記載したとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由A8によって取り消すことはできない。 第7 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書Aに記載した特許異議申立理由A1ないしA8及び特許異議申立書Bに記載した特許異議申立理由B1ないしB6によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700894

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    同じ当事者: 松本油脂製薬株式会社、野崎 彩
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    同じ当事者: 松本油脂製薬株式会社、野崎 彩
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    同じ当事者: 松本油脂製薬株式会社
  • 2025-700070異議申立 / 2026-03-19 / 訂正認容粒子、及びその用途
    同じ当事者: 松本油脂製薬株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)551件(113・C08J、121・C08J、536・C08J ほか)
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    共通の審決分類: 113・C08J、121・C08J、536・C08J、537・C08J
  • 2026-700139異議申立 / 2026-04-24 / 維持ポリエステルフィルム
    共通の審決分類: 113・C08J、121・C08J、536・C08J、537・C08J
  • 2022-701115異議申立 / 2026-04-15 / 訂正認容ポリイミドフィルム
    共通の審決分類: 113・C08J、121・C08J、536・C08J、537・C08J
  • 2025-700195異議申立 / 2025-12-17 / 訂正認容樹脂粒子及びその用途
    共通の審決分類: 113・C08J、121・C08J、536・C08J、537・C08J
  • 2024-700025異議申立 / 2025-09-22 / 訂正認容球状架橋粒子
    共通の審決分類: 113・C08J、121・C08J、536・C08J、537・C08J

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