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特許異議申立

2024-700749

ナットウキナーゼを含む経口組成物

審判番号
2024-700749
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-116666
登録番号
7429503
請求日
2024年08月08日
審決日
2025年06月13日
公報発行日
2025年09月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】小林製薬株式会社
  • 【権利者代理人】田中 順也
  • 【権利者代理人】水谷 馨也
  • 【権利者代理人】迫田 恭子
  • 【異議申立人】鈴木 幸子
審判長/審判官
  • 審判長 柴田 昌弘
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 松本 陶子
分類
P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7429503号発明「ナットウキナーゼを含む経口組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7429503号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第7429503号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7429503号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、 令和1年 6月24日の出願であって、 令和6年 1月31日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、 令和6年 2月 8日に特許掲載公報が発行され、 その後、その特許に対し、 令和6年 8月 8日に特許異議申立人 鈴木 幸子から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~3)がされ、 令和6年11月25日付けで取消理由が通知され、 令和7年 1月21日に特許権者 小林製薬株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、 令和7年 2月 6日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)が通知され、 令和7年 3月13日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和7年1月21日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「(但し、[I]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、並びに[II]温州みかんの果実、果皮、じょうのう膜、及び種子よりなる群から選択される少なくとも1種の溶媒抽出物を含むものを除く)」と記載されているのを、 「(但し、[I]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[II]温州みかんの果実、果皮、じょうのう膜、及び種子よりなる群から選択される少なくとも1種の溶媒抽出物を含むもの、並びに[III]黒酢もろみ、キトサン、及びビタミンEを含むものを除く)」に訂正する。 請求項1を引用する請求項3も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「(B)α-リノレン酸」と記載されているのを、「(B)シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油」に訂正する。 請求項2を引用する請求項3も同様に訂正する。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、訂正前の「(但し、[I]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、並びに[II]温州みかんの果実、果皮、じょうのう膜、及び種子よりなる群から選択される少なくとも1種の溶媒抽出物を含むものを除く)」という発明特定事項について、「(但し、[I]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[II]温州みかんの果実、果皮、じょうのう膜、及び種子よりなる群から選択される少なくとも1種の溶媒抽出物を含むもの、並びに[III]黒酢もろみ、キトサン、及びビタミンEを含むものを除く)」と訂正し、訂正後の請求項1に係る発明において、黒酢もろみ、キトサン、及びビタミンEを含む場合を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項1の記載を引用する請求項3の訂正についても同様である。 (2)訂正事項2について 訂正事項2による請求項2についての訂正は、訂正前の「(B)α-リノレン酸を含有する」という発明特定事項について、「(B)シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有する」と訂正し、α-リノレン酸の供給原料として、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含むことを具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項2の記載を引用する請求項3の訂正についても同様である。 3 訂正についてのまとめ 以上のとおり、訂正事項1及び2による請求項1~3についての訂正はいずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものである。 なお、訂正前の請求項1~3は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1及び2による請求項1~3についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~3に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 (A)ナットウキナーゼ、並びに(B)ヘスペリジン及び糖転移ヘスペリジンよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、経口組成物(但し、[I]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[II]温州みかんの果実、果皮、じょうのう膜、及び種子よりなる群から選択される少なくとも1種の溶媒抽出物を含むもの、並びに[III]黒酢もろみ、キトサン、及びビタミンEを含むものを除く)。 【請求項2】 (A)ナットウキナーゼ、及び(B)シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有する、経口組成物(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。 【請求項3】 食品である、請求項1又は2に記載の経口組成物。」 第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要 令和6年8月8日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1A及び2A(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明2、3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由1B及び2B(甲第2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明2、3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由1C及び2C(甲第3号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明2、3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 申立理由1D及び2D(甲第4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明2、3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 5 申立理由1E及び2E(甲第5号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明2、3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 6 申立理由1F及び2F(甲第14号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第14号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第14号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 7 申立理由3A及び3B(サポート要件) 本件特許の請求項1~3に係る特許は、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (1)申立理由3Aについて 本件実施例の結果は、「ナットウキナーゼ粉末と『シソ油』とを組み合わせること」で、課題が解決される可能性を示唆するに過ぎず、『シソ油』で得られた効果について、その「由来」も「含有量」も特定されない「(B)αーリノレン酸」でも得られるとする理由は全くない。 そして、本件特許発明2及び3は、「(A)ナットウキナーゼ、及び(B)αーリノレン酸を含有する、経口組成物」と特定されているのみであり、(B)αーリノレン酸の「由来」も「含有量」も特定されていないから、本件特許発明2及び3の全体にわたって、本件特許発明の課題が解決できるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていないことが明らかである。 (2)申立理由3Bについて 本件特許明細書の実施例には試験例1として、ナットウキナーゼ活性を、ゼラチン分解能(ゼラチン皮膜を溶解させる程度)を指標として評価している。この結果を踏まえて、本件特許発明の課題「経時的なナットウキナーゼの活性低下を抑制し、優れた保存安定性を備えさせる技術を提供すること」が解決されることを支持したものと解される。 しかしながら、ゼラチンとフィブリンとは全く異なる物質である。仮に、本件特許発明の組成物が、ナットウキナーゼのゼラチン分解能を高めているとしても、ナットウキナーゼのフィブリン分解能を高めているかどうかとは無関係であり、結局、本件特許発明の課題である「経時的なナットウキナーゼの活性低下を抑制」を解決しているとはいえないから、本件特許発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていないことが明らかである。 8 証拠方法 ・甲第1号証:特開2017-119683号公報 ・甲第2号証:特開2004-143138号公報 ・甲第3号証:特開2016-013976号公報 ・甲第4号証:特開2005-220025号公報 ・甲第5号証:特開2002-360220号公報 ・甲第6号証:総説「界面とソフトカプセル」、膜、2011年、36巻4号、177~182頁、日本膜学会 ・甲第6-1号証:<https://www.jstage.jst.go.jp/browse/membrane/36/4/_contents/-char/ja> ・甲第7号証:改訂版 にかわとゼラチン-産業史と科学技術-、表紙、目次、第356~367頁、奥付、平成9年3月30日、日本にかわ・ゼラチン工業組合 ・甲第8号証:日本食品標準成分表2015年版(七訂)脂肪酸成分表編第2章、第3表 14 油脂類、更新日2015年12月25日 ・甲第8-1号証:<https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365522.htm> ・甲第9号証:小麦・小麦加工品等の機能性とその活用、日本食生活学会誌、Vol.19、No.2、2008年、第116~123頁 ・甲第10号証:特開2011-207809号公報 ・甲第11号証:特開2015-140315号公報 ・甲第12号証:特開2016-030746号公報 ・甲第13号証:特開2017-039657号公報 ・甲第14号証:日王株式会社のサイトページの2019年6月14時点のインターネットアーカイブ、<https://web.archive.org/web/20190614093335/https:/nichiou.co.jp/SHOP/NH-373.html> ・甲第15号証:ナットウキナーゼ高含有納豆菌培養エキスの機能性、株式会社 日本生物.科学研究所、ジャパンフードサイエンス、Vol.39、9月号、2000年、別刷、第55~60頁 ・甲第15-1号証:<https://ci.nii.ac.jp/ncid/ANOO111530> ・甲第16号証:分析法簡易フローチャート ナットウキナーゼ活性度、日本食品分析センター、2019年7月 ・甲第16-1号証:<https://www.jfrl.or.jp/service/enzyme> ・甲第17号証:「酵素反応の基質特異性」、高分子、Vol.20、No.236、(1971)、第794~797頁 ・甲第17-1号証:高分子学会のサイトページ、<https://www.jstage.jst.go.jp/browse/kobunshi/20/11/_contents/-char/ja> ・甲第18号証:国際公開2002/076240号 ・甲第19号証:NSK ナットウキナーゼ高含有 納豆菌培養エキス、株式会社 日本生物.科学研究所、<http://www.jbsl-net.com/product/nsk.php> ・甲第20号証:特開2000-83599号公報 ・甲第21号証:特開2003-192578号公報 ・甲第22号証:特開2017-031134号公報 ・甲第23号証:特開2018-104372号公報 ・甲第24号証:特開平6-345645号公報 ・甲第25号証:ナットウキナーゼによる血流改善作用と冷え性への可能性、Food Style 21、Vol.16、No.11、2012、食品化学新聞社 ・甲第25-1号証:国会図書館NDLサーチでの検索結果画面 ・甲第26号証:特開2005-151955号公報 ・甲第27号証:α-リノレン酸の必須性と機能、日本農芸化学会誌、Vol.62、No.1、(1988)、第42~45頁 ・甲第27-1号証:日本農芸化学会誌のサイトページ、<https://www.jstage.jst.go.jp/browse/nogeikagaku1924/62/1/_contents/-char/ja> ・甲第28号証:n-3系不飽和脂肪酸であるα-リノレン酸の給与がミニブタの血中脂質に及ぼす影響、日本ペット栄養学会、ペット栄養学会誌、2007年7月11日 ・甲第28-1号証:ペット栄養学会のサイトページ、<https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jpan/10/Supplement/_contents/-char/ja> ・甲第29号証:生活習慣病予防の薬と脂質栄養の有効性、ファルマシア、Vol.37、No.9、(2001)、第790~794頁、公益社団法人日本薬学会 ・甲第29-1号証:ファルマシアのサイトページ、<https://www.jstage.jst.go.jp/browse/faruawpsj/37/9/_contents/-char/ja> なお、甲第17号証~甲第29-1号証は、令和7年3月13日提出の意見書に添付されたものである。 証拠の表記は特許異議申立書、意見書及び証拠説明書の記載におおむね従った。 以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由の概要 令和6年11月25日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 1 取消理由1A及び2A(甲1に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明2、3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、取消理由1A及び2Aは申立理由1A及び2Aと同旨である。 2 取消理由1B及び2B(甲2に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明2、3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、取消理由1B及び2Bは申立理由1B及び2Bと同旨である。 3 取消理由1C及び2C(甲3に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明2、3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、取消理由1C及び2Cは申立理由1C及び2Cと同旨である。 4 取消理由1D及び2D(甲4に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明2、3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲4に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、取消理由1D及び2Dは申立理由1D及び2Dと同旨である。 5 取消理由1F及び2F(甲14に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲14に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲14に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、取消理由1F及び2Fは申立理由1F及び2Fと同旨である。 6 取消理由3B(サポート要件) 本件特許の請求項1~3に係る特許は、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 なお、取消理由3Bは申立理由3Bとおおむね同旨である。 ・本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「本発明の目的は、ナットウキナーゼを含む経口組成物において、経時的なナットウキナーゼの活性低下を抑制し、優れた保存安定性を備えさせる技術を提供すること」(【0007】)である。 ここで、本件特許明細書の実施例の試験例1においては、ナットウキナーゼ活性を評価する際にゼラチン分解能を指標とし、この結果を踏まえて、発明の課題が解決されると記載されている。 しかしながら、ゼラチンとフィブリンとは全く異なる物質であるから、本件特許発明の組成物が、ナットウキナーゼのゼラチン分解能を高めているとしても、ナットウキナーゼのフィブリン分解能を高めているかどうかは不明である。 そうすると、本件特許発明の組成物が発明の課題を解決できるかは不明であるから、本件特許発明1~3は、いずれも発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではなく、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもない。 第6 取消理由についての当審の判断 1 取消理由1A及び2A(甲1に基づく新規性・進歩性) (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、「血液凝固阻害剤」について、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【特許請求の範囲】 ・・・ 【請求項14】 全質量を基準として、大豆油を40~80質量%、グリセリン脂肪酸エステルを1~20質量%、ミツロウを1~20質量%、ナットウキナーゼを1~30質量%、ビタミンK2を含まないかまたは0より多く0.0001質量%以下、レシチンを1~20質量%含有する組成物。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 ナットウキナーゼを含む組成物およびその製造方法、ならびにナットウキナーゼを有効成分とする血液凝固阻害剤、およびそれを含有する組成物を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0009】 発明者らは、鋭意研究した結果、ナットウキナーゼを安定化できる組成物およびそれらの製造方法、ならびに血液凝固を阻害する効果を見出し、本発明を完成させた。」 ・「【0015】 ナットウキナーゼについては、従来から血栓溶解作用は知られていたが、血液凝固を阻害する作用については知られていなかった。従って、本発明はナットウキナーゼの新規な用途を提供するものである。すなわち、本発明は、ナットウキナーゼを有効成分とする、aPTT延長剤、アンチトロンビン活性上昇剤、および/または血液凝固第VIII因子減少剤を提供する。本明細書において、「組成物」には、試薬組成物、医薬組成物、化粧品組成物、および食品用組成物も含む。」 イ 甲1に記載された発明 上記アに記載された内容のうち、特に【請求項14】及び【0015】を中心に整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「全質量を基準として、大豆油を40~80質量%、グリセリン脂肪酸エステルを1~20質量%、ミツロウを1~20質量%、ナットウキナーゼを1~30質量%、ビタミンK2を含まないかまたは0より多く0.0001質量%以下、レシチンを1~20質量%含有する食品用組成物。」 (2)検討 ア 本件特許発明2について 本件特許発明2と甲1発明を対比する。 甲1発明の「食品用組成物」は、本件特許発明2の「経口組成物(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「(A)ナットウキナーゼを含有する、経口組成物(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。」 <相違点1> 本件特許発明2の経口組成物は、「(B)シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有する」ことが特定されているのに対し、甲1発明では、大豆油を含有する点。 以下、相違点1について検討する。 甲1発明は、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有するものではないから、上記相違点1は実質的な相違点である。 また、甲1及び他の証拠をみても、甲1発明の大豆油をシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有するものに変更したり、甲1発明に対して更にシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有させたりする動機付けとなる記載も示唆もない。 さらに、相違点1に係る本件特許発明2の特定事項を満たすことによる本件特許発明2の「経時的なナットウキナーゼの活性低下を抑制し、優れた保存安定性を備えさせる」という効果も予測することはできない。 してみれば、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととは言えない。 なお、特許異議申立人は、意見書において、 ・甲20~24に開示されているとおり、ソフトカプセルの内容液として、シソ油を含有する組成物を用いることは一般的なものであり、特に、甲23には、シソ油とともに納豆菌培養エキスを含有するソフトカプセル内容液が開示されているから、ナットウキナーゼと大豆油などの植物油を含有するソフトカプセル内容液である甲1発明、甲2発明1及び2、甲3発明、甲4発明1及び2において、当該植物油をシソ油とすることに困難性はない(意見書第8~10頁 (2-3))、 ・甲23、25及び26に記載されているとおり、ナットウキナーゼがフィブリン分解作用を有し、血栓を溶解して血流改善作用を有することは知られており、また、甲27~29に記載されているとおり、α-リノレン酸は代謝組成物の制御によって、血流改善作用を有することも知られている。そうすると、ナットウキナーゼとα-リノレン酸を組み合わせることで、異なるメカニズムによって血流改善効果を高めることが期待できるから、大豆油等の植物油に代えて、α-リノレン酸を多く含有するシソ油等を配合する動機付けはある(意見書第10~12頁 (2-4))、 ・訂正後の本件特許発明1の組成物が、「保存によるナットウキナーゼの活性低下を抑制でき、優れた保存安定性を備え」ているかどうかを本件特許明細書は開示していない(意見書第12頁 (2-5))、 と主張している。 特許異議申立人の主張するとおり、本件出願時に、ソフトカプセルの内容液としてシソ油を含有する組成物を用いることが知られたものであったとしても、上記主張はナットウキナーゼとシソ油を組み合わせることで血流改善効果が高まる証拠を示すものではなく、また、そのことが本件出願時における技術常識であるともいえないから、甲1発明における大豆油等の植物油に代えて、あるいは、これらの植物油に加えてシソ油等を配合する動機付けとなる証拠は見出せない。 また、本件特許発明1は、以下の6にも示すとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 甲2発明1及び2、甲3発明、甲4発明1及び2に対する上記主張についても同様である。 以上のとおりであるから、本件特許発明2は甲1発明ではなく、また、本件特許発明2は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 イ 本件特許発明3について 本件特許発明3は、請求項2を引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2と同様に、甲1発明であるとはいえないし、また、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)取消理由1A及び2Aについてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明2、3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。 2 取消理由1B及び2B(甲2に基づく新規性・進歩性) (1)甲2に記載された事項等 ア 甲2に記載された事項 甲2には、「血小板凝集抑制剤及び血小板凝集抑制に有効な保健食品」について、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は血小板凝集抑制剤、特にナットウキナーゼを有効成分とする血小板凝集抑制剤、その保健食品に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来より、ナットウキナーゼは血栓溶解酵素として知られており、ナットウキナーゼの血栓溶解能力は血栓症の予防だけでなく治療においても優れていることが知られている(高岡晋作:ジャパンフードサイエンス、39(9)、55-60、2000)。 【0003】 ナットウキナーゼは大豆には含まれず、納豆菌が大豆に作用し、醗酵する過程でつくられるものであるが、このナットウキナーゼは血液凝固因子のビタミンK2が同時に含まれているので、血栓予防等を目的として、血栓溶解酵素であるナットウキナーゼを含む納豆あるいは納豆菌培養エキスを摂取すると、ビタミンK2も同時に摂取することになり、ビタミンK依存性凝固因子合成抑制剤の効果が打ち消される、という問題があったのでこのビタミンK2の含有量を1μg/g乾燥重量以下にした納豆菌培養エキスを製造する技術が開発されている(特開2001-299277号参照)。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 本発明者等は、ナットウキナーゼは血栓溶解作用の他にも人体に有用な作用があるのではないかと考え、鋭意研究した結果、ナットウキナーゼに血小板凝集抑制作用があることを見出した。血小板凝集抑制剤、即ち、抗血小板剤として臨床的に実用されている例としては、アスピリンやチクロピジンなどが経口に使用されている例があるが、これらの薬剤には副作用が存在する。例えば、アスピリンの場合、胃腸障害やアスピリン喘息などが見られ、チクロピジンの場合には血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、重篤な肝障害などが知られている。 【0005】 そこで、本発明は、副作用のない血小板凝集抑制剤及び血小板凝集抑制に有効な保健食品を提供することを目的とする。」 ・「【実施例】 以下、製造例、加工例、実施例について述べる。 【0012】 ビタミンK2の含有量が1μg/g乾燥重量以下であるナットウキナーゼ高含有納豆菌培養エキスの製造例は以下の通りである。 (製造例) 大豆を主原料とした液体培地に納豆菌を摂取し培養することで、ナットウキナーゼを高含有する培養液を製造する。その後、キトサン溶液を用いた凝集沈澱ろ過により、納豆菌およびK2を取り除く、そして、メンブランフィルターにより無菌ろ過した培養液を、乾燥し、粉末加工する。 【0013】 (加工例) 前記納豆菌培養エキスは、カプセル、錠剤、ドリンク、顆粒、ペーストなどの形態に加工できるものであり、以下加工実施例を示す。 【0014】 ソフトカプセルは、例えば、納豆菌培養エキス粉末(20000FU/g)を36.7mg、大豆レシチンを10mg、大豆油を133.3mg、ミツロウを15mg、グリセリン脂肪酸エステルを15mgの計210mgを混合乳化したものを内容液とし、ゼラチン100mg、グリセリン30mgの計130mgで構成された皮膜に充てんし、総重量340mgのソフトカプセルが出来る。これを1日あたり、3~6粒飲めば、市販納豆1~2パック(50~100g)のナットウキナーゼを摂取したことになる。 【0015】 同様にハードカプセルの場合、納豆菌培養エキス粉末(20000FU/g)を36.7mg、デキストリンを209.8mg、ショ糖脂肪酸エステルを13.5mgの計260mgを混合したものを内容物とし、2号ゼラチンハードカプセル(70mg)に充てんし、総重量330mgのハードカプセルが出来る。これを1日あたり、3~6粒飲めば、市販納豆1~2パック(50~100g)のナットウキナーゼを摂取したことになる。 【0016】 腸溶カプセル(耐酸性コートを含む)は、例えば、納豆菌培養エキス粉末(20000FU/g)を36.7mg、大豆レシチンを10mg、大豆油を133.3mg、ミツロウを15mg、グリセリン脂肪酸エステルを15mgの計210mgを混合乳化したものを内容液とし、ゼラチン100mg、グリセリン30mgの計130mgで構成された皮膜に充てんし、総重量340mgのソフトカプセルを作成する。これに、ゼインを30mgコーティングし、総重量370mgの腸溶カプセルを作成する。これを1日あたり、3~6粒飲めば、市販納豆1~2パック(50~100g)のナットウキナーゼを摂取したことになる。」 イ 甲2に記載された発明 上記アに記載された内容のうち、特に【0014】又は【0016】を中心に整理すると、甲2にはそれぞれ次の発明(以下、「甲2発明1」、「甲2発明2」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明1> 「納豆菌培養エキス粉末(20000FU/g)を36.7mg、大豆レシチンを10mg、大豆油を133.3mg、ミツロウを15mg、グリセリン脂肪酸エステルを15mgの計210mgを混合乳化したものを内容液とし、ゼラチン100mg、グリセリン30mgの計130mgで構成された皮膜に充てんされた、総重量340mgのソフトカプセル。」 <甲2発明2> 「納豆菌培養エキス粉末(20000FU/g)を36.7mg、大豆レシチンを10mg、大豆油を133.3mg、ミツロウを15mg、グリセリン脂肪酸エステルを15mgの計210mgを混合乳化したものを内容液とし、ゼラチン100mg、グリセリン30mgの計130mgで構成された皮膜に充てんし、総重量340mgのソフトカプセルを作成し、これに、ゼインを30mgコーティングされた、総重量370mgの腸溶カプセル。」 (2)検討 ア 本件特許発明2について (ア)本件特許発明2と甲2発明1の対比・判断 本件特許発明2と甲2発明1を対比する。 甲2発明1の「納豆菌培養エキス粉末」は、本件特許発明2の「ナットウキナーゼ」に相当し、また、甲2発明1の「ソフトカプセル。」は、甲2の【0014】にも記載されているとおり飲用するものであるから、本件特許発明2の「経口組成物(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「(A)ナットウキナーゼを含有する、経口組成物(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。」 <相違点2-1> 本件特許発明2の経口組成物は、「(B)シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有する」ことが特定されているのに対し、甲2発明1では、大豆油を含有する点。 以下、相違点2-1について検討する。 甲2発明1は、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有するものではないから、上記相違点2-1は実質的な相違点である。 また、甲2及び他の証拠をみても、甲2発明の大豆油をシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有するものに変更したり、甲2発明1に対して更にシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有させたりする動機付けとなる記載も示唆もない。 さらに、相違点2-1に係る本件特許発明2の特定事項を満たすことによる本件特許発明2の「経時的なナットウキナーゼの活性低下を抑制し、優れた保存安定性を備えさせる」という効果も予測することはできない。 してみれば、甲2発明1において、相違点2-1に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。 (イ)本件特許発明2と甲2発明2の対比・判断 本件特許発明2と甲2発明2を対比すると、両者は、上記(ア)と同様に、以下の一致点及び相違点を有する。 <一致点> 「(A)ナットウキナーゼを含有する、経口組成物(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。」 <相違点2-2> 本件特許発明2の経口組成物は、「(B)シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有する」ことが特定されているのに対し、甲2発明2では、大豆油を含有する点。 相違点2-2は、相違点2-1と同旨であるから、上記(ア)と同様に判断される。 したがって、甲2発明2において、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を満たすようにすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 よって、本件特許発明2は甲2発明2であるとはいえないし、甲2発明2並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)本件特許発明2についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明2は甲2発明1又は甲2発明2ではなく、また、本件特許発明2は甲2発明1、2並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 イ 本件特許発明3について 本件特許発明3は、請求項2を引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2と同様に、甲2発明1又は甲2発明2であるとはいえないし、また、甲2発明1、2並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)取消理由1B及び2Bについてのまとめ 本件特許発明2、3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。 3 取消理由1C及び2C(甲3に基づく新規性・進歩性) (1)甲3に記載された事項等 ア 甲3に記載された事項 甲3には、「経口組成物」について、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明者は、ナットウキナーゼを経口組成物に製剤化すると、活性の低下が不可避的に生じるという欠点があることを見出した。このような製剤化に伴うナットウキナーゼの活性低下は、フィブリン分解作用の低減をきたすため、ナットウキナーゼの製剤化において活性低下を見越したナットウキナーゼの配合量の増大が必要になり、ひいては服用量やコストの増加によって摂取者に負担を強いることになる。 【0008】 そこで、本発明は、ナットウキナーゼの活性低下を抑制でき、優れたフィブリン分解作用を発揮できる経口組成物を提供することを目的とする。」 ・「【実施例】 【0045】 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0046】 なお、以下に示す実施例、比較例及び製剤例において、使用した成分の入手元、組成等については、以下の通りである。 ナットウキナーゼ粉末:「納豆菌培養エキス末BNK4000」(株式会社日本生物化学研究所製);1g当たりのナットウキナーゼの活性は43300FU 玉葱乾燥粉末1:「さらさらレッドパウダー(タマネギ乾燥粉末)」(こだま食品株式会社製);玉葱の乾燥粉末 玉葱乾燥粉末2:「玉葱パウダーS」(こだま食品株式会社製);玉葱の乾燥粉末 野菜ミックス乾燥粉末:「野菜ミックスパウダー」(こだま食品株式会社製);人参、キャベツ、ニンニク、大麦若葉、ブロッコリー、生姜、玉葱、ウコン、ムラサキイモ、ケール、赤キャベツ、セロリ、南瓜、トマト、モロヘイヤ、ほうれん草、及びパセリの乾燥粉末の混合物 サツマイモ乾燥粉末:「アヤムラサキパウダー」(こだま食品株式会社製);アヤムラサキの乾燥粉末 魚油1:「精製魚油 EPA-28」(日本水産株式会社製);イワシから得られた魚油、エイコサペンタエン酸26.74重量%及びドコサヘキサエン酸11.8重量%含有 ・・・ 【0047】 試験例1 表1及び2に示す組成の経口組成物を調製し、各経口組成物1g当たりのナットウキナーゼの活性値(FU/g)を以下の方法で測定した。測定したナットウキナーゼの活性値から、以下の算出式に従って、ナットウキナーゼの活性維持率(%)、及びナットウキナーゼの活性向上率(%)を算出した。 【0048】 【数1】 [図:0001426823000001.jpg] 【数2】 [図:0001426823000002.jpg] 【0049】 <ナットウキナーゼの活性値の測定方法> 1.試薬 (1)ホウ砂緩衝液 0.05モル/Lのホウ砂及び0.15モル/Lの塩化ナトリウムを含有する緩衝液(pH8.5) (2)トリクロロ酢酸溶液 0.2モル/Lのトリクロロ酢酸を含有する水溶液 (3)フィブリノーゲン溶液 前記ホウ砂緩衝液に、牛血漿由来フィブリノーゲン(シグマ社製)を0.7重量%となるように溶解した溶液 (4)トロンビン溶液 前記ホウ砂緩衝液に、牛血漿由来トロンビン(シグマ社製)を20U/mlとなるように溶解した溶液 (5)希釈緩衝液 2ミリモル/Lの硫酸カルシウム、10モル/Lの塩化ナトリウム、2ミリモル/Lの酢酸ナトリウム、0.005重量%のTriton X-100を含む水溶液(pH6.0) 【0050】 2.試料溶液の調製 希釈緩衝液約8mLに各経口組成物1g添加してスパテールでよく撹拌した後に、4000×g、20分間遠心分離して上清を回収し、希釈緩衝液で10mLに調整して試料溶液とした。なお、各試料溶液は測定時の吸光度差が0.04~0.08(活性値が活性値は0.67~1.33FU/mL)の範囲内となるように調整した。 【0051】 3.ナットウキナーゼの活性値の測定操作 試験管にホウ砂緩衝液1.4mL及びフィブリノーゲン溶液0.4mLを量り取り、37℃の恒温水槽で5分間加温した後、トロンビン溶液0.1mLを加えて撹拌した。この液を37℃で10分間静置した後、試料溶液0.1mLを加え撹拌し、37℃で静置した。試料溶液を添加してから一定時間毎に撹拌し、60分後にトリクロロ酢酸溶液2mLを加えて撹拌し、更に20分間37℃で加温しながら静置した。この液(反応液)をマイクロテストチューブに入れ、15000×g、5分間遠心した。次いで、パスツールピペットを用いて慎重に遠心上清1mLを回収し、275nmにおける吸光度(Aγ)を測定した。 【0052】 別の試験管にホウ酸緩衝液1.4mL及びフィブリノーゲン溶液0.4mLを量り取り、37℃の恒温水槽で5分間静置した後、トロンビン溶液0.1mLを加え撹拌した。この液を37℃で10分静置した後、トリクロロ酢酸溶液2mLを加えて撹拌し、更に試料溶液0.1mLを加え撹拌した。この液を37℃で20分間静置した。この液(反応液)をマイクロテストチューブに入れ、15000×g、5分間遠心した。パスツールピペットを用いて遠心上清1mLを回収し、275nmにおける吸光度(Aβ)を測定した。 【0053】 測定した吸光度Aγ及びAβを用いて、以下の算出式に従って、各経口組成物のナットウキナーゼの活性値を算出した。 【0054】 【数3】 [図:0001426823000003.jpg] 」 ・「【0057】 【表1】 [図:0001426823000004.jpg] 」 イ 甲3に記載された発明 上記アに記載された内容のうち、特に表1の比較例1~5を中心に整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。 <甲3発明> 「表1の比較例1~5に記載された経口組成物。」(当審注:表1については、上記アを参照。) (2)検討 ア 本件特許発明2について 本件特許発明2と甲3発明を対比する。 甲3発明の「経口組成物。」は「ナットウキナーゼ粉末」を含有するから、本件特許発明1の「(A)ナットウキナーゼ」「を含有する、経口組成物(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「(A)ナットウキナーゼを含有する、経口組成物(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。」 <相違点3> 本件特許発明2の経口組成物は、「(B)シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有する」ことが特定されているのに対し、甲3発明では、サフラワー油を含有する点。 以下、相違点3について検討する。 甲3発明は、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有するものではないから、上記相違点3は実質的な相違点である。 また、甲3及び他の証拠をみても、甲3発明のサフラワー油をシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有するものに変更したり、甲3発明に対して更にシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有させたりする動機付けとなる記載も示唆もない。 さらに、相違点3に係る本件特許発明2の特定事項を満たすことによる本件特許発明2の効果も予測することはできない。 してみれば、甲3発明において、相違点3に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。 よって、本件特許発明2は甲3発明ではなく、また、本件特許発明2は甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 イ 本件特許発明3について 本件特許発明3は、請求項2を引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2と同様に、甲3発明であるとはいえないし、また、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)取消理由1C及び2Cについてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明2、3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。 4 取消理由1D及び2D(甲4に基づく新規性・進歩性) (1)甲4に記載された事項等 ア 甲4に記載された事項 甲4には、「経口摂取組成物」について、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0027】 以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の組成物は、健康食品として、健康補助食品として、あるいは直接に食品として、あるいは食品添加材を含む食品材料として、食べたり、あるいは飲んだりして、直接口から摂取することで、特定の疾患の悪化防止(予防をも含む)効果が獲得できる組成物である。 医薬品の如く、医師の管理下で厳格な投与管理を行う必要がなく、食品としての安全性を有し、摂取時の使用方法を守る範囲で安全に日常的に摂取し得ることを目指した組成物である。」 ・「【実施例1】 【0048】 本実施例では、ナットーキナーゼとCoQ-10とを必須成分として含む経口摂取組成物をソフトカプセル化して製品とする場合について説明する。尚、本実施例では、ナットーキナーゼには、胃酸に対しての失活防止処理が施されていない場合を示す。さらに、以下の量は、1カプセル当たりの量を示している。 【0049】 鐘淵化学工業(株)製のCoQ-10を30mgと、合同酒精(株)製の12000FU/gのナットーキナーゼ100mgを大豆油200mgに懸濁する。さらに、ステアリン酸グリセリンエステル5mg、ビーズワックス10mgを加えて乳化する。乳化後、ゼラチン116mg、水60mg、グリセリン54mgにより、ソフトカプセル化した。 【0050】 カプセルサイズは、6オーバル(oval)とした。その後乾燥させて製品とした。乾燥後のソフトカプセル化した製品の水分は、17mgであった。総重量は、約535mgであった。この内、平均内容重量は345mg、平均外装カプセル重量は190mgであった。」 ・「【実施例2】 【0051】 本実施例でも、ナットーキナーゼとCoQ-10とを必須成分として含む経口摂取組成物をソフトカプセル化して製品とする場合について説明する。尚、本実施例でも、ナットーキナーゼには、胃酸に対しての失活防止処理が施されていない。また、以下の量は、1カプセル当たりの量を示している。 【0052】 日清ファルマ(株)製のCoQ-10を60mgと、日本生物科学(株)製の12000FU/gのナットーキナーゼ100mgとを米ぬか油180mgに懸濁する。さらに、グリセリン脂肪酸エステル10mg、ビーズワックス10mgを加えて乳化する。乳化後、ゼラチン116mg、水60mg、グリセリン54mg、キャラメル色素1.5mg、チタンオキサイド1mgとを用いてソフトカプセル化した。カプセルサイズは、6オーバルとした。その後乾燥させて製品とした。乾燥後のソフトカプセル化した製品の水分は、17mgであった。総重量は、約550mgであった。この内、平均内容重量は360mg、平均外装カプセル重量は190mgであった。」 イ 甲4に記載された発明 上記アに記載された内容のうち、特に実施例1又は実施例2を中心に整理すると、甲4にはそれぞれ次の発明(以下、「甲4発明1」、「甲4発明2」という。)が記載されていると認める。 <甲4発明1> 「鐘淵化学工業(株)製のCoQ-10を30mgと、合同酒精(株)製の12000FU/gのナットーキナーゼ100mgを大豆油200mgに懸濁し、さらに、ステアリン酸グリセリンエステル5mg、ビーズワックス10mgを加えて乳化し、乳化後、ゼラチン116mg、水60mg、グリセリン54mgにより、ソフトカプセル化された経口摂取組成物。」 <甲4発明2> 「日清ファルマ(株)製のCoQ-10を60mgと、日本生物科学(株)製の12000FU/gのナットーキナーゼ100mgとを米ぬか油180mgに懸濁し、さらに、グリセリン脂肪酸エステル10mg、ビーズワックス10mgを加えて乳化し、乳化後、ゼラチン116mg、水60mg、グリセリン54mg、キャラメル色素1.5mg、チタンオキサイド1mgとを用いてソフトカプセル化した経口摂取組成物。」 (2)検討 ア 本件特許発明2について (ア)本件特許発明2と甲4発明1の対比・判断 本件特許発明2と甲4発明1を対比する。 甲4発明1の「経口摂取組成物。」は「ナットーキナーゼ」を含むから、本件特許発明2の「(A)ナットウキナーゼ」「を含有する、経口組成物(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び一応の相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「(A)ナットウキナーゼを含有する、経口組成物(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。」 <相違点4-1> 本件特許発明2の経口組成物は、「(B)シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有する」ことが特定されているのに対し、甲4発明1では、大豆油を含有する点。 以下、相違点4-1について検討する。 甲4発明1は、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有するものではないから、上記相違点4-1は実質的な相違点である。 また、甲4及び他の証拠をみても、甲4発明1の大豆油をシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有するものに変更したり、甲4発明1に対して更にシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有させたりする動機付けとなる記載も示唆もない。 さらに、相違点4-1に係る本件特許発明2の特定事項を満たすことによる本件特許発明2の効果も予測することはできない。 してみれば、甲4発明1において、相違点4-1に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。 (イ)本件特許発明2と甲4発明2の対比・判断 本件特許発明2と甲4発明2を対比すると、両者は、上記(ア)と同様に、以下のとおりの一致点及び一応の相違点を有する。 <一致点> 「(A)ナットウキナーゼを含有する、経口組成物(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。」 <相違点4-2> 本件特許発明2の経口組成物は、「(B)シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有する」ことが特定されているのに対し、甲4発明2では、米ぬか油を含有する点。 以下、相違点4-2について検討する。 甲4発明2は、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有するものではないから、上記相違点4-2は実質的な相違点である。 また、甲4及び他の証拠をみても、甲4発明2の米ぬか油をシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有するものに変更したり、甲4発明2に対して更にシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有させたりする動機付けとなる記載も示唆もない。 さらに、相違点4-2に係る本件特許発明2の特定事項を満たすことによる本件特許発明2の効果も予測することはできない。 してみれば、甲4発明2において、相違点4-2に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。 (ウ)本件特許発明2についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明2は甲4発明1又は甲4発明2ではなく、また、本件特許発明2は甲4発明1、2並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 イ 本件特許発明3について 本件特許発明3は、請求項2を引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2と同様に、甲4発明1又は2であるとはいえないし、また、甲4発明1又は2並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)取消理由1D及び2Dについてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明2、3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。 5 取消理由1F及び2F(甲14に基づく新規性・進歩性) (1)甲14に記載された事項等 ア 甲14に記載された事項 甲14には、「薬王製薬 納豆製(ナットウセイ) 270粒」について、おおむね次の事項が記載されている。 ・「 [図:0001426823000005.jpg] 」 イ 甲14に記載された発明 上記アに記載された内容を整理すると、甲14には次の発明(以下、「甲14発明」という。)が記載されていると認める。 <甲14発明> 「ナットウキナーゼを豊富に含む納豆菌の培養エキス、さらに鹿児島県福山町産天然壺作り黒酢もろみ、キトサン、ヘスペリジン、ビタミンEを配合した栄養補助食品。」 (2)検討 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲14発明を対比すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「(A)ナットウキナーゼ、並びに(B)ヘスペリジン及び糖転移ヘスペリジンよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、経口組成物(但し、[I]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの、並びに[II]温州みかんの果実、果皮、じょうのう膜、及び種子よりなる群から選択される少なくとも1種の溶媒抽出物を含むものを除く)。」 <相違点14> 本件特許発明1は「[III]黒酢もろみ、キトサン、及びビタミンEを含むもの」を除いたものが特定されているのに対し、甲14発明は、鹿児島県福山町産天然壺作り黒酢もろみ、キトサン、ヘスペリジン及びビタミンEを含む点。 以下、相違点14について検討する。 甲14発明は、「鹿児島県福山町産天然壺作り黒酢もろみ、キトサン」及び「ビタミンE」を含むものであるから、相違点14は実質的な相違点である。 また、甲14発明は上市された商品であるし、他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲14発明において、成分を調整して「鹿児島県福山町産天然壺作り黒酢もろみ、キトサン」及び「ビタミンE」のいずれかの成分を配合しないように変更する動機付けはない。 したがって、甲14発明において、甲14及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点14に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすようにすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 よって、本件特許発明1は甲14発明であるとはいえないし、甲14発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 なお、特許異議申立人は、意見書において、 ・市販品の設計変更は常に行われていることであり、例えば、甲14発明のキトサンをグルコサミンに変更することに全く困難性はなく、通常の創作であること(意見書第13頁 (3-3))、 ・本件特許明細書には、「保存によるナットウキナーゼのフィブリン分解活性低下を抑制でき、優れた保存安定性を備え」ているかどうかは、開示されていないから、本件特許発明1及び3に「保存によるナットウキナーゼの活性低下を抑制でき、優れた保存安定性を備えさせる」効果があるとはいえないこと(意見書第13頁 (3-4))、 を主張している。 しかしながら、市販品の設計変更が常に行われるものであったとしても、上記主張は、甲14発明である「薬王製薬 納豆製(ナットウセイ) 270粒」の成分を変更する動機付けとなる記載または示唆を示すものではなく、ましてや、甲14発明のキトサンをグルコサミンに変更することを動機付ける証拠をあげるものでもない。 また、本件特許発明1は、以下の6のとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できるものといえる。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 以上のとおりであるから、本件特許発明1は甲14発明ではなく、また、本件特許発明1は甲14発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 イ 本件特許発明3について 本件特許発明3は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲14発明であるとはいえないし、また、甲14発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)取消理由1F及び2Fについてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明1、3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。 6 取消理由3B(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)サポート要件の判断 本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「本発明の目的は、ナットウキナーゼを含む経口組成物において、経時的なナットウキナーゼの活性低下を抑制し、優れた保存安定性を備えさせる技術を提供すること」(【0007】)である。 また、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】には、「本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ナットウキナーゼと共に、ブラックジンジャーの抽出物、ヘスペリジン、糖転移ヘスペリジン、α-リノレン酸、及び/又はルチンを含有させた経口組成物では、保存によるナットウキナーゼの活性低下を抑制でき、優れた保存安定性を備え得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。」ことが記載されている。 さらに、同【0011】には、「本発明の経口組成物は、ナットウキナーゼ((A)成分と表記することもある)、並びにブラックジンジャーの抽出物、ヘスペリジン、糖転移ヘスペリジン、α-リノレン酸、及びルチンよりなる群から選択される少なくとも1種((B)成分と表記することもある)を含有することを特徴とする」ことが記載されており、同【0012】~【0016】には本件特許発明の経口組成物に使用されるナットウキナーゼについて記載されており、【0017】~【0020】及び【0029】~【0037】には、本件特許発明の経口組成物に使用されるヘスペリジン、糖転移ヘスペリジン及びα-リノレン酸について記載されており、同【0043】~【0044】には本件特許発明の経口組成物を食品とすることが記載されている。 そして、同【0050】~【0054】には、ゼラチン分解能を指標としてナットウキナーゼ活性を測定した実施例1~7及び比較例1が記載されており、「ナットウキナーゼ単独の場合には、保存後に活性が著しく低下していた(比較例1)。これに対して、ナットウキナーゼと共に、ブラックジンジャーの抽出物、糖転移ヘスペリジン、α-リノレン酸含有植物油、又はルチンを含む場合には、保存によるナットウキナーゼの活性低下を効果的に抑制でき、高い保存安定性が認められた(実施例1~7)。」ことが記載され、同【0056】~【0061】には「表2~5に示す組成の内容液、及び表6に示す組成の剤皮(カプセル皮膜)を用いて、ソフトカプセル剤(1剤当り、内容液300mg又は400mg、剤皮150mg含有)を製造した。得られたソフトカプセル剤は、保存によるナットウキナーゼの活性低下を効果的に抑制できていた。」ことが記載されている。 ここで、本件特許の発明の詳細な説明の記載並びにその記載を裏付ける実施例の記載に基づいて、当業者は本件特許の明細書に記載された、ナットウキナーゼと共に糖転移ヘスペリジン又はα-リノレン酸を含有する植物油を含む経口組成物によって、経時的なナットウキナーゼの活性低下を抑制し、優れた保存安定性を備えさせ、発明の課題を解決し得ると認識することができる。 そうすると、当業者は、「(A)ナットウキナーゼ、並びに(B)ヘスペリジン及び糖転移ヘスペリジンよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、経口組成物。」又は「(A)ナットウキナーゼ、及び(B)シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有する、経口組成物。」であれば、発明の課題が解決されるものと理解することができる。そして、本件特許発明1又は2は、上記課題を解決し得る発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、又は出願時の技術常識に照らして、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 請求項1又2を引用する本件特許発明3も、本件特許発明1又は2と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、又は出願時の技術常識に照らして、当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 なお、特許異議申立人は、意見書において、発明の課題は「経時的なナットウキナーゼのフィブリン分解活性低下を抑制」することであり、ナットウキナーゼのゼラチン分解能が高まったとしてもフィブリン分解活性が高まるとはいえないことを主張している(意見書第1~6頁 (1)取消理由2Bについて)。 しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明の実施例においては、ナットウキナーゼ活性を評価する際にゼラチン分解能を指標とすることが明記されており、その指標に基づいた結果を踏まえて本件特許発明の課題が解決されると記載されており、実際に、ナットウキナーゼと糖転移ヘスペリジン又はα-リノレン酸含有植物油とを含む経口組成物によって、経時的なナットウキナーゼのゼラチン分解能低下を抑制できるという効果が示されている。 そうすると、これらの記載に接した当業者は、ナットウキナーゼと共に、糖転移ヘスペリジン又はα-リノレン酸含有植物油を含む経口組成物によって、経時的なナットウキナーゼのゼラチン分解能低下を抑制できるという効果が期待でき、糖転移ヘスペリジン又はα-リノレン酸含有植物油を含まない比較例1よりもナットウキナーゼのゼラチン分解能低下が向上し、優れた保存安定性を備えさせることが認識でき、「ナットウキナーゼを含む経口組成物において、経時的なナットウキナーゼの活性低下を抑制し、優れた保存安定性を備えさせる技術を提供すること」という発明の課題を解決し得ると認識することができる。なお、本件特許の発明の詳細な説明には、発明の課題が経時的なナットウキナーゼのフィブリン分解活性低下を抑制することとは明記されておらず、また、上記主張は、発明の課題を解決できないとする証拠を示すものではない。 よって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。 (4)取消理由3Bについてのまとめ したがって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しない。 第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立理由について 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立理由は次のとおりである。 ・申立理由1E及び2E(甲5に基づく新規性・進歩性) ・申立理由3A(サポート要件) 以下、順に検討する。 1 申立理由1E及び2E(甲5に基づく新規性・進歩性)について (1)甲5に記載された事項等 ア 甲5に記載された事項 甲5には、「血行障害の改善作用を有する健康補助食品」について、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。 ・「【0005】 【発明が解決しようとする問題点】血栓症や梗塞症は、症状が出る前の予防が極めて大切であるが、一般には予防のために病院を利用することは簡単ではない。このため、いつでも手軽に摂取出来る予防効果の高い健康補助食品、特に、拡張作用によって血管の梗塞を防止するだけでなく、血栓が形成されそうであっても、或は既に多少は形成されたとしてもその溶解の可能性を高める積極的な予防のための健康補助食品が要望されている。 本発明は、このような血行障害の改善作用を有する健康補助食品を得ようとするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明の健康補助食品は、古来の食品由来の天然物を主成分とする組成物であり、血管の拡張作用を有する成分と、血栓抑制作用を有する成分とを配合し、その相乗効果を高めたことを特徴とする。上記血管の拡張作用を有する成分としては、上記のキャッツクローを、これに配合する血栓抑制作用を有する成分としては、上記のナットーキナーゼを用いる。本発明においては、単なるナットウエキスではなく、大豆レシチン中に溶解しているナットーキナーゼを単離し、ビタミンKを含まないものとした。これにより、「ワーファリン」との副作用の発生を避けることが出来る。勿論、このような副作用の恐れのない利用者が対象の場合には、単離前のナットーキナーゼを用いてもよい。 【0007】 【発明の実施の態様】実施に当たっては、上記のキャッツクロー、ナットーキナーゼに、補助成分として、血流改善促進作用を持つ不飽和脂肪酸EPA、DHAを含有する魚油、オレイン酸含有率の高いオリーブオイル、油成分への抗酸化作用を持つα-トコフェノールを含有する小麦胚芽油を配合する。抗酸化作用を持つものとしては、ビタミンC、βカロチンなどのカロチノイドでもよいが、ビタミン作用と抗酸化作用とを共に持つ点でα-トコフェノールが望ましい。これらは従来、単独で健康志向食品として賞用されてきたものではあり、カプセル化して販売されてもいる。しかし、複合化してバランスよく摂取することにより、その相互作用を利用し、一層の効果が期待できる。」 ・「【0009】 【実施例】以下、ソフトカプセルに封入した形態の本発明の健康補助食品の配合の1例を示す。 キャッツクロー 30 mg ナットーキナーゼ 93 mg 魚油 90 mg オリーブオイル 50 mg 小麦胚芽油 63 mg 計 326 mg 上記の含有量は、米国において1日の所要量とされる量の摂取を目標とし、安全性を考慮して一粒の含有量を高めず、5粒/日で適正な摂取量となるように考慮したものである。」 イ 甲5に記載された発明 上記アに記載された内容のうち、特に実施例を中心に整理すると、甲5には次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。 <甲5発明> 「キャッツクロー30mg、ナットーキナーゼ93mg、魚油90mg、オリーブオイル50mg、小麦胚芽油63mgを封入したソフトカプセルの形態である健康補助食品。」 (2)検討 ア 本件特許発明2について 本件特許発明2と甲5発明を対比する。 甲5発明は、「ナットーキナーゼ」を含む「ソフトカプセルの形態である健康補助食品」であるから、本件特許発明2の「(A)ナットウキナーゼ」「を含有する、経口組成物」に相当する。また、甲5発明は、紅麹、脱脂粉乳及び全脂粉乳並びにキトサンを含むものではないから、本件特許発明2の「(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。」を満たす。 そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「(A)ナットウキナーゼを含有する、経口組成物(但し、[I]紅麹100~200重量部、納豆50~100重量部、及びシソ油250~350重量部を含むもの、[III]脱脂粉乳及び全脂粉乳を含むもの、並びに[IV]キトサンを含むものを除く)。」 <相違点5-1> 本件特許発明2の経口組成物は、「[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの」を除いたものが特定されているのに対し、甲5発明は、「魚油」を含む点。 <相違点5-2> 本件特許発明2の経口組成物は、「(B)シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、又はサチャインチ油を含有する」ことが特定されているのに対し、甲5発明1では、魚油、オリーブオイル及び小麦胚芽油を含有する点。 以下、相違点5-1について検討する。 甲5発明の魚油には、甲5の【0007】にも記載されているとおり、不飽和脂肪酸EPA、DHAが含有されているから、相違点5-1は実質的な相違点である。 また、甲5及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲5発明に魚油を含ませないようにする動機付けとなる記載又は示唆はない。 したがって、相違点5-1に係る本件特許発明5の発明特定事項を満たすようにすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明2は甲5発明であるとはいえないし、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 なお、相違点5-1について、特許異議申立人は特許異議申立書において、 「甲第5号証には、補助成分として「魚油」を含んでいてもよいことが示唆されており、魚油に「不飽和脂肪酸EPA、DHAを含有する」場合があることを示しているから(摘示5-2):甲5発明は「[II]ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含むもの」である可能性もある。しかしながら、甲第5号証には、補助成分として「魚油」を含有させることが示されているのであるから、「魚油」を配合せずに、あるいは「魚油」に代えて他の油脂を配合することは容易である。」(特許異議申立書第43頁 (ウ-3)) と主張している。 しかしながら、上述したとおり、甲5発明において、魚油を除く動機付けがあるとはいえないし、仮に、甲5発明において、魚油を除くか、あるいは魚油に代えて他の油脂を配合する構成を採用できたとしても、本件特許発明2の「ナットウキナーゼを含む経口組成物において、経時的なナットウキナーゼの活性低下を抑制し、優れた保存安定性を備えさせる」という効果については、甲5及び他の証拠に記載も示唆もされたものではなく、当業者が予測し得ないものであるから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 以上のとおりであるから、本件特許発明2は甲5発明ではなく、また、本件特許発明2は甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 イ 本件特許発明3について 本件特許発明3は、請求項2を引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2と同様に、甲5発明であるとはいえないし、また、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)申立理由1E及び2Eについてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明2、3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項2、3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。 2 申立理由3A(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 サポート要件の判断基準は上記第6 6(1)のとおりである。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)本件特許発明の課題及び本件特許の発明の詳細な説明の記載は、上記第6 6(3)のとおりであり、また、本件特許の発明の詳細な説明の【0035】には、「本発明では、精製されたα-リノレン酸を使用してもよいが、α-リノレン酸を含む油脂を使用してもよい。例えば、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、サチャインチ油等の植物油は、α-リノレン酸を豊富に含んでいることが知られており、α-リノレン酸として、これらの植物油を使用してもよい。」と記載されている。 ここで、特許異議申立人の上記第4 7(1)における主張について検討する。 本件特許の発明の詳細な説明の実施例には、α-リノレン酸含有植物油としてシソ油を用いた実施例が記載されており、【0037】にはシソ油と同様にα-リノレン酸を豊富に含んでいる他の植物油が例示されている。そして、シソ油以外の植物油もα-リノレン酸を含むことは技術常識であるから、程度の差こそあれども、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、サチャインチ油等の植物油であれば、発明の課題を解決できると当業者は理解できる。また、特許異議申立人の上記主張は、具体的に発明の課題を解決し得ないことを示す証拠を提示するものでもない。 したがって、特許異議申立人の上記第4 7(1)における主張は採用できない。 (5)申立理由3Aについてのむすび したがって、本件特許の請求項2、3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しない。 第8 結語 上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1~3に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700749

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