特許異議申立
2025-700056
皮膚外用組成物
- 審判番号
- 2025-700056
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-238234
- 登録番号
- 7514598
- 請求日
- 2025年01月09日
- 審決日
- 2025年12月04日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】小林製薬株式会社
- 【権利者代理人】田中 順也
- 【権利者代理人】水谷 馨也
- 【権利者代理人】迫田 恭子
- 【異議申立人】吉田 浩子
- 審判長/審判官
- 審判長 前田 佳与子
- 審判官 井上 千弥子
- 審判官 春日 淳一
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.14 -YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7514598号発明「皮膚外用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7514598号の特許請求の範囲を、令和7年11月11日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
特許第7514598号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許7514598号(以下「本件特許」という。)に係る特願2018-238234号は、平成30年12月20日を出願日とするものであり、令和6年7月3日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、令和6年7月11日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和7年1月9日に異議申立人 吉田 浩子(以下「申立人」という。)により請求項1~3に係る本件特許に対する特許異議の申立てがされた。
以後の主な経緯は以下のとおりである。
令和7年 1月 9日 :特許異議申立書の提出
同年 3月 5日付け:取消理由通知書
同年 5月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 6月17日 :申立人による意見書の提出
同年 9月10日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年10月 1日 :申立人による上申書の提出
同年11月11日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和7年5月8日提出の訂正請求書による訂正の請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、すでに申立人には意見書の提出の機会が与えられており、そして、下記第2で説示するとおり、令和7年11月11日提出の訂正請求書による訂正の請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、これまで提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となることから、特許法第120条の5第5項ただし書の規定により、申立人には更なる意見書を提出する機会を与える必要がないと判断した。
第2 訂正について
1.訂正の内容
令和7年11月11日提出の訂正請求書により、特許権者は、特許請求の範囲の請求項1~3について、次の訂正事項1及び2のとおりに訂正すること(以下「本件訂正」という。)を請求している。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「皮膚外用組成物」から除かれている「カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むもの」と「グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むもの」とに、それぞれ、「[i]」及び「[ii]」の符号を付すとともに、さらに、「皮膚外用組成物」から、「[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏」と、「[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのもの」と、「[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏」と、「[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏」とを「除く」旨を規定するよう訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3において、「皮膚外用組成物」から除かれている「カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むもの」と「グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むもの」とに、それぞれ、「[i]」及び「[ii]」の符号を付すとともに、さらに、「皮膚外用組成物」から、「[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏」と、「[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのもの」と、「[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏」と、「[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏」とを「除く」旨を規定するよう訂正する。
2.一群の請求項について
本件訂正前の請求項1、2は、請求項2が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正事項1は、一群の請求項〔1、2〕に対して請求されたものである。
また、訂正事項2は、請求項3に対して請求されたものである。
したがって、本件訂正は、一群の請求項について請求するものである。
3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1に係る特許発明の「皮膚外用組成物(但し、カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むもの、並びに、グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものを除く)」において、さらに除外される皮膚外用組成物として、「[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏」を追加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2に係る請求項3についての訂正は、訂正前の請求項3に係る特許発明における、鎮痒効果を向上させる方法の対象となる「皮膚外用組成物(但し、カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むもの、並びに、グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものを除く)」において、さらに除外される皮膚外用組成物として、「[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏」を追加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)上記訂正事項1及び2は、皮膚外用組成物から特定の態様を除く訂正(当審注:いわゆる「除くクレーム」とする訂正)を含むものである。
そして、同様に「除くクレーム」とする訂正を含む、令和7年5月8日提出の訂正請求書による訂正の請求(当審注:上記第1のなお書で説示したとおり、当該訂正の請求は取り下げられたものとみなす。)に対して、申立人は、令和7年6月17日提出の意見書において、審査基準「第IV部第2章新規事項を追加する補正」における「(4)除くクレームとする補正の場合」の記載を参照して以下のとおり主張している。
「上記審査基準において、除くクレームとする補正の場合は、「第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条に係る引用発明」に対してのみ認められる規定である。そして、本件特許権者は、甲第2発明に対し除くクレームの訂正にて対応しているが、取消理由における甲第2発明は、進歩性違反(特許法第29条第2項)の主引例の発明であって、新規性違反(特許法第29条第1項第3号)の発明ではない。よって、本件訂正は、「(4)除くクレームとする補正の場合」には該当しないので、このような訂正は、審査基準を超えた訂正となり、除くクレーム部分は新規事項追加に該当する。」
上記主張について検討する。
申立人は、上記主張において、「進歩性違反(特許法第29条第2項)の主引例の発明」である「甲第2発明に対し除くクレームとする訂正」によって、いかなる新たな技術的事項が導入されたのかについて、何ら具体的に説明していない。
そして、上記訂正事項1、2は、訂正前の請求項1及び請求項3における「皮膚外用組成物(但し、・・・を除く)」において、さらに除外される皮膚外用組成物として、「[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏」と、「[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのもの」と、「[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏」と、「[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏」を追加したものであるから、新たな技術的事項を導入するものとはいえず、新規事項の追加に該当するものではない。
4.独立特許要件
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項1~3について特許異議申立てがされているので、訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
5.小括
上記のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
第3 訂正発明
本件訂正は、上記第2のとおり認められるので、請求項1~3に係る発明(以下、請求項の番号に従い、「訂正発明1」などといい、まとめて「訂正発明」という。)は、令和7年11月11日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル、並びに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を含有し、皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物(但し、[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く)。
【請求項2】
前記(A)成分1重量部当たり、前記(B)成分が0.1~10重量部含まれる、請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステルを含む皮膚外用組成物(但し、[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く)において、皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)の鎮痒効果を向上させる方法であって、
皮膚外用組成物に、前記(A)成分及び前記(B)成分とともに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を配合する、鎮痒効果向上方法。」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由、及び令和7年3月5日付け取消理由通知書に記載した取消理由の概要
1.特許異議の申立ての理由の概要
本件特許の設定登録時の請求項1~3に係る特許について、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由の概要は以下のとおりである。
〔申立理由1:産業上の利用可能性〕
請求項3に係る発明は、産業上利用することができる発明ではなく、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
〔申立理由2:新規性〕
請求項1~2に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証(以下、各甲号証の番号に従い「甲1」などという。)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
〔申立理由3:進歩性〕
請求項1~3に係る発明は、甲1~13に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
〔証拠方法〕
特許異議申立書により、以下の甲1~甲13号、及び参考資料1が添付して提出された。
・甲1:特開2006-28124号公報
・甲2:特開2003-321353号公報
・甲3:医薬品インタビューフォーム アレルギー性疾患外用治療剤 ジフェンヒドラミンクリーム1%「タイヨー」,2016年改訂
・甲4:ダイアフラジンA軟膏 添付文書,2013年
・甲5:エンクロンクリームEX 添付文書,2013年
・甲6:特開2009-149692号公報
・甲7:特開2006-219482号公報
・甲8:特開2004-131448号公報
・甲9:European Journal of Pharmacology,1989,160,PP.43-51
・甲10:田上八朗 他,皮膚科診療プラクティス 5.スキンケアの実際,株式会社文光堂,1999年,PP.66~71
・甲11:BIOSCIENCE薬効薬理試験 アレルギー関連試験のWEBSITE、株式会社ケー・エー・シー(https://www.kacnet.co.jp/bioscience/animal-experimentation/aIlergy-related-test.html)
・甲12:特開2013-35830号公報
・甲13:コーナ軟膏 添付文書,2010年
・参考資料1:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 医療用医薬品情報検索(情報検索機能の使い方)のWEBSITE(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)及び「情報検索機能の使い方」(https://www.pmda.go.jp/searchhelp_009.pdf)、印刷日 2025年1月6日
令和7年6月17日提出の申立人による意見書に添付して、以下の甲14~甲16が提出された。
・甲14:一般薬 日本医薬品集 第1版,1978年,p505,p529,p546
・甲15:一般薬 日本医薬品集 第2版,1979年,p436
・甲16:特開平5-4918号公報
令和7年10月2日提出の申立人による上申書に添付して、以下の甲17が提出された。
・甲17:第17改正 日本薬局方解説書,2016年,「ビタミンA油」の項、「レチノール酢酸エステル」の項、「レチノールパルミチン酸エステル」の項
また、職権探知により、本件出願時の技術常識を示す、文献Aを追加した。
・文献A:化学大辞典,株式会社東京化学同人,1989年,1870頁,「ビタミンA」の項
2.取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由通知の概要
本件訂正前の、令和7年5月8日にされた訂正の請求(当審注:上記第1のなお書で説示したとおり、当該訂正の請求は取り下げられたものとみなす。)により訂正された特許請求の範囲の請求項1~3に係る特許について、当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。
〔取消理由1:新規性〕
請求項1~3に係る発明は、甲14、甲15に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
〔取消理由2:進歩性〕
請求項1~3に係る発明は、甲14、甲15に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3.令和7年3月5日付け取消理由通知書に記載した取消理由の概要
本件特許の設定登録時の請求項1~3に係る特許について、当審が令和7年3月5日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。
〔取消理由1:新規性〕
請求項1、2に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
〔取消理由2:進歩性〕
請求項1~3に係る発明は、甲1、甲2に記載された発明並びに甲1~5、9、10及び文献Aの記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)は、いずれも、令和7年5月8日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明に対して示した判断であるが、本件訂正後の訂正発明1~3に対する取消理由1及び2についての判断を以下に示す。
1.引用文献
甲14、甲15、甲17、及び文献Aには、以下の事項が記載されており、甲14、15に記載された発明は以下のとおりである。
なお、原文にない下線は強調のために合議体において付したものである。
(1)甲14に記載された事項及び発明
ア 甲14に記載された事項
(摘記14a)「
[図:0001433078000001.jpg]
」(505頁「エルゾン軟膏」)
(摘記14b)「
[図:0001433078000002.jpg]
」(529頁「強力コルヂール軟膏」)
(摘記14c)「
[図:0001433078000003.jpg]
」(529頁「コーレイ」)
(摘記14d)「
[図:0001433078000004.jpg]
」(546頁「ピチオパス」)
イ 甲14に記載された発明
(ア)上記アの摘記14aの記載からみて、特に摘記14aにおける「軟」の四角囲いは、「エルゾン軟膏」と称される医薬品が、軟膏組成物であることを意味していると解されるから、甲14には、下記の甲14A1発明が記載されていると認められる。また、組成物は、各成分を配合することにより製造されるものであるから、甲14には、下記の甲14A2発明が記載されていると認められる。
(甲14A1発明)
「100g中、スルフイソミジン5g、ヘキサクロロフェン1g、ジフェンヒドラミン1g、dl-α-トコフェロール0.2g、理研ADオイル(V.A200,000IU、V.D20,000IU)0.4gを含有し、かゆみ止めに用いられる、「エルゾン軟膏」と称される軟膏組成物。」
(甲14A2発明)
「100g中、スルフイソミジン5g、ヘキサクロロフェン1g、ジフェンヒドラミン1g、dl-α-トコフェロール0.2g、理研ADオイル(V.A200,000IU、V.D20,000IU)0.4gを配合することによる、かゆみ止めに用いられる、「エルゾン軟膏」と称される軟膏組成物の製造方法。」
(イ)上記アの摘記14bの記載からみて、特に摘記14bにおける「軟」の四角囲いは、「強力コルヂール軟膏」と称される医薬品が、軟膏組成物であることを意味していると解されるから、甲14には、下記の甲14B1発明が記載されていると認められる。また、組成物は、各成分を配合することにより製造されるものであるから、甲14には、下記の甲14B2発明が記載されていると認められる。
(甲14B1発明)
「100g中、ヘキセストロール0.02g、ビタミンA油(V.Aとして500,000IU)5g、エルゴカルシフェロール(V.D2として50,000IU)、酢酸トコフェロール1g、ピリドキシンジパルミテート0.02g、卵黄油0.3g、塩酸トラゾリン1g、塩酸ジフェンヒドラミン0.5g、テーカイン0.1g、ヘキサクロロフェン0.2g、サリチル酸メチル1g、dl-カンフル1.5g、l-メントール0.2g、親水ワセリンを含有し、かゆみ症に用いられる、「強力コルヂール軟膏」と称される軟膏組成物。」
(甲14B2発明)
「100g中、ヘキセストロール0.02g、ビタミンA油(V.Aとして500,000IU)5g、エルゴカルシフェロール(V.D2として50,000IU)、酢酸トコフェロール1g、ピリドキシンジパルミテート0.02g、卵黄油0.3g、塩酸トラゾリン1g、塩酸ジフェンヒドラミン0.5g、テーカイン0.1g、ヘキサクロロフェン0.2g、サリチル酸メチル1g、dl-カンフル1.5g、l-メントール0.2g、親水ワセリンを配合することによる、かゆみ症に用いられる、「強力コルヂール軟膏」と称される軟膏組成物の製造方法。」
(ウ)上記アの摘記14cの記載からみて、特に摘記14cにおける「軟」の四角囲いは、「コーレイ」と称される医薬品が、軟膏組成物であることを意味していると解されるから、甲14には、下記の甲14C1発明が記載されていると認められる。また、組成物は、各成分を配合することにより製造されるものであるから、甲14には、下記の甲14C2発明が記載されていると認められる。
(甲14C1発明)
「1g中、エストロン0.05mg、l-メントール10mg、ビタミンA油5,000IU、ジフェンヒドラミン10mg、酢酸トコフェロール5mg、塩化ベンザルコニウム1mg、d-カンフル30mg、サリチル酸グリコール20mgを含有し、かゆみや皮膚かゆみ症に用いられる、「コーレイ」と称される軟膏組成物。」
(甲14C2発明)
「1g中、エストロン0.05mg、l-メントール10mg、ビタミンA油5,000IU、ジフェンヒドラミン10mg、酢酸トコフェロール5mg、塩化ベンザルコニウム1mg、d-カンフル30mg、サリチル酸グリコール20mgを配合することによる、かゆみや皮膚かゆみ等に用いられる、「コーレイ」と称される軟膏組成物の製造方法。」
(エ)上記アの摘記14dの記載からみて、特に摘記14dにおける「軟」の四角囲いは、「ピチオパス」と称される医薬品が、軟膏組成物であることを意味していると解されるから、甲14には、下記の甲14D1発明が記載されていると認められる。また、組成物は、各成分を配合することにより製造されるものであるから、甲14には、下記の甲14D2発明が記載されていると認められる。
(甲14D1発明)
「ヘキサクロロフェン0.5%、酢酸コルチゾン0.1%、dl-α-トコフェロール0.2%、ビタミンA油0.2%、カルシフェロール0.05%、アミノ安息香酸エチル3%、ホモスルファミン2%、塩酸ジフェンヒドラミン0.01%、亜鉛華5%、ポリエチレングリコール軟膏88.94%を含有し、かゆみや陰部および肛門かゆみ症に用いられる、「ピチオパス」と称される軟膏組成物。」
(甲14D2発明)
「ヘキサクロロフェン0.5%、酢酸コルチゾン0.1%、dl-α-トコフェロール0.2%、ビタミンA油0.2%、カルシフェロール0.05%、アミノ安息香酸エチル3%、ホモスルファミン2%、塩酸ジフェンヒドラミン0.01%、亜鉛華5%、ポリエチレングリコール軟膏88.94%を配合することによる、かゆみや陰部および肛門かゆみ症に用いられる、「ピチオパス」と称される軟膏組成物の製造方法。」
(2)甲15に記載された事項及び発明
ア 甲15に記載された事項
(摘記15a)「
[図:0001433078000005.jpg]
」(496頁「ハイオロン軟膏」)
イ 甲15に記載された発明
上記アの摘記15aの記載からみて、特に摘記15aにおける「軟」の四角囲いは、「ハイオロン軟膏」と称される医薬品が、軟膏組成物であることを意味していると解されるから、甲15には、下記の甲15A1発明が記載されていると認められる。また、組成物は、各成分を配合することにより製造されるものであるから、甲15には、下記の甲15A2発明が記載されていると認められる。
(甲15A1発明)
「1g中、ビタミンA2,000IU、ビタミンD2500IU、ビタミンE酢酸エステル10mg、ジエチルスチルベストロール100μg、ジフェンヒドラミン10mgを含有し、かゆみや陰部そう痒に用いられる、「ハイオロン軟膏」と称される軟膏組成物。」
(甲15A2発明)
「1g中、ビタミンA2,000IU、ビタミンD2500IU、ビタミンE酢酸エステル10mg、ジエチルスチルベストロール100μg、ジフェンヒドラミン10mgを配合することによる、かゆみや陰部そう痒に用いられる、「ハイオロン軟膏」と称される軟膏組成物の製造方法。」
(3)甲17に記載された事項
(摘記17a)「
[図:0001433078000006.jpg]
」(C-4105頁)
(摘記17b)「
[図:0001433078000007.jpg]
」(C-4105頁)
(摘記17c)「
[図:0001433078000008.jpg]
」(C-5907頁)
(4)文献Aに記載された事項
文献Aの1870頁の「ビタミンA」の項には、以下の記載がある。
(摘記A)「
[図:0001433078000009.jpg]
」
2.甲14A1発明又は甲14A2発明を主引用発明とする、訂正発明1~3に対する取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)
(1)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲14A1発明との対比
甲14A1発明の「ジフェンヒドラミン」及び「dl-α-トコフェロール」は、それぞれ訂正発明1の「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩」及び「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル」に相当する。
また、「V.A」は「ビタミンA」の略語であり、「ビタミンA」が「レチノール」を意味することは、本件出願時の技術常識であり(上記摘記A)、「理研ADオイル(V.A200,000IU、V.D20,000IU)」は「レチノールパルミチン酸エステルを含む油」であると理解されるものであるから(上記摘記17a~17c)、甲14A1発明の「理研ADオイル(V.A200,000IU、V.D20,000IU)」は、訂正発明1の「(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物」に相当する。
そして、甲14A1発明の「かゆみ止めに用いられる」「軟膏組成物」は、皮膚に適用するものであることは自明であるから、訂正発明1の「皮膚の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物」に相当する。
そうすると、訂正発明1と甲14A1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル、並びに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を含有し、皮膚の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明1では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲14A1発明では「スルフイソミジン、及びヘキサクロロフェンを含有する軟膏組成物」である点。
<相違点2>
訂正発明1は、鎮痒用途で皮膚外用組成物を使用する皮膚が「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)」に特定されているが、甲14A1発明はそのような特定がなされていない点。
イ 相違点1についての判断
(ア)新規性の判断
相違点1は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、甲14A1発明ではない。
(イ)進歩性の判断
甲14A1発明は、甲14において完成された医薬品として成分組成や適応症等が記載されたものであるから、成分組成が最適化された後の、必要であると判断された成分のみからなる組成物であると理解できるものであるし、特に「スルフイソミジン、及びヘキサクロロフェン」は、成分組成の表示において最初と2番目に記載されたものであるから、特に重要で不可欠な成分であることを認識させるものである。
そうすると、甲14A1発明において「スルフイソミジン、及びヘキサクロロフェン」に注目し、これらを除く動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、当業者が甲14A1発明から容易に発明をすることができたものではない。
(2)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1を「(A)成分1重量部当たり」、「(B)成分が0.1~10重量部含まれる」ものに限定するものであるから、訂正発明1と同じく、甲14A1発明との間に相違点1が存在し、同様に判断される。
したがって、訂正発明2は、甲14A1発明ではなく、また、当業者が甲14A1発明から容易に発明をすることができたものではない。
(3)訂正発明3について
ア 訂正発明3と甲14A2発明との対比
訂正発明3は、訂正発明1の組成物に係る方法であり、甲14A2発明は甲14A1発明の組成物に係る方法であるので、訂正発明3と甲14A2発明との組成物に関する対応関係は、訂正発明1と甲14A1発明の対応関係と同様である。
また、甲14A2発明における「軟膏組成物」は、皮膚に適用するものであることは自明であるから、甲14A2発明の「軟膏組成物の製造方法」と訂正発明3の「皮膚外用組成物」「において、鎮痒」「効果を向上させる方法であ」る「鎮痒効果向上方法」とは、「皮膚外用組成物」に係る「方法」である点で一致する。
そうすると、訂正発明3と甲14A2発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステルを含む皮膚外用組成物における方法であって、
皮膚外用組成物に、前記(A)成分及び前記(B)成分とともに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を配合する、方法。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明3では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲14A2発明では「スルフイソミジン、及びヘキサクロロフェンを含有する軟膏組成物」である点。
<相違点3>
訂正発明3は、「皮膚外用組成物」において、(A)成分及び(B)成分とともに(C)成分を配合する方法が、「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)の鎮痒効果を向上させる方法」であることが特定されているが、甲14A2発明は、そのような特定がない点で相違する。
イ 相違点1についての判断
(ア)新規性の判断
相違点1は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明3は、甲14A2発明ではない。
(イ)進歩性の判断
甲14A2発明の軟膏組成物は、甲14において完成された医薬品として成分組成や適応症等が記載されたものであるから、成分組成が最適化された後の、必要であると判断された成分のみからなる組成物であると理解できるものであるし、特に「スルフイソミジン、及びヘキサクロロフェン」は、成分組成の表示において最初と2番目に記載されたものであるから、特に重要で不可欠な成分であることを認識させるものである。
そうすると、甲14A2発明において「スルフイソミジン、及びヘキサクロロフェン」に注目し、これらを除く動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明3は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明3は、当業者が甲14A2発明から容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
よって、甲14A1発明又は甲14A2発明を主引用発明とする、訂正発明1~3に対する取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)には理由がない。
3.甲14B1発明又は甲14B2発明を主引用発明とする、訂正発明1~3に対する取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)
(1)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲14B1発明との対比
甲14B1発明の「塩酸ジフェンヒドラミン」及び「酢酸トコフェロール」は、それぞれ訂正発明1の「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩」及び「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル」に相当する。
また、「ビタミンA」が「レチノール」を意味することは、本件出願時の技術常識であり(上記摘記A)、「ビタミンA油」は「レチノールパルミチン酸エステルを含む油」であると理解されるものであるから(上記摘記17a~17c)、甲14B1発明の「ビタミンA油」は、訂正発明1の「(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物」に相当する。
そして、甲14B1発明の「かゆみ症に用いられる」「軟膏組成物」は、皮膚に適用するものであることは自明であるから、訂正発明1の「皮膚の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物」に相当する。
そうすると、訂正発明1と甲14B1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル、並びに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を含有し、皮膚の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明1では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲14B1発明では「ヘキセストロールを含有する軟膏組成物」である点。
<相違点2>
訂正発明1は、鎮痒用途で皮膚外用組成物を使用する皮膚が「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)」に特定されているが、甲14B1発明はそのような特定がなされていない点。
イ 相違点1についての判断
(ア)新規性の判断
相違点1は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、甲14B1発明ではない。
(イ)進歩性の判断
甲14B1発明は、甲14において完成された医薬品として成分組成や適応症等が記載されたものであるから、成分組成が最適化された後の、必要であると判断された成分のみからなる組成物であると理解できるものであるし、特に「ヘキセストロール」は、成分組成の表示において最初に記載されたものであるから、特に重要で不可欠な成分であることを認識させるものである。
そうすると、甲14B1発明において「ヘキセストロール」に注目し、これを除く動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、当業者が甲14B1発明から容易に発明をすることができたものではない。
(2)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1を「(A)成分1重量部当たり」、「(B)成分が0.1~10重量部含まれる」ものに限定するものであるから、訂正発明1と同じく、甲14B1発明との間に相違点1が存在し、同様に判断される。
したがって、訂正発明2は、甲14B1発明ではなく、また、当業者が甲14B1発明から容易に発明をすることができたものではない。
(3)訂正発明3について
ア 訂正発明3と甲14B2発明との対比
訂正発明3は、訂正発明1の組成物に係る方法であり、甲14B2発明は甲14B1発明の組成物に係る方法であるので、訂正発明3と甲14B2発明との組成物に関する対応関係は、訂正発明1と甲14B1発明の対応関係と同様である。
また、甲14B2発明における「軟膏組成物」は、皮膚に適用するものであることは自明であるから、甲14B2発明の「軟膏組成物の製造方法」と訂正発明3の「皮膚外用組成物」「において、鎮痒」「効果を向上させる方法であ」る「鎮痒効果向上方法」とは、「皮膚外用組成物」に係る「方法」である点で一致する。
そうすると、訂正発明3と甲14B2発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステルを含む皮膚外用組成物における方法であって、
皮膚外用組成物に、前記(A)成分及び前記(B)成分とともに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を配合する、方法。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明3では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲14B2発明では「ヘキセストロールを含有する軟膏組成物」である点。
<相違点3>
訂正発明3は、「皮膚外用組成物」において、(A)成分及び(B)成分とともに(C)成分を配合する方法が、「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)の鎮痒効果を向上させる方法」であることが特定されているが、甲14B2発明は、そのような特定がない点で相違する。
イ 相違点1についての判断
(ア)新規性の判断
相違点1は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明3は、甲14B2発明ではない。
(イ)進歩性の判断
甲14B2発明は、甲14において完成された医薬品として成分組成や適応症等が記載されたものであるから、成分組成が最適化された後の、必要であると判断された成分のみからなる組成物であると理解できるものであるし、特に「ヘキセストロール」は、成分組成の表示において最初に記載されたものであるから、特に重要で不可欠な成分であることを認識させるものである。
そうすると、甲14B2発明において「ヘキセストロール」に注目し、これを除く動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明3は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明3は、当業者が甲14B2発明から容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
よって、甲14B1発明又は甲14B2発明を主引用発明とする、訂正発明1~3に対する取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)には理由がない。
4.甲14C1発明又は甲14C2発明を主引用発明とする、訂正発明1~3に対する取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)
(1)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲14C1発明との対比
甲14C1発明の「ジフェンヒドラミン」及び「酢酸トコフェロール」は、それぞれ訂正発明1の「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩」及び「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル」に相当する。
また、「ビタミンA」が「レチノール」を意味することは、本件出願時の技術常識であり(上記摘記A)、「ビタミンA油」は「レチノールパルミチン酸エステルを含む油」であると理解されるものであるから(上記摘記17a~17c)、甲14C1発明の「ビタミンA油」は、訂正発明1の「(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物」に相当する。
そして、甲14C1発明の「かゆみや皮膚かゆみ症に用いられる」「軟膏組成物」は、皮膚に適用するものであることは自明であるから、訂正発明1の「皮膚の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物」に相当する。
そうすると、訂正発明1と甲14C1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル、並びに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を含有し、皮膚の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明1では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲14C1発明では「エストロンを含有する軟膏組成物」である点。
<相違点2>
訂正発明1は、鎮痒用途で皮膚外用組成物を使用する皮膚が「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)」に特定されているが、甲14C1発明はそのような特定がなされていない点。
イ 相違点1についての判断
(ア)新規性の判断
相違点1は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、甲14C1発明ではない。
(イ)進歩性の判断
甲14C1発明は、甲14において完成された医薬品として成分組成や適応症等が記載されたものであるから、成分組成が最適化された後の、必要であると判断された成分のみからなる組成物であると理解できるものであるし、特に「エストロン」は、成分組成の表示において最初に記載されたものであるから、特に重要で不可欠な成分であることを認識させるものである。
そうすると、甲14C1発明において「エストロン」に注目し、これを除く動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、当業者が甲14C1発明から容易に発明をすることができたものではない。
(2)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1を「(A)成分1重量部当たり」、「(B)成分が0.1~10重量部含まれる」ものに限定するものであるから、訂正発明1と同じく、甲14C1発明との間に相違点1が存在し、同様に判断される。
したがって、訂正発明2は、甲14C1発明ではなく、また、当業者が甲14C1発明から容易に発明をすることができたものではない。
(3)訂正発明3について
ア 訂正発明3と甲14C2発明との対比
訂正発明3は、訂正発明1の組成物に係る方法であり、甲14C2発明は甲14C1発明の組成物に係る方法であるので、訂正発明3と甲14C2発明との組成物に関する対応関係は、訂正発明1と甲14C1発明の対応関係と同様である。
また、甲14C2発明における「軟膏組成物」は、皮膚に適用するものであることは自明であるから、甲14C2発明の「軟膏組成物の製造方法」と訂正発明3の「皮膚外用組成物」「において、鎮痒」「効果を向上させる方法であ」る「鎮痒効果向上方法」とは、「皮膚外用組成物」に係る「方法」である点で一致する。
そうすると、訂正発明3と甲14C2発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステルを含む皮膚外用組成物における方法であって、
皮膚外用組成物に、前記(A)成分及び前記(B)成分とともに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を配合する、方法。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明3では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲14C2発明では「エストロンを含有する軟膏組成物」である点。
<相違点3>
訂正発明3は、「皮膚外用組成物」において、(A)成分及び(B)成分とともに(C)成分を配合する方法が、「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)の鎮痒効果を向上させる方法」であることが特定されているが、甲14C2発明は、そのような特定がない点で相違する。
イ 相違点1についての判断
(ア)新規性の判断
相違点1は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明3は、甲14C2発明ではない。
(イ)進歩性の判断
甲14C2発明は、甲14において完成された医薬品として成分組成や適応症等が記載されたものであるから、成分組成が最適化された後の、必要であると判断された成分のみからなる組成物であると理解できるものであるし、特に「エストロン」は、成分組成の表示において最初に記載されたものであるから、特に重要で不可欠な成分であることを認識させるものである。
そうすると、甲14C2発明において「エストロン」に注目し、これを除く動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明3は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明3は、当業者が甲14C2発明から容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
よって、甲14C1発明又は甲14C2発明を主引用発明とする、訂正発明1~3に対する取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)には理由がない。
5.甲14D1発明又は甲14D2発明を主引用発明とする、訂正発明1、3に対する取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)
(1)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲14D1発明との対比
甲14D1発明の「塩酸ジフェンヒドラミン」及び「dl-α-トコフェロール」は、それぞれ訂正発明1の「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩」及び「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル」に相当する。
また、「ビタミンA」が「レチノール」を意味することは、本件出願時の技術常識であり(上記摘記A)、「ビタミンA油」は「レチノールパルミチン酸エステルを含む油」であると理解されるものであるから(上記摘記17a~17c)、甲14D1発明の「ビタミンA油」は、訂正発明1の「(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物」に相当する。
そして、甲14D1発明の「かゆみや陰部および肛門かゆみ症に用いられる」「軟膏組成物」は、皮膚に適用するものであることは自明であるから、訂正発明1の「皮膚の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物」に相当する。
そうすると、訂正発明1と甲14D1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル、並びに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を含有し、皮膚の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明1では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲14D1発明では「ヘキサクロロフェンを含有する軟膏組成物」である点。
<相違点2>
訂正発明1は、鎮痒用途で皮膚外用組成物を使用する皮膚が「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)」に特定されているが、甲14D1発明はそのような特定がなされていない点。
イ 相違点1についての判断
(ア)新規性の判断
相違点1は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、甲14D1発明ではない。
(イ)進歩性の判断
甲14D1発明は、甲14において完成された医薬品として成分組成や適応症等が記載されたものであるから、成分組成が最適化された後の、必要であると判断された成分のみからなる組成物であると理解できるものであるし、特に「ヘキサクロロフェン」は、成分組成の表示において最初に記載されたものであるから、特に重要で不可欠な成分であることを認識させるものである。
そうすると、甲14D1発明において「ヘキサクロロフェン」に注目し、これを除く動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、当業者が甲14D1発明から容易に発明をすることができたものではない。
(2)訂正発明3について
ア 訂正発明3と甲14D2発明との対比
訂正発明3は、訂正発明1の組成物に係る方法であり、甲14D2発明は甲14D1発明の組成物に係る方法であるので、訂正発明3と甲14D2発明との組成物に関する対応関係は、訂正発明1と甲14D1発明の対応関係と同様である。
また、甲14D2発明における「軟膏組成物」は、皮膚に適用するものであることは自明であるから、甲14D2発明の「軟膏組成物の製造方法」と訂正発明3の「皮膚外用組成物」「において、鎮痒」「効果を向上させる方法であ」る「鎮痒効果向上方法」とは、「皮膚外用組成物」に係る「方法」である点で一致する。
そうすると、訂正発明3と甲14D2発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステルを含む皮膚外用組成物における方法であって、
皮膚外用組成物に、前記(A)成分及び前記(B)成分とともに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を配合する、方法。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明3では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲14D2発明では「ヘキサクロロフェンを含有する軟膏組成物」である点。
<相違点3>
訂正発明3は、「皮膚外用組成物」において、(A)成分及び(B)成分とともに(C)成分を配合する方法が、「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)の鎮痒効果を向上させる方法」であることが特定されているが、甲14D2発明は、そのような特定がない点で相違する。
イ 相違点1についての判断
(ア)新規性の判断
相違点1は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明3は、甲14D2発明ではない。
(イ)進歩性の判断
甲14D2発明は、甲14において完成された医薬品として成分組成や適応症等が記載されたものであるから、成分組成が最適化された後の、必要であると判断された成分のみからなる組成物であると理解できるものであるし、特に「ヘキサクロロフェン」は、成分組成の表示において最初に記載されたものであるから、特に重要で不可欠な成分であることを認識させるものである。
そうすると、甲14D2発明において「ヘキサクロロフェン」に注目し、これを除く動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明3は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明3は、当業者が甲14D2発明から容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
よって、甲14D1発明又は甲14D2発明を主引用発明とする、訂正発明1、3に対する取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)には理由がない。
6.甲15A1発明又は甲15A2発明を主引用発明とする、訂正発明1~3に対する取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)
(1)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲15A1発明との対比
甲15A1発明の「ジフェンヒドラミン」及び「ビタミンE酢酸エステル」は、それぞれ訂正発明1の「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩」及び「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル」に相当する。
また、「ビタミンA」が「レチノール」を意味することは、本件出願時の技術常識であるから(要すれば、上記摘記A)、甲15A1発明の「ビタミンA」は、訂正発明1の「(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物」に相当する。
そして、甲15A1発明の「かゆみや陰部そう痒に用いられる」「軟膏組成物」は、皮膚に適用するものであることは自明であるから、訂正発明1の「皮膚の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物」に相当する。
そうすると、訂正発明1と甲15A1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル、並びに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を含有し、皮膚の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明1では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲15A1発明では「ジエチルスチルベストロールを含有する軟膏組成物」である点。
<相違点2>
訂正発明1は、鎮痒用途で皮膚外用組成物を使用する皮膚が「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)」に特定されているが、甲15A1発明はそのような特定がなされていない点。
イ 相違点1についての判断
(ア)新規性の判断
相違点1は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、甲15A1発明ではない。
(イ)進歩性の判断
甲15A1発明は、甲15において完成された医薬品として成分組成や適応症等が記載されたものであるから、成分組成が最適化された後の、必要であると判断された成分のみからなる組成物であると理解できるものであるし、特に「ジエチルスチルベストロール」は、成分組成の表示において最初に記載されたものであるから、特に重要で不可欠な成分であることを認識させるものである。
そうすると、甲15A1発明において「ジエチルスチルベストロール」に注目し、これを除く動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、当業者が甲15A1発明から容易に発明をすることができたものではない。
(2)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1を「(A)成分1重量部当たり」、「(B)成分が0.1~10重量部含まれる」ものに限定するものであるから、訂正発明1と同じく、甲15A1発明との間に相違点1が存在し、同様に判断される。
したがって、訂正発明2は、甲15A1発明ではなく、また、当業者が甲15A1発明から容易に発明をすることができたものではない。
(3)訂正発明3について
ア 訂正発明3と甲15A2発明との対比
訂正発明3は、訂正発明1の組成物に係る方法であり、甲15A2発明は甲15A1発明の組成物に係る方法であるので、訂正発明3と甲15A2発明との組成物に関する対応関係は、訂正発明1と甲15A1発明の対応関係と同様である。
また、甲15A2発明における「軟膏組成物」は、皮膚に適用するものであることは自明であるから、甲15A2発明の「軟膏組成物の製造方法」と訂正発明3の「皮膚外用組成物」「において、鎮痒」「効果を向上させる方法であ」る「鎮痒効果向上方法」とは、「皮膚外用組成物」に係る「方法」である点で一致する。
そうすると、訂正発明3と甲15A2発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステルを含む皮膚外用組成物における方法であって、
皮膚外用組成物に、前記(A)成分及び前記(B)成分とともに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を配合する、方法。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明3では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲15A2発明では「ジエチルスチルベストロールを含有する軟膏組成物」である点。
<相違点3>
訂正発明3は、「皮膚外用組成物」において、(A)成分及び(B)成分とともに(C)成分を配合する方法が、「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)の鎮痒効果を向上させる方法」であることが特定されているが、甲15A2発明は、そのような特定がない点で相違する。
イ 相違点1についての判断
甲15A2発明は、甲15において完成された医薬品として成分組成や適応症等が記載されたものであるから、成分組成が最適化された後の、必要であると判断された成分のみからなる組成物であると理解できるものであるし、特に「ジエチルスチルベストロール」は、成分組成の表示において最初に記載されたものであるから、特に重要で不可欠な成分であることを認識させるものである。
そうすると、甲15A2発明において「ジエチルスチルベストロール」に注目し、これを除く動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明3は、当業者が甲15A2発明から容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
よって、甲15A1発明又は甲15A2発明を主引用発明とする、訂正発明1~3に対する取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)には理由がない。
第6 令和7年3月5日付け取消理由通知書に記載した取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についての当審の判断
令和7年3年5日付け取消理由通知書に記載した取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)は、いずれも、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明に対して示した判断であるが、本件訂正後の訂正発明1~3に対する取消理由1及び2についての判断を以下に示す。
1.引用文献
甲1、2には、以下の事項が記載されており、甲1、2に記載された発明は以下のとおりである。
また、原文にない下線は強調のために合議体において付したものである。
(1)甲1に記載された事項及び発明
ア 甲1に記載された事項
(摘記1a)
「【請求項1】
エステル系ステロイド、ジフェンヒドラミン類、ジブチルヒドロキシトルエン、メントール、油分を含有することを特徴とする油脂性軟膏剤。」
(摘記1b)
「【0001】
本発明は、エステル系ステロイドおよびジフェンヒドラミン類を含有する皮膚疾患の予防・治療に有用な油脂性軟膏剤に関する。さらに詳しくは、エステル系ステロイドの分解をジブチルヒドロキシトルエン及びメントールにより防止した保存安定性に極めて優れた油脂性軟膏剤に関する。」
(摘記1c)
「【0008】
本発明のジフェンヒドラミン類は、ジフェンヒドラミンまたはその塩である。配合量は、0.1~5w/w%含有でき、好ましくは、1~2w/w%である。」
(摘記1d)
「【0013】
油溶性成分として酢酸トコフェロール、トコフェロール、大豆レシチン、ベンゾトリアゾールのような酸化防止剤、イソプロピルメチルフェノール、エデト酸、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等)、ヘキサクロロフェン等の抗菌・防腐剤等、クロタミトン、アジピン酸イソプロピル、オリブ油、カンフル、硬化油、スクワラン、スクワレン等の溶解剤、リドカイン、ジブカイン等の局所麻酔剤、コレカルシフェロール、レチノール等及びそのエステルのビタミン剤を添加できるが、好ましくは、クロタミトン、酢酸トコフェロール、イソプロピルメチルフェノールである。」
(摘記1e)
「【0021】
〔実施例4~20〕
上記の油脂性軟膏剤の調製法に従い、実施例4~20の油脂性軟膏剤を調製した。その組成を、表2~表4に示した。
・・・
【表3】
[図:0001433078000010.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記アの摘記1a~1eより(特に摘記1eの【表3】の実施例9)、甲1には、以下の甲1A発明、甲1B発明が記載されていると認められる。
(甲1A発明)
「以下の組成からなる油脂性軟膏剤。
吉草酸酢酸プレドニゾロン 0.15w/w%
クロタミトン 5.0w/w%
酢酸トコフェロール 0.5w/w%
イソプロピルメチルフェノール 0.1w/w%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.1w/w%
l-メントール 2.0w/w%
ビタミンA 0.5w/w%
白色ワセリン 78.6w/w%
流動パラフィン 3.0w/w%
モノステアリン酸グリセリン 3.0w/w%
塩酸ジフェンヒドラミン 2.0w/w%
プロピレングリコール 5.0w/w%
水酸化ナトリウム 0.0058w/w%
精製水 0.0522w/w%」
(甲1B発明)
「以下の組成からなる油脂性軟膏剤の製造方法。
吉草酸酢酸プレドニゾロン 0.15w/w%
クロタミトン 5.0w/w%
酢酸トコフェロール 0.5w/w%
イソプロピルメチルフェノール 0.1w/w%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.1w/w%
l-メントール 2.0w/w%
ビタミンA 0.5w/w%
白色ワセリン 78.6w/w%
流動パラフィン 3.0w/w%
モノステアリン酸グリセリン 3.0w/w%
塩酸ジフェンヒドラミン 2.0w/w%
プロピレングリコール 5.0w/w%
水酸化ナトリウム 0.0058w/w%
精製水 0.0522w/w%」
(2)甲2に記載された事項及び発明
ア 甲2に記載された事項
(摘記2a)
「【請求項1】 ポリエチレンナフタレート製容器に油溶性ビタミン含有溶液を充填してなるビタミン含有製剤。
【請求項2】 油溶性ビタミンが、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE及びビタミンKから選ばれるものである請求項1記載のビタミン含有製剤。」
(摘記2b)
「【0007】本発明製剤に含まれる油溶性ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどが挙げられるが、特にビタミンA及び/又はビタミンEを含有するのが好ましい。ビタミンAとしては、ビタミンAとして作用する成分、例えば酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ビタミンA油などが挙げられる。ビタミンEとしては、ビタミンEとして作用する成分、例えばトコフェロール、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム、ニコチン酸トコフェロールなどが挙げられる。ビタミンDとしては、ビタミンDとして作用する成分、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)などが挙げられる。ビタミンKとしては、ビタミンKとして作用する成分、フィトナジオン(ビタミンK1)、メナテトレノン(ビタミンK2)、メナジオン(ビタミンK3)などが挙げられる。本発明は経時安定性に優れた油溶性ビタミン溶液に関するものであり、油溶性ビタミン含有溶液の油溶性ビタミン含有量は、特に限定されないが、ビタミンAは、0~1000000IU/g、好ましくは100~30000IU/g、特に500~3000IU/g含有するのが好ましい。ビタミンEは、0.1~200mg/g、特に0.5~3.0mg/g含有するのが好ましい。ビタミンDは、0~100000IU/g、特に150~1200IU/g含有するのが好ましい。ビタミンKは、0~50mg/g、特に0.2~15mg/g含有するのが好ましい。」
(摘記2c)
「【0010】本発明製剤の形態としては、注射剤、輸液用製剤、経口用製剤(液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、酒精剤、リモナーデ剤など)、外用製剤(軟膏剤、眼軟膏剤、ローション剤、芳香水剤、リニメント剤など)、坐剤、点眼剤などが挙げられるが、注射剤及び輸液用製剤が好ましい。このうち、油溶性ビタミン含有溶液を予め充填したシリンジ型製剤がより好ましい。このシリンジ型製剤は、使用時に注射針を取り付けて使用する形態でもよいし、予め注射針が取り付けられた形態でもよい。特に、予め注射針が取り付けられた形態、すなわち針付きシリンジ型製剤が好ましい。」
(摘記2d)
「【0023】
製剤例8
酢酸トコフェロール 1100mg
ビタミンA 700000IU
エルゴカルフェロール 70000IU
ピリドキシンジパルミテート 20mg
塩酸ジフェンヒドラミン 500mg
l-メントール 200mg
dl-カンフル 1500mg
サリチル酸メチル 1000mg
白色ワセリン 70000mg
サラシミツロウ 5000mg
POE硬化ヒマシ油 3000mg
パラオキシ安息香酸ブチル 100mg
ステアリルアルコール 3000mg
―――――――――――――――――――――――――
精製水にて全量 100g」
イ 甲2に記載された発明
上記アの摘記2a~2dより(特に摘記2d)、甲2には、以下の甲2A発明、甲2B発明が記載されていると認められる。
(甲2A発明)
「ポリエチレンナフタレート製容器に充填してビタミン含有製剤を製造するための、以下の組成からなる油溶性ビタミン含有溶液。
酢酸トコフェロール 1100mg
ビタミンA 700000IU
エルゴカルフェロール 70000IU
ピリドキシンジパルミテート 20mg
塩酸ジフェンヒドラミン 500mg
l-メントール 200mg
dl-カンフル 1500mg
サリチル酸メチル 1000mg
白色ワセリン 70000mg
サラシミツロウ 5000mg
POE硬化ヒマシ油 3000mg
パラオキシ安息香酸ブチル 100mg
ステアリルアルコール 3000mg
―――――――――――――――――――――――――
精製水にて全量 100g」
(甲2B発明)
「ポリエチレンナフタレート製容器に充填してビタミン含有製剤を製造するための、以下の組成からなる油溶性ビタミン含有溶液の製造方法。
酢酸トコフェロール 1100mg
ビタミンA 700000IU
エルゴカルフェロール 70000IU
ピリドキシンジパルミテート 20mg
塩酸ジフェンヒドラミン 500mg
l-メントール 200mg
dl-カンフル 1500mg
サリチル酸メチル 1000mg
白色ワセリン 70000mg
サラシミツロウ 5000mg
POE硬化ヒマシ油 3000mg
パラオキシ安息香酸ブチル 100mg
ステアリルアルコール 3000mg
―――――――――――――――――――――――――
精製水にて全量 100g」
2.甲1を主引用例とする、訂正発明1~3に対する取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)
(1)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲1A発明との対比
甲1A発明の「塩酸ジフェンヒドラミン」及び「酢酸トコフェロール」は、それぞれ訂正発明1の「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩」及び「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル」に相当する。
そして、甲1には、「油溶性成分として・・・レチノール等及びそのエステルのビタミン剤」との記載があるし(摘記1d)、「ビタミンA」が「レチノール」を意味することは、本件出願時の技術常識であるから(要すれば、上記第5の1.(3)摘記A)、甲1A発明の「ビタミンA」は、訂正発明1の「(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物」に相当する。
甲1A発明の「油脂性軟膏剤」は、皮膚疾患の予防・治療に有用なものであるから(摘記1b)、皮膚に適用するものであることは自明であり、訂正発明1の「皮膚外用組成物」に相当する。
また、甲1A発明の「吉草酸酢酸プレドニゾロン」は、訂正発明1の「エステル系ステロイド」に相当するから、甲1A発明は、訂正発明1で除かれている「[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏」に該当する。
そうすると、訂正発明1と甲1A発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル、並びに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を含有する、皮膚外用組成物。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明1では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲1A発明では「吉草酸酢酸プレドニゾロンを含有する油脂性軟膏剤」である点。
<相違点2>
訂正発明1は、「皮膚外用組成物」が「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)の鎮痒用途で使用される」ものに特定されているが、甲1A発明はそのような特定がなされていない点。
イ 相違点1についての判断
(ア)新規性の判断
相違点1は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、甲1A発明ではない。
(イ)進歩性の判断
甲1には、エステル系ステロイドを含有することを必須とする油脂性軟膏剤に関する発明が記載されており(摘記1a、摘記1b)、甲1A発明の吉草酸酢酸プレドニゾロンを含有する油脂性軟膏剤は、その具体例として記載されているものであるから、甲1A発明において、吉草酸酢酸プレドニゾロンであるエステル系ステロイドを除く動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、当業者が甲1A発明から容易に発明をすることができたものではない。
(2)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1を「(A)成分1重量部当たり」、「(B)成分が0.1~10重量部含まれる」ものに限定するものであるから、訂正発明1と同じく、甲1A発明との間に相違点1が存在し、同様に判断される。
したがって、訂正発明2は、甲1A発明ではなく、また、当業者が甲1A発明から容易に発明をすることができたものではない。
(3)訂正発明3について
ア 訂正発明3と甲1B発明との対比
訂正発明3は、訂正発明1の組成物に係る方法であり、甲1B発明は甲1A発明の組成物に係る方法であるので、訂正発明3と甲1B発明との組成物に関する対応関係は、訂正発明1と甲1A発明の対応関係と同様である。
そして、甲1B発明における「油脂性軟膏剤」は、皮膚疾患の予防・治療に有用なものであり(摘記1b)、皮膚に適用するものであることは自明であるから、甲1B発明の「油脂性軟膏剤の製造方法」と訂正発明3の「皮膚外用組成物」「において、鎮痒」「効果を向上させる方法であ」る「鎮痒効果向上方法」とは、「皮膚外用組成物」に係る「方法」である点において一致する。
また、甲1B発明の「吉草酸酢酸プレドニゾロン」は、訂正発明3の「エステル系ステロイド」に相当するから、甲1B発明は、訂正発明3で除かれている「[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏」に該当する。
そうすると、訂正発明3と甲1B発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステルを含む皮膚外用組成物における方法であって、
皮膚外用組成物に、前記(A)成分及び前記(B)成分とともに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を配合する、方法。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明3では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲1B発明では「吉草酸酢酸プレドニゾロンを含有する油脂性軟膏剤」である点。
<相違点3>
訂正発明3は、「皮膚外用組成物」において、(A)成分及び(B)成分とともに(C)成分を配合する方法が、「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)の鎮痒効果を向上させる方法」であることが特定されているが、甲1B発明は、そのような特定がない点で相違する。
イ 相違点1についての判断
(ア)新規性の判断
相違点1は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、甲1B発明ではない。
(イ)進歩性の判断
甲1には、エステル系ステロイドを含有することを必須とする油脂性軟膏剤に関する発明が記載されており(摘記1a、摘記1b)、甲1B発明の吉草酸酢酸プレドニゾロンを含有する油脂性軟膏剤は、その具体例として記載されているものであるから、甲1B発明において、吉草酸酢酸プレドニゾロンであるエステル系ステロイドを除く動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、当業者が甲1B発明から容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
よって、甲1を主引用例とする、訂正発明1~3に対する取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)には理由がない。
3.甲2を主引用例とする、訂正発明1~3に対する取消理由2(進歩性)
(1)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲2A発明との対比
甲2A発明の「塩酸ジフェンヒドラミン」及び「酢酸トコフェロール」は、それぞれ訂正発明1の「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩」及び「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル」に相当する。
また、甲2には、「ビタミンAとしては、ビタミンAとして作用する成分、例えば酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ビタミンA油などが挙げられる」との記載があるし(摘記2b)、「ビタミンA」が「レチノール」を意味することは、本件出願時の技術常識であるから(要すれば、上記第5の1.(3)摘記A)、甲2A発明の「ビタミンA」は、訂正発明1の「(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物」に相当する。
さらに、甲2A発明の「油溶性ビタミン含有溶液」は、訂正発明1の「組成物」に相当する。
そうすると、訂正発明1と甲2A発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル、並びに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を含有する、組成物。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明1では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲2A発明では「ポリエチレンナフタレート製容器に充填してビタミン含有製剤を製造するための」ものである点。
<相違点2>
訂正発明1は、「組成物」が「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物」に特定されているが、甲2A発明はそのようなものではない点。
イ 相違点1についての判断
甲2には、ポリエチレンナフタレート製容器に充填することを必須の構成とするビタミン含有組成物に関する発明が記載されており(摘記2a)、甲2A発明はその具体例として記載されたものであるから、甲2A発明の油溶性ビタミン含有溶液を、ポリエチレンナフタレート製容器に充填されないものとする動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、当業者が甲2A発明から容易に発明をすることができたものではない。
(2)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1を「(A)成分1重量部当たり」、「(B)成分が0.1~10重量部含まれる」ものに限定するものであるから、訂正発明1と同じく、甲2A発明との間に相違点1が存在し、同様に判断される。
したがって、訂正発明2は、当業者が甲2A発明から容易に発明をすることができたものではない。
(3)訂正発明3について
ア 訂正発明3と甲2B発明との対比
訂正発明3は、訂正発明1の組成物に係る方法であり、甲2B発明は甲2A発明の組成物に係る方法であるので、訂正発明3と甲2B発明との組成物に関する対応関係は、訂正発明1と甲2A発明の対応関係と同様である。
また、甲2B発明の「油溶性ビタミン含有溶液の製造方法」と、訂正発明3の「皮膚外用組成物」「において、鎮痒」「効果を向上させる方法であ」る「鎮痒効果向上方法」とは、「組成物」に係る「方法」である点において一致する。
そうすると、訂正発明3と甲2B発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステルを含む組成物における方法であって、
皮膚外用組成物に、前記(A)成分及び前記(B)成分とともに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を配合する、方法。」
<相違点1>
「皮膚外用組成物」について、訂正発明3では、「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く」ものであるのに対し、甲2B発明では「ポリエチレンナフタレート製容器に充填してビタミン含有製剤を製造するための」ものである点。
<相違点3>
訂正発明3は、「皮膚外用組成物」において、(A)成分及び(B)成分とともに(C)成分を配合する方法が、「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)の鎮痒効果を向上させる方法」であることが特定されているが、甲2B発明は、そのような特定がない点で相違する。
イ 相違点1についての判断
甲2には、ポリエチレンナフタレート製容器に充填することを必須の構成とするビタミン含有組成物に関する発明が記載されており(摘記2a)、甲2B発明はその具体例として記載されたものであるから、甲2B発明の油溶性ビタミン含有溶液を、ポリエチレンナフタレート製容器に充填されないものとする動機付けがあったとはいえない。
そして、訂正発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明3は、当業者が甲2B発明から容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
よって、甲2を主引用例とする、訂正発明1~3に対する取消理由2(進歩性)には理由がない。
第7 取消理由通知書(決定の予告)及び令和7年3月5日付け取消理由通知書において採用しなかった特許異議の申立理由についての当審の判断
特許異議申立書に記載した申立理由は、いずれも、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明に対するものであるが、取消理由通知書(決定の予告)及び令和7年3月5日付け取消理由通知書において採用しなかった特許異議の申立理由について、本件訂正後の訂正発明1~3に対する判断を以下に示す。
1.申立理由1(産業上の利用可能性)について
(1)申立理由の概要
申立人は、以下の点を主張し、請求項3に係る本件特許が特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張している。
「本件発明3における鎮痒効果向上方法は、ヒトの痒み又は掻痒を治療する際に鎮痒効果を向上させるための処方などの技術であることから、「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当する。よって、本件発明3は、産業上利用することができる発明に該当しないので、特許法第29条第1項柱書の要件を満たさない。」(異議申立書30頁III.)
(2)当審の判断
訂正発明3の「鎮痒効果向上方法」は、その特許請求の範囲の記載から理解できるとおり、皮膚外用組成物において皮膚の鎮痒効果を向上させる方法であり、ヒトの痒み又は掻痒を治療する方法において鎮痒効果を向上させる方法ではないから、「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当しないことは明らかである。
よって、申立人の上記主張は採用できず、申立理由1(産業上の利用可能性)には、理由がない。
2.申立理由3(進歩性)について
(1)申立理由の概要
申立人は、本件発明1~3は、甲3に記載された発明を主引用発明として当業者が容易になし得た発明であるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張している。(異議申立書46頁12行~48頁17行)
(2)当審の判断
ア 引用文献
(ア)甲3に記載された事項
(摘記3a)
「
[図:0001433078000011.jpg]
」(4頁)
(摘記3b)
「
[図:0001433078000012.jpg]
」(8頁)
(イ)甲3に記載された発明
摘記3a及び摘記3bの記載からみて、甲3には、下記の甲3A発明が記載されていると認められる。また、組成物は、各成分を配合することにより製造されるものであるから、甲3には、下記の甲3B発明が記載されていると認められる。
(甲3A発明)
「1g中、ジフェンヒドラミンを10mg(1%)含有し、じん麻疹、湿疹、小児ストロフルス、皮膚そう痒症、及び虫さされを効能又は効果とする、「ジフェンヒドラミンクリーム1%「タイヨー」」と称される乳剤性軟膏。」
(甲3B発明)
「1g中、ジフェンヒドラミンを10mg(1%)含有し、じん麻疹、湿疹、小児ストロフルス、皮膚そう痒症、及び虫さされを効能又は効果とする、「ジフェンヒドラミンクリーム1%「タイヨー」」と称される乳剤性軟膏の製造方法。」
(ウ)甲4に記載された事項
(摘記4a)
「
[図:0001433078000013.jpg]
」
(摘記4b)
「
[図:0001433078000014.jpg]
」
(摘記4c)
「
[図:0001433078000015.jpg]
」
(摘記4d)
「
[図:0001433078000016.jpg]
」
(エ)甲5に記載された事項
(摘記5a)
「
[図:0001433078000017.jpg]
」
(摘記5b)
「
[図:0001433078000018.jpg]
」
(摘記5c)
「
[図:0001433078000019.jpg]
」
(摘記5d)
「
[図:0001433078000020.jpg]
」
(オ)甲12に記載された事項
(摘記12a)
「
[図:0001433078000021.jpg]
」
(カ)甲13に記載された事項
(摘記13a)
「
[図:0001433078000022.jpg]
」
(摘記13b)
「
[図:0001433078000023.jpg]
」
(摘記13c)
「
[図:0001433078000024.jpg]
」
ウ 訂正発明1について
(ア)訂正発明1と甲3A発明との対比
甲3A発明の「ジフェンヒドラミン」は、訂正発明1の「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩」に相当する。
また、甲3A発明の「じん麻疹、湿疹、小児ストロフルス、皮膚そう痒症、及び虫さされを効能又は効果とする」「乳剤性軟膏」は、皮膚に適用するものであることは自明であるから、訂正発明1の「皮膚の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物」に相当する。
そして、甲3A発明の「軟膏組成物」は、その組成からみて、訂正発明1において除かれている「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏」のいずれにも該当しない。
そうすると、訂正発明1と甲3A発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩を含有し、皮膚の鎮痒用途で使用される皮膚外用組成物(但し、[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く)。」
<相違点1>
訂正発明1は、皮膚外用組成物が「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル、並びに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を含有」を含有することが特定されているが、甲3A発明では含有しない点。
<相違点2>
訂正発明1は、鎮痒用途で皮膚外用組成物を使用する皮膚が「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)」に特定されているが、甲3A発明はそのような特定がなされていない点。
(イ)相違点1についての判断
甲12には、ジフェンヒドラミンとトコフェロール酢酸エステルとを併用し得ることが記載され(摘記12a)、甲5及び甲13には、ジフェンヒドラミン塩酸塩とトコフェロール酢酸エステルとを含有する皮膚外用剤組成物が具体的に記載されている(摘記5a~5d、摘記13a~13c)。
また、甲4及び甲13には、ジフェンヒドラミン又はその塩酸塩とビタミンA油とを含有する皮膚外用剤組成物が具体的に記載されている(摘記4a~4d、摘記13a~13c)。
特に甲13には、ジフェンヒドラミン塩酸塩を含有する皮膚外用組成物に、トコフェロール酢酸エステルとビタミンA油との両方が含有されたものが記載されている。
したがって、ジフェンヒドラミンを含有する皮膚外用剤において、「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル」や「(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物」を含有させることは公知の技術であると認められる。
しかし、当該技術を記載する甲4、甲5、甲12、及び甲13の記載や、甲3A発明を記載する甲3の記載をみても、甲3A発明において、「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル、並びに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物」の両者を含有させることの示唆となる記載は見当たらず、これら技術を組み合わせて、相違点1の構成を有する発明とする動機付けはない。
そして、訂正発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、当業者が甲3A発明から容易に発明をすることができたものではない。
エ 訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1を「(A)成分1重量部当たり」、「(B)成分が0.1~10重量部含まれる」ものに限定するものであるから、訂正発明1と同じく、甲3A発明との間に相違点1が存在し、同様に判断される。
したがって、訂正発明2は、当業者が甲3A発明から容易に発明をすることができたものではない。
オ 訂正発明3について
(ア)訂正発明3と甲3B発明との対比
甲3B発明の「ジフェンヒドラミン」は、訂正発明3の「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩」に相当する。
また、甲3B発明の「軟膏組成物」は、その組成からみて、訂正発明3において除かれている「[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏」のいずれにも該当しない。
そして、甲3B発明の「乳剤性軟膏の製造方法」と、訂正発明3の「皮膚外用組成物」「において、鎮痒」「効果を向上させる方法であ」る「鎮痒効果向上方法」とは、「組成物」に係る「方法」である点において一致する。
そうすると、訂正発明3と甲3B発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩を含む皮膚外用組成物(但し、[i]カンフル及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[ii]グリチルレチン酸、アラントイン、及びイソプロピルメチルフェノールを含むものと、[iii]エステル系ステロイドを含む油脂性軟膏と、[iv]ポリエチレンナフタレート製容器に充填されるためのものと、[v]スルフイソミジン又はヘキサクロロフェンを含む軟膏と、[vi]ヘキセストロール、エストロン、又はジエチルスチルベストロールを含む軟膏とを除く)における方法であって、
皮膚外用組成物に、前記(A)成分を配合する、方法。」
<相違点1>
訂正発明3は、皮膚外用組成物が「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル」並びに「(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物を含有」を含有することが特定されているが、甲3B発明では含有しない点。
<相違点3>
訂正発明3は、「皮膚外用組成物」において、(A)成分及び(B)成分とともに(C)成分を配合する方法が、「皮膚(但し、乾燥を伴うものを除く)の鎮痒効果を向上させる方法」であることが特定されているが、甲3B発明は、そのような特定がない点で相違する。
(イ)相違点1についての判断
甲12には、ジフェンヒドラミンとトコフェロール酢酸エステルとを併用し得ることが記載され(摘記12a)、甲5及び甲13には、ジフェンヒドラミン塩酸塩とトコフェロール酢酸エステルとを含有する皮膚外用剤組成物が具体的に記載されている(摘記5a~5d、摘記13a~13c)。
また、甲4及び甲13には、ジフェンヒドラミン又はその塩酸塩とビタミンA油とを含有する皮膚外用剤組成物が具体的に記載されている(摘記4a~4d、摘記13a~13c)。
特に甲13には、ジフェンヒドラミン塩酸塩を含有する皮膚外用組成物に、トコフェロール酢酸エステルとビタミンA油との両方が含有されたものが記載されている。
したがって、ジフェンヒドラミンを含有する皮膚外用剤において、「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル」や「(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物」を含有させることは公知の技術であると認められる。
しかし、当該技術を記載する甲4、甲5、甲12、及び甲13の記載や、甲3B発明を記載する甲3の記載をみても、甲3B発明において、「(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル、及び/又はトコフェロールリノレン酸エステル、並びに(C)レチノール、レチノールと炭素数1~30の脂肪酸とのエステル、及び/又はレチノールの酸化物」の両者を含有させることの示唆となる記載は見当たらず、これら技術を組み合わせて、相違点1の構成を有する発明とする動機付けはない。
そして、訂正発明3は、本件特許明細書の【0010】に記載されているとおり、ジフェンヒドラミン類及びトコフェロール類にレチノール類を配合することによって、鎮痒効果を向上させることができるという効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明3は、当業者が甲3B発明から容易に発明をすることができたものではない。
カ 小括
よって、甲3に記載された発明を主引用例とする申立理由3(進歩性)には、理由がない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)及び令和7年3月5日付け取消理由通知書に記載した取消理由、並びに特許異議申立書に記載した特許異議の申立て理由によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。ほかに、請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700056