特許異議申立
2025-700070
粒子、及びその用途
- 審判番号
- 2025-700070
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-197606
- 登録番号
- 7518742
- 請求日
- 2025年01月16日
- 審決日
- 2026年03月19日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】松本油脂製薬株式会社
- 【異議申立人】鈴木 幸子
- 審判長/審判官
- 審判長 光本 美奈子
- 審判官 渡辺 陽子
- 審判官 瀬下 浩一
- 分類
- P1651.113-YAA(C10M) / P1651.121-YAA(C10M) / P1651.537-YAA(C10M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7518742号発明「粒子、及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7518742号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
特許第7518742号の請求項1、3、4、6~8に係る特許を維持する。
特許第7518742号の請求項2、5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、令和2年11月27日の出願であって、令和6年7月9日に特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、令和7年1月16日に申立人である鈴木 幸子(以下、「申立人」という。)により、その請求項1~8に係る特許について特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年4月30日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年6月27日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったことを、同年7月8日付けで申立人に通知したが、この通知に対し、申立人は、その指定期間内に意見書の提出を行わず、当審は、同年10月21日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年12月5日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったことを、同年12月24日付けで申立人に通知したが、この通知に対し、申立人は、その指定期間内に意見書の提出を行わなかった。
なお、本件訂正請求がされたことにより、令和7年6月27日にされた訂正の請求は取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨
本件訂正請求は、請求の趣旨を「特許第7518742号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものである。
2 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項からなる。訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であり、」と記載されているのを、「前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であり、前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~4及び6~8も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記内包物が潤滑剤を含む、」と記載されているのを、「前記内包物が潤滑剤を含み、前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含み、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~4及び6~8も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「粒子。」と記載されているのを、「前記粒子の平均粒子径が3~200μmであり、前記粒子が車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子である、粒子。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~4及び6~8も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の粒子。」と記載されているのを、「請求項1に記載の粒子。」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4及び請求項6~8も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれかに記載の粒子。」と記載されているのを、「請求項1又は3に記載の粒子。」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~8も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれかに記載の粒子。」と記載されているのを、「請求項1、3又は4に記載の粒子。」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7及び8も同様に訂正する)。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれかに記載の粒子と、」と記載されているのを、「請求項1、3、4又は6に記載の粒子と、」に訂正する(請求項7の記載を直接的に引用する請求項8も同様に訂正する)。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項7に「基材成分を含む、組成物。」と記載されているのを、「基材成分を含み、車両用シール材用又は建材用シール材用である、組成物。」に訂正する(請求項7の記載を直接的に引用する請求項8も同様に訂正する)。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項8に「組成物を成形してなる、成形体。」と記載されているのを、「組成物を成形してなり、車両用シール材又は建材用シール材である、成形体。」に訂正する。
(12)一群の請求項について
訂正前の請求項1~8について、請求項2~8は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項1~8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1~8についてされたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明は、「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分」について「重合性成分に占める単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、重合性成分に占める単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%」であるかについては何ら特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項1は、「重合性成分」について「重合性成分に占める単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、重合性成分に占める単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%」であると明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
すなわち、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、前記アの理由から明らかなように、「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分」という発明特定事項を概念的により下位の「重合性成分に占める単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、重合性成分に占める単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5条第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項1は、訂正前の請求項2に係る発明に記載の発明特定事項と、特許掲載公報の明細書中の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。
前記明細書中の[0017]には、「単量体(A)の重量割合の下限は、(1)60重量%、(2)70重量%、(3)80重量%、(4)85重量%、(5)90重量%、(6)93重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。」と記載されている。さらに前記明細書中の[0021]には、「単量体(B)の重量割合の上限は、(1)40重量%、(2)30重量%、(3)20重量%、(4)15重量%、(5)10重量%、(6)7重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。」と記載されている。
そして、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないことは明らかである。
従って、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~8について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
これに対して、訂正後の請求項1は、潤滑剤が「シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含」むものと明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
すなわち、訂正事項2は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるいえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、前記アの理由から明らかなように、「潤滑剤」という発明特定事項を概念的により下位の「シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含」むとするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5条第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項2は、訂正前の請求項5に係る発明に記載の発明特定事項である「前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、エステル系オイル、及び炭化水素系オイルから選ばれる少なくとも1種を含む」という、いわゆるマーカッシュ形式で任意に選択できるように記載していたものを、「前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含む」と任意に選択できると変更したものに基づいて導き出される構成であるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~8について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明は、「粒子」について「粒子の平均粒子径が3~200μmであり、粒子が車両用シール材用又は建材用シール材用」であるかについては何ら特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項1は、「粒子」について「粒子の平均粒子径が3~200μmであり、前記粒子が車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子」であると明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、前記アの理由から明らかなように、「粒子」という発明特定事項を概念的により下位の「粒子の平均粒子径が3~200μmであり、前記粒子が車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5条第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項3は、特許掲載公報の明細書中の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。
前記明細書中の[0031]には、「本発明の粒子の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.1~200μmである。」と記載されている。さらに前記明細書中の[0031]には、「粒子の平均粒子径の下限は、(1)0.5μm、(2)1μm、(3)3μm、(4)5μm、(5)10μmの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。」と記載されている。
また、前記明細書中の[0043]には、「本発明の組成物は、上記粒子と基材成分を含むものであり、」と記載されている。さらに前記明細書中の[0046]には、「本発明の成形体は、上記組成物を成形してなるものである。」と記載されている。加えて前記明細書中の[0046]には、「本発明の成形体は、優れた摺動性を有するため、自動車分野、建材分野、OA機器分野、家電、電子機器分野等の様々な部材として、工業的に広く利用することができる。」と記載されている。さらに加えて前記明細書中の[0046]には、「車両用シール材や建築用シール材として好適に用いることができる。」と記載されている。
そして、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないことは明らかである。
従って、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~8について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項4、7
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項2を削除するものであり、訂正事項7は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、訂正前の請求項2を削除するものであり、訂正事項7は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5条第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項4は、訂正前の請求項2を削除するものであり、訂正事項7は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~8について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項2、5に係る訂正事項4、7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項5、6、8、9
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項3において、訂正事項6は、訂正前の請求項4において、訂正前の請求項2を引用しないものとし、訂正事項8は、訂正前の請求項6において、訂正事項9は、訂正前の請求項7において、訂正前の請求項2及び5を引用しないものとし、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減を行う訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、前述のとおり、訂正前の請求項3において、訂正前の請求項2を引用しないものとしたことで、訂正前の請求項3の記載を減縮するものであり、訂正事項6は、前述のとおり、訂正前の請求項4において、訂正前の請求項2を引用しないものとしたもとで、訂正前の請求項4の記載を減縮するものであり、訂正事項8は、前述のとおり、訂正前の請求項6において、訂正前の請求項2及び5を引用しないものとしたもので、訂正前の請求項6の記載を減縮するものであり、訂正事項9は、前述のとおり、訂正前の請求項7において、訂正前の請求項2及び5を引用しないものとすることで、訂正前の請求項7の記載を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5条第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項5は、前述のとおり、訂正前の請求項3において、訂正事項6は、前述のとおり、訂正前の請求項4において、訂正前の請求項2を引用しないものとするものであり、訂正事項8は、前述のとおり、訂正前の請求項6において、訂正事項9は、前述のとおり、訂正前の請求項7において、訂正前の請求項2及び5を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~8について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項5に関して、訂正前の請求項4に係る訂正事項6に関して、訂正前の請求項6に係る訂正事項8に関して、訂正前の請求項7に係る訂正事項8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6)訂正事項10
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項7に係る発明は、「基材成分を含む、組成物」について「車両用シール材用又は建材用シール材用」であるかについては何ら特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項7は、「基材成分を含む、組成物」について「基材成分を含み、車両用シール材用又は建材用シール材用」であると明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
すなわち、訂正事項10は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項10は、前記アの理由から明らかなように、「基材成分を含む、組成物」という発明特定事項を概念的により下位の「基材成分を含み、車両用シール材用又は建材用シール材用」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5条第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項10は、特許掲載公報の明細書中の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。
前記明細書中の[0043]には、「本発明の組成物は、上記粒子と基材成分を含むものであり、」と記載されている。さらに前記明細書中の[0046]には、「本発明の成形体は、上記組成物を成形してなるものである。」と記載されている。加えて前記明細書中の[0046]には、「本発明の成形体は、優れた摺動性を有するため、自動車分野、建材分野、OA機器分野、家電、電子機器分野等の様々な部材として、工業的に広く利用することができる。」と記載されている。さらに加えて前記明細書中の[0046]には、「車両用シール材や建築用シール材として好適に用いることができる。」と記載されている。
そして、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないことは明らかである。
従って、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~8について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項7に係る訂正事項10に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(7)訂正事項11
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項8に係る発明は、「組成物を成形してなる、成形体」について「車両用シール材又は建材用シール材」であるかについては何ら特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項8は、「組成物を成形してなる、成形体」について「組成物を成形してなり、車両用シール材又は建材用シール材」であると明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
すなわち、訂正事項11は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項11は、前記アの理由から明らかなように、「組成物を成形してなる、成形体」という発明特定事項を概念的により下位の「組成物を成形してなり、車両用シール材又は建材用シール材」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5条第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項11は、特許掲載公報の明細書中の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。
前記明細書中の[0046]には、「本発明の成形体は、優れた摺動性を有するため、自動車分野、建材分野、OA機器分野、家電、電子機器分野等の様々な部材として、工業的に広く利用することができる。」と記載されている。さらに加えて前記明細書中の[0046]には、「車両用シール材や建築用シール材として好適に用いることができる。」と記載されている。
そして、訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないことは明らかである。
従って、訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~8について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項8に係る訂正事項11に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~8に係る発明は、令和7年12月5日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」等、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子であって、
前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体
(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であり、
前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり、
前記内包物が潤滑剤を含み、
前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含み、
前記粒子の平均粒子径が3~200μmであり、
前記粒子が車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子である、
粒子。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記単量体(A)が単量体(a1)を含み、前記単量体(a1)がカルボキシル基を有 する単量体、ニトリル系単量体、アミド基を有する単量体、(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、ビニルエステル系単量体、及びスチレン系単量体から選ばれる少なくと も1つである、請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
前記潤滑剤の25℃における動粘度が10~100000mm2/sである、請求項1又は3に記載の粒子。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
内径(d1)と外径(d2)の比(d1/d2)が0.05~0.999である、請求項1、3又は4に記載の粒子。
【請求項7】
請求項1、3、4又は6に記載の粒子と、基材成分を含み、車両用シール材用又は建材用シール材用である、組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物を成形してなり、車両用シール材又は建材用シール材である、成形体。」
第4 特許異議の申立ての理由、取消理由及び取消理由(決定の予告)の概要
1 特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」ともいう。)は次のとおりである。
理由1A(新規性)本件特許の請求項1、3~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2A(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
理由1B(新規性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2B(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
理由1C(新規性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2C(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第3号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
理由1D(新規性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2D(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
理由1E(新規性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2E(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
理由2F(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第6号証及び甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
理由2G(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第7号証及び甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
理由2H(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第8号証及び甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
記
甲第1号証:特開平4-370150号公報
甲第2号証:特開平5-317688号公報
甲第3号証:特開2001-247855号公報
甲第4号証:特開2013-177497号公報
甲第5号証:国際公開第2015/174305号
甲第6号証:特開2007-219094号公報
甲第7号証:特開2008-31228号公報
甲第8号証:特開2013-18860号公報
理由3(サポート要件)本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件発明が解決しようとする課題は、本件特許の明細書の段落0006に記載されている、「摺動性を付与することができ、かつ、摺動性の長期持続性に優れる粒子、及びその用途を提供する」ことである。
本件特許の請求項lに係る粒子のうち、摺動性の付与及び摺動性の持続性について具体的に確認されており、本件特許の明細書に記載されている粒子は、単量体(A)が、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリルアミド及びスチレンのいずれかであり、単量体(B)がジメタクリル酸エチレングリコール(EDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)及び1,9-ノナンジオールジアクリレート(1,9ND-A)のいずれかであり、単量体(A)の重量割合が約89.7重量%~99.5重量%で単量体(B)の重量割合が約0.5重量%~10.3重量%(実施例1~13等)である外殻と、外殻に内包される内包物が潤滑剤として、25℃における動粘度が100mm2/s~100000mm2/sのジメチルポリシロキサン、フッ素オイル(1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル)及びエステルオイル(ジイソトリデシルアジペート)である潤滑剤を含む、粒子だけであって、本件特許の請求項1の粒子のうちの一部の粒子にすぎない。
これらより、本件特許の請求項1については、当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えるものを含むものであって、本願出願時の技術常識に照らしても、前記特定の外殻と、外殻に内包される特定の潤滑剤を含む内包物とから構成される粒子以外の全ての粒子についてまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
2 令和7年4月30日付けで通知した取消理由の概要は、次の理由である。
理由1(新規性)本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証又は甲第5号証に記載された発明発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである(申立理由1B、1C、1D及び1Eに対応)。
理由2(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証又は甲第5号証に記載された発明及び甲第2~甲第5証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由2B、2C、2D及び2Eに対応)。
3 令和7年10月21日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次の理由である。
理由(進歩性)本件特許の請求項1、3、4、6~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された発明及び甲第2~甲第5号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由2B、2C及び2D対応)。
4 証拠方法
甲第1号証:特開平4-370150号公報
甲第2号証:特開平5-317688号公報
甲第3号証:特開2001-247855号公報
甲第4号証:特開2013-177497号公報
甲第5号証:国際公開第2015/174305号
甲第6号証:特開2007-219094号公報
甲第7号証:特開2008-31228号公報
甲第8号証:特開2013-18860号公報
甲第9号証:特表2020-500964号公報
甲第10号証:特開2004-294294号公報
甲第11号証:特開2019-167455号公報
以下、甲第1号証~甲第11号証を、「甲1」~「甲11」という。
第5 甲号証の記載
1 甲1
「【請求項1】 有機樹脂微粒子が、粒子内部に一般式、
【化1】
[図:0001436159000001.jpg]
[式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は同一でも異なってもよく、水素原子;水酸基;アルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アルケニル基;フェニル基;フェニルアルキル基;ハロゲン原子、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、シアノ基、四級アンモニウム基、硫酸基及びリン酸基の内少なくとも一種を有する一価炭化水素基;ポリオキシアルキレン基;ビニルポリマー残基;又は脂肪酸エステル基を表し、mはシロキサン骨格分子量が1,000,000以下となる数を示す。]で表されるシリコーンオイル5~70重量%、及び粒子表層にエチレン系不飽和モノマーより調製されるガラス転移温度30~200℃の熱可塑性樹脂30~95重量%を含有し、かつ平均粒子直径0.05~1μmを有することを特徴とする、シリコーンオイル含有有機樹脂微粒子。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、表面調整剤、流動性調整剤、消泡剤、撥水剤、離型剤等として、粉体流動性や電気特性等を損なうことなく好適に粉体塗料や粉体化粧等に配合することが出来、又長時間後でも2層分離や分散不良を起こすことなくシリコーンオイル不溶性媒体組成物に対しても好適に配合することが出来るシリコーンオイル含有有機樹脂微粒子、およびその製造法を提供することを、目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討した結果、シリコーンオイルを含むエマルジョンを熱可塑性樹脂でカプセル化させればシリコーンオイルの粉末化が可能となり、その結果粉体塗料の粉体流動性やシリコーンオイル不溶性媒体に対する分散安定性を損なわずに、粉体塗料や上記不溶性媒体組成物中にシリコーンオイルを添加することが可能となり、更に添加後に加熱すれば粒子内部のシリコーンオイルは溶出し表面調整剤や流動性調整剤等として機能させることが出来ることを見出し、本発明を成すに至った。」
「【0012】本発明のシリコーンオイル含有有機樹脂微粒子は、微粒子全重量に対し、上記シリコーンオイル[I]を熱可塑性樹脂でカプセル化したものである。即ち、本発明のシリコーンオイル含有有機樹脂微粒子は、粒子内核に上記シリコーンオイル[I]が存在し、それを被覆する粒子表層に熱可塑性樹脂が存在する2層構造を有する。上記熱可塑性樹脂は、エチレン系不飽和モノマーを後述の乳化重合することにより調製される。エチレン系不飽和モノマーとしては、例えばビニルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、不飽和モノ-及びジ-カルボン酸モノマー等が挙げられ、これらの1種以上使用してよい。より具体的にはエチレン系不飽和モノマーとしては、例えばスチレン、メチル若しくはブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、エチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。その他のモノマー、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等を、本発明効果を損なわない程度に併用してよい。」
「【0014】本発明のシリコーンオイル含有有機樹脂微粒子は、前記シリコーンオイル[I]5~70重量%(好ましくは10~50重量%)、上記熱可塑性樹脂30~95重量%(好ましくは50~90重量%)を含有する。更に、本発明のシリコーンオイル含有有機樹脂微粒子は、平均粒子直径0.05~1μm、好ましくは0.08~0.80μmを有する。粒子径が1μmを越えると、後述の微粒子の単離・乾燥工程に於いて微粒子の機械安定性が低下し、粒子破壊によってシリコーンオイルが分離する危険性が生じる。一方、粒子径が0.05μmよりも小さいと、単離・乾燥後の微粒子間の強固な凝集力によって1次粒子への解砕が不可能になる。」
「【0019】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、断りなき限り「部」は重量部を表す。
シリコーンオイルエマルジョンの調製
調製例1
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を設けた容器2リッターのガラス製反応容器に、ドデシルベンゼンスルホン酸5.14部および脱イオン水488部を加え、95±2℃に昇温させた。ここに高速ホモミキサーによって処理したオクタメチルシクロテトラシロキサン250部、ヘキサメチルジシロキサン7.20部、ペレックスSSL(花王社製のアニオン界面活性剤;不揮発分50%)5.14部および脱イオン水284部の粗エマルジョンを3時間かけて滴下させ、更に同温度で5時間エイジング処理を行った。反応終了後、冷却させた後2規定炭酸ナトリウム水溶液を加えて中和処理を行った。この結果平均粒子径0.204μm、シリコーンオイル粘度37.2センチポイズである良好なシードエマルジョンが得られた。
・・・
【0022】調製例4
ステンレス製ビーカーに信越化学社製の脂肪酸変性シリコーンオイル(製品名KF-910;融点45℃)40部、信越化学社製ポリエーテル変性シリコーンオイル(製品名KF-945)、信越化学社製のジメチルシリコーンオイル(製品名KF-96 100CS)50部、日本乳化社剤製ノニオン界面活性剤(製品名NEWCOL-714)10部および花王社製アニオン界面活性剤ペレックスSSL(不揮発分50%)5部を分取し、オイルバス中60℃で溶融させ、更によく混ぜ合わせた。ここに脱イオン水300部を徐々に加えながら撹拌を行い、白濁感のある粗エマルジョンを得た。この粗エマルジョンをガウリンホモジナイザー使用により800kg/cm2の圧力で3回処理したところ、平均粒子径0.525μmであるシードエマルジョンが得られた。」
「【0028】実施例4
調製例4で得られたシリコーンオイルエマルジョン200部、スチレン290部、ブチルアクリレート150部、α-メチルスチレンダイマー10部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩3部、過硫酸カリウム2.4部および脱イオン水450部を高速ホモミキサー処理によって粗エマルジョン化させた。更に脱イオン水900部を加えた後、これを撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を設けた容器3リッターのガラス製反応容器に仕込み、窒素送気条件下、84±2℃の反応温度条件下で6時間重合を行った。この結果、平均粒子径が0.782であるシリコーンオイル含有有機樹脂微粒子の白濁エマルジョンが得られた。」
2 甲2
「【請求項1】 ほぼ半球状あるいは半楕円球状の、中央に大きな凹部を有し、吸水量が80~140ml/gであるおわん状微粒子。
【請求項2】 開孔部の平均直径が2~100μmである請求項1記載のおわん状微粒子。
【請求項3】 重合性単量体を架橋剤および疎水性液体の存在下に水中で懸濁重合させてなる請求項1記載のおわん状微粒子の製法。
【請求項4】 重合性単量体の少なくとも1種が、スチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリルおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項3記載の製法。
【請求項5】 架橋剤がジビニルベンゼン、ジメタクリル酸スチレン、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3-ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメチロールプロパンおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項3記載の製法。
【請求項6】 疎水性液体が沸点が100℃以上で融点が0℃以下である炭化水素、エステル類、エーテル類、シリコーン油、動物油、植物油およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項3記載の製法。」
「【0003】微粒子は香料、医薬、農薬、化粧品等の吸着剤、徐放性担体、すべり材等に用いられているが、球形の微小球を吸着剤として用いると吸液量が少ないといった欠点がある。これを改良するため、特開昭63-170437号公報には無数の微細な孔を有する微小球(マイクロスポンジ)を開示しているが、肌への密着性の点で不十分である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は良好なすべり性および密着性(肌へののり)と吸水性を併せ持つ、新規な非球状微粒子を提供することを目的とする。このような性質を有する微粒子は、従来の球形ビーズと比較した場合、例えば化粧品に使用すれば、肌へのすべり性を維持しながら肌への密着性と吸水性を向上させる。」
「【0009】本発明において重合性単量体としては、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、イソプレン、ブタジエン、アクロレイン、アクリルアミド、アリルアルコール、ビニルピリジン、安息香酸ビニル、安息香酸アリルおよびこれらの混合物等が例示される。アクリル酸、メタクリル酸等のエステル残基としては炭素数1~18、好ましくは炭素数1~4、特にメチルまたはエチルエステルが好ましい。遊離のアクリル酸、メタクリル酸を一部共重合させてもよく、重合後カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の多価金属化合物、例えば水酸化物等を重合系に添加して架橋させてもよい。
【0010】上記の単量体は単独でも複数種を併合して共重合体としても良い。特に、スチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル等から複数種を併合して共重合体とするのが好ましい。
【0011】架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレン、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3-ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等が好適に使用できる。このうちの2種以上を併用しても良い。
【0012】これらの架橋剤は、粒子をおわん状の形態にするためには重要である。重合性単量体に対する必要な架橋剤の量は0.1~30重量%であり、好ましくは1~20重量%である。この量は粒子の変形に大きく影響する。架橋剤の量が少ないと変形の度合いが低くなり、0.1重量%未満である場合には粒子は変形せずに球形となる。また架橋剤が多すぎる場合には、内包される疎水性物質が溶出され易くなるため好ましくない。」
「【0014】疎水性液体としては炭化水素、例えば流動パラフィン、イソパラフィン;動物油、例えばスクワラン、ミンク油;植物油、例えばアボガド油、マカデミア油、オリーブ油;エステル類、例えばジグリセライド;エーテル類、例えば高分子量ポリプロピレングリコール、ジブチルエーテル、ブチルセルソルブ、アニソール、フェネトール;シリコーン類、例えばオクタメチルシロキサン、種々のシリコーン油等が例示される。特に好ましくは流動パラフィン、イソパラフィン、アボガド油、シリコーン油である。
【0015】疎水性物質は重合時に形成される重合体の微粒子中に内包され、重合時に重合体が変形しておわん状のビーズとなる。その際、ビーズの膜となる重合体の層が薄すぎると粒子は潰れ易くなる。またこの層が厚すぎる場合には変形せずに球形となる。疎水性物質の量が多いと重合体の層は薄くなり粒子の変形度合が大きくなる。また少ないと重合体の層は厚くなり、粒子の変形度合は小さくなる。疎水性物質の量がある量以下では粒子は球形となるため疎水性物質の量を重合体の15~100重量%とするのが好ましい。この範囲内において、目的とする粒子形状に応じて疎水性液体の量を選択すれば良い。
【0016】疎水性物質の量は粒子の形状に大きな影響を及ぼす。他の条件が同一の場合、疎水性物質が少ないほどおわんの厚みは厚くなり、多いと薄くなる。また、疎水性物質の量が多いとおわんが楕円球に近くなる。疎水性物質の量が約15~約25重量%の場合には粒子は球形に近いおわん状となり、約25重量%を越えると次第に楕円形のおわんとなる。さらに35重量%以上になると、おわんの開口部が閉じたような形状となる。
【0017】本発明のおわん状微粒子の製造には、一種のイン・サイチュ重合法を用いる。すなわち重合性単量体を架橋剤、疎水性液体および重合開始剤の存在下、水中で撹拌しながら懸濁重合させ、疎水性液体を重合体の重合膜中に内包する微粒子を調製する。」
「【0021】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】以下の組成で油相と水相を調製した。
[図:0001436159000002.jpg]
【0022】
[図:0001436159000003.jpg]
【0023】上記の油相と水相をT.K.ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて3分間高速撹拌を行って油相を水相中に分散した。この後、窒素置換した1.5リットルセパラブルフラスコに仕込み、200rpmの撹拌下、65℃で5時間重合した。生成物を濾過し、水分を28%含有するケーキ状物質を得た。このケーキを80℃で5時間乾燥し、平均粒径5~15μmの白色微粒子を得た。粒子の形状は球形のおわん状であった。この粒子のSEM写真を図1に示す。この微粒子の吸水量は100gあたり105mlと球形のものと比べて高かった。
【0024】
【実施例2】以下の組成で油相を調製した。
[図:0001436159000004.jpg]
【0025】上記の油相と実施例1の水相を用いて実施例1と同様にして微粒子を調製した。得られた微粒子は平均粒径5~15μm、白色で楕円形のおわん状であった。この粒子のSEM写真を図2に示す。この微粒子の吸水量は粉末100gあたり120mlと非常に高いものであった。
【0026】
【比較例1】以下の組成で疎水性液体量の少ない油相を調製した。
[図:0001436159000005.jpg]
【0027】上記の油相と実施例1の水相を用いて実施例1と同様にして微粒子を調製した。得られた微粒子は平均粒径10μmの球形粒子であった。」
3 甲3
「【請求項1】 相転移自在な化合物を主成分とする芯物質の周囲に、ラジカル付加重合によって得られる熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁を少なくとも1層以上形成してなる蓄熱用マイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルの平均粒子径が10~3000μmであることを特徴とする蓄熱用マイクロカプセル。
【請求項2】 カプセル壁に用いられる熱可塑性樹脂が、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン誘導体及びポリ酢酸ビニル誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いてなることを特徴とする請求項1記載の蓄熱マイクロカプセル。」
「【0007】上記芯物質としては、特に住宅用の保温材として使用する場合、室温付近の0℃以上50℃未満の融点を持つ物質が好ましい。
【0008】また、上記芯物質としては、上記相転移自在な化合物を単独もしくは混合することによって、目的に応じた融点を自由に設計できることから、上記相転移自在な化合物として脂肪族炭化水素を使用することが好ましく、例えば、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、ドコサン等が挙げられる。」
「【0010】本発明の蓄熱用マイクロカプセルにおいては、カプセル壁として、ラジカル付加重合によって得られる熱可塑性樹脂を主成分として用いる。この熱可塑性樹脂としては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン誘導体及びポリ酢酸ビニル誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、これらは単独重合体又は共重合体として使用される。この熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁の役割は、上記芯物質の表面を三次元的に覆い、この芯物質の流出を防止することである。
【0011】上記ポリ(メタ)アクリレートを構成する成分としては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の極性基含有(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】上記ポリスチレン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン等のモノマーから重合して得られるポリスチレン誘導体が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】上記ポリ酢酸ビニル誘導体としては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーから重合して得られるポリ酢酸ビニル誘導体が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】上記熱可塑性樹脂を構成する成分としては、カプセル壁の機械的強度を改善する目的で、必要に応じて、多官能性モノマーが添加されてもよい。この多官能性モノマーとしては、特に種類は限定されないが、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等のジもしくはトリアリル化合物、ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
「【0023】(実施例1~4)表1に示した配合組成に従い、下記の操作手順で各蓄熱用マイクロカプセルを得た。まず、50℃にて融解させた所定量の脂肪族炭化水素、ラジカル重合性モノマー、多官能性モノマー及び重合開始剤を混合・撹拌し、次にイオン交換水(全使用量の60%)及び高分子分散剤として部分けん化ポリ酢酸ビニルとヒドロキシプロピルメチルセルロースをそれぞれ3%水溶液として等量ずつ添加、撹拌して混合モノマーを調製した。一方、重合器に残りのイオン交換水を入れ、攪拌を開始し、重合器内を減圧して容器内の脱酸素をおこない、窒素により圧戻しをして置換した後、上記混合モノマーを一括で添加した。重合槽を80℃まで昇温して重合を開始して、30分間で重合を終了し、その後1時間の熟成期間を置いた後、重合槽を室温まで冷却した。得られた蓄熱用マイクロカプセルを含むスラリーは、固形分濃度約50重量%、平均粒子径300μmであった。
【0024】ここで用いられた各種原材料は、以下に示す内容であった。
・脂肪族炭化水素:SCP-0028(日本精蝋社製パラフィンワックス、融点28.1℃、融解熱223J/g)
・脂肪族炭化水素:SCP-0018(日本精蝋社製パラフィンワックス、融点18.7℃、融解熱231J/g)
・ラジカル重合性モノマー:メチルメタクリレート(MMA)、スチレン、酢酸ビニル
・多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP)
・重合開始剤:2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)
・部分けん化ポリ酢酸ビニル:クラレ社製、クラレポバールL-8
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース:信越化学社製、メトローズ60SH」
「【0029】
【表1】
[図:0001436159000006.jpg]
」
4 甲4
「【請求項1】
エラストマーと、
蓄熱物質と、
を含有してなる芯物質が被膜によって被覆された、蓄熱マイクロカプセル。
【請求項2】
前記蓄熱物質が、パラフィン化合物、脂肪酸、脂肪酸のエステル化合物、脂肪族エーテル類、脂肪族ケトン類、脂肪族アルコールからなる群より選ばれた少なくとも一種である、請求項1に記載の蓄熱マイクロカプセル。
・・・
【請求項6】
前記被膜が、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂からなる群より選ばれた少なくとも一種から選ばれる化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄熱マイクロカプセル。」
「【0015】
[パラフィン化合物]
本発明の蓄熱マイクロカプセルに含有されるパラフィン化合物としては、例えば、炭素数8~100のパラフィン化合物が挙げられる。なお、パラフィン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。炭素数の異なるパラフィン化合物を組み合わせて用いることにより、蓄熱マイクロカプセルの融点あるいは凝固点を所望の値に設定する
ことができる。
【0016】
パラフィン化合物としては、炭素数10~30のメチレン鎖を有する化合物がより好ましい。具体的には、n-ドデカン、n-テトラデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、n-ノナデカン、n-イコサン等の直鎖状のパラフィンや、分岐状のパラフィンが挙げられる。
・・・
【0021】
[脂肪酸]
脂肪酸としては、例えば炭素数が8~30の脂肪酸を用いることができ、直鎖飽和脂肪酸、直鎖不飽和脂肪酸、分岐飽和脂肪酸、及び分岐不飽和脂肪酸とに大別される。なかでも、本発明においては、直鎖飽和脂肪酸が好ましく用いられる。
【0022】
直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、オクタン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(カプリン酸)(C10)、ドデカン酸(ラウリン酸)(C12)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)(C14)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)(C16)、オクタデカン酸(ステアリン酸)(C18)、エイコサン酸(C20)、ドコサン酸(C22)、テトラコサン酸(C24)、ヘキサコサン酸(C26)、オクタコサン酸(C28)、及びトリアコンタン酸(C30)等が挙げられ、これらの中でも、入手性の観点から、炭素数が10~18の直鎖飽和脂肪酸が好ましく用いられる。
・・・
【0024】
[脂肪酸のエステル化合物]
脂肪酸のエステル化合物としては、例えば、炭素数8~30の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ステアリン酸ビニル、セバシン酸ジメチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸プロピルが挙げられる。」
「【0096】
<用途>
本発明の蓄熱マイクロカプセルは、他の物質に含有させることで各種用途向けの蓄熱材として用いることができる。本発明における蓄熱材としては特に限定されないが、本発明の蓄熱マイクロカプセルを他成分とともに用いたものであり、例えば、蓄熱マイクロカプセルを、コンクリート、モルタル、各種ゴム、合成樹脂、塗料、繊維等に混入したもの、蓄熱マイクロカプセル単独あるいは水等の伝熱媒体とともに包装容器、金属容器等に充填して用いたものを挙げることができる。
このような蓄熱材は、住居、公共施設、車両等の空調設備、自動車のキャニスター、電子部品、冷蔵庫、魔法瓶等の家電、衣服の繊維、臓器輸送の保温容器、カーブミラー、建築材等、種々の分野に用いることができる。」
「【0110】
〔合成例1〕
水添共役ジエン(共)重合体(H-1)の調製
窒素置換された内容積50Lの反応容器に、シクロヘキサン24000g、テトラヒドロフラン1.3g、1,3-ブタジエン570g、及びn-ブチルリチウム2.4gを加え、重合開始温度70℃にて重合した。反応完結後、温度を35℃としてテトラヒドロフラン210gを添加し、次いで1,3-ブタジエン3230gを逐次添加しながら断熱重合した。その後、系内にメチルジクロロシラン1.5gを添加して30分間反応させることによりブロック(共)重合体を調製した。
・・・
【0117】
<芯物質の製造>
〔製造例1〕
セパラブルフラスコに、n-テトラデカン(P-1)90質量部を添加し、オイルバスにて50℃に加温して溶融させる。ついで、水添共役ジエン共重合体(H-1)10質量部を添加し、オイルバスにて85℃に加温し、3時間攪拌してn-テトラデカンに溶解させ、芯物質(C-1)を得た。なお、使用した蓄熱物質、エラストマーの種類について以下に記載する。
〔蓄熱物質〕
P-1…n-テトラデカン
P-2…n-ペンタデカン
P-3…n-ヘキサデカン
P-4…n-ヘプタデカン
P-5…n-オクタデカン
P-6…n-エイコサン
P-7…パラフィンワックス:HNP-9 (日本精蝋(株)製)
P-8…ステアリルアルコール
P-9…ミリスチン酸ミリスチル
〔エラストマー〕
H-1…合成例1で作成した重合体
H-2…合成例2で作成した重合体
H-3…SEBS:クレイトンG1651(クレイトンポリマージャパン(株)製)
H-4…EPDM:JSR EP103AF(JSR(株)製)
【0118】
〔製造例2~16〕
以下、エラストマーと蓄熱物質を下表1に示すとおりとした以外は、製造例1と同様にして、芯物質C-2~C-16を得た。得られた芯物質を下表1に示す。
【0119】
【表1】
[図:0001436159000007.jpg]
【0120】
<蓄熱マイクロカプセル>
〔実施例1〕
窒素置換したオートクレーブ1にて、メラミン粉末16部に37%ホルムアルデヒド水溶液20.6部と水40部を加え、pHを8に調整した後、約70℃まで加熱してメラミン-ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を得た。窒素置換したオートクレーブ2にて、85℃に加熱した、pHを4.5に調整した10%スチレン無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100部と、85℃に加熱した芯物質(C-1)70部とを激しく攪拌しながら添加し平均粒子径が3.0μmになるまで乳化を行なった。この乳化液に上記メラミン-ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液全量を添加し、85℃で2時間攪拌を施した後、pHを9に調製して蓄熱マイクロカプセル分散液を得た。得られた分散液を乾燥して、蓄熱マイクロカプセルを得た。
【0121】
〔実施例2~18〕
芯物質を下表2に示すものに変えた以外は、実施例1と同様にして蓄熱マイクロカプセルを得た。
【0122】
〔実施例19〕
窒素置換したオートクレーブ1にて、尿素20部に対し、37%ホルムアルデヒド水溶液40.5部を加え、28%アンモニア水で反応系のpHを7.5~8.5に調整した後、約70℃まで過熱して尿素-ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を得た。窒素置換したオートクレーブ2にて、85℃に加熱したpHを4.5に調整した10%スチレン無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100部中に、85℃に加熱した芯物質(C-3)70部を激しく攪拌しながら添加し平均粒子径が3.0μmになるまで乳化を行なった。この乳化液に上記尿素-ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液全量を添加し85℃で2時間攪拌を施した後、pHを9に調製して蓄熱マイクロカプセル分散液を得た。得られた分散液を乾燥して、蓄熱マイクロカプセルを得た。
【0123】
〔実施例20~22〕
窒素置換したオートクレーブ1にて、85℃にて融解させた所定量の芯物質と、被膜形成用モノマーとを混合、撹拌し、ついで90℃に加温した使用量の60質量%のイオン交換水、分散剤として所定量のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム分散剤を添加、撹拌して乳化モノマー液を調製した。窒素置換したオートクレーブ2に、残りのイオン交換水全量を入れ、攪拌を開始した。オートクレーブ2内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素により圧力を大気圧まで戻して、内部を窒素雰囲気とした後、上記乳化モノマー液を一括に添加した。オートクレーブ2を85℃まで昇温した後、開始剤として所定量のベンゾイルパーオキサイドを添加して、重合を開始した。1時間で重合を終了し、その後2時間の熟成を行った後、オートクレーブ2を室温まで冷却し、蓄熱マイクロカプセル分散液を得た。得られた分散液を乾燥して、蓄熱マイクロカプセルを得た。
【0124】
実施例1~22で得られた蓄熱マイクロカプセルの、蓄熱物質比率、平均粒子径、蓄熱物質減量を測定した結果を下表2~3に示す。
【0125】
【表2】
[図:0001436159000008.jpg]
【0126】
【表3】
[図:0001436159000009.jpg]
」
5 甲5
「[請求項1]
共重合可能な官能基を有する単量体を複数含む単量体混合物を、少なくとも、非重合性のシリコーンが存在している状態で懸濁重合してなる、該シリコーンが固定化して含有されてなる樹脂粒子であることを特徴とする樹脂ビーズ。
[請求項2]
前記非重合性のシリコーンが、シリコーンアクリル共重合体、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテルアルキル変性シリコーン、トリメチルシロキケイ酸又はシリコーンエラストマーのいずれかである請求項1に記載の樹脂ビーズ。
[請求項3]
前記共重合可能な官能基を有する単量体が、(メタ)アクリレート系である請求項1又は2に記載の樹脂ビーズ。
[請求項4]
前記単量体混合物中に、共重合可能な官能基を複数有する単量体を含み、且つ、その含有量が20質量%以上である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の樹脂ビーズ。
・・・
[請求項9]
樹脂ビーズを含有してなる、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、分散体、印刷インキ、インクジェットインキ及び樹脂組成物からなる群から選ばれるいずれかの製品であって、前記樹脂ビーズが、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂ビーズであることを特徴とする撥水性及び撥油性を有する製品。」
「[0014]
上記本発明によれば、樹脂ビーズの内部に非重合性のシリコーンが固定化されていることから、該樹脂ビーズを添加した製品は、十分な撥水性及び撥油性が付与され、より好適な態様によれば、長時間に亘って持続的に十分な撥水性及び撥油性が付与された優れた特性のものとなる。本発明の好適な態様の樹脂ビーズを、例えば、化粧料などに用いた場合には、均一な撥水撥油効果を持続的に付与することが実現でき、優れた化粧もちを可能にできるため、特に効果的である。」
「[0018]
本発明の樹脂ビーズは、少なくとも上記したような非重合性のシリコーンが存在している状態で、共重合可能な官能基を有する単量体を複数含む単量体混合物を懸濁重合してなる樹脂粒子(共重合体)であることを特徴とする。本発明の樹脂ビーズを構成する樹脂成分は、特に限定されず、適応する公知の樹脂ならばいずれのものも使用できる。例えば、その使用目的を勘案して、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、分散体、印刷インキ、インクジェットインキ、樹脂組成物に適したものを適宜に用いればよい。具体的には、例えば、(メタ)アクリレート系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂や、紫外線硬化樹脂、天然物由来高分子、熱変性シリコーン高分子、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
[0019]
したがって、本発明の樹脂ビーズの樹脂成分は、上記に挙げた樹脂を形成するための、共重合可能な官能基を有する単量体を複数選択し、これらを組み合わせて重合させたものであればいずれでもよい。本発明で使用する共重合可能な官能基を有する単量体(モノマ
ー)のより好適なものとしては、共重合可能な官能基を複数有する、多官能性モノマーや架橋作用性モノマーが挙げられる。これらのモノマーの詳細については後述する。また、本発明者らの検討によれば、その用途にもよるが、共重合可能な官能基を有する単量体の中でも、透明性等の化粧料適性に優れる(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂を形成する単量体がより好ましい。具体的には、公知のアクリル系またはメタクリル系のモノマーが、中でも、メタクリル系のモノマーがより好適に使用できる。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
[0020]
本発明者の検討によれば、本発明の樹脂ビーズを構成する樹脂成分としては、共重合可能な官能基を複数有する単量体を、使用される全単量体中に、20質量%以上、更には25質量%以上を含むように構成することが好ましい。勿論、全量(100質量%)としてもよい。すなわち、このように構成することで、懸濁重合によって形成した樹脂ビーズは、例えば、化粧料に使用した場合、非重合性のシリコーンを固定化した状態で含有し、その移動を妨げる適性がより向上したものとなるので、より均一で良好な撥水撥油効果が得られ、且つ、該効果をより安定に、長時間に亘って持続的に維持できるものとなる。
[0021]
本発明で好適に使用される共重合可能な官能基を複数有する単量体としては、共重合可能な、下記に挙げるような、多官能性モノマーや架橋作用性モノマーが挙げられる。共重合可能な多官能性モノマーまたは架橋作用性モノマーは、共重合の能力がある二重結合を含む一般的な共重合性モノマーが用いられる。本発明に好適な、このような架橋に適したモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレートなどの2官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
[0022]
また、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレート、
[0023]
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能(メタ)アクリレート、
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能(メタ)アクリレート、及びこれらの誘導体等の(メタ)アクリレート類、
キシリレンビスオキセタン、3-エチル-3[[(3-エチルオキセタン-3イル)メトキシ]メチル]オキセタン等のオキセタン類、この他、ウレタンジ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート変性類などが例示できる。」
「[実施例]
[0033]
以下、本発明を、実施例及び比較例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは質量基準である。
・・・
[0035]
<実施例1>(重合性モノマー液中に非重合性のシリコーンアクリル共重合体を含有させて製造した例)
まず、予め調製した、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NK1G)200部にV-65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王(株)製、商品名:LMA)200部と、非重合性のシリコーンアクリル共重合体(信越化学工業(株)製、商品名:KP-578、有効成分100%)20部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。上記で使用したKP-578は、アクリルポリマーと、ジメチルポリシロキサンからなるグラフト重合体である。
[0036]
次に、別の容器に、イオン交換水1600部に、分散安定化剤としてPVAを80部溶解した水相中に、上記で調製した重合性モノマー液を加えて混合し、ディゾルバーにて2500rpmで5分間撹拌した後、更に、ホモジナイザーを用いて8000rpmで5分間撹拌して、均一な懸濁液を得た。
[0037]
次に、撹拌機、窒素ガス導入管を備え付けた重合装置の反応缶に、上記で得た懸濁液を仕込み、70℃、6時間続けて重合反応を行った。冷却後、この懸濁液から生成した樹脂微粒子を濾過洗浄した。このようにして得られた樹脂ビーズを、イオン交換水に再解膠し
た後、懸濁液から微粒子を濾過洗浄した。更に、乾燥、解砕処理を行って、非重合性のシリコーンを固定化して含有してなる樹脂ビーズを得た。
・・・
[0039]
<実施例3>(重合性モノマー液中に非重合性のトリメチルシロキケイ酸を含有させて製造した例)
予め調製した、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NK1G)120部にV-65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王(株)製、商品名:LMA)280部と、非重合性のトリメチルシロキケイ酸(信越化学工業(株)製、商品名:X-21-5250、有効成分50%)40部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、非重合性のシリコーンを固定化して含有してなる樹脂ビーズを得た。なお、上記で使用したX-21-5250は、トリメチルシロキケイ酸50%と、環状シリコーンオイルであるシクロペンタシロキサン50%の混合物である。
・・・
[0041]
<実施例5>(重合性モノマー液中に非重合性のポリエーテル共変性シリコーンを含有させて製造した例)
予め調製した、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NK1G)200部にV-65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王(株)製、商品名:LMA)200部と、非重合性のポリエーテル共変性シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名:KF-6015、有効成分100%)28部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、非重合性のシリコーンを固定化して含有してなる樹脂ビーズを得た。
・・・
[0050]
(化粧料への使用)
表2に示す各成分と、実施例及び比較例で得た各樹脂ビーズを用い、表2に記載した配合量で配合することにより、実施例7~12及び比較例3、4の化粧料を製造し、その使用性について評価した。具体的に、化粧料は、以下のようにして製造した。表2に記載のシリコーン処理された各粉体(マイカ、タルク、微粒子酸化チタン、硫酸バリウム)及び実施例及び比較例の各樹脂ビーズを、表2に記載の量で配合し、均一になるまで混合して粉体混合物とした。そして、粉体混合物と、予めワセリン、スクワラン、トリオクタン酸グリセリルを混合したものを加えて、均一なるまで混合した。そして、これを容器に充填し、必要に応じてプレス成型して化粧料を得た。これを用いて、表3に示す項目の使用性について、表3に示す評価基準で評価し、結果を表3に示した。」
6 甲6
「【請求項1】
導電性基体上に、少なくとも感光層を有し、最外層にマイクロカプセルを含有する電子写真用感光体において、最外層の純水との接触角が85度以上であることを特徴とする電子写真用感光体。
・・・
【請求項5】
前記マイクロカプセルが有機高分子材料からなる請求項1記載の電子写真用感光体。
【請求項6】
前記有機高分子材料がメラミン樹脂またはポリスチレン樹脂である請求項5記載の電子写真用感光体。
【請求項7】
前記マイクロカプセルがシリコーンオイルを含有する請求項1~6のうちいずれか一項記載の電子写真用感光体。」
「【0036】
本発明において、電荷輸送層4が最外層となる場合には、繰返し使用後の潤滑性を維持するために、電荷輸送層4に、本発明に係る潤滑性オイルを内包したマイクロカプセルを含有させることが必要である。この場合のマイクロカプセルの含有量としては、電荷輸送層の固形分の0.1~50重量%程度とすることができ、好ましくは1~20重量%程度である。含有量が少なすぎると十分な潤滑性向上効果が得られず、一方、多すぎると電荷輸送層本来の性能を損なうおそれがある。」
「【0051】
次に、本発明の電子写真用感光体の実施例について説明する。尚、以下において「部」とは、「重量部」を表すものとする。
(マイクロカプセルの調製)
(調製例1)
和信化学工業(株)製の和信マイクロカプセル(中空状の多孔質シリカ粒子、粒径φ2~5μm)に、和信化学工業(株)において各種潤滑性オイルを含浸させたものを用意した。潤滑性オイルとしてTSF451(ジメチルシリコーンオイル、GE東芝シリコーン(株)製)を用いたものをマイクロカプセルAとし、J25 FLUID(フルオロエーテル系オイル、NOK(株)製)を用いたものをマイクロカプセルBとした。
(調製例2)
(株)日本マクセルプロダクツ社において製造された、各種潤滑性オイルを内包したマイクロカプセルを用意した。このマイクロカプセルの材質はメラミン樹脂であり、粒径は3~5μmであった。潤滑性オイルとしてTSF451(ジメチルシリコーンオイル、GE東芝シリコーン(株)製)を用いたものをマイクロカプセルCとし、J25 FLUID(フルオロエーテル系オイル、NOK(株)製)を用いたものをマイクロカプセルDとした。
(調製例3)
JSR(株)製のSX866(A)(中空状の粒状架橋ポリスチレン、粒径φ0.3μm)に、各種潤滑性オイルを含浸させたものを用意した。潤滑性オイルとしてTSF451(ジメチルシリコーンオイル、GE東芝シリコーン(株)製)を用いたものをマイクロカプセルEとし、J25 FLUID(フルオロエーテル系オイル、NOK(株)製)を用いたものをマイクロカプセルFとした。
(実施例1)
以下の手順に従い、電気特性評価用として、ドラム感光体(30mmφ)を作製した。
【0052】
まず、アルミニウム素管上に、以下の組成の下引き層分散液を浸漬塗工し、100℃で30分乾燥して、溶剤を除去して膜厚3μmの下引き層を形成した。
(下引き層分散液組成)
樹脂バインダ:アルコール可溶性ナイロン(CM8000、東レ(株))
5部
添加物:アミノシラン処理された酸化チタン微粒子 5部
溶剤:メタノール/塩化メチレン混合溶剤(6/4(v/v)) 90部
次に、以下の組成の電荷発生層分散液を浸漬塗工し、100℃で30分乾燥して、溶剤を除去して膜厚0.7μmの電荷発生層を形成した。
(電荷発生層分散液組成)
電荷発生物質:α型チタニルフタロシアニン 11部
樹脂バインダ:ポリビニルブチラール樹脂 1部
溶剤:塩化メチレン 98部
次に、以下の組成の電荷輸送層溶液を浸漬塗工し、100℃で30分乾燥して、溶剤を除去して膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
(電荷輸送層溶液組成)
電荷輸送物質:ヒドラゾン化合物(CTC191、高砂香料(株)製)9部
電荷輸送物質:ブタジエン化合物(T405、高砂香料(株)製) 1部
樹脂バインダ:ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(商品名 パンライトTS2050、帝人化成(株)) 10部
溶剤:塩化メチレン 90部
次に、以下の組成の表面保護層溶液を浸漬塗工し、80℃で30分、さらに、110℃で1時間乾燥して、溶剤を除去して膜厚3μmの表面保護層を形成した。
(表面保護層分散液組成)
樹脂バインダ:エポキシ樹脂/アルコキシシラン系ハイブリッド材料(商品名 コンポセランE102、荒川化学(株)) 75部
硬化剤:酸無水物(商品名 リカシッドMH-700、新日本理化(株)製) 9部
促進剤:オクチル酸スズ 0.8部
促進剤:DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン) 0.4部
潤滑性オイルを内包するマイクロカプセル:マイクロカプセルA(調製例1) 20部
導電性調整剤:酸化スズ(NanoTek Powder SnO2、シーアイ化成(株)製) 20部
溶剤:メタノール 100部
溶剤:メチルエチルケトン 50部
以上のようにして電子写真用感光体を作製した。表面保護層の表面と純水との接触角は85度であった。
(実施例2)
表面保護層溶液を以下の組成にした以外は実施例1と同様にして、電子写真用感光体を作製した。表面保護層の表面と純水との接触角は95度であった。
(表面保護層分散液組成)
樹脂バインダ:エポキシ樹脂/アルコキシシラン系ハイブリッド材料(商品名 コンポセランE102:荒川化学(株)) 75部
硬化剤:酸無水物(商品名 リカシッドMH-700) 9部
促進剤:オクチル酸スズ 0.8部
促進剤:DBU 0.4部
潤滑性オイルを内包するマイクロカプセル:マイクロカプセルC(調製例2) 20部
導電性調整剤:酸化スズ(NanoTek Powder SnO2、シーアイ化成(株)製) 20部
溶剤:メタノール 100部
溶剤:メチルエチルケトン 50部
(実施例3)
表面保護層溶液を以下の組成にした以外は実施例1と同様にして、電子写真用感光体を作製した。表面保護層の表面と純水との接触角は105度であった。
(表面保護層分散液組成)
樹脂バインダ:エポキシ樹脂/アルコキシシラン系ハイブリッド材料(商品名 コンポセランE102:荒川化学(株)) 75部
硬化剤:酸無水物(商品名 リカシッドMH-700) 9部
促進剤:オクチル酸スズ 0.8部
促進剤:DBU 0.4部
潤滑性オイルを内包したマイクロカプセル:マイクロカプセルE(調製例3) 20部
導電性調整剤:酸化スズ(NanoTek Powder SnO2、シーアイ化成(株)製) 30部
溶剤:メタノール 100部
溶剤:メチルエチルケトン 50部
(実施例4)
表面保護層溶液を以下の組成にした以外は実施例1と同様にして、電子写真用感光体を作製した。表面保護層の表面と純水との接触角は100度であった。
(表面保護層分散液組成)
樹脂バインダ:エポキシ樹脂/アルコキシシラン系ハイブリッド材料(商品名 コンポセランE102:荒川化学(株)) 75部
硬化剤:酸無水物(商品名 リカシッドMH-700) 9部
促進剤:オクチル酸スズ 0.8部
促進剤:DBU 0.4部
潤滑性オイルを内包したマイクロカプセル:マイクロカプセルB(調製例1) 20部
導電性調整剤:酸化スズ(NanoTek Powder SnO2、シーアイ化成(株)) 20部
溶剤:メタノール 100部
溶剤:メチルエチルケトン 50部
(実施例5)
表面保護層溶液を以下の組成にした以外は実施例1と同様にして、電子写真用感光体を作製した。表面保護層の表面と純水との接触角は110度であった。
(表面保護層分散液組成)
樹脂バインダ:エポキシ樹脂/アルコキシシラン系ハイブリッド材料(商品名 コンポセランE102:荒川化学(株)) 75部
硬化剤:酸無水物(商品名 リカシッドMH-700) 9部
促進剤:オクチル酸スズ 0.8部
促進剤:DBU 0.4部
潤滑性オイルを内包するマイクロカプセル:マイクロカプセルD(調製例2) 20部
導電性調整剤:酸化スズ(NanoTek Powder SnO2、シーアイ化成(株)製) 20部
溶剤:メタノール 100部
溶剤:メチルエチルケトン 50部
(実施例6)
表面保護層溶液を以下の組成にした以外は実施例1と同様にして、電子写真用感光体を作製した。表面保護層の表面と純水との接触角は108度であった。
(表面保護層分散液組成)
樹脂バインダ:エポキシ樹脂/アルコキシシラン系ハイブリッド材料(商品名 コンポセランE102:荒川化学(株)) 75部
硬化剤:酸無水物(商品名 リカシッドMH-700) 9部
促進剤:オクチル酸スズ 0.8部
促進剤:DBU 0.4部
潤滑性オイルを内包するマイクロカプセル:マイクロカプセルF(調製例3) 20部
導電性調整剤:酸化スズ(NanoTek Powder SnO2、シーアイ化成(株)製) 20部
溶剤:メタノール 100部
溶剤:メチルエチルケトン 50部
(実施例7)
表面保護層溶液を以下の組成にした以外は実施例1と同様にして、電子写真用感光体を作製した。表面保護層の表面と純水との接触角は105度であった。
(表面保護層分散液組成)
樹脂バインダ:エポキシ樹脂/アルコキシシラン系ハイブリッド材料(商品名 コンポセランE102:荒川化学(株)) 75部
硬化剤:酸無水物(商品名 リカシッドMH-700) 9部
促進剤:オクチル酸スズ 0.8部
促進剤:DBU 0.4部
潤滑性オイルを内包するマイクロカプセル:マイクロカプセルA(調製例1) 15部
補強フィラー:架橋ポリスチレン(SX8742、φ0.3μm、JSR(株)) 15部
導電性調整剤:酸化スズ(NanoTek Powder SnO2、シーアイ化成(株)製) 30部
溶剤:メタノール 100部
溶剤:メチルエチルケトン 50部
(比較例1)
表面保護層溶液を以下の組成にした以外は実施例1と同様にして、電子写真用感光体を作製した。表面保護層の表面と純水との接触角は65度であった。
(表面保護層分散液組成)
樹脂バインダ:エポキシ樹脂/アルコキシシラン系ハイブリッド材料(商品名 コンポセランE102:荒川化学(株)) 75部
硬化剤:酸無水物(商品名 リカシッドMH-700) 9部
促進剤:オクチル酸スズ 0.8部
促進剤:DBU 0.4部
導電性調整剤:酸化スズ(NanoTek Powder SnO2、シーアイ化成(株)製) 30部
溶剤:メタノール 100部
溶剤:メチルエチルケトン 50部
(比較例2)
表面保護層溶液を以下の組成にした以外は実施例1と同様にして、電子写真用感光体を作製した。表面保護層の表面と純水との接触角は70度であった。
(表面保護層分散液組成)
樹脂バインダ:エポキシ樹脂/アルコキシシラン系ハイブリッド材料(商品名 コンポセランE102:荒川化学(株)) 75部
硬化剤:酸無水物(商品名 リカシッドMH-700) 9部
促進剤:オクチル酸スズ 0.8部
促進剤:DBU 0.4部
潤滑性付与剤:ジメチルシリコーンオイル(TSF451、GE東芝シリコーン(株)) 7部
導電性調整剤:酸化スズ(NanoTek Powder SnO2、シーアイ化成(株)製) 30部
溶剤:メタノール 100部
溶剤:メチルエチルケトン 50部
(比較例3)
表面保護層を設けない以外は実施例1と同様にして、電子写真用感光体を作製した。」
7 甲7
「【請求項1】
鉱油をカプセル全重量に対して50質量%以上内包したカプセルが、成形後の合成樹脂全量に対して、2質量%以上50質量%未満配合されていることを特徴とするカプセル含有合成樹脂部材。
【請求項2】
合成樹脂部材を含む転動装置において、
前記合成樹脂部材は、請求項1に記載のカプセル含有合成樹脂部材であることを特徴とする転動装置。」
「【0016】
本発明によれば、鉱油を含有した合成樹脂部材において、寸法収縮が少なく、転動部材への潤滑油の供給を良好に安定して行い、しかも良好な機械的特性を発揮することができる。」
「【0020】
本実施の形態に使用されるカプセルの内包物である鉱油は、減圧蒸留、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等を適宜組み合わせて、粘度指数が100以上となるように精製した鉱油が好ましい。そして、粘度指数が120以上となるように精製した、いわゆる高精製度鉱油がより好ましい。
【0021】
鉱油のカプセル重量に対する含有量は、50質量%以上が好ましい。50質量%未満では、合成樹脂が成形されたときの含油効果が不十分である。
【0022】
鉱油の動粘度は特に限定されないが、40℃での動粘度が10~400mm2/sが好ましい。これは、転動装置の使用温度に応じて変えれば良い。
【0023】
本実施の形態に使用されるカプセルの膜材は、特に限定されるものではないが、合成樹脂成形時の温度に耐えられるものを選ぶ必要がある。」
「【0027】
カプセルの一次平均粒径は、特に限定されるものでないが、大きすぎると合成樹脂成形時にうまく分散されないため、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、最も好ましくは、1μm以下である。」
「【0036】
母材として、ナイロン66(PA66)を使用し、これに充填材としてアミノ系シランカップリング剤で処理したカット長3mm、フィラメント径13μmのガラスチョップドストランド〔日東紡績(株)製CS3PE-471〕30重量%を添加し、ヘンシェルミキサーで予備混合した後、押出機によりペレット化した。そして、そのペレットを280℃に加熱し、表1記載の割合でカプセル(一次平均粒径900μm、鉱油含有量50質量%)を混合させてから、図4に示される冠型保持器の形状に射出成形したものと、板状に射出成形したもの2種類ずつ作製した。」
8 甲8
「【請求項1】
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂、及び、(B)オイル含有微粒子
を含む被膜形成用組成物。
・・・
【請求項6】
前記(B)オイル含有微粒子が少なくとも1種のオイルを内包するカプセル壁からなるマイクロカプセルである、請求項1乃至5のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
【請求項7】
前記オイルがフッ化オイルである、請求項1乃至6のいずれかに記載の被膜形成用組成物。」
「【0035】
(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(a1)は、(メタ)アクリロイル基及び水酸基をそれぞれ1個ずつ有する化合物であってもよく、(メタ)アクリロイル基2個以上及び水酸基1個を有する化合物、(メタ)アクリロイル基1個及び水酸基2個以上を有する化合物、(メタ)アクリロイル基及び水酸基をそれぞれ2個以上有する化合物であってもよい。
【0036】
具体例として、上記順に、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとネオペンチルグリコールカーボネートの反応生成物等が挙げられる。これらは2以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とのモノエステル又は1個以上の水酸基を残したポリエステルである。
【0037】
更に、化合物(a1)は、エポキシ基を1個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸との開環反応生成物であってもよい。エポキシ基と(メタ)アクリル酸との反応によりエポキシ基が開環してエステル結合が生じるとともに水酸基が生じ、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物となる。また、エポキシ基を1個以上有する化合物のエポキシ基を開環させて水酸基含有化合物とし、それを(メタ)アクリル酸エステルに変換することもできる。
【0038】
エポキシ基を1個以上有する化合物としては、いわゆるエポキシ樹脂と呼ばれているポリエポキシドが好ましい。ポリエポキシドとしては、例えば、多価フェノール類-ポリグリシジルエーテル(例えば、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル)等のグリシジル基を2個以上有する化合物、脂環族エポキシ化合物が好ましい。更に、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートと水酸基・カルボキシル基を有する化合物との反応生成物を化合物(a1)として使用することもできる。エポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
化合物(a1)の上記以外の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2-ブテン-1,4-ジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(ないしペンタ)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物等が挙げられる。
【0040】
ポリイソシアネートとしては、通常の単量体状のポリイソシアネートはもちろん、ポリイソシアネートの多量体や変性体又はイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー等のプレポリマー状の化合物であってもよい。
【0041】
多量体としては3量体(イソシアヌレート変性体)、2量体、カルボジイミド変性体等があり、変性体としてはトリメチロールプロパン等の多価アルコールで変性して得られるウレタン変性体、ビュレット変性体、アロハネート変性体、ウレア変性体等がある。プレポリマー状のものの例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー等がある。これらポリイソシアネートは2種以上併用して使用できる。
【0042】
具体的な単量体状のポリイソシアネートとしては、例えば、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、メチレンビス(4-フェニルイソシアネート)[MDI]、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート[XDI]、水添XDI、水添MDI、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等([ ]内は略称)が挙げられる。
【0043】
ポリイソシアネートとしては特に無黄変性ポリイソシアネート(芳香核に直接結合したイソシアネート基を有しないポリイソシアネート)が好ましい。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートがある。上記のようにこれらポリイソシアネートの多量体や変性体等も好ましい。
【0044】
2個以上の水酸基を有する化合物(a2)としては、多価アルコール、多価アルコールに比較して高分子量のポリオール等がある。多価アルコールとしては、2~8個の水酸基を有する多価アルコールが好ましく、特に2~6個の水酸基を有する多価アルコールが好ましい。多価アルコールは脂肪族の多価アルコールはもちろん、脂環族多価アルコールや芳香核を有する多価アルコールであってもよい。
【0045】
芳香核を有する多価アルコールとしては、例えば、多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物、多価フェノール類-ポリグリシジルエーテル等の芳香核を有するポリエポキシドの開環物等がある。高分子量のポリオールとしてはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等がある。また、ポリオールとして水酸基含有ビニルポリマーをも使用できる。これら多価アルコール、ポリオールは2種以上併用することもできる。
【0046】
多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4ートリメチル-1,3-ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、3,9-ビス(ヒドロキシメチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテルの開環物、ビニルシクロヘキセンジオキシドの開環物等が挙げられる。
【0047】
前記ポリオールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA-アルキレンオキシド付加物、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール。ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンジオール等の脂肪族ポリオール;ポリε-カプロラクトンポリオール;アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、グルタル酸等の多塩基酸と上記多価アルコールとの反応で得られるポリエステルポリオール;1,6-ヘキサンジオール等のジオールと炭酸エステルやホスゲンの反応で得られるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0048】
水酸基含有ビニルポリマーとしては、例えば、アリルアルコール、ビニルアルコール、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体とオレフィン等の水酸基不含単量体との共重合体等が挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有する化合物(a3)としては、例えば、2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
好ましいアクリルウレタンとしては、例えば、ペンタエリスリトール又はポリペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸との水酸基を1以上残したポリエステル(以下、「水酸基含有ペンタエリスリトール系(メタ)アクリレート」という)を使用して得られるアクリルウレタン(以下、「ペンタエリスリトール系アクリルウレタン」という)が挙げられる。水酸基含有ペンタエリスリトール系(メタ)アクリレート及びポリイソシアネートの反応生成物;水酸基含有ペンタエリスリトール系(メタ)アクリレート及びそれに対して相対的に少量の他の2以上の水酸基を有する化合物(a2)等との混合物をポリイソシアネートと反応させて得られる反応生成物等が特に好ましい。
【0051】
ポリペンタエリスリトールは重合度の異なるポリペンタエリスリトールの混合物であってもよく、ペンタエリスリトールを含んでいてもよい。水酸基含有ペンタエリスリトール系(メタ)アクリレートも同様にこのようなポリペンタエリスリトールに由来する2種以上の化合物の混合物、1分子中の水酸基や(メタ)アクリロイルオキシ基の異なる2種以上の化合物の混合物、等の2種以上の化合物の混合物であってもよい。ペンタエリスリトール系アクリルウレタンもまた同様である。
【0052】
更に、好ましいアクリルウレタンとしては、例えば、ポリエステルポリオールを使用して得られるポリエステル系ポリウレタンも挙げられる。(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(a1)、ポリエステルポリオール、及び、ポリイソシアネートの反応生成物;(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(a1)、ポリエステルポリオール、及び、ポリエステルポリオールに対して相対的に少量の他の2以上の水酸基を有する化合物(a2)等との混合物をポリイソシアネートと反応させて得られる反応生成物等が特に好ましい。
【0053】
また、ポリカーボネートジオールを使用して得られるポリカーボネート系ポリウレタン
も好ましい。(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(a1)、ポリカーボネートジオ-ル、及び、ポリイソシアネートの反応生成物;(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(a1)、ポリカーボネートジオ-ル、及び、ポリカーボネートジオールに対して相対的に少量の他の2以上の水酸基を有する化合物(a2)等との混合物をポリイソシアネートと反応させて得られる反応生成物等が特に好ましい。
【0054】
ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、化合物(a2)と同様の2個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とのポリエステルが好ましい。2個以上の水酸基を有する化合物としては前記多価アルコールやポリオールが好ましい。更に、2個以上のエポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物である(メタ)アクリル酸エステル化合物も好ましい。
【0055】
2個以上のエポキシ基を有する化合物としてはエポキシ樹脂と呼ばれているポリエポキシドを使用することができる。例えば、グリシジルエーテル型ポリエポキシド、脂環型ポリエポキシド等のエポキシ樹脂として市販されているものを使用できる。
【0056】
ポリエポキシドとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF-ジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ノボラックポリグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等が挙げられる。
【0057】
ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、例えば、以下のような化合物が挙げられる。
【0058】
1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、炭素数14~15の長鎖脂肪族ジオールのジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールとトリメチロールプロパンとの縮合物からなるジオールのジ(メタ)アクリレート等の脂肪族多価アルコールの(メタ)アクリレート。
【0059】
ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェノールA、ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェノールS、ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェノールF、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジメタクリレート等の芳香核又はトリアジン環を有する多価アルコールや多価フェノールの(メタ)アクリレート。
【0060】
トリメチロールプロパン-エチレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン-プロピレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール-カプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート-カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール[200~1000]ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール[200~1000]ジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有化合物-アルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、水酸基含有化合物-カプロラクトン付加物の(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンポリオールの(メタ)アクリレート([ ]内はポリオキシアルキレンポリオールの分子量を表す)。
【0061】
ビス(アクリロイルオキシネオペンチルグリコール)アジペート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート等の(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸エステルやリン酸エステル。
【0062】
ビスフェノールA-ジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビニルシクロヘキセンジオキシド-(メタ)アクリル酸付加物、ジシクロペンタジエンジオキシド-(メタ)アクリル酸付加物、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレングリコールの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートとプロピレングリコールの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートとジエチレングリコールの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートと1,6-ヘキサンジオールの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートとグリセロールの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートとトリメチロールプロパンの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートとフタル酸の反応生成物等のポリエポキシドの(メタ)アクリル酸付加物(ただし、ポリエポキシドのエポキシ基1個あたり1分子の(メタ)アクリル酸が付加したもの)、及びグリシジル(メタ)アクリレートと多価アルコール若しくは多価カルボン酸との反応生成物(ただし、多価アルコール等の1分子あたりグリシジル(メタ)アクリレートが2分子以上反応したもの)。
【0063】
アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド-(メタ)アクリル酸付加物のアリルエーテル化物、ビニルシクロヘキセンジオキシド-(メタ)アクリル酸付加物のメチルエーテル化物、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の上記のような(メタ)アクリレート類でかつ未反応の水酸基を有する化合物のアルキルエーテル化物、アルケニルエーテル化物、カルボン酸エステル化物。
【0064】
特に好ましいウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物はイソシアヌレート系ポリオールのポリ(メタ)アクリレート(以下、「イソシアヌレート系(メタ)アクリレート」という)である。イソシアヌレート系ポリオールとはトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート等の2以上の水酸基を有するイソシアヌル酸エステルである。イソシアヌレート系ポリオールにおいてイソシアヌレート環の3個の窒素原子にそれぞれ結合した3個の有機基は同一であっても異なっていてもよい。3個の有機基の少なくとも2個はそれぞれ少なくとも1個の水酸基を有することが好ましく、3個の有機基がそれぞれ1個ずつ水酸基を有することがより好ましい。
【0065】
イソシアヌレート系ポリオールとしてはトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート以外に、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート-アルキレンオキシド付加物やトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート-ラクトン付加物が好ましい。これら付加物におけるアルキレンオキシドやラクトンの付加量はトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート1分子あたり1~12分子、特に1~6分子が好ましい。トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートにおけるヒドロキシアルキル基としては炭素数2~6、特に2~4のヒドロキシアルキル基が好ましい。具体的には、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基等があり、好ましくは2-ヒドロキシエチル基と2-ヒドロキシプロピル基である。なお、これらイソシアヌレート系ポリオールは2種以上併用できる。
【0066】
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブテンオキシド、2,3-ブテンオキシド等が好ましく、エチレンオキシドとプロピレンオキシドがより好ましい。ラクトンとしては、ε-カプロラクトンの他、ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-カプロラクトン等が好ましく、ε-カプロラクトンが特に好ましい。
【0067】
イソシアヌレート系(メタ)アクリレートにおける1分子あたりの(メタ)アクリロイルオキシ基の数は2~3が適当であり、これらの混合物であってもよい。好ましくは3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するイソシアヌレート系(メタ)アクリレートである。イソシアヌレート系(メタ)アクリレートとしては、前記した化合物を含め、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのε-カプロラクトン1~3分子付加物からなるトリオールのトリ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのエチレンオキシド1~3分子付加物からなるトリオールのトリ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0068】
多官能性化合物(a-1)として特に好ましい化合物は、前記ペンタエリスリトール系アクリルウレタンと上記イソシアヌレート系(メタ)アクリレートである。これらを併用することも好ましい。これらの全多官能性化合物(a-1)に占める割合は20重量(質量)%以上が好ましく、40重量(質量)%以上がより好ましい。
【0069】
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は、単官能性化合物(以下、「単官能性化合物(a-2)」ということがある)等の他の重合性化合物を更に含んでもよい。
【0070】
単官能性化合物(a-2)としては、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有する単官能性重合性化合物が好ましい。単官能性化合物(a-2)としては、例えば、一般式CH2=C(R1)COOCzH2z+1(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、zは1~13の整数であり、CzH2z+1は直鎖構造でも分岐構造でもよい)で表されるアルキル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタンジオール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、γ-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-スルホン酸ナトリウムエトキシ(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ビニルアセテート、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート等が挙げられる。」
「【0119】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、表中における各用語の意味は以下のとおりであり、また、表中の数字は重量(質量)部に基づく。
【0120】
光硬化型ウレタンアクリレートA:
被膜形成性水性ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂エマルジョン:ポリカーボネートジオール、ポリイソシアネートおよび水酸基と(メタ)アクリロイル基を含有する化合物の反応生成物(固形分30%、粘度20mPas)
【0121】
光硬化型ウレタンアクリレートB:
被膜形成性水性ポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョン:ポリエステルポリオール、ポリイソシアネートおよび水酸基と(メタ)アクリロイル基を含有する化合物の反応生成物(固形分32%、粘度50mPas)
【0122】
光硬化型エポキシアクリレート:
被膜形成性溶剤系エポキシアクリレート樹脂(固形分100%、粘度8,000mPas)
【0123】
エポキシ樹脂:
液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER828:粘度120,000~150,000mPas、エポキシ当量184~194)
【0124】
ラジカル型光重合開始剤A:
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤(BASFジャパン(株)社製IRGACURE907:固形分100%)
【0125】
ラジカル型光重合開始剤B:
α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤(BASFジャパン(株)社製DAROCUR1173:固形分100%)
【0126】
アミン系硬化剤:
三菱化学(株)製jERキュア ST14(アミン価415~455、粘度1,000~4,000mPas(50℃)、固形分100%)
【0127】
ポリテトラフルオロエチレン粉末:
レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が2~4μmであるポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末
【0128】
酸化アルミニウム粉末:
レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が1μmである酸化アルミニウム粉末
【0129】
二硫化モリブデン:
レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が3~6μmである二硫化モリブデン微粒子
【0130】
グラファイト:
レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が3~5μmの鱗片状グラファイト
【0131】
[フッ化オイル含有マイクロカプセルの調製]
pH4.5に調製したエチレン無水マレイン酸共重合体(モンサント・ケミカルズ社製商品:EMI-31)5%水溶液200gに動粘度250mm2/sのパーフルオロポリエーテルオイル200mlを加え、ホモミキサーによって乳化分散して、エマルジョンを得た。このエマルジョンに固形分を17重量%に調整したメチロール・メラミン樹脂水溶液(住友化学工業社製商品:スミレーズ・レジン613)100gを加え、系の温度を55℃に昇温して約1時間攪拌後、pHを5.5に調整し、さらに2時間攪拌を持続した。室温まで徐冷した。次いで10%塩酸を用いて、pHを3.5に下げてからメチロール・メラミン樹脂25%の水溶液160gを加え、温度を50℃に昇温して攪拌した。その後pHを3.7に調整し温度を60℃に昇温して攪拌スピードを調整しながらさらに2時間攪拌した。約200mlの水を加え系を室温まで冷却してマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセル分散液を脱水し室温で24時間乾燥してフッ化オイル含有マイクロカプセルを得た。得られたマクロカプセルのレーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径は約10μmであった。また得られたマクロカプセルの80重量%がパーフルオロポリエーテルオイルであった。
【0132】
[実施例1~8及び比較例1~3]
実施例1~8及び比較例1~2のそれぞれについて、表1~表3に示す樹脂(バインダー)及び溶媒を表1~表3に示す配合比で撹拌混合後、表1~表3に示す光重合開始剤を表1~表3に示す配合比で添加して溶解した。その後、表1~表3に示す配合比でフッ化オイル含有マイクロカプセル及び/又は表1~表3に示す固体潤滑材を添加し、撹拌混合して塗料組成物を得た。
【0133】
比較例3については、表3に示す樹脂及び溶媒を表3に示す配合比で撹拌混合後、表3に示す硬化剤を表3に示す配合比で添加して溶解した。その後、表3に示す配合比でフッ化オイル含有マイクロカプセルを添加し、撹拌混合して塗料組成物を得た。
【0134】
【表1】
[図:0001436159000010.jpg]
【0135】
【表2】
[図:0001436159000011.jpg]
」
9 甲9
「【0026】
次いで、化学層と混和性である潤滑剤は、化学層を覆うように施される。潤滑剤を、塗り付け(wiping)、噴霧などによって塗布することができる。安定な潤滑剤層を形成するために、潤滑剤は、化学層または基材に強い親和性を有するべきである。いくつかの実施形態において、潤滑剤は、オムニフォビックな潤滑剤、疎水性潤滑剤、および/または親水性潤滑剤の1種または複数であってもよく、例えば、潤滑剤には、ペルフルオロ油またはシリコーン油またはヒドロキシポリジメチルシロキサン(PDMS)または植物油が挙げられる。例えば、ペルフルオロ油(例えば、Krytox油)は、シランおよびとりわけペルフルオロシランで改質された表面上に安定な潤滑剤層を形成することができる。シリコーン油は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはグラフトPDMSなどのシロキサンから形成された化学層を有する表面上に安定な層を形成することができる。ヒドロキシPDMSは、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはグラフトPDMSなどのシロキサンから形成された化学層を有する表面上に安定な層を形成することもできる。鉱油は、様々な分子鎖長を有する、アルキルトリクロロシランまたはアルキルトリメトキシシランによって形成された化学層を有する表面上に安定な層を形成することができる。様々な鎖長を有する、アルキルトリクロロシランまたはアルキルトリメトキシシランと混和性である、他の潤滑剤には、アルカン油(例えば、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、またはそれらの混合物など)、植物系油、例えば、オリーブ油、パーム油、ダイズ油、キャノーラ油、ナタネ油、コーン油、ラッカセイ油、ココナッツ油、綿実油、パーム油、ベニバナ油、ゴマ油、ヒマワリ油、アーモンド油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカダミア油、モンゴンゴナッツ油、ペカン油、松の実油、クルミ油、グレープフルーツ種子油、レモン油、オレンジ油、アマランス油、リンゴ種子油、アルガン油、アボガド油、ババス油、ベン油、ボルネオタロウナッツ油(borneo tallow nut oil)、ケープ栗油、キャロブ油、カカオバター(coca butter)、オナモミ油、コフネヤシ油、ブドウ種子油、カポック種子油、ケナフ種子油、ラッレマンチア油、マルーラ油、メドウフォーム種子油、マスタード油、オクラ種子油、パパイヤ種子油、ペクイ油、ポピー種子油、プラカシー油、プルーンカーネル油、キノア油、ニガー種子油、サポーテ油、シアバター、茶実油、タイガーナッツ油、トマト種子油、および他の同様の植物系油などが挙げられる。植物系油は、単独で、または他の潤滑剤と共に、または植物系油のみの混合物として、もしくは他の潤滑剤との混合物として用いてもよい。温度範囲15℃~25℃では、潤滑剤の粘度約1cSt~約1000cStの範囲が好適であろう。温度範囲15℃~25℃では、潤滑剤密度約1g/cm3未満が好適であろう。」
第6 前記第4 3の令和7年10月21日付けで通知した取消理由通知(決定の予告)について
1 甲2を主引用例とする進歩性欠如について
(1)甲2に記載された発明
甲2には、【0009】、【0014】及び【0015】を参照すると、以下の発明が記載されているといえる。
ア 甲2発明1
甲2には実施例1のおわん状微粒子として「重合性単量体としてメチルメタクリレート:108重量部及びエチレングリコールジメタクリレート:12重量部、疎水性物質である流動パラフィン:30重量部、並びに、2,2-2’-アゾビスブチロニトリル:1重量部からなる油相を、
脱イオン水300重量部、コロイダルシリカ(固形分20%):15重量部及びアジピン酸-ジエタノールアミン縮合物(50%縮合物):1重量部からなり、硫酸でpH3.3に調製した水相に分散して、重合して得た、疎水性物質は重合時に形成される重合体の微粒子中に内包された、平均粒径5~15μmの球形のおわん微状粒子。」の発明が記載されているといえる。
イ 甲2発明2
甲2には実施例2のおわん状粒子として「重合性単量体としてメチルメタクリレート:90重量部及びエチレングリコールジメタクリレート:10重量部、疎水性物質である流動パラフィン:50重量部、並びに、2,2-2’-アゾビスブチロニトリル:0.6重量部からなる油相を、
脱イオン水300重量部、コロイダルシリカ(固形分20%):15重量部及びアジピン酸-ジエタノールアミン縮合物(50%縮合物):1重量部からなり、硫酸でpH3.3に調製した水相に分散して、重合して得た、疎水性物質は重合時に形成される重合体の微粒子中に内包された、平均粒径10μmの球形のおわん状微粒子。」の発明が記載されているといえる。
ウ 甲2発明3
甲2には比較例1の球状粒子として「重合性単量体としてメチルメタクリレート:90重量部、エチレングリコールジメタクリレート:10重量部、疎水性物質である流動パラフィン:5重量部、並びに、2,2-2’-アゾビスブチロニトリル:0.6重量部からなる油相を、
脱イオン水300重量部、コロイダルシリカ(固形分20%):15重量部及びアジピン酸-ジエタノールアミン縮合物(50%縮合物):1重量部からなり、硫酸でpH3.3に調製した水相に分散して、重合して得た、疎水性物質は重合時に形成される重合体の微粒子中に内包された、平均粒径10μmの球状微粒子。」の発明が記載されているといえる。
(2) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明1を対比する。
甲2発明1の「メチルメタクリレート」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体」である「単量体(A)」に相当する。
また、甲2発明1の「エチレングリコールジメタクリレート」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体」である「単量体(B)」に相当する。
したがって、甲2発明1の「重合性単量体としてメチルメタクリレート:108重量部及びエチレングリコールジメタクリレート:12重量部」の「重合性単量体としてメチルメタクリレート:108重量部」及び「エチレングリコールジメタクリレート:12重量部」の重量割合は、それぞれ、90重量%及び10重量%であるから、本件特許発明1の「前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり」を充足する。
そして、甲2発明1の「流動パラフィン」は、本件特許発明1の「潤滑剤」に相当する(本件特許明細書【0022】も参照。)。
さらに、甲2発明1の「重合して得た、疎水性物質は重合時に形成される重合体の微粒子中に内包された、平均粒径5~15μmの球形のおわん微状粒子」は、本件特許発明1の「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子」、「前記内包物が潤滑剤を含み」及び「前記粒子の平均粒子径が3~200μmである、粒子」に相当する。
本件特許発明1と甲2発明2を対比する。
甲2発明2の「メチルメタクリレート」は本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体」である「単量体(A)」に相当する。
また、甲2発明2の「エチレングリコールジメタクリレート」は本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体」である「単量体(B)」に相当する。
したがって、甲2発明2の「重合性単量体としてメチルメタクリレート:90重量部及びエチレングリコールジメタクリレート:10重量部」の「重合性単量体としてメチルメタクリレート:90重量部」及び「エチレングリコールジメタクリレート:10重量部」の重量割合は、それぞれ、90重量%及び10重量%であるから、本件特許発明1の「前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり」を充足する。
そして、甲2発明2の「流動パラフィン」は本件特許発明1の「潤滑剤」に相当する(本件特許明細書【0022】参照。)。
さらに、甲2発明2の「重合して得た、疎水性物質は重合時に形成される重合体の微粒子中に内包された、平均粒径10μmの球形のおわん微状粒子」は、本件特許発明1の「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子」、「前記内包物が潤滑剤を含み」及び「前記粒子の平均粒子径が3~200μmである、粒子」に相当する。
本件特許発明1と甲2発明3を対比する。
甲2発明3の「メチルメタクリレート」は本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体」である「単量体(A)」に相当する。
また、甲2発明3の「エチレングリコールジメタクリレート」は本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体」である「単量体(B)」に相当する。
したがって、甲2発明3の「重合性単量体としてメチルメタクリレート:90重量部及びエチレングリコールジメタクリレート:10重量部」の「重合性単量体としてメチルメタクリレート:90重量部」及び「エチレングリコールジメタクリレート:10重量部」の重量割合は、それぞれ、90重量%及び10重量%であるから、本件特許発明1の「前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり」を充足する。
そして、甲2発明3の「流動パラフィン」は本件特許発明1の「潤滑剤」に相当する(本件特許明細書【0022】参照。)。
さらに、甲2発明3の「重合して得た、疎水性物質は重合時に形成される重合体の微粒子中に内包された、平均粒径10μmの球状微粒子」は、本件特許発明1の「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子」、「前記内包物が潤滑剤を含み」及び「前記粒子の平均粒子径が3~200μmである、粒子」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明1~3は、「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子であって、
前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であり、
前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり、
前記内包物が潤滑剤を含み、
前記粒子の平均粒子径が3~200μmである、粒子。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
潤滑剤が、本件特許発明1はシリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれるのに対し、甲2発明1~3は流動パラフィンである点。
<相違点2-2>
粒子が、本件特許発明1は車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子であるのに対し、甲2発明1~3はそのような特定がない点。
イ 検討
前記<相違点2-1>及び<相違点2-2>はいずれも実質的な相違点であるところ、事案に鑑み、はじめに<相違点2-2>について検討する。
甲2には微粒子は香料、医薬、農薬、化粧品等の吸着剤、徐放性担体、すべり材等に用いられることが記載されており(【0003】参照。)、甲2の微粒子を車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることは記載も示唆もなく、香料、医薬、農薬、化粧品等の吸着剤、徐放性担体、すべり材等に用いられるものを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とする出願時の技術常識もなく、甲1及び甲3~甲11も、甲2発明1~3の香料、医薬、農薬、化粧品等の吸着剤、徐放性担体、すべり材等に用いられる粒子を、車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることを動機づけるものではない。
そして、本件特許発明1は、車両用シール材用または建材用シール剤用粒子とすることにより、摺動時の摩擦等の外力により内包する潤滑剤が放出され、さらに緻密性が向上した重合体により構成される外殻により、当該潤滑剤の放出量が調整され、摺動性が長期間持続するという(実施例14等)、本件訂正発明1の構成から当業者が予測しえない有利な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、<相違点2-1>について検討するまでもなく、甲2に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(3)本件特許発明3,4及び6~8について
本件特許発明3、4、6~8と甲2発明1~3は、少なくとも前記<相違点2-2>において相違するものであり、本件特許発明7及び8も車両用シール材用または建材用シール材用である組成物に係る発明であるから、前記(2)と同様の理由から、本件特許発明3、4、6~8は、甲2に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
2 甲3を主引用例とする進歩性欠如について
(1)甲3に記載された発明
甲3には、【請求項1】を参照すると、以下の発明が記載されているといえる。
ア 甲3発明1
実施例3の蓄熱用マイクロカプセルとして「脂肪族炭化水素:SCP-0028(日本精蝋社製パラフィンワックス、融点28.1℃、融解熱223J/g):50重量部、ラジカル重合性モノマー:メチルメタクリレート(MMA):49重量部、多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP):1重量部及び重合開始剤:2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、高分子分散剤:部分けん化ポリ酢酸ビニル:クラレ社製、クラレポバールL-8:1重量部及びヒドロキシプロピルメチルセルロース:信越化学社製、メトローズ60SH:1重量部からなる混合モノマーを重合した、脂肪族炭化水素を含む芯物質の周囲に、ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーが重合して得られる熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁を形成する、平均粒子径300μmの蓄熱用マイクロカプセル。」の発明が記載されているといえる。
イ 甲3発明2
実施例3の蓄熱用マイクロカプセルとして「脂肪族炭化水素:SCP-0028(日本精蝋社製パラフィンワックス、融点28.1℃、融解熱223J/g):25重量部及びSCP-0018(日本精蝋社製パラフィンワックス、融点18.7℃、融解熱231J/g):25重量部、ラジカル重合性モノマー:スチレン:49重量部、多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP):1重量部及び重合開始剤:2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、高分子分散剤:部分けん化ポリ酢酸ビニル:クラレ社製、クラレポバールL-8:2重量部及びヒドロキシプロピルメチルセルロース:信越化学社製、メトローズ60SH:2重量部からなる混合モノマーを重合した、脂肪族炭化水素を含む芯物質の周囲に、ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーが重合して得られる熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁を形成する、平均粒子径300μmの蓄熱用マイクロカプセル。」の発明が記載されているといえる。
ウ 甲3発明3
実施例4の蓄熱用マイクロカプセルとして「脂肪族炭化水素:SCP-0028(日本精蝋社製パラフィンワックス、融点28.1℃、融解熱223J/g):25重量部及びSCP-0018(日本精蝋社製パラフィンワックス、融点18.7℃、融解熱231J/g):25重量部、ラジカル重合性モノマー:酢酸ビニル:49重量部、多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP):1重量部及び重合開始剤:2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、高分子分散剤:部分けん化ポリ酢酸ビニル:クラレ社製、クラレポバールL-8:1重量部及びヒドロキシプロピルメチルセルロース:信越化学社製、メトローズ60SH:1重量部からなる混合モノマーを重合した、脂肪族炭化水素を含む芯物質の周囲に、ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーが重合して得られる熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁を形成する、平均粒子径300μmの蓄熱用マイクロカプセル。」の発明が記載されているといえる。
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲3発明1を対比する。
甲3発明1の「脂肪族炭化水素:SCP-0028(日本精蝋社製パラフィンワックス、融点28.1℃、融解熱223J/g)」は、本件特許発明1の「潤滑剤」に相当する(なお、本件特許明細書【0022】も参照。)。
また、甲3発明1の「ラジカル重合性モノマー:メチルメタクリレート(MMA)」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体」である「単量体(A)」に相当する。
そして、甲3発明1の「多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP)」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体」である「単量体(B)」に相当する。
したがって、甲3発明1の「ラジカル重合性モノマー:メチルメタクリレート(MMA):49重量部、多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP):1重量部」の「ラジカル重合性モノマー:メチルメタクリレート(MMA):49重量部」及び「多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP):1重量部」の重量割合は、それぞれ、98重量%及び2重量%であるから、本件特許発明1の「前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり」を充足する。
さらに、甲3発明1の「脂肪族炭化水素を含む芯物質の周囲に、ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーが重合して得られる熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁を形成する蓄熱用マイクロカプセル」は、本件特許発明1の「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子」及び「前記内包物が潤滑剤を含む、粒子」に相当する。
本件特許発明1と甲3発明2を対比する。
甲3発明2の「脂肪族炭化水素:SCP-0028(日本精蝋社製パラフィンワックス、融点28.1℃、融解熱223J/g)」及び「SCP-0018(日本精蝋社製パラフィンワックス、融点18.7℃、融解熱231J/g)」は、いずれも、本件特許発明1の「潤滑剤」に相当する(本件特許明細書【0022】参照。)。
また、甲3発明2の「ラジカル重合性モノマー:スチレン」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体」である「単量体(A)」に相当する。
そして、甲3発明2の「多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP)」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体」である「単量体(B)」に相当する。
したがって、甲3発明2の「ラジカル重合性モノマー:スチレン:49重量部、多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP):1重量部」の「ラジカル重合性モノマー:スチレン:49重量部」及び「多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP):1重量部」の重量割合は、それぞれ、98重量%及び2重量%であるから、本件特許発明1の「前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり」を充足する。
さらに、甲3発明2の「脂肪族炭化水素を含む芯物質の周囲に、ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーが重合して得られる熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁を形成する蓄熱用マイクロカプセル」は、本件特許発明1の「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子」及び「前記内包物が潤滑剤を含む、粒子」に相当する。
本件特許発明1と甲3発明3を対比する。
甲3発明3の「脂肪族炭化水素:SCP-0028(日本精蝋社製パラフィンワックス、融点28.1℃、融解熱223J/g)」は、本件特許発明1の「潤滑剤」に相当する(本件特許明細書【0022】参照。)。
また、甲3発明3の「ラジカル重合性モノマー:酢酸ビニル」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体」である「単量体(A)」に相当する。
そして、甲3発明3の「多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP)」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体」である「単量体(B)」に相当する。
したがって、甲3発明3の「ラジカル重合性モノマー:酢酸ビニル:49重量部、多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP):1重量部」の「ラジカル重合性モノマー:酢酸ビニル:49重量部」及び「多官能性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP):1重量部」の重量割合は、それぞれ、98重量%及び2重量%であるから、本件特許発明1の「前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり」を充足する。
さらに、甲3発明3の「脂肪族炭化水素を含む芯物質の周囲に、ラジカル重合性モノマーと多官能性モノマーが重合して得られる熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁を形成する蓄熱用マイクロカプセル」は、本件特許発明1の「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子」及び「前記内包物が潤滑剤を含む、粒子」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明1~3は、「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子であって、
前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であり、
前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり、
前記内包物が潤滑剤を含む、粒子。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
潤滑剤が、本件特許発明1はシリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれるのに対し、甲3発明1~3は脂肪族炭化水素:SCP-0028(日本精蝋社製パラフィンワックス、融点28.1℃、融解熱223J/g)である点。
<相違点3-2>
粒子の平均粒子径が、本件特許発明1は3~200μmであるのに対し、甲3発明1~3は300μmである点。
<相違点3-3>
粒子が、本件特許発明1は車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子であるのに対し、甲3発明1~3はそのような特定がない点。
イ 検討
前記<相違点3-1>~<相違点3-3>は実質的な相違点であるところ、事案に鑑み、はじめに<相違点3-3>について検討する。
甲3発明1~3は蓄熱用マイクロカプセルであり、甲3の【0010】には、「熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁の役割は、上記芯物質の表面を三次元的に覆い、この芯物質の流出を防止することである。」と記載されており、甲3には蓄熱用マイクロカプセルを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることは記載も示唆もなく、蓄熱用マイクロカプセルを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とする出願時の技術常識もなく、甲1、甲2及び甲4~甲11も、甲3発明1~3の蓄熱用マイクロカプセルを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることを動機づけるものではない。
そして、本件特許発明1は、車両用シール材用または建材用シール剤用粒子とすることにより、摺動時の摩擦等の外力により内包する潤滑剤が放出され、さらに緻密性が向上した重合体により構成される外殻により、当該潤滑剤の放出量が調整され、摺動性が長期間持続するという(実施例14等)、本件訂正発明1の構成から当業者が予測しえない有利な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、<相違点3-1>及び<相違点3-2>について検討するまでもなく、甲3に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(3)本件特許発明3、4及び6~8について
本件特許発明3、4、6~8と甲3発明1~3は、少なくとも前記<相違点3-3>において相違するものであり、本件特許発明7及び8も車両用シール材用または建材用シール材用である組成物に係る発明であるから、前記(2)と同様の理由から、本件特許発明3、4、6~8は、甲2に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
3 甲4を主引用例とする進歩性欠如について
(1)甲4に記載された発明(以下、「甲4発明」という。)
甲4には実施例22の蓄熱マイクロカプセルとして「蓄熱物質としてn-ヘキサデカン(P-3)及びエラストマーとして1,3-ブタジエンに由来する構成単位を含む水添共役ジエン共重合体(H-1)を含む芯物質(C-1):70.0質量部、並びに、被膜形成用モノマーとしてメタクリル酸メチル:29.0質量部及びトリメチロールプロパントリメタクリレート:1部を重合して得られた、芯物質が被膜によって被覆された、平均粒子径3μmの蓄熱マイクロカプセル。」の発明が記載されているといえる。
(4)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲4発明を対比する。
甲4発明の「蓄熱物質としてn-ヘキサデカン(P-3)」は、炭化水素オイルであり、潤滑性を示す物であるから、本件特許発明1の「潤滑剤」に相当する。
また、甲4発明の「メタクリル酸メチル)」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体」である「単量体(A)」に相当する。
そして、甲4発明の「トリメチロールプロパントリメタクリレート」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体」である「単量体(B)」に相当する。
したがって、甲4発明の「被膜形成用モノマーとしてメタクリル酸メチル:29.0質量部及びトリメチロールプロパントリメタクリレート:1部」の「メタクリル酸メチル:29.0質量部」及び「多トリメチロールプロパントリメタクリレート:1部」の重量割合は、それぞれ、96.7重量%及び3.3重量%であるから、本件特許発明1の「前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり」を充足する。
さらに、甲4発明の「芯物質が被膜によって被覆された、平均粒子径3μmの蓄熱マイクロカプセル」は、本件特許発明1の「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子」、「前記内包物が潤滑剤を含み」及び「前記粒子の平均粒子径が3~200μmである、粒子」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲4発明は、「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子であって、
前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であり、
前記内包物が潤滑剤を含み、
前記粒子の平均粒子径が3~200μmである、粒子。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4-1>
潤滑剤が、本件特許発明1はシリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれるのに対し、甲4発明はn-ヘキサデカン(P-3)である点。
<相違点4-2>
粒子が、本件特許発明1は車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子であるのに対し、甲4発明はそのような特定がない点。
イ 検討
前記<相違点4-1>及び<相違点4-2>は実質的な相違点であるところ、事案に鑑み、はじめに<相違点4-2>について検討する。
甲4には、蓄熱用マイクロカプセルは蓄熱材として用いることができ、蓄熱材は、住居、公共施設、車両等の空調設備、自動車のキャニスター、電子部品、冷蔵庫、魔法瓶等の家電、衣服の繊維、臓器輸送の保温容器、カーブミラー、建築材等、種々の分野に用いることができることが記載され(【0096】参照。)、甲4の段落【0033】には、「エラストマーは、ゴム弾性を有し、蓄熱物質を良好に包接するバインダー成分として働くため、被膜からの蓄熱物質の漏出を防ぐことができる」と記載されている。甲4には蓄熱用マイクロカプセルを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることは記載も示唆もなく、蓄熱用マイクロカプセルを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とする出願時の技術常識もなく、甲1~甲3及び甲5~甲11も、甲4発明の粒子を、車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることを動機づけるものではない。
そして、本件特許発明1は、車両用シール材用または建材用シール剤用粒子とすることにより、摺動時の摩擦等の外力により内包する潤滑剤が放出され、さらに緻密性が向上した重合体により構成される外殻により、当該潤滑剤の放出量が調整され、摺動性が長期間持続するという(実施例14等)、本件訂正発明1の構成から当業者が予測しえない有利な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、<相違点4-1>について検討するまでもなく、甲4に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(3)本件特許発明3,4及び6~8について
本件特許発明3、4、6~8と甲4発明は、少なくとも前記<相違点4-2>において相違するものであり、本件特許発明7及び8も車両用シール材用または建材用シール材用である組成物に係る発明であるから、前記(2)と同様の理由から、本件特許発明3、4、6~8は、甲4に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された、事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第7 前記第4 2の令和7年4月30日付けで通知した取消理由について
1 甲2、甲3または甲4を主引用例とする新規性・進歩性欠如について
前記第6 1~3で検討したとおり、本件特許発明1、3、4及び6~8は、甲2、甲3または甲4に記載された発明ではなく、また、甲2、甲3または甲4に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものではなく、また、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもない。
2 甲5を主引用例とする新規性・進歩性欠如について
(1)甲5に記載された発明
ア 甲5発明1
甲5には、[0014]を参照すると、実施例3の樹脂ビーズとして「ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NK1G)200部に重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)V-65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王(株)製、商品名:LMA)200部と、非重合性のシリコーンエラストマー(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:9040S.E.B、有効成分12%)150部を加え、重合反応を行って得た、樹脂ビーズの内部に非重合性のシリコーンが固定化されている樹脂ビーズ。」の発明が記載されているといえる。
イ 甲5発明2
甲5には、[0014]を参照すると、実施例5の樹脂ビーズとして「ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NK1G)200部に重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、商品名:V-65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王(株)製、商品名:LMA)200部と、非重合性のポリエーテル共変性シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名:KF-6015、有効成分100%)28部を加え、重合反応を行って得た、樹脂ビーズの内部に非重合性のシリコーンが固定化されている樹脂ビーズ。」の発明が記載されているといえる。
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲5発明1を対比する。
甲5発明1の「ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NK1G)」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体」である「単量体(B)」に相当する。
また、甲5発明1の「ラウリルメタアクリレート(花王(株)製、商品名:LMA)」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体」である「単量体(A)」に相当する。
そして、甲5発明1の「非重合性のシリコーンエラストマー(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:9040S.E.B、有効成分12%)」は、本件特許発明1の「潤滑剤」及び「前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含み」に相当する(甲6の【0051】、甲8の【0076】、【0077】、甲9の【0026】参照。)。
さらに、甲5発明1の「樹脂ビーズの内部に非重合性のシリコーンが固定化されている樹脂ビーズ」は、本件特許発明1の「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子」及び「前記内包物が潤滑剤を含む」、「粒子」に相当する。
本件特許発明1と甲5発明2を対比する。
甲5発明2の「ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NK1G)」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体」である「単量体(B)」に相当する。
また、甲5発明2の「ラウリルメタアクリレート(花王(株)製、商品名:LMA)」は、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体」である「単量体(A)」に相当する。
そして、甲5発明2の「非重合性のポリエーテル共変性シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名:KF-6015、有効成分100%)」は、本件特許発明1の「潤滑剤」及び「前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含み」に相当する(甲6の【0051】、甲8の【0076】、【0077】、甲9の【0026】参照。)。
さらに、甲5発明2の「樹脂ビーズの内部に非重合性のシリコーンが固定化されている樹脂ビーズ」は、本件特許発明1の「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子」及び「前記内包物が潤滑剤を含む、粒子」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲5発明1又は2は、「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子であって、
前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であり、
前記内包物が潤滑剤を含み、
前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含む、粒子。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点5-1>
本件特許発明1は、重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であるのに対し、甲5発明1は、重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が70重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が30重量%であり、甲5発明2は、重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が50重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が50重量%である点。
<相違点5-2>
粒子の平均粒子径が、本件特許発明1は3~200μmであるのに対し、甲5発明1又は2は不明である点。
<相違点5-3>
粒子が、本件特許発明1は車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子であるのに対し、甲5発明1又は2はそのような特定がない点。
イ 検討
前記<相違点5-1>、<相違点5-2>及び<相違点5-3>は実質的な相違点であるところ、事案に鑑み、はじめに<相違点5-3>について検討する。
甲5には、樹脂ビーズを含有してなる、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、分散体、印刷インキ、インクジェットインキ及び樹脂組成物を車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることは記載も示唆もなく、樹脂ビーズを含有してなる、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、分散体、印刷インキ、インクジェットインキ及び樹脂組成物を車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とする出願時の技術常識もなく、甲1~甲4、甲6~甲11も、甲5発明1又は2の樹脂ビーズを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることを動機づけるものではない。
そして、前記第6 1(2)イのとおり、本件特許発明1は、本件特許発明1の構成から予測し得ない有利な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲5に記載された発明ではなく、また、<相違点5-1>及び<相違点5-2>について検討するまでもなく、甲5に記載された発明、並びに、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものではなく、また、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもない。
(3) 本件特許発明3、4及び6~8について
本件特許発明3、4、6~8と甲5発明1又は2は、少なくとも<相違点5-3>において相違するものであり、本件特許発明7及び8も車両用シール材用または建材用シール材用である組成物に係る発明であるから、前記(2)と同様の理由から、本件特許発明3、4、6~8は、甲5に記載された発明ではなく、また、甲5に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができないものではなく、また同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもない。
3 甲1を主引用例とする進歩性欠如について
(1)甲1に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)
甲1には、【0012】を参照すると、実施例4のシリコーンオイル含有有機樹脂微粒子として「信越化学社製の脂肪酸変性シリコーンオイル(製品名KF-910;融点45℃)40部、信越化学社製ポリエーテル変性シリコーンオイル(製品名KF-945)、信越化学社製のジメチルシリコーンオイル(製品名KF-96 100CS)50部、日本乳化社剤製ノニオン界面活性剤(製品名NEWCOL-714)10部、花王社製アニオン界面活性剤ペレックスSSL(不揮発分50%)5部及び脱イオン水300部から得られたシードエマルジョン200部、スチレン290部、ブチルアクリレート150部、α-メチルスチレンダイマー10部を反応して得られた、粒子内核にシリコーンオイルが存在し、平均粒子径が0.782であるシリコーンオイル含有有機樹脂微粒子。」の発明が記載されているといえる。
(2) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「スチレン」、「ブチルアクリレート」及び「α-メチルスチレンダイマー」は、いずれも、本件特許発明1の「重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体」である「単量体(A)」に相当する。
また、甲1発明の「信越化学社製ポリエーテル変性シリコーンオイル(製品名KF-945)」及び「信越化学社製のジメチルシリコーンオイル(製品名KF-96 100CS)」は、シリコーンオイルは潤滑剤である(甲6の【0051】、甲8の【0076】、【0077】、甲9の【0026】参照。)から、本件特許発明1の「潤滑剤」及び「前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含み」に相当する。
そして、甲1発明の「粒子内核にシリコーンオイルが存在するシリコーンオイル含有有機樹脂微粒子」は、本件特許発明1の「単量体(A)」、「を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子」であって「前記内包物が潤滑剤を含む、粒子」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「単量体(A)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子であって、
前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、
前記内包物が潤滑剤を含み、
前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含む、粒子。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
外殻が、本件特許発明1は、さらに、重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体である単量体(B)をも重合性成分として含み、前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であるのに対し、甲1発明は、スチレン、ブチルアクリレート及びα-メチルスチレンダイマー以外の重合体成分を含まない点。
<相違点1-2>
粒子の平均粒子径が、本件特許発明1は、3~200μmであるのに対し、甲1発明は0.782である点。
<相違点1-3>
粒子が、本件特許発明1は車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
イ 検討
前記<相違点1-1>、<相違点1-2>及び<相違点1-3>は実質的な相違点であり、<相違点1-1>及び<相違点1-2>について、甲1発明において、スチレン、ブチルアクリレート及びα-メチルスチレンダイマーのスチレンやブチルアクリレートの重量割合を85~99.999重量%とし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートの重量割合を0.001~15重量%とすること、及び、シリコーンオイル含有有機樹脂微粒子の平均粒子径を3~200μmとすることは、甲1~甲11のいずれの記載からも動機付けられるものではない。
また、<相違点1-3>について、甲1にはシリコーンオイル含有有機樹脂微粒子は粉体塗料や粉体化粧等に配合するものであることが記載されており(【0005】参照。)、甲1のシリコーンオイル含有有機樹脂微粒子を車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることは記載も示唆もされておらず、粉体塗料や粉体化粧等に配合するものを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とする出願時の技術常識もなく、甲2~甲11も、甲1発明のシリコーンオイル含有有機樹脂微粒子を車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることを動機づけるものではない。
そして、本件特許発明1は、車両用シール材用または建材用シール剤用粒子とすることにより、摺動時の摩擦等の外力により内包する潤滑剤が放出され、さらに緻密性が向上した重合体により構成される外殻により、当該潤滑剤の放出量が調整され、摺動性が長期間持続するという(実施例14等)、本件訂正発明1の構成から当業者が予測しえない有利な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(3)本件特許発明3、4及び6~8について
本件特許発明3、4、6~8と甲1発明は、前記<相違点1-1>~<相違点1-3>において相違するものであり、本件特許発明7及び8も車両用シール材用または建材用シール材用である組成物に係る発明であるから、前記(2)と同様の理由から、本件特許発明3、4、6~8は、甲1に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第8 取消理由及び取消理由(決定の予告)において採用しなかった異議申立理由について
1 甲1を主引用例とする新規性欠如(理由1A)について
前記第7 3のとおり、本件特許発明1、3、4及び6~8と甲1に記載された発明は、実質的に相違するものであるから、本件特許発明1、3、4及び6~8は、甲1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではない。
2 甲6を主引用例とする進歩性欠如(理由2F)について
(1)甲6に記載された発明(以下、「甲6発明」という。)
甲6には、調製例3のマイクロカプセルEとして「JSR(株)製のSX866(A)(中空状の粒状架橋ポリスチレン、粒径φ0.3μm)に潤滑性オイルとしてTSF451(ジメチルシリコーンオイル、GE東芝シリコーン(株)製)を含浸させたマイクロカプセルE。」の発明が記載されているといえる(【0051】参照。)。
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲6発明を対比する。
甲6発明の「JSR(株)製のSX866(A)(中空状の粒状架橋ポリスチレン、粒径φ0.3μm)」は本件特許発明1の「単量体(A)」、「を含む重合性成分の重合体からなる外殻」及び「前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体」に相当する。
また、甲6発明の「潤滑性オイルとしてTSF451(ジメチルシリコーンオイル、GE東芝シリコーン(株)製)」は、本件特許発明1の「潤滑剤」及び「前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含み」に相当する(【0051】参照。)。
そして、甲6発明の「潤滑性オイルとしてTSF451(ジメチルシリコーンオイル、GE東芝シリコーン(株)製)を含浸させたマイクロカプセルE」は本件特許発明1の「単量体(A)」、「を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子」及び「前記内包物が潤滑剤を含む、粒子」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲6発明は、「単量体(A)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子であって、
前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、
前記内包物が潤滑剤を含む、粒子。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点6-1>
外殻が、本件特許発明1は、さらに、重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体である単量体(B)をも重合性成分として含み、前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であるのに対し、甲6発明は単量体(A)を含む重合性成分の重合体からなる点。
<相違点6-2>
粒子の平均粒子径が、本件特許発明1は3~200μmであるのに対し、甲6発明は不明である点。
<相違点6-3>
粒子が、本件特許発明1は車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子であるのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
イ 検討
<相違点6-1>について、甲6には、マイクロカプセルがメラミン樹脂またはポリスチレン樹脂のような有機高分子材料からなることは記載されているが(【請求項1】、【請求項5】及び【請求項6】参照。)、さらに、単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であるものとすることについて、記載も示唆もない。また、甲1~甲5、甲7~甲11にも、甲6発明のような電子写真用感光体に用いるマイクロカプセルを、さらに、単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であるものを含むものとすることについて記載も示唆もない。
そうすると、甲6発明の潤滑性オイルとしてTSF451(ジメチルシリコーンオイル、GE東芝シリコーン(株)製)を含浸させたマイクロカプセルEにおいて、JSR(株)製のSX866(A)(中空状の粒状架橋ポリスチレン、粒径φ0.3μm)に加えて、さらに、単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であるものを含むものとして、前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%である当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
<相違点6-2>について
甲6にはマイクロカプセルの平均粒子径について記載も示唆もなく、甲1~甲5、甲7~甲11も、甲6発明のマイクロカプセルの平均粒子径を3~200μmとすることを動機付けるものではない。
<相違点6-3>について
甲6のマイクロカプセルは電子写真用感光体に用いるものであり(【請求項1】参照。)、甲6には甲6のマイクロカプセルを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることは記載も示唆もなく、電子写真用感光体に用いるものものを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とする出願時の技術常識もなく、また、/甲1~甲5、甲7~甲11も、甲6発明のマイクロカプセルを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることを動機づけるものではない。
(ウ)効果について
前記第6 1(2)イのとおり、本件特許発明1は、本件特許発明1の構成から予測しえない有利な効果を奏するものである。
(エ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲6に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(3) 本件特許発明3、4及び6~8について
本件特許発明3、4、6~8と甲6発明は、少なくとも<相違点6-1>~<相違点6-3>において相違するものであるから、前記(2)同様の理由から、甲6に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもない。
3 甲7を主引用例とする進歩性欠如(理由2G)について
(1)甲7に記載された発明(以下、「甲7発明」という。)
甲7の【0036】には、「一次平均粒径900μm、鉱油含有量50質量%のカプセル。」の発明が記載されているといえる。
(2) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲7発明を対比する。
甲7発明の「鉱油」は、本件特許発明1の「潤滑剤」に相当する(甲9の【0026】参照。)。
また、甲7発明の「カプセル」は本件特許発明1の「外殻」及び「外殻に内包される内包物とから構成される粒子」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲7発明は、「外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子であって、
前記内包物が潤滑剤を含む、粒子。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点7-1>
外殻が、本件特許発明1は、単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなり、前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であり、前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であるのに対し、甲7発明は何からなるのか不明である点。
<相違点7-2>
潤滑剤が、本件特許発明1はシリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれるのに対し、甲7発明は鉱油である点。
<相違点7-3>
粒子の平均粒子径が、本件特許発明1は3~200μmであるのに対し、甲7発明は不明である点。
<相違点7-4>
粒子が、本件特許発明1は車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子であるのに対し、甲7発明はそのような特定がない点。
イ 検討
<相違点7-1>について
甲7には、カプセルの膜剤を単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなるものとすることについて記載も示唆もなく、甲1~甲6、甲8~甲11にも、甲7発明のカプセルの膜剤を単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなるものとすることについて記載も示唆もない。
そうすると、甲7発明のカプセルの膜剤を単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなるものとすることは当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
<相違点7-3>について
甲7にはカプセルの平均粒子径を3~200μmとすることについて記載も示唆もなく、甲1~甲6、甲8~甲11も、甲7発明のカプセルにおいて、粒子の平均粒子径を3~200μmとすることを動機付けるものではない。
<相違点7-4>について
甲7のカプセルは転動装置に用いるものであり(【請求項2】参照。)、甲7には甲7のマイクロカプセルを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることは記載も示唆もなく、転動装置に用いるものを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とする出願時の技術常識もなく、甲1~甲6、甲8~甲11も、甲7発明のカプセルを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることを動機づけるものではない。
そして、前記第5 1(2)イのとおり、本件特許発明1は、本件特許発明1の構成から予測しえない有利な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、<相違点7-2>について検討するまでもなく、甲7に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもない。
(3) 本件特許発明3、4及び6~8について
本件特許発明3、4、6~8と甲7発明は、少なくとも<相違点7-1>、<相違点7-3>及び<相違点7-4>において相違するものであるから、、前記(2)と同様の理由から、甲7に記載された発明、及び、甲1~甲11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもない。
4 甲8を主引用例とする進歩性欠如(理由2H)について
(1)甲8に記載された発明(以下、「甲8発明」という。)
甲8の【0131】には、「エチレン無水マレイン酸共重合体(モンサント・ケミカルズ社製商品:EMI-31)5%水溶液200gに動粘度250mm2/sのパーフルオロポリエーテルオイル200mlを加え、ホモミキサーによって乳化分散して、エマルジョンを得て、このエマルジョンに固形分を17重量%に調整したメチロール・メラミン樹脂水溶液(住友化学工業社製商品:スミレーズ・レジン613)100gを加え、メチロール・メラミン樹脂25%の水溶液160gを加えて、反応させて得た、マクロカプセルの80重量%がパーフルオロポリエーテルオイルであり、メジアン径は約10μmである、パーフルオロポリエーテルオイル含有マイクロカプセル。」の発明が記載されているといえる。
(2) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲8発明を対比する。
甲8発明の「パーフルオロポリエーテルオイル」は、本件特許発明1の「潤滑剤」に相当する(本件特許明細書の【0020】参照。)。
また、甲8発明の「メジアン径は約10μmである」及び「マイクロカプセル」は、本件特許発明1の「外殻」、「外殻に内包される内包物とから構成される粒子」及び「前記粒子の平均粒子径が3~200μmである、粒子」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲8発明は、「外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子であって、
前記内包物が潤滑剤を含み、
前記粒子の平均粒子径が3~200μmである、粒子。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点8-1>
外殻が、本件特許発明1は、単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなり、前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であり、前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であるのに対し、甲8発明はエチレン無水マレイン酸共重合体とメチロール・メラミン樹脂からなる点。
<相違点8-2>
潤滑剤が、本件特許発明1はシリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれるのに対し、甲8発明は流動パーフルオロポリエーテルオイルである点。
<相違点8-3>
粒子が、本件特許発明1は車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子であるのに対し、甲8発明はそのような特定がない点。
イ 検討
<相違点8-1>について
甲8には、マイクロカプセル壁の材質を単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなるものとすることについて記載も示唆もない。
また、甲1~甲7及び甲9~甲11にも、甲8発明のマイクロカプセル壁の材質を単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなるものとすることについて記載も示唆もない。
そうすると、甲8発明のマイクロカプセル壁の材質を、エチレン無水マレイン酸共重合体とメチロール・メラミン樹脂からなるものに代えて、単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなるものとすることは当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
また、<相違点8-3>について、甲8には甲8発明のマイクロカプセルを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることは記載も示唆もなく、甲1~甲7及び甲9~甲11も、甲8発明のマイクロカプセルを車両用シール材用粒子又は建材用シール材用粒子とすることを動機づけるものではない。
そして、本件特許発明1は、前記第6 1(2)イのとおり、本件訂正発明1の構成から当業者が予測しえない有利な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、<相違点8-2>について検討するまでもなく、甲8に記載された発明、及び、甲1~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(3)本件特許発明3、4及び6~8について
本件特許発明3、4、6~8と甲8発明は、少なくとも前記<相違点8-1>及び<相違点8-3>において相違するものであり、本件特許発明7及び8も車両用シール材用または建材用シール材用である組成物に係る発明であるから、前記(2)と同様の理由から、本件特許発明3、4、6~8は、甲8に記載された発明、及び、甲1~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
5 サポート要件(理由3)について
本件特許発明1は、「摺動性を付与することができ、かつ、摺動性の長期持続性に優れる粒子、及びその用途を提供する」こと(【0006】)を解決しようとする課題とするものである。
本件訂正後の本件特許発明1は、「前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり」、「前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含」むことを特定事項とするものである。
本件特許明細書の実施例の記載から、単量体(A)が、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリルアミド及びスチレンのいずれかであり、単量体(B)がジメタクリル酸エチレングリコール(EDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)及び1,9-ノナンジオールジアクリレート(1,9ND-A)のいずれかであり、単量体(A)の重量割合が約89.7重量%~99.5重量%で単量体(B)の重量割合が約0.5重量%~10.3重量%(実施例1~13等)である外殻と、外殻に内包される内包物が潤滑剤として、ジメチルポリシロキサン、フッ素オイル(1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル)及びエステルオイル(ジイソトリデシルアジペート)である潤滑剤を含む粒子が、前記課題を解決できることが理解できる。また、本件特許明細書の段落0014には「外殻が、単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体であることで、重合体の緻密性が向上し、多量の潤滑剤の染み出しや、特に成形加工時の粒子の潰れが抑制でき、好ましい。」ことが、同段落0015には「成形体においては表面付近が、通常、摺動時の摩擦等の外力を受けるが、その際に、単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体を外殻とする本発明の粒子は、外力により潤滑剤を放出し、さらにその誠を制御できるため、摺動性の長期持続性に優れる。」ことが、同段落0020には「重合性成分に必須に含まれる単量体(B)は、得られる重合体に橋掛け構造(架橋構造)を導入する。これにより、重合体は緻密性が向上し、内包する潤滑剤の放出を制御できる。」ことが、同段落0022には「内包物に含まれる潤滑剤は粒子から放出されることで、摺動性を付与することができる成分である。」ことが記載されており、これらの記載から、本発明の粒子が単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体を外殻とし、重合性成分に必須に含まれる単量体(B)が得られる重合体に橋掛け構造(架橋構造)を導入することにより「摺動性を付与することができ、かつ、摺動性の長期持続性に優れる粒子」を構成し得るものといえる。
そうすると、前記本件特許明細書の実施例の記載及び本件特許明細書の前記段落の記載から、「単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子であって、
前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であり、
前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が85~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~15重量%であり、
前記内包物が潤滑剤を含み、
前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル及びエステル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含む」という特定を有する本件特許発明1の粒子は前記課題を解決できるといえる。
したがって、本件特許発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であり、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものと認められる。
本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明3、4、6~8についても同様に、本件特許明細書発明の詳細な説明に記載された発明であり、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものである。
以上のとおりであるから、本件特許発明1、3、4及び6~8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものであるから、本件特許が同規定を満たさない出願に対してなされたものであるとして取り消すことはできない。
第10 むすび
よって、異議申立理由、令和7年4月30日付けの取消理由通知、及び、令和7年10月21日付けで通知した取消理由(決定の予告)に記載した理由によって、本件特許発明1、3、4、6~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1、3、4、6~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2、5は、本件訂正により削除され、当該請求項に係る特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700070