特許異議申立
2024-700589
歯間清掃具の製造方法
- 審判番号
- 2024-700589
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-248343
- 登録番号
- 7417353
- 請求日
- 2024年06月20日
- 審決日
- 2025年10月30日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】小林製薬株式会社
- 【権利者代理人】稲葉 良幸
- 【権利者代理人】阿部 豊隆
- 【権利者代理人】金田 周二
- 【権利者代理人】山田 拓
- 【異議申立人】高松 直樹
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 哲男
- 審判官 安井 寿儀
- 審判官 佐々木 佳祐
- 分類
- P1651.121-YAA(A61C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7417353号発明「歯間清掃具の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7417353号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
特許第7417353号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7417353号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成30年12月28日を出願日とする出願であって、令和 6年 1月10日にその特許権の設定登録がされ、同年 1月18日に特許掲載公報が発行された。そして、同年 6月20日に特許異議申立人 高松 直樹(以下「申立人」という。)により請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てがされ、その後の手続きの経緯は、以下のとおりである。
令和 6年10月31日付け:取消理由通知書
令和 7年 1月 6日 :特許権者による意見書の提出
同年 4月 9日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 6月 6日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 6月26日付け:訂正請求があった旨の通知
なお、令和 7年 6月26日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和 7年 6月 6日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、「特許第7417353号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記軸部の中間部分を被覆し、前記突起部を有さない円筒状の延長軟質部」と記載されているのを、「前記軸部の前記円柱状の中間部分の周囲を被覆し、前記突起部を有さない円筒状の延長軟質部」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記延長軟質部の長さは、前記軟質部の長さの8%以上50%以下である」と記載されているのを、「前記延長軟質部の長さは、前記軟質部の長さの30%以上50%以下である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項
訂正前の請求項2は、訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1、2は、一群の請求項を構成するものであり、本件訂正は、一群の請求項である請求項〔1、2〕について請求されたものである。よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「前記軸部の中間部分を被覆」する「延長軟質部」について、前記軸部の「円柱状」の中間部分「の周囲」を被覆するものであることに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、本件明細書の段落【0018】及び【0023】の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に該当する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項1における「延長軟質部」について、その長さが、軟質部の長さの「8%以上50%以下」であるのを、「30%以上50%以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、本件明細書の段落【0024】の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に該当する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
4 独立特許要件について
請求項1、2について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項1、2に係る訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
5 むすび
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、令和 7年 6月 6日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の金型に基材を注入して、基部と、前記基部から延在する軸部とを有する基材部を成形する第1の工程と、
前記基材部が収容された第2の金型に、前記軸部の先端側部分よりも基端側の円柱状の中間部分に対応する位置から軟質材を注入して、前記軸部の先端側部分を被覆する被覆部と、前記被覆部から突出する複数の突起部とを有する軟質部と、前記被覆部を前記軸部の基端側に延長するように前記軸部の前記円柱状の中間部分の周囲を被覆し、前記突起部を有さない円筒状の延長軟質部とを成形する第2の工程と、を有し、
前記第2の工程において、前記延長軟質部は、前記軟質部の被覆部の基端と同じで、なおかつ一定の外径を有するように成形され、
前記延長軟質部の長さは、前記軟質部の長さの30%以上50%以下である、歯間清掃具の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程において、前記延長軟質部は前記軸部の方向に沿って3mm以上の長さを有するように成形される、請求項1に記載の歯間清掃具の製造方法。」
第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して、当審が令和 7年 4月 9日付けで特許権者に通知した取消理由は、概略次の理由である。
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、引用文献1に記載された発明、周知技術及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献一覧>
1.特開2017-775号公報(申立人が提出した甲第1号証)
2.特開2013-188299号公報(同甲第3号証)
3.特開2017-136202号公報(同甲第4号証)
4.意匠登録第1489187号公報(同第5号証)
5.意匠登録第1492784号公報(同第6号証)
6.意匠登録第1492453号公報(同第7号証)
7.意匠登録第1492452号公報(同第8号証)
第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1(甲第1号証)について
ア 引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審にて付与した。以下同様。)
(ア)「【0024】
以下、歯間清掃具1を、基材部10及び軟質部20という構成素材の区分に基づいて説明する。
基材部10は、合成樹脂又は合成樹脂に充填材を添加配合した樹脂組成物からなり、好ましくは前記樹脂組成物からなり、図1~図4に示すように、持ち手となるハンドル部3を構成する扁平な細長い板状のハンドル基材部11と、ハンドル基材部11の先端部に連設された細長い軸状の芯基材部12と、幅方向に隣り合うハンドル基材部11を切り離し可能に連結する連結部13と、を備える。」
(イ)「【0027】
芯基材部12は、略直線状の細長い軸状または段階的又は連続的に同じ方向に湾曲する形状に形成され、ハンドル基材部11の先端側に連設された基端側軸部12aと、基端側軸部12aに連設された先端側軸部(芯本体)12bと、を有する。基端側軸部12aは、その全周に亘って第2の軟質被覆部14で被覆され、先端側軸部12bは第1の軟質被覆部21により被覆されている。
【0028】
本実施形態の芯基材部12は先端側へ行くにしたがって縮径する緩やかなテーパ形状に形成されているが、これに限定されず、基端側軸部12aをその全長にわたってほぼ同径の軸状に形成し、かつ先端側軸部12bのみを先端側へ行くにしたがって縮径する緩やかなテーパ形状に形成してもよい。ただし、縮径する緩やかなテーパ形状は必須ではなく、縮径する形状でかつテーパ形状でないものも採用でき、基端側軸部12a、及び先端側軸部12bをその全長にわたってほぼ同径に構成するものも採用できる。芯基材部12の断面形状は、基端側軸部12a及び先端側軸部12bともに、歯間挿入性、応力集中の緩和等の観点から、好ましくは円形状であるが、オーバル形状、涙滴形状、多角形状等であっても構わない。」
(ウ)「【0042】
第2の軟質被覆部14は、芯基材部12の基端側軸部12aを全周にわたって被覆し、ハンドル基材部11の先端側まで延びるように形成されている(但し軟質部20の成型時に芯基材部12を固定する保持ピンにより形成される、軟質部20の凹部が存在していてもよい)。第2の軟質被覆部14を設けることにより、歯間清掃時における芯基材部12、特に基端側軸部12aの破断が顕著に抑制される理由は、現状では十分明らかではないが、芯基材部12における第1の軟質被覆部21で被覆された先端側軸部12bと、第2の軟質被覆部14で被覆された基端側軸部12aとの境界及びその近傍領域に集中する応力が第2の軟質被覆部14中に分散し、緩和されることによるためであると推測される。
【0043】
第2の軟質被覆部14の厚みは、第1の軟質被覆部21の厚みに応じて適宜選択されるが、基端側軸部12aと先端側軸部12bとの境界及びその近傍領域への応力の集中を緩和する観点から、前記の境界及びその近傍領域において第1の軟質被覆部21の被覆部21aの表面と第2の軟質被覆部14の表面は、段差がほぼ無いような面一な状態に設けられることが好ましく、第1、第2の軟質被覆部21、14が両者一体的に形成されていることがより好ましい。」
(エ)「【0048】
軟質部20は、図1~図4に示すように、エラストマを用いて基材部10の芯基材部12に一体成形したもので、芯基材部12の先端側軸部12bに外装した第1の軟質被覆部21を備える。ただし、軟質部20として、先端側軸部12bの基端部(すなわち先端側軸部12bと基端側軸部12aとの境界近傍の先端側軸部12b)に、基端側軸部12a及びそれを全周にわたって被覆した第2の軟質被覆部14が歯間に進入するのを規制する環状の進入規制部を設けたり、ハンドル基材部11に滑り止め部を設けたりすることも可能である。進入規制部や滑り止め部は、第1の軟質被覆部21とは独立に形成することも可能であるが、金型構造が複雑になるので、第1の軟質被覆部21の基端部に連なるように形成することが好ましい。
【0049】
第1の軟質被覆部21は、芯基材部12の先端側軸部12bに被覆される被覆部21aと、被覆部21aに長さ方向及び/又は幅方向に間隔をあけて外方へ突出状に形成した複数の突起部21bとを有している。なお、本実施形態では第1の軟質被覆部21は複数の突起部21bを有しているが、これに限定されず、複数の突起部21bを有していない形態でも良い。」
(オ)「【0056】
歯間清掃具1、4は、従来の樹脂製歯間清掃具と同様に、例えば、2つの金型を用いた2色成形法により製造される。すなわち、基材部10の立体形状に対応する成形空間を有する第1金型を用い、第1金型の成形空間に合成樹脂又は樹脂組成物の溶融物を注入又は射出し、冷却して基材部10を作製し、次に歯間清掃具1の立体形状に対応する成形空間を有する第2金型を用い、得られた基材部10を所定位置にセットした前記第2金型の成形空間にエラストマの溶融物を注入若しくは射出し又は液状熱硬化性エラストマを注入して加熱し、その後冷却して、基材部10に軟質部20及び第2の軟質被覆部14を一体成形することにより、歯間清掃具1を得ることができる。なお、歯間清掃具1のこのような製造方法は公知であり、例えば、国際公開2013/176297号公報等に記載されている。」
(カ)「【図1】
[図:0001432029000001.jpg]
」
(キ)「【図2】
[図:0001432029000002.jpg]
」
(ク)段落【0043】の記載を参酌して図1及び2をみると、第2の軟質被覆部14は、第1の軟質被覆部21の基端と同じ外径を有するように成形されている。
イ 上記アの事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「第1金型に合成樹脂又は樹脂組成物の溶融物を注入又は射出し、冷却して基材部10を作製し、
第2金型を用い、得られた基材部10を所定位置にセットした前記第2金型の成形空間にエラストマの溶融物を注入若しくは射出して加熱し、その後冷却して、基材部10に軟質部20及び第2の軟質被覆部14を一体成形する、歯間清掃具1の製造方法であって、
基材部10は、ハンドル基材部11と、ハンドル基材部11の先端部に連設された細長い軸状の芯基材部12とを備え、
軟質部20は、第1の軟質被覆部21を備え、
芯基材部12は、基端側軸部12aと、基端側軸部12aに連設された先端側軸部12bと、を有し、基端側軸部12aは、その全周に亘って第2の軟質被覆部14で被覆され、先端側軸部12bは第1の軟質被覆部21により被覆されており、第1の軟質被覆部21は、芯基材部12の先端側軸部12bに被覆される被覆部21aと、被覆部21aに長さ方向及び/又は幅方向に間隔をあけて外方へ突出状に形成した複数の突出部21bとを有し、
第1、第2の軟質被覆部21、14が両者一体的に形成され、
第2の軟質被覆部14は、第1の軟質被覆部21の基端と同じ外径を有するように成形される、歯間清掃具1の製造方法。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「第1金型」、「合成樹脂又は樹脂組成物の溶融物」及び「基材部10」は、その機能及び構造からみて、本件発明1の「第1の金型」、「基材」及び「基材部」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明の「基材部10」は、「ハンドル基材部11と、ハンドル基材部11の先端部に連接された細長い軸状の芯基材部12とを備え」るものであり、該「ハンドル基材部11」及び「ハンドル基材部11の先端部に連接された細長い軸状の芯基材部12」は、本件発明1の「基部」及び「前記基部から延在する軸部」にそれぞれ相当する。
したがって、引用発明の「第1金型に合成樹脂又は樹脂組成物の溶融物を注入又は射出し、冷却して基材部10を作製」することは、本件発明1の「第1の金型に基材を注入して、基部と、前記基部から延在する軸部とを有する基材部を成形する第1の工程」に相当する。
イ 引用発明の「第2金型」及び「エラストマの溶融物」は、その機能及び構造からみて、本件発明1の「第2の金型」及び「軟質材」にそれぞれ相当する。そして、引用発明の「第2金型を用い、得られた基材部10を所定位置にセットした前記第2金型の成形空間にエラストマの溶融物を注入若しくは射出」することは、上記アを踏まえると、本件発明1の「前記基材部が収容された第2の金型に、」「軟質材を注入」することに相当する。
ウ 引用発明の「軟質部20」は、「芯基材部12の先端側軸部12bに被覆される被覆部21aと、被覆部21aに長さ方向及び/又は幅方向に間隔をあけて外方へ突出状に形成した複数の突出部21bとを有」する「第1の軟質被覆部21を備え」るものであり、該「芯基材部12の先端側軸部12bに被覆される被覆部21a」、「被覆部21aに長さ方向及び/又は幅方向に間隔をあけて外方へ突出状に形成した複数の突出部21b」及び「第1の軟質被覆部21」は、上記アを踏まえると、本件発明1の「軸部の先端側部分を被覆する被覆部」、「被覆部から突出する複数の突起部」及び「軟質部」にそれぞれ相当する。
エ 引用発明の「第2の軟質被覆部14」は、芯基材部12の基端側軸部12aを全周に亘って被覆するものであり、第1の軟質被覆部21と一体的に形成されるものであって、図1及び2から、突出部21bを有していないことが看て取れる。そして、該「基端側軸部12a」は、引用文献1の段落【0028】の「芯基材部12の断面形状は、基端側軸部12a及び先端側軸部12bともに、・・・円形状である」との記載を踏まえれば、本件発明1の「基端側の円柱状の中間部分」に相当するので、引用発明の「第2の軟質被覆部14」は、本件発明1の「前記被覆部を前記軸部の基端側に延長するように前記軸部の前記円柱状の中間部分の周囲を被覆し、前記突起部を有さない円筒状の延長軟質部」に相当する。
オ イ~エの事項を総合すると、引用発明の「第2金型を用い、得られた基材部10を所定位置にセットした前記第2金型の成形空間にエラストマの溶融物を注入若しくは射出して加熱し、その後冷却して、基材部10に軟質部20及び第2の軟質被覆部14を一体成形」し、「第1、第2の軟質被覆部21、14が両者一体的に形成され」ることと、本件発明1の「前記基材部が収容された第2の金型に、前記軸部の先端側部分よりも基端側の円柱状の中間部分に対応する位置から軟質材を注入して、前記軸部の先端側部分を被覆する被覆部と、前記被覆部から突出する複数の突起部とを有する軟質部と、前記被覆部を前記軸部の基端側に延長するように前記軸部の中間部分を被覆し、前記突起部を有さない円筒状の延長軟質部とを成形する第2の工程」とは、前記基材部が収容された第2の金型に、軟質材を注入して、前記軸部の先端側部分を被覆する被覆部と、前記被覆部から突出する複数の突起部とを有する軟質部と、前記被覆部を前記軸部の基端側に延長するように前記軸部の前記円柱状の中間部分の周囲を被覆し、前記突起部を有さない円筒状の延長軟質部とを成形する第2の工程の限りで一致する。
カ 引用発明の「第2の軟質被覆部14は、第1の軟質被覆部21の基端と同じ外径を有するように成形される」ことは、引用文献1の段落【0056】の記載に照らせば、第2金型を用いて、基材部10に軟質部20及び第2の軟質被覆部14を一体成形することであるので、引用発明の「第2の軟質被覆部14は、第1の軟質被覆部21の基端と同じ外径を有するように成形される」ことと、本件発明1の「前記第2の工程において、前記延長軟質部は、前記軟質部の被覆部の基端と同じで、なおかつ一定の外径を有するように成形され」ることとは、前記第2の工程において、前記延長軟質部は、前記軟質部の被覆部の基端と同じ外径を有するように成形されることの限りで一致する。
キ 引用発明の「歯科清掃具1」は、本件発明1の「歯科清掃具」に相当する。
ク してみると、本件発明1と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「第1の金型に基材を注入して、基部と、前記基部から延在する軸部とを有する基材部を成形する第1の工程と、
前記基材部が収容された第2の金型に、軟質材を注入して、前記軸部の先端側部分を被覆する被覆部と、前記被覆部から突出する複数の突起部とを有する軟質部と、前記被覆部を前記軸部の基端側に延長するように前記軸部の前記円柱状の中間部分の周囲を被覆し、前記突起部を有さない円筒状の延長軟質部とを成形する第2の工程と、を有し、
前記第2の工程において、前記延長軟質部は、前記軟質部の被覆部の基端と同じ外径を有するように成形される、歯間清掃具の製造方法。」
<相違点1>
第2の金型に対する軟質材の注入に関し、本件発明1は、「前記軸部の先端側部分よりも基端側の円柱状の中間部分に対応する位置から」注入するのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
延長軟質部の外径に関し、本件発明1は、「一定の外径を有する」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点3>
本件発明1は、「前記延長軟質部の長さは、前記軟質部の長さの30%以上50%以下である」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
上記各相違点について以下検討する。
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。
<相違点3について>
突起部のある被覆部を有する歯間清掃具において、突起部を有さない延長被覆部に対応する部分を、突起部を有する被覆部に対応する部分の長さの16%程度にしたものは、例えば引用文献4~7に記載されるように(併せて、申立人が提出した資料1~4をそれぞれ参照。)、従来周知(以下「周知の事項」という。)であるものの、突起部を有さない延長被覆部に対応する部分を、突起部を有する被覆部に対応する部分の長さの30%以上50%以下にすることは、引用文献1~7のいずれにも記載されていないし、示唆もされていない。
また、申立人が提出した甲第2号証(国際公開第2013/176297号)にも上記事項を示唆する記載はなく、技術常識でもない。
してみると、歯間清掃具の技術分野において、歯間の形状や大きさに応じて適切な清掃を行うために、種々の形状やサイズの歯間清掃具を設計することが一般に行われていることであるとしても、引用発明において、第2の軟質被覆部14の長さを、第1の軟質被覆部21の長さの30%以上50%以下とすることが、当業者にとって容易になし得たこととはいえない。
そして、上記相違点3に係る事項とすることで、本件発明1は、「複数の突起部を有する軟質部を形成する空間の全体、特に、軟質材が供給されにくい、複数の突起部を形成する空間に、軟質材が、安定的かつ確実に供給される」(令和 7年 6月 6日に特許権者から提出された意見書の「オ 本件特許発明1の効果について」を参照。)という効果を奏するものである。
(3)小括
以上のとおりであり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明、周知の技術事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、本件発明1と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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