2024-700705
可変性透湿気密シート
- 審判番号
- 2024-700705
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-204451外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7423589
- 請求日
- 2024年07月26日
- 審決日
- 2025年04月22日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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特許第7423589号の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和3年12月16日(優先権主張 令和3年7月30日)に出願され、令和6年1月19日にその特許権の設定登録がされ、令和6年1月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和6年7月26日に特許異議申立人佐藤義光(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和6年11月7日付けで取消理由を通知した(発送日は同月12日)。これに対し、特許権者は、その指定期間内である令和7年1月9日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。その訂正の請求に対して、期間を指定して特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)請求項1について、冒頭の「目付が20~100g/m2のスパンボンド法熱可塑性長繊維不織布からなる基材層と、前記基材層の少なくとも片面上の透湿性樹脂層とを有する、透湿気密シートであって、」の記載の後に、「前記基材層と前記透湿性樹脂層との間に、接着剤層が介在しておらず、
前記熱可塑性長繊維不織布を構成する繊維の繊維径が1~20μmであり、」との記載を加入する(以下「訂正事項1-1」という。)。
(2)請求項1の「JIS-A-1324に準拠して測定された、23℃、50%RHの環境下の低湿時透湿抵抗値が10m2・s・Pa/μg以上300m2・s・Pa/μg未満であり、」の記載の前に、「前記透湿気密シートについて」との記載を加入する(以下「訂正事項1-2」という。)。
(3)請求項1の「JIS-L-1099 A-1に準拠して測定された、40℃、90%RHの環境下の高湿時透湿抵抗値が3m2・s・Pa/μg以上30m2・s・Pa/μg未満である、」の記載の前に、「前記透湿気密シートについて」との記載を加入する(以下「訂正事項1-3」という。)。
また、請求項1を引用する請求項2及び3についても同様に訂正するものである。
2 一群の請求項
本件訂正請求は、訂正前の請求項2~3が訂正の対象である請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項〔1~3〕に対して請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、請求項1をさらに限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
次に、明細書の発明の詳細な説明には【0017】に「・・・接着剤層の介在を要さずに、基材層と透湿性樹脂層とが積層一体化して、・・・」とあり、【0015】に「本発明の基材層として用いられる熱可塑性長繊維不織布を構成する繊維は、繊維径が0.1~30μmであることが好ましく、より好しくは0.1~25μm、更に好ましくは1~20μm、特に好ましくは1.5~20μm、最も好ましくは2~20μmである。」とあるから、「前記基材層と前記透湿性樹脂層との間に、接着剤層が介在していない」点及び「前記熱可塑性長繊維不織布を構成する繊維の繊維径が1~20μmである」点はそれぞれ明細書に記載されているので、新規事項の追加ではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもないと認められる。
(2) 訂正事項1-2及び1-3について
訂正事項1-2及び1-3は、訂正前の請求項1における低湿時透湿抵抗値及び高湿時透湿抵抗値が、それぞれ、透湿気密シートについての測定値であるのか、透湿性樹脂層についての測定値であるのかが不明瞭であったものを、透湿気密シートの測定値であることを明瞭にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
次に、明細書の発明の詳細な説明には【0033】に「本発明の透湿気密シートの透湿性は、JIS-A-1324に準拠して測定された、23℃、50%RHの条件下の低湿時透湿抵抗値が10m2・s・Pa/μg以上300m2・s・Pa/μg未満であって、JIS-L-1099 A-1に準拠して測定された、40℃、90%RHの環境下の高湿時透湿抵抗値が3m2・s・Pa/μg以上30m2・s・Pa/μg未満である。」とあるから、「低湿時透湿抵抗値」及び「高湿時透湿抵抗値」がそれぞれ「前記透湿気密シートについて」の測定値であることが把握されるので、新規事項の追加ではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】目付が20~100g/m2のスパンボンド法熱可塑性長繊維不織布からなる基材層と、前記基材層の少なくとも片面上の透湿性樹脂層とを有する、透湿気密シートであって、前記基材層と前記透湿性樹脂層との間に、接着剤層が介在しておらず、前記熱可塑性長繊維不織布を構成する繊維の繊維径が1~20μmであり、続きを表示(全12行)前記熱可塑性長繊維不織布の圧着面積率が、前記熱可塑性長繊維不織布の面積の6~40%であり、前記透湿性樹脂層が、エチレン・ビニルアルコール系共重合を含み、前記透湿気密シートについてJIS-A-1324に準拠して測定された、23℃、50%RHの環境下の低湿時透湿抵抗値が10m2・s・Pa/μg以上300m2・s・Pa/μg未満であり、前記透湿気密シートについてJIS-L-1099 A-1に準拠して測定された、40℃、90%RHの環境下の高湿時透湿抵抗値が3m2・s・Pa/μg以上30m2・s・Pa/μg未満である、透湿気密シート。【請求項2】前記スパンボンド法熱可塑性長繊維不織布を構成する熱可塑性長繊維の平均単糸繊度が0.7dtex以上5dtex以下である、請求項1に記載の透湿気密シート。【請求項3】前記透湿気密シートについて、JIS-K-7361-1に準拠して測定された全光透過率が40%以上75%以下である、請求項1又は2に記載の透湿気密シート。」
第4 取消理由通知書に起案した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、当審において、令和6年11月7日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1) 請求項1~3に係る特許は、低湿時透湿抵抗値及び高湿時透湿抵抗値が、それぞれ、透湿気密シートについての測定値であるのか、透湿性樹脂層についての測定値であるのかが明らかでないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2) 請求項1~3に係る発明は、引用文献1、2及び6に記載された発明及び引用文献3~5に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項1~3に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3) 請求項1~3に係る特許は、基材層と透湿樹脂層とを接着剤層で接合した構造を除外していない点で、発明の詳細な説明を超えるものであり、また、そのような構造は発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、同法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
引 用 文 献 等 一 覧
1:国際公開第2007/010388号(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
2:特開2002-172739号公報(同甲第2号証)
3:特開平7-258950号公報(同甲第3号証;周知技術を示す文献)
4:特開2013-142208号公報(当審で発見した周知技術を示す文献)
5:特開2004-98463号公報(同甲第6号証;周知技術を示す文献)
6:特開2004-42330号公報(同甲第7号証)
2 当審の判断
(1)特許法第36条第6項第2号について
低湿時透湿抵抗値及び高湿時透湿抵抗値が、それぞれ、透湿気密シートについての測定値であることは、上記の訂正事項1-2及び1-3により特定された。これにより、本件発明1~3は明確である。
したがって、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する。
(2)特許法第29条第2項について
ア 引用文献等の記載
(ア) 引用文献1は、以下の点を含め開示している。
a 不織布を含む建築材料の基材(20)とエチレンビニルアルコール(EVOH)のポリマーを含む水蒸気遅延膜(612、812)とを、含む、建築物の外壁のための積層物品(25)であること(請求項1、4参照)
b 水蒸気遅延膜は、建築材料の少なくとも1つの表面に接着されること([0092]参照)
c エチレンビニルアルコール(EVOH)のポリマーを含む水蒸気遅延膜において、華氏73度、試験室内相対湿度(「相対湿度」について以下「RH」という。)50%、カップ内RH0%、平均RH=25%における前記膜のASTM E96 Procedure A Dry Cup Testデータとして、その透湿量が0.8、2.6、0.9[grams/(24h*m2)]であること([0029][表1]のフィルム「Honeywell Capran○R(当審注:「○R」は、原文において○の中にRのある記号。以下同様。) OxyshieldTM OXTR machine direction oriented (coextrusion of Nylon and EVOH)」、「Honeywell Capran○R OxyshieldTM OBS machine direction oriented (coextrusion of Nylon and EVOH)」、「Eval EVOH EF-CR 27 mole% ethylene」参照)
d 水蒸気遅延膜において、ASTM F1249「変調赤外線センサーを用いたプラスチックフィルム及びシーティングを通した水蒸気透過率の標準試験方法」による40℃、カップ内RH0%、試験室内RH90%の試験データでの透湿量が37.7、62.4、115[grams/(24hr*m2)]であること([0031][表3]における上記cのフィルムを参照。)
以上によれば、引用文献1は、以下の発明(以下「引用発明」という。)を開示していると認められる。
「不織布を含む建築材料の基材と、基材に接合された水蒸気遅延膜と、を含む、建築物の外壁のための積層物品であって、前記膜は、建築材料に接着されており、前記膜は、エチレンビニルアルコール(EVOH)のポリマーを含み、華氏73度、試験室内RH50%、カップ内RH0%、平均RH=25%における前記膜のASTM E96 Procedure A Dry Cup Testでの透湿量が0.8、2.6又は0.9[grams/(24h*m2)]であり、ASTM F1249「変調赤外線センサーを用いたプラスチックフィルム及びシーティングを通した水蒸気透過率の標準試験方法」による40℃、カップ内RH0%、試験室内RH90%の試験データでの透湿量が37.7、62.4又は115[grams/(24hr*m2)]である、積層物品。」
(イ) 引用文献2は、特に【請求項1】、【請求項4】、【0001】、【0024】に、建材用の透湿気密シートの不織布として、目付が20~100g/m2のスパンボンド法熱可塑性長繊維不織布を開示している。
(ウ) 引用文献3は、特に【請求項1】、【0001】、【0013】、【0021】、【0031】に、防風防水透湿性シートに用いられる不織布をエンボスロールにて部分熱圧着した際の熱圧着面積率として、20、45%(実施例1~3)としたものを開示している。
(エ) 引用文献4は、特に【0017】、【0021】、【0024】、【0047】に、長繊維不織布であるスパンボンド不織布を部分圧着するにあたり、引張り強さの低下や耐摩耗性の低下を考慮して圧着面積率の下限値を設定し、不織布を硬い風合いとならないように圧着面積率の上限値を設定する事項を開示するとともに、不織布の具体例として圧着面積率11%又は22%のもの(実施例1~5)を開示している。
(オ) 引用文献5は、特に【0001】、【0003】、【0005】、【0032】に、建材等に用いられる積層体のスパンボンド不織布を構成する繊度として、2.2dtexのもの(実施例2)を開示している。
(カ) 引用文献6は、特に【0001】、【0006】、【0007】、【0010】、【0051】に、建材用透湿防水シートであって、通気性フィルムと不織布を積層一体化したシートにおいて、施工性の効率改善を目的として透明性を高める事項を開示するとともに、シートの具体例として光線透過率が52、55、63%(実施例1~3)のものを開示している。
(キ) 特許異議申立人が提出した甲第4号証(特開2001-113663号公報)は、特に【請求項1】、【0019】、【0021】~【0022】に、不織布とエバールフィルム等を貼合した積層体にエンボス加工を施した化粧シートを開示している。
(ク) 同甲第5号証(特開2009-52376号公報)は、特に【請求項1】、【0001】、【0032】に、EVOHシートを含む積層体にエンボス加工を施した壁紙を開示している。
イ 本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「不織布を含む基材と、基材に接合された水蒸気遅延膜と、を含む、建築物の外壁のための積層物品」は、本件発明1における「目付が20~100g/m2のスパンボンド法熱可塑性長繊維不織布からなる基材層と、前記基材層の少なくとも片面上の透湿性樹脂層とを有する、透湿気密シート」と対比して、「不織布からなる基材層と、前記基材層の少なくとも片面上の透湿性樹脂層とを有する、透湿気密シート」という限りにおいて一致する。
引用発明における「前記膜は、エチレンビニルアルコール(EVOH)のポリマーを含」む事項は、本件発明1における「前記透湿性樹脂層が、エチレン・ビニルアルコール系共重合を含」む事項に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明との一致点は次のとおりである。
<一致点>
不織布からなる基材層と、前記基材層の少なくとも片面上の透湿性樹脂層とを有する、透湿気密シートであって、
前記透湿性樹脂層が、エチレン・ビニルアルコール系共重合を含む、透湿気密シート。
一方、両発明は、少なくとも以下の2点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、不織布が「目付が20~100g/m2のスパンボンド法熱可塑性長繊維不織布」からなり、「前記基材層と前記透湿性樹脂膜との間に、接着剤層が介在しておらず、」「前記熱可塑性長繊維不織布の圧着面積率が、前記熱可塑性長繊維不織布の面積の6~40%」であるのに対し、引用発明は不織布の具体的な構成が不明であり、また、そもそも「前記膜は、建築材料に接着されて」いるものである点。
<相違点2>
透湿抵抗値に関し、本件発明1では、「基材層の少なくとも片面上の透湿性樹脂層とを有する、透湿気密シート」全体において、「JIS-A-1324に準拠して測定された、23℃、50%RHの環境下の低湿時透湿抵抗値が10m2・s・Pa/μg以上300m2・s・Pa/μg未満」であり、また、「JIS-L-1099 A-1に準拠して測定された、40℃、90%RHの環境下の高湿時透湿抵抗値が3m2・s・Pa/μg以上30m2・s・Pa/μg未満である」のに対して、引用発明では、「積層物品」を構成する一部の膜である「水蒸気遅延膜」において、「華氏73度、試験室内RH50%、カップ内RH0%、平均RH=25%における前記膜のASTM E96 Procedure A Dry Cup Testでの透湿量が0.8、2.6又は0.9[g/(24h*m2)]であり、ASTM F1249「変調赤外線センサーを用いたプラスチックフィルム及びシーティングを通した水蒸気透過率の標準試験方法」による40℃、カップ内RH0%、試験室内RH90%の試験データでの透湿量が37.7、62.4又は115[g/(24hr*m2)]」とされており、「積層物品」全体での透湿抵抗値が不明である点。
上記相違点1、2は関連するので、まとめて検討する。
引用発明は、基材と水蒸気遅延膜とを接着した積層体であるところ、接着剤の有無によって、積層体全体としての透湿抵抗値に影響を及ぼすことは当然である。そうすると、引用発明における「水蒸気遅延膜」の透湿抵抗値が本件発明の数値範囲を満たすとしても、接着剤により固定した基材を含めた積層体全体の透湿抵抗値までこれを満たすとは解されない。
また、引用発明は基材と水蒸気遅延膜との接着を前提に、水蒸気遅延膜それ自体の透湿抵抗値を調整しようというものであるから、接着以外の固定手段に代えた上で、積層体全体の透湿抵抗値を当該値に調整することについて動機はみられない。
また、上記相違点1及び2に係る本件発明1の事項は、引用文献1~6及び取消理由通知において引用しなかった甲第4~5号証のいずれにも開示も示唆もされていないから、引用発明において不織布と水蒸気遅延膜とを接着剤を介さずに積層し、上記相違点1に係る本件発明1の構成を備えることで、上記相違点2に係る本件発明1の透湿抵抗値とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。
そして、仮に、引用発明における基材層である不織布と水蒸気遅延膜との積層を接着層を介さずに行い、その際に圧着面積率が、前記熱可塑性長繊維不織布の面積の6~40%の積層体ができたとしても、その結果として、透湿抵抗が十分であり、施工性に優れるという本件発明1の格別顕著な効果を得られることを、当業者が予測し得たとは認められない。
したがって、本件発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2~3について
本件発明2~3は、本件発明1にさらに限定を付したものであるから、上記イと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号について
発明の詳細な説明の【0017】に「熱可塑性長繊維不織布の圧着面積率は、接着剤層の介在を要さずに、基材層と透湿性樹脂層とが積層一体化して、透湿気密シートとしての充分な強度及び機能を発揮するために重要な要件である。」とあるように、「基材層と透湿性樹脂層との間に接着剤層が介在するもの」については、発明の詳細な説明に記載を超えた発明であり、そのような発明は発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでもない。
一方、上記訂正事項1-1により、本件発明1~3は、「基材層と透湿樹脂層との間に接着剤層が介在していないもの」となった。これにより、本件発明1~3は基材層と透湿樹脂層とを接着剤層で接合した発明、すなわち、発明の詳細な説明の記載を超えた発明を含まないものとなった。
したがって、特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載された範囲内のものであるから、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものであり、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1~3に記載の「透湿気密シート」は、特定の基材層と特定の透湿樹脂層とが接着剤層を介して積層されている透湿気密シートを包含するのか否か判然としないから、特許を受けようとする発明が不明確である旨を主張する。
しかしながら、本件発明1~3は「前記基材層と前記透湿性樹脂層との間に、接着剤層が介在して」いないことを特定しているから、本件発明は明確であり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。
したがって、特許異議申立人のかかる主張は、採用することができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700705