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特許異議申立

2025-700898

履物

審判番号
2025-700898
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-073853
登録番号
7649060
請求日
2025年09月17日
審決日
2025年12月22日
公報発行日
2026年01月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社馬里奈
  • 【権利者代理人】弁理士法人共生国際特許事務所
  • 【異議申立人】佐藤 義光
審判長/審判官
  • 審判長 窪田 治彦
  • 審判官 関口 哲生
  • 審判官 川口 真一
分類
P1651.55 -Y (A43B) / P1651.537-Y (A43B) / P1651.113-Y (A43B) / P1651.121-Y (A43B) / 標準データ:手続:異議 / 標準データ:651・55-Y (A43B) / 標準データ:651・537 / 標準データ:651・113 / 標準データ:651・121
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)、特許情報標準データ(審判)

事件の表示

特許第7649060号発明「履物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7649060号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7649060号の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和5年4月27日の特許出願であって、令和7年3月11日にその特許権の設定登録がされ、令和7年3月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年9月17日に特許異議申立人 佐藤 義光は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第7649060号の請求項1~5の特許に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 履き口と、足指が差し入れられる本体部及び踵が接触する踵部が一体的に形成された甲皮と、靴底とからなる履物において、 前記履き口の後ろ側に向かって上方に反り返って形成された踵ガイド部と、 前記踵部の内面に前側に湾曲した形状に形成され、着用者のアキレス腱部に当接する弾性部材からなるクッション部と、 前記踵部の内面に水平方向に滑らかなアーチ状に形成されると共に、上方に向かって肉厚状となっている踵支持部とから形成され、 前記踵ガイド部と前記踵支持部とは共通に一体化された、硬質材料からなる踵部芯材を含み、前記踵部芯材は靴底から徐々に前方に傾きながら上方に向けて立ち上がり、水平方向に踵を囲むようにアーチ状に形成されると共に、水平面と踵部の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって履物後方に反り返り始める箇所で前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となって、前記最大に突出する箇所より上方では足首の形状に沿って履物後方に反り返り、履物後方に反り返り始める場所より下方では前記踵支持部の前記踵部芯材が踵と当接して踵をホールドする形状であり、 前記クッション部は前記踵部芯材の前方に最大に突出する肉厚状の部分を覆い、前記踵部芯材が履物後方に反り返り始める場所より上方で着用者の足首に当接するように設けられることを特徴とする履物。 【請求項2】 前記踵部は、踵部後部壁の前記靴底から立ち上がって足首に向けて履物前方に傾く外形曲線の傾き角が、前記履物前方の水平面から測って上方に50度から60度の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の履物。 【請求項3】 前記甲皮における本体部の一部又は全部が伸縮可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の履物。 【請求項4】 前記甲皮の本体部は、前記甲皮を構成する素材や構造の色相が補色又は差し色の関係をなしていることを特徴とする請求項1に記載の履物。 【請求項5】 前記甲皮における側壁部と前記踵部との境界部分に、蛍光材又は反射材含有の帯状の補強部材が上下方向に付設されていることを特徴とする請求項1に記載の履物。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人 佐藤 義光が特許異議申立書で主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。また、特許異議申立人は、特許異議申立書とともに、甲第1号証~甲第5号証を提出した(以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。)。 1 申立理由1(特許法第17条の2第3項:新規事項の追加) 令和6年11月29日付け手続補正書による手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に基づかないものであり、新規事項の追加に該当するから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 2 申立理由2(特許法第36条第6項第2号:明確性要件) 令和6年11月29日付け手続補正書による手続補正により追加された記載は不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3 申立理由3(特許法第29条第1項第3号:新規性) 本件発明1は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当する発明である。 本件発明3は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当する発明である。 4 申立理由4(特許法第29条第2項:進歩性) 本件発明1~3は、甲1に記載された発明から、本件発明4は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項から、本件発明5は、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項、甲4及び甲5に記載されているような慣用手段から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <証拠一覧> 甲1:国際公開第2023/064568号 甲2:スケッチャーズ SKECHERS レディース ウォーキングシューズ FLEX APPEAL 3.0-BREEZIN'KICK88888350 1900<URL:https://web.archive.org/web/20221002132342/https://fashionwalker.com/commodity/SALP0482D/SK693BW10919/> 甲3:手を使わずに”簡単にスッと履ける”画期的なシューズ【Slip-ins(スリップ・インズ)】が新登場!<URL:https://web.archive.org/web/20220725070723/https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000074058.html> 甲4:実願昭58-125023号(実開昭60-33386号)のマイクロフィルム 甲5:実願昭48-35699号(実開昭49-137731号)のマイクロフィルム 第4 当審の判断 1 申立理由1(新規事項の追加)について (1)申立理由1の具体的内容 令和6年11月29日付け手続補正書により新たに追加された「水平の面と踵部の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって履物後方に反り返り始める箇所で前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となって」との補正事項は、当初明細書等の記載に基づかないものであり、新規事項の追加に該当する。(特許異議申立書2頁) (2)当審の判断 当初明細書等には、段落【0028】に、「図4に示すように、踵部後部壁11の断面形状は、踵を納め足首を保持するために、靴底5から上方に向けて立ち上がった後、足首に沿う形で履物前方に傾き、水平面と踵部後部壁の外形曲線のなす傾き角αが最小角度となった後、履物後方に反り返ることで足首の形状にフィットした形状となっている。」と記載され、段落【0029】には、「・・・靴底5から上方に向けて立ち上がり、踵に沿って履物前方に傾いた後、足首の形状に沿って履物後方に反り返り始める場所、すなわち水平面と後部壁11の外形曲線のなす傾き角αが最小となる箇所で、それより下方では踵支持部17の踵部芯材14が踵と当接する形状とし、それより上方ではクッション部16が足首に当接する形状とすることが好適である。」と記載されている。 一般的に、「反り返る」という語は、「1.甚だしくそる。後ろの方へそりまがる。2.体を後ろにそらして、いばるさまをする。そっくりかえる。ふんぞりかえる。」(広辞苑第五版)と説明されていることを勘案すると、本件において「反り返る」とは、ある角度の状態から、角度が大きくなる方向に立ち上がっていく(傾き角が大きくなっていく)状態になることを意味しているといえる。そして、【図4】には、履物後方に反り返り始める箇所が、踵部の後部壁11の外形曲線の水平線となす角度が、図示された傾き角αよりも大きくなり始める箇所であることが記載されていると認められ、段落【0029】の「履物後方に反り返り始める場所、すなわち水平面と後部壁11の外形曲線のなす傾き角αが最小となる箇所」という記載とも整合性がとれている。さらに【図4】には、「履物後方に反り返り始める場所、すなわち水平面と後部壁11の外形曲線のなす傾き角αが最小となる箇所」において、踵部芯材14が、前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となっている点が記載されていると認められる。 してみれば、当初明細書等には、「水平の面と踵部の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって履物後方に反り返り始める箇所で前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となって」いる点が記載されているといえる。 したがって、上記(1)に示した手続補正は、新規事項を追加するものではない。 特許異議申立人は、特許異議申立書18ページ第6-12行において、「「水平面と踵部の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる『場所』」と「履物後方に反り返り始める『箇所』」とが同一の所であるとは、数理的に明らかに誤った記載であるから、「水平面と踵部の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる『場所』」、「履物後方に反り返り始める『箇所』」及び「最大に突出する『箇所』」の三ヵ所が同一の所とは、到底なり得ない。」と主張している。しかしながら、上記のとおり、「水平面と踵部の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所」と、「履物後方に反り返り始める箇所」と、「前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となって」いる箇所の3つの箇所が、同じ位置であることは、当初明細書等に記載されていると認められ、何ら不合理ではない。そして、明細書等の記載から総合的に判断すると、数理的に誤っているともいえない。さらに、本件発明1が、踵支持部に肉厚部を設け、肉厚部の下方に入り込んだ踵部を適切にホールドする(段落【0040】参照)ことを目的としていることを考慮すると、踵部を適切にホールドする目的を達成するために、履物後方に反り返り始める箇所において踵部芯材の厚みが最も厚くなっていることは技術的に合理的であるといえる。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 以上のとおりであるから、申立理由1は、理由がない。 2 申立理由2(明確性要件違反)について (1)申立理由2の具体的内容 令和6年11月29日付け手続補正書により新たに追加された「水平面と踵部の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって履物後方に反り返り始める箇所で前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となって」との記載は、不明確である。(特許異議申立書2頁) (2)当審の判断 上記1(2)のとおり、「水平の面と踵部の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって履物後方に反り返り始める箇所で前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となって」いる点は、当初明細書等に記載されているといえる。また、明細書等の記載を参考に、請求項の記載を総合的にみると、当該記載は明確であり、数理的に誤っているともいえない。 以上のとおりであるから、申立理由2は、理由がない。 3 申立理由3(新規性)、申立理由4(進歩性)について (1)本件発明1について ア 甲1の記載及び引用発明 (ア)甲1(日本語訳については、特表2024-535159号公報(以下「日本語公報」という。)参照。)には、次の事項が記載されている。 ・「[0044] In an exemplary embodiment of the heel cup 52 as shown in FIGS. 1-4, the thickness T1 of a heel cup 52 made of a polymer material, such as Dupont Hytrel, may range from 0.4 millimeters to 4 millimeters. The range of thickness T1 of the heel cup may be thinner or thicker at various regions depending on the desired elastic and durable properties of the material. For example, the midpoint region may be thinner than the surrounding regions, and in particular a central portion may be thinner as shown in FIG 6B. The central portion may be spaced away from the medial and lateral edges wherein the peripheral edges may have a greater thickness. Other suitable materials may include other thermoplastic elastomers or other polymers capable of providing the compressible characteristics of the heel cup.」(対応する日本語公報の段落【0019】「図1~図4に示すようなヒールカップ52の例示的な実施形態では、デュポンハイトレル(Dupont Hytrel)などのポリマー材料で形成されたヒールカップ52の厚みT1が、0.4ミリメートル~4ミリメートルの範囲に及ぶことができる。ヒールカップの厚みT1の範囲は、材料の所望の弾性特性及び耐久特性に応じて様々な領域で薄く又は厚くすることができる。例えば、中央部を周辺部よりも薄くすることができ、具体的には図6Bに示すように中心部分を薄くすることができる。中心部分は、内側縁及び外側縁から間隔を空けることができ、周縁部の方が大きな厚みを有することができる。他の好適な材料としては、ヒールカップの圧縮可能な特性をもたらすことができる他の熱可塑性エラストマー又は他のポリマーを挙げることができる。」) ・「[0048] Further to the exemplary embodiment, the heel cup 52 may be attached at least to an interior foam layer 92, as shown in FIG. 10. The heel cup 52 may be located in the interior of the heel counter 32 of the upper 16 as shown in FIGS, 8-10. The foam layer 92 may line both the inner wall 66 of the heel cup 52 and outer wall of the heel cup 52. Around the upper portion and mid-portion, the foam layer 92 may protrude and extend further into the shoe opening 48. The foam layer 92 may be thicker at or adjacent to the upper portion 64 and mid-portion 58 of the heel cup 52 thereby forming part of the cuff of the shoe opening 48. The thicker foam layer 92 may provide securement of the user’s foot once inserted within the shoe 12 as the foam would be located above the calcaneus bone region of the user’s foot and extend around at least portions of the ankle region of the foot. Since the foam is compressible, the foam may be compressed by the heel during foot insertion or removal and hold the ankle of the user’s foot once the foot is inserted.」(対応する日本語公報の段落【0023】「この例示的な実施形態に加えて、図10に示すように、ヒールカップ52は少なくとも内部発泡層92に取り付けることができる。図8~図10に示すように、ヒールカップ52は、アッパー16のヒールカウンタ32の内部に配置することができる。発泡層92は、ヒールカップ52の内壁66及びヒールカップ52の外壁の両方を覆うことができる。発泡層92は、上部及び中間部の周囲でさらに靴開口部48内に突出して広がることができる。発泡層92は、ヒールカップ52の上部64及び中間部58又はその近傍で厚くなることにより、靴開口部48のカフの一部を形成することができる。厚い発泡層92では、発泡体がユーザの足の踵骨領域の上方に位置して足の足首領域の少なくとも一部の周囲に広がるため、ユーザの足が靴12に挿入された時点で足を固定することができる。発泡体は圧縮可能であるため、足の出し入れの最中に発泡体が踵によって圧縮され、足が挿入された時点で足首を保持することができる。」) 「図1 [図:0001431172000001.jpg] 」 「図2 [図:0001431172000002.jpg] 」 「図3 [図:0001431172000003.jpg] 」 「図6A [図:0001431172000004.jpg] 」 「図6B [図:0001431172000005.jpg] 「図8 [図:0001431172000006.jpg] 」 「図9 [図:0001431172000007.jpg] 」 「図10 [図:0001431172000008.jpg] 」 (イ)段落[0048](日本語公報の段落【0023】)、図8~10に示された実施例において、アッパー16は、ヒールカウンタ32を備えることが把握でき、前記段落の記載及び図9、10の図示内容を踏まえると、ヒールカウンタ32は、その上縁からアッパー16の内部に向かって延びる下向き傾斜部を備えることが把握でき、同様に、ヒールカウンタ32は、水平断面が踵の後部を取り囲む凹状となっている湾曲部とその上方の内部発泡層92の厚い部分を備えていることが把握できる。また、前記段落の記載及び図1~3、9、10の図示内容を踏まえると、内部発泡層92は、ヒールカップ52の内壁66及び外壁の両方を覆い、靴開口部48内に突出して広がる湾曲した形状を備えているといえ、また、ヒールカップ52の前方に最大に突出する肉厚状の部分を覆い、ヒールカップ52が靴12後方に反り返り始める場所より上方でユーザの足首に当接するように設けられているといえる。 そして、図1~3、6A、6B、10の図示内容等を踏まえると、ヒールカップ52は靴底から徐々に前方に傾きながら上方に向けて立ち上がり、水平断面が踵の後部を取り囲む凹状湾曲部となっていると共に、水平面とヒールカウンタ32の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって靴12後方に反り返り始める箇所P1(図6A参照)より上方で、徐々に上方に向かって厚さが増していき、その後、前方に最大に突出するように肉厚状となって、最大に突出する箇所より上方では靴12後方に反り返り、靴12後方に反り返り始める場所より下方では水平断面が踵の後部を取り囲む凹状湾曲部となっていることが把握できる。 すると、甲1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「靴開口部48と、ヒールカウンタ32を備えたアッパー16と、ソールとからなる靴12において、 前記ヒールカウンタ32の上縁からアッパー16の内部に向かって延びる下向き傾斜部と、 ヒールカップ52の内壁66及び外壁の両方を覆い、前記靴開口部48内に突出して広がる湾曲した形状を備え、足の出し入れの最中に踵によって圧縮され、足が挿入された時点で足首を保持することができる内部発泡層92と、 前記ヒールカウンタ32の水平断面が前記踵の後部を取り囲む凹状となっている湾曲部とその上方の内部発泡層92の厚い部分とから形成され、 前記ヒールカウンタ32の内部にポリマー材料で形成されたヒールカップ52が配置され、前記ヒールカップ52は靴底から徐々に前方に傾きながら上方に向けて立ち上がり、水平断面が踵の後部を取り囲む凹状湾曲部となっていると共に、水平面とヒールカウンタ32の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって靴12後方に反り返り始める箇所P1より上方で、徐々に上方に向かって厚さが増していき、その後、前方に最大に突出するように肉厚状となって、最大に突出する箇所より上方では靴12後方に反り返り、靴12後方に反り返り始める場所より下方では水平断面が踵の後部を取り囲む凹状湾曲部となっており、 前記内部発泡層92は前記ヒールカップ52の前方に最大に突出する肉厚状の部分を覆い、ヒールカップ52が靴12後方に反り返り始める場所より上方でユーザの足首に当接するように設けられる靴12。」 イ 対比 本件発明1と引用発明とを、その有する機能に照らして対比する。 (ア)引用発明の「靴開口部48」、「ヒールカウンタ32を備えたアッパー16」、「ソール」、「靴12」、「内部発泡層92」、「ヒールカップ52」及び「ユーザ」は、それぞれ本件発明1の「履き口」、「足指が差し入れられる本体部及び踵が接触する踵部が一体的に形成された甲皮」、「靴底」、「履物」、「クッション部」、「踵部芯材」及び「着用者」に相当する。 (イ)引用発明の「前記ヒールカウンタ32の上縁からアッパー16の内部に向かって延びる下向き傾斜部」は、本件発明1の「前記履き口の後ろ側に向かって上方に反り返って形成された踵ガイド部」に相当する。 (ウ)引用発明の「ヒールカップ52の内壁66及び外壁の両方を覆い、前記靴開口部48内に突出して広がる湾曲した形状を備え、足の出し入れの最中に踵によって圧縮され、足が挿入された時点で足首を保持することができる内部発泡層92」は、本件発明1の「前記踵部の内面に前側に湾曲した形状に形成され、着用者のアキレス腱部に当接する弾性部材からなるクッション部」に相当する。 (エ)引用発明の「前記ヒールカウンタ32の水平断面が前記踵の後部を取り囲む凹状となっている湾曲部とその上方の内部発泡層92の厚い部分」は、本件発明1の「前記踵部の内面に水平方向に滑らかなアーチ状に形成されると共に、上方に向かって肉厚状となっている踵支持部」に相当する。 (オ)引用発明の「前記ヒールカウンタ32の内部にポリマー材料で形成されたヒールカップ52が配置され」た点は、本件発明1の「前記踵ガイド部と前記踵支持部とは共通に一体化された、硬質材料からなる踵部芯材を含」む点に相当する。 (カ)引用発明の「前記ヒールカップ52は靴底から徐々に前方に傾きながら上方に向けて立ち上がり、水平断面が踵の後部を取り囲む凹状湾曲部となっている」点は、本件発明1の「前記踵部芯材は靴底から徐々に前方に傾きながら上方に向けて立ち上がり、水平方向に踵を囲むようにアーチ状に形成される」点に相当する。 (キ)引用発明の「ヒールカップ52」は、「水平面とヒールカウンタ32の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって靴12後方に反り返り始める箇所P1より上方で、徐々に上方に向かって厚さが増していき、その後、前方に最大に突出するように肉厚状となって、最大に突出する箇所より上方では靴12後方に反り返り、靴12後方に反り返り始める場所より下方では水平断面が踵の後部を取り囲む凹状湾曲部となって」いる点と、本件発明1の「踵部芯材」は「水平面と踵部の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって履物後方に反り返り始める箇所で前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となって、前記最大に突出する箇所より上方では足首の形状に沿って履物後方に反り返り、履物後方に反り返り始める場所より下方では前記踵支持部の前記踵部芯材が踵と当接して踵をホールドする形状であ」る点は、「踵部芯材」は「前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となって、前記最大に突出する箇所より上方では履物後方に反り返り、履物後方に反り返り始める場所より下方では踵をホールドする形状であ」る点で共通する。 そうすると、本件発明1と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。 <一致点> 「 履き口と、足指が差し入れられる本体部及び踵が接触する踵部が一体的に形成された甲皮と、靴底とからなる履物において、 前記履き口の後ろ側に向かって上方に反り返って形成された踵ガイド部と、 前記踵部の内面に前側に湾曲した形状に形成され、着用者のアキレス腱部に当接する弾性部材からなるクッション部と、 前記踵部の内面に水平方向に滑らかなアーチ状に形成されると共に、上方に向かって肉厚状となっている踵支持部とから形成され、 前記踵ガイド部と前記踵支持部とは共通に一体化された、硬質材料からなる踵部芯材を含み、前記踵部芯材は靴底から徐々に前方に傾きながら上方に向けて立ち上がり、水平方向に踵を囲むようにアーチ状に形成されると共に、前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となって、前記最大に突出する箇所より上方では履物後方に反り返り、履物後方に反り返り始める場所より下方では踵をホールドする形状であり、 前記クッション部は前記踵部芯材の前方に最大に突出する肉厚状の部分を覆い、前記踵部芯材が履物後方に反り返り始める場所より上方で着用者の足首に当接するように設けられる履物。」 <相違点> 踵部芯材について、本件発明1は、「水平面と踵部の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって履物後方に反り返り始める箇所で前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となって」おり、「足首の形状に沿って」履物後方に反り返り、履物後方に反り返り始める場所より下方では「前記踵支持部の前記踵部芯材が踵と当接して踵をホールドする形状であ」るのに対し、引用発明は、「水平面とヒールカウンタ32の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって靴12後方に反り返り始める箇所より上方で、徐々に上方に向かって厚さが増していき、その後前方に最大に突出するように肉厚状となって」おり、靴12後方に反り返っているものの、足首の形状に沿っているか明らかでなく、靴12後方に反り返り始める場所より下方では水平断面が踵の後部を取り囲む凹状湾曲部となっているものの、ヒールカップ52(踵部芯材)が踵と当接しているとはいえない点。 ウ 当審の判断 以下、<相違点>について検討する。 引用発明は、ヒールカップ52について、水平面とヒールカウンタ32の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって靴12後方に反り返り始める箇所より上方で、徐々に上方に向かって厚さが増していき、その後前方に最大に突出するように肉厚状となっている。すなわち、水平面とヒールカウンタ32の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって靴12後方に反り返り始める箇所と、前方に最大に突出するように肉厚状となっている箇所は、それぞれの位置が上下方向にずれた構成となっている。また、引用発明は、ヒールカップ52について、靴12後方に反り返り始める場所より下方では水平断面が踵の後部を取り囲む凹状湾曲部となっているものの、甲1の図10や段落[0048]の記載から、ヒールカップ52が、内部発泡層92に覆われており、ヒールカップ52が踵と当接した構成は記載されていない。 してみると、上記相違点は、実質的な相違点であって、本件発明1は、引用発明であるといえない。 また、特許異議申立人が提出した甲第2~5号証においても、踵部芯材について、「水平面と踵部の後部壁の外形曲線とのなす傾き角度が最小となる場所であって履物後方に反り返り始める箇所で前方に最大に突出するように上方に向かって肉厚状となって」いることや、「履物後方に反り返り始める場所より下方では踵と当接して踵をホールドする形状であ」ることについて、記載も示唆もされていない。 そして、本件発明1は、上記相違点に係る構成を有することにより、「踵の踵骨隆起が、踵支持部17に設けた肉厚部の下方に入りこんで踵部3に包まれた状態になるため、足に負担なく適切にホールドされると共に、踵骨隆起が踵支持部17の段差に押さえられるために不用意に履物が脱げることを避けることが可能とな」(段落【0040】参照)るという格別顕著な効果を奏するものであるから、当該構成を当業者が適宜なし得た設計的事項とすることもできない。 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。 してみると、本件発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3について 本件発明3についても、本件発明1の相違点に係る発明特定事項と同様の発明特定事項を備えるものであるから、前記(1)に示した本件発明1についての理由と同様の理由により、本件発明3は、引用発明であるとはいえない。また、本件発明3は、引用発明及び甲1~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2、4、5について 本件発明2、4、5についても、本件発明1の相違点に係る発明特定事項と同様の発明特定事項を備えるものであるから、前記(1)に示した本件発明1についての理由と同様の理由により、引用発明及び甲1~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、申立理由3、申立理由4は、理由がない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700898

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同じ出願・登録の審決1件(出願 特願2023-073853)
  • 2024-003190拒絶査定不服審判 / 2025-01-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)履物
    同じ出願番号
同じ当事者の審決35件(佐藤 義光、株式会社馬里奈)
  • 2025-700666異議申立 / 2026-06-04 / 訂正認容宇宙船推進システム及び操作方法
    同じ当事者: 佐藤 義光
  • 2025-701131異議申立 / 2026-05-22 / 維持半導体製造装置用部材
    同じ当事者: 佐藤 義光
  • 2025-700371異議申立 / 2026-03-25 / 訂正認容乗員拘束装置
    同じ当事者: 佐藤 義光
  • 2025-700518異議申立 / 2025-08-29 / 維持ウエハ載置台
    同じ当事者: 佐藤 義光
  • 2025-700480異議申立 / 2025-06-25 / 維持保持部材
    同じ当事者: 佐藤 義光
同じ論点・分野の審決(審決分類)109件(113・A43B、121・A43B、537・A43B ほか)
  • 2024-002321拒絶査定不服審判 / 2026-03-02 / 原査定取消(特許/登録すべき)リブ付きアウトソールおよびノッチ入りミッドソールを有する履物物品
    共通の審決分類: 113・A43B、121・A43B、537・A43B、55・A43B
  • 2023-010718拒絶査定不服審判 / 2025-08-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)ケーブルおよびアッパーテンショナを有する自動化されたフットウェア
    共通の審決分類: 113・A43B、121・A43B、537・A43B、55・A43B
  • 2022-017057拒絶査定不服審判 / 2023-12-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)三次元構造物
    共通の審決分類: 113・A43B、121・A43B、537・A43B、55・A43B
  • 2022-003675拒絶査定不服審判 / 2023-06-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)履物
    共通の審決分類: 113・A43B、121・A43B、537・A43B、55・A43B
  • 2021-018213拒絶査定不服審判 / 2023-02-20 / 請求不成立再利用可能なカスタマイズされたインソール
    共通の審決分類: 113・A43B、121・A43B、537・A43B、55・A43B

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