2024-700595
蓄電装置用外装材
- 審判番号
- 2024-700595
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-104971外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7403208
- 請求日
- 2024年06月21日
- 審決日
- 2024年08月15日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
特許第7403208号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成29年5月26日に出願され、令和5年12月14日にその特許権が設定登録され、令和5年12月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年6月21日に特許異議申立人松山徳子(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7403208号の請求項1ないし6の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、及び、シーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材であって、前記シーラント層がポリプロピレン系樹脂(A)及び前記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含み、前記非相溶系成分(B)が、前記ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶部を有する化合物であり、グラフト共重合体、又は結晶性エチレンユニットから構成されるブロックとエチレン-ブチレンユニットから構成されるブロックとを有するブロック共重合体、エチレンから構成されるブロックとエチレン-オクテン1から構成されるブロックとを有するブロック共重合体、若しくはプロピレンユニットから構成されるブロックとエチレンユニットから構成されるブロック共重合体を含む化合物(B1)を含有し、続きを表示(全23行)前記非相溶系成分(B)の含有量が、前記シーラント層全量を基準として、1~40質量%であり、前記シーラント層同士が対向するように重ねた前記外装材を、温度190℃、圧力0.5MPa、3秒の条件でヒートシールして、接着した接着部について、その一端から他端までのシール強度を連続的に測定したときの、前記一端からの変位と前記シール強度との関係を示すグラフにおいて、最大シール強度SMが35N/15mm以上であり、且つ、下記(1)又は(2)の条件を満たす、蓄電装置用外装材(但し、少なくとも基材層、第1の接着層、バリア層、第2の接着層、シーラント層がこの順で積層されてなる電池外装用ラミネートフィルムであって、該シーラント層は、下記成分(A)と下記成分(B)を含む配合物で形成された(I)層を少なくとも1層有することを特徴とする電池外装用ラミネートフィルムを除く。成分(A):メタロセン系触媒を用いて製造された密度0.930g/cm3以上0.950g/cm3以下のポリエチレン成分(B):ポリプロピレンマトリックスにゴムが分散されたポリプロピレン系エラストマー)。(1) 前記最大シール強度SMが得られた変位以降にシール強度の安定域が存在し、該安定域におけるシール強度SSの前記最大シール強度SMに対する比SS/SMが0.3以上である。(2) 前記安定域が存在せず、前記最大シール強度SMが得られた変位から前記他端までの変位における平均シール強度SAの前記最大シール強度SMに対する比SA/SMが0.3以上である。【請求項2】前記グラフにおいて、前記最大シール強度SMが40N/15mm以上であり、前記比SS/SM又は前記比SA/SMが0.6以上である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。【請求項3】前記シーラント層が複数の層からなり、そのうちの少なくとも一層が前記ポリプロピレン系樹脂(A)及び前記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である前記非相溶系成分(B)を含み、且つ、前記非相溶系成分(B)が前記化合物(B1)を含有する層である、請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。【請求項4】前記非相溶系成分(B)はエチレン-αオレフィン共重合体を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。【請求項5】前記シーラント層は、前記ポリプロピレン系樹脂(A)と相溶する相溶系エラストマー(C)をさらに含み、前記相溶系エラストマー(C)はプロピレン-αオレフィン共重合体を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。【請求項6】前記シーラント層の厚さは10~45μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人の特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
本件の請求項1ないし3、5、6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明とに基づいて、本件の請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明とに基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載され得た発明とに基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項1ないし6に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
[証拠]
第4 甲号証の記載
1 甲第1号証
(1)記載事項
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甲第1号証には、「電池用包装材料」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【請求項1】(A-1)融点が156℃以上でエチレン含有量が5質量%以下のプロピレン-エチレンのランダム共重合体、及び(A-2)融点が158℃以上でエチレン含有量が7質量%以下のプロピレン-エチレンのブロック共重合体の少なくとも一方と、(B)融点が135℃以上のポリオレフィン系エラストマーと、を含む、電池用包装材料のシーラント層用の樹脂組成物。・・・中略・・・【請求項7】少なくとも、基材層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなる電池用包装材料であって、前記シーラント層が、請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物により形成された層を含む、電池用包装材料。」
「【0009】このような状況下、本発明は、電池用包装材料のシーラント層に使用された場合に、電池用包装材料のヒートシールされたシール部を屈曲した場合のクラックの発生を抑制し、さらにシール部が高温または電解液に晒された場合にも高いシール強度を有し、電池用包装材料の成形時などにおいて延伸された場合のクラックの発生を抑制することによって、電池用包装材料に高い絶縁性、密封性、及び成形性を付与し得る樹脂組成物を提供することを主な目的とする。本発明は、さらに、当該樹脂組成物をシーラント層に用いた電池用包装材料を提供することも目的とする。」
「【0015】1.樹脂組成物本発明の樹脂組成物は、例えば後述するような電池用包装材料のシーラント層に用いられる樹脂組成物であって、(A-1)融点が156℃以上でエチレン含有量が5質量%以下のプロピレン-エチレンのランダム共重合体、及び(A-2)融点が158℃以上でエチレン含有量が7質量%以下のプロピレン-エチレンのブロック共重合体の少なくとも一方と、(B)融点が135℃以上のポリオレフィン系エラストマーとを含む。」
「【0019】本発明の樹脂組成物中における(A-2)ブロック共重合体の含有量としては、本発明の効果を奏することを限度として特に制限されないが、好ましくは25~80質量%程度、より好ましくは30~70質量%程度、さらに好ましくは33~65質量%程度が挙げられる。」
「【0021】(B)融点が135℃以上のポリオレフィン系エラストマー(以下、単に「(B)ポリオレフィン系エラストマー」と表記することがある)は、融点が135℃以上であり、エラストマーとしての特性を備えるもの(即ち、ポリオレフィン系エラストマー)であれば、特に制限されない。(B)ポリオレフィン系エラストマーとしては、シール強度の向上、ヒートシール後の層間剥離の防止等の観点から、好ましくはプロピレン系エラストマーが挙げられる。プロピレン系エラストマーとしては、プロピレンと、1種又は2種以上の炭素数2~20のα-オレフィン(プロピレンを除く)を構成モノマーとして含む重合体が挙げられ、プロピレン系エラストマーを構成する炭素数2~20のα-オレフィン(プロピレンを除く)としては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。(B)ポリオレフィン系エラストマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の樹脂組成物においては、上記の(A-1)ランダム共重合体と(A-2)ブロック共重合体の少なくとも一方という、共に特定の融点とエチレン含有量を有するプロピレン-エチレン共重合体に対して、特定の融点を有する(B)ポリオレフィン系エラストマーを配合することによって、樹脂組成物の柔軟性が向上し、樹脂組成物が電池用包装材料のシーラント層に使用された場合に、電池用包装材料のヒートシールされたシール部を屈曲した場合にも高い絶縁性を付与することができる。また、(B)ポリオレフィン系エラストマーを加えることにより、電池用包装材料のシール部が高温または電解液に晒された場合にも高いシール強度を有するため、優れた密閉性を付与することができ、さらに、電池用包装材料が延伸された場合のクラックの発生が抑制されるため、優れた成形性を付与することもできる。」
「【0033】2.電池用包装材料電池用包装材料は、少なくとも、基材層1、金属層3、及びシーラント層4をこの順に有する積層体からなる。図1に示すように、電池用包装材料は、基材層1と金属層3との間に接着層2を有していてもよい。本発明の電池用包装材料が電池に使用される際には、基材層1が最外層になり、シーラント層4が最内層(電池素子側)になる。電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層4同士を接面させて熱溶着することにより電池素子が密封され、電池素子が封止される。また、電池用包装材料は、図2に示すように、金属層3とシーラント層4との間に接着層5を有していてもよい。」
「【0049】[金属層3]本発明の電池用包装材料において、金属層3は、包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層3を形成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属箔が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好適に使用される。包装材料の製造時にしわやピンホールを防止するために、本発明において金属層3として、軟質アルミニウム、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P-O)又は(JIS A8079P-O)等を用いることが好ましい。【0050】金属層3の厚さについては、例えば、10~200μm、好ましくは20~100μmが挙げられる。【0051】また、金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために、少なくとも一方の面、好ましくは少なくともシーラント層4側の面、更に好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層3の表面に耐酸性皮膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等のクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理等が挙げられる。」
「【0061】[シーラント層4]本発明の電池用包装材料において、シーラント層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層4同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。シーラント層4は、本発明の樹脂組成物により形成された1層により構成されていてもよいし、当該樹脂組成物により形成された複数の層により構成されていてもよい。また、シーラント層4は、本発明の樹脂組成物により形成された層に加えて、さらに他の層を1層以上有していてもよい。他の層を形成する樹脂としては、本発明の効果を奏することを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンなどが挙げられる。」
「【0068】シーラント層4の厚みは、特に制限されないが、例えば、2μm~2000μm程度、好ましくは5μm~1000μm程度、さらに好ましくは10μm~500μmとすることができる。」
「【0099】本発明の電池用包装材料において、シーラント層4同士を対向させた状態でヒートシール(ヒートシール条件:190℃、面圧1.0MPaで3秒間)した部分のシール強度としては、25℃において、好ましくは30(N/15mm)以上、より好ましくは40~200(N/15mm)が挙げられる。また、本発明の電池用包装材料において、シーラント層4同士を対向させた状態でヒートシール(ヒートシール条件:190℃、面圧1.0MPaで3秒間)した部分のシール強度としては、125℃において、好ましくは4(N/15mm)以上、より好ましくは5~100(N/15mm)が挙げられる。さらに、本発明の電池用包装材料の引張降伏点強度(MD+TD)としては、好ましくは50MPa以下、より好ましくは35MPa以下が挙げられる。本発明の電池用包装材料の引張降伏点強度がこのような低い値になる場合、シーラント層4が柔らかく、電池用包装材料が延伸された場合のクラックの発生がより効果的に抑制されるため、成形性に優れ、さらに、シール部を屈曲した場合のクラックの発生がより効果的に抑制されるため、絶縁性も優れる。すなわち、樹脂組成物の融点を実質的に下げることなく、樹脂組成物に高い柔軟性を付与することが可能となる。これにより、本発明の樹脂組成物を電池用包装材料のシーラント層に用いた場合に、後述の電池用包装材料の引張降伏点強度(MD+TD)を低くすることができるため、ヒートシール時に付加される圧力を均一化する効果が高くなり、均一なシールが可能となって、高い密封性が得られる。さらに、ヒートシール後に起こる樹脂冷却において、樹脂組成物における結晶核の成長や結晶核数の増加を抑制する効果が発現し、シール後の結晶核の増大や不均一化で起こる微細なクラック等が防止できる。このため、シール強度を高め得るとともに、内容物である電解液の浸透性を抑制することも可能となり、安定した密封性が得られる。なお、本発明の電池用包装材料の引張降伏点強度は、JIS K7161-1994に準拠した方法により測定した値である。」
「【図1】[図:0001414234000001.jpg]」
(2)記載された技術的事項
上記摘記した記載より、甲第1号証には次の技術的事項が記載されているといえる。
a 【請求項7】及び段落【0033】の記載によれば、甲第1号証には、「基材層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなる電池用包装材料」が記載されている。
b 【請求項1】及び段落【0015】の記載によれば、「電池用包装材料のシーラント層に用いられる樹脂組成物」は「(A-1)融点が156℃以上でエチレン含有量が5質量%以下のプロピレン-エチレンのランダム共重合体、及び(A-2)融点が158℃以上でエチレン含有量が7質量%以下のプロピレン-エチレンのブロック共重合体の少なくとも一方と、(B)融点が135℃以上のポリオレフィン系エラストマーと、を含む」ものであり、段落【0009】の記載によれば、当該樹脂組成物は、「シール部が」「電解液に晒された場合にも高いシール強度を有し、電池用包装材料の成形時などにおいて延伸された場合のクラックの発生を抑制することによって、電池用包装材料に高い絶縁性、密封性、及び成形性を付与し得る」ものである。
c 段落【0019】の記載によれば、「樹脂組成物中における(A-2)ブロック共重合体の含有量」は「25~80質量%程度」である。
d 段落【0021】の記載によれば、「(B)融点が135℃以上のポリオレフィン系エラストマー」としては「プロピレンと、1種又は2種以上の炭素数2~20のα-オレフィン(プロピレンを除く)を構成モノマーとして含む重合体」である。
e 段落【0049】、【0051】の記載によれば、「金属層3は、」「金属箔」であり、「溶解や腐食の防止等のために、」「シーラント層4側の面、更に好ましくは両面が化成処理されている」。
f 段落【0061】の記載によれば、「シーラント層4は、」「複数の層により構成されていてもよい」ものであり、段落【0068】の記載によれば、「シーラント層4の厚みは、」「10μm~500μm」である。
g 段落【0099】の記載によれば、「シーラント層4同士を対向させた状態でヒートシール(ヒートシール条件:190℃、面圧1.0MPaで3秒間)した部分のシール強度としては、25℃において、」「40~200(N/15mm)」、「125℃において、」「5~100(N/15mm)」が挙げられる。
(3)記載された発明
上記(2)aないしgの技術的事項を総合勘案すると、甲第1号証には、電池用包装材料として次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「基材層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなる電池用包装材料において、シーラント層に用いられる樹脂組成物は、(A-1)融点が156℃以上でエチレン含有量が5質量%以下のプロピレン-エチレンのランダム共重合体、及び(A-2)融点が158℃以上でエチレン含有量が7質量%以下のプロピレン-エチレンのブロック共重合体の少なくとも一方と、(B)融点が135℃以上のポリオレフィン系エラストマーと、を含み、当該樹脂組成物は、シール部が電解液に晒された場合にも高いシール強度を有し、電池用包装材料の成形時などにおいて延伸された場合のクラックの発生を抑制することによって、電池用包装材料に高い絶縁性、密封性、及び成形性を付与し得るものであり、樹脂組成物中における(A-2)ブロック共重合体の含有量は25~80質量%程度であり、(B)融点が135℃以上のポリオレフィン系エラストマーとしてはプロピレンと、1種又は2種以上の炭素数2~20のα-オレフィン(プロピレンを除く)を構成モノマーとして含む重合体であり、金属層は、金属箔であり、溶解や腐食の防止等のために、シーラント層側の面、更に好ましくは両面が化成処理され、シーラント層は、複数の層により構成されていてもよく、厚みは、10μm~500μmであり、シーラント層同士を対向させた状態でヒートシール(ヒートシール条件:190℃、面圧1.0MPaで3秒間)した部分のシール強度としては、25℃において、40~200(N/15mm)、125℃において、5~100(N/15mm)である電池用包装材料。」
2 甲第2号証
(1)記載事項
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甲第2号証には、「扁平型電気化学セル用包装材料」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【請求項1】基材層と、少なくとも片面に化成処理層を備えた金属箔層と、酸変性ポリオレフィン層と、熱接着性樹脂層とが、少なくとも順次積層された扁平型電気化学セル用包装材料において、前記酸変性ポリオレフィン層は酸変性ポリオレフィン系樹脂で構成される樹脂層であり、前記熱接着性樹脂層はプロピレン系樹脂で構成される樹脂層を有し、少なくとも前記酸変性ポリオレフィン系樹脂または前記プロピレン系樹脂の一方にプロピレン系エラストマー樹脂が混合され、続きを表示(全13行)該プロピレン系エラストマー樹脂がプロピレン由来の構成単位と炭素数が2~20でプロピレンを除くα-オレフィン由来の構成単位とからなる共重合体であり、前記プロピレン由来の構成単位と前記α-オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%としたとき、前記プロピレン由来の構成単位が50モル%以上であり、(a)ショアーA硬度(ASTM D2240)が65~90であり、(b)融点が130~170℃であり、(c)密度(ASTM D1505)が860~875kg/m3であり、(d)DSC測定によるガラス転移温度が-25℃~-35℃であることを特徴とする扁平型電気化学セル用包装材料。【請求項2】前記プロピレン系樹脂に対し前記プロピレン系エラストマー樹脂が3重量%以上30重量%以下混合されていることを特徴とする請求項1に記載の扁平型電気化学セル用包装材料。」
「【0013】そこで、本発明は上記問題点に鑑み、リチウムイオン電池本体、キャパシタ、電気二重層キャパシタ等の扁平型電気化学セルを密封収納する外装体の扁平型電気化学セル用包装材料において、柔軟性、耐熱性、密封シール性、絶縁性、成形性に優れる扁平型電気化学セル用包装材料を提供することを目的とする。」
「【0023】まず、本発明の電気化学セル用包装材料の各層を構成する材料等について、図1を参照して説明する。図1に示すように、外装体10に用いられる本発明に係る包装材料は最外層に基材層6、最内層に熱接着性樹脂層8、その間に金属箔層7が配されたものであり、熱接着性樹脂層8と金属箔層7は酸変性ポリオレフィン層9を介して接着している。このとき、金属箔層7表面に化成処理層7aを設けることで、基材層6及び熱接着性樹脂層8と金属箔層7との層間接着強度はいっそう安定する。また、基材層6の表面には保護層11が形成されている。なお、本発明の電気化学セル用包装材料は、基材層6、化成処理層7aを備える金属箔層7、酸変性ポリオレフィン層9、熱接着性樹脂層8がこの順番で積層されていればよく、各層の間に異種の層を介在させて構成することもできる。」
「【0028】次に、図1に示した外装体10を構成する包装材料の各層について具体的に説明する。最内層の熱接着性樹脂層8は、リチウム電池本体2の金属端子4(図12参照)を外側に突出した状態で挟持して熱接着する。このとき、熱接着性樹脂層8と金属端子4との間に金属接着性を有する金属端子密封用接着性フィルムを介在させるか否かで熱接着性樹脂層8を構成するプロピレン系樹脂の種類が異なる。金属端子密封用接着性フィルムを介在させる場合には、プロピレン系樹脂の単体ないし混合物などからなるフィルムを用いればよいが、金属端子密封用接着性フィルムを介在させない場合、不飽和カルボン酸でグラフト変性した酸変性オレフィン樹脂からなるフィルムを用いる必要がある。【0029】なお、熱接着性樹脂層8としてはプロピレン系樹脂(以下の説明では、プロピレン系樹脂を単にポリプロピレンと略称する場合がある)が好適に用いられるが、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンの単層または多層、または、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンのブレンド樹脂からなる単層または多層からなるフィルムも使用できる。【0030】また、ポリプロピレンには、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等各タイプに分けることができ、これら各タイプのポリプロピレンからなる多層ポリプロピレンフィルムにおいて、プロピレン系エラストマー樹脂を混合したポリプロピレンフィルムを積層中に含めることで、熱接着性樹脂層8の耐久性、柔軟性、耐白化性等の物性を高めることができる。【0031】プロピレン系エラストマー樹脂を混合したポリプロピレンとは、エチレン・プロピレンランダムコポリマのように非晶部を海とし、結晶部を島とした海島状に樹脂が分散した構造をとるのではなく、10nm~50nmレベルのらせん状の結晶部である「島」が互いに連結して網状の構造をとり非晶部全体を覆っている。この「網」の構造によりプロピレン系エラストマー樹脂を混合したポリプロピレンは優れたシール強度、耐久性、耐熱性、柔軟性を持つことになる。」
「【0038】ここで、本発明に係るプロピレン系エラストマー樹脂は、プロピレン由来の構成単位と炭素数2~20のα-オレフィン(プロピレンを除く)由来の構成単位とからなる共重合体であり、プロピレン由来の構成単位を50モル%以上(ここでプロピレン由来の構成単位と炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とする)含んでおり、(a)ショアーA硬度(ASTM D2240)が65~90であり、(b)融点が130~170℃であり、(c)密度(ASTM D1505)が860~875kg/m3であり、(d)DSC測定によるガラス転移温度が-25℃~-35℃の物性を満たすものである。」
「【実施例1】【0085】以下、本発明の作用及び効果について、実施例を用いて具体的に説明する。実施例1は、熱接着性樹脂層を構成するポリプロピレン層にプロピレン系エラストマー樹脂を混合した場合の、ヒートシール後のシール部における絶縁性について評価したものである。【0086】続きを表示(全11行)なお、本実施例で用いるプロピレン系エラストマー樹脂は、三井化学株式会社製のノティオ(登録商標)PN‐2070である。このプロピレン系エラストマー樹脂はプロピレン由来の構成単位の含量量が71モル%であり、プロピレン由来の構成単位以外の構成単位としてエチレン由来の構成単位及び1-ブテン由来の構成単位を含有するものである。また、その物性はショアーA硬度(ASTM D2240)が75、融点が138℃、密度(ASTM D1505)が867kg/m3、ガラス転移温度(Tg)が-29℃、ヘイズが7%、メルトフローレート(MFR、ASTM D1238)が7.0g/10分である。【0087】次に本実施例で用いる電気化学セル用包装材料の製造方法について説明する。まず、アルミニウムの両面に化成処理を施し、一方の化成処理面に、延伸ナイロンフィルムを2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。次に、他の化成処理面に酸変性ポリプロピレン(以下酸変性PPと略す)をロールコート法により塗布、焼付けし、酸変性PP面に、2層のランダムポリプロピレンフィルム(以下ランダムPPと略す)(厚さ5μm)でブロックポリプロピレンフィルム(以下ブロックPPと略す)(厚さ20μm)を挟んで成る3層共押出しフィルムを熱ラミネート法により、積層して比較例1の電気化学セル用包装材料を得た。【0088】なお、本実施例において、基材層は延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)、金属箔層はアルミニウム(厚さ40μm)を用い、化成処理層には、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、リン酸からなる処理液をロールコート法により塗布し、皮膜温度が90℃以上となる条件において焼付けた。ここで、クロムの塗布量は10mg/m2(乾燥重量)であり、酸変性PPは、アルミニウム温度が140℃以上となる条件において焼付け、酸変性PPの塗布量は、3g/m2(乾燥重量)とした。【0089】次に、上記比較例1で得られた包装材料の積層方法において、3層共押出しフィルムを構成するブロックPPフィルムの代わりに、プロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070)が10重量%混合したブロックPPフィルムを用いて本発明1に係る電気化学セル用包装材料を得た。」
「【0102】実施例3は、熱接着性樹脂層を構成するポリプロピレン層にプロピレン系エラストマー樹脂を混合した場合のシール強度について評価したものである。【0103】まず、実施例1で得た比較例及び本発明1~4の電気化学セル用包装材料と同一のものを用意し、60mm(MD方向)×60mm(TD方向)のシート片に裁断した。次に、これをTD方向に二つ折りにし、対向する2辺を7mm巾でヒートシールして一方に開口を有するパウチ状の外装体を作成し、開口部を7mm巾、面圧1.0MPa、シール時間3.0秒でヒートシールした。このときシール温度を150℃、170℃、190℃、210℃と条件を変えて行ないサンプルを作製した。」
「【図5】[図:0001414234000002.jpg]」
(2)記載された技術的事項
上記摘記した記載より、甲第2号証には次の技術的事項が記載されているといえる。
a 段落【0013】の記載によれば、甲第2号証には、「扁平型電気化学セルを密封収納する外装体の扁平型電気化学セル用包装材料において、」「密封シール性」「に優れる扁平型電気化学セル用包装材料」が記載されている。
b 【請求項1】及び段落【0023】の記載によれば、扁平型電気化学セル用包装材料は「基材層と、少なくとも片面に化成処理層を備えた金属箔層と、酸変性ポリオレフィン層と、熱接着性樹脂層とが、少なくとも順次積層された」ものである。
c 【請求項1】及び段落【0029】、【0030】の記載によれば、「前記熱接着性樹脂層はプロピレン系樹脂で構成される樹脂層を有し、」「前記プロピレン系樹脂」「にプロピレン系エラストマー樹脂が混合され」るものである。
d 【請求項1】及び段落【0038】の記載によれば、「プロピレン系エラストマー樹脂がプロピレン由来の構成単位と炭素数が2~20でプロピレンを除くα-オレフィン由来の構成単位とからなる共重合体」である。
e 【請求項2】の記載によれば、「前記プロピレン系樹脂に対し前記プロピレン系エラストマー樹脂が3重量%以上30重量%以下混合されている」。
f 段落【0085】、【0086】、【0089】の記載のよれば、実施例1の本発明1では「熱接着性樹脂層を構成するポリプロピレン層にプロピレン系エラストマー樹脂を混合した」ものとして、「プロピレン由来の構成単位の含量量が71モル%であり、プロピレン由来の構成単位以外の構成単位としてエチレン由来の構成単位及び1-ブテン由来の構成単位を含有するものである」「三井化学株式会社製のノティオ(登録商標)PN‐2070」「が10重量%混合したブロックPPフィルムを用い」た。
g 段落【0103】の記載によれば、実施例1の電気化学セル用包装材料と同一のものを用意し、「面圧1.0MPa、シール時間3.0秒」、「シール温度を」「190℃」でヒートシールした。
h 図5から、シール温度を190℃でヒートシールするとシール強度は80~120N/15mm程度であることがみてとれる。
(3)記載された発明
上記(2)aないしhの技術的事項を総合勘案すると、甲第2号証には、扁平型電気化学セル用包装材料に関して次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「扁平型電気化学セルを密封収納する外装体の扁平型電気化学セル用包装材料であって、扁平型電気化学セル用包装材料は、基材層と、少なくとも片面に化成処理層を備えた金属箔層と、酸変性ポリオレフィン層と、熱接着性樹脂層とが、少なくとも順次積層されたものであり、前記熱接着性樹脂層はプロピレン系樹脂で構成される樹脂層を有し、前記プロピレン系樹脂にプロピレン系エラストマー樹脂が混合され、プロピレン系エラストマー樹脂がプロピレン由来の構成単位と炭素数が2~20でプロピレンを除くα-オレフィン由来の構成単位とからなる共重合体であり、前記プロピレン系樹脂に対し前記プロピレン系エラストマー樹脂が3重量%以上30重量%以下混合されているものであり、熱接着性樹脂層を構成するポリプロピレン層にプロピレン系エラストマー樹脂を混合したものとして、プロピレン由来の構成単位の含量量が71モル%であり、プロピレン由来の構成単位以外の構成単位としてエチレン由来の構成単位及び1-ブテン由来の構成単位を含有するものである三井化学株式会社製のノティオ(登録商標)PN‐2070が10重量%混合したブロックPPフィルムを用い、面圧1.0MPa、シール時間3.0秒、シール温度を190℃でヒートシールした場合、シール強度は80~120N/15mm程度である密封シール性に優れる扁平型電気化学セル用包装材料。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明における「基材層」、「シーラント層」、「電池用包装材料」は本件発明1の「基材層」、「シーラント層」、「蓄電装置用外装材」にそれぞれ相当する。
そして、甲1発明の「金属層」は「金属箔であり、溶解や腐食の防止等のために、シーラント層側の面、更に好ましくは両面が化成処理され」たものであるから、本件発明1の「一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層」に相当する。
してみると、甲1発明の「基材層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなる電池用包装材料」は本件発明1の「少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、及び、シーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材」に相当する。
b 本件明細書段落【0095】に「ポリプロピレン系樹脂(A)は、・・・プロピレン-エチレンランダム共重合体であることがより好ましい」と記載され、段落【0096】に「プロピレン-エチレンランダム共重合体において、エチレン含有量は0.1~10質量%」と記載されていることを考慮すれば、本件発明1の「ポリプロピレン系樹脂(A)」は、「エチレン含有量0.1~10質量%のプロピレン-エチレンランダム共重合体」を含むものである。
してみると、甲1発明の「シーラント層に用いられる樹脂組成物」である「(A-1)融点が156℃以上でエチレン含有量が5質量%以下のプロピレン-エチレンのランダム共重合体」は、本件発明1の「ポリプロピレン系樹脂(A)」に相当する。
また、甲1発明の「(A-2)融点が158℃以上でエチレン含有量が7質量%以下のプロピレン-エチレンのブロック共重合体」は、本件発明1の「ポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)」である「前記ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶部を有する化合物であり、」「プロピレンユニットから成る構成されるブロックとエチレンユニットから構成されるブロック共重合体を含む化合物(B1)」に相当する。
しかしながら、シーラント層について、本件発明1は「ポリプロピレン系樹脂(A)及び前記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含み、前記非相溶系成分(B)が、前記ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶部を有する化合物であり、」「プロピレンユニットから構成されるブロックとエチレンユニットから構成されるブロック共重合体を含む化合物(B1)を含有」するものであるのに対し、甲1発明は「(A-1)融点が156℃以上でエチレン含有量が5質量%以下のプロピレン-エチレンのランダム共重合体、及び(A-2)融点が158℃以上でエチレン含有量が7質量%以下のプロピレン-エチレンのブロック共重合体の少なくとも一方」を含むものである点で相違する。
c 本件発明1は、「非相溶系成分(B)の含有量」が、「前記シーラント層全量を基準として、1~40質量%」であるのに対して、甲1発明は「シーラント層に用いられる」「樹脂組成物中における(A-2)ブロック共重合体の含有量は25~80質量%程度」である点で相違する。
d シール強度について、本件発明1は「前記シーラント層同士が対向するように重ねた前記外装材を、温度190℃、圧力0.5MPa、3秒の条件でヒートシールして、接着した接着部について、その一端から他端までのシール強度を連続的に測定したときの、前記一端からの変位と前記シール強度との関係を示すグラフにおいて、最大シール強度SMが35N/15mm以上であり、且つ、」「(1) 前記最大シール強度SMが得られた変位以降にシール強度の安定域が存在し、該安定域におけるシール強度SSの前記最大シール強度SMに対する比SS/SMが0.3以上である」、「又は」、「(2) 前記安定域が存在せず、前記最大シール強度SMが得られた変位から前記他端までの変位における平均シール強度SAの前記最大シール強度SMに対する比SA/SMが0.3以上である」「の条件を満たす」のに対して、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。
e 蓄電装置用外装材について、本件発明1は、「但し、少なくとも基材層、第1の接着層、バリア層、第2の接着層、シーラント層がこの順で積層されてなる電池外装用ラミネートフィルムであって、該シーラント層は、」「成分(A):メタロセン系触媒を用いて製造された密度0.930g/cm3以上0.950g/cm3以下のポリエチレン」と「成分(B):ポリプロピレンマトリックスにゴムが分散されたポリプロピレン系エラストマー」「を含む配合物で形成された(I)層を少なくとも1層有することを特徴とする電池外装用ラミネートフィルムを除く」との発明特定事項を備えるのに対して、甲1発明は備えていない点で相違する。
f 上記aないしeより、本件発明1と甲1発明とは、
「少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、及び、シーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉
シーラント層について、本件発明1は「ポリプロピレン系樹脂(A)及び前記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含み、前記非相溶系成分(B)が、前記ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶部を有する化合物であり、」「プロピレンユニットから構成されるブロックとエチレンユニットから構成されるブロック共重合体を含む化合物(B1)を含有」するものであるのに対し、甲1発明は「(A-1)融点が156℃以上でエチレン含有量が5質量%以下のプロピレン-エチレンのランダム共重合体、及び(A-2)融点が158℃以上でエチレン含有量が7質量%以下のプロピレン-エチレンのブロック共重合体の少なくとも一方」を含むものである点。
〈相違点2〉
本件発明1は「前記非相溶系成分(B)の含有量が、前記シーラント層全量を基準として、1~40質量%」であるのに対して、甲1発明は「シーラント層に用いられる」「樹脂組成物中における(A-2)ブロック共重合体の含有量は25~80質量%程度」である点。
〈相違点3〉
シール強度について、本件発明1は「前記シーラント層同士が対向するように重ねた前記外装材を、温度190℃、圧力0.5MPa、3秒の条件でヒートシールして、接着した接着部について、その一端から他端までのシール強度を連続的に測定したときの、前記一端からの変位と前記シール強度との関係を示すグラフにおいて、最大シール強度SMが35N/15mm以上であり、且つ、」「(1) 前記最大シール強度SMが得られた変位以降にシール強度の安定域が存在し、該安定域におけるシール強度SSの前記最大シール強度SMに対する比SS/SMが0.3以上である」、「又は」、「(2) 前記安定域が存在せず、前記最大シール強度SMが得られた変位から前記他端までの変位における平均シール強度SAの前記最大シール強度SMに対する比SA/SMが0.3以上である」「の条件を満たす」のに対して、甲1発明はその旨特定されていない点。
〈相違点4〉
蓄電装置用外装材について、本件発明1は、「但し、少なくとも基材層、第1の接着層、バリア層、第2の接着層、シーラント層がこの順で積層されてなる電池外装用ラミネートフィルムであって、該シーラント層は、」「成分(A):メタロセン系触媒を用いて製造された密度0.930g/cm3以上0.950g/cm3以下のポリエチレン」と「成分(B):ポリプロピレンマトリックスにゴムが分散されたポリプロピレン系エラストマー」「を含む配合物で形成された(I)層を少なくとも1層有することを特徴とする電池外装用ラミネートフィルムを除く」との発明特定事項を備えるのに対して、甲1発明は備えていない点。
(2)判断
事案に鑑み、上記相違点1ないし3についてまとめて検討する。
本件明細書段落【0093】の「シーラント層16が上記(A)成分及び上記(B)成分を含むことにより、シーラント層16中に海島構造が形成され、ヒートシール後のシール強度を向上させることができる。」との記載、段落【0102】の「非相溶系成分(B)は、ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶部を有する化合物(B1)を含有することが好ましい。非相溶系成分(B)が化合物(B1)を含有することにより、(A)成分及び(B)成分により形成される海島構造の界面の上記海島界面の密着強度を向上させることができ、電解液の発泡に伴う空隙の形成が抑制されることから、絶縁性を一層向上させることができる。また、化合物(B1)による海島界面の密着強度の向上により、上記シール強度SM、SS又はSAを向上させることもできる。」との記載、ならびに、段落【0111】の「(B)成分の含有量は、シーラント層16の固形分全量を基準として、1~40質量%であり、5~25質量%であることが好ましい。(B)成分の含有量が1質量%以上であることにより、シーラント層16に耐衝撃性を付与することができ、シール強度及び絶縁性を向上することができる。一方、(B)成分の含有量を40質量%以下とすることにより、シーラント層16全体の凝集力を向上でき、シール強度及び絶縁性を向上させることができる。」との記載を考慮すれば、本件発明1は、上記相違点1および2に係る構成、すなわち、シーラント層がポリプロピレン系樹脂(A)と所定量のポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)とを必須の構成として含むと共に非相溶系成分(B)がポリプロピレン系樹脂(A)との相溶部を有する化合物(B1)を含有するという構成を備えることによって、シール強度に関する本件発明1の相違点3に係る構成を得ているものと認められる。
してみると、本件発明1の「ポリプロピレン系樹脂(A)」に相当する「(A-1)融点が156℃以上でエチレン含有量が5質量%以下のプロピレン-エチレンのランダム共重合体」と、本件発明1の「相溶部を有する化合物(B1)」に相当する「(A-2)融点が158℃以上でエチレン含有量が7質量%以下のプロピレン-エチレンのブロック共重合体」との、少なくとも一方を含むことのみを特定する甲1発明が、シール強度に関する本件発明1の上記相違点3に係る構成を充足する蓋然性が高いものとみることはできない。
また、甲第2号証において、熱接着性樹脂層を、プロピレン系樹脂に、プロピレン由来の構成単位と炭素数が2~20でプロピレンを除くα-オレフィン由来の構成単位とからなる共重合体であるプロピレン系エラストマー樹脂が混合されたものとする技術(甲2発明の「熱接着性樹脂層」)が記載されていることに鑑みて、仮に、甲1発明に甲2発明を適用し、甲1発明のシーラント層について、(A-1)融点が156℃以上でエチレン含有量が5質量%以下のプロピレン-エチレンのランダム共重合体と、(A-2)融点が158℃以上でエチレン含有量が7質量%以下のプロピレン-エチレンのブロック共重合体とを共に含む構成とすることを、当業者が容易に発明し得たものと想定しても、本件明細書段落【0032】の「外装材10をヒートシールしたときのシール強度の向上とは、通常、シール強度SMとシール強度SS又はシール強度SAとの両方の向上を意味する。ただし、特に最大シール強度SMの値は、接着部の端部に形成されるシーラント融着部16Mの大きさや強度によっても変化する。したがって、最大シール強度SMの値は、例えば、シーラント層16のメルトフローレート(MFR)、結晶化度、厚さ等によっても変化するし、ヒートシールの条件(温度、圧力、時間)によっても変化する。シール強度SS,SAに対して、最大シール強度SMを制御することにより、上記比SS/SMや上記比SA/SMをも制御することができる。」との記載からすると、シール強度は、シーラント層のメルトフローレート(MFR)、結晶化度、厚さ等によっても変化するものであるから、シーラント層が「ポリプロピレン系樹脂(A)」及び「プロピレンユニットから構成されるブロックとエチレンユニットから構成されるブロック共重合体を含む化合物(B1)を含有するポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)」を共に含むということのみでは、必ずしも、シール強度に関する本件発明1の相違点3に係る構成が得られるとは認められない。
さらに、甲第3ないし4号証にも、上記相違点3に係る構成を満たすようにすることについて、記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点1ないし3に係る構成を得ることは、甲第1号証に記載された発明と甲第2ないし4号証に記載された発明とに基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、上記相違点4について検討するまでもなく、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第2ないし4号証に記載された発明とに基づいて、当業者が容易になし得たものではない。
2 本件発明2ないし6について
請求項2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件の請求項2ないし6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第2ないし4号証に記載された発明とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700595