特許異議申立
2024-700577
順送り金型装置及び鉄心薄板の製造方法
- 審判番号
- 2024-700577
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-560005
- 登録番号
- 7400150
- 請求日
- 2024年06月18日
- 審決日
- 2025年09月08日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】黒田精工株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大島特許事務所
- 【異議申立人】齊藤 恵美子
- 審判長/審判官
- 審判長 松永 稔
- 審判官 緑川 隆
- 審判官 中野 浩昌
- 分類
- P1651.113-YAA(H02K) / P1651.121-YAA(H02K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7400150号発明「順送り金型装置及び鉄心薄板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7400150号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8、9〕について訂正することを認める。
特許第7400150号の請求項1、3、5~8に係る特許を維持する。
特許第7400150号の請求項2、4、9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7400150号の請求項1~9に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和5年(2023年)7月14日を国際出願日とする出願であって、同年12月8日にその特許権の設定登録がされ、同年12月18日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和6年6月18日に特許異議申立人 齊藤 恵美子(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年10月 2日付け 取消理由通知書
令和6年11月27日 特許権者より訂正請求書・意見書の提出
令和7年 1月30日 特許権者より手続補正書の提出
令和7年 3月12日 申立人より意見書の提出
令和7年 4月14日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和7年 6月12日 特許権者より訂正請求書・意見書の提出
なお、令和6年11月27日にされた訂正の請求は、令和7年6月12日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。
また、当審から令和7年6月23日付けで、申立人に対して意見書提出の期間を指定して、訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行ったが、当該期間内に申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和7年 6月12日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に「間欠移送における前記帯状薄板の1回の移送ごとに、複数のパイロット孔を打抜き形成するパイロット孔形成部」と記載されているのを、「間欠移送における前記帯状薄板の1回の移送ごとに、前記移送方向に整列する複数のパイロット孔を打抜き形成するパイロット孔形成部」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3及び5~7も同様に訂正する)。
(2)訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に「前記処理ステージの或るものでは、前記複数のパイロット孔のうちの一つに係合するように前記パイロットピンが配置され、前記処理ステージの他の一つのものでは、前記複数のパイロット孔のうちの前記一つ以外のものに係合するように前記パイロットピンが配置されている順送り金型装置。」と記載されているのを、「前記処理ステージの或るものでは、前記複数のパイロット孔のうちの一つに係合するように前記パイロットピンが配置され、前記処理ステージの他の一つのものでは、前記複数のパイロット孔のうちの前記一つ以外のものに係合するように前記パイロットピンが配置され、前記処理ステージの各々には前記帯状薄板に対して所定の処理を行う処理部材が設置され、前記パイロットピンは、前記処理ステージの各々において、前記移送方向に隔てて複数箇所に形成された前記複数のパイロット孔のうち前記処理部材と干渉しない前記パイロット孔と係合する順送り金型装置。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3及び5~7も同様に訂正する)。
(3)訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(4)訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項1-5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項4に記載の順送り金型装置。」と記載されているのを、「請求項1に記載の順送り金型装置。」に訂正する。
(6)訂正事項1-6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項4に記載の順送り金型装置。」と記載されているのを、「請求項1に記載の順送り金型装置。」に訂正する。
(7)訂正事項1-7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項4に記載の順送り金型装置。」と記載されているのを、「請求項1に記載の順送り金型装置。」に訂正する。
(8)訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項8に「間欠移送における前記帯状薄板の1回の移送ごとに、パイロット孔形成部によって複数のパイロット孔を打抜き形成」と記載されているのを、「間欠移送における前記帯状薄板の1回の移送ごとに、パイロット孔形成部によって前記移送方向に整列する複数のパイロット孔を打抜き形成」に訂正する。
(9)訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項8に「前記パイロットピンは前記処理ステージの或るものでは、前記複数のパイロット孔のうちの一つに係合し、前記処理ステージの他の一つのものでは、前記複数のパイロット孔のうちの前記一つ以外のものに係合する鉄心薄板の製造方法。」と記載されているのを、「前記パイロットピンは前記処理ステージの或るものでは、前記複数のパイロット孔のうちの一つに係合し、前記処理ステージの他の一つのものでは、前記複数のパイロット孔のうちの前記一つ以外のものに係合し、前記処理ステージの各々には前記帯状薄板に対して所定の処理を行う処理部材が設置され、前記パイロットピンは、前記処理ステージの各々において、前記移送方向に隔てて複数箇所に形成された前記複数のパイロット孔のうち前記処理部材と干渉しない前記パイロット孔と係合する鉄心薄板の製造方法。」に訂正する。
(10)訂正事項2-3
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(11)訂正事項3-1
明細書の段落【0002】に「帯状薄鋼板」と記載されているのを、「帯状薄板」に訂正する。
(12)訂正事項3-2
明細書の段落【0032】、【0079】にそれぞれ「スリット打抜き工程」と記載されているのを、「スロット打抜き工程」に訂正する。
(13)訂正事項3-3
明細書の段落【0043】、【0091】にそれぞれ「パイロット打抜き工程」と記載されているのを、「パイロット孔打抜き工程」に訂正する。
(14)訂正事項3-4
明細書の段落【0058】に「図3」と記載されているのを、「図2」に訂正する。
(15)訂正事項3-5
明細書の段落【0107】に「図7」と記載されているのを、「図6」に訂正する。
(16)訂正事項3-6
明細書の段落【0061】、【0110】にそれぞれ「2個パイロット孔P」と記載されているのを、「2個のパイロット孔P」に訂正する。
(17)一群の請求項について
訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、請求項1を引用しているものであるから、訂正事項1-1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項8~9について、請求項9は、請求項8を引用しているものであるから、訂正事項2-1によって記載が訂正される請求項8に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項8~9に対応する訂正後の請求項8~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、訂正前の請求項2に記載された発明特定事項を、訂正前の請求項1に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、訂正前の請求項4に記載された発明特定事項を、訂正前の請求項1に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項1-3、訂正事項1-4、訂正事項2-3について
訂正事項1-3、訂正事項1-4、訂正事項2-3は、訂正前の請求項2、4、9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項1-5、訂正事項1-6、訂正事項1-7について
訂正事項1-5、訂正事項1-6、訂正事項1-7は、訂正事項1-2及び訂正事項1-4により、訂正前の請求項4に記載された発明特定事項が訂正前の請求項1に追加され、訂正前の請求項4が削除される訂正により生じた不合理を正すことを目的として、訂正後の請求項5、請求項6、請求項7が請求項1を引用するものとする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項2-1について
訂正事項2-1は、訂正前の請求項9に記載された発明特定事項を、訂正前の請求項8に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項2-2について
訂正事項2-2は、訂正前の請求項4に記載された発明特定事項を、訂正前の請求項8に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項3-1について
訂正前明細書の【0002】の「帯状薄鋼板」との記載は、【0002】~【0004】、【0006】の「帯状薄板」の誤記と認められる。
したがって、訂正事項3-1は、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項3-1は、一群の請求項である〔1~7〕、〔8、9〕に関連する訂正である。
(8)訂正事項3-2について
訂正前明細書の【0032】、【0079】の「スリット打抜き工程」との記載は、「スロットSを打抜き形成する」工程であり、【0044】、【0092】の「スロット打抜き工程」の誤記と認められる。
したがって、訂正事項3-2は、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項3-2は、一群の請求項である〔1~7〕、〔8、9〕に関連する訂正である。
(9)訂正事項3-3について
訂正前明細書の【0043】、【0091】の「パイロット打抜き工程」との記載は、「複数のパイロット孔打抜き用パンチ28と各パイロット孔打抜き用パンチ28に対応する複数のパイロット孔打抜き用ダイ68とにより」実行される工程であり、【0032】、【0079】の「パイロット孔打抜き工程」の誤記と認められる。
したがって、訂正事項3-3は、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項3-3は、一群の請求項である〔1~7〕、〔8、9〕に関連する訂正である。
(10)訂正事項3-4について
訂正前明細書の【0058】の「図3」との記載は、その直後の「帯状薄板Fの左右の側縁Fa、Fbの各々の近傍に対応する位置」との記載、【0029】の「図1~図4を参照して実施形態1について説明する。」との記載、及び、図2の記載からみて、「図2」の誤記と認められる。
したがって、訂正事項3-4は、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項3-4は、一群の請求項である〔1~7〕、〔8、9〕に関連する訂正である。
(11)訂正事項3-5について
訂正前明細書の【0107】の「図7」との記載は、その直後の「帯状薄板Fの左右の側縁Fa、Fbの各々の近傍に対応する位置」との記載、【0077】の「図6及び図7を参照して実施形態2について説明する。」との記載、及び、図6の記載からみて、「図6」の誤記と認められる。
したがって、訂正事項3-5は、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項3-5は、一群の請求項である〔1~7〕、〔8、9〕に関連する訂正である。
(12)訂正事項3-6について
訂正事項3-6は、日本語の表記上の明らかな誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
また、訂正事項3-6は、一群の請求項である〔1~7〕、〔8、9〕に関連する訂正である。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、〔8、9〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
所定のピッチをもって間欠移送される帯状薄板に、前記帯状薄板の移送方向に整列して設定された複数の処理ステージの各々において所定の処理を行い、所定の形状の鉄心薄板を製造する順送り金型装置であって、
間欠移送における前記帯状薄板の1回の移送ごとに、前記移送方向に整列する複数のパイロット孔を打抜き形成するパイロット孔形成部と、
前記処理ステージの各々に対応して設けられ、対応する前記パイロット孔に係合して前記各処理ステージにおける前記帯状薄板の位置決めを行う少なくとも1つのパイロットピンとを有し、
前記処理ステージの或るものでは、前記複数のパイロット孔のうちの一つに係合するように前記パイロットピンが配置され、
前記処理ステージの他の一つのものでは、前記複数のパイロット孔のうちの前記一つ以外のものに係合するように前記パイロットピンが配置され、
前記処理ステージの各々には前記帯状薄板に対して所定の処理を行う処理部材が設置され、
前記パイロットピンは、前記処理ステージの各々において、前記移送方向に隔てて複数箇所に形成された前記複数のパイロット孔のうち前記処理部材と干渉しない前記パイロット孔と係合する順送り金型装置。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記複数のパイロット孔が前記帯状薄板の両側縁の各々に沿って移送方向に整列するように前記パイロット孔形成部が構成されている請求項1に記載の順送り金型装置。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記処理ステージの一つとして、前記帯状薄板にかしめ部を形成するかしめ部形成用パンチ及びかしめ部形成用ダイと、前記かしめ部形成用パンチの有効長を増減するカムとを備えたかしめ部形成ステージを有し、前記パイロットピンとの干渉対象の前記処理部材が前記カムである請求項1に記載の順送り金型装置。
【請求項6】
前記処理ステージの一つとして、前記帯状薄板に接着剤を塗布する接着剤塗布装置を備えた接着剤塗布ステージを有し、前記パイロットピンとの干渉対象の前記処理部材が前記接着剤塗布装置である請求項1に記載の順送り金型装置。
【請求項7】
前記処理ステージの一つとして、パンチ及び回転ダイを備えた打抜きステージを有し、前記パイロットピンとの干渉対象の前記処理部材が前記回転ダイである請求項1に記載の順送り金型装置。
【請求項8】
所定のピッチをもって間欠移送される帯状薄板に、順送り金型装置によって前記帯状薄板の移送方向に整列して設定された複数の処理ステージの各々において所定の処理を行い、所定の形状の鉄心薄板を製造する製造方法であって、
間欠移送における前記帯状薄板の1回の移送ごとに、パイロット孔形成部によって前記移送方向に整列する複数のパイロット孔を打抜き形成し、
前記処理ステージの各々に対応して設けられ、少なくとも1つのパイロットピンが対応する前記パイロット孔に係合して前記各処理ステージにおける前記帯状薄板の位置決めを行い、
前記パイロットピンは前記処理ステージの或るものでは、前記複数のパイロット孔のうちの一つに係合し、前記処理ステージの他の一つのものでは、前記複数のパイロット孔のうちの前記一つ以外のものに係合し、
前記処理ステージの各々には前記帯状薄板に対して所定の処理を行う処理部材が設置され、
前記パイロットピンは、前記処理ステージの各々において、前記移送方向に隔てて複数箇所に形成された前記複数のパイロット孔のうち前記処理部材と干渉しない前記パイロット孔と係合する鉄心薄板の製造方法。
【請求項9】(削除)
」
第4 取消理由通知(決定の予告)の取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、令和7年4月14日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の取消理由の概要は次のとおりである。
本件特許の請求項1~3、5~9に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1には、「前記パイロットピンは前記処理ステージの各々において前記処理部材を前記移送方向に隔てて複数箇所に形成された前記複数のパイロット孔のうち前記処理部材と干渉しない前記パイロット孔と係合する」との記載があるが、当該記載の上記下線部は、日本語として不明瞭であるため、「処理部材」の位置と「複数のパイロット孔」のそれぞれの「パイロット孔」が形成される位置の関係が不明確である。また、当該記載の上記下線部は、請求項1の「間欠移送における前記帯状薄板の1回の移送ごとに、複数のパイロット孔を打抜き形成するパイロット孔形成部」における「複数のパイロット孔」との対応関係も不明確である。
また、同様の記載がある請求項8、及び、請求項1又は8を引用する請求項2~3、5~7、9も同様である。
2 当審の判断
訂正事項1-2における「前記処理部材を前記移送方向に隔てて複数箇所に形成された前記複数のパイロット孔」との記載から「前記処理部材を」を削除し、読点を付加する訂正により、「複数のパイロット孔」のそれぞれの「パイロット孔」が形成される位置の関係が明らかとなり、また、訂正事項1-1の「前記位相方向に整列する」との事項を付加する訂正により、「パイロット孔形成部」で形成される「複数のパイロット孔」との対応関係も明らかとなったから、請求項1は明確である。また、請求項1を引用する請求項2~3、5~7も明確である。
同様の記載がある請求項8についても、訂正事項2-1、訂正事項2-2により訂正されたため、同様に明確である。また、請求項9は、訂正事項2-3により削除された。
したがって、上記1の取消理由は解消した。
第5 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人の提出した証拠
申立人は、次の甲第1号証~甲第11号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲11」という。)を証拠として提出している。
甲第1号証(甲1):特開2018-121443号公報
甲第2号証(甲2):特開2000-334523号公報
甲第3号証(甲3):特開平5-57372号公報
甲第4号証(甲4):“「プレス加工用金型の製作に係る技能」順送型の製作マニュアル”、中小企業総合事業団 情報・技術部、平成12年7月、p.1~142
甲第5号証(甲5):特開昭51-24701号公報
甲第6号証(甲6):特開昭52-156305号公報
甲第7号証(甲7):特開2009-297758号公報
甲第8号証(甲8):特開2009-72794号公報
甲第9号証(甲9):特開2006-334648号公報
甲第10号証(甲10):特開2004-242420号公報
甲第11号証(甲11):特開2013-110791号公報
2 申立理由の概要
申立人が特許異議申立書で主張する理由のうち、取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった理由は、概略、次のとおりである。
(1)理由1(甲1を主引例とした新規性の欠如)
本件発明1~4、8、9は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明である。
(2)理由2(甲2を主引例とした新規性の欠如)
本件発明1、4、8は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲2に記載された発明である。
(3)理由3(甲3を主引例とした新規性の欠如)
本件発明1、4、8は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲3に記載された発明である。
(4)理由4(甲4を主引例とした新規性の欠如)
本件発明1、8は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲4に記載された発明である。
(5)理由5(甲1を主引例とした進歩性の欠如)
本件発明1~9は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明及び甲5~11に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)理由6(甲2を主引例とした進歩性の欠如)
本件発明1、4、5、8は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲2に記載された発明及び甲5、甲6に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)理由7(甲3を主引例とした進歩性の欠如)
本件発明1、4、8は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)理由8(甲4を主引例とした進歩性の欠如)
本件発明1、8は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲4に記載された発明及び甲1~3、甲5~11に記載された技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 理由1、5(甲1を主引例とした新規性・進歩性の欠如)について
(1) 甲1発明
ア 甲1の記載
甲1には次の記載がある。(下線は引用箇所を示すために当審において付加した。)
「【請求項6】
帯状の金属板を間欠的に順次送り出すように構成された送出部と、
第1~第4のパンチと、
第1及び第2のパイロットピンと、
前記第1~第4のパンチ及び前記第1及び第2のパイロットピンを駆動させる駆動部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記送出部及び前記駆動部を制御して、前記金属板を間欠的に順次送り出しつつ、
前記金属板に前記第1のパンチで第1のパイロット孔を形成させる第1の処理と、
前記第1のパイロット孔に前記第1のパイロットピンを挿通させて前記金属板を位置決めした状態で、前記金属板のうち所定部位を前記第2のパンチで加工すると共に、前記金属板のうち前記第2のパンチにより加工された加工済部位を前記金属板に圧入させる第2の処理と、
前記第2の処理の後で且つ前記金属板に他の加工が行われる前に、前記第3のパンチで前記金属板に第2のパイロット孔を形成する第3の処理と、
前記第3の処理の後に、前記第2のパイロット孔に第2のパイロットピンを挿通させて前記金属板が位置決めされた状態で、前記加工済部位を含む領域を前記第4のパンチで打ち抜いて第1の打抜部材を形成する第4の処理とを実行する、積層鉄心の製造装置。
・・・(中略)・・・
【0044】
[積層鉄心の製造装置]
続いて、図5を参照して、固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2の製造装置100について説明する。
【0045】
製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板ES(被加工板)から固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120(送出部)と、打抜装置130と、コントローラ140(制御部)とを備える。
・・・(中略)・・・
【0047】
コイル材111を構成する電磁鋼板ESの長さは、例えば500m~10000m程度であってもよい。電磁鋼板ESの厚さは、例えば0.1mm~0.5mm程度であってもよい。電磁鋼板ESの厚さは、より優れた磁気的特性を有する固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2を得る観点から、例えば0.1mm~0.3mm程度であってもよい。電磁鋼板ESの幅は、例えば50mm~500mm程度であってもよい。
【0048】
打抜装置130は、コントローラ140からの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板Wを順次打ち抜き加工して打抜部材W1,W2をそれぞれ形成する機能と、打ち抜き加工によって得られた打抜部材W1を順次積層して固定子積層鉄心1を製造する機能と、打抜部材W2を順次積層して回転子積層鉄心2を製造する機能とを有する。
・・・(中略)・・・
【0050】
[打抜装置の詳細]
ここで、図5~図9を参照して、打抜装置130についてより詳しく説明する。本実施形態では、打抜装置130は、電磁鋼板ESのうち幅方向において異なる列で打抜部材W1,W2を形成する。具体的には、打抜装置130は、第1列L1(図10~図12参照)において打抜部材1W1,1W2を形成すると共に、第2列P2(図10~図12参照)において打抜部材2W1,2W2を形成する。なお、本明細書において、符号の左肩に付した上付き数字「1」は、当該符号が付された要素が第1列L1に関わることを示し、符号の左肩に付した上付き数字「2」は、当該符号が付された要素が第2列L2に関わることを示す。
【0051】
打抜装置130は、図5~図7に示されるように、ベース131と、下型132と、ダイプレート133と、ストリッパ134と、上型135と、天板136と、プレス機137(駆動部)と、吊り具138と、パンチ1A1~1A12,2A1~2A12と、パイロットピン1B1~1B13,2B1~2B13とを有する。ベース131は、床面上に設置されており、ベース131に載置された下型132を支持する。
【0052】
下型132は、下型132に載置されたダイプレート133を保持する。下型132には、電磁鋼板ESから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材W1,W2、廃材等)が排出される排出孔1C1~1C12,2C1~2C12が、パンチ1A1~1A12,2A1~2A12に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0053】
ダイプレート133は、パンチ1A1~1A12,2A1~2A12と共に、打抜部材W1,W2を成形する機能を有する。ダイプレート133には、パンチ1A1~1A12,2A1~2A12に対応する位置にダイ1D1~1D12,2D1~2D12がそれぞれ設けられている。各ダイ1D1~1D12,2D1~2D12には、上下方向に延びると共に対応する排出孔1C1~1C12,2C1~2C12と連通するダイ孔(貫通孔)が設けられている。各貫通孔の大きさは、対応するパンチ1A1~1A12,2A1~2A12の先端部が挿通可能で且つ当該先端部よりも僅かに小さな程度に設定されている。
・・・(中略)・・・
【0069】
[積層鉄心の製造方法]
続いて、固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2の製造方法について説明する。まず、図6及び図10~図12を参照して、電磁鋼板ESのうち第1列L1において打抜部材1W1,1W2をそれぞれ打ち抜き、一組の固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2を製造する方法について説明する。
【0070】
電磁鋼板ESが送出装置120によって打抜装置130に送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A1に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150をダイプレート133に向けて下方に押し出す。ストリッパ134がダイプレート133に到達してこれらで電磁鋼板ESが挟持された後も、プレス機137が可動部150を下方に向けて押し出す。
【0071】
このとき、ストリッパ134は移動しないが、パンチ1A1~1A12及びパイロットピン1B1~1B13の先端部はストリッパ134の貫通孔内を移動して、ダイプレート133のうち対応するダイ1D1~1D12及びパイロット孔1E1~1E13に到達する。そのため、電磁鋼板ESがパンチ1A1(第1のパンチ、第7のパンチ)によって所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、電磁鋼板ESの幅方向に並ぶ一対の貫通孔1R1a,1R1bが電磁鋼板ESに形成される(第1の工程;第7の工程;第1の処理;第7の処理;図6及び図10の位置1P1参照)。貫通孔1R1a(第1のパイロット孔)は、電磁鋼板ESの側縁近傍に位置している。貫通孔1R1b(貫通孔)は、電磁鋼板ESの中央近傍に位置している。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔1C1から排出される。その後、プレス機137が動作して可動部150を上昇させる。
【0072】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A2に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESがパンチ1A2によって打ち抜かれ、複数の貫通孔1R2が電磁鋼板ESに形成される(図6及び図10の位置1P2参照)。本実施形態では、矩形状を呈する12個の貫通孔1R2が全体として円形状を呈するように並んでいる。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔1C2から排出される。
【0073】
このとき同時に、必要に応じて、電磁鋼板ESがパンチ1A3によって打ち抜かれ、複数の貫通孔1R3が電磁鋼板Wに形成されてもよい(図6及び図10の位置1P3参照)。本実施形態では、複数の貫通孔1R2によって囲まれる領域の内側において、円形状を呈する8個の貫通孔1R3が全体として円形状を呈するように並んでいる。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔1C3から排出される。各貫通孔1R3は、回転子積層鉄心2の打抜部材W2におけるカシメ部23の貫通孔に対応する。なお、カシメ部23におけるカシメを形成する場合には、パンチ1A3による電磁鋼板ESの打ち抜きが行われない。
【0074】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A4に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESがパンチ1A4によって打ち抜かれ、一つの貫通孔1R4及び複数の加工部1R5が電磁鋼板ESに形成される(図6及び図10の位置1P5参照)。貫通孔1R4は、円形状を呈しており、回転子積層鉄心2の打抜部材W2における貫通孔2aに対応する。加工部1R5は、回転子積層鉄心2の打抜部材W2におけるカシメ部23のカシメに対応する。本実施形態では、貫通孔1R4を囲む8個の加工部1R5が円形状を呈するように並んでいる。パンチ1A4による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔1R1a内にはパイロットピン1B1,1B2が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされる(図6及び図10の位置1P4,1P6参照)。
【0075】
位置1P3において既に貫通孔1R3が電磁鋼板ESに形成されている場合には、パンチ1A4のうち加工部1R5を形成するための部分が貫通孔1R3を通過して空振りするので、加工部1R5が電磁鋼板ESに形成されない。すなわち、貫通孔1R3及び加工部1R5の一方が択一的に電磁鋼板ESに形成される。
【0076】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A5(第8のパンチ)に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESがパンチ1A5によって打ち抜かれ、複数のカシメ部23を有する打抜部材1W2が排出孔1C5内においてシリンダ132b上に積み重ねられる(第8の工程;第8の処理;図6及び図10の位置1P7参照)。以上の工程が繰り返されることにより、シリンダ132b上において複数の打抜部材1W2がカシメ部23によって接合されつつ積層され、回転子積層鉄心2が形成される。パンチ1A5による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔1R1a内にはパイロットピン1B2,1B4(第4のパイロットピン)が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされる(図6及び図10の位置1P6,1P9参照)。同じく、パンチ1A5による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、パイロットピン1B3(第4のパイロットピン)が貫通孔2R1b(後述する)を通過して、パイロット孔1E3内にパイロットピン1B3の先端が挿入されることにより、ダイ1D5を保持するダイホルダ133aの回転が静止される(図6及び図10の位置1P8参照)。なお、電磁鋼板ESのうち打抜部材1W2が打ち抜かれた後の領域には、貫通孔1R6が形成される。
【0077】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A6(第5のパンチ)に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESがパンチ1A6によって打ち抜かれ、複数の貫通孔1R7(スロット対応孔)が電磁鋼板ESに形成される(第5の工程;第5の処理;図6、図10及び図11の位置1P11参照)。本実施形態では、略扇形状を呈する12個の貫通孔1R7が全体として円形状を呈するように並んでいる。貫通孔1R7は、固定子積層鉄心1の打抜部材W1におけるスロットW14に対応する。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔1C6から排出される。パンチ1A6による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔1R1a内にはパイロットピン1B5,1B6が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされる(図6、図10及び図11の位置1P10,1P12参照)。
【0078】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A7(第2のパンチ)に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESのうち貫通孔1R2,1R6同士の間にそれぞれ加工部1R8(加工済部位)が形成される(第2の工程;第2の処理;図6及び図11の位置1P13参照)。加工部1R8は、貫通孔1R2,1R7を繋ぐ切断線CLに沿って電磁鋼板ESを切り曲げ加工又は打ち抜き加工した後、当該加工済部位を電磁鋼板ESに圧入加工(プッシュバック加工)して得られる。パンチ1A7による電磁鋼板ESの加工の際、貫通孔1R1a内にはパイロットピン1B6,1B7(第1のパイロットピン)が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされる(図6及び図11の位置1P12,1P14参照)。
【0079】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A8(第3のパンチ)に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESのうち貫通孔1R1a,1R1bと一致する位置がパンチ1A8によって打ち抜かれ、複数の貫通孔1R9a,1R9b(第2のパイロット孔)が電磁鋼板ESに形成される(第3の工程;第3の処理;図6及び図11の位置1P5参照)。本実施形態では、貫通孔1R9aは、貫通孔1R1aと一致する位置においてパンチ1A8により打ち抜かれ、貫通孔1R1aよりも大きな外形を有している。貫通孔1R9bは、貫通孔1R1bと一致する位置においてパンチ1A8により打ち抜かれ、貫通孔1R1bよりも大きな外形を有している。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔1C8から排出される。
【0080】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A9に到達すると、必要に応じてコントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESがパンチ1A9によって打ち抜かれ、複数の貫通孔1R10が電磁鋼板ESに形成される(図6及び図11の位置1P16参照)。本実施形態では、隣り合う貫通孔1R7の間に貫通孔1R10が一つずつ位置しており、これらの貫通孔1R10が全体として円形状を呈するように並んでいる。また、隣り合う加工部1R8の間に貫通孔1R10が二つずつ位置しており、これらの貫通孔1R10が全体として円形状を呈するように並んでいる。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔1C9から排出される。各貫通孔1R10は、固定子
積層鉄心1の打抜部材W1におけるカシメ部13の貫通孔13bに対応する。なお、カシメ部13におけるカシメ13aを形成する場合には、パンチ1A9による電磁鋼板ESの打ち抜きが行われない。
【0081】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A10(第6のパンチ)に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESのうち打抜部材1W2が打ち抜かれた領域と一致する位置がパンチ1A10によって打ち抜かれ、円形状を呈する一つの貫通孔1R11(中心対応孔)が電磁鋼板ESに形成される(第6の工程;第6の処理;図6、図11及び図12の位置1P18参照)。本実施形態では、貫通孔1R11は、貫通孔1R6と一致する位置においてパンチ1A10により打ち抜かれ、貫通孔1R6よりも大きな外形を有している。貫通孔1R11は、各貫通孔1R7のうち貫通孔1R6の中心側の一部と重なり合っている。そのため、貫通孔1R11は、各貫通孔1R7と連通する。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔1C10から排出される。各貫通孔1R11は、固定子積層鉄心1の打抜部材W1における貫通孔W1aに対応する。パンチ1A10による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔1R9a内にはパイロットピン1B8,1B9(第3のパイロットピン)が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされる(図6及び図12の位置1P17,1P19参照)。
【0082】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A11に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESがパンチ1A11によって加工され、複数の加工部1R12が電磁鋼板ESに形成される(図6及び図12の位置1P20参照)。本実施形態では、隣り合う貫通孔1R7の間に加工部1R12が一つずつ位置しており、これらの加工部1R12が全体として円形状を呈するように並んでいる。また、隣り合う加工部1R8の間に加工部1R12が二つずつ位置しており、これらの加工部1R12が全体として円形状を呈するように並んでいる。各加工部1R12は、固定子積層鉄心1の打抜部材W1におけるカシメ部13のカシメ13aに対応する。パンチ1A11による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔1R9a内にはパイロットピン1B9,1B10が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされる(図6及び図12の位置1P19,1P21参照)。
【0083】
位置1P16において既に貫通孔1R10が電磁鋼板ESに形成されている場合には、パンチ1A11が貫通孔1R10を通過して空振りするので、加工部1R12が電磁鋼板ESに形成されない。すなわち、貫通孔1R10及び加工部1R12の一方が択一的に電磁鋼板ESに形成される。
【0084】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A12(第4のパンチ)に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESのうち加工部1R8を含む領域がパンチ1A12によって打ち抜かれ、打抜部材1W1が排出孔1C12内においてシリンダ132b上に積み重ねられる(第4の工程;第4の処理;図6及び図12の位置1P23参照)。以上の工程が繰り返されることにより、シリンダ132b上において複数の打抜部材1W1がカシメ部13によって接合されつつ積層され、固定子積層鉄心1が形成される。パンチ1A12による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔1R9a内にはパイロットピン1B11,1B13(第2のパイロットピン)が挿通される貫通孔1R11は、各貫通孔1R7(図6及び図12の位置1P22,1P25参照)。また、パンチ1A12による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、図8に示されるように、パイロットピン1B12(第2のパイロットピン)が貫通孔2R9b(後述する)を通過し、パイロット孔1E12内にパイロットピン1B12の先端が挿入されることにより、ダイ1D12を保持するダイホルダ133aの回転が静止される(図6及び図12の位置1P24参照)。」
「【図6】
[図:0001429986000001.jpg]
」
「【図10】
[図:0001429986000002.jpg]
【図11】
[図:0001429986000003.jpg]
【図12】
[図:0001429986000004.jpg]
」
イ 甲1発明
上記アによると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落等を示す。)
なお、明細書の文脈から、段落【0048】の「電磁鋼板W」は、「電磁鋼板ES」の誤記、また、段落【0079】の「図11の位置1P5」との記載は、「図11の位置1P15」の誤記として認定した。
「アンコイラー110と、送出装置120(送出部)と、打抜装置130と、コントローラ140(制御部)とを備え、帯状の金属板である電磁鋼板ES(被加工板)から固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2を製造するため製造装置100(段落【0045】)であって、
電磁鋼板ESの厚さは、例えば0.1mm~0.5mm程度であってもよく(段落【0047】)、
打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを順次打ち抜き加工して打抜部材W1,W2をそれぞれ形成する機能を有し(段落【0048】)、
打抜装置130は、ベース131と、下型132と、ダイプレート133と、ストリッパ134と、上型135と、天板136と、プレス機137(駆動部)と、吊り具138と、パンチ1A1~1A12,2A1~2A12と、パイロットピン1B1~1B13,2B1~2B13とを有し(段落【0051】)、
ダイプレート133は、パンチ1A1~1A12,2A1~2A12と共に、打抜部材W1,W2を成形する機能を有し、ダイプレート133には、パンチ1A1~1A12,2A1~2A12に対応する位置にダイ1D1~1D12,2D1~2D12がそれぞれ設けられ(段落【0053】)、
第1の処理: 電磁鋼板ESが送出装置120によって打抜装置130に送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A1に到達すると、電磁鋼板ESがパンチ1A1(第1のパンチ、第7のパンチ)によって所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、電磁鋼板ESの幅方向に並ぶ一対の貫通孔1R1a,1R1bが電磁鋼板ESに形成され(図6及び図10の位置1P1参照)、貫通孔1R1a(第1のパイロット孔)は、電磁鋼板ESの側縁近傍に位置し、貫通孔1R1b(貫通孔)は、電磁鋼板ESの中央近傍に位置し(段落【0070】、【0071】)、
第8の処理: 電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A5(第8のパンチ)に到達すると、電磁鋼板ESがパンチ1A5によって打ち抜かれ、複数のカシメ部23を有する打抜部材1W2が排出孔1C5内においてシリンダ132b上に積み重ねられ(図6及び図10の位置1P7参照)、パンチ1A5による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔1R1a内にはパイロットピン1B2,1B4(第4のパイロットピン)が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされ(図6及び図10の位置1P6,1P9参照)、パンチ1A5による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、パイロットピン1B3(第4のパイロットピン)が貫通孔2R1bを通過して、パイロット孔1E3内にパイロットピン1B3の先端が挿入されることにより、ダイ1D5を保持するダイホルダ133aの回転が静止され(図6及び図10の位置1P8参照)(段落【0076】)、
第2の処理: 電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A7(第2のパンチ)に到達すると、電磁鋼板ESのうち貫通孔1R2,1R6同士の間にそれぞれ加工部1R8(加工済部位)が形成され(図6及び図11の位置1P13参照)、加工部1R8は、貫通孔1R2,1R7を繋ぐ切断線CLに沿って電磁鋼板ESを切り曲げ加工又は打ち抜き加工した後、当該加工済部位を電磁鋼板ESに圧入加工(プッシュバック加工)して得られ、パンチ1A7による電磁鋼板ESの加工の際、貫通孔1R1a内にはパイロットピン1B6,1B7(第1のパイロットピン)が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされ(図6及び図11の位置1P12,1P14参照)(段落【0078】)、
第3の処理: 電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A8(第3のパンチ)に到達すると、電磁鋼板ESのうち貫通孔1R1a,1R1bと一致する位置がパンチ1A8によって打ち抜かれ、複数の貫通孔1R9a,1R9b(第2のパイロット孔)が電磁鋼板ESに形成され(図6及び図11の位置1P15参照)、貫通孔1R9aは、貫通孔1R1aと一致する位置においてパンチ1A8により打ち抜かれ、貫通孔1R1aよりも大きな外形を有し、貫通孔1R9bは、貫通孔1R1bと一致する位置においてパンチ1A8により打ち抜かれ、貫通孔1R1bよりも大きな外形を有し(段落【0079】)、
第4の処理: 電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ1A12(第4のパンチ)に到達すると、電磁鋼板ESのうち加工部1R8を含む領域がパンチ1A12によって打ち抜かれ、打抜部材1W1が排出孔1C12内においてシリンダ132b上に積み重ねられ(図6及び図12の位置1P23参照)、パンチ1A12による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔1R9a内にはパイロットピン1B11,1B13(第2のパイロットピン)が挿通され(図6及び図12の位置1P22,1P25参照)、パンチ1A12による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、パイロットピン1B12(第2のパイロットピン)が貫通孔2R9bを通過し、パイロット孔1E12内にパイロットピン1B12の先端が挿入されることにより、ダイ1D12を保持するダイホルダ133aの回転が静止される(図6及び図12の位置1P24参照)(段落【0084】)、
を実行する製造装置100。」
(2) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 金型装置
(ア) 帯状薄板
甲1発明の厚さが「0.1mm~0.5mm程度」であってもよい「帯状の金属板である電磁鋼板ES(被加工板)」は、帯状薄板といえる。
また、図10から、第1の処理において形成される一対の貫通孔1R1a,1R1bが、所定のピッチで形成されていることが見て取れるから、甲1発明の「送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ES」は、所定ピッチをもって間欠移送されるといえる。
そうすると、甲1発明の「電磁鋼板ES」は、本件発明1の「所定のピッチをもって間欠移送される帯状薄板」に相当する。
(イ) 所定の処理
図6から、「第1の処理」を施すパンチ1A1、「第8の処理」を施すパンチ1A5、「第2の処理」を施すパンチ1A7、「第3の処理」を施すパンチ1A8、「第4の処理」を施すパンチ1A12が、「電磁鋼板ES」の移送方向に整列していることが見て取れる。
そして、甲1発明において実行される「第1の処理」、「第8の処理」、「第2の処理」、「第3の処理」、「第4の処理」は、それぞれ処理ステージにおいて行われるといえるから、「前記帯状薄板の移送方向に整列して設定された複数の処理ステージの各々において」行われる「所定の処理」といえる。
(ウ) 鉄心薄板
「固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2を製造するため製造装置100」に係る甲1発明の「打抜部材W1,W2」は、本件発明1の「所定の形状の鉄心薄板」に相当する。
(エ) 金型装置
甲1発明は、「パンチ1A1~1A12,2A1~2A12」と対応する「ダイ1D1~1D12,2D1~2D12」とにより、「送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを順次打ち抜き加工して打抜部材W1,W2をそれぞれ形成する」から、「順送り金型装置」といえる。
(オ) 小括
以上を踏まえると、甲1発明は、「所定のピッチをもって間欠移送される帯状薄板に、前記帯状薄板の移送方向に整列して設定された複数の処理ステージの各々において所定の処理を行い、所定の形状の鉄心薄板を製造する順送り金型装置」に係る発明である点で、本件発明1と共通する。
イ パイロット孔形成部
本件発明1の「複数のパイロット孔」とは、パイロットピンが「前記処理ステージの或るものでは、前記複数のパイロット孔のうちの一つに係合」し、「前記処理ステージの他の一つのものでは、前記複数のパイロット孔のうちの前記一つ以外のものに係合する」ものである。
そして、甲1発明の「第3の処理」において形成される貫通孔1R9a,1R9bは、「第1の処理」において形成された貫通孔1R1a,1R1bと一致する位置に形成されるから、貫通孔1R1aと貫通孔1R9a、及び、貫通孔1R1bと1R9bは、それぞれ「移送方向に整列する」といえるものの、処理ステージ毎に選択的にパイロットピンを係合する本件発明1の「複数のパイロット孔」には相当しない。
そうすると、甲1発明は、「前記移送方向に整列するパイロット孔を打抜き形成するパイロット孔形成部」を有するといえる点で本件発明1と共通する。
ウ パイロットピン
甲1発明の「パイロットピン1B1~1B13,2B1~2B13」は、本件発明1が有する「前記処理ステージの各々に対応して設けられ、対応する前記パイロット孔に係合して前記各処理ステージにおける前記帯状薄板の位置決めを行う少なくとも1つのパイロットピン」に相当する。
エ パイロットピンの配置
甲1発明の「第8の処理」及び「第4の処理」では:電磁鋼板ESの側縁近傍に位置する貫通孔1R1a、貫通孔1R9a、及び、電磁鋼板ESの中央近傍に位置する貫通孔1R1b、貫通孔2R9bの両方に係合するといえ、また、「第2の処理」では、電磁鋼板ESの側縁近傍に位置する貫通孔1R1aのみにパイロットピンが係合するといえる。
そうすると、甲1発明は「前記処理ステージの或るものでは、前記複数のパイロット孔のうちの一つに係合するように前記パイロットピンが配置され、
前記処理ステージの他の一つのものでは、前記複数のパイロット孔のうちの前記一つ以外のものに係合するように前記パイロットピンが配置され」るといえる点で本件発明1と共通する。
オ 処理部材
甲1発明の「パンチ1A1~1A12,2A1~2A12」、「ダイ1D1~1D12,2D1~2D12」、「ダイ1D5を保持するダイホルダ133a」、「ダイ1D12を保持するダイホルダ133a」は、本件発明1の「前記処理ステージの各々には前記帯状薄板に対して所定の処理を行う処理部材」に相当する。
カ 甲1発明において、パイロットピンは、第8の処理、第2の処理、第4の処理において処理を行う部材と干渉しないパイロット孔と係合しているといえるから、甲1発明は、「前記パイロットピンは、前記処理ステージの各々において、前記移送方向に隔てて複数箇所に形成された前記複数のパイロット孔のうち前記処理部材と干渉しない前記パイロット孔と係合する」点で本件発明1と一致する。
キ 一致点・相違点
以上を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、相違する。
(ア) 一致点
「所定のピッチをもって間欠移送される帯状薄板に、前記帯状薄板の移送方向に整列して設定された複数の処理ステージの各々において所定の処理を行い、所定の形状の鉄心薄板を製造する順送り金型装置であって、
前記移送方向に整列するパイロット孔を打抜き形成するパイロット孔形成部と、
前記処理ステージの各々に対応して設けられ、対応する前記パイロット孔に係合して前記各処理ステージにおける前記帯状薄板の位置決めを行う少なくとも1つのパイロットピンとを有し、
前記処理ステージの或るものでは、前記複数のパイロット孔のうちの一つに係合するように前記パイロットピンが配置され、
前記処理ステージの他の一つのものでは、前記複数のパイロット孔のうちの前記一つ以外のものに係合するように前記パイロットピンが配置され、
前記処理ステージの各々には前記帯状薄板に対して所定の処理を行う処理部材が設置され、
前記パイロットピンは、前記処理ステージの各々において、前記移送方向に隔てて複数箇所に形成された前記複数のパイロット孔のうち前記処理部材と干渉しない前記パイロット孔と係合する順送り金型装置。」
(イ) 相違点
本件発明1が「間欠移送における前記帯状薄板の1回の移送ごとに、」前記移送方向に整列する「複数のパイロット孔」を打抜き形成するパイロット孔形成部を有するのに対し、甲1発明がこのようなパイロット孔形成部を有していない点。
(3) 判断
ア 新規性について
(ア) 本件発明1と甲1発明とは、上記相違点を有するから、本件発明1は、甲1発明ではない。
(イ) 申立人は、異議申立書31頁下から5行~32頁5行において、パイロット孔形成部の構成について、甲1には、「貫通孔1R1aは電磁鋼板ESの側縁近傍に位置しており」(段落【0071】、図10、図11)、「貫通孔1R9aは貫通孔1R1aと一致する位置にある」(段落【0079】、図11、図12)ことが開示されており、「前記複数のパイロット孔が前記移送方向に整列するように前記パイロット孔形成部が構成されている請求項1に記載の順送り金型装置」(特許掲載公報における請求項2(構成B))及び「前記複数のパイロット孔が前記帯状薄板の両側縁の各々に沿って移送方向に整列するように前記複数のパイロット孔形成部が構成されている請求項1に記載の順送り金型装置」(特許掲載公報における請求項3(構成C))が開示されている旨主張する。
しかしながら、上記相違点として認定したとおり、甲1に開示された「貫通孔1R1a」と「貫通孔1R9a」は、本件訂正後の本件発明1の「間欠移送における前記帯状薄板の1回の移送ごとに」「打抜き形成」される、「前記移送方向に整列する複数のパイロット孔」とは対応しないから、申立人の主張は採用できない。
イ 進歩性について
「間欠移送における前記帯状薄板の1回の移送ごとに、前記移送方向に整列する複数のパイロット孔を打抜き形成するパイロット孔形成部」は、いずれの証拠にも、記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) 理由1、理由5についてのまとめ
同様の発明特定事項を有する本件発明8、及び、本件発明1の発明特定事項をすべて有する本件発明3、5~7についても同様である。
したがって、理由1、理由5は理由がない。
4 理由2、6(甲2を主引例とした新規性・進歩性の欠如)、理由3、7(甲3を主引例とした新規性・進歩性の欠如)、理由4、8(甲4を主引例とした新規性・進歩性の欠如)について
上記3のとおり、本件訂正後の本件発明1の「間欠移送における前記帯状薄板の1回の移送ごとに、前記移送方向に整列する複数のパイロット孔を打抜き形成するパイロット孔形成部」は、いずれの証拠にも、記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲2に記載された発明、甲3に記載された発明、甲4に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明、甲3に記載された発明、甲4に記載された発明のいずれかに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、同様の発明特定事項を有する本件発明8、及び、本件発明1の発明特定事項をすべて有する本件発明3、5~7についても同様である。
したがって、甲2を主引例とする理由2、6、甲3を主引例とする理由3、7、甲4を主引例とする理由4、8は、いずれも理由がない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び申立人の提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2、4、9に係る特許についての特許異議の申立てについては、これらの請求項2、4、9は本件訂正により削除され、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700577