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特許異議申立

2024-700283

積層鉄心の製造装置、積層鉄心、及び、積層鉄心の製造方法

審判番号
2024-700283
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-199822
登録番号
7422517
請求日
2024年03月28日
審決日
2024年09月27日
公報発行日
2024年11月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社三井ハイテック
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】石坂 泰紀
  • 【権利者代理人】松澤 寿昭
  • 【権利者代理人】和田 雄二
  • 【権利者代理人】阿部 寛
  • 【異議申立人】原田 祐子
審判長/審判官
  • 審判長 小宮 慎司
  • 審判官 松永 稔
  • 審判官 中野 浩昌
分類
P1651.113-Y (H02K) / P1651.121-Y (H02K) / P1651.536-Y (H02K) / P1651.537-Y (H02K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第2条第3項第1号
データ出所
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事件の表示

特許第7422517号発明「積層鉄心の製造装置、積層鉄心、及び、積層鉄心の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7422517号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7422517号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和1年11月1日に出願され、令和6年1月18日にその特許権の設定登録がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年3月28日に特許異議申立人 原田祐子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 特許第7422517号の請求項1~6の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1~6」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 板状部材を打抜加工された打抜部材を複数積層する積層鉄心の製造装置であって、 前記板状部材を搬送する搬送手段と、 前記搬送手段により搬送される前記板状部材の一の主面のうち、前記打抜部材となる領域に対して液状材料を付着させる液状材料供給部と、 前記液状材料を付着させた後の前記板状部材を打抜加工し、前記打抜部材を形成する打抜加工部と、 前記搬送手段により搬送される前記板状部材において前記打抜部材のヨーク部となる領域の一部であり、且つ、前記板状部材において前記打抜部材のティース部となる領域よりも前記板状部材の幅方向外方で前記板状部材の搬送方向に沿って延びる部分である当接領域と当接して前記板状部材を支持するリフタとを有し、 前記液状材料供給部は、前記板状部材において前記ヨーク部となる領域のうち、前記液状材料供給部における液状材料の付着箇所よりも下流側であって前記打抜加工部よりも上流側の前記当接領域を避けて、円弧状に並ぶように、前記板状部材に対してスポット状に複数の液状材料を付着させる、積層鉄心の製造装置。 【請求項2】 前記打抜加工部によって形成された前記打抜部材同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材を積層する転積手段をさらに有する、請求項1記載の積層鉄心の製造装置。 【請求項3】 前記リフタは、前記搬送手段による前記板状部材の搬送方向に沿って延びる凹部を有し、 前記液状材料供給部は、前記板状部材のうち前記凹部と対向する領域にも前記液状材料を付着させる、請求項1または2に記載の積層鉄心の製造装置。 【請求項4】 前記液状材料供給部における液状材料の付着箇所よりも下流側であって前記打抜加工部よりも上流側の前記リフタは、前記搬送手段による前記板状部材の搬送方向に沿って並んでいる、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層鉄心の製造装置。 【請求項5】 板状部材を打抜加工された3枚以上の打抜部材が積層されて接着剤によって接着された積層鉄心であって、 隣接する前記打抜部材の間には、それぞれ接着剤の一対の未塗布領域を有し、 前記一対の未塗布領域は、前記積層鉄心の中心軸を間に置いて互いに向かい合うように位置すると共に、前記打抜部材のヨーク部において互いに略平行に延びており、 隣接する前記打抜部材毎に設けられる前記接着剤の前記一対の未塗布領域は、平面視において重ならない領域を含む、積層鉄心。 【請求項6】 板状部材を打抜加工された打抜部材を複数積層する積層鉄心の製造方法であって、 前記板状部材の一の主面のうち、前記打抜部材となる領域に対して液状材料を付着させることと、 前記液状材料を付着させた後の前記板状部材を打抜加工し、前記打抜部材を形成することと、 搬送される前記板状部材において前記打抜部材のヨーク部となる領域の一部であり、且つ、前記板状部材において前記打抜部材のティース部となる領域よりも前記板状部材の幅方向外方で前記板状部材の搬送方向に沿って延びる部分である当接領域とリフタとが当接することによって前記リフタで前記板状部材を支持することとを含み、 前記液状材料を付着させることは、前記打抜部材となる領域のうち、前記液状材料を付着させることよりも下流側であって前記打抜部材を形成することよりも上流側の前記当接領域を避けて、円弧状に並ぶように、前記板状部材に対してスポット状に複数の前記液状材料を付着させることを含む、積層鉄心の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として甲第1号証~甲第7号証を提出し、以下の申立理由1~3により、本件の請求項1~6に係る特許を取り消すべきものである旨申し立てた。 [証拠] 甲第1号証:国際公開第2018/127983号 甲第2号証:特開2003-200296号公報 甲第3号証:実全昭60-121429号公報 甲第4号証:特開2009-72794号公報 甲第5号証:特開2018-38119号公報 甲第6号証:特開2019-22341号公報 甲第7号証:特開2001-25218号公報 1 申立理由1(新規性、進歩性欠如) 本件発明1~6は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~6に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。 2 申立理由2(実施可能要件) 本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、同法第113条第4号により取消されるべきものである。 3 申立理由3(明確性) 本件発明6は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項6に係る特許は、同法第113条第4号により取消されるべきものである。 第4 甲第1号証の記載事項、及び、引用発明1~3 1 甲第1号証(国際公開第2018/127983号)には次の記載がある。(下線は引用箇所を示すために当審において付加した。) 「発明が解決しようとする課題 [0004] 鉄心薄板(帯状薄鋼板)の接着剤塗布面に対する接着剤の塗布は、設計通りの接着強度が得られて接着剤の外部への垂れ等がないように、接着剤塗布面の所定位置に正確に行われる必要がある。また、鉄心薄板(帯状薄鋼板)の移動時に鉄心薄板が振動すること等によって、接着剤塗布面の接着剤が周りに拡散したり、飛散したりしないことが要求される。 [0005] 本発明が解決しようとする課題は、接着剤塗布面に対する接着剤の塗布が正確に行われるようにすることである。 ・・・(中略)・・・ [0055] 尚、図1では、説明の便宜上、各塗布点E1、E2が鉄心薄板Aの上面に示されているが、実際には、各塗布点E1、E2は、接着剤が鉄心薄板Aの下面(接着剤塗布面)に塗布されるべく、鉄心薄板Aの下面に設定される。 [0056] 積層鉄心の製造工程は、フープ材Fの順送り金型装置(積層鉄心の製造装置)における間欠移送のもとに、図2に示されているように、前半打抜き工程1~5、接着剤塗布工程6、外形打抜き工程7、回転積層工程8、及び加熱工程9を順に有する。 ・・・(中略)・・・ [0058] 接着剤塗布工程6は、前半打抜き工程1~5の後に実施される。フープ材Fへの接着剤の塗布は、図1にその詳細が示されているように、ヨーク部Bが各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1及び各ティース部Cの2箇所に設定された塗布点E2の各々に丸点状に行われる。ここでは、接着剤として、公知の嫌気性接着剤が用いられる。また、図2でも、説明の便宜上、各塗布点E1、E2が鉄心薄板Aの上面側に示されているが、実際には、各塗布点E1、E2は鉄心薄板Aの下面側に設定される。 [0059] 外形打抜き工程7は接着剤塗布工程6の完了後に実施される。外形打抜き工程7は、鉄心薄板Aの外形d3に対応する形状のパンチとダイとによる金型セット(不図示)によって行われる。 [0060] 回転積層工程8は、外形打抜き工程7に続いて実施される。外形打抜き工程7のダイは、回転ダイであり、1枚の鉄心薄板Aの外形打抜きのたびに自身の中心軸線周りに所定の角度、例えば、90度回転する。これにより、外形打抜き工程7で打ち抜かれた鉄心薄板Aは、中心軸線周りの位置を変化させながら、既に打抜きが完了して回転ダイ内に積層されている鉄心薄板群G上に順次積層される。この回転積層によって各鉄心薄板Aに生じ得る微少な板厚偏差による影響を解消して製品(積層鉄心)の積み厚を精度よく管理することができる。そして鉄心薄板群Gは、回転ダイの下方に連なるスクイズリング(不図示)内に順次押し込まれる。 ・・・(中略)・・・ [0062] 加熱工程9は、回転積層工程8の完了後に実施される。スクイズリングの下部には、加熱装置(不図示)が設けられており、この加熱装置によって鉄心薄板群Gは下方に移動しながら加熱される。これにより、各鉄心薄板A間の接着剤を加熱により硬化させて接着強度を高めることができる。このような接着剤の加熱装置としては、例えば、鉄心薄板群Gに対して熱風を吹き付けるヒータ装置を用いることができる。加熱装置による加熱の後に鉄心薄板群Gは各計量用の鉄心薄板Aの位置で分離され、所定枚数の鉄心薄板Aからなる積層鉄心Mが完成する。 [0063] 次に、積層鉄心の製造装置10の一つの実施形態を、図4、図5を参照して説明する。尚、以下の説明では、説明の簡素化のために、図3に示されているように、円環形状に模式化した鉄心薄板Wについて説明する。鉄心薄板Wは、円形の内形ISの打抜き及び円形の外形OSの打抜きにより形成され、それらの打抜きによって得られる円環部Rの下面(接着剤塗布面)の円周方向の複数箇所に設定された各塗布点Eに接着剤を点状に塗布される。 [0064] 製造装置10は、順送り金型方式によるものであり、図4、図5に示されているように、パイロット孔打抜きステーションIと、内形打抜きステーションIIと、アイドルステーションIIIと、接着剤塗布ステーションIVと、アイドルステーションVと、外形打抜きステーションVIと、アイドルステーションVIIとを順送り方向に順に有し、フープ材Fの順送り方向の間欠移送のもとに、アイドルステーションIII、V、VII以外の各ステーションI、II、IV、VIが各工程を実行する。尚、パイロット孔打抜きステーションI、内形打抜きステーションII、外形打抜きステーションVIの各々で行われる打抜き加工部は斜線によって示されている。アイドルステーションIII、V、VIIでは、フープ材Fの空送りが行われる。 ・・・(中略)・・・ [0073] 接着剤塗布ステーションIVでは、上昇位置にある接着剤塗布装置50によってフープ材Fの下面の塗布点Eに接着剤を丸点状に塗布することが行われる。尚、所定回の間欠移送毎に生じる鉄心薄板Wの積層枚数を設定する計量時には接着剤塗布装置50が降下位置に降下することにより、フープ材Fに対する接着剤の塗布は休止になる。 [0074] 外形打抜きステーションVIは、外形打抜き用パンチ24と外形打抜き用ダイ46とによってフープ材Fに外形OS(図4参照)を打ち抜くことが行われる。この打抜きによって鉄心薄板Wが完成し、鉄心薄板Wは降下して外形打抜き用ダイ46内に順次積層される。外形打抜き用ダイ46内に積層された鉄心薄板Wは、接着剤を塗布されていない計量用のものを除いて上下に重なり合うもの同士で塗布点Eの接着剤によって互いに接着される。 ・・・(中略)・・・ [0102] これにより、フープ材Fの間欠移送時に、フープ材Fが左右方向及び上下方向にずれ動くことが抑制されると共に、フープ材Fの接着剤塗布面(下面)に対する接着剤の塗布時にフープ材Fが左右方向及びダイプレート40の上面47から上方に移動することを制限される。これにより、接着剤塗布面に対する接着剤の塗布が正確に行われる。尚、フープ材Fは、ダイプレート40の上面47上に載置されていることにより、或いは後述するリフタピン110によるリフトアップにより下方への移動を制限(阻止)される。 ・・・(中略)・・・ [0106] 各リフタピン110の上端面の略半分はフープ材Fの下面に当接し、残りの半分はガイド部材100に形成されたストッパ面106に当接可能になっている。これにより、各リフタピン110は、図8A、図8B及び図16に示されているように、フープ材Fがストリッパ28によって押し下げられていない時には、リフタ用ばね114によるばね付勢によって上端面がストッパ面106に当接する上昇位置に位置し、フープ材Fをダイプレート40の上面47より浮上(リフトアップ)させる。各リフタピン110は、フープ材Fがストリッパ28によって押し下げられた時には、図11A、図11B及び図18に示されているようにフープ材Fによって各リフタ用ばね114のばね力に抗して降下し、全体が各リフタピン孔112内に沈下する。 [0107] リフタピン110によるフープ材Fのリフトアップ量Lは、図16に示されているように、リフタピン110の上面がガイド部材100の下向きのストッパ面106に当接することにより決まり、当該リフトアップ量Lはフープ材Fの下面に転写される接着剤の塗布厚さ(最大厚さ)より大きい値に設定されている。 ・・・(中略)・・・ [0120] 上側ホルダ12の上昇が更に進むと、図15A及び図15Bに示されているように、パイロットピン84がパイロット孔Pから上方に抜け出し、その後、上側ホルダ12が図8A及び図8Bに示されている上死点位置に戻る。パイロットピン84がパイロット孔Pから抜け出した時点でフープ材Fの間欠移送が開始される。この間欠移送は、フープ材Fがリフタピン110によりリフトアップされて下面がリフトアップ量L(図16参照)だけダイプレート40の上面47から離れた状態で行われるから、フープ材Fの下面の塗布点Eに転写された接着剤がダイプレート40の上面47によって擦られることがない。」 「[図1] [図:0001416486000001.jpg] 」 「[図4] [図:0001416486000002.jpg] 」 「[図16] [図:0001416486000003.jpg] 」 2 引用発明1 上記1によると甲第1号証には、積層鉄心の製造装置についての次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落番号等を示す。また、段落0058の「ヨーク部Bが各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1」との記載は、「ヨーク部Bの各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1」と認定した。) 「接着剤塗布面に対する接着剤の塗布が正確に行われるようにする(段落0005)積層鉄心の製造装置10(段落0063)であって、 製造装置10は、順送り金型方式によるものであり、パイロット孔打抜きステーションIと、内形打抜きステーションIIと、アイドルステーションIIIと、接着剤塗布ステーションIVと、アイドルステーションVと、外形打抜きステーションVIと、アイドルステーションVIIとを順送り方向に順に有し、フープ材Fの順送り方向の間欠移送のもとに、アイドルステーションIII、V、VII以外の各ステーションI、II、IV、VIが各工程を実行し(段落0064)、 接着剤塗布ステーションIVでは、接着剤塗布装置50によってフープ材Fの下面の塗布点Eに接着剤を丸点状に塗布することが行われ(段落0073)、 フープ材Fへの接着剤の塗布は、ヨーク部Bの各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1及び各ティース部Cの2箇所に設定された塗布点E2の各々に丸点状に行われ(段落0058、図1)、 外形打抜きステーションVIでは、外形打抜き用パンチ24と外形打抜き用ダイ46とによってフープ材Fに外形OSを打ち抜くことが行われ、この打抜きによって鉄心薄板Wが完成し、鉄心薄板Wは降下して外形打抜き用ダイ46内に順次積層され、外形打抜き用ダイ46内に積層された鉄心薄板Wは、接着剤を塗布されていない計量用のものを除いて上下に重なり合うもの同士で塗布点Eの接着剤によって互いに接着され(段落0074)、 フープ材Fは、リフタピン110によるリフトアップにより下方への移動を制限(阻止)され(段落0102)、 各リフタピン110の上端面の略半分はフープ材Fの下面に当接し(段落0106)、 リフタピン110によるフープ材Fのリフトアップ量Lは、フープ材Fの下面に転写される接着剤の塗布厚さ(最大厚さ)より大きい値に設定され(段落0107)、 間欠移送は、フープ材Fがリフタピン110によりリフトアップされて下面がリフトアップ量Lだけダイプレート40の上面47から離れた状態で行われるから、フープ材Fの下面の塗布点Eに転写された接着剤がダイプレート40の上面47によって擦られることがない(段落0120)、 積層鉄心の製造装置10。」 3 引用発明2 上記1によると甲第1号証には、積層鉄心についての次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落番号等を示す。また、段落0058の「ヨーク部Bが各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1」との記載は、「ヨーク部Bの各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1」と認定した。) 「フープ材Fの順送り金型装置(積層鉄心の製造装置)における間欠移送のもとに、前半打抜き工程1~5、接着剤塗布工程6、外形打抜き工程7、回転積層工程8、及び加熱工程9を順に有する製造工程によって製造される積層鉄心(段落0056)であって、 接着剤塗布工程6における、フープ材Fへの接着剤の塗布は、ヨーク部Bの各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1及び各ティース部Cの2箇所に設定された塗布点E2の各々に丸点状に行われ(段落0058)、 回転積層工程8は、外形打抜き工程7に続いて実施され、外形打抜き工程7で打ち抜かれた鉄心薄板Aは、中心軸線周りの位置を変化させながら、既に打抜きが完了して回転ダイ内に積層されている鉄心薄板群G上に順次積層され、この回転積層によって各鉄心薄板Aに生じ得る微少な板厚偏差による影響を解消して製品(積層鉄心)の積み厚を精度よく管理することができ(段落0060)、 加熱工程9は、回転積層工程8の完了後に実施され、加熱装置による加熱の後に鉄心薄板群Gは各計量用の鉄心薄板Aの位置で分離する、 所定枚数の鉄心薄板Aからなる積層鉄心M(段落0062)。」 4 引用発明3 上記1によると甲第1号証には、引用発明1に対応する積層鉄心の製造方法についての発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているといえる。 第5 申立理由1(新規性、進歩性欠如) 1 本件発明1について (1) 対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「フープ材F」、及び、外形打抜きステーションVIでフープ材Fを打ち抜くことにより完成する「鉄心薄板W」は、それぞれ、本件発明1の「板状部材」、及び、「板状部材を打抜加工された打抜部材」に相当する。 そして、引用発明1の積層鉄心が、積層された鉄心薄板Wを接着剤によって互いに接着したものであることを踏まえると、引用発明1と本件発明1とはいずれも「板状部材を打抜加工された打抜部材を複数積層する積層鉄心の製造装置」である点で共通する。 イ 引用発明1は、「順送り金型方式によるものであり、パイロット孔打抜きステーションIと、内形打抜きステーションIIと、アイドルステーションIIIと、接着剤塗布ステーションIVと、アイドルステーションVと、外形打抜きステーションVIと、アイドルステーションVIIとを順送り方向に順に有し、フープ材Fの順送り方向の間欠移送のもとに、アイドルステーションIII、V、VII以外の各ステーションI、II、IV、VIが各工程を実行」するものであるから、「フープ材Fの順送り方向の間欠移送」を行う搬送手段を有していることは明らかである。 ウ 引用発明1の、フープ材Fの下面に塗布される「接着剤」は、「液状材料」といえる。 また、引用発明1における「ヨーク部Bの各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1及び各ティース部Cの2箇所に設定された塗布点E2」は、フープ材Fを打ち抜いて「鉄心薄板W」となる領域に含まれる。 そして、引用発明1の「接着剤塗布ステーションIV」は、「フープ材Fの順送り方向の間欠移送のもとに」、「接着剤塗布装置50によってフープ材Fの下面の塗布点Eに接着剤を丸点状に塗布する」との工程を行うから、本件発明1の「前記搬送手段により搬送される前記板状部材の一の主面のうち、前記打抜部材となる領域に対して液状材料を付着させる液状材料供給部」に相当する。 エ 引用発明1の「外形打抜きステーションVI」による「外形打抜き用パンチ24と外形打抜き用ダイ46とによってフープ材Fに外形OSを打ち抜く」工程は、順送り金型方式において接着剤塗布ステーションIVにおける工程の後の工程であるから、引用発明1の「外形打抜きステーションVI」は、本件発明1の「前記液状材料を付着させた後の前記板状部材を打抜加工し、前記打抜部材を形成する打抜加工部」に相当する。 オ 引用発明1の「リフタピン110」は、「上端面の略半分はフープ材Fの下面に当接」し「リフトアップによりフープ材Fの下方への移動を制限(阻止)」、すなわち支持するものである。 そして、フープ材Fの下面のリフタピン110が当接する部分は「当接領域」といえるから、引用発明1の「リフタピン110」は、本件発明1の「当接領域と当接して前記板状部材を支持するリフタ」と対応する。 カ 引用発明1においてフープ材Fへの接着剤の塗布は、「ヨーク部Bの各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1に丸点状に行われ」る。 そして、「丸点状」は「スポット状」といえ、また、「ヨーク部B」は、図1に示されるように円環状の部分であって、そこに設定された塗布点E1は「円弧状」に並んでいるといえるから、引用発明1は、「前記板状部材において前記ヨーク部となる領域」に「円弧状に並ぶように、スポット状に複数の液状材料を付着させる」点で本件発明1と共通する。 キ 一致点・相違点 以上を踏まえると、本件発明1と引用発明1とは次の点で一致し、相違する。 (ア) 一致点 「板状部材を打抜加工された打抜部材を複数積層する積層鉄心の製造装置であって、 前記板状部材を搬送する搬送手段と、 前記搬送手段により搬送される前記板状部材の一の主面のうち、前記打抜部材となる領域に対して液状材料を付着させる液状材料供給部と、 前記液状材料を付着させた後の前記板状部材を打抜加工し、前記打抜部材を形成する打抜加工部と、 前記搬送手段により搬送される前記板状部材において、当接領域と当接して前記板状部材を支持するリフタとを有し、 前記液状材料供給部は、前記板状部材において前記ヨーク部となる領域に、円弧状に並ぶように、前記板状部材に対してスポット状に複数の液状材料を付着させる、積層鉄心の製造装置。」 (イ) 相違点1 本件発明1が、板状部材においてリフタと当接する当接領域について、「前記打抜部材のヨーク部となる領域の一部であり、且つ、前記板状部材において前記打抜部材のティース部となる領域よりも前記板状部材の幅方向外方で前記板状部材の搬送方向に沿って延びる部分である」と特定しているのに対し、引用発明1が、フープ材Fにおいてリフタピン110と当接する領域について、このような特定をしていない点。 (ウ) 相違点2 本件発明1が、板状部材における液状材料を付着させる位置について、「前記板状部材において前記ヨーク部となる領域のうち、前記液状材料供給部における液状材料の付着箇所よりも下流側であって前記打抜加工部よりも上流側の前記当接領域を避けて」と特定しているのに対し、引用発明1が、フープ材Fにおける接着剤を塗布する位置について、このような特定をしていない点。 (2) 相違点についての判断 引用発明1は、「接着剤塗布面に対する接着剤の塗布が正確に行われるようにする積層鉄心の製造装置10」に係る発明であって、フープ材Fへの接着剤の塗布は「ヨーク部Bの各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1」に行われ、「リフタピン110によるフープ材Fのリフトアップ量Lは、フープ材Fの下面に転写される接着剤の塗布厚さ(最大厚さ)より大きい値に設定され」ることによって、「間欠移送は、フープ材Fがリフタピン110によりリフトアップされて下面がリフトアップ量Lだけダイプレート40の上面47から離れた状態で行われるから、フープ材Fの下面の塗布点Eに転写された接着剤がダイプレート40の上面47によって擦られることがない」。 そして、引用発明1のリフタピン110の配置位置を、フープ材Fにおけるヨーク部Bとなる領域で当接してフープ材Fを支持する位置とした場合、リフタピン110は、フープ材Fの下面のヨーク部Bに対応する位置に設定された複数の塗布点E1に転写された接着剤を擦ってしまい、引用発明1が備える「接着剤塗布面に対する接着剤の塗布が正確に行われるようにする」との機能を損なうこととなる。 そうすると、引用発明1のリフタピン110の配置位置を、フープ材Fにおけるヨーク部Bとなる領域で当接してフープ材Fを支持する位置とすること、すなわち相違点1に係る本件発明1の構成を採用することには、阻害要因が存在する。 したがって、本件発明1は、甲第2号証~甲第7号証の記載された事項にかかわらず、また、相違点2を検討するまでもなく、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、上記のとおり、本件発明1は、引用発明1と少なくとも相違点1について実質的に相違するから、引用発明1ではない。 (3) 申立人の主張について ア 申立人は本件発明1について、次の主張をした。 「そして、両者は、以下の点で相違する可能性がある。 相違点1:構成(E)について、本件特許発明1では、「当接領域」は、「前記搬送手段により搬送される前記板状部材において前記打抜部材のヨーク部となる領域の一部であり、且つ、前記板状部材において前記打抜部材のティース部となる領域よりも前記板状部材の幅方向外方で前記板状部材の搬送方向に沿って延びる部分である」に対し、甲1発明では、「当接領域」は、「前記打抜部材のヨーク部となる領域の一部」であるか、また、「前記板状部材の搬送方向に沿って延びる部分である」か明らかでない点。 ・・・(中略)・・・ まず、相違点1について検討する。 本件特許発明1の「当接領域」は、少なくとも板状部材においてリフタが当接する領域を含むことは明らかである。 これに対し、例えば、甲第1号証の図4(前掲)では、リフタピン110(「リフタ」に相当)は、鉄心薄板W(「打抜部材」に相当)のヨーク部Bとなる領域には当接していないが、図4に示される鉄心薄板W(「打抜部材」に相当)は、鉄心薄板A(図1参照)を模式化したものにすぎないため、リフタピン110(「リフタ」に相当)とヨーク部Bとの位置関係は必ずしも明確ではない。 しかしながら、甲第1号証には、鉄心薄板A、W(「打抜部材」に相当)のヨーク部Bとなる領域の一部にリフタピン110(「リフタ」に相当) が当接することは明示されていないとしても、フープ材F(「板状部材」に相当)のいずれの領域(部位)に対してリフタピン110(「リフタ」に相当)を当接させるかについては、当業者が、フープ材Fの厚さや幅、並びにフープ材Fから打抜かれる鉄心薄板A、W(「打抜部材」に相当)の形状、大きさ、及び配置などの条件に応じて適宜設定し得る設計的事項にすぎない。例えば、ある条件では、鉄心薄板A、W(「打抜部材」に相当)のヨーク部Bとなる領域の一部にリフタピン110(「リフタ」に相当)が当接しない場合でも、材料歩留まりを上げるべくフープ材Fにおいて鉄心薄板A、W(「打抜部材」に相当)の領域が占める割合を大きく設定することで、そのヨーク部Bとなる領域の一部に同じ配置のリフタピン110(「リフタ」に相当)が当接するようになることは容易に想像できる。 なお、リフタピン110(「リフタ」に相当)は、フープ材F(「板状部材」に相当)の移送方向(「搬送方向」に相当)において所定の長さを有することは明らかであるため、リフタピン110(「リフタ」に相当) の当接領域が、「前記フープ材Fの移送方向(「搬送方向」に相当)に沿って延びる部分である」ことは当然である。 さらに、打抜部材のヨーク部となる領域にリフタを当接させることは、例えば、甲第2号証(特開2003-200296号公報)や甲第3号証(実全昭第60-121429号公報)に記載されたように周知技術である。 ・・・(中略)・・・ したがって、相違点1は、設計的事項にすぎないか、または、周知技術(甲2、甲3)である。」(特許異議申立書28ページ23行~30ページ6行) イ しかしながら、上記(2)のとおり、引用発明1のリフタピン110の配置位置を、フープ材Fにおけるヨーク部Bとなる領域で当接してフープ材Fを支持する位置とすることには、阻害要因が存在するから、申立人が主張するような「適宜設定し得る設計的事項」とはいえない。 また、甲第2号証及び甲第3号証に「打抜部材のヨーク部となる領域にリフタを当接させる」との技術事項が記載されているとしても、いずれも接着剤を塗布するという前提を欠くものであるから、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術事項を、「接着剤塗布面に対する接着剤の塗布が正確に行われるようにする積層鉄心の製造装置10」に係る引用発明1に適用することに、動機付けは見いだせない。 したがって、申立人の上記アの主張は採用できない。 ウ 申立人は、特許異議申立書30ページ7行~31ページ13行において、甲第5号証~甲第6号証を引用して、相違点2は、設計的事項にすぎないか、又は、周知技術であると主張するが、上記(2)のとおり、本件発明1は、相違点2を検討するまでもなく、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立人の主張は採用できない。 2 本件発明2~4について 本件発明2~4は、いずれも本件発明1の発明特定事項を含むから、上記1のとおり、少なくとも相違点1について引用発明1と相違し、かつ、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものはいえない。 3 本件発明5について (1) 対比 本件発明5と引用発明2とを対比する ア 引用発明2の、フープ材Fの順送り金型装置における間欠移送のもとに、接着剤塗布工程6において接着剤が塗布され、外形打抜き工程7で打ち抜かれた鉄心薄板Aを順次積層した「所定枚数の鉄心薄板Aからなる積層鉄心M」は、「板状部材を打抜加工された3枚以上の打抜部材が積層されて接着剤によって接着された積層鉄心」を含む。 イ 引用発明2の接着剤塗布工程6における、「ヨーク部Bの各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1」及び「各ティース部Cの2箇所に設定された塗布点E2」以外の部分は、接着剤の塗布領域といえる。 そうすると、引用発明2は「隣接する前記打抜部材の間には、それぞれ接着剤の未塗布領域」を有する点で本件発明5と共通する。 ウ 一致点・相違点 以上を踏まえると、本件発明5と引用発明2とは以下の点で一致し、相違する。 (ア) 一致点 「板状部材を打抜加工された3枚以上の打抜部材が積層されて接着剤によって接着された積層鉄心であって、 隣接する前記打抜部材の間には、それぞれ接着剤の未塗布領域を有する、積層鉄心。」 (イ) 相違点3 一致点である、隣接する打抜部材の間に有する接着剤の未塗布領域について、本件発明5が「一対」であって、「前記一対の未塗布領域は、前記積層鉄心の中心軸を間に置いて互いに向かい合うように位置すると共に、前記打抜部材のヨーク部において互いに略平行に延びており、 隣接する前記打抜部材毎に設けられる前記接着剤の前記一対の未塗布領域は、平面視において重ならない領域を含む」ことを特定しているのに対し、引用発明2の未塗布領域が、接着剤塗布工程6における、「ヨーク部Bが各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1」及び「各ティース部Cの2箇所に設定された塗布点E2」以外の部分である点(以下「相違点3」という。)。 (2) 相違点3の判断 引用発明2において、甲第1号証の図1に示される接着剤の未塗布領域(「ヨーク部Bの各スロット部S1に対応する位置に設定された複数の塗布点E1」及び「各ティース部Cの2箇所に設定された塗布点E2」以外の部分)を、「前記積層鉄心の中心軸を間に置いて互いに向かい合うように位置すると共に、前記打抜部材のヨーク部において互いに略平行に延びて」いる「一対」の未塗布領域とすることは、甲第1号証、及び甲第2号証~甲第7号証のいずれにも記載も示唆されておらず、このようにする動機付けは存在しない。 したがって、本件発明5は、引用発明2、及び、甲第2号証~甲第7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、上記のとおり、本件発明1は、引用発明2と相違点3について実質的に相違するから、引用発明1ではない。 (3) 申立人の主張 ア 申立人は本件発明5について、次の主張をした。 「そして、両者は、以下の点で相違する可能性がある。 相違点4:構成(L)について、本件特許発明5では、「前記一対の未塗布領域は、前記積層鉄心の中心軸を間に置いて互いに向かい合うように位置すると共に、前記打抜部材のヨーク部において互いに略平行に延びて」いるのに対し、甲1発明では、「接着剤が塗布されていない領域(「一対の未塗布領域」に相当)」は、「前記積層鉄心Mの中心軸を間に置いて互いに向かい合うように位置すると共に、前記鉄心薄板A、W(「打抜部材」に相当)ヨーク部Bにおいて互いに略平行に延びて」いるか明らかでない点。 ・・・(中略)・・・ まず、相違点4について検討する。 本件特許発明5の「一対の未塗布領域」については、接着剤が塗布されていない対をなす領域であると解されるところ、「未塗布領域」を設定するための具体的手法は明らかではなく、周知のものでもない。 そこで、「一対の未塗布領域」については、任意に設定可能な領域であると仮定して検討する。 そうすると、甲1発明においても、当業者は、隣接する前記鉄心薄板A、W(「打抜部材」に相当)の間で、それぞれ接着剤が塗布されていない領域(「一対の未塗布領域」に相当)において、「前記積層鉄心Mの中心軸を間に置いて互いに向かい合うように位置すると共に、前記鉄心薄板A、W(「打抜部材」に相当)のヨーク部Bにおいて互いに略平行に延び」る所定領域を設定可能であることは明らかである。 したがって、相違点4は、甲第1号証に記載された事項にすぎない。」(特許異議申立書33ページ1~29行) イ しかしながら、上記(2)のとおり、引用発明2において、接着剤の未塗布領域を「前記積層鉄心の中心軸を間に置いて互いに向かい合うように位置すると共に、前記打抜部材のヨーク部において互いに略平行に延びて」いる「一対」の未塗布領域とする動機付けは存在しない。 したがって、申立人の上記アの主張は採用できない。 ウ 加えて、申立人は、特許異議申立書33ページ30行~34ページ12行において、本件発明5が「隣接する前記打抜部材毎に設けられる前記接着剤の前記一対の未塗布領域は、平面視において重ならない領域を含む」ことを特定しているとの相違について、甲第1号証に記載された事項にすぎないか、又は、甲第5号証に記載されていると主張するが、上記(2)のとおり引用発明2において、当該相違の前提となる、接着剤の未塗布領域を「前記積層鉄心の中心軸を間に置いて互いに向かい合うように位置すると共に、前記打抜部材のヨーク部において互いに略平行に延びて」いる「一対」の未塗布領域とすることは、当業者が容易に想到し得る事項ではないから、申立人の主張は採用できない。 4 本件発明6について 本件発明6と引用発明3とを対比すると、本件発明1についての相違点1、2(上記1(1)キ(イ)、(ウ))と同様の点で相違し、本件発明1についての上記1(2)における判断と同様に、本件発明6は、引用発明3ではなく、引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 特許異議申立書(35ページ9行~38ページ2行)で、上記1(3)アと同様の主張をしているが、上記1(3)イと同様に採用できない。 5 小括 以上のとおり、本件発明1~6は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第2号証~甲第7号証の記載事項を踏まえても、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、申立理由1(新規性欠如、進歩性欠如)は理由がない。 第6 申立理由2(実施可能要件違反) 1 申立理由2(実施可能要件違反)は次のとおりである。 特許異議申立書38ページ3行には項目として「エ サポート要件違反(理由2)」と記載されているが、その内容から実施可能要件違反として検討する。 「本件特許発明5には、「隣接する前記打抜部材の間には、それぞれ接着剤の一対の未塗布領域を有し」、「前記一対の未塗布領域は、前記積層鉄心の中心軸を間に置いて互いに向かい合うように位置すると共に、前記打抜部材のヨーク部において互いに略平行に延びており」、及び「隣接する前記打抜部材毎に設けられる前記接着剤の前記一対の未塗布領域は、平面視において重ならない領域を含む」との記載が存在する。 ここで、「未塗布領域」は、打抜部材を接着するための接着剤が塗布されていない領域を意味するものと考えられる。 一方、本件特許発明5には、「未塗布領域」について、「一対」であること、「前記積層鉄心の中心軸を間に置いて互いに向かい合うように位置すると共に、前記打抜部材のヨーク部において互いに略平行に延び」ること、及び「隣接する前記打抜部材毎に設けられる前記接着剤の前記一対の未塗布領域は、平面視において重ならない領域を含む」ことの要件が含まれている。 それらの要件を考慮すれば、「未塗布領域」は、打抜部材に対して特定の範囲に塗布された接着剤についての未塗布の領域(すなわち、接着剤が塗布されていない領域の全て)であるか、或いは、接着剤が塗布されていない領域の一部であって、そのような要件を満たす特定の領域であると考えられる。 しかしながら、本件特許の明細書等(段落0064、0067、0069、図1、図4、図6等)には、未塗布領域Nの一例が開示されているものの、接着剤によって接着された積層鉄心において、任意に設定され得る接着剤の塗布領域に応じて、上述の要件を満たす「未塗布領域」をどのように定めることができるかについては、何ら具体的に記載されておらず、そのような「未塗布領域」は周知のものでもない。 したがって、本件特許の明細書における発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。」(特許異議申立書38ページ4~31行) 2(1) 特許法第36条第4項第1号は、特許による技術の独占が発明の詳細な説明をもって当該技術を公開したことへの代償として付与されるという仕組みを踏まえ、発明の詳細な説明の記載につき、実施可能要件を定めるものである。このような同号の趣旨に鑑みると、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、特許を受けようとする発明の実施をすることができる程度の記載があることを要するものと解される。 また、物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、特許法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」とは、その物を作ることができ、かつ、その物を使用できることであり、物の発明については、明細書にその物を生産する方法及び使用する方法についての具体的な記載が必要であるが、そのような記載がなくても、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を作ることができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。 以下、この規範に沿って検討する。 (2) 本件特許の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明には、段落0014~0022に固定子積層鉄心の構成についての記載、段落0023~0057に積層鉄心の製造装置の構成について記載、段落0058~0067には、積層鉄心の製造方法についての記載がある。 そして、段落0021~0022には「転積」についての記載があり、転積する際の角度、及び、打ち抜き部材の半径を特定すれば、「前記一対の未塗布領域は、前記積層鉄心の中心軸を間に置いて互いに向かい合うように位置すると共に、前記打抜部材のヨーク部において互いに略平行に延びており、 隣接する前記打抜部材毎に設けられる前記接着剤の前記一対の未塗布領域は、平面視において重ならない領域を含む」との要件を満たす「未塗布領域」を算出し、定め得るから、当業者は、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明5に係る積層鉄心を作り、使用することができる。 したがって、申立理由2(実施可能要件)は理由がない。 第7 申立理由3(明確性要件違反) 1 申立理由3(明確性要件違反)は次のとおりである。 「本件特許発明6には、「前記液状材料を付着させることは、前記打抜部材となる領域のうち、前記液状材料を付着させることよりも下流側であって前記打抜部材を形成することよりも上流側の前記当接領域を避けて」との記載が存在する。 ここで、「前記液状材料を付着させること」は、特定の位置を示すものではないため、「前記液状材料を付着させることよりも下流側」との記載は不明瞭である。また、「下流側」の語についても、下流側がどのように定まるのか何ら記載がなく不明瞭である。 同様に 「前記打抜部材を形成すること」は、特定の位置を示すものではないため、「前記打抜部材を形成することよりも上流側」との記載は不明瞭である。また、「上流側」の語についても、上流側がどのように定まるのか何ら記載がなく不明瞭である。 したがって、本件特許発明6は明確でない。」(特許異議申立書38ページ下から3行~39ページ10行) 2(1) 特許法第36条第6項第2号の趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るため、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2) 本件発明6において、「当接領域」は、搬送される板状部材において、リフタが、前記板状部材を支持するために当接する領域であると理解できる。 そして、本件発明6は、「搬送される前記板状部材」について、「前記液状材料を付着させた後の前記板状部材を打抜加工し、前記打抜部材を形成すること」を施すものであるから、本件発明6の「前記液状材料を付着させることよりも下流側であって前記打抜部材を形成することよりも上流側の前記当接領域」との発明特定事項は、搬送される板状部材について、液状材料を付着させる工程と打抜部材を形成する工程との間に、リフタが当接する領域と理解することができるから、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 したがって、申立理由3(明確性要件違反)は理由がない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700283

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