特許異議申立
2024-700575
ニッケル粉及びニッケル粒子の製造方法
- 審判番号
- 2024-700575
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-511771
- 登録番号
- 7406047
- 請求日
- 2024年06月17日
- 審決日
- 2024年10月28日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三井金属鉱業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
- 【異議申立人】藤井 正剛
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 井上 猛
- 審判官 土屋 知久
- 分類
- P1652.121-Y (B22F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7406047号発明「ニッケル粉及びニッケル粒子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7406047号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7406047号(請求項の数11。以下、「本件特許」という。)は、2022年(令和4年)4月11日(優先権主張:令和3年4月26日)を国際出願日とする特許出願(特願2023-511771号)に係るものであって、令和5年12月18日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和5年12月26日である。)。
その後、令和6年6月17日に、本件特許の請求項1~9に係る特許に対して、特許異議申立人である藤井正剛(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~11に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
【請求項1】
走査型電子顕微鏡による測定から算出された円相当直径に基づく粒度分布において、累積個数50個数%における個数累積粒径をD50としたとき、
D50が50nm以上200nm以下であり、
D50の1.5倍以上の粒径を有する粒子の存在割合が0.5個数%以下であり、
WPPF法によって測定された結晶子サイズをCs(nm)としたとき、Cs/D50の値が0.3以上0.6以下であり、
前記粒度分布における粒径の標準偏差をσ(nm)としたとき、(σ/D50)×100(%)の値が14%以下である、ニッケル粉。
【請求項2】
ナトリウム元素の含有量が50ppm以下であり、カリウム元素の含有量が50ppm以下であり、塩素元素の含有量が500ppm以下であり、且つ、硫黄元素の含有量が500ppm以下である、請求項1に記載のニッケル粉。
【請求項3】
1体積%水素/99体積%窒素雰囲気下、900℃での熱収縮量が30%以下である、請求項1又は2に記載のニッケル粉。
【請求項4】
1体積%水素/99体積%窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minでの熱収縮終了温度が650℃以上1000℃以下である、請求項1又は2に記載のニッケル粉。
【請求項5】
炭素元素の含有量/比表面積の値が、0.01g/(m2/g)以上0.35g/(m2/g)以下である、請求項1又は2に記載のニッケル粉。
【請求項6】
水酸化ニッケル粒子、ポリオール、貴金属化合物、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンイミンを含む液を加熱してニッケル粒子を製造する方法であって、
1質量部のポリエチレンイミンに対して、ポリビニルピロリドンを30質量部以上200質量部以下用い、
水酸化ニッケルをニッケルに換算した100質量部に対して前記貴金属化合物を0.01質量部以上5質量部以下用いる、ニッケル粒子の製造方法。
【請求項7】
前記液を150℃以上200℃以下に加熱する、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ポリオールとして、エチレングリコールを用いる、請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ポリエチレンイミンとして、数平均分子量が600以上10000以下である分岐鎖ポリエチレンイミンを用いる、請求項6又は7にニッケル粒子の製造方法。
【請求項10】
製造されたニッケル粒子を水洗するか、又は塩基性水溶液で処理する、請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項11】
水洗後のニッケル粒子、又は前記塩基性水溶液で処理した後のニッケル粒子を、疎水性有機物によって処理する、請求項10に記載の製造方法。
第3 特許異議の申立ての理由の概要
本件特許の請求項1~9に係る特許は、下記1~5のとおり、特許法113条2号に該当する(証拠方法は下記6を参照。以下、甲第1号証等を単に「甲1」等という。)。
1 申立理由1(進歩性)
本件発明1~5は、甲1に記載された発明並びに甲1、甲3、甲4、甲6及び甲7に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法113条2号に該当する。
2 申立理由2(進歩性)
本件発明1は、甲2に記載された発明並びに甲1、甲3、甲4及び甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法113条2号に該当する。
本件発明6~9は、甲2に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項6~9に係る特許は、同法113条2号に該当する。
3 申立理由3(進歩性)
本件発明1~5は、甲5に記載された発明並びに甲1、甲2、甲4及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法113条2号に該当する。
本件発明6~9は、甲5に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項6~9に係る特許は、同法113条2号に該当する。
4 申立理由4(進歩性)
本件発明6~9は、甲8に記載された発明並びに甲2及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項6~9に係る特許は、同法113条2号に該当する。
5 申立理由5(進歩性)
本件発明6は、甲9に記載された発明並びに甲2及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項6に係る特許は、同法113条2号に該当する。
6 証拠方法
・甲1 特開2017-179551号公報
・甲2 特開2006-336060号公報
・甲3 国際公開第2017/056741号
・甲4 国際公開第2018/163823号
・甲5 特開2006-161128号公報
・甲6 「製品・技術紹介 積層セラミックコンデンサ用ニッケル超微粉」、JFE技報、JFEスチール株式会社、2021年2月、No.47、78-79頁
・甲7 特許第6082278号公報
・甲8 特許第4449676号公報
・甲9 特開2018-204047号公報
第4 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1(進歩性)
(1)甲1に記載された発明
甲1の記載(請求項1、2、5、【0001】、【0003】、【0009】、【0021】、【0024】~【0027】、【0082】~【0101】、表1~4)によれば、特に、請求項1、2、5、【0083】、【0084】の記載を前提として、実施例2(表1、2)に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「ニッケル及び銅である金属元素成分の含有量が97.33質量%であり、炭素、窒素、水素及び酸素である金属元素以外の成分の含有量が2.67質量%であるニッケル粒子であって、
走査型電子顕微鏡により試料の写真を撮影して、その中から無作為に4000個のニッケル粒子を抽出してそれぞれの面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として算出した、一次粒子の平均粒子径D50が83nm、90%径D90が97nmであり、
走査型電子顕微鏡により試料の写真を撮影して、その中から無作為に10000個のニッケル粒子を抽出して、その中の、一次粒子の平均粒子径D50の2.0倍以上の粒子が全粒子個数の0.01%未満であり、最大粒子径Dmaxが108nmであり、
(一次粒子径の標準偏差)÷(一次粒子径の平均粒子径D50)によって算出した一次粒子径の変動係数が0.12である、ニッケル粒子。」(以下、「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における「ニッケル及び銅である金属元素成分の含有量が97.33質量%であり、炭素、窒素、水素及び酸素である金属元素以外の成分の含有量が2.67質量%であるニッケル粒子」は、その一次粒子の平均粒子径D50等を特定するものであるから、複数のニッケル粒子の集合体、すなわち、ニッケル粉と解される。
そうすると、甲1発明における上記「ニッケル粒子」は、本件発明1における「ニッケル粉」に相当する。
(イ)甲1発明における「一次粒子の平均粒子径D50」は、「走査型電子顕微鏡により試料の写真を撮影して、その中から無作為に4000個のニッケル粒子を抽出してそれぞれの面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として算出した」ものであるところ、走査型電子顕微鏡により試料の写真を撮影して、ニッケル粒子の面積(二次元)を求めていることから、真球に換算するとは、真円(二次元)に換算するとの趣旨と解される。
そうすると、甲1発明における「一次粒子の平均粒子径D50」は、本件発明1における「走査型電子顕微鏡による測定から算出された円相当直径に基づく粒度分布において、累積個数50個数%における個数累積粒径」である「D50」に相当する。
(ウ)甲1発明における「一次粒子の平均粒子径D50が83nm」は、上記(イ)を踏まえると、本件発明1における「D50が50nm以上200nm以下」に相当する。
(エ)甲1発明のニッケル粒子は、「走査型電子顕微鏡により試料の写真を撮影して、その中から無作為に10000個のニッケル粒子を抽出して、その中の、一次粒子の」「最大粒子径Dmaxが108nmであ」るから、一次粒子の平均粒子径D50(83nm)の1.5倍の粒径(124.5nm)以上の粒径を有する粒子は存在しないといえる。
そうすると、甲1発明において、「一次粒子の平均粒子径D50が83nm」であり、「一次粒子の」「最大粒子径Dmaxが108nmであ」ることは、上記(イ)を踏まえると、本件発明1において、「D50の1.5倍以上の粒径を有する粒子の存在割合が0.5個数%以下であ」ることに相当する。
(オ)甲1発明における「(一次粒子径の標準偏差)÷(一次粒子径の平均粒子径D50)によって算出した一次粒子径の変動係数が0.12」は、上記(イ)を踏まえると、本件発明1における「前記粒度分布における粒径の標準偏差をσ(nm)としたとき、(σ/D50)×100(%)の値が14%以下」に相当する。
(カ)以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「走査型電子顕微鏡による測定から算出された円相当直径に基づく粒度分布において、累積個数50個数%における個数累積粒径をD50としたとき、
D50が50nm以上200nm以下であり、
D50の1.5倍以上の粒径を有する粒子の存在割合が0.5個数%以下であり、
前記粒度分布における粒径の標準偏差をσ(nm)としたとき、(σ/D50)×100(%)の値が14%以下である、ニッケル粉。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1-1
本件発明1では、「WPPF法によって測定された結晶子サイズをCs(nm)としたとき、Cs/D50の値が0.3以上0.6以下であ」るのに対して、甲1発明では、上記「Cs/D50の値」が「0.3以上0.6以下」であるかどうか不明である点。
イ 相違点1-1の検討
(ア)まず、相違点1-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲1には、「WPPF法によって測定された結晶子サイズをCs(nm)としたとき、Cs/D50の値」(以下、単に「Cs/D50の値」という。)については、何ら記載されていない。また、甲1発明に係るニッケル粒子であれば、必ず、「Cs/D50の値」が「0.3以上0.6以下」となることが技術常識であるともいえない。
以上によれば、相違点1-1は実質的な相違点である。
(イ)次に、相違点1-1の容易想到性について検討する。
a 上記(ア)で述べたとおり、甲1には「Cs/D50の値」については何ら記載されておらず、また、甲1発明に係るニッケル粒子であれば、必ず、「Cs/D50の値」が「0.3以上0.6以下」となることが技術常識であるともいえない。甲1には、甲1発明において、「Cs/D50の値」を「0.3以上0.6以下」とすることを動機付ける記載は見当たらない。また、甲3、甲4、甲6、甲7の記載を考慮したとしても、甲1発明において、「Cs/D50の値」を「0.3以上0.6以下」とすることが動機付けられるとはいえない。
b(a)申立人は、甲1には、結晶性との表現はないものの、誘電体層の積層後の焼成時に誘電体との収縮率差が大きくなるとクラック等の問題が生じやすいので、焼結開始温度以上の高温領域における熱収縮が小さい方が好ましいという、本件明細書【0014】と同内容の事項が開示されており、また、甲6にも、焼成時に高温域で急速に焼結させないための高結晶性が要求されるという、同じ事項が開示されていることから、結晶性を高くすることで、ニッケル粉と誘電体粉との間での収縮度合いの不適合に起因する欠陥の発生を効果的に防止し得ることは周知の事項であり、ニッケル粉において、ニッケル粒子の結晶性を高くすることが望まれていたところ、本件明細書【0015】に記載されるように、ニッケル粒子の結晶性は、Cs/D50で評価する手法がしばしば用いられていたから、その値に注目して、平均粒子径に応じた適切なものを特定することは、当業者が適宜なし得ることであると主張する。
しかしながら、本件明細書【0014】に記載されているのは、「ニッケル粉が低温で熱収縮しづらい」ことであるから、甲1や甲6に開示されている事項は、本件明細書【0014】と同内容であるとはいえない。また、甲1における高温領域における熱収縮が小さい方が好ましい旨の記載と、甲6における高温域で急速に焼結させない旨の記載との関係は、必ずしも明らかではないから、甲1の記載と甲6の記載から、結晶性を高くすることで、ニッケル粉と誘電体粉との間での収縮度合いの不適合に起因する欠陥の発生を効果的に防止し得ることが周知の事項であるとはいえない。
仮に、申立人が主張する周知の事項を前提とするとしても、甲1発明において、結晶性を高くするために、「Cs/D50の値」の下限値を設定するのであればともかく、上限値を設定する動機付けがあるとはいえない。
よって、いずれにしろ、申立人の主張は採用できない。
(b)また、申立人は、甲1発明と技術分野も課題も共通している甲3と甲4には、本件発明1と同じ目的で、「Cs/D50の値」を0.5とすることが開示されているから、甲1発明に甲3又は甲4に記載の事項を適用することは、当業者が容易になし得たものであると主張する。
確かに、甲3や甲4には、個数平均粒子径Dと結晶子径dの比d/Dについて記載されている。しかしながら、甲3や甲4における結晶子径dは、シェラーの式を用いて計算したものであり(甲3[0019]、甲4[0020])、「結晶の歪みの程度が大きい場合には、シェラー法に基づき求められた結晶子サイズの値は信頼性に欠ける」(本件明細書【0017】)ため、「WPPF法によって測定された結晶子サイズ」である「Cs」を用いる本件発明1とは、異なるものといえる。すなわち、甲3や甲4には、相違点1-1に係る発明特定事項である、「WPPF法によって測定された結晶子サイズをCs(nm)としたとき、Cs/D50の値が0.3以上0.6以下であ」ることが記載されているとはいえない。また、甲3や甲4には、結晶子径dについて、シェラーの式を用いて計算したもの以外にも、「WPPF法によって測定された結晶子サイズ」を用いることができることは記載されていない。
よって、申立人の主張は、前提を欠くものであり、採用できない。
c 以上によれば、甲1発明において、「Cs/D50の値」を「0.3以上0.6以下」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明並びに甲1、甲3、甲4、甲6及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明並びに甲1、甲3、甲4、甲6及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~5についても同様に、甲1に記載された発明並びに甲1、甲3、甲4、甲6及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1~5は、甲1に記載された発明並びに甲1、甲3、甲4、甲6及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由1(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(進歩性)
(1)甲2に記載された発明
ア 甲2の記載(請求項1~6、【0001】、【0008】、【0009】、【0013】~【0049】、表1、2、図1~3)によれば、特に、請求項6、【0046】の記載を前提として、実施例4(【0033】~【0034】、表1、2)に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「ニッケル微粒子が貴金属である銀を含有し、
日立製作所(株)製の電界放出型電子顕微鏡(FE-SEM、型式S-4700)を使用したSEM写真観察により、視野から200個の粒子を無作為に選択して測定した、粒径分布が42~98nm、平均粒径dが69nm、粒径の標準偏差σが9.6、粒径の標準偏差σ/平均粒径dが14%であり、凝集のない単分散性を有する、ニッケル微粒子粉末。」(以下、「甲2発明1」という。)
イ 甲2の上記アの記載によれば、特に、請求項1~3、5の記載を前提として、実施例1(【0024】~【0027】、表1)に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「水中での中和合成により得られたゲル状水酸化ニッケル39.5g(Ni分量で25g)をエチレングリコール溶液中で加熱還元してニッケル微粒子を得る方法において、
ポリビニルピロリドン10gを添加し、
パラジウム量で0.1g(Pd/Ni=0.4重量%)の塩化パラジウムアンモニウムにアンモニア水を加えて溶解したパラジウム溶液を加えることによって、核生成のために貴金属イオンであるパラジウムイオンを添加し、
、 貴金属であるパラジウムを含有する平均粒径39nmのニッケル微粒子を得る、ニッケル微粒子粉末の製造方法。」(以下、「甲2発明2」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明1とを対比する。
(ア)甲2発明1における「ニッケル微粒子が貴金属である銀を含有」する「ニッケル微粒子粉末」は、本件発明1における「ニッケル粉」に相当する。
(イ)甲2発明1における「日立製作所(株)製の電界放出型電子顕微鏡(FE-SEM、型式S-4700)を使用したSEM写真観察により、視野から200個の粒子を無作為に選択して測定した」「平均粒径d」と、本件発明1における「走査型電子顕微鏡による測定から算出された円相当直径に基づく粒度分布において、累積個数50個数%における個数累積粒径」である「D50」は、「走査型電子顕微鏡による測定から算出された」「粒度分布にお」ける平均粒径であるDである限りで共通する。
(ウ)甲2発明1における「平均粒径dが69nm」と、本件発明1における「D50が50nm以上200nm以下」は、上記(イ)を踏まえると、Dが「50nm以上200nm以下」である限りで共通する。
(エ)甲2発明1のニッケル微粒子粉末は、「日立製作所(株)製の電界放出型電子顕微鏡(FE-SEM、型式S-4700)を使用したSEM写真観察により、視野から200個の粒子を無作為に選択して測定した、粒径分布が42~98nm」であるから、平均粒径d(69nm)の1.5倍の粒径(103.5nm)以上の粒径を有する粒子は存在しないといえる。
そうすると、甲2発明1において、「平均粒径dが69nm」であり、「粒径分布が42~98nm」であることと、本件発明1において、「D50の1.5倍以上の粒径を有する粒子の存在割合が0.5個数%以下であ」ることは、上記(イ)を踏まえると、D「の1.5倍以上の粒径を有する粒子の存在割合が0.5個数%以下であ」る限りで共通する。
(オ)甲2発明1における「粒径の標準偏差σ/平均粒径dが14%」と、本件発明1における「前記粒度分布における粒径の標準偏差をσ(nm)としたとき、(σ/D50)×100(%)の値が14%以下」は、上記(イ)を踏まえると、「前記粒度分布における粒径の標準偏差をσ(nm)としたとき、」(σ/D)「×100(%)の値が14%以下」である限りで共通する。
(カ)以上によれば、本件発明1と甲2発明1とは、
「走査型電子顕微鏡による測定から算出された粒度分布における平均粒径をDとしたとき、
Dが50nm以上200nm以下であり、
Dの1.5倍以上の粒径を有する粒子の存在割合が0.5個数%以下であり、
前記粒度分布における粒径の標準偏差をσ(nm)としたとき、(σ/D)×100(%)の値が14%以下である、ニッケル粉。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点2-1
走査型電子顕微鏡による測定から算出された粒度分布における平均粒径であるDが、本件発明1では、「円相当直径に基づく」粒度分布におけるものであり、「累積個数50個数%における個数累積粒径」である「D50」であるのに対して、甲2発明1では、「円相当直径に基づく」粒度分布におけるものであるかどうか不明であり、「累積個数50個数%における個数累積粒径」である「D50」であるかどうか不明である点。
・相違点2-2
本件発明1では、「WPPF法によって測定された結晶子サイズをCs(nm)としたとき、Cs/D50の値が0.3以上0.6以下であ」るのに対して、甲2発明1では、上記「Cs/D50の値」が「0.3以上0.6以下」であるかどうか不明である点。
イ 相違点2-2の検討
事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
(ア)まず、相違点2-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
仮に、甲2発明1における「平均粒径d」が、「円相当直径に基づく」粒度分布におけるものであり、「累積個数50個数%における個数累積粒径」である「D50」であると解したとしても(すなわち、相違点2-1が実質的な相違点ではなかったとしても)、以下のとおり、相違点2-2は実質的な相違点である。
甲2には、「WPPF法によって測定された結晶子サイズをCs(nm)としたとき、Cs/D50の値」、すなわち、「Cs/D50の値」については、何ら記載されていない。また、甲2発明1に係るニッケル微粒子粉末であれば、必ず、「Cs/D50の値」が「0.3以上0.6以下」となることが技術常識であるともいえない。
以上によれば、相違点2-2は実質的な相違点である。
(イ)次に、相違点2-2の容易想到性について検討する。
a 仮に、甲2発明1における「平均粒径d」が、「円相当直径に基づく」粒度分布におけるものであり、「累積個数50個数%における個数累積粒径」である「D50」であると解したとしても、上記(ア)で述べたとおり、甲2には、「Cs/D50の値」については何ら記載されておらず、また、甲2発明1に係るニッケル微粒子粉末であれば、必ず、「Cs/D50の値」が「0.3以上0.6以下」となることが技術常識であるともいえない。甲2には、甲2発明1において、「Cs/D50の値」を「0.3以上0.6以下」とすることを動機付ける記載は見当たらない。また、甲1、甲3、甲4、甲6の記載を考慮したとしても、甲2発明1において、「Cs/D50の値」を「0.3以上0.6以下」とすることが動機付けられるとはいえない。
b 申立人は、相違点2-2についても、相違点1-1についての主張(上記1(2)イ(イ)bを参照)と同様に主張するが、同様の理由により、申立人の主張は採用できない。
c 以上によれば、甲2発明1において、「Cs/D50の値」を「0.3以上0.6以下」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ 小括
したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明並びに甲1、甲3、甲4及び甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲2発明2とを対比する。
(ア)甲2発明2における「水中での中和合成により得られたゲル状水酸化ニッケル」、「エチレングリコール溶液」、「塩化パラジウムアンモニウム」、「ポリビニルピロリドン」は、それぞれ、本件発明6における「水酸化ニッケル粒子」、「ポリオール」、「貴金属化合物」、「ポリビニルピロリドン」に相当する。
(イ)上記(ア)を踏まえると、甲2発明2における、「水中での中和合成により得られたゲル状水酸化ニッケル」を、「塩化パラジウムアンモニウム」と「ポリビニルピロリドン」を含む「エチレングリコール溶液中で加熱還元してニッケル微粒子を得る方法」である「ニッケル微粒子粉末の製造方法」と、本件発明6における、「水酸化ニッケル粒子、ポリオール、貴金属化合物、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンイミンを含む液を加熱してニッケル粒子を製造する方法」は、「水酸化ニッケル粒子、ポリオール、貴金属化合物、ポリビニルピロリドン」「を含む液を加熱してニッケル粒子を製造する方法」である限りで共通する。
(ウ)甲2発明2における「塩化パラジウムアンモニウム」((NH4)2[PdCl4])は、「パラジウム量で0.1g」であるところ、各元素の原子量を、N:14.0069、H:1.00798、Pd:106.42、Cl:35.452とすると、塩化パラジウムアンモニウム1molの質量は284.30564gとなるから、「パラジウム量で0.1g」である「塩化パラジウムアンモニウム」は、塩化パラジウムアンモニウムとしては、0.267g(=0.1g×284.30564g/106.42g)と算出される。
そして、甲2発明2における「水中での中和合成により得られたゲル状水酸化ニッケル」は、「Ni分量で25g」であるから、本件発明6と同様に、「水酸化ニッケルをニッケルに換算した100質量部に対」する「貴金属化合物」の量を算出すると、1.068質量部(=100質量部/25g×0.267g)となる。
そうすると、甲2発明2において、「水中での中和合成により得られたゲル状水酸化ニッケル39.5g(Ni分量で25g)」に対して「パラジウム量で0.1g(Pd/Ni=0.4重量%)の塩化パラジウムアンモニウム」を用いることは、上記(ア)を踏まえると、本件発明6において、「水酸化ニッケルをニッケルに換算した100質量部に対して前記貴金属化合物を0.01質量部以上5質量部以下用いる」ことに相当する。
(エ)以上によれば、本件発明6と甲2発明2とは、
「水酸化ニッケル粒子、ポリオール、貴金属化合物、ポリビニルピロリドンを含む液を加熱してニッケル粒子を製造する方法であって、
水酸化ニッケルをニッケルに換算した100質量部に対して前記貴金属化合物を0.01質量部以上5質量部以下用いる、ニッケル粒子の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点2-3
水酸化ニッケル粒子、ポリオール、貴金属化合物、ポリビニルピロリドンを含む液が、本件発明6では、さらに「ポリエチレンイミン」を含むものであり、「1質量部のポリエチレンイミンに対して、ポリビニルピロリドンを30質量部以上200質量部以下用い」るものであるのに対して、甲2発明2では、さらに「ポリエチレンイミン」を含むものではなく、「1質量部のポリエチレンイミンに対して、ポリビニルピロリドンを30質量部以上200質量部以下用い」るものではない点。
イ 相違点2-3の検討
(ア)まず、相違点2-3が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲2には、甲2発明2における、「水中での中和合成により得られたゲル状水酸化ニッケル」と「塩化パラジウムアンモニウム」と「ポリビニルピロリドン」を含む「エチレングリコール溶液」が、さらに「ポリエチレンイミン」を含むことについては、何ら記載されていない。また、甲2発明2における上記所定の「エチレングリコール溶液」であれば、必ず、さらに「ポリエチレンイミン」を含むことが技術常識であるともいえない。
以上によれば、相違点2-3は実質的な相違点である。
(イ)次に、相違点2-3の容易想到性について検討する。
a 上記(ア)で述べたとおり、甲2には、甲2発明2における上記所定の「エチレングリコール溶液」が、さらに「ポリエチレンイミン」を含むことについては何ら記載されておらず、また、甲2発明2における上記所定の「エチレングリコール溶液」であれば、必ず、さらに「ポリエチレンイミン」を含むことが技術常識であるともいえない。甲2には、甲2発明2における上記所定の「エチレングリコール溶液」を、さらに「ポリエチレンイミン」を含むものとすることを動機付ける記載は見当たらない。また、甲8の記載を考慮したとしても、甲2発明2における上記所定の「エチレングリコール溶液」を、さらに「ポリエチレンイミン」を含むものとすることが動機付けられるとはいえない。
b 申立人は、甲8には、核となる金属が相違するだけで、製法のコアとなる部分は本件発明6と同一の銅微粒子の製造方法が記載されているから、甲2発明2に甲8に記載のポリエチレンイミンについての事項を適用することは、当業者が容易に想到し得るものであると主張する。
しかしながら、申立人も自認するように、甲8に記載されているのは、あくまで銅微粒子の製造方法であって、ニッケル微粒子の製造方法ではないから、ニッケル微粒子粉末の製造方法である甲2発明2に甲8に記載された事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
c 以上によれば、甲2発明2における、「水中での中和合成により得られたゲル状水酸化ニッケル」と「塩化パラジウムアンモニウム」と「ポリビニルピロリドン」を含む「エチレングリコール溶液」を、さらに「ポリエチレンイミン」を含むものとするとともに、「1質量部のポリエチレンイミンに対して、ポリビニルピロリドンを30質量部以上200質量部以下用い」ることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ 小括
したがって、本件発明6は、甲2に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明7~9について
本件発明7~9は、本件発明6を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(3)で述べたとおり、本件発明6が、甲2に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明7~9についても同様に、甲2に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明並びに甲1、甲3、甲4及び甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明6~9は、甲2に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1、6~9に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(進歩性)
(1)甲5に記載された発明
ア 甲5の記載(請求項1、3、5、9、【0001】、【0002】、【0006】、【0012】、【0013】、【0023】、【0032】、【0041】、【0042】、【0044】、【0045】、【0046】、【0051】~【0067】、表1、図1~5)によれば、特に、請求項1、3、【0032】、実施例1(【0052】~【0054】)の記載を前提として、実施例3(【0057】、【0058】、表1)に着目すると、甲5には、以下の発明が記載されていると認められる。
「ニッケル粒子の含有量が80重量%であり、残部がターピネオールである、ニッケル粒子と有機溶媒とからなるニッケルスラリーに含まれるニッケル粒子であって、
透過型電子顕微鏡の観察像(ニッケル粒子が50個含まれる観察像)から直接測定した一次粒径の平均(平均一次粒径D)が70.86nm、標準偏差SDが15.28nm、最小値が32.21nm、最大値が96.88nm、平均一次粒径Dと標準偏差SDとの関係式SD/D×100で表される変動係数CV値が21.50である、ニッケル粒子。」(以下、「甲5発明1」という。)
イ 甲5の上記アの記載によれば、特に、請求項5、9、【0046】、実施例1(【0052】~【0054】)の記載を前提として、実施例3(【0057】、【0058】、表1)に着目すると、甲5には、以下の発明が記載されていると認められる。
「水酸化ニッケル31.31g、エチレングリコール、100g/lの硝酸パラジウム溶液0.13ml、ポリビニルピロリドン2.15gを含む反応液を反応温度まで加熱し、該反応温度を維持しながら該反応液中のニッケルイオンを還元し、平均一次粒径70.86nmのニッケル粒子を製造し、次いでターピネオールで置換する、ニッケル粒子の含有量が80重量%であり、残部がターピネオールであるニッケルスラリーの製造方法における、ニッケル粒子の製造方法において、
上記反応液にアミノ酸であるL-アルギニン1.0gを添加する、ニッケル粒子の製造方法。」(以下、「甲5発明2」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲5発明1とを対比する。
(ア)甲5発明1における「ニッケル粒子の含有量が80重量%であり、残部がターピネオールである、ニッケル粒子と有機溶媒とからなるニッケルスラリーに含まれるニッケル粒子」は、その一次粒径の平均(平均一次粒径D)等を特定するものであるから、複数のニッケル粒子の集合体、すなわち、ニッケル粉と解される。
そうすると、甲5発明1における上記「ニッケル粒子」は、本件発明1における「ニッケル粉」に相当する。
(イ)甲5発明1における「透過型電子顕微鏡の観察像(ニッケル粒子が50個含まれる観察像)から直接測定した一次粒径の平均(平均一次粒径D)」と、本件発明1における「走査型電子顕微鏡による測定から算出された円相当直径に基づく粒度分布において、累積個数50個数%における個数累積粒径」である「D50」は、「電子顕微鏡による測定から算出された」「粒度分布にお」ける平均粒径であるdである限りで共通する。
(ウ)甲5発明1における「一次粒径の平均(平均一次粒径D)が70.86nm」と、本件発明1における「D50が50nm以上200nm以下」は、上記(イ)を踏まえると、dが「50nm以上200nm以下」である限りで共通する。
(エ)甲5発明1のニッケル粒子は、「透過型電子顕微鏡の観察像(ニッケル粒子が50個含まれる観察像)から直接測定した一次粒径の」「最小値が32.21nm、最大値が96.88nm」であるから、一次粒径の平均(平均一次粒径D)(70.86nm)の1.5倍の粒径(106.29nm)以上の粒径を有する粒子は存在しないといえる。
そうすると、甲5発明1において、「一次粒径の平均(平均一次粒径D)が70.86nm」であり、「一次粒径の」「最小値が32.21nm、最大値が96.88nm」であることと、本件発明1において、「D50の1.5倍以上の粒径を有する粒子の存在割合が0.5個数%以下であ」ることは、上記(イ)を踏まえると、d「の1.5倍以上の粒径を有する粒子の存在割合が0.5個数%以下であ」る限りで共通する。
(カ)以上によれば、本件発明1と甲5発明1とは、
「電子顕微鏡による測定から算出された粒度分布における平均粒径をdとしたとき、
dが50nm以上200nm以下であり、
dの1.5倍以上の粒径を有する粒子の存在割合が0.5個数%以下である、ニッケル粉。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点5-1
電子顕微鏡による測定から算出された粒度分布における平均粒径であるdが、本件発明1では、「走査型」電子顕微鏡による測定から算出された「円相当直径に基づく」粒度分布におけるものであり、「累積個数50個数%における個数累積粒径」である「D50」であるのに対して、甲5発明1では、「透過型」電子顕微鏡による測定であり、「走査型」電子顕微鏡による測定ではなく、「円相当直径に基づく」粒度分布におけるものであるかどうか不明であり、「累積個数50個数%における個数累積粒径」である「D50」であるかどうか不明である点。
・相違点5-2
本件発明1では、「WPPF法によって測定された結晶子サイズをCs(nm)としたとき、Cs/D50の値が0.3以上0.6以下であ」るのに対して、甲5発明1では、上記「Cs/D50の値」が「0.3以上0.6以下」であるかどうか不明である点。
・相違点5-3
本件発明1では、「前記粒度分布における粒径の標準偏差をσ(nm)としたとき、(σ/D50)×100(%)の値が14%以下である」のに対して、甲5発明1では、「平均一次粒径Dと標準偏差SDとの関係式SD/D×100で表される変動係数CV値が21.50である」である点。
イ 相違点5-2の検討
事案に鑑み、相違点5-2について検討する。
(ア)まず、相違点5-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
仮に、甲5発明1における「一次粒径の平均(平均一次粒径D)」が、「走査型」電子顕微鏡による測定であり、「円相当直径に基づく」粒度分布におけるものであり、「累積個数50個数%における個数累積粒径」である「D50」であると解したとしても(すなわち、相違点5-1が実質的な相違点ではなかったとしても)、以下のとおり、相違点5-2は実質的な相違点である。
甲5には、「WPPF法によって測定された結晶子サイズをCs(nm)としたとき、Cs/D50の値」、すなわち、「Cs/D50の値」については、何ら記載されていない。また、甲5発明1に係るニッケル粒子であれば、必ず、「Cs/D50の値」が「0.3以上0.6以下」となることが技術常識であるともいえない。
以上によれば、相違点5-2は実質的な相違点である。
(イ)次に、相違点5-2の容易想到性について検討する。
a 仮に、甲5発明1における「一次粒径の平均(平均一次粒径D)」が、「走査型」電子顕微鏡による測定であり、「円相当直径に基づく」粒度分布におけるものであり、「累積個数50個数%における個数累積粒径」である「D50」であると解したとしても、上記(ア)で述べたとおり、甲5には、「Cs/D50の値」については何ら記載されておらず、また、甲5発明1に係るニッケル粒子であれば、必ず、「Cs/D50の値」が「0.3以上0.6以下」となることが技術常識であるともいえない。甲5には、甲5発明1において、「Cs/D50の値」を「0.3以上0.6以下」とすることを動機付ける記載は見当たらない。また、甲1、甲2、甲4、甲7の記載を考慮したとしても、甲5発明1において、「Cs/D50の値」を「0.3以上0.6以下」とすることが動機付けられるとはいえない。
b 申立人は、甲5発明1のニッケル粒子は、水酸化ニッケルを含む液を190℃で10時間加熱して得られたものであり(甲5【0052】、【0057】)、本件明細書の実施例(【0041】)に示される198℃で6時間加熱するという加熱条件に近い条件で得られたものであるから、甲5発明1のニッケル粒子は、本件発明1のニッケル粉と同様の結晶性を有し、本件発明1の「Cs/D50の値」を満足すると主張する。
しかしながら、甲5発明1のニッケル粒子が、本件明細書の実施例に近い加熱条件で得られたものであるとしても、実際に、本件発明1の「Cs/D50の値」を満足するかどうかは、不明である。
よって、申立人の主張は採用できない。
c 以上によれば、甲5発明1において、「Cs/D50の値」を「0.3以上0.6以下」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ 小括
したがって、相違点5-1、相違点5-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5に記載された発明並びに甲1、甲2、甲4及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲5に記載された発明並びに甲1、甲2、甲4及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~5についても同様に、甲5に記載された発明並びに甲1、甲2、甲4及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲5発明2とを対比する。
(ア)甲5発明2における「水酸化ニッケル」、「エチレングリコール」、「硝酸パラジウム」、「ポリビニルピロリドン」は、それぞれ、本件発明6における「水酸化ニッケル粒子」、「ポリオール」、「貴金属化合物」、「ポリビニルピロリドン」に相当する。
(イ)上記(ア)を踏まえると、甲5発明2における、「水酸化ニッケル」、「エチレングリコール」、「硝酸パラジウム溶液」、「ポリビニルピロリドン」「を含む反応液を反応温度まで加熱し、該反応温度を維持しながら該反応液中のニッケルイオンを還元し」、「ニッケル粒子を製造」する「ニッケル粒子の製造方法」と、本件発明6における、「水酸化ニッケル粒子、ポリオール、貴金属化合物、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンイミンを含む液を加熱してニッケル粒子を製造する方法」は、「水酸化ニッケル粒子、ポリオール、貴金属化合物、ポリビニルピロリドン」「を含む液を加熱してニッケル粒子を製造する方法」である限りで共通する。
(ウ)甲5発明2における「100g/lの硝酸パラジウム溶液0.13ml」に含まれる「硝酸パラジウム」(Pd(NO3)2)の量は、0.013g(=100g/1000ml×0.13ml)と算出される。
また、甲5発明2における「水酸化ニッケル」(Ni(OH)2)は、「31.31g」であるところ、各元素の原子量を、Ni:58.6934、O:15.9994、H:1.00798とすると、水酸化ニッケル1molの質量は92.70816gとなるから、「31.31g」の「水酸化ニッケル」をニッケルに換算すると、19.82g(=31.31g×58.6934g/92.70816)と算出される。
そして、本件発明6と同様に、「水酸化ニッケルをニッケルに換算した100質量部に対」する「貴金属化合物」の量を算出すると、0.066質量部(=100質量部/19.82g×0.013g)となる。
そうすると、甲5発明2において、「水酸化ニッケル31.31g」に対して「100g/lの硝酸パラジウム溶液0.13ml」を用いることは、上記(ア)を踏まえると、本件発明6において、「水酸化ニッケルをニッケルに換算した100質量部に対して前記貴金属化合物を0.01質量部以上5質量部以下用いる」ことに相当する。
(エ)以上によれば、本件発明6と甲5発明2とは、
「水酸化ニッケル粒子、ポリオール、貴金属化合物、ポリビニルピロリドンを含む液を加熱してニッケル粒子を製造する方法であって、
水酸化ニッケルをニッケルに換算した100質量部に対して前記貴金属化合物を0.01質量部以上5質量部以下用いる、ニッケル粒子の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点5-4
水酸化ニッケル粒子、ポリオール、貴金属化合物、ポリビニルピロリドンを含む液が、本件発明6では、さらに「ポリエチレンイミン」を含むものであり、「1質量部のポリエチレンイミンに対して、ポリビニルピロリドンを30質量部以上200質量部以下用い」るものであるのに対して、甲5発明2では、さらに「ポリエチレンイミン」を含むものではなく、「1質量部のポリエチレンイミンに対して、ポリビニルピロリドンを30質量部以上200質量部以下用い」るものではない点。
イ 相違点5-4の検討
(ア)まず、相違点5-4が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲5発明2は、上記(1)イのとおり、実施例3に着目して認定したものであるところ、甲5には、このような甲5発明2における、「水酸化ニッケル」、「エチレングリコール」、「硝酸パラジウム溶液」、「ポリビニルピロリドン」「を含む反応液」が、さらに「ポリエチレンイミン」を含むことについては、何ら記載されていない。また、甲5発明2における上記所定の「反応液」であれば、必ず、さらに「ポリエチレンイミン」を含むことが技術常識であるともいえない。
以上によれば、相違点5-4は実質的な相違点である。
(イ)次に、相違点5-4の容易想到性について検討する。
a 上記(ア)で述べたとおり、甲5には、甲5発明2における上記所定の「反応液」が、さらに「ポリエチレンイミン」を含むことについては何ら記載されておらず、また、甲5発明2における上記所定の「反応液」であれば、必ず、さらに「ポリエチレンイミン」を含むことが技術常識であるともいえない。
b(a)もっとも、甲5には、反応液が分散剤を含むことにより、得られるニッケル粒子がより微粒になり、還元析出した粒子同士の凝集化を防止し、粒度分布をよりシャープにできること、また、分散剤として、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)等の含窒素有機化合物、及びポリビニルアルコール等が挙げられることが記載されている(請求項9、【0045】)。
そうすると、甲5発明2における、「水酸化ニッケル」、「エチレングリコール」、「硝酸パラジウム溶液」、「ポリビニルピロリドン」「を含む反応液」を、さらに「ポリエチレンイミン」を含むものとすることについて、一応の動機付けがあるといえる。
(b)しかしながら、本件発明6は、「水酸化ニッケル粒子、ポリオール、貴金属化合物」のほか、「ポリビニルピロリドン」と「ポリエチレンイミン」の両方を含む液を加熱してニッケル粒子を製造するものであって、「1質量部のポリエチレンイミンに対して、ポリビニルピロリドンを30質量部以上200質量部以下用い」るものであり、それにより、ニッケル粒子の粒度分布をシャープにできる(本件明細書【0028】)とともに、ニッケルの核生成と生成した核の成長とを順次行うことが可能となるため、微粒で且つ均一な粒径を有するニッケル粉が首尾よく得られ、粗大粒子の生成が抑制される(本件明細書【0029】、【0030】)という、当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。
そして、このような効果は、本件発明6を具体的に実施した実施例1~8と、「水酸化ニッケル粒子、ポリオール、貴金属化合物」のほか、「ポリビニルピロリドン」のみを含み、「ポリエチレンイミン」を含まない液を用いた比較例2との比較により、裏付けられるものである(本件明細書【0040】~【0066】、表1~3、図3、4)。
c 以上のとおり、「ポリビニルピロリドン」と「ポリエチレンイミン」の両方を含む本件発明6が、当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏すること、また、甲5には、「ポリビニルピロリドン」と「ポリエチレンイミン」の両方を含む具体例が記載されていないことを考慮すれば、甲5発明2における、「水酸化ニッケル」、「エチレングリコール」、「硝酸パラジウム溶液」、「ポリビニルピロリドン」「を含む反応液」を、さらに「ポリエチレンイミン」を含むものとするとともに、「1質量部のポリエチレンイミンに対して、ポリビニルピロリドンを30質量部以上200質量部以下用い」ることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
d なお、申立人は、甲8には、核となる金属が相違するだけで、製法のコアとなる部分は本件発明6と同一の銅微粒子の製造方法が記載されているから、甲5発明2に甲8に記載のポリエチレンイミンについての事項を適用することは、当業者が容易に想到し得るものであると主張する。
しかしながら、申立人も自認するように、甲8に記載されているのは、あくまで銅微粒子の製造方法であって、ニッケル微粒子の製造方法ではないから、ニッケル粒子の製造方法である甲5発明2に甲8に記載された事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
ウ 小括
したがって、本件発明6は、甲5に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明7~9について
本件発明7~9は、本件発明6を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が、甲5に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明7~9についても同様に、甲5に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件発明1~5は、甲5に記載された発明並びに甲1、甲2、甲4及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明6~9は、甲5に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由3(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由4(進歩性)
(1)甲8に記載された発明
ア 甲8の記載(請求項1~4、【0001】、【0012】、【0018】~【0028】、【0039】~【0086】、表1~4、図1~3)によれば、特に、請求項1~4、【0022】、【0028】の記載に着目すると、甲8には、以下の発明が記載されていると認められる。
「銅の酸化物、水酸化物又は塩を、エチレングリコール、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールの溶液中で加熱還元して銅微粒子を得る方法において、
塩化パラジウムアンモニウム、塩化パラジウムなどのパラジウム塩の水溶液、又は硝酸銀、塩化銀などの銀塩の水溶液として添加することによって、核生成のために貴金属イオンであるパラジウムイオン又は銀イオンを、銅に対する重量比で0.0004~0.1添加すると共に、
分散剤としてポリビニルピロリドンを、銅に対する重量比で0.1~2.0添加し、
且つ還元反応制御剤としてアミン系有機化合物である側鎖あるいは主鎖にアミノ基又はイミノ基をもつ水溶性高分子、好ましくは、ポリエチレンイミンあるいはポリアリルアミンを20g/リットル以下添加して、
貴金属であるパラジウム又は銀を含有する累積95%粒径が100nm以下の銅微粒子を得る、銅微粒子の製造方法。」(以下、「甲8発明」という。)
(2)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲8発明とを対比する。
(ア)甲8発明における「エチレングリコール、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコール」、「塩化パラジウムアンモニウム、塩化パラジウムなどのパラジウム塩」及び「硝酸銀、塩化銀などの銀塩」、「ポリビニルピロリドン」、「ポリエチレンイミン」は、それぞれ、本件発明6における「ポリオール」、「貴金属化合物」、「ポリビニルピロリドン」、「ポリエチレンイミン」に相当する。
(イ)甲8発明における「銅の」「水酸化物」と、本件発明6における「水酸化ニッケル粒子」は、技術常識に照らして、金属「水酸化」物「粒子」である限りで共通する。
(ウ)甲8発明における「銅微粒子」と、本件発明6における「ニッケル粒子」は、金属「粒子」である限りで共通する。
(エ)以上によれば、本件発明6と甲8発明とは、少なくとも、
「金属水酸化物粒子、ポリオール、貴金属化合物、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンイミンを含む液を加熱して金属粒子を製造する方法である、金属粒子の製造方法。」
の点で一致し、少なくとも、以下の点で相違する。
・相違点8-1
本件発明6は、「水酸化ニッケル粒子」を用いる「ニッケル」粒子の製造方法であるのに対して、甲8発明は、「銅の」「水酸化物」を用いる「銅」微粒子の製造方法である点。
イ 相違点8-1の検討
(ア)まず、相違点8-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲8発明は、「銅」微粒子の製造方法に関するものであるところ、甲8には、「銅」微粒子の製造方法についてのみ記載され、「ニッケル」粒子の製造方法については、何ら記載されていない。
以上によれば、相違点8-1は実質的な相違点である。
(イ)次に、相違点8-1の容易想到性について検討する。
a 上記(ア)で述べたとおり、甲8には、「銅」微粒子の製造方法についてのみ記載され、「ニッケル」粒子の製造方法については、何ら記載されていない。甲8には、甲8発明の「銅」微粒子の製造方法を、「ニッケル」粒子の製造方法に適用することを動機付ける記載は見当たらない。また、このことは、甲2や甲5の記載を考慮したとしても、変わるものではない。
b 申立人は、甲8には、核となる金属が相違するだけで、製法のコアとなる部分は本件発明6と同一の銅微粒子の製造方法が記載されているから、甲8に記載の製造方法を甲2や甲5のニッケル粒子に適用することは、当業者が容易に想到し得るものであると主張する。
しかしながら、申立人も自認するように、甲8に記載されているのは、あくまで「銅」微粒子の製造方法であって、「ニッケル」粒子の製造方法ではなく、また、甲8における「銅」微粒子の製造方法についての記載が、そのまま「ニッケル」粒子の製造方法についても当てはまるかどうかは不明であるから、甲8に記載の「銅」微粒子の製造方法を甲2や甲5の「ニッケル」粒子に適用する動機付けがあるとはいえない。
c 以上によれば、甲8発明の「銅の」「水酸化物」を用いる「銅」微粒子の製造方法を、「水酸化ニッケル粒子」を用いる「ニッケル」粒子の製造方法に適用することは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ 小括
したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲8に記載された発明並びに甲2及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明7~9について
本件発明7~9は、本件発明6を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明6が、甲8に記載された発明並びに甲2及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明7~9についても同様に、甲8に記載された発明並びに甲2及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明6~9は、甲8に記載された発明並びに甲2及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由4(進歩性)によっては、本件特許の請求項6~9に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由5(進歩性)
(1)甲9に記載された発明
ア 甲9の記載(請求項1~6、【0001】、【0018】、【0019】、【0030】、【0031】、【0034】~【0055】、【0096】~【0119】、表1、図1)によれば、特に、請求項1~6、【0054】の記載に着目すると、甲9には、以下の発明が記載されていると認められる。
「得られた銅粒子を分離するか、分離せず反応液のまま、少なくともニッケル塩水溶液中に分散させニッケルコート処理を行い、濾過、洗浄、乾燥してニッケルコート銅粉とする、銅粒子表面にニッケルまたはニッケル合金が被覆されたニッケルコート銅粉の製造方法のための、銅粒子の製造方法であって、
硫酸銅水溶液に、核生成のための金属塩である銀またはパラジウムの化合物を、銅に対して0.005モル%以上2モル%未満となるように溶解させ、
さらにpH調整剤と、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、変性シリコーンオイル系界面活性剤、又はポリエーテル系界面活性剤から選択される少なくとも1種である、銅質量に対して0.1質量%~10質量%の分散剤とを混合して銅塩液を作製した後、
好ましくは、加温することにより20~80℃とした該銅塩液へ、アスコルビン酸、ヒドラジン一水和物、又はホルマリンから選択される少なくとも1種の還元剤水溶液を添加し、pHが3以上である反応液中で少なくとも水酸化銅が存在している状態で銅粒子を生成させる、銅粒子の製造方法。」(以下、「甲9発明」という。)
(2)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲9発明とを対比する。
(ア)甲9発明における「核生成のための金属塩である銀またはパラジウムの化合物」、「ポリビニルピロリドン」、「ポリエチレンイミン」は、それぞれ、本件発明6における「貴金属化合物」、「ポリビニルピロリドン」、「ポリエチレンイミン」に相当する。
(イ)甲9発明における「硫酸銅」と、本件発明6における「水酸化ニッケル粒子」は、金属を含む化合物である限りで共通する。
(ウ)甲9発明における「銅粒子」と、本件発明6における「ニッケル粒子」は、金属「粒子」である限りで共通する。
(エ)以上によれば、本件発明6と甲9発明とは、少なくとも、
「金属を含む化合物、貴金属化合物、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンイミンを含む液を加熱して金属粒子を製造する方法である、金属粒子の製造方法。」
の点で一致し、少なくとも、以下の点で相違する。
・相違点9-1
本件発明6は、「水酸化ニッケル粒子」を用いる「ニッケル」粒子の製造方法であるのに対して、甲9発明は、「硫酸銅」を用いる「銅」粒子の製造方法である点。
イ 相違点9-1の検討
(ア)まず、相違点9-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲9発明は、「銅」粒子の製造方法に関するものであるところ、甲9には、「銅」粒子の製造方法についてのみ記載され、「ニッケル」粒子の製造方法については、何ら記載されていない。
以上によれば、相違点9-1は実質的な相違点である。
(イ)次に、相違点9-1の容易想到性について検討する。
a 上記(ア)で述べたとおり、甲9には、「銅」粒子の製造方法についてのみ記載され、「ニッケル」粒子の製造方法については、何ら記載されていない。甲9には、甲9発明の「銅」粒子の製造方法を、「ニッケル」粒子の製造方法に適用することを動機付ける記載は見当たらない。また、このことは、甲2や甲5の記載を考慮したとしても、変わるものではない。
b 申立人は、甲9には、銅粒子にニッケルコートをしてニッケルコート銅粉を製造する方法が記載されており、この製造方法は、製造される粒子に相違はあるものの、甲8発明と実質的に同じであり、ニッケル粒子に適用することで、本件発明6と同様になるから、甲9に記載の製造方法を甲2や甲5のニッケル粒子に適用することは、当業者が容易に想到し得るものであると主張する。
しかしながら、上記4(2)イ(イ)bで述べたのと同様に、申立人も自認するように、甲9に記載されているのは、あくまで、銅粒子表面にニッケルまたはニッケル合金が被覆されたニッケルコート銅粉の製造方法のための、「銅」粒子の製造方法であって、「ニッケル」粒子の製造方法ではなく、また、甲9における「銅」粒子の製造方法についての記載が、そのまま「ニッケル」粒子の製造方法についても当てはまるかどうかは不明であるから、甲9に記載の「銅」粒子の製造方法を甲2や甲5の「ニッケル」粒子に適用する動機付けがあるとはいえない。
c 以上によれば、甲9発明の「硫酸銅」を用いる「銅」粒子の製造方法を、「水酸化ニッケル粒子」を用いる「ニッケル」粒子の製造方法に適用することは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ 小括
したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲9に記載された発明並びに甲2及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件発明6は、甲9に記載された発明並びに甲2及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由5(進歩性)によっては、本件特許の請求項6に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700575