特許異議申立
2024-700571
固形物を含有する容器詰飲料
- 審判番号
- 2024-700571
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-088011
- 登録番号
- 7398513
- 請求日
- 2024年06月14日
- 審決日
- 2025年02月14日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】山本 修
- 【権利者代理人】宮前 徹
- 【権利者代理人】松尾 淳一
- 【権利者代理人】中村 充利
- 【異議申立人】中川 賢治
- 審判長/審判官
- 審判長 柴田 昌弘
- 審判官 植前 充司
- 審判官 天野 宏樹
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7398513号発明「固形物を含有する容器詰飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7398513号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7398513号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7398513号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和4年5月30日の出願であって、令和5年12月6日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月14日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和6年6月14日に特許異議申立人 中川 賢治(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:全請求項)がされ、同年9月19日付けで取消理由が通知され、同年11月6日に特許権者 サントリーホールディングス株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに意見書の提出がされ、同年同月11日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年12月16日に特許異議申立人より意見書の提出があったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7398513号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容等
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)及び(2)のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1) 訂正事項1
請求項1について、
「果肉片と液体とが容器に密封されている容器詰飲料であって、
4cm3以上の果肉片を2つ以上含有し、飲料の総量に対する果肉片の割合が10~50重量%である、上記飲料。」
とあるのを、
「あらかじめカットされた果肉片と液体とが容器に密封されている容器詰飲料であって、
4cm3以上の果肉片を2つ以上含有し、飲料の総量に対する果肉片の割合が10~50重量%であり、前記液体のエタノール濃度が1v/v%未満である、上記飲料。」
と訂正する。
請求項1の記載を直接または間接的に引用して特定する請求項2ないし5についても同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
請求項3について、
「前記液体のエタノール濃度が1v/v%未満である、請求項1または2に記載の飲料。」
とあるのを、
「果肉片が糖浸漬された果肉片である、請求項1または2に記載の飲料。」
と訂正する。
(3) 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、訂正前の請求項1ないし5に対応する訂正後の請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、果肉片が「あらかじめカットされた」ものであることを特定するとともに、「液体のエタノール濃度が1v/v%未満」であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許の明細書の【0009】、【0016】、【0021】、【0022】及び【0029】ないし【0044】の実施例の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1の記載を直接または間接的に引用して特定する請求項2ないし5についても同様である。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項3では、「前記液体のエタノール濃度が1v/v%未満である」と記載されていたところ、上記訂正事項1に係る請求項1の訂正により、訂正後の請求項1において「液体のエタノール濃度が1v/v%未満である」ことが特定されるものとなったことに伴い、請求項3の記載から「前記液体のエタノール濃度が1v/v%未満である」との記載を削除するとともに、「果肉片が糖浸漬された果肉片である」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2に係る請求項3の訂正は、本件特許の明細書の【0012】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
4 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、令和6年11月6日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
あらかじめカットされた果肉片と液体とが容器に密封されている容器詰飲料であって、
4cm3以上の果肉片を2つ以上含有し、飲料の総量に対する果肉片の割合が10~50重量%であり、前記液体のエタノール濃度が1v/v%未満である、上記飲料。
【請求項2】
飲料の総量が100~400gである、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
果肉片が糖浸漬された果肉片である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
容器が樹脂製容器である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項5】
樹脂製容器の厚さが0.3mm以上である、請求項4に記載の飲料。」
第4 特許異議申立理由の要旨
特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
1 申立理由1-1(甲第1-1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1-1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由1-2(甲第7号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由1-3(甲第3号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、2及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由2-1(甲第1-1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1-1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由2-2(甲第7号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 申立理由2-3(甲第3号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
7 証拠方法
・甲第1-1号証:「プラQ」の紹介ページ、チョーヤ梅酒株式会社、[on line]、2024年5月9日検索、インターネット、URL:https://www.choya.co.jp/products/umeshu/puraq/
・甲第1-2号証:「チョーヤ梅酒のロングセラー! 本格梅酒「プラQ」50周年記念ラベル数量限定発売 ランダムでレアな復刻レトロラベルも登場!」、ニュースリリースページ、チョーヤ梅酒株式会社、2023年11月14日掲載、[on line]、2024年5月9日検索、インターネット、<URL: https://www.choya.co.jp/news/5602/>
・甲第2号証:「アルコール0%の本格梅酒テイスト「酔わないThe CHOYA本格梅酒仕込み」2020年3月10日(火)全国発売開始」、ニュースリリースページ、チョーヤ梅酒株式会社、[on line]、2024年5月9日検索、インターネット、URL:https://www.choya.co.jp/news/1750/
・甲第3号証:登録実用新案第3216921号公報
・甲第4-1号証:「台湾発フルーツティー・ドリンクスタンド&カフェ「御茶(Yucha/ゆちゃ)長野権堂店」さらに、台湾唐揚げ情報も追加♪@長野市」、長野こまち、2020年12月2日掲載、[on line]、2024年2月13日検索、インターネット、URL:https://www.web-komachi.com/?p=39576
・甲第4-2号証:「ゴロゴロ果肉がたまらない!マクドナルド"McCafe by Barista"「桃のスムージー」」、Dtimes、2016年6月27日掲載、[on line]、2024年5月9日検索、インターネット、<URL:https://dtimes.jp/mcdonalds-mccafe-by-barista-peach-smoothie-2016-06/>
・甲第4-3号証:「ごろっとマンゴーで大満足!」、武蔵小杉東急スクエア内タリーズコーヒー、2021年4月28日掲載、[on line]、2024年2月9日検索、インターネット、<URL:https://www.kosugi-square.com/shopblog/detail/?cd=003590&scd=000033>
・甲第4-4号証:「【芒果総選挙2021】最終結果発表、台湾甜商店、2021年7月18日掲載、[on line]、2024年5月9日検索、インターネット、<URL:https://taiwan-ten.com/news/3566>
・甲第5号証:「伊藤農園のみかんな図鑑 グレープフルーツ」、伊藤農園、[on line]、2024年5月9日検索、インターネット、<URL:https://www.ito-noen.com/dictionary/mikan/グレープフルーツ/>
・甲第6号証:特開2004-121058号公報
・甲第7号証:特開2022-51492号公報
・甲第8号証:「サントリーウオツカ 80プルーフ」の紹介ページ、サントリーホールディングス株式会社、[on line]、2024年2月5日検索、インターネット、<URL:https://www.suntory.co.jp/wnb/products/0000000112/0000000214/0000000462.html>
・甲第9号証:「酒類に含まれる純アルコール量の計算」の紹介ページ、厚生労働省、[on line]、2024年5月31日検索、インターネット、URL:https://www.mhlw.go.jp/topics/tabacco/houkoku/dl/100222h_0009.pdf
なお、特許異議申立人は、令和6年12月16日提出の意見書(以下、「意見書」という。)に添付して甲第10号証を提出している。
・甲第10号証:「サントリーなるほどコール赤坂5丁目分室」、2006年7月1日放送、株式会社TBSラジオ、[on line]、2024年12月10日検索、<URL:https://www.tbs.co.jp/radio/call/bk/20060701.html>
証拠の表記については、特許異議申立書及び意見書における記載におおむね従った。
第5 令和6年9月19日付けで通知した取消理由の概要
令和6年9月19日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。なお、申立理由1-1、申立理由1-2のうち請求項1ないし4に関する部分、申立理由1-3、申立理由2-1のうち請求項1、2、4及び5に関する部分、申立理由2-2及び申立理由2-3は、取消理由1-1ないし取消理由2-3に包含される。
1 取消理由1-1(甲第1-1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1-1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 取消理由1-2(甲第7号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 取消理由1-3(甲第3号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 取消理由2-1(甲第1-1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1-1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 取消理由2-2(甲第7号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第7号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 取消理由2-3(甲第3号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 当審の判断
当審は、以下のとおり、取消理由1-1ないし取消理由2-3及び申立理由1-1ないし申立理由2-3の理由では、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。
なお、以下の判断においては、主たる証拠ごとに取消理由及び申立理由を整理した上で検討する。
1 取消理由1-1、取消理由2-1、申立理由1-1及び申立理由2-1(甲第1-1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
(1) 甲第1-1号証の記載事項等
ア 甲第1-1号証の記載事項
甲第1-1号証には、チョーヤ梅酒株式会社の「プラQ」に関し、次の記載がある。なお、甲第1-1号証には、「プラQ」の販売日についての記載はないが、甲第1-2号証の記載から見て、1973年に発売された商品であり、その態様として、カップ型容器に梅の実が2個入っているものという点でも甲第1-1号証と同じものである。
「
[図:0001423504000001.jpg]
[図:0001423504000002.jpg]
」
イ 甲第1-1号証に記載された発明
上記アの記載をまとめると、甲第1-1号証には次の発明が記載されていると認める。
「アルコール分が14%、内容量が160ml、梅の実の体積が20ml、梅の実の使用量が40gであって、材質が瓶である容器に密封された本格梅酒であって、飲料中に梅の実が2個用いられている、梅酒。」(以下、「甲1発明」という。)
(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「梅の実」は、本件特許発明1の「果肉片」に相当する。
そして、甲1発明は「材質が瓶である容器に密封された」ものであるから、甲1発明は、本件特許発明1の「果肉片と液体とが容器に密封されている容器詰飲料」に相当する。
また、甲1発明の梅酒の内容量は160ml、梅の実の体積は20mlであり、梅の実は2個であるから、梅の実1個の体積は概ね10ml(cm3)であり、内容量に対する梅の実の割合は、概ね22重量%と算出できる。
すると、甲1発明の梅酒は、本件特許発明1の「4cm3以上の果肉片を2つ以上含有し、飲料の総量に対する果肉片の割合が10~50重量%である、」との特定事項を満たす。
してみると、本件特許発明1と甲1発明との間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「果肉片と液体とが容器に密封されている容器詰飲料であって、
4cm3以上の果肉片を2つ以上含有し、飲料の総量に対する果肉片の割合が10~50重量%である、上記飲料。」
(相違点)
・相違点1-1
果肉片に関し、本件特許発明1は「あらかじめカットされた」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点1-2
本件特許発明1は「エタノール濃度が1v/v%未満」と特定するのに対し、甲1発明は「アルコール分が14%」である点。
上記相違点について検討する。
・相違点1-1について
甲1発明の梅酒は、「梅の実」をあらかじめカットすることなく2個封入するものであるから、相違点1-1は実質的な相違点である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明ではない。
また、甲第1-1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲1発明において「梅の実」をあらかじめカットする動機付けもないから、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
イ 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、いずれも本件特許発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに限定するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2は甲1発明ではなく、また、本件特許発明2ないし5は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 取消理由1-1、取消理由2-1、申立理由1-1及び申立理由2-1についてのまとめ
上記(2)のとおりであるから、取消理由1-1、取消理由2-1、申立理由1-1及び申立理由2-1の理由では、本件特許発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由1-2、取消理由2-2、申立理由1-2及び申立理由2-2(甲第7号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
(1) 甲第7号証の記載事項等
ア 甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、「果物飲料製造システム、混合パック、及び果物飲料の提供方法」に関し、次の記載がある。
「【請求項1】
果物飲料を製造する果物飲料製造方法を実施する果物飲料製造システムであって、
冷凍果物と牛乳とを撹拌容器に入れた後に、前記冷凍果物と前記牛乳とを撹拌してスムージ液を生成するミキサーと、
前記スムージ液と果物と調味料とが投入される混合パックと、
前記混合パックの開放口から気体を抜くと共に、圧着して封止の混合パックを作製する脱気シーラと、を有することを特徴とする果物飲料製造システム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、果物飲料製造システム及び果物飲料製造システムによって製造された果物飲料の飲む方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、単に真空ミキサーを用いて果物の飲み物を製造したとしても、昨今の味覚の好みに合うような飲み物を製造できない。例えば、ある程度の果物の触感と生感がある飲み物を製造できない。
【0008】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、昨今にはない、ある程度の果物の触感と生感がある飲み物を提供する果物飲料製造システム及び果物飲料製造システムによって製造された果物飲料の飲む方法を得ることを目的とする。」
「【0027】
また、果物飲料製造システム1は、混合パック14の開放口が形成されている一端が圧着バーに置かれた後に、さらに空気を抜いて、開放口が形成されている一端を熱圧着して混合パック14を生成する脱気シーラ5を含む。脱気シーラ5は、混合パック14から空気を脱気する初期用の脱気シーラと、さらに脱気して混合パック14の開放口がある端部を熱圧着して混合パック14を得る完成用の脱気シーラとよりなる(脱気シーラ5は1台でもよい)。ここで、脱気シーラ5とは、ビニールなどの樹脂製フィルムの袋で、飲食物などを梱包する時に、袋内の空気を抜いて真空状態で梱包をする機器である。
【0028】
また、テーブル2は、混合パック14が置かれるまな板18(木材の輪切りが好ましい)を備え、このまな板18で、木製又は金属ハンマー19或いは手で混合パック14内の冷蔵バナナ17が砕かれた果物ジュース入り混合パック14を得る。これにより、今までにない食感の飲み物を得ることができる。」
「【0029】
次に、図2~図6を用いて製造工程を詳しく説明する。
【0030】
はじめに、冷凍バナナ8(例えば、約100g)を例えば冷蔵庫の冷凍室から取り出す。この冷凍バナナ8は皮を剥いて真空パックで冷凍保存しておいたものでもよい。これにより、長期間にわたり高品質を維持することができる。
【0031】
そして、図2(a)に示すように、牛乳9(約100cc)をコップで店員が真空ミキサー3の撹拌容器7に入れる。
【0032】
そして、真空ミキサー3は、図2(b)に示すように、撹拌容器7を真空状態にした後で、図2(c)に示すように、ミキシングを開始し(30秒~40秒)、図2(d)に示すように、撹拌容器7内に綺麗なピューレになっている真空スムージ液20を得る(図5(a)参照)。これにより、酸化の少ない質の高いスムージ液20を生成することができる。一方、スムージ液20の代わりにミルクティー、紅茶、カフェオーレ、コーヒー、豆乳、飲むヨーグルト、アーモンドミルク、オーツミルク、プロテイン、又は青汁であってもよい。ここで、飲むヨーグルトとは、ヨーグルトを液状に加工した飲み物の総称をいう。
【0033】
図示しないが、この間に、別の冷蔵した皮を剥いたバナナ17(一本:約100g)を店員が冷蔵庫より取り出して混合パック14(図示せず)に入れる。ここでは、冷凍バナナ17を使用するが、リンゴ、パイナップル、梨、イチゴ、マンゴー、キウイ等の他の果物の組み合わせでもよい。
【0034】
そして、図2(e)に示すように、店員がスタンド4の上輪12に「じょうご」13の下端筒13aを入れて載置する(図5(b)参照:セッティングともいう)。続いて、下端筒13aに混合パック14の袋の開放口を差し込む。
【0035】
そして、店員が「じょうご」13の上カップから、撹拌容器7の真空スムージ液20と、ヨーグルト16(約15g)と、蜂蜜15(約5g)とよりなる混合液を注ぎ込み、かつ冷蔵バナナ17を入れて(図示せず)、図2(f)に示すように、混合パック14を得る(図5(c)参照)。この際、じょうご、を使用するため混合パック14の開放口が汚れることがなく下記に説明するパッキングが適正に行われる。ここで、トッピングを入れるときは、ヨーグルト16と、蜂蜜15は入れない。
【0036】
そして、この冷凍/冷蔵果物混合液入り混合パック14をスタンド4より取り出して、図3(g)、図3(h)、図3(i)及び図3(j)に示すようにパッキングを行う。
【0037】
パッキングは、図3(g)に示す混合パック14を用意する。そして、図3(h)に示すように、初期用の脱気シーラ5が、圧着バーに混合パック14の開放口を備えた一端が置かれた後に、気体(空気等)を抜く。
【0038】
そして、図3(i)に示すように、完成用の脱気シーラ5を用いて混合パック14からさらに空気を抜いて、開放口が形成されている一端を熱圧着して混合パック14を生成する(図5(d)参照)。そして、この混合パック14を店員が客に渡す(販売する)。
【0039】
客は、図4に示すように、まな板18又は客のテーブルに混合パック14を置いて、木製ハンマー19で叩いて混合パック14内のバナナ8,17を粉砕する。この状態で飲める状態になる。そして、ストローなどで飲む。すなわち、真空状態でバナナは酸化していないので、風味が損なわれない。また、ビタミンやポリフェノールを保持できている。また、冷蔵バナナをハンマーで砕いているので、触感が増す。したがって、近年にはない、ある程度の果物の触感と生感がある飲み物を提供することができる。さらに、真空パックにすることで、長距離用のテイクアウトをしても鮮度は落ちず、冷凍してアイスにしたりして色々な飲み方が楽しめる。さらにまた、果物は切断すると切断面が酸化して味や風味が損なわれるおそれがあるところ、本発明では、果物を丸ごと冷凍してそのまま真空パックに入れて、空気に触れることなく叩いて潰すので、果物を切断する場合に比べて、果物本来の味や風味を楽しむことができる。
【0040】
若しくは、店員がテーブル2の上のまな板18に混合パック14を置いて、木製ハンマー19で叩いて冷蔵バナナ17を叩砕にしてストローと共に客に渡してもよい。一方、冷蔵庫、冷凍庫、真空ミキサー3、混合パック14、スタンド4、じょうご13及び脱気シーラ5を用意して自動化すれば大量生産することも可能である。
【0041】
なお、果物をハンマーで叩く場合、果物全体の約80~95%の部分を叩いて、全体の20~5%の部分は叩かないで粉砕されていない状態としておくことが好ましい。一部に果物の形を残した部分があることによって、客は混合パック14を介して間接的に当該部分を手で潰しながら飲むことができ、実際に生の果物を飲んでいる感覚を楽しむことができる。」
「【0046】
なお、混合パック14の袋(パック)は、リニアポリエチレン、ポリ塩化ビニール製が好ましい。」
「
[図:0001423504000003.jpg]
[図:0001423504000004.jpg]
[図:0001423504000005.jpg]
」
イ 甲第7号証に記載された発明
上記アの記載、特に、【0029】ないし【0041】の記載を中心に整理すると、甲第7号証には次の発明が記載されていると認める。
「冷凍バナナ100g、牛乳100cc、ヨーグルト15g、蜂蜜5gから得られたスムージーに、バナナ1本(100g)を加えたスムージーを混合パックに入れ空気を抜いて開放口が形成されている一端を熱圧着し、その後、混合パック内のバナナを木製ハンマーで叩いて得られたスムージー。」(以下、「甲7発明」という。)
(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲7発明とを対比する。
甲7発明の、木製ハンマーで叩いて得られた「バナナ」は、いくつかの塊になっているものであることは明らかであるから、本件特許発明1の「果肉片」に相当する。
また、甲7発明の冷凍バナナと牛乳から得られる「スムージー」は、本件特許発明1の「液体」であるとともに「飲料」に相当する。
そして、甲7発明のスムージーは、「混合パック内に入れ空気を抜いて開放口が形成されている一端を熱圧着」したものであるから、本件特許発明1の「容器に密封されている容器詰飲料」に相当するものといえる。
さらに、甲7発明における、木製ハンマーで叩かれたバナナ1本(100g)の割合は、概ね30重量%程度といえ、本件特許発明1の「飲料の総量に対する果肉片の割合が10~50重量%である、」との特定事項を満たす。
甲7発明は、その原料としてアルコールを含まないから、本件特許発明1の「液体のエタノール濃度が1v/v%未満である」との特定事項を満たす。
してみると、本件特許発明1と甲7発明との一致点・一応の相違点は次のとおりである。
(一致点)
「果肉片と液体とが容器に密封されている容器詰飲料であって、
飲料の総量に対する果肉片の割合が10~50重量%であり、前記液体のエタノール濃度が1v/v%未満である、上記飲料。」
(相違点)
・相違点7-1
本件特許発明1は「4cm3以上の果肉片を2つ以上含有し、」と特定するのに対して、甲7発明にはそのような特定がない点。
・相違点7-2
果肉片に関し、本件特許発明1は「あらかじめカットされた」と特定するのに対し、甲7発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点7-2について検討する。
甲第7号証には、「テーブル2は、混合パック14が置かれるまな板18(木材の輪切りが好ましい)を備え、このまな板18で、木製又は金属ハンマー19或いは手で混合パック14内の冷蔵バナナ17が砕かれた果物ジュース入り混合パック14を得る。これにより、今までにない食感の飲み物を得ることができる」(【0028】)との記載、「客は、図4に示すように、まな板18又は客のテーブルに混合パック14を置いて、木製ハンマー19で叩いて混合パック14内のバナナ8,17を粉砕する。この状態で飲める状態になる。そして、ストローなどで飲む。すなわち、真空状態でバナナは酸化していないので、風味が損なわれない。また、ビタミンやポリフェノールを保持できている。また、冷蔵バナナをハンマーで砕いているので、触感が増す。したがって、近年にはない、ある程度の果物の触感と生感がある飲み物を提供することができる。さらに、真空パックにすることで、長距離用のテイクアウトをしても鮮度は落ちず、冷凍してアイスにしたりして色々な飲み方が楽しめる。さらにまた、果物は切断すると切断面が酸化して味や風味が損なわれるおそれがあるところ、本発明では、果物を丸ごと冷凍してそのまま真空パックに入れて、空気に触れることなく叩いて潰すので、果物を切断する場合に比べて、果物本来の味や風味を楽しむことができる」(【0039】)との記載があることから、甲7発明の「スムージー」に加えられる「果物」は、「あらかじめカットされた」ものではなく、「丸ごと」用いるものであることは明らかである。
してみると、相違点7-2は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲7発明ではない。
また、甲第7号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲7発明において、「果物」を「あらかじめカットされた」ものとする動機付けはないから、甲7発明において、相違点7-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲7発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
なお、この点に関して、特許異議申立人は甲第10号証を提出するとともに意見書において、「甲7発明において、甲第7号証でバナナの代替として使用可能と明示列挙されているリンゴ、パイナップル、梨、イチゴ、マンゴー、キウイを、バナナに代えて用いることは、当業者にとって極めて容易になし得ることである。この際に、リンゴや梨は内部に非可食部(種や芯)があり、飲用に用いる場合には、これらの非可食部が除かれた「予めカットされた果肉片」を用いることは容易であるし、パイナップルのように大型の果物を用いる場合も、容器に充填可能なように「予めカットされた果肉片」を用いることも極めて自然なことである。さらに、甲第7号証に記載されている効果(ある程度の果物の触感と生感がある飲み物の提供)が得られるように、冷凍バナナに代えて用いる「予めカットされた果肉片」の大きさを、パック充填後のハンマーでの粉砕に適するように、一般的に飲用に適する大きさの果肉片よりも大きな冷凍果肉片を用いることも、当業者が容易になし得ることである。また、果物の切断による味や風味の劣化は、切断面が空気(主に酸素)に接することにより生ずるものであり、切断面の広さに影響を受けるものであるが、予めカットされた冷凍果肉片を用いた場合でも、飲用には大きい果肉片とすることにより、従来の飲用に適した大きさまでカットする場合よりも切断面が小さくなることから、「果物の切断による味や風味の劣化の抑制」という甲7発明の効果も達成されているといえる」(意見書第4頁)旨主張する。
しかしながら、上記検討のとおり、甲第7号証においては「果物」をそのまま用いることを指向していることは明らかであり、「あらかじめカットされた」ものとすることは「切断面が酸化して味や風味が損なわれるおそれがある」(【0039】)との点から、むしろ採用しない方向であることは明らかである。
また、仮に、甲7発明において「果物」を変更することができ、かつ、果物の非可食部や大きさの点から「あらかじめカット」せざるを得ないものであるとしても、その場合は甲7発明における果物の大きさやスムージーにおける果物の割合が変わる、すなわち、上記相違点7-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものであるか否かが不明なものとなるのであるから、結局のところ、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
イ 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、いずれも本件特許発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに限定するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は甲7発明ではなく、甲7発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2ないし5もまた、甲7発明ではなく、甲7発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3) 取消理由1-2、取消理由2-2、申立理由1-2及び申立理由2-2についてのまとめ
上記(2)のとおりであるから、取消理由1-2、取消理由2-2、申立理由1-2及び申立理由2-2の理由では、本件特許発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
3 取消理由1-3、取消理由2-3、申立理由1-3及び申立理由2-3(甲第3号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
上記第2のとおり、本件訂正請求により、本件特許発明1ないし5はいずれも、訂正前の請求項3に係る特定事項を有するものとなった。
したがって、取消理由1-3、取消理由2-3、申立理由1-3及び申立理由2-3はいずれも解消した。
よって、取消理由1-3、取消理由2-3、申立理由1-3及び申立理由2-3の理由では、本件特許発明1、2、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700571