特許異議申立
2024-700222
ビールテイスト飲料
- 審判番号
- 2024-700222
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-060162
- 登録番号
- 7341279
- 請求日
- 2024年03月08日
- 審決日
- 2025年05月23日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】小林 浩
- 【権利者代理人】古橋 伸茂
- 【権利者代理人】石原 俊秀
- 【権利者代理人】末広 尚也
- 【異議申立人】中川 賢治
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 淺野 美奈
- 審判官 松本 陶子
- 分類
- P1651.113-YAA(C12C) / P1651.121-YAA(C12C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第3項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7341279号発明「ビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7341279号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25について訂正することを認める。
特許第7341279号の請求項1~25に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7341279号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~17に係る特許についての出願は、
令和 4年 3月31日の出願であって、
令和 5年 8月31日にその特許権の設定登録(請求項の数17)がされ、
令和 5年 9月 8日に特許掲載公報が発行され、
その後、その特許に対し、
令和 6年 3月 8日に特許異議申立人 中川 賢治(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、
令和 6年 8月22日付けで取消理由が通知され、
令和 6年10月28日に特許権者 サントリーホールディングス株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされると共に意見書が提出され、
令和 6年11月18日付けで手続補正指令(方式)が通知され、
令和 6年12月19日に特許権者から訂正請求書の手続補正書(方式)が提出され、
令和 7年 1月30日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、
令和 7年 3月 5日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和6年12月19日提出の手続補正書により補正された令和6年10月28日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料である、ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
と記載されているのを、
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
pHが3.7以上であり、
苦味価が32.0BUs以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
に訂正する。併せて、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~15も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「糖類(A)の合計含有量が、0.70(w/v)%以上3.00(w/v)%以下である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。」
と記載されているのを、
「糖類(A)の合計含有量が、0.70(w/v)%以上2.00(w/v)%以下である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。」
に訂正する。併せて、請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~15も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が、0.05(w/v)%以上2.40(w/v)%以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。」
と記載されているのを、
「マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が、0.05(w/v)%以上2.00(w/v)%以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。」
に訂正する。併せて、請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~15も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「糖類(A1)の合計含有量が、0.30(w/v)%以上2.40(w/v)%以下である、請求項3に記載のビールテイスト飲料。」
と記載されているのを、
「糖類(A1)の合計含有量が、0.30(w/v)%以上2.00(w/v)%以下である、請求項3に記載のビールテイスト飲料。」
に訂正する。併せて、請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項6~15も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「糖類(A1)の合計含有量が、0.40(w/v)%以上2.40(w/v)%以下である、請求項3に記載のビールテイスト飲料。」
と記載されているのを、
「糖類(A1)の合計含有量が、0.40(w/v)%以上2.00(w/v)%以下である、請求項3に記載のビールテイスト飲料。」
に訂正する。併せて、請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6~15も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
ア 訂正事項6-1
特許請求の範囲の請求項6に
「T-VDKの含有量が0.300質量ppm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「アルコール度数が2.8(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
T-VDKの含有量が0.300質量ppm以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
と記載し、新たに請求項18とする。
イ 訂正事項6-2
特許請求の範囲の請求項6に
「T-VDKの含有量が0.300質量ppm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
と記載されているのを、
「T-VDKの含有量が0.300質量ppm以下である、請求項2~5のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
に訂正する。併せて、請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7~15も同様に訂正する。
(7)訂正事項7
ア 訂正事項7-1
特許請求の範囲の請求項7に
「苦味価が1.0BUs以上40.0BUs以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
pHが3.7以上であり、
苦味価が1.0BUs以上40.0BUs以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
と記載し、新たに請求項19とする。
イ 訂正事項7-2
特許請求の範囲の請求項7に
「苦味価が1.0BUs以上40.0BUs以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、
「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が、0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下であり、
pHが3.7以上であり、
苦味価が1.0BUs以上40.0BUs以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
と記載し、新たに請求項20とする。
ウ 訂正事項7-3
特許請求の範囲の請求項7に
「苦味価が1.0BUs以上40.0BUs以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
と記載されているのを、
「苦味価が1.0BUs以上32.0BUs以下である、請求項2及び4~6のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
に訂正する。併せて、請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8~15も同様に訂正する。
(8)訂正事項8
ア 訂正事項8-1
特許請求の範囲の請求項8に
「苦味価が35.0BUs未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が、0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下であり、
pHが3.7以上であり、
苦味価が32.0BUs以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
と記載し、新たに請求項21とする。
イ 訂正事項8-2
特許請求の範囲の請求項8に
「苦味価が35.0BUs未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
と記載されているのを、
「苦味価が31.0BUs以下である、請求項1~2及び4~7のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
に訂正する。併せて、請求項8の記載を直接又は間接的に引用する請求項9~15も同様に訂正する。
(9)訂正事項9
ア 訂正事項9-1
特許請求の範囲の請求項13に
「色度が1.0EBC以下である飲料を除く、請求項1~12のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料、色度が1.0EBC以下である飲料、原料として、ビールの煮汁から生じるビールかす原汁中のモルトビールかすを用いた発酵ビール、低温接触発酵ビールとレギュラービールとを50:50の体積比で混合してなる蒸留前のビール、及び、ラシャンセア属酵母を用いた発酵工程を経て得られる発酵ビールを除く)。」
と記載し、新たに請求項22とする。
イ 訂正事項9-2
特許請求の範囲の請求項13に
「色度が1.0EBC以下である飲料を除く、請求項1~12のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
と記載されているのを、
「色度が1.0EBC以下である飲料を除く、請求項2~12のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
に訂正する。併せて、請求項13の記載を引用する請求項15も同様に訂正する。
(10)訂正事項10
ア 訂正事項10-1
特許請求の範囲の請求項15に
「アルコール度数が、0.5(v/v)%以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
原麦汁エキス濃度が、7.0質量%以上である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
と記載し、新たに請求項23とする。
イ 訂正事項10-2
特許請求の範囲の請求項15に
「アルコール度数が、0.5(v/v)%以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、
「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が、0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下であり、
原麦汁エキス濃度が、7.0質量%以上である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
と記載し、新たに請求項24とする。
ウ 訂正事項10-3
特許請求の範囲の請求項15に
「アルコール度数が、0.5(v/v)%以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項6を引用するものについて、独立形式に改め、
「アルコール度数が0.5(v/v)%以上2.1(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、 糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
T-VDKの含有量が0.100質量ppm以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
と記載し、新たに請求項25とする。
エ 訂正事項10-4
特許請求の範囲の請求項15に
「アルコール度数が、0.5(v/v)%以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
と記載されているのを、
「アルコール度数が、0.5(v/v)%以上である、請求項2、4~5、及び7~14のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。」
に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項16に
「原料として、少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であり、イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、発酵飲料であるビールテイスト飲料(ただし、前記ビールテイスト飲料は、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)を製造する方法であって、
酵母を用いた発酵工程を有すると共に、少なくとも下記工程(I)~(III)を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。
・工程(I):アルコール度数を3.6(v/v)%以下に調整する工程。
・工程(II):糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量を0.07(w/v)%以上に調整する工程。
・工程(III):リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下となるように調整する工程。」
と記載されているのを、
「原料として、少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であり、イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、pHが3.7以上であり、苦味価が32.0BUs以下である、発酵飲料であるビールテイスト飲料(ただし、前記ビールテイスト飲料は、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)を製造する方法であって、
酵母を用いた発酵工程を有すると共に、少なくとも下記工程(I)~(III)を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。
・工程(I):アルコール度数を3.6(v/v)%以下に調整する工程。
・工程(II):糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量を0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下に調整する工程。
・工程(III):リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下となるように調整する工程。」
に訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項17に
「原料として、少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であり、イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、発酵飲料であるビールテイスト飲料(ただし、前記ビールテイスト飲料は、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)の香味を改善する方法であって、
少なくとも下記操作(I)~(III)を有する、ビールテイスト飲料の香味改善方法。
・操作(I):アルコール度数を3.6(v/v)%以下に調整する操作。
・操作(II):糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量を0.07(w/v)%以上に調整する操作。
・操作(III):リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下となるように調整する操作。」
と記載されているのを、
「原料として、少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であり、イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、pHが3.7以上であり、苦味価が32.0BUs以下である、発酵飲料であるビールテイスト飲料(ただし、前記ビールテイスト飲料は、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)の香味を改善する方法であって、
少なくとも下記操作(I)~(III)を有する、ビールテイスト飲料の香味改善方法。
・操作(I):アルコール度数を3.6(v/v)%以下に調整する操作。
・操作(II):糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量を0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下に調整する操作。
・操作(III):リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下となるように調整する操作。」
に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「糖類(A)の合計含有量」の数値範囲を狭くし、「pH」及び「苦味価」に関する限定を追加したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~15についての訂正も同様である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による請求項2についての訂正は、「糖類(A)の合計含有量」の数値範囲を狭くしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~15についての訂正も同様である。
(3)訂正事項3~5について
訂正事項3~5による請求項3~5それぞれについての訂正は、いずれも「糖類(A1)の合計含有量」の数値範囲を狭くしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項3~5による請求項3~5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項3~5の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~15についての訂正も同様である。
(4)訂正事項6について
ア 訂正事項6-1による請求項18についての訂正は、本件訂正前の請求項6が同請求項1を引用していたところ、これを書き下して独立形式に改め、さらに、「アルコール度数」の数値範囲を狭くしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項6-1による請求項18についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項6-2による請求項6についての訂正は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1~5のいずれか一項を引用する記載であったものを、訂正前の請求項1を引用しないように変更するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項6-2による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7~15についての訂正も同様である。
(5)訂正事項7について
ア 訂正事項7-1による請求項19についての訂正は、本件訂正前の請求項7が同請求項1を引用していたところ、これを書き下して独立形式に改め、さらに、「アルコール度数」及び「糖類(A)の合計含有量」の数値範囲を狭くし、「pH」に関する限定を追加したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項7-1による請求項19についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項7-2による請求項20についての訂正は、本件訂正前の請求項7が同請求項3を引用していたところ、これを書き下して独立形式に改め、さらに、「アルコール度数」及び「糖類(A1)の合計含有量」の数値範囲を狭くし、「pH」に関する限定を追加したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項7-2による請求項20についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 訂正事項7-3による請求項7についての訂正は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1~6のいずれか一項を引用する記載であったものを、訂正前の請求項1及び3を引用しないように変更するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項7-3による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8~15についての訂正も同様である。
(6)訂正事項8について
ア 訂正事項8-1による請求項21についての訂正は、本件訂正前の請求項8が同請求項3を引用していたところ、これを書き下して独立形式に改め、さらに、「糖類(A1)の合計含有量」の数値範囲を狭くし、「pH」及び「苦味価」に関する限定を追加したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項8-1による請求項21についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項8-2による請求項8についての訂正は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項1~7のいずれか一項を引用する記載であったものを、訂正前の請求項3を引用しないように変更するものとし、さらに、「苦味価」に関する限定を追加したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項8-2による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項8の記載を直接又は間接的に引用する請求項9~15についての訂正も同様である。
(7)訂正事項9について
ア 訂正事項9-1による請求項22についての訂正は、本件訂正前の請求項13が同請求項1を引用していたところ、これを書き下して独立形式に改め、さらに、発明の対象から3種類のビールを除外したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項9-1による請求項22についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項9-2による請求項13についての訂正は、訂正前の請求項13が訂正前の請求項1~12のいずれか一項を引用する記載であったものを、訂正前の請求項1を引用しないように変更するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項9-2による請求項13についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項13の記載を引用する請求項15についての訂正も同様である。
(8)訂正事項10について
ア 訂正事項10-1による請求項23についての訂正は、本件訂正前の請求項15が同請求項1を引用していたところ、これを書き下して独立形式に改め、さらに、「アルコール度数」及び「糖類(A)の合計含有量」の数値範囲を狭くし、「原麦汁エキス」に関する限定を追加したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項10-1による請求項23についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項10-2による請求項24についての訂正は、本件訂正前の請求項15が同請求項3を引用していたところ、これを書き下して独立形式に改め、さらに、「アルコール度数」及び「糖類(A1)の合計含有量」の数値範囲を狭くし、「原麦汁エキス」に関する限定を追加したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項10-2による請求項24についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 訂正事項10-3による請求項25についての訂正は、本件訂正前の請求項15が同請求項6を引用していたところ、これを書き下して独立形式に改め、さらに、「アルコール度数」の数値範囲を狭くし、「T-VDK」に関する限定を追加したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項10-3による請求項25についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
エ 訂正事項10-4による請求項15についての訂正は、訂正前の請求項15が訂正前の請求項1~14のいずれか一項を引用する記載であったものを、訂正前の請求項1、3及び6を引用しないように変更するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項10-4による請求項15についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(9)訂正事項11について
訂正事項11による請求項16についての訂正は、「糖類(A)の合計含有量」の数値範囲を狭くし、「pH」及び「苦味価」に関する限定を追加したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項11による請求項16についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものあり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(10)訂正事項12について
訂正事項12による請求項17についての訂正は、「糖類(A)の合計含有量」の数値範囲を狭くし、「pH」及び「苦味価」に関する限定を追加したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項12による請求項17についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものあり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおり、訂正事項1~12による請求項1~25についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1~15は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1~10による請求項1~15及び18~25についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正事項11及び12による請求項16及び17についての訂正は、請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第3項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~17に対してされているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
そして、訂正後の請求項18~25については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがあるため、別の訂正単位とする。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1~25に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~25に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
pHが3.7以上であり、
苦味価が32.0BUs以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。
【請求項2】
糖類(A)の合計含有量が、0.70(w/v)%以上2.00(w/v)%以下である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が、0.05(w/v)%以上2.00(w/v)%以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
糖類(A1)の合計含有量が、0.30(w/v)%以上2.00(w/v)%以下である、請求項3に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
糖類(A1)の合計含有量が、0.40(w/v)%以上2.00(w/v)%以下である、請求項3に記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
T-VDKの含有量が0.300質量ppm以下である、請求項2~5のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
苦味価が1.0BUs以上32.0BUs以下である、請求項2及び4~6のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項8】
苦味価が31.0BUs以下である、請求項1~2及び4~7のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項9】
アルコール度数(単位:(v/v)%)と、糖類(A)の合計含有量(単位:(w/v)%)との比〔アルコール度数/糖類(A)〕が、0~70.0である、請求項1~8のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項10】
リナロールの含有量(単位:μg/L)と、糖類(A)の合計含有量(単位:(w/v)%)との比〔リナロール/糖類(A)〕が、1以上160以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項11】
苦味価(単位:BUs)と、糖類(A)の合計含有量(単位:(w/v)%)との比〔苦味価/糖類(A)〕が、1以上200以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項12】
麦芽比率が50質量%以上100質量%以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項13】
色度が1.0EBC以下である飲料を除く、請求項2~12のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項14】
アルコール度数が、3.0(v/v)%以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項15】
アルコール度数が、0.5(v/v)%以上である、請求項2、4~5、及び7~14のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項16】
原料として、少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であり、イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、pHが3.7以上であり、苦味価が32.0Bus以下である、発酵飲料であるビールテイスト飲料(ただし、前記ビールテイスト飲料は、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)を製造する方法であって、
酵母を用いた発酵工程を有すると共に、少なくとも下記工程(I)~(III)を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。
・工程(I):アルコール度数を3.6(v/v)%以下に調整する工程。
・工程(II):糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量を0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下に調整する工程。
・工程(III):リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下となるように調整する工程。
【請求項17】
原料として、少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であり、イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、pHが3.7以上であり、苦味価が32.0BUs以下である、発酵飲料であるビールテイスト飲料(ただし、前記ビールテイスト飲料は、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)の香味を改善する方法であって、
少なくとも下記操作(I)~(III)を有する、ビールテイスト飲料の香味改善方法。
・操作(I):アルコール度数を3.6(v/v)%以下に調整する操作。
・操作(II):糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量を0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下に調整する操作。
・操作(III):リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下となるように調整する操作。
【請求項18】
アルコール度数が2.8(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140ug/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
T-VDKの含有量が0.300質量ppm以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。
【請求項19】
アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
pHが3.7以上であり、
苦味価が1.0BUs以上40.0BUs以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。
【請求項20】
アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み糖類(A)の合計含量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下であり、
pHが3.7以上であり、
苦味価が1.0BUs以上40.0BUs以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10000未満の大豆ペプチドを原料とした食料を除く)。
【請求項21】
アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が、0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下であり、
pHが3.7以上であり、
苦味価が32.0BUs以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。
【請求項22】
アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料、色度が1.0EBC以下である飲料、原料として、ビールの煮汁から生じるビールかす原汁中のモルトビールかすを用いた発酵ビール、低温接触発酵ビールとレギュラービールとを50:50の体積比で混合してなる蒸留前のビール、及び、ラシャンセア属酵母を用いた発酵工程を経て得られる発酵ビールを除く)。
【請求項23】
アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
原麦汁エキス濃度が、7.0質量%以上である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。
【請求項24】
アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が、0.05(w/v%以上1.70(w/v)%以下であり、
原麦汁エキス濃度が、7.0質量%以上である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。
【請求項25】
アルコール度数が0.5(v/v)%以上2.1(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
イソα酸の含有量が0.1質量ppm超であり、
発酵飲料であり、
T-VDKの含有量が0.100質量ppm以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000末満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
第4 特許異議申立ての理由の概要
1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1~14、16、17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1~17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第2号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1~5、7~10、12、14~17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1~17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第3号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1~5、7~10、12、14~17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 申立理由6(甲第3号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1~17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
7 証拠方法
・甲第1号証:特公平5-79307号公報
・甲第2号証:特表2022-510753号公報
・甲第3号証:Bellutら、「Investigation into the Potential of Lachancea fermentati Strain KBI 12.1 for Low Alcohol Beer Brewing」Journal of the American Society of Brewing Chemists 2019年、第77巻、第3号、第157~169ページ、〈URL:https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/03610470.2019.1629227〉
・甲第4号証:Malflietら、「Analytical-Sensory Determination of Potential Flavour Deficiencies of Light Beers」JOURNAL OF THE INSTITUTE OF BREWING 2009年、第115巻、第1号、第49~63ページ、〈URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/j.2050-0416.2009.tb00344.x〉
・甲第5号証:De Francescoら、「Mrakia gelida in brewing process: An innovative production of low alcohol beer using a psychrophilic yeast strain」Food Microbiology 2018年12月、第76巻、第354~362ページ、〈URL https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0740002018303009〉
・甲第6号証:Van Landschoot、「Saccharides and sweeteners in beer」Cerevisia 2009年、第34巻、第1号、第19~25ページ、〈URL: https://www.researchgate.net/publication/305724966_Saccharides_and_sweeteners_in_beer〉
・甲第7号証:特表2013-524857号公報
・甲第8号証:平野好司ら、「ビールとオリゴ糖」澱粉科学、1981年、第28巻、第2号 第118~124ページ、〈URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jag1972/28/2/28_2_118/_article/-char/ja/〉DOI: https://doi.org/10.5458/jag1972.28.118
・甲第9号証:蛸井潔、「ビールをはじめとする酒類の香り研究について-近年の成果とトレンド-」日本醸造協会誌、2015年、110巻、7号 第479~488ページ、〈URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/110/7/110_479/_article/-char/ja〉〈DOI: https://doi.org/10.6013/jbrewsocjapan.110.479〉
・甲第10号証:Forsterら、「Hopping of Low Alcohol Beers」Brewing Science、2012年、第65巻 July / August 2012、第72~82ページ、〈URL: https://www.researchgate.net/publication/287764879_Hopping_of_low_alcohol_beers〉
・甲第11号証:岸本徹、「ビールのオフフレーバーに関する近年の知見」におい・かおり環境学会誌 平成25年(2013年)、第44巻、第1号 第13~20ページ、〈URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/44/1/44_13/_pdf〉
・甲第12号証:欧州連合、欧州連合官報(Official Journal of the European Union)2016年5月14日 C174/24~C174/26ページ
・甲第13号証:Espinosa-Ramirezら、「Maltose and glucose utilization during fermentation of barley and sorghum lager beers as affected by β-amylase or amyloglucosidase addition」Journal of Cereal Science 2014年、第60巻 第602~609ページ、〈URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0733521014001544〉
・甲第14号証:Nogueiraら、「Separation and quantification of beer carbohydrates by high-performance liquid chromatography with evaporative light scattering detection」Journal of Chromatography A 2005年、第1065巻、第207~210ページ、〈URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0021967305000270〉
・甲第15号証:国際公開第2022/058568号
・甲第16号証:橋本直樹、「ビールのはなし Part2 おいしさの科学」、技報堂出版株式会社 1998年4月5日発行、第97~99ページ
・甲第17号証:第XIV章 ホップに由来する成分、醸造物の成分、財団法人日本醸造協会、平成11年12月10日発行、第250~272ページ
・甲第18号証:特開2015-133924号公報
・甲第19号証:福永健三、最新の酵素を利用した低糖質ビール開発-ビール用糖化酵素「アテニュザイム」シリーズ紹介-、月間フードケミカル 2018年9月号、株式会社食品化学新聞社、2018年9月発行 第76~80ページ
・甲第20号証:MINTEL、ミンテルGNPD(世界新商品情報データベース)記録番号4475443 Miller Lite、Mintel Group Ltd、公開日:2016年12月、<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/4475443/from_search/mI9ZYZSUsm/?page=1>
・甲第21号証:MINTEL、ミンテルGNPD(世界新商品情報データベース)記録番号6851141 Miller 64、Mintel Group Ltd、公開日:2019年9月、<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/6851141/from_search/mI9ZYZSUsm/?page=1>
・甲第22号証:Vriesekoopら、125th Anniversary Review: Bacteria in brewing: The good, the bad and the ugly、Journal of the Institute of Brewing(J.Inst.Brew)2012、Volume118 第335~345ページ、<URL:DOI: https://doi.org/10.1002/jib.49>
・甲第23号証:橋本直樹、ライトビールの登場~ビールの新しい味を担って~、New Food Industry、1988年、第30巻、第3号、第6~13ページ
なお、甲第16~22号証は、令和7年3月5日提出の意見書に添付されたものである。
また、証拠の表記は、特許異議申立書及び意見書の記載におおむね従った。
第5 取消理由の概要
1 取消理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1~17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、取消理由1は申立理由1及び2を包含するものである。
2 取消理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1~10、12~17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1~17に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、取消理由2は申立理由3及び4を包含するものである。
3 取消理由3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1~17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、取消理由3は申立理由5及び6を包含するものである。
第6 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
(1)甲第1号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「アルコール分のないか又はアルコール分の少ないビールの製造方法」に関して、次の記載がある。下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。
「(57)特許請求の範囲
1 ビールの煮汁(Biersud)から生じるビールかす原汁(Trebermaische)中のモルトビールかす(Malztreber)を、消化(Digerieren)、煮沸又はオートクレーブによる加熱により熱分解するものであり、
ビールかす原汁を45~72℃まで冷やし、前記ビールの煮汁(Biersud)のモルト量に対して10~30%のモルトひきくず(Malzschrot)を添加し、
前記ビールかす原汁を80~85℃まで加熱し、このビールかす原汁へ冷水中であらかじめ撹拌し、前記ビールの煮汁(Biersud)のモルト量に対して40~90%のモルトひきくず(Malzschrot)を添加し、結果的に得られる全原汁(Gesamtmaische)の温度を70~74℃に達するようにし、最高醗酵度を60%とする麦芽汁(Wuerze)を生成し、
この麦芽汁にホツプ(Hopfen)を添加して煮沸し、冷却して酵母(Hefe)を加えて醗酵させ、
アルコール分のないビールでは0.5%以下、アルコール分の少ないビールでは0.5以上で1.5%以下のアルコール含有量として、醗酵を終結させることを特徴とするアルコール分のないか又はアルコール分の少ないビールの製造方法。」(明細書第1欄1行~第2欄第2行)
「本発明の根底となる課題は、アルコール分のないかまたはアルコール分の少ないビールの製造方法を記載し、これにより味に関してもその他の物理的および化学的特性に関しても、アルコール含有量を除いて従来のビールの完全な代用製品となるビールを製造できるようにすることである。」(明細書第5欄7行~第12行)
「実施例
以下、本発明の実施例を説明する。
本発明による方法に従い次の方法条件のもとにアルコール分のない生ビール(Schankbier)を製造した:
(ステツプ1)
3500kgのモルトから得たビールかす(Treber)を55hlの静水(Glattwasser)中で煮沸し、ポンプで汲み換え50hlの冷水を加えて52℃まで冷却する。
(ステツプ2)
650kgのモルトひきくず(Malzschrot)を16hlの冷水に加えて撹拌する。
原汁(Maische)の温度:48℃
(ステツプ3)
原汁(Maische)を80℃に加熱する。1950kgのモルトひきくずを80℃の原汁(Maische)の中に加えて撹拌する。
全原汁(Gesamtmaische)の最終温度:72℃
(ステツプ4)
ホツプ添加:アルフア酸含有40%のホツプ抽出物(CO2で抽出)を5kg添加する。
麦芽汁(Wuerze)の煮沸時間:120分、
最終麦芽汁の量:260hl
(ステツプ5)
麦芽汁を5℃に冷却;
麦芽汁hl当たり10lの空気で通風;
液底酵母300l添加;
5℃で醗酵;
0.8%抽出物醗酵後、遠心分離機で酵母を分離;
(ステツプ6)
0.5℃でビールを貯蔵;
貯蔵期間 20日;
通常の方法で濾過ならびにビン詰め;
65℃でパストウール殺菌法で殺菌;
本発明により製造されたアルコール分のない生ビール(Schankbier)の分析は次の結果を生じた:
エキス(Extrakt)、見掛け、% ……6.40
エキス(Extrakt)、実質% ……6.60
アルコール、% ……0.46
原麦芽汁含有量(Stammwuerzegehalt)、% ……7.5
エキス、見掛け、最終醗酵(Endvergoren)、% ……3.2
pH値 ……4.55
色、EBC ……7.6
炭酸含有量(Kohlensaeuregehalt)、% ……0.53
苦み単位(Bittereinheiten)、EBC ……33.0
泡持続性(Schaumhaltbarkeit)、R.U.C. ……130
グリコース(Glucose)、g/100ml ……0.2
果糖(Fructose)、g/100ml ……0.1
サツカロース(Saccharose)、g/100ml ……0.1
麦芽糖(Maltose)、g/100ml ……0.26
マルトトリオース(Maltotriose)、g/100ml ……0.5
・・・
ビシンジケトン(Vicinale Diketone)、mg/l ……0.11」(明細書第6欄22行~第8欄第22行)
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アの記載、特に実施例に着目して整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されていると認める。
「モルトから得たビールかすを静水中で煮沸し、ポンプで汲み換え冷却するステツプ1と、モルトひきくずを加えて原汁を得るステツプ2と、原汁を加熱し、モルトひきくずを加えて全原汁を得るステツプ3と、ホツプを添加して煮沸して麦芽汁を得るステツプ4と、麦芽汁を冷却して液底酵母を添加し、発酵及び貯蔵、殺菌を行うステツプ5及び6を行って製造された生ビールであって、アルコール0.46%、グリコース0.2g/100ml、サツカロース0.1g/100ml、麦芽糖0.26g/100ml、及びマルトトリオース0.5g/100ml、苦み単位33.0EBC、色7.6EBC、ビシンジケトン0.11mg/l、pH値4.55である、生ビール。」(以下、「甲1ビール発明」という。)
「モルトから得たビールかすを静水中で煮沸し、ポンプで汲み換え冷却するステツプ1と、モルトひきくずを加えて原汁を得るステツプ2と、原汁を加熱し、モルトひきくずを加えて全原汁を得るステツプ3と、ホツプを添加して煮沸して麦芽汁を得るステツプ4と、麦芽汁を冷却して液底酵母を添加し、発酵及び貯蔵、殺菌を行うステツプ5及び6を行う生ビールの製造方法であって、アルコール0.46%、グリコース0.2g/100ml、サツカロース0.1g/100ml、麦芽糖0.26g/100ml、及びマルトトリオース0.5g/100ml、苦み単位33.0EBC、色7.6EBC、ビシンジケトン0.11mg/l、pH値4.55である、生ビールの製造方法。」(以下、「甲1ビール製法発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
甲1ビール発明と本件特許発明1を対比する。
甲1ビール発明における、発酵原料として「モルト」(麦芽)のみを使用し、「ホツプを添加して」「液底酵母を添加し、発酵及び貯蔵、殺菌を行うステツプ5及び6」を経て製造された「アルコール0.46%」の「生ビール」は、使用麦芽比率は100質量%の発酵生ビールであるから、本件特許発明1における「原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、」「麦芽比率が10質量%以上」で「アルコール度数が3.6(v/v)%以下」の「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲1ビール発明は、グリコース(グルコース)、サツカロース(スクロース)、麦芽糖(マルトース)及びマルトトリオースを含むから、本件特許発明1の「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含」むことを満たす。
さらに、甲1ビール発明のpHは、4.55であるから、本件特許発明1の「pHが3.7以上であ」ることを満たす。
そして、甲1ビール発明が「水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料」でないことは明らかである。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料であり、
pHが3.7以上である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1では、「糖類(A)の合計含有量」が0.07(w/v)%以上以上2.00(w/v)%以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-2>
本件特許発明1では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-3>
本件特許発明1では、「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-4>
本件特許発明1では、「苦味価が32.0BUs以下」であるのに対して、甲1ビール発明では、「苦み単位33.0EBC」である点。
事案に鑑みて、相違点1-4について検討する。
甲1ビール発明は、「苦み単位33.0EBC」(技術常識を踏まえると、苦味価33.0BUsであると認められる)であるから、相違点1-4は実質的な相違点である。
また、甲第1号証及び他の証拠をみても、苦味価を32.0BUs以下に変更する動機付けとなる記載はない。
そして、本件特許発明1は、「良好な飲みごたえを有する、低アルコールのビールテイスト飲料」(【0004】)において、「苦味価は、・・・ビールテイスト飲料には不適な渋味を効果的に抑制した低アルコールのビールテイスト飲料とする観点から、・・・より好ましくは32.0BUs以下」(【0030】)とするものであり、甲第1号証及び他の証拠に記載された事項からみて、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
してみれば、甲1ビール発明において、苦味価を調整して相違点1-4に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
なお、特許異議申立人は、意見書において、(ア)甲1の記載にあたった当業者が甲1ビール発明を製造しようとする場合には、甲1に記載されていないホップの使用量や苦味価については、甲16及び18に記載されているような、ビールの一般的な苦味価である5~25BUs程度となるように適宜調整して実施することは、当業者が通常行う設計事項に過ぎない、(イ)甲1ビール発明において、苦味価を33.0から香味におおきな影響を与えない程度、例えば6程度低くして27.0程度とすることや、さらにより一般的なビールの苦み(すなわち、広く一般消費者に好まれる強さの苦み)となるように、10~25程度とすることは、当業者が通常行う設計事項に過ぎないと主張している。(意見書第17~19ページ)
しかしながら、ビールの一般的な苦味価が5~25BUs程度であり、苦味価が当業者により適宜設計し得る事項だとしても、不快な甘さを除くことを目指している甲1ビール発明において、苦味価をわざわざ減らす方向へ調製する動機付けがない。したがって、上記主張は採用できない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲
1ビール発明ではなく、甲1ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2~15について
本件特許発明2~15は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1ビール発明であるとはいえないし、また、甲1ビール発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明16及び17について
(ア)本件特許発明16について
甲1ビール製法発明と本件特許発明16を対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「原料として、少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であり、pHが3.7以上であり、発酵飲料であるビールテイスト飲料(ただし、前記ビールテイスト飲料は、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)を製造する方法であって、
酵母を用いた発酵工程を有すると共に、少なくとも下記工程(I)~(II)を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。
・工程(I):アルコール度数を3.6(v/v)%以下に調整する工程。
・工程(II):糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含ませる工程。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-5>
本件特許発明16では、ビールの「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲1ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-6>
本件特許発明16では、ビールの「苦味価が32.0BUs以下」であるのに対して、甲1ビール製法発明では、「苦み単位33.0EBC」である点。
<相違点1-7>
本件特許発明16では、「糖類(A)の合計含有量を0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下に調製する工程」を有するのに対して、甲1ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-8>
本件特許発明16では、「工程(III):リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下となるように調整する工程」を有するのに対して、甲1ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点1-6について検討する。
相違点1-6は、相違点1-4と同旨であり、相違点1-4についての判断は、上記アのとおりであるから、同様に判断される。
よって、本件特許発明16は甲1ビール製法発明ではなく、また、甲1ビール製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件特許発明17について
本件特許発明17と甲1ビール製法発明を対比する。
甲第1号証における甲1ビール製法発明は、甲第1号証の明細書第5欄7行~第12行の記載から、従来のビールの完全な代用製品となるように、味やその他の物理的および化学的特性を改善するものであるから、甲1ビール製法発明は、本件特許発明17の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」であるといえる。
その他の点については、上記(ア)で検討したとおりである。
そうすると、本件特許発明17と甲1ビール製法発明との間には、少なくとも、以下の相違点が存する。
<相違点1-9>
本件特許発明17では、ビールの「苦味価」は32.0BUs以下であるのに対して、甲1ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
相違点1-9について検討する。
相違点1-9は、相違点1-4と同旨であり、相違点1-4についての判断は上記アのとおりであるから、同様に判断される。
よって、本件特許発明17は甲1ビール製法発明ではなく、また、甲1ビール製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明18について
甲1ビール発明と本件特許発明18を対比する。
甲1ビール発明において、イソマルトース及びイソマルトトリオースの含有量は不明であるが、グリコース(グルコース)、サツカロース(スクロース)、麦芽糖(マルトース)及びマルトトリオースの合計含有量は、1.06(w/v)%(=(0.2g+0.1g+0.26g+0.5g)/100ml)であるから、甲1ビール発明における糖類(A)の合計含有量は、少なくとも1.06(w/v)%であり、本件特許発明18における「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であ」ることに相当する。
その他の対応関係は、上記アと同様である。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-10>
本件特許発明18では、「アルコール度数が2.8(v/v)%以上3.6(v/v)%以下」であるのに対して、甲1ビール発明では、「アルコール0.46%」である点。
<相違点1-11>
本件特許発明18では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-12>
本件特許発明18では、「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-13>
本件特許発明18では、「T-VDK」が0.300質量ppm以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
相違点1-10について検討する。
甲1ビール発明は「アルコール0.46%」であるから、相違点1-10は実質的な相違点である。
また、甲第1号証の特許請求の範囲1を参照すると、甲第1号証はアルコール分のないか又は少ないビールであって、アルコール含有量が最大でも1.5%のビールを想定したものであり、その他の記載を参照しても、アルコール含有量が1.5%超のビールについての検討は一切されていないから、甲1ビール発明のアルコール度数を2.8(v/v)%以上3.6(v/v)%以下に変更する動機付けとなる記載はない。また、甲第1号証及び他の証拠にも、甲1ビール発明においてアルコール度数を2.8(v/v)%以上3.6(v/v)%以下とする記載や示唆はない。
してみれば、甲1ビール発明において、アルコール度数を調整して相違点1-10に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
なお、特許異議申立人は、意見書において、
「甲1において、「アルコール含有量が1.5(v/v)%以下」は、「麦芽汁に似た味と不快な甘さの問題が生じるほど、発酵が抑えられている場合に得られる発酵液のアルコール含有量」の目安に過ぎず、甲1に記載されている製造方法は、同じ問題が生じるほど発酵が抑制されて製造されるビールでああれば、そのアルコール含有量が1.5(v/v)%超のビール、例えば、アルコール分が通常のビールの半分以下(3.0(v/v)%以下程度しかないビールにも適用できることが、甲1の記載から当業者には明らかである。
一方で、ビールテイスト飲料のアルコール分をどの程度にするかは、当業者が適宜決定する設計事項である。
したがって、甲1ビール発明において、アルコール分を1.5(v/v)%よりも高く、例えば、充分に発酵させて製造される通常のビールの半分程度である3.0(v/v)%程度とすることは、甲1の記載から当業者が容易になし得ることであり、訂正発明18は、甲1ビール発明から当業が容易に想到し得るものであり、進歩性がない。」(意見書第19~21ページ)
と主張している。
しかしながら、上述したとおり、甲第1号証に記載されているビールの製造法及びその製造方法で製造されるビールは、アルコール含有量は最大1.5%のビールを想定したものであるから、甲1ビール発明において、アルコール度数を0.46%から増やして1.5(v/v)%超とする動機付けがない。したがって、上記主張は採用できない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明18は甲1ビール発明ではなく、甲1ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明19について
甲1ビール発明と本件特許発明19を対比する。
甲1ビール発明は、「苦み単位33.0EBC」(=苦味価33.0BUs)であるから、本件特許発明19の「苦味価が1.0BUs以上40.0BUs以下である、」に相当する。
その他の対応関係は、上記アと同様である。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料であり、
pHが3.7以上であり、
苦味価が1.0BUs以上40.0BUs以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-14>
本件特許発明19では、「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下」であるのに対して、甲1ビール発明では、「アルコール0.46%」である点。
<相違点1-15>
本件特許発明19では、「糖類(A)の合計含有量」が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-16>
本件特許発明19では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-17>
本件特許発明19では、「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
相違点1-14について検討する。
相違点1-14は、相違点1-10と同旨であり、相違点1-10についての判断は上記エのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明19は甲1ビール発明ではなく、また、甲1ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明19は甲1ビール発明ではなく、甲1ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明20について
甲1ビール発明と本件特許発明20を対比する。
甲1ビール発明における麦芽糖(マルトース)及びマルトトリオースの合計含有量は0.76(w/v)%(=(0.26g+0.5g)/100ml)であるから、本件特許発明20の「マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下であ」ることに相当する。
その他の対応関係は、上記ア、エ、オと同様である。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下であり、
pHが3.7以上であり、
苦味価が1.0BUs以上40.0BUs以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-18>
本件特許発明20では、「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下」であるのに対して、甲1ビール発明では、「アルコール0.46%」である点。
<相違点1-19>
本件特許発明20では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-20>
本件特許発明20では、「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
相違点1-18について検討する。
相違点1-18は、相違点1-10と同旨であり、相違点1-10についての判断は上記エのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明20は甲1ビール発明ではなく、また、甲1ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明21について
甲1ビール発明と本件特許発明21を対比すると、上記ア、エ、カと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下であり、
pHが3.7以上である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-21>
本件特許発明21では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-22>
本件特許発明21では、「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-23>
本件特許発明21では、ビールの「苦味価が32.0BUs以下」であるのに対して、甲1ビール発明では、「苦み単位33.0EBC」である点。
事案に鑑みて、相違点1-23について検討する。
相違点1-23は、相違点1-4と同旨であり、相違点1-4についての判断は、上記アのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明21は甲1ビール発明ではなく、甲1ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明22について
甲1ビール発明と本件特許発明22を対比する。
甲1ビール発明は、「色7.6EBC」であるから、ただし書き中の「色度が1.0EBC以下である飲料」に該当しないことは明らかである。
その他の対応関係は、上記ア、エと同様である。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料、色度が1.0EBC以下である飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-24>
本件特許発明22では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-25>
本件特許発明22では、「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-26>
本件特許発明22では、ただし書きで除く飲料として、「原料として、ビールの煮汁から生じるビールかす原汁中のモルトビールかすを用いた発酵ビール、低温接触発酵ビールとレギュラービールとを50:50の体積比で混合してなる蒸留前のビール、及び、ラシャンセア属酵母を用いた発酵工程を経て得られる発酵ビール」が特定されているのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点1-26について検討する。
甲1ビール発明は、原料としてビールの煮汁から生じるビールかす原汁中のモルトビールかすを用いた発酵ビールであるから、本件特許発明22のただし書きで除く飲料に該当する。よって、相違点1-26は実質的な相違点である。
また、甲1ビール発明において、「モルトから得たビールかす」を用いることは、通常のビールの味を付与するという甲第1号証の課題解決のために不可欠な要件であるから、甲第1号証及び他の証拠をみても、甲1ビール発明の原料をビールの煮汁から生じるビールかす原汁中のモルトビールかす以外のものに変更する動機付けはない。
してみれば、甲1ビール発明において、原料を変更して相違点1-26に係る本件特許発明22の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
なお、特許異議申立人は、意見書において、(ア)「原料として、ビールの煮汁から生じるビールかす原汁中のビールかすを用いた発酵ビール」は、「発酵ビール」を製法で特定するものであり、よって、当該発酵ビールを「除く」とした訂正後の本件特許発明22は、いわゆるプロダクトバイプロセスクレームであり、(イ)「原料として、ビールの煮汁から生じるビールかす原汁中のビールかすを用いた発酵ビール」と「原料として、麦芽を用いた発酵ビール」は、物としては区別ができないから、「原料として、ビールの煮汁から生じるビールかす原汁中のビールかすを用いた発酵ビール」を除くことは、除いた後にどのような「発酵ビール」が技術的範囲に含まれるのか明確でないし、(ウ)原料として麦芽を用いている訂正前の本件特許発明1のビールテイスト飲料と、訂正後の本件特許発明22とのビールテイスト飲料は、物として区別ができないから、訂正後の本件特許発明22は新規性及び進歩性を有していないと主張している。(意見書第22~23ページ)
しかしながら、「原料として、ビールの煮汁から生じるビールかす原汁中のビールかすを用いた発酵ビール」という記載自体は明確であり、また、甲第1号証の第4欄30~34行には「モルトビールかすエキスは極めて泡立ちが盛んであり、このようにして製造されたアルコール分のないかまたはアルコール分の少ないビールの泡持続性を著しく改善する。」と記載され、第8欄26~30行に「醗酵できないエキスの一部をモルトビールかすから得るようにしたので、泡立ちが盛んであり、味の上でもモルトビールの味を得、アルコール含有のない又は含有量の極めて少ないビールを提供することができた。」と記載されているから、「原料として、ビールの煮汁から生じるビールかす原汁中のビールかすを用いた発酵ビール」と「原料として、麦芽を用いた発酵ビール」は、物としても区別できるものと認められる。したがって、上記主張は採用できない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明22は甲1ビール発明ではなく、甲1ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明23について
甲1ビール発明と本件特許発明23を対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-27>
本件特許発明23では、「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下」であるのに対して、甲1ビール発明では、「アルコール0.46%」である点。
<相違点1-28>
本件特許発明23では、「糖類(A)の合計含有量」が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-29>
本件特許発明23では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-30>
本件特許発明23では、「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-31>
本件特許発明23では、「原麦汁エキス濃度」は7.0質量%であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
相違点1-27について検討する。
相違点1-27は、相違点1-10と同旨であり、相違点1-10についての判断は上記エのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明23は甲1ビール発明ではなく、甲1ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
コ 本件特許発明24について
甲1ビール発明と本件特許発明24を対比すると、上記ア、エ、カと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が、0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-32>
本件特許発明24では、「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下」であるのに対して、甲1ビール発明では、「アルコール0.46%」である点。
<相違点1-33>
本件特許発明24では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-34>
本件特許発明24では、「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-35>
本件特許発明24では、「原麦汁エキス濃度」は7.0質量%であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
相違点1-32について検討する。
相違点1-32は、相違点1-10と同旨であり、相違点1-10についての判断は上記エのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明24は甲1ビール発明ではなく、甲1ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
サ 本件特許発明25について
甲1ビール発明と本件特許発明25を対比すると、上記ア、エと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000末満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-36>
本件特許発明25では、「アルコール度数が0.5(v/v)%以上2.1(v/v)%以下」であるのに対して、甲1ビール発明では、「アルコール0.46%」である点。
<相違点1-37>
本件特許発明25では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-38>
本件特許発明25では、「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲1ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点1-39>
本件特許発明25では、「T-VDKの含有量が0.100質量ppm以下」であるのに対して、甲1ビール発明では、「ビシンジケトン0.11mg/l」である点。
事案に鑑みて、相違点1-36及び相違点1-39について検討する。
甲1ビール発明は、「アルコール0.46%」であるから、相違点1-36は実質的な相違点であり、また、甲1ビール発明は、「ビシンジケトン0.11mg/l」(=T-VDK0.11質量ppm)であるから、相違点1-39も実質的な相違点である。
ここで、甲第1号証においては、アルコール含有量を最大1.5(v/v)%まで上げることができる旨の記載があるものの、乙第1号証(ビールの基本技術、財団法人 日本醸造協会、平成22年、第64ページ)に記載のとおり、アルコール含有量を上げるためにアルコール発酵を進めると、ビシンジケトンの含有量も上昇することが知られている。そうすると、甲1ビール発明のアルコール含有量を1.5(v/v)%まで上昇させると、ビシンジケトンの含有量も0.11mg/lから上昇するため、0.100質量ppm以下に調整することはできない。
したがって、甲1ビール発明において、アルコール度数を調整して、相違点1-36及び相違点1-39に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得ることとは言えない。
なお、特許異議申立人は、意見書において、(ア)ビール原料の麦芽は天然物であり、含有する成分や組成は品種によって様々であり、同品種であっても違いがあることは知られている事項であるから、製造時に一般的に許容されるばらつきを考慮すれば、甲1ビール発明よりもアルコール度数がやや高く、T-VDK含量がやや低い程度の差しかない訂正後の本件特許発明25のビールテイスト飲料は、甲1の記載等から当業者が容易に製造できるものであり、(イ)甲1の実施例の記載に基づいてビールテイスト飲料を製造する際に、甲1発明の特徴点ではない貯酒工程の条件を適宜調整するという周知技術を適用して、アルコール分を0.5%以上1.5%以下として、T-VDK濃度をより低下させることは、甲1の記載及び技術常識に基づいて当業者が容易になし得ることに過ぎないと主張している。(意見書第24~25ページ)
しかしながら、甲第11号証(第14ページ 3.1欄)を参照すると、甲1ビール発明におけるT-VDK濃度は既に閾値を充分下回るレベルであるところ、そのようなビールのT-VDK濃度をさらに低めつつ、アルコール度数は高くなるように調整することを動機付ける記載は、甲第1号証及び他の証拠にない。したがって、上記主張は採用できない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明25は甲1ビール発明ではなく、甲1ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由1についてのまとめ
本件特許発明1~25は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1~25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由1によって本件特許の請求項1~25に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
(1)甲第2号証の記載事項等
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「低アルコールビール」に関し、次の記載がある。
「【0003】
ビールは、通常は大麦などの穀物から作製されるが、小麦またはモロコシを含め、これらに限定されない他の穀物の種類も使用することができる。ビールは、通常は次の基本的ステップ、すなわち、穀類と水の混合物をマッシングして、マッシュを生成するステップ、麦汁および使用済み穀類中のマッシュを分離するステップ、麦汁を煮沸して、煮沸した麦汁を生成するステップ、煮沸した麦汁を生酵母(サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)またはサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)など)で発酵させて、発酵した麦汁を生成するステップ、発酵した麦汁を1つまたは複数の別のプロセスステップ(例えば、成熟および濾過)にかけて、ビールを生成するステップ、およびビールを密封容器、例えば瓶、缶または樽にパッケージングするステップを含むプロセスによって生成される。」
「【0005】
麦汁を煮沸して、滅菌し、タンパク質を沈殿させ、濃縮する。場合によって、ホップを添加し、苦味およびフレーバーを加える。この混合物を、沈殿物の除去後に発酵に供する。発酵によって、エタノールおよび二酸化炭素中で発酵性糖の変換が起こり、また様々な新規フレーバー化合物の形成も起こり、それらのフレーバー化合物のうちには、エステルがある。同時に、ビールの発酵により、アルデヒドの量が低減し、それにより、得られたビールの過剰な麦汁フレーバーを防止する。外観および味を最適化するために、発酵後にビールを濾過および/または貯蔵することができる。」
「【0011】
既存の低またはゼロアルコールビールは、一般に飲用としての適性の欠如という難点がある。大半の人は、わずかグラス1または2杯を飲用した後に味で飽和状態になり、これは、通常のアルコール含有ビールの飲用と対照をなす。味による飽和状態は、一般に、低アルコール含有量と相まってアルデヒドレベルが高いために過度に強烈な麦汁フレーバーによって引き起こされる強すぎるフレーバー、および/または高すぎる甘味によって引き起こされる。さらに、既存の低またはゼロアルコールビールは、バランスがとれていないことが多い。本発明は、これらの欠点を克服する方法を提供する。」
「【0017】
本文脈において、ビールは、広義の意味で理解されるものとし、すなわち、ビールは、いかなる種類のビールも指してよく、エール、ポーター、シュタウト、ラガーおよびボックビールが挙げられるが、これらに限定されない。ビールは、好ましくはモルトベースのビールであり、すなわち、(とりわけ)モルトから調製された麦汁の発酵により調製されるビールである。好ましくは、ビールはラガービールであり、下面発酵酵母を使用して7~15℃で発酵させ、その後低温で貯蔵による熟成を行うことによって得られるビールである。ラガービールとしては、例えばピルスナーが挙げられる。最も好ましくは、本明細書に記載されるビールはピルスナーである。ピルスナーは、ペールラガービールである。本発明の目的は、レギュラービールの味および飲用としての適性を有するNAビールを提供することである。」
「【0025】
制限発酵ビールは、好ましくは糖不足麦汁ビール、酵母制限ビール、停止発酵ビール、または低温接触発酵ビールである。・・・
【0026】
低温接触発酵は、当技術分野においてよく知られており、当業者は、当技術分野において知られているまたは本明細書に開示されているいかなる手段によっても低温接触発酵ビールを得ることができる。低温接触発酵ビールを得るための例示的な方法は、例えば以上に引用したBranyikらの文献に記載されている。あるいは、低温接触発酵ビールを商品として得ることができる。」
「実施例1
【0091】
制限発酵ビールを含む様々な媒体の蒸留
一般に知られている方法によって、低温接触発酵ビールおよびレギュラーラガービールを得た。レギュラービールは、商品として得ることができるラガービールであった。当技術分野において知られているように、麦汁を比較例として得た。」
「【0093】
制限発酵ビールとして低温接触発酵ビールを含む媒体を蒸留に供した。蒸留した媒体は、麦汁(比較)、低温接触発酵ビール(CC)、ならびに低温接触発酵ビールおよびレギュラービール(LB)の様々な体積比の混合物であった。様々なアルデヒド、エステルおよび糖の量を、蒸留の前後に決定した。結果を表1に示す。」
「【0095】
【表1】
[図:0001425729000001.jpg]
[図:0001425729000002.jpg]
」
イ 甲第2号証に記載された発明
上記アの記載、特に実施例1の表1における「50/50 LB/CC」の例に着目して整理すると、甲第2号証には次の発明が記載されていると認める。
「低温接触発酵ビールおよびレギュラービールを50:50の体積比で混合された蒸留前のビール(50/50 LB/CC)であって、エタノール体積2.73(体積%)、グルコース0.30g/100ml、フルクトース0.13g/100ml、スクロース0.00g/100ml、マルトース1.30g/100ml、マルトトリオース0.42g/100ml、全糖2.16g/100mlであるビール。」(以下、「甲2ビール発明」という。)
「低温接触発酵ビールおよびレギュラービールを50:50の体積比で混合された蒸留前のビール(50/50 LB/CC)の製造方法であって、エタノール体積2.73体積%、グルコース0.30g/100ml、フルクトース0.13g/100ml、スクロース0.00g/100ml、マルトース1.30g/100ml、マルトトリオース0.42g/100ml、全糖2.16g/100mlであるビールの製造方法。」(以下、「甲2ビール製法発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
甲2ビール発明と本件特許発明1を対比する。
甲2ビール発明は、「低温接触発酵ビールおよびレギュラービールを50:50の体積比で混合された蒸留前のビール」であるため、本件特許発明1における「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲2ビール発明は、表1によれば、アルコール度数は2.73(v/v)%で、グルコース、スクロース、マルトース、及びマルトトリオースを含むから、本件特許発明1における「アルコール度数が3.6(v/v)%以下」であり、「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含」むことを満たす。
さらに、甲2ビール発明が「水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料」でないことは明らかである。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-1>
本件特許発明1では、「糖類(A)の合計含有量」が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-2>
本件特許発明1では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-3>
本件特許発明1では、原料として少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-4>
本件特許発明1では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-5>
本件特許発明1では、「pH」が3.7以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-6>
本件特許発明1では、「苦味価」が32.0BUs以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
相違点2-1について検討する。
甲2ビール発明において、イソマルトース及びイソマルトトリオースの含有量が不明であるものの、グルコース、スクロース、マルトース、及びマルトトリオースの合計含有量は2.02(w/v)%(=(0.30g+0.00g+1.30g+0.42g)/100ml)であり、糖類(A)の合計含有量は少なくとも2.02(w/v)%であるから、相違点2-1は実質的な相違点である。
また、甲2ビール発明は、甲第2号証に記載されたビールを製造するための蒸留前の媒体であるから、中間体である蒸留前の媒体を取り出して、その媒体の糖類含有量を調整することの動機付けはない。また、甲第2号証及び他の証拠にも、糖類(A)の合計含有量を調整して0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下とする記載や示唆はない。
してみれば、甲2ビール発明において、糖類(A)の合計含有量を調整して相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
なお、特許異議申立人は、意見書において、甲2ビール発明のビールは、本件明細書におけるビールテイスト飲料であるから、他のビールテイスト飲料に係る発明と同様に、普遍的な課題を解決するために周知技術を適用することは当業者が容易になし得ることであり、また、一般的な課題である低糖質化のために、甲2ビール発明に対して、甲第19~21号証に記載されているような、原料として公知の低糖質ビールを使用したり、ビール用糖化酵素を用いたりするなどの周知技術を適用することは当業者が容易になし得るものであると主張している。(意見書第28~29ページ)
しかしながら、甲第2号証の【0010】~【0015】及び【0058】~【0060】に記載されているとおり、甲2ビール発明は、フレーバーが強すぎず、甘い味が低減され、麦汁フレーバーが低下したビールを提供するために、アルデヒドと糖との比を好ましいものにするものであるところ、糖類の合計含有量のみに着目して調整しようとする動機付けがない。よって、上記主張は採用できない。
以上のことから、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2ビール発明ではなく、甲2ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2~15について
本件特許発明2~15は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるであるから、本件特許発明1と同様に、甲2ビール発明であるとはいえないし、また、甲2ビール発明並びに甲第2号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明16及び17について
(ア)本件特許発明16について
甲2ビール製法発明と本件特許発明16を対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「発酵飲料であるビールテイスト飲料(ただし、前記ビールテイスト飲料は、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)を製造する方法であって、
酵母を用いた発酵工程を有すると共に、少なくとも下記工程(I)~(II)を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。
・工程(I):アルコール度数を3.6(v/v)%以下に調整する工程。
・工程(II):糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含ませる工程。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-7>
本件特許発明16では、ビールの「原料として少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であ」るのに対して、甲2ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-8>
本件特許発明16では、ビールの「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲2ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-9>
本件特許発明16では、ビールの「pH」が3.7以上であるのに対して、甲2ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-10>
本件特許発明16では、ビールの「苦味価」が32.0BUs以下であるのに対して、甲2ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-11>
本件特許発明16では、「糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下に調製する工程」を有するのに対して、甲2ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-12>
本件特許発明16では、「工程(III):リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下となるように調整する工程」を有するのに対して、甲2ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点2-11について検討する。
相違点2-11は、相違点2-1と同旨であり、相違点2-1についての判断は、上記アのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明16は甲2ビール製法発明ではなく、また、甲2ビール製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件特許発明17について
本件特許発明17と甲2ビール製法発明を対比する。
甲2ビール製法発明は、甲第2号証の段落【0011】等の記載から、強すぎるフレーバー(香味)を改善するための方法であるから、甲2ビール製法発明は、本件特許発明17の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」であるといえる。
その他の点については、上記(ア)で検討したとおりである。
そうすると、本件特許発明17と甲2ビール製法発明との間には、少なくとも、以下の相違点が存する。
<相違点2-13>
本件特許発明17では、「糖類(A)の合計含有量を0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下に調製する操作」を有するのに対して、甲2ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
相違点2-13について検討する。
相違点2-13は、相違点2-1と同旨であり、相違点2-1についての判断は上記アのとおりであるから、同様に判断される。
よって、本件特許発明17は甲2ビール製法発明ではなく、また、甲2ビール製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明18について
甲2ビール発明と本件特許発明18を対比する。
甲2ビール発明のグルコース、スクロース、マルトース、及びマルトトリオースの合計含有量は、上記アに示したとおり、2.02(w/v)%であるから、本件特許発明18における「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であ」ることに相当する。
その他の対応関係は、上記アと同様である。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-14>
本件特許発明18では、「アルコール度数が2.8(v/v)%以上3.6(v/v)%以下」であるのに対して、甲2ビール発明では、「エタノール体積2.73(体積%)」である点。
<相違点2-15>
本件特許発明18では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-16>
本件特許発明18では、原料として少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-17>
本件特許発明18では、「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-18>
本件特許発明18では、「T-VDKの含有量」が0.300質量ppm以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
相違点2-14について検討する。
甲2ビール発明は、「エタノール体積2.73(体積%)」であるから、相違点2-14は実質的な相違点である。
また、甲2ビール発明は、エタノール含有量が0~1.0体積%の「ゼロまたは低アルコールビール」を調整するための蒸留前のビールであるから(請求項1、【0018】)、甲2ビール発明のエタノール含有量を高くする方向へ調整する動機付けはなく、甲第2号証及び他の証拠をみても、アルコール度数を2.8(v/v)%以上3.6(v/v)%以下に変更する記載も示唆もない。
してみれば、甲2ビール発明において、アルコール度数を調整して相違点2-14に係る本件特許発明18の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
なお、この点について、特許異議申立人は、意見書において、甲2ビール発明は、本件明細書におけるビールテイスト飲料であるから、他のビールテイスト飲料に係る発明と同様に、周知技術を適用することは当業者が容易になし得ることであり、また、ビール原料の麦芽は天然物であり、含有する成分や組成は品種によって様々であり、同品種であっても違いがあることは知られている事項であるから、製造時に一般的に許容されるばらつきを考慮すれば、甲2ビール発明よりもアルコール度数がやや高い程度の差しかない訂正後の本件特許発明18のビールテイスト飲料は、甲2の実施例の記載等から当業者が容易に製造できるものであると主張している。(意見書第29~30ページ)
しかしながら、上述したとおり、エタノール含有量が0~1.0体積%のビールを調整するための蒸留前のビールである甲2ビール発明において、エタノール含有量を調整する動機付けはなく、また、特許異議申立人は、実際に甲2の実施例の記載に基づいた追試を行う等して、アルコール度数が2.8(v/v)%以上3.6(v/v)%以下となることの証拠を示すものでもない。したがって、上記主張は採用できない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明18は甲2ビール発明ではなく、甲2ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明19について
甲2ビール発明と本件特許発明19を対比する。
甲2ビール発明は、「エタノール体積2.73(体積%)」であるから、本件特許発明19の「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下」を満たすものである。
その他の対応関係は、上記アと同様である。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-19>
本件特許発明19では、「糖類(A)の合計含有量」が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-20>
本件特許発明19では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-21>
本件特許発明19では、原料として少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-22>
本件特許発明19では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-23>
本件特許発明19では、「pH」が3.7以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-24>
本件特許発明19では、「苦味価」が1.0BUs以上40.0BUs以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
相違点2-19について検討する。
相違点2-19は、相違点2-1と同旨であり、相違点2-1についての判断は上記アのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明19は甲2ビール発明ではなく、また、甲2ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明20について
甲2ビール発明と本件特許発明20を対比する。
甲2ビール発明は、マルトース及びマルトトリオースを含むものであるから、本件特許発明20の「マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含」むことを満たす。
その他の対応関係は、上記ア、エ、オと同様の対応関係と同様である。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含む、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-25>
本件特許発明20のビールテイスト飲料では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-26>
本件特許発明20では、原料として少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-27>
本件特許発明20では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-28>
本件特許発明20では、「糖類(A1)の合計含有量」が0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-29>
本件特許発明20では、「pH」が3.7以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-30>
本件特許発明20では、「苦味価」が1.0BUs以上40.0BUs以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点2-28について検討する。
甲2ビール発明の、マルトース及びマルトトリオースの合計含有量は1.72(w/v)%(=(1.30g+0.42g)/100)であるから、相違点2-28は実質的な相違点である。
また、甲2ビール発明は、甲第2号証に記載されたビールを製造するための蒸留前の媒体であるから、中間体である蒸留前の媒体を取り出して、その媒体中のマルトース及びマルトトリオースの含有量を調整することの動機付けはなく、また、甲第2号証及び他の証拠にも、マルトース及びマルトトリオースの合計含有量を調整する記載や示唆はない。
してみれば、甲2ビール発明において、糖類(A1)の合計含有量を調整して相違点2-28に係る本件特許発明20の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
なお、特許異議申立人は、意見書において、甲2ビール発明のビールは、本件明細書におけるビールテイスト飲料であるから、他のビールテイスト飲料に係る発明と同様に、普遍的な課題を解決するために周知技術を適用することは当業者が容易になし得ることであり、また、一般的な課題である低糖質化のために、甲2ビール発明において、甲第19~21号証に記載されているような、原料として公知の低糖質ビールを使用したり、ビール用糖化酵素を用いたりするなどの周知技術を適用することは当業者が容易になし得るものであり、さらに、ビール原料の麦芽は天然物であり、含有する成分や組成は品種によって様々であることは知られている事項であるから、製造時に一般的に許容されるばらつきを考慮すれば、甲2ビール発明よりもよりも糖類(A1)の合計含有量がやや小さい程度の差しかない訂正後の本件特許発明20のビールテイスト飲料は、甲2の実施例の記載等から当業者が容易に製造できるものであると主張している。(意見書第32~33ページ)
しかしながら、上記アで述べたとおり、甲2ビール発明は、フレーバーが強すぎず、甘い味が低減され、麦汁フレーバーが低下したビールを提供するために、アルデヒドと糖との比を好ましいものにするものであるところ、マルトース及びマルトトリオースの合計含有量のみに着目して低くする動機付けがないし、また、特許異議申立人は、甲2の実施例の記載に基づいた追試を行う等して、糖類(A1)の合計含有量が0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下となることの証拠を示すものでもない。したがって、上記主張は採用できない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明20は甲2ビール発明ではなく、甲2ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明21について
甲2ビール発明と本件特許発明21を対比する。
対応関係は、上記ア、エ、カと同様である。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含む、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-31>
本件特許発明21では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-32>
本件特許発明21では、原料として少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-33>
本件特許発明21では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-34>
本件特許発明21では、「糖類(A1)の合計含有量」が0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-35>
本件特許発明21では、「pH」が3.7以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-36>
本件特許発明21では、「苦味価」が32.0BUs以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点2-34について検討する。
相違点2-34は、相違点2-28と同旨であり、相違点2-28についての判断は、上記カのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明21は甲2ビール発明ではなく、甲2ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明22について
甲2ビール発明と本件特許発明22を対比すると、上記ア、エと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-37>
本件特許発明22では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-38>
本件特許発明22では、原料として少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-39>
本件特許発明22では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-40>
本件特許発明22では、ただし書きで除く飲料として、「色度が1.0EBC以下である飲料、原料として、ビールの煮汁から生じるビールかす原汁中のモルトビールかすを用いた発酵ビール、低温接触発酵ビールとレギュラービールとを50:50の体積比で混合してなる蒸留前のビール、及び、ラシャンセア属酵母を用いた発酵工程を経て得られる発酵ビール」が特定されているのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点2-40について検討する。
甲2ビール発明は、低温接触発酵ビールとレギュラービールとを50:50の体積比で混合してなる蒸留前のビールであるから、本件特許発明22のただし書きで除く飲料に該当する。よって、相違点2-40は実質的な相違点である。
また、甲第2号証及び他の証拠をみても、甲2ビール発明を低温接触発酵ビールとレギュラービールとを50:50の体積比で混合してなる蒸留前のビール以外のものに変更する動機付けとなる記載はない。
してみれば、甲2ビール発明において、媒体を変更して相違点2-40に係る本件特許発明22の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
なお、特許異議申立人は、意見書において、「低温接触発酵ビール」は「低温接触発酵法により製造されたビール」であり、「ビール」を製法で特定するものであり、当該ビールを「除く」とした訂正後の本件特許発明22は、いわゆるプロダクトバイプロセスクレームであり、また、使用する麦芽の種類や比率、副原料の使用の有無や種類、発酵条件等により「低温接触発酵ビールとレギュラービールの50:50の体積比で混合してなる蒸留前ビール」と「レギュラービール」との区別ができず、「低温接触発酵ビールとレギュラービールの50:50の体積比で混合してなる蒸留前ビール」が具体的にどのようなビールであるのか不明確であるし、一般的な「レギュラービール」と区別ができないから、訂正後の本件特許発明22は新規性及び進歩性を有していないと主張している。(意見書第35~37ページ)
しかしながら、天然由来の原料による成分の違いなどにより多少のばらつきはあるものの、低温接触発酵ビールとレギュラービールとは、甲第2号証の実施例の表1を参照しても認められるとおり、各成分の含有量や組成比に明確な違いがあり、物として区別ができるものであるし、「低温接触発酵ビールとレギュラービールとを50:50の体積比で混合してなる蒸留前ビール」という記載自体は明確である。したがって、上記主張は採用できない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明22は甲2ビール発明ではなく、甲2ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明23について
甲2ビール発明と本件特許発明23を対比すると、上記ア、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-41>
本件特許発明23では、「糖類(A)の合計含有量」が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-42>
本件特許発明23では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-43>
本件特許発明23では、原料として少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-44>
本件特許発明23では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-45>
本件特許発明23では、「原麦汁エキス濃度」が7.0質量%以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
相違点2-41について検討する。
相違点2-41は、相違点2-1と同旨であり、相違点2-1についての判断は上記アのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明23は甲2ビール発明ではなく、また、甲2ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
コ 本件特許発明24について
甲2ビール発明と本件特許発明24を対比すると、上記ア、エ、オ、カと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含む、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-46>
本件特許発明24では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-47>
本件特許発明24では、原料として少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-48>
本件特許発明24では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-49>
本件特許発明24では、「糖類(A1)の合計含有量」が0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-50>
本件特許発明24では、「原麦汁エキス濃度」が7.0質量%以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点2-49について検討する。
相違点2-49は、相違点2-28と同旨であり、相違点2-28についての判断は、上記カのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明24は甲2ビール発明ではなく、甲2ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
サ 本件特許発明25について
甲2ビール発明と本件特許発明25を対比すると、上記ア、エと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000末満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-51>
本件特許発明25では、「アルコール度数が0.5(v/v)%以上2.1(v/v)%以下」であるのに対して、甲2ビール発明では、「エタノール体積2.73(体積%)」である点。
<相違点2-52>
本件特許発明25では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-53>
本件特許発明25では、原料として少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-54>
本件特許発明25では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点2-55>
本件特許発明25では、「T-VDKの含有量」が0.100質量ppm以下であるのに対して、甲2ビール発明には、そのような特定がされていない点。
相違点2-51について検討する。
甲2ビール発明は、エタノール含有量が2.73体積%であるから、相違点2-51は実質的な相違点である。
また、甲2ビール発明は、ビールを製造するためにレギュラービールと低温接触発酵ビールとの混合比を調製して所望のアルデヒド、エステル及び糖の量を決定した蒸留前の媒体であるところ、当該媒体を取り出して、その媒体中のアルコール度数をさらに変更することの動機付けはなく、また、甲第2号証及び他の証拠をみても、甲2ビール発明のアルコール度数を0.5(v/v)%以上2.1(v/v)%以下に変更する動機付けとなる記載も示唆もない。
してみれば、甲2ビール発明において、アルコール度数を調整して相違点2-51に係る本件特許発明25の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
なお、特許異議申立人は、意見書において、甲2ビール発明は、ビールテイスト飲料のアルコール分をどの程度にするかは、当業者が適宜決定する設計事項であるから、甲2ビール発明において、アルコール分をやや少なく、例えば、0.5~2.1(v/v)%程度とすることは、甲2の記載から当業者が容易になし得ることであると主張している。(意見書第40ページ)
しかしながら、上述したとおり、甲第2号証及び他の証拠をみても、甲2ビール発明のアルコール度数を0.5(v/v)%以上2.1(v/v)%以下に変更する動機付けとなる記載も示唆もない。したがって、上記主張は採用できない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明25は甲2ビール発明ではなく、また、甲2ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由2についてのまとめ
本件特許発明1~10、12~25は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1~25は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1~25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由2によって本件特許の請求項1~25に係る特許を取り消すことはできない。
3 取消理由3(甲第3号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
(1) 甲第3号証の記載事項等
ア 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、L.chancea fermentati Strain KBIを用いた低アルコールビールの製造及び得られた低アルコールビールの分析結果に関し、次の記載がある。なお、甲第3号証は外国語文献であるため、以下、訳文のみ摘記する。
「要旨
醸造研究において、非サッカロミセス酵母はビールの特性や風味に影響を与える可能性があるため、近年注目を集めている。ラシャンセア属酵母は、アルコール発酵中に多量の乳酸を産生するという珍しい形質を持っている。この特性は、醸造目的、特に低アルコールビールの製造に利用できる可能性がある。本研究では、Lachancea fermentati株KBI 12.1の低比重麦汁での低アルコールビール製造の可能性を調査した。KBI 12.1は、糖利用、ホップ感受性、フェノールオフフレーバー(POF)生成、増殖性能について特性評価を行った。希釈麦汁(6.6°P)でのラボスケール発酵試験を実施し、ビール酵母Saccharomyces cerevisiae WLP001と比較した。発酵は、乳酸とエタノールの生産、pHの低下、糖分の消費をモニターした。最終ビール中のアミノ酸と遊離アミノ窒素(FAN)含量を測定し、二次代謝産物を定量した。Lachancea fermentati KBI 12.1はマルトトリオースを利用できないことが示された。この菌株はPOF産生を示さず、ホップ感受性は軽微で、優れた増殖性を示した。アミノ酸とFANの消費量はビール酵母の消費量に比べ非常に少なかった。KBI 12.1で発酵させた最終ビールでは、乳酸濃度が1.3 g/Lに達し、ビールに酸味を与えた。官能分析では、ビールはさらにフルーティーな特徴を持つと評された。結論として、Lachancea fermentati KBI 12.1は醸造目的に適した菌株であり、ノンアルコール及び低アルコールビール醸造に関して有望な特性を持つことが証明された。」(第157ページ、ABSTRACT)
「限られた発酵や非従来型酵母によって生産されたノンアルコールビールは、通常、望ましいpHの低下が欠如しており、これが微生物による腐敗に対する高い感受性やビールの活性の低下につながる可能性があります。そのため、プロセス中に追加の酸性化が必要です。乳酸を生成する酵母の応用は、追加の酸性化を不要にする可能性があります。
本研究では、コンブチャ培養から分離されたラチャンセア・フェルメンティ(Lachancea fermentati)株KBI 12.1の低アルコールビール醸造への応用を調査しました。フェノリックオフフレーバー(POF)生成、ホップ由来のイソα酸に対する感受性、フロック形成挙動、糖の利用、増殖性能などの重要な醸造特性を調査した後、実験室条件下で発酵試験を行いました。発酵は、限られた糖と栄養素の利用可能性を持つ基質での性能を調査するために、希釈麦汁(6.6°P)で行われました。発酵中には、抽出物とpHの低下、細胞数、糖の利用、乳酸生成がモニタリングされました。最終的なビールは、遊離アミノ窒素(FAN)、アミノ酸、二次代謝物について分析されました。また、訓練を受けたパネルによる官能試験も実施されました。」(第157ページ右欄最終行~第158行左欄最終行)
「麦汁製造
発酵試験用の麦汁は,マッシュ煮沸釜,ロイター槽,ワールプールを組み合わせた 60L パイロットスケールの醸造プラント(FOODING Nahrungsmitteltechnik GmbH, Stuttgart, Germany)で製造した。Weyermann Pilsner Maltを2本ローラーミル("Derby"、Engl Maschinen社、Schwebheim、ドイツ)で0.8mmのギャップサイズで粉砕した。7キログラムの麦芽を40Lの醸造用水とともに50℃でマッシングした。以下のマッシング処方を採用した: 50℃で40分、62℃で20分、72℃で20分、78℃で5分。マッシュをロータータンクに送り込み、5Lずつ3回のスパージングを行いながら澱引きを行った。回収した麦汁(1.039°P)を45分間煮沸した。煮沸開始時に25グラムのマグナムホップペレット(10.5%イソ-α酸)を添加し、IBUは10.4と計算した。ホットトルーブの沈殿物とホップ残渣はワールプールで20分間休ませながら取り除いた。麦汁はポンプで煮沸容器に戻され、最終比重6.6°Pエキスに補正され、100℃に加熱された後、無菌の5L容器に充填された。」(第159ページ右欄第27~45行)
「発酵
発酵試験は、エアロックを備えた2L滅菌デュランガラス瓶(Lennox Laboratory Supplies Ltd, Dublin, Ireland)で行った。ボトルには1600mLの麦汁を満たした。発酵温度は25℃。発酵は、2日間連続してエキスの変化が測定できなくなるまで行った。増殖麦汁から発酵麦汁への糖のキャリーオーバーがないように、ピッチング用の酵母細胞は4800gで5分間遠心分離して洗浄し、滅菌水に再懸濁した。ピッチング量は30mL、ピッチング速度は8×106 cells/mLとした。」(第159ページ右欄第46行~第160ページ左欄5行)
「L. fermentati KBI 12.1は最初の24時間でグルコースとフルクトースの単糖を代謝した(図5)。マルトースとスクロースの濃度は徐々に低下し、発酵6日後には完全に枯渇した。わずかな変動を除けば、マルトトリオース濃度は発酵期間中一定で、基質利用試験から予想されるように、酵母によって利用されないままであった。麦汁の比重が低いこともあり、7日後の最終エタノール濃度は2.21%(v/v)であった。乳酸濃度も徐々に上昇し、6日後には最大1.38 g/Lとなった。発酵7日後の最終乳酸濃度は1.30 g/Lであった(図5)。乳酸以外の有機酸は検出されなかった。L. fermentati KBI 12.1と同様に、単糖であるグルコースとフルクトースは、S. cerevisiae WLP001による発酵の24時間後にはすでに枯渇していた(図6)。L. fermentati KBI 12.1と比較すると、マルトースとスクロースのより顕著な減少が観察された。マルトースの完全な枯渇は発酵4日後に達した。マルトリオースは3日後に枯渇した。発酵性糖類の減少が早かったことを反映して、エタノール濃度は急速に上昇し、発酵5日後には最終濃度2.61%(v/v)に達した(図6)。L. fermentati KBI 12.1による発酵とは対照的に、乳酸はいかなる時点でも検出されなかった。」(第161ページ右欄第26行~第162ページ左欄1行)
「表3 発酵麦汁の原料組成
[図:0001425729000003.jpg]
」(第163ページ左欄 表3)
「
[図:0001425729000004.jpg]
図5 L. fermentati KBI 12.1による発酵中の糖消費量とエタノール及び乳酸生産量。マルトースの値はスクロース濃度を含む。」(第163ページ)
「表4 最終ビールの発酵副産物の分析最終ビールの分析
[図:0001425729000005.jpg]
FAN=遊離アミノ酸窒素。 ANOVA 有意性コード:*** P<001.** P<0.01. * P<0.05」(第163ページ右欄 表4)
「発酵試験中、L. fermentati KBI 12.1は、醸造酵母と比較してわずかな遅れで麦汁を迅速に発酵させることがわかりました。発酵中、この株は大量の乳酸を生成し、これはノンアルコールビールや低アルコールビールの生産に活用できる特性です。特定の残留抽出物含量や乳酸含量に基づいて発酵を停止することで、L. fermentati KBI 12.1を用いて低アルコールビールを生産する方法が導入できるかもしれません。乳酸からの酸味は、残留麦汁糖からの甘さを相殺することができます。実際、ジュースブレンドや飲料の生産中には、糖と酸の比率(「ブリックス/酸比」)が望ましいとされています。おおよそ10-15の比率が意図されています。この値を超えると飲料は甘すぎる傾向があり、逆にこの値を下回ると飲料は酸っぱすぎる傾向があります。本研究では、発酵48~72時間の間に適切な比率が達成されると考えられます(1.15-1.62% ABV)。Sheppardらは、ラチャンセア・テルモトレランス株が、18℃で発酵させた14°Pの麦汁において、発酵の初期段階(2日目)で大量の乳酸(2.4g/L)を生成し、エタノール(0.2% ABV)はほとんど生成しなかったと報告しています。今後のL. fermentati KBI 12.1に関する試験では、乳酸生成の温度依存性と抽出物依存性を調査する必要があります。Sheppardらの研究と同様の発酵性能を持つL. fermentati KBI 12.1は、高いアルコール濃度に達することなく、最適なブリックス/酸比を得るための有意な乳酸濃度を達成できる可能性があります。ただし、適切な比率は飲料のマトリックスや存在する糖と酸の種類に依存します。さらに、乳酸生成による低pHは、ノンアルコールビールにおいて微生物の安定性を確保し、活性を与えるために望ましい追加の酸性化の必要性を不要にします。」(第166ページ右欄 17~50行)
イ 甲第3号証に記載された発明
上記アの記載、特に発酵試験の記載をまとめると、甲第3号証には次の発明が記載されているものと認める。
「7キログラムの麦芽を40Lの醸造用水とともに50℃でマッシングした後、澱引きを行って回収した麦汁を45分間煮沸し、煮沸開始時に25グラムのマグナムホップペレット(10.5%イソ-α酸)を添加する工程と、ホットトルーブの沈殿物とホップ残渣を取り除いた後に麦汁にL.fermentati KBI 12.1による発酵工程を施して製造されたビールにおいて、発酵7日後の最終ビールのエタノール濃度が2.21%(v/v)、グルコース濃度0g/L、マルトース濃度0g/L、マルトトリオース濃度5g/L、pH3.61±0.05、エキス濃度6.63±0.01である、ビール。」(以下、「甲3ビール発明」という。)
「7キログラムの麦芽を40Lの醸造用水とともに50℃でマッシングした後、澱引きを行って回収した麦汁を45分間煮沸し、煮沸開始時に25グラムのマグナムホップペレット(10.5%イソ-α酸)を添加する工程と、ホットトルーブの沈殿物とホップ残渣を取り除いた後に麦汁にL.fermentati KBI 12.1による発酵工程とを有するビールを製造方法において、発酵7日後の最終ビールのエタノール濃度が2.21%(v/v)、グルコース濃度0g/L、マルトース濃度0g/L、マルトトリオース濃度5g/L、pH3.61±0.05、エキス濃度6.63±0.01である、ビールの製造方法。」(以下、「甲3ビール製法発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
甲3ビール発明と本件特許発明1を対比する。
甲3ビール発明における、発酵原料として「麦芽」のみを使用し、「マグナムホップペレット(10.5%イソ-α酸)を添加する工程と、」「L.fermentati KBI 12.1による発酵工程を施して製造されたビール」は、使用麦芽比率は100質量%の発酵ビールであるから、本件特許発明1における「原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、」「麦芽比率が10質量%以上」の「発酵飲料である、ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲3ビール発明は、エタノール濃度2.21(% v/v)であり、グルコース、マルトース、マルトトリオースを含むものであるから、本件特許発明1における「アルコール度数が3.6(v/v)%以下」であり、「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含」むことを満たす。
さらに、甲3ビール発明が「水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料」でないことは明らかである。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料である、ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明1では、「糖類(A)の合計含有量」が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-2>
本件特許発明1では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-3>
本件特許発明1では、「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-4>
本件特許発明1では、「pHが3.7以上」であるのに対して、甲3ビール発明では、「pH3.61±0.05」である点。
<相違点3-5>
本件特許発明1では、「苦味価」が32.0BUs以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点3-4について検討する。
甲3ビール発明のpHは3.61±0.05であり、最大でも3.66であるから、相違点3-4は実質的な相違点である。
また、甲第3号証には、ラシャンセア属酵母を用いた発酵を行うことで、通常よりも多量の乳酸が生成することが記載されており、pHが3.61±0.05程度になることは生成した乳酸によるもので、ラシャンセア属酵母を用いたアルコール発酵を行ったことに他ならないところ、甲3ビール発明のpHを3.7以上に調整するとすれば、乳酸の生成量を減少させるために、ラシャンセア属酵母の働きを抑制することになる。しかしながら、甲第3号証及び他の証拠をみても、甲3ビール発明のpHを3.7以上に調整すること、あるいは、ラシャンセア属酵母の働きを抑制することの動機付けとなる記載も示唆もない。
してみれば、甲3ビール発明において、pHを調整して相違点3-4に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
なお、特許異議申立人は、意見書において、甲3には、ラシャンセア属酵母を、ビール酵母のようにビール醸造に使用できることが記載されており(記載事項3-1)、得られた発酵液に対して、ビールテイスト飲料の分野における周知技術を適用することは、当業者にとって容易になし得ることであり、一般的なビールの香味に近づけるため、ビールの一般的な添加剤であるpH調整剤を適量添加してラシャンセア属酵母の発酵液のpHを3.9~4.4程度に調整することは、周知技術の適用に過ぎず、当業者が容易になし得ることであると主張している。(意見書第41~42ページ)
しかしながら、甲第3号証には、乳酸生成による低pHは、ノンアルコールビールにおいて微生物の安定性を確保し、活性を与えるために望ましい追加の酸性化の必要性を不要にすることが記載されているとおり(第166ページ右欄 46~50行)、甲3ビール発明はラシャンセア属酵母を用いて低pHとすることで、微生物による腐敗に対する高い感受性やビールの活性の低下を抑制し、ノンアルコールビールや低アルコールビールの生産に活用できる特性を得るためのものと認められるところ、pHを3.7以上とすることはこの課題とは異なる方向であり、そのように調整する動機付けとはない。したがって、上記主張は採用できない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3ビール発明ではなく、甲3ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2~15について
本件特許発明2~15は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるであるから、本件特許発明1と同様に、甲3ビール発明であるとはいえないし、また、甲3ビール発明並びに甲第3号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明16及び17について
(ア)本件特許発明16について
甲2ビール製法発明と本件特許発明16を対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「原料として、少なくとも麦芽及びホップを使用し、麦芽比率が10質量%以上であり、発酵飲料であるビールテイスト飲料(ただし、前記ビールテイスト飲料は、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)を製造する方法であって、
酵母を用いた発酵工程を有すると共に、少なくとも下記工程(I)~(II)を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。
・工程(I):アルコール度数を3.6(v/v)%以下に調整する工程。
・工程(II):糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含ませる工程。」
また、両者は以下の点で一応相違する。
<相違点3-6>
本件特許発明16では、ビールの「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲3ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-7>
本件特許発明16では、「pHが3.7以上」であるのに対して、甲3ビール発明では、「pH3.61±0.05」である点。
<相違点3-8>
本件特許発明16では、ビールの「苦味価」が32.0BUs以下であるのに対して、甲3ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-9>
本件特許発明16では、「糖類(A)の合計含有量を0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下に調製する工程」を有するのに対して、甲3ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-10>
本件特許発明16では、「工程(III):リナロールを含有し、当該リナロールの含有量が140μg/L以下となるように調整する工程」を有するのに対して、甲3ビール製法発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点3-7について検討する。
相違点3-7は、相違点3-4と同旨であり、相違点3-4についての判断は、上記アのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明16は甲3ビール製法発明ではなく、また、甲3ビール製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件特許発明17について
本件特許発明17と甲3ビール製法発明を対比する。
甲3ビール製法発明は、甲第3号証の第157ページのABSTRACT等の記載から、KBI 12.1で発酵させることによって、さらにフルーティーな特徴を持つビールを製造するための方法であるから、甲3ビール製法発明は、本件特許発明17の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」であるといえる。
その他の点については、上記(ア)で検討したとおりである。
そうすると、本件特許発明17と甲3ビール製法発明との間には、少なくとも、以下の相違点が存する。
<相違点3-11>
本件特許発明17では、「pHが3.7以上」であるのに対して、甲3ビール製法発明では、「pH3.61±0.05」である点。
相違点3-11について検討する。
相違点3-11は、相違点3-4と同旨であり、相違点3-4についての判断は上記アのとおりであるから、同様に判断される。
よって、本件特許発明17は甲3ビール製法発明ではなく、また、甲3ビール製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明18について
甲3ビール発明と本件特許発明18を対比する。
甲3ビール発明には、イソマルトースとイソマルトトリオ―スの含有量についての特定はないものの、グルコース、マルトース、マルトトリオースの合計含有量は、0.50(w/v)%(=(0.00g+0.00g+0.50g)/100ml)であるから、本件特許発明18における「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であ」ることに相当する。
その他の対応関係は、上記アと同様である。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-12>
本件特許発明18では、「アルコール度数が2.8(v/v)%以上3.6(v/v)%以下」であるのに対して、甲3ビール発明では、「エタノール濃度2.21(% v/v)」である点。
<相違点3-13>
本件特許発明18では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-14>
本件特許発明18では、「イソα酸の含有量」は0.1質量ppm超であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-15>
本件特許発明18では、「T-VDKの含有量」が0.300質量ppmであるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
相違点3-12について検討する。
甲3ビール発明は、「エタノール濃度2.21(% v/v)」であるから、相違点3-12は実質的な相違点である。
また、甲第3号証は、非サッカロミセス酵母であるラシャンセア属酵母を用いた低アルコールビールの醸造に関する文献であり、第163ページのFigure 5を参照すると、ラシャンセア属酵母を用いた発酵は、発酵を進めてもエタノール生成量は2.5%v/vを超えることが無いことが理解できる。すなわち、ラシャンセア属酵母を用いて製造される甲3ビール発明に対して、エタノール含有量を2.8(v/v)%以上に調製することはできない。
してみれば、甲3ビール発明において、アルコール度数を調整して相違点3-12に係る本件特許発明18の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明18は甲3ビール発明ではなく、甲3ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明19について
甲3ビール発明と本件特許発明19を対比する。
甲3ビール発明は、「エタノール濃度2.21(% v/v)」であるから、本件特許発明19の「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下」を満たすものである。
その他の対応関係は、上記アと同様である。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-16>
本件特許発明19では、「糖類(A)の合計含有量」が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-17>
本件特許発明19では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-18>
本件特許発明19では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-19>
本件特許発明19では、「pHが3.7以上」であるのに対して、甲3ビール発明では、「pH3.61±0.05」である点。
<相違点3-20>
本件特許発明19では、「苦味価」が1.0BUs以上40.0BUs以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点3-19について検討する。
相違点3-19は、相違点3-4と同旨であり、相違点3-4についての判断は上記アのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明19は甲3ビール発明ではなく、また、甲3ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明20について
甲3ビール発明と本件特許発明20を対比する。
甲3ビール発明の、マルトース及びマルトトリオースの合計含有量は0.50(w/v)%(=(0.00g+0.50g)/100ml)であるから、本件特許発明20の「マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量」が0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下であ」ることを満たす。
その他の対応関係は、上記ア、エ、オと同様の対応関係と同様である。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量」が0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-21>
本件特許発明20では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-22>
本件特許発明20では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-23>
本件特許発明20では、「pHが3.7以上」であるのに対して、甲3ビール発明では、「pH3.61±0.05」である点。
<相違点3-24>
本件特許発明20では、「苦味価」が1.0BUs以上40.0BUs以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点3-23について検討する。
相違点3-23は、相違点3-4と同旨であり、相違点3-4についての判断は上記アのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明20は甲3ビール発明ではなく、甲3ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明21について
甲3ビール発明と本件特許発明21を対比する。
対応関係は、上記ア、エ、カと同様である。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が、0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-25>
本件特許発明21では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-26>
本件特許発明21では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-27>
本件特許発明21では、「pHが3.7以上」であるのに対して、甲3ビール発明では、「pH3.61±0.05」である点。
<相違点3-28>
本件特許発明21では、「苦味価」が32.0BUs以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点3-27について検討する。
相違点3-27は、相違点3-4と同旨であり、相違点3-4についての判断は上記アのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明21は甲3ビール発明ではなく、甲3ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明22について
甲3ビール発明と本件特許発明22を対比すると、上記ア、エと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-29>
本件特許発明22では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-30>
本件特許発明22では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-31>
本件特許発明22では、ただし書きで除く飲料として、「色度が1.0EBC以下である飲料、原料として、ビールの煮汁から生じるビールかす原汁中のモルトビールかすを用いた発酵ビール、低温接触発酵ビールとレギュラービールとを50:50の体積比で混合してなる蒸留前のビール、及び、ラシャンセア属酵母を用いた発酵工程を経て得られる発酵ビール」が特定されているのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
事案に鑑みて、相違点3-31について検討する。
甲3ビール発明は、L.fermentati KBI 12.1等のラシャンセア属酵母を用いた発酵工程を経て製造されることを特徴とするものであり、ラシャンセア属酵母を用いた発酵工程において、乳酸とエタノールを生成し、pHを低下させる特性を生かし、酸味及びフルーティーな香味を有するビールを製造するものであるから、本件特許発明22のただし書きで除く飲料に該当する。よって、相違点3-31は実質的な相違点であるし、また、甲第3号証及び他の証拠を参照しても、甲3ビール発明に他の酵母を用いる動機付けはない。
してみれば、甲3ビール発明において、ラシャンセア属酵母を用いない発酵ビールとして、相違点3-31に係る本件特許発明22の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明22は甲3ビール発明ではなく、甲3ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明23について
甲3ビール発明と本件特許発明23を対比すると、上記ア、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-32>
本件特許発明23では、「糖類(A)の合計含有量」が0.07(w/v)%以上2.00(w/v)%以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-33>
本件特許発明23では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-34>
本件特許発明23では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-35>
本件特許発明23では、「原麦汁エキス濃度が、7.0質量%以上」であるのに対して、甲3ビール発明では、「エキス濃度6.63±0.01」である点。
事案に鑑みて、相違点3-35について検討する。
甲3ビール発明は「エキス濃度6.63±0.01」であり、最大エキス濃度でも6.64であるから、相違点3-35は実質的な相違点である。
また、甲第3号証では、ラシャンセア属酵母を用いたアルコール発酵を経て、ノンアルコール及び低アルコールビールの製造を想定しているところ、低アルコールビールを製造する際に原麦汁エキス濃度を上げることは、酵母が資化する糖分の増加につながり、アルコール生成の増大につながるから、原麦汁エキス濃度を高く調整しようとする動機付けはない。
してみれば、甲3ビール発明において、エキス度数を調整して相違点3-35に係る本件特許発明23の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
なお、特許異議申立人は、意見書において、
(ア)ビール原料の麦芽は天然物であり、含有する成分や組成は品種によって様々であり、同品種であっても違いがあることは知られている事項であるから、製造時に一般的に許容されるばらつきを考慮すれば、甲3ビール発明よりも原麦汁エキス濃度がやや高い程度の差しかない訂正後の本件特許発明23のビールテイスト飲料は進歩性がなく、
(イ)ラシャンセア属酵母がノンアルコール又は低アルコールビールの製造に適していることが記載されてはいるものの、甲3に記載されている実験結果である2.21(v/v)%よりアルコール度数の高い「低アルコールビール」の製造を阻害するような記載はなされておらず、甲3の記載から、開示されている実験結果より僅かでも原麦汁エキス濃度を高くすることは容易であり、
(ウ)甲3には、原麦汁エキス濃度がより高い条件でラシャンセア属酵母を発酵させることにより、口当たりとコクに良い影響を与えるグリセロールの含有量がより高いビールが得られることが記載されており、ラシャンセア属酵母を用いたビール醸造を、原麦汁エキス濃度が6.6°Pよりも大きい条件で行ってもよいことが示唆されていて、
(エ)ラシャンセア属酵母を用いたビール醸造において、よりグリセロール濃度が高いビールを得るために、原麦汁エキス濃度を高めること、結果として、アルコール濃度が2.21(v/v)%よりも高いビールを製造することは当業者にとって容易であると主張している。(意見書第44~46ページ)
しかしながら、原麦汁エキス濃度を上げることは、アルコール濃度を増加させるのみならず、糖分をも増加させる蓋然性が高く、そうすると、本件特許発明23におけるアルコール濃度や糖類(A)の合計含有量までをも満たすようにして、原麦汁エキス濃度を7.0質量%以上に調製することの動機付けは認められない。したがって、上記主張は採用できない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明23は甲3ビール発明ではなく、甲3ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
コ 本件特許発明24について
甲3ビール発明と本件特許発明24を対比すると、上記ア、エ、オ、カと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「アルコール度数が1.6(v/v)%以上3.6(v/v)%以下のビールテイスト飲料であって、
糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
原料として、少なくとも麦芽およびホップを使用し、
麦芽比率が10質量%以上であり、
発酵飲料であり、
マルトース及びマルトトリオースから選ばれる糖類(A1)を1種以上含み、糖類(A1)の合計含有量が、0.05(w/v)%以上1.70(w/v)%以下である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000未満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-36>
本件特許発明24では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-37>
本件特許発明24では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-38>
本件特許発明24では、「原麦汁エキス濃度が、7.0質量%以上」であるのに対して、甲3ビール発明では、「エキス濃度6.63±0.01」である点。
事案に鑑みて、相違点3-38について検討する。
相違点3-38は、相違点3-35と同旨であり、相違点3-35についての判断は、上記ケのとおりであるから、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明24は甲3ビール発明ではなく、甲3ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
サ 本件特許発明25について
甲3ビール発明と本件特許発明25を対比すると、上記ア、エと同様の対応関係を有する。
そうすると、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「糖類として、グルコース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、及びイソマルトトリオースから選ばれる糖類(A)を1種以上含み、糖類(A)の合計含有量が0.07(w/v)%以上であり、
発酵飲料である、
ビールテイスト飲料(ただし、水溶性食物繊維を添加して調製した飲料、及び、重量平均分子量10,000末満の大豆ペプチドを原料とした飲料を除く)。」
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-39>
本件特許発明25では、「アルコール度数が0.5(v/v)%以上2.1(v/v)%以下」であるのに対して、甲3ビール発明では、「エタノール濃度2.21(% v/v)」である点。
<相違点3-40>
本件特許発明25では、「リナロールの含有量」が140μg/L以下であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-41>
本件特許発明25では、「イソα酸の含有量」が0.1質量ppm超であるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
<相違点3-42>
本件特許発明25では、「T-VDKの含有量」が0.100質量ppm以下であるであるのに対して、甲3ビール発明には、そのような特定がされていない点。
相違点3-39について検討する。
甲3ビール発明は、「エタノール濃度2.21(% v/v)」であるから、相違点3-39は実質的な相違点である。
また、上記ケでも述べたとおり、アルコール濃度を調整しようとした際に、糖類の含有量など他の条件の数値にも影響が及ぶ可能性があるところ、甲第3号証及び他の証拠をみても、甲3ビール発明のアルコール度数を0.5(v/v)%以上2.1(v/v)%以下に変更する動機付けとなる記載も示唆もない。
してみれば、甲3ビール発明において、アルコール度数を調整して相違点3-39に係る本件特許発明25の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明25は甲2ビール発明ではなく、また、甲2ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由3についてのまとめ
本件特許発明1~25は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1~25に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由3によって本件特許の請求項1~25に係る特許を取り消すことはできない。
第6 結語
上記第5のとおり、本件特許の請求項1~25に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~25に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700222