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特許異議申立

2024-700474

アンダーフィル材、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法

審判番号
2024-700474
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-124053
登録番号
7455017
請求日
2024年05月20日
審決日
2024年12月05日
公報発行日
2025年01月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社レゾナック
  • 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
  • 【異議申立人】松本 文彦
審判長/審判官
  • 審判長 近野 光知
  • 審判官 北澤 健一
  • 審判官 細井 龍史
分類
P1651.121-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L) / P1651.536-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7455017号発明「アンダーフィル材、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7455017号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7455017号(以下、「本件特許」という。)は、平成28年10月14日に出願された特願2016-202715号の一部を令和2年7月20日に新たな出願とした特願2020-124053号に係る特許であって、令和6年3月14日に特許権の設定登録(請求項数14)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、令和6年5月20日に、本件特許の請求項1~14に係る特許に対して、特許異議申立人である松本文彦(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審による令和6年6月10日付けの手続補正指令書(方式)の通知に対し、申立人から令和6年6月14日に、手続補正書(方式)が提出された。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~14に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明14」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。また、本件の願書に添付された明細書を「本件明細書」という。 「【請求項1】 (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填剤及び(I)酸化防止剤を含み、 硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であり、 前記(A)エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合が、65質量%以上であり、 前記(A)エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合が、0質量%であり、 前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びアルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含み、 前記(B)硬化剤が、芳香族アミン化合物であるアンダーフィル材。 【請求項2】 硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度が、60℃~150℃である、請求項1に記載のアンダーフィル材。 【請求項3】 硬化物としたときの、DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~10GPaである、請求項1又は請求項2に記載のアンダーフィル材。 【請求項4】 さらに(D)可撓化剤を含有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。 【請求項5】 さらに(E)界面活性剤を含有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。 【請求項6】 さらに(F)イオントラップ剤を含有する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。 【請求項7】 さらに(G)硬化促進剤を含有する、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。 【請求項8】 さらに(H)カップリング剤を含有する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。 【請求項9】 さらに(J)有機溶剤を含有し、前記有機溶剤の含有率が10質量%以下である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。 【請求項10】 配線基板と、 前記配線基板上に配置され、前記配線基板と接続部を介して電気的に接続される電子部品と、 少なくとも、前記配線基板と前記電子部品との接続部を封止する請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のアンダーフィル材の硬化物と、 を備える電子部品装置。 【請求項11】 前記接続部が鉛を含まない、請求項10に記載の電子部品装置。 【請求項12】 前記接続部が銅を含む、請求項10又は請求項11に記載の電子部品装置。 【請求項13】 電子部品と配線基板とが接続部を介して電気的に接続される電子部品装置の製造方法であって、 前記電子部品における前記配線基板と対向する側の面及び前記配線基板における前記電子部品と対向する側の面の少なくとも一方の面に、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のアンダーフィル材を供給する供給工程と、 前記電子部品と前記配線基板とを前記接続部を介して接続し、かつ前記アンダーフィル材を硬化する接続工程と、を有する電子部品装置の製造方法。 【請求項14】 電子部品と配線基板とが接続部を介して電気的に接続される電子部品装置の製造方法であって、 接続された前記電子部品と前記配線基板との隙間に請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のアンダーフィル材を充填する充填工程と、 前記アンダーフィル材を硬化させる硬化工程と、を有する電子部品装置の製造方法。」 第3 特許異議申立書に記載された申立理由の概要及び証拠方法 令和6年6月14日提出の手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載された申立理由は、以下のとおりである。 1 申立理由1-1(甲第1号証を主引例とする進歩性) 請求項1~14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証に記載された発明及び技術常識並びに周知技術(甲第2号証の1~甲第5号証、甲第7号証)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 2 申立理由1-2(甲第5号証を主引例とする進歩性) 請求項1~14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第5号証に記載された発明及び技術常識並びに周知技術(甲第1号証~甲第4号証の3、甲第6号証の1~甲第7号証)に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 3 申立理由2(サポート要件) 請求項1~14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 その具体的理由は以下のとおりである。 本件発明1~14の実施例は実施例2、5のみであるところ、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びアルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を所定の割合で組み合わせて用いた例のみが示されているに過ぎない実施例2、5に基づいて、何らビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の割合、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の種類が特定されていない本件発明1~14に係る発明の範囲まで、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。 4 申立理由3(実施可能要件) 請求項1~14に係る特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 その具体的理由は以下のとおりである。 ビスフェノール型エポキシ樹脂及びアルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を所定の割合で組み合わせて用いた実施例2、5のみから、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を配合する割合、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の種類(特に、本件特許の実施例で用いたアルキルジオールは不明である)について、どのようにすれば、本件明細書の実施例2や実施例5と同様の耐温度サイクル性や良好な物性を示す液状樹脂組成物を得ることができるのか、合理的に推測することは困難であり、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等が必要である。 5 申立理由4(明確性) 請求項9~14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 その具体的理由は以下のとおりである。 本件発明9は、「(J)有機溶剤を含有し、」及び「前記有機溶剤の含有率が10質量%以下である」という特定事項を有するところ、「(J)有機溶剤を含有し、」という必須成分である旨の特定があるにもかかわらず、「前記有機溶剤の含有率が10質量%以下である」と0質量%である場合を含む特定があり、これらは矛盾しているから、本件発明9~14は明確でない。 6 証拠方法 申立人は、証拠として、以下の文献等を提出する。 甲第1号証 :特開2012-162585号公報 甲第2号証の1:特開2015-081306号公報 甲第2号証の2:特開2004-210901号公報 甲第2号証の3:特開2009-091510号公報 甲第2号証の4:特開2003-073453号公報 甲第3号証の1:特開2015-189848号公報 甲第3号証の2:特開2010-037352号公報 甲第3号証の3:特開2010-254951号公報 甲第3号証の4:特開2013-151642号公報 甲第4号証の1:特開2007-182561号公報 甲第4号証の2:特開2015-189847号公報 甲第4号証の3:特開2013-181161号公報 甲第5号証 :特開2015-232146号公報 甲第6号証の1:特開2017-066242号公報 甲第6号証の2:特開2012-193284号公報 甲第6号証の3:特開2013-151700号公報 甲第7号証 :入門エポキシ樹脂、新高分子文庫25、第1版、p.23-68,107-138 甲第8号証 :特許第7455017号公報 以下、甲各号証の番号に応じて、甲第1号証を「甲1」などという。 第4 当審の判断 申立人がした申立ての理由によっては、本件発明1~14に係る特許を取り消すことはできない。 その理由は以下のとおりである。 1 申立理由1-1(甲1を主引例とする進歩性) (1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明 ア 甲1には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 (A)エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、(C)フィラー、(D)コアシェルゴム、および、(E)反応性希釈剤よりなり、 前記(E)反応性希釈剤が、1分子中に2以上のグリシジル基を含む化合物からなり、 前記(B)アミン系硬化剤の含有量が、前記(A)エポキシ樹脂および前記(E)反応性希釈剤のエポキシ当量に対して、0.5~1.5当量であることを特徴とする半導体樹脂封止材。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、アンダーフィルとして用いられる半導体樹脂封止材に関する。 【背景技術】 【0002】 電子機器の小型化、軽量化、高性能化に伴い半導体の実装形態がワイヤーボンド型からフリップチップ型へと変化してきている。 フリップチップ型の半導体装置は、バンプ電極を介して基板上の電極部と半導体素子とが接続された構造を持っている。この構造の半導体装置は、温度サイクル等の熱付加が加わった際に、エポキシ樹脂等の有機材料製の基板と、半導体素子と、の熱膨張係数の差によってバンプ電極に応力がかかり、バンプ電極にクラック等の不良が発生することが問題となっている。この不良発生を抑制するためにアンダーフィルと呼ばれる半導体樹脂封止材を用いて、半導体素子と基板との間のギャップを封止し、両者を互いに固定することによって、耐サーマルサイクル性を向上させることが広く行われている。 アンダーフィルとして用いられる液状封止材は、注入性、接着性、硬化性、保存安定性等に優れ、かつ、ボイドが発生しないことが求められる。また、液状封止材によって封止した部位が、耐湿性、耐サーマルサイクル性、耐リフロー、耐クラック性、耐反り等に優れることが求められる。 【0003】 上述した要求特性を満足するため、アンダーフィルとして用いられる半導体樹脂封止材は、エポキシ樹脂を主剤とし、該エポキシ樹脂の硬化剤、および、フィラーを通常含有する。ここで、上記の成分に加えて、硬化促進剤を含有する場合もある。 【0004】 エポキシ樹脂の硬化剤には、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤などがあるが、これらの中でもアミン系硬化剤が、種類も多く、また、半導体素子のパッシベーション膜(例えば、ポリイミドなど)との密着性に優れることから、アンダーフィルとして使用した際に耐吸湿リフロー性に優れるので主流になりつつある。 【0005】 アンダーフィルによって、半導体素子と基板との間のギャップを封止するうえで解消すべき問題点として、フィレットクラックの問題がある。 フィレットクラックの問題を解消するため、アンダーフィルにゴム成分に添加することが一般的に知られている。しかしながら、アンダーフィルにゴム成分を添加した場合、粘度が上昇し、アンダーフィルの注入性が低下する。 樹脂組成物の粘度を下げるには、希釈剤の使用が有効な方法である。 このような目的で用いられる希釈剤は、非反応性のものと反応性のものとに分けることができる。非反応性の希釈剤としては、トルエン、MEKなどの有機溶剤が用いられるが、これらの有機溶剤は沸点が低いため、アンダーフィルの粘度を下げるのに非反応性の希釈剤を使用すると、ボイド発生の原因となるおそれがある。 一方、反応性の希釈剤は分子内にエポキシ基を持つことにより、硬化剤と反応して硬化物の一部となるため、このような問題はおこらず、物性低下は比較的少ないものが多い。反応性希釈剤の代表的なものとしては、各種のモノエポキシ化合物や多価アルコールのグリシジルエーテル化合物があり、特許文献1にも例示されている。 しかしながら、これらの反応性希釈剤を使用した場合、樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)や強靱性が著しく低下する問題がある。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は上記した従来技術の問題点を解決するため、アンダーフィルとして使用した際に、注入性に優れ、フィレットクラックの発生および進展、ならびに、ボイドの発生が抑制された半導体樹脂封止材を提供することを目的とする。」 「【発明の効果】 【0016】 本発明の半導体樹脂封止材は、常温(25℃)での粘度が300Pa・s以下と低く、アンダーフィルとして使用した際に注入性が良好である。 本発明の半導体樹脂封止材は、(D)成分、すなわち、コアシェルゴムの含有による低弾性率化によって、アンダーフィルとして使用した際に、フィレット部に生じる応力が低減され、フィレットクラックの発生を抑制することができる。 また、フィレットクラックが発生した場合には、(D)成分として含有させたコアシェルゴムが応力緩和剤として作用し、フィレットクラックの進展を抑制する。 また、本発明の半導体樹脂封止材は、(E)成分として含有させた1分子中に2以上のグリシジル基を含む化合物からなる反応性希釈剤の作用により、硬化後のアンダーフィルの強靱性が向上し、フィレットクラックが発生した場合であっても、その進展を抑制することができる。 また、本発明の半導体樹脂封止材は、アンダーフィルとして使用した際に、密着性が良好であり、吸湿リフロー試験時に剥離が生じることがなく、信頼性が高い。」 「【0018】 (A)成分:エポキシ樹脂 (A)成分のエポキシ樹脂は、本発明の半導体樹脂封止材の主剤をなす成分である。 (A)成分のエポキシ樹脂は、常温で液状であることが好ましいが、常温で固体のものであっても、他の液状のエポキシ樹脂又は希釈剤により希釈し、液状を示すようにして用いることができる。 具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、エーテル系又はポリエーテル系エポキシ樹脂、オキシラン環含有ポリブタジエン、アミノフェノール型エポキシ樹脂、シリコーンエポキシコポリマー樹脂等が例示される。 【0019】 特に、液状であるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の平均分子量が約400以下のもの;p-グリシジルオキシフェニルジメチルトリスビスフェノールAジグリシジルエーテルのような分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂の平均分子量が約570以下のもの;ビニル(3,4-シクロヘキセン)ジオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルカルボン酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、アジピン酸ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)5,1-スピロ(3,4-エポキシシクロヘキシル)-m-ジオキサンのような脂環式エポキシ樹脂;3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジグリシジルオキシビフェニルのようなビフェニル型エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、3-メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルのようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ならびに1,3-ジグリシジル-5-メチル-5-エチルヒダントインのようなヒダントイン型エポキシ樹脂;ナフタレン環含有エポキシ樹脂が例示される。また、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのようなシリコーン骨格をもつエポキシ樹脂も使用することができる。さらに、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシド化合物等も例示される。 【0020】 常温で固体ないし超高粘性のエポキシ樹脂を併用することも可能であり、そのようなエポキシ樹脂として、高分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等が例示される。これらは、常温で液体であるエポキシ樹脂と組み合わせて、流動性を調節して使用することができる。 【0021】 常温で固体ないし超高粘性であるエポキシ樹脂を用いる場合、低粘度のエポキシ樹脂、例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシド化合物等と組み合わせることが好ましい。 【0022】 希釈剤を用いる場合、非反応性希釈剤及び反応性希釈剤のいずれをも使用することができるが、反応性希釈剤が好ましい。本明細書において、反応性希釈剤は、1個のエポキシ基を有する、常温で比較的低粘度の化合物をいうこととし、目的に応じて、エポキシ基以外に、他の重合性官能基、たとえばビニル、アリル等のアルケニル基;又はアクリロイル、メタクリロイル等の不飽和カルボン酸残基を有していてもよい。このような反応性希釈剤としては、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-s-ブチルフェニルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、α-ピネンオキシドのようなモノエポキシド化合物;アリルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジル、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサンのような他の官能基を有するモノエポキシド化合物等が例示される。 【0023】 (A)成分としてのエポキシ樹脂は、単独でも、2種以上併用してもよい。エポキシ樹脂自体が、常温で液状であることが好ましい。中でも好ましくは、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、液状アミノフェノール型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂である。さらに好ましくは液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、p-アミノフェノール型液状エポキシ樹脂、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサンである。」 「【0035】 (E)成分:反応性希釈剤 本発明の半導体樹脂封止材において、(E)成分としての反応性希釈剤は、半導体樹脂封止材の粘度を下げる目的で含有させる。 [背景技術]の欄で述べたように、反応性希釈剤は分子内にエポキシ基を持つことにより、硬化剤と反応して硬化物の一部となるものであり、各種のモノエポキシ化合物や多価アルコールのグリシジルエーテル化合物が、反応性希釈剤として従来使用されていたが、これら硬化剤との反応に寄与する官能基(エポキシ基、グリシジル基)が1分子中に1つのみの化合物を反応性希釈剤として使用した場合、硬化時に三次元的な架橋を形成することができないため、樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)や強靱性が著しく低下する問題があった。 本発明の半導体樹脂封止材では、(E)成分の反応性希釈剤として、1分子中に2以上のグリシジル基を含む化合物からなるものを用いることで、硬化時に三次元的に架橋を形成する。これにより、半導体樹脂封止材をアンダーフィルとして用いた際に、硬化時におけるガラス転移温度(Tg)や強靱性の低下が抑制される。 【0036】 (E)反応性希釈剤として用いる1分子中に2以上のグリシジル基を含む化合物としては、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(以下、「PPGE」と略す。)等が例示される。 【0037】 本発明の半導体樹脂封止材において、(E)成分としての反応性希釈剤の含有量が(A)成分としてのエポキシ樹脂100質量部に対して1~30質量部であることが好ましい。1質量部未満だと、半導体樹脂封止材の常温での粘度が上昇し、アンダーフィルとして使用する際に、注入性が悪化するおそれがある。また、半導体樹脂封止材をアンダーフィルとして用いた際に、硬化時におけるガラス転移温度(Tg)や強靱性が低下し、フィレットクラックの発生および進展を抑制できないおそれがある。一方、30質量部超だと、半導体樹脂封止材をアンダーフィルとして用いた際に、密着性に劣り、吸湿リフロー試験時に剥離が生じるおそれがある。」 「【0043】 本発明の半導体樹脂封止材は、上記(A)~(G)以外の成分を必要に応じて含有してもよい。このような成分の具体例としては、消泡剤、イオントラップ剤、界面活性剤、表面改質剤、顔料、染料、その他着色剤などを配合することができる。各配合剤の種類、配合量は常法通りである。」 「【実施例】 【0054】 以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0055】 (実施例1~17、比較例1~5) 下記表に示す配合割合となるように、ロールミルを用いて原料を混練して実施例1~17、比較例1~5の半導体樹脂封止材を調製した。なお、表中の各組成に関する数値は質量部を表している。 なお、表中の記号は、それぞれ以下を表わす。 (A)エポキシ樹脂 エポキシ樹脂A1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、製品名YDF8170、東都化成株式会社製 エポキシ樹脂A2:ナフタレンエポキシ樹脂、製品名HP4032D、DIC株式会社製エポキシ樹脂A3:アミノフェノール型エポキシ樹脂、製品名JER630、ジャパンエポキシレジン株式会社製 (B)アミン系硬化剤 アミン系硬化剤B1:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、製品名カヤハードA-A、日本化薬株式会社製 アミン系硬化剤B2:ジエチルトリエンジアミン、製品名エタキュア100、ALBEMARLE Co.,Ltd.製 アミン系硬化剤B3:ジメチルチオトルエンジアミン(変性芳香族アミンを含む)、製品名アデカEH105L、株式会社ADEKA製 (C)フィラー フィラーC1:エポキシ表面処理シリカフィラー(平均粒径2μm)、製品名SE5200SEE、株式会社アドマテックス製 (D)コアシェルゴム コアシェルゴムD1:コア:シリコーンゴム(シリコーン系エラストマー)、シェル:アクリル樹脂、平均粒径0.3μm コアシェルゴムD2:コア:ブタジエンゴム(ブタジエン系エラストマー)、シェル:アクリル樹脂、平均粒径0.1μm (E)反応性希釈剤 反応性希釈剤E1:ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量:320、全塩素量:1000ppm)、 (F)硬化促進剤 硬化促進剤F1:イミダゾール系硬化促進剤、製品名2P4MHZ、四国化成工業株式会社製 (G)シランカップリング剤 シランカップリング剤G1:エポキシ系シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、KBM403、信越化学株式会社製 【0056】 調製した半導体樹脂封止材を評価用試料として以下の評価を実施した。 (粘度) ブルックフィールド粘度計を用いて、液温25℃、50rpmで調製直後の評価用試料の粘度を測定した。 【0057】 (注入性) FR-4基板(基板サイズ30.0mm×30.0mm×厚さ0.75mm)上にガラス基板(サイズ20mm×26mm×厚さ1.25mm)を50μmのギャップを空けて張り合わせた試験片を、表面温度が110℃のホットプレート上に置き、該ギャップの中に評価用試料を毛管作用により注入させ、20mmまでの到達時間を測定した。 【0058】 (ガラス転移温度(Tg)) 評価用試料を165℃で120min加熱硬化させ8mmφ×200mmの円柱状に成形した硬化物について、ブルカーASX製TMA4000SAを用いて、TMA法によりガラス転移温度を測定した。 【0059】 (弾性率(曲げ弾性率)) 離型剤を塗布したガラス板とガラス板との間に評価用試料を挟み、165℃、120分で厚さ350μmのシート状(試験片の大きさ;10×40mm)に硬化させ、万能試験機((株)島津製作所製 AG-I)を用いて室温での曲げ弾性率を求めた。 なお、n=3で測定し、平均値を検査値とする。 また、試験片の膜厚及び幅は、5点測定し、平均値を計算値に用いる。 (測定温度:15~30℃) 【0060】 (吸湿リフロー性) 株式会社日立超LSIシステムズ製JKITTypeIII基板上にPHASE2E175_LF(株式会社日立超LSIシステムズ製)をフリップチップ実装させた評価用基板(基板サイズ52.5mm×30.0mm×厚さ0.73mm、ダイサイズ10mm×10mm×厚さ0.73mm、PIパッシベーションダイ、Sn-3Ag-0.5Cuバンプ、バンプピッチ175μm)の間隙に、評価用試料を毛管作用により注入させ、165℃のバッチ式温風乾燥機にて2時間硬化させたのち、デジタルマルチメーターにより抵抗値を測定した。 次いで、リフロー炉にてMAX260℃のリフロー処理を行い次いで60℃/60%の恒温恒湿槽に40時間放置し、再度リフロー処理を3回行った後、抵抗値および超音波探傷機(SAT)を用いて剥離の状態を観察した。剥離が全く観察されず導通不良のない場合(抵抗値が硬化後に対する変化率が±10%未満である場合)を◎、チップ面積に対する剥離の発生している面積の割合が1%未満でありかつ導通不良のない場合を○、剥離の範囲が1%以上もしくは導通不良のある場合を×とし、○以上の評価のものを吸湿リフロー性が良好であるとした。 【0061】 (フィレットクラック) 上記と同様に吸湿リフローを行った試験基板を、サーマルサイクル(-55℃/30min.⇔125℃/30min.)へ1000サイクル投入した後、フィレットクラックをマイクロスコープにて観察した。フィレットクラックの、ダイと水平方向の長さを計測し、ダイ周辺長さに対する割合が10%未満の場合は◎、10%以上30%未満の場合を○、30%以上を×とし、○以上の評価のものを吸湿リフロー性が良好であるとした。 【0062】 【表1】 [図:0001418252000001.jpg] 【0063】 【表2】 [図:0001418252000002.jpg] 【0064】 【表3】 [図:0001418252000003.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 甲1には、「(A)エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、(C)フィラー、(D)コアシェルゴム、および、(E)反応性希釈剤よりなり、前記(E)反応性希釈剤が、1分子中に2以上のグリシジル基を含む化合物からなり、前記(B)アミン系硬化剤の含有量が、前記(A)エポキシ樹脂および前記(E)反応性希釈剤のエポキシ当量に対して、0.5~1.5当量であることを特徴とする半導体樹脂封止材。」(請求項1)が記載されており、実施例において、その具体例としての半導体樹脂封止材を調製し、調製した半導体樹脂封止材を評価用試料として、吸湿リフロー性を評価するために、株式会社日立超LSIシステムズ製JKITTypeIII基板上にPHASE2E175_LF(株式会社日立超LSIシステムズ製)をフリップチップ実装させた評価用基板(基板サイズ52.5mm×30.0mm×厚さ0.73mm、ダイサイズ10mm×10mm×厚さ0.73mm、PIパッシベーションダイ、Sn-3Ag-0.5Cuバンプ、バンプピッチ175μm)の間隙に、評価用試料を毛管作用により注入させ、165℃のバッチ式温風乾燥機にて2時間硬化させたことが示されている(【0054】~【0064】【表3】)。 そこで、甲1の実施例1に着目して、【0001】等における半導体樹脂封止材をアンダーフィルとして用いる旨の記載、実施例において半導体樹脂封止材をフリップチップ実装させた評価用基板の間隙に注入させて硬化させていることとあわせて整理すると、次の発明が記載されているといえる。 「エポキシ樹脂A1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、製品名YDF8170、東都化成株式会社製を100質量部、アミン系硬化剤B1:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、製品名カヤハードA-A、日本化薬株式会社製を43質量部、フィラーC1:エポキシ表面処理シリカフィラー(平均粒径2μm)、製品名SE5200SEE、株式会社アドマテックス製を239質量部、コアシェルゴムD1:コア:シリコーンゴム(シリコーン系エラストマー)、シェル:アクリル樹脂、平均粒径0.3μmを3質量部、反応性希釈剤E1:ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量:320、全塩素量:1000ppm)を15質量部、シランカップリング剤G1:エポキシ系シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、KBM403、信越化学株式会社製を1.53質量部含有するアンダーフィル材。」(以下、「甲1発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「エポキシ樹脂A1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、製品名YDF8170、東都化成株式会社製」は、本件発明1の「ビスフェノール型エポキシ樹脂」に相当する。 甲1発明の「エポキシ樹脂A1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、製品名YDF8170、東都化成株式会社製」は分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂であり、甲1発明の「反応性希釈剤E1:ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量:320、全塩素量:1000ppm)」は分子中に芳香環を含まないエポキシ樹脂であり、甲1発明はこれら以外のエポキシ樹脂を含まないため、甲1発明において、エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合を計算すると約86.96質量%(=100/(100+15)×100)となり、本件発明1と同じく、「(A)エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合が、65質量%以上であ」るといえる。 甲1発明の「エポキシ樹脂A1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、製品名YDF8170、東都化成株式会社製」、「反応性希釈剤E1:ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量:320、全塩素量:1000ppm)」はどちらも3官能以上のエポキシ樹脂でなく、甲1発明はこれら以外のエポキシ樹脂を含まないため、甲1発明において、エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合は0質量%であるから、本件発明1と同じく、「(A)エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合が、0質量%であ」るといえる。 甲1発明の「アミン系硬化剤B1:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、製品名カヤハードA-A、日本化薬株式会社製」は、芳香環を有するから、本件発明1の「(B)硬化剤」である「芳香族アミン化合物」に相当する。 甲1発明の「フィラーC1:エポキシ表面処理シリカフィラー(平均粒径2μm)、製品名SE5200SEE、株式会社アドマテックス製」は、本件発明1の「(C)無機充填剤」に相当する。 甲1発明の「アンダーフィル材」は、本件発明1の「アンダーフィル材」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、 「(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含み、 前記(A)エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合が、65質量%以上であり、 前記(A)エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合が、0質量%であり、 前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含み、 前記(B)硬化剤が、芳香族アミン化合物であるアンダーフィル材。」の点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1-1> 本件発明1は、「(A)エポキシ樹脂が、」「アルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含」むのに対し、甲1発明は、アルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含まない点 <相違点1-2> 本件発明1は、「(I)酸化防止剤」を含むのに対し、甲1発明は、酸化防止剤を含まない点 <相違点1-3> 本件発明1は、「硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であ」るのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点 <相違点1-4> 本件発明1は、「硬化物としたときの、」「DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であ」るのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点 イ 検討 事案に鑑み、相違点1-3及び相違点1-4についてまとめて検討する。 本件明細書の【0016】には、「アンダーフィル材を硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数を30ppm/℃以下とするには、エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合を65質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上とすることがより好ましい。アンダーフィル材を硬化物としたときの、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率を0.10GPa以下とするには、エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合を80質量%以下とすることが好ましく、70質量%以下とすることがより好ましく、60質量%以下とすることがさらに好ましい。」という記載があるところ、この記載からは、ガラス転移温度以下の熱膨張係数を30ppm/℃以下とするための要件の一つとして、エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合を65質量%以上とすることが好ましく、また、240℃における貯蔵弾性率を0.10GPa以下とするための要件の一つとして、エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合を80質量%以下とすることが好ましいということは理解できる。 しかしながら、熱膨張係数や貯蔵弾性率は樹脂成分の種類やその配合割合により異なるから、例えば反応性希釈剤であるポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを、アルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂に代える等、エポキシ樹脂の種類が変われば熱膨張係数や貯蔵弾性率は変わるといえる。さらに、フィラーや硬化剤の種類や配合割合も熱膨張係数や貯蔵弾性率に影響を与える。 そうすると、甲1発明が、本件明細書の【0016】の、「分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合を65質量%以上」、「3官能以上のエポキシ樹脂の割合を80質量%以下」ということを満たしているからといって、ガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であるとは必ずしも認めることができず、上記相違点1-3及び上記相違点1-4は実質的な相違点である。 また、甲1の【0005】、【0007】には、アンダーフィルによって、半導体素子と基板との間のギャップを封止するうえで解消すべき問題点として、フィレットクラックの問題があり、これを解消するためにゴム成分を添加すると、粘度が上昇し、アンダーフィルの注入性が低下するため、粘度を下げるために希釈剤を使用するが、非反応性の希釈剤を使用すると、ボイド発生の原因となるおそれがあり、反応性希釈剤として各種のモノエポキシ化合物や多価アルコールのグリシジルエーテル化合物を使用した場合、樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)や強靱性が著しく低下する問題があったため、アンダーフィルとして使用した際に、注入性に優れ、フィレットクラックの発生および進展、ならびに、ボイドの発生が抑制された半導体樹脂封止材を提供することを目的とすることが記載されている。そして、甲1の実施例には、調製した半導体樹脂封止材について、粘度、注入性、ガラス転移温度、曲げ弾性率、吸湿リフロー性、フィレットクラックを測定・評価したことが示されている(【0056】~【0064】【表3】)。しかしながら、甲1には、アンダーフィル材の硬化物における熱膨張係数に関して、「(C)成分としてのフィラーは、半導体樹脂封止材の熱膨張係数を調整することにより、アンダーフィルとして使用した際に耐サーマルサイクル性を向上させる。」(【0026】)と記載されるにとどまり、また、アンダーフィル材の硬化物における貯蔵弾性率については何ら記載されていない。 そうすると、甲1には、甲1発明に係る半導体樹脂封止材の熱膨張係数や貯蔵弾性率を所定の値とする動機付けがあるとはいえないから、甲1発明において、「硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であ」るとすることは当業者が容易に想到し得たとはいえない。また、甲2の1~甲5、甲7にも、アンダーフィル材を硬化物としたときの、ガラス転移温度以下の熱膨張係数を30ppm/℃以下とし、かつ、240℃における貯蔵弾性率を0.10GPa以下とすることは記載されていないから、甲2の1~甲5、甲7に記載された事項を考慮しても上記判断に影響しない。 よって、甲1~甲5、甲7の記載を基に、甲1発明において、相違点1-3及び1-4に係る本件発明1の構成を採用することが動機付けられるとはいえない。 ウ 本件発明1の効果について 本件発明1は、「本発明によれば、リフローの際のソルダーレジストのクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性に優れるアンダーフィル材、並びにこれにより封止された信頼性の高い電子部品装置及びその製造方法が提供される。」(本件明細書の【0010】)という効果を奏するものである。 一方、甲1には、特にクラックについて、フィレットクラックであることや(【0061】)、バンプ電極にクラックが発生することが記載ないし示唆されているにとどまり(【0002】)、ソルダーレジストのクラックであることまでは明示的に記載されていないから、本件発明1の効果は当業者が予測し得る範囲のものとはいえない。 エ 甲1の実施例2~17を引用発明とする場合も、上記ア~ウで甲1発明について述べたのと同じ理由により、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 オ 小括 したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び、甲1~甲5、甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~14について 本件発明2~14は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記(2)で述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明、及び、甲1~甲5、甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ 以上のことから、本件発明1~14に係る特許は、申立理由1-1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由1-2(甲5を主引例とする進歩性)について (1)甲5に記載された事項及び甲5に記載された発明 ア 甲5には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含有する液状エポキシ樹脂組成物を複数種準備する工程と、 前記液状エポキシ樹脂組成物のそれぞれについて、基板と半導体素子との間隙に含浸するときの温度における粘度及び表面張力を測定する工程と、 測定された前記粘度が0.13Pa・s以下であり、測定された前記表面張力が25mN/m以上である液状エポキシ樹脂組成物を選択する工程と、 を有するフリップチップ封止用の液状エポキシ樹脂組成物の選択方法。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、液状エポキシ樹脂組成物の選択方法及び製造方法、並びに電子部品装置及びその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 半導体には、素子を外部環境から保護して各種信頼性を確保すると同時に基板への実装を容易にするためパッケージが必要である。パッケージには種々の形態があるが、一般的には金属製リードフレームに形成されたタブに素子を固着し、素子表面の電極とインナーリード間を金ワイヤで電気的に接続し、素子、金ワイヤ及びリードフレームの一部を、エポキシ樹脂組成物を用いて低圧トランスファ成形法で封止したパッケージが広く実用に供されている。このような樹脂封止型半導体装置は、素子サイズに比べてパッケージの外形がかなり大きく、高密度実装の観点からは極めて非効率的である。そのため、パッケージ形態はピン挿入型から表面実装型に移行するとともに小型・薄型化が積極的に行われた。しかし、金属製リードフレームに素子を搭載し、ワイヤボンディングしたものを樹脂封止する構造を採用する以上、実装効率を高めるには限界があった。これに対してCOB(Chip on Board)、ハイブリッドIC、モジュール、カードなどの分野では、一部の素子を高密度実装するためベアチップを、バンプを介して基板にフェイスダウンで実装するいわゆるフリップチップ実装を採用してきた。最近は素子の高集積化、高機能化、多ピン化、システム化、高速化、低コスト化などに対応するためCSP(Chip Scale Package)と呼ばれる種々の小型パッケージが開発され、パッケージ用基板に素子を搭載する方法として、実装効率のほか電気特性、多ピン化対応に優れるフリップチップ実装の採用が増えている。また、最近の表面実装型パッケージやCSPは、端子がエリアアレイ状に配置されたものが多く、この種のパッケージの実装形態はフリップチップ実装と同じである。 【0003】 ところで、フリップチップ実装を行う場合、素子と基板あるいはCSPはそれぞれ熱膨張係数が異なり、接合部に熱応力が発生するため、接続信頼性の確保が重要な課題である。また、ベアチップは回路形成面が充分に保護されていないため、水分やイオン性不純物が浸入し易く耐湿信頼性の確保も重要な課題である。その対策として、通常素子と基板の間隙にアンダーフィル材としてエポキシ樹脂組成物を充填して介在させ、接合部の補強及び素子の保護を行っている。樹脂組成物を介在させる方法には種々の方式があるが、一般的には液状のエポキシ樹脂組成物を素子の周辺に滴下し、毛細管現象により素子と基板の間隙にしみ込ませる(含浸させる)方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 アンダーフィル用エポキシ樹脂組成物は無加圧状態で素子と基板の間隙に含浸させた後加熱硬化するため、素子、基板及びバンプとの界面あるいは組成物内部にボイドが残存(または発生)し、これに熱ストレスが加わると界面剥離やクラックが発生することがあり、ボイドの低減が重要な課題になっている。最近は、素子の高集積度化、多機能化などによってチップサイズが大型化する一方、多ピン化によってバンプの小径化、狭ピッチ化が行われ、結果的に素子(チップ)と基板の間隙が狭まる方向にあり、上記課題の解決がますます難しくなっていた。また、環境問題の観点から、バンプ材質が鉛はんだから脱鉛はんだへ、更にはCuポストへと変更されつつあり、仕様が多様化してきている。また、はんだの脱鉛化に伴い、端子への濡れが悪くなる傾向にあり、結果的に、バンプ周辺に凹凸部や微細なソルダーレジストとの隙間などが発生しやすく、樹脂流入時に空気を巻き込みやすくなることで、ボイド発生の原因となっている。さらに、バンプのCu化に伴い、狭ピッチ化も加速する傾向にあり、ボイドの発生抑制がますます困難になってきている。 【0006】 本発明はかかる状況を鑑みなされたもので、基板と半導体素子との間隙への含浸性に優れ、ボイドの発生が抑制された液状エポキシ樹脂組成物を選択する選択方法、該液状エポキシ樹脂組成物の製造方法、該液状エポキシ樹脂組成物を用いた信頼性に優れる電子部品装置及びその製造方法を提供することを課題とする。」 「【発明の効果】 【0015】 本発明によれば、基板と半導体素子との間隙への含浸性に優れ、ボイドの発生が抑制された液状エポキシ樹脂組成物を選択する選択方法、該液状エポキシ樹脂組成物の製造方法、該樹脂組成物を用いた信頼性に優れる電子部品装置及びその製造方法を提供することができる。」 「【0019】 本発明の選択方法によって選択される液状エポキシ樹脂組成物は、常温(25℃)において液状である。具体的には、25℃において、E型粘度計で測定される粘度が1000Pa・s以下である。 また前記液状エポキシ樹脂組成物は、半導体素子等の実装部品を、基板の回路形成面にフェイスダウンで実装した後、アンダーフィルを形成するフリップチップ封止用に用いられる。半導体素子のフリップチップ封止は具体的には以下のようにして行なわれる。」 「【0033】 (A)エポキシ樹脂 前記エポキシ樹脂としては特に制限はなく、通常用いられるエポキシ樹脂から適宜選択することができる。中でも常温で液状のエポキシ樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。エポキシ樹脂としては例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、及び脂環族エポキシ樹脂などを挙げることができる。なかでも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、及び水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、並びにグリシジルアミン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。 【0034】 またエポキシ樹脂として、発明の目的を損なわない範囲であれば固形のエポキシ樹脂を併用してもよい。 さらには粘度調整のためエポキシ基を有する反応性希釈剤を混合してもよい。エポキシ基を有する反応性希釈剤としては例えばn-ブチルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエーテル、スチレンオキサイド、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが挙げられる。これらの内の1種類あるいは複数種を併用してもよい。 前記液状エポキシ樹脂組成物に用いるこれらのエポキシ樹脂は、十分に精製されたもので、イオン性不純物が少ないものが好ましい。例えば、遊離Naイオン、遊離Clイオンは500ppm以下であることが好ましい。 【0035】 前記液状エポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂の含有率は特に制限されない。なかでも粘度の観点から、液状エポキシ樹脂組成物の総量中に15質量%~50質量%であることが好ましく、20質量%~30質量%であることがより好ましい。 【0036】 前記液状エポキシ樹脂組成物は、含浸性、保存安定性およびハンドリングの観点から、エポキシ樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含み、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種をさらに含むことが好ましく、ビスフェノールF型エポキシ樹脂をエポキシ樹脂の総量の50質量%以上含み、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種を50質量%以下でさらに含むことがより好ましい。」 「【0037】 (B)硬化剤 前記液状エポキシ樹脂組成物は、硬化剤の少なくとも1種を含む。前記硬化剤としては特に制限はなく、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されている酸無水物、フェノール樹脂、芳香族アミン、各種イミダゾール誘導体などから適宜選択することができる。なかでも、低粘度化の観点からは酸無水物が好ましい。また保存安定性の観点からはフェノール樹脂及びイミダゾール誘導体が好ましい。また耐湿接着性の観点からは芳香族アミンが好ましい。 またエポキシ樹脂組成物が液状であれば、硬化剤は固形の化合物を使用してもよいし液状及び固形の化合物を併用してもよい。 ・・・ 【0039】 前記芳香族アミンとしては、例えば、エピキュアW、エピキュアZ(いずれも三菱化学社製、商品名)、カヤハードA-A、カヤハードA-B、カヤハードA-S(いずれも日本化薬社製、商品名)、トートアミンHM-205(東都化成社製、商品名)、アデカハードナーEH-101(旭電化工業社製、商品名)、エポミックQ-640、エポミックQ-643(いずれも三井化学社製、商品名)、DETDA80(Lonza社製、商品名)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。」 「【0047】 前記液状エポキシ樹脂組成物は必要に応じて、可撓化剤、硬化促進剤、カップリング剤、着色剤、溶剤、界面活性剤、イオントラップ剤などを含むことができる。」 「【実施例】 【0070】 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。 【0071】 (A)エポキシ樹脂として以下のエポキシ樹脂を用いた エポキシ1:東都化成社製、商品名「YDF-8170C」 エポキシ2:三菱化学社製、商品名[E630」 エポキシ3:DIC社製、商品名「HP4032D」 (B)硬化剤としては、液状アミン:三菱化学社製、商品名「エピキュアW」を用いた。 (C)無機充填剤としては、球状溶融シリカ(体積平均粒子径1μm)を用いた。 また可撓化剤としては、シリコーン微粒子:東レ社製、商品名「トレフィルE601」を用い、界面活性剤として以下の界面活性剤を用いた。 界面活性剤1:東レ社製、商品名「SH8400」 界面活性剤2:信越化学工業社製、商品名「KF6012」 【0072】 [実施例1~7] 表1に示す配合部数で計量した各素材を真空擂潰機に入れ、混練して液状エポキシ樹脂組成物をそれぞれ得た。なお、無機充填剤の括弧内の数値は、樹脂組成物の総量中における無機充填剤の含有率(質量%)である。 得られた液状エポキシ樹脂組成物について、以下のようにして含浸温度における粘度と表面張力を測定した。評価結果を表1に示した。 【0073】 (1)粘度測定 レオメータAR2000(TA-インスツルメンツ製)を用いて、液状エポキシ樹脂組成物の含浸温度での粘度を、φ60mmのパラレルプレートを用いてせん断応力2Paの条件で測定した。 【0074】 (2)表面張力測定 表面張力測定計DCAT11(営弘精機製)を用いて、白金イリジウムプレート法で液状エポキシ樹脂組成物の含浸温度での表面張力を測定した。 【0075】 次にチップサイズ20mm×20mm×0.725mmのシリコンチップ(アルミ配線を有する半導体素子)を、35mm×35mm×1.0mmの回路基板上に、Sn-Ag -Cu系のはんだバンプを用いて接続し、評価用パッケージを得た。ここで、バンプ間隔(バンプピッチ)は150μmであり、シリコンチップと回路基板の間隙(ギャップ)は60μmであった。また14884バンプのデージィチェーンとなっており、電気的に導通を確認できる仕様である。 【0076】 次に上記で得られた液状エポキシ樹脂組成物を、ディスペンサーを用いて、表1に記載の含浸温度に予熱した評価用パッケージのシリコンチップの側面(1辺)に滴下し、シリコンチップと回路基板の間隙に含浸させた。 液状エポキシ樹脂組成物が含浸された評価用パッケージを165℃に加熱した高温槽中で2時間加熱して液状エポキシ樹脂組成物を硬化させ、目的とする樹脂封止型半導体装置である電子部品装置を得た。 得られた電子部品装置について、以下のようにしてボイド観察及び信頼性評価を行なった。評価結果を表1に示した。 【0077】 (4)ボイド観察 上記で得られた電子部品装置の内部を超音波探傷装置Insight300(インサイト製)で観察し、ボイドの有無を調べ、以下の評価基準に従って評価した。 -評価基準- A:ボイドが観察されなかった。 B:観察されたボイドの直径が100μm未満で、且つ観察されたボイドの回路基板上への投影面積が、シリコンチップ面積の1%未満であった。 C:観察されたボイドの直径が100μm以上で、又は観察されたボイドの回路基板上への投影面積が、シリコンチップ面積の1%以上であった。 【0078】 (5)信頼性評価 (a)耐リフロー性 上記で得られた電子部品装置を120℃で12時間加熱乾燥した後、30℃、60%RH下で192時間吸湿させた。次いで遠赤外線加熱方式のリフロー炉(265℃加熱時間10秒)中を5回通した。その後、電子部品装置の内部を超音波探傷装置で観察し、液状エポキシ樹脂組成物の硬化物とシリコンチップ及び回路基板との剥離の有無と、液状エポキシ樹脂組成物の硬化物におけるクラックの有無とを調べた。 硬化物の剥離又は硬化物のクラックが観察されたパッケージを不良パッケージとし、不良パッケージ数/評価パッケージ数として耐リフロー性を評価した 【0079】 (b)耐温度サイクル性 上記で得られた電子部品装置を-55℃~125℃、各30分のヒートサイクルで1000サイクル処理した。その後、導通試験を行ってアルミ配線及びバンプの断線不良の発生の有無を調べるとともに、シリコンチップのクラック有無及びシリコンチップと液状エポキシ樹脂組成物の硬化物との剥離の有無を超音波探傷装置で観察した。 断線不良又はシリコンチップのクラック若しくは剥離が観察されたパッケージを不良パッケージとし、不良パッケージ数/評価パッケージ数として耐温度サイクル性を評価した。 【0080】 【表1】 [図:0001418252000004.jpg] 」 イ 甲5に記載された発明 甲5には、「(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含有する液状エポキシ樹脂組成物を複数種準備する工程と、前記液状エポキシ樹脂組成物のそれぞれについて、基板と半導体素子との間隙に含浸するときの温度における粘度及び表面張力を測定する工程と、測定された前記粘度が0.13Pa・s以下であり、測定された前記表面張力が25mN/m以上である液状エポキシ樹脂組成物を選択する工程と、を有するフリップチップ封止用の液状エポキシ樹脂組成物の選択方法。」(請求項1)が記載されており、実施例において、その具体例として、液状エポキシ樹脂組成物を製造し、得られた液状エポキシ樹脂組成物を、ディスペンサーを用いて、予熱した評価用パッケージのシリコンチップの側面(1辺)に滴下し、シリコンチップと回路基板の間隙に含浸させ、液状エポキシ樹脂組成物が含浸された評価用パッケージを165℃に加熱した高温槽中で2時間加熱して液状エポキシ樹脂組成物を硬化させ、目的とする樹脂封止型半導体装置である電子部品装置を得たことが示されている(【0070】~【0080】【表1】)。 そこで、甲5の実施例4に着目して、【0019】における液状エポキシ樹脂組成物がアンダーフィルを形成するフリップチップ封止用に用いられる旨の記載、実施例において液状エポキシ樹脂組成物をシリコンチップと回路基板の間隙に含浸させて硬化させていることをあわせて整理すると、次の発明が記載されているといえる。 「エポキシ1:東都化成社製、商品名「YDF-8170C」60質量部、エポキシ3:DIC社製、商品名「HP4032D」40質量部、(B)硬化剤として液状アミン:三菱化学社製、商品名「エピキュアW」29質量部、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部、カーボンブラック1質量部、(C)無機充填剤として球状溶融シリカ(体積平均粒子径1μm)200質量部を含有するアンダーフィル材。」(以下、「甲5発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲5発明を対比する。 甲5発明の「エポキシ1:東都化成社製、商品名「YDF-8170C」」は、甲6の1の【0111】によれば、ビスフェノールF型エポキシ化合物であるから、本件発明1の「ビスフェノール型エポキシ樹脂」に相当する。 甲5発明の「エポキシ1:東都化成社製、商品名「YDF-8170C」」は上記のとおりビスフェノールF型エポキシ化合物であるから、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂であり、甲5発明の「エポキシ3:DIC社製、商品名「HP4032D」」は、甲6の3の【0014】によれば、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂であるから、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂であり、甲5発明はこれら以外のエポキシ樹脂を含まないため、甲5発明において、エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合は100質量%であるので、本件発明1と同じく、「(A)エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合が、65質量%以上であ」るといえる。 甲5発明の「エポキシ1:東都化成社製、商品名「YDF-8170C」」は上記のとおりビスフェノールF型エポキシ化合物であり、「エポキシ3:DIC社製、商品名「HP4032D」」は上記のとおりナフタレン型2官能エポキシ樹脂であるから、どちらも3官能以上のエポキシ樹脂でなく、甲5発明はこれら以外のエポキシ樹脂を含まないため、甲5発明において、エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合は0質量%であるので、本件発明1と同じく、「(A)エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合が、0質量%であ」るといえる。 甲5発明の「(B)硬化剤として」の「液状アミン:三菱化学社製、商品名「エピキュアW」」は、甲5の【0039】の記載から芳香族アミンであるから、本件発明1の「(B)硬化剤」である「芳香族アミン化合物」に相当する。 甲5発明の「(C)無機充填剤として」の「球状溶融シリカ(体積平均粒子径1μm)」は、本件発明1の「(C)無機充填剤」に相当する。 甲5発明の「アンダーフィル材」は、本件発明1の「アンダーフィル材」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲5発明は、 「(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含み、 前記(A)エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合が、65質量%以上であり、 前記(A)エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合が、0質量%であり、 前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含み、 前記(B)硬化剤が、芳香族アミン化合物であるアンダーフィル材。」の点で一致し、次の点で相違する。 <相違点5-1> 本件発明1は、「(A)エポキシ樹脂が、」「アルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含」むのに対し、甲5発明は、アルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含まない点 <相違点5-2> 本件発明1は、「(I)酸化防止剤」を含むのに対し、甲5発明は、酸化防止剤を含まない点 <相違点5-3> 本件発明1は、「硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であ」るのに対し、甲5発明は、そのような特定がない点 <相違点5-4> 本件発明1は、「硬化物としたときの、」「DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であ」るのに対し、甲5発明は、そのような特定がない点 イ 検討 事案に鑑み、相違点5-3及び相違点5-4についてまとめて検討する。 本件明細書の【0016】には、「アンダーフィル材を硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数を30ppm/℃以下とするには、エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合を65質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上とすることがより好ましい。アンダーフィル材を硬化物としたときの、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率を0.10GPa以下とするには、エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合を80質量%以下とすることが好ましく、70質量%以下とすることがより好ましく、60質量%以下とすることがさらに好ましい。」という記載があるところ、この記載からは、ガラス転移温度以下の熱膨張係数を30ppm/℃以下とするための要件の一つとして、エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合を65質量%以上とすることが好ましく、また、240℃における貯蔵弾性率を0.10GPa以下とするための要件の一つとして、エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合を80質量%以下とすることが好ましいということは理解できる。 しかしながら、熱膨張係数や貯蔵弾性率は樹脂成分の種類やその配合割合により異なるから、例えば1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのようなエポキシ基を有する反応性希釈剤を配合する等、さらにエポキシ樹脂を配合すれば熱膨張係数や貯蔵弾性率は変わるといえる。さらに、フィラーや硬化剤の種類や配合割合も熱膨張係数や貯蔵弾性率に影響を与える。 そうすると、甲5発明が、本件明細書の【0016】の、「分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合を65質量%以上」、「3官能以上のエポキシ樹脂の割合を80質量%以下」ということを満たしているからといって、ガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であるとは必ずしも認めることができず、上記相違点5-3及び上記相違点5-4は実質的な相違点である。 また、甲5の【0005】~【0006】には、アンダーフィル用エポキシ樹脂組成物は無加圧状態で素子と基板の間隙に含浸させた後加熱硬化するため、素子、基板及びバンプとの界面あるいは組成物内部にボイドが残存(または発生)し、これに熱ストレスが加わると界面剥離やクラックが発生することがあり、ボイドの低減が重要な課題になっているため、基板と半導体素子との間隙への含浸性に優れ、ボイドの発生が抑制された液状エポキシ樹脂組成物を選択する選択方法、該液状エポキシ樹脂組成物の製造方法、該液状エポキシ樹脂組成物を用いた信頼性に優れる電子部品装置及びその製造方法を提供することを課題とすることが記載されている。そして、甲5の実施例には、製造した液状エポキシ樹脂組成物について、粘度、表面張力、ボイドの有無、信頼性(耐リフロー性、耐温度サイクル性)を測定・評価したことが示されている(【0072】~【0080】【表1】)。しかしながら、甲5には、アンダーフィル材の硬化物における熱膨張係数に関して、「無機充填剤の含有率が50質量%以上であると、熱膨張係数の低減効果がより大きくなり温度サイクル性が向上する傾向、及び耐湿信頼性が向上する傾向にある。」(【0045】)と記載されるにとどまり、また、アンダーフィル材の硬化物における貯蔵弾性率については何ら記載されていない。 そうすると、甲5には、甲5発明に係る液状エポキシ樹脂組成物の熱膨張係数や貯蔵弾性率を所定の値とする動機付けがあるとはいえないから、甲5発明において、「硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であ」るとすることは当業者が容易に想到し得たとはいえない。また、甲1~甲4の3、甲6の1~甲6の3、甲7にも、アンダーフィル材を硬化物としたときの、ガラス転移温度以下の熱膨張係数を30ppm/℃以下とし、かつ、240℃における貯蔵弾性率を0.10GPa以下とすることは記載されていないから、甲1~甲4の3、甲6の1~甲6の3、甲7に記載された事項を考慮しても上記判断に影響しない。 よって、甲1~甲7の記載を基に、甲5発明において、相違点5-3及び5-4に係る本件発明1の構成を採用することが動機付けられるとはいえない。 ウ 本件発明1の効果について 本件発明1は、「本発明によれば、リフローの際のソルダーレジストのクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性に優れるアンダーフィル材、並びにこれにより封止された信頼性の高い電子部品装置及びその製造方法が提供される。」(本件明細書の【0010】)という効果を奏するものである。 一方、甲5には、特にクラックについて、硬化物におけるクラック(【0078】)、シリコンチップのクラック(【0079】)を評価したことや、アンダーフィルと素子、基板及びバンプとの界面にクラックが発生することが記載ないし示唆されているにとどまり(【0005】)、ソルダーレジストのクラックであることまでは明示的に記載されていないから、本件発明1の効果は当業者が予測し得る範囲のものとはいえない。 エ 小括 したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲5に記載された発明、及び、甲1~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~14について 本件発明2~14は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記(2)で述べたのと同じ理由により、甲5に記載された発明、及び、甲1~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ 以上のことから、本件発明1~14に係る特許は、申立理由1-2によっては取り消すことはできない。 3 申立理由2(サポート要件)について 申立理由2は、要するに、本件明細書は、何らビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の割合、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の種類が特定されていない本件発明1~14に係る発明の範囲まで、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない、というものである。 (1)本件明細書に記載された事項 本件明細書には、次の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、半導体技術の進歩は著しく、半導体及び配線基板の大型化並びに配線基板の薄型化が進んでいる。そのため、バンプ接続を行うフリップチップ方式では、アンダーフィル材の硬化物のリフロー温度における弾性率が高いとバンプの膨張にアンダーフィル材の硬化物が追随できず、配線基板上に形成されたソルダーレジストに応力が集中しやすい。ソルダーレジストに応力が集中することで、リフローの際のバンプの膨張に起因して配線基板上のソルダーレジストにクラックが発生する場合がある。 アンダーフィル材の硬化物の弾性率はアンダーフィル材に含まれる無機充填剤を減量することで低くすることができるが、無機充填剤を減量しすぎると熱膨張係数が増大し、温度サイクル試験においてアンダーフィル材の硬化物の膨張、収縮等に起因した不具合を起こすことがある。 【0007】 以上のように、半導体技術の進歩とともにアンダーフィル材には種々の課題の解決が要求されている。 本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、リフローの際のソルダーレジストのクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性に優れるアンダーフィル材、並びにこれにより封止された信頼性の高い電子部品装置及びその製造方法を提供することを目的とする。」 「【0055】 アンダーフィル材を硬化物としたときのTMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数は30ppm/℃以下であり、28ppm/℃以下であることが好ましく、26ppm/℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であれば、リフローの際のバンプクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性が向上する。TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数は15ppm/℃以上であってもよい。 アンダーフィル材を硬化物としたときのDMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率は0.10GPa以下であり、0.09GPa以下であることが好ましく、0.08GPa以下であることがより好ましく、0.07GPa以下であることがさらに好ましい。240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であれば、リフローの際のソルダーレジストのクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性が向上する。DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率は0.02GPa以上であってもよい。 アンダーフィル材を硬化物としたときのTMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度は、60℃~150℃が好ましく、70℃~140℃がより好ましく、70℃~130℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度が60℃以上であれば、高温でのバンプの保護性が高く断線が生じにくくなる傾向にある。またガラス転移温度が150℃以下であると常温(25℃)での反りが大きくなりにくい傾向にある。 アンダーフィル材を硬化物としたときのDMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率は、5GPa~10GPaであることが好ましく、5.5GPa~9.5GPaであることがより好ましく、6GPa~9GPaであることがさらに好ましい。25℃における貯蔵弾性率が5GPa以上であれば、高温でのバンプの保護性が高く断線が生じにくくなる傾向にある。また25℃における弾性率が10GPa以下であると常温(25℃)での反りが大きくなりにくい傾向にある。」 「【0068】 【表1】 [図:0001418252000005.jpg] 【0069】 なお、表1における各成分の配合量の単位は質量部である。また、表1中「当量比」は、「硬化剤の当量数(活性水素の当量数)/エポキシ樹脂の当量数(エポキシ基の当量数)」を表す。 【0070】 各種評価結果をまとめて下記表2に示した。 【0071】 【表2】 [図:0001418252000006.jpg] 【0072】 実施例1~5においては、TMAで測定したガラス転移温度が60℃~150℃、熱膨張係数が30ppm/℃以下、DMAで測定した25℃における貯蔵弾性率が5GPa~10GPa、そして240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下となった。 240℃における貯蔵弾性率が0.40GPaの比較例1は、耐温度サイクル性に優れるものの、ソルダーレジストクラックが発生した。高温での貯蔵弾性率が高いとリフロー温度においてはんだの膨張をアンダーフィル材の硬化物が吸収できず、ソルダーレジストに応力がかかったためと考えられる。 熱膨張係数が36ppm/℃の比較例2は、ソルダーレジストクラックは発現しなかったものの、温度サイクルが500サイクルで剥離が観察された。熱膨張係数が大きいと温度サイクルによるアンダーフィル材の硬化物の膨張及び収縮量が大きく、収縮時にチップ界面とアンダーフィル材が剥離したためと考えられる。」 (2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の判断手法 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点に立って判断する。 (3)本件発明の課題 本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の「リフローの際のソルダーレジストのクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性に優れるアンダーフィル材、並びにこれにより封止された信頼性の高い電子部品装置及びその製造方法を提供すること」(【0007】)であると解される。 (4)本件発明1について 本件明細書には、「アンダーフィル材を硬化物としたときのTMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数は30ppm/℃以下であり、・・・ガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であれば、リフローの際のバンプクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性が向上する。・・・アンダーフィル材を硬化物としたときのDMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率は0.10GPa以下であり、・・・240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であれば、リフローの際のソルダーレジストのクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性が向上する。・・・」と記載され(【0055】)、アンダーフィル材を硬化物としたときの、「TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下」とし、「DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下」とすることにより、本件発明の課題を解決できることが記載されている。そして、実施例・比較例には、熱膨張係数が30ppm/℃以下、240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であった実施例2、5は、ソルダーレジストクラックが無く、1000サイクル終了時点で剥離が生じなかったのに対し、240℃における貯蔵弾性率が0.40GPaの比較例1は、ソルダーレジストクラックが発生し、熱膨張係数が36ppm/℃の比較例2は、500サイクルで剥離が観察されたことが示されているから、具体的に確認することができる(【0071】【表2】、【0072】)。 そうすると、本件明細書には、本件発明1が「硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であ」ることにより、上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。 (5)本件発明2~14について 本件発明2~14は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(4)で述べたのと同様に、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明2~14が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されている。 (6)申立人の主張について 申立人は、申立書の第146頁下から第3行~第147頁第1行において、「ここで、アルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の種類や含有量が異なれば、液状樹脂組成物の強靭性や耐温度サイクル特性が変わることが技術常識である(要すれば甲第1号証の【0037】、甲第2号証の1の【0011】。」と主張しているが、特に240℃における貯蔵弾性率に具体的にどの程度の影響を与えるかまでは不明である。 よって、申立人の上記主張を採用することはできない。 (7)まとめ したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、申立理由2によっては、本件特許を取り消すことはできない。 4 申立理由3(実施可能要件)について 申立理由3は、要するに、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を配合する割合、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の種類(特に、本件特許の実施例で用いたアルキルジオールは不明である)について、どのようにすれば、本件明細書の実施例2や実施例5と同様の耐温度サイクル性や良好な物性を示す液状樹脂組成物を得ることができるのか、合理的に推測することは困難であり、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等が必要である、というものである。 (1)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 特許法第36条第4項第1号は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。 一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と定めている。 これは、当業者が、明細書に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、物の発明については、その物を作れ、かつ、その物を使用することができる程度に、発明の詳細な説明を記載しなければならないことを意味するものである。そこで、この点について以下に検討する。 (2)本件発明1について 本件明細書には、本件発明1の「(A)エポキシ樹脂」について【0014】~【0020】に説明があり、特に、【0016】には、「アンダーフィル材を硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数を30ppm/℃以下とするには、エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合を65質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上とすることがより好ましい。アンダーフィル材を硬化物としたときの、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率を0.10GPa以下とするには、エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合を80質量%以下とすることが好ましく、70質量%以下とすることがより好ましく、60質量%以下とすることがさらに好ましい。」と記載され、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合とガラス転移温度以下の熱膨張係数の関係や、3官能以上のエポキシ樹脂の割合と240℃における貯蔵弾性率の関係について記載されており、実施例2、5においてアンダーフィル材を作製したことも示されている。 このような本件明細書の一般的記載と実施例2、5とから、当業者が本件発明1のアンダーフィル材を作製し、その性能の確認作業を行うことは通常の試行錯誤の範囲内で行い得るものであって、過度の試行錯誤を要するものとはいえない。 そうすると、発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明1のアンダーフィル材を製造及び使用することができる程度に記載されていると解される。 (3)本件発明2~14について 申立理由3は、発明の詳細な説明は本件発明1について当業者が実施できる程度に記載されていないから、本件発明1を直接又は間接的に引用する他の発明についても実施できる程度に記載されていないというものであるが、上記(2)で述べたように、発明の詳細な説明は、本件発明1について当業者が実施できる程度に記載されているから、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~14についても実施することができると解される。 (4)申立人の主張について 申立人は、申立書の第149頁第7行~第9行において、「グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の種類(特に、本件特許の実施例で用いたアルキルジオールは不明である)」と主張しているが、本件明細書の【0016】に、ガラス転移温度以下の熱膨張係数や240℃における貯蔵弾性率は、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合や3官能以上のエポキシ樹脂の割合によっておおよそ決まることが記載されているから、アルキルジオールが具体的にどのアルキルジオールであるのかは重要であるとはいえないし、また、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の原料としてのアルキルジールとして具体的にどのようなものが用いられるのかはよく知られていることである(例えば甲2の1の【0010】等)から、本件発明1~14のアンダーフィル材を製造することができないとまではいえない。 (5)まとめ したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、申立理由3によっては、本件特許を取り消すことはできない。 5 申立理由4(明確性)について 申立理由4は、要するに、本件発明9は、「(J)有機溶剤を含有し、」という必須成分である旨の特定があるにもかかわらず、「前記有機溶剤の含有率が10質量%以下である」と0質量%である場合を含む特定があり、これらは矛盾しているから、本件発明9~14は明確でない、というものである。 (1)本件発明9について 本件発明9は、「(J)有機溶剤を含有し、」と特定していることから、有機溶剤を含有することは明らかである。 したがって、本件発明9は第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 (2)本件発明10~14について 申立理由4は、本件発明9が明確でないから、本件発明9を直接又は間接的に引用する他の発明も明確でないというものであるが、上記(1)で述べたように、本件発明9は明確であるから、本件発明9を直接又は間接的に引用する本件発明10~14は明確である。 (3)まとめ したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、申立理由4によっては、本件特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~14に係る特許は、申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない また、他に、請求項1~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700474

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