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特許異議申立

2024-700142

液状樹脂組成物並びに電子部品装置及びその製造方法

審判番号
2024-700142
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-201192
登録番号
7404620
請求日
2024年02月16日
審決日
2025年02月21日
公報発行日
2025年04月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社レゾナック
  • 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
  • 【異議申立人】松本 文彦
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 浩子
  • 審判官 細井 龍史
  • 審判官 藤井 勲
分類
P1651.121-Y (C08L) / P1651.536-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7404620号発明「液状樹脂組成物並びに電子部品装置及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7404620号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7404620号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年10月25日に出願されたものであって、令和5年12月18日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年2月16日に松本 文彦(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~7)がされたものである。 その後の手続は以下のとおりである。 令和6年 9月11日付け 取消理由通知 同年11月11日 意見書の提出(特許権者) 同年12月12日 上申書の提出(申立人) 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1~7を総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理された平均粒子径が20nm~75nmの第一のシリカ粒子、及び、(D)平均粒子径が0.4μm~1.8μmの第二のシリカ粒子を含み、 前記(B)硬化剤が、アミン系硬化剤を含み、 揮発分の含有率が、5質量%以下であり、 前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の合計の占める割合が、50質量%~75質量%であり、 前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の質量基準の比率((D)第二のシリカ粒子/(C)第一のシリカ粒子)が、5~13.4であり、 前記(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径と前記(D)第二のシリカ粒子の平均粒子径との比((D)第二のシリカ粒子の平均粒子径/(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径)が、7~10である液状樹脂組成物。 【請求項2】 前記(A)エポキシ樹脂の25℃における粘度が、1000Pa・s以下である請求項1に記載の液状樹脂組成物。 【請求項3】 イオントラップ剤を含有する請求項1又は請求項2に記載の液状樹脂組成物。 【請求項4】 硬化促進剤を含有する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。 【請求項5】 酸化防止剤を含有する請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。 【請求項6】 回路層を有する基板と、 前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品と、 前記基板と前記電子部品との間隙に配置された請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物の硬化物と、 を備える電子部品装置。 【請求項7】 回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品とを、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物を用いて封止する工程を有する電子部品装置の製造方法。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要、証拠方法及び取消理由の概要 1 申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(サポ-ト要件違反) 本件特許の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由3(実施可能要件違反) 本件特許の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 (1)申立書に添付した証拠方法 申立人は、申立書に添付して、以下の証拠を提出した。 甲第1号証: 国際公開第2018/070237号 甲第2号証の1:特開2015-218229号公報 甲第2号証の2:特開2006-036915号公報 甲第2号証の3:国際公開第2015/079708号 甲第2号証の4:特開2006-016429号公報 甲第2号証の5:特開2012-149111号公報 甲第2号証の6:特開2016-121294号公報 甲第2号証の7:特開2012-089750号公報 甲第3号証の1:“用途別製品紹介 ナノコンポジット用途 封止剤/接着剤ほか”、INTERNET ARCHIVE WAYBACK MACHINE、[online]、2016年4月14日、日産化学工業株式会社ホームページ、[2024年1月25日検索]、インターネット<URL https://web.archive.org/web/20160414181844/http://www.nissanchem.co.jp:80/products/materials/inorganic/function/05/> 甲第3号証の2:“高純度ナノシリカ分散液~CTE低減/ワニスの流動性改善~”、INTERNET ARCHIVE WAYBACK MACHINE、[online]、2015年8月7日、日産化学工業株式会社ホームページ、[2024年1月25日検索]、インターネット<URL https://web.archive.org/web/20150807102042/https://www.nissanchem.co.jp/products/materials/silicaso1.pdf> 甲第3号証の3 : "Admatechs Technical Overview"、2016年12月06日、Admatechs Co., Ltd. 甲第3号証の4 :“機能性球状シリカ~「HPSシリーズ」~”、2008年1月、東亜合成グループ研究年報、 11号、56~58頁、 インターネット<URL https://www.toagosei.co.jp/develop/theses/detai1/pdf/no11_09.pdf> 甲第4号証の1:特開2015-189848号公報 甲第4号証の2:特開2015-105304号公報 甲第5号証:特許第7404620号公報(本件特許公報) (2)上申書に添付した証拠方法 申立人は、上申書に添付して、以下の証拠を提出した。 甲第6号証の1:特開2007-145996号公報 甲第6号証の2:特開2013-173834号公報 以下、順に、甲第1号証を「甲1」、甲第2号証の1を「甲2の1」等という。 3 取消理由通知に記載した取消理由の概要 当審において通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 取消理由1(甲1を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第4 当審の判断 以下に述べるとおり、本件特許の請求項1~7に係る特許は、当審において通知した取消理由通知に記載した取消理由及び申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 1 取消理由1(甲1を主引用文献とする進歩性欠如)及び申立理由1(甲1を主引用文献とする進歩性欠如)について (1)証拠に記載された事項等(なお、下線は当審による。以下同様) ア 甲1 (ア) 甲1に記載された事項 「[0034] 第2の無機充填材としては、粒子の表面が有機基で予め処理されたものを用いることもできる。粒子の表面が有機基で予め処理されることで、半導体チップ、有機基板等への接着力が向上し、封止用樹脂組成物の硬化物の靭性を向上させる点で好ましい。」 「[0038] -カップリング剤- 封止用樹脂組成物は、(E)成分のカップリング剤を含有してもよい。封止用樹脂組成物がカップリング剤を含有すると、封止用樹脂組成物の密着性の観点から好ましい。・・・(中略)・・・ カップリング剤としては、市販品を用いてもよい。カップリング剤の市販品の具体例としては、信越化学工業株式会社製KBM-403、KBE-903、KBE-9103等が挙げられるが、カップリング剤は、これら具体例に限定されるものではない。カップリング剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。」 「[0050] 以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例において、部及び%は特に断りのない限り、質量部及び質量%を示す。 [0051] 表1及び表2に示す組成となるように各成分を配合し、三本ロール及び真空ライカイ機にて混練し、分散して、実施例1~実施例9及び比較例1~比較例7の封止用樹脂組成物を作製した。なお、表中の配合単位は質量部であり、また「-」は「配合無し」を表す。さらに封止用樹脂組成物における無機充填材の含有率(質量%)は、各成分の配合量から算出した。 [0052] (実施例1~9、比較例1~7) エポキシ樹脂として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1;新日鉄住金化学株式会社製、商品名「YDF-8170C」、エポキシ当量:160eq/g)、及び3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2;三菱ケミカル株式会社製、商品名「jER630」、エポキシ当量:95eq/g)を用意した。 [0053] 特定硬化剤として、ジアミノトルエン型アミン硬化剤(アミン硬化剤1;三菱ケミカル株式会社製、商品名「jERキュアW」)、及びジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤(アミン硬化剤2;日本化薬株式会社製、商品名「カヤハード-AA」)を用意した。 [0054] 無機充填材として、シリカ粒子である平均粒径0.5μmで比表面積4.5mm2/gの無機充填材(無機充填材1:株式会社アドマテックス製、商品名「SE2200-SEJ」)、平均粒径50nmで比表面積66mm2/gの無機充填材(無機充填材2:株式会社アドマテックス製、商品名「YA050C-SZ2)、平均粒径10nmで比表面積280mm2/gの無機充填材(無機充填材3:株式会社アドマテックス製、商品名「YA010C-SZ2」)、平均粒径0.3μmで比表面積14mm2/gの無機充填材(無機充填材4:株式会社アドマテックス製、商品名「SE1050」)、平均粒径0.3μmで比表面積15mm2/gの無機充填材(無機充填材5:株式会社アドマテックス製、商品名「SE1050-SET」)、平均粒径0.3μmで比表面積16mm2/gの無機充填材(無機充填材6:株式会社アドマテックス製、商品名「SE1030-SET」)、平均粒径0.15μmで比表面積30mm2/gの無機充填材(無機充填材7:株式会社日本触媒製、商品名「KE-S10」)、及び平均粒径0.15μmで比表面積30mm2/gの無機充填材(無機充填材8:株式会社日本触媒製、商品名「KE-S10-HG」)を用意した。 [0055] 上記で得られた封止用樹脂組成物について、以下のようにして諸特性の評価を行った。また、以下の表1及び表2に各数値を示す。 [0056] (1)流動性:粘度及び揺変指数 封止用樹脂組成物の25℃における粘度(常温粘度、Pa・s)を、E型粘度計(コーン角度3°、回転数10回転/分)を用いて測定した。また、25℃における揺変指数は、回転数が1.5回転/分における粘度と回転数が10回転/分における粘度との比[(1.5回転/分における粘度)/(10回転/分における粘度)]とした。110℃における粘度(Pa・s)はレオメーターAR2000(アルミコーン40mm、せん断速度32.5/sec)を用いて測定した。 [0057] (2)耐熱性:ガラス転移温度(Tg)、熱膨張係数(CTE) 封止用樹脂組成物を165℃、2時間の条件で硬化して作製した試験片(φ4mm×20mm)を、熱機械分析装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名TMAQ400)を用い、荷重15g、測定温度-50℃~220℃、昇温速度5℃/分の条件で測定した。 またTg以下の温度範囲における熱膨張係数をCTE1とし、Tg以上の温度範囲における熱膨張係数をCTE2とした。Tg及びCTEは熱的安定性を示し、Tgは100℃~130℃程度が好ましく、CTE1及びCTE2は低いほど好ましい。 [0058] (3)ブリード:ブリード長さの測定 ソルダーレジスト基板に、Ar2プラズマ処理(400W、2分間)を行い、このAr2プラズマ処理を行ったソルダーレジスト基板上に、シリンジに充填された封止用樹脂組成物を、20Gのニードルにて30mg吐出してポッティングし、150℃で120分間硬化させた。硬化後、光学顕微鏡を用いて、ブリードの長さを測定した。基板にはFR-4(日立化成株式会社製、MRC-E-679)上にソルダーレジスト(太陽インキ製造株式会社製 PSR-4000-AUS703)を形成したものを使用した。ブリード長さは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、350μm以下であることがさらに好ましい。 [0059] [表1] [図:0001421348000001.jpg] ・・・ [0061] 表1及び表2において「第2の無機充填材の含有率」は、無機充填材に占める第2の無機充填材の割合を意味する。 表1及び表2において、「比表面積×無機充填材の割合」は、「無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める無機充填材の質量の割合を乗じた値」を意味する。」 (イ) 甲1に記載された発明 甲1の請求項1の実施態様である実施例1及び2に着目して整理すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、 前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1;新日鉄住金化学株式会社製、商品名「YDF-8170C」、エポキシ当量:160eq/g)50質量部、及び3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2;三菱ケミカル株式会社製、商品名「jER630」、エポキシ当量:95eq/g)50質量部であり、 前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤が、ジアミノトルエン型アミン硬化剤(アミン硬化剤1;三菱ケミカル株式会社製、商品名「jERキュアW」)26.4質量部、及びジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤(アミン硬化剤2;日本化薬株式会社製、商品名「カヤハード-AA」)18.9質量部、 前記(C)無機充填材が、シリカ粒子である平均粒径0.5μmで比表面積4.5mm2/gの無機充填材(無機充填材1:株式会社アドマテックス製、商品名「SE2200-SEJ」)199.8質量部、及びシリカ粒子である平均粒径50nmで比表面積66mm2/gの無機充填材(無機充填材2:株式会社アドマテックス製、商品名「YA050C-SZ2)18.2質量部、無機充填剤の総含有率が60質量%である、常温粘度(25℃における粘度(常温粘度、Pa・s)を、E型粘度計(コーン角度3°、回転数10回転/分)を用いて測定した。)が9.5Pa・sである封止用樹脂組成物。」(以下、「甲1実施例1発明」という。) 「(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、 前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1;新日鉄住金化学株式会社製、商品名「YDF-8170C」、エポキシ当量:160eq/g)50質量部、及び3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2;三菱ケミカル株式会社製、商品名「jER630」、エポキシ当量:95eq/g)50質量部であり、 前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤が、ジアミノトルエン型アミン硬化剤(アミン硬化剤1;三菱ケミカル株式会社製、商品名「jERキュアW」)26.4質量部、及びジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤(アミン硬化剤2;日本化薬株式会社製、商品名「カヤハード-AA」)18.9質量部、 前記(C)無機充填材が、シリカ粒子である平均粒径0.5μmで比表面積4.5mm2/gの無機充填材(無機充填材1:株式会社アドマテックス製、商品名「SE2200-SEJ」)181.6質量部、及びシリカ粒子である平均粒径50nmで比表面積66mm2/gの無機充填材(無機充填材2:株式会社アドマテックス製、商品名「YA050C-SZ2)36.3質量部、無機充填剤の総含有率が60質量%である、常温粘度(25℃における粘度(常温粘度、P a・s)を、E型粘度計(コーン角度3°、回転数10回転/分)を用いて測定した。)が10.7Pa・sである封止用樹脂組成物。」(以下、「甲1実施例2発明」という。) イ 甲2の1に記載された事項 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランで表面処理された平均粒径7~50nmのシリカフィラー、および、(D)平均粒径0.2~5μmのシリカフィラーを含み、 液状封止材の全成分の合計100質量部に対し、前記(C)成分のシリカフィラー、および、前記(D)成分のシリカフィラーの合計含有量が、45~77質量部であり、 前記(C)成分のシリカフィラーと、前記(D)成分のシリカフィラーと、の配合割合(質量比)が1:10.2~1:559であることを特徴とする液状封止材。」 「【0029】 (C)成分のシリカフィラー(1)は、平均粒径7~50nmであるため、液状封止材における分散性を向上させるため、シランカップリング剤で予め表面処理されたものを使用する必要がある。但し、上述したように、粒径がnmオーダーのシリカフィラーは、特許文献2に記載された平均粒径5~40μmのシリカフィラーに比べて、その表面積がはるかに大きくなるため、特許文献2に記載されたもののような、活性が高い従来のシランカップリング剤を使用した場合、シリカフィラーの表面に存在するシラノール基と、シランカップリング剤と、が過度に反応して、液状封止材におけるシリカフィラーの分散性が悪化し、液状封止材の粘度が増加し、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が低下する。 これに対し、本発明の液状封止材では、(C)成分のシリカフィラー(1)として、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランで予め表面処理されたものを使用する。 2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランは、下記式に示す構造をなしており、末端にシクロ環が存在する。 【化1】 [図:0001421348000002.jpg] このシクロ環による立体障害のため、特許文献2に記載されたもののような、従来使用される、グリシジルエーテル型シランカップリング剤のグリシジル基よりも活性が制限される。そのため、シリカフィラーの表面に存在するシラノール基と、シランカップリング剤としての2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランと、が適度に反応するため、液状封止材における分散性が良好である。このため、液状封止材の粘度が増加することがなく、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が良好である。」 「【0052】 (C)シリカフィラー(1) シリカフィラーC-1:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径:7nm)、製品名YN010A-JGP、株式会社アドマテックス製 シリカフィラーC-2:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径:10nm)、製品名YA010A-JGP、株式会社アドマテックス製 シリカフィラーC-3:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径:50nm)、製品名YA050A-JGP、株式会社アドマテックス製 シリカフィラーC-4:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径:100nm)、製品名YC100A-JGP、株式会社アドマテックス製 シリカフィラーC-5:表面未処理シリカフィラー(平均粒径12nm)、製品名R200、Evonik Industries AG製 シリカフィラーC-6:トリメチルシリル表面処理シリカフィラー(平均粒径12nm)、製品名RX200、Evonik Industries AG製 シリカフィラーC-7:オクチルシリル表面処理シリカフィラー(平均粒径12nm)、製品名R805、Evonik Industries AG製 【0053】 (D)シリカフィラー(2) シリカフィラーD-1:表面未処理シリカフィラー(平均粒径:0.3μm)、製品名SP-03B、扶桑化学株式会社製 シリカフィラーD-2:シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)表面処理シリカフィラー(平均粒径:0.25μm)、製品名SE1053-SEO、株式会社アドマテックス製 シリカフィラーD-3:シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)表面処理シリカフィラー(平均粒径:0.5μm)、製品名SE2200-SEE、株式会社アドマテックス製 シリカフィラーD-4:シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)表面処理シリカフィラー(平均粒径:1.5μm)、製品名SE5050-SEJ、株式会社アドマテックス製」 ウ 甲2の5に記載された事項 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)液状エポキシ樹脂、 (B)芳香族アミン系硬化剤:(A)成分中の全エポキシ基に対する(B)成分中の全アミノ基のモル比が0.7~1.2となる量、及び (C)平均粒径が0.1~3μmのシリカである無機充填剤Aと平均粒径が5~70nmの非晶質ナノシリカである無機充填剤Bからなる無機充填剤であって、該無機充填剤Bが下記式(1)及び/又は(2)で表されるカップリング剤で該無機充填剤B100質量部に対して該カップリング剤3~20質量部の割合で表面処理されてなると共に、該無機充填剤Bの無機充填剤全体に対する含有率が0.2~10質量%である無機充填剤:(A)~(C)成分からなる組成物全体に対する含有率が50~80質量%となる量 【化1】 [図:0001421348000003.jpg] (式中、nは1~5の整数、mは1又は2である。)を含有することを特徴とする半導体封止用液状エポキシ樹脂組成物。」 「【0029】 無機充填剤Bは、非晶質ナノシリカ粒子であり、平均粒径が5~50nm、好ましくは10~50nmにコントロールすることが必要である。このような平均粒径を有する無機充填剤Bを後述するカップリング剤で表面処理し特定の割合で上記無機充填剤Aと併用することにより、更に薄膜侵入特性を向上させることができる。 【0030】 このような非晶質ナノシリカ粒子は、例えば、特公平1-55201号公報に記載されるように、酸素を含む雰囲気内においてバーナーにより化学炎を形成し、この化学炎中に金属シリコンを粉塵雲が形成されるように投入し、爆発を起させて合成することができる。 【0031】 非晶質ナノシリカを表面処理するシランカップリング剤としては、下記式(1)又は(2)で表されるもののいずれか一方、あるいは両方が使用され、特に下記式(2’)で表されるものが好適に使用される。 【化6】 [図:0001421348000004.jpg] (式中、nは1~5の整数、mは1又は2である。) 【0032】 【化7】 [図:0001421348000005.jpg] 【0033】 上記式(1)又は(2)のようなシランカップリング剤としては、例えば、KBM103、KBM503、KBE503(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。 【0034】 上記式(1)で表される以外の代表的なカップリング剤、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ-メルカプトシラン等のメルカプトシランなどのシランカップリング剤で上記非晶質ナノシリカ粒子の表面処理を行うと、該非晶質ナノシリカ粒子に凝集あるいは発生し、液状エポキシ樹脂組成物中に分散できなくなることがある。」 エ 甲6の1に記載された事項 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ブタジエン化合物及びウレタン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物Aと、 分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物を少なくとも1種含む化合物Bと、 硬化剤と、 無機フィラーと、 を含むことを特徴とするアンダーフィル組成物。」 「【0006】 本発明は、上記問題を解決するもので、弾性率が低い絶縁膜を含む半導体素子や光半導体素子に最適なアンダーフィル組成物を提供するもので、さらにそのアンダーフィル組成物を用いた半導体装置を提供する。」 「【実施例】 【0037】 以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。 【0038】 (実施例1) <アンダーフィル組成物の作製> 分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物である変性ビスフェノールA型エポキシ(リカレジン製の“BEO-60E”)15重量部、ビスフェノールF型エポキシ(大日本インキ化学工業製の“EXA830LVP”)45重量部、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル10重量部と、室温(25℃)で液状のエポキシ基を有するブタジエン化合物(新日本石油化学製の“E-1000”)10重量部、エポキシ基を有するウレタン化合物(ダイセル化学製の“PUE101”)20重量部と、酸無水物系硬化剤(新日本理化製の“リカシッドHF-24B”)60重量部、酸無水物系硬化剤(油化シェルエポキシ製の“エピキュアYH307”)20重量部、平均粒径約1μmのシリカフィラー(アドマテックス製の“SO-G3”)60重量部、シランカップリング剤(信越化学製の“KBM403”)で表面処理した平均粒径約0.03μmのナノシリカフィラー(日本アエロジル製の“AEROSIL50”)60重量部、シランカップリング剤(信越化学の“KBM403”)6重量部とを混合、撹拌、脱泡し、アンダーフィル組成物を作製した。なお、ナノシリカフィラーの表面処理は、メタノールの溶液中にシランカップリング剤を溶解し、ここにナノシリカフィラーを添加し、撹拌した後、溶液から分離・乾燥することで行った。 【0039】 上記アンダーフィル組成物を150℃で1時間加熱して硬化させた。硬化後のアンダーフィル組成物の熱膨張率は45ppm/℃(30℃から80℃の平均値、TMA測定、以下も同様。)、曲げ弾性率は5.7GPa(30℃、DMS測定、以下も同様。)であった。 【0040】 <半導体装置の製造> 図2Aに示すように、配線を形成したガラス基板20に、VCSEL(AVALON製の“APA410104”)を超音波接合によりフリップチップ実装した。ここで、VCSEL21の発光面と直下のガラス基板20の上面との間隔は、12μmであった。ガラス基板20上の配線を用いて、VCSEL21に電流源を接続して電流を印加し、ガラス基板20の裏面に配置した大口径(直径0.5mm)のフォトディテクタ(PD)22でVCSEL21の発振光を受光した。その時の発振しきい値は1.3mA、スロープ効率は0.32mW/mA(発振しきい値電流と6mAとの間での値、以下も同様。)であった。 【0041】 次に、図2Bに示すように、VCSEL21とガラス基板20との間に上記本実施例のアンダーフィル組成物23を充填し、150℃で1時間加熱して硬化させた後、上記と同様にして発振光を受光した。その時の発振しきい値は1.1mAであり、スロープ効率は0.33mW/mAであった。 【0042】 このアンダーフィル組成物を充填したサンプルを熱衝撃試験槽に入れ、-40℃/85℃の温度サイクルを200サイクル印加する試験を行った。その後、上記と同様にして発振光を受光した。その時の発振しきい値は1.1mA、スロープ効率は0.28mW/mAであり、ほぼ当初の値を維持できていた。 【0043】 また、このサンプルを恒温恒湿槽に入れ、85℃、相対湿度85%で印加電流を発振しきい値の1.2倍にしての高温高湿試験を行った。その結果、500時間後での発振しきい値は1.0mA、スロープ効率は0.28mW/mAであり、実用的には問題のない値であった。 【0044】 以上のように、本実施例のアンダーフィル組成物によって、発光による熱応力が発生しても、VCSELの発光特性の低下を抑制できた。 【0045】 (実施例2) <アンダーフィル組成物の作製> 分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物であるビスフェノールA型エポキシ(油化シェルエポキシ製の“エピコート828”)30重量部、変性ビスフェノールA型エポキシ(リカレジン製の“BEO-60E”)15重量部、ビスフェノールF型エポキシ(大日本インキ化学工業製の“EXA830LVP”)30重量部、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル10重量部と、室温で液状のエポキシ基を有するブタジエン化合物(ダイセル化学製の“エポリードPB4700”)10重量部、エポキシ基を有するブタジエン化合物(新日本石油化学製の“E-1000”)5重量部と、酸無水物系硬化剤(新日本理化製の“HF-24B”)30重量部、酸無水物系硬化剤(油化シェルエポキシ製の“エピキュアYH307”)60重量部、平均粒径約10μmのアルミナフィラー(アドマテックス製の“AO-809”)100重量部、シランカップリング剤(信越化学製の“KBM403”)で表面処理した平均粒径約0.03μmのナノシリカフィラー(日本アエロジル製の“AEROSIL50”)40重量部、シランカップリング剤(信越化学の“KBM403”)9重量部とを混合、撹拌、脱泡し、アンダーフィル組成物を作製した。 【0046】 本アンダーフィル組成物を150℃で1時間加熱して硬化させた。硬化後のアンダーフィル組成物の熱膨張率は41ppm/℃、曲げ弾性率は6.5GPaであった。なお、室温で液状のブタジエン化合物、ウレタン化合物、又はこれらの混合物の添加比を調節することにより、弾性率の低下の割合を調整することができる。 【0047】 <半導体装置の製造1> 実施例1と同様にして、配線を形成したガラス基板に、VCSEL(AVALON製の“APA410104”)を超音波接合によりフリップチップ実装し、フォトディテクタ(PD)でVCSELの発振光を受光した。その時の発振しきい値は1.3mA、スロープ効率は0.32mW/mAであった。 【0048】 次に、実施例1と同様にして、VCSELとガラス基板の間に上記本実施例のアンダーフィル組成物を充填し、150℃で1時間加熱して硬化させた後、上記と同様にして発振光を受光した。その時の発振しきい値は1.1mAであり、スロープ効率は0.28mW/mAであった。 【0049】 以上のように、本実施例のアンダーフィル組成物によって、発光による熱応力が発生しても、VCSELの発光特性の低下を抑制できた。 【0050】 <半導体装置の製造2> 半導体素子として、サイズが8.5mm×8.5mmで、周辺に120個の金バンプを備え、配線の絶縁材の弾性率が10GPa程度の素子を準備した。また、基板として、半導体素子の金バンプと同じ配置電極を有する40mm×40mmのBTレジン基板を準備した。基板の電極が設置されている部位に上記本実施例のアンダーフィル組成物を塗布し、60℃に設定したボンダ装置の基板ステージに設置した。約10分間放置した後、ボンダのチップ加熱ツールに半導体素子を取り、フェイスダウンの半導体素子の金バンプと基板の電極の位置を合せ、アンダーフィル組成物の温度が220℃以上となる時間を10秒とする条件で加熱し、半導体素子を基板に接合した。 【0051】 その後、基板側から引き出した配線を用いて接合部の導通を試験した結果、全ての接合部について導通していることが確認できた。 【0052】 次に、このサンプルを熱衝撃試験槽に入れ、-55℃/125℃の温度サイクルを500サイクル印加する試験を行った。その結果、オープン/導通不良の発生はなかった。 【0053】 以上のように、本実施例のアンダーフィル組成物によって、パッケージに要求される一般的な条件での信頼性を確保することができ、かつ、本実施例のアンダーフィル組成物は弾性率が6.5GPaと低く、素子側の配線の絶縁材の弾性率が10GPa程度の低弾性率材となっても、回路内の配線破断等の不良の発生を抑制することができた。 【0054】 (比較例1) 実施例1と同様にして、配線を形成したガラス基板に、VCSEL(AVALON製の“APA410104”)を超音波接合によりフリップチップ実装し、フォトディテクタ(PD)でVCSELの発振光を受光した。その時の発振しきい値は1.3mA、スロープ効率は0.31mW/mAであった。 【0055】 次に、実施例1と同様にして、VCSELとガラス基板の間に、ブタジエン化合物及びウレタン化合物を含まない従来のアンダーフィル材(ナガセチバ製の“UFR107”、熱膨張率:38ppm/℃、曲げ弾性率:8GPa)を充填し、150℃で1時間加熱して硬化させた後、上記と同様にして発振光を受光した。その時の発振しきい値は1.1mAであり、スロープ効率は0.15mW/mAであった。 【0056】 このアンダーフィル材を充填したサンプルを熱衝撃試験槽に入れ、-40℃/85℃の温度サイクルを200サイクル印加する試験を行った。その後、上記と同様にして発振光を受光した。その時の発振しきい値は1.3mA、スロープ効率は0.06mW/mAであり、スロープ効率が大きく低下した。 【0057】 (比較例2) 実施例1と同様にして、配線を形成したガラス基板に、VCSEL(AVALON製の“APA410104”)を超音波接合によりフリップチップ実装し、フォトディテクタ(PD)でVCSELの発振光を受光した。その時の発振しきい値は1.2mA、スロープ効率は0.31mW/mAであった。 【0058】 次に、実施例1と同様にして、VCSELとガラス基板の間に、シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン製の“JCR6140”、熱膨張率:320ppm/℃、曲げ弾性率:約1MPa)を充填し、150℃で1時間加熱して硬化させた後、上記と同様にして発振光を受光した。その時の発振しきい値は1.1mAであり、スロープ効率は0.34mW/mAであった。 【0059】 このサンプルを恒温恒湿槽に入れ、85℃、相対湿度85%で印加電流を発振しきい値の1.2倍にしての高温高湿試験を行った結果、500時間後での発振しきい値は1.3mA、スロープ効率は0.06mW/mAであり、スロープ効率が大きく低下した。これは、本比較例で用いたアンダーフィル材(シリコーン樹脂)の曲げ弾性率が約1MPaと小さいことによるもと考えられる。 【0060】 以上説明したように、本実施形態のアンダーフィル組成物を用いることにより、VCSEL等の光半導体素子を基板にフリップチップ実装しても、発光特性の低下が小さく、信頼性試験の耐性にも優れる半導体装置を作製することができる。また、本実施形態のアンダーフィル組成物は、その弾性率が4~7GPaと低く、通常のパッケージに要求される信頼性を確保することができ、絶縁層に10GPa程度の低弾性率の絶縁材を使用した半導体素子においても、熱サイクル試験時の半導体素子側の絶縁層の破壊を抑制することができる。」 オ 甲6の2に記載された事項 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 エポキシ樹脂と、 硬化剤と、 グリシジル基を有する化合物で表面処理されたグリシジル系表面処理フィラーと、 下記式(1)で表される基を有する化合物で表面処理されたアクリル系表面処理フィラーと、を含有する半導体用接着剤。 【化1】 [図:0001421348000006.jpg] [式(1)中、R1は水素原子又はアルキル基を示し、R2はアルキレン基を示す。]」 「【0007】 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、十分に高い接着性を有し、耐リフロー性、接続信頼性及び絶縁信頼性に優れる半導体装置の作製を可能とする半導体用接着剤、該接着剤を用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。」 「【0044】 本実施形態の半導体用接着剤が上記効果を奏する理由としては、例えば、半導体基板上にはソルダーレジストと呼ばれる絶縁膜が形成されているが、この成分にはパターンをきって形を形成するために、アクリル系材料を含んでいることが多いため、同材料系を含むアクリル系表面処理フィラーを用いると接着力を向上できると推測している。また、グリシジル系表面処理フィラーは、エポキシ樹脂との相互性がよく、接着剤中への分散性に優れていることから、接着剤層のバルク強度を高めることができると推測している。」 「【実施例】 【0117】 以下、実験例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。 【0118】 各実施例及び比較例で使用した化合物を以下に示す。 (a)エポキシ樹脂 トリフェノールメタン骨格含有多官能固形エポキシ(ジャパンエポキシレジン株式会社、商品名「EP1032H60」、以下「EP1032」と表記する。) ビスフェノールF型液状エポキシ(ジャパンエポキシレジン株式会社、商品名「YL983U」、以下「YL983」と表記する。) 柔軟性エポキシ(ジャパンエポキシレジン株式会社、商品名「YL7175」) (b)硬化剤 2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体(四国化成株式会社、商品名「2MAOK-PW」) (c)グリシジル系表面処理フィラー エポキシ(グリシジル)表面処理シリカフィラー(株式会社アドマテックス、商品名「SE2050SEJ」、平均粒径0.5μm、以下「SEフィラー」と表記する。) エポキシ(グリシジル)表面処理ナノシリカフィラー(株式会社アドマテックス、商品名「YA050C-SE」、平均粒径約50nm以下「SEナノフィラー」と表記する。) (d)メタクリル表面処理シリカフィラー メタクリル表面処理ナノシリカフィラー(株式会社アドマテックス、商品名「YA050C-SM」平均粒径約50nm、以下「SMナノフィラー」と表記する。) (d’)その他のフィラー 未処理のシリカフィラー(株式会社アドマテックス、商品名「SE2050」、平均粒径0.5μm、以下「未処理フィラー」と表記する) フェニル表面処理ナノシリカフィラー(株式会社アドマテックス、商品名「YA050C-SP」、平均粒径約50nm以下「SPナノフィラー」と表記する。) 有機フィラー(ロームアンドハースジャパン(株)社製、商品名「EXL-2655」、コアシェルタイプ有機微粒子) (e)重量平均分子量10000以上の高分子成分 フェノキシ樹脂(東都化成株式会社、商品名「ZX1356」、Tg:約71℃、Mw:約63000) (f)フラックス剤 2-メチルグルタル酸(アルドリッチ) 【0119】 <半導体用フィルム状接着剤の作製方法> (実施例1) 「EP1032」80質量部を2.4g、「YL983」15質量部、「YL7175」5質量部、「2MAOK」3.3質量部、2-メチルグルタル酸3.3質量部、未処理フィラー12.7質量部、SEフィラー12.7質量部、SMナノフィラー38質量部、「EXL2655」8.3質量部を固形分が63質量%になるようにメチルエチルケトンを添加した。その後、直径0.8mm、直径2.0mmのビーズを固形分と同量加え、ビーズミル(フリッチュ・ジャパン株式会社、遊星型微粉砕機P-7)で30分撹拌した。その後、「ZX1356」56.7質量部を加え、再度、ビーズミルで30分撹拌した。撹拌に用いたビーズをろ過によって除去し、樹脂ワニスを得た。 【0120】 得られた樹脂ワニスを、基材フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「ピューレックスA53」)に、小型精密塗工装置(廉井精機製)で塗工し、クリーンオーブン(エスペック株式会社製)中、70℃で10分間乾燥して、フィルム状接着剤を作製した。 【0121】 (実施例2及び比較例1~3) 使用した原材料の組成を下記の表1の通りに変更したことを除いては、実施例1と同様にして、実施例2及び比較例1~3のフィルム状接着剤を作製した。 【0122】 以下に、実施例及び比較例で得られたフィルム状接着剤の評価方法を示す。 【0123】 <吸湿後260℃における接着力の測定> フィルム状接着剤を所定のサイズ(縦5mm×横5mm×厚さ0.045mm)に切り抜き、シリコンチップ(縦5mm×横5mm×厚さ0.725mm、酸化膜コーティング)に70℃で貼付け、熱圧着試験機(日立化成テクノプラント株式会社製)を用いてソルダーレジスト(太陽インキ製、商品名「AUS308」)がコーティングされたガラスエポキシ基板(厚み0.02mm)に圧着した(圧着条件:250℃/5秒間/0.5MPa)。次に、クリーンオーブン(エスペック株式会社製)中でアフターキュアした(175℃/2時間)。その後、85℃、相対湿度60%の恒温恒湿器(エスペック株式会社製、商品名「PR-2KP」)に48時間放置し、取り出し後、260℃のホットプレート上で接着力測定装置(DAGE社製、万能型ボンドテスタDAGE4000型)を使い、基板からのツール高さ0.05mm、ツール速度0.05mm/秒の条件で測定した。 【0124】 <初期接続性の評価> 作製したフィルム状接着剤を所定のサイズ(縦8mm×横8mm×厚さ0.045mm)に切り抜き、ガラスエポキシ基板(ガラスエポキシ基材:420μm厚、銅配線:9μm厚、80μmピッチ)上に貼付し、はんだバンプ付き半導体チップ(チップサイズ:縦7mm×横7mm×厚さ0.15mm、バンプ:銅ピラー及びはんだ、バンプ高さ:約40μm、バンプ数328)をフリップチップ実装装置(パナソニック製、商品名「FCB3」)で実装した(実装条件:圧着ヘッド温度350℃/5秒間/0.5MPa)。これにより、図4と同様に上記ガラスエポキシ基板と、はんだバンプ付き半導体チップとがデイジーチェーン接続された半導体装置を得た。 【0125】 得られた半導体装置の接続抵抗値をマルチメータ(ADVANTEST製、商品名「R6871E」)を用いて測定することにより、実装後の初期導通の可否を評価した。接続抵抗値が10~13Ωの場合を接続性良好「A」とし、それ以外の接続抵抗値の場合又は接続不良(Open)が生じて抵抗値が表示されなかった場合を「B」として評価した。 【0126】 <ボイド評価> 上述の半導体装置を、超音波映像診断装置(インサイト株式会社製、商品名「Insight-300」)により、外観画像を撮り、スキャナGT-9300UF(EPSON社製)でチップ上の接着剤層の画像を取り込み、画像処理ソフトAdobe Photoshopを用いて、色調補正、二階調化によりボイド部分を識別し、ヒストグラムによりボイド部分の占める割合を算出した。チップ上の接着剤部分の面積を100%とし、ボイド部分が10%未満の場合を「A」、10~20%の場合を「B」、20%を超える場合を「C」とした。 【0127】 <耐リフロー性の評価> 上述の半導体装置を封止材(日立化成工業株式会社製、商品名「CEL9750ZHF10」)を用いて、180℃、6.75MPa、90秒間の条件でモールドし、クリーンオーブン(エスペック株式会社)中、175℃で5時間硬化させてパッケージを得た。次に、このパッケージをJEDEC level 2条件で高温吸湿後、IRリフロ炉(FURUKAWA ELECTRIC製、商品名「SALAMANDER」)を3回通過させた。リフロー後のパッケージの接続性を、後述の初期接続性の評価と同様の方法で評価し、耐リフロー性の評価とした。剥離がなく、接続良好な場合を「A」、剥離や接続不良が生じて抵抗値が表示されなかった場合を「B」とした。 【0128】 <接続信頼性の評価(耐TCT評価)> 上述の半導体装置を封止材(日立化成工業株式会社製、商品名「CEL9750ZHF10」)を用いて、180℃、6.75MPa、90秒間の条件でモールドし、クリーンオーブン(エスペック株式会社)中、175℃で5時間硬化させてパッケージを得た。次に、このパッケージを冷熱サイクル試験機(ETAC製、商品名「THERMAL SHOCK CHAMBER NT1200」)内に放置し、1mAの電流を流し、25℃2分間→-55℃15分間→25℃2分間/125℃で15分間/25℃2分間を1サイクルとして接続抵抗を測定し、1000サイクル繰り返した後の接続抵抗の変化を評価した。初期の抵抗値波形と比べて1000サイクル後も大きな変化がなかった場合を「A」、1Ω以上の差が生じた場合を「B」とした。 【0129】 <絶縁信頼性の評価(耐HAST評価)> 作製したフィルム状接着剤を所定のサイズ(縦1.2mm×横1.2mm×厚さ45μm)に切り抜き、くし型電極評価TEG(配線ピッチ:50μm)にボイドなく貼付けたサンプルを、クリーンオーブン(エスペック株式会社製)中、175℃で2時間保持して硬化した。硬化後、サンプルを取り出し、加速寿命試験装置(HIRAYAMA社製、商品名「PL-422R8」、条件:130℃/85%RH/100時間/5V印加)に設置し、絶縁抵抗を測定した。評価方法としては、100時間を通して、絶縁抵抗が108Ω以上である場合を「A」、108Ω未満である場合を「B」として評価した。 【0130】 【表1】 [図:0001421348000007.jpg] 【0131】 グリシジル系表面処理フィラーとアクリル系表面処理フィラーとを併用した実施例1及び2では、吸湿後の260℃における接着力が高く、耐リフロー性、接続信頼性及び絶縁信頼性に優れることが確認できる。」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア) 本件特許発明1の技術的意義 本件特許明細書には、以下の記載がされている。 本件特許明細書の段落【0006】には、「充填性に優れる液状樹脂組成物並びにこれにより封止された電子部品装置及びその製造方法を提供することを目的とする。」ことが記載され、同段落【0028】には、「第一のシリカ粒子は、グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたものである。・・・なお、グリシジル基を有するシランカップリング剤には、3,4-エポキシシクロヘキシル基等の脂環式エポキシ基を有するシランカップリング剤は含まれない。」と記載されている。 そして、【実施例】においては、グリシジル基を有するシランカップリング剤で処理したナノシリカ粒子を使用した実施例2は、充填時間が466秒と、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランで処理したナノシリカ粒子を使用した比較例4~8(充填時間各951、875、655、705、660秒)、フェニルシランで処理したナノシリカ粒子を使用した比較例2及び3(各697、894秒)に比べて充填時間が短くなっている。 すなわち、本件特許発明1は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)シランカップリング剤で表面処理された平均粒子径が20nm~75nmの第一のシリカ粒子、及び、(D)平均粒子径が0.4μm~1.8μmの第二のシリカ粒子を含み、 前記(B)硬化剤が、アミン系硬化剤を含み、 揮発分の含有率が、5質量%以下であり、 前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の合計の占める割合が、50質量%~75質量%であり、 前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の質量基準の比率((D)第二のシリカ粒子/(C)第一のシリカ粒子)が、5~13.4であり、 前記(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径と前記(D)第二のシリカ粒子の平均粒子径との比((D)第二のシリカ粒子の平均粒子径/(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径)が、7~10である液状樹脂組成物であって、特に(C)シランカップリング剤で表面処理された平均粒子径が20nm~75nmの第一のシリカ粒子におけるシランカップリング剤として、フェニルシランや3,4-エポキシシクロヘキシル基等の脂環式エポキシ基を有するシランカップリング剤ではなく、グリシジル基を有するシランカップリング剤を用いることにより、充填性が向上する技術的意義を有するものと解することができる。 (イ)甲1実施例1発明との対比・判断 a 対比 本件特許発明1と甲1実施例1発明とを対比する。 (a)甲1実施例1発明の「(A)エポキシ樹脂」である「ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1;新日鉄住金化学株式会社製、商品名「YDF-8170C」、エポキシ当量:160eq/g)」及び「3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2;三菱ケミカル株式会社製、商品名「jER630」、エポキシ当量:95eq/g)」は、本件特許発明1の「(A)エポキシ樹脂」に相当する。 (b)甲1実施例1発明の「(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤」である「ジアミノトルエン型アミン硬化剤(アミン硬化剤1;三菱ケミカル株式会社製、商品名「jERキュアW」)」及び「ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤(アミン硬化剤2;日本化薬株式会社製、商品名「カヤハード-AA」)」は、本件特許発明1の「アミン系硬化剤を含」む「(B)硬化剤」に相当する。 (c)甲1実施例1発明の「シリカ粒子である平均粒径0.5μmで比表面積4.5mm2/gの無機充填材(無機充填材1:株式会社アドマテックス製、商品名「SE2200-SEJ」)」及び「シリカ粒子である平均粒径50nmで比表面積66mm2/gの無機充填材(無機充填材2:株式会社アドマテックス製、商品名「YA050C-SZ2)」は、各々本件特許発明1の「(D)平均粒子径が0.4μm~1.8μmの第二のシリカ粒子」及び「(C)平均粒子径が20nm~75nmの第一のシリカ粒子」に相当する。 (d)甲1実施例1発明の「無機充填剤の総含有率が60質量%」である点は、本件特許発明1の「前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の合計の占める割合が、50質量%~75質量%」である範囲と重複一致する。 (e)甲1実施例1発明の「前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の質量基準の比率((D)第二のシリカ粒子/(C)第一のシリカ粒子)」を計算すると「10.98」(=199.8/18.2)となるから、本件特許発明1の「質量基準の比率((D)第二のシリカ粒子/(C)第一のシリカ粒子)が、5~13.4」である範囲と重複一致する。 (f)甲1実施例1発明の「前記(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径と前記(D)第二のシリカ粒子の平均粒子径との比((D)第二のシリカ粒子の平均粒子径/(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径)」を計算すると「10」(=500/50)となるから、本件特許発明1の「平均粒子径との比((D)第二のシリカ粒子の平均粒子径/(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径)が、7~10」である範囲と重複一致する。 (g)本件特許明細書の段落【0013】には、「なお、液状エポキシ樹脂とは、常温(25℃)において液状のエポキシ樹脂であることを意味する。具体的には、25℃において、E型粘度計で測定される粘度が1000Pa・s以下であることを意味する。」と記載されているところ、甲1実施例1発明である封止用樹脂組成物の常温粘度(25℃における粘度(常温粘度、Pa・s)を、E型粘度計(コーン角度3°、回転数10回転/分)を用いて測定した。)は、「9.5Pa・s」と「1000Pa・s以下」であるから、甲1実施例1発明である「封止用樹脂組成物」は、本件特許発明1の「液状樹脂組成物」に相当する。 そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)平均粒子径が20~75nmの第一のシリカ粒子、及び、(D)平均粒子径が0.4~1.8μmの第二のシリカ粒子を含み、 前記(B)硬化剤が、アミン系硬化剤を含み、 前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の合計の占める割合が、50~75質量%であり、 前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の質量基準の比率((D)第二のシリカ粒子/(C)第一のシリカ粒子)が、5~13.4であり、 前記(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径と前記(D)第二のシリカ粒子の平均粒子径との比((D)第二のシリカ粒子の平均粒子径/(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径)が、7~10である液状樹脂組成物。 <相違点1-1> (C)平均粒子径が20nm~75nmの第一のシリカ粒子が、本件特許発明1は「グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理され」たものであるのに対し、甲1実施例1発明はグリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理されているか不明な点 <相違点1-2> 揮発分の含有率が、本件特許発明1は「5質量%以下」であるのに対し、甲1実施例1発明は不明な点 b 相違点の検討 <相違点1-1>について 甲1の段落[0034]には、「第2の無機充填材としては、粒子の表面が有機基で予め処理されたものを用いることもできる。粒子の表面が有機基で予め処理されることで、半導体チップ、有機基板等への接着力が向上し、封止用樹脂組成物の硬化物の靭性を向上させる点で好ましい。」と記載されているものの、具体的な有機基やシランカップリング剤の種類については記載されていない。 一方、甲6の1には、「ブタジエン化合物及びウレタン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物Aと、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物を少なくとも1種含む化合物Bと、硬化剤と、無機フィラーと、を含むことを特徴とするアンダーフィル組成物。」(【請求項1】)に関する技術が開示され、実施例において、「シランカップリング剤(信越化学製の“KBM403”)で表面処理した平均粒径約0.03μmのナノシリカフィラー(日本アエロジル製の“AEROSIL50”)」を用いた例が記載されている。しかしながら、甲6の1には、当該シランカップリング剤で表面処理したことによる作用効果については特に記載されていない。 また、甲6の2には、「エポキシ(グリシジル)表面処理ナノシリカフィラー(株式会社アドマテックス、商品名「YA050C-SE」、平均粒径約50nm以下「SEナノフィラー」と表記する。)」用いた例が記載されている。しかしながら、甲6の2は、「エポキシ樹脂と、硬化剤と、グリシジル基を有する化合物で表面処理されたグリシジル系表面処理フィラーと、 下記式(1)で表される基を有する化合物で表面処理されたアクリル系表面処理フィラーと、を含有する半導体用接着剤。 【化1】 [図:0001421348000008.jpg] [式(1)中、R1は水素原子又はアルキル基を示し、R2はアルキレン基を示す。]」(【請求項1】)に関するもので、グリシジル基を有する化合物で表面処理されたグリシジル系表面処理フィラーは、上記式(1)で表される基を有する化合物で表面処理されたアクリル系表面処理フィラーと併用することを必須とするものである。 そして、甲2の1には、「(A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランで表面処理された平均粒径7~50nmのシリカフィラー、および、(D)平均粒径0.2~5μmのシリカフィラーを含み、液状封止材の全成分の合計100質量部に対し、前記(C)成分のシリカフィラー、および、前記(D)成分のシリカフィラーの合計含有量が、45~77質量部であり、前記(C)成分のシリカフィラーと、前記(D)成分のシリカフィラーと、の配合割合(質量比)が1:10.2~1:559であることを特徴とする液状封止材。」(【請求項1】)に関する技術ついて記載され、その段落【0029】には、「(C)成分のシリカフィラー(1)は、平均粒径7~50nmであるため、液状封止材における分散性を向上させるため、シランカップリング剤で予め表面処理されたものを使用する必要がある。但し、上述したように、粒径がnmオーダーのシリカフィラーは、特許文献2に記載された平均粒径5~40μmのシリカフィラーに比べて、その表面積がはるかに大きくなるため、特許文献2に記載されたもののような、活性が高い従来のシランカップリング剤を使用した場合、シリカフィラーの表面に存在するシラノール基と、シランカップリング剤と、が過度に反応して、液状封止材におけるシリカフィラーの分散性が悪化し、液状封止材の粘度が増加し、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が低下する。」と記載されている。 また、甲2の5には、「(A)液状エポキシ樹脂、(B)芳香族アミン系硬化剤:(A)成分中の全エポキシ基に対する(B)成分中の全アミノ基のモル比が0.7~1.2となる量、及び (C)平均粒径が0.1~3μmのシリカである無機充填剤Aと平均粒径が5~70nmの非晶質ナノシリカである無機充填剤Bからなる無機充填剤であって、該無機充填剤Bが下記式(1)及び/又は(2)で表されるカップリング剤で該無機充填剤B100質量部に対して該カップリング剤3~20質量部の割合で表面処理されてなると共に、該無機充填剤Bの無機充填剤全体に対する含有率が0.2~10質量%である無機充填剤:(A)~(C)成分からなる組成物全体に対する含有率が50~80質量%となる量 【化1】 [図:0001421348000009.jpg] (式中、nは1~5の整数、mは1又は2である。)を含有することを特徴とする半導体封止用液状エポキシ樹脂組成物。」(【請求項1】)について記載されており、その段落【0031】~【0034】には、「非晶質ナノシリカを表面処理するシランカップリング剤としては、下記式(1)又は(2)で表されるもののいずれか一方、あるいは両方が使用され、特に下記式(2’)で表されるものが好適に使用される。 【化6】 [図:0001421348000010.jpg] (式中、nは1~5の整数、mは1又は2である。) 【化7】 [図:0001421348000011.jpg] 上記式(1)又は(2)のようなシランカップリング剤としては、例えば、KBM103、KBM503、KBE503(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。 上記式(1)で表される以外の代表的なカップリング剤、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン・・・などのシランカップリング剤で上記非晶質ナノシリカ粒子の表面処理を行うと、該非晶質ナノシリカ粒子に凝集あるいは発生し、液状エポキシ樹脂組成物中に分散できなくなることがある。」と記載されている。 そうすると、当業者は、仮に甲6の1や甲6の2のように、「グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理され」たナノシリカ粒子を使用した例があったとしても、「グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理され」たナノシリカ粒子を使用すると、上記甲2の1に記載されているように「液状封止材におけるシリカフィラーの分散性が悪化し、液状封止材の粘度が増加し、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が低下」したり、上記甲2の5に記載されているように「凝集あるいは発生し、液状エポキシ樹脂組成物中に分散できなくなる」おそれがあるから、甲1実施例1発明において、第一のシリカ粒子を、「グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理され」たものとする動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。 また、申立人の提出した他の証拠には、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)平均粒子径が20nm~75nmの第一のシリカ粒子、及び、(D)平均粒子径が0.4μm~1.8μmの第二のシリカ粒子を含む液状樹脂組成物において、平均粒子径が20nm~75nmの第一のシリカ粒子が、「グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理され」たものは記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1実施例1発明において、上記<相違点1-1>に係る事項とすることは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 したがって、本件特許発明1は、上記<相違点1-2>を検討するまでもなく、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 c 効果の検討 本件特許発明1の効果について検討する。 本件特許明細書の段落【0008】には、「本発明の一形態によれば、充填性に優れる液状樹脂組成物並びにこれにより封止された電子部品装置及びその製造方法を提供することができる。」ことが記載され、上記(ア)で示したように、【実施例】において、グリシジル基を有するシランカップリング剤で処理したナノシリカ粒子を使用した実施例2は、充填時間が466秒と、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランで処理したナノシリカ粒子を使用した比較例4~8(充填時間各951、875、655、705、660秒)、フェニルシランで処理したナノシリカ粒子を使用した比較例2及び3(各697、894秒)に比べて充填時間が短くなっていることから、グリシジル基を有するシランカップリング剤で処理したことにより、顕著な効果を奏することが理解できる。 一方、申立人の提出したいずれの証拠にも、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)平均粒子径が20nm~75nmの第一のシリカ粒子、及び、(D)平均粒子径が0.4μm~1.8μmの第二のシリカ粒子を含む液状樹脂組成物において、グリシジル基を有するシランカップリング剤で処理したナノシリカ粒子を使用したものが、他のシランカップリング剤で処理したナノシリカ粒子を使用したものに比べて、充填時間が短くなることは記載も示唆もされていない。 そうすると、本件特許発明1の効果は、甲1、甲2の1~甲6の2に記載された技術的事項から当業者が予測し得る範囲のものといえず、格別顕著なものである。 (ウ)甲1実施例2発明との対比・判断 本件特許発明1と甲1実施例2発明とを対比すると、下記の点でのみ相違する。 <相違点1’-1> (C)平均粒子径が20nm~75nmの第一のシリカ粒子が、本件特許発明1は「グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理され」たものであるのに対し、甲1実施例2発明はグリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理されているか不明な点 <相違点1’-2> 揮発分の含有率が、本件特許発明1は「5質量%以下」であるのに対し、甲1実施例2発明は不明な点 しかしながら、<相違点1’-1>は、上記(イ)aの<相違点1-1>と同じであるから、上記(イ)bで説示したのと同様、甲1実施例2発明において、上記<相違点1’-1>に係る事項とすることは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そうすると、本件特許発明1は、上記<相違点1’-2>を検討するまでもなく、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、及び甲1、甲2の1~甲6の2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件特許発明2~7について 本件特許発明2~7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、上記アで示した本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明2~7は、甲1に記載された発明、及び甲1、甲2の1~甲6の2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)申立人の主張について 申立人は、上申書において、「特許権者の「上記のように、甲2-1、甲2-5、甲4-2のいずれにも、グリシジル基を有するシランカップリング剤で処理された小径粒子を用いる実施例は記載されていない。」との主張は失当であり、さらに、小径粒子であるナノシリカ粒子をグリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理して用いることは周知技術であるため、グリシジル基を有するシランカップリング剤で処理された小径粒子を含むことを要件とする本件特許の請求項1に係る発明は甲第1号証に記載の発明及び周知技術から当業者が容易に想到できたものである。」(第5ページ第2~8行)と主張している。 そこで、上記主張について検討する。 液状樹脂組成物において、仮に、シリカ粒子をシランカップリング剤で表面処理すること自体が周知技術であり、シランカップリング剤としてグリシジル基を有するものが知られていたとしても、「グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理され」たナノシリカ粒子を使用すると、上記甲2の1に記載されているように「液状封止材におけるシリカフィラーの分散性が悪化し、液状封止材の粘度が増加し、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が低下」したり、上記甲2の5に記載されているように「凝集あるいは発生し、液状エポキシ樹脂組成物中に分散できなくなる」おそれがあるから、甲1実施例1発明において、第一のシリカ粒子を、「グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理され」たものとする動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。 したがって、申立人の上記主張を首肯することができない。 (4)まとめ 本件特許発明1~7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、取消理由1及び申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(サポ-ト要件違反)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載事項 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、半導体の進歩は著しく、バンプ接続を行うフリップチップ方式ではバンプ数の増加に伴いバンプピッチ及びバンプ高さが小さくなり、結果として狭ギャップ化が進んでいる。半導体の高集積化に伴いチップサイズも大きくなり、アンダーフィル材には狭ギャップで大面積の空隙を均一に充填する特性が求められてきている。 【0006】 本発明の一形態は、上記従来の事情に鑑みなされたものであり、充填性に優れる液状樹脂組成物並びにこれにより封止された電子部品装置及びその製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。 <1> (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理された平均粒子径が5nm以上200nm未満の第一のシリカ粒子、及び、(D)平均粒子径が0.2μm~5μmの第二のシリカ粒子を含み、 前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の合計の占める割合が、40質量%~80質量%であり、 前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の質量基準の比率((D)第二のシリカ粒子/(C)第一のシリカ粒子)が、5~600である液状樹脂組成物。 <2> 前記(A)エポキシ樹脂の25℃における粘度が、1000Pa・s以下である<1>に記載の液状樹脂組成物。 <3> 前記(B)硬化剤が、アミン系硬化剤を含む<1>又は<2>に記載の液状樹脂組成物。 <4> イオントラップ剤を含有する<1>~<3>のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。 <5> 硬化促進剤を含有する<1>~<4>のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。 <6> 酸化防止剤を含有する<1>~<5>のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。 <7> 揮発分の含有率が、5質量%以下である<1>~<6>のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。 <8> 回路層を有する基板と、 前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品と、 前記基板と前記電子部品との間隙に配置された<1>~<7>のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物の硬化物と、 を備える電子部品装置。 <9> 回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品とを、<1>~<7>のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物を用いて封止する工程を有する電子部品装置の製造方法。」 「【0010】 <液状樹脂組成物> 本開示の液状樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理された平均粒子径が5nm以上200nm未満の第一のシリカ粒子、及び、(D)平均粒子径が0.2μm~5μmの第二のシリカ粒子を含み、前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の合計の占める割合が、40質量%~80質量%であり、前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の質量基準の比率((D)第二のシリカ粒子/(C)第一のシリカ粒子)が、5~600である。 本開示の液状樹脂組成物は、充填性に優れる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。 平均粒子径が5nm以上200nm未満のシリカ粒子がグリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理されることで、シリカ粒子とエポキシ樹脂との濡れ性が向上する。また、平均粒子径が5nm以上200nm未満のシリカ粒子と平均粒子径が0.2μm~5μmのシリカ粒子とを所定の割合で併用することで、シリカ粒子全体としての流動性が向上する。これらの理由から液状樹脂組成物の流動性が向上し、その結果として液状樹脂組成物の粘度が低下するため、本開示の液状樹脂組成物は、充填性に優れるものになると推察される。」 「【0024】 第一のシリカ粒子及び第二のシリカ粒子の合計の占める割合は、40質量%~80質量%であり、45質量%~75質量%であることが好ましく、50質量%~75質量%であることがより好ましい。 第一のシリカ粒子及び第二のシリカ粒子の質量基準の比率(第二のシリカ粒子/第一のシリカ粒子)は、5~600であり、5~300であることが好ましく、5~100であることがより好ましく、5~75であることがさらに好ましい。 本開示の液状樹脂組成物は、シリカ粒子以外のその他の無機充填材を含んでもよい。その他の無機充填材としては、アルミナ、ジルコン、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ベリリア、ジルコニア等が挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填材としては、水酸化アルミニウム、硼酸亜鉛等が挙げられる。 無機充填材に占めるその他の無機充填材の含有率は、10質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。 【0025】 液状樹脂組成物に占めるシリカ粒子の合計の含有率が同じである場合、第二のシリカ粒子のみを無機充填材として用いた場合に比較して、第二のシリカ粒子と共に第一のシリカ粒子を併用することで液状樹脂組成物の粘度を低下させることができる傾向にある。そのため、液状樹脂組成物の粘度上昇を招くことなくシリカ粒子の合計の含有率を上げることができる傾向にある。シリカ粒子の合計の含有率が上昇することで液状樹脂組成物の硬化物の熱膨張率が低下し、その結果として液状樹脂組成物により封止された電子部品装置の信頼性が向上する傾向にある。 【0026】 第一のシリカ粒子の平均粒子径は、5nm以上200nm未満であり、10nm~100nmであることが好ましく、20nm~75nmであることがより好ましい。第一のシリカ粒子の平均粒子径が5nm以上であれば、液状樹脂組成物の粘度が増大しにくく、流動性の悪化が生じにくい傾向にある。第一のシリカ粒子の平均粒子径が200nm未満であると、液状樹脂組成物の粘度を低くすることができる傾向にある。」 「【0033】 第二のシリカ粒子は、液状樹脂組成物の硬化物に耐ヒートサイクル性、耐湿性、絶縁性等を付与し、液状樹脂組成物の硬化の際の応力を低減する。 【0034】 第二のシリカ粒子の平均粒子径は、0.2μm~5μmであり、0.2μm~3μmであることが好ましく、0.3μm~2μmであることがより好ましく、0.4μm~1.8μmであることがさらに好ましい。 第二のシリカ粒子の比表面積としては、流動性の観点から、1m2/g~30m2/gであることが好ましく、2m2/g~20m2/gであることがより好ましい。」 「【0040】 第一のシリカ粒子の平均粒子径と第二のシリカ粒子の平均粒子径との比(第二のシリカ粒子の平均粒子径/第一のシリカ粒子の平均粒子径)は、7~40であることが好ましく、8~35であることがより好ましく、9~32であることがさらに好ましい。」 「【実施例】 【0069】 以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例において、部及び%は特に断りのない限り、質量部及び質量%を示す。 【0070】 (実施例1~4及び比較例1~8) 表1及び表2に示す組成となるように各成分を配合し、三本ロール及び真空ライカイ機にて混練し、分散して、実施例1~実施例4及び比較例1~比較例8の液状樹脂組成物を作製した。なお、表中の配合単位は質量部であり、また「-」は「配合無し」を表す。 【0071】 以下に液状樹脂組成物の作製に用いた材料とその略号を示す。 (A)エポキシ樹脂 ・エポキシ樹脂1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量:160g/eq、25℃における粘度:1Pa・s~2Pa・s) ・エポキシ樹脂2:アミノフェノール型3官能エポキシ樹脂(エポキシ当量:95g/eq、25℃における粘度:0.5Pa・s~1.0Pa・s) ・エポキシ樹脂3:ポリプロピレングリコール型2官能エポキシ樹脂(エポキシ当量:315g/eq、25℃における粘度:0.04Pa・s~0.06Pa・s) 【0072】 (B)硬化剤 ・硬化剤1:ジエチルトルエンジアミン(アミン当量:45g/eq) ・硬化剤2:4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)(アミン当量:63g/eq) 【0073】 (C)第一のシリカ粒子 ・ナノシリカ粒子1:平均粒子径50nm、フェニルシランによる処理 ・ナノシリカ粒子2:平均粒子径50nm、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランによる処理 ・ナノシリカ粒子3:平均粒子径20nm、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランによる処理 ・ナノシリカ粒子4:平均粒子径10nm、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランによる処理 (D)第二のシリカ粒子 ・マイクロシリカ粒子1:平均粒子径0.5μm ・マイクロシリカ粒子2:平均粒子径1.5μm 【0074】 ・硬化促進剤:トリフェニルホスフィン ・着色剤:カーボンブラック(分散剤90%含有、カーボンブラックを固形分として10%含有)、平均粒子径24nm ・イオントラップ剤:ビスマス系イオントラップ剤 ・酸化防止剤:テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン 【0075】 (1)流動性:粘度及び揺変指数 液状樹脂組成物の25℃における粘度(粘度(25℃)、Pa・s)を、E型粘度計(コーン角度3°、回転数10回転/分)を用いて測定した。また、25℃における揺変指数は、回転数が2.5回転/分における粘度と回転数が10回転/分における粘度との比[(2.5回転/分における粘度)/(10回転/分における粘度)]とした。 110℃における粘度(粘度(110℃)、Pa・s)はレオメーターAR2000(アルミコーン40mm、せん断速度32.5/sec)を用いて測定した。 得られた結果を表1又は表2に示す。 【0076】 (充填時間) スライドガラス上に、10μmのギャップを設けて、半導体素子の代わりにガラス板(20mm×30mm×1mm厚)を固定した試験片を作製した。この試験片を110℃に加熱したホットプレート上に置き、液状樹脂組成物をガラス板の側面(1辺)に塗布し、液状樹脂組成物がスライドガラスとガラス板の間を浸透して対向する側面に到達するまでの時間を測定した。 得られた結果を表1又は表2に示す。 【0077】 【表1】 [図:0001421348000012.jpg] 【0078】 【表2】 [図:0001421348000013.jpg] 【0079】 表1及び表2において、「シリカ含有率」は、(C)第一のシリカ粒子及び(D)第二のシリカ粒子の合計の占める割合を意味し、「シリカ比率」は、(C)第一のシリカ粒子及び(D)第二のシリカ粒子の質量基準の比率((D)第二のシリカ粒子/(C)第一のシリカ粒子)を意味し、「粒径比」は、(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径及び(D)第二のシリカ粒子の平均粒子径の比((D)第二のシリカ粒子/(C)第一のシリカ粒子)を意味する。 表1及び表2から明らかなように、実施例の液状樹脂組成物の充填時間は比較例の液状樹脂組成物の充填時間よりも短い。そのため、本開示の液状樹脂組成物は、充填性に優れることがわかる。」 (3)検討 ア 本件特許発明は、本件特許明細書の段落【0006】等から、「充填性に優れる液状樹脂組成物並びにこれにより封止された電子部品装置及びその製造方法を提供すること」を課題とするものである。 イ そこで、まず本件特許明細書の発明の詳細な説明の一般的記載について見てみる。 本件特許明細書の段落【0007】には、「前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。 <1> (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)グリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理された平均粒子径が5nm以上200nm未満の第一のシリカ粒子、及び、(D)平均粒子径が0.2μm~5μmの第二のシリカ粒子を含み、 前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の合計の占める割合が、40質量%~80質量%であり、 前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の質量基準の比率((D)第二のシリカ粒子/(C)第一のシリカ粒子)が、5~600である液状樹脂組成物。」と記載され、同段落【0010】には、「本開示の液状樹脂組成物は、充填性に優れる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。 平均粒子径が5nm以上200nm未満のシリカ粒子がグリシジル基を有するシランカップリング剤で表面処理されることで、シリカ粒子とエポキシ樹脂との濡れ性が向上する。また、平均粒子径が5nm以上200nm未満のシリカ粒子と平均粒子径が0.2μm~5μmのシリカ粒子とを所定の割合で併用することで、シリカ粒子全体としての流動性が向上する。これらの理由から液状樹脂組成物の流動性が向上し、その結果として液状樹脂組成物の粘度が低下するため、本開示の液状樹脂組成物は、充填性に優れるものになると推察される。」と、本開示の液状樹脂組成物が充填性に優れるものになることの一応の作用機序が記載されている。 また、同段落【0024】には、「第一のシリカ粒子及び第二のシリカ粒子の合計の占める割合は・・・50質量%~75質量%であることがより好ましい。第一のシリカ粒子及び第二のシリカ粒子の質量基準の比率(第二のシリカ粒子/第一のシリカ粒子)は・・・5~75であることがさらに好ましい。」と記載され、さらに、同段落【0040】には、「第一のシリカ粒子の平均粒子径と第二のシリカ粒子の平均粒子径との比(第二のシリカ粒子の平均粒子径/第一のシリカ粒子の平均粒子径)は、7~40であることが好まし・・・い。」と記載されている。 ウ 次いで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の上記一般的記載を除く、【実施例】について見てみる。 マイクロシリカ粒子のみを使用した比較例1の充填時間が、「694秒」となっている。一方、前記(C)第一のシリカ粒子として、ナノシリカ粒子2(平均粒子径50nm、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランによる処理)を使用し、前記(D)第二のシリカ粒子として、マイクロシリカ粒子1(平均粒子径0.5μm)を使用し、前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の合計の占める割合が67.5質量%であり、前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の質量基準の比率が各々66.6、12.5、5.7、前記(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径と前記(D)第二のシリカ粒子の平均粒子径との比が10.0となっている実施例1~3の充填時間が、各々「573秒」、「466秒」、「472秒」と比較例1よりも短くなっている。また、マイクロシリカ粒子2(平均粒子径1.5μm)を使用し、前記(D)第二のシリカ粒子として、前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の合計の占める割合が72.0質量%であり、前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の質量基準の比率が13.4、前記(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径と前記(D)第二のシリカ粒子の平均粒子径との比が30.0となっている実施例4の充填時間も「507秒」と比較例1よりも短くなっている。すなわち、本件特許明細書の一般的記載の記載事項が、【実施例】により裏付けられているといえる。 エ そうすると、「(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)グリシジル 基を有するシランカップリング剤で表面処理された平均粒子径が20nm~75nm未満の第一のシリカ粒子、及び、(D)平均粒子径が0.4μm~1.8μmの第二のシリカ粒子を含み、 前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の合計の占める割合が、50質量%~75質量%であり、 前記(C)第一のシリカ粒子及び前記(D)第二のシリカ粒子の質量基準の比率((D)第二のシリカ粒子/(C)第一のシリカ粒子)が、5~75であり、 前記(C)第一のシリカ粒子の平均粒子径と前記(D)第二のシリカ粒子の平均粒子径との比が7~40である液状樹脂組成物。」である技術的事項により、本件特許発明の課題が解決されることが理解できる。 そして、本件特許発明1、及び本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~7は、前記技術的事項を備えるものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できるものといえる。 オ したがって、本件特許発明1~7は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (4)申立人の主張について 申立人は、申立書において、「甲第1号証、甲第1号証の1乃至甲第2号証の7に記載されているように、シリカ粒子の粒子径が異なれば、液状樹脂組成物の充填性(注入性)が変わることが技術常識である。 してみると、(C)第一のシリカ粒子及び(D)第二のシリカ粒子の質量基準の比率(G1)及び平均粒子径比(G2)の両方が、本件特許の請求項1で規定する範囲内であったとしても、当該技術常識を参酌すれば、(C)平均粒子径50nmの第一のシリカ粒子と(D)平均粒子径0.5μmの第二のシリカ粒子を用いた平均粒子径比(G2)が10.0である例のみが示されているに過ぎない本件特許明細書の実施例2と実施例3に基づいて、実施例2と実施例3に記載された第一のシリカ粒子、第二のシリカ粒子以外のシリカ粒子を包含する本件特許の請求項1に係る発明の範囲まで、本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されておらず、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化するための根拠も見いだせない。」(第78ページ第2~15行)と主張している。 しかしながら、本件特許明細書には、本件特許発明1の範囲から外れるものの実施例4が開示されている。そして、その平均粒子径比(G2)は「30.0」で、充填時間も「507秒」と比較例1(694秒)よりも短くなっており、本件特許発明の課題が解決されている。すなわち、本件特許発明の課題が解決し得ることを示す平均粒子径比(G2)の例は、「10.0」である1例のみではない。 そして、上記(3)で説示したように、前記技術的事項により、本件特許発明の課題が解決されることが理解できる。 したがって、申立人の上記主張を首肯することはできない。 (5)まとめ したがって、本件特許の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由2によっては取り消すことはできない。 3 申立理由3(実施可能要件違反)について (1)実施可能要件の判断基準 実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、方法の発明の場合には、その方法を使用することができる程度の記載があるか、物の発明の場合には、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 (2)検討 本件特許明細書には、本件特許発明に係る液状樹脂組成物を構成する各成分について、その段落【0012】~【0059】に記載されており、当該液状樹脂組成物の作成方法について、同段落【0060】~【0064】に記載されている。 そして、本件特許明細書の【実施例】には、4つの実施例と8つの比較例が作製されており、4つの実施例は、8つの比較例よりも充填時間を短くなっている。 そうすると、当業者は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【実施例】を基にし、実施例以外の本件特許発明の範囲についても、発明の詳細な説明の一般的記載及び出願時の技術常識を参酌して、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明を実施することができるものといえる。 (3)申立人の主張について 申立人は、申立書において、「甲第1号証、甲第1号証の1乃至甲第2号証の7に記載されているように、シリカ粒子の粒子径が異なれば、液状樹脂組成物の充填性(注入性)が変わることが技術常識である。 そうすると、実施例2と実施例3のみから、第一のシリカ粒子、第二のシリカ粒子について、広範な範囲の粒子径の第一のシリカ粒子及び第二のシリカ粒子の中からどの程度の粒子径のシリカ粒子を選択して組み合わせて用いれば、本願の実施例2や実施例3と同様の充填性の液状樹脂組成物を得ることができるのか、合理的に推測することは困難であり、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等が必要であるものと思料する。」(第80ページ第15~24行)と主張している。 しかしながら、本件特許明細書には、本件特許発明1から外れるものの実施例1及び4が開示されており、当該実施例は、8つの比較例よりも充填時間が短くなっている。そうすると、本件特許発明1を実施する際に参考にできる例は、実施例2と実施例3のみとはいえない。 そして、上記(2)で説示したように、当業者は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【実施例】を基にし、本件特許発明1の実施例以外の範囲についても、発明の詳細な説明の一般的記載及び出願時の技術常識を参酌して、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1~7を実施することができるものといえる。 したがって、申立人の主張は首肯できない。 (4)まとめ したがって、本件特許の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由3によっては、取り消すことはできない。 第5 むすび 上記第4のとおり、本件特許の請求項1~7に係る特許は、当審において通知した取消理由通知及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700142

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