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特許異議申立

2024-700451

組成物、重合体、硬化物、成形体及びポリメタクリル酸メチルの製造方法

審判番号
2024-700451
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-075182
登録番号
7389295
請求日
2024年05月13日
審決日
2025年01月31日
公報発行日
2025年05月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友化学株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】三上 敬史
  • 【権利者代理人】吉住 和之
  • 【権利者代理人】田中 政輝
  • 【異議申立人】林 法子
審判長/審判官
  • 審判長 近野 光知
  • 審判官 細井 龍史
  • 審判官 北澤 健一
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第131条の2第1項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7389295号発明「組成物、重合体、硬化物、成形体及びポリメタクリル酸メチルの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7389295号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり〔1~12〕について訂正することを認める。 特許第7389295号の請求項1~12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7389295号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許は、令和5年4月28日に出願した特願2023-75182号であって、令和5年11月20日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年5月13日に林 法子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~12)がされたものである。 その後の手続は以下のとおりである。 令和6年 8月26日付け 取消理由通知 同年10月24日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年11月 1日 手続補正書(方式)の提出(特許権者) 同年 同月12日付け 訂正請求があった旨の通知 同年12月11日 意見書(申立人)の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和6年10月24日に提出されるとともに同年11月1日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(4)のとおりである。 なお、当該手続補正書(方式)による補正は、訂正請求書の「6 請求の趣旨」の「特許第7389295号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める。」を「特許第7389295号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める。」(当審注:下線は当審により付与した。以下、同様。)、及び、「7 請求の理由」の(3)イの「訂正後の請求項2、3、及び5~12」を「訂正後の請求項2~12」に変更するもので、不整合な記載の不備を補正するもので、要旨を変更するものではないから、特許法第131条の2第1項に適合するものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「10000質量ppm」とあるのを、「5000質量ppm」と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、「組成物。」とあるのを、 「組成物(但し、 メタクリル酸メチル99.9~99.97%、 不純物として、 -水:100ppm -メタクリル酸:5ppm -アセトン:1ppm -メタノール:<10ppm -プロピオン酸メチル:<5ppm -イソ酢酸+ピバリン酸メチル:60ppm -アクリル酸メチル:25ppm -メタクリル酸エチル:40ppm -ブタノール:5ppm -メトキシイソ酪酸メチル:<10ppm -ヒドロキシイソ酪酸メチル+ピルビン酸メチル:<60ppm を含む組成物、 99.97% メタクリル酸メチル 0.002% メタクリロニトリル 0.003% イソブタノール 0.008% ブタノール 0.014% 水 を含む組成物、並びに 99.971% メタクリル酸メチル 0.002% メタクリロニトリル 0.003% イソブタノール 0.0087% ブタノール 0.014% 水 を含む組成物 を除く)。」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に、「5質量ppm~6000質量ppm」とあるのを、「10質量ppm~5000質量ppm」と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に、「6000質量ppm」とあるのを、「5000質量ppm」 と訂正する。 2 一群の請求項 訂正前の請求項1~12について、請求項2~12は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~12に対応する訂正後の請求項1~12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 したがって、訂正事項1及び2による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1による訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、炭素数4のアルコールの濃度の上限を「10000ppm」から「5000ppm」に狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、当該訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0017】に記載されているから、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。 また、訂正事項1による請求項2~12についての訂正も同様である。 (2)訂正事項2による訂正について 訂正事項2による請求項1についての訂正は、「メタクリル酸メチル99.9~99.97%、 不純物として、 -水:100ppm -メタクリル酸:5ppm -アセトン:1ppm -メタノール:<10ppm -プロピオン酸メチル:<5ppm -イソ酢酸+ピバリン酸メチル:60ppm -アクリル酸メチル:25ppm -メタクリル酸エチル:40ppm -ブタノール:5ppm -メトキシイソ酪酸メチル:<10ppm -ヒドロキシイソ酪酸メチル+ピルビン酸メチル:<60ppm を含む組成物、 99.97% メタクリル酸メチル 0.002% メタクリロニトリル 0.003% イソブタノール 0.008% ブタノール 0.014% 水 を含む組成物、並びに 99.971% メタクリル酸メチル 0.002% メタクリロニトリル 0.003% イソブタノール 0.0087% ブタノール 0.014% 水 を含む組成物」を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、当該訂正事項は、新たな技術的事項を導入するものではないから、訂正事項2による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。 また、訂正事項2による請求項2~12についての訂正も同様である。 (3)訂正事項3による訂正について 訂正事項3による請求項4についての訂正は、炭素数4のアルコールの濃度を、「5質量ppm~6000質量ppm」から「10質量ppm~5000質量ppm」に狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、当該訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0017】に記載されているから、訂正事項3による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。 また、訂正事項3による請求項10~12についての訂正も同様である。 (4)訂正事項4による訂正について 訂正事項4による請求項5についての訂正は、炭素数4のアルコールの濃度の上限を、「6000質量ppm」から「5000質量ppm」に狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、当該訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0017】に記載されているから、訂正事項4による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。 また、訂正事項4による請求項10~12についての訂正も同様である。 4 申立人の主張について 申立人は、意見書の第4~7ページにおいて、下記参考資料1である審査基準の「第2章 新規事項を追加する補正」において、「「除くクレーム」とする補正」とは、・・・その重なりのみを除く補正」であること、「「除くクレーム」とすることにより特許を受けることができる発明は、引用発明と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有するが、たまたま引用発明と重なるような発明」であること、「「除く」部分が請求項に係る発明の大きな部分を占めたり、多数にわたる場合には、一の請求項から一の発明が明確に把握できないことがある。」という事項を根拠にして、訂正事項2に係る組成物を除く訂正は、新たな新規事項を導入するものであるので、本件訂正は認められるべきでない旨主張する。 しかしながら、新規事項の追加の判断基準について、「「明細書又は図面に記載した事項」とは、技術的思想の高度の創作である発明について、特許権による独占を得る前提として、第三者に対して開示されるものであるから、ここでいう「事項」とは明細書又は図面によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提となるところ、「明細書又は図面に記載した事項」とは、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。」(知財高判平20.5.30、平18(行ケ)第10563号)と示されているところ、申立人が参照する審査基準に記載されているいずれの事項も、上記判断基準を左右するものではない。 そうすると、上記3(2)で示したとおり、訂正事項2に係る組成物を除く訂正は、上記した知財高判の判断基準に示される「新たな技術的事項を導入しないもの」である。 したがって、申立人の上記主張は首肯することができない。 5 むすび 以上のとおり、請求項1~12についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項で準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1~12を総称して「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 メタクリル酸メチル及び炭素数4のアルコールを含有し、 炭素数4のアルコールの濃度が組成物全体の5質量ppm~5000質量ppmであり、 メタクリル酸メチルの含有量が組成物全体の85質量%以上であり、 炭素数4のアルコールはn-ブタノール、イソブチルアルコール及びsec-ブチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種である、組成物(但し、メタクリル酸メチル99.9~99.97%、 不純物として、 -水:100ppm -メタクリル酸:5ppm -アセトン:1ppm -メタノール:<10ppm -プロピオン酸メチル:<5ppm -イソ酢酸+ピバリン酸メチル:60ppm -アクリル酸メチル:25ppm -メタクリル酸エチル:40ppm -ブタノール:5ppm -メトキシイソ酪酸メチル:<10ppm -ヒドロキシイソ酪酸メチル+ピルビン酸メチル:<60ppm を含む組成物、 99.97% メタクリル酸メチル 0.002% メタクリロニトリル 0.003% イソブタノール 0.008% ブタノール 0.014% 水 を含む組成物、並びに 99.971% メタクリル酸メチル 0.002% メタクリロニトリル 0.003% イソブタノール 0.0087% ブタノール 0.014% 水 を含む組成物 を除く)。 【請求項2】 ポリオレフィン樹脂を含まない、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 メタクリル酸メチルの含有量が組成物全体の90質量%以上である、請求項1に記載の組成物。 【請求項4】 炭素数4のアルコールの濃度が組成物全体の10質量ppm~5000質量ppmである、請求項1に記載の組成物。 【請求項5】 炭素数4のアルコールの濃度が組成物全体の50質量ppm~5000質量ppmである、請求項1に記載の組成物。 【請求項6】 炭素数4のアルコールがn-ブタノールである、請求項1に記載の組成物。 【請求項7】 メタクリル酸メチルが、再生メタクリル酸メチル又はバイオ由来メタクリル酸メチルを含む、請求項1に記載の組成物。 【請求項8】 メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルをさらに含む、請求項1に記載の組成物。 【請求項9】 メタクリル酸メチルに由来する構造単位を含む重合体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。 【請求項10】 請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の組成物の硬化物。 【請求項11】 請求項10に記載の硬化物を含む、成形体。 【請求項12】 請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の組成物に含まれるメタクリル酸メチルを重合させる工程を含む、ポリメタクリル酸メチルの製造方法。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要、証拠方法及び取消理由の概要 1 申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は、以下のとおりである。 (1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性欠如) 本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性欠如) 本件特許の請求項1~4、6~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~4、6~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由3(甲第3号証及び甲第4号証に基づく新規性・進歩性欠如) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由4(サポ-ト要件違反) 本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由5(実施可能要件違反) 本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由6(明確性要件違反) 本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 (1)特許異議申立書に添付された証拠方法 甲第1号証:特開平3―59015号公報 甲第2号証:仏国特許出願公開第2651236号明細書 甲第2-1号証:甲第2号証の部分和訳 甲第3号証:ECHA(欧州化学機関、European Chemicals Agency)のWebサイトに、「Methyl methacrylate Toxicological information Acute Toxicity: inhalation 006 Supporting Experimental result (メチルメタクリレート 毒性情報 急性毒性:吸入 006実験結果の裏付け)」として掲載された、1993年の研究レポートに基づく「Specific details on test material used for the study(この研究で用いられた試験材料の具体的詳細)」、出力日:2024年4月24日 https://echa.europa.eu/registration-dossier/-/registered-dossier/15528/7/3/3/?documentUUID=a41a9dfc-2219-4414-820d-50e32d66aebc 甲第3-1号証:甲第3号証の部分和訳 甲第4号証:ECHA(欧州化学機関、European Chemicals Agency)のWebサイトに、「Methyl methacrylate Toxicological information Acute Toxicity: inhalation 007 Supporting Experimental result (メチルメタクリレート 毒性情報 急性毒性:吸入 007実験結果の裏付け)」として掲載された、1993年の研究レポートに基づく「Specific details on test material used for the study(この研究で用いられた試験材料の具体的詳細)」、出力日:2024年4月24日 https://echa.europa.eu/registration-dossier/-/registered- dossier/15528/7/3/3/?documentUUID=a41a9dfc-2219-4414-820d-50e32d66aebc 甲第4-1号証:甲第4号証の部分和訳 甲第5号証:特開2022-056754号公報 甲第6号証:三菱ガス化学トレーディングの取扱製品詳細における「メタクリル酸メチル(MMA)ついての説明、出力日:2 0 2 4年4月2 4日 https://www.mgctrading.co.jp/products/mma.html#:~:text=%E3%83%Al%E3%82%BF%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%AB%E9%85%B8%E3%81%AE%E3%83%Al%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AB,MEHQ%EF%BC%883%EF%BC%89%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82 甲第7号証:TCI(東京化成工業株式会社)の製品パンフレットにおける「メチルメタクリレート」についての説明、出力日:2 0 2 4年4月2 4日 https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/M0087 甲第8号証:ECETOC(欧州化学物質生態毒性および毒性センター、European Centre for Ecotoxicology and Toxicology of Chemicals)が、2003年に発行した、「n-Butanol (CAS No. 71-36-3) JACC No. 41」の8頁の「Table 1: Physical and chemical properties (cout'd)」の脚注、出力日:2024年4月24日 https://www.ecetoc.org/wp-content/uploads/2021/10/JACC-041.pdf 甲第8-1号証:甲第8号証の部分和訳 以下、順に「甲1」~「甲8-1」という。 (2)令和6年12月11日付けの意見書に添付された証拠方法 参考資料1:特許・実用新案審査基準、平成27年9月改訂、第IV部第2章 新規事項を追加する補正 6~8頁、3.3.1(4)除くクレームとする補正の場合 3 取消理由通知に記載した取消理由の概要 当審において特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 (1)取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性欠如) 本件特許の請求項1~3、6、8、10~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性欠如) 本件特許の請求項1~4、6、8、10~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~4、6~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性欠如) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)取消理由4(甲4に基づく新規性・進歩性欠如) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)取消理由5(明確性要件違反) 本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性欠如)及び申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性欠如) 取消理由1及び申立理由1は、いずれも甲1を主引用文献とするものであるため、併せて検討する。 (1)証拠方法に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項及び甲1発明 (ア) 甲1に記載された事項(下線は、当審で付与したものである。以下、同様。) ・摘示事項1-1:「[課題を解決するための手段] 本発明は、紫外線への長時間曝露に対する改善された耐性を示すメタクリレートポリマーに関する。メタクリレートポリマーを作るのに用いられるモノマー混合物は、アルキルメタクリレート例えばメチルメタクリレート、及びアルキル基中に1~4個の炭素原子を有するアルキルアクリレートのモノマーのベースミックス(Base Mix)を包含する。アルコール、高沸点ヒドロキシ化合物、及びそれらの混合物を、重合に先立ち、モノマーのベースミックスに加えても良い。」(第2ページ右下欄第13行~第3ページ左上欄第3行) ・摘示事項1-2:「予備添加において、約0.5~2.0重量%の脂肪族アルコールがベースミックスに添加される。好ましくは、1~10個の炭素原子を有する脂肪族第一または第二アルコールが、ベースミックスに加えられる。最も好ましくは、メチル及びエチルアルコールが、ベースミックスに加えられる。」(第3ページ右上欄下から第3行~左下欄第3行) ・摘示事項1-3:「[実施例] 予備添加:一般的操作:実施例1~12 本発明の予備添加の態様に従って、(MMA)とアルキルアクリレート例えばエチルアクリレート(EA)のモノマーのベースミックスが調製される。1~10個の炭素原子を有するアルコール添加物、または高沸点ヒドロキシ化合物例えばブチルラクテート、エチレングリコールまたはグリセリンをベースミックスに添加する。セル注型シート製品は、モノマー及び添加物の混合物を撹拌し、シールした型中に注ぐことによって成形することが出来る。該混合物を約45~120℃に加熱してベースミックスを実質上完全に重合させ、重合したメチルメタクリレートポリマー(PMMA)のセル注型シート製品を得る。」(第3ページ右下欄第6~20行) 「 [図:0001422432000001.jpg] 」(第5ページ第1表) (イ)甲1発明 甲1の上記摘示事項1-3に示される実施例8のモノマー及び添加物の混合物に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「メチルメタクリレート96重量%、エチルアクリレート4重量%からなるベースミックスに、 1.0重量%のC4H9OHを添加したモノマー及び添加物の混合物。」(以下、「甲1発明A」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1 (ア)本件特許発明1と甲1発明Aとを対比する。 甲1発明Aの「メチルメタクリレート」は、本件特許発明1の「メタクリル酸メチル」に相当する。 また、ブチルアルコールは、4つの構造異性体を有するところ、特段のことわりがなければ、「n-ブタノール」を意図するのが通例であるから、甲1発明Aの「C4H9OH」は、本件特許発明1の「炭素数4のアルコール」である「n-ブタノール」に相当する。 甲1発明Aの「モノマー及び添加物の混合物」は、本件特許発明1の「組成物」に相当する。 そして、甲1発明Aの「C4H9OH」の濃度は、「9901重量ppm」(=1÷(100+1)×106)となる。 甲1発明Aの「メチルメタクリレート」の含有量は、「95.0重量%」(=96÷(100+1)×102)となり、本件特許発明1の「メタクリル酸メチルの含有量が組成物全体の85質量%以上」の範囲と重複一致する。 さらに、甲1発明Aは、「メタクリル酸メチル99.9~99.97%、 不純物として、 -水:100ppm -メタクリル酸:5ppm -アセトン:1ppm -メタノール:<10ppm -プロピオン酸メチル:<5ppm -イソ酢酸+ピバリン酸メチル:60ppm -アクリル酸メチル:25ppm -メタクリル酸エチル:40ppm -ブタノール:5ppm -メトキシイソ酪酸メチル:<10ppm -ヒドロキシイソ酪酸メチル+ピルビン酸メチル:<60ppm を含む組成物」(以下、「組成物I」という。)でなく、 「99.97% メタクリル酸メチル 0.002% メタクリロニトリル 0.003% イソブタノール 0.008% ブタノール 0.014% 水 を含む組成物」(以下、「組成物II」という。)でなく、並びに 99.971% メタクリル酸メチル 0.002% メタクリロニトリル 0.003% イソブタノール 0.0087% ブタノール 0.014% 水 を含む組成物」(以下、「組成物III」という。)でもない。 そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> メタクリル酸メチル及び炭素数4のアルコールを含有し、 メタクリル酸メチルの含有量が組成物全体の85質量%以上であり、 炭素数4のアルコールはn-ブタノール、イソブチルアルコール及びsec-ブチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種である、組成物(但し、組成物I、組成物II、並びに組成物IIIを除く)。 <相違点1-1> 炭素数4のアルコールの濃度が、本件特許発明1は「組成物全体の5質量ppm~5000質量ppm」であるのに対し、甲1発明Aは「組成物全体の9901重量ppm」である点 (イ)相違点の検討 a 新規性について <相違点1-1>は、数値として異なるものであり、実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明Aではない。 b 進歩性について (a)相違点1-1の容易想到性について 甲1には、「予備添加において、約0.5~2.0重量%の脂肪族アルコールがベースミックスに添加される。」(第3ページ右上欄下から第2~3行)と記載されており、甲1発明Aの混合物(組成物)全体に対する「C4H9OH」の濃度を、ベースミックスに対して約0.5~2.0重量%の脂肪族アルコールを添加する、すなわち、4975重量ppm(=0.5÷(100+0.5)×106)~19608重量ppm(=2.0÷(100+2.0)×106)とすることが一応示されている。 一方、甲1には「好ましくは、1~10個の炭素原子を有する脂肪族第一または第二アルコールが、ベースミックスに加えられる。最も好ましくは、メチル及びエチルアルコールが、べースミックスに加えられる」(第3ページ右上欄下から第2行~左下欄第3行)とも記載されている。 そして、実施例2の「メチルメタクリレート96重量%、エチルアクリレート4重量%からなるベースミックスに、 1重量%のCH3OHを添加したモノマー及び添加物の混合物。」、実施例4の「メチルメタクリレート96重量%、エチルアクリレート4重量%からなるベースミックスに、1重量%のC2H5OHを添加したモノマー及び添加物の混合物。」の6000時間の紫外線曝露後の全透過率(300nm)が各々「78.8%」、「83.4%」、YI(黄色指数)が共に「0.7」であるのに対し、1.0重量%のC4H9OHを添加した甲1発明Aは、前記全透過率(300nm)が「63.5%」、YIが「1.5」となっている。また、実施例4に比べてC2H5OHの添加量を半分の0.5重量%(4975重量ppm(=0.5÷(100+0.5)×106))とした実施例3の前記全透過率(300nm)が「76.9%」、YIが「0.8」となっている。この結果から、ブチルアルコールは、メチル及びエチルアルコールに比べ、紫外線曝露の耐性効果が劣ること、そして、1重量%のブチルアルコールは、半分の添加量の0.5重量%(4975重量ppm)のエチルアルコールよりも紫外線曝露の耐性効果が劣ることがうかがえる。 そうすると、添加量が4975重量ppmのエチルアルコールよりも紫外線曝露の耐性効果が劣るブチルアルコールの添加量を、「9901重量ppm」から少なくして「4975~5000重量ppm」とする動機付けがあるとはいえない。 したがって、甲1発明Aにおいて、<相違点1-1>に係る事項とすることは当業者が容易に想到したものではない。 (b)本件特許発明1の効果について 本件特許明細書の段落【0008】には、本件特許発明の効果について、「保管安定性、特に長期間保管した場合の保管安定性に優れる組成物、この組成物を用いて得られる重合体、硬化物及び成形体、並びにこの組成物を用いるポリメタクリル酸メチルの製造方法が提供される」ことが記載されている。 そして、本件特許明細書の【実施例】を見てみると、炭素数4のアルコールを添加していない比較例1の保管試験後の結果(目視評価)が「C(不可):明確な白濁又は沈殿が確認でき、その度合いが大きかった。」であるのに対し、n-ブタノールを添加した実施例は「A(優):明確な白濁又は沈殿が確認されなかった。」となっており、保管安定性に優れることが理解できる。 そして、本件特許発明1のこのような効果は、甲1の記載から当業者が予測し得るものとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲1発明A、すなわち甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 イ 本件特許発明2~12 本件特許発明2~12は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2~12は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)申立人の主張について 申立人は、意見書の第11ページにおいて、「・・・[紫外線への長時間曝露に対する耐性]には多少のバラツキがあることを踏まえ、上記脂肪族アルコールの種類および添加量に基づいて、当業者が「4の炭素原子を有する脂肪族第一アルコール」である「C4H9OH」の添加量として「0.5重量%」を設定することに阻害要因があるとはいえません。」と主張している。 しかしながら、上記(2)ア(イ)b(a)で説示したように、添加量が4975重量ppmのエチルアルコールよりも紫外線曝露の耐性効果が劣るブチルアルコールの添加量を、「9901重量ppm」から少なくして「4975~5000重量ppm」とする動機付けはなく、当該数値範囲にすることは当業者が容易に想到したものではない。 したがって、申立人の上記主張は首肯することはできない。 (4)取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性欠如)及び申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性欠如)についてのまとめ したがって、本件特許発明1~12は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものともいえないから、本件特許の請求項1~12に係る特許は、取消理由1及び申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性欠如)及び申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性欠如) 取消理由2及び申立理由2は、いずれも甲2を主引用文献とするものであるため、併せて検討する。 (1)証拠方法に記載された事項等 ア 甲2に記載された事項及び甲2発明 (ア) 甲2に記載された事項(翻訳のみ示す。) ・摘示事項2-1:「本発明は、好ましくは同時に使用される他の有利な規定も対象とし、以下により明確に説明するが、以下の説明および本発明の有利な実施形態を例示する非限定的な実施例の助けを借りて明確に理解されるであろう。 したがって、ポリメタクリル酸メチルは以下のように、または同様の方法で調製される。 基本的には、任意に最大で5重量%、好ましくは約2重量%未満の、有利にはC1~C4の少なくとも1種のアクリル酸アルキルと混合されたメタクリル酸メチルは、選択された温度で半減期が約1時間であるものから選択された開始剤の存在下で、100~200℃、好ましくは120~160℃、さらに好ましくは120~140℃の温度に供される。 重合反応に供されるメタクリル酸メチルの純度は99.9~99.97%である。存在する不純物は以下の通りである: -水:100ppm -メタクリル酸:5ppm -アセトン:1ppm -メタノール:<10ppm -プロピオン酸メチル:<5ppm -イソ酪酸+ピバリン酸メチル:60ppm -アクリル酸メチル: 2 5 ppm -メタクリル酸エチル: 4 0 ppm -ブタノール:5 ppm -メトキシイソ酪酸メチル:<10ppm -ヒドロキシイソ酪酸メチル+ピルビン酸メチル:<60ppm」(第3ページ第22行~第4ページ第18行) ・摘示事項2-2:「本発明の文脈で説明したように、重合は一括して行うことができる。これは、型として2枚の板、特にガラスの間に注がれる「シロップ」(転化率10~20%)の重合によって直接得られるPMMA板を調製したい場合に当てはまる。 しかし、光ファイバーの製造など特定の用途では、重合反応は攪拌装置を備えた反応室で行われる。この場合のみ、媒体の粘度は攪拌が可能な程度に低く保たれなければならない。その際、溶媒の存在下で行うのが有利であり、溶媒は上記のものから選ぶことができる。」(第6ページ第19~32行) (イ)甲2発明 甲2の上記摘示事項2-1の不純物を含有するメタクリル酸メチルに着目すると、以下の「組成物」に関する発明が記載されていると認められる。 「メタクリル酸メチル99.9~99.97%、 不純物として、 -水:100ppm -メタクリル酸:5ppm -アセトン:1ppm -メタノール:<10ppm -プロピオン酸メチル:<5ppm -イソ酪酸+ピバリン酸メチル:60ppm -アクリル酸メチル: 25ppm -メタクリル酸エチル: 40ppm -ブタノール:5 ppm -メトキシイソ酪酸メチル:<10ppm -ヒドロキシイソ酪酸メチル+ピルビン酸メチル:<60ppm を含む組成物。」(以下、「甲2発明A」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1 本件特許発明1と甲2発明Aとを対比する。 ブタノールは、4つの構造異性体を有するところ、特段のことわりがなければ、「n-ブタノール」を意図するのが通例であるから、甲2発明Aの「ブタノール」は、本件特許発明1の「炭素数4のアルコール」である「n-ブタノール」に相当する。 そして、甲2発明Aの「ブタノール」の濃度は、「5ppm」であるところ、技術常識を勘案すると、「5質量ppm」であると解するのが相当であるから、本件特許発明1の「炭素数4のアルコールの濃度が組成物全体の5質量ppm~5000質量ppm」の範囲と重複一致する。 また、甲2発明Aの「メタクリル酸メチル」の含有量は、「99.9~99.97%」であるところ、技術常識を勘案すると、「99.9~99.97質量%」であると解するのが相当であるから、本件特許発明1の「メタクリル酸メチルの含有量が組成物全体の85質量%以上」の範囲と重複一致する。 そして、甲2発明Aは、組成物II、組成物IIIではないものの、組成物Iである。 そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> メタクリル酸メチル及び炭素数4のアルコールを含有し、 炭素数4のアルコールの濃度が組成物全体の5質量ppm~5000質量ppmであり、 メタクリル酸メチルの含有量が組成物全体の85質量%以上であり、 炭素数4のアルコールはn-ブタノール、イソブチルアルコール及びsec-ブチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種である、組成物(但し、組成物II、並びに組成物IIIを除く)。 <相違点2-1> 本件特許発明1は「組成物Iを除く」ものであるのに対し、甲2発明Aは「組成物I」である点 そこで、<相違点2-1>について検討するに、当該相違点は実質的な相違点であるし、甲2には、組成物Iを除いた本件特許発明1を想起することを動機付ける記載はない。 したがって、本件特許発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 イ 本件特許発明2~12 本件特許発明2~12は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2~12は、甲2発明ではないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性欠如)及び申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性欠如)についてのまとめ したがって、本件特許発明1~12は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものともいえないから、本件特許の請求項1~12に係る特許は、取消理由2及び申立理由2によっては取り消すことはできない。 3 取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性欠如)、取消理由4(甲4に基づく新規性・進歩性欠如)及び申立理由3(甲3及び甲4に基づく新規性・進歩性欠如)について 取消理由3及び申立理由3は、いずれも甲3を主引用文献とするもの、取消理由4及び申立理由3は、いずれも甲4を主引用文献とするものであるため、併せて検討する。 (1)証拠方法に記載された事項等 ア 甲3に記載された事項及び甲3発明 (ア)甲3に記載された事項(翻訳のみ示す。) ・摘示事項3-1: 「メタクリル酸メチル EC番号:201-297-1 CAS番号:80-62-6 毒性情報 急性毒性:吸入 006サポート 実験結果 ・・・ 情報元 参照 参照タイプ:研究レポート タイトル:無名 年:1993年 報告日:1993年 ・・・ 試験材料 試験材料情報 構成要素1 [図:0001422432000002.jpg] 参照物質名:メタクリル酸メチル EC番号:201-297-1 CAS番号:80-62-6 分子式:C5H802 IUPAC名:2-メチルプロプ-2-エン酸メチル 試験物質の形態:液体 研究に使用された試験材料の具体的な詳細: Haskell No. : H-19881純度:100 組成:99. 97% メタクリル酸メチル 0. 002% メタクリロニトリル 0. 003% イソブタノール 0. 008% ブタノール 0. 014% 水 >7~10 ppm 4-メトキシフェノール」 (イ)甲3発明 甲3の上記摘示事項3-1の「研究に使用された試験材料」の不純物を含有するメタクリル酸メチルに着目すると、以下の「組成物」に関する発明が記載されていると認められる。 「99. 97% メタクリル酸メチル 0. 002% メタクリロニトリル 0. 003% イソブタノール 0. 008% ブタノール 0. 014% 水 >7~10 ppm 4-メトキシフェノール からなる組成物。」(以下、「甲3発明A」という。) イ 甲4に記載された事項及び甲4発明 (ア)甲4に記載された事項(翻訳のみ示す。) ・摘示事項4-1: 「メタクリル酸メチル EC番号:201-297-1 CAS番号:80-62-6 毒性情報 急性毒性:吸入 007サポート 実験結果 ・・・ 情報元 参照 参照タイプ:研究レポート タイトル:無名 年:1993年 報告日:1993年 ・・・ 試験材料 試験材料情報 構成要素1 [図:0001422432000003.jpg] 参照物質名:メタクリル酸メチル EC番号:201-297-1 CAS番号:80-62-6 分子式:C5H802 IUPAC名:2-メチルプロプ-2-エン酸メチル 試験物質の形態:液体 研究に使用された試験材料の具体的な詳細: 組成:99. 971% メタクリル酸メチル 0. 002% メタクリロニトリル 0. 003% イソブタノール 0. 0087% ブタノール 0. 014% 水 >7~10 ppm 4-メトキシフェノール」 (イ)甲4発明 甲4の上記摘示事項4-1の「研究に使用された試験材料」の不純物を含有するメタクリル酸メチルに着目すると、以下の「組成物」に関する発明が記載されていると認められる。 「99. 971% メタクリル酸メチル 0. 002% メタクリロニトリル 0. 003% イソブタノール 0. 0087% ブタノール 0. 014% 水 >7~10 ppm 4-メトキシフェノール からなる組成物。」(以下、「甲4発明A」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1 本件特許発明1と甲3発明A及び甲4発明Aとを併せて対比する。 ブタノールは、4つの構造異性体を有するところ、特段のことわりがなければ、「n-ブタノール」を意図するのが通例であるから、甲3発明A及び甲4発明Aの「ブタノール」は、本件特許発明1の「炭素数4のアルコール」である「n-ブタノール」に相当する。また、甲3発明A及び甲4発明Aの「イソブタノール」は、本件特許発明1の「炭素数4のアルコール」である「イソブチルアルコール」に相当する。 甲3発明A及び甲4発明Aの「ブタノール」の濃度は、各々「0.008%」及び「0.0087%」であるところ、技術常識を勘案し、ppmに換算すると「80質量ppm」及び「87質量ppm」であると解するのが相当である。また、甲3発明A及び甲4発明Aの「イソブタノール」の濃度は、「0.003%」であるところ、技術常識を勘案し、ppmに換算すると「30質量ppm」で あると解するのが相当である。してみると、甲3発明A及び甲4発明Aの「炭素数4のアルコール」の濃度は、合計すると各々「110質量ppm」及び「117質量ppm」であるから、本件特許発明1の「炭素数4のアルコールの濃度が組成物全体の5質量ppm~5000質量ppm」の範囲と重複一致する。 さらに、甲3発明A及び甲4発明Aの「メタクリル酸メチル」の含有量は、「99.97%」及び「99.971%」であるところ、技術常識を勘案すると、「99.97質量%」及び「99.971質量%」であると解するのが相当であるから、本件特許発明1の「メタクリル酸メチルの含有量が組成物全体の85質量%以上」の範囲と重複一致する。 そして、甲3発明A及び甲4発明Aは、組成物Iではない。 そうすると、本件特許発明1と甲3発明A及び甲4発明Aは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> メタクリル酸メチル及び炭素数4のアルコールを含有し、 炭素数4のアルコールの濃度が組成物全体の5質量ppm~5000質量ppmであり、 メタクリル酸メチルの含有量が組成物全体の85質量%以上であり、 炭素数4のアルコールはn-ブタノール、イソブチルアルコール及びsec-ブチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種である、組成物(但し、組成物Iを除く)。 <相違点3-1> 本件特許発明1は「組成物II、並びに組成物IIIを除く」ものであるのに対し、甲3発明Aは「99. 97% メタクリル酸メチル 0. 002% メタクリロニトリル 0. 003% イソブタノール 0. 008% ブタノール 0. 014% 水 >7~10 ppm 4-メトキシフェノール からなる組成物」である点 <相違点4-1> 本件特許発明1は「組成物II、並びに組成物IIIを除く」ものであるのに対し、甲4発明Aは「99. 971% メタクリル酸メチル 0. 002% メタクリロニトリル 0. 003% イソブタノール 0. 0087% ブタノール 0. 014% 水 >7~10 ppm 4-メトキシフェノール からなる組成物」である点 そこで、<相違点3-1>について検討する。 甲3発明Aは組成物IIに包含されるものであるため、当該相違点は実質的な相違点であるし、甲3には、組成物II、組成物IIIを除いた本件特許発明1を想起することを動機付ける記載はない。 したがって、本件特許発明1は、甲3発明ではないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 また、<相違点4-1>を検討する。 甲4発明Aは組成物IIIに包含されるものであるため、当該相違点は実質的な相違点であるし、甲4には、組成物II、組成物IIIを除いた本件特許発明1を想起することを動機付ける記載はない。 したがって、本件特許発明1は、甲4発明ではないし、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 イ 本件特許発明2~12 本件特許発明2~12は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2~12は、甲3発明及び甲4発明ではないし、甲3発明及び甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性欠如)、取消理由4(甲4に基づく新規性・進歩性欠如)及び申立理由3(甲3及び甲4に基づく新規性・進歩性欠如)についてのまとめ したがって、本件特許発明1~12は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものともいえないから、本件特許の請求項1~12に係る特許は、取消理由3、取消理由4及び申立理由3によっては取り消すことはできない。 4 取消理由5(明確性要件違反)及び申立理由6(明確性要件違反)について (1)判断 取消理由5及び申立理由6の概要は、「本件特許発明1、4及び5の「炭素数4のアルコールの濃度」とは、炭素数4のアルコールを添加した組成物における当該アルコールの濃度を意図しているのか、添加した値を意図しているのかいずれを意図するのか不明となっている。」というものであり、不純物を含まない化合物としてのアルコールの濃度であるのか、微量の不純物を含む市販のアルコールの濃度であるのか判然としない、というものである。 しかしながら、本件特許発明1、4及び5の「炭素数4のアルコールの濃度」とは、文言どおり、「炭素数4のアルコールを添加した組成物における当該アルコールの濃度」を意味すると解釈するのが自然であり、本件特許明細書において、当該解釈と異なる定義がされているわけでもない。 そうすると、本件特許発明1、4及び5、さらにこれらを直接又は間接的に引用する本件特許発明2、3及び6~12は明確であるといえる。 (2)申立人の主張について 申立人は、意見書において主に、以下の主張を行っている。 主張ア「a)本件特許明細書では明確な定義がなく、これを支持する<組成物に含有されるn-ブタノール等の炭素数4のアルコールの濃度を直接測定すること>や、<その具体的な測定方法>等については何ら記載ないし示唆されていない、訂正発明1、4および5で規定された、文言どおりの意味である「炭素数4のアルコールを添加した組成物について当該アルコールの濃度を測定した際に、上記数値範囲となる」と解釈すべきか、 b)発明の実施の形態を具体的に示すものであり、本件特許明細書においても訂正発明と密接に関連付けられている実施例の記載を参酌して解釈すべきか、 については、当業者にとって明確ではありません。」(第19ページ第1~11行) 主張イ「さらに、特許権者の主張する、上記b)の要因における、 【メタクリル酸メチル】に不純物として含まれる「n-ブタノール」の存在を全く無視し、<n-ブタノール(富士フィルム和光純薬社製)の添加量Xppmから、上記a)の<n-ブタノール(富士フィルム和光純薬社製)>に含まれている不純物の量(Xppm×0.002)を除いた値を「組成物におけるn-ブタノールの実際の濃度」と想定するという手法を採用したとしても、下記<表A>に示すように、実施例1~5における、[n-ブタノール(富士フィルム和光純薬社製)の添加量]と[特許権者の主張する、組成物におけるn-ブタノールの実際の想定濃度]との間には大きな乖離があります。」(第23ページ下から第7行~第24ページ第3行) そこで、上記主張ア及び主張イについてまとめて検討する。 本件特許明細書には、特許請求の範囲における「炭素数4のアルコールの濃度」について、微量の不純物を含む市販の「炭素数4のアルコール」を「添加した値」とすることはどこにも記載されていない。そして、組成物に含まれるppmオーダーの炭素数4のアルコールの濃度を測定すること自体は、本件特許出願時の技術水準に照らし可能なことであるため、<組成物に含有されるn-ブタノール等の炭素数4のアルコールの濃度を直接測定すること>や、<その具体的な測定方法>の記載がないことをもって、炭素数4のアルコールの濃度について、本件特許発明における1、4及び5の「炭素数4のアルコールの濃度」を「添加した値」と解釈することは妥当性に欠くものといえる。 また、市販のn-ブタノールの純度は、甲8(第8ページ)より99.8%以上であるところ、市販のn-ブタノールを例えば3000ppm添加した場合、<表A>のとおり、化合物としてのn-ブタノールの想定濃度は2994ppmとなるが、想定濃度の2994ppmの数値と表1に示される3000ppmとは、わずか6ppmの差しかなく、上記(1)で述べた「炭素数4のアルコールの濃度」の解釈による本件特許発明1の具体例であることに変わりはない。このように、実施例1~5(実施例5は参考例)における、[n-ブタノール(富士フィルム和光純薬社製)の添加量]と[特許権者の主張する、組成物におけるn-ブタノールの実際の想定濃度]との間には大きな乖離があるとはいえない。 そして、ppmオーダーの数値の表示を、測定誤差を考慮して有効数字1桁で表示することは当業者の常套手段であって技術的な矛盾はないため、仮に、実施例の表におけるn-ブタノール[ppm]の表記自体が、「添加した値」であったとしても、本件特許発明における1、4及び5の「炭素数4のアルコールの濃度」を「添加した値」と解釈する必然性はない。 したがって、申立人の上記主張は首肯できない。 (3)取消理由5(明確性要件違反)及び申立理由6(明確性要件違反)についてのまとめ したがって、本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由5及び申立理由6によっては取り消すことはできない。 5 申立理由4(サポート要件違反)について (1)申立理由4の具体的理由 申立人は、特許異議申立書において、以下の具体的理由を述べている。 理由ア「甲第3号証~甲第7号証に示されるような本件出願時における技術常識を参酌すれば、本件特許明細書の実施例1~5の組成物の成分である「メタクリル酸メチル」は、不純物としてC4特定アルコールである「n-ブタノール」と共に「イソブタノール」等を実質的に含有するといえることから、上記<態様A>は実施例1~5によりサポートされているとはいえない。」(第48ページ第16~20行) 理由イ「仮に実施例1~5の組成物の成分である「メタクリル酸メチル」が純度100質量%のもの、すなわち、不純物を一切含まないものであるとしても、組成物の他の成分である「n-ブタノール(富士フィルム和光純薬社製)」は、不純物としてC4特定アルコールである「イソブタノール」を実質的に含有するといえることから、この観点からも、上記<態様A>は実施例1~5によりサポートされているとはいえない。」(第49ページ第10~15行) 理由ウ「実施例1~5では、組成物に含まれるC4特定アルコールの濃度を実際に測定することなく、また、組成物の成分である「メタクリル酸メチル」に不純物として含まれるC4特定アルコールの含有量、および、組成物の他の成分である「n-ブタノール」に不純物として含まれる「n-ブタノール」以外のC4特定アルコールの含有量について何ら考慮することなく、C4特定アルコールである「n-ブタノール」の添加量を以て、組成物全体に含まれるC4特定アルコールの濃度としている。 一方、本件発明1における「5質量ppm~10000質量ppm」、本件発明4における「5質量ppm~6000質量ppm」、および本件発明5における「50質量ppm~6000質量ppm」との規定は、文字通り、組成物全体に含まれるC4特定アルコールの濃度を表しているものである。 したがって、本件発明におけるC4特定アルコールの濃度の規定は、実施例1~5によって何らサポートされていないものである。」(第50ページ下から第2行~第51ページ第11行) (2)判断 本件特許明細書の実施例において、組成物に含まれるC4特定アルコールの濃度を実際に測定したかどうか定かではないところ、実際に測定したものであった場合には、当該実施例より、本件特許発明1~12はサポート要件を満たすものである。 そこで、申立人が主張するように、仮に実施例が、実際の濃度を測定せず、表に示された数値が「添加」した濃度を意図している場合について検討する。 まず、実施例で使用されるメタクリル酸メチルの純度は明記されていない。しかしながら、成分の濃度がppmオーダーである組成物において、使用する化合物の不純物を出来る限り除去しておくことは本件特許出願時の技術常識であるし、特許権者の特許出願である甲5の記載に照らし、複数の蒸留塔にて繰り返し精製することにより高純度のメタクリル酸メチルを調整することは可能であるから、実施例で使用された「メタクリル酸メチル」は非常に高純度で、不純物の影響は少ないと解するのが相当である。 そして、仮に、実施例のメタクリル酸メチルとして、例えば甲3の純度99.97%のメチルメタクリレートを使用した場合、イソブタノールが30質量ppm、ブタノールが80質量ppm含有されていることから、例えば実施例4の「炭素数4のアルコールの濃度」は、実際には3110ppm(=3000+30+80)となる。しかしながら、当該数値自体は、本件特許発明1の「5質量ppm~5000質量ppm」の範囲のものであり、本件特許発明1により課題が解決し得ることは明らかである。 また、仮に実施例で使用したn-ブタノールとして、例えば甲8に示されるn-ブタノールの純度が99.8%以上で0.05%以下のイソブタノールが含まれているようなものを使用したとすると、例えば実施例4の「炭素数4のアルコールの濃度」は、実際には2995.5ppm(=3000×99.8%(n-ブタノール)+3000×0.05%(イソブタノール))となる。そして、当該数値自体は、本件特許発明1の「5質量ppm~5000質量ppm」の範囲のものであり、本件特許発明1により課題が解決し得るものといえる。 したがって、申立人が主張する理由ア~ウを首肯することができない。 (3)申立理由4(サポート要件違反)についてのまとめ したがって、本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由4によっては取り消すことはできない。 6 申立理由5(実施可能要件違反)について (1)申立理由5の具体的理由及び判断 申立人は、特許異議申立書において、「本件発明1~12が含む上記<態様A>を実施するには、本件出願時における技術常識を参酌しても、当業者は過度の試行錯誤を要するといえる。」(第52ページ)と主張している。 しかしながら、組成物に含まれるppmオーダーの炭素数4のアルコールの濃度を測定すること自体は、本件特許出願時の技術水準に照らし可能なことであるため、本件特許発明1~12に係る組成物を調整することは、本件特許出願時における技術常識を参酌して、当業者は過度の試行錯誤を要するとはいえない。 したがって、申立人が主張する理由を首肯することができない。 (2)申立理由5(実施可能要件違反)についてのまとめ よって、本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由5によっては取り消すことはできない。 第6 むすび 上記第5のとおり、本件特許の請求項1~12に係る特許は、当審において通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700451

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