特許異議申立
2024-700440
圧粉磁心用鉄基粉末
- 審判番号
- 2024-700440
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-006596
- 登録番号
- 7387456
- 請求日
- 2024年05月09日
- 審決日
- 2024年07月29日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社神戸製鋼所
- 【権利者代理人】池田 義典
- 【権利者代理人】天野 一規
- 【権利者代理人】藤本 勝誠
- 【権利者代理人】石田 耕治
- 【異議申立人】吉田 敦子
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 猛
- 審判官 粟野 正明
- 審判官 土屋 知久
- 分類
- P1651.537-Y (B22F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7387456号発明「圧粉磁心用鉄基粉末」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7387456号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第7387456号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願(特願2020-6596号。以下「本願」という。)は、令和 2年 1月20日の出願であって、令和 5年11月17日にその特許権の設定登録がされ、同年11月28日に特許掲載公報が発行され、その後、令和 6年 5月 9日に、その請求項1~3(全請求項)に係る特許について、特許異議申立人である吉田 敦子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
表面に絶縁被覆を有する鉄粉と、
潤滑剤と、
流動性向上剤と
を備え、
上記鉄粉の平均粒径が30μm以上70μm以下であり、
上記鉄粉100質量部に対する上記潤滑剤の含有量が0.2質量部以上であり、
上記鉄粉100質量部に対する上記潤滑剤の含有量及び上記流動性向上剤の含有量の和が0.7質量部以下であり、
上記潤滑剤の含有量と上記流動性向上剤の含有量とが下記式(1)を満たす比率である圧粉磁心用鉄基粉末。
流動性向上剤の含有量[質量部]≧0.7×潤滑剤の含有量[質量部] (1)
【請求項2】
上記潤滑剤が脂肪酸アミドであり、上記流動性向上剤が酸化亜鉛である請求項1に記載の圧粉磁心用鉄基粉末。
【請求項3】
上記鉄粉の平均粒径に対する上記流動性向上剤の平均粒径の比率が1/200以上1/30以下である請求項1又は請求項2に記載の圧粉磁心用鉄基粉末。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として下記3の甲第1号証~甲第3号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
1 申立理由1(サポート要件)
(1)申立理由1-1
本件特許の請求項1、及び請求項1を引用する請求項3に係る発明は、潤滑剤を加えたことで生じる流動性の低下を抑止するという前提にもかかわらず、潤滑剤として流動性を向上させる酸化亜鉛も含む態様を含む点で、また、潤滑剤である脂肪酸アミドと流動性向上剤である酸化亜鉛との組合せ以外の、潤滑性を確保できるとはいえない態様を含む点で、発明の課題が解決できることをその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、3の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2
本件特許の請求項1、及び請求項1を引用する請求項2、3に係る発明は、潤滑剤の含有量と流動性向上剤の含有量とを「流動性向上剤の含有量[質量]≧0.7×潤滑剤の含有量[質量部]」との式(1)を満たす比率としつつも、圧粉磁心用鉄基粉末の流動性を確保し易くすることができるとはいえない態様を含む点で、サポート要件を満たしていない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由1-3
本件特許の請求項3に係る発明は、本願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)に実施例として記載された、鉄粉の平均粒径と流動性向上剤である酸化亜鉛粉末の平均粒径の比率が1/66.7以外の態様を含む点で、サポート要件を満たしていない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項3の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(明確性)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 証拠方法
甲1:特開2019-186558号公報
甲2:特許第7387456号公報(本件特許公報)
甲3:特許権者が令和5年10月16日付けで提出した意見書
第4 当審の判断
当審は、以下に述べるとおり、上記第3の申立理由1、2は、いずれも採用できないと判断する。
1 申立理由1(サポート要件)について
(1)本件明細書の【0006】の記載からすると、本件特許の請求項に係る発明が解決しようとする課題は、「表面に絶縁被覆を有する鉄粉を用いながら、金型の表面に潤滑剤を塗布せずとも圧縮成型後に金型から容易に取り出すことができる圧粉磁心用鉄基粉末の提供」にあると認められる。
(2)そして、本件明細書の【0008】、【0035】の記載からすると、上記(1)の課題は、圧粉磁心用鉄基粉末が潤滑剤を備えることによって解決できることを当業者であれば認識できるといえる。
(3)一方、請求項1には、請求項に係る「圧粉磁心用鉄基粉末」が「潤滑剤」を備えるものであることが記載されているから、本件特許の請求項1、及び請求項1を引用する請求項2、3に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
(4)申立人は、この点について、特許異議申立書の第16頁第11行~第23頁下から7行において縷々主張しているが、流動性の向上や確保は、そもそも本件特許の請求項に係る発明が解決しようとする課題ではなく、また、潤滑剤を備える圧粉磁心用鉄基粉末であっても、上記(1)の課題が解決されないのではないかとの合理的疑いが生じる程度の具体的な根拠を何ら提示できていないから、いずれも採用しない。
(5)したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、申立理由1によっては、同請求項に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(明確性)について
(1)本件特許の請求項1~3の記載は、上記第2のとおりであるところ、この記載から特許を受けようとする発明を明確に把握することは十分可能であるといえる。
(2)申立人は、この点について、特許異議申立書の第16頁第11行~第23頁下から7行において縷々主張しているが、上記(1)の点についての合理的疑いが生じる程度の具体的な根拠を何ら提示できていないから、いずれも採用しない。
(3)したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、申立理由2によっては、同請求項に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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