特許異議申立
2022-701161
粉末冶金用混合粉の製造方法
- 審判番号
- 2022-701161
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-084035
- 登録番号
- 7077117
- 請求日
- 2022年11月24日
- 審決日
- 2023年03月01日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社神戸製鋼所
- 【権利者代理人】天野 一規
- 【権利者代理人】藤本 勝誠
- 【権利者代理人】池田 義典
- 【権利者代理人】小川 博生
- 【権利者代理人】石田 耕治
- 【異議申立人】吉田 敦子
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 猛
- 審判官 土屋 知久
- 審判官 佐藤 陽一
- 分類
- P1651.113-Y (B22F) / P1651.121-Y (B22F) / P1651.536-Y (B22F) / P1651.537-Y (B22F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7077117号発明「粉末冶金用混合粉の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7077117号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7077117号の請求項1~6に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年4月25日の出願であって、令和4年5月20日にその特許権の設定登録がなされ、同年5月30日にその特許掲載公報が発行された。
本件は、その後、その特許について、同年11月24日付けで特許異議申立人吉田敦子(以下、「申立人」という。)により請求項1~6(全請求項)に対してなされた特許異議申立事件である。
第2 本件発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明(以下、これらをそれぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
鉄粉を含む原料粉に潤滑剤を攪拌しつつ混合する工程を備え、
上記混合工程として、
上記原料粉にバインダーを混合する第1混合工程と、
上記第1混合工程で得られた混合体に潤滑剤を混合する第2混合工程と
を備え、
上記第2混合工程で、潤滑剤の投入開始から攪拌終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下とし、上記潤滑剤を上記鉄粉に付着させる粉末冶金用混合粉の製造方法。
【請求項2】
上記原料粉が黒鉛粉をさらに含む請求項1に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
【請求項3】
上記混合工程での上記最高到達温度と上記潤滑剤の軟化開始温度との差が10℃以上である請求項1又は請求項2に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
【請求項4】
上記潤滑剤が金属原子を含まない請求項1、請求項2又は請求項3に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
【請求項5】
上記潤滑剤がエチレンビスステアリン酸アミドを含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
【請求項6】
上記潤滑剤がステアリン酸モノアミドをさらに含む請求項5に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、次の甲第1号証~甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)を提出し、以下の(1)~(4)の特許異議申立理由を主張している。
(証拠方法)
甲1:特開平6-145701号公報
甲2:特開2008-69460号公報
甲3:特開2001-192706号公報
甲4:特許権者が提出した令和3年12月2日付け意見書
甲5:特許第7077117号公報
(1)本件特許の請求項1、2、4に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1または甲2に記載された発明であるため、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項3、5、6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明であるため、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1~甲3に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(3)本件特許は、その特許請求の範囲の記載が以下のア、イの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
ア 第2混合工程において第1混合工程から温度を下げた場合、及び、第2混合工程において、最高到達温度が軟化開始温度以上である時間が極めて短い場合は、本件発明は課題を解決し得ない。
イ 潤滑剤がエチレンビスステアリン酸アミド及びステアリン酸モノアミド以外の場合、本件発明は課題を解決し得ない。
(4)本件発明は、どのようなバインダーをどの程度の量を添加し、どのような条件で混合すればよいのかが不明であるから、本件特許は、その発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
第4 特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項について(上記第3の(1)及び(2))
1 各甲号証の記載
(1)甲1の記載
甲1には、次の記載がある。なお、各甲号証に記載された発明の認定に関連する箇所には、当審で下線を付した。以下、同じ。
「【請求項5】 合金用粉末および/または切削性改善用粉末と、高級脂肪酸、高級脂肪アルコールおよび高級脂肪エステルの第1群から選ばれた1種以上の溶融結合剤とを、該溶融結合剤の融点以上の温度で混合した後、前記溶融結合剤より融点の高い高級脂肪酸アミドおよび高級脂肪アルコールの第2群から選ばれた1種以上の粉末潤滑剤を添加し、前記溶融結合剤の融点以上前記粉末潤滑剤の融点未満の温度で混合することを特徴とする粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法。」
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、添加物の偏析が少なく、ホッパからの流出性、安定供給性に優れ、成形時の金型からの抜出力が低く、かつ亜鉛を含有しないか又は少ない粉末冶金用鉄基粉末混合物及びその製造方法に関する。」
「【0006】本発明は、従来の粉体特性及び圧粉体特性を維持しながら、偏析が少なく、ホッパからの流出性、粉末供給安定性に優れ、かつ亜鉛を含有しないか含有量が少ない粉末冶金用鉄基粉末混合物及びその製造方法を提供するものである。」
「【0015】結合剤は、合金粉末及び/又は切削性改善用粉末、潤滑剤粉末を鉄系粉末表面に付着させる働きをもち、かつ粉体流動性を阻害しないものが良く、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールは特性面で優れる。ポリアミドにはナイロン6、ナイロン66などがあるが、実質的には水に不溶で、メタノールに溶けるため、溶液型の結合剤として容易に混合粉中に添加することができる。ポリビニルアセタールにはポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールがあり、実質的に水に不要で、ポリビニルブチラールはアセトンやメタノールに溶け、ポリビニルホルマールはシクロヘキサンやフルフラールに溶けるため、溶液型の結合剤として容易に混合粉中に添加することが可能である。
【0016】また、種々調べたところ、鉄系粉末との濡れ性がよいステアリン酸(融点70℃)、ベヘン酸(同80℃)、セチルアルコール(同48℃)、ステアリルアルコール(同58℃)、ベヘニルアルコール(同70℃)、ベヘン酸C30アルコールエステル(同75℃)等がよい性能を示すことがわかった。これらの中から、潤滑剤の融点に合せて選択すればよい。」
「【0019】また、本発明において使用される結合剤は潤滑剤粉末よりも融点が低いものを用いることになる。潤滑剤粉末は、金型中で加圧成形する際の摩擦熱で軟化し潤滑性能の働きを高めるような融点が100℃前後のものがよいことが知られており、ステアリン酸モノアミド(融点100℃)、エチレンビスステアリン酸アミド(同145℃)、ステアリン酸モノアミドとエチレンビスステアリン酸アミドの溶融混合物(同125℃)、C30アルコール(同90℃)、C50アルコール(同98℃)、C60アルコール(同110℃)、ベヘン酸C30アルコールエステル(同75℃)等が挙げられる。」
「【0034】実施例-2
以下に示す条件で実施例の混合物を作製した。比較例も同様とした。鉄粉は平均粒径78μmのアトマイズ鉄粉もしくは還元鉄粉を用いた。合金用粉末としての電解銅粉は平均粒径28μm、黒鉛粉は平均粒径16μm以下のものを用いた。切削性改善用粉末にはMgO,SiO2を主成分とするタルクを用いた。
【0035】鉄粉と結合剤と合金用粉末及び/又は切削性改善用粉末とをそれぞれの結合剤の融点の+10℃で10分間加熱混合した後、加熱温度より融点の高い潤滑剤粉末を添加し、2分間混合したのち冷却した。圧粉密度は直径25mm高さ20mmのタブレットを6t/cm2の成形圧力で金型中に成形したときの値で示した。
【0036】抜出力は、直径25mm高さ20mmのタブレットにおいて圧粉密度が6.9g/cm3になるよう金型中で成形し、金型から抜き出すときの圧力を示した。焼結体汚れは、各混合物を圧粉密度6.90g/cm3に金型中で加圧成形した後、プロパン変成ガス雰囲気中1130℃で20分間焼結したときの焼結体表面の汚れを観察した。
【0037】表6~8に実施例を示す。良好な流出性及び良好な焼結体表面を示した。図4~6に本発明の結合剤量、潤滑剤量の範囲を指定する根拠となるデータを示す。結合剤が0.05重量%より少ないとC付着度は70%以下に低下してしまう。結合剤が0.3重量%を越えるときは圧粉密度が急激に低下する。潤滑剤量が0.5重量%より少ないと抜出力は急激に大きくなり、2.0重量%を越える場合は、比較例に示すように流出性に問題が生じる。」
「【0039】
【表6】
[図:0001396307000001.jpg]
」
(2)甲2の記載
甲2には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末表面に有機バインダーが被覆された合金化用粉末や切削性改善用粉末等の粉末冶金用副原料粉末を、この有機バインダーを介して鉄粉や合金鋼粉等の鉄基粉末の表面に接着させた粉末冶金用鉄基粉末混合物およびその製造方法に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するもので、成分偏析を軽減した粉末冶金用鉄基粉末混合物を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
さて、発明者らは、まず、粉末冶金用鉄基粉末混合物中の異種粒子、すなわち粉末冶金用副原料粉末と鉄基粉末相互の理想的な接着状態について検討した。
その結果、接着異種粒子間のみにバインダーが存在し、その他の相互密着に無関係な粒子表面部位にはバインダーを存在させない形態が理想的ではあるが、該当部位のみに選択的にバインダーを存在させることは極めて難しいとの結論に達した。
そこで、これに近い形態について種々研究を重ねた。
【0009】
その結果、粒子個数が相対的に少ない粉末冶金用副原料粉末の表面を遍くバインダーで被覆した後、主原料である鉄基粉末と混合する。これにより、鉄基粉末と、これに隣接した粉末冶金用副原料粉末との間には、必然的にバインダーが存在し、相互の接着に寄与する。しかも、異種粒子の隣接しない鉄基粉末には不用なバインダーが一切存在しないという好ましい異種粒子間接着形態を達成できることを見出した。」
「【0025】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明では、粒子表面を有機バインダーで均一に被覆した粉末冶金用副原料粉末を用いる。本発明において、有機バインダーは熱可塑性樹脂であって、軟化点または融点が 100~160℃程度のものであることが好ましい。軟化点または融点が100℃未満では、粉末冶金用鉄基粉末混合物を製造する際に行われる加熱工程において、溶融した熱可塑性樹脂の粘性が低く、粉末冶金用副原料粉末表面から流出し、バインダーとしての機能が低下する。また、軟化点または融点が160℃を超えると、加熱工程における加熱温度を高くする必要が生じるために、鉄基粉末表面が酸化し、焼結後の焼結部材の機械的性質が低下する。
【0026】
ここに、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ブチラール樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、テルペンフェニール樹脂、スチレン-ブタジエンエラストマー、スチレンアクリル酸共重合体、アクリル酸樹脂、メタクリル酸エステル共重合体樹脂のうちから選んだ1種または2種以上を選択して使用する。」
「【0048】
なお、1次混合および2次混合において添加される潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム、ヒドロキシステアリン酸リチウム等の金属石鹸およびその誘導体、あるいはオレイン酸、パルチミン酸等の脂肪酸、あるいはステアリン酸アミド、ステアリン酸ビスアミド、セバシン酸ビスアミド等のエチレンジアミンと脂肪酸との共重合生成物、あるいはポリオレフィン等の熱可塑性樹脂粉末から選ばれる1種または2種以上が好ましい。1次混合、2次混合時の潤滑剤は、同じであっても異なっても良い。」
「【実施例】
【0058】
実施例1
有機バインダーとしては、表1に示す熱可塑性樹脂およびワックスを用いた。この有機バインダーを、各種黒鉛粉、各種銅粉、各種Ni基粉末、各種Mo基粉末、MnS粉末およびヒドロキシアパタイト粉末に対して、固形分量で表2~5に示す割合の樹脂エマルジョンまたは溶液として添加し、防爆型ヘンシェルミキサーで混合したのち、防爆型ドライオーブン中で乾燥させた。
【0059】
得られた乾燥ケーキを、ヘンシェルミキサーで解砕したのち、眼開き75μmの篩で分級した。篩下の粉体の平均粒径をマイクロトラックで測定し、50%透過累積粒度d50を求めた。また、篩下の粉体を大気中で10℃/分の速度で加熱昇温しつつ質量と発熱量を測定する装置(いわゆるTG-DTA (Thermo Gravimetry-Differential Thermal Analyser))によって揮発成分の質量を測定した。
得られた結果を表2~5に併記する。
なお、表2~5には、比較のため、有機樹脂の被覆を行わない各種粉末冶金用副原料粉末を用いた場合のd50について調べた結果も併せて示す。
【0060】
【表1】
[図:0001396307000002.jpg]
【0061】
【表2】
[図:0001396307000003.jpg]
」
「【0071】
実施例3
アトマイズ純鉄粉(KIP 301AおよびKIP 304A)、還元鉄粉(KIP 255M)、4mass%Ni-1.5 mass%Cu-0.5 mass%Mo部分合金化鋼粉(KIP シグマロイ415S)、2mass%Ni-1mass%Mo部分合金化鋼粉(KIP シグマロイ2010)、3mass%Cr-0.3 %V完全合金化鋼粉(KIP30CRV)(以上、JFE スチール(株)製)と、実施例1の発明例1~4,6、比較例1~4に該当する各種黒鉛粉、さらに必要に応じて実施例1の発明例7、8、10、比較例6、7、9に該当する各種銅粉、実施例1の発明例12、比較例11に該当するNi粉末、実施例1の発明例17、比較例16に該当するMo-Fe粉末と、表7に示す配合比の1次潤滑剤とを混合し、ついで容量:2リットル、撹拌翼径:20cmで、チョッパーの無いヘンシェルミキサーで 135~160℃に加熱しつつ混合し、その後、冷却し、60℃(すなわち2次潤滑剤の融点以下の温度)に達した時点で2次潤滑剤を添加して混合し、各種粉末冶金用鉄基混合粉末を作製した。1次潤滑剤を混合する際の加熱温度は、黒鉛粉および銅粉に被覆した熱可塑性樹脂の融点または軟化点、および1次潤滑剤である全ての潤滑剤の融点以上であり、これらを溶融させるのに十分な温度である。
【0072】
【表7】
[図:0001396307000004.jpg]
」
(3)甲3の記載
甲3には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は粉末冶金用の流動性改善粉末の製造方法に関する。」
「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は流動性が良好で尚且つ常温混合粉末の場合と同等の圧粉密度及び焼結密度を得ることのできる流動性の改善された粉末の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。而して請求項1の製造方法は、金属粉末と潤滑剤とを、50℃以上の温度で且つ該潤滑剤の溶融温度未満の温度に加熱した状態で混合することを特徴とする。
【0006】請求項2の製造方法は、請求項1において、前記混合を50℃以上の温度で且つ前記潤滑剤の溶融温度より5℃低い温度以下の温度で行うことを特徴とする。
【0007】
【作用及び発明の効果】上記のように本発明は、金属粉末と潤滑剤とを常温より高い温度、具体的には50℃以上の温度で且つ潤滑剤の溶融温度より低い温度で加熱混合し、混合粉末を得るもので、この方法により得られた混合粉末は、流動性が良好で金型への供給の際に棚吊り等を生じず、従って金型への充填作業を円滑,良好に行うことができるとともに、圧粉処理及び焼結処理を行ったときに圧粉密度及び焼結密度の高い圧粉体及び焼結体が得られる。
【0008】これは、本発明の加熱混合粉末の場合、潤滑剤が完全溶融するに到らない加熱状態で金属粉末と潤滑剤とを混合するため、潤滑剤のバインダとしての作用が従来の造粒粉末の場合のように強くはなく、そのためバインダの働きによって金属粉末と金属粉末とがある程度つながった状態になるものの、造粒粉末のような大きな粒となるようなことがなく、そのために金型に充填したときの見掛密度或いは圧粉処理や焼結処理したときの圧粉密度,焼結密度が高くなる一方で、従来の常温混合粉末に比べればある程度バインダによって金属粉末と金属粉末とがつながった状態にあるため流動性が高く、従って金型への供給過程で棚吊りを起さないものと考えられる。
【0009】本発明においては、望ましくは金属粉末と潤滑剤との混合を50℃以上の温度で且つ潤滑剤の溶融温度より5℃低い温度以下の温度で行うのが良く、より望ましくは溶融温度より10℃~30℃低い温度(但し50℃以上)の範囲内で混合を行うのが良い(請求項2)。」
「【0011】
【実施例】次に本発明の実施例を以下に詳述する。原料粉末として表1に示す化学組成を有し且つ粒度が-100メッシュのSUS434粉末を用い、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛(溶融温度130℃)を使用した。そしてSUS434粉末にステアリン酸亜鉛を、SUS434粉末を100として1重量%添加し、ステアリン酸亜鉛の溶融温度より20℃低い温度、即ち110℃で10分間加熱混合を実施し、加熱混合粉末を得た。」
2 甲号証に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
ア 上記1の(1)の【0039】の表6には、No.101~103の粉末冶金用鉄基粉末混合物は、潤滑剤はステアリン酸モノアミド(【0019】も参照。以下同様。)及びエチレンビスステアリン酸アミドを用い、結合剤はステアリン酸を用いることが示されている。
そうすると、上記1の(1)(特に、【0001】、【0034】、【0035】、【0039】の表6参照。)によれば、甲1の実施例-2のNo.101~103の粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法に注目すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。
「鉄粉と結合剤と合金用粉末及び切削性改善用粉末とを結合剤の融点の+10℃で10分間加熱混合した後、加熱温度より融点の高い潤滑剤粉末を添加し、2分間混合したのち冷却する粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法であって、
鉄粉は平均粒径78μmのアトマイズ鉄粉もしくは還元鉄粉を用い、
合金用粉末は平均粒径28μmの電解銅粉を用い、
黒鉛粉は平均粒径16μm以下のものを用い、
切削性改善用粉末にはMgO,SiO2を主成分とするタルクを用い、
結合剤はステアリン酸を用い、
潤滑剤はステアリン酸モノアミド及びエチレンビスステアリン酸アミドを用いた、粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法。」
イ また、上記1の(1)の【0039】の表6には、No.109~111の粉末冶金用鉄基粉末混合物は、潤滑剤はステアリン酸モノアミド及びエチレンビスステアリン酸アミドを用い、結合剤はベヘン酸C30アルコールエステルを用いることが示されている。
そうすると、上記1の(1)(特に、【0001】、【0034】、【0035】、【0039】の表6参照。)によれば、甲1の実施例-2のNo.109~111の粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法に注目すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
「鉄粉と結合剤と合金用粉末及び切削性改善用粉末とを結合剤の融点の+10℃で10分間加熱混合した後、加熱温度より融点の高い潤滑剤粉末を添加し、2分間混合したのち冷却する粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法であって、
鉄粉は平均粒径78μmのアトマイズ鉄粉もしくは還元鉄粉を用い、
合金用粉末は平均粒径28μmの電解銅粉を用い、
黒鉛粉は平均粒径16μm以下のものを用い、
切削性改善用粉末にはMgO,SiO2を主成分とするタルクを用い、
結合剤はベヘン酸C30アルコールエステルを用い、
潤滑剤はステアリン酸モノアミド及びエチレンビスステアリン酸アミドを用いた、粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法。」
(2)甲2に記載された発明
ア 上記1の(2)の表7には、発明例33について、鉄基粉末として30CRV、黒鉛粉として発明例2、2次潤滑剤としてステアリン酸モノアミド(欄外に記載)を採用することが示されている。
イ そして、上記1の(2)の【0058】より、黒鉛粉に対して樹脂エマルジョンまたは溶液を混合・乾燥させることが、上記1の(2)の【0059】より、得られた乾燥ケーキを解砕することが、上記1の(2)の【0060】の表1より、樹脂Jがテルペンフェノール樹脂であることが、上記1の(2)の【0061】の表2より、発明例2は天然黒鉛粉と樹脂Jを含むことが、それぞれ示されている。
そうすると、発明例2の黒鉛粉は、テルペンフェノール樹脂と天然黒鉛粉とを混合・乾燥させた後、得られた乾燥ケーキを解砕した粉体であるといえる。
ウ したがって、上記1の(2)(特に、【0001】、【0058】、【0059】、【0060】の表1、【0061】の表2、【0071】、【0072】の表7参照。)によれば、甲2の発明例33の粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法に注目すると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「テルペンフェノール樹脂と天然黒鉛粉とを混合・乾燥させた後、得られた乾燥ケーキを解砕し、得られた粉体と、3mass%Cr-0.3 %V完全合金化鋼粉(KIP30CRV)とを混合し、ついで135~160℃に加熱しつつ混合し、その後、冷却し、60℃(すなわち2次潤滑剤の融点以下の温度)に達した時点で2次潤滑剤であるステアリン酸モノアミドを添加して混合し、粉末冶金用鉄基混合粉末を作製する、粉末冶金用鉄基粉末混合物の製造方法。」
3 当審の判断
3-1 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明1との対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
ア 甲1発明1の「結合剤」は、本件発明1の「バインダー」に相当する。
イ 甲1発明1は、「鉄粉と結合剤と合金用粉末及び切削性改善用粉末とを結合剤の融点の+10℃で10分間加熱混合した後、加熱温度より融点の高い潤滑剤粉末を添加し、2分間混合したのち冷却する」ものであるから、本件発明1の「鉄粉を含む原料粉に潤滑剤を」「混合する工程を備え」るものである。
ウ 甲1発明1の「鉄粉と結合剤と合金用粉末及び切削性改善用粉末とを結合剤の融点の+10℃で10分間加熱混合」する事項は、本件発明1の「混合工程として、上記原料粉にバインダーを混合する第1混合工程」「を備え」る事項に相当する。
エ 甲1発明1の「加熱温度より融点の高い潤滑剤粉末を添加し、2分間混合したのち冷却する」事項は、本件発明1の「混合工程として、」「第1混合工程で得られた混合体に潤滑剤を混合する第2混合工程」「を備え」る事項に相当する。
オ 甲1発明1の「ステアリン酸」は、上記1の(1)の【0016】によれば、融点が70℃であるから、甲1発明1は、70℃+10℃、すなわち、80℃で「加熱混合」するものである。
そうすると、甲1発明1は、「鉄粉と結合剤と合金用粉末及び切削性改善用粉末とを結合剤の融点の+10℃で10分間加熱混合した後、加熱温度より融点の高い潤滑剤粉末を添加し、2分間混合したのち冷却する」ものであるから、「潤滑剤粉末」の「投入開始から混合終了までの混合期間内の最高到達温度」は、概ね80℃である。
一方、甲1発明1の「ステアリン酸モノアミド及びエチレンビスステアリン酸アミド」は、上記1の(1)の【0019】の「ステアリン酸モノアミドとエチレンビスステアリン酸アミドの溶融混合物(同125℃)」の記載によれば、両者の溶融混合物の形態で存在し、かつ、その融点は125℃である。
したがって、本件発明1と甲1発明1とは、「第2混合工程で、潤滑剤の投入開始から混合終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の」「融点以下と」する事項で共通する。
カ 上記ア~オより、本件発明1と甲1発明1とは、
「鉄粉を含む原料粉に潤滑剤を混合する工程を備え、
上記混合工程として、
上記原料粉にバインダーを混合する第1混合工程と、
上記第1混合工程で得られた混合体に潤滑剤を混合する第2混合工程と
を備え、
上記第2混合工程で、潤滑剤の投入開始から混合終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の融点以下とする、粉末冶金用混合粉の製造方法。」で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点1-1)
本件発明1は、第2混合工程における「混合期間」が「潤滑剤の投入開始から撹拌終了まで」であり、その「混合期間内の最高到達温度」の下限が「潤滑剤の軟化開始温度以上」であるのに対し、甲1発明1は、80℃で「10分間加熱混合した後、加熱温度より融点の高い潤滑剤粉末を添加し、2分間混合」するものであって、上記「混合期間」は、潤滑剤の投入開始から混合終了までであるものの、「潤滑剤の投入開始から撹拌終了まで」であるか否かが不明であり、その「混合期間内の最高到達温度」の下限が「潤滑剤の軟化開始温度以上」であるか否かが不明である点。
(相違点1-2)
本件発明1は、「鉄粉を含む原料粉に潤滑剤を混合する工程」を、「攪拌しつつ」行い、「潤滑剤を上記鉄粉に付着させる」のに対し、甲1発明1は、「2分間」の「混合」において、撹拌しつつ混合しているか否か、潤滑剤が鉄粉に付着するか否かが不明である点。
(2)相違点についての検討
まず、上記相違点1-1について検討する。
ア 甲1には、「潤滑剤」である「ステアリン酸モノアミド及びエチレンビスステアリン酸アミド」の軟化開始温度が記載されていない。
イ そして、本件明細書には、次の記載がある。
「【0069】
潤滑剤として、エチレンビスステアリン酸アミド及びステアリン酸モノアミドを混合した潤滑剤(以下、「潤滑剤1」ともいう)を準備した。この潤滑剤1の軟化開始温度は52℃であり、融点は103℃であった。」
「【0072】
(No.9~No.16)
潤滑剤として、エチレンビスステアリン酸アミドのみを含有する潤滑剤(以下、「潤滑剤2」ともいう)を準備した。この潤滑剤2の軟化開始温度は51℃であり、融点は147℃であった。」
ウ 上記イより、「エチレンビスステアリン酸アミドのみを含有する潤滑剤」は、軟化開始温度が51℃であり、融点が147℃であって、「エチレンビスステアリン酸アミド及びステアリン酸モノアミドを混合した潤滑剤」は、軟化開始温度が52℃であり、融点が103℃である。
エ そして、上記ウからすると、「エチレンビスステアリン酸アミドのみを含有する潤滑剤」に対し、「ステアリン酸モノアミド」を混合すると、軟化開始温度は51℃が52℃に変化するだけでほとんど同程度であるが、融点は147℃が103℃へと変化していることから、潤滑剤、特に、混合物の潤滑剤の融点及び軟化開始温度の挙動に法則性が見当たらない。
オ ここで、上記イの【0069】の「エチレンビスステアリン酸アミド及びステアリン酸モノアミドを混合した潤滑剤」における各成分の混合割合と、甲1発明1の「ステアリン酸モノアミド及びエチレンビスステアリン酸アミド」における各成分の混合割合は、いずれも不明である。
そして、これらの潤滑剤は同一物質の混合物であるところ、前者の融点が上記イの【0069】より103℃、後者の融点が上記(1)のオより125℃であり、両者は大きく相違する。
カ そうすると、上記イの「エチレンビスステアリン酸アミド及びステアリン酸モノアミドを混合した潤滑剤」における各成分の混合割合と、甲1発明1の「ステアリン酸モノアミド及びエチレンビスステアリン酸アミド」における各成分の混合割合が異なることは明らかであるし、上記エの検討を考慮すると、前者の軟化開始温度が上記イより52℃であるからといって、後者の軟化開始温度が甲1発明1の加熱温度である80℃以下であるとまではいいきれない。すなわち、甲1発明1において、「混合期間内の最高到達温度」の下限が「潤滑剤の軟化開始温度以上」であるか否かは不明である。
キ したがって、上記相違点1-1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明1であるとはいえない。
ク また、甲1には、潤滑剤の軟化開始温度について何ら記載されていないから、甲1発明1において、潤滑剤の投入開始から混合終了までの混合期間内の最高到達温度について、その下限を潤滑剤の軟化開始温度以上とする動機もない。
ケ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1ではないし、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(3)本件発明1と甲1発明2との対比
本件発明1と甲1発明2とを対比する。
ア 甲1発明2の「結合剤」は、本件発明1の「バインダー」に相当する。
イ 甲1発明2は、「鉄粉と結合剤と合金用粉末及び切削性改善用粉末とを結合剤の融点の+10℃で10分間加熱混合した後、加熱温度より融点の高い潤滑剤粉末を添加し、2分間混合したのち冷却する」ものであるから、本件発明1の「鉄粉を含む原料粉に潤滑剤を」「混合する工程を備え」るものである。
ウ 甲1発明2の「鉄粉と結合剤と合金用粉末及び切削性改善用粉末とを結合剤の融点の+10℃で10分間加熱混合」する事項は、本件発明1の「混合工程として、上記原料粉にバインダーを混合する第1混合工程」「を備え」る事項に相当する。
エ 甲1発明2の「加熱温度より融点の高い潤滑剤粉末を添加し、2分間混合したのち冷却する」事項は、本件発明1の「混合工程として、」「第1混合工程で得られた混合体に潤滑剤を混合する第2混合工程」「を備え」る事項に相当する。
オ 甲1発明2の「ベヘン酸C30アルコールエステル」は、上記1の(1)の【0016】によれば、融点が75℃であるから、甲1発明2は、75℃+10℃、すなわち、85℃で「加熱混合」するものである。
そうすると、甲1発明2は、「鉄粉と結合剤と合金用粉末及び切削性改善用粉末とを結合剤の融点の+10℃で10分間加熱混合した後、加熱温度より融点の高い潤滑剤粉末を添加し、2分間混合したのち冷却する」ものであるから、「潤滑剤粉末」の「投入開始から混合終了までの混合期間内の最高到達温度」は、概ね85℃である。
一方、甲1発明2の「ステアリン酸モノアミド及びエチレンビスステアリン酸アミド」は、上記1の(1)の【0025】の「ステアリン酸モノアミドとエチレンビスステアリン酸アミドの溶融混合物(同125℃)」の記載によれば、両者の溶融混合物の形態で存在し、かつ、その融点は125℃である。
したがって、本件発明1と甲1発明2とは、「第2混合工程で、潤滑剤の投入開始から混合終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の」「融点以下と」する事項で共通する。
カ 上記ア~オより、本件発明1と甲1発明2とは、
「鉄粉を含む原料粉に潤滑剤を混合する工程を備え、
上記混合工程として、
上記原料粉にバインダーを混合する第1混合工程と、
上記第1混合工程で得られた混合体に潤滑剤を混合する第2混合工程と
を備え、
上記第2混合工程で、潤滑剤の投入開始から混合終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の融点以下とする、粉末冶金用混合粉の製造方法。」で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点2-1)
本件発明1は、第2混合工程における「混合期間」が「潤滑剤の投入開始から撹拌終了まで」であり、その「混合期間内の最高到達温度」の下限が「潤滑剤の軟化開始温度以上」であるのに対し、甲1発明2は、85℃で「10分間加熱混合した後、加熱温度より融点の高い潤滑剤粉末を添加し、2分間混合」するものであって、上記「混合期間」は、潤滑剤の投入開始から混合終了までであるものの、「潤滑剤の投入開始から撹拌終了まで」であるか否かが不明であり、その「混合期間内の最高到達温度」の下限が「潤滑剤の軟化開始温度以上」であるか否かが不明である点。
(相違点2-2)
本件発明1は、「鉄粉を含む原料粉に潤滑剤を混合する工程」を、「攪拌しつつ」行い、「潤滑剤を上記鉄粉に付着させる」のに対し、甲1発明2は、「2分間」の「混合」において、撹拌しつつ混合しているか、潤滑剤が鉄粉に付着するか否かが不明である点。
(4)相違点2についての検討
まず、上記相違点2-1について検討する。
ア 上記(2)のア~オの検討を踏まえると、上記(2)のイの【0069】の「エチレンビスステアリン酸アミド及びステアリン酸モノアミドを混合した潤滑剤」における各成分の混合割合と、甲1発明2の「ステアリン酸モノアミド及びエチレンビスステアリン酸アミド」における各成分の混合割合が異なることは明らかであるから、前者の軟化開始温度が52℃であるからといって、後者の軟化開始温度が甲1発明2の加熱温度である85℃以下であるとまではいいきれない。すなわち、甲1発明2において、「混合期間内の最高到達温度」の下限が「潤滑剤の軟化開始温度以上」であるか否かは不明である。
イ したがって、上記相違点2-1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明2であるとはいえない。
ウ また、甲1には、潤滑剤の軟化開始温度について何ら記載されていないから、甲1発明2において、潤滑剤の投入開始から混合終了までの混合期間内の最高到達温度について、その下限を潤滑剤の軟化開始温度以上とする動機もない。
エ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明2ではないし、甲1発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(5)本件発明1と甲2発明との対比
ア 甲2発明の「テルペンフェノール樹脂」は、本件発明1の「バインダー」に相当する。
イ 甲2発明は、「テルペンフェノール樹脂と天然黒鉛粉とを混合・乾燥させた後、得られた乾燥ケーキを解砕し、得られた粉体と、3mass%Cr-0.3 %V完全合金化鋼粉(KIP30CRV)とを混合し、ついで135~160℃に加熱しつつ混合し、その後、冷却し、60℃(すなわち2次潤滑剤の融点以下の温度)に達した時点で2次潤滑剤であるステアリン酸モノアミドを添加して混合」するものであるから、本件発明1の「鉄粉を含む原料粉に潤滑剤を」「混合する工程を備え」るものである。
ウ 甲2発明の「テルペンフェノール樹脂と天然黒鉛粉とを混合・乾燥させた後、得られた乾燥ケーキを解砕し、得られた粉体と、3mass%Cr-0.3 %V完全合金化鋼粉(KIP30CRV)とを混合」する事項は、本件発明1の「混合工程として、上記原料粉にバインダーを混合する第1混合工程」「を備え」る事項に相当する。
エ 甲2発明は、「その後、冷却し、60℃(すなわち2次潤滑剤の融点以下の温度)に達した時点で2次潤滑剤であるステアリン酸モノアミドを添加して混合」するものであるから、本件発明1と甲2発明とは、「混合工程として、」「第1混合工程で得られた混合体に潤滑剤を混合する第2混合工程」「を備え、上記第2混合工程で、潤滑剤の投入開始から混合終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の」「融点以下と」する事項で共通する。
オ 上記ア~エより、本件発明1と甲2発明とは、
「鉄粉を含む原料粉に潤滑剤を混合する工程を備え、
上記混合工程として、
上記原料粉にバインダーを混合する第1混合工程と、
上記第1混合工程で得られた混合体に潤滑剤を混合する第2混合工程と
を備え、
上記第2混合工程で、潤滑剤の投入開始から混合終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の融点以下とする、粉末冶金用混合粉の製造方法。」で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点3-1)
本件発明1は、第2混合工程における「混合期間」が「潤滑剤の投入開始から撹拌終了まで」であり、その「混合期間内の最高到達温度」の下限が「潤滑剤の軟化開始温度以上」であるのに対し、甲2発明は、「60℃(すなわち2次潤滑剤の融点以下の温度)に達した時点で2次潤滑剤であるステアリン酸モノアミドを添加して混合」するものであって、上記「混合期間」は、潤滑剤の投入開始から混合終了までであるものの、「潤滑剤の投入開始から撹拌終了まで」であるか否かが不明であり、その「混合期間内の最高到達温度」の下限が「潤滑剤の軟化開始温度以上」であるか否かが不明である点。
(相違点3-2)
本件発明1は、「鉄粉を含む原料粉に潤滑剤を混合する工程」を、「攪拌しつつ」行い、「潤滑剤を上記鉄粉に付着させる」のに対し、甲2発明は、「2次潤滑剤であるステアリン酸モノアミドを添加して混合」する過程において、撹拌しつつ混合しているか、潤滑剤が鉄粉に付着するか否かが不明である点。
(6)相違点についての検討
まず、上記相違点3-1について検討する。
ア 甲2には、「潤滑剤」である「ステアリン酸モノアミド」の軟化開始温度が記載されていない。
イ また、上記(2)のイより、「エチレンビスステアリン酸アミドのみを含有する潤滑剤」は、軟化開始温度が51℃であり、「エチレンビスステアリン酸アミド及びステアリン酸モノアミドを混合した潤滑剤」は、軟化開始温度が52℃である。
ウ また、甲1には、「ステアリン酸モノアミド(融点100℃)」(【0019】)と記載されている。
エ しかしながら、上記(2)のエの検討に照らせば、「ステアリン酸モノアミド」の軟化開始温度が、甲2発明における「ステアリン酸モノアミド」の添加温度である「60℃」未満であるとはいいきれない。すなわち 、甲2発明において、「混合期間内の最高到達温度」の下限が「潤滑剤の軟化開始温度以上」であるか否かは不明である。
オ そうすると、上記相違点3-1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2発明であるとはいえない。
カ また、甲2には潤滑剤の軟化開始温度について何ら記載されていないから、甲2発明において、潤滑剤の投入開始から混合終了までの混合期間内の最高到達温度について、その下限を潤滑剤の軟化開始温度以上とする動機もない。
キ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
ク なお、申立人は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、次の主張をしている。
「潤滑剤を上記鉄粉に付着させるために、潤滑剤の投入開始から攪拌終了までの混合期間内の最高到達温度を、潤滑剤の軟化開始温度以上とすることは、上記甲1発明〔上記(a)参照〕及び甲第3号証の記載〔下記(ウ)参照〕に基いて、当業者が適宜なし得るといえる。」(申立書第29頁第21~24行)
ケ しかしながら、上記クの主張は、甲1及び甲3の記載に基いて、当業者が適宜なし得るとする具体的な根拠が不明であるから、採用できない。
コ よって、申立人の主張には理由がない。
3-2 本件発明2~6について
ア 本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、甲1発明1、甲1発明2及び甲2発明に対し、少なくともそれぞれ相違点1-1、相違点2-1及び相違点3-1で相違する。
イ そして、これらの相違点については、上記3-1で検討したとおりである。
ウ よって、本件発明2、4は、甲1または甲2に記載された発明とはいえず、また、甲1~甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
エ また、本件発明3、5、6は、甲1に記載された発明とはいえず、また、甲1~甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
第5 特許法第36条第6項第1号について(上記第3の(3))
1 第2工程の温度について(上記第3の(3)ア)
(1)本件発明の解決しようとする課題は、本件明細書の記載によれば、「流動性の低下を抑止しつつ、見掛密度を向上できる粉末冶金用混合粉の製造方法」(【0007】)を提供することであると認める。
(2)そして、本件明細書には、次の記載がある。
「【0009】
すなわち、上記課題を解決するためになされた本発明の粉末冶金用混合粉の製造方法は、鉄粉を含む原料粉に潤滑剤を攪拌しつつ混合する工程を備え、上記混合工程で、潤滑剤の投入開始から攪拌終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下とする。
【0010】
当該粉末冶金用混合粉の製造方法では、鉄粉に潤滑剤を混合する際の上記混合期間内の最高到達温度を上記下限以上とすることで、潤滑剤の鉄粉の窪み等への付着量が混合時から大きくできる。このため、当該粉末冶金用混合粉の製造方法を用いることで、鉄粉同士の粒子間距離が縮められ、得られる粉末冶金用混合粉の見掛密度を向上できる。また、上記混合工程での上記混合期間内の最高到達温度を上記上限以下とすることで、上記粉末冶金用混合粉の流動性の低下を抑止できる。」
「【0054】
・・・(略)・・・潤滑剤の投入開始から攪拌終了までの混合期間内の最高到達温度は、上記潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下とされ、中でも第2混合工程S2での上記最高到達温度と上記潤滑剤の軟化開始温度との差が10℃以上であることが好ましく、また第2混合工程S2での上記最高到達温度と上記潤滑剤の融点との差が10℃以上であることが好ましい。上記最高到達温度が上記下限未満であると、得られる粉末冶金用混合粉の見掛密度の向上効果が不足するおそれがある。逆に、上記最高到達温度が上記上限を超えると、潤滑剤の粘性が下がり過ぎ、鉄粉が凝集し易くなる。このため、得られる粉末冶金用混合粉の流動性が低下するおそれがある。」
(3)上記(2)(特に、【0010】参照。)によれば、本件発明は、「潤滑剤の投入開始から攪拌終了までの混合期間内の最高到達温度」(以下、単に、「最高到達温度」という。)を潤滑剤の軟化開始以上とすることで、潤滑剤の鉄粉の窪み等への付着量が混合時から大きくでき、鉄粉同士の粒子間距離が縮められ、得られる粉末冶金用混合粉の見掛密度を向上できる。
(4)また、上記(2)(特に、【0054】参照。)によれば、本件発明は、最高到達温度を潤滑剤の融点以下とすることにより、潤滑剤の粘性が下がり過ぎ、鉄粉が凝集し易くなることを抑止し、得られる粉末冶金用混合粉の流動性の低下を抑止できる。
(5)そして、本件発明1は、上記第2で示したとおりのものであって、「混合工程として、上記原料粉にバインダーを混合する第1混合工程と、上記第1混合工程で得られた混合体に潤滑剤を混合する第2混合工程とを備え、上記第2混合工程で、潤滑剤の投入開始から攪拌終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下」とする事項を含むものである。
(6)そうすると、上記(3)、(4)からすると、本件発明1は、上記(1)の課題を解決し得るから、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。また、本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明2~6も同様に、発明の詳細な説明に記載されたものである。
(7)なお、申立人は、申立書において、次のとおり主張している。
「発明の詳細な説明には、図4に示されるように、上記第2混合工程で、第1混合工程で得られた上記混合体の粉末温度を上げる方法によって、潤滑剤の投入開始から攪拌終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下とすることが記載されているだけであり、上記以外の方法、例えば、高温の第1混合工程から単純に冷却する方法によって、上記の最高到達温度を上記潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下とすることは記載されていないから、上記以外の方法を含む請求項1の記載で、「流動性の低下を抑止しつつ、見掛密度を向上できる粉末冶金用混合粉の製造方法の提供」(【0007】)」という本件発明の課題を解決することができるかどうか明らかでない。」(申立書第34頁第5~13行)
(8)しかしながら、本件発明1は、「最高到達温度を上記潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下」とするものであるから、たとえ、第1混合工程から単純に冷却するものであったとしても、当該冷却する過程において、最高到達温度を潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下とすることにより、少なくとも当該温度範囲の期間には、上記(3)のとおり、潤滑剤の鉄粉の窪み等への付着量が混合時から大きくでき、鉄粉同士の粒子間距離が縮められ、得られる粉末冶金用混合粉の見掛密度を向上できるし、上記(4)のとおり、潤滑剤の粘性が下がり過ぎ、鉄粉が凝集し易くなることを抑止し、得られる粉末冶金用混合粉の流動性の低下を抑止できる。
(9)したがって、本件発明1は上記(1)の課題を解決し得ない発明を含むものとはいえない。
(10)また、申立人は、申立書において、次のとおり主張している。
本件明細書には、「「上記粉末温度が上記軟化開始温度以上である時間(図4のT1)の下限としては、0.5分が好ましく、1分がより好ましく、2分がさらに好ましい。上記時間T1が上記下限未満であると、得られる粉末冶金用混合粉の見掛密度の向上効果が不足するおそれがある。」(【0057】)と記載されているから、上記混合体の粉末温度が上記軟化開始温度以上である時間が、極めて短い時間である場合には、本件発明の課題を解決することはできないといえる。
しかし、上記軟化開始温度以上である時間の下限の「0.5分」という記載も、何ら根拠がなく、実施例には、混合期間中は全期間にわたって上記粉末温度を一定に保ったことが記載されているだけである(【0070】~【0071】)。」(申立書第34頁第14行~第35頁第4行)
(11)しかしながら、たとえ、「最高到達温度」が「潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下」である時間が極めて短かったとしても、その期間には、上記(3)のとおり、潤滑剤の鉄粉の窪み等への付着量が混合時から大きくでき、鉄粉同士の粒子間距離が縮められ、得られる粉末冶金用混合粉の見掛密度を向上できるし、上記(4)のとおり、潤滑剤の粘性が下がり過ぎ、鉄粉が凝集し易くなることをわずかに抑止し、得られる粉末冶金用混合粉の流動性の低下をわずかに抑止できると考えられる。
(12)そうすると、本件発明1は上記(1)の課題を解決し得ない発明を含むものとはいえない。
(13)さらに、申立人は、申立書において、原審における特許権者の意見書の主張について、次のとおり述べている。
「意見書にて特許権者が主張した内容から考えると、本件発明は、第2混合工程において、「加熱設備や加熱エネルギーを必要としない室温」を選択しないで、「敢えて加熱すると言う選択」を行った点で、各引用文献から容易であるとはいえないと主張していると理解できる。
すなわち、意見書の主張は、上記の図4に示されているように、第2混合工程で、潤滑剤の軟化開始温度以上とするために、第1混合工程で得られた「上記混合体の粉末温度を上げる」(発明の詳細な説明には「加熱する」という記載はないが実質的には加熱していると思われる)点で、本件発明は上記の各引用文献から容易であるとはいえないという主張と理解できる。
しかしながら、本件発明1は、「上記第2混合工程で、潤滑剤の投入開始から攪拌終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下」にすると特定しているだけであるから、「潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下」から単純に冷却する工程で潤滑剤を投入する場合に、一瞬でも「潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下」となる温度条件のものも、その技術的範囲に包含されることになり、上記意見書の主張とは矛盾した内容になっている。」(申立書第36頁第7~21行)
(14)しかしながら、特許権者の主張は、引用文献に記載された発明が室温まで冷却した場合に、「潤滑剤の投入開始から攪拌終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下」とするには、加熱という選択が必要であることを主張しているだけであって、本件発明について加熱することが必須であると主張しているわけではない(実際、本件発明は、そのような特定がなされたものではない。)から、特許権者の主張に何ら矛盾はない。
(15)よって、申立人の主張には理由がない。
2 潤滑剤について(上記第3の(3)イ)
(1)上記1の(1)~(6)で検討したとおり、本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
(2)なお、申立人は、申立書において、次の主張をしている。
「発明の詳細な説明には、「潤滑剤としては、特に限定されるものではなく」(段落【0040】)と記載されているところ、実施例の記載を参照すると、潤滑剤としては、潤滑剤1:「エチレンビスステアリン酸アミド及びステアリン酸モノアミドを混合した潤滑剤」(段落【0069】)、潤滑剤2:「エチレンビスステアリン酸アミドのみを含有する潤滑剤」(段落【0072】)の2種でしか、その効果が確認されていない。
請求項1には、「上記第2混合工程で、潤滑剤の投入開始から攪拌終了までの混合期間内の最高到達温度を上記潤滑剤の軟化開始温度以上融点以下」とすることが記載されているが、エチレンビスステアリン酸アミド及びステアリン酸モノアミドを混合した潤滑剤、エチレンビスステアリン酸アミドのみを含有する潤滑剤以外の潤滑剤については、融点、軟化開始温度(軟化点)は不明であり、上記の最高到達温度を特定することはできないから、上記以外の潤滑剤を含む請求項1の記載で、「流動性の低下を抑止しつつ、見掛密度を向上できる粉末冶金用混合粉の製造方法の提供」(【0007】)」という本件発明の課題を解決することができるかどうか明らかでない。」(申立書第37頁第2~16行)
(3)しかしながら、上記(2)の「エチレンビスステアリン酸アミド及びステアリン酸モノアミドを混合した潤滑剤」、「エチレンビスステアリン酸アミドのみを含有する潤滑剤」以外の潤滑剤を用いた場合については、本件明細書の実施例においてその効果が確認されていないが、上記1の(3)及び(4)で示した機序により、上記1の(1)の課題を解決し得ることは明らかである。
(4)また、上記(2)の「エチレンビスステアリン酸アミド及びステアリン酸モノアミドを混合した潤滑剤」、「エチレンビスステアリン酸アミドのみを含有する潤滑剤」以外の潤滑剤について、融点については、JIS等で定められた一般的な測定方法が存在するし、また、軟化開始温度については、本件明細書【0018】に記載の方法で測定可能である。
(5)そうすると、本件発明1は上記1の(1)の課題を解決し得ない発明を含むものとはいえない。
(6)また、申立人は、審判請求書において、次の主張をしている。
「請求項4には、「上記潤滑剤が金属原子を含まない」と特定されているが、請求項1に係る発明には、金属原子を含む「金属石鹸(ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等)」(段落【0040】)を含有する潤滑剤も含まれる。しかし、発明の詳細な説明には、上記の金属石鹸を含有する潤滑剤についての具体的な記載はなく、融点は分かるとしても、軟化開始温度(軟化点)は不明である。」(申立書第37頁第17~22行)
(7)しかしながら、本件明細書【0018】には、潤滑剤の軟化開始温度の測定方法が記載されており、潤滑剤が金属石鹸の場合に当該測定方法が採用できない特段の理由がないから、当該測定方法により潤滑剤の軟化開始温度が測定可能であり、当業者であれば、潤滑剤が金属石鹸の場合であっても、その軟化開始温度は理解できる。
(8)よって、申立人の主張には理由がない。
第6 特許法第36条第4項第1号について(上記第3の(4))
1 バインダーについて
(1)本件発明1の「バインダー」について、本件明細書【0029】~【0039】には、その種類、含有量について記載されており、また、同【0047】~【0051】には、「原料粉にバインダーを混合する第1混合工程」の条件について記載されている。
(2)そして、本件発明は、これらのバインダーの種類、含有量、混合条件について、それぞれ記載されたもののうち1つを採用すれば実施することが可能であるから、当業者は何ら過度の試行錯誤も必要とせずに本件発明を実施可能である。
(3)よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項1~6に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(4)申立人は、本件発明は、どのようなバインダーをどの程度の量を添加し、どのような条件で混合すればよいのかが不明であると主張しているが、上記のとおりであるから、申立人の主張には理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、本件の請求項1~6に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできず、また、他に本件の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701161