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特許異議申立

2023-700866

超音波噴霧方法によって球状金属粉末を製造するデバイス

審判番号
2023-700866
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-544697
登録番号
7228274
請求日
2023年08月24日
審決日
2025年03月28日
公報発行日
2025年07月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】スリーディー ラブ スプウカ ズ オグラニチョノン オトポヴィエヂャルノシチョン
  • 【権利者代理人】弁理士法人サトー
  • 【異議申立人】ズロドフスキ ウカシュ
  • 【異議申立人代理人】藤田 考晴
  • 【異議申立人代理人】川上 美紀
  • 【異議申立人代理人】河合 利恵
審判長/審判官
  • 審判長 粟野 正明
  • 審判官 土屋 知久
  • 審判官 佐藤 陽一
分類
P1651.111-YAA(B22F) / P1651.121-YAA(B22F) / P1651.536-YAA(B22F) / P1651.537-YAA(B22F) / P1651.54 -YAA(B22F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第184条の4第1項、特許法第29条第1項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第184条の18、特許法第29条第1項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7228274号発明「超音波噴霧方法によって球状金属粉末を製造するデバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7228274号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。 特許第7228274号の請求項1~19に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7228274号(以下「本件特許」という。)の請求項1~19に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)11月 9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年11月 9日(PL)ポーランド共和国、2018年 3月13日(PL)ポーランド共和国、2018年 6月 3日(PL)ポーランド共和国)を国際出願日とする出願(特願2020-544697号。以下「本願」という。)であって、令和 5年 2月15日にその特許権の設定登録がなされ、同年 2月24日にその特許掲載公報が発行されたものである。 その後、令和 5年 8月24日に、特許異議申立人 ズロドフスキ ウカシュ(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~19(全請求項)に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 5年 8月24日 :特許異議の申立て 9月 7日 :手続補正書(方式)の提出 12月 8日付け:取消理由通知 令和 6年 3月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 3月15日付け:訂正請求があった旨の通知 5月 9日 :申立人による意見書の提出 7月 2日付け:取消理由通知(決定の予告) 10月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 10月25日付け:訂正請求があった旨の通知 12月19日 :申立人による意見書の提出 なお、令和 6年 3月 5日提出の訂正請求書に基づく訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正請求について 1 請求の趣旨 令和 6年10月 1日になされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、特許第7228274号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求める、というものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所には、当合議体が下線を付した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「100W/mK超過の熱伝導率を有する材料で作られ溶融先端(1)を有する冷却された不融性ソノトロード(2)」とあるのを、「100W/mK超過の熱伝導率と100HV5超の硬度とを有する材料で作られ溶融先端(1)を有する冷却された不融性ソノトロード(2)」と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、「前記溶融先端はAISI 308鋼から作成されており液体入力材料による濡れ性を確保する」とあるのを、「前記溶融先端はAISI 308鋼から作成されており固体状態の前記溶融先端と液体入力材料による濡れ性を確保する」と訂正する。 なお、訂正請求書の7(2)イでは、「確保する、」と、訂正後の「確保する」の後に「、」が付されているが、訂正特許請求の範囲の当該箇所には、「、」が付されていないから、訂正請求書の当該「確保する、」は、「確保する」の誤記と認める。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7~12及び14に、「請求項1から5」とあるのを、「請求項1から4」と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項10に、「蒸留水またはジエチレングリコール」とあるのを、「蒸留水」と訂正する。 (5)訂正事項5 明細書の段落【0019】、【0029】及び【0033】に、「ジエチレングリコール」とあるのを、「エチレングリコール」と訂正する。 3 訂正の適否についての当審における判断 (1)訂正事項1に係る訂正について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1について、「球状金属粉末を製造するデバイス」における「不融性ソノトロード」の材料特性を更に限定して、「100HV5超の硬度とを有する」ものとする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無について 訂正事項1に係る訂正は、本願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0029】に記載される、「ソノトロードの二重の役割(振動の伝達と熱の除去)により、熱伝導率が高く、即ち100W/mK超であり、100 HV5超の硬度を有する材料を使用する必要がある。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について 上記アのとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2に係る訂正について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1における「濡れ性」が、固体表面である「溶融先端」と、液体である「液体入力材料」との間の「濡れ性」であるのか、溶融状態にある二者間の「濡れ性」であるのか不明であったところ、「液体入力材料による濡れ性」を「固体状態の前記溶融先端と液体入力材料による濡れ性」と訂正し、固体表面である「溶融先端」と、液体である「液体入力材料」との間の「濡れ性」であることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無について 一般に、「濡れ性」とは、固体表面に対する液体の親和性(付着しやすさ)を表すものであるから、入力材料が液体である以上、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)は、出願時の技術常識に照らして、請求項1における「濡れ性」が、「固体状態」の溶融先端と「液体入力材料」との間の親和性を示していることを理解する。 そうすると、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載から自明な事項といえるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について 上記アのとおり、訂正事項2に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3に係る訂正について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項3に係る訂正は、本件訂正前の「デバイス」に係る請求項7~16が、「デバイスの製造方法」に係る請求項5の記載を直接又は間接的に引用しているという不明瞭な状態を解消する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無について 訂正事項3に係る訂正は、請求項7~12及び14を請求項5の記載を引用しないものに改める訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について 上記アのとおり、訂正事項3に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4に係る訂正について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項4に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項10について、誘電性液体である、「蒸留水またはジエチレングリコール」を更に限定して、「蒸留水」とする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無について 訂正事項4に係る訂正は、択一的記載の要素を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について 上記アのとおり、訂正事項4に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項5に係る訂正について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項5に係る訂正は、本件訂正前の「ジエチレングリコール」との誤訳を、「エチレングリコール」と訂正するものであるから、誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無について 訂正事項5に係る訂正は、本件特許に係る外国語特許出願(PCT/IB2018/058809)の国際出願日における国際出願の特許請求の範囲の請求項10の「glikolem etylenowy」(甲第14号証の請求項10)との記載に基づくものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について 上記アのとおり、訂正事項5に係る訂正は、誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (6)独立特許要件について 本件においては、本件訂正前の請求項1~19について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~4に係る訂正後の請求項1~19に係る発明については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (7)一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~19は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~19は一群の請求項である。 そして、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 4 明細書又は図面の訂正と関係する請求項について 訂正事項5に係る訂正は、本件特許の明細書を訂正するものであるが、段落【0019】、【0029】及び【0033】に記載される、「空気」、「蒸留水」及び「エチレングリコール」は、いずれも不融性ソノトロードの冷却媒体であるから、訂正事項5は、一群の請求項である本件訂正前の請求項10に関係する訂正である。 そして、本件訂正請求は、当該明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われているから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合するものである。 5 まとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の請求項1~19に係る発明は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~19に記載された、次のとおりのものである(以下、請求項1~19に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明19」といい、総称して「本件発明」ともいう。)。 【請求項1】 入力材料を溶融する溶融システム(3、4)および前記入力材料を溶融先端(1)に送達する入力材料送達システム(6)と、処理チャンバ(12)と、高電圧発生器(11)により発生した電圧を振動に変換する圧電変換器(10)と、100W/mK超過の熱伝導率と100HV5超の硬度とを有する材料で作られ溶融先端(1)を有する冷却された不融性ソノトロード(2)と、を備え、 前記ソノトロードが前記溶融先端(1)のためのラジエータとしても作用し、 前記溶融先端はAISI 308鋼から作成されており固体状態の前記溶融先端と液体入力材料による濡れ性を確保する、 超音波噴霧方法によって球状金属粉末を製造するデバイス。 【請求項2】 前記ソノトロードが、CuCrZrもしくはCuBe銅合金、または焼結タングステン合金で作られる、請求項1に記載のデバイス。 【請求項3】 前記入力材料送達システム(6)が、ワイヤ(5)の形態の材料を供給する、請求項1または2に記載のデバイス。 【請求項4】 前記入力材料送達システム(6)が前記処理チャンバ(12)の外部に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。 【請求項5】 前記溶融先端(1)および前記ソノトロード(2)が拡散接合される、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイスの製造方法。 【請求項6】 前記溶融先端(1)が、前記ソノトロード(2)にねじ込まれるねじ付きロッドの形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。 【請求項7】 前記溶融先端(1)が少なくとも2つの異なる材料で作られる、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。 【請求項8】 前記ソノトロード(2)が、前記ソノトロード(2)材料の縦波長の半分の長さを有する、請求項1から4又は7のいずれか一項に記載のデバイス。 【請求項9】 前記ソノトロード(2)による前記溶融先端(1)の初期共振周波数が、作業周波数よりも100~3000Hz高い、請求項1から4及び7から8のいずれか一項に記載のデバイス。 【請求項10】 前記ソノトロードが、誘電性液体である、蒸留水を使用した冷却に適合される、請求項1から4及び7から9のいずれか一項に記載のデバイス。 【請求項11】 前記デバイスが、少なくとも2つの異なる材料が前記溶融先端(1)に送達されるように適合される、請求項1から4及び7から10のいずれか一項に記載のデバイス。 【請求項12】 サイクロン(13)と、粉末ドロップ・バー(14)と、機械的フィルタ(15)と、循環ポンプ(16)とを備え、0.003m3~0.140m3の範囲の前記処理チャンバ(12)容積で100mbar~900mbarの範囲の吸引圧力で、0.075m3/s~0.1138m3/sの範囲の効率を有する、請求項1から4及び7から11のいずれか一項に記載のデバイス。 【請求項13】 前記処理チャンバ(12)容積と前記循環ポンプ(16)の効率との比が、0.2~4 1/sであり、前記処理チャンバが直径300mm以下の円筒形状を有する、請求項12に記載のデバイス。 【請求項14】 前記デバイスが、液体洗浄媒体源と、液体洗浄媒体計量弁と、洗浄媒体放出部とを備える、請求項1から4及び7から13のいずれか一項に記載のデバイス。 【請求項15】 前記デバイスが、前記液体洗浄媒体を給送するポンプと粒子フィルタとを備える、請求項14に記載のデバイス。 【請求項16】 前記デバイスが、前記処理チャンバに接続された真空ポンプを備える、請求項14または15に記載のデバイス。 【請求項17】 入力材料溶融プロセスが停止された後、ソノトロードが媒体で完全に覆われるまで処理チャンバを満たすために、洗浄媒体が計量弁を通して送達され、続いて超音波発生器を始動させ、30秒以上プロセスを継続し、続いて前記洗浄媒体を粉末粒子とともに洗浄媒体放出部を通して除去する、請求項14から16のいずれか一項に記載のデバイスの洗浄方法。 【請求項18】 前記洗浄媒体が粒子フィルタを通して給送される、請求項17に記載の方法。 【請求項19】 前記洗浄媒体放出部を通して前記洗浄媒体を除去した後、前記処理チャンバ(12)に真空給送を行って前記洗浄媒体の蒸気を除去する、請求項17または18に記載の方法。 第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要 1 特許異議の申立ての理由の概要 申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第14号証を提出し、以下の申立理由1~4により、本件訂正前の請求項1~19に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。 (1)申立理由1(新規性)(取消理由として不採用) 本件訂正前の請求項1は、「前記入力材料を溶融先端(1)に送達する」ことを規定しているが、この技術的事項は、パリ条約による優先権の主張の基礎となる出願の出願書類(甲第8~10号証)に記載されておらず、パリ条約による優先権の主張の効果が認められない。 したがって、本件訂正前の請求項1~19に係る発明は、本件特許に係る出願の国際出願日前に開催された展示会の発表及びその予告(甲第5~7、11号証)により公知となった発明であり、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(進歩性)(取消理由として不採用) 本件訂正前の請求項1~19に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項(周知技術)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(実施可能要件、サポート要件、明確性要件)(取消理由として一部採用) ア 申立理由3-1(実施可能要件、明確性要件) 本件訂正前の請求項1には、「高電圧発生器」という言葉が記載されているが、「高電圧」という言葉は相対的な表現であり、どの程度の電圧をもって「高電圧」というのかが不明である。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件訂正前の請求項1~19に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。また、本件訂正前の請求項1~19について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 イ 申立理由3-2(サポート要件) 本件明細書の段落【0029】には、ソノトロードの材料に関し、「ソノトロードの二重の役割(振動の伝達と熱の除去)により、熱伝導率が高く、即ち100W/mK超であり、100 HV5超の硬度を有する材料を使用する必要がある」ことが記載され、本件訂正前の請求項1には、不融性ソノトロードが、「100W/mK超過の熱伝導率を有する材料で作られ」ていることが規定されている。一方、本件訂正前の請求項1には、「100 HV5超の硬度を有する」ことについては規定されていない。 したがって、「100 HV5超の硬度を有する」ことについては規定されていない本件訂正前の請求項1について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 ウ 申立理由3-3(実施可能要件) ワルシャワ地方裁判所で公判中の事件(XXII GW 706/21)における口頭審理において、本件特許の特許権者の会社の従業員であるMarcin Bielecki氏の証言によると、本件明細書の段落【0037】及び【0038】に材料として記載されているAmpcoloy 940合金は、その機械的損失が大きいためソノトロードの製造には適しないため、本件訂正前の請求項1~19に係る発明は、本件明細書の記載に基づいて再現することが不可能である、とのことであった。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件訂正前の請求項1~19に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 エ 申立理由3-4(明確性要件) 本件訂正前の請求項5には、「請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイスの製造方法」との規定があるが、本件訂正前の請求項5が引用する「請求項1から4のいずれか」に係る発明は、「デバイス」に係る発明であるから、本件訂正前の請求項5に係る「デバイスの製造方法」が如何なる方法であるかが不明確である。 したがって、本件訂正前の請求項5について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 オ 申立理由3-5(明確性要件) 本件訂正前の請求項7~16に係る「デバイス」は、「デバイスの製造方法」に係る本件訂正前の請求項5の記載を直接又は間接的に引用するものであるが、本件訂正前の請求項7~16が本件訂正前の請求項5の記載を引用する場合に、その発明が如何なる発明であるかが不明確である。 したがって、本件訂正前の請求項7~16について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)申立理由4(原文新規事項)(取消理由として不採用) 本件訂正前の請求項1は、「前記入力材料を溶融先端(1)に送達する」ことを規定しているが、この技術的事項は、第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載されていない。 したがって、本件特許は、特許法第184条の4第1項の外国語特許出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(同第184条の6第2項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲又は図面とみなされる国際出願日における明細書の翻訳文、請求の範囲の翻訳文、図面(図面の中の説明を除く。)及び図面の中の説明の翻訳文)に記載した事項が第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから、特許法第184条の18の規定により読み替えて適用する同法第113条第5号に該当し、取り消されるべきものである。 (5)証拠方法 ア 申立人が提出した証拠方法 (ア)特許異議申立書に添付した証拠方法 ・甲第1号証:西独国特許出願公開第2656330号明細書、及びその抄訳 ・甲第2号証:米国特許第4402458号明細書、及びその抄訳 ・甲第3号証:S. Habib Alavi,外1名,”Ultrasonic Vibration-assisted Laser Atomization of Stainless Steel”,Powder Technology,2017年11月,第321巻,p.89~93の概要,<URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0032591017306502>,本文,p.1~19,<URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/am/pii/S0032591017306502>,Graphical abstract,<URL:https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S0032591017306502-fx1.jpg>,及びそれらの抄訳 ・甲第4号証:Balasubrahmanyam Avvaru,外3名,”Ultrasonic atomization: Effect of liquid phase properties”,Ultrasonics,2006年,第44巻,p.146~158,及びその抄訳 ・甲第5号証:PAUL SLUSARCZYK,”3D Lab presents the world’s first new generation atomizer for the production of metal powders!”,[online],2017年10月16日,[2023年 8月22日検索],インターネット,<URL:https://centrumdruku3d.pl/3d-lab-prezentuje-pierwszy-swiecie-atomizer-nowej-generacji-produkcji-proszkow-metali/>の英訳,及びその抄訳 ・甲第6号証:“Compact Metal Powders Atomizer by 3D Lab”,[online],[2023年 8月18日検索],インターネット,<URL:https://additivenews.com/compact-metal-powders-atomizer-3d-lab/>,及びその抄訳 ・甲第7号証:PAUL SLUSARCZYK,“Interview with 3D Lab, or how from a distributor of industrial 3D printers to become a manufacturer of a device that has a chance to revolutionize the 3D printing market in the world...”,[online],2017年10月16日,インターネット,<URL:https://centrumdruku3d.pl/3d-lab-prezentuje-pierwszy-swiecie-atomizer-nowej-generacji-produkcji-proszkow-metali/>の英訳,及びその抄訳 ・甲第8号証:本願の優先権主張の基礎となる出願1(P.423410、2017年11月 9日出願)の明細書、特許請求の範囲及び図面、それらの英訳、及びそれらの抄訳 ・甲第9号証:本願の優先権主張の基礎となる出願2(P.424869、2018年 3月13日出願)の明細書及び特許請求の範囲、及びそれらの英訳 ・甲第10号証:本願の優先権主張の基礎となる出願3(P.425803、2018年 6月 3日出願)の明細書、特許請求の範囲及び図面、明細書の英訳、甲第9号証の特許請求の範囲の英訳 ・甲第11号証:Formnext 2017での開示に関する宣言、及びその抄訳 ・甲第12号証:国際調査機関の見解書に対する意見書、及びその抄訳 ・甲第13号証:欧州特許庁発行の拒絶理由通知、2020年 8月 4日、及びその抄訳 ・甲第14号証:本件特許の国際出願時の明細書、及びその抄訳 (イ)令和 6年 5月 9日提出の意見書に添付した証拠方法 ・甲第15号証:MICHAEL PETCH,“HOEGANAES ACQUIRES GROUNDBREAKING METAL POWDER PRODUCTION TECHNOLOGY FROM METASPHERE”(当審注:下線を付したOEはOウムラウト、AEはAウムラウト),[online],2017年12月 8日,インターネット,<URL:https://3dprintingindustry.com/news/hoganas-acquires-groundbreaking-metal-powder-production-technology-metasphere-125853/> (ウ)令和 6年12月19日提出の意見書に添付した証拠方法 ・甲第16号証:本願の優先権主張の基礎となる出願1(P.423410、2017年11月 9日出願)の特許請求の範囲(甲第8号証の特許請求の範囲) ・甲第17号証:欧州特許庁発行の拒絶理由通知、2020年 8月 4日、及びその抄訳(甲第13号証) ・甲第18号証:特許権者が欧州特許庁に提出した意見書、2020年12月 1日、及びその抄訳 イ 特許権者が提出した証拠方法 (ア)令和 6年10月 1日提出の意見書に添付した証拠方法 ・乙第1号証:機械工学事典「溶融池」、[online]、2017年 7月19日(最終更新)、一般社団法人日本機械学会、インターネット,<URL:https://www.jsme.or.jp/jsme-medwiki/doku.php?id=08:1013089> ・乙第2号証:溶接用語「溶融池」、[online]、[令和 6年 9月30日検索]、インターネット,<URL:http://w.jisw.com/01260/post_190.html> 2 取消理由の概要 (1)令和 5年12月 8日付けで通知した取消理由の概要 ア 取消理由1(サポート要件) 上記1(3)の申立理由3のイ(サポート要件)と同旨 イ 取消理由2(明確性要件) 上記1(3)の申立理由3のオ(明確性要件)と同旨 ウ 取消理由3(原文新規事項) 本件訂正前の請求項10は、「ジエチレングリコール」を特定事項としているが、第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面には、「エチレングリコール」は記載されているものの(甲第14号証の請求項10等参照。)、「ジエチレングリコール」は記載されていない。また、本件明細書の段落【0019】、【0029】及び【0033】に記載されている「ジエチレングリコール」についても同様である。 したがって、本件訂正前の請求項1~19に係る特許について、特許法第184条の4第1項の外国語特許出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(同第184条の6第2項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲又は図面とみなされる国際出願日における明細書の翻訳文、請求の範囲の翻訳文、図面(図面の中の説明を除く。)及び図面の中の説明の翻訳文)に記載した事項が第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから、特許法第184条の18の規定により読み替えて適用する同法第113条第5号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)令和 6年 7月 2日付けで通知した取消理由の概要 ア 取消理由4(明確性要件) 本件明細書の実施例1aについての記載を踏まえると、本件訂正前の請求項1における「濡れ性」は、粉末の製造時において溶融状態にある二者間の「濡れ性」を特定するものとも解されるが、「濡れ性」は、一般には、固体表面に対する液体の親和性を表すものであるから、結局、本件訂正前の請求項1における「濡れ性」がいずれを意味するのかが不明である。 したがって、本件訂正前の請求項1~19について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 以下に述べるように、特許異議申立書に記載した申立理由及び当審において通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。 1 申立理由4(原文新規事項) (以下、ポーランド語アルファベットの補助記号は省略する。) (1)ア 本件特許の国際出願時のポーランド語の明細書(甲第14号証)には、「topliwa koncowka」(英訳:fusible tip、和訳:可融性先端)との記載がある(請求項1等)。 イ 一方、本件明細書には、「可融性先端」との用語が明記されていない。 しかしながら、本件明細書の段落【0031】には、「低硬度または脆弱な材料を噴霧する場合、先端を溶融させ、圧電変換器を使用することなく入力材料を追加することによって、遷移層がパッド溶接される。」との記載がある。そして、本件明細書の他の記載からみて、上記「先端」が「溶融先端」であることは明らかである。 そうすると、本件明細書には、「溶融先端」が溶融すること、すなわち、「溶融先端」が「可融性」を備えることが記載されていると認められる。 ここで、「溶融先端」が、必然的に「不融性」を備えることを示す証拠や技術常識は見当たらないから、「溶融先端」が「可融性」を備えることに矛盾はない。 以上によれば、本件明細書に「可融性先端」との用語が明記されていないとしても、「可融性」を備える「溶融先端」が記載されている以上、本件明細書には、実質的に「可融性先端」が記載されているものと認められる。 ウ したがって、本件発明1~19について、特許法第184条の4第1項の外国語特許出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(同第184条の6第2項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲又は図面とみなされる国際出願日における明細書の翻訳文、請求の範囲の翻訳文、図面(図面の中の説明を除く。)及び図面の中の説明の翻訳文)に記載した事項が第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にある。 (2)ア 申立人は、概略以下のように主張する。 優先権主張の基礎となる出願1~3(甲第8~10号証)には、「topliwa koncowka」(英訳:fusible tip、和訳:可融性先端)についてのみ開示されており、「topiaca sie koncowka」(英訳:melting tip、和訳:溶融先端)は開示されていない。 ポーランド語の「topliwa koncowka」は、先端自体が可溶であることを意味するものである。一方、国際公開公報の発行にあたり国際出願時の明細書を英訳する際に訳出された「melting tip」は、材料を溶融するためのアダプタという意味になる。 しかしながら、このような「溶融先端」(英語で「melting tip」)に相当するポーランド語の用語「topiaca sie koncowka」は、本件特許の国際出願時のポーランド語の明細書には記載されておらず、国際出願時のポーランド語の明細書には「topliwa koncowka」と記載されている。 イ 以下、検討すると、上記(1)で述べたとおり、本件明細書に「可融性先端」との用語が明記されていないとしても、「可融性」を備える「溶融先端」が記載されている以上、本件明細書には、実質的に「可融性先端」が記載されているものと認められる。 ウ 以上のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。 (3)したがって、申立理由4(原文新規事項)によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由1(新規性) 申立人が、特許異議申立書の4(4)ウ(1)(1-2)~(1-3)(第19~21ページ)で述べるとおり、本件発明2~19は、必ずしも、本願の優先権主張の基礎となる出願1(甲第8号証)に開示されるわけではないから、ここでは、新規性の判断の基準日を国際出願日として検討する。 (1)甲第5~7、15号証の記載事項、参考資料の記載事項(なお、以下の記載事項は当合議体による仮訳である。) なお、甲第11号証は、「国際見本市formnext2017に参加した、本件特許権者の従業員による開示内容の証言」とのことであるが、署名がなく、文書の真正性が不明であるから採用しない。 ア 甲第5号証の記載事項 (ア)「3D LabのATO Oneという名称のアトマイザーは、オフィス環境での使用を目的とした世界初の機械です。この装置は、積層造形技術、熱間等方圧成形、そして従来の粉末冶金のニーズに特化しています。製造者の代表者によれば、ATO Oneは新しい材料に関する研究を最大で4倍速く進めることができるとのことです。」(第1ページ下から第4行~最下行) (イ)「新しい3D Labの機械は、2017年11月14日から17日までフランクフルト・アム・マインで開催されるFormnext展示会で見ることができます。最初の装置の出荷は、2018年の第3四半期と第4四半期に予定されています。」(第4ページ第5~6行) イ 甲第6号証の記載事項 (ア)「ATO Oneは、積層造形業界向けの世界初の次世代アトマイザーです。このアトマイザーは、成長を続けるAM分野に関連する中小企業、粉末生産者、科学機関の需要の高まりに応えて開発されました。AMアトマイザーは、チタン、マグネシウム、アルミニウム合金などの反応性金属と非反応性金属の両方を処理できます。20~100μmの範囲の中粒径で粒度分布の狭い粉末を製造することができます。1回の製造プロセスで最大数百グラムの材料を生産できます。完全なATO Oneシステムには、噴霧デバイスと製造プロセスをサポートするソフトウェアが含まれています。」(第1ページ右下欄) (イ)「新しいAM金属粉末アトマイザーは、Formnext展示会(最大規模の積層造形見本市の1つ-ドイツのフランクフルトで2017年11月14日から17日まで開催)で展示されます。」(第2ページ第1~3行) ウ 甲第7号証の記載事項 (ア)「 [図:0001424546000001.jpg] (当審注:以下「写真7-1」という。) PS:では、最も重要な話題に移りましょう… ATO Oneとは何ですか?その製造に取り組むアイデアはどこから来たのですか?そして、製造会社ではなくディストリビューターとしてどのように関わっていますか? ロバート・ラウォヴィチ:簡単に言うと、ATO Oneは世界初のコンパクトな金属粉末製造用アトマイザーです。ATOは、積層造形技術市場向けの新しい材料の導入を加速させるでしょうが、私たちの技術は他の業界でも大きな応用が期待されています。このアイデアは、いつも通り一日で生まれたわけではありません。 2年以上前、私たちのエンジニアであるウカシュ・ズロドフスキのインスピレーションを受けて、ポーランドで世界初のラボを立ち上げる可能性を探し始めました。ここでは、新しい材料の研究と3D印刷プロセスの最適化を一つの場所で行うことができるのです。全体のラインの主要な要素の一つとして、ラボ内で粉末を製造するためのアトマイザーが必要でした。市場で最も安価なこの種の装置は、反応性金属合金もアトマイズできるもので、単体で120万ユーロの価格がついています。これに加えて、大規模なホールの建設を含む全てのインフラコストも考慮しなければなりません。」(第11ページ) 「(略) [図:0001424546000002.jpg] (当審注:以下「写真7-2」という。) (略)」(第12ページ) (イ)「(略) 私たちにとって最も重要だったのは、最初の実験が成功し、電子顕微鏡の画像で完璧に球形の粉末が確認できた瞬間でした。これにより、私たちの粉末の品質が従来のアトマイザーよりも優れていることが証明されました。このプロジェクトにとって画期的な瞬間であり、本格的に投資を進めることができるようになりました。特許出願を行い、間もなくATOが誕生しました。これまでのディストリビューターとしての立場から製造者の役割に移行することについては、R&Dから最終製品の販売までの全サイクルを管理できることは非常に満足のいくことです。ここではすべてが私たち次第であり、完全にコントロールしています。 PS:ATO OneをFormnextで展示する価値はありましたか? RR:はい、特に、これは私たちの会社の歴史の中で最も良い展示会だったからです。今年のFormnextは2016年の2倍の規模でした。来年はさらに多くの企業が参加すると思いますので、私たちも今回は中心部に大きなブースを出展したいと考えています。 Formnextは、私たちの業界におけるヨーロッパで最も重要な展示会です。ATOの初公開に最適な場所でした。出展して良かったです。私たちはAM市場がこのような製品を必要としていると予想していましたが、関心の規模や将来のパートナーやユーザーとの会話の範囲と重要性は、私たちの最も大胆な期待を超えるものでした。 [図:0001424546000003.jpg] (当審注:以下「写真7-3」という。)」(第13ページ) (ウ)「今日、私たちは34件のプレオーダーを受けており、さらに多くの注文が今後見込まれています。プレオーダー契約に関しては、顧客が展示会での購入の意向を示す形での注文を提案しました。契約を締結し、割引価格を保証します。これは双方にとって利益があり、私たちは生産能力を把握することができます。 (略)」(第14ページ) エ 甲第15号証の記載事項 (ア)「新たに金属粉末を製造している企業の一つが、ポーランドの3D Labです。彼らのATO One機械は、金属粉末材料の小規模なバッチを必要とするユーザー、例えば研究所向けに設計されており、「オフィスに優しい」とされています。」(第3ページ) 「 [図:0001424546000004.jpg] (当審注:以下「写真15-1」という。)」(第4ページ) オ 当合議体が職権により発見した電子的技術情報(以下「参考資料」という。) Kerry Stevenson, “Need Unusual Powder for 3D Metal Printing? Make it On Your Desktop!”,[online], 2017年12月5日,[令和7年2月4日検索],インターネット<URL:https://www.fabbaloo.com/2017/12/need-unusual-powder-for-3d-metal-printing-make-it-on-your-desktop> 「 [図:0001424546000005.jpg] ATO One「デスクトップ」アトマイザー(当審注:以下「参考写真1」という。) 私たちはFormNextで全く予想外のものに出くわしました。それは、デスクトップで3D金属印刷用の粉末を生産する機械です。 まあ、ほぼデスクトップマシンではありますが、実際にはデスクよりも小さいです。ワルシャワに拠点を置く3D LabsのATO One装置は、冷蔵庫サイズで、現代の粉末床溶融方式の3D金属プリンターで使用するのに完全に適した精密金属粉末を生産することができます。 通常、特化した粉末は工業用工場で開発されることが期待されますが、ATO Oneは実際にはオフィスに適しています。実際、私たちはFormNextでこの機械が稼働しているのを観察しましたが、通常の電源に接続されているだけでした。 [図:0001424546000006.jpg] ATO Oneデスクトップアトマイザーが微細金属粉末を生成するために使用するプロセス(当審注:以下「参考写真2」という。) これはどのように機能するのでしょうか?このアトマイザーは、電気アークと精密振動システムを使用しています。入力材料である標準的な工業用ワイヤがアークに供給され、そこで激しく振動させられます。微調整された振動によって、材料の細かい粒子が振り落とされ、瞬時に完璧に丸い金属粒子に固まります。 振動を調整することで、3D Labsは生成される粒子のサイズを0.02mmから0.1mmの範囲で制御することができます。 [図:0001424546000007.jpg] ATO Oneデスクトップアトマイザーの稼働中の様子(当審注:以下「参考写真3」という。) なぜ、粉末を製造する機械を購入したいのか、3D金属印刷用の供給業者から既製品を購入するのではなく、疑問に思うかもしれません。その答えは、材料の種類と量をコントロールできるからです。供給業者は固定された製品リストと最小注文数量を持っていますが、ATO Oneを使えばそれを自由に調整できます。 実際、ほぼすべての考えられる材料の金属ワイヤのスプールを注文することができ、これは標準的な工業製品です。そして、それを使って特化した3D金属印刷用の粉末を作ることができます。また、必要な分だけを作成し、ワイヤースプールは必要なときだけ使用することができます。 この機械は安価ではなく、価格は99,000ユーロ(117,000米ドル)ですが、年末までの割引価格は79,000ユーロ(94,000米ドル)です。このコンセプトは人気があるようで、会社はFormNextで少なくとも30台のシステムを販売したと主張しています。」 (2)formnext展示会において公然知られた発明 ア 上記(1)ア、イの記載事項によれば、「ATO one」という名称の積層造形用金属粉末アトマイザーが、formnext展示会で展示予定であることが認められる。 イ 上記(1)オの参考資料によれば、formnext展示会で、「ATO one」が実際に展示されたことが認められる。 ウ 上記(1)ウの写真7-1、写真7-3及び(1)エの写真15-1と、(1)オの参考写真1の背景及び「ATO one」の配置との対比から、写真7-1、写真7-3及び写真15-1も、formnext展示会の写真であると推認できる。 エ 上記(1)オの参考写真2は、注釈に「ATO Oneデスクトップアトマイザーが微細金属粉末を生成するために使用するプロセス」と記載されていることから、「ATO one」の説明資料と認められる。 オ 上記(1)エの写真15-1に写る説明資料と(1)オの参考写真2の説明資料とが同一の内容を示すものであるから、formnext展示会において、写真15-1に写る説明資料によって、「ATO one」の説明がなされたものと認められる。 カ そして、写真15-1に写る説明資料から、「ATO one」について、以下の事項が看取できる。 (ア)プラズマアークが放出されるタングステン電極を備える。 (イ)ワイヤが溶融池に送り込まれる。 (ウ)溶融池から粉末粒子が放出される。 (エ)ソノトロードを備える。 (オ)ソノトソードの上に溶融先端を備える。 キ 上記カ(イ)のとおり、説明資料から、ワイヤが溶融池に送り込まれることが看取できるから、「ATO one」が、ワイヤを送達するシステムを備えることは自明である。 ク 上記(1)ウ(イ)の記載事項から、「ATO one」により得られる金属粉末は、球状であると推認できる。 ケ そうすると、甲第5~7、15号証の記載事項から、formnext展示会において、以下の発明が公然知られたと認められる(以下「公知発明」という。)。 <公知発明> プラズマアークが放出されるタングステン電極と、ワイヤを送達するシステムと、ソノトロードと、前記ソノトロードの上に備えられた溶融先端とを有する、積層造形用球状金属粉末アトマイザー。 (3)本件発明1について ア 対比・判断 (ア)本件発明1と公知発明とを対比すると、ソノトロードについて、本件発明1は、「100W/mK超過の熱伝導率と100HV5超の硬度とを有する材料で作られ」ているのに対し、公知発明は、ソノトロードの材料が不明であり、「100W/mK超過の熱伝導率と100HV5超の硬度とを有する」のか不明である点で少なくとも相違する。 (イ)上記相違点について検討すると、甲第5~7、15号証には、公知発明のソノトロードにどのような材料が使われているかについて何ら記載されていないから、公知発明のソノトロードにおける、熱伝導率と硬度の値は不明である。また、技術常識を考慮しても、公知発明のソノトロードにおける、熱伝導率が100W/mK超過、硬度100HV5超であるかは不明である。 よって、上記相違点は、実質的な相違点である。 (ウ)したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、公知発明であるとはいえない。 イ 申立人は、特許異議申立書第7ページ(3)において、申立ての根拠を「特許法第29条第1項」とし、同第23ページ第4~5行で、「展示会における開示に基づき、新規性に欠ける」と述べているので、「特許法第29条第1項第1号」を申立ての根拠としていると解されるが、念のため、特許法第29条第1項第2号及び第3号に該当するかについても検討する。 (ア)特許法第29条第1項第2号について a 上記(1)オの参考写真3によれば、formnext展示会で、「ATO one」が稼働したことが認められる。 b 上記(1)ウの写真7-2と(1)オの参考写真3とが類似した写真であることから、写真7-2も、「ATO one」が稼働したことを示す写真であると推認できる。 c 一方、甲第7、15号証の記載をみても、「ATO one」がどのような構成要素を有するのかは不明である。 d しかし、上記(2)で述べた「公知発明」と同様の発明が実施されたと仮定すると、甲第5~7、15号証の記載事項から、formnext展示会において、以下の発明が公然実施されたと認められる(以下「公用発明」という。)。 <公用発明> プラズマアークが放出されるタングステン電極と、ワイヤを送達するシステムと、ソノトロードと、前記ソノトロードの上に備えられた溶融先端とを有する、積層造形用球状金属粉末アトマイザー。 e 対比・判断 本件発明1と公用発明とを対比すると、上記アで検討したのと同様の相違点を有するから、同様の理由により、本件発明1は、公用発明であるとはいえない。 (イ)特許法第29条第1項第3号について a 上記(1)エの写真15-1に写る説明資料とオの参考写真2の説明資料とが、formnext展示会において頒布された刊行物であると仮定すると、甲第5、6号証の記載事項によれば、「ATO one」が積層造形用金属粉末アトマイザーであるから、当該説明資料には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物発明」という。)。 <刊行物発明> プラズマアークが放出されるタングステン電極と、ワイヤを送達するシステムと、ソノトロードと、前記ソノトロードの上に備えられた溶融先端とを有する、積層造形用金属粉末アトマイザー。 b 対比・判断 本件発明1と刊行物発明とを対比すると、上記アで検討したのと同様の相違点を有するから、同様の理由により、本件発明1は、刊行物発明であるとはいえない。 ウ 小括 以上によれば、本件発明1は、特許法第29条第1項各号に該当するとはいえない。また、上記2の冒頭で述べたとおり、新規性の判断の基準日を国際出願日として検討しても、本件発明1が、特許法第29条第1項各号に該当するとはいえない以上、優先権の主張を認めたとしても、本件発明1は、特許法第29条第1項各号に該当するとはいえない。 (4)本件発明2~19について 本件発明2~19は、本件特許の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(3)ウで述べたとおり、本件発明1が、特許法第29条第1項各号に該当するとはいえない以上、本件発明2~19についても同様に、特許法第29条第1項各号に該当するとはいえない。 (5)まとめ したがって、申立理由1(新規性)によっては、本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由2(進歩性) (1)甲第1~4号証の記載事項(なお、以下の記載事項は当合議体による仮訳である。) ア 甲第1号証の記載事項 本願の優先日前に公知となった甲第1号証には、「金属や合金から粉末または顆粒を製造するための方法と装置」(発明の名称)に関し、以下の事項が記載されている。 (ア)「特許請求の範囲 1.金属および合金の粉末または顆粒を溶融およびその後の霧化により製造するためのプロセスであって、溶融材料が超音波発信器または超音波反射器に接触することなく、定常超音波場中で霧化されることを特徴とするプロセス。 2.金属または合金が(るつぼ内で)溶融され、次いで定常超音波場の領域に搬送されることを特徴とする請求項1に記載の方法。 3.金属または合金が、ワイヤまたは箔の形態で連続的に定常超音波場の領域に導かれ、そこで誘導的に、電子ビームまたはレーザービームによって溶融されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 4.ワイヤ状の金属または合金が、連続的に定常超音波場の領域に導かれ、そこで電気アーク中で溶融され、溶融ワイヤが電気アークの陰極および/または陽極を構成することを特徴とする、請求項1に記載の方法。 5.溶融および霧化工程が、不活性または還元性雰囲気のチャンバ内で実施されることを特徴とする、請求項1から4の1つに記載のプロセス。 6.自己消費電極(6)を電気アーク(8)の領域に搬送するための搬送装置(7)を有し、発信器(1)と反射器(4)が電極軸に垂直にまたは後者と同じ軸に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の方法を実施するための装置。 7.送信器/反射器の距離および電気アークの電極間の距離を調整するための調整要素(11、12)が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の装置。 8.発信器(1)が電気アークの陰極として形成され、反射器(4)が中心に穴のあいた円板で、その中に自己消費電極(6)が連続的に通されていることを特徴とする請求項6及び7に記載の装置。 9.発信器(1)が、音放出面の中心にタングステンピン(13)を有することを特徴とする請求項8に記載の装置。」 (イ)「本発明の好ましい実施形態によれば、ワイヤ状の金属または合金は、連続的に定常超音波場の領域に導かれ、そこで電気アークで溶融され、溶融ワイヤは電気アークの陰極および/または陽極を構成する。」(第8ページ第9~15行) (ウ)「電気アークの対向電極は、好ましくは銅製であり、水で冷却されるが、超音波発信器を電気アークの水冷対向電極として設計することもできる。」(第9ページ第18~21行) (エ)「溶融プロセスは、好ましくは、ガス圧を最適に調整できる不活性または還元雰囲気のチャンバ内で行われる。」(第10ページ第13~15行) (オ)「図3に概略的に示す本発明による装置の別の実施形態によれば、定常超音波5は、電気アーク8と同じ軸に配置される。この場合、発信器1はアークの水冷電極として設計されている。反射板4は、中心に穴のあいた円板であり、この円板を通して、溶融される金属ワイヤ6が、コンベアローラ7によって駆動されながら連続的に押し出される。アーク8のセンタリングを改善するために、発信器1の中心にタングステンピン13をはんだ付けすることもできる。電気アーク8はまた、交流で、あるいはさらに有利には、電源10によって直流で作動する。送信機と反射器の距離は、要素11によって調整可能である。この配置は、溶融金属液滴が、重力とアーク力によって生じる軌道上で、常に定常超音波の軸線上にあり、したがって高速ノードの領域に到達しやすいという利点を有する。より大きな液滴がワイヤ端部から離脱する前に霧化が起こるため、ワイヤ端部の領域に速い節を配置することは特に有利である。」(第13ページ第13行~第14ページ第5行) (カ)「図3 [図:0001424546000008.jpg] 」 イ 甲第2号証の記載事項 本願の優先日前に公知となった甲第2号証には、「液体噴霧装置」(発明の名称)に関し、以下の事項が記載されている。 (ア)「霧化効果には、振動する固体表面に関する液体の周波数とさまざまなパラメータに依存する励起振幅と、液体の膜の適切な厚さが必要である。膜が薄すぎると、液滴を形成できず、膜が厚すぎると、減衰により液体中で効果的な毛細管波が刺激されなくなる。」(第1欄第20~27行) ウ 甲第3号証の記載事項 本願の優先日前に公知となった甲第3号証(当審注:本願の優先権主張の基礎となる出願1(甲第8号証)の開示文献)には、「ステンレス鋼の超音波振動支援レーザ霧化」(表題)に関し、以下の事項が記載されている。 (ア)「2.材料と方法 超音波振動支援レーザ霧化の概略は図1に示されている。このセットアップは、直径13mmのねじ付きTi合金プローブ(Sonics & Materials, Inc, Newtown, CT)を備えた超音波振動システムと、連続波CO2レーザ(Ferranti, Manchester, UK)で構成される。AISI 316ステンレス鋼の粉末を生成するために、3mm厚の鋼試料が超音波プローブに取り付けられる。」(第4ページ第3~8行) エ 甲第4号証の記載事項 本願の優先日前に公知となった甲第4号証には、「超音波霧化:液相特性の影響」(表題)に関し、以下の事項が記載されている。 (ア)「20kHz以上の周波数で振動する表面上に薄膜の形で液体を流すと、液体は微細な液滴に分裂する。」(第146ページ右欄第5~7行) (イ)「液体膜が超音波照射されると、振動する表面上の液体膜が一定の最小厚さを持っている場合、キャビテーション気泡が液体膜内に形成される。」(第147ページ左欄第2~5行) (2)甲第1号証に記載された発明 上記(1)アに摘記した記載、特に、特許請求の範囲の請求項1、4、6、8、9の記載に着目し、これらを本件発明1の記載に倣って整理すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 金属および合金の粉末または顆粒を溶融およびその後の霧化により製造するための装置であって、 ワイヤ状の金属または合金からなる自己消費電極(6)を電気アーク(8)の領域に搬送するための搬送装置(7)と電源(10)とを有し、超音波発信器(1)と超音波反射器(4)とが電極軸と同じ軸に配置され、 前記ワイヤ状の金属または合金からなる自己消費電極(6)が、連続的に定常超音波場の領域に導かれ、そこで電気アーク(8)中で溶融され、溶融ワイヤが電気アーク(8)の陽極を構成し、 前記超音波発信器(1)が電気アーク(8)の陰極として形成され、前記超音波反射器(4)が中心に穴のあいた円板で、その中に前記ワイヤ状の金属または合金からなる自己消費電極(6)が連続的に通されており、 前記超音波発信器(1)が、音波放出面の中心にタングステンピン(13)を有し、 溶融材料が超音波発信器または超音波反射器に接触することなく、定常超音波場中で霧化される装置。 (3)請求項1に係る発明について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)本件発明1の「入力材料」は、「金属粉末」の原料であり、甲1発明の「ワイヤ状の金属または合金」は、「金属および合金の粉末または顆粒」の原料であるから、甲1発明にける「ワイヤ状の金属または合金からなる自己消費電極(6)」は、本件発明1における「入力材料」に相当する。 (イ)本件発明1の「金属粉末を製造するデバイス」は、溶融した入力材料を「超音波噴霧方法によって」霧化するデバイスであるから、甲1発明における「金属および合金の粉末または顆粒を溶融およびその後の霧化により製造するための装置であって、」「定常超音波場中で霧化される装置」は、本件発明1における「超音波噴霧方法によって」「金属粉末を製造するデバイス」に相当する。 (ウ)甲1発明においては、「ワイヤ状の金属または合金からなる自己消費電極(6)が、連続的に定常超音波場の領域に導かれ、そこで電気アーク(8)中で溶融され、溶融ワイヤが電気アーク(8)の陽極を構成し、」「超音波発信器(1)が電気アーク(8)の陰極として形成され」ていることから、甲1発明が、電気アークによって、「ワイヤ状の金属または合金」を「溶融」するシステムを備えていることは明らかである。 そうすると、甲1発明は、本件発明1における「入力材料を溶融する溶融システム(3、4)」を備えるものである。 (エ)甲1発明の「ワイヤ状の金属または合金からなる自己消費電極(6)を電気アーク(8)の領域に搬送するための搬送装置(7)」と、本件発明1の「入力材料を溶融先端(1)に送達する入力材料送達システム(6)」とは、「入力材料を」「送達する入力材料送達システム(6)」である限りにおいて共通する。 (オ)甲1発明の「超音波発信器(1)」と、本件発明1の「ソノトロード(2)」とは、「超音波振動する部材」である限りにおいて共通する。 (カ)以上から、本件発明1と甲1発明とは、「入力材料を溶融する溶融システム(3、4)および前記入力材料を送達する入力材料送達システム(6)と、超音波振動する部材と、を備える、超音波噴霧方法によって金属粉末を製造するデバイス。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1は、「ソノトロード(2)」が、「溶融先端(1)を有」し、「前記溶融先端はAISI 308鋼から作成されており固体状態の前記溶融先端と液体入力材料による濡れ性を確保する」のに対し、甲1発明は、「超音波発信器(1)が、音波放出面の中心にタングステンピン(13)を有」する点。 <相違点2> 「入力材料を送達する入力材料送達システム(6)」について、本件発明1は、「入力材料を溶融先端(1)に送達する」のに対し、甲1発明は、「ワイヤ状の金属または合金からなる自己消費電極(6)を電気アーク(8)の領域に搬送する」点。 <相違点3> 本件発明1は、「処理チャンバ(12)と、高電圧発生器(11)により発生した電圧を振動に変換する圧電変換器(10)と、100W/mK超過の熱伝導率と100HV5超の硬度とを有する材料で作られ溶融先端(1)を有する冷却された不融性ソノトロード(2)と、を備え、前記ソノトロードが前記溶融先端(1)のためのラジエータとしても作用」するのに対し、甲1発明は、「処理チャンバ(12)と、高電圧発生器(11)により発生した電圧を振動に変換する圧電変換器(10)」を備えるのか不明であり、「超音波発信器(1)」が、「100W/mK超過の熱伝導率と100HV5超の硬度とを有する材料で作られ」「冷却された不融性」であるのか不明であり、「溶融先端(1)のためのラジエータとしても作用」するのか不明である点。 <相違点4> 本件発明1は、「球状金属粉末を製造するデバイス。」であるのに対し、甲1発明は、「金属および合金の粉末または顆粒を溶融およびその後の霧化により製造するための装置」ではあるものの、得られる金属粉末が球状であるのか不明である点。 イ 判断 (ア)相違点1、2をまとめて検討する。 a 甲1発明は、「溶融材料が超音波発信器または超音波反射器に接触することなく、定常超音波場中で霧化される装置。」に関するものである。 b 上記aの、溶融材料が超音波発信器または超音波反射器に接触することがないことについて、甲第1号証には、以下の記載がある。 (a)「金属や合金の粉末や顆粒は、冶金プロセスの添加剤として、また、圧縮、焼結、圧延、押出等による半製品や完成品の製造の出発原料として、幅広い用途がある。金属および合金の粉末または顆粒は、その溶融物をノズルまたは回転霧化装置、例えば中空円筒、スプレーノズルを備えた回転サイフォンによって霧化することによって製造できることが知られている。ノズル霧化の特別な実施形態は、スロットから吹き出される空気流による薄い液膜の破裂に基づいている。また、融液で薄くコーティングされ、超音波周波数で振動する固体界面からの不安定な毛管波によって、液体や融液を霧化できることも知られている。 しかし、これらの方法には、噴霧装置との壁面接触がないと機能しないという欠点がある。この欠点は、通常、融点の低い金属、例えば鉛、または霧化装置の材料に対する攪拌性の低い金属、例えば銅または鉄の場合である。この欠点は、融点が低い金属、例えば鉛、または霧化装置の材料に対する攻撃性が低い金属、例えば銅または鉄の場合には、通常重大ではない。しかしながら、多くの金属や合金は、高温とその溶融物の攻撃性によって通常のノズル材料が破壊され、それによって溶融物自体が汚染されるため、非常に困難であるか、あるいは全く噴霧することができない。したがって、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、またはタングステンなどに基づき粉末や顆粒を製造するためには、溶融物が霧化装置と接触しないようにする方法が必要である。」(第4ページ下から第5行~第6ページ第2行) (b)「本発明は、公知のプロセスの欠点を克服し、霧化装置との壁面接触を回避できるプロセスを開発するという課題に基づいている。」(第7ページ第13~16行) c 上記bに摘記したとおり、甲第1号証の技術思想は、溶融物と霧化装置とが壁面接触することによる溶融物自体の汚染を抑制しようとするものである。 d そうすると、甲1発明において、「ワイヤ状の金属または合金からなる自己消費電極(6)」を甲1発明の霧化装置の構成要素まで送達したり、当該構成要素の上で溶融させたりすることは、溶融物と霧化装置とを壁面接触により、溶融物自体を汚染するおそれがあるから、このようにすることは、甲第1号証の技術思想に反するものである。 e したがって、甲1発明において、上記相違点1、2に係る発明特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。また、このことは、甲第2~4号証に、上記(1)イ~エに摘記した事項が記載されていたとしても変わるものではない。 f 以上のとおり、相違点3、4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明2~19について 本件発明2~19は、本件特許の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるから、上記(3)ウで述べたとおり、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、他の周知技術を考慮しても、本件発明2~19についても同様に、甲第1号証に記載された発明、甲第2~4号証に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)まとめ したがって、取消理由2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由3(実施可能要件、サポート要件、明確性要件)、取消理由1(サポート要件)、取消理由2(明確性要件) (1)申立理由3-1(実施可能要件、明確性要件) ア 申立人は、概略以下のように主張する。 本件訂正前の請求項1には、「高電圧発生器」という言葉が記載されているが、「高電圧」という言葉は相対的な表現であり、どの程度の電圧をもって「高電圧」というのかが不明である。 イ 以下、検討すると、どの程度の電圧をもって「高電圧」というかは、技術分野によって異なると認められるところ、当該超音波噴霧法によって金属粉末を製造するデバイスの分野の当業者であれば、技術常識に基づきどの程度の電圧が「高電圧」であるかを理解できる。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~19の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。また、本件発明1~19について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。 (2)申立理由3-2(サポート要件)、取消理由1(サポート要件) ア 取消理由通知において、概略以下のとおり指摘した。 本件訂正前の請求項1~19に係る発明が解決しようとする課題の一つは、「加熱中、剛性が失われることにより、ソノトロード」が、「振動を伝達する能力を実質的に失うか、または降伏強さが低下することによって修復できないほど損傷する」との「制約を有さないデバイスを提供すること」であると認められる(段落【0008】、【0009】)。 上記課題に関し、段落【0029】には、ソノトロードが振動の伝達と熱の除去という二重の役割を備えるには、「熱伝導率が高く、即ち100W/mK超であり、100 HV5超の硬度を有する材料を使用する必要がある」旨が記載されている。 一方、本件訂正前の請求項1には、不融性ソノトロードが、「100W/mK超過の熱伝導率を有する材料で作られ」ていることが特定されているものの、機械的強度に類する特性である、「100 HV5超の硬度を有する」ことについては特定されていない。 そうすると、所定の硬度(強度)を有しない本件訂正前の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。また、本件訂正前の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件訂正前の請求項2~19も同様である。 したがって、本件訂正前の請求項1~19に係る発明について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 イ 以下、検討すると、上記第2の2(1)で述べたとおり、訂正事項1に係る訂正により、本件発明1は、「100 HV5超の硬度を有する」との事項で特定された。 そうすると、本件発明1~19は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、当該本件発明1~19について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである。 ウ 以上のとおりであるから、上記の点に関するサポート要件の取消理由は解消した。 (3)申立理由3-3(実施可能要件) ア 申立人は、申立人は、概略以下のように主張する。 ワルシャワ地方裁判所で公判中の事件(XXII GW 706/21)における口頭審理において、本件特許の特許権者の会社の従業員であるMarcin Bielecki氏の証言によると、本件明細書の段落【0037】及び【0038】に材料として記載されているAmpcoloy 940合金は、その機械的損失が大きいためソノトロードの製造には適しないため、本件訂正前の請求項1~19に係る発明は、本件明細書の記載に基づいて再現することが不可能である。 イ 以下、検討すると、本件明細書の段落【0030】には、「好ましくは、ソノトロードは、CuCrZrもしくはCuBe銅合金、または焼結タングステン合金で作られる。かかる合金は、システムを熱安定化するのに十分な高い熱伝導率を確保するとともに、十分に高い硬度を特徴とする。」と記載されており、当該記載を踏まえると、ソノトロードの材料として、所定の熱伝導率及び硬度を有する合金を用いれば、本件発明1~19を実施できることは明らかである。また、申立人は、上記アの主張に係る具体的証拠を何ら示していない。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~19の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 ウ 以上のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。 (4)申立理由3-4(明確性要件) ア 申立人は、概略以下のように主張する。 申立人は、本件訂正前の請求項5には、「請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイスの製造方法」との規定があるが、本件訂正前の請求項5が引用する「請求項1から4のいずれか」に係る発明は、「デバイス」に係る発明であるから、本件訂正前の請求項5に係る「デバイスの製造方法」が如何なる方法であるかが不明確である。 イ 以下、検討すると、特許権者が、令和 4年12月 1日提出の意見書で、「(1-7)請求項5について、「デバイスの製造方法」と補正しました。これは、いわゆるプロダクトバイプロセスクレームと指摘された請求項5について、デバイスの製造方法に係る発明に補正するものです(理由1.ヘに対応)。」と述べるとおり、本件訂正前の請求項5に係る「デバイスの製造方法」が、本件訂正前の「請求項1から4のいずれか」に係る「デバイス」の製造方法であることは明らかである。 そうすると、本件発明5について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。 ウ 以上のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。 (5)申立理由3-5(明確性要件)、取消理由2(明確性要件) ア 取消理由通知において、概略以下のとおり指摘した。 本件訂正前の請求項7~16に係る「デバイス」は、「デバイスの製造方法」に係る本件訂正前の請求項5の記載を直接又は間接的に引用するものであるが、本件訂正前の請求項7~16が本件訂正前の請求項5の記載を引用する場合に、その発明が如何なる発明であるのか不明確である。 したがって、本件訂正前の請求項7~16に係る発明ついて、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。 イ 以下、検討すると、上記第2の2(3)で述べたとおり、訂正事項3に係る訂正により、本件発明7~12及び14は、本件発明5の記載を引用しないものとなった。 そうすると、本件発明7~16について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。 ウ 以上のとおりであるから、上記の点に関する明確性要件の取消理由は解消した。 (6)まとめ したがって、申立理由3(実施可能要件、サポート要件、明確性要件)、取消理由1(サポート要件)、取消理由2(明確性要件)によっては、本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。 5 取消理由3(原文新規事項) (1)ア 取消理由通知において、概略以下のとおり指摘した。 本件訂正前の請求項10は、「ジエチレングリコール」を特定事項としているが、第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面には、「エチレングリコール」は記載されているものの(甲第14号証の請求項10等参照。)、「ジエチレングリコール」は記載されていない。また、本件明細書の段落【0019】、【0029】及び【0033】に記載されている「ジエチレングリコール」についても同様である。 イ 以下、検討すると、上記第2の2で述べたとおり、訂正事項4に係る訂正により、本件訂正前の請求項10に記載されていた「ジエチレングリコール」は削除され、また、訂正事項5に係る訂正により、本件訂正前の明細書の段落【0019】、【0029】及び【0033】に記載されていた「ジエチレングリコール」は、「エチレングリコール」に訂正された。 そうすると、本件発明1~19について、特許法第184条の4第1項の外国語特許出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(同第184条の6第2項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲又は図面とみなされる国際出願日における明細書の翻訳文、請求の範囲の翻訳文、図面(図面の中の説明を除く。)及び図面の中の説明の翻訳文)に記載した事項が第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にある。 ウ 以上のとおりであるから、上記の点に関する原文新規事項の取消理由は解消した。 (2)したがって、取消理由3(原文新規事項)によっては、本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。 6 取消理由4(明確性要件) (1)ア 取消理由通知において、概略以下のとおり指摘した。 本件明細書の実施例1aについての記載を踏まえると、本件訂正前の請求項1における「濡れ性」は、粉末の製造時において溶融状態にある二者間の「濡れ性」を特定するものとも解されるが、「濡れ性」は、一般には、固体表面に対する液体の親和性を表すものであるから、結局、本件訂正前の請求項1における「濡れ性」がいずれを意味するのかが不明である。 したがって、本件訂正前の請求項1~19に係る発明ついて、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。 イ 以下、検討すると、上記第2の2(2)で述べたとおり、訂正事項2に係る訂正により、本件発明1における「濡れ性」が、固体表面である「溶融先端」と、液体である「液体入力材料」との間の「濡れ性」であることを明確になった。 そうすると、本件発明1~19について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。 ウ 以上のとおりであるから、上記の点に関する明確性要件の取消理由は解消した。 (2)したがって、取消理由4(明確性要件)によっては、本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。 7 申立人の他の主張について (1)令和 6年 5月 9日提出の意見書における主張について 申立人は、令和 6年 5月 9日提出の意見書の第9~10ページにおいて、「請求項1の記載ではAISI 308鋼から作成された溶融先端(1)はいかなる形式でも取りつけられ得ると解されるところ、本件特許明細書には拡散接合とねじ締結具以外の取り付け形式については何ら開示もない。 よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明1及びこれを引用する特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないことから、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を満たしていない。また、出願時の技術常識に照らしても、本件訂正発明1及びこれを引用する本件訂正発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張一般化できるとは認められないので、本件訂正発明1及びこれを引用する本件訂正発明は、発明の詳細な説明に実質的に記載したものとはいえない。」と主張する。 しかしながら、溶融先端の取り付け形式に係る訂正は行われておらず、上記主張は、訂正の請求の内容に付随して生じた理由に対するものとはいえないから、新たな申立理由を主張するものであり採用しない。 (2)令和 6年12月19日提出の意見書における主張について ア 申立人の「4-2.意見(1)」の主張は、概略、本件明細書に溶融先端が溶融することが記載されているから、本件発明1が不明確となるというものである。 イ 一方、上記1で検討したとおり、「溶融先端」は、「可融性」を備えるものであるから、本件明細書に溶融先端が溶融することが記載されていても不合理ではない。また、本件発明1は、「固体状態の前記溶融先端と液体入力材料による濡れ性を確保する」ものであるから、「溶融先端」は固体である。そして、可融性を有する溶融先端が固体であっても、特段の矛盾は生じないから、本件発明1について、特許請求の範囲の記載は明確である。 よって、申立人の上記アの主張は採用しない。 ウ また、申立人は「4-2.意見(2)ア」において、上記アの主張を前提に、本件訂正により、本件発明1~19については、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件も満たしていないという新たな取消理由が生じた旨を主張する。 エ しかしながら、「4-2.意見(2)ア」には、具体的な取消理由が何ら記載されていないから、申立人の上記ウの主張は採用しない。 オ さらに、申立人は「4-2.意見(2)イ」において、請求項1に係る訂正は、新規事項の追加に該当する旨を主張する。 カ しかしながら、上記第2の3(2)イで述べたとおり、請求項1に係る訂正は、新規事項の追加に該当しないから、申立人の上記オの主張は採用しない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由及び当審において通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700866

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