特許異議申立
2023-700063
活性エネルギ照射装置及びインクジェットプリンタ
- 審判番号
- 2023-700063
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-136099
- 登録番号
- 7105978
- 請求日
- 2023年01月20日
- 審決日
- 2023年04月04日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】浜松ホトニクス株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】柴山 健一
- 【権利者代理人】荒井 寿王
- 【異議申立人】杉山 賢哉
- 【異議申立人代理人】石川 徹
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 佐藤 海
- 分類
- P1652.121-YAA(B41J) / P1652.16 -YAA(B41J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7105978号発明「活性エネルギ照射装置及びインクジェットプリンタ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7105978号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7105978号の請求項1乃至15に係る特許についての出願は、令和3年8月24日に出願され、令和4年7月14日にその特許権の設定登録がされ、令和4年7月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年1月20日に特許異議申立人 杉山賢哉(以下「特許異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7105978号の請求項1の特許に係る発明(以下「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に配置され、活性エネルギ線を照射する照射部と、
前記筐体内に配置され、前記照射部と熱的に接続された熱伝導部材と、
前記筐体に設けられた第1開口部と、
前記第1開口部を介して第1方向に沿って前記筐体内に流入したエアを、前記第1方向と交差する第2方向へ偏向させて前記熱伝導部材へ導入するエア導入部と、を備え、
前記エア導入部は、
前記筐体内において前記第1開口部に対向するように設けられた仕切り部と、
前記第1開口部と前記仕切り部との間に設けられ、前記エアに含まれる異物を捕集するフィルタと、を有し、
前記フィルタは、
前記熱伝導部材側に設けられ、前記第1方向から見て前記第1開口部から露出せず、前記仕切り部に接触する第1フィルタ部分を含む、活性エネルギ照射装置。」
第3 申立理由の概要
1 申立理由1(進歩性)
特許異議申立人は、主たる証拠(甲第1号証)として特開2018-134815号公報(以下「文献1」という。)及び従たる証拠(甲第2号証)として特開2019-40074号公報(以下「文献2」という。)を提出し、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
2 申立理由2(拡大先願)
また、特許異議申立人は、証拠(甲第3号証)として特願2021-62299号(特開2022-157844号)(以下「文献3」という。)を提出し、請求項1に係る特許は同法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
第4 文献の記載
1 文献1
文献1には、
「筐体10内に紫外線光源20、ヒートシンク30を収納する光照射装置であって、
筐体10内の光出射窓18近傍には紫外線光源20が設けられ、
紫外線光源20は、光源配設用基板21を介してヒートシンク30に接合され、
筐体10の内部の空間は、仕切部11によって第1空間12と第2空間13に分けられ、
第2空間13の上部の筐体10の上壁10aには第2通気口15が設けられ、第2通気口15から流入した空気は、第2空間13を下向きから横向きに流れて、ヒートシンク30を通過し、
第2通気口15にはフィルタ17bが取付けられている、
光照射装置。」
の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる(【0012】~【0016】、【0019】、【0022】、【0024】、【0028】、【図1】参照。)。
2 文献2
文献2には、
「画像を投写する本体部1A、本体部1Aに電力を供給する電源部1B、および本体部1Aを回動可能に支持し、本体部1Aと電源部1Bとを接続する接続部1Cを備えているプロジェクターであって、
本体部1Aは、外装筐体2、光学ユニット3、回路装置4、冷却装置5を備え、
外装筐体2は、ケース本体21、前枠22、フロントケースユニット23、およびリアケース24を備え、
フロントケースユニット23は、外枠231、内枠を備え、前枠22に着脱可能に取り付けられ、
前枠22は、投写光学装置36から射出された光が通過する投写用開口部221、複数の孔を有する第1吸気口222、および凹部223が形成されている前面部22fを有し、
外枠231には、投写光学装置36から射出された光が通過する投写用開口部2311、および前枠22の第1吸気口222および第2吸気口224に連通する複数の孔を有する吸気口2312が形成され、
内枠にも投写光学装置36から射出された光が通過する投写用開口部、および第1吸気口222、第2吸気口224に連通する複数の孔を有する吸気口が形成され、
外枠231の吸気口2312を構成する複数の孔、および内枠の吸気口を構成する複数の孔は、前方から見て第1吸気口222を構成する複数の孔からずれた位置に形成され、
フロントケースユニット23は、外枠231と内枠との間に防塵フィルターが配置され、
光学ユニット3は、照明装置30を備え、照明装置30は、光源11を備え、
基板111に対して光源11とは反対側にはヒートシンク10Hが配置される、
プロジェクター。」
の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる(【0021】~【0028】、【0030】~【0032】参照。)。
3 文献3
文献3には、
「筐体100と、光源ユニット200(光源部)と、制御基板300(駆動回路)と、放熱部材400と、を備えている光照射装置1であって、
筐体100は、光源ユニット200、制御基板300、放熱部材400を収容し、
筐体100の上面には、筐体100に外部から空気を取り込む吸気口102(通気口)が形成され、
放熱部材400は、光源ユニット200から発せられた熱を放熱する部材であり、
光照射装置3は、筐体100Bの上面パネル101Bが上方(Y軸方向+側)に突出し、上面パネル101Bの内側(Y軸方向-側)に上面パネル101Bと平行な内壁108Bが形成され、上面パネル101Bと内壁108Bとの間に、吸気口102Bを塞ぐようにフィルタ500が狭持され、
筐体100Bの内部には、内壁108Bから放熱フィン420のZ軸方向-側の端面に向かって延びる導風板107Bが配置され、導風板107Bは、内壁108Bと対向するように配置され、貫通孔102aB~102jBから取り込まれ、フィルタ500を通過した空気を放熱フィン420に導く、くの字状の金属製の薄板部材であり、
内壁108Bには貫通孔が形成されており、フィルタ500を通過した空気は全て内壁108Bを通って導風板107Bに導かれるようになっている、
光照射装置。」
の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる(【0019】、【0023】、【0045】~【0047】参照。)。
なお、文献3の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲に又は図面に記載された先願(特願2021-62299号(特開2022-157844号))は、本件特許の出願より前である令和3年3月31日に出願された特許出願であり、本件特許の出願後である令和4年10月14日に出願公開がされたものであって、本件特許の発明者が先願に係る発明の発明者と同一ではないから、先願は、特許法29条の2本文における「他の特許出願」の形式的要件を満足する。
また、本件特許の出願の時に、本件特許の出願人と先願の出願人は同一ではなかったから、先願は、同条ただし書における「他の特許出願」の形式的要件も満足する。
第5 当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1)対比・判断
本件発明と引用発明1とを対比すると、
引用発明1の「筐体10」、「紫外線光源20」、「『紫外線光源20』に接合された『ヒートシンク30』」、「『筐体10』の上壁10aに設けられた『第2通気口15』」、「第2空間13」、「仕切部11」、「フィルタ17b」及び「光照射装置」は、それぞれ、本件発明の「筐体」、「活性エネルギ線を照射する照射部」、「照射部と熱的に接続された熱伝導部材」、「筐体に設けられた第1開口部」、「エア導入部」、「筐体内において設けられた仕切り部」、「エアに含まれる異物を捕集するフィルタ」及び「活性エネルギ照射装置」に相当する。
引用発明1の第2通気口15から流入した空気は、第2空間13を下向きから横向きに流れて、ヒートシンク30を通過するから、本件発明の「エア導入部」と引用発明1の「第2空間13」とは、「第1開口部を介して第1方向に沿って筐体内に流入したエアを、第1方向と交差する第2方向へ偏向させて熱伝導部材へ導入する」ものとの概念で一致する。
そうすると、両発明は、
[一致点]
「 筐体と、
前記筐体内に配置され、活性エネルギ線を照射する照射部と、
前記筐体内に配置され、前記照射部と熱的に接続された熱伝導部材と、
前記筐体に設けられた第1開口部と、
前記第1開口部を介して第1方向に沿って前記筐体内に流入したエアを、前記第1方向と交差する第2方向へ偏向させて前記熱伝導部材へ導入するエア導入部と、を備え、
前記エア導入部は、
前記筐体内において設けられた仕切り部と、
前記エアに含まれる異物を捕集するフィルタと、を有する、活性エネルギ照射装置。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件発明の「エア導入部」が、「筐体内において第1開口部に対向するように設けられた仕切り部と、前記第1開口部と前記仕切り部との間に設けられ、エアに含まれる異物を捕集するフィルタと、を有」するものであるのに対し、引用発明1の「第2空間13」の「仕切部11」と「第2通気口15」とは対向しておらず、「フィルタ17b」は、「第2通気口15」に取り付けられ、「第2通気口15」と「仕切部11」との間に設けられていない点。
[相違点2]
本件発明の「フィルタ」が、「熱伝導部材側に設けられ、第1方向から見て第1開口部から露出せず、仕切り部に接触する第1フィルタ部分」を含むものであるのに対し、引用発明1の「フィルタ17b」は、「第2通気口15」に取り付けられている点。
上記[相違点2]につき、引用発明2の「防塵フィルター」は、外枠231と内枠との間に配置され、前枠に接していないことから、ヒートシンク10H側に設けられているものとはいえない。
そして、上記相違点2に係る構成が設計的事項といえる理由もない。
そうすると、本件発明は、文献1及び文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得るものではない。
なお、引用発明2の「防塵フィルター」は、「内枠」に接触しているものの、引用発明1の「第2通気口15」に取り付けられている「フィルタ17b」を「仕切部11」に接触するよう設計変更する動機付けは見当たらないことからしても、上記相違点2に係る構成は充足し得ない。
本件特許は、上記相違点2に係る構成により、「仕切り部によりフィルタを効果的に支持することができる。」(【0008】等参照。)という効果を奏するものである。
(2)小括
上記のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、上記申立理由1により、本件特許請求の範囲の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(拡大先願)について
(1)対比・判断
本件発明と先願発明とを対比すると、
先願発明の「筐体100」、「光源ユニット200」、「光源ユニット200から発せられた熱を放熱する『放熱部材400』」、「筐体100に形成され、外部から空気を取り込む『吸気口102(通気口)』」、「内壁108B」、「フィルタ500」及び「光照射装置」は、それぞれ、本件発明の「筐体」、「活性エネルギ線を照射する照射部」、「照射部と熱的に接続された熱伝導部材」、「筐体に設けられた第1開口部」、「筐体内において設けられた仕切り部」、「エアに含まれる異物を捕集するフィルタ」及び「活性エネルギ照射装置」に相当する。
先願発明は、内壁108Bには貫通孔が形成されており、フィルタ500を通過した空気は全て内壁108Bを通って導風板107Bに導かれるようになっており、貫通孔102aB~102jBから取り込まれ、フィルタ500を通過した空気は、放熱フィン420に導かれるから、先願発明の筐体100の上面、フィルタ500、内壁108B及び導風板107Bで画定される空間は、本件発明の「エア導入部」に相当する。
そうすると、両発明は、
[一致点]
「筐体と、
前記筐体内に配置され、活性エネルギ線を照射する照射部と、
前記筐体内に配置され、前記照射部と熱的に接続された熱伝導部材と、
前記筐体に設けられた第1開口部と、
前記第1開口部を介して第1方向に沿って前記筐体内に流入したエアを、前記第1方向と交差する第2方向へ偏向させて前記熱伝導部材へ導入するエア導入部と、を備え、
前記エア導入部は、
前記筐体内において前記第1開口部に対向するように設けられた仕切り部と、
前記第1開口部と前記仕切り部との間に設けられ、前記エアに含まれる異物を捕集するフィルタと、を有する、活性エネルギ照射装置。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点3]
本件発明の「フィルタ」が、「熱伝導部材側に設けられ、第1方向から見て第1開口部から露出せず、仕切り部に接触する第1フィルタ部分を含む」ものであるのに対し、先願発明の「フィルタ500」は、貫通孔102aB~102jBから露出している点。
そして上記[相違点3]が、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)であるとする理由もない。
そうすると、本件発明は、先願発明と同一ではない。
(2)小括
上記のとおり、本件発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではないから、上記申立理由2により、本件特許請求の範囲の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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