特許異議申立
2024-700413
油調食品用衣材およびその製造方法ならびに油調食品およびその製造方法
- 審判番号
- 2024-700413
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-114178
- 登録番号
- 7398524
- 請求日
- 2024年04月30日
- 審決日
- 2024年10月03日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】マリンフーズ株式会社
- 【権利者代理人】加藤 竜太
- 【権利者代理人】芝 哲央
- 【異議申立人】丸野 悟史
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 淺野 美奈
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1652.113-Y (A23L) / P1652.121-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7398524号発明「油調食品用衣材およびその製造方法ならびに油調食品およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7398524号の請求項1及び3ないし9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7398524号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和4年7月15日(優先権主張 令和3年11月5日)の出願であって、令和5年12月6日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年同月14日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年4月30日に特許異議申立人 丸野 悟史(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1及び3ないし9)がされ、同年7月5日及び同年同月16日に特許異議申立人より特許異議申立書に対する補正書が提出された(なお、当該補正書により補正された特許異議申立書を、以下「異議申立書」という。)ものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1及び3ないし9に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明3」などという場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1及び3ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
糊化澱粉を含み、1~2mmの厚さおよび3~12mmの長さをもつフレーク状、または3~6mmの粒子径をもつ粒状の形状を有する天ぷら用衣材。
【請求項3】
さらに天ぷら粉を含む、請求項1に記載の天ぷら用衣材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の天ぷら用衣材の製造方法であって、
前記糊化澱粉を含む生地を調製する工程と、前記生地をフレーク状または粒状にする工程とを含む、天ぷら用衣材の製造方法。
【請求項5】
前記生地をフレーク状または粒状にする工程の前に、前記生地に打ち粉をする工程をさらに含む、請求項4に記載の天ぷら用衣材の製造方法。
【請求項6】
天ぷら用具材と、
前記天ぷら用具材の表面の少なくとも一部を覆う天ぷら用バッター層と、
前記天ぷら用バッター層の表面の少なくとも一部を覆う、請求項1~3のいずれか一項に記載の天ぷら用衣材の層と
を含む、油調前の天ぷら。
【請求項7】
前記油調前の天ぷらは、凍結して冷凍状態になっている、請求項6に記載の油調前の天ぷら。
【請求項8】
天ぷら用具材の表面の少なくとも一部に、天ぷら用バッター液を付着させて天ぷら用バッター層を形成する工程と、
前記天ぷら用バッター層の表面の少なくとも一部に、請求項1~3のいずれか一項に記載の天ぷら用衣材を付着させて天ぷら用衣材の層を形成する工程と
を含む、油調前の天ぷらの製造方法。
【請求項9】
前記天ぷら用衣材の層を形成する工程の後に、凍結して冷凍状態にする冷凍工程をさらに含む、請求項8に記載の油調前の天ぷらの製造方法。」
第3 特許異議申立理由の要旨
特許異議申立人が申し立てた請求項1及び3ないし9に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
1 申立理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、3、4及び6ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由1-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、3、4及び6ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由1-3(甲第3号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、3及び4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1及び3ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1及び3ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 申立理由2-3(甲第3号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1及び3ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
7 証拠方法
・甲第1号証:国際公開第2008/139900号
・甲第2号証:国際公開第2008/139899号
・甲第3号証:特開2010-110294号公報
・甲第4号証:特開平5-62号公報
・甲第5号証:国際公開第2015/083592号
第4 当審の判断
以下のとおり、当審は、申立理由1-1ないし2-3の理由では、本件特許発明1及び3ないし9に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。
1 申立理由1-1及び2-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
(1) 甲第1号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「揚げ物用衣材の製造方法」に関し、次の記載がある。
「技術分野
[0001] 本発明は、天ぷら、から揚げ等の揚げ物冷凍食品や揚げ物用冷凍食品、その製造方法、該製造方法に用いる揚げ物用衣材及び該衣材の製造方法に関する。」
「発明が解決しようとする課題
[0003] 本発明の課題は、製造時に粉類が団子化することを抑制し、また、製造時に衣材同士が互いに接着することを抑制することができる揚げ物用衣材の製造方法を提供することにある。
本発明の別の課題は、衣材同士が経時的に互いに接着し難い揚げ物用衣材、該衣材を備えた揚げ物用冷凍食品、及びその製造方法、揚げ物冷凍食品の製造方法を提供することにある。」
「発明の効果
[0005] 本発明の揚げ物用衣材の製造方法は、α化澱粉を30質量%以上含む揚げ物衣材用粉類に、水を含む溶液を混合する前に、特定量以上の油脂粉末を混合するので、製造時に粉類が団子化することなく、長径5~8mmの衣材を含む長径0.01~16mmの粒度分布を有する衣材を効率良く製造することができ、また、製造時に衣材同士が接着することも抑制することができる。
本発明の揚げ物用衣材は、油脂粉末を特定量以上含有するので、衣材同士が経時的に接着することが抑制される。
従って、本発明の揚げ物用衣材は、天ぷら、から揚げ等の揚げ物用冷凍食品、その製造方法、及び揚げ物冷凍食品の製造方法に有用である。」
「[0006] 以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の揚げ物用衣材の製造方法は、天ぷら、から揚げ等の各種揚げ物に用いる長径5~8mmの衣材を含む長径0.01~16mmの粒度分布を有する衣材の製造方法であって、α化澱粉を30質量%以上含む揚げ物衣材用粉類100質量部に、油脂粉末10質量部以上を混合する工程(A)を含む。
工程(A)に用いる揚げ物衣材用粉類は、α化澱粉を該粉類全量基準で30質量%以上、好ましくは40質量%以上含む、通常、揚げ物用衣材に用いる穀粉及び/又は澱粉であれば特に限定されず、β澱粉を含むこともできる。また、工程(A)に用いる揚げ物衣材用粉類には、穀粉や澱粉の他に、蛋白、食物繊維、増粘多糖類、糖類等を含んでいても良い。
[0007] 穀粉及び/又は澱粉としては、例えば、小麦粉、ライ麦粉、米粉、トウモロコシ粉、大豆粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、アミロースを除去した澱粉、もち種澱粉、又はこれらのα化物、化工物、もしくはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
アミロースを除去した澱粉は、アミロースの除去によりアミロペクチン含有割合が高くなった澱粉又はそのα化物であれば澱粉の種類は特に限定されない。
もち種澱粉としては、例えば、ワキシーコーン澱粉、もち澱粉、ワキシ種ポテト澱粉、もち種小麦澱粉等、又はこれらのα化物、化工物、もしくはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。尚、もち澱粉を多く含むもち粉を用いることもできる。
上記α化澱粉は、上記澱粉をα化処理することにより得ることができる。また、α化澱粉として、例えば、上記アミロースを除去した澱粉及び/又はもち種澱粉をα化し膨化した後に、粗粉砕した粗粉砕物を用いることもできる。該粗粉砕は、例えば、8mm網を通過するように行うことができる。」
「[0012] 本発明の製造方法により得られる衣材は、長径5~8mmの衣材を含む長径0.01~16mm、好ましくは0.1~16mmの粒度分布を有する揚げ物用衣材であって、α化澱粉を30質量%以上含む揚げ物衣材用粉類、水及び油脂粉末を含有する。
本発明の揚げ物用衣材において、長径5~8mmの衣材の含有割合は、通常30質量%以上、好ましくは30~40質量%である。
[0013] 本発明の揚げ物用冷凍食品は、揚げ物用具材表面に、本発明の製造方法等により得られる本発明の揚げ物用衣材を備え、凍結されているものである。
揚げ物用具材は、特に限定されず、例えば、えび、魚介練り物、魚介類、野菜類、畜肉及びそれらの加工品が挙げられる。
本発明の揚げ物用冷凍食品の製造方法は、揚げ物用具材表面にバッターを付着させる工程(1)と、本発明の揚げ物用衣材を、工程(1)で付着させたバッター上に付着させる工程(2)と、冷凍する工程(3-1)とを含む。また本発明の揚げ物冷凍食品の製造方法は、前記工程(1)及び工程(2)と、油ちょう後に冷凍する工程(3-2)とを含む。
[0014] 工程(1)で用いるバッターは、通常、揚げ物食品に使用されるバッターであれば特に限定されない。
バッターの付着は、揚げ物用具材表面に、バッターを塗布するか、バッターに揚げ物用具材を浸漬する方法により行うことができる。この際、バッターを付着させる前に打ち粉付を行っても良い。
工程(2)の衣材の付着は、バッターが付着した揚げ物用具材の表面に衣材が満遍なく付着する方法であれば特に限定されない。
工程(3-1)又は(3-2)の冷凍は、通常、冷凍食品を製造する-18℃以下で行うことができる。
本発明の揚げ物用冷凍食品は、冷凍流通後、食する際に、油ちょうすることによって調理することができ、本発明の揚げ物冷凍食品は、再油ちょうの他、電子レンジ等で解凍加熱することにより調理することができる。」
「請求の範囲
[1] α化澱粉を30質量%以上含む揚げ物衣材用粉類100質量部に、油脂粉末10質量部以上を混合する工程(A)と、長径5~8mmの衣材を含む長径0.01~16mmの粒度分布を有する衣材を得るために、工程(A)で得られた混合物に水を含む溶液を混合する工程(B)を含む揚げ物用衣材の製造方法。
[2] 揚げ物衣材用粉類が、β澱粉及び/又は穀粉を含む請求項1の製造方法。
[3] 水を含む溶液の混合割合が、衣材全量基準における水量換算で15~30質量%である請求項1又は2の製造方法。
[4] α化澱粉が、アミロースを除去した澱粉及び/又はもち種澱粉を、α化し膨化した後に、粗粉砕した粗粉砕物である請求項1~3のいずれかの製造方法。
[5] α化澱粉を30質量%以上含む揚げ物衣材用粉類と、水と、油脂粉末とを含み、油脂粉末の含有割合が、前記揚げ物衣材用粉類100質量部に対して10質量部以上であり、長径5~8mmの衣材を含む長径0.01~16mmの粒度分布を有する揚げ物用衣材。
[6] 長径5~8mmの衣材の含有割合が30質量%以上である請求項5の衣材。
[7] α化澱粉が、アミロースを除去した澱粉及び/又はもち種澱粉を、α化し膨化した後に粗粉砕した粗粉砕物である請求項5又は6の衣材。
[8] 揚げ物用具材表面に、請求項5~7のいずれかの衣材を備え、凍結されている揚げ物用冷凍食品。
[9] 揚げ物用具材表面にバッターを付着させる工程(1)と、請求項5~7のいずれかの衣材を、工程(1)で付着させたバッター上に付着させる工程(2)と、冷凍する工程(3-1)とを含む揚げ物用冷凍食品の製造方法。
[10] 揚げ物用具材表面にバッターを付着させる工程(1)と、請求項5~7のいずれかの衣材を、工程(1)で付着させたバッター上に付着させる工程(2)と、油ちょう後に冷凍する工程(3-2)とを含む揚げ物冷凍食品の製造方法。」
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アの記載、特に請求の範囲の請求項5の記載を中心に整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されていると認める。
「α化澱粉を30質量%以上含む揚げ物衣材用粉類と、水と、油脂粉末とを含み、油脂粉末の含有割合が、前記揚げ物衣材用粉類100質量部に対して10質量部以上であり、長径5~8mmの衣材を含む長径0.01~16mmの粒度分布を有する揚げ物用衣材。」(以下、「甲1発明」という。)
(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「α化澱粉」は、本件特許発明1の「糊化澱粉」に相当する。
また、甲1発明の「揚げ物用衣材」は、甲第1号証の「本発明の揚げ物用衣材は、天ぷら、から揚げ等の揚げ物用冷凍食品、その製造方法、及び揚げ物冷凍食品の製造方法に有用である」([0005])の記載から見て、本件特許発明1の「天ぷら用衣材」に相当する。
してみると、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「糊化澱粉を含む、天ぷら用衣材。」
(相違点)
・相違点1
天ぷら用衣材に関し、本件特許発明1は「1~2mmの厚さおよび3~12mmの長さをもつフレーク状、または3~6mmの粒子径をもつ粒状の形状を有する」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
上記相違点1について検討する。
甲第1号証には、粒子径範囲として「0.01~16mm」との記載はあるものの、具体的形状に伴う粒子径範囲を示すものではない。
さらに、甲第1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲第1号証の衣材が「1~2mmの厚さおよび3~12mmの長さをもつフレーク状」、または、「3~6mmの粒子径をもつ粒状」であるのか明らかではないから、相違点1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲1発明ではない。
また、甲第1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲1発明において、衣材として、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
そして、本件特許発明1は、その発明特定事項を満たすことにより、「油調後の見た目と食感が従来よりも改善された油調食品が提供され、特に見た目は、手作りの天ぷら(具材にバッター液等を付着させてそのまま揚げたもの)と同じようなものとすることができる」(【0010】)との、格別の効果を奏するものである。
よって、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、この点に関し、特許異議申立人は異議申立書において、甲1発明における衣材の粒子径の数値範囲は、本件特許発明1における構成に係る粒子径の数値範囲と重複するものであるから、この点は相違点とはならない旨主張する(異議申立書p.24)。しかしながら、甲1発明における粒子径範囲は0.01~16mmと本件特許発明1に比して広いものであること、具体的に本件特許発明1の発明特定事項を満たすものの開示がないことから、甲1発明の衣材が相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものということはできない。
また、特許異議申立人は、甲第4号証、甲第5号証を挙げつつ、「フレーク状」の衣材は周知である旨主張する(p.24-25)が、甲第4号証、甲第5号証ともに、いわゆる「フライ用」であって、天ぷら用衣材に関するものではないことから、甲1発明において、「フレーク状」の衣材とする動機付けはないものといわざるを得ない。
よって、特許異議申立人の上記主張はいずれも採用できない。
イ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3も甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1の天ぷら用衣材の製造方法に関する発明であるところ、上記アのとおり、本件特許発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明4もまた、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明4の発明特定事項の全てを有するものである。
そして、上記ウのとおり、本件特許発明4は甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明5もまた、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件特許発明6及び7について
本件特許発明6及び7は、本件特許発明1の天ぷら用衣材を用いた油調前の天ぷらに関する発明であるところ、上記アのとおり、本件特許発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明6及び7もまた、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
カ 本件特許発明8及び9について
本件特許発明8及び9は、本件特許発明1の天ぷら用衣材を用いた油調前の天ぷらの製造方法に関する発明であるところ、上記アのとおり、本件特許発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明8及び9もまた、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3) 申立理由1-1及び2-1についてのまとめ
上記(2)のとおりであるから、申立理由1-1及び2-1の理由では、本件特許発明1及び3ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由1-2及び2-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
(1) 甲第2号証の記載事項等
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「揚げ物用衣材の製造方法」に関し、次の記載がある。
「技術分野
[0001] 本発明は、油ちょうにより優れた膨化作用を示し、油ちょう前の冷凍輸送が可能な、天ぷら、から揚げ等の揚げ物用冷凍食品、その製造方法、該製造方法に用いる、経時的に互いに接着し難く、揚げ物用具材への衣付け作業が容易であり、油ちょうすることにより優れた膨化作用を示す揚げ物用衣材及びその製造方法に関する。」
「発明が解決しようとする課題
[0004] 本発明の課題は、油ちょう時に、十分に膨化し、衣材同士が経時的に互いに接着し難く、しかも揚げ物用具材への衣付け作業も容易で、強固に付着させることができる、揚げ物用衣材を効率的に得ることが可能な揚げ物用衣材の製造方法を提供することにある。
本発明の別の課題は、油ちょう時に、十分に膨化し、衣材同士が経時的に互いに接着し難く、揚げ物用具材への衣付け作業も容易で、強固に付着させることができ、凍結状態で水に浮く軽量な揚げ物用衣材を提供することにある。
本発明の他の課題は、油ちょう時に、十分に膨化し、衣材同士の接着が抑制され、揚げ物用具材への衣材の付着性も良好な、天ぷら、から揚げ等の揚げ物用冷凍食品、及びこのような食品を容易に且つ効率的に製造することが可能な製造方法を提供することにある。」
「発明の効果
[0006] 本発明の揚げ物用衣材の製造方法は、上記工程(A)~(D)を含み、特に、工程(A)及び(B)において、アミロペクチン含有割合及びα化率が高い、アミロースを除去した澱粉及び/又はもち種澱粉を特定割合以上含む芯材と、油脂粉末とを含有する吸湿芯材原料を混合して吸湿芯材を調製した後に、該吸湿芯材の外側に被覆用粉末や少量の水溶液を混合する工程(C)及び(D)を行うので、油ちょう時に、吸湿芯材に油が十分流通して衣材を十分に膨化させることができる。
また、吸湿芯材原料の調製を行う工程(A)において、油脂粉末を用いるので、得られる衣材同士の接着が十分抑制でき、更に、吸湿芯材を調製後に、該吸湿芯材を被覆用粉末で被覆する工程(B)及び(C)を採用するので、得られる衣材同士が経時的に互いに接着し難く
なり、後述する本発明の揚げ物冷凍食品の製造における衣材の付着を効率的に、且つ容易に行うことができる。
更に、工程(A)において、衣材の揚げ物用具材への接着を阻害するような油脂粉末を原材料に使用するが、該油脂粉末は、工程(B)~(D)により、得られる衣材の外表面にほとんど存在しないように製造できるので、揚げ物用具材への衣付け作業も容易に、且つ強固に付着させることができる。」
「[0009] 以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の揚げ物用衣材の製造方法は、天ぷら、から揚げ等の各種揚げ物に用いる衣材の製造方法であって、アミロースを除去した澱粉及び/又はもち種澱粉を芯材全量に対して90質量%以上含み、かつ90質量%以上がα化された芯材と、油脂粉末とを含有する吸湿芯材原料を混合する工程(A)を含む。
工程(A)における芯材に用いる、アミロースを除去した澱粉及び/又はもち種澱粉は、アミロペクチン含有割合が高く、得られる衣材が油ちょう時に十分に膨化するための原料としての一成分である。該アミロペクチン含有量は、その種類、生産地等により異なるが、通常88~100質量%程度である。
芯材を構成する、アミロースを除去した澱粉及び/又はもち種澱粉の含有割合は、芯材全量に対して90質量%以上である。90質量%未満では、油ちょうした際に衣材の十分な膨化が得られない恐れがある。また、芯材は、90質量%以上がα化されている。該芯材のα化率が低い場合には、油ちょうした際に衣材の十分な膨化が得られない恐れがある。」
「[0015] 本発明の揚げ物用衣材の製造方法は、前記吸湿芯材と、被覆用粉末とを混合し、被覆吸湿芯材を調製する工程(C)を含む。
工程(C)においては、被覆用粉末により吸湿芯材を被覆する工程であって、これにより吸湿芯材中の油脂粉末が得られる衣材の外表面に露出することを抑制し、且つ芯材を内部に留めて油ちょう時の膨化が有効に生じるような構造にする工程である。
工程(C)に用いる被覆用粉末としては、各種穀粉、澱粉又はこれらの2種以上の混合物等を用いることができる。
穀粉としては、例えば、米粉、上新粉、もち粉、トウモロコシ粉、大麦粉、大豆粉、これらのα化物が挙げられ、使用に際しては2種以上の混合物であっても良い。
澱粉としては、例えば、小麦澱粉、もち澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーン澱粉、スターチ、これらのα化物、これらの各種化工物が挙げられ、使用に際しては2種以上の混合物であっても良い。
特に、本発明の所望の効果を得るために、被覆用粉末中のα化澱粉及び/又はα化穀粉の含有割合は、32質量%以下が好ましい。
被覆用粉末には、さらに蛋白や増粘多糖類、食物繊維、糖類、調味料、油脂などを、本発明の所望の効果を損なわない範囲で配合することができる。」
「[0017] 本発明の揚げ物用衣材の製造方法は、被覆吸湿芯材100質量部と、水を含む溶液12~19質量部とを混合し、長径5~8mmの衣材を含む長径0.01~16mm、好ましくは0.1~16mmの粒度分布を有する衣材を調製する工程(D)により目的の揚げ物用衣材を製造することができる。得られる衣材中の長径5~8mmの衣材の含有割合は、付着させる揚げ物用具材の種類に応じて適宜選択できるが、衣材全量に対して通常30質量%以上、好ましくは30~40質量%である。
工程(D)における被覆吸湿芯材と水を含む溶液との混合は、長径5~8mmの衣材を含む長径0.01~16mmの粒度分布を有する衣材となるように、該溶液を徐々に加えながら混合する方法等により行うことができる。
工程(D)に用いる水を含む溶液は、水であっても良く、また、味付けや色付け等のために、調味料、着色料等を溶解した水溶液であっても良い。
被覆吸湿芯材100質量部に対する水を含む溶液の割合が、12質量部未満では、長径5~8mmの衣材を含む長径0.01~16mmの粒度分布を有する衣材の調製が困難であり、19質量部を超えると、団子状態になり易くなり、本発明の所望の効果が得られ難くなる。
[0018] 本発明の揚げ物用衣材の製造方法により得られる衣材は、上述のとおり、長径5~8mmの衣材を含む長径0.01~16mmの粒度分布を有する衣材であるが、該長径5~8mmの衣材は、凍結状態で、水に浮く衣材と、水に沈む衣材とが得られる。また、凍結状態で水に浮くとは、凍結状態を維持している間は水に浮くが、水の中で解凍され、衣材内部に水分が吸収されると徐々に沈むことを意味し、凍結状態で水に沈むとは、凍結状態であっても水に沈むことを意味する。
本発明の衣材は、上記長径5~8mmの衣材が凍結状態で水に浮く、長径0.01~16mmの粒度分布を有する衣材である。この際、長径5~8mm以外の衣材は、凍結状態で水に浮いても、浮かなくても良い。
本発明の衣材は、本発明の製造方法において工程(A)に用いる、アミロースを除去した澱粉及び/又はもち種澱粉として、アミロースを除去した澱粉及び/又はもち種澱粉を、α化して膨化させた後に、粗粉砕した粗粉砕物を用いることにより得ることができる。該粗粉砕は、例えば、8mm網を通過するように行うことができる。
[0019] 本発明の揚げ物用冷凍食品は、揚げ物用具材表面に、本発明の製造方法により得られた揚げ物用衣材又は本発明の上記衣材を備え、凍結されているものである。
揚げ物用具材は、特に限定されず、例えば、えび、魚介練り物、魚介類、野菜類、畜肉及びそれらの加工品等が挙げられる。
本発明の揚げ物用冷凍食品の製造方法は、揚げ物用具材表面にバッターを付着させる工程(1)と、上記製造方法により得られる揚げ物用衣材又は上記粗粉砕物を用いた揚げ物用衣材を、工程(1)で付着させたバッター上に付着させる工程(2)と、冷凍する工程(3-1)とを含む。
本発明の揚げ物冷凍食品の製造方法は、前記工程(1)及び工程(2)と、油ちょう後に冷凍する工程(3-2)とを含む。
工程(1)に用いるバッターは、通常、揚げ物食品に使用されるバッターであれば特に限定されない。
バッターの付着は、揚げ物用具材表面に、バッターを塗布するか、バッターに揚げ物用具材を浸漬する方法により行うことができる。この際、バッターを付着させる前に打ち粉付を行っても良い。
工程(2)衣材の付着は、バッターが付着した揚げ物用具材の表面に衣材が満遍なく付着する方法であればいずれも採用できる。
工程(3-1)又は(3-2)の冷凍は、通常、冷凍食品を製造する-18℃以下で行うことができる。
本発明の揚げ物用冷凍食品は、冷凍流通後、食する際に、油ちょうすることによって調理することができ、本発明の揚げ物冷凍食品は、例えば、再油ちょうの他、電子レンジ等で解凍加熱することにより調理することができる。」
「実施例
[0020] 以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。尚、例中の「部」は「質量部」を「%」は「質量%」を示す。
実施例1
生ワキシーコーン60部及びもち粉40部に水80部を加えて混合し、厚さ1cm程度のシート状に成形した。これをコンベクションオーブンのスチームで100℃、20分間蒸煮し、木棒で180回餅つきし、団子状に成形した後、両面焼成機を用いて、厚さ5mmになるように圧をかけながら180℃、7分間加熱してα化もち種澱粉シートを調製した。得られたシートを室温で放冷後、8mmの網を通過する程度に粉砕機で破砕し、α化澱粉粗粉砕物を調製した。該澱粉粗粉砕物中のアミロペクチン含有割合は93.1質量%であった。この澱粉粗粉砕物29部と油脂粉末44部とを混合した後、液体全卵を水で希釈した溶液27部を徐々に加えて、均一になるまでゴムヘラを用いて混合し、そぼろ状の吸湿芯材を調製した。
一方、化工ワキシーコーン澱粉33部、α化ワキシーコーン22部、上新粉米粉11部及び乾燥全卵5部の被覆用粉末を調製した。
次いで、上記吸湿芯材100部と被覆用粉末74部とを混合し、吸湿芯材の表面に十分被覆用粉末が付着するように混合した。続いて、得られた混合物100部に対して、水15部を徐々に加えて、長径0.1~16mmの粒度分布を有する不定形の衣材を調製した。
尚、吸湿芯材調製時の溶液と最終的に衣材作製時に加えた水の合計量が衣材に占める割合は、26.9%である。
得られた衣材を、衣材同士が接触している状態で、ポリエチレンラップに包み、温度20℃の環境下、1時間放置した。その後、ラップから取り出し、手でほぐしてから衣材の状態を観察した。各衣材が完全に接着したものを×、多少接着している箇所があるものを△、ほとんど接着が見られないものを○とした。結果を表1に示す。
また、得られた衣材の長径が、5.0~8.0mmの割合、16mmを越えるものの割合又は団子化の有無を測定した。結果を表1に示す。
得られた衣材の長径5.0~8.0mmのものを-18℃で凍結し、18℃の水道水に投入し、衣材の浮き状態を観察した。結果を表1に示す。
[0021] 次に、魚のすり身に、豆腐、野菜及びつなぎを加えて混合し、約40gずつの団子状に成形し、蒸し器で10分間蒸したてんぷらの具材を調製し、該具材表面に打ち粉をした。続いて、バッター及び上記衣材を順次付着させ、具材表面を衣材でコーティングし、-35℃で凍結して冷凍てんぷら用魚練り物を調製した。
得られた冷凍てんぷら用魚練り物に上記衣材を付着させ、具材表面を衣材でコーティングするときの衣の接着状態を観察した。衣材の剥がれが生じているものを×、衣材が指で簡単に剥がれるものを△、衣材が指で簡単に剥がれないものを○とした。また、冷凍保存後の冷凍てんぷら用魚練り物と、該冷凍てんぷらを、170℃で油ちょうした後のてんぷらとを目視で比較して膨化状態を観察した。冷凍てんぷらと油ちょう後のてんぷらとほとんど変化がないものを3点とし、明らかに縮小しているものを1点、その中間を2点、明らかに膨化しているものを5点、その中間を4点として評価した。尚、油ちょうにより具材自体も縮小するので、該評価は、3点でも衣材が膨化しているものと認められる。これらの結果を表1に示す。」
「[0024]
[表1]
[図:0001416490000001.jpg]
」
「請求の範囲
[1] アミロースを除去した澱粉及び/又はもち種澱粉を芯材全量に対して90質量%以上含み、かつ90質量%以上がα化された芯材と、油脂粉末とを含有する吸湿芯材原料を混合する工程(A)、
前記混合した吸湿芯材原料100質量部と、水を含む溶液22~78質量部とを混合し、吸湿芯材を調製する工程(B)、
前記吸湿芯材と、被覆用粉末とを混合し、被覆吸湿芯材を調製する工程(C)、及び
被覆吸湿芯材100質量部と、水を含む溶液12~19質量部とを混合し、長径5~8mmの衣材を含む長径0.01~16mmの粒度分布を有する衣材を調製する工程(D)を含む揚げ物用衣材の製造方法。
[2] 工程(A)において、芯材と油脂粉末の割合が質量比で1:0.20~1.85である請求項1の製造方法。
[3] 工程(A)に用いるアミロースを除去した澱粉及び/又はもち種澱粉が、アミロースを除去した澱粉及び/又はもち種澱粉を、α化し膨化した後に、粗粉砕した粗粉砕物である請求項1又は2の製造方法。
[4] 工程(A)に用いるもち種澱粉が、ワキシーコーンを含む請求項1~3のいずれかの製造方法。
[5] 被覆用粉末中のα化澱粉量が32質量%以下である請求項1~4のいずれかの製造方法。
[6] 工程(C)において、吸湿芯材100質量部に対する被覆用粉末の混合割合が13~244質量部である請求項1~5のいずれかの製造方法。
[7] 工程(D)において、衣材中の長径5~8mmの衣材の含有割合が、30質量%以上である請求項1~6のいずれかの製造方法。
[8] 請求項3の製造方法により得られた、長径5~8mmの衣材を含む長径が0.01~16mmの粒度分布を有する衣材であって、
少なくとも長径5~8mmの衣材が、凍結状態において水に浮くことを特徴とする揚げ物用衣材。
[9] 揚げ物用具材表面に、請求項1~7のいずれかの製造方法により得られた揚げ物用衣材又は請求項8の揚げ物用衣材を備え、凍結されている揚げ物用冷凍食品。
[10] 揚げ物用具材表面にバッターを付着させる工程(1)と、請求項1~7のいずれかの製造方法により得られた揚げ物用衣材又は請求項8の揚げ物用衣材を、工程(1)で付着させたバッター上に付着させる工程(2)と、冷凍する工程(3-1)とを含む揚げ物用冷凍食品の製造方法。
[11] 揚げ物用具材表面にバッターを付着させる工程(1)と、請求項1~7のいずれかの製造方法により得られた揚げ物用衣材又は請求項8の揚げ物用衣材を、工程(1)で付着させたバッター上に付着させる工程(2)と、油ちょう後に冷凍する工程(3-2)とを含む揚げ物冷凍食品の製造方法。」
イ 甲第2号証に記載された発明
上記アの記載、特に実施例1の記載を中心に整理すると、甲第2号証には次の発明が記載されていると認める。
「生ワキシーコーン60部及びもち粉40部に水80部を加えて混合し、厚さ1cm程度のシート状に成形した。これをコンベクションオーブンのスチームで100℃、20分間蒸煮し、木棒で180回餅つきし、団子状に成形した後、両面焼成機を用いて、厚さ5mmになるように圧をかけながら180℃、7分間加熱してα化もち種澱粉シートを調製し、得られたシートを室温で放冷後、8mmの網を通過する程度に粉砕機で破砕し、α化澱粉粗粉砕物を調製し、この澱粉粗粉砕物29部と油脂粉末44部とを混合した後、液体全卵を水で希釈した溶液27部を徐々に加えて、均一になるまでゴムヘラを用いて混合し、そぼろ状の吸湿芯材を調製し、
一方、化工ワキシーコーン澱粉33部、α化ワキシーコーン22部、上新粉米粉11部及び乾燥全卵5部の被覆用粉末を調製し、
次いで、上記吸湿芯材100部と被覆用粉末74部とを混合し、吸湿芯材の表面に十分被覆用粉末が付着するように混合し、続いて、得られた混合物100部に対して、水15部を徐々に加えて得られた、長径0.1~16mmの粒度分布を有する不定形の天ぷら用衣材。」(以下、「甲2発明」という。)
(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の不定形の天ぷら用衣材を調整するのに用いられている「α化澱粉」は、本件特許発明1の「糊化澱粉」に相当する。
してみると、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「糊化澱粉を含む、天ぷら用衣材。」
(相違点)
・相違点2
天ぷら用衣材に関し、本件特許発明1は「1~2mmの厚さおよび3~12mmの長さをもつフレーク状、または3~6mmの粒子径をもつ粒状の形状を有する」と特定するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
上記相違点2について検討する。
甲第2号証には、粒子径範囲として「0.01~16mm」との記載はあるものの、具体的形状に伴う粒子径範囲を示すものではない。
さらに、甲第2号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲第2号証の衣材が「1~2mmの厚さおよび3~12mmの長さをもつフレーク状」、または、「3~6mmの粒子径をもつ粒状」であるのか明らかではないから、相違点2は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲2発明ではない。
また、甲第2号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲2発明において、衣材として、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
そして、本件特許発明1は、その発明特定事項を満たすことにより、「油調後の見た目と食感が従来よりも改善された油調食品が提供され、特に見た目は、手作りの天ぷら(具材にバッター液等を付着させてそのまま揚げたもの)と同じようなものとすることができる」(【0010】)との、格別の効果を奏するものである。
よって、甲2発明において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、この点に関し、特許異議申立人は異議申立書において、甲2発明における衣材の粒子径の数値範囲は、本件特許発明1における構成に係る粒子径の数値範囲と重複するものであるから、この点は相違点とはならない旨主張する(異議申立書p.34)。しかしながら、甲2発明における粒子径範囲は0.1~16mmと本件特許発明1に比して広いものであること、具体的に本件特許発明1の発明特定事項を満たすものの開示がないことから、甲2発明の衣材が相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものということはできない。
また、特許異議申立人は、甲第4号証、甲第5号証を挙げつつ、「フレーク状」の衣材は周知である旨主張する(p.34-35)が、甲第4号証、甲第5号証ともに、いわゆる「フライ用」であって、天ぷら用衣材に関するものではないことから、甲1発明において、「フレーク状」の衣材とする動機付けはないものといわざるを得ない。
よって、特許異議申立人の上記主張はいずれも採用できない。
イ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3も甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1の天ぷら用衣材の製造方法に関する発明であるところ、上記アのとおり、本件特許発明1は甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明4もまた、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明4の発明特定事項の全てを有するものである。
そして、上記ウのとおり、本件特許発明4は甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明5もまた、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件特許発明6及び7について
本件特許発明6及び7は、本件特許発明1の天ぷら用衣材を用いた油調前の天ぷらに関する発明であるところ、上記アのとおり、本件特許発明1は甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明6及び7もまた、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
カ 本件特許発明8及び9について
本件特許発明8及び9は、本件特許発明1の天ぷら用衣材を用いた油調前の天ぷらの製造方法に関する発明であるところ、上記アのとおり、本件特許発明1は甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明8及び9もまた、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3) 申立理由1-2及び2-2についてのまとめ
上記(2)のとおりであるから、申立理由1-2及び2-2の理由では、本件特許発明1及び3ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由1-3び2-3(第3号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
(1) 甲第3号証の記載事項等
ア 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、「穀類粉砕物からなるプレミックス粉」に関し、次の記載がある。
「【請求項1】
穀類粉砕物を主原料とする穀類含有加工食品を製造するためのプレミックス粉であって、糊化物および/または膨化物を含有することを特徴とする穀類粉砕物からなるプレミックス粉。
【請求項2】
糊化物および/または膨化物が4.0mm以下の粗い粒子と0.15mm以下の微細な粒子を含有し、グリッツ感を有することを特徴とする、請求項1に記載の穀類粉砕物からなるプレミックス粉。
【請求項3】
穀類の糊化物および/または膨化物の製造方式としては、エクストルーダー方式、炊飯方式、蒸煮方式から選択されて用いられることを特徴とする、請求項1または2に記載の穀類粉砕物からなるプレミックス粉。
【請求項4】
プレミックス粉としては、鍋用団子,きりたんぽ,製菓,バッター生地等の原材料および/または各加工食品の食味・食感改良材で、グリッツ感を有するあることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載の穀類粉砕物からなるプレミックス粉。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類の糊化物あるは膨化物に粗い粒子径と細かな粒子を含むことで、グリッツ感で口あたりが滑らかな食感を有する新規な穀類加工食品を提供できる穀類粉砕物からなるプレミックス粉に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題として、従来のプレミックス粉は、微粒子化の技術が主体であり、その結果用途が限られる問題があった。糊化および/または膨化した粗い粒子径と微細な粒子径を含むことでグリッツ感あるいは口当たりがよく滑らかな食味・食感等を有する新規な穀類粉砕物からなるプレミックス粉を提供することを目的とした。」
「【課題を解決するための手段】
【0008】
前期の課題を解決する本発明は、穀類中の澱粉質を水の存在下で熱や圧力等の作用で、糊化および/または膨化(損傷澱粉)を行い、得られた物を4.0mm以下に粗く粉砕された粒子と0.15mm以下に微細に粉砕された粒子で、微細な損傷澱粉等を含有することで、加水量が増加するため膨潤が進行し、口あたりがよく滑らかな食感になることを見出し発明の完成に至った。」
「【発明の効果】
【0012】
本発明によると、穀類を糊化および/または膨化して粗い粒子と微細な粒子を含有する穀類粉砕物からなるプレミックス粉は、鍋用団子,きりたんぽ,和菓子,洋菓子,バッター生地,すり身加工品,パン等の原材料や穀類を含む加工食品の食味・食感改良材等に利用が出来る穀類粉砕物からなるプレミックス粉を提供することができる。」
「【0028】
バッター生地としては、天ぷらの衣,フライの衣等のとして用いることができ、所望の用途に応じて粒子径を調整して用いられる。糊化物および/または膨化物を4.0mm以下に粗い粉砕物と0.15mm以下の微細な粉砕物の混合物が好ましい。0.15mm以下の微細な粉砕物を1~30重量部含有することで衣の付着性がよくなる。15mm以下の微細な粉砕物が、1重量部以下の場合、生地の経時変化が起こり分散性もよくなく、また30重量部以上配合すると粘りがでて重い食感になり好ましくない。
【0029】
その他の利用として、すり身加工食品,シュウマイ,餃子,ハンバーグ,パン等の練り込み用,あるいはスナック菓子等の原材料として幅広く利用することができる穀類粉砕物からなるプレミックス粉である。
【0030】
本発明で得られたプレミックス粉は、必要に応じて未糊化の穀類粉末,海藻粉末,きのこ粉末,野菜粉末,調味料,砂糖,油脂類等を配合することができ、風味豊かな味わいのミックス粉を製造することができる。
【0031】
穀類としては、米,小麦,えん麦,トウモロコシ,ライ麦,大麦,そば,あわ,ひえ,大豆等及これらの加工物等を挙げることができ、1種類または2種類以上併用することができる。穀類の形状や大きさは、特に限定されない。米としては、未熟のうるち米、酒米等が、穀類含有加工食品によい特性の原材料である。」
「【0034】
(実施例2)
未熟うるち米7.0Kgを洗米して得た吸水した未熟うるち米7.6Kgとコーンスターチ3.0Kgを混合して、エクストルーダーのホッパーに投入し、水55ml/分を注入しながら、バレル温度100~160度、吐出圧25Kg/cm2条件下で押出し加工を行った。得られた物を熱風乾燥機110度で乾燥し、カッターミルで3.0mm以下に粉砕し、0.25~3.0mmに分級して粉砕物を得た。3.0mm以下の粉砕物の一部を0.15mm以下の微細な粒子径に粉砕を行った。バッター生地用プレミックス粉100gの調整した結果を表1に示した。」
「【0047】
(バッター生地の調整)
実施例2のバッター生地用プレミックス粉は、表1に示したプレミックス粉100gに水235gを加えて衣液を調整した。海老に打粉(100メッシュパス米粉)をまぶした後、先の衣液にくぐらせて、180度の天ぷら油で2分揚げて、海老てんぷらを作った。グリッツ感、食味・食感並びに12時間後のサクサク感を評価し結果を表2に示した。」
「【0058】
【表1】
[図:0001416490000002.jpg]
【0059】
【表2】
[図:0001416490000003.jpg]
」
イ 甲第3号証に記載された発明
上記アの記載、特に実施例2(【0034】、【0047】)を中心に整理すると、甲第3号証には次の発明が記載されていると認める。
「未熟うるち米7.0Kgを洗米して得た吸水した未熟うるち米7.6Kgとコーンスターチ3.0Kgを混合して、エクストルーダーのホッパーに投入し、水55ml/分を注入しながら、バレル温度100~160度、吐出圧25Kg/cm2条件下で押出し加工を行い、
得られた物を熱風乾燥機110度で乾燥し、カッターミルで3.0mm以下に粉砕し、0.25~3.0mmに分級して粉砕物を得、
さらに、3.0mm以下の粉砕物の一部を0.15mm以下の微細な粒子径に粉砕を行い得られた、天ぷら用衣材。」(以下、「甲3発明」という。)
(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
両者の間の一致点・相違点は次のとおりである。
(一致点)
「天ぷら用衣材。」
(相違点)
・相違点3-1
天ぷら用衣材に関し、本件特許発明は「糊化澱粉を含み、」と特定するのに対し、甲3発明にはそのような特定がない点。
・相違点3-2
天ぷら用衣材に関し、本件特許発明1は「1~2mmの厚さおよび3~12mmの長さをもつフレーク状、または3~6mmの粒子径をもつ粒状の形状を有する」と特定するのに対し、甲3発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点3-2について検討する。
甲3発明では、カッターミルで3.0mm以下に粉砕し、0.25~3.0mmに分級して粉砕物を得、さらに、3.0mm以下の粉砕物の一部を0.15mm以下の微細な粒子径に粉砕を行い得ていることから見て、3.0mm以下の、より小さい粒子径のものを含むものであるといえる。
よって、相違点3-2は実質的な相違点であるといえるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明ではない。
また、甲第3号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲3発明において、衣材として、相違点3-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
そして、本件特許発明1は、その発明特定事項を満たすことにより、「油調後の見た目と食感が従来よりも改善された油調食品が提供され、特に見た目は、手作りの天ぷら(具材にバッター液等を付着させてそのまま揚げたもの)と同じようなものとすることができる」(【0010】)との、格別の効果を奏するものである。
よって、甲3発明において、相違点3-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、この点に関し、特許異議申立人は異議申立書において、甲3発明における衣材の粒子径の数値範囲について、請求項1、2の記載も併せて対比し、甲3発明は相違点3-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たす旨の主張をしている(異議申立書p.43)が、当該主張は、実施例2の記載に基づかないものであるから、採用することができない。
また、特許異議申立人は、甲第4号証、甲第5号証を挙げつつ、「フレーク状」の衣材は周知である旨主張する(p.44-45)が、甲第4号証、甲第5号証ともに、いわゆる「フライ用」であって、天ぷら用衣材に関するものではないことから、甲3発明において、「フレーク状」の衣材とする動機付けはないものといわざるを得ない。
よって、特許異議申立人の上記主張はいずれも採用できない。
イ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は甲3発明ではなく、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3も甲3発明ではなく、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1の天ぷら用衣材の製造方法に関する発明であるところ、上記アのとおり、本件特許発明1は甲3発明ではなく、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明4もまた、甲第3号証に記載された発明ではなく、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明4の発明特定事項の全てを有するものである。
そして、上記ウのとおり、本件特許発明4は甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明5もまた、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 申立理由1-3び2-3ついてのまとめ
上記(2)のとおりであるから、申立理由1-3及び2-3の理由では、本件特許発明1及び3ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
第5 結語
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1及び3ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び3ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700413