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特許異議申立

2023-701406

オーブン調理用衣付食品の製造方法

審判番号
2023-701406
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-157879
登録番号
7305486
請求日
2023年12月28日
審決日
2024年03月28日
公報発行日
2024年04月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日清食品ホールディングス株式会社
  • 【異議申立人】丸野 悟史
審判長/審判官
  • 審判長 淺野 美奈
  • 審判官 磯貝 香苗
  • 審判官 植前 充司
分類
P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7305486号発明「オーブン調理用衣付食品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7305486号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7305486号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和1年8月30日を出願日とする特許出願であって、令和5年6月30日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年7月10日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月28日に特許異議申立人 丸野 悟史(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1ないし7)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 中種の表面に乾燥卵白が付着し、 さらに熱処理小麦、油脂及び水を含むバッターとパン粉が付着した、 オーブン調理用衣付き食品。 【請求項2】 中種の一部又は全体にバッターを付着させる前に、中種の表面に乾燥卵白を付着させる工程と、 熱処理小麦、油脂及び水を混合してバッターを調製する工程と、 中種の一部又は全体にバッターを付着させ、次いでパン粉を付着させる工程とを含む、 オーブン調理用衣付食品の製造方法。 【請求項3】 パン粉にカラメルを塗布する工程、及び/又は中種にパン粉を付着させた後にカラメルを塗布する工程を含むことを特徴とする、 請求項2に記載のオーブン調理用衣付食品の製造方法。 【請求項4】 パン粉100重量部に対して、カラメルを0.5~4重量部塗布することを特徴とする、 請求項3記載のオーブン調理用衣付食品の製造方法。 【請求項5】 バッター全量中、熱処理小麦を20~60重量%含有することを特徴とする、 請求項2に記載のオーブン調理用衣付食品の製造方法。 【請求項6】 熱処理小麦が、湿熱処理小麦であることを特徴とする、 請求項5に記載のオーブン調理用衣付食品の製造方法。 【請求項7】 バッター全量中、油脂を10~25重量%含有することを特徴とする、 請求項2に記載のオーブン調理用衣付食品の製造方法。」 第3 特許異議申立理由の概要 特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 1 申立理由(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 3 申立理由3(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由2及び申立理由3の具体的理由は次のとおりである。 本件特許発明1は、「オーブン調理用衣付き食品」であり、本件特許発明2~7は、「オーブン調理用衣付食品の製造方法」である。 ここで、2023年2月21日付(発送日)の拒絶理由通知書における審査官の認定から、単に「オーブン調理用衣付き食品」という記載では、オーブンによる再加熱という調理に供することができる衣付き食品全てが包含され、油調した衣付食品を冷凍したものをオーブンにより解凍するという、いわゆるプレフライタイプのものや、冷めた後の油調した衣付食品(フライ食品)をオーブンにより温め直すものまで包含し得るという解釈が可能となっている。 しかるに、甲第1号証の段落[0002]等に記載されるように、フライ食品とプレフライタイプは油調を行うことが前提の衣付き食品であり、ノンフライタイプとは開発背景や課題が大きく異なるものである。 そして、本件特許明細書の段落[0002]には、「近年、健康意識の高まりなどから、揚げ調理をせずにカロリーを抑えた加工食品が増加しており、特にトンカツやコロッケなどの衣付食品においては、その傾向が顕著である。しかしながら、衣付食品特有のサクサクとした食感や香ばしい風味は揚げ調理によってもたらされる側面が大きく、オーブンで調理した場合には食感や風味が劣るという課題があった」旨が記載されており、さらに、段落[0006]には、「本発明の課題は、オーブン調理のみで、揚げ衣のようなサクサクとした食感や香ばしい風味を有する衣付食品を実現することにある」ことが記載されている。一方、本件特許明細書の段落[0015]には、「本発明に係る衣付食品は、フライ調理と比較して熱効率の悪いオーブンで調理されることを想定しているため、熱処理されていない小麦を用いた場合には粉っぽく、生臭い風味が残りやすい」旨の記載があることから、本件特許明細書において上記課題を解決する対象は、油調を行わない、いわゆるノンフライタイプの衣付き食品であって、油調を行う衣付き食品(フライ食品、プレフライタイプ)に関しては、上記課題を解決し得ないものである。 よって、本件特許発明1の「オーブン調理用衣付き食品」及び本件特許発明2~7の「オーブン調理用衣付食品の製造方法」は、油調を行う衣付き食品(フライ食品、プレフライタイプ)を包含し得る点において、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは言えない。もしくは、本件特許発明1の「オーブン調理用衣付き食品」及び本件特許発明2~7の「オーブン調理用衣付食品の製造方法」という記載は、油調を行う衣付き食品(フライ食品、プレフライタイプ)を包含し得るという解釈が可能であるという点で明確ではない。 4 証拠方法 ・甲第1号証:特開併4-365457号公報 ・甲第2号証:特開昭61-35753号公報 ・甲第3号証:特開2008-67674号公報 ・甲第4号証:特開2011-125325号公報 ・甲第5号証:特開2011-115064号公報 第4 当審の判断 以下の通り、当審は、特許異議申立理由は、その理由がないものと判断する。 1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)について (1) 甲第1号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、「ノンフライ食品用バッターミックスとそれを用いたノンフライ食品の製造法」に関し、次の記載がある。(なお、半角英数字は、全角に改めて表記した部分がある。) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 特定の固体脂含有率(SFC)を有する油脂の粉末を配合したことを特徴とするノンフライ食品用バッターミックス。 【請求項2】 油脂の25℃におけるSFC値が35℃におけるSFC値の3倍以上である請求項1記載のノンフライ食品用バッターミックス。 【請求項3】 油脂が30~100%のカカオ脂あるいはいわゆるカカオ代用脂を含むものである請求項1又は2記載のノンフライ食品用バッターミックス。 【請求項4】 油脂の粉末を30~90重量%含む混合物からなる請求項1,2又は3記載のノンフライ食品用バッターミックス。 【請求項5】 請求項4記載の混合物とは、穀粉5~50重量%、高蛋白質粉末3~30重量%、必要に応じて調味料、香辛料、着色料などを含有しうる請求項4記載のノンフライ食品用バッターミックス。 【請求項6】 請求項5記載の混合物からなるバッターミックスを、冷凍した種物に一度以上被覆することを特徴とするノンフライ食品の製造法。」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ノンフライ食品用バッターミックスに関し、さらに詳しくは特定の油脂の粉末を配合して得られるバッターミックス及びこれを用いたノンフライ食品の製造方法に関し、特に油で揚げる事なく容易にフライ食品が得られる利点を有するものである。」 「【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記の諸問題を解決するためになされたもので油揚げする事なしで油揚げ感をもち、カリッとした状態の揚げ物を得る事の可能なノンフライ冷凍食品を提供する事にある。 【0006】即ち本発明のバッターミックスは、特定の固体脂含有率(SFC)を有する油脂粉末を配合したことを特徴とするものである。また本発明のノンフライ食品の製造法は、上記油脂30~90重量%、穀粉5~50重量%、高蛋白質粉末3~30重量%、必要に応じて調味料等を混合したバッターミックスを冷凍した種物に1度以上被覆することを特徴とするものである。」 「【0012】本発明におけるノンフライ食品用バッターミックスで用いられる穀物澱粉類は、主に衣形成の役割をする。例えば小麦粉、コーンフラワー、ライ麦粉、大麦粉、米粉、加工澱粉、α化米粉、α化澱粉等の1種又は2種以上が用いられる。次に高蛋白質粉末は、衣の保型性、結着性の役割をする。例えば卵白粉末、乳清蛋白粉末などの動物性蛋白粉末及び大豆蛋白粉末、小麦蛋白粉末を始めとする植物性蛋白等の1種又は、2種以上が用いられる。これら必須成分以外に第3成分として必要に応じて調味料、香辛料、着色料、乳化剤、安定剤、増粘剤などを配合してもよい。」 「【0018】 【実施例】以下に本発明の実施例を詳細に説明する。 (実施例1)市販のカカオ代用脂(メラノF-11 不二製油製) 100%(R=4)を粉末化、10meshパスの油脂の粉末を70%、α化澱粉17%、卵白粉末10%、食塩2%、増粘剤 0.5%、カラメル色素 0.3%、調味料 0.2%を混合し得られたバッターミックスを水に溶かしてバッター液を調製した。一方市販されている冷凍フライタイプのクリームコロッケの衣を取り、中種に上記バッター液を付けカラーパン粉(12メッシュ)をまぶし冷凍保存後オーブントースターにより加熱調理(850W 7分間)を行い市販のプレフライタイプと比較した。」 「【0020】(実施例2)表2のように市販の食用油脂、あるいは本発明の範囲外の配合油脂を噴霧冷却により粉末化した。これを用いて実施例1に準じてバッターミックスを調整した。 【0021】 【表2】 [図:0001409194000001.jpg] [図:0001409194000002.jpg] 【0022】次に実施例1と同様クリームコロッケの中種に上記バッター液を付け、カラーパン粉(12メッシュ)をまぶし冷凍保存後オーブントースターにより加熱調理を行い、それぞれ表3に示す特性について比較し、それらの結果を表3に併記した。」 「【0029】(実施例3)市販のカカオ代用脂(パーム核硬化油、不二製油製)と大豆微水添油(34°、植田製油製)を7:3の割合で混合(R=10)して、10meshパスに粉末化した油脂の粉末を40%、α化米粉20%、α化澱粉20%、大豆分離蛋白粉末10%、卵白粉末5%、増粘剤 3.0%、食塩 2.0%を混合し得られたバッターミックスを水に溶かしてバッター液を調製した。次に一口カツの種に上記バッター液(一次バッター)を付けブレッディングを行い、続けて実施例1で使用したバッター液(二次バッター)を付けカラーパン粉(12メッシュ)をまぶし冷凍保存後、オーブントースターにより加熱調理(850W 7分間)を行い評価したところ油で揚げたと全く同様の味のノンフライ食品が得られた。」 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アの記載、特に、実施例1ないし3の記載を中心に整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されていると認める。 「油脂の粉末、α化澱粉、卵白粉末、食塩、増粘剤、カラメル色素、調味料を混合し得られたバッターミックスを水に溶かしバッター液を調整し、種に上記バッター液を付け、カラーパン粉をまぶした、オーブントースターによる加熱調理用冷凍食品。」(以下、「甲1食品発明」という。) 「油脂の粉末、α化澱粉、卵白粉末、食塩、増粘剤、カラメル色素、調味料を混合し得られたバッターミックスを水に溶かしバッター液を調整し、種に上記バッター液を付け、カラーパン粉をまぶした、オーブントースターによる加熱調理用冷凍食品の製造方法。」(以下、「甲1製法発明」という。) (2) 対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1食品発明とを対比する。 甲1食品発明の「種」及び「カラーパン粉」は、それぞれ、本件特許発明1の「中種」及び「パン粉」に相当する。 また、甲1食品発明の「バッター液」は「油脂の粉末」、「水」を含むものであるから、本件特許発明1の「熱処理小麦、油脂及び水を含むバッター」のうち、「油脂及び水を含むバッター」の限りにおいて一致する。 そして、甲1食品発明は、「種に上記バッター液を付け、カラーパン粉をまぶした」ものであるから、本件特許発明1の「バッターとパン粉が付着した」との特定事項を満たす。 さらに、甲1食品発明は、衣を有することは明らかであるから、甲1食品発明の「オーブントースターによる加熱調理用冷凍食品」は、本件特許発明1の「オーブン調理用衣付き食品」に相当する。 以上の点をふまえて、本件特許発明1と甲1食品発明とを対比すると、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。 (一致点) 「中種の表面に 油脂及び水を含むバッターとパン粉が付着した、 オーブン調理用衣付き食品。」 (相違点) ・相違点1 本件特許発明1は「中種の表面に乾燥卵白が付着し、」と特定されるのに対し、甲1食品発明にはそのような特定がない点。 ・相違点2 バッターに関し、本件特許発明1は「熱処理小麦」を含むものであるのに対し、甲1食品発明にはそのような特定がない点。 事案に鑑み、相違点2について検討する。 甲第1号証には、小麦粉を用いうる旨の記載(【0012】)はあるものの、「熱処理小麦」を用いることを示唆する記載はない。 また、甲第1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲1食品発明において「熱処理小麦」をバッターに加えることを示唆する記載はない。 そして、本件特許発明1は、バッターに熱処理小麦を加えること、すなわち、相違点2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことで、「オーブン調理のみで、揚げ衣のようなサクサクとした食感や香ばしい風味を実現する」(【0008】)との、格別の効果を奏するものである。 してみれば、甲1食品発明において、バッター液に熱処理小麦を加え、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。 すると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1食品発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2について 本件特許発明2と甲1製法発明とを対比する。 甲1食品発明の「種」及び「カラーパン粉」は、それぞれ、本件特許発明2の「中種」及び「パン粉」に相当する。 また、甲1製法発明の「バッター液」は「油脂の粉末」、「水」を含むものであるから、本件特許発明2の「熱処理小麦、油脂及び水を混合してバッターを調整する工程」のうち、「油脂及び水を混合してバッターを調整する工程」の限りにおいて一致する。 そして、甲1製法発明は、「種に上記バッター液を付け、カラーパン粉をまぶした」ものであるから、本件特許発明2の「中種の一部又は全体にバッターを付着させ、次いでパン粉を付着させる工程」との特定事項を満たす。 さらに、甲1製法発明の「オーブントースターによる加熱調理用冷凍食品」は、衣を有することは明らかであるから、甲1製法発明の「オーブントースターによる加熱調理用冷凍食品の製造方法」は、本件特許発明2の「オーブン調理用衣付食品の製造方法」に相当する。 以上の点をふまえて、本件特許発明2と甲1製法発明とを対比すると、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。 (一致点) 「油脂及び水を混合してバッターを調製する工程と、 中種の一部又は全体にバッターを付着させ、次いでパン粉を付着させる工程とを含む、 オーブン調理用衣付食品の製造方法。」 (相違点) ・相違点3 本件特許発明2は「中種の一部又は全体にバッターを付着させる前に、中種の表面に乾燥卵白を付着させる工程」を有することを特定するのに対し、甲1製法発明にはそのような特定がない点。 ・相違点4 バッターに関し、本件特許発明2「熱処理小麦」を含むものであるのに対し、甲1製法発明にはそのような特定がない点。 事案に鑑み相違点4について検討する。 相違点4は、上記相違点2と同旨であり、上記アと同様に判断される。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1製法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明3ないし7について 本件特許発明3ないし7は、本件特許発明2の全ての発明特定事項を有するものである。 そして、上記イのとおり、本件特許発明2は、甲1製法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明3ないし7もまた、甲1製法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 申立理由1についてのまとめ 2 申立理由2(サポート要件)について (1) サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2) 特許請求の範囲の記載 上記第2のとおりである。 (3) サポート要件についての判断 本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「オーブン調理のみで、揚げ衣のようなサクサクとした食感や香ばしい風味を有する衣付食品を実現すること」(【0006】)である。 そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「中種を調整する工程と、熱処理小麦、油脂及び水を混合してバッターを調整する工程と、中種の一部又は全体にバッターを付着させ、次いでパン粉を付着させる工程とを含む、オーブン調理用衣付食品の製造方法により、オーブン調理のみで、揚げ衣のようなサクサクとした食感や香ばしい風味を実現することができる」(【0007】)こと、「本発明における中種は、一般的に揚げ衣付食品に使用される中種であれば特に限定されず、例えば、豚肉、牛肉、鶏肉等の畜肉、魚肉、エビ等の魚介類、穀物、ジャガイモ、カボチャ、サツマイモ、ニンジン、カレー、ホワイトソース、チーズ、その他調味料などを適宜組み合わせて用いることができる。また、その形態についても特に限定はなく、ブロック状でも練り肉でもよい。具体的な中種の例としては、トンカツの中種、チキンカツの中種、メンチカツの中種、コロッケの中種、エビフライの中種などが挙げられる」(【0010】)こと、「熱処理小麦、油脂及び水を混合してバッターを調整する」(【0012】)こと、「本発明における熱処理小麦とは、予め熱処理された小麦であり、具体的には後述する焙焼小麦及び/又は湿熱処理小麦を指す。小麦を熱処理することで、火の通っていない小麦の粉っぽく、生臭い風味を減少させて、香ばしい風味を強化できる」(【0014】)こと、「本発明では、衣(特にバッターに由来する部位)に油で揚げたような風味(以下「油脂感」)を付与するために、バッターに油脂を混合する必要がある。バッターに油脂を混合しておくことで、オーブン調理時にバッターがフライ調理されているのと同じような状態となり、衣に油脂感を付与することができる」(【0021】)こと、がそれぞれ記載されており、具体的な実施例による効果検証の記載もある。 これらの記載に接した当業者であれば、中種に、熱処理小麦、油脂及び水を含むバッターとパン粉を付着したオーブン調理用衣付き食品との特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると認識できる。 また、中種を準備し、熱処理小麦、油脂及び水を混合してバッターを調整する工程と、中種の一部又は全体にバッターを付着させ、次いでパン粉を付着させる工程を有するオーブン調理用衣付食品の製造方法との特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると当業者は認識できる。 そして、本件特許発明1及び本件特許発明2ないし7はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識特定事項を全て有し、さらに限定するものであるから、当然に発明の課題を解決できるものと当業者はできる。 (4) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、本件特許発明1の「オーブン調理用衣付き食品」及び本件特許発明2~7の「オーブン調理用衣付食品の製造方法」は、油調を行う衣付き食品(フライ食品、プレフライタイプ)を包含し得る点において、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは言えない旨主張する。 しかしながら、本件特許の明細書の【0001】ないし【0004】の記載や、【0015】における「本発明に係る衣付食品は、フライ調理と比較して熱効率の悪いオーブンで調理されることを想定しているため」との記載、さらには、実施例の記載等を見るに、揚げ調理(フライ調理)をすることなく、オーブン調理のみとすることを前提としていることは当業者にとって明らかである。 よって、本件特許発明1の「オーブン調理用衣付き食品」及び本件特許発明2~7の「オーブン調理用衣付食品の製造方法」は、油調を行う衣付き食品(フライ食品、プレフライタイプ)を包含し得るものであることを前提とする、特許異議申立人の上記主張は失当であり、採用することができない。 (5) 申立理由2についてのまとめ 上記(3)及び(4)のとおりであるから、申立理由2の理由では、本件特許発明1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由3(明確性要件)について (1) 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2) 特許請求の範囲の記載 上記第2のとおりである。 (3) 明確性要件についての判断 本件特許発明1は、「中種の表面に乾燥卵白が付着し、」「さらに熱処理小麦、油脂及び水を含むバッターとパン粉が付着した、」「オーブン調理用衣付き食品。」であり、その記載は明確である。 また、本件特許発明2は、「中種の一部又は全体にバッターを付着させる前に、中種の表面に乾燥卵白を付着させる工程」と、「熱処理小麦、油脂及び水を混合してバッターを調製する工程」と、「中種の一部又は全体にバッターを付着させ、次いでパン粉を付着させる工程」とを含む、 「オーブン調理用衣付食品の製造方法。」であり、その記載は明確である。 さらに、本件特許発明3ないし7についても、その記載は明確である。 (4) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、本件特許発明1の「オーブン調理用衣付き食品」及び本件特許発明2ないし7の「オーブン調理用衣付食品の製造方法」という記載は、油調を行う衣付き食品(フライ食品、プレフライタイプ)を包含し得るという解釈が可能であるという点で明確ではない旨主張する。 しかしながら、本件特許の明細書の【0001】ないし【0004】の記載や、【0015】における「本発明に係る衣付食品は、フライ調理と比較して熱効率の悪いオーブンで調理されることを想定しているため」との記載、さらには、実施例の記載等を見るに、揚げ調理(フライ調理)をすることなく、オーブン調理のみとすることを前提としていることは当業者にとって明らかである。 してみると、「オーブン調理用衣付き食品」や「オーブン調理用衣付食品の製造方法」との記載そのものに、仮に特許異議申立人が主張するような解釈の余地があるとしても、本件特許の明細書の記載を考慮すれば、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (5) 申立理由3についてのまとめ 上記(3)及び(4)のとおりであるから、申立理由3の理由では、本件特許発明1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 第5 結語 以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701406

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