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特許異議申立

2022-701179

複合電解質膜

審判番号
2022-701179
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-517116
登録番号
7078041
請求日
2022年11月29日
審決日
2024年07月01日
公報発行日
2024年10月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】東レ株式会社
  • 【異議申立人】丸野 悟史
審判長/審判官
  • 審判長 粟野 正明
  • 審判官 相澤 啓祐
  • 審判官 土屋 知久
分類
P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7078041号発明「複合電解質膜」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7078041号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。 特許第7078041号の請求項1~19に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7078041号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、2019年(平成31年) 3月25日(優先権主張:平成30年 3月29日)を国際出願日とする出願(特願2019-517116号。以下、「本願」という。)であって、令和 4年 5月23日にその特許権の設定登録がされ、同年 5月31日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その請求項1~15(全請求項)に係る特許に対し、同年11月29日差出で特許異議申立人である丸野 悟史(以下、「申立人」という。)によって特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 4年11月29日差出 特許異議申立書 令和 5年 3月31日付け 取消理由通知書 同年 5月31日差出 特許権者による意見書及び訂正請求書 同年 7月21日差出 申立人による意見書 同年 9月29日付け 取消理由通知書(決定の予告) 同年12月 1日差出 特許権者による意見書及び訂正請求書 令和 6年 1月10日差出 特許権者による手続補正書 同年 4月 2日差出 申立人による意見書 第2 本件訂正請求について 1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容 令和 5年12月 1日に提出され、令和 6年 1月10日提出の手続補正書により補正された訂正請求書によって特許権者が行った訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求めるものであり、本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正した箇所を表す。)。 なお、令和 5年 5月31日提出の訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、以下の(1)および(2)を満たすメッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有する複合電解質膜。」 と記載されているのを、 「繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、以下の(1)および(2)を満たすメッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有し、前記メッシュ織物の紗厚が50μm以下であり、膜厚が50μm以上80μm以下であり、電気化学式水素ポンプまたは水電解装置に用いられる、複合電解質膜。」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5~9、11~15も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に 「前記液晶ポリエステル繊維が液晶ポリエステル単成分からなる、請求項1に記載の複合電解質膜。」 と記載されているのを、独立形式に改め、 「繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、前記液晶ポリエステル繊維が液晶ポリエステル単成分からなり、以下の(1)および(2)を満たすメッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有する複合電解質膜。 (1)紗厚(μm)/繊維直径(μm)<2.0 (2)オープニング(μm)/繊維直径(μm)>1.0」 に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項5~9、11も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に 「前記液晶ポリエステル繊維が全芳香族ポリエステルからなる、請求項1または2に記載の複合電解質膜。」 とあるうち、請求項2を引用するものを削除し、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、 「繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、前記液晶ポリエステル繊維が全芳香族ポリエステルからなり、以下の(1)および(2)を満たすメッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有する複合電解質膜。 (1)紗厚(μm)/繊維直径(μm)<2.0 (2)オープニング(μm)/繊維直径(μm)>1.0」 に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4~9、11も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9に 「前記メッシュ織物の紗厚が50μm以下である」 と記載されているのを、 「前記メッシュ織物の紗厚が40μm以下である」 に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項11~15も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に 「前記メッシュ織物の融解熱量ΔHm1が6.0J/g以下である、請求項1~9のいずれかに記載の複合電解質膜。」 とあるうち、請求項2~9を引用するものを削除し、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、 「繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、以下の(1)および(2)を満たすメッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有し、前記メッシュ織物の融解熱量ΔHm1が6.0J/g以下である、複合電解質膜。 (1)紗厚(μm)/繊維直径(μm)<2.0 (2)オープニング(μm)/繊維直径(μm)>1.0」 に訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。 (6)訂正事項6 (訂正事項6-1) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12に 「請求項1~11のいずれかに記載の複合電解質膜の両側に触媒層を有する触媒層付電解質膜。」 とあるうち、請求項1、5~9、11を引用するものについて 「請求項1、5~9、11のいずれかに記載の複合電解質膜の両側に触媒層を有する触媒層付電解質膜。」に訂正する。 (訂正事項6-2) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12に 「請求項1~11のいずれかに記載の複合電解質膜の両側に触媒層を有する触媒層付電解質膜。」 とあるうち、請求項2~4、10を引用するものについて 「請求項2~4、10のいずれかに記載の複合電解質膜の両側に触媒層を有する触媒層付電解質膜。」 と記載し、新たに請求項16とする。 (7)訂正事項7 (訂正事項7-1) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項13に 「請求項1~11のいずれかに記載の複合電解質膜を含む膜電極複合体。」 とあるうち、請求項1、5~9、11を引用するものについて 「請求項1、5~9、11のいずれかに記載の複合電解質膜を含む膜電極複合体。」 に訂正する。 (訂正事項7-2) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項13に 「請求項1~11のいずれかに記載の複合電解質膜を含む膜電極複合体。」 とあるうち、請求項2~4、10を引用するものについて 「請求項2~4、10のいずれかに記載の複合電解質膜を含む膜電極複合体。」 と記載し、新たに請求項17とする。 (8)訂正事項8 (訂正事項8-1) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項14に 「請求項1~11のいずれかに記載の複合電解質膜を用いてなる電気化学式水素ポンプ。」 とあるうち、請求項1、5~9、11を引用するものについて 「請求項1、5~9、11のいずれかに記載の複合電解質膜を用いてなる電気化学式水素ポンプ。」 に訂正する。 (訂正事項8-2) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項14に 「請求項1~11のいずれかに記載の複合電解質膜を用いてなる電気化学式水素ポンプ。」 とあるうち、請求項2~4、10を引用するものについて 「請求項2~4、10のいずれかに記載の複合電解質膜を用いてなる電気化学式水素ポンプ。」 と記載し、新たに請求項18とする。 (9)訂正事項9 (訂正事項9-1) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項15に 「請求項1~11のいずれかに記載の複合電解質膜を用いてなる水電解装置。」 とあるうち、請求項1、5~9、11を引用するものについて 「請求項1、5~9、11のいずれかに記載の複合電解質膜を用いてなる水電解装置。」 に訂正する。 (訂正事項9-2) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項15に 「請求項1~11のいずれかに記載の複合電解質膜を用いてなる水電解装置。」 とあるうち、請求項2~4、10を引用するものについて 「請求項2~4、10のいずれかに記載の複合電解質膜を用いてなる水電解装置。」 と記載し、新たに請求項19とする。 2 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の請求項1に「前記メッシュ織物の紗厚が50μm以下であり、膜厚が50μm以上80μm以下であり、電気化学式水素ポンプまたは水電解装置に用いられる」との特定事項を直列的に付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項1に係る訂正は、上述のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。 さらに、訂正事項1のうち、「前記メッシュ織物の紗厚が50μm以下であ」ることは本件訂正前の請求項9に記載されており、複合電解質膜の「膜厚が50μm以上80μm以下であ」ることは本願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0186】(表7)に記載の実施例1~10の膜厚に基づいており、複合電解質膜が「電気化学式水素ポンプまたは水電解装置に用いられる」ことは本件明細書の【0013】の「本発明の複合電解質膜は、耐薬品性に優れ、電気化学式水素ポンプや水電解装置の運転条件である高湿度、高圧条件下でも十分な機械強度を保持し得る」との記載に基づいているから、訂正事項1に係る訂正は、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、訂正事項2に係る訂正は、上述のとおり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえないし、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3に係る訂正は、本件訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、訂正事項3に係る訂正は、上述の目的からみて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることも明らかである。 (4)訂正事項4について 訂正事項4に係る訂正は、本件訂正前の請求項9に「前記メッシュ織物の紗厚が50μm以下である」と記載されているのを、「前記メッシュ織物の紗厚が40μm以下である」に訂正するものであり、メッシュ織物の紗厚の数値範囲を更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項4に係る訂正は、上述のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。 さらに、「前記メッシュ織物の紗厚が40μm以下である」ことは、本件明細書の【0051】の「本発明において、メッシュ織物の紗厚が50μm以下であることが好ましい。・・・この観点から紗厚は小さいほど好ましく、50μm未満がより好ましく、45μm以下がさらに好ましく、40μm以下が最も好ましい。」との記載に基づいているから、訂正事項4に係る訂正は、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである(なお、「・・・」は省略を意味する。以下同様。)。 (5)訂正事項5について 訂正事項5に係る訂正は、本件訂正前の請求項10が請求項1~9の記載を引用する記載であるところ、請求項2~9を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、訂正事項5に係る訂正は、上述の目的からみて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることも明らかである。 (6)訂正事項6について 訂正事項6に係る訂正は、本件訂正前の請求項12が請求項1~11の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2、3、5に係る訂正によって請求項2~4、10が請求項1を引用するものでなくなったことに伴い、本件訂正前の請求項12の「請求項1~11のいずれかに記載の・・・」との記載を、本件訂正後の請求項12の「請求項1、5~9、11のいずれかに記載の・・・」(訂正事項6-1)と本件訂正後の請求項16の「請求項2~4、10のいずれかに記載の・・・」(訂正事項6-2)の2つの請求項に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項6に係る訂正は、上述のとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることも明らかである。 (7)訂正事項7について 訂正事項7に係る訂正は、本件訂正前の請求項13が請求項1~11の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2、3、5に係る訂正によって請求項2~4、10が請求項1を引用するものでなくなったことに伴い、本件訂正前の請求項13の「請求項1~11のいずれかに記載の・・・」との記載を、本件訂正後の請求項13の「請求項1、5~9、11のいずれかに記載の・・・」(訂正事項7-1)と本件訂正後の請求項17の「請求項2~4、10のいずれかに記載の・・・」(訂正事項7-2)の2つの請求項に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項7に係る訂正は、上述のとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることも明らかである。 (8)訂正事項8について 訂正事項8に係る訂正は、本件訂正前の請求項14が請求項1~11の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2、3、5に係る訂正によって請求項2~4、10が請求項1を引用するものでなくなったことに伴い、本件訂正前の請求項14の「請求項1~11のいずれかに記載の・・・」との記載を、本件訂正後の請求項14の「請求項1、5~9、11のいずれかに記載の・・・」(訂正事項8-1)と本件訂正後の請求項18の「請求項2~4、10のいずれかに記載の・・・」(訂正事項8-2)の2つの請求項に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項8に係る訂正は、上述のとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることも明らかである。 (9)訂正事項9について 訂正事項9に係る訂正は、本件訂正前の請求項15が請求項1~11の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2、3、5に係る訂正によって請求項2~4、10が請求項1を引用するものでなくなったことに伴い、本件訂正前の請求項15の「請求項1~11のいずれかに記載の・・・」との記載を、本件訂正後の請求項15の「請求項1、5~9、11のいずれかに記載の・・・」(訂正事項9-1)と本件訂正後の請求項19の「請求項2~4、10のいずれかに記載の・・・」(訂正事項9-2)の2つの請求項に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項9に係る訂正は、上述のとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることも明らかである。 (10)一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~15について、本件訂正前の請求項2~15はそれぞれ本件訂正前の請求項1を引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~15は一群の請求項である。 そして、本件訂正請求は、上記一群の請求項ごとに訂正の請求をするものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。 また、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めはないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1~19〕を訂正単位とする訂正を請求するものである。 (11)独立特許要件について 本件は、本件訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~9について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 本件訂正請求についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2の3のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~19に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項1~19に記載された発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明19」といい、これらを総称して「本件発明」という。)。 「【請求項1】 繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、以下の(1)および(2)を満たすメッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有し、前記メッシュ織物の紗厚が50μm以下であり、膜厚が50μm以上80μm以下であり、電気化学式水素ポンプまたは水電解装置に用いられる、複合電解質膜。 (1)紗厚(μm)/繊維直径(μm)<2.0 (2)オープニング(μm)/繊維直径(μm)>1.0 【請求項2】 繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、前記液晶ポリエステル繊維が液晶ポリエステル単成分からなり、以下の(1)および(2)を満たすメッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有する複合電解質膜。 (1)紗厚(μm)/繊維直径(μm)<2.0 (2)オープニング(μm)/繊維直径(μm)>1.0 【請求項3】 繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、前記液晶ポリエステル繊維が全芳香族ポリエステルからなり、以下の(1)および(2)を満たすメッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有する複合電解質膜。 (1)紗厚(μm)/繊維直径(μm)<2.0 (2)オープニング(μm)/繊維直径(μm)>1.0 【請求項4】 前記全芳香族ポリエステルが、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)からなる液晶ポリエステルである、請求項3に記載の複合電解質膜。 [図:0001415251000001.jpg] 【請求項5】 前記メッシュ織物を構成する繊維の繊維直径が10μm以上40μm以下である、請求項1~4のいずれかに記載の複合電解質膜。 【請求項6】 前記メッシュ織物のオープニングが30μm以上である、請求項1~5のいずれかに記載の複合電解質膜。 【請求項7】 メッシュ織物のオープニングエリアが30%以上である、請求項1~6のいずれかに記載の複合電解質膜。 【請求項8】 前記メッシュ織物の透過体積が10cc/m2以上である、請求項1~7のいずれかに記載の複合電解質膜。 【請求項9】 前記メッシュ織物の紗厚が40μm以下である、請求項1~8のいずれかに記載の複合電解質膜。 【請求項10】 繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、以下の(1)および(2)を満たすメッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有し、前記メッシュ織物の融解熱量ΔHm1が6.0J/g以下である、複合電解質膜。 (1)紗厚(μm)/繊維直径(μm)<2.0 (2)オープニング(μm)/繊維直径(μm)>1.0 【請求項11】 前記高分子電解質が炭化水素系高分子電解質である、請求項1~10のいずれかに記載に記載の複合電解質膜。 【請求項12】 請求項1、5~9、11のいずれかに記載の複合電解質膜の両側に触媒層を有する触媒層付電解質膜。 【請求項13】 請求項1、5~9、11のいずれかに記載の複合電解質膜を含む膜電極複合体。 【請求項14】 請求項1、5~9、11のいずれかに記載の複合電解質膜を用いてなる電気化学式水素ポンプ。 【請求項15】 請求項1、5~9、11のいずれかに記載の複合電解質膜を用いてなる水電解装置。 【請求項16】 請求項2~4、10のいずれかに記載の複合電解質膜の両側に触媒層を有する触媒層付電解質膜。 【請求項17】 請求項2~4、10のいずれかに記載の複合電解質膜を含む膜電極複合体。 【請求項18】 請求項2~4、10のいずれかに記載の複合電解質膜を用いてなる電気化学式水素ポンプ。 【請求項19】 請求項2~4、10のいずれかに記載の複合電解質膜を用いてなる水電解装置。」 第4 特許異議申立理由 申立人は、証拠方法として、いずれも本願の優先日前に日本国内において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、次の甲第1~6号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲6」という。)を提出し、以下の申立理由1、2により、本件訂正前の請求項1~15に係る本件特許は取り消されるべきものである旨主張している。 (証拠方法) 甲第1号証:特開2006-253124号公報 甲第2号証:中川潤洋、「ポリアリレート繊維と溶融液晶紡糸」、繊維機械学会誌、2003年、Vol.56、No.5、p.210~216 甲第3号証:特開2005-5024号公報 甲第4号証:特開2006-190627号公報 甲第5号証:特開2008-240229号公報 甲第6号証:特開2016-216826号公報 1 申立理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1、3、5~13、15に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、本件訂正前の請求項2~13、15に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、本件訂正前の請求項14に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3~6に記載された事項に基いて、それぞれその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第5 取消理由の概要 当審は、上記第4の各申立理由のうち、申立理由1、2のそれぞれ一部を採用し、令和 5年 3月31日付けで以下の取消理由1、2を通知した。なお、取消理由の番号は、本異議決定において便宜上付したものであり、以下同様である。 1 取消理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1、5~9、11に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 取消理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項1、5~9、11~13に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、本件訂正前の請求項14、15に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲6に記載された事項に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第6 取消理由(決定の予告)の概要 当審は、令和 5年 5月31日提出の訂正請求書によって特許権者が行った訂正請求に係る訂正によっては、当該訂正後の請求項1、5~9、11~15に係る発明について、上記第5の2で示した取消理由2は解消されないと判断したため、令和 5年 9月29日付けで以下の取消理由3を通知した。 1 取消理由3(進歩性) 令和 5年 5月31日提出の訂正請求書によって特許権者が行った訂正請求に係る訂正後の請求項1、5~9、11~15に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 ここで、上記周知技術は、甲6及び申立人による令和 5年 7月21日提出の意見書に添付された参考資料1(竹中啓恭、「イオン交換膜をSPEとして用いる電気化学プロセス」、日本海水学会誌、1991年、第45巻、第1号、第3~8頁)に記載されている、「高分子電解質膜を「電気化学式水素ポンプ」、「水電解装置」に適用すること」である。 第7 当審の判断 以下に述べるとおり、取消理由通知書に記載した取消理由1~3及び特許異議申立書に記載された申立理由1、2によっては、本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。 1 甲1の記載及び甲1に記載された発明 (1)甲1の記載 甲1には、「電解質膜用支持体、それを用いた高分子電解質複合膜の処理方法、およびその処理が施された高分子電解質複合膜、ならびにそれを用いた燃料電池。」(発明の名称)に関して、次の記載がある(なお、下線は当審が付したものである。以下同様。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、形態安定性にも優れ、プロトン伝導性および燃料遮断性にも優れた高分子電解質複合膜を提供するための電解質膜用支持体、それを用いた高分子電解質複合膜の処理方法、およびその処理が施された高分子電解質複合膜、ならびにそれを用いた燃料電池に関するものである。」 イ 「【0004】 燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソード間のイオン伝導体となる電解質膜とが、膜―電極複合体(MEA)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。ここで、電極は、ガス拡散の促進と集(給)電を行う電極基材(ガス拡散電極あるいは集電体とも云う)と、実際に電気化学的反応場となる電極触媒層とから構成されている。たとえば固体高分子型燃料電池のアノード電極では、水素ガスなどの燃料がアノード電極の触媒層で反応してプロトンと電子を生じ、電子は電極基材に伝導し、プロトンは高分子固体電解質へと伝導する。このため、アノード電極には、ガスの拡散性、電子伝導性、イオン伝導性が良好なことが要求される。一方、カソード電極では、酸素や空気などの酸化ガスがカソード電極の触媒層で、高分子固体電解質から伝導してきたプロトンと、電極基材から伝導してきた電子とが反応して水を生成する。このため、カソード電極においては、ガス拡散性、電子伝導性、イオン伝導性とともに、生成した水を効率よく排出することも必要となる。」 「【0006】 これまで、固体高分子型燃料電池の電解質膜においては、例えばパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーであるナフィオン(Nafion、デュポン社の登録商標)が用いられてきた。しかし、前記電解質膜は、イオン交換容量が高くなるほど機械強度が低下しやすく、膜厚が薄くなりすぎると機械強度が低下するという問題があった。また、燃料クロスオーバー抑制効果も十分でないという課題があった。」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0010】 本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、形態安定性にも優れ、プロトン伝導性および燃料遮断性にも優れた高分子電解質複合膜を提供するための電解質膜用支持体、それを用いた高分子電解質複合膜の処理方法、およびその処理が施された高分子電解質複合膜、ならびにそれを用いてなる効率の高い燃料電池を提供せんとするものである。」 エ 「【0023】 本発明の高分子電解質複合膜を構成する高分子電解質材料としては、イオン性基を有することが必要である。イオン性基を有することで、高分子電解質材料が高プロトン伝導性を有するようになる。ここで、かかるイオン性基としては、負電荷を有する原子団が好ましく、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、スルホン酸基( -SO2 (OH) )、硫酸基( -OSO2 (OH) )、スルホンイミド基( -SO2 NHSO2 R(Rは有機基を表す。) )、ホスホン酸基( -PO(OH)2 )、リン酸基( -OPO(OH)2 )、カルボン酸基( -CO(OH) )、およびこれらの塩等を好ましく採用することができる。これらのイオン性基は、前記高分子電解質材を構成する重合体中に2種類以上含むことができ、組み合わせることにより好ましくなる場合がある。組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基のいずれかを有することがより好ましく、耐加水分解性の点から、少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。」 「【0026】 本発明において、高分子電解質材料として用いられるポリマーの種類としては例えば、イオン性基を有し、耐加水分解性に優れるポリマーが好ましい。その具体例としては、イオン性基含有ポリフェニレンオキシド、イオン性基含有ポリエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルスルホン、イオン性基含有ポリエーテルエーテルスルホン、イオン性基含有ポリエーテルホスフィンオキシド、イオン性基含有ポリエーテルエーテルホスフィンオキシド、イオン性基含有ポリフェニレンスルフィド、イオン性基含有ポリアミド、イオン性基含有ポリイミド、イオン性基含有ポリエーテルイミド、イオン性基含有ポリイミダゾール、イオン性基含有ポリオキサゾール、イオン性基含有ポリフェニレンなどの、イオン性基を有する芳香族炭化水素系ポリマーが挙げられる。ここで、イオン性基については前述のとおりである。」 「【0028】 重合体へのスルホン酸基の導入は例えば、重合体をクロロスルホン酸と反応させる方法により行うことができる。この方法により重合体をスルホン化する場合には、スルホン化の度合いはクロロスルホン酸の使用量と反応温度および反応時間により、容易に制御することができる。」 オ 「【0031】 以下、電解質膜用の支持体と高分子電解質材料を複合化する方法を述べる。高分子電解質材料に含まれるイオン性基は加水分解などの化学反応によりイオン性基となりうる官能基に置換するのが好ましい。例えば、イオン性基がスルホン酸基である場合、スルホン酸基の誘導体である-SO3 M型(Mは金属)に置換するのが好ましい。前記の金属Mはスルホン酸と塩を形成しうるものであればよいが、価格および環境負荷の点からはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Wなどが好ましく、これらの中でもLi、Na、K、Ca、Sr、Baがより好ましく、Li、Na、Kがさらに好ましい。 【0032】 -SO3 M型のポリマーを溶液状態より製膜する方法としては例えば、粉砕した-SO3 H型のポリマーをMの塩またはMの水酸化物の水溶液に浸漬し、水で充分洗浄した後、乾燥し、次に非プロトン性極性溶媒等に溶解して溶液を調製し、該溶液を用いてガラス板あるいはフィルムあるいは金属板などの基材上に、適当なコーティング法で塗布し、溶媒を除去し、酸処理する方法や、前記基材上での圧縮成型法で膜状に成型し、前記同様に溶媒除去、酸処理する方法を例示することができる。コーティング法としては、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、カーテンコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷などの手法が適用でき、圧縮成型法としてはロールプレス法が適用できる。 【0033】 電解質膜用の支持体に高分子電解質材料を充填する方法は特に限定されるものではない。例えば、前記イオン性基の誘導体を有するポリマーを溶液として、電解質膜用の支持体への塗工あるいは浸漬あるいはプレスすることにより空隙内への充填が可能となる。空隙内への充填を容易にするために超音波を使用したり、減圧にするのも好ましく、これらを塗工あるいは浸漬時に併用するとさらに充填効率が向上し好ましい。製膜に用いる溶媒としては、高分子化合物を溶解し、その後に除去し得るものであればよく、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。溶媒の除去方法には加熱乾燥が挙げられる。」 カ 「【0056】 本発明の電解質膜は、種々の用途に適用可能である。例えば、イオン交換膜として水浄化装置、燃料電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置等の各種電気化学装置が挙げられるが、中でも燃料電池がもっとも好ましい。燃料電池のなかでも固体高分子型燃料電池に好適であり、さらに炭素数1?3のアルコール、ジメチルエーテルおよびこれらの水溶液を燃料とする直接型燃料電池にはより好適であり、メタノールを燃料とする直接メタノール型燃料電池に最も好適である。」 キ 「【0061】 実施例1 (1) スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの合成 ポリエーテルエーテルケトンとしてビクトレックス社製450PFを用い、Polymer, 28, 1009 (1987).に記載の方法でスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを合成した。得られたスルホン化物は、スルホン酸基密度2.5mmol/g、重量平均分子量18万であった。該スルホン化ポリエーテルエーテルケトンをN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、15重量%溶液とした。 (2) 高分子電解質複合膜の作製 電解質膜用の支持体として、NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)を用いた。該支持体の熱分解温度は400℃、開孔率は49%、開孔径は55μm、溶液保持量は25g/m2であった。該支持体に前記(1)のスルホン化ポリエーテルエーテルケトンDMAc溶液に含浸した。溶液を含浸した支持体をガラス基板上に置き減圧して支持体の空隙を溶液で充填させ塗布し100℃にて4時間加熱乾燥して高分子電解質複合膜を作製した。膜厚は290μmであった。 (3)高分子電解質複合膜の性能評価 前記(2)で得られた膜を前記測定方法(1)、前記測定方法(2)および前記測定方法(3)の方法でプロトン伝導度とメタノール透過量と膨潤率を評価した。この膜のプロトン伝導度は4.5S/cm2、メタノール透過量は98μmol/cm2・min、膨潤率は1.9であった。」 ク 「【0064】 実施例3 スルホン化ポリエーテルエーテルケトンDMAc溶液の代わりにNafion溶液を用いる他は実施例1と同様にして高分子電解質複合膜を作製した。この膜の性能を評価したところ、膜厚は300μm、プロトン伝導度は4.6S/cm2、メタノール透過量は50μmol/cm2・min、膨潤率は1.8であった。」 ケ 「【0065】 実施例4 (1) スルホン化ポリフェニレンオキシドの合成 ポリフェニレンオキシドとして三菱ガス化学社製YPX-100Lを用い、J. Appl. Polym. Sci., 29, 4017 (1984).に記載の方法でスルホン化ポリフェニレンオキシドを合成した。得られたスルホン化物は、スルホン酸基密度3.0mmol/g、重量平均分子量18万であった。該スルホン化ポリエーテルエーテルケトンをN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、20重量%溶液とした。 (2) 高分子電解質複合膜の作製 電解質膜用の支持体として、NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)を用い、前記(1)のスルホン化ポリフェニレンオキシドDMAc溶液に含浸した。溶液を含浸した支持体をガラス基板上に置き減圧して支持体の空隙を溶液で充填させ塗布し100℃にて4時間加熱乾燥して高分子電解質複合膜を作製した。膜厚は220μmであった。 (3)高分子電解質複合膜の性能評価 前記(2)で得られた膜を実施例1と同様に評価したところ、この膜のプロトン伝導度は4.4S/cm2、メタノール透過量は40μmol/cm2・min、膨潤率は1.6であった。」 コ 「【0068】 実施例6 (1) フルオレニルポリ(エーテルケトン)コポリマー(FL50PEEK)の合成 【0069】 【化1】 [図:0001415251000002.jpg] 【0070】 炭酸カリウム35g、ヒドロキノン11g、4,4'-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール35g、および4,4'-ジフルオロベンゾフェノン44gを用いて、N-メチルピロリドン(NMP)中、160℃で重合を行った。 【0071】 重合後、水洗し、多量のメタノールで再沈することで精製を行い、FL50PEEKを定量的に得た。その重量平均分子量は11万であった。 (2) FL50PEEKのスルホン化 室温、N2雰囲気下で、上記で得られた重合体(FL50PEEK)10gをクロロホルムに溶解させた後、激しく撹拌しながらクロロスルホン酸14mLをゆっくり滴下し、5分反応させた。白色沈殿を濾別し、粉砕し、水で十分洗浄した後、乾燥し、目的のスルホン化FL50PEEKを得た。 【0072】 得られたスルホン化FL50PEEKは、スルホン酸基密度2.3mmol/gであった。 (3) 高分子電解質複合膜の作製 上記のスルホン化ポリマーを、飽和食塩水浸漬によりNa置換後、N,N-ジメチルアセトアミドを溶媒とする溶液とした。電解質膜用の支持体として、NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)を用い、当該溶液に含浸させた後、ガラス基板上に塗布し、100℃にて4時間乾燥して溶媒を除去した。さらに、窒素ガス雰囲気下、100?300℃まで1時間かけて昇温し、300℃で10分間加熱する条件で熱処理した後、放冷した。1N塩酸に3日間以上浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純水に3日間以上浸漬して充分洗浄した。 (4) 高分子電解質複合膜の性能評価 前記(3)で得られた膜の膜厚は168μm、プロトン伝導度は5.3S/cm2、メタノール透過量は15μmol/cm2・min、膨潤率は1.1であった。」 サ 「【0076】 実施例8 実施例1記載のスルホン化ポリエーテルケトンを飽和食塩水浸漬によりNa置換後、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、15重量%溶液とした。電解質膜用の支持体として、NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)を用いNa型スルホン化ポリエーテルエーテルケトンDMAc溶液に含浸した。溶液を含浸した支持体をガラス基板上に置き減圧して支持体の空隙を溶液で充填させ塗布し100℃にて4時間加熱乾燥して高分子電解質複合膜を作製した。さらに、窒素雰囲気下、1時間かけて300℃まで昇温させ、300℃で10分間保持した後、放冷した。1N塩酸に3日間以上浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純粋に3日間以上浸漬し、その後に十分乾燥した。この膜を実施例1と同様に評価したところ、膜厚は280μm、プロトン伝導度は4.3S/cm2、メタノール透過量は80μmol/cm2・min、膨潤率は1.4であった。」 シ 「【0078】 実施例10 実施例4記載のスルホン化ポリフェニレンオキシドを飽和食塩水浸漬によりNa置換後、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、20重量%溶液とした。電解質膜用の支持体として、NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)を用い、Na型スルホン化ポリフェニレンオキシドDMAc溶液に含浸した。溶液を含浸した支持体をガラス基板上に置き減圧して支持体の空隙を溶液で充填させ塗布し100℃にて4時間加熱乾燥して高分子電解質複合膜を作製した。さらに、窒素雰囲気下、1時間かけて300℃まで昇温させ、300℃で10分間保持した後、放冷した。1N塩酸に3日間以上浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純粋に3日間以上浸漬し、その後に十分乾燥した。この膜の性能を実施例1と同様に評価したところ、膜厚は210μm、プロトン伝導度は4.3S/cm2、メタノール透過量は35μmol/cm2・min、膨潤率は1.2であった。」 (2)甲1に記載された発明 ア 上記(1)キ~シの実施例1、3、4、6、8、10に関連した摘記事項によれば、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。 「電解質膜用の支持体として、熱分解温度は400℃、開孔率は49%、開孔径は55μm、溶液保持量は25g/m2であるNBC製メッシュV SCREEN(品番V330)を電解質膜用の支持体とし、前記支持体にスルホン化ポリエーテルエーテルケトンDMAc(N,N-ジメチルアセトアミド)溶液を含浸し、溶液を含浸した支持体をガラス基板上に置き減圧して支持体の空隙を溶液で充填させ塗布し100℃にて4時間加熱乾燥して作製した、膜厚が290μmの高分子電解質複合膜。」(甲1発明1) 「電解質膜用の支持体として、熱分解温度は400℃、開孔率は49%、開孔径は55μm、溶液保持量は25g/m2であるNBC製メッシュV SCREEN(品番V330)を電解質膜用の支持体とし、前記支持体にNafion溶液を含浸し、溶液を含浸した支持体をガラス基板上に置き減圧して支持体の空隙を溶液で充填させ塗布し100℃にて4時間加熱乾燥して作製した、膜厚が300μmの高分子電解質複合膜。」(甲1発明2) 「電解質膜用の支持体として、熱分解温度は400℃、開孔率は49%、開孔径は55μm、溶液保持量は25g/m2であるNBC製メッシュV SCREEN(品番V330)を電解質膜用の支持体とし、前記支持体にスルホン化ポリフェニレンオキシドDMAc溶液を含浸し、溶液を含浸した支持体をガラス基板上に置き減圧して支持体の空隙を溶液で充填させ塗布し100℃にて4時間加熱乾燥して作製した、膜厚が220μmの高分子電解質複合膜。」(甲1発明3) 「電解質膜用の支持体として、熱分解温度は400℃、開孔率は49%、開孔径は55μm、溶液保持量は25g/m2であるNBC製メッシュV SCREEN(品番V330)を電解質膜用の支持体とし、前記支持体に、フルオレニルポリ(エーテルケトン)コポリマー(FL50PEEK)をスルホン化したスルホン化FL50PEEKを飽和食塩水浸漬によりNa置換したDMAc溶液を含浸させた後、ガラス基板上に塗布し、100℃にて4時間乾燥して溶媒を除去し、さらに、窒素ガス雰囲気下、100~300℃まで1時間かけて昇温し、300℃で10分間加熱する条件で熱処理した後、放冷し、次いで、1N塩酸に3日間以上浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純水に3日間以上浸漬して充分洗浄して作製した、膜厚が168μmの高分子電解質複合膜。」(甲1発明4) 「電解質膜用の支持体として、熱分解温度は400℃、開孔率は49%、開孔径は55μm、溶液保持量は25g/m2であるNBC製メッシュV SCREEN(品番V330)を電解質膜用の支持体とし、前記支持体に、スルホン化ポリエーテルケトンを飽和食塩水浸漬によりNa置換したDMAc溶液を含浸させた後、溶液を含浸した支持体をガラス基板上に置き減圧して支持体の空隙を溶液で充填させ塗布し100℃にて4時間加熱乾燥して、さらに、窒素雰囲気下、1時間かけて300℃まで昇温させ、300℃で10分間保持した後、放冷した。1N塩酸に3日間以上浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純粋に3日間以上浸漬し、その後に十分乾燥して作製した、膜厚が280μmの高分子電解質複合膜。」(甲1発明5) 「電解質膜用の支持体として、熱分解温度は400℃、開孔率は49%、開孔径は55μm、溶液保持量は25g/m2であるNBC製メッシュV SCREEN(品番V330)を電解質膜用の支持体とし、前記支持体に、スルホン化ポリフェニレンオキシドを飽和食塩水浸漬によりNa置換したDMAc溶液を含浸させた後、溶液を含浸した支持体をガラス基板上に置き減圧して支持体の空隙を溶液で充填させ塗布し100℃にて4時間加熱乾燥して、さらに、窒素雰囲気下、1時間かけて300℃まで昇温させ、300℃で10分間保持した後、放冷した。1N塩酸に3日間以上浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純粋に3日間以上浸漬し、その後に十分乾燥して作製した、膜厚が210μmの高分子電解質複合膜。」(甲1発明6) 2 本件発明1について (1)本件発明1と甲1発明1との対比及び判断 ア 対比 (ア)甲1発明1における「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」は、本件発明1における「メッシュ織物」に相当する。 (イ)上記1(1)エに摘記したとおり、甲1には、「本発明の高分子電解質複合膜を構成する高分子電解質材料としては、イオン性基を有することが必要であ」り、「少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい」との記載(段落【0023】)、「本発明において、高分子電解質材料として用いられるポリマーの種類としては例えば、イオン性基を有」する「ポリマーが好まし」く、「その具体例としては、イオン性基含有ポリフェニレンオキシド、イオン性基含有ポリエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルエーテルケトン」「などの、イオン性基を有する芳香族炭化水素系ポリマーが挙げられる」との記載(段落【0026】)、「重合体へのスルホン酸基の導入は例えば、重合体をクロロスルホン酸と反応させる方法により行うことができる。この方法により重合体をスルホン化する」との記載(段落【0028】)がそれぞれある。 そうすると、甲1発明1における「スルホン化ポリエーテルエーテルケトン」とは、「イオン性基」である「スルホン酸」を有する「イオン性基含有ポリエーテルエーテルケトン」であるから、「高分子電解質材料」であると認められる。 したがって、甲1発明1における「スルホン化ポリエーテルエーテルケトン」は、本件発明1における「高分子電解質」に相当する。 (ウ)甲1発明1における「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)を電解質膜用の支持体とし、前記支持体にスルホン化ポリエーテルエーテルケトンDMAc(N,N-ジメチルアセトアミド)溶液を含浸し、溶液を含浸した支持体をガラス基板上に置き減圧して支持体の空隙を溶液で充填させ塗布し100℃にて4時間加熱乾燥して作製した」「複合膜」は、「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」の「空隙」に「高分子電解質」である「スルホン化ポリエーテルエーテルケトン」「溶液」を「充填」「して作製した」「複合膜」であるから、本件発明1における「メッシュ織物と、高分子電解質とが複合されてなる複合層」に相当する。 (エ)そして、甲1発明1における「高分子電解質複合膜」は、本件発明1の「複合電解質膜」に相当する。 (オ)上記(ア)~(エ)によれば、本件発明1と甲1発明1とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点> 「メッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有する複合電解質膜。」である点。 <相違点1> 本件発明1では、メッシュ織物が「繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、以下の(1)および(2)を満たす」 「(1)紗厚(μm)/繊維直径(μm)<2.0 (2)オープニング(μm)/繊維直径(μm)>1.0」 のに対し、 甲1発明1では、メッシュ織物が「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」であって、「開孔率は49%、開孔径は55μm」である点。 <相違点2> 本件発明1では、「メッシュ織物の紗厚が50μm以下」であるのに対し、甲1発明1では、「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」の紗厚が不明である点。 <相違点3> 本件発明1では、複合電解質膜の膜厚が「50μm以上80μm以下」であるのに対し、甲1発明1では、高分子電解質複合膜の膜厚が「290μm」である点。 <相違点4> 本件発明1では、複合電解質膜が「電気化学式水素ポンプまたは水電解装置に用いられる」ものであるのに対し、甲1発明1では、高分子電解質複合膜が「電気化学式水素ポンプまたは水電解装置に用いられる」ものであるのか不明である点。 イ 判断 (ア)事案に鑑み、まず上記相違点3について検討すると、上記相違点3が実質的な相違点であることは明らかである。 (イ)次に上記相違点3の容易想到性について検討すると、甲1には、個々の実施例における高分子電解質複合膜の具体的な膜厚は記載されているものの、高分子電解質複合膜の膜厚を所定の数値範囲とすることは記載されていないため、甲1発明1において、高分子電解質複合膜の膜厚を「290μm」から「50μm以上80μm以下」に変更する動機付けがあるとはいえない。 (ウ)a この点、申立人は、令和 6年 4月 2日提出の意見書において、参考資料2(三宅明子、外1名、「4kWh/Nm3高効率水電解システム」、神鋼パンテツク技報、2003年8月、第47巻、第1号、第14~19頁)を添付した上で、 「参考文献2には、水電解装置に使用する高性能薄膜電極膜接合体において、膜厚を薄くすることによりオーム損失を下げることができることから様々な膜厚の電解質膜が市販されていること、水電解装置では50~200μmのものが使用されること、薄膜化すると電解電圧は下がるが、膜のガス透過量が増加し、水素中酸素濃度や酸素中水素濃度が高くなりガス純度が低下すること、が記載されている(第16頁「2.高性能薄膜電極膜接合体」の欄)。 してみると、甲第1号証に記載の発明において、電解質膜を水電解装置に適用する際に、電解電圧やガス透過量などを勘案しつつ、電解質膜の膜厚を50μm以上80μm以下とすることは、当業者が容易になし得たことである。」(第6頁第5~13行) と主張している。 b しかしながら、参考資料2の同箇所には、「乾燥状態での膜厚が50~200μmのものが水電解で使用される。」と記載されているのに対し、上記第2の2(1)で検討したとおり、本件訂正前の請求項1について複合電解質膜の「膜厚が50μm以上80μm以下であ」ることを付加する訂正は、本件明細書の【0186】(表7)に記載の実施例1~10の膜厚に基づいており、当該実施例1~10の膜厚は、同【0173】に「10重量%硫酸水溶液に80℃で24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、複合電解質膜(膜厚50μm)を得た。」と記載されているように、乾燥状態での膜厚ではないと解されるから、本件発明1とは前提を異にする参考資料2の記載に基づいた申立人の上記主張は採用できない。 (エ)したがって、甲1発明1において、上記相違点3に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (オ)よって、上記相違点1、2、4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件発明1と甲1発明2~6との対比及び判断 ア 対比 本件発明1と甲1発明2~6とをそれぞれ対比すると、上記(1)ア(オ)に示した相違点1、2、4に加え、以下の相違点3’においても相違する。 <相違点3’> 本件発明1では、複合電解質膜の膜厚が「50μm以上80μm以下」であるのに対し、甲1発明2~6では、高分子電解質複合膜の膜厚がそれぞれ「300μm」、「220μm」、「168μm」、「280μm」、「210μm」である点。 イ 判断 上記(1)イで検討したのと同様の理由により、上記相違点3’は実質的な相違点であるし、甲1発明2~6において、上記相違点3’に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明1は、甲1発明2~6であるとはいえないし、甲1発明2~6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1及び取消理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2及び取消理由2、3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 3 本件発明2について (1)本件発明2と甲1発明1との対比及び判断 ア 対比 上記2(1)アでの検討を踏まえると、本件発明2と甲1発明1とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点> 「メッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有する複合電解質膜。」である点。 <相違点5> 本件発明2では、メッシュ織物が「繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、前記液晶ポリエステル繊維が液晶ポリエステル単成分からなり、以下の(1)および(2)を満たす」 「(1)紗厚(μm)/繊維直径(μm)<2.0 (2)オープニング(μm)/繊維直径(μm)>1.0」 のに対し、 甲1発明1では、メッシュ織物が「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」であって、「開孔率は49%、開孔径は55μm」である点。 イ 判断 (ア)甲1には、「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」が液晶ポリエステル繊維であるのか否か、また、その紗厚及び繊維直径は記載されていない。 (イ)ここで、「写真法領域への拡大を目指す超高強力繊維による精密印刷用スクリーン「V-スクリーン」の本格展開について」株式会社クラレ プレスリリース 2003年1月10日(https://www.kuraray.co.jp/news/2003/030110)(以下、「補助資料1」という。)には、「V-スクリーン」とは、「ポリアリレート系スーパー繊維のモノフィラメント<ベックリー>を使用」したものであることが記載されている。 また、「写真法領域への拡大を目指す超高強力繊維による精密印刷用スクリーン「V-スクリーン」の本格展開について(「V-スクリーン」の概要)」株式会社クラレ プレスリリース 2003年1月10日(https://www.kuraray.co.jp/news/2003/030110_2)(以下、「補助資料2」という。)には、「V-スクリーン」の生産品種として、「330メッシュ23μm(<ベックリー>糸)」と記載されている。 (ウ)さらに、「メッシュラインナップ(2014年3月末現在)」(http://www.mitani-micro.co.jp/mask/meshlist_201403.pdf)(以下、「補助資料3」という。)には、「Vスクリーン」のメッシュ数「♯330」の製品のメッシュ名が「V330」であることと、「V330」は、線径23μm、紗厚43μm、オープニング54μm、開口率49%であることとが記載されている。 (エ)上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、補助資料1、2に記載の「V-スクリーン」及び補助資料3に記載の「Vスクリーン」は、甲1発明1の「V SCREEN」と同じ製品ラインを意味するものと認められる。 (オ)そして、甲2には、 「 [図:0001415251000003.jpg] 」(第210頁右欄第10~15行) と記載されており、「溶融液晶ポリマー」に「全芳香族ポリエステル(ポリアリレート)」が含まれることが記載されている。 (カ)上記(イ)によれば、「V-スクリーン」には「ポリアリレート系スーパー繊維のモノフィラメント<ベックリー>」が使用されているから、甲1発明1の「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」には「ポリアリレート系スーパー繊維」、すなわち「液晶」「全芳香族ポリエステル(ポリアリレート)」「繊維」が使用されているといえる。 (キ)したがって、甲1発明1における「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」は、本件発明2における「液晶ポリエステル繊維」に相当する。 (ク)一方、「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」に使用される「ポリアリレート系スーパー繊維のモノフィラメント<ベックリー>」は、上記(オ)に示されるとおり、「溶融液晶と屈曲性ポリマーをハイブリッドした複合繊維」であり、屈曲性ポリマーも使用されているから、「液晶ポリエステル単成分からな」るものであるとはいえない。 (ケ)したがって、上記相違点5は、実質的な相違点である。 (コ)そこで、上記相違点5の容易想到性について検討すると、甲1には、「かかる支持体の材質としては、たとえば、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシベンゾエート、ポリオキサジアゾール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、炭素繊維などの高分子材料で、かつ、熱分解温度が300℃以上であるものが選択的に使用される。」(【0020】)と記載されているものの、ポリアリレートは一例にすぎず、支持体をポリアリレートの単成分からなるものとすることが好ましいことは記載も示唆もされていないから、甲1発明1において、「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」の屈曲性ポリマーを溶融液晶ポリマーに変更したり、「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」自体を溶融液晶ポリマーからなるメッシュ織物に変更したりすることにより、メッシュ織物を「液晶ポリエステル単成分からな」る液晶ポリエステル繊維からなるものとする動機付けがあるとはいえない。 (サ)a この点、申立人は、特許異議申立書において、甲3~5を挙げた上で、液晶ポリエステル繊維を含む織物として、液晶ポリエステル単成分からなる織物については広く知られているから、甲1発明において、メッシュ織物の更なる高強度化と併せ、各種性能向上のために、甲3~5に記載の知見に基き、メッシュ織物として液晶ポリエステル単成分からなる液晶ポリエステル繊維を用いてみることは、当業者であれば容易になし得ることである旨(第23頁下から6行~第24頁第9行)を主張している。 b しかしながら、たとえ液晶ポリエステル繊維を含む織物として、液晶ポリエステル単成分からなる織物については広く知られていたとしても、上記(コ)で検討したとおり、甲1には、支持体をポリアリレートの単成分からなるものとすることが好ましいことは記載も示唆もされておらず、甲1発明1において、「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」の一部に使われている溶融液晶ポリマー(液晶ポリエステル)繊維に着目した上で、「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」に代えて「液晶ポリエステル単成分からなる織物」を使用する動機付けがあるとはいえないから、申立人の上記主張は採用できない。 (シ)a また、申立人は、令和 6年 4月 2日提出の意見書において、 「本件特許明細書の実施例1と実施例6は同等の効果を有するものであるから(段落【0186】表7)、実施例6で使用された「NBC社製“VスクリーンV330”(メッシュ織物B)」は、訂正後の請求項2に記載の「液晶ポリエステル単成分からなる」もの、訂正後の請求項3に記載の「全芳香族ポリエステルからなる」もの、訂正後の請求項4に記載の「全芳香族ポリエステルが構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)からなる液晶ポリエステルである」もの、訂正後の請求項10に記載の「メッシュ織物の融解熱量△Hm1が6.0J/g以下である」ものである蓋然性が高い。 そして、本件特許明細書の実施例6で使用された「NBC社製“VスクリーンV330”(メッシュ織物B)」と、甲第1号証に記載の実施例で使用された「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」は同じものであるから、訂正後の請求項2~4、10に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証~甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」(第7頁下から11行~第8頁第3行) と主張している。 b しかしながら、本件明細書の【0186】(表7)を見ると、実施例1と実施例6とでは弾性率及び耐酸性度の値が大幅に異なることは明らかであり、「実施例1と実施例6は同等の効果を有するものである」とはいえないから、申立人の上記主張はその前提を欠いており、採用することはできない。 (ス)したがって、甲1発明1において、上記相違点5に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (セ)よって、本件発明2は、甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件発明2と甲1発明2~6との対比及び判断 ア 対比 本件発明2と甲1発明2~6とをそれぞれ対比すると、いずれの場合も、上記(1)アに示した相違点5において少なくとも相違する。 イ 判断 上記(1)イで検討したのと同様の理由により、甲1発明2~6において、上記相違点5に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明2は、甲1発明2~6及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件発明2は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 4 本件発明3について (1)本件発明3と甲1発明1との対比及び判断 ア 対比 上記2(1)アでの検討を踏まえると、本件発明3と甲1発明1とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点> 「メッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有する複合電解質膜。」である点。 <相違点6> 本件発明3では、メッシュ織物が「繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、前記液晶ポリエステル繊維が全芳香族ポリエステルからなり、以下の(1)および(2)を満たす」 「(1)紗厚(μm)/繊維直径(μm)<2.0 (2)オープニング(μm)/繊維直径(μm)>1.0」 のに対し、 甲1発明1では、メッシュ織物が「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」であって、「開孔率は49%、開孔径は55μm」である点。 イ 判断 (ア)上記3(1)イ(カ)で検討したとおり、甲1発明1の「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」には「ポリアリレート系スーパー繊維」、すなわち「液晶」「全芳香族ポリエステル(ポリアリレート)」「繊維」が使用されているといえる。 (イ)したがって、甲1発明1における「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」は、本件発明3における「液晶ポリエステル繊維」に相当する。 (ウ)一方、上記3(1)イ(ク)で検討したとおり、「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」に使用される「ポリアリレート系スーパー繊維のモノフィラメント<ベックリー>」は、「溶融液晶と屈曲性ポリマーをハイブリッドした複合繊維」であり、屈曲性ポリマーも使用されているから、「全芳香族ポリエステルからな」るものであるとはいえない。 (エ)したがって、上記相違点6は、実質的な相違点である。 (オ)そこで、上記相違点6の容易想到性について検討すると、上記3(1)イ(コ)で検討したとおり、甲1には、支持体をポリアリレートの単成分、すなわち全芳香族ポリエステルからなるものとすることが好ましいことは記載も示唆もされていないから、甲1発明1において、メッシュ織物を「全芳香族ポリエステルからな」る液晶ポリエステル繊維からなるものとする動機付けがあるとはいえない。 (カ)a この点、申立人は、特許異議申立書において、 「甲1発明の「高分子材料」はポリアリレートを含むものであるが([0020])、ポリアリレートは、全芳香族ポリエステルとして知られるものである(甲第2号証の記載等参照)。してみると、甲1発明の「高分子材料かつ多孔性基材からなる電解質膜用支持体」は、本件特許発明3の「液晶ポリエステル繊維が全芳香族ポリエステル繊維からなる」ものに相当する。 したがって、本件特許発明3と甲1発明には相違点が存在しない。」(第24頁下から7行~下から1行) と主張している。 b しかしながら、上記(ウ)及び(エ)で検討したとおり、上記相違点6は実質的な相違点であるから、申立人の上記主張は採用できない。 (キ)また、申立人が令和 6年 4月 2日提出の意見書においてした主張については、上記3(1)イ(シ)で述べたとおり、採用することはできない。 (ク)したがって、甲1発明1において、上記相違点6に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ケ)よって、本件発明3は、甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件発明3と甲1発明2~6との対比及び判断 ア 対比 本件発明3と甲1発明2~6とをそれぞれ対比すると、いずれの場合も、上記(1)アに示した相違点6において少なくとも相違する。 イ 判断 上記(1)イで検討したのと同様の理由により、上記相違点6は実質的な相違点であるし、甲1発明2~6において、上記相違点6に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明3は、甲1発明2~6であるとはいえないし、甲1発明2~6及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件発明3は、甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明3は、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 5 本件発明4について 本件発明4は、本件発明3の特定事項を全て含むものである。 上記4(3)のとおり、本件発明3は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本件発明4も、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件発明4は、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 6 本件発明5~9について 本件発明5~9は、本件発明1~3のいずれかの特定事項を全て含むものである。 上記2(3)、3(3)及び4(3)のとおり、本件発明1~3は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本件発明5~9も、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件発明5~9は、甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1及び取消理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明5~9は、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2及び取消理由2、3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 7 本件発明10について (1)本件発明10と甲1発明1との対比及び判断 ア 対比 上記2(1)アでの検討を踏まえると、本件発明10と甲1発明1とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点> 「メッシュ織物と、高分子電解質とが複合化されてなる複合層を有する複合電解質膜。」である点。 <相違点7> 本件発明10では、メッシュ織物が「繊維直径が50μm以下である液晶ポリエステル繊維からなり、以下の(1)および(2)を満たす」とともに、メッシュ織物の「融解熱量ΔHm1が6.0J/g以下である」 「(1)紗厚(μm)/繊維直径(μm)<2.0 (2)オープニング(μm)/繊維直径(μm)>1.0」 のに対し、 甲1発明1では、メッシュ織物が「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」であって、「開孔率は49%、開孔径は55μm」であり、メッシュ織物の「融解熱量ΔHm1」は不明である点。 イ 判断 (ア)甲1には、「NBC製メッシュV SCREEN(品番V330)」の「融解熱量ΔHm1」は記載されておらず、当該「融解熱量ΔHm1」が「6.0J/g以下」であるとの技術常識も存在しないから、上記相違点7は、実質的な相違点である。 (イ)そこで、上記相違点7の容易想到性について検討すると、甲1には、メッシュ織物の「融解熱量ΔHm1」に関する説明は記載されていないため、甲1発明1において、メッシュ織物の「融解熱量ΔHm1」を「6.0J/g以下」とする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)a この点、申立人は、特許異議申立書において、 「甲1発明及び本件特許発明10のメッシュ織物は、実施例として使用する製品が同一であると認められる以上、甲1発明におけるメッシュ織物は、本件特許発明10におけるメッシュ織物の特性(融解熱量)を当然に有するものと解される。 したがって、本件特許発明10と甲1発明には相違点が存在しない。」(第29頁下から7行~下から3行) と主張している。 b しかしながら、本件明細書の【0168】(表5)には、製造例1(メッシュ織物A)、製造例2(メッシュ織物D)及び製造例3(メッシュ織物E)の「ΔHm1」は記載されているものの、「NBC社製“Vスクリーン V330”(メッシュ織物B)」の「ΔHm1」は記載されておらず、「NBC社製“Vスクリーン V330”(メッシュ織物B)」が本件発明10における「融解熱量ΔHm1が6.0J/g以下である」「メッシュ織物」に相当するといえる根拠は見いだせないから、申立人の上記主張は採用できない。 (エ)また、申立人が令和 6年 4月 2日提出の意見書においてした主張については、上記3(1)イ(シ)で述べたとおり、採用することはできない。 (オ)したがって、甲1発明1において、上記相違点7に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (カ)よって、本件発明10は、甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件発明10と甲1発明2~6との対比及び判断 ア 対比 本件発明10と甲1発明2~6とをそれぞれ対比すると、いずれの場合も、上記(1)アに示した相違点7において少なくとも相違する。 イ 判断 上記(1)イで検討したのと同様の理由により、上記相違点7は実質的な相違点であるし、甲1発明2~6において、上記相違点7に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明10は、甲1発明2~6であるとはいえないし、甲1発明2~6及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件発明10は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件発明10は、甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明10は、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 8 本件発明11について 本件発明11は、本件発明1~3、10のいずれかの特定事項を全て含むものである。 上記2(3)、3(3)、4(3)及び7(3)のとおり、本件発明1~3、10は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本件発明11も、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件発明11は、甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1及び取消理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明11は、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2及び取消理由2、3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 9 本件発明12、13、15~17、19について 本件発明12、13、15~17、19は、本件発明1~3、10のいずれかの特定事項を全て含むものである。 上記2(3)、3(3)、4(3)及び7(3)のとおり、本件発明1~3、10は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本件発明12、13、15~17、19も、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件発明12、13、15~17、19は、甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1及び取消理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明12、13、15~17、19は、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2及び取消理由2、3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 10 本件発明14、18について 本件発明14、18は、本件発明1~3、10のいずれかの特定事項を全て含むものである。 上記2(3)、3(3)、4(3)及び7(3)のとおり、本件発明1~3、10は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 そして、甲6には、「電気化学式水素ポンプ用または水電解装置用の高分子電解質膜」(請求項1)及び当該「高分子電解質膜を用いて構成される電気化学式水素ポンプ」(請求項9)が記載されているものの、甲6は高分子電解質膜の用途を説明するものにすぎないから、本件発明1~3、10は、甲1に記載された発明及び甲3~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本件発明14、18も、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び甲3~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件発明14、18は、甲1に記載された発明及び甲3~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2及び取消理由2、3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 第8 むすび 以上のとおり、令和 5年 3月31日付けで通知した取消理由、令和 5年 9月29日付けで通知した取消理由(決定の予告)及び特許異議の申立ての理由のいずれによっても、本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701179

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