特許異議申立
2024-700407
ビールテイスト飲料
- 審判番号
- 2024-700407
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-158411
- 登録番号
- 7372420
- 請求日
- 2024年04月30日
- 審決日
- 2024年09月26日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】サッポロビール株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】坂西 俊明
- 【異議申立人】杉浦 健文
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 柴田 昌弘
- 分類
- P1651.121-Y (C12C) / P1651.537-Y (C12C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7372420号発明「ビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7372420号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7372420号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和4年9月30日の出願であって、令和5年10月23日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年同月31日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、令和6年4月30日に特許異議申立人杉浦健文(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~8)がなされたものである。
第2 本件発明について
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。
「[請求項1]
アルコール度数が10v/v%以上であり、
カプロン酸エチル含有量が0.7mg/L以上10mg/L以下であり、
リナロール含有量が50μg/L以上610μg/L以下である、
ビールテイスト飲料。
[請求項2]
前記カプロン酸エチル含有量が、1.0mg/L以上4.2mg/L以下である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
[請求項3]
前記リナロール含有量が、90μg/L以上180μg/L以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
[請求項4]
麦芽使用比率が50.0w/w%以上66.6w/w%以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
[請求項5]
苦味価が25.0BU以上100BU以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
[請求項6]
蒸留アルコールを含有しない、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
[請求項7]
アルコール度数を10v/v%以上に調整すること、
カプロン酸エチル含有量を0.7mg/L以上10mg/L以下に調整すること、及び、
リナロール含有量を50μg/L以上610μg/L以下に調整することを含む、
ビールテイスト飲料の製造方法。
[請求項8]
アルコール度数を10v/v%以上に調整すること、
カプロン酸エチル含有量を0.7mg/L以上10mg/L以下に調整すること、及び、
リナロール含有量を50μg/L以上610μg/L以下に調整することを含む、
ビールテイスト飲料のスムースさ及びドリンカビリティーを向上させる方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として下記2.に示す甲第1号証~甲第14号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲14」のようにいう。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。なお、特許異議申立理由の番号は当審が仮に付与した。
1.特許異議申立理由
(1)理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如)
本件発明1~8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)理由1-2(甲8に基づく進歩性欠如)
本件発明1、3及び5~7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲8に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)理由1-3(甲9に基づく進歩性欠如)
本件発明1~3及び5~7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲9に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(4)理由2(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~8についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである(甲10及び甲14参照。)。
ア 効果を達成する理由について
ビールには、風味特性を構成する多種類の香気物質が様々な濃度で含まれており、ビールの風味や飲用感は、様々な濃度の多種類の香気物質が相互作用して生成していることは技術常識であるにもかかわらず、本件明細書には、これらの香気物質の中から特にカプロン酸エチル及びリナロールのみ、及び特定された範囲のこれらの含有量が、高アルコールビールテイスト飲料のスムースさ及びドリンカビリティーの向上という本件発明の効果を達成する理由や、かかる構成要件が効果達成に寄与する機能作用について、何も説明されていない。よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、そもそも、本件発明の構成要件によって課題が解決できることを当業者において認識できるように記載されていないものである。
イ 数値範囲について
本件発明1の数値範囲を充足するビールテイスト飲料であっても、カプロン酸エチル含有量及びリナロール含有量が下限域であるビールテイスト飲料については、上記効果が達成されるかどうか、表1及び表2に示された評価結果からは理解することができない。
さらに、アルコール度数の向上と共にアルコール刺激臭が増強され、高アルコールビールテイスト飲料のスムースさやドリンカビリティーが低下することは技術常識であるから、アルコール度数が10%以上100%に至るまで全ての高アルコールテイスト飲料について、前記効果が達成されることも理解できない。
本件発明1~8は、特性値を表す技術的な変数により示される範囲をもって特定した物を構成要件とするものであり、いわゆるパラメータ発明に関するものであるので、サポート要件に適合するためには、発明の詳細な説明は、その変数が示す範囲と得られる効果(性能)との関係の技術的な意味が、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか、又は、特許出願時の技術常識を参酌して、当該変数が示す範囲内であれば、所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載することを要するものと解するのが相当である(知財高裁平成17年11月11日判決, 平成17年(行ケ)第10042号, 判例時報1911号48頁参照)。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1~8の構成要件によって課題が解決できることを当業者において認識できるように記載されているということはできない。
2.証拠方法
甲1:特開2002-253197号公報
甲2:税務経理協会,"酒税法令通達集",平成21年度版,株式会社税務経理協会,平成21年7月10日,酒税法 目次~第三条
甲3:特開2014-117258号公報
甲4:蛸井潔,"プロダクトイノベーション ホップ由来香気成分の発酵挙動・香気相互作用の解析とそのビール醸造への応用 ビールのホップ香をデザインする",化学と生物,公益社団法人日本農芸化学会,2018年6月20日,第56巻,第7号,p.508-512
甲5:特開2019-122263号公報
甲6:特開2019-10128号公報
甲7:国際公開第2019/130485号
甲8:Brewer's Friend Homebrew Beer Recipes,"Super Imperial IPA (SU)",Brewer's Friendホームページ,2017年3月10日,印刷日2024年4月26日,URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/465287/super-ipa-su-1/3
甲9:Brewer's Friend Homebrew Beer Recipes,"Peppa Pig [NE DIPA]",Brewer's Friendホームページ,2020年12月3日,印刷日2024年4月1日,URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/1076607/peppa-pig-ne-dipa-4/4
甲10:F. Van Opstaele,G. De Rouck,P. Janssens,G. G. Montandon,"An exploratory study on the impact of the yeast strain on hop flavour expressions in heavily hopped beers: New England IPA",BrewingScience,Fachverlag Hans Carl GmbH,2021年5月4日アップロード,March/April 2020,vol.73,p.26-40
甲11:特開2021-159020号公報
甲12:特開2021-153501号公報
甲13:平成30年(行ケ)第10076号判決,知財高裁,平成31年3月13日判決言渡
甲14:平成28年(行ケ)第10147号判決,知財高裁,平成29年6月8日判決言渡
証拠の表示は当審による。
第4 当審の判断
当審は、申立人が申し立てたいずれの特許異議申立理由によっても、本件発明1~8についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおり。
1.理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された事項
甲1には以下の事項が記載されている。
(1-1)「[請求項1]ビールの高濃度醸造において、発酵工程でα-グルコシダーゼを作用させることを特徴とするビールの製造方法。
[請求項2]ビールの高濃度醸造において、発酵工程でα-グルコシダーゼを作用させて酢酸生成量を低減させることを特徴とするビールの製造方法。
[請求項3]ビール酵母又はビール酵母以外の醸造用酵母を使用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のビールの製造方法。
[請求項4]ビール酵母以外の醸造用酵母は、清酒酵母、ワイン酵母、焼酎酵母の中から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項3に記載のビールの製造方法。」
(1-2)「[0002]
[従来の技術]高濃度醸造とは、高いエキス濃度の麦汁を用いて発酵させるビールの製造方法で、具体的には通常原麦汁エキス濃度13~16重量%の麦汁を発酵、熟成させ出荷前に炭酸水などで所定濃度まで希釈するビールの製造方法である。高濃度醸造は発酵、貯酒タンクなどの製造設備の生産効率を高めかつエネルギー経費を節減させるなどという利点を有する製造方法であり、欧米で広く行われている製造方法であるが、反面、大量の麦汁エキスを発酵させるために発酵時間が長くなるという問題点が指摘されている。高濃度醸造での発酵を促進させる方法としては、(1)多量の酸素を供給することによる酵母の活性化や増殖を促進させる方法、(2)新鮮な酵母を使用する方法、(3)遊離アミノ態窒素を供給する方法などがある。また、高濃度醸造では通常の方法で製造したビールと比べて香味が異なるという問題点が指摘されている。特に、高濃度醸造では麦汁中のエキス分が多く、ビール酵母は通常より高浸透圧条件下に晒されるので一般に酵母のアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子の発現が誘導され、アセトアルデヒドからビールのオフフレーバーである酢酸の生成が増大することが知られており、その生成量の低減が望まれていた。」
(1-3)「[0006]そこで、本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、高濃度醸造でありながら発酵を促進させ酢酸生成量を低減させるビールの製造方法及びビール酵母では得られない新規な品質を有するビールの製造方法を提供することを課題とする。また、麦汁エキス濃度に左右されず真性発酵度を高めることにより簡単な製造工程で製造できる高品質な低カロリービールの製造方法及びビール酵母では得られない新規な品質を有する低カロリービールの製造方法を提供することを課題とする。」
(1-4)「[0015]
[実施例]次いで、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は既述の実施の形態及び以下の実施例に限定されるものではない。
[0016](実施例1)粉砕麦芽28kgを温水84Lに加え、インフュージョン法により原麦汁エキス濃度20重量%の麦汁を調製した。インフュージョン法における温度経過は図1に示す通りである。
[0017]得られた麦汁1Lに対しビール酵母(NCYC1245、NationalCollection of Yeast Cultures、以降の実施例においても同様)を2.5gの割合で添加し、かつα-グルコシダーゼ(α-グルコシダーゼ「アマノ」天野エンザイム社製、以降の実施例においても同様)を麦汁に対し50、100、200、400ppmの割合で添加し、15℃で21日間発酵させた。なお、α-グルコシダーゼを添加することなく前記と同様に発酵させて対照とした。
[0018]浸透圧の低減に寄与すると考えられるオリゴ糖のうちグルコースの重合度が3であり、かつ酵母の資化できない分岐オリゴ糖であるパノース、イソマルトトリオースの発酵中の挙動を図2に示した。図2から、α-グルコシダーゼの添加によりパノースやイソマルトトリオースが生成し、発酵の進行と共にこれらのオリゴ糖が分解されていることが明らかになった。このようにα-グルコシダーゼの作用により一旦分岐オリゴ糖を生成させることで、発酵初期の麦汁の糖濃度を抑制し急激なグルコースの増加による浸透圧の上昇を防ぐことができるので、酵母のアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子の発現の誘導が抑制され、アセトアルデヒドから酢酸が生成されるのを低減させることができるものと推測される。図3には、ビール中の酢酸生成量とα-グルコシダーゼ添加量との関係を示したが、α-グルコシダーゼの添加で酢酸生成量が著しく低減した。なお、50ppmと400ppmの各添加量で酢酸生成量が増加傾向にあった。
[0019](実施例2)実施例1に記載の方法と同様に原麦汁エキス濃度20重量%の麦汁を調製し、100Lパイロットプラントにてビールを製造した。酵母はビール酵母、清酒酵母(K-14、(財)日本醸造協会、以後の実施例においても同様)を各々使用し、ビール酵母を使用する場合は酵素を無添加とし、清酒酵母を使用する場合はα-グルコシダーゼ400ppmを添加した例とグルコアミラーゼ(グルコアミラーゼ「アマノ」SD、天野エンザイム社製)200ppmを添加した例につき試験を行った。なお、清酒酵母を使用する場合には、前記いずれの酵素も添加することなく発酵させて対照とした。
[0020]製造したビールの成分分析値を表1に示した。α-グルコシダーゼを添加した場合は、グルコアミラーゼを添加した場合に比べ酢酸生成量が抑制された。グルコアミラーゼの添加により酢酸生成量が増加するのは、急激なグルコースの生成による浸透圧の上昇が原因と推測される。また、表1からビールの製造に清酒酵母を使用することにより例えば香味成分であるリンゴ酸、コハク酸、カプロン酸エチル等の生成量がビール酵母の使用の場合より増加し、ビール酵母によりビールを製造するのとは異なる新規な品質のビールが製造できた。また、図4で清酒酵母を使用したビール中の酢酸生成量とα-グルコシダーゼ添加量との関係を示したが、清酒酵母を使用してもα-グルコシダーゼの添加で酢酸生成量が著しく低減した。」
(1-5)「[0021]
[表1]
[図:0001415321000001.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
甲1の請求項1、2及び4(摘記1-1)には、それぞれ「ビールの高濃度醸造において、発酵工程でα-グルコシダーゼを作用させることを特徴とするビールの製造方法。」、「ビールの高濃度醸造において、発酵工程でα-グルコシダーゼを作用させて酢酸生成量を低減させることを特徴とするビールの製造方法。」及び「ビール酵母以外の醸造用酵母は、清酒酵母、ワイン酵母、焼酎酵母の中から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項3に記載のビールの製造方法。」が記載されている。また、[0015]~[0020](摘記1-4)には、甲1の上記請求項に係る発明の具体例として実施例1及び2が記載されており、実施例1においては、「粉砕麦芽28kgを温水84Lに加え、インフュージョン法により原麦汁エキス濃度20重量%の麦汁を調製した。・・・得られた麦汁1Lに対しビール酵母(NCYC1245、NationalCollection of Yeast Cultures、以降の実施例においても同様)を2.5gの割合で添加し、かつα-グルコシダーゼ(α-グルコシダーゼ「アマノ」天野エンザイム社製、以降の実施例においても同様)を麦汁に対し50、100、200、400ppmの割合で添加し、15℃で21日間発酵させた。」ことが記載され、実施例2においては「実施例1に記載の方法と同様に原麦汁エキス濃度20重量%の麦汁を調製し、100Lパイロットプラントにてビールを製造した。酵母はビール酵母、清酒酵母(K-14、(財)日本醸造協会、以後の実施例においても同様)を各々使用し、ビール酵母を使用する場合は酵素を無添加とし、清酒酵母を使用する場合はα-グルコシダーゼ400ppmを添加した例とグルコアミラーゼ(グルコアミラーゼ「アマノ」SD、天野エンザイム社製)200ppmを添加した例につき試験を行った。」ことが記載され、[0021]の[表1](摘記1-5)の成分分析値を参照すると、実施例2のうち、清酒酵母を使用し、αグルコシダーゼ400ppm又はグルコアミラーゼ(グルコアミラーゼ「アマノ」SD、天野エンザイム社製)200ppmを添加したビールの製造例では、アルコール分がいずれも11.0v/v%、カプロン酸エチルが1.85又は1.62ppmであったことが読み取れる。
そうすると、甲1には実施例2等に基づいて、以下の発明が記載されている。
「粉砕麦芽28kgを温水84Lに加え、インフュージョン法により原麦汁エキス濃度20重量%の麦汁を調製し、得られた麦汁1Lに対し清酒酵母(K-14、(財)日本醸造協会)を2.5gの割合で添加し、かつα-グルコシダーゼ(α-グルコシダーゼ「アマノ」天野エンザイム社製)400ppm又はグルコアミラーゼ(グルコアミラーゼ「アマノ」SD、天野エンザイム社製)200ppmを添加し、15℃で21日間発酵させることにより製造したビールであって、アルコール分が11.0v/v%であり、カプロン酸エチルの濃度が1.85ppm又は1.62ppmである、ビール。」(以下、「甲1発明」という。)
「粉砕麦芽28kgを温水84Lに加え、インフュージョン法により原麦汁エキス濃度20重量%の麦汁を調製する工程、得られた麦汁1Lに対し清酒酵母(K-14、(財)日本醸造協会)を2.5gの割合で添加し、かつα-グルコシダーゼ(α-グルコシダーゼ「アマノ」天野エンザイム社製)400ppm又はグルコアミラーゼ(グルコアミラーゼ「アマノ」SD、天野エンザイム社製)200ppmを添加する工程、及び15℃で21日間発酵させる工程を含むビールの製造方法であって、アルコール分が11.0v/v%であり、カプロン酸エチルの濃度が1.85ppm又は1.62ppmである、ビールの製造方法。」(以下、「甲1製法発明」という。)
「粉砕麦芽28kgを温水84Lに加え、インフュージョン法により原麦汁エキス濃度20重量%の麦汁を調製する工程、得られた麦汁1Lに対し清酒酵母(K-14、(財)日本醸造協会)を2.5gの割合で添加し、かつα-グルコシダーゼ(α-グルコシダーゼ「アマノ」天野エンザイム社製、以降の実施例においても同様)400ppm又はグルコアミラーゼ(グルコアミラーゼ「アマノ」SD、天野エンザイム社製)200ppmを添加する工程、15℃で21日間発酵させる工程を含むビールの酢酸生成量を低減する方法であって、アルコール分が11.0v/v%であり、カプロン酸エチルの濃度が1.85ppm又は1.62ppmである、ビールの酢酸生成量を低減する方法。」(以下、「甲1低減法発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「ビール」は、本件発明1における「ビールテイスト飲料」に相当し、甲1発明における「アルコール分が11.0v/v%であり、」は、本件発明1における「アルコール度数が10v/v%以上であり、」を満たしており、甲1発明における「カプロン酸エチルの濃度が1.85ppm又は1.62ppmである、」(当審注:mg/L単位に換算すると1.85mg/L又は1.62mg/Lである。)は、本件発明1における「カプロン酸エチル含有量が0.7mg/L以上10mg/L以下であり、」を満たしている。
そうすると、両者は、
「アルコール度数が10v/v%以上であり、
カプロン酸エチル含有量が0.7mg/L以上10mg/L以下である、
ビールテイスト飲料。」
の点で一致し、
相違点甲1-1:本件発明1は「リナロール含有量が50μg/L以上610μg/L以下である、」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、上記相違点甲1-1について検討する。
イ 相違点甲1-1について
甲4のp.509右欄第3段落には「linaloolを含まないホップはない」ことが記載され、甲6の[0024]には「リナロールの供給源として、ホップ抽出物を用いることもできる」ことが記載され、甲7の[0025]には「リナロールの含有量が多い原材料として、ホップ、コリアンダー、コリアンダーシード等が挙げられる」ことが記載され、甲10のp.33左欄の「3.2.2ホップ由来の揮発性物質」には「NEIPAビールを分析した結果、合計41種類のホップ揮発成分が同定された(表5~表10参照)」こと、並びにp.32の表5及びp.33の表6にはNEIPAビール中にリナロールが100μg/L~110μg/Lの濃度で検出されたことが記載されている。
しかし、甲1の[0015]~[0020](摘記1-4)には、甲1発明である実施例2の製造原料として、上記証拠に記載されたホップ、コリアンダー又はコリアンダーシードを用いたことは記載されていない。また、甲1の[0021]の[表1](摘記1-5)の成分分析表には、リナロールの項目がない。そうすると、甲1発明は相違点甲1-1に係る50μg/L以上610μg/L以下の含有量でリナロールを含有するものとは認められず、相違点甲1-1は実質的な相違点である。
また、甲1の[0002](摘記1-2)には、高濃度醸造に関する従来の技術の課題として「オフフレーバーである酢酸の生成が増大することが知られており、その生成量の低減が望まれていた」ことが記載され、[0006](摘記1-3)には、「本発明は・・・高濃度醸造でありながら発酵を促進させ酢酸生成量を低減させるビールの製造方法及びビール酵母では得られない新規な品質を有するビールの製造方法を提供することを課題とする」ことが記載されているが、上記した甲4、甲6、甲7及び甲10、並びに他の証拠を参照しても、高濃度醸造における酢酸生成量の低減という課題と、リナロールの含有量とを結びつける動機付けとなる記載は見いだせないから、甲1発明において相違点甲1-1に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)ホップについて
申立人は特許異議申立書27頁において、「甲2には、ビールの定義が、『麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの』又は『麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの』と(酒税法第3条第12項)、ビールはそもそもホップを原料とする飲料であることが記載されている」と主張した上で、「甲2~4に示されている技術常識を考慮すると、甲1、実施例2の高濃度醸造ビールはホップを原料とするもの、つまりリナロールを含有するものといえる」と主張している。
しかし、上記イに記載したとおり、甲1の[0015]~[0020](摘記1-4)には、甲1発明である実施例2の製造原料としてホップを使用したことは記載されておらず、また、甲1には、甲1における「ビール」という技術用語を酒税法に定義される特定の酒類を意味する用語として用いる旨の記載はないから、甲1発明である実施例2がホップを原料とするものであるという申立人の主張には根拠がなく、したがって、甲1発明がリナロールを含有するという申立人の主張も採用することができない。
(イ)香味改善について
また、申立人は特許異議申立書の27~28頁において、「甲1、実施例2の高濃度醸造ビールはアルコール度数が11.0v/v%と通常のビールに比較して高く、課題であるオフフレーバーや劣っている香味には、アルコールによる刺激臭が当然含まれている」こと、及び「高濃度醸造による高アルコールビールの香味改善を目的とする甲1、実施例2の高濃度醸造ビールに甲5~7の技術を適用してリナロール含有量を30~55ppb、60ppb以上又は180質量ppb以上に調節することは、当業者が容易になし得る事項である」と主張している。
しかし、上記イに記載したとおり、甲1の[0002](摘記1-2)及び[0006](摘記1-3)等の記載を参酌すると、甲1発明は高濃度醸造における「酢酸」をオフフレーバーとして問題視し、「発酵を促進させ酢酸生成量を低減させる」ことにより課題を解決しようとする発明であると理解することができ、甲1発明がアルコールによる刺激臭を改善することを課題とするものであるという申立人の主張は甲1の記載に基づくものではない。よって、「アルコール刺激臭味が小さく、ビール様発酵麦芽飲料として香味のバランスに優れた発酵麦芽アルコール飲料を提供すること」を課題とする甲5([0011])、「濃色麦芽に由来するネガティブ香気が低減するとともに、より嗜好性の高い好ましい香気を有する発酵麦芽飲料を提供すること」を課題とする甲6([0010])及び「4VGを一定量含有しながら、薬品様の香りがマスキングされた飲料」を提供することを課題とする甲7([0004])の技術を甲1発明に適用することを当業者が動機付けられるとはいえず、申立人の主張を採用することはできない。
(ウ)官能評価について
なお、申立人は特許異議申立書の32~34頁において、本件明細書記載の官能評価試験について縷々主張するが、甲1及び他の証拠の記載から本件発明1の構成に容易に想到することができないという判断は覆えらない。
エ 相違点甲1-1についてのまとめ
以上まとめると、相違点甲1-1は実質的な相違点であって、甲1発明及びいずれの証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。
オ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、本件発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~6について
本件発明2~6は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。
そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~6は、いずれも甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明7について
ア 本件発明7と甲1製法発明との対比
本件発明7と甲1製法発明とを対比すると、甲1製法発明における「ビールの製造方法」は、本件発明7における「ビールテイスト飲料の製造方法」に相当し、甲1製法発明における「アルコール分が11.0v/v%であり、」は、本件発明7における「アルコール度数を10v/v%以上に調整すること、」を満たしており、甲1製法発明における「カプロン酸エチルの濃度が1.85ppm又は1.62ppmである、」は、本件発明7における「カプロン酸エチル含有量を0.7mg/L以上10mg/L以下に調整すること、」を満たしている。
そうすると、両者は、
「アルコール度数を10v/v%以上に調整すること、
カプロン酸エチル含有量を0.7mg/L以上10mg/L以下に調整することを含む、
ビールテイスト飲料の製造方法。」
の点で一致し、
相違点甲1-2:本件発明7は「リナロール含有量を50μg/L以上610μg/L以下に調整することを含む、」と特定するのに対し、甲1製法発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、上記相違点甲1-2について検討する。
イ 相違点甲1-2について
相違点甲1-2は、実質的に相違点甲1-1と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同じ理由により、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 本件発明7についてのまとめ
よって、本件発明7は甲1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件発明8について
ア 本件発明8と甲1低減法発明との対比
本件発明8と甲1低減法発明とを対比すると、甲1低減法発明における「ビール」は、本件発明8における「ビールテイスト飲料」に相当し、甲1低減法発明における「アルコール分が11.0v/v%であり、」は、本件発明8における「アルコール度数を10v/v%以上に調整すること、」を満たしており、甲1低減法発明における「カプロン酸エチルの濃度が1.85ppm又は1.62ppmである、」は、本件発明8における「カプロン酸エチル含有量を0.7mg/L以上10mg/L以下に調整すること、」を満たしている。また、甲1低減法発明における「ビールの酢酸生成量を低減する方法」は、本件発明8における「ビールテイスト飲料のスムースさ及びドリンカビリティーを向上させる方法」と、成分含有量を調整する「方法」である限りにおいて一致する。
そうすると、両者は、
「アルコール度数を10v/v%以上に調整すること、
カプロン酸エチル含有量を0.7mg/L以上10mg/L以下に調整することを含む、
ビールテイスト飲料の成分調整方法。」
の点で一致し、
相違点甲1-3:本件発明8は「リナロール含有量を50μg/L以上610μg/L以下に調整することを含む、」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点
相違点甲1-4:本件発明8は「ビールテイスト飲料のスムースさ及びドリンカビリティーを向上させる方法」であるのに対し、甲1低減法発明は「ビールの酢酸生成量を低減する方法」である点
で相違する。
そこで、上記相違点甲1-3について検討する。
イ 相違点甲1-3について
相違点甲1-3は、実質的に相違点甲1-1と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同じ理由により、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 本件発明8についてのまとめ
よって、相違点甲1-4について検討するまでもなく、本件発明8は甲1低減法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~8は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如)により本件発明1~8についての特許を取り消すことはできない。
2.理由1-2(甲8に基づく進歩性欠如)について
(1)甲8に記載された事項
甲8には以下の事項が記載されている。記載事項は概ね申立人が提出した翻訳文に基づいて示す。翻訳の都合上、原文の表示とは異なる表形式で示す。
(8-1)「SUper Imperial IPA(SU)」(1/3頁表題)
(8-2)「
[図:0001415321000002.jpg]
[図:0001415321000003.jpg]
[図:0001415321000004.jpg]
[図:0001415321000005.jpg]
・・・
[図:0001415321000006.jpg]
」(1/3頁第1表~2/3頁第6表)
(2)甲8に記載された発明
甲8に記載された事項を整理すると、甲8には以下の発明が記載されている。
「ドイツ産-ピルスナー麦芽 2ポンド
ドイツ産-小麦麦芽 2ポンド
Columbus 0.10オンス
Columbus 0.15オンス
Columbus 0.25オンス
Citra 0.40オンス
乾燥酵母-Safbrew-General/Belgian Yeast S-33
を原料とする、オリジナルエキス比重1.113、外観エキス比重1.035、アルコール度数10.2v/v%、苦味価(IBU)70.6、色度SRM5.8、もろみpH n/aの、ビール。」(以下、「甲8発明」という。)
「乾燥酵母-Safbrew-General/Belgian Yeast S-33による発酵工程を有する甲8発明の製造方法。」(以下、「甲8製法発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲8発明との対比
本件発明1と甲8発明とを対比すると、甲8発明における「ビール」は、本件発明1における「ビールテイスト飲料」に相当し、甲8発明における「アルコール度数10.2v/v%」は、本件発明1における「アルコール度数が10v/v%以上であり、」を満たしている。
そうすると、両者は、
「アルコール度数が10v/v%以上である、
ビールテイスト飲料。」
の点で一致し、
相違点甲8-1:本件発明1は「カプロン酸エチル含有量が0.7mg/L以上10mg/L以下である、」と特定するのに対し、甲8発明はそのように特定されていない点
相違点甲8-2:本件発明1は「リナロール含有量が50μg/L以上610μg/L以下である、」と特定するのに対し、甲8発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、上記相違点甲8-1及び相違点甲8-2について検討する。
イ 相違点甲8-1及び相違点甲8-2について
甲8には、カプロン酸エチル含有量及びリナロール含有量について記載されておらず、また、他の証拠の記載を参照しても、甲8発明のビールにおけるカプロン酸エチル及びリナロールの含有量を具体的に特定することはできない。さらに、甲8及び他の証拠の記載を参照しても、甲8発明のビールにおいてカプロン酸エチル及びリナロールという特定の2成分に着目し、それらの含有量を相違点甲8-1及び相違点甲8-2に係る特定の範囲に特定する動機付けとなる記載は見いだせない。
よって、甲8発明において相違点甲8-1及び相違点甲8-2に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書29~30頁において、「甲10のNEIPAビールの中には、発酵性原料を、甲8と同じ種類の上面発酵酵母「SafAle S33」で発酵させたサンプル・・・があり(第27頁表1)、そのビールのカプロン酸エチル濃度は0.962mg/L(30頁表3)、リナロール濃度が100μg/L(32頁表5)と定量されている。そのビールは、・・・麦芽使用比率90%でなる発酵性原料から原麦汁エキス16°Pの麦汁を調製し、ワールプール、即ち麦汁煮沸の終了以降に、1kg/hLのホップを添加している。添加されるホップには、Citra種が含まれている(第27頁右欄下から第10行~第28頁右欄第14行、28頁表2)。
ビール中のカプロン酸エチル含有量は麦汁を発酵させる酵母の種類に依存し、リナロールの含有量は、麦汁に添加するホップの種類、添加量及び添加タイミングに依存して、増減することは技術常識である。
甲8のSUIPAビールと甲10のNEIPAビールとを対比すると、両者はIPAに相当する。製造過程では、ワールプールから麦汁にホップを添加するというタイミングが共通し、添加するホップの種類もCitra種で共通する。また、発酵に使用する酵母の種類がエール酵母S33で共通する。ホップの添加量のうちで麦汁煮沸終了後に添加した部分については、甲8の方が甲10よりも多くなっている。
そうすると、甲8のSUIPAビールには、少なくとも甲10と同様な量でカプロン酸エチル及びリナロールが導入されていると考えられ、甲8のSUIPAビールは構成B及びCを充足しているものと考えられる。」と主張している。
しかし、甲8の記載を参照しても、甲8発明が甲10に記載された「SafAle S33」を用いるNEIPAビールと完全に同一の原料及び製造工程を経て製造された同一のビールであるとは認められない。また、仮に、「ビール中のカプロン酸エチル含有量は麦汁を発酵させる酵母の種類に依存し、リナロールの含有量は、麦汁に添加するホップの種類、添加量及び添加タイミングに依存して、増減する」といえるとしても、それら以外の発酵原料及び製造条件も、ビール製品の最終的な成分組成に影響を及ぼすから、甲10の記載に基づいて甲8発明におけるカプロン酸エチル及びリナロールの含有量が相違点甲8-1及び相違点甲8-2に係る特定の範囲にあることを導き出すことはできない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、本件発明1は甲8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~6について
本件発明2~6は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。
そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~6は、いずれも甲8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明7について
ア 本件発明7と甲8製法発明との対比
上記(3)に記載した本件発明1と甲8発明との対比を踏まえて、本件発明7と甲8製法発明とを対比すると、両者は、
「アルコール度数を10v/v%以上に調整することを含む、
ビールテイスト飲料の製造方法。」
の点で一致し、
相違点甲8-3:本件発明7は「カプロン酸エチル含有量を0.7mg/L以上10mg/L以下に調整すること、」と特定するのに対し、甲8製法発明はそのように特定されていない点
相違点甲8-4:本件発明7は「リナロール含有量を50μg/L以上610μg/L以下に調整することを含む、」と特定するのに対し、甲8製法発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、上記相違点甲8-3及び相違点甲8-4について検討する。
イ 相違点甲8-3及び相違点甲8-4について
相違点甲8-3及び相違点甲8-4は、実質的に相違点甲8-1及び相違点甲8-2と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様の理由により、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 本件発明7についてのまとめ
よって、本件発明7は甲8製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件発明8について
ア 本件発明8と甲8製法発明との対比
甲8製法発明における「甲8発明の製造方法」は、本件発明8における「ビールテイスト飲料のスムースさ及びドリンカビリティーを向上させる方法」と、アルコール度数を調整する「方法」である限りにおいて一応一致する。そこで、上記(3)に記載した本件発明1と甲8発明との対比を踏まえて、本件発明8と甲8製法発明とを対比すると、両者は、
「アルコール度数を10v/v%以上に調整することを含む、
ビールテイスト飲料の製造方法。」
の点で一致し、
相違点甲8-5:本件発明8は「カプロン酸エチル含有量を0.7mg/L以上10mg/L以下に調整すること、」と特定するのに対し、甲8製法発明はそのように特定されていない点
相違点甲8-6:本件発明8は「リナロール含有量を50μg/L以上610μg/L以下に調整することを含む、」と特定するのに対し、甲8製法発明はそのように特定されていない点
相違点甲8-7:本件発明8は「ビールテイスト飲料のスムースさ及びドリンカビリティーを向上させる方法」であるのに対し、甲8製法発明は「甲8発明の製造方法」である点
で相違する。
そこで、事案に鑑み、上記相違点甲8-5及び相違点甲8-6について検討する。
イ 相違点甲8-5及び相違点甲8-6について
相違点甲8-5及び相違点甲8-6は、実質的に相違点甲8-1及び相違点甲8-2と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様の理由により、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 本件発明8についてのまとめ
よって、相違点甲8-7について検討するまでもなく、本件発明8は甲8製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)理由1-2(甲8に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~8は、いずれも甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、理由1-2(甲8に基づく進歩性欠如)により本件発明1~8についての特許を取り消すことはできない。
3.理由1-3(甲9に基づく進歩性欠如)について
(1)甲9に記載された事項
甲9には以下の事項が記載されている。記載事項は概ね申立人が提出した翻訳文に基づいて示す。翻訳の都合上、原文の表示とは異なる表形式で示す。
(9-1)「Peppa Pig[NE DIPA]」(1/4頁表題)
(9-2)「
[図:0001415321000007.jpg]
[図:0001415321000008.jpg]
[図:0001415321000009.jpg]
[図:0001415321000010.jpg]
・・・
[図:0001415321000011.jpg]
」(1/4頁第1表~3/4頁第6表)
(2)甲9に記載された発明
甲9に記載された事項を整理すると、甲9には以下の発明が記載されている。
「イギリス産-Golden Promise麦芽 8.50ポンド
オーツ麦フレーク 0.75ポンド
イギリス産-オーツ麦麦芽 0.50ポンド
ハニー麦芽 0.25ポンド
Yakima Valley Hops-Mt Hood 0.60オンス
Mosaic 1オンス
Citra 1オンス
Amarillo 1オンス
Mosaic LupuLN2 1オンス
Citra LupuLN2 1オンス
Amarillo 1オンス
Fermentis-Safale-English エール酵母 S-04
Fermentis-Safale-WB06
Fermentis-Safbrew-Specialty Ale Yeast T-58
を原料とする、オリジナルエキス比重1.101、外観エキス比重1.024、アルコール度数10.1v/v%、苦味価(IBU)68.7、色度SRM9.0、もろみpH5.8の、ビール。」(以下、「甲9発明」という。)
「Fermentis-Safale-English エール酵母 S-04、Fermentis-Safale-WB06及びFermentis-Safbrew-Specialty Ale Yeast T-58による発酵工程を有する甲9発明の製造方法。」(以下、「甲9製法発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲9発明との対比
本件発明1と甲9発明とを対比すると、甲9発明における「ビール」は、本件発明1における「ビールテイスト飲料」に相当し、甲9発明における「アルコール度数10.1v/v%」は、本件発明1における「アルコール度数が10v/v%以上であり、」を満たしている。
そうすると、両者は、
「アルコール度数が10v/v%以上である、
ビールテイスト飲料。」
の点で一致し、
相違点甲9-1:本件発明1は「カプロン酸エチル含有量が0.7mg/L以上10mg/L以下である、」と特定するのに対し、甲9発明はそのように特定されていない点
相違点甲9-2:本件発明1は「リナロール含有量が50μg/L以上610μg/L以下である、」と特定するのに対し、甲9発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、上記相違点甲9-1及び相違点甲9-2について検討する。
イ 相違点甲9-1及び相違点甲9-2について
甲9には、カプロン酸エチル含有量及びリナロール含有量について記載されておらず、また、他の証拠の記載を参照しても、甲9発明のビールにおけるカプロン酸エチル及びリナロールの含有量を具体的に特定することはできない。さらに、甲9及び他の証拠の記載を参照しても、甲9発明のビールにおいてカプロン酸エチル及びリナロールという特定の2成分に着目し、それらの含有量を相違点甲9-1及び相違点甲9-2に係る特定の範囲に特定する動機付けとなる記載は見いだせない。
よって、甲9発明において相違点甲9-1及び相違点甲9-2に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書31~32頁において、「甲10のNEIPAビールの中には、発酵性原料を、甲9と同じ種類の上面発酵酵母「SafAle S04」「SafAle T58」で発酵させたサンプルがあり(第27頁表1)、そのビールのカプロン酸エチル濃度は1.159mg/L(30頁表3)、0.828mg/L(31頁表4)、リナロール濃度が106μg/L(32頁表5)、110μg/L(33頁表6)と定量されている。そのビールは、麦芽使用比率90%でなる発酵性原料から原麦汁エキス16°Pの麦汁を調製し、ワールプール及びドライホッピング、即ち麦汁煮沸の終了以降に、1kg/hLのホップを添加している。添加されるホップには、Citra、Mosaic種が含まれている(第27頁右欄下から第10行~第28頁右欄第14行、28頁表2)。
ビール中のカプロン酸エチル含有量は麦汁を発酵させる酵母の種類に依存し、リナロールの含有量は、麦汁に添加するホップの種類、添加量及び添加タイミングに依存して、増減することは技術常識である。
甲9のNE DIPAビールと甲10のNEIPAビールとを対比すると、両者はIPAに相当する。製造過程では、ワールプール、ドライホッピングにより麦汁にホップを添加するというタイミングが共通し、添加するホップの種類もCitra、Mosaic種で共通する。また、発酵に使用する酵母の種類がエール酵母S04、T85で共通する。ホップの添加量のうちで麦汁煮沸終了後に添加した部分については、甲9の方が甲10よりも多くなっている。
そうすると、甲9のNE DIPAビールには、少なくとも甲10と同様な量でカプロン酸エチル及びリナロールが導入されていると考えられ、甲9のNE DIPAビールは構成B及びCを充足しているものと考えられる。」と主張している。
しかし、甲9の記載を参照しても、甲9発明が甲10に記載された「SafAle S04」又は「SafAle T58」をそれぞれ単独で用いるNEIPAビールと完全に同一の原料及び製造工程を経て製造された同一のビールであるとは認められない。また、仮に、「ビール中のカプロン酸エチル含有量は麦汁を発酵させる酵母の種類に依存し、リナロールの含有量は、麦汁に添加するホップの種類、添加量及び添加タイミングに依存して、増減する」といえるとしても、それら以外の発酵原料及び製造条件も、ビール製品の最終的な成分組成に影響を及ぼすから、甲10の記載に基づいて甲9発明におけるカプロン酸エチル及びリナロールの含有量が相違点甲9-1及び相違点甲9-2に係る特定の範囲にあることを導き出すことはできない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、本件発明1は甲9発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~6について
本件発明2~6は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。
そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~6は、いずれも甲9発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明7について
ア 本件発明7と甲9製法発明との対比
上記(3)に記載した本件発明1と甲9発明との対比を踏まえて、本件発明7と甲9製法発明とを対比すると、両者は、
「アルコール度数を10v/v%以上に調整することを含む、
ビールテイスト飲料の製造方法。」
の点で一致し、
相違点甲9-3:本件発明7は「カプロン酸エチル含有量を0.7mg/L以上10mg/L以下に調整すること、」と特定するのに対し、甲9製法発明はそのように特定されていない点
相違点甲9-4:本件発明7は「リナロール含有量を50μg/L以上610μg/L以下に調整することを含む、」と特定するのに対し、甲9発製法明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、上記相違点甲9-3及び相違点甲9-4について検討する。
イ 相違点甲9-3及び相違点甲9-4について
相違点甲9-3及び相違点甲9-4は、実質的に相違点甲9-1及び相違点甲9-2と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様の理由により、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 本件発明7についてのまとめ
よって、本件発明7は甲9製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件発明8について
ア 本件発明8と甲9製法発明との対比
甲9製法発明における「甲9発明の製造方法」は、本件発明8における「ビールテイスト飲料のスムースさ及びドリンカビリティーを向上させる方法」と、アルコール度数を調整する「方法」である限りにおいて一応一致する。そこで、上記(3)に記載した本件発明1と甲9発明との対比を踏まえて、本件発明8と甲9製法発明とを対比すると、両者は、
「アルコール度数を10v/v%以上に調整することを含む、
ビールテイスト飲料の製造方法。」
の点で一致し、
相違点甲9-5:本件発明8は「カプロン酸エチル含有量を0.7mg/L以上10mg/L以下に調整すること、」と特定するのに対し、甲9製法発明はそのように特定されていない点
相違点甲9-6:本件発明8は「リナロール含有量を50μg/L以上610μg/L以下に調整することを含む、」と特定するのに対し、甲9製法発明はそのように特定されていない点
相違点甲9-7:本件発明8は「ビールテイスト飲料のスムースさ及びドリンカビリティーを向上させる方法」であるのに対し、甲9製法発明は「甲9発明の製造方法」である点
で相違する。
そこで、事案に鑑み、上記相違点甲9-5及び相違点甲9-6について検討する。
イ 相違点甲9-5及び相違点甲9-6について
相違点甲9-5及び相違点甲9-6は、実質的に相違点甲9-1及び相違点甲9-2と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様の理由により、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 本件発明8についてのまとめ
よって、相違点甲9-7について検討するまでもなく、本件発明8は甲9製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)理由1-3(甲9に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~8は、いずれも甲9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、理由1-3(甲9に基づく進歩性欠如)により本件発明1~8についての特許を取り消すことはできない。
4.理由2(サポート要件違反)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件発明の課題について
本件明細書の[0005]等の記載から見て、本件発明1~6の課題は「アルコール度数の高いビールテイスト飲料であって、スムースさ及びドリンカビリティーが向上したビールテイスト飲料を提供すること」にあり、本件発明7の課題は「アルコール度数の高いビールテイスト飲料であって、スムースさ及びドリンカビリティーが向上したビールテイスト飲料の製造方法を提供すること」にあり、本件発明8の課題は「アルコール度数の高いビールテイスト飲料のスムースさ及びドリンカビリティーを向上させる方法を提供すること」にあるものと認められる。
(3)本件明細書の記載事項
本件明細書の[0007]、[0008]及び[0010]には、「本発明の一実施形態に係るビールテイスト飲料は、カプロン酸エチル含有量が0.7mg/L以上であり、かつ、リナロール含有量が5μg/L以上であるため、アルコール度数が10v/v%以上でありながら、スムースさ及びドリンカビリティーに優れている」こと、「カプロン酸エチル含有量が10mg/L以下であってもよい。この場合、スムースさ及びドリンカビリティーがより向上する」こと、及び「リナロール含有量が、610μg/L以下であってもよい。この場合、スムースさ及びドリンカビリティーがより向上する」ことが記載されている。また、[0020]~[0022]にはアルコール度数の好ましい範囲及び調整方法が記載され、[0023]~[0025]にはカプロン酸エチル含有量の好ましい範囲及び調整方法が記載され、[0026]~[0028]にはリナロール含有量の好ましい範囲及び調整方法が記載され、[0029]~[0042]にはビールテイスト飲料の原料及び苦味価、色度、提供の形態等について記載され、[0043]~[0060]にはより具体的なビールテイスト飲料の製造方法及びビールテイスト飲料のスムースさ及びドリンカビリティーを向上させる方法が記載されている。さらに、[0061]~[0067]には実施例及び比較例が記載されており、アルコール度数が14.7v/v%であるがカプロン酸エチル含有量及びリナロール含有量がいずれも一般記載において好ましいとされる含有量に達していない試験例1を基準として官能評価が行われたこと、及び[0065]の[表1]には、主にリナロール含有量を103μg/Lに固定しカプロン酸エチル含有量を0.56~9.06の範囲で変化させた例の評価結果、[0066]の[表2]には、主にカプロン酸エチル含有量を1.56mg/Lに固定しリナロール含有量を3~603μg/Lの範囲で変化させた例の評価結果が記載されており、いずれも試験例1よりスムースさ、ドリンカビリティー及びビールとしての総合評価の評点が向上したことが読み取れる。
(4)サポート要件についての判断
当業者は本件明細書に記載された原料及び製造条件を用いることにより、本件明細書において好ましい範囲とされているアルコール度数が10v/v%以上、カプロン酸エチル含有量が0.7mg/L以上10mg/L以下、リナロール含有量が5μg/L以上610μg/L以下であるビールテイスト飲料を製造することができると理解することができる。また、当業者は、実施例及び比較例の評価結果を参酌することにより、一般記載において好ましいとされているアルコール度数、カプロン酸エチル含有量及びリナロール含有量の条件を満たすビールテイスト飲料は、スムースさ、ドリンカビリティー及びビールとしての総合評価において実際に好ましいと評価されるものであることが裏付けられていると理解することができ、ビールに含まれる成分のうち、特にカプロン酸エチル及びリナロールの二成分の含有量に着目して高アルコール濃度のビールテイスト飲料を調製することにより、「アルコール度数の高いビールテイスト飲料であって、スムースさ及びドリンカビリティーが向上したビールテイスト飲料を提供する」という課題を解決し得ると理解することができる。
そうすると、当業者は、本件明細書の記載に基づいて、「アルコール度数が10v/v%以上であり、カプロン酸エチル含有量が0.7mg/L以上10mg/L以下であり、リナロール含有量が5μg/L以上610μg/L以下であるビールテイスト飲料」は、本件発明の課題を解決することができるものと理解し、さらに、[0026]及び[0066]の[表2]に記載された試験例9~試験例11の評価結果を参酌すると、「アルコール度数が10v/v%以上であり、カプロン酸エチル含有量が0.7mg/L以上10mg/L以下であり、リナロール含有量が50μg/L以上610μg/L以下であるビールテイスト飲料」は、ドリンカビリティーがさらに向上し、本件発明の課題を解決することができるものと理解することができる。
そして、本件発明1は上記範囲に包含されるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、または出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明2~6、並びに本件発明1と同様の成分含有量の特定を含む本件発明7及び8も、本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、または出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(5)申立人の主張について
申立人は、上記第3 1.(4)ア及びイに記載したような主張をしているので、以下、検討する。
ア 効果を達成する理由について
本件明細書には、実施例及び比較例として、アルコール度数の高いビールテイスト飲料においてカプロン酸エチル及びリナロールの含有量が特定の範囲に調整されることにより、一定の傾向をもってスムースさ、ドリンカビリティー及びビールとしての総合評価が向上することが記載されているから、その作用機序についての説明はなくとも、当業者は、本件明細書の一般記載に好ましいと記載されている範囲のアルコール度数、カプロン酸エチル含有量及びリナロール含有量を備えたアルコール度数の高いビールテイスト飲料であれば、発明の課題を解決できることを理解することができる。
イ 数値範囲について
また、ビールテイスト飲料においてアルコール度数、カプロン酸エチル含有量及びリナロール含有量は特殊なパラメータではなく、本件明細書に記載された原材料及び製造条件を用いて容易に調整することができることを当業者は理解することができ、また、実施例及び比較例に示されたカプロン酸エチル含有量及びリナロールの含有量とスムースさ、ドリンカビリティー及びビールとしての総合評価の評点の変化の傾向から、当業者は本件発明1に特定されるアルコール度数、カプロン酸エチル含有量及びリナロール含有量の範囲において、官能評価の結果は概ね連続的に変化するものと理解することができるから、カプロン酸エチル含有量及びリナロール含有量が本件発明1に特定される下限域であるビールテイスト飲料についても一定の官能評価の向上が得られ、発明の課題を解決できるものと当業者は理解することができる。
よって、申立人の主張はいずれも採用することができない。
(6)理由2(サポート要件違反)についてのまとめ
以上のことから、本件発明1~8は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、理由2(サポート要件違反)により本件発明1~8についての特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明1~8についての特許は、上記のいずれの特許異議申立理由によっても取り消すことはできない。
また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700407