審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-700207

ビールテイスト飲料

審判番号
2024-700207
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-158543
登録番号
7339409
請求日
2024年03月05日
審決日
2025年06月25日
公報発行日
2025年10月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】サッポロビール株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】坂西 俊明
  • 【権利者代理人】和田 雄二
  • 【権利者代理人】田村 明照
  • 【異議申立人】杉浦 健文
  • 【異議申立人】竹口 美穂
審判長/審判官
  • 審判長 柴田 昌弘
  • 審判官 植前 充司
  • 審判官 加藤 友也
分類
P1651.537-YAA(C12C) / P1651.113-YAA(C12C) / P1651.121-YAA(C12C) / P1651.536-YAA(C12C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項2号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第3項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7339409号発明「ビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7339409号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、8及び9について訂正することを認める。 特許第7339409号の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許を維持する。 特許第7339409号の請求項4に係る特許についての特許異議の申し立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7339409号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、令和4年9月30日の出願であって、令和5年8月28日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年9月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年3月5日に特許異議申立人 杉浦 健文(以下、「特許異議申立人A」という。)及び特許異議申立人 竹口 美穂(以下、「特許異議申立人B」という。)それぞれから特許異議の申立て(対象請求項はいずれも請求項1ないし9)がされ、同年4月19日付けで取消理由が通知され、同年6月5日に特許権者 サッポロビール株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月24日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年7月26日に特許異議申立人A及びBそれぞれから意見書が提出され、同年9月2日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年10月31日に特許権者から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年12月12日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、令和7年1月14日に特許異議申立人Aから意見書が提出され、同年同月15日に特許異議申立人Bから意見書が提出され、同年3月6日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年5月2日に特許権者から訂正請求がされるとともに意見書が提出されたものである。 なお、令和6年6月5日及び同年10月31日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 また、既に特許異議申立人A及びBに意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和7年5月2日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第6及び7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断し、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときといえるから、特許異議申立人A及びBに再度の意見書の提出の機会を与えていない。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和7年5月2日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「アルコール度数が11v/v%以上であり、4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下である、ビールテイスト飲料。」とあるのを、「アルコール度数が12v/v%以上であり、4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下であり、有機酸を含有し、前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、前記リンゴ酸の含有量が400mg/L以下であり、前記クエン酸の含有量が300mg/L以下であり、前記乳酸の含有量が250mg/L以下である、ビールテイスト飲料。」に訂正する。併せて、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5及び6も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5に「有機酸を含有し、前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、前記リンゴ酸の含有量が400mg/L以下であり、前記クエン酸の含有量が300mg/L以下であり、前記乳酸の含有量が250mg/L以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。」とあるのを、「前記リンゴ酸の含有量が67mg/L以上365mg/L以下であり、前記クエン酸の含有量が136mg/L以上243mg/L以下であり、前記乳酸の含有量が117mg/L以上202mg/L以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7に「蒸留アルコールを含有しない、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。」とあるのを、「アルコール度数が11v/v%以上であり、4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下であり、有機酸を含有し、前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、前記リンゴ酸の含有量が400mg/L以下であり、前記クエン酸の含有量が300mg/L以下であり、前記乳酸の含有量が250mg/L以下であり、蒸留アルコールを含有しない、ビールテイスト飲料。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8に「アルコール度数を11v/v%以上に調整すること、及び、 4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下に調整することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法。」とあるのを、「有機酸を含有し、蒸留アルコールを含有しないビールテイスト飲料の製造方法であって、前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、アルコール度数をllv/v%以上に調整すること、4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下に調整すること、リンゴ酸の含有量を400mg/L以下に調整すること、クエン酸の含有量を300mg/L以下に調整すること、及び、乳酸の含有量を250mg/L以下に調整することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項9に「アルコール度数を11v/v%以上に調整すること、及び、4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下に調整することを含む、ビールテイスト飲料のボディ感を向上させる方法。」とあるのを、「有機酸を含有するビールテイスト飲料のボディ感を向上させる方法であって、前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、アルコール度数をllv/v%以上に調整すること、4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下に調整すること、リンゴ酸の含有量を400mg/L以下に調整すること、クエン酸の含有量を300mg/L以下に調整すること、及び、乳酸の含有量を250mg/L以下に調整することを含む、ビールテイスト飲料のボディ感を向上させる方法。」に訂正する。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1についての訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、「ビールテイスト飲料」のアルコール度数の数値範囲をより狭い範囲に限定するとともに、当該「ビールテイスト飲料」を「有機酸を含有」するものに特定し、さらに「有機酸」の種類及び種類毎の含有量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)請求項2、3及び6についての訂正について 訂正事項1による請求項2、3及び6についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項2、3及び6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)請求項4についての訂正について 訂正事項2による請求項4についての訂正は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)請求項5についての訂正について 訂正事項1による請求項5についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項3による請求項5についての訂正は、訂正事項1による請求項1についての訂正に伴い、重複する記載を整理するとともに、リンゴ酸、クエン酸及び乳酸それぞれの含有量の範囲をより狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項1及び3による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)請求項7についての訂正について 訂正事項4による請求項7についての訂正は、訂正前の請求項7が請求項1又は2を引用していたものを、請求項2を引用するものを削除し、請求項1を引用するものについて請求項1の記載を引用しない独立形式に書き下すとともに、「ビールテイスト飲料」を「有機酸を含有」するものに特定し、さらに「有機酸」の種類及び種類毎の含有量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項4による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)請求項8についての訂正について 訂正事項5による請求項8についての訂正は、「ビールテイスト飲料」を「有機酸を含有し、蒸留アルコールを含有しない」ものに特定した上で、「有機酸」の種類及び種類毎の含有量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項5による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)請求項9についての訂正について 訂正事項6による請求項9についての訂正は、「ビールテイスト飲料」を「有機酸を含有する」ものに特定した上で、「有機酸」の種類及び種類毎の含有量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項6による請求項9についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1ないし6による請求項1ないし9についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1、3又は4号に掲げる事項を目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし6による請求項1ないし9についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1ないし7は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1ないし4による請求項1ないし7についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、訂正事項5による請求項8についての訂正は、請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第3項の規定に適合する。 さらに、訂正事項6による請求項9についての訂正は、請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第3項の規定に適合する。 そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし9に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、8及び9について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 アルコール度数が12v/v%以上であり、 4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下であり、 有機酸を含有し、 前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、 前記リンゴ酸の含有量が400mg/L以下であり、 前記クエン酸の含有量が300mg/L以下であり、 前記乳酸の含有量が250mg/L以下である、ビールテイスト飲料。 【請求項2】 前記アルコール度数が、12v/v%以上19v/v%以下である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。 【請求項3】 前記4-ビニルグアイアコールの含有量が、110μg/L以上410μg/L以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 前記リンゴ酸の含有量が67mg/L以上365mg/L以下であり、 前記クエン酸の含有量が136mg/L以上243mg/L以下であり、 前記乳酸の含有量が117mg/L以上202mg/L以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。 【請求項6】 麦芽使用比率が50.0w/w%以上66.6w/w%以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。 【請求項7】 アルコール度数が11v/v%以上であり、 4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下であり、 有機酸を含有し、 前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、 前記リンゴ酸の含有量が400mg/L以下であり、 前記クエン酸の含有量が300mg/L以下であり、 前記乳酸の含有量が250mg/L以下であり、 蒸留アルコールを含有しない、ビールテイスト飲料。 【請求項8】 有機酸を含有し、蒸留アルコールを含有しないビールテイスト飲料の製造方法であって、 前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、 アルコール度数をllv/v%以上に調整すること、 4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下に調整すること、 リンゴ酸の含有量を400mg /L以下に調整すること、 クエン酸の含有量を300mg/L以下に調整すること、及び、 乳酸の含有量を250mg/L以下に調整することを含む、 ビールテイスト飲料の製造方法。 【請求項9】 有機酸を含有するビールテイスト飲料のボディ感を向上させる方法であって、 前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、 アルコール度数をllv/v%以上に調整すること、 4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下に調整すること、 リンゴ酸の含有量を400mg/L以下に調整すること、 クエン酸の含有量を300mg /L以下に調整すること、及び、 乳酸の含有量を250mg/L以下に調整することを含む、 ビールテイスト飲料のボディ感を向上させる方法。」 第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等 1 特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等 令和6年3月5日に特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書A」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 (1)申立理由A1(甲第A1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、3ないし6及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明2ないし7及び9は、甲第A1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由A2(甲第A2号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由A3(甲第A3号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由A4(甲第A4号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由A5(甲第A5号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由A6(甲第A6号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A6号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (7)申立理由A7(実施可能要件)及び申立理由A8(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)又は同法同条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア (実施可能要件) 本件特許発明が「アルコール度数が11v/v%以上である、ビールテイスト飲料」に関するものであるところ、アルコール度数が11v/v%以上とすることについてスピリッツを添加することについて具体的に開示されているが、その他の方法でアルコール度数を調製する具体的な方法が記載されていない。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が明細書及び図面に記載された発明の実施についての説明と出願時の技術常識とに基づいて「アルコール度数が11v/v%以上であるビールテイスト飲料」を実施しようとした場合に「アルコール源を添加する方法」以外にどのように実施するかを理解できず、当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていない。 イ (実施可能要件又はサポート要件) 本件特許明細書の実施例の評価試験からでは,アルコール、4-ビニルグアイアコール、リンゴ酸、クエン酸、乳酸の含有量が所定の範囲となった場合に、ボディ感に優れたビールテイスト飲料が得られること、およびボディ感を向上できることを当業者が理解できるとはいえない。 そうすると、甲第A17号証に記載のとおり、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1ないし9の構成要件によって課題が解決できることを当業者において認識できるように記載されていない。従って、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に違反しているものである。また、ボディ感に影響を及ぼす成分として糖質濃度など考慮すべき事項があるのであれば、実施可能要件を欠くものである。 ウ (実施可能要件又はサポート要件) 本件特許発明の課題は、「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供する」(段落0005)ものである。 試験例1-11はアルコール度数が12.8v/v%であり、かつ4-ビニルグアイアコールは301μg/L含むビールテイスト飲料である。しかしながら、試験例1-11のボディ感の評点の平均は「2.4」であり、試験例1-1の「2.0」と比較して有効な差異が認識できおらず、請求項に記載された発明により「ボディ感に優れたビールテイスト飲料」を提供できると当業者が認識できない。そもそも、官能評価による基準が客観性に足るものではないため、どの程度であれば優れたボディ感であると認識できるかも不明である。所定のアルコールおよび4-ビニルグアイアコールに固定した有機酸に関する試験例2についても同様である。 したがって、「ボディ感に優れたビールテイスト飲料」が提供できることを当業者は認識することはできず、サポート要件を満たしているとはいえないし、本件特許発明を実施することができない。 (8)証拠方法 甲第A1号証:International Journal of Food Microbiology,374,109724、2022年5月20日(オンライン公開日),ELSEVIER 甲第A2号証:特開2020-191809号公報 甲第A3-1号証:High gravity brewing: Effects of aeration on fermentation ability, flavor compounds, and lipid composition of brewer’s yeast, American Society of Brewing Chemists 2013 Annual Meeting Proceedings, Oral Presentations No.31、2013年(発行日)、American Society of Brewing Chemists 甲第A3-2号証:学会のプロシーディング(https://www.asbcnet.org/events/archives/2013Proceedings/pages/default.aspx)、2013年(掲載日)、American Society of Brewing Chemists 甲第A3-3号証:口頭発表のプロシーディング(https://www.asbcnet.org/events/archives/2013Proceedings/pages/oral.aspx)、2013年(発行日)、American Society of Brewing Chemists 甲第A3-4号証:要旨集(https://www.asbcnet.org/events/archives/2013Proceedings/Documents/2013Abstracts.pdf#nameddest=31)、2013年(発行日)、American Society of Brewing Chemists 甲第A4号証:特開2016-152781号公報 甲第A5号証:特開2017-118824号公報 甲第A6号証:特開2019-24469号公報 甲第A7号証:Jupiler pilsnerの製品詳細、2020年4月、GNPD 甲第A8号証:醸造物の成分、1999年12月10日、財団法人日本醸造協会、p236-241 甲第A9号証:特開2018-57350号公報 甲第A10号証:ボディとは?その意味を解説、ビール用語集(https://web.archive.org/web/20200117022241/https://craft-beer.life/dictionary/3270)、CRAFTERS LLC 甲第A11号証:国際公開第2014/097850号 甲第A12号証:醸協、71巻第7号、醸造成分 第1章 ビールの一般成分、1976年、日本醸造協会雑誌 甲第A13号証:出願経過における上申書、2023年7月20日、特許権者 甲第A14号証:EUにおける食品ラベル表示に関する規制、2014年3月、ジェトロ・ブリュッセル事務所 甲第A15号証:特開2012-38号公報 甲第A16号証:平成30年(行ケ)第10076号判決、平成31年3月13日(判決日)、知財高裁 甲第A17号証:平成28年(行ケ)第10147号判決、平成29年6月8日(判決日)、知財高裁 甲第A18号証:日本味と匂学会誌、6(2)、139-144、1999年8月、日本味と匂学会 なお、甲第A18号証は、令和7年1月14日に提出された意見書に添付されたものである。 証拠の表記は、特許異議申立書A及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲A1」のようにいう。 2 特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等 令和6年3月5日に特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書B」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 (1)申立理由B1(甲第B1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3及び6ないし8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし9は、甲第B1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由B2(甲第B2号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由B3(甲第B3号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3、7及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし8は、甲第B3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由B4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア サポート要件違反1 本件特許発明の課題は、「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供すること」(明細書【0005】)とされている。 試験例2-7は本件特許発明1に含まれるが、「ボディ感」の評点が1.3であり、本件特許発明1の範囲に含まれない試験例2-1よりも低く「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供すること」という課題を解決できないものとなっている。 また、試験例2-7は、「ビールとしての総合評価」の評点が1.0、すなわち最低点であり、本件特許発明1の範囲に含まれない試験例2-1の評点と同じである。 試験例2-9は本件特許発明1に含まれるが、「ボディ感」の評点が2.0であり、本件特許発明1の範囲に含まれない試験例2-1と同じであり「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供すること」という課題を解決できないものとなっている。 試験例2-11は本件特許発明1に含まれるが、「ボディ感」の評点が1.8であり、本件特許発明1の範囲に含まれない試験例2-1より低く「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供すること」という課題を解決できないものとなっている。 すなわち、本件特許発明1に含まれるにも関わらず、本件特許発明1が解決すべき課題を解決できず、ビールとしての評点が最低であるものが存在していることから、本件特許発明1はサポート要件違反の取消理由を有する。 本件特許発明2ないし4及び6ないし9についても同様にサポート要件違反の取消理由を有する。 イ サポート要件違反2 本件特許明細書に記載された実施例により裏付けられているものは、スピリッツを含み、スピリッツの添加によりアルコール度数を調整したビールテイスト飲料のみである。 「スピリッツを含むこと」が特定されていない本件特許発明1は、実施例により裏付けられていないといえ、サポート要件違反の取消理由を有する。 本件特許発明2ないし9についても同様にサポート要件違反の取消理由を有する。 さらに、スピリッツが蒸留アルコールであることから「蒸留アルコールを含有しない」と規定する本件特許発明7はサポート要件違反の取消理由を特に有するものといえる。 ウ サポート要件違反3 本件特許発明1では4VGの濃度が60μg/L以上550μg/L以下であることが特定されているが、本件特許発明1に含まれる試験例で最も4VGの濃度が低いものは試験例1-2で75μg/Lであり、60μg/L以上、75μg/L末満の範囲については実施例でサポートされていない。 また、本件特許発明1に含まれる試験例で最も4VGの濃度が高いものは試験例1-8で522μg/Lであり、522μg/Lを超え、550μg/L以下の範囲については実施例でサポートされていない。 従って、本件特許発明1はサポート要件違反の取消理由を有する。 本件特許発明2及び4ないし9についても同様にサポート要件違反の取消理由を有する エ サポート要件違反4 本件特許明細書に記載された実施例の表1では4VGの含有量を変化させてボディ感の評価及びビールとしての総合評価を行っている。4VGの含有量が多くなるとボディ感が向上する傾向があるが、試験例1-7~1-9では4VGの含有量を増やしても、試験例1-6に比べてボディ感の向上効果は得られず、ビールとしての総合評価が低下する。すなわち、4VGの含有量を試験例1-7~1-9の480μg/L以上とする範囲は、ボディ感の向上効果が得られず、ビールとしての総合評価を向上する効果が発揮されない範囲であるといえる。 すなわち、ビールとしての総合評価が低い範囲が含まれる本件特許発明1はサポート要件違反の取消理由を有する。 本件特許発明2及び4ないし9についても同様にサポート要件違反の取消理由を有する。 (5)申立理由B5(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・本件特許発明1では、アルコール度数が11v/v%以上とのみ定められていて、上限値が定められていない。上限又は下限だけを示すような数値範囲限定がある場合は、発明の範囲が不明確になる旨が、特許実用新案審査基準に定められており、本件特許発明1は明確性要件違反の取消理由を有する。 本件特許発明2ないし9についても同様に明確性要件違反の取消理由を有する。 (6)証拠方法 甲第B1号証:特開2020-191809号公報 甲第B2号証:特開2020-195300号公報 甲第B3号証:国際公開2014/097850号 甲第B4号証:特開2012-60930号公報 甲第B5号証:「English Barleywine: The Grandfather of the Beer World」、2017.4.28[検索日2024.2.29],インターネット:<URL:https://learn.kegerator.com/english-barleywine/> 甲第B6号証:酒税法及び酒類行政関係法令通達集(令和3年7月6日改正)、法令出版株式会社、令和3年8月2日発行、42-43頁 甲第B7号証:醸造物の成分,財団法人日本醸造協会,平成11年12月10日発行、p226、236、237 甲第B8号証:International Journal of Food Microbiology,374,109724、2022年5月20日(オンライン公開日),ELSEVIER 甲第B9号証:J.Ind Microbiol Biotechnol(2011)38:1133-1144 甲第B10号証:Journal of the American Society of Brewing Chemists,44:4,(1986) : 158-161 甲第B11号証:「Smoked braggot」、2016.12.23[検索日2025.1.9]、インターネット:<URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/409914/smoked-braggot> 甲第B12号証:「Stout Braggot2」、2017.4.24[検索日2025.1.9]、インターネット:<URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/484111/stout-braggot-2> 甲第B13号証:「Awesome Recipe」、2020.3.8[検索日2025.1.10]、インターネット:<URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/print/959978> 甲第B14号証:「PB IMP Porter」、2020.6.21[検索日2025.1.9]、インターネット:<URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/1011668/pb-imp-porter> 甲第B15号証:「Rochefort 10 Clone」、[検索日2025.1.10]、インターネット:<URL:https://beersmithrecipes.com/viewrecipe/896643/rochefort-10-clone> 甲第B16号証:「RECIPES Dogfish Head 120 Minute IPA」、2005年11月/12月、[検索日2025.1.10]、インターネット:<URL:https://www.homebrewersassociation.org/homebrew-recipe/dogfish-head-120-minute-ipa/> 甲第B17号証:J.Agric.Food Chem.1999, 47, 987-990 甲第B18号証:J.Am.Soc.Brew.Chem. 73 (3) :275-279, 2015 甲第B19号証:J.Inst.Brew.Vol.80 1974,474-483 甲第B20号証:Lebensm.-Wiss.u.-Technol., 32,535-539(1999) 甲第B21号証:Anal.Chem.2004,76,4790-4798 なお、甲第B8号証は、令和6年7月26日に提出された意見書に添付されたものであり、甲第B9ないしB21号証は、令和7年1月15日に提出された意見書に添付されたものである。 証拠の表記は、特許異議申立書B及び上記意見書の記載におおむね従った。 甲B1は甲A2と同じものであり、甲B3は甲A11と同じものである。 第5 取消理由(決定の予告)の概要 令和7年3月6日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。 (サポート要件) 本件特許の請求項2ないし4及び6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 なお、該取消理由(決定の予告)は申立理由B4のアと、対象請求項は完全には一致しないものの、おおむね同旨である 1 発明の詳細な説明の【0005】には「本発明者らは、上記事情に鑑みて鋭意研究を行った結果、アルコール度数の高いビールテイスト飲料に対して4-ビニルグアイアコールを特定量含有させることで、ボディ感に優れたビールテイスト飲料が得られることを見出した。」と記載され、同【0006】ないし【0014】、【0019】及び【0022】には、形式的には、本件特許発明1ないし4及び6ないし9に対応する記載がある。 発明の詳細な説明の【0017】ないし【0034】及び【0047】ないし【0064】には、本件特許発明1ないし4及び6ないし9の各発明特定事項について具体的な記載がある。 発明の詳細な説明の【0065】ないし【0080】には、本件特許発明1ないし4及び6ないし9の実施例について具体的に記載されている。 2 しかし、発明の詳細な説明の【0065】ないし【0080】に記載された試験例2-7(リンゴ酸の含有量が514μg/L)、試験例2-9(クエン酸の含有量が328μg/L)及び試験例2-11(乳酸の含有量が266μg/L)は、「ボディ感」の評点が、それぞれ「1.3」、「2.0」及び「1.8」であり、本件特許発明2の発明特定事項を全て満たしているにもかかわらず、本件特許発明2の発明特定事項を満たしていない試験例1-1及び2-1(いずれも「ボディ感」の評点は「2.0」である。)よりも、「ボディ感」の評点が同じか劣っている。 3 また、発明の詳細な説明の【0065】ないし【0080】の記載から、リンゴ酸の含有量、クエン酸の含有量及び乳酸の含有量のいずれが増加しても、「ボディ感」が弱くなる傾向が読み取れるから、アルコール度数及び4-ビニルグアイアコールを試験例2-2ないし2-11と同じ条件にし、リンゴ酸の含有量を514μg/L、クエン酸の含有量を328μg/L及び乳酸の含有量を266μg/Lにしたもの(本件特許発明2の発明特定事項を全て満たしている。)は、試験例2-7、試験例2-9及び試験例2-11よりもさらに「ボディ感」の評点は劣るものになる、すなわち「ボディ感」の評点は試験例2-7の「1.3」より低くなる蓋然性が高い。 4 そうすると、発明の詳細な説明の記載からは、リンゴ酸、クエン酸及び乳酸いずれの含有量も「ボディ感」に影響し、リンゴ酸、クエン酸及び乳酸いずれかの量を増加させるとボディ感が弱くなり、所定量以上になるとボディ感が基準(ボディ感の評点が「2.0」の試験例1-1及び試験例2-1)より劣るものになる(少なくとも、リンゴ酸については514μg/L以上、クエン酸については328μg/L以上、乳酸については266μg/L以上になると、ボディ感の評点が「2.0」より劣るものになる。)と当業者は理解する。 したがって、本件特許発明2の発明特定事項を全て満たしているだけでは、発明の課題を解決できることを、当業者といえども理解することはできない。 5 請求項2の記載を引用して特定する本件特許発明3、4及び6についても同様である。 6 したがって、本件特許発明2ないし4及び6は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。 7 よって、本件特許発明2ないし4及び6に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものであるとはいえない。 第6 取消理由(決定の予告)、申立理由A8(サポート要件)及び申立理由B4(サポート要件)についての当審の判断 取消理由(決定の予告)、申立理由A8(サポート要件)及び申立理由B4(サポート要件)はいずれもサポート要件に関するものであるから、取消理由(決定の予告)と併せて申立理由A8及びB4も検討する。また、取消理由(決定の予告)は請求項2ないし4及び6を対象とするものであるが、申立理由A8及びB4は請求項1ないし3及び5ないし9を対象とするものであるから、請求項1ないし3及び5ないし9についても検討する。 1 サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 2 サポート要件の判断 (1)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲(以下、「特許請求の範囲」という。)の記載は上記第3のとおりである。 (2)発明の課題 本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0001】ないし【0005】によると、本件特許発明1ないし3及び5ないし7の解決しようとする課題は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料」を提供することであり、本件特許発明8の解決しようとする課題は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料の製造方法」を提供することであり、本件特許発明9の解決しようとする課題は「ビールテイスト飲料のボディ感を向上させる方法」を提供することである(以下、総称して「発明の課題」という。)。 (3)判断 ア 取消理由(決定の予告)は、取消理由(決定の予告)の通知時の請求項2が請求項1を引用していないことに起因するものであるところ、本件訂正により、請求項2は請求項1を引用するものとなったので、該取消理由(決定の予告)は解消した。 イ 発明の詳細な説明の【0005】には「本発明者らは、上記事情に鑑みて鋭意研究を行った結果、アルコール度数の高いビールテイスト飲料に対して4-ビニルグアイアコールを特定量含有させることで、ボディ感に優れたビールテイスト飲料が得られることを見出した。」と記載され、同【0006】ないし【0014】、【0019】、【0022】及び【0025】ないし【0028】には、本件特許発明1ないし3及び5ないし9に対応する記載がある。 発明の詳細な説明の【0017】ないし【0034】及び【0047】ないし【0064】には、本件特許発明1ないし3及び5ないし9の各発明特定事項について具体的な記載がある。 発明の詳細な説明の【0065】ないし【0080】には、本件特許発明1ないし3及び5ないし9の実施例について具体的に記載され、「アルコール度数が11v/v%以上であり、4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下であり、有機酸を含有し、前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、前記リンゴ酸の含有量が400mg/L以下であり、前記クエン酸の含有量が300mg/L以下であり、前記乳酸の含有量が250mg/L以下である、ビールテイスト飲料」という条件を満たす試験例2-2ないし2-5、2-8及び2-10は上記条件を満たさない試験例2-1、2-6、2-7、2-9及び2-11よりも、ボディ感に優れていることを確認している。 ウ そうすると、発明の詳細な説明の記載により当業者は「アルコール度数が11v/v%以上であり、4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下であり、有機酸を含有し、前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、前記リンゴ酸の含有量が400mg/L以下であり、前記クエン酸の含有量が300mg/L以下であり、前記乳酸の含有量が250mg/L以下である、ビールテイスト飲料」、該「ビールテイスト飲料」の製造方法、「リンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含む有機酸を含有するビールテイスト飲料のアルコール度数を11v/v%以上に調整すること、4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下に調整すること、リンゴ酸の含有量を400mg/L以下に調整すること、クエン酸の含有量を300mg/L以下に調整すること、乳酸の含有量を250mg/L以下に調整することを含む、ビールテイスト飲料のボディ感を向上させる方法」は発明の課題を解決できると認識できる。 エ そして、本件特許発明1ないし3及び5ないし7は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「ビールテイスト飲料」をさらに限定したものであり、本件特許発明8は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「ビールテイスト飲料の製造方法」をさらに限定したものであり、本件特許発明9は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「ビールテイスト飲料のボディ感を向上させる方法」である。 オ したがって、本件特許発明1ないし3及び5ないし9は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし3及び5ないし9に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (4)特許異議申立人Aの申立理由A8における主張について 特許異議申立人Aの申立理由A8における主張(上記第4 1(7)イ及びウ)について検討するに、次のとおり、いずれの主張も採用できない。 上記(3)のとおり、本件特許発明1ないし3及び5ないし9に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 また、特許異議申立人Aの主張はいずれも、本件特許発明1ないし3及び5ないし9において特定される発明特定事項を有しているだけでは、発明の課題を解決することができないことの具体的な証拠を伴うものでもない。 (5)特許異議申立人Bの申立理由B4における主張について 特許異議申立人Bの申立理由B4における主張(上記第4 2(4)アないしエ)について検討するに、次のとおり、いずれの主張も採用できない。 ア 申立理由B4のアについて 申立理由B4のアの主張は、取消理由(決定の予告)と、対象請求項は完全には一致しないものの、おおむね同旨であるので、該主張については上記(3)イないしオのとおりである。 イ 申立理由B4のイについて スピリッツを含むことが特定されていないとしても、本件特許発明における発明特定事項を有していれば、発明の課題を解決できると当業者は認識できる。 また、特許異議申立人Bの主張は、スピリッツを含むものでなければ発明の課題を解決することができないことの具体的な証拠を伴うものでもない。 ウ 申立理由B4のウについて 発明の詳細な説明の記載から、4VG(4―ビニルグアイアコール)の含有量が60μg/L以上、75μg/L未満の範囲及び522μg/Lを超え、550μg/K以下の範囲においても、程度の差はあれども発明の課題を解決できると当業者は認識する。 また、特許異議申立人Bの主張は、4VG(4―ビニルグアイアコール)の含有量が60μg/L以上、75μg/L未満の範囲及び522μg/Lを超え、550μg/K以下の範囲では、発明の課題を解決することができないことの具体的な証拠を伴うものでもない。 エ 申立理由B4のエについて 発明の詳細な説明に記載された試験例1-7~1-9は、同試験例1-1と比べて、ボディ感に優れており、発明の課題を解決できているといえる。 また、発明の課題は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料」を提供することであるから、試験例1-7~1-9が、同試験例1-6と比べて、ビールとしての総合評価が低下していることは、発明の課題を解決できるかどうかとは関係がない。 3 取消理由(決定の予告)、申立理由A8及び申立理由B4についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取消理由(決定の予告)、申立理由A8及び申立理由B4によっては取り消すことはできない。 第7 取消理由(決定の予告)として採用しなかった特許異議申立書A及びBに記載した特許異議申立ての理由について 取消理由(決定の予告)として採用しなかった特許異議申立書A及びBに記載した特許異議申立ての理由は次のとおりである。 ・申立理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性) ・申立理由A2(甲A2に基づく進歩性) ・申立理由A3(甲A3に基づく進歩性) ・申立理由A4(甲A4に基づく進歩性) ・申立理由A5(甲A5に基づく進歩性) ・申立理由A6(甲A6に基づく進歩性) ・申立理由A7(実施可能要件) ・申立理由A8(サポート要件) ・申立理由B1(甲B1に基づく新規性・進歩性) ・申立理由B2(甲B2に基づく進歩性) ・申立理由B3(甲B3に基づく新規性・進歩性) ・申立理由B4(サポート要件)のイないしエ ・申立理由B5(明確性要件) 以下、順に検討する。なお、甲A2と甲B1は同じ文献であるから、申立理由A2と申立理由B1は併せて検討する。また、申立理由A8及び申立理由B4のイないしエについては、上記第6で検討したとおりである。 1 申立理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性)について (1)甲A1に記載された事項等 ア 甲A1に記載された事項 甲A1は、「Beer ethanol and iso-α-acid level affect microbial community establishment and beer chemistry throughout wood maturation of beer」というタイトルの論文であり、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲A1は外国語文献のため訳文のみを摘記した。下線は予め付されたものと当審で付したものである。他の証拠についても同様。 ・「要約 従来の発酵ビールを樽熟成させたサワービールの人気が高まっている。しかし、樽材、微生物、ビール間の複雑な相互作用はまだ解明されていないため、樽熟成はしばしば、望ましくない官能特性を持つ一貫性のない最終製品につながる。ビールの工業的樽熟成に関する先行研究では、エタノール含有量や苦味などのビールパラメーターが、微生物群集の組成やビールの化学的性質に重要な役割を果たすことが示唆されているが、その正確な影響についてはまだ調査されていない。本研究では、樽熟成に一貰して関連する4種の主要細菌(Acetobacter malorum,Gluconobacter oxydans,Lactobacillus brevis and Pediococcus damnosus)と4種の主要酵母(Bretanomyces bruxellensis、Candida friedrichii、Pichia membranifaciens、Saccharomyces cerevisiae)のin vitroコミュニティをベースにした実験的に扱いやすいラボスケールシステムを構築し、ビールのエタノールと苦味が微生物群集組成とビールの化学的性質に影響を与えるという仮説を検証した。エタノール(5.2v/v%、8v/v%、11v/v%)と苦味(13ppm、35ppm、170ppmのイソα酸)のレベルを変えて実験を行い、ビールを60日間熟成させた。0日後、10日後、20日後、30日後、60日後にサンプルを採取し、個体密度とビールの化学的性質をモニターした。その結果、すべての処理と熟成期間が、微生物群集の構成とビールの化学的性質に有意な影響を及ぼすことが明らかになった。具体的には、エタノール処理はL.brevisとG.oxydansの成長を阻害し、真菌の成長を遅らせた。イソα酸処理はL.brevisの生育を阻害し、P.membranifaciensの生育を促進したが、他の菌株は影響を受けなかっ た。ビールの化学的性質は、エタノール濃度が高いほど影響を受け、木材由来の化合物の抽出が増加することがわかった。さらに、異なる微生物群集はビールサンプルの化学組成にも 変化をもたらし、4-エチルグアイアコール、4-エチルフェノール、シス-オークラクトン、バニリン、フルフラール、5-ヒドロキシメチルフルフラールなどのビール由来化合物と木材由来化合物の濃度差につながった。以上の結果から、ビールの木熟成は生物学的および生物学的パラメータに影響され、最終製品の品質に影響を及ぼすことが示された。さらに、本研究は、簡略化した微生物群集モデルに基づき、樽熟成ビールの生産を研究するための、費用対効果の高い新たなアプローチを提供するものである。」(第1ページABSTRACT欄) ・「2 原料と方法 2.1 モデルシステム ビールの工業規模の樽熟成の条件を模倣するために、図1に示されたモデルシステムが使用された。簡単に説明すると、システムは、0.5リットルのウェック瓶(直径:9.5cm、高さ:8.5cm;イケア、ザベンテム、ベルギー)をベースにしており、この瓶では、蓋が木製のディスクに置き換えられている。」(第2ページ右欄第28ないし33行) ・「さらに、ビールと木との接触を最大限にするために、瓶は逆さまに置かれた。」(第2ページ右欄第42及び43行) ・「2.2 処理とサンプリング 本試験で使用したベースビール(以下「基準ビール」と呼ぶ)は、ジュピラーピルスナービール(Anheuser-Busch Inbev, Leuven, Belgium)であり、1つの醸造バッチから「低」アルコールレベル(5.2v/v%)、「低」イソα酸レベル(13ppm、17国際苦味単位(IBU)の苦味に相当)を得た。エタノールの影響を評価するため、100%エタノール(Fisher Chemical, Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)を最終濃度がそれぞれ8.0v/v%と11.0v/v%となるように基準ビールに添加し、「中程度」と「高濃度」のエタノールビールを調製した。異性化ホップエキス(Brewferm, Brouwland, Beverlo, Belgium)を6%添加し、「中程度」(35ppm、50IBU)と「高濃度」(170ppm、135IBU)を得た。イソ-α酸濃度はフィルター滅菌後、超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC;プロトコルの仕様は補足情報の表S3に記載;ビールのイソ―α酸組成は補足情報の表S4に記載)で測定した。サンプルの採取は、瓶への充填とピッチング直後(すなわち0日目)、および10日目、20日目、30日目、60日目とし、各時点(すなわち3生物学的複製)ごとに1処理につき3瓶を使用した。各処理につき、3つの陰性対照(微生物なし)を実験終了時、すなわち60日目に分析した。サンプリングは、ビールを十分に振った後、水封を外し、瓶底の穴からホモジナイズしたビール全量を排出することで行った。その後、採取したビールを3,500×g、4℃で15分間遠心分離し、得られた細胞ペレットと上清を、それぞれ微生物学的分析と化学分析のために-20℃で保存した。」(第3ページ左欄第56行ないし右欄第37行) ・「微生物群集の組成に加えて、ビールの化学的性質はすべての処理と熟成時間によって大きく影響を受けた。具体的には、この研究で測定された木質関連化合物のいくつか(シリンゴール、イソオイゲノール、バニリン、バニリン酸メチル、グアイアコール及び4-ビニルグアイアコールなど)は、エタノールレベルが高いビールにおいてより高い濃度で検出された。これらの結果はSterckxら (2012b)と一致しており、木質化合物は一般に水よりもエタノールによく溶解するため、エタノール濃度が高いほど、木質化合物の抽出率が高くなることを示している。」(第10ページ右欄下から第7行ないし第12ページ左欄第2行) ・「 [図:0001427921000001.jpg] 」(第11ページ、図E) イ 甲A1に記載された発明 甲A1に記載された事項を整理すると、甲A1には次の発明(以下、順に「甲A1飲料発明」及び「甲A1製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A1飲料発明> 「100%エタノール(Fisher Chemical, Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)を最終濃度が11.0v/v%となるように基準ビール(ジュピラーピルスナービール)に添加して調整した、蓋が木製のディスクに置き換えられているウェック瓶への充填前の、エタノールビール。」 <甲A1製法発明> 「100%エタノール(Fisher Chemical, Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)を最終濃度が11.0v/v%となるように基準ビール(ジュピラーピルスナービール)に添加して調整することを含む、 蓋が木製のディスクに置き換えられているウェック瓶への充填前の、エタノールビールの製造方法。」 (2)本件特許発明1について 本件特許発明2、3及び5ないし7について進歩性を判断する都合上、本件特許発明1について新規性に加え進歩性も判断する。 ア 対比 本件特許発明1と甲A1飲料発明を対比する。 甲A1飲料発明における「エタノールビール」は本件特許発明1における「ビールテイスト飲料」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「ビールテイスト飲料。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A1-1a> 本件特許発明1においては、「アルコール度数が12v/v%以上であり」と特定されているのに対し、甲A1飲料発明においては、「100%エタノール(Fisher Chemical, Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)を最終濃度が11.0v/v%となるように基準ビール(ジュピラーピルスナービール)に添加して調整した」と特定されている点。 <相違点A1-1b> 本件特許発明1においては、「4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下である」と特定されているのに対し、甲A1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A1-1c> 本件特許発明1においては、「有機酸を含有し、 前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、 前記リンゴ酸の含有量が400mg/L以下であり、 前記クエン酸の含有量が300mg/L以下であり、 前記乳酸の含有量が250mg/L以下である」と特定されているのに対し、甲A1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A1-1aについて検討する。 甲A1飲料発明は「100%エタノール(Fisher Chemical, Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)」を最終濃度が11.0v/v%となるように基準ビール(ジュピラーピルスナービール)に添加して調整した」ものであるから、「アルコール度数」は「11.0v/v%」であり、「12v/v%以上」ではない。 したがって、相違点A1-1aは実質的な相違点である。 また、甲A1には、甲A1飲料発明における「アルコール度数」を「12v/v%以上」にする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 よって、甲A1飲料発明において、相違点A1-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」(発明の詳細な説明の【0015】)という甲A1飲料発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 特許異議申立人A及びBの主張について 特許異議申立人Aは、令和7年1月14日提出の意見書において、甲A10及び甲A18並びに甲A1の記載から、甲A1飲料発明においてアルコール度数を高めることは、当業者であれば適宜設計することができる事項の範囲内である旨主張している(上記意見書第2ページ)。 また、特許異議申立人Bは、令和7年1月15日提出の意見書において、甲B9ないし甲B16に示すように、アルコール度数が12v/v%以上でビールは多数知られており、甲A1飲料発明においてアルコール度数を12v/v%以上に調整することに困難性はない旨主張している(上記意見書第16ページ)。 そこで、これらの主張について検討する。 甲A1は、エタノールの濃度を5.2v/v%、8v/v%及び11v/v%とした場合の木材由来の化合物の抽出率をモニターした結果を示す文献であって、アルコール度数を12v/v%以上とすることについては何ら記載も示唆もされていない。 また、甲A10、甲A18及び甲B9ないし甲B16いずれにも、甲A1飲料発明においてアルコール度数を12v/v%以上とする動機付けとなる記載はない。 したがって、甲A1飲料発明においてアルコール度数を高めることは、当業者であれば適宜設計することができる事項の範囲内であるとはいえないし、甲A1飲料発明においてアルコール度数を12v/v%以上に調整することに困難性はないともいえない。 よって、特許異議申立人A及びBの上記主張はいずれも採用できない。 エ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A1飲料発明であるとはいえないし、甲A1飲料発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2について 本件特許発明2は請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1における発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A1飲料発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明3、5及び6について 本件特許発明3、5及び6はいずれも請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1における発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A1飲料発明であるとはいえないし、甲A1飲料発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明7について ア 対比 本件特許発明7と甲A1飲料発明を対比する。 甲A1飲料発明における「エタノールビール」は本件特許発明7における「ビールテイスト飲料」に相当する。 甲A1飲料発明は、「100%エタノール(Fisher Chemical, Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)」を「最終濃度が11.0v/v%」となるように添加して調整した「エタノールビール」であり、「アルコール度数」は「11.0v/v%」であるから、本件特許発明7における「アルコール度数が11v/v%以上であり」という発明特定事項の条件を満足する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「アルコール度数が11v/v%以上である、ビールテイスト飲料。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点A1-7a> 本件特許発明7においては、「4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下である」と特定されているのに対し、甲A1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A1-7b> 本件特許発明7においては、「有機酸を含有し、 前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、 前記リンゴ酸の含有量が400mg/L以下であり、 前記クエン酸の含有量が300mg/L以下であり、 前記乳酸の含有量が250mg/L以下である」と特定されているのに対し、甲A1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A1-7c> 本件特許発明7においては、「蒸留アルコールを含有しない」と特定されているのに対し、甲A1飲料発明においては、「100%エタノール(Fisher Chemical, Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)」を最終濃度が11.0v/v%となるように基準ビール(ジュピラーピルスナービール)に添加して調整した」と特定されている点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A1-7cについて検討する。 甲A1飲料発明における「100%エタノール(Fisher Chemical, Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)」は「100%」という数値からみて「蒸留アルコール」であるところ、甲A1には、甲A1飲料発明において、「100%エタノール(Fisher Chemical, Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)」を含有しないようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 よって、甲A1飲料発明において、相違点A1-7cに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明7は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A1飲料発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明7の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲A1飲料発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件特許発明8について ア 対比 本件特許発明8と甲A1製法発明を対比する。 両者の間には、本件特許発明7と甲A1飲料発明の間と同様の相当関係が成り立つ。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「アルコール度数が11v/v%以上に調整することを含む、 ビールテイスト飲料の製造方法。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点A1―8a> 本件特許発明8においては、「有機酸を含有し」、「前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み」、「リンゴ酸の含有量を400mg/L以下に調整すること、 クエン酸の含有量を300mg/L以下に調整すること、 乳酸の含有量を250mg/L以下に調整することを含む」と特定されているのに対し、甲A1製法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A1-8b> 本件特許発明8においては、「蒸留アルコールを含有しない」と特定されているのに対し、甲A1製法発明においては、「100%エタノール(Fisher Chemical, Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)を最終濃度が11.0v/v%となるように基準ビール(ジュピラーピルスナービール)に添加して調整することを含む」と特定されている点。 <相違点A1-8c> 本件特許発明8においては、「4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下に調整することを含む」と特定されているのに対し、甲A1製法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A1-8bについて検討する。 相違点A1-8bは、相違点A1-7cと実質的に同じであるから、相違点A1-7cと同様に判断される。すなわち、甲A1製法発明における「100%エタノール(Fisher Chemical, Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)」は「蒸留アルコール」であるから、相違点A1-8bは実質的な相違点である。また、甲A1製法発明において、相違点A1-8bに係る本件特許発明8の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明8は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A1製法発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明8の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明8は甲A1製法発明であるとはいえないし、甲A1製法発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明9について 甲A1からは、本件特許発明9と対比・判断可能な発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明9は甲A1に記載された発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (7)申立理由A1についてのむすび したがって、本件特許発明1、3、5、6及び8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし3及び5ないし9は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由A2(甲A2に基づく進歩性)及び申立理由B1(甲B1に基づく新規性・進歩性)について (1)甲A2に記載された事項等 ア 甲A2に記載された事項 甲A2には「容器詰め飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 2-メトキシ-4-ビニルフェノールの含有量(X)が0.070質量ppm以上である、容器詰め飲料。」 ・「【請求項8】 麦芽使用比率が50~100質量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の容器詰め飲料。」 ・「【発明の効果】 【0006】 本発明の好適な一態様の容器詰め飲料は、良質な味の厚みを有する。」 ・「【0020】 そして、本発明の一態様の容器詰め飲料は、ビールテイスト飲料であることが好ましく、麦芽発酵飲料であるビールテイスト飲料であることがより好ましく、上記(i)~(iii)のすべてを満たすビールテイスト飲料が更に好ましい。 以下、本発明の一態様の容器詰め飲料として好適である「ビールテイスト飲料」についての態様を説明する。 【0021】 2.ビールテイスト飲料 本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつアルコール含有またはノンアルコールの炭酸飲料をいう。つまり、本明細書のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合、ビール風味を有するいずれの炭酸飲料をも包含する。したがって、エステルや高級アルコール(例えば、酢酸イソアミル、酢酸エチル、n-プロパノール、イソブタノール、アセトアルデヒド)等を含むビール香料が添加された炭酸飲料をも包含する。 ビールテイスト飲料の種類としては、例えば、アルコール含有のビールテイスト飲料、アルコール度数が1(v/v)%未満のビールテイスト飲料等も含まれる。 【0022】 ビールテイスト飲料のアルコール度数は、特に制限は無いが、好ましくは1~20(v/v)%、より好ましくは2~15(v/v)%、更に好ましくは3~10(v/v)%である。 なお、本明細書において、アルコール度数は、体積/体積基準の百分率(v/v%)で示されるものとする。また、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。 【0023】 ビールテイスト飲料は、アルコール成分として、さらに、穀物に由来するスピリッツを含有してもよい。 本明細書において、スピリッツとは、麦、米、そば、とうもろこし等の穀物を原料として、麦芽又は必要により酵素剤を用いて糖化し、酵母を用いて発酵させた後、更に蒸留して得られる酒類を意味する。スピリッツの原材料である穀物としては、麦が好ましい。」 ・「【0037】 酸味料としては、酸味を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、リン酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸、グルコノデルタラクトン又はそれらの塩が挙げられる。 これらの酸味料の中でも、リン酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸又はそれらの塩が好ましく、リン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、酢酸又はそれらの塩がより好ましい。 これらの酸味料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」 ・「【0051】 実施例1~14、比較例1~2 粉砕した麦芽を、52℃で保持された温水40Lが入った仕込槽に投入した後、52℃で30分間保持し、続いて70℃で40分間、さらに76℃で5分間と段階的に温度を上げて保持した後、濾過して麦芽粕を除去し麦汁を得た。得られた麦汁を濾過した後、ホップを投入して麦汁煮沸を行った。煮沸後の麦汁を固液分離処理し、得られた清澄な麦汁を冷却し、酵母を添加して7日間発酵させ、発酵溶液を調製した。 そして、調製した発酵溶液を表1~4に示される糖質濃度となるように適宜水で希釈すると共に、表1~4に示される含有量(X)となるように、2-メトキシ-4-ビニルフェノールを添加して、ビールテイスト飲料をそれぞれ得た。」 ・「【0053】 【表1】 [図:0001427921000002.jpg] 【0054】 【表2】 [図:0001427921000003.jpg] 【0055】 【表3】 [図:0001427921000004.jpg] 【0056】 【表4】 [図:0001427921000005.jpg] 【0057】 表1~4より、実施例1~14で調製したビールテイスト飲料は、比較例1~2に比べて、優れた良質な味の厚みを有する飲料であるといえる。」 イ 甲A2に記載された発明 甲A2に記載された事項を、特に実施例1、2、5、6、9及び12に関して整理すると、甲A2には次の発明(以下、順に「甲A2飲料発明」及び「甲A2製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A2飲料発明> 「粉砕した麦芽を、52℃で保持された温水40Lが入った仕込槽に投入した後、52℃で30分間保持し、続いて70℃で40分間、さらに76℃で5分間と段階的に温度を上げて保持した後、濾過して麦芽粕を除去し麦汁を得、得られた麦汁を濾過した後、ホップを投入して麦汁煮沸を行い、煮沸後の麦汁を固液分離処理し、得られた清澄な麦汁を冷却し、酵母を添加して7日間発酵させ、発酵溶液を調製し、調製した発酵溶液を表1~4の実施例1、2、5、6、9及び12に示される糖質濃度となるように適宜水で希釈すると共に、表1~4の実施例1、2、5、6、9及び12に示される含有量(X)となるように、2-メトキシ-4-ビニルフェノールを添加して、得たビールテイスト飲料。」(当審注:「表1~4」及び「実施例1、2、5、6、9及び12」については、上記ア参照。以下、同様。) <甲A2製法発明> 「粉砕した麦芽を、52℃で保持された温水40Lが入った仕込槽に投入した後、52℃で30分間保持し、続いて70℃で40分間、さらに76℃で5分間と段階的に温度を上げて保持した後、濾過して麦芽粕を除去し麦汁を得、得られた麦汁を濾過した後、ホップを投入して麦汁煮沸を行い、煮沸後の麦汁を固液分離処理し、得られた清澄な麦汁を冷却し、酵母を添加して7日間発酵させ、発酵溶液を調製し、調製した発酵溶液を表1~4の実施例1、2、5、6、9及び12に示される糖質濃度となるように適宜水で希釈すると共に、表1~4の実施例1、2、5、6、9及び12に示される含有量(X)となるように、2-メトキシ-4-ビニルフェノールを添加する、ビールテイスト飲料の製造方法。」 <甲A2方法発明> 「粉砕した麦芽を、52℃で保持された温水40Lが入った仕込槽に投入した後、52℃で30分間保持し、続いて70℃で40分間、さらに76℃で5分間と段階的に温度を上げて保持した後、濾過して麦芽粕を除去し麦汁を得、得られた麦汁を濾過した後、ホップを投入して麦汁煮沸を行い、煮沸後の麦汁を固液分離処理し、得られた清澄な麦汁を冷却し、酵母を添加して7日間発酵させ、発酵溶液を調製し、調製した発酵溶液を表1~4の実施例1、2、5、6、9及び12に示される糖質濃度となるように適宜水で希釈すると共に、表1~4の実施例1、2、5、6、9及び12に示される含有量(X)となるように、2-メトキシ-4-ビニルフェノールを添加することで、ビールテイスト飲料が優れた良質な味の厚みを有するようにする方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A2飲料発明を対比する。 甲A2飲料発明における「2-メトキシ-4-ビニルフェノール」は本件特許発明1における「4-ビニルグアイアコール」に相当する。 甲A2飲料発明における「表1~4の実施例1、2、5、6、9及び12に示される含有量(X)」は本件特許発明1における「60μg/L以上550μg/L以下」に包含される。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下である、ビールテイスト飲料。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点A2-1a> 本件特許発明1においては、「アルコール度数が12v/v%以上であり」と特定されているのに対し、甲A2飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A2-1b> 本件特許発明1においては、「有機酸を含有し、 前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、 前記リンゴ酸の含有量が400mg/L以下であり、 前記クエン酸の含有量が300mg/L以下であり、 前記乳酸の含有量が250mg/L以下である」と特定されているのに対し、甲A2飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A2-1aについて検討する。 甲A2飲料発明の認定の根拠となった実施例1、2、5、6、9及び12のビールテイスト飲料のアルコール度数は不明であるから、相違点A2-1aは実質的な相違点である。 また、甲A2には、甲A2飲料発明における「アルコール度数」を「12v/v%以上」にする動機付けとなる記載はない(甲A2の【0022】によると、甲A2飲料発明はアルコール度数を「3~10v/v%」と低くすることを指向しているといえる。)し、他の証拠にもない。 よって、甲A2飲料発明において、相違点A2-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A2飲料発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A2飲料発明であるとはいえないし、甲A2飲料発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2、3及び6について 本件特許発明2、3及び6はいずれも請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1における発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A2飲料発明であるとはいえないし、甲A2飲料発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明5について 本件特許発明5は請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1における発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A2飲料発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件特許発明7について ア 対比 本件特許発明7と甲A2飲料発明を対比する。 両者の間には、本件特許発明1と甲A2飲料発明の間と同様の相当関係が成り立つ。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下である、ビールテイスト飲料。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点A2-7a> 本件特許発明7においては、「アルコール度数が11v/v%以上であり」と特定されているのに対し、甲A2飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A2-7b> 本件特許発明7においては、「有機酸を含有し、 前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み、 前記リンゴ酸の含有量が400mg/L以下であり、 前記クエン酸の含有量が300mg/L以下であり、 前記乳酸の含有量が250mg/L以下であり」と特定されているのに対し、甲A2飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A2-7c> 本件特許発明7においては、「蒸留アルコールを含有しない」と特定されているのに対し、甲A2飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A2-7aについて検討する。 甲A2飲料発明の認定の根拠となった実施例1、2、5、6、9及び12のビールテイスト飲料のアルコール度数は不明であるから、相違点A2-7aは実質的な相違点である。 また、甲A2には、甲A2飲料発明における「アルコール度数」を「11v/v%以上」にする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 よって、甲A2飲料発明において、相違点A2-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明7は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A2飲料発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明7の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲A2飲料発明であるとはいえないし、甲A2飲料発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明8について ア 対比 本件特許発明8と甲A2製法発明を対比する。 両者の間には、本件特許発明1と甲A2飲料発明の間と同様の相当関係が成り立つ。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「4-ビニルグアイアコールの含有を60μg/L以上550μg/L以下に調整することを含む、 ビールテイスト飲料の製造方法。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A2-8a> 本件特許発明8においては、「有機酸を含有し」、「前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み」、「リンゴ酸の含有量を400mg/L以下に調整すること、 クエン酸の含有量を300mg/L以下に調整すること、 乳酸の含有量を250mg/L以下に調整することを含む」と特定されているのに対し、甲A2製法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A2-8b> 本件特許発明8においては、「蒸留アルコールを含有しない」と特定されているのに対し、甲A2製法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A2-8c> 本件特許発明8においては、「アルコール度数を11v/v%以上に調整すること」「を含む」と特定されているのに対し、甲A2製法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A2-8cについて検討する。 相違点A2-8cは相違点A2-7aと実質的に同じであるから、相違点A2-7aと同様に判断される。すなわち、相違点A2-8cは実質的な相違点である。また、甲A2製法発明において、相違点A2-8cに係る本件特許発明8の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明8は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A2製法発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明8の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明8は甲A2製法発明であるとはいえないし、甲A2製法発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (7)本件特許発明9について ア 対比 本件特許発明9と甲A2方法発明を対比する。 両者の間には、本件特許発明1と甲A2飲料発明の間と同様の相当関係が成り立つ。 甲A2方法発明における「ビールテイスト飲料が優れた良質な味の厚みを有するようにする方法」は本件特許発明9における「ビールテイスト飲料のボディ感を向上させる方法」と、「ビールテイスト飲料の味を向上する方法」という限りにおいて一致する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下に調整することを含む、 ビールテイスト飲料の味を向上する方法。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A2-9a> 本件特許発明9においては、「有機酸を含有し」、「前記有機酸がリンゴ酸、クエン酸、及び乳酸を含み」、「リンゴ酸の含有量を400mg/L以下に調整すること、 クエン酸の含有量を300mg/L以下に調整すること、 乳酸の含有量を250mg/L以下に調整することを含む」と特定されているのに対し、甲A2方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A2-9b> 本件特許発明9においては、「アルコール度数を11v/v%以上に調整すること」「を含む」と特定されているのに対し、甲A2方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A2-9c> 「ビールテイスト飲料の味を向上する方法」に関して、本件特許発明9においては、「ビールテイスト飲料のボディ感を向上させる方法」と特定されているのに対し、甲A2方法発明においては、「ビールテイスト飲料が優れた良質な味の厚みを有するようにする方法」と特定されている点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A2-9bについて検討する。 相違点A2-9bは相違点A2-7aと実質的に同じであるから、相違点A2-7aと同様に判断される。すなわち、甲A2方法発明において、相違点A2-9bに係る本件特許発明9の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明9は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A2方法発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明9の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明9は甲A2方法発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (8)申立理由A2及び申立理由B1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3及び6ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし3及び5ないし9は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A2及び申立理由B1によっては取り消すことはできない。 3 申立理由A3(甲A3に基づく進歩性)について (1)甲A3に記載された発明 甲A3は、甲A3-1ないし甲A3-4からなるAmerican Society of Brewing Chemistの2013 Annual Meetingで行われた発表資料であり、甲A3-1(第9スライド、第12スライド及び第20スライド参照。)及び甲A3-4(第26ページ左欄第36行ないし右欄第10行参照。)の記載を整理すると、甲A3には次の発明が記載されていると認める。 <甲A3飲料発明> 「アルコール度数が約12.8~15.8v/v%のビールテイスト飲料。」 <甲A3製法発明> 「アルコール度数が約12.8~15.8v/v%のビールテイスト飲料の製造方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A3飲料発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点A3-1> 本件特許発明1においては、「4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下である」と特定されているのに対し、甲A3飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A3-1について検討する。 甲A3には、甲A3飲料発明が「4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下である」ようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲A3飲料発明において、相違点A3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A3飲料発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人Aは、甲A15及び本件特許明細書【0068】の記載から、甲A3飲料発明の4-ビニルグアイアコールの含有量が本件特許発明1と同程度になる蓋然性がきわめて高い旨主張する(特許異議申立書A第55及び56ページ)が、甲A3飲料発明における原料(例えば、酵母の種類)及び製造条件が、甲A15や本件特許明細書【0068】に記載されたビールテイスト飲料と一致していない以上、甲A3飲料発明の4-ビニルグアイアコールの含有量が本件特許発明1と同程度になる蓋然性が高いとはいえないので、該主張は採用できない。 また、特許異議申立人Aは、仮に同程度でないとしても、甲A2に基づいて4-ビニルグアイアコールの含有量を調整することに困難性はない旨主張する(特許異議申立書A第56ページ)が、甲A3飲料発明における原料(例えば、酵母の種類)と甲A2に記載された飲料の原料が一致していない以上、甲A2に記載された事項を適用する動機付けがあるとはいえないので、該主張も採用できない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲A3飲料発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2、3及び5ないし7について 本件特許発明2、3及び5ないし7のいずれかと甲A3飲料発明との対比・判断についても、本件特許発明1と甲A3飲料発明との対比・判断と同様のことがいえる。 すなわち、本件特許発明2、3及び5ないし7のいずれも甲A3飲料発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明8について ア 対比 本件特許発明8と甲A3製法発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点A3-8> 本件特許発明8においては、「4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下に調整すること」「を含む」と特定されているのに対し、甲A3製法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A3-8について検討する。 甲A3には、甲A3製法発明が「4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下に調整すること」「を含む」ようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲A3製法発明において、相違点A3-8に係る本件特許発明8の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明8は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A3製法発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明8の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明8は甲A3製法発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件特許発明9について 甲A3からは、本件特許発明9と対比・判断可能な発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明9は甲A3に記載された発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)申立理由A3についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3及び5ないし9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A3によっては取り消すことはできない。 4 申立理由A4(甲A4に基づく進歩性)について (1)甲A4に記載された発明 甲A4は「ビールテイスト飲料の製造方法及びビールテイスト飲料」に関する文献であり、その記載(【請求項1】及び【0048】ないし【0054】)を特に実施例1及び2に関して整理すると、甲A4には次の発明が記載されていると認める。 <甲A4飲料発明> 「アルコール度数が11.43v/v%又は11.15v/v%のビールテイスト飲料。」 <甲A4製法発明> 「アルコール度数が11.43v/v%又は11.15v/v%のビールテイスト飲料の製造方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A4飲料発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点A4-1> 本件特許発明1においては、「4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下であり」と特定されているのに対し、甲A4飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A4-1について検討する。 甲A4には、甲A4飲料発明が「4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下であ」るようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲A4飲料発明において、相違点A4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A4飲料発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人Aは、甲A15及び本件特許明細書【0068】の記載から、甲A4飲料発明の4-ビニルグアイアコールの含有量が本件特許発明1と同程度になる蓋然性がきわめて高い旨主張する(特許異議申立書A第61ページ)が、甲A4飲料発明における原料(例えば、酵母の種類)及び製造条件が、甲A15や本件特許明細書【0068】に記載されたビールテイスト飲料と一致していない以上、甲A4飲料発明の4-ビニルグアイアコールの含有量が本件特許発明1と同程度になる蓋然性が高いとはいえないので、該主張は採用できない。 また、特許異議申立人Aは、仮に同程度でないとしても、甲A2に基づいて4-ビニルグアイアコールの含有量を調整することに困難性はない旨主張する(特許異議申立書A第61ページ)が、甲A4飲料発明における原料(例えば、酵母の種類)と甲A2に記載された飲料の原料が一致していない以上、甲A2に記載された事項を適用する動機付けがあるとはいえないので、該主張も採用できない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲A4飲料発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2、3及び5ないし7について 本件特許発明2、3及び5ないし7のいずれかと甲A4飲料発明との対比・判断についても、本件特許発明1と甲A4飲料発明との対比・判断と同様のことがいえる。 すなわち、本件特許発明2、3及び5ないし7のいずれも甲A4飲料発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明8について ア 対比 本件特許発明8と甲A4製法発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点A4-8> 本件特許発明8においては、「4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下に調整すること」「を含む」と特定されているのに対し、甲A4製法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A4-8について検討する。 甲A4には、甲A4製法発明が「4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下に調整すること」「を含む」ようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲A4製法発明において、相違点A4-8に係る本件特許発明8の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明8は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A4製法発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明8の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明8は甲A4製法発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件特許発明9について 甲A4からは、本件特許発明9と対比・判断可能な発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明9は甲A4に記載された発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)申立理由A4についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3及び5ないし9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A4によっては取り消すことはできない。 5 申立理由A5(甲A5に基づく進歩性)について (1)甲A5に記載された発明 甲A5は「発酵麦芽飲料及びその製造方法」に関する文献であり、その記載(【請求項1】、【請求項5】、【請求項6】、【0001】、【0013】、【0031】ないし【0034】及び【0036】ないし【0049】)を特に試験品AないしEに関して整理すると、甲A5には次の発明が記載されていると認める。 <甲A5飲料発明> 「4-ビニルグアイアコールの含有量が80、120、100、103又は97ppbの発酵麦芽飲料。」 <甲A5製法発明> 「4-ビニルグアイアコールの含有量が80、120、100、103又は97ppbの発酵麦芽飲料の製造方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A5飲料発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点A5-1> 本件特許発明1においては、「アルコール度数が12v/v%以上であり」と特定されているのに対し、甲A5飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A5-1について検討する。 甲A5には、甲A5飲料発明が「アルコール度数が12v/v%以上であ」るようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲A5飲料発明において、相違点A5-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A5飲料発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲A5飲料発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2、3、5及び6について 本件特許発明2、3、5及び6のいずれかと甲A5飲料発明との対比・判断についても、本件特許発明1と甲A5飲料発明との対比・判断と同様のことがいえる。 すなわち、本件特許発明2、3、5及び6のいずれも甲A5飲料発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明7について ア 対比 本件特許発明7と甲A5飲料発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点A5-7> 本件特許発明7においては、「アルコール度数が11v/v%以上であり」と特定されているのに対し、甲A5飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A5-7について検討する。 甲A5には、甲A5飲料発明が「アルコール度数が11v/v%以上であ」るようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲A5飲料発明において、相違点A5-7に係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明7は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A5飲料発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明7の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明7は甲A5飲料発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件特許発明8について ア 対比 本件特許発明8と甲A5製法発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点A5-8> 本件特許発明8においては、「アルコール度数を11v/v%以上に調整すること」「を含む」と特定されているのに対し、甲A5製法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A5-8について検討する。 甲A5には、甲A5製法発明が「アルコール度数を11v/v%以上に調整すること」「を含む」ようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲A5製法発明において、相違点A5-8に係る本件特許発明8の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明8は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A5製法発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明8の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明8は甲A5製法発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)本件特許発明9について 甲A5からは、本件特許発明9と対比・判断可能な発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明9は甲A5に記載された発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (7)申立理由A5についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3及び5ないし9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A5によっては取り消すことはできない。 6 申立理由A6(甲A6に基づく進歩性)について (1)甲A6に記載された発明 甲A6は「ビールテイスト飲料の製造方法及びビールテイスト飲料の香味を改善する方法」に関する文献であり、その記載(【0002】、【0004】、【0007】、【0018】、【0021】、【0049】及び【0079】ないし【0088】)を特に実施例1に関して整理すると、甲A6には次の発明が記載されていると認める。 <甲A6飲料発明> 「アルコール濃度が5v/v%、4-ビニルグアイアコールの含有量が0.4mg/Lのビールテイスト飲料。」 <甲A6製法発明> 「アルコール濃度を5v/v%に調整し、4-ビニルグアイアコールの含有量を0.4mg/Lに低減するビールテイスト飲料の製造方法。」 <甲A6方法発明> 「アルコール濃度を5v/v%に調整し、4-ビニルグアイアコールの含有量を0.4mg/Lに低減することでビールテイスト飲料の香味を改善する方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A6飲料発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点A6-1> 本件特許発明1においては、「アルコール度数が12v/v%以上であり」と特定されているのに対し、甲A6飲料発明においては、「アルコール濃度が5v/v%」と特定されている点。 イ 判断 相違点A6-1について検討する。 甲A6には、甲A6飲料発明が「アルコール度数が12v/v%以上であ」るようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲A6飲料発明において、相違点A6-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A6飲料発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲A6飲料発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2、3、5及び6について 本件特許発明2、3、5及び6のいずれかと甲A6飲料発明との対比・判断についても、本件特許発明1と甲A6飲料発明との対比・判断と同様のことがいえる。 すなわち、本件特許発明2、3、5及び6のいずれも甲A6飲料発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明7について ア 対比 本件特許発明7と甲A6飲料発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点A6-7> 本件特許発明7においては、「アルコール度数が11v/v%以上であり」と特定されているのに対し、甲A6飲料発明においては、「アルコール濃度が5v/v%」と特定されている点。 イ 判断 相違点A6-7について検討する。 甲A6には、甲A6飲料発明が「アルコール度数が11v/v%以上であ」るようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲A6飲料発明において、相違点A6-7に係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明7は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A6飲料発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明7の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明7は甲A6飲料発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件特許発明8について ア 対比 本件特許発明8と甲A6製法発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点A6-8> 本件特許発明8においては、「アルコール度数を11v/v%以上に調整すること」「を含む」と特定されているのに対し、甲A6製法発明においては、「アルコール濃度を5v/v%に調整し」と特定されている点。 イ 判断 相違点A6-8について検討する。 甲A6には、甲A6製法発明が「アルコール度数を11v/v%以上に調整すること」「を含む」ようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲A6製法発明において、相違点A6-8に係る本件特許発明8の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明8は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A6製法発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明8の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明8は甲A6製法発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)本件特許発明9について ア 対比 本件特許発明9と甲A6方法発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点A6-9> 本件特許発明9においては、「アルコール度数を11v/v%以上に調整すること」「を含む」と特定されているのに対し、甲A6方法発明においては、「アルコール濃度を5v/v%に調整し」と特定されている点。 イ 判断 相違点A6-9について検討する。 甲A6には、甲A6方法発明が「アルコール度数を11v/v%以上に調整すること」「を含む」ようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲A6方法発明において、相違点A6-9に係る本件特許発明9の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明9は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲A6方法発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明9の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明9は甲A6方法発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (7)申立理由A6についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3及び5ないし9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A6によっては取り消すことはできない。 7 申立理由A7(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 上記第3のとおり、本件特許発明1ないし3及び5ないし7は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。また、本件特許発明8は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。さらに、本件特許発明9は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要する。 そこで、検討する。 (2)実施可能要件の判断 発明の詳細な説明の【0017】ないし【0034】及び【0047】ないし【0064】には本件特許発明1ないし3及び5ないし9の各発明特定事項について具体的に記載されている。 発明の詳細な説明の【0065】ないし【0080】には本件特許発明1ないし3及び5ないし9の実施例について具体的に記載されている。 したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし3及び5ないし7を生産し、使用することができる程度の記載があるといえ、本件特許発明8の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえ、本件特許発明9の使用をすることができる程度の記載があるといえる。 よって、本件特許発明1ないし3及び5ないし9に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 (3)特許異議申立人Aの申立理由A7における主張について 特許異議申立人Aの申立理由A7における主張(上記第4 1(7)アないしウ)について検討するに、次のとおり、いずれの主張も採用できない。 ア 申立理由A7のアについて 発明の詳細な説明に、スピリッツを添加することでアルコール度数を11v/v%以上とした実施例が記載されている以上、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明を実施することができる程度の記載があるといえる。 なお、発酵度合いを高めればアルコール度数が高くなることは、当業者の技術常識であるから、スピリッツを添加する以外の方法でも本件特許発明を実施することができることは当業者に明らかである。 イ 申立理由A7のイ及びウについて これらの主張は、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合しないことを前提とするものであるが、上記第6のとおり、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 そもそも、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するかどうかは、実施可能要件の判断とは関係がない。 (4)申立理由A7についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当せず、申立理由A7によっては取り消すことはできない。 8 申立理由B2(甲B2に基づく進歩性)について (1)甲B2に記載された発明 甲B2は「発酵飲料、及び発酵飲料の後味改善方法」に関する文献であり、その記載(【請求項1】、【請求項4】、【請求項5】、【0006】、【0017】、【0028】及び【0054】ないし【0056】)を特に実施例1に関して整理すると、甲B2には次の発明が記載されていると認める。 <甲B2飲料発明> 「アルコール濃度が5容量%であり、4VG(4-ビニルグアイヤコール)濃度が120ppb又は170ppbのビール様発酵飲料。」 <甲B2製法発明> 「アルコール濃度が5容量%であり、4VG(4-ビニルグアイヤコール)濃度が120ppb又は170ppbのビール様発酵飲料の製造方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲B2飲料発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点B2-1> 本件特許発明1においては、「アルコール度数が12v/v%以上であり」と特定されているのに対し、甲B2飲料発明においては、「アルコール濃度が5容量%であり」と特定されている点。 イ 判断 相違点B2-1について検討する。 甲B2には、甲B2飲料発明が「アルコール度数が12v/v%以上であ」るようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲B2飲料発明において、相違点B2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲B2飲料発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲B2飲料発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2、3、5及び6について 本件特許発明2、3、5及び6のいずれかと甲B2飲料発明との対比・判断についても、本件特許発明1と甲B2飲料発明との対比・判断と同様のことがいえる。 すなわち、本件特許発明2、3、5及び6のいずれも甲B2飲料発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明7について ア 対比 本件特許発明7と甲B2飲料発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点B2-7> 本件特許発明7においては、「アルコール度数が11v/v%以上であり」と特定されているのに対し、甲B2飲料発明においては、「アルコール濃度が5容量%であり」と特定されている点。 イ 判断 相違点B2-7について検討する。 甲B2には、甲B2飲料発明が「アルコール度数が11v/v%以上であ」るようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲B2飲料発明において、相違点B2-7に係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明7は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲B2飲料発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明7の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明7は甲B2飲料発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件特許発明8について ア 対比 本件特許発明8と甲B2製法発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点B2-8> 本件特許発明8においては、「アルコール度数を11v/v%以上に調整すること」「を含む」と特定されているのに対し、甲B2製法発明においては、「アルコール濃度が5容量%であり」と特定されている点。 イ 判断 相違点B2-8について検討する。 甲B2には、甲B2製法発明が「アルコール度数を11v/v%以上に調整すること」「を含む」ようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲B2製法発明において、相違点B2-8に係る本件特許発明8の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明8は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲B2製法発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明8の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明8は甲B2製法発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)申立理由B2についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3及び5ないし8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし8に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由B2によっては取り消すことはできない。 9 申立理由B3(甲B3に基づく新規性・進歩性)について (1)甲B3に記載された発明 甲B3は「発酵飲料の製造方法」に関する文献であり、その記載([0032]ないし[0039]、[0050]ないし[0052]、[0054]ないし[0056]及び[請求項1]ないし[請求項6])を特に実施例2、比較例1、実施例3及び比較例2に関して整理すると、甲B3には次の発明が記載されていると認める。 <甲B3飲料発明> 「アルコール濃度が15.49V/V%、12.84V/V%、15.14V/V%又は12.79V/V%の発酵飲料。」 <甲B3製法発明> 「アルコール濃度が15.49V/V%、12.84V/V%、15.14V/V%又は12.79V/V%の発酵飲料の製造方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲B3飲料発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点B3-1> 本件特許発明1においては、「4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下であり」と特定されているのに対し、甲B3飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点B3-1について検討する。 甲B3飲料発明の認定の根拠となった実施例2、比較例1、実施例3及び比較例2の発酵飲料の4-ビニルグアイアコールの含有量は不明であるから、相違点B3-1は実質的な相違点である。 甲B3には、甲B3飲料発明が「4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下であ」るようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲B3飲料発明において、相違点B3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲B3飲料発明並びに甲B3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲B3飲料発明であるとはいえないし、甲B3飲料発明並びに甲B3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2、3及び7について 本件特許発明2、3及び7のいずれかと甲B3飲料発明との対比・判断についても、本件特許発明1と甲B3飲料発明との対比・判断と同様のことがいえる。 すなわち、本件特許発明2、3及び7のいずれも甲B3飲料発明であるとはいえないし、甲B3飲料発明並びに甲B3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明5及び6について 本件特許発明5及び6のいずれかと甲B3飲料発明との対比・判断についても、本件特許発明1と甲B3飲料発明との対比・判断と同様のことがいえる。 すなわち、本件特許発明5及び6のいずれも甲B3飲料発明並びに甲B3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件特許発明8について ア 対比 本件特許発明8と甲B3製法発明を対比する。 両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点B3-8> 本件特許発明8においては、「4-ビニルグアイアコールの含有量が60μg/L以上550μg/L以下に調整すること」「を含む」と特定されているのに対し、甲B3製法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点B3-8について検討する。 甲B3製法発明の認定の根拠となった実施例2、比較例1、実施例3及び比較例2の発酵飲料の4-ビニルグアイアコールの含有量は不明であるから、相違点B3-8は実質的な相違点である。 甲B3には、甲B3製法発明が「4-ビニルグアイアコールの含有量を60μg/L以上550μg/L以下に調整すること」「を含む」ようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲B3製法発明において、相違点B3-8に係る本件特許発明8の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明8は「ボディ感に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。」という甲B3製法発明並びに甲B3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明8の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明8は甲B3製法発明であるとはいえないし、甲B3製法発明並びに甲B3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)申立理由B3についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3、7及び8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし3及び5ないし8は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし8に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由B3によっては取り消すことはできない。 10 申立理由B5(明確性要件)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 (2)明確性要件の判断 本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9の記載は、上記第3のとおりであり、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9の記載には、それら自体に不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。 したがって、本件特許発明1ないし3及び5ないし9に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (3)特許異議申立人Bの申立理由B5における主張について 特許異議申立人Bの申立理由B5における主張(上記第4 2(5))について検討するに、次のとおり、採用できない。 特許・実用新案審査基準(第II部第2章第3節2.2 明確性要件違反の類型(5))には、「範囲を曖昧にし得る表現がある結果、発明の範囲が不明確となる場合」の例として、「上限又は下限だけを示すような数値範囲限定(「~以上」、「~以下」等)がある結果、発明の範囲が不明確となる場合」が挙げられているが、これは上限又は下限だけを示すような数値範囲限定(「~以上」、「~以下」等)がある場合は必ず発明の範囲が不明確になるという意味ではない。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1ないし3及び5ないし9に関して、特許請求の範囲の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (4)申立理由B5についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当せず、申立理由B5によっては取り消すことはできない。 第8 結語 上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許は、取消理由(決定の予告)並びに特許異議申立書A及びBに記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。 他に本件特許の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人A及びBによる請求項4に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700207

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ出願・登録の審決1件(出願 特願2022-158543)
  • 2023-009012拒絶査定不服審判 / 2023-08-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)ビールテイスト飲料
    同じ出願番号
同じ当事者の審決164件(サッポロビール株式会社、杉浦 健文、竹口 美穂)
  • 2024-700909異議申立 / 2025-10-17 / 訂正認容ビールテイスト飲料
    同じ当事者: サッポロビール株式会社、竹口 美穂
  • 2024-701132異議申立 / 2025-09-03 / 訂正認容ビールテイスト飲料
    同じ当事者: サッポロビール株式会社、竹口 美穂
  • 2024-700856異議申立 / 2024-12-19 / 維持ビールテイスト飲料及びその製造方法、並びにビールテイスト飲料の香味を向上させる方…
    同じ当事者: サッポロビール株式会社、竹口 美穂
  • 2024-700408異議申立 / 2024-09-30 / 維持ビールテイスト飲料
    同じ当事者: サッポロビール株式会社、杉浦 健文
  • 2024-700407異議申立 / 2024-09-26 / 維持ビールテイスト飲料
    同じ当事者: サッポロビール株式会社、杉浦 健文
同じ論点・分野の審決(審決分類)128件(113・C12C、121・C12C、536・C12C ほか)
  • 2023-700091異議申立 / 2026-03-25 / 維持ビールテイスト飲料
    共通の審決分類: 113・C12C、121・C12C、536・C12C、537・C12C
  • 2025-700556異議申立 / 2026-03-18 / 訂正認容プリン体濃度が低減されたビールテイスト飲料およびその製造方法
    共通の審決分類: 113・C12C、121・C12C、536・C12C、537・C12C
  • 2025-700978異議申立 / 2026-01-14 / 維持ビールテイスト発酵アルコール飲料およびその製造方法
    共通の審決分類: 113・C12C、121・C12C、536・C12C、537・C12C
  • 2025-700533異議申立 / 2025-08-25 / 維持ビールテイスト発酵アルコール飲料およびその製造方法
    共通の審決分類: 113・C12C、121・C12C、536・C12C、537・C12C
  • 2024-700038異議申立 / 2025-05-26 / 訂正認容ビールテイスト飲料
    共通の審決分類: 113・C12C、121・C12C、536・C12C、537・C12C

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存