特許異議申立
2024-700367
緑茶抽出物含有組成物、機能性食品
- 審判番号
- 2024-700367
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-036833
- 登録番号
- 7364497
- 請求日
- 2024年04月18日
- 審決日
- 2024年11月14日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】トヨタ自動車株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人平木国際特許事務所
- 【権利者】国立大学法人九州大学
- 【権利者代理人】弁理士法人平木国際特許事務所
- 【異議申立人】秋山 万奈
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 柴田 昌弘
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7364497号発明「緑茶抽出物含有組成物、機能性食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7364497号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める。
特許第7364497号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7364497号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、令和2年3月4日に出願されたものであって、令和5年10月10日にその特許権の設定登録(請求項の数2)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年4月18日に特許異議申立人 秋山 万奈(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1及び2)がされ、同年6月13日付けで取消理由が通知され、同年8月14日に特許権者 トヨタ自動車株式会社及び国立大学法人九州大学から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月22日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対して特許異議申立人から応答がなかったものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和6年8月14日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン(B)との比(A/B)が0.4≦A/B≦0.8であるか、」の記載を削除する。
さらに、特許請求の範囲の請求項1における、「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦C/A≦0.34である」との記載を、「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34である」という記載に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン(B)との比(A/B)が0.4≦A/B≦0.8であるか、」の記載を削除する。
さらに、特許請求の範囲の請求項2における、「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦C/A≦0.34である」との記載を、「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34である」という記載に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン(B)との比(A/B)が0.4≦A/B≦0.8であるか、」という選択肢を削除するとともに「0.25≦C/A≦0.34」という記載を発明の詳細な説明の【0061】の【表1】及び【図2】と整合するように「0.25≦A/C≦0.34」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2についての訂正について
訂正事項2による請求項2についての訂正は、「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン(B)との比(A/B)が0.4≦A/B≦0.8であるか、」という選択肢を削除するとともに「(A/C)」が「比」であることを明確にし、「0.25≦C/A≦0.34」という記載を発明の詳細な説明【0061】の【表1】及び【図2】と整合するように「0.25≦A/C≦0.34」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1及び2による請求項1及び2についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1及び3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1及び2による請求項1及び2についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正事項1及び2による請求項1及び2についての訂正は、いずれも請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第3項の規定に適合する。
また、特許異議申立人からの特許異議の申立ては、訂正前の請求項1及び2に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
緑茶抽出物と柑橘類抽出物とを含む組成物であって、上記緑茶抽出物に含まれるエピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34であることを特徴とする緑茶抽出物含有組成物。
【請求項2】
緑茶抽出物と柑橘類抽出物とを含み、上記緑茶抽出物に含まれるエピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34である、機能性食品。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等
令和6年4月18日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1及び2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第4号証に基づく進歩性)
本件特許発明1及び2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(実施可能要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1及び2における「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
4 申立理由4(サポート要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明1及び2における「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」を使用して、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0007】に記載された課題を解決できることの記載および示唆はない。また、当業者が出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1及び2における「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」を使用して本件特許発明1及び2の課題を解決できるとは認識できない。
5 申立理由5(明確性要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許の発明の詳細な説明及び本件特許の出願前の技術常識を踏まえても、本件特許発明1及び2における「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」の技術的意味を理解することができず、その権利範囲を確定することができないため第三者に不測の不利益を及ぼす。
(2)本件特許発明1及び2におけるエピガロカテキンガレート(A)とエリオシトリン(C)との比の範囲を確定することができず、第三者に不測の不利益を及ぼす。
6 証拠方法
甲第1号証:特開2017-12069号公報
甲第2号証:「茶カテキン類の機能性とそれらの応用例」、日本食品保蔵科学会誌 VOL.26 NO.1 2000 47-54頁
甲第3号証:特開2006-94825号公報
甲第4号証:国際公開第2015/199169号
甲第5号証:「柑橘ポリフェノール「糖転移ヘスペリジン」の機能性食品分野における可能性」、日本食生活学会誌 21 (4) 263-267、2011
甲第6号証:特開平11-346792号公報
甲第7号証:糖転移ヘスペリジン(https://www.glico.com/nutrition/product/ingredient/hesperidin/)[検索日2024.4.10]
甲第8号証:糖転移ヘスペリジンの研究(https://group.nagase.com/viita/rd/our_research/01/?t=r)[検索日2024.4.10]
甲第9号証:「食品添加物公定書」、第9版、厚生労働省消費者庁、2018年_抜粋(第595ページ、第908ページ)
甲第10号証:「良くわかる食品新素材」、食品化学新聞社、613-617頁、2010年5月10日発行
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和6年6月13日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 取消理由1(実施可能要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由3とおおむね同旨である。
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の記載から、「柑橘類抽出物」には「糖転移ヘスペリジン」は含まれず、「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」というものはないことを当業者は理解する。
仮に、「柑橘類」にごく微量の「糖転移ヘスペリジン」が含まれるとしても、発明の詳細な説明の【0031】及び【0032】に記載された「柑橘類」から、同【0034】及び【0035】に記載された抽出溶剤や抽出方法により、十分な量の「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」を得られることが、発明の詳細な説明には開示されているとはいえないし、「柑橘類」から十分な量の「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」を得る方法が本件特許の出願時における当業者の技術常識ということもできない。
したがって、発明の詳細な説明には、本件特許の出願時における当業者の技術常識を考慮しても、「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」をどのようにして得るのかについて記載されているとはいえないから、発明の詳細な説明に、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1及び2を生産し、使用をすることができる程度の記載があるはいえない。
よって、本件特許発明1及び2に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足するとはいえない。
2 取消理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由2は申立理由4とおおむね同旨である。
発明の詳細な説明の【0007】によると、本件特許発明1の解決しようとする課題は「カテキン等の緑茶抽出物による抗がん作用等の各種作用を最も効果的に増強できる組成物を提供すること」であり、本件特許発明2の解決しようとする課題は「カテキン等の緑茶抽出物による抗がん作用等の各種作用を最も効果的に増強できる機能性食品を提供すること」である(以下、総称して「発明の課題」という。)。
他方、発明の詳細な説明には、本件特許発明1及び2の発明特定事項である「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」に関する記載はないし、「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」により発明の課題を解決できることを確認する実施例の記載もない。
そうすると、本件特許発明1及び2は発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえないし、発明の詳細な説明の記載により、本件特許発明1及び2が発明の課題を解決できると当業者が認識できるものであるともいえない。
したがって、本件特許発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するものであるとはいえない。
3 取消理由3(明確性要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由3は申立理由5とおおむね同旨である。
「糖転移ヘスペリジン」は「柑橘類抽出物」に含まれるものではないから、本件特許発明1及び2の発明特定事項である「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」は、その技術的意味を理解することができない。
また、本件特許発明1及び2の発明特定事項である「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦C/A≦0.34である」は、「A」と「C」のどちらを分母とし、どちらを分子とするのかが一致しておらず、「0.25」以上「0.34」以下という範囲で特定されるのが、「A/C」及び「C/A」のどちらなのかを確定することができない(発明の詳細な説明の【0061】の【表1】及び【図2】からは、「0.25≦C/A≦0.34」を「0.25≦A/C≦0.34」と訂正するべきと考えられる。)。
したがって、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえる。
4 取消理由4(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由4は申立理由1とおおむね同旨である。
5 取消理由5(甲4に基づく進歩性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由5は申立理由2とおおむね同旨である。
第6 取消理由についての当審の判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「ヘスペリジン含有茶飲料組成物の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。下線は当審で付したものである。他の証拠についても同様。
・「【請求項1】
ヘスペリジンを含有する茶飲料組成物の製造方法であって、前記ヘスペリジンの水溶液を所定温度で加熱して、特定の臭気成分を除去する臭気除去工程と、前記臭気除去工程後に前記ヘスペリジン水溶液を添加する工程を含むことを特徴とする茶飲料組成物の製造方法。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、茶飲料組成物の製造方法にかかり、特にヘスペリジンを含有する茶飲料組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりから、生理活性機能を有する様々な成分が飲食品に利用されており、例えば特定保健食品をはじめとする、生理活性機能を備えた多くの製品が市場に流通し、消費者にも広く認知されている。また、今後の機能性表示制度の施行に伴い、より一層生理活性機能への関心が高まり、これに対応する製品も増加するものと考えられる。
【0003】
特定保健用食品は勿論、新たに施行される機能性表示制度に対応する飲料の場合も、特定の成分が生理活性機能を十分に発揮しうる為、推奨される摂取量が定められている。
このため、該特定成分を以下に容易に摂取できるよう、飲料の種類を選択し、その呈味性を調整することは、飲料各メーカーにとっても非常に重要な検討課題となっている。一般的に生理活性物質は動植物由来の成分が多いことから、飲用には不向きな臭気や呈味を有しているものが多い。従って、ベースとなる飲料の味に影響を与えることなく、この臭気等を低減させる、若しくは感知されないようにマスキングすることは、技術的に大きな困難を伴う。
本願発明で用いられる生理活性機能成分であって、血中中性脂肪の分解等の生理活性作用を有するグルコシルヘスペリジンは、既知の物質であるものの、提供される製剤は特有の薬品臭を強く有し、継続して所定量以上を摂取することは困難であった。
そのため、現在までに上市されている、これら生理活性物質を含有する飲料は果汁や香料などを配合し、その特有の臭気をマスキングしたものや、呈味をマスキングするために炭酸飲料の形態とするものがほとんどである。しかし、RTD(Ready to Drink)形態の飲料として、甘味が強い清涼飲料や炭酸飲料は毎日所定量摂取するのは非常に困難を伴い、その香味も生理活性物質を含有しない通常の清涼飲料や炭酸飲料と比較すると決して満足のいくものではなかった。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特に日常的に飲用されており、毎日所定量を摂取することが比較的容易な止渇性飲料において、ヘスペリジンの添加による臭気を抑制した茶飲料組成物の製造方法並びに茶飲料組成物の臭気除去方法を提供することを目的とする。」
・「【0019】
(ヘスペリジン)
本発明におけるヘスペリジンとは、主に柑橘類から抽出精製したヘスペリジンを酵素反応によって処理し、溶解度を高めた水溶性ヘスペリジンである。ヘスペリジンの可溶化処理は、特許第3060227号公報に記載されているように、ヘスペリジン1重量部およびデキストリン(DE20)6重量部に水5,000重量部を加えて加熱、溶解し、これにバチルス・ステアロサーモフィルス(B acillusstearothermophilus)由来のシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(株式会社林原生物化学研究所販売)をデキストリングラム当たり20単位加え、pH6.0、70℃に維持して18時間反応させ、ヘスペリジンの約70%をα-グリコシルヘスペリジンに転換し、その後、加熱失活させ、α-グリコシルヘスペリジンとともに未反応ヘスペリジンを含有する反応液を濾過し、濾液を多孔性合成吸着剤、商品名ダイヤイオンHP-10(三菱化成工業株式会社販売) を充填したカラムにSV2で通液し、このカラムを水で洗浄した後、50V/V%エタノールを通液し、この溶出液を濃縮して溶媒を溜去し、粉末化することによって行うことができる。このような、可溶化処理された水溶性ヘスペリジンには、例えば東洋精糖株式会社から販売されているα-Gヘスペリジンを用いることができる。また、茶飲料組成物に添加する場合、ヘスペリジン量としては40~6000ppmに調整される。この範囲とすることでヘスペリジンの生理活性機能を付与するとともに、過度なヘスペリジン特有の臭気を防ぐことができる。好ましくは150~3000ppmであり、より好ましくは150~2900ppmである。なお、本発明におけるヘスペリジン量は、臭気除去工程乃至滋味調整工程によって処理され、臭気が除去され、滋味を残存させたヘスペリジンの量である。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料である場合、ヘスペリジンの臭気及び滋味と緑茶の香味バランスの観点から、400~1000ppmが好ましく、500~850ppmがより好ましい。また、茶飲料組成物がインスタント緑茶である場合、ヘスペリジンの臭気及び滋味と緑茶の香味バランスの観点から、800~6000ppmが好ましく、1300~3500ppmがより好ましい。また、茶飲料組成物が麦茶飲料である場合、ヘスペリジンの臭気及び滋味と麦茶の香味バランスから、100~1000ppmが好ましく、150~600ppmが最も好ましい。更に、茶飲料組成物がインスタント麦茶である場合、ヘスペリジンの臭気及び滋味と麦茶の香味バランスから、40~2000ppmが好ましく、400~1900ppmが最も好ましい。
また、本発明におけるヘスペリジン水溶液とは上記ヘスペリジンを水乃至お湯に溶解させたものである。なお、本発明に添加されるヘスペリジンは柑橘類由来ではあるが、その果実種は特に限定されず、例えばみかん、ダイダイ、レモン、ライム、グレープフルーツ等が挙げられる。これは果実種によってヘスペリジン特有の臭気の強弱や性質が異なっていても、本発明の製造方法によって効果的な臭気除去効果及び滋味調整効果が期待できるからである。更に、本発明はヘスペリジンを溶解し、水溶液の状態として処理するが、これは、粉末状、スラリー状のヘスペリジン組成物と比較して、生産性や加熱臭等の品質劣化の抑制の観点から好ましい。
なお、ヘスペリジンは当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフ法)を用いた分析方法が挙げられる。」
・「【0040】
(ガレート型カテキン類)
更に、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートからなるガレート型カテキン類はカテキン類の中でも特に渋味を強く感じる成分であり、本発明の茶飲料組成物においては0~500ppm含有することを特徴とする。この範囲とすることで、適度な渋味となり、飲料に滋味成分と共に含まれていても良好な香味となる。かかる観点から、好ましくは0~350であり、より好ましくは0~300ppmであり、特に好ましくは0~250ppmであり、最も好ましくは0~200ppmである。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料又はインスタント緑茶である場合、ガレート型カテキン類は、30~600ppmに調整されると良い。この範囲とすることで渋味及び滋味のバランスが良好となるからである。かかる観点から、より好ましくは40~500ppmであり、特に好ましくは50~400ppmであり、最も好ましくは100~300ppmである。
また、麦茶飲料及びインスタント麦茶には香味の観点から、ガレート型カテキン類の含有量は100ppm未満であることが好ましく、実質含有されないことがより好ましい。」
・「【0052】
<試験例1>
下記の市販の各原料を使用し、試作品を作成した。
(ヘスペリジン水溶液)
ヘスペリジン製剤(林原社製)8.8gを表1の条件にてpHを調整した純水440mlにミキサーを用いて分散し、ヘスペリジン水溶液とした。その後、表1の条件にてヘスペリジン臭気除去工程を実施し、緑茶飲料液に各ヘスペリジン水溶液を添加した。なお、pHは堀場製作所F-52型・卓上pHメーターにて品温20度にて測定した。また、実施例8は加熱工程と濾過工程の順序を逆に行ったものである。」
・「【0060】
<試験例2>
また、表2に示すとおりの割合にて混合した緑茶抽出液に、実施例1のヘスペリジン水溶液を添加し、緑茶調合液とし、実施例16~24を得た。また、各実施例を下記方法により調整・測定した結果を合わせて表2に示す。なお、充填時のpHの調整は上述の通り、アスコルビン酸類又は重炭酸ナトリウムなどを添加することにより調整した。
【0061】
(緑茶原料A、緑茶抽出液A及び緑茶調合液A)
茶葉(やぶきた種、静岡県産一番茶深蒸し、荒茶)48gを90℃の湯1920mlで5分間抽出した。抽出液を冷却した後、吸着剤(シンワフーズケミカル(株)「ダイバガン」(ポリビニルポリピロリドン))16gを添加し3分間攪拌した後、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速480L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000m2で処理し、ビタミンCを3.2g添加し、pHが6.3になるよう重曹を添加し、緑茶抽出液Aを得た。更に、実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を120ml添加し、8000mlにメスアップして緑茶調合液Aを得た。
【0062】
(緑茶原料B、緑茶抽出液B及び緑茶調合液B)
茶葉(やぶきた種、鹿児島産秋冬番茶、荒茶)を回転ドラム型火入機にて395℃8分間火入加工し、その茶葉52gを95℃の湯2080mlで7分間抽出した。抽出液を冷却し、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速480L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000m2で処理し、ビタミンCを3.2g添加し、pHが6.3になるよう重曹を添加し、茶抽出物((株)伊藤園「テアフラン90S」(ガレート型を主体とするカテキン混合物)を4.8g添加し、緑茶抽出液Bを得た。更に、実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を440ml添加し、8000mlにメスアップして緑茶調合液Bを得た。
【0063】
(緑茶原料C、緑茶抽出液C及び緑茶調合液C)
茶葉(やぶきた種、静岡県産一番茶深蒸し、荒茶)48gを90℃の湯1920mlで5分間抽出した。抽出液を冷却し、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速480L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000m2で処理し、ビタミンCを3.2g添加し、pHが6.3になるよう重曹を添加し、テアニン製剤(太陽化学(株)「サンテアニン」)を6.0g添加し、緑茶抽出液Cを得た。更に、実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を440ml添加し、8000mlにメスアップして緑茶調合液Cを得た。
【0064】
(緑茶原料D、緑茶抽出液D及び緑茶調合液D)
茶葉(やぶきた種、鹿児島産秋冬番茶、荒茶)を回転ドラム型火入機にて395℃8分間火入加工し、その茶葉52gを95℃の湯2080mlで7分間抽出した。抽出液を冷却し、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速480L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000m2で処理し、ビタミンCを3.2g添加し、pHが6.3になるよう重曹を添加し、緑茶抽出液Dを得た。更に、実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を880ml添加し、8000mlにメスアップして緑茶調合液Dを得た。
【0065】
(緑茶原料E、緑茶抽出液E及び緑茶調合液E)
茶葉(やぶきた種、静岡県産二番茶浅蒸し、荒茶)を回転ドラム型火入機にて180℃10分間火入加工し、その茶葉48gを30℃の湯1920mlで6分間抽出した。 抽出液を冷却し、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速480L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000m2で処理し、ビタミンCを3.2g添加し、pHが6.3になるよう重曹を添加し、緑茶抽出液Eを得た。更に、実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を440ml添加し、8000mlにメスアップして緑茶調合液Eを得た。
【0066】
前記緑茶調合液A~Eを表2に記載の割合で混合し、得られた混合緑茶調合液をそれぞれUHT殺菌機(社製)で135.5℃、30秒ホールディングで殺菌し、プレート内で85℃に冷却してから透明プラスチック容器(PETボトル)に充填し、直ちに20℃まで冷却することにより、実施例16~24の緑茶飲料を得た。
【0067】
本試験において測定する成分の分析方法は以下のとおりである。
【0068】
<Bx>
光学屈折率計(アタゴ社製、Digital Refractometers、RX5000α-Bev)を用いて、糖度を測定した。
【0069】
<pH>
各実施例をサンプリングし、堀場製作所F-52型・卓上pHメーターにて品温20℃にて測定した。
【0070】
<ヘスペリジン>
HPLCを用い、検量線法よって定量して測定した。
【0071】
<カフェイン>
HPLCを用い、検量線法よって定量して測定した。
【0072】
<カテキン類>
HPLCを用い、検量線法よって定量して測定した。
【0073】
<アミノ酸>
サンプルを適量はかりとり、蒸留水に懸濁後、フィルター濾過し、Allianceシステム(Waters株式会社製)を用いて、HPLC法(蛍光検出)に基づいて各種アミノ酸の含有量を求めた。
【0074】
<糖類>
HPLC糖分析装置を用い、検量線法により定量して測定した。
【0075】
<官能評価>
官能評価は5℃で1週間保管後のサンプルについて、5℃又は25℃の飲用温度で8人のパネラーが以下の評価方法に基づいて実施し、最も多かった評価を採用した。なお、それぞれの官能評価における評価項目は以下の通りである。
含み香:
◎:口に含んだときの香りの広がりが強く、極めて良好
○:口に含んだときの香りの広がりがあり、良好
△:口に含んだときの香りの広がりを少し感じる、あまりよくない
×:口に含んだときの香りの広がりが弱く、問題あり
香りの余韻:
◎:香りの余韻が適度に感じられ、極めて良好
○:香りの余韻がやや感じられ、良好
△:香りの余韻が弱く、あまりよくない
×:香りの余韻をほとんど感じない、問題あり
爽快味:
◎:爽快味が適度に感じられ、極めて良好
○:爽快味がやや感じられ、良好
△:爽快味が弱く、あまりよくない
×:爽快味をほとんど感じない、問題あり
濃度感コク:
◎:全体的に濃度感及びコクが適度に感じられ、極めて良好
○:濃度感とコクがやや感じられ、良好
△:濃度感とコクをあまり感じない、あまりよくない
×:濃度感とコクをほとんど感じない、問題あり
【0076】
【表2】
[図:0001420325000001.jpg]
【0077】
実施例1のヘスペリジン水溶液を添加した実施例16~24の緑茶飲料は、ヘスペリジンの臭気が目立たず、滋味を感じるものであった。また、呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が1.2~9.0である実施例16~20の緑茶飲料は5℃及び25℃での飲用において、ヘスペリジンの臭気をあまり感じず、滋味と呈味のバランスが良好であり、緑茶飲料全体の香味としても良好であった。とりわけ、呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が2.0~4.5である実施例16は、5℃及び25℃での飲用において最適な濃度感(コク)を有し、極めて良好な香味であり、冷えた状態でも常温の状態でも、良好な香味であった。」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に実施例22及び20に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1実施例22発明」及び「甲1実施例20発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1実施例22発明>
「実施例22のヘスペリジンの含有量が750ppm、ガレート型カテキンの含有量が572ppmの緑茶飲料。」(当審注:実施例22については上記ア参照。以下同様。)
<甲1実施例20発明>
「実施例20のヘスペリジンの含有量が750ppm、ガレート型カテキンの含有量が464ppmの緑茶飲料。」(当審注:実施例20については上記ア参照。以下同様。)
(2)甲4に記載された事項等
ア 甲4に記載された事項
甲4には、「カテキンの機能性増強法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「[0003] 緑茶に含まれる主要なカテキンの一種であるEGCG (エピガロカテキンガレート;Epigallocatechin-O-gallate) は抗がん作用を有することが報告されており (非特許文献1)、血液がんの一種である慢性リンパ性白血病患者において第二相臨床試験が行われている (非特許文献2)。我々はこれまでにEGCGが細胞膜上の標的分子67-kDa Laminin Receptor (67LR) に結合することで抗がん作用を発揮することを明らかにした (非特許文献3-6)。この67LR は本来、基底膜構成成分であるラミニンと結合するタンパク質として発見された (非特許文献7)。 最近の研究において、 67LR はがん細胞において発現が異常に亢進しており (非特許文献8)、その発現と浸潤、転移の間に強い相関性が認められている (非特許文献9-15)。EGCG は67LR を介して選択的に白血病細胞や多発性骨髄腫細胞のみを死滅させることが報告され (非特許文献16-17)、EGCGが67LR陽性の白血病細胞や多発性骨髄腫細胞に対する分子標的剤となりうることが示された。しかしながら EGCG の白血病細胞や多発性骨髄腫細胞に対する致死作用は限定的であり (非特許文献2) 、EGCGを抗がん剤として利用する上でその作用増強が強く望まれている。」
・「[0005] 本発明は、緑茶抽出物又はカテキンと、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体とを含む組成物を提供することを目的とする。
[0006] 本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、緑茶抽出物又はカテキンと、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体とを含む組成物が抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用などの各種作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、緑茶抽出物又はカテキンと、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体とを含む、組成物である。
また本発明は、緑茶抽出物又はカテキンと、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはフラバノン配糖体とを含む、機能性食品である。」
・「[0007] 本発明において、緑茶抽出物又はカテキンとしては、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びメチル化カテキンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明において、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体としては、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明の好ましい態様において、緑茶抽出物又はカテキンは、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート又はメチル化カテキンであり、柑橘類抽出物又はフラバノンは、エリオジクチオールである。
本発明の組成物、食品、剤及び増強剤は、抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用、抗炎症作用、コレステロール低下作用、血栓又は脳梗塞予防作用及び免疫増強作用からなる群から選ばれる少なくとも1つの作用を有するものである。」
・「[0008] 本発明により、緑茶抽出物又はカテキンと、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体とを含む組成物が提供される。本発明の組成物は、抗がん作用、抗筋萎縮作用、抗肥満作用等を目的とした機能性食品等として有用である。」
・「[0021] 柑橘類抽出物中には、フラバノンが含まれている。柑橘類抽出物は、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン及びそれらの配糖体(エリオジクチオール配糖体、ナリンゲニン配糖体、ヘスペレチン配糖体)などが含まれていることが好ましく、エリオジクチオールを含有していることが更に好ましい。
また、本発明においては、柑橘類抽出物に含まれるフラバノンとは別のフラバノンを組成物に含有させることができる。例えば合成フラバノン、フラバノンに糖を結合させた糖転移化合物などが挙げられる。例えば、合成エリオジクチオール、合成ナリンゲニン及び合成ヘスペレチンなどが挙げられ、これらを1種又は複数種混合することができる。合成エリオジクチオール、合成ナリンゲニン及び合成ヘスペレチンなどは、公知手法により得ることができる(European J Org Chem., 2012(3): 449-462. doi:10.1002/ejoc.201101228)。
また、柑橘類抽出物の組成物中の含有率は、組成物の剤型または投与形態によって異なる。
本発明の組成物において、茶抽出物又はカテキンと、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体との比(茶抽出物/柑橘類抽出物、質量比)は、それぞれの濃縮程度によっても異なるが、好ましくは100~0.01とすることができる。そして、茶抽出物又はカテキン、及び柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体の組成物中の含有量は、上記質量比の範囲で適宜設定することができる。例えば茶抽出物又はカテキンは90重量%~0.001重量%、好ましくは30重量%~0.01重量%であり、はフラバノン若しくはその配糖体は90重量%~0.001重量%、好ましくは20重量%~0.01重量%である。」
・「[0028]実験方法
EGCG のがん細胞アポトーシス誘導作用に対するEriodictyolの併用効果
ヒト多発性骨髄腫細胞株U266を、 10% ウシ胎児血清 (FCS) 添加RPMI1640 培地にて 37℃、水蒸気飽和した 5% CO2条件下で継代及び維持した。細胞は対数増殖期で培養維持した。培養に使用した RPMI 1640 培地は、超純水 1 L あたり RPMI 1640 培地 10.4 g、HEPES 2.38 g、注射用ペニシリン G カリウム 10 万単位、硫酸ストレプトマイシン注射用 100 mg 、NaHCO3 2.0 g を懸濁した後、フィルター滅菌した。
その後、FCS を RPMI 1640 培地に添加し、細胞培養に使用した。ヒト多発性骨髄腫細胞株U266に対するEGCG とEriodictyolとの組み合わせによるアポトーシス誘導作用を検討するために、Annexin V 及びPI を用いた二重染色を実施した。Propidium Iodide (PI)染色液は、PI (Sigma)を 50 μg/mL の濃度となるように PBS に懸濁したものを用いた。」
・「[0057]実験方法(2)
EGCG及びその類似体の抗がん作用に対するEriodictyol及びその類似体の併用効果
ヒト多発性骨髄腫細胞株U266は、 10% ウシ胎児血清 (FCS) 添加RPMI1640 培地にて 37℃、水蒸気飽和した 5% CO2 条件下で継代、維持した。細胞は対数増殖期で培養維持した。培養に使用した RPMI 1640 培地は、超純水 1 L あたり RPMI 1640 培地 10.4 g、HEPES 2.38 g、注射用ペニシリン G カリウム 10 万単位、硫酸ストレプトマイシン注射用 100 mg、NaHCO3 2.0 g を懸濁した後、フィルター滅菌した。その後、FCS を RPMI 1640 培地に添加し、細胞培養に使用した。超純水 1 L に対し、NaCl 8.0 g、KCl 0.2 g、Na2HPO4 1.15 g、KH2PO4 0.2 g を溶解してPBSを調製し、オートクレーブ滅菌した。
Eriodictyol及びその構造類似体であるNaringenin、Hesperetin、ならびにそれらの配糖体であるEriocitrin、Naringin、Hesperidinは、100% ジメチルスルホキシド (DMSO) にて 5 mM となるように調整し、-30℃ にて保存した。EGCG 及び (-)-Gallocatechin gallate (GCG) は超純水にて 5 mM となるように調整し、-30℃ にて保存した。EGCG3”Meは10%DMSO dH2Oにて 5 mM となるように調整し、-30℃ にて保存した。
U266 を1% FCS及び SOD (5 U/mL)、Catalase (200 U/mL)含有RPMI 1640 に 5×104 cells/mL になるよう調整して 24 well plate に播種し、EGCG 及び類似体又は Eriodictyol及びその類似体を、終濃度で 5 mM となるよう添加し96 時間培養した。培養後、トリパンブルー法にて生細胞数を測定した。」
・「[0064]実施例19
Hesperetin配糖体であるHesperidin が EGCG 及びその構造類似体の抗がん作用に及ぼす影響
EGCG 及びその構造類似体の抗がん作用に対するHesperidin の効果を評価するため、ヒト多発性骨髄腫細胞株U266 を5×104cells/mL となるよう調整して 24 well plate に播種し、Hesperidin及びその構造類似体を終濃度が 5 mM となるよう添加し96時間培養した。96 時間培養後、トリパンブルー法にて生細胞数を測定した。
その結果、HesperidinはEGCG 及びその構造類似体であるEGCG 3”Me, GCGの抗がん作用を顕著に高めることを見出した(図19)。」
・「[請求項1] 緑茶抽出物又はカテキンと、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体とを含む、組成物。
[請求項2] 緑茶抽出物又はカテキンが、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びメチル化カテキンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
[請求項3] 柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
・・・(略)・・・
[請求項6] 緑茶抽出物又はカテキンと、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはフラバノン配糖体とを含む、機能性食品。
[請求項7] 緑茶抽出物又はカテキンが、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びメチル化カテキンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の食品。
[請求項8] 柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の食品。」
・「
[図:0001420325000002.jpg]
」
イ 甲4に記載された発明
甲4に記載された事項を、特に請求項1ないし3及び6ないし8に関して整理すると、甲4には次の発明(以下、順に「甲4組成物発明」及び「甲4食品発明」という。)が記載されていると認める。
<甲4組成物発明>
「緑茶抽出物又はカテキンと、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体とを含む、組成物であって、緑茶抽出物又はカテキンが、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びメチル化カテキンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種である組成物。」
<甲4食品発明>
「緑茶抽出物又はカテキンと、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはフラバノン配糖体とを含む、機能性食品であって、緑茶抽出物又はカテキンが、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びメチル化カテキンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、柑橘類抽出物又はフラバノン若しくはその配糖体が、エリオジクチオール、ナリンゲニン及びヘスペレチン、並びにこれらの配糖体からなる群から選ばれる少なくとも1種である機能性食品。」
2 取消理由1(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1及び2は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
取消理由1は、本件訂正前の本件特許の請求項1及び2における「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」という記載に起因するものであるところ、本件訂正により該記載を含む「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン(B)との比(A/B)が0.4≦A/B≦0.8であるか、」という記載は削除され、「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」という記載に起因する実施可能要件違反の理由はなくなった。
そこで、改めて検討する。
発明の詳細な説明には本件特許発明1及び2の各発明特定事項について具体的に記載されており、実施例についても具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1及び2を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1及び2に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
(3)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。
3 取消理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
ア 特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
イ 判断
取消理由2は、本件訂正前の本件特許の請求項1及び2における「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン(B)」という記載に起因するものであるところ、本件訂正により該記載を含む「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン(B)との比(A/B)が0.4≦A/B≦0.8であるか、」という記載は削除され、「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン(B)」という記載に起因するサポート要件違反の理由はなくなった。
そこで、改めて検討する。
発明の課題は上記第5 2のとおりである。
発明の詳細な説明の【0008】に「上述した目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討した結果、カテキン等の緑茶抽出物と、柑橘類抽出物又はフラバノン配糖体とを所定の比率で混合することでカテキン等の緑茶抽出物の有する各種効果を極めて著しく向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。」と記載されている。
発明の詳細な説明の【0009】には本件特許発明1及び2に対応する記載がある。
発明の詳細な説明の【0037】には「本発明に係る組成物は、緑茶抽出物に含まれる・・・(略)・・・又はエピガロカテキンガレート(A)とエリオシトリン(C)との比(C/A)が0.2<C/A<0.5であるといった特徴を有する。・・・(略)・・・また、比(C/A)は0.25≦C/A≦0.34とすることが好ましく、C/A=0.3が更に好ましい。」(当審注:「C/A」は「A/C」の誤記である。)と記載され、同【0038】には「これらの比を維持することで、エピガロカテキンガレートが有する抗がん作用等の各種作用を大幅に向上させることができる。なお、エピガロカテキンガレートによる各種作用は、環状グアノシン一リン酸(cGMP)の産生量に基づいて算出することができる。」と記載されている。
発明の詳細な説明の【0055】ないし【0062】には「緑茶抽出物に含まれるエピガロカテキンガレート(A)」と「柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)」との「比(A/C)」が「0.25≦A/C≦0.34」の条件を満たす実施例においてcGMP濃度が有意に上昇しており、抗がん作用等の各種作用を大幅に向上できることを確認する記載がある。
そうすると、発明の詳細な説明の記載から、当業者は「緑茶抽出物と柑橘類抽出物とを含む組成物であって、上記緑茶抽出物に含まれるエピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34である緑茶抽出物含有組成物」及び「緑茶抽出物と柑橘類抽出物とを含み、上記緑茶抽出物に含まれるエピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34である、機能性食品」は発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「緑茶抽出物含有組成物」であり、本件特許発明2は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「機能性食品」である。
したがって、本件特許発明1及び2は発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(3)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当せず、取消理由2によっては取り消すことはできない。
4 取消理由3(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
取消理由3は、本件訂正前の本件特許の請求項1及び2における「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」という記載及び「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦C/A≦0.34である」という記載に起因するものであるところ、本件訂正により、「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」という記載を含む「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン(B)との比(A/B)が0.4≦A/B≦0.8であるか、」という記載は削除され、「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦C/A≦0.34である」という記載は「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34である」という記載に訂正され、「柑橘類抽出物に含まれる糖転移ヘスペリジン」という記載及び「エピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦C/A≦0.34である」という記載に起因する明確性要件違反の理由はなくなった。
そこで、改めて検討する。
本件特許の請求項1及び2の記載は、それら自体に不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)取消理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当せず、取消理由3によっては取り消すことはできない。
5 取消理由4(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 甲1実施例22発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲1実施例22発明を対比する。
甲1実施例22発明における「緑茶飲料」は本件特許発明1における「緑茶抽出物含有組成物」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「緑茶抽出物と柑橘類抽出物とを含む緑茶抽出物含有組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1a>
本件特許発明1においては、「上記緑茶抽出物に含まれるエピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34である」と特定されているのに対し、甲1実施例22発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
相違点1-1aについて検討する。
本件特許発明1と甲1実施例22発明の間には、相違点1-1aがあるから、本件特許発明1は甲1実施例22発明であるとはいえない。
また、甲1には、甲1実施例22発明において、相違点1-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲1実施例22発明において、相違点1-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「抗がん作用等に優れたものとなる。」(発明の詳細な説明の【0017】)という効果は、甲1実施例22発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲1実施例22発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲1実施例20発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲1実施例20発明を対比する。
甲1実施例20発明における「緑茶飲料」は本件特許発明1における「緑茶抽出物含有組成物」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「緑茶抽出物と柑橘類抽出物とを含む緑茶抽出物含有組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1b>
本件特許発明1においては、「上記緑茶抽出物に含まれるエピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34である」と特定されているのに対し、甲1実施例20発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
相違点1-1bについて検討する。
本件特許発明1は甲1実施例20発明の間には、相違点1-1bがあるから、本件特許発明1は甲1実施例20発明であるとはいえない。
また、甲1には、甲1実施例20発明において、相違点1-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲1実施例20発明において、相違点1-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「抗がん作用等に優れたものとなる。」という効果は、甲1実施例20発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲1実施例20発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2について
ア 甲1実施例22発明との対比・判断
(ア)対比
甲1の【0002】及び【0003】によると、甲1実施例22発明における「緑茶飲料」は本件特許発明2における「機能性食品」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「緑茶抽出物と柑橘類抽出物とを含む機能性食品。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-2a>
本件特許発明2においては、「上記緑茶抽出物に含まれるエピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34である」と特定されているのに対し、甲1実施例22発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
相違点1-2aについて検討する。
相違点1-2aは相違点1-1aと実質的に同じであるから、その判断も同じである。
すなわち、本件特許発明2は甲1実施例22発明であるとはいえないし、甲1実施例22発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲1実施例20発明との対比・判断
(ア)対比
甲1の【0002】及び【0003】によると、甲1実施例20発明における「緑茶飲料」は本件特許発明2における「機能性食品」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「緑茶抽出物と柑橘類抽出物とを含む機能性食品。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-2b>
本件特許発明2においては、「上記緑茶抽出物に含まれるエピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34である」と特定されているのに対し、甲1実施例20発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
相違点1-2bについて検討する。
相違点1-2bは相違点1-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。
すなわち、本件特許発明2は甲1実施例20発明であるとはいえないし、甲1実施例20発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)取消理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び2は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当せず、取消理由4によっては取り消すことはできない。
6 取消理由5(甲4に基づく進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲4組成物発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「緑茶抽出物と柑橘類抽出物とを含む緑茶抽出物含有組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4-1>
本件特許発明1においては「上記緑茶抽出物に含まれるエピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34である」と特定されているのに対し、甲4組成物発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点4-1について検討する。
甲4には、甲4組成物発明において、相違点4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲4組成物発明において、相違点4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「抗がん作用等に優れたものとなる。」という効果は、甲4組成物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲4組成物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2と甲4食品発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「緑茶抽出物と柑橘類抽出物とを含む機能性食品。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4-2>
本件特許発明2においては「上記緑茶抽出物に含まれるエピガロカテキンガレート(A)と上記柑橘類抽出物に含まれるエリオシトリン(C)との比(A/C)が0.25≦A/C≦0.34である」と特定されているのに対し、甲4食品発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点4-2について検討する。
相違点4-2は相違点4-1と実質的に同じであるから、その判断も同じである。
すなわち、本件特許発明2は甲4食品発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由5についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び2は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当せず、取消理由5によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について
取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由はない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700367