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特許異議申立

2025-700552

冷菓

審判番号
2025-700552
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-500901
登録番号
7589328
請求日
2025年05月26日
審決日
2026年05月13日
公報発行日
2026年08月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】森永乳業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
  • 【異議申立人】秋山 万奈
審判長/審判官
  • 審判長 渋谷 知子
  • 審判官 植前 充司
  • 審判官 ▲高▼橋 祐介
分類
P1651.113-YAA(A23G) / P1651.121-YAA(A23G) / P1651.161-YAA(A23G) / P1651.536-YAA(A23G) / P1651.537-YAA(A23G) / P1651.55 -YAA(A23G) / P1651.851-YAA(A23G) / P1651.852-YAA(A23G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
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特許第7589328号発明「冷菓」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7589328号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-4〕、5、6、7について訂正することを認める。 特許第7589328号の請求項1-7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7589328号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)2月16日(優先権主張 令和3年2月19日 日本)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 令和 6年 5月29日付け:拒絶理由通知書 令和 6年 7月25日 :意見書・手続補正書 令和 6年10月23日付け:特許査定 令和 6年11月15日 :特許権の設定登録 令和 6年11月25日 :特許掲載公報発行 令和 7年 5月26日 :特許異議申立人秋山 万奈(以下「申立 人」という。)による本件特許の請求項 1~7に対する特許異議の申立て 令和 7年 7月22日 :手続補正書(方式) 令和 7年11月 5日付け:取消理由通知書 令和 7年12月24日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の 提出 令和 8年 1月14日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知) 令和 8年 2月16日 :申立人による意見書の提出 第2 本件訂正請求について 令和7年12月24日付けの訂正請求書によりなされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求によりなされた訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲について、以下のとおり訂正することを求めるものである。 1 本件訂正の内容 本件訂正は、以下の訂正事項1~4のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1) 訂正事項1 本件特許の特許請求の範囲の請求項1において、 「コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有し、 前記コーティング層は、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物より構成されており、 前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である、包装袋入りの冷菓。」と記載されているのを、 「コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有し、 前記コーティング層は、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物より構成されており、 前記組成物において、前記特定成分が粉あめを含む場合、その含有量は3.0質量%以下であり、 前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である、包装袋入りの冷菓。」 に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。) (2) 訂正事項2 本件特許の特許請求の範囲の請求項5において、 「コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓の製造方法であって、 前記コア部の表面の少なくとも一部に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物を用いてコーティング層を形成する工程を有すし、 前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である、製造方法。」 と記載されているのを、 「コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓の製造方法であって、 前記コア部の表面の少なくとも一部に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物を用いてコーティング層を形成する工程を有し、 前記組成物において、前記特定成分が粉あめを含む場合、その含有量は3.0質量%以下であり、 前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である、製造方法。」 に訂正する。 (3) 訂正事項3 本件特許の特許請求の範囲の請求項6において、 「プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を含有し、 冷菓の-18℃~-35℃での冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する用途で前記冷菓の製造に用いられる、氷生成抑制剤。」 と記載されているのを、 「プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を含有し、 コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓を包装袋に収容された状態で-18℃~-35℃での冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する用途で前記冷菓の製造において、前記コーティング層を形成するために用いられる、氷生成抑制剤。」 に訂正する。 (4) 訂正事項4 本件特許の特許請求の範囲の請求項7において、 「冷菓の-18℃~-35℃での冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法であって、 前記冷菓の表面を構成する組成物に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を添加する工程を有する、方法。」 と記載されているのを、 「コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓を包装袋に収容された状態で-18℃~-35℃での冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法であって、 前記冷菓の表面を構成する組成物に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を添加する工程を有する、方法。」 に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の在否 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明における「コーティング層」が、「プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物より構成され」たものであったものを、本件特許の明細書及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0064】の記載に基づいて、「前記組成物において、前記特定成分が粉あめを含む場合、その含有量は3.0質量%以下であ」る点を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、本件特許明細書等の【0064】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 そして、訂正事項1は、カテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~4についても同様である。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項5に係る発明における「コーティング層を形成する工程」に「用い」る「組成物」が、「プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物」であったものを、「前記組成物において、前記特定成分が粉あめを含む場合、その含有量は3.0質量%以下であ」る点を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件訂正前の請求項5には、「コーティング層を形成する工程を有すし」との記載があり、この「有すし」が、どのような意味であるのか明瞭でなかったが、訂正事項2により「コーティング層を形成する工程を有し」に訂正され、記載内容が明瞭にされた。してみると、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項2は、本件特許明細書等の【0064】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 さらに、訂正事項2は、カテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項6に係る発明における「冷菓」を、「コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓」に限定し、同じく「冷菓の-18℃~-35℃での冷凍保存時」を、「冷菓を包装袋に収容された状態で-18℃~-35℃での冷凍保存時」に限定し、同じく「冷菓の製造に用いられる、氷生成抑制剤」を、「冷菓の製造において、前記コーティング層を形成するために用いられる、氷生成抑制剤」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項3は、本件特許明細書等の【0017】、【0018】、【0021】及び【0068】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 そして、訂正事項3は、カテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4) 訂正事項4について 訂正事項4は、本件訂正前の請求項7に係る発明における「冷菓の-18℃~-35℃での冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法」に関して、「冷菓」を、「コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓」に限定し、同じく「冷菓の-18℃~-35℃での冷凍保存時」を、「冷菓を包装袋に収容された状態で-18℃~-35℃での冷凍保存時」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項4は、本件特許明細書等の【0017】、【0018】及び【0068】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 そして、訂正事項4は、カテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5) 訂正の適否についてのまとめ 上記(1)~(4)のとおりであるから、訂正事項1~4は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とし、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (6) 独立特許要件について 本件訂正においては、訂正前の請求項1~7が特許異議の申立ての対象とされているので、上記(1)~(4)のとおり請求項1~7について特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正後の請求項1~7に係る発明には、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (7) 小括 上記(1)~(6)のとおり、本件訂正請求による訂正事項1~4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5、6、7について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、訂正後の特許請求の範囲について本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、1A等の符号は、分説するため当審合議体が付した。また、それぞれの符号により分説された事項を、以下では「構成1A」等という。 【請求項1】 1A コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有し、 1B 前記コーティング層は、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物より構成されており、 1C 前記組成物において、前記特定成分が粉あめを含む場合、その含有量は3.0質量%以下であり、 1D 前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である、 1E 包装袋入りの冷菓。 【請求項2】 2A 前記組成物における前記特定成分の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下である、 2B 請求項1に記載の冷菓。 【請求項3】 3A 前記コア部の凍結点が-5℃以上である、 3B 請求項1または2に記載の冷菓。 【請求項4】 4A 前記特定成分は、前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する、 4B 請求項1~3のいずれか1項に記載の冷菓。 【請求項5】 5A コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓の製造方法であって、 5B 前記コア部の表面の少なくとも一部に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物を用いてコーティング層を形成する工程を有し、 5C 前記組成物において、前記特定成分が粉あめを含む場合、その含有量は3.0質量%以下であり、 5D 前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である、 5E 製造方法。 【請求項6】 6A プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を含有し、 6B コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓を包装袋に収容された状態で-18℃~-35℃での冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する用途で前記冷菓の製造において、前記コーティング層を形成するために用いられる、 6C 氷生成抑制剤。 【請求項7】 7A コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓を包装袋に収容された状態で-18℃~-35℃での冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法であって、 7B 前記冷菓の表面を構成する組成物に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を添加する工程を有する、 7C 方法。 第4 特許異議の申立てについて 1 特許異議の申立ての概要 (1) 申立理由の概要及び証拠方法 申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証~甲第11号証(以下、それぞれ「甲1」等という。)を提出し、以下の申立理由を主張している。 ア 証拠方法 甲1:特開2021-23238号公報 甲2:国際公開2005/006874号 甲3:特開平8-275732号公報 甲4:特開2006-25614号公報 甲5:特開2000-262220号公報 甲6:特開平3-80068号公報 甲7:第8版食品添加物公定書,厚生労働省,2007年8月31日,p.572 甲8:食品産業事典改訂第八版,日本食糧新聞社,2008年3月17日,p.139 甲9:「Morphological investigations of disaccharide molecules for growth inhibition of ice crystals」,Journal of Crystal Growth 299 (2007), p.125-135 甲9の2:甲9の抄訳 甲10:特開2018-161075号公報 甲11:食品産業事典 改訂 第七版 上,日本食糧新聞社,平成15年2月17日,p.529-530 イ 申立理由の概要 (ア) 申立理由1(新規性) 申立理由1をまとめると、概略、以下のとおりである。 a 甲2に基づく新規性欠如 本件訂正前の請求項6、7に係る発明(以下「本件特許発明6」等という。)は、甲2に記載された発明(以下「甲2発明」等という。)と同一である。 b 甲4に基づく新規性欠如 本件特許発明1、4、5は、甲4発明と同一である。 よって、本件特許発明1、4~7は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1、4~7に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 (イ) 申立理由2(進歩性) 申立理由2をまとめると、概略、以下のとおりである。 a 甲2及び甲3~5に基づく進歩性欠如 本件特許発明1、2、4、5は、甲2発明に、甲3~5に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 b 甲6及び甲3に基づく進歩性欠如 本件特許発明1、2、5は、甲6発明に、甲3に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 c 甲6及び甲3、8に基づく進歩性欠如 本件特許発明3は、甲6発明に、甲3、甲8に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 d 甲6及び甲2、3、9に基づく進歩性欠如 本件特許発明4、6、7は、甲6発明に、甲2、甲3、甲9に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 e 甲4及び甲2、3、5、6、9に基づく進歩性欠如 本件特許発明1、2は、甲4発明に、甲2、甲3、甲5、甲9に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 f 甲4及び甲2、3、5、6、8、9に基づく進歩性欠如 本件特許発明3、6、7は、甲4発明に、甲2、甲3、甲5、甲6、甲8、甲9に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件特許発明1~7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1~7に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 (ウ) 申立理由3(拡大先願) 本件特許発明1~7は、本件特許の出願の日前に出願がされ、本件特許の出願後に甲1により出願公開がされた他の特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (エ) 申立理由4(サポート要件) 本件特許発明1~7は、発明の詳細な説明に記載したものではないことから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、これらの発明に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (オ) 申立理由5(実施可能要件) 本件特許発明1~7は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、これらの発明にかかる特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (カ) 申立理由6(新規事項) 令和6年7月25日に提出された手続補正書による補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件特許発明1~5に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであって、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。 2 令和7年11月5日付け取消理由の概要 本件特許発明1~7に係る特許に対して、当審合議体が令和7年11月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (取消理由) 理由1(拡大先願) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、その優先日後に出願公開された甲1に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「甲1明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が他の特許出願に係る上記発明をした者と同一ではなく、また、本件特許の出願の時に本件特許の出願人が他の特許出願の出願人と同一でもないので、当該請求項に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 理由2(新規性) 本件特許の請求項6、7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第5 主な証拠における記載事項等 1 甲1 (1) 甲1明細書等に記載された事項 甲1明細書等には、以下の記載がある(下線は当審合議体が付与した。以下同様)。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、コアシェル型冷菓に関する。」 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、十分な流通強度を有し、かつ、やわらかい噛みだし、氷っぽさのない風味、スッキリした後口であることを両立できる冷菓を提供することを目的とする。」 「【0013】 シェルは、脂肪と乳化剤と水を含む。脂肪と乳化剤は、シェルの固形分の構成要素になる。シェルの固形分は、好ましくは3~35質量%、より好ましくは6~30質量%、さらに好ましくは8~25質量%、特に好ましくは10~20質量%である。 【0014】 シェルの水含有量は、好ましくは95~65質量%、より好ましくは94~70質量%、さらに好ましくは92~75質量%、特に好ましくは90~80質量%である。 【0015】 シェルの乳化剤含有量は、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.02~3質量%、さらに好ましくは0.05~1質量%、特に好ましくは0.1~0.5質量%である。 【0016】 シェルの脂肪分は、好ましくは0.2~7.5質量%、より好ましくは0.5~7質量%、さらに好ましくは0.8~6.5質量%、特に好ましくは1~6質量%である。 【0017】 コアの固形分は、好ましくは30~50質量%、より好ましくは35~45質量%である。 【0018】 コアの凝固点は、好ましくは-5.0~-3.0℃、より好ましくは-4.5~-3.5℃である。シェルの凝固点は、好ましくは-2.0~0.0℃、より好ましくは-1.0~-0.5℃である。シェルの凝固点は、コアの凝固点よりも好ましくは3~5℃高く、より好ましくは3.5~4℃高い。」 「【0022】 コア又はシェルに配合可能な糖類としては、砂糖(上白糖、グラニュー糖、粉糖、ザラメなど)、麦芽糖、乳糖、ブドウ糖、トレハロース、果糖、転化糖、水飴、異性化糖などが挙げられる。糖類は、1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上が組み合わされて用いられてもよい。」 「【0028】 コアのシェルによるコーティングは、コアとなる冷菓にシェルのコーティング液を例えばシャワーのようにかけてもよく、コーティング溶液に浸漬してもよい。コーティング液の温度は、例えば、2~10℃である。コーティング溶液の粘度は5℃で1000 cp未満が好ましく、より好ましくは5℃で50~600 cp程度である。シェルをコーティング液で被覆後に冷却することにより、本発明のコアシェル型冷菓を得ることができる。」 「【実施例】 【0029】 以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 【0030】 実施例1~5及び比較例1~2 以下表1、表2に示す各成分を含むぶどうコアとぶどうシェルから構成される球状のコアシェル型冷菓を作製した。各コアシェル型冷菓において、シェルの厚さは均一であり、質量はいずれも約7.8gであり、コア80質量%、シェル20質量%であった。 【0031】 試験例1 表1及び表2に示される6種のコアシェル型冷菓について、流通強度を評価するために以下の条件でヒートショックテストを行った。表2の粘度は、5℃で、B型粘度計(ロータ:No.2、回転数:30rpm、測定時間:30secで自動停止)を用いて測定した。 【0032】 <ヒートショックテスト> ・-10℃の恒温槽に一定の荷重をかけた状態で保存する。 ・24時間後、48時間後に球状のコアシェル型冷菓のつぶれ具合、コアの内容物のシェル外への染み出しを目視で確認する。 【0033】 実験は、図1に示すように、アルミパウチに3列×4行となるようにコアシェル型冷菓をパッキングして行った。 ・最も荷重のかかるのは、最下段の冷菓であり、上に重なる3つ分の重量23.4gがかかることを想定し、雰囲気温度-10℃にて加速試験とした。目視での観察は、最下段の冷菓について、以下の評価基準に基づき行った。」 「【0043】 【表2】 [図:0001438281000001.jpg] 」 (2) 甲1発明1 上記(1)の記載、特に【0043】の表2に示された「チョコシェル(実施例4)」の記載を参照すると、甲1明細書等には、以下の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、甲1明細書等には、表2に示された「水あめ」の単位についての明記はないが、【0015】に示された乳化剤の含有量と表2の記載を対照すると、その単位は「質量%」であると認められる。 「チョココアとチョコシェルから構成される球状のコアシェル型冷菓であって(【0030】、【表2】)、 前記シェルは、6.0質量%の水あめ及び水を含む組成物からなり(【0013】、【表2】の実施例4)、 前記コアの凝固点は-3.5℃であり(【表2】のチョココア)、 前記シェルを構成する前記組成物は、5℃における粘度が530cPである(【0031】、【表2】の実施例4)、 アルミパウチにパッキングされた、氷っぽさのない風味のコアシェル型冷菓(【0006】、【0033】)。」 (3) 甲1発明2 上記(1)に示した【0030】には、「球状のコアシェル型冷菓を作成した。」との記載があり、「水あめ及び水を含む組成物」から前記シェルが作成されることを勘案すると、甲1明細書等には、コアシェル型冷菓の作成方法の発明として、以下の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。 「チョココアとチョコシェルから構成される球状のコアシェル型冷菓の作成方法であって(【0030】、【表2】)、 前記シェルは、6.0質量%の水あめ及び水を含む組成物から作成され(【0013】、【0030】、【表2】の実施例4)、 前記シェルを構成する前記組成物は、5℃における粘度が530cPである(【0031】、【表2】の実施例4)、 氷っぽさのない風味のコアシェル型冷菓の作成方法(【0006】、【0030】)。」 2 甲2 (1) 甲2に記載された事項 甲2には、以下の記載がある。 「[0001] 本発明は、従来の冷菓に比べ柔らか且つ滑らかな冷菓及びその製造方法に関するものであり、特に、冷凍庫(約-18℃)から取り出した直後でも速やかにソフトタリーム状或いはモンブランのような紐状に絞り出すことが容易な冷菓及びその製造方法に関するものである。」 「[0013] 上記のような状況を鑑み、本発明は、約-18℃の冷凍庫、更には約-20℃まで温度の低下した冷凍庫から取り出した直後でも速やかにソフトクリーム状或いはモンブランのような紐状に絞り出すことが容易で、スプーンやアイスクリームディッシヤーにて掬い取ることも容易な、従来の冷菓に比べ柔らかで且つばさばさとした食感のない滑らかな冷菓及びその製造方法を提供することを目的とするものである。」 「[0021] また更に、プルランの含有量を冷菓に対し0.2乃至2.0重量%とすることで、プルラン以外の増粘多糖類と比較して特に優れた接着性により本発明の冷菓に伸びのある滑らかさを付与することが可能となり、プルラン特有の高い保水性により自由水を束 縛し冷凍貯蔵中の氷結晶の成長を顕著に防止することが可能となり本発明の冷菓に舌触りの滑らかな柔らかい食感をも付与することが可能となった。」 「[0028] 本発明における安定剤として、デンプンを原料とし、黒酵母の一種であるAureobasidium pullulansを培養して得られた、マルトトリオースが規則正しくα-1,6結合した天然多糖類であるプルランを用いることが好ましく、その量としては冷菓に対し0.2乃至2.0重量%の割合で含有させると良い。プルランは他の増粘多糖類と比較して、高粘着性、潤滑性及び粘性が低いわりに高い保水性を備えているため、冷菓に滑らかさを付与すると共に、安定剤添加による粘度の増加、すなわち柔らかさの低下を引き起こさずに、冷凍貯蔵中の氷結晶の成長を顕著に防止することが可能となり、冷菓の柔らかさ及び滑らかさを高める効果を備えている。また、安定剤としてプルラン以外の増粘多糖類を少量であれば併用しても良くその場合、安定剤全体量が3.0重量%以下とすることで、滑らかな食感の製品に仕上がる。」 「[0031] 本発明における冷菓はまた、底部に開口部を備えたカップ型容器に充填されてい ても良い。・・・。 [0032] 本発明における冷菓はまた、チューブ状カップ型容器に充填されていても良く該 容器の形状は筒状であって、押し出すことにより内容物の冷菓を絞り出すことのできるものであればどのような形状でも良くスプレッドを充填するような通常のチューブ容器、スタンディングパウチ容器又はブローボトル容器等を用いることができる。・・・。」 「[0051] 以上のように、本発明にかかる冷菓は、冷菓原料に単糖類及び/又は二糖類の糖 と植物性油脂又は耐凍性油脂とプルランとを含有させ、オーバーランを5乃至45%とすることによって、冷凍庫 (約-18℃)から取り出した直後でも速やかにソフトクリーム状或いはモンブランのような紐状に絞り出すことが容易で、スプーンやアイスクリームディッシャーにて掬い取ることも容易な、従来の冷菓に比べ柔らかで且つばさばさとした食感のない滑らかな冷菓であるため、本発明の冷菓を底部に開口部を備えた力ップ型容器や、チューブ型容器に充填することにより、ソフトクリーム状に絞り出して提供することも可能である。したがって本発明の冷菓は、通常の容器入り冷菓販売業の みならずソフトクリーム販売業にも適用可能である。」 (2) 甲2発明1 上記(1)より、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明1」という。)が記載されていると認められる。 「約-18℃の冷凍庫、更には約-20℃まで温度の低下した冷凍庫から取り出した直後でも柔らかで且つばさばさとした食感のない滑らかな([0013])、底部に開口部を備えた力ップ型容器又はチューブ状容器に充填された([0031]、[0032]、[0051])冷菓及びその製造方法を提供することを目的として([0013])、冷菓に対し0.2乃至2.0重量%の割合で含有させることにより、高い保水性を備えているため冷凍貯蔵中の氷結晶の成長を顕著に防止することを可能とするプルラン([0028])。」 (3) 甲2発明2 また、上記(1)より、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明2」という。)も記載されていると認められる。 「約-18℃の冷凍庫、更には約-20℃まで温度の低下した冷凍庫から取り出した直後でも柔らかで且つばさばさとした食感のない滑らかな([0013])、底部に開口部を備えた力ップ型容器又はチューブ状容器に充填された([0031]、[0032]、[0051])冷菓及びその製造方法を提供することを目的として([0013])、他の増粘多糖類と比較して、高粘着性、潤滑性及び粘性が低いわりに高い保水性を備えているプルランを冷菓に対し0.2乃至2.0重量%の割合で含有させ、冷凍貯蔵中の氷結晶の成長を顕著に防止することを可能とする([0028])方法。」 (3) 甲2発明3 また、上記(1)より、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明3」という。)が記載されていると認められる。 「プルランを冷菓に対し0.2乃至2.0重量%の割合で含有させ([0028])、約-18℃の冷凍庫、更には約-20℃まで温度の低下した冷凍庫から取り出した直後でも柔らかで且つばさばさとした食感のない滑らかな([0013])、底部に開口部を備えた力ップ型容器又はチューブ状容器に充填された([0031]、[0032]、[0051])冷菓([0013])。」 3 甲3 (1) 甲3に記載された事項 甲3には、以下の記載がある。 「【請求項1】 媒体としての水に、粘稠性を付与する高分子物質及び水溶性ヘミセルロースを含有することを特徴とする冷菓用コーティング組成物。 【請求項2】 粘稠性を付与する高分子物質が、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ペクチン、ローカストビーンガム、カラギナン、カラヤガム、プルラン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選択された一種以上である請求項1記載の冷菓用コーティング組成物。」 「【0007】 【課題を解決するための手段】本発明によれば、媒体としての水に、粘稠性を付与する高分子物質及び水溶性ヘミセルロースを含有する冷菓用コーティング組成物が提供される。本発明における粘稠性を付与する高分子物質としては、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ペクチン、ローカストビーンガム、カラギナン、カラヤガム、プルラン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選ばれる1種以上のものを用いることができる。なかでもグァーガム及び/又はタマリンドシードガムを用いることが好ましい。粘稠性を付与する高分子物質の添加量は、該高分子物質の種類や目的とする被覆の量、作業性を考えて適宜増減することができるが、0.1~1.5重量%が好ましく、より好ましくは0.3~1.0重量%である。特に、グァーガムを用いる場合には、0.1~0.5重量%、タマリンドシードガムを用いる場合には、0.1~0.5重量%が好ましい。このような高分子物質により、コーティング組成物自体を均質、安定に保つことができるとともに、良好な被覆作用を示す。」 「【0011】さらに、本発明によれば、上記冷菓用コーティング組成物を用いたコーティング方法が提供される。つまり、上記冷菓用コーティング組成物に、凍結した冷菓を浸漬し、引き出す工程を1回又は複数回を行うことにより、冷菓を好適に被覆することができる。コーティング組成物に冷菓を浸漬する時間は、コーティング組成物の状態や、所望する被覆膜の厚さによって異なるが、数秒、すなわち1~3秒間程度でよい。 【0012】冷菓を浸漬する際のコーティング組成物の温度は-5℃~20℃、好ましくは0℃~10℃が良い。20℃を越えると冷菓を被覆する工程中に冷菓が溶けて流れ出し、コーティング組成物に冷菓の溶解物が混入され、-5℃より低い温度ではコーティング組成物が部分的に凍ってしまい、均一な被膜を形成することが困難となり好ましくない。」 (2) 甲3記載事項 上記(1)より、甲3には、以下の事項が記載されていると認められる。 「媒体としての水に、粘稠性を付与する高分子物質及び水溶性ヘミセルロースを含有する冷菓用コーティング組成物に冷菓を浸漬することによって、被覆層を設けた冷菓において、粘稠性を付与する高分子物質は、プルランを含む群から選択される点。」 (以下「甲3記載事項」という。) 4 甲4 (1) 甲4に記載された事項 甲4には、以下の記載がある。 「【0011】 本発明の冷菓被覆に使用するコーティング組成物であるが、水溶性固形分量(ブリックス)は、0.03~10重量%、より好ましくは1~5重量%、更に好ましくは2~4重量%に調整することができる。該固形分に調整することで、コーティング時、すぐに乾き(速乾性)、包装時袋への充填がしやすくなり、また、液だれもなく均一にコーティングすることができる。水溶性固形分量の調整は使用する原料や添加量などを調整することにより行う。」 「【0013】 更に、脱アシル型ジェランガム、ペクチン、寒天、カラギナン及びローカストビーンガム以外に、本発明の食するとサクサクとして弾けるような良好な食感が損なわれない限度において、タマリンドシードガム、HMペクチン、ゼラチン、アルギン酸やその塩類、キサンタンガム、ゼラチン、ネイティブ型ジェランガム、グァーガム、トラガントガム、タラガム、カラヤガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム等のガム質、グルコマンナン、サイリウムシードガム、カードラン、プルラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム等のセルロース誘導体、微結晶セルロース、大豆多糖類、加工・化工でん粉、未加工・未化工でん粉(生でん粉)等から選ばれる1種又は2種以上を併用することも出来る。なお、脱アシル型ジェランガムを使用する場合は、タマリンドシードガムとの組み合わせを好ましい組み合わせとして例示することができる。 【0014】 本発明の冷菓被覆に使用するコーティング組成物の流動性ゲルの流動性としては、上記いずれの方法で調製しても、具体的には、5℃における粘度が、100~1000mps(B型回転粘度計(東京計器)NO.3ローター,30rpm)程度の流動性を有するゲルとなるものである。」 「【0026】 本発明に係る被覆冷菓は、前記コーティング組成物を芯剤となる冷菓に被覆(浸漬、噴霧、塗布等)することにより調製する。被覆する際、0~15℃、好ましくは0~5℃程度に保持しておくことが好ましい。該温度で被覆を行うことにより、中の芯剤となる冷菓が溶融することなく、付着性がよく、均一に被覆を行うことができる。」 「【0036】 実施例1:キウイフルーツアイスバー(1) 1.センター部の調製 下記処方通りに秤量し、常法により、センター部に使用するヨーグルト風味のアイスバーを調製した(オーバーラン80%)。」 【0037】 センター部処方 部 全脂加糖練乳 12.25 バター 2.5 脱脂粉乳 5.0 ヤシ油 3.5 砂糖 9.0 水飴 6.25 安定剤(サンベスト※NN-436*) 0.3 乳化剤(ホモゲン※DM*) 0.3 色素(カロチンベースNO.9400-SV*) 0.05 香料(ヨーグルトフレーバーNO.73592*)0.2 香料(マルチハンサー※NO.1*) 0.05 水にて計 100 【0038】 2.コーティング液の調製 下記処方のうち、水に砂糖、スクラロース及びゲル化剤の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱溶解し、5℃まで冷却後、攪拌しながらクエン酸、色素、香料及び少量のお湯に溶解し5℃まで冷却した乳酸カルシウム溶液を加える。全量補正後、ホモゲナイザー(0kgf/cm2)をかけ、キウイ風味の流動性ゲル(平均直径1mm以下)からなるコーティング液を調製した。 【0039】 コーティング液処方 部 砂糖 2.0 スクラロース 0.02 乳酸カルシウム 0.1 クエン酸 0.2 ゲル化剤(サンナイス※YK-151*、ジェランガム65%、タマリンドシードガム3%、クエン酸三ナトリウム12.5%含有) 0.3 色素(メロンカラーL*) 0.05 香料(キーウィフレーバーNO.78815*)0.2 水にて計 100」 「【0041】 実施例2:キウイフルーツアイスバー(2) 1.冷菓ミックスの調製 下記処方通りに秤量し、常法によりヨーグルト風味の冷菓ミックスを調製した(オーバーラン80%)。」 「【0043】 2.コーティング液の調製 下記処方のうち、水に砂糖、スクラロース及びゲル化剤の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱溶解し、少量のお湯に溶解した乳酸カルシウム溶液を添加して溶解した後、攪拌しながら5℃まで冷却し、クエン酸、色素、香料を加える。全量補正後、ホモゲナイザー(0kgf/cm2)をかけ、キウイ風味の流動性ゲル(平均直径1mm以下)からなるコーティング液を調製した。 【0044】 コーティング部処方 部 砂糖 2.0 スクラロース* 0.025 乳酸カルシウム 0.1 クエン酸(無水)N* 0.15 キウイフルーツ透明濃縮果汁 1.5 ゲル化剤(サンナイス※YK-151*、ジェランガム65%、タマリンドシードガム3%、クエン酸三ナトリウム12.5%含有) 0.3 色素(サンエロー※NO.2AU*) 0.07 色素(サンレッド※YM*) 0.005 香料(キーウィフレーバーNO.78815*)0.2 水にて計 100」 「【0047】 実施例3:キウイフルーツアイスバー(3) 1.冷菓ミックスは、実施例2と同様のものを使用する。 【0048】 2.コーティング液の調製 下記処方のうち、水に砂糖、スクラロース及びゲル化剤の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱溶解し、少量のお湯に溶解した乳酸カルシウム溶液及び残りの原料を添加して溶解した後、全量補正し、加熱部95℃、取り出し温度10℃の条件で超高温加熱殺菌処理法(UHT)を利用して、キウイ風味の流動性ゲル(平均直径1mm以下)からなるコーティング液を調製した。 【0049】 コーティング部処方 部 砂糖 2.0 スクラロース* 0.025 乳酸カルシウム 0.1 クエン酸(無水)N* 0.15 キウイフルーツ透明濃縮果汁 1.5 ゲル化剤(サンナイス※YK-151*、ジェランガム65%、タマリンドシードガム3%、クエン酸三ナトリウム12.5%含有) 0.3 色素(サンエロー※NO.2AU*) 0.02 色素(メロンカラーL*) 0.04 香料(キーウィフレーバーNO.78495*)0.2 水にて計 100」 「【0052】 実施例4:キウイフルーツアイスバー(4) 1.冷菓ミックスは、実施例2と同様のものを使用する。 【0053】 2.コーティング液の調製 下記処方のうち、水に砂糖、スクラロース及びゲル化剤の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱溶解し、少量のお湯に溶解した乳酸カルシウム溶液及び残りの原料を添加して溶解した後、全量補正し、攪拌しながら5℃まで冷却して、キウイ風味の流動性ゲル(平均直径1mm以下)からなるコーティング液を調製した。 【0054】 コーティング部処方 部 砂糖 2.0 スクラロース* 0.025 乳酸カルシウム 0.1 クエン酸(無水)N* 0.15 キウイフルーツ透明濃縮果汁 1.5 ゲル化剤(ビストップ※D-1382*、ペクチン100%)0.5 色素(サンエロー※NO.2AU*) 0.07 色素(サンレッド※YM*) 0.005 香料(キーウィフレーバーNO.78815*)0.2 水にて計 100」 (2) 甲4発明1~4及び甲4記載事項 上記(1)より、甲4には、ア~エに示す各発明(以下「甲4発明1」等という。)の発明が記載されていると認められる。 また、甲4に記載された甲4発明1~4をまとめて「甲4記載事項」という。 なお、【0013】には、「プルラン」、「加工・化工でん粉、未加工・未化工でん粉(生でん粉)等から選ばれる1種又は2種以上を併用することも出来る。」との記載はあるが、【0036】等に記載された実施例には、それらの物質を含有するものは記載されていないことから、甲4には、コーティング組成物に「プルラン」、「加工・化工でん粉、未加工・未化工でん粉(生でん粉)を含有した被覆冷菓が記載されているとは認められない。 ア 甲4発明1 「芯剤となる冷菓に(【0026】)、砂糖、スクラロース、乳酸カルシウム、クエン酸、ゲル化剤(ジェランガム65%、タマリンドシードガム3%、クエン酸三ナトリウム12.5%含有)、色素、香料を含有し(【0039】)、水に砂糖、スクラロース及びゲル化剤の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱溶解し、5℃まで冷却後、攪拌しながらクエン酸、色素、香料及び少量のお湯に溶解し5℃まで冷却した乳酸カルシウム溶液を加え、ホモゲナイザーをかけ、調製したキウイ風味の流動性ゲル(平均直径1mm以下)からなるコーティング液(【0038】)を被覆する被覆冷菓であり(【0026】)、コーティング液の5℃における粘度が、100~1000mps程度である(【0014】)被覆冷菓(【0026】)。」 イ 甲4発明2 「芯剤となる冷菓に(【0026】)、砂糖、スクラロース、乳酸カルシウム、クエン酸(無水)、キウイフルーツ透明濃縮果汁、ゲル化剤(ジェランガム65%、タマリンドシードガム3%、クエン酸三ナトリウム12.5%含有)、色素、香料を含有し(【0044】)、水に砂糖、スクラロース及びゲル化剤の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱溶解し、少量のお湯に溶解した乳酸カルシウム溶液を添加して溶解した後、攪拌しながら5℃まで冷却し、クエン酸、色素、香料を加え、ホモゲナイザーをかけ、調製したキウイ風味の流動性ゲル(平均直径1mm以下)からなるコーティング液(【0043】)を被覆する被覆冷菓であり(【0026】)、コーティング液の5℃における粘度が、100~1000mps程度である(【0014】)被覆冷菓(【0026】)。」 ウ 甲4発明3 「芯剤となる冷菓に(【0026】)、砂糖、スクラロース、乳酸カルシウム、クエン酸(無水)、キウイフルーツ透明濃縮果汁、ゲル化剤(ジェランガム65%、タマリンドシードガム3%、クエン酸三ナトリウム12.5%含有)、色素、香料を含有し(【0049】)、水に砂糖、スクラロース及びゲル化剤の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱溶解し、少量のお湯に溶解した乳酸カルシウム溶液及び残りの原料を添加して溶解した後、加熱部95℃、取り出し温度10℃の条件で超高温加熱殺菌処理法(UHT)を利用して、調製したキウイ風味の流動性ゲル(平均直径1mm以下)からなるコーティング液(【0048】)を被覆する被覆冷菓であり(【0026】)、コーティング液の5℃における粘度が、100~1000mps程度である(【0014】)被覆冷菓(【0026】)。」 エ 甲4発明4 「芯剤となる冷菓に(【0026】、砂糖、スクラロース、乳酸カルシウム、クエン酸(無水)、キウイフルーツ透明濃縮果汁、ゲル化剤(ペクチン100%)、色素、香料を含有し(【0054】)、水に砂糖、スクラロース及びゲル化剤の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱溶解し、少量のお湯に溶解した乳酸カルシウム溶液及び残りの原料を添加して溶解した後、攪拌しながら5℃まで冷却して、調製したキウイ風味の流動性ゲル(平均直径1mm以下)からなるコーティング液(【0053】)を被覆する被覆冷菓であり(【0026】)、コーティング液の5℃における粘度が、100~1000mps程度である(【0014】)被覆冷菓(【0026】)。」 5 甲5 (1) 甲5に記載された事項 甲5には、以下の記載がある。 「【請求項1】 芯材となる冷菓を水中油型のコーチング材で被覆した組合せ冷菓であって、前記コーチング材は、水分を30~80重量%、油脂分を1~40重量%、無脂乳固形分を0~15重量%含有するとともに、糖類と増粘多糖類を主成分とし、さらにHLB9以上の親水性のショ糖脂肪酸エステルを0.1~1重量%含有することを特徴とする組合せ冷菓。 【請求項2】 前記コーチング材は、プルラン又はアルファ化澱粉を0.1~2重量%含有し、これらプルラン又はアルファ化澱粉と他の増粘剤との併用によって、浸漬時の粘度を5℃で1000~6000CPSに調整するようにしたことを特徴とする請求項1記載の組合せ冷菓。」 (2) 甲5記載事項 上記(1)より、以下の事項が記載されていると認められる。 「芯材となる冷菓を水中油型のコーチング材で被覆した組合せ冷菓であって、前記コーチング材は、水分を30~80重量%、油脂分を1~40重量%、無脂乳固形分を0~15重量%含有するとともに、糖類と増粘多糖類を主成分とし、前記コーチング材は、プルラン又はアルファ化澱粉を0.1~2重量%含有し、これらプルラン又はアルファ化澱粉と他の増粘剤との併用によって、浸漬時の粘度を5℃で1000~6000CPSに調整するようにした組合せ冷菓。」 (以下「甲5記載事項」という。) 6 甲6 (1) 甲6に記載された事項 甲6には、以下の記載がある。 「小麦粉25kgにBe’9°の食塩水10lを添加し、混合した後、常法により厚さ3m/mの麺帯とし、切刃#10で切出し、茹でた後、水洗冷却して枠詰めし、-35℃のトンネルフリーザーを25分間かけて通過させ、冷凍うどんとした。次に、該冷凍うどんをフリーザー出口のコンベヤ上で、上下および側面から3%プルラン水溶液20mlを噴霧することにより、該冷凍うどん全体をコーティングし、所望の冷凍うどんを得た。これをポリエチレン製の包装袋に密封し、サンプルAとした。同様にして、比較例として、3%プルラン水溶液を噴霧しない冷凍うどんを調製した。これをサンプルBとした。」 (第3頁左下欄第1行~第13行) (2) 甲6発明 上記(1)より、甲6には、以下の発明が記載されていると認められる。 「フリーザー出口のコンベヤ上で、上下および側面から3%プルラン水溶液20mlを噴霧することにより、冷凍うどん全体をコーティングした冷凍うどん。」 (以下「甲6発明」という。) 7 甲7 甲7は「食品添加物公定書」であり、「プルラン」の項目において、プルランの定義、性状等が記載されており、プルランの動粘度が、15~180mm2/sであることが示されている。 8 甲8 甲8は「食品産業事典 改訂第八版」であり、「アイスクリーム・氷菓」の項目において、以下に示す、アイスクリーム製造工程図が掲載(第139頁)されており、図中に、アイスクリームの凍結温度が-2℃~-8℃であり、アイスクリームの貯蔵温度が-20℃~-30℃である点が示されている。 [図:0001438281000002.jpg] 9 甲9及び甲9の2 甲9及び甲9の2は、「Journal of Crystal Growth」に掲載された「氷結晶の成長抑制のための二糖分子の形態学的研究」の論文及びその翻訳文であり、トレハロースが、スクロースとマルトースと比較して、氷結晶の成長抑制効果が高いことが記載されている。 10 甲10 (1) 甲10に記載された事項 甲10には、以下の記載がある。 「【0033】 また、ショ糖型液糖の固形分は60~80%であることが好ましい。また、水飴の固形分は60~80%であることが好ましい。 ・・・。」 (2) 甲10記載事項 上記(1)より、甲10には、以下の事項が記載されていると認められる。 「水飴の固形分は60~80%である点。」 (以下「甲10記載事項」という。) 11 甲11 甲11は「食品産業事典 改訂第七版 上」であり、「アイスクリーム・氷菓」の項目において、「アイスクリームの容器・包装」として「フイルム包装」が示されており、以下の記載がある。 「フイルム包装はすでに成形されたアイスクリームを包装する。一般に包装する機械を必要とする。フイルムの適性は次のことが要求される。 1)耐低温衝撃性,2)自動包装適正,3)安定性,とくに重金属,ひ素,蛍光発色剤などの検出や,細菌,カビなどの汚染のないこと,昆虫類などの異物の混入のないこと,など衛生的欠陥のないことが必要である。 フイルムの包装材料は紙,プラスチック,セロファン,アルミ箔などであり,これらは単体あるいは積層(laminate)して用いられる。」(第529頁~第530頁) 第6 当審合議体の判断 1 取消理由通知に記載した取消理由について (1) 理由1(拡大先願)について ア 本件訂正発明1について (ア) 対比 本件訂正発明1と甲1発明1とを対比する。 a 甲1発明1における「チョココアとチョコシェルから構成される」ことは、本件訂正発明1の構成1Aにおける「コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有」することに相当する。 よって、甲1発明1は、本件訂正発明1の構成1Aに相当する構成を有する。 b 本件訂正発明1の構成1Bにおける「粉あめ」が水あめを乾燥したものであることを勘案すると、甲1発明1における「前記シェルは、」「水あめ及び水を含む組成物からな」ることは、本件訂正発明1の構成1Bにおける「前記コーティング層は、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物より構成されて」いることと区別が付かない。 よって、甲1発明1は、本件訂正発明1の構成1Bに相当する構成を有するものと言える。 c 甲1発明1における「前記シェルは、6.0質量%の水あめ及び水を含む組成物からな」る点に関して、第5の10(2)に示した甲10記載事項を参酌すると、「水飴の固形分は60~80%である点」が示されていることから、その「60~80%」の数値範囲が一般的な水飴の固形分の数値範囲を示すものであることを前提にすると、甲1発明1における、水あめの固形分は、3.6~4.8%となり、甲1発明1のコアシェル型冷菓を構成するシェルの組成物は、粉あめを3.6~4.8質量%含むことになる。 そして、本件訂正発明1の構成1Cと甲1発明1とは、前記組成物において、特定成分として粉あめを含む点で一致する。 d 甲1発明1における「前記シェルを構成する前記組成物は、5℃における粘度が530cPである」から、本件訂正発明1の構成1Dにおける「前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である」との特定事項を満たす。 よって、甲1発明1は、本件訂正発明1の構成1Dに相当する構成を有する。 e 甲1発明1における「アルミパウチにパッキングされたコアシェル型冷菓」は、本件訂正発明1の構成1Eにおける「包装袋入りの冷菓」に相当する。 よって、甲1発明1は、本件訂正発明1の構成1Eに相当する構成を有する。 f 上記aからeより、本件訂正発明1と甲1発明1は、以下の点で一致する。 <一致点> 1A コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有し、 1B 前記コーティング層は、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物より構成されており、 1C’前記組成物において、前記特定成分として粉あめを含み、 1D 前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である、 1E 包装袋入りの冷菓。 そして、両者は以下の点で相違する。 <相違点1> (構成1Cについて) 本件訂正発明1は、特定成分が粉あめを含む場合、その含有量は3.0質量%以下であるのに対して、甲1発明1は、粉あめを3.6~4.8質量%含む点。 (イ) 相違点についての検討 上記相違点1について検討すると、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成は、粉あめの含有量の数値範囲が重複していないことから、実質的な相違点である。 したがって、本件訂正発明1は、甲1発明1と同一であるとはいえない。 (ウ) 申立人の主張について 申立人は、令和8年2月16日付け意見書において、甲1に記載された実施例4と本件訂正発明1との、粉あめ換算の含有量の差異は、0.6%~1.8%というごく小さな差異であり、甲1に接した当業者がごく簡単な試行錯誤を行うだけで、本件訂正発明1における含有量を見出すことができる旨を主張し、加えて、粉あめ換算の含有量が3.0質量%以下としたときに、粉あめ換算の含有量が3.0質量%超であるときと比較して優れた効果が得られることは、本件特許の明細書には記載されていないことから、粉あめ換算の3.0質量%という含有量には技術的な臨界的意義は認められない旨を主張し、本件訂正発明1において粉あめ換算の含有量が3.0質量%以下であることは、甲1発明1に対する周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではなく、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない旨を主張している。 しかしながら、上記相違点1は上記(イ)に示したとおり、実質的な相違点であり、加えて、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する包装袋入りの冷菓の技術分野において、コーティング層に含まれる粉あめの含有量を適宜調整することが、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であることの根拠は何ら示されていないことから、上記相違点1が実質的な相違点ではないとは認められず、申立人の主張は採用できない。 そして、上記のとおり、本件訂正発明1は、甲1発明1と同一であるとはいえない。 (エ) 小括 以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1発明1と同一ではない。 イ 本件訂正発明2~4について 本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1の構成に限定を加えて減縮したものであり、これらの発明は、いずれも上記相違点1に係る構成を有しているから、上記「ア 本件訂正発明1について」で示したものと同様の理由により、甲1発明1と同一ではない。 ウ 本件訂正発明5について (ア) 対比 本件訂正発明5と甲1発明2とを対比する。 本件訂正発明5と甲1発明2とを対比すると、上記アと同様の相当関係がいえるから、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 5A コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する冷菓の製造方法であって、 5B 前記コア部の表面の少なくとも一部に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物を用いてコーティング層を形成する工程を有し、 5C’前記組成物において、前記特定成分として粉あめを含み、 5D 前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である、 5E 製造方法。 <相違点2> (構成5Cについて) 本件訂正発明5は、特定成分が粉あめを含む場合、その含有量は3.0質量%以下であるのに対して、甲1発明2は、粉あめを3.6~4.8質量%含む点。 (イ) 相違点についての検討 上記相違点2係る本件訂正発明5の構成は、上記アにおいて検討した上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成と同じ構成である。 そして、その検討は、上記ア(イ)に記載したとおりである。 したがって、本件訂正発明5は、甲1発明2と同一であるとはいえない。 (ウ) 小括 よって、本件訂正発明5は甲1発明2ではない。 エ まとめ 以上のことから、本件訂正発明1~5は、いずれも、甲1明細書等に記載された甲1発明1又は甲1発明2と同一の発明ではなく、理由1についての取消理由を維持することはできない。 (2) 理由2(新規性)について ア 本件訂正発明6について (ア) 対比 本件訂正発明6と甲2発明1とを対比する。 a 甲2発明1における「プルラン」は、本件訂正発明6の構成6Aにおける「プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分」に相当する。 よって、甲2発明1は、本件訂正発明6の構成6Aに相当する構成を有する。 b 甲2発明1における「約-18℃の冷凍庫、更には約-20℃まで温度の低下した冷凍庫から取り出した直後でも柔らかで且つばさばさとした食感のない滑らかな冷菓及びその製造方法を提供することを目的として」「冷菓に対し0.2乃至2.0重量%の割合で含有させることにより、高い保水性を備えているため冷凍貯蔵中の氷結晶の成長を顕著に防止することを可能とする」ことと、本件訂正発明6の構成6Bにおける「冷菓」の「-18℃~-35℃での冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する用途で前記冷菓の製造に」「用いられる」こととは、「冷菓の-18℃~-35℃での冷凍保存時に」「氷が生成することを抑制する」する点で一致する。 よって、本件訂正発明6の構成6Bと甲2発明1とは、「冷菓の-18℃~-35℃での冷凍保存時に」「氷が生成することを抑制する用途で」「冷菓の製造に」「用いられる」ものである点で一致する。 c 上記aより、甲2発明1における「プルラン」は、「冷凍貯蔵中の氷結晶の成長を顕著に防止することを可能とする」ものであるから、本件訂正発明6の構成6Cにおける「氷生成抑制剤」として機能するものである。 よって、甲2発明1は、本件訂正発明6の構成6Cに相当する構成を有する。 d 上記a~cより、本件訂正発明6と甲2発明1は、以下の点で一致する。 <一致点> 6A プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を含有し、 6B’冷菓の-18℃~-35℃での冷凍保存時に氷が生成することを抑制する用途で前記冷菓の製造に用いられる、 6C 氷生成抑制剤。 そして、両者は以下の点で相違する。 <相違点3> (構成6Bについて) 本件訂正発明6は、冷菓の製造において、氷生成抑制剤が、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを有する冷菓を、包装袋に収容された状態で冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する用途で、前記コーティング層を形成するために用いられるものであるのに対して、甲2発明1は、冷菓がコア部とコーティング層とを有するものではなく、底部に開口部を備えた力ップ型容器又はチューブ状容器に充填されるものであって、プルランが包装袋に収容された状態で冷凍保存時の冷菓の表面に氷が生成することを抑制する用途で用いられるものではない点。 (イ) 相違点についての検討 冷菓において、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを有するものは、例えば、甲3記載事項、甲4記載事項、甲5記載事項に例示されるように本件特許出願前周知の事項である。 また、冷菓において、包装袋に収容された状態で冷凍保存を行うことは、甲11において、「アイスクリームの容器・包装」として「すでに成形されたアイスクリームを包装する」技術として「フイルム包装」が示されていることから、この点も本件特許出願前周知の事項である。 しかしながら、甲2発明1における冷菓は、底部に開口部を備えた力ップ型容器又はチューブ状容器に充填されるものであって、「包装袋に収容された」ものではないことに加えて、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを有するものではないことから、相違点3に係る本件訂正発明6の構成は実質的な相違点である。 (ウ) 小括 よって、本件訂正発明6は甲2発明1ではない。 イ 本件訂正発明7について (ア) 対比 本件訂正発明7と甲2発明2とを対比すると、上記アと同様の相当関係がいえるから、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 7A’冷菓の-18℃~-35℃での冷凍保存時に氷が生成することを抑制する方法であって、 7B 前記冷菓の表面を構成する組成物に、プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分を添加する工程を有する、 7C 方法。 <相違点4> (構成7Aについて) 本件訂正発明7は、氷が生成することを抑制する方法が、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを有する冷菓を包装袋に収容された状態で冷凍保存時に前記冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法であり、そのため、前記冷菓の表面を構成する組成物に、特定成分を添加する工程を有するのに対して、甲2発明2は、冷菓がコア部とコーティング層とを有するものではなく、底部に開口部を備えた力ップ型容器又はチューブ状容器に充填されるものであって、包装袋に収容された状態で冷凍保存時の冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法ではない点。 (イ) 相違点についての検討 上記ア(イ)の相違点3についての検討と同様に、甲2発明2における冷菓は、底部に開口部を備えた力ップ型容器又はチューブ状容器に充填されるものであって、「包装袋に収容された」ものではないことに加えて、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを有するものではないことから、相違点4に係る本件訂正発明7の構成は実質的な相違点である。 (ウ) 小括 よって、本件訂正発明7は甲2発明2ではない。 エ まとめ 以上のことから、本件訂正発明6は甲2発明1ではなく、本件訂正発明7は甲2発明2ではないことから、いずれも、甲2に記載された発明ではなく、理由2についての取消理由を維持することはできない。 (3) 取消理由のまとめ 以上のことから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。 2 申立理由について (1) 申立理由1(新規性)について ア 甲2に基づく新規性欠如について 申立理由1のうち、甲2に基づく新規性欠如の申立理由1は、取消理由通知の理由2(新規性)に対応するものである。 そして、その判断は、上記1(2)の理由2において検討したとおりであり、本件訂正発明6及び本件訂正発明7は、甲2に記載された発明ではない。 イ 甲4に基づく新規性欠如について (ア) 本件訂正発明1について a 対比 本件訂正発明1と甲4発明1とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点A> コーティング層に関して、本件訂正発明1は、「プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物より構成されて」いるのに対して、甲4発明1は、そのような特定成分を含有していない点。 b 相違点についての検討 甲4発明1は、上記相違点Aにおいて列挙された特定成分をいずれも含有していないことから、上記相違点Aは、実質的な相違点である。 したがって、本件訂正発明1は、甲4発明1と同一であるとはいえない。 c 甲4発明2~4との対比、検討 甲4発明2~4は、甲4発明1と同様に、上記相違点Aにおいて列挙された特定成分をいずれも含有していない。 してみると、本件訂正発明1と甲4発明2~4とを対比すると、両者は少なくとも上記相違点Aに係る構成において相違する。 そして、上記bにおいて検討したように、上記相違点Aは、実質的な相違点である。 したがって、本件訂正発明1は、甲4発明2~4と同一であるとはいえない。 d 小括 以上のことから、本件訂正発明1は、甲4に記載した発明ではない。 (イ) 本件訂正発明4について 本件訂正発明4は、本件訂正発明1の構成に限定を加えて減縮したものであり、これらの発明は、いずれも上記相違点Aに係る構成を有しているから、上記「(ア) 本件訂正発明1について」で示したものと同様の理由により、甲4に記載した発明と同一ではない。 (ウ) 本件訂正発明5について 本件訂正発明5は、本件訂正発明1の発明のカテゴリー変更したものであるから、本件訂正発明1と同様の理由で、甲4に記載した発明と同一ではない。 (エ) まとめ 上記(ア)~(ウ)より、本件訂正発明1、4及び5は、甲4に記載した発明と同一ではない。 ウ 申立理由1(新規性)についてのまとめ 上記ア及びイより、本件訂正発明6及び7は甲2に記載した発明と同一ではなく、本件訂正発明1、4及び5は、甲4に記載した発明と同一ではない。 よって、申立理由1によっては、本件特許を取り消すことはできない。 (2) 申立理由2(進歩性)について ア 甲2を主引例とした進歩性欠如について (ア) 本件訂正発明1について a 対比 本件訂正発明1と甲2発明3とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点B> 本件訂正発明1は、冷菓が包装袋入りのものであるとともに、冷菓がコア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを有し、前記コーティング層がプルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物より構成されているのに対して、甲2発明3は、冷菓が底部に開口部を備えた力ップ型容器又はチューブ状容器に充填されたものであり、加えて、冷菓がコーティング層を有するものではないことから、プルランがコーティング層に含有されるものではない点。 b 相違点についての検討 上記相違点Bに係る本件訂正発明1の構成のうち、冷菓において、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを有するものは、上記1(2)ア(イ)に記載したように本件特許出願前周知の事項である。 また、包装袋入りの冷菓も、甲11において、「アイスクリームの容器・包装」として「すでに成形されたアイスクリームを包装する」技術として「フイルム包装」が示されていることから、この点も本件特許出願前周知の事項である。 しかしながら、冷菓を包装袋に入れることに関する言及が全くなく、[0001]において「特に、冷凍庫(約-18℃)から取り出した直後でも速やかにソフトクリーム状或いはモンブランのような紐状に絞り出すことが容易な冷菓及びその製造方法に関するものである。」と記載され、さらに[0021]に「また更に、プルランの含有量を冷菓に対し0.2乃至2.0重量%とすることで、プルラン以外の増粘多糖類と比較して特に優れた接着性により本発明の冷菓に伸びのある滑らかさを付与することが可能となり、」と、本件訂正発明1とは異なる目的でプルランの添加を行うことのみが記載された甲2の記載に触れた当業者が、冷菓を包装袋に入れるタイプのものに変更した上で、当該冷菓を、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを有するものとし、さらに、プルランをコーティング層にのみ含有させようとする動機付けは何ら認められないから、上記相違点Bに係る本件訂正発明1の構成が当業者にとって容易に想到し得たものであるとまではいえない。 c 小括 よって、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明に、甲3~5に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ) 本件訂正発明2、4について 本件訂正発明2及び4は、本件訂正発明1の構成に限定を加えて減縮したものであるから、甲2発明と対比すると、両者は少なくとも上記相違点Bの点で相違する。 そして、上記「(ア) 本件訂正発明1について」で示したものと同様の理由により、甲2に記載された発明に、甲3~5に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ) 本件訂正発明5について 本件訂正発明5は、本件訂正発明1の発明のカテゴリー変更したものであるから、甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも上記相違点Bの点で相違する。 そして、本件訂正発明1と同様の理由で、甲2に記載された発明に、甲3~5に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (エ) まとめ 上記(ア)~(ウ)より、本件訂正発明1、2、4及び5は、甲2に記載された発明に、甲3~5に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 甲6を主引例とした進歩性欠如について (ア) 本件訂正発明1について a 対比 本件訂正発明1と甲6発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点C> 本件訂正発明1は、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層と、を有する包装袋入りの冷菓に関するものであるのに対して、甲6発明は、冷凍うどんに関するものである点。 b 相違点についての検討 甲3には、甲3記載事項として、「媒体としての水に、粘稠性を付与する高分子物質及び水溶性ヘミセルロースを含有する冷菓用コーティング組成物に冷菓を浸漬することによって、被覆層を設けた冷菓において、粘稠性を付与する高分子物質は、プルランを含む群から選択される点」が記載されているが、冷凍うどんの発明である甲6発明において、当該発明における「冷凍うどん」を、甲3記載事項における「被覆層を設けた冷菓」に置換する動機は見いだせない。 してみると、本件訂正発明1は、甲6に記載された発明に、甲3に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ) 本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成に限定を加えて減縮したものであるから、甲6発明と対比すると、両者は少なくとも上記相違点Cの点で相違する。 そして、上記「(ア) 本件訂正発明1について」で示したものと同様の理由により、甲6に記載された発明に、甲3に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ) 本件訂正発明3について 本件訂正発明3は、本件訂正発明1の構成に限定を加えて減縮したものであるから、甲6発明と対比すると、両者は少なくとも上記相違点Cの点で相違する。 そして、上記「(ア) 本件訂正発明1について」に示したように、冷凍うどんの発明である甲6発明において、当該発明における「冷凍うどん」を、甲3記載事項における「被覆層を設けた冷菓」に置換する動機は見いだせず、また、甲8記載事項を参照しても、上記相違点Cに係る本件訂正発明3に係る構成を充足する根拠は見いだせない。 よって、本件訂正発明3は、甲6に記載された発明に、甲3に記載された事項及び甲8に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (エ) 本件訂正発明4について 本件訂正発明4は、本件訂正発明1の構成に限定を加えて減縮したものであるから、甲6発明と対比すると、両者は少なくとも上記相違点Cの点で相違する。 そして、上記「(ア) 本件訂正発明1について」に示したように、冷凍うどんの発明である甲6発明において、当該発明における「冷凍うどん」を、甲3記載事項における「被覆層を設けた冷菓」に置換する動機は見いだせず、また、甲2発明及び甲9記載事項を参照しても、上記相違点Cに係る本件訂正発明4に係る構成を充足するに足る根拠は見いだせない。 よって、本件訂正発明3は、甲6に記載された発明に、甲2に記載された発明、甲3に記載された事項及び甲9に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (オ) 本件訂正発明5について 本件訂正発明5は、本件訂正発明1の発明のカテゴリー変更したものであるから、甲6発明と対比すると、両者は少なくとも上記相違点Cの点で相違する。 本件訂正発明1と同様の理由で、甲6に記載された発明に、甲3に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (カ) 本件訂正発明6について 本件訂正発明6は、本件訂正発明1の発明のカテゴリー変更したものであるから、甲6発明と対比すると、両者は少なくとも上記相違点Cの点で相違する。 そして、上記「(ア) 本件訂正発明1について」に示したように、冷凍うどんの発明である甲6発明において、当該発明における「冷凍うどん」を、甲3記載事項における「被覆層を設けた冷菓」に置換する動機は見いだせず、また、甲2発明及び甲9記載事項を参照しても、上記相違点Cに係る本件訂正発明4に係る構成を充足する根拠は見いだせない。 よって、本件訂正発明3は、甲6に記載された発明に、甲2に記載された発明、甲3に記載された事項及び甲9に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (キ) 本件訂正発明7について 本件訂正発明7は、本件訂正発明1の発明のカテゴリー変更したものであるから、甲6発明と対比すると、両者は少なくとも上記相違点Cの点で相違する。 そして、上記「(ア) 本件訂正発明1について」に示したように、冷凍うどんの発明である甲6発明において、当該発明における「冷凍うどん」を、甲3記載事項における「被覆層を設けた冷菓」に置換する動機は見いだせず、また、甲2発明及び甲9記載事項を参照しても、上記相違点Cに係る本件訂正発明4に係る構成を充足する根拠は見いだせない。 よって、本件訂正発明3は、甲6に記載された発明に、甲2に記載された発明、甲3に記載された事項及び甲9に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ク) まとめ 上記(ア)~(キ)より、本件訂正発明1、2及び5は、甲6に記載された発明に、甲3に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、また、本件訂正発明3は、甲6に記載された発明に、甲3に記載された事項及び甲8に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、さらに、本件訂正発明4、6及び7は、甲6に記載された発明に、甲2に記載された発明、甲3に記載された事項及び甲9に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 甲4を主引例とした進歩性欠如について (ア) 本件訂正発明1について a 対比 本件訂正発明1と甲4発明1とを対比すると、両者は少なくとも上記(1)イ(ア)aに示した相違点Aにおいて相違し、相違点Aを再掲すると以下のとおりである。 <相違点A> コーティング層に関して、本件訂正発明1は、「プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有する組成物より構成されて」いるのに対して、甲4発明1は、そのような特定成分を含有していない点。 また、本件訂正発明1と甲4発明2~4と対比した場合においても、両者は少なくとも上記の相違点Aに係る構成において相違する。 b 相違点についての検討 甲2、甲3、甲5、甲6、甲8及び甲9を参照しても、冷菓のコーティング層に相当する部位に「プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分」を含有させる構成は記載されていない。 してみると、甲2、甲3、甲5、甲6、甲8及び甲9に記載された事項を適用しても、本件訂正発明1の上記相違点Aに係る構成を充足することはできない。 c 小括 よって、本件訂正発明1は、甲4に記載された発明に、甲2、甲3、甲5、甲6、甲8及び甲9に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ) 本件訂正発明2~4について 本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1の構成に限定を加えて減縮したものであるから、甲4発明1~4を対比すると、両者は少なくとも上記相違点Aの点で相違する。 そして、上記「(ア) 本件訂正発明1について」で示したものと同様の理由により、甲4に記載された発明に、甲2、甲3、甲5、甲6、甲8及び甲9に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ) 本件訂正発明5について 本件訂正発明5は、本件訂正発明1の発明のカテゴリー変更したものであるから、甲4発明1~4を対比すると、両者は少なくとも上記相違点Aの点で相違する。 そして、上記「(ア) 本件訂正発明1について」で示したものと同様の理由により、甲4に記載された発明に、甲2、甲3、甲5、甲6、甲8及び甲9に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (エ) 本件訂正発明6について 本件訂正発明6は、本件訂正発明1の発明のカテゴリー変更したものであるから、甲4発明1~4と対比すると、両者は少なくとも上記相違点Aの点で相違する。 そして、上記「(ア) 本件訂正発明1について」で示したものと同様の理由により、甲4に記載された発明に、甲2、甲3、甲5、甲6、甲8及び甲9に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (オ) 本件訂正発明7について 本件訂正発明7は、本件訂正発明1の発明のカテゴリー変更したものであるから、甲4発明1~4と対比すると、両者は少なくとも上記相違点Aの点で相違する。 そして、上記「(ア) 本件訂正発明1について」で示したものと同様の理由により、甲4に記載された発明に、甲2、甲3、甲5、甲6、甲8及び甲9に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (カ) まとめ 上記(ア)~(オ)より、本件訂正発明1~7は、甲4に記載された発明に、甲2、甲3、甲5、甲6、甲8及び甲9に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 申立人の主張について 申立人は、令和8年2月16日付け意見書において、甲2の記載より「カップ容器に充填」される点に着目し、本件訂正発明6と甲2に記載された発明との相違点を、 「相違点1:冷菓を包装袋に収容する点。 「相違点2:冷菓が、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを有する点。」 であると認定した上で、甲11の記載より、アイスクリームの包装に関してフイルム包装があることを指摘し、上記相違点1に関して、カップ型容器に換えて、甲11に記載された包装袋を使用することは容易に想到できる旨を主張し、上記相違点2に関して、「所望の食感を付与する目的でコア部とコーティング層とを有する冷菓とすることは、周知の技術的事項である」と主張し、甲2に記載された冷菓を、コア部とコーティング層とを有する冷菓とし、少なくともコーティング層にプルランを含有させ、冷凍貯蔵中の冷菓の表面に氷が生成することを抑制することは容易であると主張し、本件訂正発明6は、甲2に記載された発明に、甲3~5、11を組み合わせれば容易に想到できる旨を主張している。 また、本件訂正発明7に対しても概ね同様の主張を行っている。 しかしながら、上記(2)ア(ア)bにおいて指摘したとおり、甲2には冷菓を包装袋に入れることに関する言及が全くなく、むしろ[0001]において「特に、冷凍庫(約-18℃)から取り出した直後でも速やかにソフトクリーム状或いはモンブランのような紐状に絞り出すことが容易な冷菓及びその製造方法に関するものである。」と記載され、さらに[0021]に「また更に、プルランの含有量を冷菓に対し0.2乃至2.0重量%とすることで、プルラン以外の増粘多糖類と比較して特に優れた接着性により本発明の冷菓に伸びのある滑らかさを付与することが可能となり、」と、本件訂正発明6及び本件訂正発明7とは異なる目的でプルランの添加を行うことのみが記載された甲2の記載に触れた当業者が、冷菓が包装袋入りであることを特定した上で、当該冷菓が、コア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを有する点を特定し、さらに、プルランをコーティング層に含有させることを、当業者が容易に想到し得たとまではいえず、申立人の主張は採用できない。 オ 申立理由2(進歩性)についてのまとめ 上記ア~ウより、甲2、甲6又は甲4を主引例としても、本件訂正発明1~7の進歩性を否定することはできない。 よって、申立理由2によっては、本件特許を取り消すことはできない。 (3) 申立理由3(拡大先願)について ア 本件訂正発明1~5について 申立理由3のうち、本件訂正発明1~5についてのものは、取消理由通知の理由1(拡大先願)に対応するものである。 そして、その判断は、上記1(1)ア~エにおいて検討したとおりであり、本件訂正発明1~5は、いずれも、甲1明細書等に記載された甲1発明1又は甲1発明2と同一の発明ではない。 イ 本件訂正発明6、7について 甲1明細書等には、チョコシェルに水あめを含む「コアシェル型冷菓」及び、チョコシェルに水あめを含む「コアシェル型冷菓の作成方法」についての記載はあるが、水あめを「氷生成抑制剤」として用いること、及び、水あめを用いた「冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法」についての記載は存在しない。 してみると、本件訂正発明6及び本件訂正発明7は、甲1明細書等に記載された発明ではない。 ウ 上記ア及びイより、本件訂正発明1~7は甲1に記載した発明と同一ではない。 よって、申立理由3によっては、本件特許を取り消すことはできない。 (4) 申立理由4(サポート要件)について ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 イ 本件訂正発明1~7が解決しようとする課題について 本件訂正発明1~7が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、本件特許の明細書の【0005】に記載された「冷凍保存中に冷菓表面での氷の生成が抑制された冷菓、さらには冷菓の製造に使用される氷生成抑制剤、冷菓の表面に氷が生成することを抑制する方法を提供すること」であると認められる。 ウ 本件訂正発明1~7が解決しようとする課題を解決するための手段について 本件特許の明細書の発明の詳細な説明における記載、特に【0018】、【0053】~【0061】及び実施例の記載を見るに、「コーティング層」に「プルラン、トレメルガム、デンプン、トレハロース、粉あめ、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一種の特定成分、及び水を含有」させるとの特定事項を有することで当業者は発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件訂正発明1~7はいずれも、上記課題を解決できると認識できる特定事項の全てを有し、さらに限定するものであるから、当然上記課題を解決できると認識できる。 エ 特許異議申立書における主張について 特許異議申立書の第92頁~第93頁における主張について検討する。 本件訂正発明1、3~7には特定成分の含有量についての数値範囲の特定はされておらず、また、本件訂正発明1~7には水の含有量についての数値範囲の特定はされていないが、特定成分に関して、特定成分が含まれている場合と含まれていない場合と対比すれば、特定成分が含まれていれば、程度の差はあるとしても、定性的な作用・効果はあると認められる。また、水の含有量に関しても、「冷菓」の「コーティング層」において極端な含有量とならないことは、当業者であれば当然認識できる。 してみると、本件訂正発明1~7が、特定成分の含有量又は水の含有量についての数値範囲の特定がされていないことをもって、発明の課題を解決し得ない範囲を含むものであるとまではいえない。 オ 申立理由4のまとめ 以上のことから、本件訂正発明1~7は本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでないとまではいえず、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するとまではいえない。 よって、本件訂正発明1~7に係る特許は、申立理由4により、取り消されるべきものではない。 (5) 申立理由5(実施可能要件)について ア 実施可能要件の一般的な判断基準 明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるか否かという観点から判断されるべきであると解される(知財高裁平成29年(行ケ)第10138号)。 イ 検討・判断 以下、上記判断基準に基づき検討・判断を行う。 本件訂正発明1、3~7には特定成分の含有量についての数値範囲の特定はされておらず、また、本件訂正発明1~7には水の含有量についての数値範囲の特定はされていないが、特定成分が含まれていれば、程度の差はあるとしても、多少の作用効果があると認められ、水の含有量に関しても、「冷菓」の「コーティング層」において通常採用される含有量を想定していることは明らかである。 してみると、本件訂正発明1~7が、特定成分の含有量又は水の含有量についての数値範囲の特定がされていないことをもって、当業者がそれらの発明を実施するにあたって過度の試行錯誤を強いるものとは認められない。 ウ 申立理由5のまとめ よって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反するものではなく、本件訂正発明1~7に係る特許は、申立理由5により、取り消されるべきものではない。 (6) 申立理由6(新規事項)について ア 新規事項の追加の判断基準 新規事項を追加する補正であるかの検討は、補正が、当業者によって、明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる(知財高裁平成18年(行ケ)第10563号)。 イ 申立理由6の詳細 申立理由6は、令和6年7月25日付け手続補正書による補正において、請求項1及び請求項5において「前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である」との特定がされたが、その特定を加える補正は当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、新規事項の追加に該当するというものである。 ウ 当初明細書等の記載事項 当初明細書等には、以下の記載がある。 「【0048】 (粘度) 冷菓組成物の粘度は、液状の冷菓組成物の温度5℃における粘度が、好ましくは1000mPa・s以下であり、より好ましくは700mPa・s以下であり、また、好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは100mPa・s以上である。冷菓組成物が、コーティング層組成物である場合は、そのコーティング時の液温における粘度が、好ましくは50mPa・s~2000mPa・sであり、より好ましくは100mPa・s~1000mPa.sであり、さらに好ましくは200mPa・s~800mPa・sである。冷菓組成物として、コア部組成物とコーティング層組成物が用いられる場合は、コア部組成物の温度5℃における粘度は、好ましくは1000mPa・s以下であり、より好ましくは700mPa・s以下であって、また、好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは100mPa・s以上である。上記範囲にする事で、氷の析出を抑制しながらも、良好な食感とフレーバーリリースを付与する事ができる。」 エ 当初明細書等に記載されているか否かについて 当初明細書等の【0048】には、「冷菓組成物の粘度は、液状の冷菓組成物の温度5℃における粘度が、」「700mPa・s以下であり、」「50mPa・s以上であ」る点が記載され、また、「冷菓組成物が、コーティング層組成物である場合」との記載があることから、「コーティング層」の上位概念である「冷菓組成物」について「5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である」点が記載されており、それは「コーティング層」の「5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である」ことを包含するものと認められ、「前記コーティング層は、5℃における粘度が50mPa・s以上700mPa・s以下である」点の特定が、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとは認められない。 オ 申立理由6のまとめ よって、令和6年7月25日付け手続補正書による補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものではなく、本件訂正発明1~7に係る特許は、申立理由6により、取り消されるべきものではない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知で通知した取消理由並びに特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正後の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正後の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって結論のとおり決定する。

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2025-700552

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