特許異議申立
2024-700126
有機エレクトロルミネッセンス素子
- 審判番号
- 2024-700126
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-156721
- 登録番号
- 7325731
- 請求日
- 2024年02月14日
- 審決日
- 2026年05月15日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】国立大学法人九州大学
- 【権利者代理人】弁理士法人特許事務所サイクス
- 【権利者】株式会社Kyulux
- 【権利者代理人】弁理士法人特許事務所サイクス
- 【異議申立人】宮前 尚祐
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 濱野 隆
- 審判官 谷垣 圭二
- 分類
- P1652.121-YAA(H10K) / P1652.537-YAA(H10K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第126条、特許法第29条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7325731号発明「有機エレクトロルミネッセンス素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7325731号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
特許第7325731号の請求項1~8、10、12、13に係る特許を維持する。
特許第7325731号の請求項9及び請求項11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7325731号(以下「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、平成30年8月23日の出願であって、令和5年8月4日にその特許権の設定登録がされ、同月15日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和6年2月14日に、特許異議申立人宮前尚祐(以下「申立人」という。)による請求項1~13に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 2月14日 :申立人による特許異議の申立て
同年 6月14日付け:取消理由通知書
同年 8月19日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 9月25日付け:手続補正指令書
同年10月30日 :特許権者による手続補正書の提出
同年11月29日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和7年 1月 6日 :申立人による意見書の提出
同年 3月 5日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 5月12日 :特許権者による意見書の提出
同年 8月 6日付け:審尋(特許権者に対して)
同年 9月10日 :特許権者による回答書の提出
令和8年 1月28日 :審判官より特許権者に電話で連絡
同年 2月13日 :特許権者による訂正案の提出
同月27日 :審判官から訂正案に対する回答
(令和8年1月28日から同年2月27日までの応対については、同年3月5日の応対記録を参照)
同年 3月 5日付け:取消理由通知書
同月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年8月19日に提出された訂正請求書による訂正の請求(先にした訂正の請求)は、令和8年3月17日に提出された訂正請求書による訂正の請求がされたため、取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。
以下、令和8年3月17日にされた訂正請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正について
1 本件訂正請求の趣旨
本件訂正に係る請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求めるものである。
2 本件訂正前後の特許請求の範囲の記載
本件訂正前と本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。ただし、特許異議の申立てがされていない請求項であり、本件訂正請求による訂正もされていない請求項15の摘記は省略した。
なお、(2)において下線を引いたところは、訂正箇所を示す。
(1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極の間に発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層は、以下の式(A)を満たす第1有機化合物と第2有機化合物と第3有機化合物とを少なくとも含み、前記第2有機化合物は下記一般式(1)で表される遅延蛍光体であり、前記第3有機化合物は発光体であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(A) ES1(A)>ES1(B)>ES1(C)
(上式において、ES1(A)は前記第1有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(B)は前記第2有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(C)は前記第3有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表す。)
一般式(1)
(A)m-L-(D)n
[一般式(1)において、Lはm+n価の単環の芳香族連結基である。Aはハメットのσp値が正の基またはフェニル基であり、Aの1つまたは2つはシアノ基である。Dはハメットのσp値が負の基(ただしフェニル基は除く)であり、mは1以上の整数であり、nは2以上の整数である。mが2以上であるとき、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数のDのうちの2つは、ともに共通する芳香環を含んでいるが、互いに異なる構造を有する基である。]
【請求項2】
前記第2有機化合物は、最低励起一重項状態と77Kの最低励起三重項状態とのエネルギーの差ΔEstが0.3eV以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記第2有機化合物は、最低励起一重項状態と77Kの最低励起三重項状態とのエネルギーの差ΔEstが0.08eV以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記第1有機化合物と前記第2有機化合物が以下の式(B)を満たすことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(B) ET1(A)>ET1(B)
(上式において、ET1(A)は第1有機化合物の77Kにおける最低励起三重項エネルギー準位を表し、ET1(B)は第2有機化合物の77Kにおける最低励起三重項エネルギー準位を表す。)
【請求項5】
前記第3有機化合物は、最低励起一重項エネルギー準位から基底エネルギー準位に戻るときに蛍光を放射するものであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記発光層における前記第2有機化合物の含有量が前記第1有機化合物の含有量よりも小さいことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記発光層は、前記第3有機化合物として2種以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記発光層は、前記第1有機化合物と前記第2有機化合物と前記第3有機化合物の他に、1種または2種以上の有機化合物を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記一般式(1)のAがシアノ基である、請求項1~8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記一般式(1)のDがジアリールアミノ基またはカルバゾリル基である、請求項1~9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(10)で表される化合物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
[図:0001438252000001.jpg]
[一般式(10)において、A1はシアノ基を表す。R1~R5は各々独立に水素原子、ハメットのσp値が正の基またはハメットのσp値が負の基を表し、R1~R5の0~1つはシアノ基であり、R1~R5の少なくとも2つはハメットのσp値が負の基(ただしフェニル基は除く)であり、それらのハメットのσp値が負の基のうちの2つは、ともに共通する芳香環を含んでいるが、互いに異なる構造を有する基である。R1~R5のうちの2つ以上がハメットのσp値が正の基であるとき、それらのハメットのσp値が正の基は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項12】
R1~R5の4つまたは5つがハメットのσp値が負の基(ただしフェニル基は除く)である、請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記第2有機化合物が下記一般式(12)で表される化合物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化2】
[図:0001438252000002.jpg]
[一般式(12)において、R11~R15のうちの少なくとも3つは置換もしくは無置換のジアリールアミノ基(ただし、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよい)およびハロゲン原子から選択され、そのうちの少なくとも2つは置換もしくは無置換のジアリールアミノ基(ただし、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよい)であり、それらの置換もしくは無置換のジアリールアミノ基(ただし、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよい)のうちの2つは、ともに共通するアリール基を有しているが、そのアリール基に置換している置換基の数が異なる。R11~R15の残りの0~1つはシアノ基を表し、あとの残りの0~2つは水素原子、または置換もしくは無置換のアリール基を表す]
【請求項14】
前記第2有機化合物が下記一般式(14)で表される化合物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化3】
[図:0001438252000003.jpg]
[一般式(14)において、R11、R12、R14、R15のうちの少なくとも3つは置換もしくは無置換のジアリールアミノ基(ただし、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよい)およびハロゲン原子から選択され、そのうちの少なくとも2つは置換もしくは無置換のジアリールアミノ基(ただし、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよい)であり、それらの置換もしくは無置換のジアリールアミノ基(ただし、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよい)の2つは、ともに共通するアリール基を有しているが、そのアリール基に置換している置換基の数が異なる。残りの0~1つは水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、またはシアノ基を表す。]
【請求項15】(省略)」
(2) 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極の間に発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層は、以下の式(A)を満たすホスト材料である第1有機化合物と第2有機化合物と第3有機化合物とを少なくとも含み、前記第2有機化合物は下記一般式(10)で表される遅延蛍光体であり、前記第3有機化合物は発光体であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(A) ES1(A)>ES1(B)>ES1(C)
(上式において、ES1(A)は前記第1有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(B)は前記第2有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(C)は前記第3有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表す。)
【化1】
[図:0001438252000004.jpg]
[一般式(10)において、A1はシアノ基を表す。R1~R5は各々独立にシアノ基、フェニル基、3,5-ジフェニルフェニル基、またはハメットのσp値が負である下記一般式(3)で表される基を表し、R1~R5の0~1つはシアノ基であり、R1~R5の少なくとも2つは、ハメットのσp値が負である下記一般式(3)で表される基であり、それらの一般式(3)で表される基のうちの2つは、互いに異なる構造を有する。]
【化87】
[図:0001438252000005.jpg]
[一般式(3)において、R21~R25のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよく、R26~R30のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよい。それ以外のR21およびR30は水素原子を表し、R22~R29は各々独立に水素原子、炭素数1~20の無置換のアルキル基、または炭素数6~40の無置換のアリール基を表す。R25とR26は互いに結合していてもよい。R31はベンゼン環との結合位置である。]
【請求項2】
前記第2有機化合物は、最低励起一重項状態と77Kの最低励起三重項状態とのエネルギーの差ΔEstが0.17eV以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記第2有機化合物は、最低励起一重項状態と77Kの最低励起三重項状態とのエネルギーの差ΔEstが0.08eV以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記第1有機化合物と前記第2有機化合物が以下の式(B)を満たすことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(B) ET1(A)>ET1(B)
(上式において、ET1(A)は第1有機化合物の77Kにおける最低励起三重項エネルギー準位を表し、ET1(B)は第2有機化合物の77Kにおける最低励起三重項エネルギー準位を表す。)
【請求項5】
前記第3有機化合物は、最低励起一重項エネルギー準位から基底エネルギー準位に戻るときに蛍光を放射するものであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記発光層における前記第2有機化合物の含有量が前記第1有機化合物の含有量よりも小さいことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記発光層は、前記第3有機化合物として2種以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記発光層は、前記第1有機化合物と前記第2有機化合物と前記第3有機化合物の他に、1種または2種以上の有機化合物を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
前記一般式(3)のR25とR26は互いに結合して単結合を形成している、請求項1~8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
R1~R5の4つまたは5つがハメットのσp値が負である前記一般式(3)で表される基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極の間に発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層は、以下の式(A)を満たすホスト材料である第1有機化合物と第2有機化合物と第3有機化合物とを少なくとも含み、前記第2有機化合物が下記一般式(12)で表される化合物であり、前記第3有機化合物は発光体であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(A) ES1(A)>ES1(B)>ES1(C)
(上式において、ES1(A)は前記第1有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(B)は前記第2有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(C)は前記第3有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表す。)
【化2】
[図:0001438252000006.jpg]
[一般式(12)において、R11~R15のうちの少なくとも3つは下記一般式(3)で表される基であり、そのうちの少なくとも2つは一般式(3)のベンゼン環に置換している置換基の数が異なる。R11~R15の残りの0~1つはシアノ基を表し、あとの残りの0~2つは置換もしくは無置換のアリール基を表す]
【化87】
[図:0001438252000007.jpg]
[一般式(3)において、R21~R25のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよく、R26~R30のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよい。それ以外のR21およびR30は水素原子を表し、R22~R29は各々独立に水素原子、炭素数1~20の無置換のアルキル基、または炭素数6~40の無置換のアリール基を表す。R25とR26は互いに結合していてもよい。R31はベンゼン環との結合位置である。]
【請求項14】
陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極の間に発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層は、以下の式(A)を満たすホスト材料である第1有機化合物と第2有機化合物と第3有機化合物とを少なくとも含み、前記第2有機化合物が下記一般式(14)で表される化合物であり、前記第3有機化合物は発光体であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(A) ES1(A)>ES1(B)>ES1(C)
(上式において、ES1(A)は前記第1有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(B)は前記第2有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(C)は前記第3有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表す。)
【化3】
[図:0001438252000008.jpg]
[一般式(14)において、R11、R12、R14、R15のうちの少なくとも3つは置換もしくは無置換のジアリールアミノ基(ただし、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよい)およびハロゲン原子から選択され、そのうちの少なくとも2つは置換もしくは無置換のジアリールアミノ基(ただし、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよい)であり、それらの置換もしくは無置換のジアリールアミノ基(ただし、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよい)の2つは、ともに共通するアリール基を有しているが、そのアリール基に置換している置換基の数が異なる。残りの0~1つは水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、またはシアノ基を表す。]
【請求項15】(省略)」
3 本件訂正の内容
本件訂正は、特許請求の範囲の訂正のみからなり、本件訂正前の一群の請求項である請求項1~14について訂正するものである。
本件訂正の内容を本件訂正前の請求項の記載に沿って整理すると、本件訂正は、以下に示す訂正事項1~8からなる(枝番を付けて更に細分化した訂正事項もある)。
(1) 訂正事項1(請求項1の記載に係る訂正)
ア 訂正事項1-1
請求項1の次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~8、10、12も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前
「以下の式(A)を満たす第1有機化合物」
(イ) 訂正後
「以下の式(A)を満たすホスト材料である第1有機化合物」
イ 訂正事項1-2
請求項1の次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~8、10、12も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前
「前記第2有機化合物は下記一般式(1)で表される遅延蛍光体であり、」
「一般式(1)
(A)m-L-(D)n
[一般式(1)において、Lはm+n価の単環の芳香族連結基である。Aはハメットのσp値が正の基またはフェニル基であり、Aの1つまたは2つはシアノ基である。Dはハメットのσp値が負の基(ただしフェニル基は除く)であり、mは1以上の整数であり、nは2以上の整数である。mが2以上であるとき、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数のDのうちの2つは、ともに共通する芳香環を含んでいるが、互いに異なる構造を有する基である。」
(イ) 訂正後
「前記第2有機化合物は下記一般式(10)で表される遅延蛍光体であり、」
「【化1】
[図:0001438252000009.jpg]
[一般式(10)において、A1はシアノ基を表す。R1~R5は各々独立にシアノ基、フェニル基、3,5-ジフェニルフェニル基、またはハメットのσp値が負である下記一般式(3)で表される基を表し、R1~R5の0~1つはシアノ基であり、R1~R5の少なくとも2つは、ハメットのσp値が負である下記一般式(3)で表される基であり、それらの一般式(3)で表される基のうちの2つは、互いに異なる構造を有する。]
【化87】
[図:0001438252000010.jpg]
[一般式(3)において、R21~R25のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよく、R26~R30のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよい。それ以外のR21およびR30は水素原子を表し、R22~R29は各々独立に水素原子、炭素数1~20の無置換のアルキル基、または炭素数6~40の無置換のアリール基を表す。R25とR26は互いに結合していてもよい。R31はベンゼン環との結合位置である。]」
(2) 訂正事項2(請求項2の記載に係る訂正)
請求項2の次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~8、10も同様に訂正する。)。
ア 訂正前
「最低励起一重項状態と77Kの最低励起三重項状態とのエネルギーの差ΔEstが0.3eV以下である」
イ 訂正後
「最低励起一重項状態と77Kの最低励起三重項状態とのエネルギーの差ΔEstが0.17eV以下である」
(3) 訂正事項3(請求項9の記載に係る訂正)
請求項9を削除する。
(4) 訂正事項4(請求項10の記載に係る訂正)
ア 訂正事項4-1
請求項10の次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前
「前記一般式(1)のDがジアリールアミノ基またはカルバゾリル基である」
(イ) 訂正後
「前記一般式(3)のR25とR26は互いに結合して単結合を形成している」
イ 訂正事項4-2
請求項10の次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前
「請求項1~9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子」
(イ) 訂正後
「請求項1~8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子」
(5) 訂正事項5(請求項11の記載に係る訂正)
請求項11を削除する。
(6) 訂正事項6(請求項12の記載に係る訂正)
ア 訂正前
「R1~R5の4つまたは5つがハメットのσp値が負の基(ただしフェニル基は除く)である、請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子」
イ 訂正後
「R1~R5の4つまたは5つがハメットのσp値が負である前記一般式(3)で表される基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子」
(7) 訂正事項7(請求項13の記載に係る訂正)
ア 訂正事項7-1
請求項13の次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前
「請求項1~8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子」
(イ) 訂正後
「請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子」
イ 訂正事項7-2
訂正事項7-1による訂正を前提に、次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前
「前記第2有機化合物が下記一般式(12)で表される化合物である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子」
(イ) 訂正後
「陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極の間に発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層は、以下の式(A)を満たす第1有機化合物と第2有機化合物と第3有機化合物とを少なくとも含み、前記第2有機化合物が下記一般式(12)で表される化合物であり、前記第3有機化合物は発光体であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(A) ES1(A)>ES1(B)>ES1(C)
(上式において、ES1(A)は前記第1有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(B)は前記第2有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(C)は前記第3有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表す。)」
ウ 訂正事項7-3
訂正事項7-1及び訂正事項7-2による訂正を前提に、次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前
「以下の式(A)を満たす第1有機化合物」
(イ) 訂正後
「以下の式(A)を満たすホスト材料である第1有機化合物」
エ 訂正事項7-4
訂正事項7-1から訂正事項7-3までによる訂正を前提に、次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前
「[一般式(12)において、R11~R15のうちの少なくとも3つは置換もしくは無置換のジアリールアミノ基(ただし、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよい)およびハロゲン原子から選択され、そのうちの少なくとも2つは置換もしくは無置換のジアリールアミノ基(ただし、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよい)であり、それらの置換もしくは無置換のジアリールアミノ基(ただし、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよい)のうちの2つは、ともに共通するアリール基を有しているが、そのアリール基に置換している置換基の数が異なる。R11~R15の残りの0~1つはシアノ基を表し、あとの残りの0~2つは水素原子、または置換もしくは無置換のアリール基を表す]」
(イ) 訂正後
「[一般式(12)において、R11~R15のうちの少なくとも3つは下記一般式(3)で表される基であり、そのうちの少なくとも2つは一般式(3)のベンゼン環に置換している置換基の数が異なる。R11~R15の残りの0~1つはシアノ基を表し、あとの残りの0~2つは置換もしくは無置換のアリール基を表す]
【化87】
[図:0001438252000011.jpg]
[一般式(3)において、R21~R25のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよく、R26~R30のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよい。それ以外のR21およびR30は水素原子を表し、R22~R29は各々独立に水素原子、炭素数1~20の無置換のアルキル基、または炭素数6~40の無置換のアリール基を表す。R25とR26は互いに結合していてもよい。R31はベンゼン環との結合位置である。]」
(8) 訂正事項8(請求項14の記載に係る訂正)
ア 訂正事項8-1
請求項14の次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前
「請求項1~8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子」
(イ) 訂正後
「請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子」
イ 訂正事項8-2
訂正事項8-1による訂正を前提に、次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前
「前記第2有機化合物が下記一般式(14)で表される化合物である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子」
(イ) 訂正後
「陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極の間に発光層を含む少なくとも1層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層は、以下の式(A)を満たす第1有機化合物と第2有機化合物と第3有機化合物とを少なくとも含み、前記第2有機化合物が下記一般式(14)で表される化合物であり、前記第3有機化合物は発光体であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(A) ES1(A)>ES1(B)>ES1(C)
(上式において、ES1(A)は前記第1有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(B)は前記第2有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(C)は前記第3有機化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表す。)」
ウ 訂正事項8-3
訂正事項8-1及び訂正事項8-2による訂正を前提に、次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前
「以下の式(A)を満たす第1有機化合物」
(イ) 訂正後
「以下の式(A)を満たすホスト材料である第1有機化合物」
第3 本件訂正の適否についての当合議体の判断
1 訂正の目的
(1) 訂正事項1(請求項1の記載に係る訂正)
ア 訂正事項1-1
訂正事項1-1に係る訂正は、「第1有機化合物」が「ホスト材料である」ことを限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項1-2
訂正事項1-2に係る訂正は、「第2有機化合物」について、「一般式(1)」で表されるものから「一般式(10)」で表されるものに限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2) 訂正事項2(請求項2の記載に係る訂正)
訂正事項2に係る訂正は、「最低励起一重項状態と77Kの最低励起三重項状態とのエネルギーの差ΔEst」の数値範囲について、「0.3eV以下」から「0.17eV以下」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(3) 訂正事項3(請求項9の記載に係る訂正)
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項9を削除する訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(4) 訂正事項4(請求項10の記載に係る訂正)
ア 訂正事項4-1
訂正事項4-1に係る訂正は、「第2有機化合物」について、「Dがジアリールアミノ基またはカルバゾリル基である」「前記一般式(1)」で表されるものから、訂正事項1による請求項1の訂正を前提として、「一般式(10)」で表されるものに限定した上で、「一般式(10)」の「R1~R5」の選択肢の一つとして特定されている「一般式(3)で表される基」について、「前記一般式(3)のR25とR26は互いに結合して単結合を形成している」ものであるとすることにより、「第2有機化合物」がカルバゾリル構造の置換基を有するものであることに限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項4-2
訂正事項4-2に係る訂正は、訂正事項3により請求項9を削除したことに伴い、請求項10が引用する請求項を「請求項1~9のいずれか1項」から「請求項1~8のいずれか1項」に訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(5) 訂正事項5(請求項11の記載に係る訂正)
訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項11を削除する訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(6) 訂正事項6(請求項12の記載に係る訂正)
訂正事項6に係る訂正は、訂正前の「R1~R5の4つまたは5つがハメットのσp値が負の基(ただしフェニル基は除く)である、請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子」との記載を、訂正事項1による請求項1の訂正を前提として、「R1~R5の4つまたは5つがハメットのσp値が負である前記一般式(3)で表される基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子」とすることにより、「一般式(10)」で表される「第2有機化合物」の「R1~R5」の選択肢を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(7) 訂正事項7(請求項13の記載に係る訂正)
ア 訂正事項7-1
訂正事項7-1に係る訂正は、請求項13が引用する請求項を「請求項1~8のいずれか1項」から「請求項1」に訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項7-2
訂正事項7-2に係る訂正は、訂正事項7-1に係る訂正を前提に、請求項1の記載を引用する請求項13の記載を当該請求項1の記載を引用しない形式に書き改める訂正であり、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
ウ 訂正事項7-3
訂正事項7-3に係る訂正は、訂正事項7-1及び訂正事項7-2による訂正を前提に、「第1有機化合物」が「ホスト材料である」ことを限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
エ 訂正事項7-4
訂正事項7-4に係る訂正は、一般式(12)で表される範囲を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(8) 訂正事項8(請求項14の記載に係る訂正)
ア 訂正事項8-1
訂正事項8-1に係る訂正は、請求項14が引用する請求項を「請求項1~8のいずれか1項」から「請求項1」に訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項8-2
訂正事項8-2に係る訂正は、訂正事項8-1に係る訂正を前提に、請求項1の記載を引用する請求項14の記載を当該請求項1の記載を引用しない形式に書き改める訂正であり、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
ウ 訂正事項8-3
訂正事項8-3に係る訂正は、訂正事項8-1及び訂正事項8-2による訂正を前提に、「第1有機化合物」が「ホスト材料である」ことを限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
2 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
(1) 訂正事項1(請求項1の記載に係る訂正)
ア(ア) 訂正事項1-1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の段落【0019】の記載に基づくものである。
(イ) 訂正事項1-2に係る訂正は、本件特許明細書の段落【0043】~【0046】、【0058】、【0059】、【0062】、【0087】~【0089】の記載に基づくものである。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)に示すとおり、訂正事項1-1及び訂正事項1-2は、本件特許明細書の記載に基づくものであり、訂正事項1全体として、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
イ 訂正事項1に係る訂正は、全体として、特許請求の範囲の減縮をするものであって本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(2) 訂正事項2(請求項2の記載に係る訂正)
ア 訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書の段落【0201】、【0202】の記載に基づくものであるから、当該訂正は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、当該訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
イ 訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮をするものであって本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(3) 訂正事項3(請求項9の記載に係る訂正)
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、当該訂正が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、明らかである。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(4) 訂正事項4(請求項10の記載に係る訂正)
ア(ア) 訂正事項4-1は、「一般式(10)」の「R1~R5」の選択肢の一つとして特定されている「一般式(3)で表される基」の「R25とR26」が「互いに結合して単結合を形成している」と訂正するものであり、これは、「一般式(3)で表される基」がカルバゾリル構造を含むものであることを意味するから、本件特許明細書の段落【0033】、【0037】の記載に基づくものである。
(イ) 訂正事項4-2に係る訂正は、引用する請求項数を削減するものであるから、当該訂正が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであることは、明らかである。
(ウ) そうすると、訂正事項4は、全体として、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
イ 訂正事項4に係る訂正は、全体として特許請求の範囲の減縮をするものであって本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(5) 訂正事項5(請求項11の記載に係る訂正)
訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項11を削除する訂正であるから、当該訂正が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは、明らかである。
したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(6) 訂正事項6(請求項12の記載に係る訂正)
ア 訂正事項6は、「R1~R5の4つまたは5つがハメットのσp値が負である前記一般式(3)で表される基である」と訂正するものであり、本件特許明細書の段落【0043】~【0046】、【0059】、【0062】~【0063】の記載に基づくものであるから、当該訂正は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものである。
したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
イ 訂正事項6に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮をするものであって本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(7) 訂正事項7(請求項13の記載に係る訂正)
ア(ア) 訂正事項7-1に係る訂正は、引用する請求項数を削減するものである。
(イ) 訂正事項7-2に係る訂正は、請求項1の記載を引用する請求項13の記載を当該請求項1の記載を引用しない形式に書き改めるものであるから、技術事項の実質的な変更を伴わない訂正である。
(ウ) 訂正事項7-3に係る訂正は、本件特許明細書の段落【0019】の記載に基づくものである。
(エ) 訂正事項7-4に係る訂正は、本件特許明細書の段落【0036】、【0045】、【0046】、【0058】、【0069】等の記載に基づくものである。
(オ) 前記(ア)から(エ)に示すとおり、訂正事項7-1から訂正事項7-4は、本件特許明細書の記載に基づくものであり、訂正事項7全体として、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
イ 訂正事項7に係る訂正は、全体として、特許請求の範囲の減縮をするものであって本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(8) 訂正事項8
ア(ア) 訂正事項8-1に係る訂正は、引用する請求項数を削減するものである。
(イ) 訂正事項8-2に係る訂正は、請求項1の記載を引用する請求項14の記載を当該請求項1の記載を引用しない形式に書き改めるものであるから、技術事項の実質的な変更を伴わない訂正である。
(ウ) 訂正事項8-3に係る訂正は、本件特許明細書の段落【0019】の記載に基づくものである。
(エ) 前記(ア)から(ウ)に示すとおり、訂正事項8-1から訂正事項8-3は、本件特許明細書の記載に基づくものであり、訂正事項8全体として、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
イ 訂正事項8に係る訂正は、全体として、特許請求の範囲の減縮をするものであって本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
3 独立特許要件
この特許異議の申立てにおいては、請求項1~13について特許異議の申立てがされているから、本件訂正後における、削除されていない請求項1~8、10、12、13に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する要件、すなわち「特許出願の際独立して特許を受けることができるものである」という要件(以下「独立特許要件」という。)は課されない。
請求項14は、特許異議の申立てがされていない請求項であり、かつ、前記1(8)ア及びウに示したとおり、請求項14に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものを含むから、本件訂正後における請求項14に記載されている事項により特定される発明については、独立特許要件が課されることになるところ、独立特許要件違反に当たる理由は見当たらない。
4 本件訂正についてのまとめ
前記1~3において検討したとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号、3号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり同項の規定に適合し、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
また、訂正後の請求項14については、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する特許法126条7項に規定する要件も課されるところ、訂正後の請求項14は、当該規定に適合すると認められる。
よって、前記結論のとおり、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
第4 令和8年3月5日付け取消理由通知書より通知した取消理由の概要
本件特許は、請求項1~8、10、12、13について、特許請求の範囲の記載が下記に示す点で不備があるため、上記請求項に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
令和6年10月30日に提出された手続補正書により補正された同年8月19日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1において、
「[一般式(3)において、R21~R25のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよく、R26~R30のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよい。それ以外のR21およびR30は水素原子を表し、R22~R29は各々独立に水素原子または置換基(ただし、置換された基である場合は、炭素数1~20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1~20の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基で置換された基である)を表す。R25とR26は互いに結合していてもよい。R31はベンゼン環との結合位置である。]」
と記載されているが、「R22~R29」が「置換基」を表す場合、その「置換基」がどのような基本骨格を有するものであるか何ら限定されておらず、請求項1に係る発明は、本件特許の発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであることは、明らかである。
したがって、請求項1に係る発明及び請求項1の記載を引用する請求項2~8、10、12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
請求項13に係る発明についても同様の指摘が当てはまる。
以上のとおりであるから、請求項1~8、10、12、13に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 本件訂正発明
前記第3のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許異議の申立ての対象となる、本件特許の請求項1~8、10、12、13に係る発明(以下、これらを総称して「本件訂正発明」ということもある。)は、それぞれ、前記第2の2(2)に示した本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~8、10、12、13に記載された事項により特定されるとおりのものである。
第6 サポート要件違反に係る当合議体の判断
本件訂正発明においては、「[一般式(3)において、R21~R25のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよく、R26~R30のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよい。それ以外のR21およびR30は水素原子を表し、R22~R29は各々独立に水素原子、炭素数1~20の無置換のアルキル基、または炭素数6~40の無置換のアリール基を表す。R25とR26は互いに結合していてもよい。R31はベンゼン環との結合位置である。]」とされているから、「R22~R29」が「置換基」を表す場合に、その「置換基」の基本骨格について限定されており、前記第5において示したサポート要件違反の取消理由は解消したといえる。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
申立人は、次の申立理由1及び申立理由2を主張している。
(1) 申立理由1(甲1に基づく進歩性欠如)
請求項1~13に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~5の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。
(2) 申立理由2(サポート要件違反)
請求項1~13において、「第2有機化合物」に明細書の発明の詳細な説明の段落[0208]に記載されている比較用の化合物B~Iが含まれており、これらは本件発明の効果(高発光効率)を奏しない化合物である。
よって、請求項1~13に係る発明は、発明の課題を解決できない手段を含んでおり、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条4号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由の検討
(1) 申立理由1について
申立人の主張する申立理由1について検討すると、本件訂正発明の構成である[一般式(3)において、R21~R25のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよく、R26~R30のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよい。それ以外のR21およびR30は水素原子を表し、R22~R29は各々独立に水素原子、炭素数1~20の無置換のアルキル基、または炭素数6~40の無置換のアリール基を表す。R25とR26は互いに結合していてもよい。R31はベンゼン環との結合位置である。]については、申立人が提出したいずれの文献にも記載も示唆もされていないから、本件訂正発明については、進歩性が欠如しているとの指摘は当たらない。
(2) 申立理由2について
本件訂正発明においては、「前記第2有機化合物は下記一般式(10)で表される遅延蛍光体であり、」と特定されているところ、
「一般式(10)」については、
「
【化1】
[図:0001438252000012.jpg]
[一般式(10)において、A1はシアノ基を表す。R1~R5は各々独立にシアノ基、フェニル基、3,5-ジフェニルフェニル基、またはハメットのσp値が負である下記一般式(3)で表される基を表し、R1~R5の0~1つはシアノ基であり、R1~R5の少なくとも2つは、ハメットのσp値が負である下記一般式(3)で表される基であり、それらの一般式(3)で表される基のうちの2つは、互いに異なる構造を有する。]
【化87】
[図:0001438252000013.jpg]
[一般式(3)において、R21~R25のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよく、R26~R30のうちの2つが置換基を表し互いに結合して環構造を形成してもよい。それ以外のR21およびR30は水素原子を表し、R22~R29は各々独立に水素原子、炭素数1~20の無置換のアルキル基、または炭素数6~40の無置換のアリール基を表す。R25とR26は互いに結合していてもよい。R31はベンゼン環との結合位置である。]」
と特定されているから、「第2有機化合物」に明細書の発明の詳細な説明の段落[0208]に記載されている比較用の化合物B~Iが含まれてはいない。
したがって、申立理由2については、理由が無く、本件訂正発明に係る特許は特許法36条6項1号に規定する要件を満たしている。
(3) 申立理由の検討のまとめ
前記(1)、(2)に検討のとおり、申立理由1及び申立理由2はいずれも理由がない。
第8 むすび
前記第6において検討したとおり、請求項1~8、10、12、13に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由により取り消すことはできない。
また、前記第7において検討したとおり、請求項1~8、10、12、13に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっても、取り消すことができない。
そして、他に請求項1~8、10、12、13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項9、11に係る特許についての特許異議の申立てについては、これらの請求項は本件訂正により削除され、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700126