特許異議申立
2023-700942
熱交換器の解体方法
- 審判番号
- 2023-700942
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-056436
- 登録番号
- 7313306
- 請求日
- 2023年09月08日
- 審決日
- 2024年04月26日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社神戸製鋼所
- 【権利者代理人】池田 義典
- 【権利者代理人】天野 一規
- 【権利者代理人】藤本 勝誠
- 【権利者代理人】石田 耕治
- 【権利者】スタズビック ウエスト マネジメント テクノロジー アクチエボラグ
- 【権利者代理人】池田 義典
- 【権利者代理人】天野 一規
- 【権利者代理人】藤本 勝誠
- 【権利者代理人】石田 耕治
- 【異議申立人】笹井 栄治
- 【異議申立人】笹井 栄治
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 松川 直樹
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P1651.121-Y (G21F) / P1651.537-Y (G21F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7313306号発明「熱交換器の解体方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7313306号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7313306号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年3月26日に出願され、令和5年7月13日にその特許権の設定登録がされ、令和5年7月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年9月8日に特許異議申立人笹井栄治(以下、単に「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った(以下「申立1」という。)。また、その後、令和6年1月16日に申立人は、特許異議の申立てを行った(以下「申立2」という。)。
第2 本件発明
特許第7313306号の請求項1~7の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
伝熱管と、この伝熱管を固定する管板と、上記伝熱管及び管板を格納する円筒状の胴部とを備え、原子力施設で使用される熱交換器の解体方法であって、
上記伝熱管が、円弧部と、この円弧部の両端からそれぞれ上記胴部の中心軸に対して平行に延び、上記管板をその表面から裏面に向かって貫通する直管部とを有し、上記直管部が、上記管板の裏面側で上記管板に溶接されており、
上記伝熱管の円弧部を除去する工程と、
上記管板をその表面に平行に輪切りにすることで、上記直管部の上記管板への溶接部分を除去する工程と、
上記円弧部除去工程及び上記溶接部分除去工程後に、上記直管部を引き抜く工程と
を備える熱交換器の解体方法。
【請求項2】
上記引抜工程で、上記直管部を上記管板の裏面側から引き抜く請求項1に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項3】
上記直管部が、上記管板の貫通部分で拡径されて上記管板に密着されており、
上記溶接部分処理工程後に、上記直管部の拡径部分を処理する工程をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項4】
上記拡径部分処理工程を、上記直管部の管壁の切削により行う請求項3に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項5】
上記拡径部分処理工程を、上記直管部と上記管板との密着力の緩和により行う請求項3に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項6】
上記密着力の緩和方法として、上記直管部の管壁の一部を上記管板の板厚方向に切除する方法を用いる請求項5に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項7】
上記密着力の緩和方法として、少なくとも上記管板の加熱及び冷却を行う方法を用いる請求項5に記載の熱交換器の解体方法。」
以下、本件特許の請求項1~7に係る発明をそれぞれ、本件発明1~7という。
第3 申立理由の概要
申立人が申立1及び2で申し立てる申立理由の概要は次のとおりである。
1 申立1の申立理由
(1) 本件発明1~7は、後記甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証に記載された技術的事項、必要に応じて甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2) 請求項3~7の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないから、本件発明3~7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
2 申立2の申立理由
(1) 本件発明1~7は、後記甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証、甲第6号証に記載された技術的事項、必要に応じて甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2) 請求項3~7の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないから、本件発明3~7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
第4 申立人が提出した証拠
1 申立1で提出した証拠
申立人が申立1において提出した証拠は、次の甲第1~5号証である。
甲第1号証:特開2014-59148号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特表平11-514588号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:Gregor KRAUSE, Bjoern AMCOFF, Joe ROBINSON, “Options for Steam Generator Decommissioning”, PREDEC 2016: International Symposium on Preparation for Decomissioning 16-18 February, Lyon Abstract#16242/ Studsvik 〈URL:https://www.oecd-nea.org/rwm/wpdd/predec2016/docs/S-4-5 _FP _ROBINSON_.pdf〉(以下「甲3」という。なお、Bioernのoeはウムラウトのoである。)
甲第4号証:特公平7-18531号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:Nuclear Energy Agency (NEA) International Symposium on Preparation for Decommissioning (PREDEC 2016) program-Feb.17, 2016、[on line] [令和5年9月4日検索]、〈URL:https://www.oecd-nea.org/jcms/pl_49213/international-symposium-on-preparation-for-decommissioning-predec-2016?details=true 〉(以下「甲5」という。甲5は甲3の公知日を立証するための証拠である。)
2 申立2で提出した証拠
申立人が申立2において提出した証拠は、前記1の甲1~甲5及び次の甲第6号証である。
甲第6号証:Anders Lindstroem “Projektplan foer avfallskonditionering av AG1 till 3 fran Ringhals 4”STUDSVIK NUCLEAR AB 第1ページ~第3ページ(以下「甲6」という。なお、Lindstroem及びfoerのoeはウムラウトのoである。また、AG1のAは上リング付きA大文字であり、franのaは上リング付きa小文字である。)
3 甲6の不採用について
甲6は、以下に示すとおりその公知日が不明であるから、異議申立の証拠としては採用できない。
(1) 甲6等の記載内容
ア 令和6年1月16日付の証拠説明書には、甲6の作成日が2011年2月11日と記載されている。
イ 甲6の1頁の上欄には「Date」として、2010-11-10及び2011-02-11 Rev.と記載され、同頁中程の手書きのサイン欄には、「Bo Wirendal のサイン日」として 2011-02-11、「Joachim Jansson のサイン日」として 2011-02-14 と記載されている。
(2) 甲6の公知日に関しての申立人の主張について
申立人は、申立2の特許異議申立書の19頁で、「甲第6号証は、Vattenfall Ringhalsが2011年4月下旬頃にスウェーデン放射線安全庁(SSM)に通知した「廃棄物計画FREJ(2011)」に添付されたStudsvik Nuclear AB報告書である。上記廃棄物計画は、プロジェクトの開始前に規制機関に通知されるべきものである。そして、スウェーデンの法律に従って、スウェーデン当局に送られた文書は、潜在的な配布を制限する特別な理由がない限り、公開されているとみなされる。」と主張する。
(3) 当審の判断
ア 上記(1)について、一般的な書類作成の慣習を考慮すると、甲6の1頁の上欄に記載された「Date」としての、2010-11-10及び2011-02-11 Rev. 及び、同頁中程の手書きのサイン欄に記載された、「Bo Wirendal のサイン日」としての 2011-02-11、「Joachim Jansson のサイン日」としての 2011-02-14 との日付は、作成日、修正日又は確認日を意味するにとどまると解するのが相当である。そして、これらの日付が甲6が公知となった日を意味すると解すべき特段の事情は同申立書では説明されてはいない。
イ 上記アのとおり、甲6に記入された日付が公知日であるとは解されないため、甲6が公知であるというためには、甲6が公開されたこと及びその日付を裏付ける証拠が必要となるところ、申立人が上記イで主張する、甲6が「廃棄物計画FREJ(2011)」に添付されていたこと、「廃棄物計画FREJ(2011)」が甲6と共にスウェーデン放射線安全庁(SSM)に通知されたこと及びその日付が2011年4月下旬であるとの主張を裏付ける証拠は示されていない。
ウ 仮に、甲6が2011年4月下旬頃にスウェーデン放射線安全庁(SSM)に通知された「廃棄物計画FREJ(2011)」に添付されていたことが明らかとなったとしても、甲6がスウェーデン放射線安全庁(SSM)から公開されていたこと及びその日付を示す証拠も示されていない。
これに対して、申立人は「潜在的な配布を制限する特別な理由がない限り、公開されているとみなされる」旨主張しているが、スウェーデン放射線安全庁(SSM)への通知が公開されていることを裏付ける証拠が示されておらず、また、甲6が「潜在的な配布を制限する特別な理由がない」ものに該当するという根拠も示されていない。
エ また、当審において、申立人に、甲6の公知日が不明であること、並びに、甲6が公開されていたこと及びその日付を明らかにする補正が期限内になされなければ甲6は証拠として採用できない旨の通知書を通知したが、申立人は当該期限内に補正を行わなかった。
(5) 小括
したがって、甲6はその公知日が不明であるから、異議申立の証拠としては採用できない。
第5 申立理由についての当審の判断
1 当審の判断の概要
以下で検討するとおり、本件発明1~7に係る特許は、前記第3に示した申立理由によって取り消すことはできない。
2 申立1及び申立2の申立理由について
(1) 申立1及び2の進歩性欠如についての申立理由について
申立1の進歩性欠如についての申立理由は、上記第3の1(1)のとおり、本件発明1~7は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された技術的事項、必要に応じて甲4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであり、また、申立2の進歩性欠如についての申立理由は、上記第3の2(1)のとおり、本件発明1~7は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3、甲6に記載された技術的事項、必要に応じて甲4に記載された技術的事項に基づいて基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである
しかしながら、上記第4の3で説示したとおり、甲6は異議申立の証拠としては採用できないため、申立2の進歩性欠如についての申立理由も、本件発明1~7は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された技術的事項、必要に応じて甲4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、というものとなり、申立1の進歩性欠如についての申立理由と同じ理由となった。
そこで、以下では、申立1の進歩性欠如についての申立理由と申立2の進歩性欠如についての申立理由をまとめて「申立理由1」という。
(2) 申立1及び2の明確性要件違反についての申立理由について
申立1の明確性要件違反についての申立理由は、上記第3の1(2)のとおり、請求項3~7の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないから、本件発明3~7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるというものであり、また、申立2の明確性要件違反についての申立理由も、上記第3の2(2)のとおり、請求項3~7の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないから、本件発明3~7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるというものであって、両者の理由は同じ理由である。
そこで、以下では、申立1の明確性要件違反についての申立理由と申立2の明確性要件違反についての申立理由をまとめて「申立理由2」という。
3 申立理由1について
(1) 各甲号証の記載
ア 甲1に記載された事項及び甲1発明の認定
(ア) 甲1に記載された事項
本件特許の出願前に発行された甲1には、以下の事項が記載されている。
a 特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
筒状の胴部の下側に管板が設けられ当該管板の下側に水室鏡が設けられており、前記胴部の下部胴内において逆U字形状に形成された多数の伝熱管が、管群外筒で囲まれた状態で上下複数の管支持板に挿通支持され、かつ各端部が前記管板に挿通固定されて前記水室鏡内で分けられた各水室にそれぞれ連通して設けられ、さらに、前記胴部の上部胴内において気水分離器および湿分分離器が設けられている蒸気発生器の解体方法において、
前記蒸気発生器を立てた状態で、前記気水分離器および湿分分離器を伴って前記上部胴を前記下部胴から切り離す工程と、
次に、前記伝熱管および前記下部胴を前記管板から切り離す工程と、
を含むことを特徴とする蒸気発生器解体方法。
【請求項2】
前記伝熱管および前記下部胴を前記管板から切り離す工程では、
前記伝熱管のU字形状の円弧部を切断して取り除くとともに、前記下部胴の前記管板側の端部を周方向に断続して窓部を開放することであらわれた前記伝熱管を前記管板から切断する工程と、
次に、前記伝熱管を上方に引き抜く工程と、
次に、前記管群外筒および前記管支持板と前記下部胴とを前記管板から切り離す工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生器解体方法。
・・・途中省略・・・
【請求項5】
原子炉格納容器に設置された既設の蒸気発生器を解体することを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載の蒸気発生器解体方法。」
b 発明の詳細な説明の記載
「【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生器解体方法に関するものである。」
「【0025】
この加圧水型原子炉112を有する原子力発電設備において、原子炉格納容器111の内部に、加圧水型原子炉112および蒸気発生器1が格納されている。加圧水型原子炉112と蒸気発生器1とは、冷却水配管114,115を介して連結されている。冷却水配管114は、加圧器116が設けられ、冷却水配管115は、冷却水ポンプ117が設けられている。この場合、減速材および一次冷却水として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器116により160気圧程度の高圧状態を維持するように制御している。従って、加圧水型原子炉112にて、燃料としての低濃縮ウランまたはMOXにより一次冷却水としての軽水が加熱され、高温の一次冷却水が加圧器116により所定の高圧に維持された状態で冷却水配管114を通して蒸気発生器1に送られる。蒸気発生器1では、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされた一次冷却水は冷却水配管115を通して加圧水型原子炉112に戻される。」
「【0028】
蒸気発生器1は、下部胴2aの内部に、内壁面と所定間隔をもって配置された円筒形状を成す管群外筒3が設けられている。この管群外筒3は、その下端部が、下部胴2aの下端部に配置された管板4の近傍まで延設されている。管群外筒3内には、伝熱管群5Aが設けられている。伝熱管群5Aは、逆U字形状で上下方向に長尺とされた複数の伝熱管5からなる。各伝熱管5は、U字形状の円弧部を上方に向けて配置され、各端部が管板4の管穴4aに挿通固定されているとともに、中間部における長手方向の複数箇所が各管支持板6を介して管群外筒3に支持されている。管支持板6は、多数の伝熱管挿通穴6aが形成されており、この伝熱管挿通穴6aに各伝熱管5が挿通されることで各伝熱管5を支持する。また、伝熱管群5Aは、伝熱管5のU字形状の円弧部において、一次冷却水が伝熱管5内を通過する際に発生し得る流体励起振動を抑制するため、振止部材14が設けられている。振止部材14は、伝熱管5の円弧部が側方に重なる間に挿入されている。」
「【0032】
図3~図12は、蒸気発生器の解体手順を示す工程図である。蒸気発生器1は、原子炉格納容器111内において、図3に示すように、立てた状態で設置されている。そして、蒸気発生器1は、その周りコンクリートと鋼材とを含むコンクリート構造体の蒸気発生器室壁111aにより囲まれ、かつ蒸気発生器室壁111aに対して鋼材などで位置決め固定されている。このように、蒸気発生器1は、原子炉格納容器111内で、蒸気発生器室壁111aで囲まれつつ位置決め固定されることで、耐震性が図られている。また、図には明示しないが、原子炉格納容器111内の上部には、原子炉格納容器111内の構造物、例えば、加圧水型原子炉112における容器蓋部や、加圧水型原子炉112内の炉心構造物の吊り上げ作業を行うことを目的としたポーラクレーンが設けられている。
【0033】
蒸気発生器1の解体において、まず、図3に示すように、蒸気発生器1が原子炉格納容器111内で立てられた状態のままで行う。この際、入口ノズル7Aaは、冷却水配管114(図1参照)から切り離された状態とし、出口ノズル7Baは、冷却水配管115(図1参照)から切り離された状態とする。これら入口ノズル7Aaや出口ノズル7Baは、冷却水配管114や冷却水配管115に連結されたままの状態であってもよい。
【0034】
続いて、図4に示すように、上部胴2bおよび上部鏡2dを内部部材(気水分離器9や湿分分離器10)とともに円錐胴2cから切り離す。そして、切り離した上部胴2bおよび内部部材を、ポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除く。上部胴2b、上部鏡2dおよび内部部材は、原子炉格納容器111内で細かく解体する。
【0035】
続いて、図5に示すように、円錐胴2cおよび円錐胴2c内側の管群外筒3の一部を下部胴2aから切り離す。そして、切り離した円錐胴2cおよび円錐胴2c内側の管群外筒3の一部を、ポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除く。円錐胴2cおよび円錐胴2c内側の管群外筒3の一部は、原子炉格納容器111内で細かく解体する。これにより、伝熱管5の円弧部があらわれる。
【0036】
続いて、伝熱管5および下部胴2aを管板4から切り離す。この工程は、いくつかの方法があり、その一つを図6~図9に示す。最初に、図6に示すように、伝熱管5の円弧部を切断するとともに、下部胴2aの管板4側の端部を周方向に断続して開放する窓部2aaを形成することであらわれた伝熱管5の下端を管板4から切断する。そして、切断した伝熱管5の円弧部をポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除く。伝熱管5の円弧部は、原子炉格納容器111内で細かく解体、または小さく圧縮、あるいは小さく折り曲げる。また、伝熱管5の円弧部は、上述したように振止部材14が設けられており、この振止部材14もポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除き、原子炉格納容器111内で細かく解体する。このように、伝熱管5の円弧部を切断するとともに、伝熱管5の下端を管板4から切断することで、残された伝熱管5は、直線状の中間部のみとなり、この部分が各管支持板6に対して上下に真っ直ぐ挿通支持されていることから、上下方向に沿って移動可能な状態となる。
【0037】
次に、図7に示すように、伝熱管5を上方に引き抜く。すなわち、伝熱管5をポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除く。伝熱管5は、原子炉格納容器111内で細かく解体、または小さく圧縮、あるいは小さく折り曲げる。伝熱管5の引き抜きは、1つずつでも複数でもよい。全ての伝熱管5を引き抜くと、図8に示すように、管群外筒3および管支持板6が下部胴2aの内部に残った状態となる。
【0038】
最後に、図9に示すように、下部胴2aを管板4から切り離す。下部胴2aを管板4から切り離す場合、管群外筒3および管支持板6を伴うように下部胴2a全体を管板4から切り離し、ポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除く。管群外筒3および管支持板6を伴うように下部胴2aは、原子炉格納容器111内で細かく解体する。
【0039】
なお、下部胴2aを管板4から切り離す場合、下部胴2aを上側から一部切断しながら、管群外筒3を上側から一部を切断し、その部分の管支持板6を切り離し、それぞれをポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除き、全ての下部胴2a、管群外筒3、および管支持板6を切り離すまでこれを下側に向かって繰り返してもよい。下部胴2aの一部や管群外筒3の一部や管支持板6は、原子炉格納容器111内で細かく解体する。
【0040】
また、伝熱管5および下部胴2aを管板4から切り離す工程の、他の方法を図10、図11、および図9に示す。最初に、図10に示すように、伝熱管5の円弧部を切断し、ポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除く。伝熱管5の円弧部は、原子炉格納容器111内で細かく解体、または小さく圧縮、あるいは小さく折り曲げる。また、伝熱管5の円弧部は、上述したように振止部材14が設けられており、この振止部材14もポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除き、原子炉格納容器111内で細かく解体する。
【0041】
次に、図11に示すように、下部胴2aの上側の一部および管群外筒3の上側の一部を管支持板6の配置間隔に基づいて切断し、その部分の管支持板6を切り離し、それぞれをポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除く。下部胴2aの一部や管群外筒3の一部や管支持板6は、原子炉格納容器111内で細かく解体する。これにより、伝熱管5の上部の一部があらわれる。
【0042】
次に、下部胴2aの上側の一部、管群外筒3の上側の一部、および管支持板6を取り除くことであらわれた伝熱管5の上側の一部を、その直下の管支持板6の配置間隔に基づいて切断し、ポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除く。この場合、伝熱管5の上端をポーラクレーンにより吊りながら伝熱管5の下端(直下の管支持板6上での下端)を切断することが好ましく、複数の伝熱管5を同時に吊って行うことがより好ましい。伝熱管5は、原子炉格納容器111内で細かく解体、または小さく圧縮、あるいは小さく折り曲げる。
【0043】
最後に、図9に示すように、全ての伝熱管5、下部胴2a、管群外筒3、および管支持板6を取り除くまで前記工程を下側に向かって繰り返す。
【0044】
続いて、蒸気発生器1の解体に戻り、管板4および水室鏡7を切り離す。管板4および水室鏡7の切り離しは、図9に示すように、管板4と水室鏡7とが一体となっている状態で、そのままポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除く。管板4および水室鏡7は、原子炉格納容器111内で切り離しそれぞれ細かく解体する。または、管板4および水室鏡7の切り離しは、図12に示すように、管板4を水室鏡7から切り離し、ポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除き、その後、水室鏡7をポーラクレーンにより吊り上げて蒸気発生器室壁111aの外側であって原子炉格納容器111内に搬送して取り除いてもよい。管板4と水室鏡7とは、原子炉格納容器111内でそれぞれ細かく解体する。
【0045】
このように、本実施形態の蒸気発生器解体方法は、蒸気発生器1を立てた状態で、気水分離器9および湿分分離器10を伴って上部胴2bを下部胴2aから切り離す工程と、次に、伝熱管5および下部胴2aを管板4から切り離す工程と、次に、管板4および水室鏡7を切り離す工程と、を含む。
【0046】
この蒸気発生器解体方法によれば、蒸気発生器1を使用されていた立てた状態で上側から順次解体する。このため、例えば、原子力発電設備の廃炉に際し、蒸気発生器1を原子炉格納容器111内に設置された状態で解体することが可能になる。この結果、蒸気発生器1を含めた設備全体で系統除染を行うことができ、また蒸気発生器1を原子炉格納容器111から取り出すための大型揚重機を用いず原子炉格納容器111内に既設のポーラクレーンを用いることができ、さらに蒸気発生器1を一時的に保管する保管庫を不要にできるので、廃炉工事に係るコストを低減することが可能になる。
【0047】
また、本実施形態の蒸気発生器解体方法は、伝熱管5および下部胴2aを管板4から切り離す工程では、伝熱管5のU字形状の円弧部を切断して取り除くとともに、下部胴2aの管板側の端部を周方向に断続して窓部2aaを開放することであらわれた伝熱管5を管板4から切断する工程と、次に、伝熱管5を上方に引き抜く工程と、次に、管群外筒3および管支持板6と下部胴2aとを管板4から切り離す工程と、を含む。
【0048】
この蒸気発生器解体方法によれば、伝熱管5および下部胴2aを管板4から切り離す場合に、伝熱管5のU字形状の円弧部を切断して取り除くとともに、下部胴2aの管板側の端部を周方向に断続して窓部2aaを開放することであらわれた伝熱管5を管板4から切断することで、伝熱管5を上方に引き抜けるようにでき、伝熱管5を先に取り除くことが可能になる。しかも、伝熱管5を先に取り除くことで、伝熱管5が妨げになることなく下部胴2a、管群外筒3、および管支持板6を容易に取り除くことが可能になる。
【0049】
また、本実施形態の蒸気発生器解体方法は、伝熱管5および下部胴2aを管板4から切り離す工程では、伝熱管5のU字形状の円弧部を切断して取り除く工程と、次に、下部胴2aの上側の一部および管群外筒3の上側の一部を管支持板6の配置間隔に基づいて切断して取り除くとともに管支持板6を取り除く工程と、次に、下部胴2aの上側の一部、管群外筒3の上側の一部、および管支持板6を取り除くことであらわれた伝熱管5の上側の一部を管支持板6の配置間隔に基づいて切断して取り除く工程と、を含み、全ての伝熱管5、下部胴2a、管群外筒3、および管支持板6を取り除くまで前記工程を下側に向かって繰り返す。
【0050】
この蒸気発生器解体方法によれば、下部胴2aの内部の構造を管支持板6の配置間隔に基づいて切断して取り除くことで、解体作業を管支持板6の配置間隔ごとの領域に集約して行うことができ、作業の効率化を図ることが可能になる。
【0051】
また、本実施形態の蒸気発生器解体方法は、伝熱管5および下部胴2aを管板4から切り離す工程の後、管板4および水室鏡7を切り離す工程をさらに含む。
【0052】
この蒸気発生器解体方法によれば、最後に残された管板4および水室鏡7を切り離すことで蒸気発生器の全てを解体することになる。」
c 図面
図2
「
[図:0001410229000001.jpg]
」
図3~6
「
[図:0001410229000002.jpg]
」
図7~9
「
[図:0001410229000003.jpg]
」
図10~12
「
[図:0001410229000004.jpg]
」
(イ) 図2から見て取れる事項
上記(ア)aの【0028】の「伝熱管群5Aは、逆U字形状で上下方向に長尺とされた複数の伝熱管5からなる。各伝熱管5は、U字形状の円弧部を上方に向けて配置され、各端部が管板4の管穴4aに挿通固定されているとともに、中間部における長手方向の複数箇所が各管支持板6を介して管群外筒3に支持されている。」と記載を踏まえて、上記(ア)cの図2を見ると、図2の逆U字形状の伝熱管5のU字形状の円弧部の下方には、当該円弧部の両端からそれぞれ胴部2の下部胴2aの中心軸に対して平行に延びる直管部を有していることが見て取れる。
(ウ) 甲1発明の認定
上記(ア)及び(イ)によれば、甲1には、請求項1、2を引用する請求項5に特定される蒸気発生器解体方法について、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(なお、参考までに、認定の根拠とした箇所である甲1の段落等を括弧内に記載する。以下同じ。)。
「筒状の胴部の下側に管板が設けられ当該管板の下側に水室鏡が設けられており、前記胴部の下部胴内において逆U字形状に形成された多数の伝熱管が、管群外筒で囲まれた状態で上下複数の管支持板に挿通支持され、かつ各端部が前記管板に挿通固定されて前記水室鏡内で分けられた各水室にそれぞれ連通して設けられ、さらに、前記胴部の上部胴内において気水分離器および湿分分離器が設けられている蒸気発生器の解体方法において、
前記蒸気発生器を立てた状態で、前記気水分離器および湿分分離器を伴って前記上部胴を前記下部胴から切り離す工程と、
次に、前記伝熱管および前記下部胴を前記管板から切り離す工程と、を含む蒸気発生器解体方法であって、(ここまで【請求項1】)
前記伝熱管および前記下部胴を前記管板から切り離す工程では、
前記伝熱管のU字形状の円弧部を切断して取り除くとともに、前記下部胴の前記管板側の端部を周方向に断続して窓部を開放することであらわれた前記伝熱管を前記管板から切断する工程と、
次に、前記伝熱管を上方に引き抜く工程と、
次に、前記管群外筒および前記管支持板と前記下部胴とを前記管板から切り離す工程と、を含み、(ここまで【請求項2】)
原子炉格納容器に設置された既設の蒸気発生器を解体し、(【請求項5】)
蒸気発生器では、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、(【0025】)
前記逆U字形状の伝熱管のU字形状の円弧部の下方には、当該円弧部の両端からそれぞれ胴部の下部胴の中心軸に対して平行に延びる直管部を有する、(上記(イ))
蒸気発生器解体方法。」
イ 甲2に記載された事項及び甲2に記載された技術的事項の認定
(ア) 甲2に記載された事項
本件特許の出願前に発行された甲2には、以下の事項が記載されている。
a 特許請求の範囲の記載
「【特許請求の範囲】
1.管床(6)に開口するU形に湾曲された多数の伝熱管(4)を有する放射能で汚染された蒸気発生器(2)を廃棄処理する方法において、
a) 蒸気発生器(2)の管床(6)の上で伝熱管(4)を切断し、
b) 蒸気発生器(2)の外皮にそのドーム(12)の上部を切断して除去することにより開口を形成し、
c) 伝熱管(4)の湾曲部を摩擦結合でつかみ、
d) 伝熱管(4)を前記開口を通して引き抜く
ことを特徴とする放射能汚染蒸気発生器の廃棄処理方法。」(【特許請求の範囲】)
b 発明の詳細な説明の記載
「本発明は、管床に開口するU形に湾曲された多数の伝熱管を有する放射能で汚染された蒸気発生器を廃棄処理する方法とその装置に関する。
過去においては多数の原子力発電所では放射能で汚染された蒸気発生器は取り換えられていた。」(4頁3~6行)
「図1において運転を停止して水平に置かれた蒸気発生器2は、全長約40000mの約4000本のU形に湾曲された伝熱管4を有している。U形伝熱管4はその脚部の自由端が管床6に圧入および溶接され、スペーサ格子7で補助的に保持されている。
伝熱管4は組立開口10を通して挿入できる装置によって管床6の直ぐ上で一点鎖線で示した分離面8に沿って切断される。」(6頁下から3行~7頁3行)
c 図面
図1
「
[図:0001410229000005.jpg]
」
(イ) 甲2に記載された技術的事項の認定
上記(ア)によれば、甲2には、請求項1に特定される放射能汚染蒸気発生器の廃棄処理方法について、以下の技術的事項(以下「甲2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「管床に開口するU形に湾曲された多数の伝熱管を有する放射能で汚染された蒸気発生器を廃棄処理する方法において、(【特許請求の範囲】)
蒸気発生器は、U形に湾曲された伝熱管を有し、前記U形伝熱管はその脚部の自由端が管床に圧入および溶接されており、前記伝熱管は前記管床の直ぐ上での分離面に沿って切断されること。(6頁下から3行~7頁3行)」
ウ 甲3に記載された事項及び甲3に記載された技術的事項の認定
(ア) 甲3に記載された事項
本件特許の出願前に発行された甲3には、以下の事項が記載されている(日本語訳は申立人が提出したものを元に当審が付したものである。)。
a Introductionの記載
「Currently around 220 retired steam generators (SG) of western PWR type are in on-site storage at European Nuclear Plants (NPPs).」(1頁下から4行~下から3行)
(日本語訳:現在、欧州原子力発電所(NPPs)では、約220基の廃蒸気発生器(SG)が現地貯蔵されている。)
b Studsvik Experienceの記載
「The SG treatment setup, see Figure 3, incl. following main handlings steps below are applied during treatment of Steam Generators:
- Transportation, see Figure 4
- Disconnection of and segmentation of the steam dome
- Decontamination and segmentation of the water chambers
- Dealing with plugged tubes, see Figure 4
- Decontamination and segmentation of the tube bundle
- Segmentation of the outer shell
- Decontamination and segmentation of the tube plate
- Melting of the material from the steam generator, see Figure 4
- Free-release for further recycling
- Waste conditioning」(8頁下から14行~下から3行)
(日本語訳:図3を参照のSG処理設定は、蒸気発生器の処理中に適用され、以下の主な処理手順を含む:
-輸送、図4参照
-スチームドームの切断および分割
-水室の除染と細分化
-プラグされたチューブの処理、図4参照
-チューブバンドルの除染およびセグメント化
-外殻のセグメンテーション
-チューブプレートの除染とセグメント化
-蒸気発生器からの材料の溶解、図4参照
-再資源化のためのフリーリリース
-廃棄物処理)
c 図面
Figure3
「
[図:0001410229000006.jpg]
」
Figure4
「
[図:0001410229000007.jpg]
」
(イ) Figure3、4から見て取れる事項
Figure3には、「Tube pulling(チューブの引き抜き) Band saw(バンドソー)」との記載があり、Figure4には、「Tube pulling(チューブの引き抜き)」との記載がある。
(ウ) 甲3に記載された技術的事項の認定
上記(ア)及び(イ)によれば、甲3には、以下の技術的事項(以下「甲3に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「原子力発電所の廃蒸気発生器の処理手順はプラグされたチューブの処理を含み、(1頁下から4行~下から3行、8頁下から14行~下から9行)
当該プラグされたチューブの処理において、バンドソーが用いられること、及び、チューブの引き抜きが行われること。(Figure3, Figure4)」
エ 甲4に記載された事項及び甲4に記載された技術的事項の認定
(ア) 甲4に記載された事項
本件特許の出願前に発行された甲4には、以下の事項が記載されている。
a 特許請求の範囲の記載
「【請求項1】熱交換器胴内を横切る厚い管板の穴に挿入されて同穴内の部分で拡管固定されると共に、該管板の一端面側にシール溶接され、前記拡管固定部ではない部分の外面に軸方向突条を円周方向に隔たって有する伝熱管の除去方法であって、前記シール溶接部を切除し、前記管板の他端面側から同管板の外方へ離れた位置にある箇所にて該伝熱管を切断し、切断により前記管板の穴内に保持されて残った伝熱管部分のうち、前記突条のない突条間部分の伝熱管壁に、前記伝熱管の切断端に開放されるスロットを軸方向に形成し、前記拡管固定部を前記管板の穴の内部から加熱して弛緩し、しかる後に前記伝熱管部分を引き抜く伝熱管の除去方法。」(特許請求の範囲)
b 発明の詳細な説明の記載
「[従来の技術]
第5図に示すように、このような熱交換器等の伝熱管2は、厚い管板1内に挿入され、管板1の厚さの一部又は全厚にわたるその拡管部又は管端部3で、ローラ拡管や液圧拡管等の方法で管板1に固着されるのが典型的であり、また、管板1の一端面側で、即ち第5図において見て下側の端面でシール溶接部4により管板1にシール溶接され、管板1の両端面間に封じを造る構造になっている。この伝熱管2は、当業者周知のように、その構造的健全性を評価するなどの方法で、ある期間運転後に、サンプリングのため管板から抜き出されることがある。
管板1から伝熱管2を抜き出す従来の抜管方法の一例を第7図(a)~(d)に関連して説明すると、同抜管方法は、シール溶接部4の切除、伝熱管2の輪切り切断、拡管部3の案内面のTIGアーク加熱、伝熱管2の引き抜き等の一連の作業を伴う次のようなステップに従って行なわれていた。
即ち、第7図(a)に示す最初のステップでは、抜管対象の伝熱管2のシール溶接部4を例えばエンドミルのような回転型工具5で管板1の一端面側から切削し除去する。次に、第7図(b)に示すように、伝熱管2をそのサンプリング対象部分の直上の所定部分で、管の肉厚方向に輪切り状に切断する。この輪切り切断は、図示のような回転型切断工具6を使用して伝熱管2の内部から行なわれる。7が輪切り切断部である。しかる後、拡管部3の応力弛緩を行うため、第7図(c)に示すように、TIGアーク加熱トーチ8を管板1の一端面側から抜管対象部分に挿入して、伝熱管2の拡管部3の内面を双頭矢印で示すように軸方向に走査し、内面を軸方向に数条加熱熔融して、管板1と伝熱管2との間の固着力を弱める。最後に、第7図(d)に示すように、シール溶接部4を削除した伝熱管2の拡管部3に、ねじ状の刃形を持った切削工具9を回して管板1の内側からねじ込んだ後、この切削工具9を下方向に引っ張ることにより、部分的な抜管が終了する。」(2欄4行~3欄23行)
「この後、第7図(c)に示したように通常の抜管作業と同じく、管板1に対する伝熱管2の拡管部3を、管板1の内側からTIGアーク加熱により、伝熱管内面を軸方向に数条加熱熔融して、管板1と伝熱管2との間の固着力を弛緩させてから、第4図に示すように、ねじ刃形を持った第7図(d)の工具と同様の工具9を伝熱管2の下端にねじ込み、伝熱管2の抜管対象部分を矢印で示す方向に引き抜く。」(5欄7~14行)
c 図面
第1図~第4図
「
[図:0001410229000008.jpg]
」
(イ) 甲4に記載された技術的事項の認定
上記(ア)によれば、甲4には、請求項1に特定される伝熱管の除去方法について、以下の技術的事項(以下「甲4に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「熱交換器胴内を横切る厚い管板の穴に挿入されて同穴内の部分で拡管固定されると共に、該管板の一端面側にシール溶接され、前記拡管固定部ではない部分の外面に軸方向突条を円周方向に隔たって有する伝熱管の除去方法であって、前記シール溶接部を切除し、前記管板の他端面側から同管板の外方へ離れた位置にある箇所にて該伝熱管を切断し、切断により前記管板の穴内に保持されて残った伝熱管部分のうち、前記突条のない突条間部分の伝熱管壁に、前記伝熱管の切断端に開放されるスロットを軸方向に形成し、前記拡管固定部を前記管板の穴の内部から加熱して弛緩し、しかる後に前記伝熱管部分を引き抜く伝熱管の除去方法。(【請求項1】)」
(2) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 本件発明1の「伝熱管と、この伝熱管を固定する管板と、上記伝熱管及び管板を格納する円筒状の胴部とを備え、原子力施設で使用される熱交換器の解体方法」との発明特定事項について
a 甲1発明の「伝熱管」は、本件発明1の「伝熱管」に相当するから、本件発明1と甲1発明は、「伝熱管」を備える点で一致する。
b 甲1発明の「多数の伝熱管」は、「各端部が前記管板に挿通固定されて[いる]」から、甲1発明の「管板」は、本件発明1の「伝熱管を固定する管板」に相当する。よって、本件発明1と甲1発明は、「この伝熱管を固定する管板」を備える点で一致する。
c 甲1発明の「胴部」は「筒状の胴部」であって、「胴部の下部胴内において逆U字形状に形成された多数の伝熱管が、管群外筒で囲まれた状態で上下複数の管支持板に挿通支持され[ている]」から、伝熱管を格納する胴部であるといえる。よって、本件発明1と甲1発明は、「上記伝熱管を格納する円筒状の胴部」を備える点で共通する。
一方、甲1発明の「管板」は「筒状の胴部の下側に」「設けられ[ている]」から、「筒状の胴部」は「管板」を格納しているとはいえない点で、本件発明1と相違する。
d 甲1発明の「蒸気発生器」は、「蒸気発生器では、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ[る]」ものであるから、本件発明1の「熱交換器」に相当する。また、甲1発明は、「原子炉格納容器に設置された既設の蒸気発生器を解体」するものであるから、その「蒸気発生器」は、本件発明でいう「原子力施設で使用される」ものである。よって、本件発明1と甲1発明は、「原子力施設で使用される熱交換器の解体方法」である点で一致する。
e 以上によれば、上記発明特定事項に関して、本件発明1と甲1発明は、「伝熱管と、この伝熱管を固定する管板と、上記伝熱管を格納する円筒状の胴部とを備え、原子力施設で使用される熱交換器の解体方法」である点で共通する。
(イ) 本件発明1の「上記伝熱管が、円弧部と、この円弧部の両端からそれぞれ上記胴部の中心軸に対して平行に延び、上記管板をその表面から裏面に向かって貫通する直管部とを有し、上記直管部が、上記管板の裏面側で上記管板に溶接されており、」との発明特定事項について
a 甲1発明の「伝熱管のU字形状の円弧部」は、本件発明の「伝熱管」の「円弧部」に相当する。
b 甲1発明の「伝熱管のU字形状の円弧部の下方には、当該円弧部の両端からそれぞれ胴部の下部胴の中心軸に対して平行に延びる直管部を有[する]」ことは、本件発明の「この円弧部の両端からそれぞれ上記胴部の中心軸に対して平行に延び」「る直管部とを有[する]」ことに相当する。
c 甲1発明の「伝熱管」が、「直管部」を有し、「各端部が前記管板に挿通固定されて[いる]」ことは、本件発明の「管板をその表面から裏面に向かって貫通する直管部」を有することに相当する。
d 以上によれば、上記発明特定事項に関して、本件発明1と甲1発明は、「上記伝熱管が、円弧部と、この円弧部の両端からそれぞれ上記胴部の中心軸に対して平行に延び、上記管板をその表面から裏面に向かって貫通する直管部とを有し[ている]」点で共通する。
(ウ) 本件発明1の「上記伝熱管の円弧部を除去する工程」との発明特定事項について
甲1発明は「前記伝熱管のU字形状の円弧部を切断して取り除く」工程を含むから、本件発明1と甲1発明は、「上記伝熱管の円弧部を除去する工程」を備える点で一致する。
(エ) 本件発明1の「上記円弧部除去工程及び上記溶接部分除去工程後に、上記直管部を引き抜く工程」との発明特定事項について
甲1発明は、「前記伝熱管のU字形状の円弧部を切断して取り除くとともに、前記下部胴の前記管板側の端部を周方向に断続して窓部を開放することであらわれた前記伝熱管を前記管板から切断する工程と、次に、前記伝熱管を上方に引き抜く工程」を含むから、「伝熱管のU字形状の円弧部を切断して取り除く」「工程」の後に「伝熱管を上方に引き抜く工程」を含むものである。
したがって、上記発明特定事項に関して、本件発明1と甲1発明とは、「上記円弧部除去工程後に、上記直管部を引き抜く工程」を備える点で共通する。
(オ) 以上によれば、本件発明1と甲1発明は、次の点で一致する。
「伝熱管と、この伝熱管を固定する管板と、上記伝熱管を格納する円筒状の胴部とを備え、原子力施設で使用される熱交換器の解体方法であって、
上記伝熱管が、円弧部と、この円弧部の両端からそれぞれ上記胴部の中心軸に対して平行に延び、上記管板をその表面から裏面に向かって貫通する直管部とを有し、
上記伝熱管の円弧部を除去する工程と、
上記円弧部除去工程後に、上記直管部を引き抜く工程と
を備える熱交換器の解体方法。」である点。
一方、本件発明1と甲1発明は、次の点で相違する。
a 本件発明1は、「円筒状の胴部」が「管板を格納する」のに対して、甲1発明は、「筒状の胴部の下側に管板が設けられ[る]」ものであって、筒状の胴部が管板を格納するものではない点(以下「相違点1」という。)。
b 本件発明1は、「直管部が、上記管板の裏面側で上記管板に溶接されて」おり、「上記管板をその表面に平行に輪切りにすることで、上記直管部の上記管板への溶接部分を除去する工程」を備え、「上記直管部を引き抜く工程」が「上記溶接部分除去工程後」であるのに対して、甲1発明は、「伝熱管」の「各端部が前記管板に挿通固定されて[いる]」ものの、伝熱管が管板に溶接されているか明らかではなく、「前記伝熱管を前記管板から切断する工程」を含むものの、「管板をその表面に平行に輪切りにすることで、上記直管部の上記管板への溶接部分を除去する工程」工程を備えておらず、「前記伝熱管を上方に引き抜く工程」は、「前記伝熱管を前記管板から切断する工程」後ではあるものの、「上記溶接部分除去工程後」ではない点(以下「相違点2」という。)。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
(ア) 甲2について
甲1発明は、「伝熱管」の「各端部が前記管板に挿通固定されて[いる]」ものの、溶接されているか明らかではないところ、甲2には「管床に開口するU形に湾曲された多数の伝熱管を有する放射能で汚染された蒸気発生器を廃棄処理する方法において、蒸気発生器は、U形に湾曲された伝熱管を有し、前記U形伝熱管はその脚部の自由端が管床に圧入および溶接されており、前記伝熱管は前記管床の直ぐ上での分離面に沿って切断されること」(甲2に記載された技術的事項)が記載され、甲1発明においても、伝熱管を管板に挿通固定するに際して、圧入および溶接することは当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
しかしながら、甲1において甲2に記載された技術的事項を適用して、直管部が管板の裏面側で管板に溶接されたものとしても、「前記伝熱管を前記管板から切断する」ことを、「管板をその表面に平行に輪切りにすることで、直管部の管板への溶接部分を除去する」ように変更することは、甲2には記載も示唆もされておらず、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(イ) 甲3について
甲3には、「原子力発電所の廃蒸気発生器の処理手順としてプラグされたチューブの処理を含み、当該プラグされたチューブの処理において、バンドソーが用いられること、及び、チューブの引き抜きが行われること。」(甲3に記載された技術的事項)が記載されているが、甲3の記載及びFigure3、4を見ても、バンドソーが切断する対象及び箇所は明らかではなく、また、チューブの引き抜きがどのような手順で行われるのかも明らかではない。
特にFigure4の「チューブの引き抜き」の写真について検討すると、その黄色の部材が本件発明1でいう円筒状の胴部の一部であることは理解できるが、当該胴部が胴部のうちどの部分で、どちら向きなのかは明らかではなく、このため、同写真が何からチューブ(伝熱管)を引き抜く様子を示しているのか(特に、申立人が主張しているように、管板から引き抜く様子を示しているのかどうか)、明らかではない。また、写真中でバンドソーで切断される、あるいは切断された部分がどこなのかも判然としない。さらにいえば、甲3の記載及び同写真からは、本件発明1でいう伝熱管と管板が溶接されているのかどうか、溶接されているとしてどこで溶接されているのか、写真中でどこが伝熱管及び管板で、どこが溶接箇所に当たるのかも不明である。
以上を総合すれば、甲3に「管板をその表面に平行に輪切りにすることで、直管部の管板への溶接部分を除去する」ことが記載又は示唆されているとは到底いえない。
(ウ) 甲4について
甲4に記載された技術的事項も、「管板をその表面に平行に輪切りにすることで、直管部の管板への溶接部分を除去する」ことを開示するものではない。
(エ) 小括
したがって、甲1~4のいずれにも「管板をその表面に平行に輪切りにすることで、直管部の管板への溶接部分を除去する」ことは記載も示唆もされておらず、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易になし得たということはできない。
(オ) 申立人の主張
申立人は申立1及び申立2の特許異議申立書の双方において、甲3について、Figure4の「Tube pulling」という記載から、「管板から伝熱管が取り出せる」ことが示されていること、「plugged tubes」を除去するために、「Band saw」を使って管板を輪切りにして、プラグが除去された(当然、チューブと管板との溶接部も同時に除去されていることになる。)管板から「Tube pulling」していることが示されているといえると主張するが、上記(イ)で検討したとおりであって、申立人の甲3についての主張は採用できない。
(カ) 本件発明1についてのまとめ
以上検討のとおり、甲1発明において相違点2に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(キ) 付言
前記第4の3で説示したとおり甲6は証拠として採用できないが、当合議体は、甲6にも「管板をその表面に平行に輪切りにすることで、直管部の管板への溶接部分を除去する」ことは開示されていないと判断することを付言する。
すなわち、甲6には、「水室と管板の部品の分割」に際して、「管板までの水室部分は、バンドソーで4~5分割に製材される。」及び「管板は、厚さ数センチから数十センチのディスクに分割される。ディスクの厚さと切断のタイミングは、チューブシートの技術的状況に影響されるさまざまな段階を最適化する過程で決定される。」と記載されるにとどまり、直管部の管板への溶接部分を除去するために、管板をその表面に平行に輪切りにし、その後直管部を引き抜くことは記載も示唆もされていない。
(3) 本件発明2~7に係る発明について
本件発明2~7は、本件発明に対して、さらに本件発明2~7それぞれで特定する技術的事項を追加したものである。よって、上記(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明2~7は、甲1発明及び甲2~4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 申立理由2について
(1) 明確性要件についての当審の判断
本件特許の請求項3には、「上記溶接部分処理工程後に、上記直管部分の拡径部分を処理する工程をさらに備える」と記載されているが、請求項3がその記載を引用する請求項1、2には、「溶接部分処理工程」が記載されていない。一方、請求項1には、「上記管板をその表面に平行に輪切りにすることで、上記直管部の上記管板への溶接部分を除去する工程」と記載され、請求項1には当該工程を指すものとして、「上記溶接部分除去工程」と記載されている。
そして、請求項1、2には、「溶接部分除去工程」である「上記管板をその表面に平行に輪切りにすることで、上記直管部の上記管板への溶接部分を除去する工程」以外には、「上記溶接部分処理工程」に該当し得る工程は存在せず、当業者は、「上記溶接部分処理工程」が「上記溶接部分除去工程」の明らかな誤記であると認識できるといえる。
このことは、本件特許の明細書に、「<拡径部分処理工程>拡径部分処理工程S3では、溶接部分除去工程S2後に、直管部12の拡径部分12aを処理する。拡径部分12aを処理することなく、直管部12を引き抜くことも可能であるが、図3に示す直管部12のように施工時の拡管加工等により伝熱管10が管板20に強く密着している場合、溶接部分21を除去するのみでは、容易に直管部12の引き抜きを行えないおそれがある。このように直管部12が管板20の貫通部分で拡径されて管板20に密着されている場合にあっては、溶接部分除去工程S2後に、直管部12の拡径部分12aを処理する工程を備えることで、容易に直管部12を引き抜くことが可能となる。」(【0042】・【0043】)と記載されているように、拡径部分を処理する工程が溶接部分除去工程後に行われると記載されていることからも裏付けられる。
したがって、請求項3の「上記溶接部分処理工程」は、「上記溶接部除去工程」の誤記であることは明らかであり、このことをもって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに特許を受けようとする発明が明確ではないとまではいえない。
請求項3の記載を引用する請求項4~7も同様である。
(2) 申立人の主張
申立人は、本件特許の請求項3には、「上記溶接部分処理工程」と記載されているが、請求項3が引用する請求項1、及び2には、当該「上記溶接部分処理工程」の「上記」を指し示す「溶接部分処理工程」との文言が記載されておらず、また、「溶接部分処理工程」が、どのような工程であるのかその意味も不明であるから、本件特許の上記請求項3の記載は、本件特許発明3を明確に記載したものではなく、本件特許の請求項4~7についても、同様のことがいえる旨主張する。
しかしながら、上記(1)で説示したとおりであって、請求項3の「上記溶接部分処理工程」との記載は、当該記載をもって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに特許を受けようとする発明が明確ではないとまではいえないから、上記申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700942