2024-700314
包装体、包装袋およびそれらのマーキング方法
- 審判番号
- 2024-700314
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-111485外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7370692
- 請求日
- 2024年04月04日
- 審決日
- 2024年08月02日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】フジモリプラケミカル株式会社
- 【権利者代理人】井上 敬也
- 【異議申立人】鈴木 多香子
- 分類
- P1651.121-Y (B65D) / P1651.537-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
特許第7370692号(以下「本件特許」という。)の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成30年6月11日に出願され、令和5年10月20日にその特許権の設定登録がされ、令和5年10月30日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1、2に係る特許に対し、令和6年4月4日に特許異議申立人鈴木多香子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1」等という。まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】各種の物品を包装・収納するための合成樹脂フィルムからなる包装袋であって、前記合成樹脂フィルムが、二軸延伸ナイロンフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを、アルミニウム蒸着層が外側になるように積層されており、さらに、そのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる金属蒸着層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、ポリエチレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、あるいは、続きを表示(全17行)二軸延伸PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、二軸延伸ナイロンフィルムを積層し、さらに、そのナイロンフィルム上に、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、もしくは、二軸延伸PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、、エステル系の接着剤を介在させて、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルムであり、前記インク層が、ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂からなるバインダー中に、二酸化チタンを顔料として添加したものであり、紫外線レーザーによるマーキング処理が施されており、かつ、そのマーキング処理が、前記基材層の外側から紫外線レーザーを照射することによって前記インク層を変化させたものであることを特徴とするガスバリア性を有する包装袋。【請求項2】各種の物品を包装・収納するための合成樹脂フィルムからなる包装袋のマーキング方法であって、前記合成樹脂フィルムが、二軸延伸ナイロンフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを、アルミニウム蒸着層が外側になるように積層されており、さらに、そのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる金属蒸着層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、ポリエチレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、あるいは、二軸延伸PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、二軸延伸ナイロンフィルムを積層し、さらに、そのナイロンフィルム上に、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、もしくは、二軸延伸PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、、エステル系の接着剤を介在させて、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルムであり、前記インク層が、ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂からなるバインダー中に、二酸化チタンを顔料として添加したものであり、その合成樹脂フィルムの前記基材層の外側から紫外線レーザーを照射することによって前記インク層を変化させることによってマーキングを行うことを特徴とするガスバリア性を有する包装袋のマーキング方法。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、甲第1号証~甲第7号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の理由1~4を申立てている。
1 申立理由1(甲1に基づく進歩性)
本件発明1、2は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1、2に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 申立理由2(甲5に基づく進歩性)
本件発明1、2は、甲5に記載された発明及び甲1~4、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1、2に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
3 申立理由3(明確性)
本件特許は、請求項1、2の記載が次の点で明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するので、取り消すべきものである。
(1)本件の請求項1は、「ガスバリア性を有する包装袋」(物)について特定するものであるが、「ガスバリア性を有する包装袋」(物)を製造する方法(製造方法)による特定、すなわち、「紫外線レーザーによるマーキング処理が施されており」かつ「そのマーキング処理が、前記基材層の外側から紫外線レーザーを照射することによって前記インク層を変化させたものである」との特定を含むものであり、本件の請求項1で特定する権利範囲が明確であるとはいえない。
(2)本件の請求項1、2において特定する「インク層を変化」とはインク層の何が変化したものであるのか明確ではなく、本件の請求項1、2で特定する権利範囲が明確であるとはいえない。
4 申立理由4(サポート要件)
本件特許は、請求項1、2の記載が次の点で発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するので、取り消すべきものである。
本件の請求項1、2では「インク層を変化」させたことが特定されているが、インク層の外観が変化しなければマーキングを視認することはできない。すると、本件の請求項1、2は、本件の「マーキング部分が美麗である・・・包装袋およびそれらのマーキング方法を提供する」(【0005】)という課題を達成できない態様も含まれることとなり、サポート要件を満たしていない。
第4 各甲号証
申立人が、特許異議申立書とともに提出した甲第1号証~甲第7号証(以下「甲1」等という。)は、次の通りである。
1 甲1について
甲1の【0001】、【0020】、【0027】、【0029】、【0050】、【0054】、【0056】、図3の記載、特に実施例1~3について着目すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「包装用積層レトルト材を用いた袋状包装体であって(【0054】)、包装用積層レトルト材が、厚さ12μmのPETフィルムの一方の面に、色インキを用いてグラビアロールコート法により色インキの絵柄印刷層を塗工し、その上に、インキ組成の酸化チタン及びウレタン樹脂を混合してなるウレタン系白色インキをそれぞれ用いてグラビアロールコート法により白色インキ下地印刷層を全面に塗工し、グラビア印刷層を設け、次いで、該印刷層上に2液硬化型のポリエステル系接着剤(東洋モートン株式会社製:主剤TM556/硬化剤CAT5)を用いてドライラミネーション法により、厚さが9μmのアルミ箔を、次いで、2液硬化型のポリエステルポリウレタン系接着剤(ロックペイント株式会社製アドロック:主剤RU004/硬化剤H1)を用いてドライラミネーション法により、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド(ナイロン)フィルム及びシーラント層として厚さ50μmのポリプロピレン樹脂を、それぞれ、順次積層し、これにより得た、PETフィルム/絵柄色インキ印刷層/白色インキ下地印刷層/接着剤層/AL(バリア層)/接着剤層/二軸延伸ポリアミドフィルム/接着剤層/無延伸ポリプロピレンシーラント層の層構成を有する包装用積層レトルト材であり(【0056】)、前記包装用積層レトルト材は、基材層側からレーザー光が照射されることにより印字されてなる(【0050】)、袋状包装体。」
2 甲5について
甲5の請求項1~3、6、12、【0001】の記載を参酌すると、甲5には次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されている。
「レーザー光照射によって図形や文字が形成されるレーザー印刷用積層体であって、外層側の透明基材フィルムから内層側に向けて、少なくとも、酸化チタン顔料を含有する白色インキ層が部分的に設けられており、その内層側に熱接着性樹脂層が設けられており、さらに内層側にアルミニウム層が設けられており、少なくとも最内層に、ヒートシール層が設けられているレーザー印刷用積層体において、前記白色インキ層を有する積層部に、透明基材フィルムの外層面側からYVO4レーザー光が照射されることにより、前記白色インキ層に黒化した意匠が形成されたレーザー印刷付き積層体を形成し、前記レーザー印刷付き積層体の前記最内層のヒートシール層同士を対向させ、開口部となる部分以外の外周をヒートシールして、袋状に形成した、レーザー印刷付き袋体。」
3 甲3、甲4の記載
(1)甲3には以下の記載がある(下線は当審が付した。「・・・」は文章の省略を示す。以下同様。)。
「【0001】【産業上の利用分野】本願発明は、目盛、模様、文字等を表示した弗素樹脂被覆物及びその製造方法に関するものである。詳しくはそれらに於いて、目盛、模様、文字等を表示するために用いる弗素樹脂の成分及び表示方法に検討を加えたものに関する。【0002】【従来の技術】例えば、炊飯器内釜等弗素樹脂被覆物に炊飯用等の目盛その他の表示が行われている。・・・」
「【0034】本願発明で用いるエキシマレーザは、真空紫外(約100nm)~可視(数百nm)までのいずれの波長のレーザでもよいが、弗素樹脂を透過し易く(損傷を与えにくく)効率的にマーキングできるという観点から200nm以上、特に好ましくは300nm以上の紫外域を用いるのが好ましい。また、波長の上限としては、本願発明で用いる代表的な金属酸化物である酸化チタン等の吸収が大きいという観点から、410nm以下が好ましい。」
(2)甲4には以下の記載がある。
「【0001】本発明は、医薬品や食品等の経口投与用組成物の表面に、識別性マークを施す方法に関する。」
「【0024】(レーザー波長)また、本発明に用いるレーザーは、その波長が200~1100nmを有するものを用いることができ、好ましくは1060~1064nm、527~532nm、351~355nm、263~266nm又は210~216nmの波長であり、より好ましくは527~532nm、351~355nm又は263~266nmの波長である。」
第5 当審の判断
事案に鑑み、記載要件から判断する。
1 明確性について
(1)請求項1には、申立人が主張するように、「紫外線レーザーによるマーキング処理が施されており」かつ「基材層の外側から紫外線レーザーを照射することによって前記インク層を変化させたものである」という製造方法による特定はあるものの、これらの特定はそれぞれ、紫外線レーザーによりマーキング処理が施された「状態」、及び、下記(2)で述べるようにインク層が変化した「状態」を示したものであることは明らかである。また、本件発明1、2の層構成において、アルミニウムを含む層側から紫外線レーザーを照射してもインク層まで届かないことは技術常識からみて明らかであることからすると、アルミニウムを含む層と反対側、すなわち「基材層の外側から」レーザーを照射していることは明らかである。
そうすると、当該製造方法に係る事項は、本件発明1を明確でないものとするような事項ではなく、請求項1の記載は明確である。
(2)「インク層を変化」とは、レーザー照射によりインク層のインクが溶融・昇華あるいはインク内の感熱発色性の染料等が発色していることであることは、マーキング方法の分野における技術常識から明らかであり、請求項1、2の「インク層を変化」はそれらの変化の何れも含むものであると理解できる。そして、本件明細書には「インキ層を変化させる(溶融、昇華、蒸発、発色等させる)・・・インキ層を変化させる(消失あるいは発色させる)」(【0023】)との記載があり、上記理解と整合する。
そうすると、請求項1、2の記載は明確である。
2 サポート要件について
上記1(2)で検討したように、インク層の変化によりマーキング外観が変化していることは明らかであり、本件明細書の「基材層の外側から紫外線レーザーを照射してインキ層を変化させる(消失あるいは発色させる)ことによってマーキング処理を施すと、マーキング部分がより明瞭で美麗なものとなり、マーキング部分が取れにくいものとなるので好ましい。」(【0023】)との記載も踏まえると、本件発明1、2により、「マーキング部分が美麗である・・・包装袋およびそれらのマーキング方法を提供する」(【0005】)という課題が解決できることを当業者であれば理解できる。
よって、請求項1、2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
3 進歩性について
事案に鑑み、本件発明1のうち、「二軸延伸ナイロンフィルムからなる基材層」を有する態様を「本件発明1-1」とし、「二軸延伸PETフィルムからなる基材層」及び「二軸延伸ナイロンフィルム」を有する態様を「本件発明1-2」とし、「二軸延伸PETフィルムからなる基材層」を有するとともに「二軸延伸ナイロンフィルム」を有することが特定されていない態様を「本件発明1-3」とし、それらを総称して「本件発明1」として以下対比する。本件発明2についても同様である。
(1)甲1を主引例とする理由について
ア 本件発明1について
(ア)対比
甲1発明の「厚さ12μmのPETフィルム」と本件発明1-2及び1-3の「二軸延伸PETフィルムからなる基材層」は、「PETフィルム」である限りにおいて一致する。
甲1発明の「包装用積層レトルト材」、「印字されてなる」「包装用積層レトルト材」、「2液硬化型のポリエステル系接着剤(東洋モートン株式会社製:主剤TM556/硬化剤CAT5)」、「厚さが9μmのアルミ箔」、「2液硬化型のポリエステルポリウレタン系接着剤(ロックペイント株式会社製アドロック:主剤RU004/硬化剤H1)」はそれぞれ、本件発明1-2及び1-3の「積層フィルム」、「合成樹脂フィルム」、1つ目の「エステル系の接着剤」、「アルミニウム箔」、2つ目の「エステル系の接着剤」に相当する。
甲1の「ガスバリア性層は、アルミニウム箔であって」(請求項4)との記載を踏まえると甲1発明の「アルミ箔」はガスバリア性層であるといえるから、甲1発明の「袋状包装体」は、本件発明1-2及び1-3の「各種の物品を包装・収納するための」「ガスバリア性を有する包装袋」に相当する。
甲1発明の「シーラント層として厚さ50μmのポリプロピレン樹脂」は、シーラント層は無延伸である場合が多いという技術常識を踏まえると、本件発明1-2及び1-3の「無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層」に相当する。
甲1発明の「色インキを用いてグラビアロールコート法により色インキの絵柄印刷層を塗工し、その上に、インキ組成の酸化チタン及びウレタン樹脂を混合してなるウレタン系白色インキをそれぞれ用いてグラビアロールコート法により白色インキ下地印刷層を全面に塗工し」て「設け」た「グラビア印刷層」と、本件発明1の「ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂からなるバインダー中に、二酸化チタンを顔料として添加したものであ」る「インク層」は、二酸化チタン(TiO2)が一般に酸化チタンとも呼称されることを踏まえると、「バインダー中に、二酸化チタンを顔料として添加したものであるインク層」である限りにおいて一致する。
甲1発明の「厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド(ナイロン)フィルム」は、本件発明1-2の「二軸延伸ナイロンフィルム」に相当する。
甲1発明の「基材層側からレーザー光が照射されることにより印字されてなる」態様と、本件発明1の「紫外線レーザーによるマーキング処理が施されており、かつ、そのマーキング処理が、前記基材層の外側から紫外線レーザーを照射することによって前記インク層を変化させたものである」態様は、「レーザーによるマーキング処理が施されており、かつ、そのマーキング処理が、前記基材層の外側からレーザーを照射することによって前記インク層を変化させたものである」態様である限りにおいて一致する。
以上を総合すると、本件発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、相違する。
[一致点1]
「各種の物品を包装・収納するための合成樹脂フィルムからなる包装袋であって、前記合成樹脂フィルムが、PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、二軸延伸ナイロンフィルムを積層し、さらに、そのナイロンフィルム上に、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、もしくは、PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルムであり、前記インク層が、バインダー中に、二酸化チタンを顔料として添加したものであり、レーザーによるマーキング処理が施されており、かつ、そのマーキング処理が、前記基材層の外側からレーザーを照射することによって前記インク層を変化させたものであるガスバリア性を有する包装袋。」
[相違点1-1]
PETフィルムについて、本件発明1-2及び1-3では、「二軸延伸PETフィルムからなる基材層」であるのに対し、甲1発明では、「厚さ12μmのPETフィルム」であって延伸の有無が特定されていない点。
[相違点1-2]
インク層のバインダーについて、本件発明1では、「ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂」であるのに対し、甲1発明では、「ウレタン樹脂」である点。
[相違点1-3]
マーキング処理に用いるレーザーが、本件発明1では、「紫外線レーザー」であるのに対し、甲1発明では、「レーザー」の種類が特定されていない点。
(イ)判断
事案に鑑み相違点1-3について検討する。
甲1の「YAGまたはYVO4レーザーを、基材層側から照射することにより、・・・レーザー出力を高める必要なしに、かつ下地としての白色インキ下地とのコントラストにより基材層側からの視認性に優れたレーザー印字画像を鮮明に形成することができる。」(【0013】)、「印字は、YAG(イットリウム(Y)・アルミニウム(A)・ガーネット(G))レーザー光線(波長=1.064μm)、または、YVO4(イットリウム・バナデート)レーザー光線(波長=1.064μm)を用いて行うことが好ましい。これらのレーザーは、透明体を透過する性質を有し、その性質を利用し、さらに、印字時の煙等の発生が抑えられ、また、発色濃度やフィルムに与える影響等を調整することができる。その結果、レーザー印字画像を形成しても穴あき等がない極めて鮮明なレーザー印字画像を形成することができる。・・・レーザー光が低出力でも白色インキの印刷用下地層にまで到達し、印字画像を形成する邪魔をすることなく、また、フィルムに与えるダメージを最小限に抑えつつ」(【0050】)との記載を踏まえると、甲1発明は、透明体に対する透過率の高い波長のレーザーを用いることで、レーザー光が低出力でも印刷用下地層まで到達しフィルムに与えるダメージを抑えるという技術思想に基づくものである。
他方、本件発明は、「各素材による吸収率が非常に高い紫外線レーザーによってマーキング時に熱ストレスをかけないため、マーキング外観をきわめて良好なものとすることができる。」(【0013】)との技術思想に基づくものである。
以上のとおり、甲1発明と本件発明は、フィルムに熱ストレスをかけないという技術思想は共通するものの、その達成手段が異なるものである。
そうすると、本件特許に係る出願時において、マーキング処理に紫外線レーザーを用いること自体が周知技術であったとしても、甲1発明において、マーキング処理に用いるレーザーを「YAGまたはYVO4レーザー」から、透明基材への吸収率が高い(透過率が低い)ことが技術常識である紫外線レーザーに変更する動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。
したがって、甲1発明において、相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、甲1発明の技術的特徴は白色インキ層に対してレーザーを照射することであり、レーザーの波長領域自体に特徴はないこと、及び、甲3及び甲4に記載されたレーザーマーキングを紫外線レーザーで行うことが周知技術であったことをもって、甲1発明においてマーキング処理に用いるレーザーを紫外線レーザーに変更することは容易であった旨主張する(申立書90~94ページ)。
しかしながら、上記(イ)で示したように、甲1にはYAGレーザー等が好適である旨の記載があるし、甲1発明は包装用積層レトルト材へのレーザーマーキングに関するものであるところ、甲3は炊飯器の内釜のような弗素樹脂被覆物へのマーキング技術に関するものであり、甲4は医薬品や食品等の経口投与組成物の表面へのマーキング技術に関するものであり、甲1発明と技術分野が同一とまではいえないから、甲3及び甲4に記載された紫外線レーザーによるマーキング技術を甲1発明に適用する動機付けがあるとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(エ)したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2について
本件発明2は、物の発明である本件発明1を方法の発明として表現したものに相当するから、本件発明2と甲1発明との相違点及びその判断は、上記アと同様である。
ウ 小括
上記ア及びイのとおりであるから、本件発明1、2は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)甲5を主引例とする理由について
ア 本件発明1について
(ア)対比
甲5発明の「レーザー印刷用積層体」、「レーザー印刷付き積層体」、はそれぞれ、本件発明1の「積層フィルム」、「合成樹脂フィルム」に相当する。
甲5の【0041】~【0042】の記載を踏まえると、甲5発明の「アルミニウム層」はガスバリア性層であるといえるから、甲5発明の「レーザー印刷付き袋体」は、本件発明1の「各種の物品を包装・収納するための」「ガスバリア性を有する包装袋」に相当する。
甲5発明の「透明基材フィルム」と本件発明1-1の「二軸延伸ナイロンフィルムからなる基材層」は、「フィルムからなる基材層」である限りにおいて一致する。
甲5発明の「酸化チタン顔料を含有する白色インキ層」と本件発明1-1の「前記インク層が、ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂からなるバインダー中に、二酸化チタンを顔料として添加したものであ」る「インク層」は、二酸化チタン(TiO2)が一般に酸化チタンとも呼称されることを踏まえると、「バインダー中に、二酸化チタンを顔料として添加したものであ」る「インク層」である限りにおいて一致する。
甲5発明の「熱接着性樹脂層」と本件発明1-1の1つ目の「エステル系の接着剤」は「接着剤」である限りにおいて一致する。
甲5発明の「アルミニウム層」と本件発明1-1の「アルミニウム蒸着層が外側になるように積層されて」いる「アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、「アルミニウムを含む層」である限りにおいて一致する。
甲5発明の「ヒートシール層」と本件発明1-1の「ポリエチレンフィルムからなる熱接着層」は「熱接着層」である限りにおいて一致する。
甲5発明の「前記白色インキ層を有する積層部に、透明基材フィルムの外層面側からYVO4レーザー光が照射されることにより、前記白色インキ層に黒化した意匠が形成された」態様と、本件発明1の「紫外線レーザーによるマーキング処理が施されており、かつ、そのマーキング処理が、前記基材層の外側から紫外線レーザーを照射することによって前記インク層を変化させたものである」態様は、「レーザーによるマーキング処理が施されており、かつ、そのマーキング処理が、前記基材層の外側からレーザーを照射することによって前記インク層を変化させたものである」態様である限りにおいて一致する。
以上を総合すると、本件発明1と甲5発明は、以下の点で一致し、相違する。
[一致点5]
「各種の物品を包装・収納するための合成樹脂フィルムからなる包装袋であって、前記合成樹脂フィルムが、フィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、接着剤を介在させて、アルミニウムを含む層が積層されており、さらに、そのアルミニウムを含む層の上に、熱接着層を積層してなる積層フィルムであり、前記インク層が、バインダー中に、二酸化チタンを顔料として添加したものであり、レーザーによるマーキング処理が施されており、かつ、そのマーキング処理が、前記基材層の外側からレーザーを照射することによって前記インク層を変化させたものであるガスバリア性を有する包装袋。」
[相違点5-1]
フィルムからなる基材層が、本件発明1-1では、「二軸延伸ナイロンフィルムからなる基材層」であるのに対し、甲5発明では、「透明基材フィルム」である点。
[相違点5-2]
インク層のバインダーについて、本件発明1-1では、「ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂」であるのに対し、
甲5発明では、バインダーの成分が不明である点。
[相違点5-3]
接着剤について、本件発明1-1では「エステル系の接着剤」であるのに対し、甲5発明では、「接着剤」である点。
[相違点5-4]
アルミニウムを含む層について、本件発明1-1は「アルミニウム蒸着層が外側になるように積層されて」いる「アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム」であるのに対し、甲5発明では「アルミニウム層」である点。
[相違点5-5]
本件発明1-1では、金属蒸着層と熱接着層の間に、「エステル系の接着剤を介在させて」いるのに対し、甲5発明では、アルミニウム層とヒートシール層の間に接着剤層を介在させているか不明である点。
[相違点5-6]
熱接着層について、本件発明1-1では「ポリエチレンフィルムからなる熱接着層」であるのに対し、甲5発明では「ヒートシール層」である点。
[相違点5-7]
マーキング処理に用いるレーザーが、本件発明1-1では、「紫外線レーザー」によるものであるのに対し、甲5発明では、「YVO4レーザー光」によるものである点。
(イ)判断
事案に鑑み相違点5-7について検討する。
甲5には、「レーザー光の種類は特に問わないが、エネルギー量の微細なコントロールが可能で、かつ、透明基材フィルム2に対する透過率が高いYVO4レーザーを好適に用いることができる。」(【0058】)との記載がある。
そして、この記載を踏まえると、本件特許に係る出願時において、マーキング処理に紫外線レーザーを用いることが周知技術であったとしても、甲5発明において、マーキング処理に用いるレーザーを「YVO4レーザー光」から、透明基材への吸収率が高く透過率が低いことが技術常識である紫外線レーザーに変更する動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。
したがって、甲5発明において、相違点5-7に係る本件発明1-1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、甲5には「本発明で使用するレーザー光の種類は特に問わないが」(【0058】)との記載があること、及び、甲3及び甲4に記載されたレーザーマーキングを紫外線レーザーで行うことが周知技術であったことをもって、甲5発明においてマーキング処理に用いるレーザーを紫外線レーザーに変更することは容易であった旨主張する(申立書111~115ページ)。
しかしながら、上記(イ)で示したように、甲5にはYVO4レーザーが好適である旨の記載があるし、甲5発明は粘着ラベルや包装袋へのレーザーマーキングに関するものであるところ、甲3は炊飯器の内窯のような弗素樹脂被覆物へのマーキング技術に関するものであり、甲4は医薬品や食品等の経口投与組成物の表面へのマーキング技術に関するものであり、甲5発明と技術分野が同一とまではいえないから、甲3及び甲4に記載された紫外線レーザーによるマーキング技術を甲5発明に適用する動機付けがあるとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(エ)したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲5発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2について
本件発明2は、物の発明である本件発明1を方法の発明として表現したものに相当するから、本件発明2と甲5発明との相違点及びその判断は、上記アと同様である。
ウ 小括
上記ア及びイのとおりであるから、本件発明1、2は、甲5に記載された発明及び甲1~4、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1、2に係る特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700314