特許異議申立
2024-700305
ヒートシール紙
- 審判番号
- 2024-700305
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-081130
- 登録番号
- 7371665
- 請求日
- 2024年04月02日
- 審決日
- 2025年04月17日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】王子ホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
- 【異議申立人】堀 恵子
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 長清 吉範
- 分類
- P1651.121-YAA(D21H) / P1651.537-YAA(D21H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7371665号発明「ヒートシール紙」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7371665号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7371665号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7371665号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和3年5月12日の出願であって、令和5年10月23日にその特許権の設定登録がされ、令和5年10月31日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年4月 2日 :特許異議申立人堀恵子(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て
令和6年7月22日付け:取消理由通知書
令和6年9月17日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和7年1月16日付け:取消理由通知書
令和7年3月19日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
なお、令和6年9月17日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、当審から令和6年10月17日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったが、当該期間内に申立人からは応答がなかった。
第2 本件訂正請求
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された「紙基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層のヒートシール層を有し、」を、
「紙基材の片面に、少なくとも1層のヒートシール層を有し、」に訂正し、
同じく「前記ヒートシール層が、アスペクト比20以上であり、かつ平均粒径が3μm以上10μm以下の顔料およびヒートシール性樹脂を含み、」を、
「前記ヒートシール層が、アスペクト比20以上であり、かつ平均粒径が3μm以上10μm以下の顔料、ヒートシール性樹脂、およびシリコーン系レベリング剤を含み、」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項3に記載された「前記ヒートシール層が、シリコーン系レベリング剤をさらに含有する、」を、
「前記ヒートシール層が、シリコーン系レベリング剤を0.1質量%以上3質量%以下含有する、」に訂正する。(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4、5も同様に訂正する。)
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~5は、請求項2~5が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~5〕について請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「ヒートシール層」が設けられる面、及び「ヒートシール層」が「シリコーン系レベリング剤」を含む点を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0012】、【0037】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項3の「ヒートシール層」の「シリコーン系レベリング剤」の含有量を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2は、本件特許の明細書の【0037】、【0039】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、本件訂正前の請求項3に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求が認められたことから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~5を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~5の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
紙基材の片面に、少なくとも1層のヒートシール層を有し、
前記ヒートシール層が、アスペクト比20以上であり、かつ平均粒径が3μm以上10μm以下の顔料、ヒートシール性樹脂、およびシリコーン系レベリング剤を含み、
前記ヒートシール性樹脂が、オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体を含み、
前記ヒートシール層中、前記顔料の配合量が、15質量%以上50質量%以下であり、
前記ヒートシール層が、ワックスをさらに含有し、前記ワックスが、パラフィンワックスおよびカルナバワックスよりなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記ヒートシール層同士をシール圧力0.2MPa、シール温度140℃、シール時間1秒間の条件でヒートシールしたときの剥離強度が3N/15mm以上であり、王研式透気抵抗度が2000秒以上であり、両面の撥水度がR6以上である、ヒートシール紙。
【請求項2】
前記ヒートシール層中、前記ヒートシール性樹脂の配合量が40質量%以上85質量%以下である、請求項1に記載のヒートシール紙。
【請求項3】
前記ヒートシール層が、シリコーン系レベリング剤を0.1質量%以上3質量%以下含有する、請求項1または2に記載のヒートシール紙。
【請求項4】
前記ヒートシール層の塗工量が2g/m2以上15g/m2以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒートシール紙。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のヒートシール紙を用いた包装袋。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要
1 令和6年7月22日付け取消理由通知書における取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審が令和6年7月22日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
なお、取消理由1、取消理由2は、申立人による特許異議申立理由と同主旨である。
取消理由1(進歩性)
請求項1~5に係る発明は、下記引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由2(サポート要件)
ヒートシール層にレベリング剤を配合することは、本件課題を解決するための必須の構成であるところ、請求項1、2、4、5に係る発明は、ヒートシール層にレベリング剤を含有することを特定していないから、本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないため、請求項1、2、4、5に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
<引用文献一覧>
引用文献1:特開2020-117311号公報(申立人が提出した甲第1号証)
引用文献2:特開2002-13095号公報(申立人が提出した甲第2号証)
引用文献3:阪谷泰一、“ナノコンポジットガスバリア材料”、[online]、2007年、公益社団法人 化学工学会(SCEJ)、インターネット<URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/scej/2007/0/2007_0_501/_pdf>(申立人が提出した甲第3号証)
引用文献4:特開平10-249978号公報(申立人が提出した甲第4号証)
引用文献5:特開平9-31889号公報(申立人が提出した甲第5号証)
引用文献6:特開2019-119060号公報(申立人が提出した甲第6号証)
2 令和7年1月16日付け取消理由通知書における取消理由の概要
本件訂正前の請求項3~5に係る特許に対して、当審が令和7年1月16日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由3(明確性)
請求項3における「前記ヒートシール層が、シリコーン系レベリング剤を0.1質量%以上3質量以下含有する」の記載について、ヒートシール層が、シリコーン系レベリング剤を3質量以下含有するの意味が不明であるから、本件特許の請求項3~5に係る発明は明確でない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しないため、請求項3~5に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 当審の判断
1 取消理由3(明確性)について
本件訂正により、請求項3における「3質量以下」の記載が「3質量%以下」に訂正されたことにより、ヒートシール層におけるシリコーン系レベリング剤の含有量が明確となった。
したがって、取消理由3は解消した。
2 取消理由1(進歩性)について
(1)引用文献に記載された発明等
ア 引用文献に記載された事項
引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与し、「・・・」は文章の省略を表す。)。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、プラスチックの使用量を低減することができる包装用紙を提供することにある。
・・・
【0008】
本発明においては、前記ヒートシール層が少なくとも一方の面に2層以上で形成されていてもよい。このような構成とすることで、透気度が高く、撥水性と撥油性を有する包装用紙を得ることができる。」
(イ)「【発明を実施するための形態】
・・・
【0016】
本実施形態において、アイオノマーとは、金属イオンによる凝集力を利用し高分子を凝集体とした合成樹脂の総称であり、アクリル酸またはメタクリル酸をエチレンなどと組み合わせた樹脂である。すなわち、エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、エチレン・アクリル系共重合物の金属塩、エチレン・ウレタン系共重合物の金属塩、エチレン・フッ素系高分子共重合物の金属塩、などは全てアイオノマーと呼ばれる。塩を形成する金属としては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、具体的には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛の各イオンなどである。本発明においては、前記アイオノマーがエチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩である自己乳化型エマルジョンであることが好ましい。ヒートシール層の塗工量が比較的少なくとも、十分なヒートシール強度を有するヒートシール層を設けることができる。
【0017】
本実施形態においては、紙基材の少なくとも一方の面に、アイオノマーエマルジョンを含有するヒートシール層用塗工液を塗工し、乾燥することでヒートシール層を設けることができる。アイオノマーエマルジョンを用いることにより、塗工量を比較的低くコントロールすることが可能であり、更に水系のアイオノマーエマルジョンを用いることによりVOC排出が無くなり自然環境に対する負荷を小さくすることができる。ヒートシール層の塗工量は、紙基材の片面あたり、固形分換算で2~10g/m2であり、好ましくは3~8g/m2である。2g/m2未満の場合は十分なヒートシール強度を満足できない。逆に10g/m2を超える場合は、ヒートシール強度の面からは過剰品質であり、かつプラスチック削減効果に乏しくなる。なお、本発明の包装用紙において、ヒートシール層は、紙基材の表面の一部分のみに設けられているのではなく、全面に設けられていることが通常である。すなわち、ヒートシール層は、例えば網状、島状、線状など、ヒートシールによる接着に必要な部分にのみ設けられているのではなく、紙基材の表面の全面を覆うように設けられていると良い。
【0018】
ヒートシール層用塗工液には、アイオノマーエマルジョンの他に、各種助剤を添加してもよい。例えば、粘度調整剤、消泡剤、界面活性剤やアルコールなどのレベリング剤、着色顔料、着色染料などである。しかしながら、これらの助剤の添加は、ヒートシール強度の低下を招きやすいことから、添加する場合には少量であることが好ましい。本実施形態においては、ヒートシール層用塗工液がアイオノマーエマルジョンのみからなることが好ましい。
・・・
【0021】
本実施形態においては、包装用紙の透気度が10000秒を超える事が好ましい。より好ましくは12000秒以上であり、更に好ましくは15000秒以上である。包装用紙の透気度を10000秒以上とすることにより、空気を遮断する意味でのバリア性が更に高くなり、撥水性と撥油性が更に向上する。包装用紙の透気度を10000秒以上とする方法については、特に限定するものではないが、例えば、紙基材に透気度の高いものを使用することで達成できる。さらに、ヒートシール塗工液を塗工する面の平滑度を高くすることによっても、包装用紙の透気度を高くすることができる。その後形成されるヒートシール層においてピンホールやヒビ割れなどをより減少させることができるからである。例えば、顔料塗工層を設け、その後キャレンダー処理等を行うことにより、ヒートシール塗工液を塗工する面の平滑度を高くすることができる。他には、ヒートシール層を2層以上塗工することも透気度を高める効果がある。ヒートシール層の2層塗工は、1層目の塗工層(下層)に存在する微細なピンホールやヒビを、1層目の上に設けられた2層目の塗工層(上層)が覆うことで透気度が高まると考えられる。また、ヒートシール層の塗工量を増加させることも透気度の向上に効果がある。ヒートシール層の造膜の面では、ヒートシール層用塗工液の塗工後の乾燥温度を、アイオノマーの融点以上の温度とすることで透気度が向上しやすい。
・・・
【0023】
本実施形態において用いる紙基材としては特に限定するものではなく、パルプを主成分とする公知の紙基材を用いることができる。紙基材の主成分となるパルプとしては、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ及びケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプを用いることができる。これらは、単独で使用するか、又は任意の割合で混合して使用することが可能である。例えば、パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)をパルプ中90~100質量部使用することができる。また、本発明の目的とする効果を損なわない範囲において、合成繊維を更に配合することができる。環境保全の観点から、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、古紙パルプ、植林木から得られるパルプが好ましい。また、例えば、適切なパルプの叩解度としては、カナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、200~700mlCSF、例えば、450~620mlCSFである。」
(ウ)「【実施例】
・・・
【0030】
(実施例1)
(基紙の作製)
カナディアンスタンダードフリーネス520mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ100部、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP-121、奥多摩工業社製)5部、カチオン化澱粉(商品名:ネオタック30T、日本食品加工社製)0.2部、中性ロジンサイズ(商品名:CC167、星光PMC社製)0.2部に水を加えて紙料を調製し、長網多筒式抄紙機を用いて坪量58g/m2の原紙を作製した。この原紙にゲートロールコーターによって、酸化澱粉(商品名:MS3800、日本食品化工社製)を両面あたりの乾燥塗布量が2g/m2となるように塗布し、乾燥して60g/m2の基紙を得た。
【0031】
(顔料塗工層用塗工液の調製)
カオリン(商品名:コンツアー1500、イメリス社製)30部及び重質炭酸カルシウム(商品名:カービラックス、イメリス社製)70部に分散剤(商品名:アロンT-50、東亜合成社製)0.2部を加え、加水してコーレス分散機を用いて水分散し、顔料スラリーを作製した。この顔料スラリーに、バインダーとしてリン酸エステル化澱粉(商品名:MS4600、日本食品加工社製)2部及びスチレンブタジエンラテックス(商品名:PA0372、日本エイアンドエル株式会社)8部、更に水を加えて分散させ、固形分濃度50%の顔料塗工層用塗工液を調製した。
【0032】
(紙基材の作製)
上記で得られた基紙の両面に、顔料塗工層用塗工液を、片面当たりの乾燥塗工量が10g/m2になるようにブレードコーターを用いて塗工、乾燥した。その後、キャレンダー処理を行い、坪量が80g/m2の紙基材(塗工紙)を作製した。この時の塗工面(後工程でヒートシール層を設ける面)の平滑度は400秒であった。
【0033】
(包装用紙の作製)
上記で得られた紙基材の片面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、自己乳化型エマルジョン、マイクロトラック法平均粒子径0.5μm)を乾燥塗工量が5g/m2になるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設け、包装用紙を作製した。
【0034】
(実施例2)
実施例1において、ヒートシール層の塗工量を10g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
・・・・
【0056】
各実施例及び比較例で得られた包装用紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を表1~3に示す。なお、ヒートシール層が1層のみの場合は、便宜上、塗工量をヒートシール層上層の塗工量欄に記載した。
・・・
【0058】
(2)透気度
JIS P 8117:2009に準拠して、デジタル型王研式透気度平滑度試験機(旭精工社製、型番:EYDO-6-2M)にて、包装用紙の透気度(秒)を測定した。数値の高い方が、通気性が低い(バリア性が高い)ことを示す。
【0059】
(2)ヒートシール強度
得られた包装用紙を、幅8mm、長さ15cmのサイズに2枚カットし、包装用紙の表面と裏面とを重ね合わせ、ヒートシール装置(パルメック社製、型番:PTS-100)で、一定条件(接着幅:4mm、温度:180℃、圧力0.4MPa、押し当て時間0.5秒、ピッチ:4mm)にてヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルを、剥離強度試験機(島津製作所製、型番:オートグラフAGS-X)にて、一定条件(剥離速度:100mm/分、剥離長さ:10cm)で剥離強度を測定してヒートシール強度(gf/4mm)とした。数値が高い方が優れる。なお、両面がヒートシール層の場合は、ヒートシール層同士の接着強度という事になる。
【0060】
(3)撥水性
JIS K 6768:1999(プラスチック-フィルム及びシート-濡れ張力試験方法)に準拠し、ヒートシール層表面の撥水性を評価した。数字が低い程撥水性が高い(濡れにくい)ことを示す。なお、両面にヒートシール層がある場合は、両面の平均値を用いた。
【0061】
(4)撥油性
TAPPI T-559cm-02(キット法)に準拠し、ヒートシール層表面の撥油性を評価した。値(キット値)が高いほど撥油性が高いことを示す。なお、両面にヒートシール層がある場合は、両面の平均値を用いた。」
(エ)「【0062】
【表1】
[図:0001424572000001.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された発明
上記アの記載を参酌し、特に実施例2に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「カナディアンスタンダードフリーネス520mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ100部、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP-121、奥多摩工業社製)5部、カチオン化澱粉(商品名:ネオタック30T、日本食品加工社製)0.2部、中性ロジンサイズ(商品名:CC167、星光PMC社製)0.2部に水を加えて紙料を調製し、長網多筒式抄紙機を用いて坪量58g/m2の原紙を作製し、この原紙にゲートロールコーターによって、酸化澱粉(商品名:MS3800、日本食品化工社製)を両面あたりの乾燥塗布量が2g/m2となるように塗布し、乾燥して得られた坪量60g/m2の基紙の両面に対し、
顔料塗工層用塗工液を、片面当たりの乾燥塗工量が10g/m2になるようにブレードコーターを用いて塗工、乾燥し、その後、キャレンダー処理を行い、坪量が80g/m2の紙基材(塗工紙)を作製し、
得られた紙基材の片面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、自己乳化型エマルジョン、マイクロトラック法平均粒子径0.5μm)を乾燥塗工量が10g/m2になるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設けた包装用紙であって、
得られた包装用紙を、幅8mm、長さ15cmのサイズに2枚カットし、包装用紙の表面と裏面とを重ね合わせ、ヒートシール装置(パルメック社製、型番:PTS-100)で、一定条件(接着幅:4mm、温度:180℃、圧力0.4MPa、押し当て時間0.5秒、ピッチ:4mm)にてヒートシールし、次いで、ヒートシールしたサンプルを、剥離強度試験機(島津製作所製、型番:オートグラフAGS-X)にて、一定条件(剥離速度:100mm/分、剥離長さ:10cm)で剥離強度を測定したヒートシール強度が190gf/4mmであり、
王研式透気抵抗度が3000秒であり、
JIS K 6768:1999(プラスチック-フィルム及びシート-濡れ張力試験方法)に準拠した、ヒートシール層表面の撥水性評価が36である包装用紙。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「紙基材」、「水系アイオノマー」、「ヒートシール層」は、本件発明1の「紙基材」、「ヒートシール性樹脂」、「ヒートシール層」に相当する。
引用発明1の「紙基材の片面」に「ヒートシール層を設けた」ことは、本件発明1の「紙基材の片面に、少なくとも1層のヒートシール層を有」することに相当する。
引用発明1の「包装用紙」は、「紙基材」に「ヒートシール層」を設けたものであるから、本件発明1の「ヒートシール紙」に相当する。
引用発明1の「水系アイオノマー」エマルジョンの「組成」が「エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩」であることは、本件発明1の「ヒートシール性樹脂が、オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体を含」むことに相当する。
引用発明1の「王研式透気抵抗度が3000秒」であることは、本件発明1の「王研式透気抵抗度が2000秒以上」であることに相当する。
引用発明1の「紙基材」と「ヒートシール層」とからなる「包装用紙」は、本件発明1の「ヒートシール紙」に相当する。
以上のことから、本件発明1と引用発明1とは以下の一致点及び相違点を有する。
【一致点1】
「紙基材の片面に、少なくとも1層のヒートシール層を有し、
前記ヒートシール層が、ヒートシール性樹脂を含み、
前記ヒートシール性樹脂が、オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体を含み、
王研式透気抵抗度が2000秒以上である、
ヒートシール紙。」
【相違点1】
本件発明1は、「ヒートシール層」が、「アスペクト比20以上であり、かつ平均粒径が3μm以上10μm以下の顔料」を含んでおり、「ヒートシール層中、顔料の配合量が、15質量%以上50質量%以下」であるのに対して、引用発明1はヒートシール層に顔料を含有していない点。
【相違点2】
本件発明1は、「ヒートシール層」が、「シリコーン系レベリング剤」を含んでいるのに対して、引用発明1はヒートシール層にシリコーン系レベリング剤を含有していない点。
【相違点3】
本件発明1は、「ヒートシール層が、ワックスをさらに含有し、ワックスが、パラフィンワックスおよびカルナバワックスよりなる群から選択される少なくとも1種を含」むのに対して、引用発明1はヒートシール層にワックスを含有していない点。
【相違点4】
本件発明1は、「ヒートシール層同士をシール圧力0.2MPa、シール温度140℃、シール時間1秒間の条件でヒートシールしたときの剥離強度が3N/15mm以上」であるのに対して、引用発明1は、「幅8mm、長さ15cmのサイズに2枚カットし、包装用紙の表面と裏面とを重ね合わせ、ヒートシール装置(パルメック社製、型番:PTS-100)で、一定条件(接着幅:4mm、温度:180℃、圧力0.4MPa、押し当て時間0.5秒、ピッチ:4mm)にてヒートシールし、次いで、ヒートシールしたサンプルを、剥離強度試験機(島津製作所製、型番:オートグラフAGS-X)にて、一定条件(剥離速度:100mm/分、剥離長さ:10cm)で剥離強度を測定したヒートシール強度が190gf/4mm」である点。
【相違点5】
本件発明1は、「両面の撥水度がR6以上」であるのに対して、引用発明1は、「JIS K 6768:1999(プラスチック-フィルム及びシート-濡れ張力試験方法)に準拠した、ヒートシール層表面の撥水性評価が36」である点。
イ 判断
相違点1について検討する。
引用発明1を認定した実施例2は、ヒートシール層用の塗工液である水系アイオノマーエマルジョンには、顔料を含んでいない。
引用文献1の【0018】には、ヒートシール層用塗工液に、着色含量等の各種助剤を添加してもよいことが記載されているものの、助剤の添加は、ヒートシール強度の低下を招きやすいことから、添加する場合には少量であることが好ましいこと、さらには、ヒートシール層用塗工液がアイオノマーエマルジョンのみからなることが好ましいことが記載されている。
そうすると、引用文献1の上記記載を参照すると、引用発明1において、少量とはいえない15質量%以上50質量%以下の顔料を添加することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 本件発明1のまとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)と同様の理由により、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 取消理由2(サポート要件)について
本件訂正により、本件発明1は、本件課題を解決するための必須の構成である、ヒートシール層にレベリング剤を配合することが特定された。
したがって、取消理由2は解消した。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~5に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700305