特許異議申立
2024-700303
軟包装材用紙、および軟包装体
- 審判番号
- 2024-700303
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-524938
- 登録番号
- 7355469
- 請求日
- 2024年04月02日
- 審決日
- 2025年08月07日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本製紙株式会社
- 【権利者代理人】山田 泰之
- 【権利者代理人】中村 理弘
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 神山 茂樹
- 分類
- P1651.113-Y (B65D) / P1651.121-Y (B65D) / P1651.537-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7355469号発明「軟包装材用紙、および軟包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7355469号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7355469号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)3月14日(優先権主張、令和4年3月18日(同日付け4件)、令和4年6月14日(同日付け4件))を国際出願日とする特許出願であって、令和5年9月25日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:令和5年10月3日)がされた。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 4月 2日 :特許異議申立人赤松智信(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て
令和6年10月 8日付け:取消理由通知書
令和6年12月 6日 :特許権者による意見書の提出
令和7年 1月 9日 :申立人による上申書の提出
第2 本件発明
本件請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」等と、また、まとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
紙基材と、少なくとも一方の最表面にヒートシール層を有し、
前記紙基材が、厚さ25μm以上100μm以下であり、
前記紙基材が含む全製紙用繊維に対するパルプの割合が90重量%を超え、
前記ヒートシール層が、厚さ20μm以上100μm以下のラミネート層であり、
下記条件(1)と(3)とを満足することを特徴とする軟包装材用紙
(1)紙基材のKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBが、0.02g・cm/cm以上1.2g・cm/cm以下
(3)紙基材の他方の表面が露出しており、露出している面の平滑度(王研式)が50秒以上700秒以下。
【請求項2】
前記紙基材の坪量が、20g/m2以上70g/m2以下であることを特徴とする請求項1に記載の軟包装材用紙。
【請求項3】
前記紙基材の密度が、0.5g/cm3以上0.95g/cm3以下であることを特徴とする請求項1に記載の軟包装材用紙。
【請求項4】
下記条件(2)または(4)を満足することを特徴とする請求項1に記載の軟包装材用紙
(2)紙基材のKES法によるMD方向の曲げ剛性Bが0.16g・cm2/cm以上1.8g・cm2/cm以下
(4)紙基材のMD方向のヤング率が3GPa以上15GPa以下。
【請求項5】
被包装物が、請求項1~4のいずれかに記載の軟包装材用紙からなる包装材に内包されていることを特徴とする軟包装体。」
第3 取消理由通知の概要
本件発明1~5に対して、当審において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(サポート要件)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1、4には、それぞれ以下条件(1)、(2)が記載されている。
(1)紙基材のKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBが、0.02g・cm/cm以上1.2g・cm/cm以下
(2)紙基材のKES法によるMD方向の曲げ剛性Bが0.16g・cm2/cm以上1.8g・cm2/cm以下。
ここで、条件(1)、(2)はそれぞれ軟包装材用紙に用いる紙基材のMD方向(Machine Direction。製袋機における包装材料の進行方向)におけるヒステリシス2HB、曲げ剛性Bの数値範囲を特定するものであるが、実施例及び比較例で製造されている包装袋は横ピロー包装機(条件(1)について【0049】、条件(2)について【0064】)によるものであり、これら装置においては包装材料を、その進行方向に対して垂直な方向(CD方向、Cross Direction)に曲げることによって袋状とするものであることは技術常識から明らかであるところ、上記横ピロー包装機を用いて製造される包装体の曲げ加工適性等について、本件発明に係る紙基材のMD方向の曲げに関する特性によって評価したことにいかなる技術的意味があるのかは不明であり、発明の詳細な説明の記載に基づいて、条件(1)、(2)によって特定される本件特許発明に係る紙基材を用いた軟包装材用紙が、発明の詳細な説明に記載された課題を解決するものと当業者が理解することはできない。
第4 取消理由に対する当審の判断
上記取消理由通知についての当審の判断は以下である。
包装材料は搬送されながら製袋器とMD方向と斜め方向とに複合的に曲げられ、立体的な形状をとり、筒状に丸められてセンターシールされた包装材料は、エンドシール部で押し潰されるが、この際、包装材料の上面と下面とはMD方向(曲げ軸はCD方向)に曲げられる。
ここで、包装材料のMD方向の2HBが大きいと包装材料と製袋器が接触する箇所において、紙基材が製袋器の形状に追従できなくなり、それによって生じた変形が元に戻りにくいため、CD方向のシワが生じやすくなることが理解できる。
また、B値が大きいと、連続的に生産を続けるに連れて、エンドシール部で筒が潰されるときの変形が、徐々にエンドシール部の上流に位置する製袋器にまで伝播し、製袋器と接触して形成される筒の上面が徐々に製袋器の天面から離れる。
そして、横ピロー包装袋の連続生産を続けるに連れて形成される筒の上面が製袋器の天面から離れるので、得られる横ピロー包装袋は徐々に開口が小さくなり、徐々に設計寸法からのズレが大きくなる。
すなわち、紙基材のMD方向のB値が大きくなると、横ピロー包装袋の開口は小さくなりやすく、かつ、製袋を続けるに連れて開口が徐々に小さくなりやすくなるので、横方向の寸法安定性に劣ることが理解できる。
以上より、当審が特許権者に通知した取消理由(サポート要件)は、解消した。
これに対し、申立人は、上申書にて、
・特許権者は、意見書では、「MD方向を軸とする筒状」にしている(即ち、CD方向に曲げている)にもかかわらず、「CD方向に曲げられていない」と、相矛盾した主張をしている
・本件特許明細書の【0020】には、「元の形状(平板状やロール状)に戻ろうとする力」と記載されていることからみて、当業者であれば、CD方向のヒステリシス2HBの課題としか把握できない
・本件特許明細書の【0023】には、「製袋時に曲げにくくなり」と記載されていることからみて、当業者であれば、CD方向に曲げるときの課題としか把握できない
・CD方向の剛性Bを考慮することなく発明特定事項を満足する全ての軟包装用紙が効果を奏するとは当業者であっても理解できない等と主張する。
申立人の主張について検討するに、確かに、横型ピロー包装機において、包装材は製袋時にCD方向にも曲げられるものであるが、上述のように、MD方向にも曲げられるものである。
そして、本件発明は、包装材がMD方向に曲げられる際のヒステリシス2HB及び曲げ剛性Bの影響に着目したものといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の内容
申立人は、特許異議申立書において、以下の(1)、(2)を主張する。
(1)サポート要件違反
本件特許の特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないため、特許法第36条第6項第1号の要件を満たさない。
(2)新規性、進歩性欠如
a 申立理由2(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如)
本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~12号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
b 申立理由3(甲第3号証を主引用例とする新規性及び進歩性欠如)
本件発明1~5は、甲第3号証の実施例1に記載された発明であるか、また甲第3号証に記載された発明及び甲第1、2、4~12号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
<証拠>
甲第1号証:古明地博正、「ポリエチレン加工紙」及び藤森工業株式会社、「藤森のポリエチレンラミネート紙」、最新包装要覧<How To Package>、株式会社 紙業タイムス社、昭和33年7月20日、194~201頁
甲第2号証:中山秀夫、「軟包装材料(フィルム・アルミはく・紙)の試験法について」、包装技術、社団法人日本包装技術協会、昭和54年10月、第17巻第10号、477~483頁
甲第3号証:特開2007-276194号公報
甲第4号証:桑靖彦、「包装用プラスチック加工紙」、これから携わる方のための包装実務の常識、日本包装タイム社、昭和34年4月25日、151~153、155~168頁(当審注:「靖」の「月」は「円」、「彦」の「立」は「文」の下に「一」)
甲第5号証:「包装資材市場調査資料 第5巻 包装紙・加工紙の需給実態」、日本包装出版株式会社、昭和48年1月20日、314~321、334頁
甲第6号証:早川斐雄、「包装機械の立場からみた高分子フィルム」、高分子、社団法人 高分子学会、昭和39年1月20日、第13巻143号2月号、145~148頁(当審注:「斐」の「文」は右払いの始点から「ノ」)
甲第7号証:芦原晋、「醸造食品の新しい包装材料について」、日本醸造協會雑誌、財団法人 日本醸造協会、昭和45年7月15日、第65巻第7号、557~564頁
甲第8号証の1:玉井紀行、「フレキシブルフィルム包装機械の種類と特徴」、フレキシブル包装設計のすべて-基礎から応用まで-、CTI 加工技術研究会、平成元年2月25日発行、190~207頁
甲第8号証の2:横山理雄、「[講座]冷凍食品の包装 II.―包装方法と包装システム―」、食品と低温、日本食品保蔵科学会、昭和56年9月21日、VOL.7、No.2、54~61頁
甲第9号証:住本充弘、「[連載講座 容器・包装の基礎と応用]基礎編(5)包装技法」、日皮協ジャーナル、日本産業皮膚衛生協会、 No.80、2018年8月、1~25頁
甲第10号証の1:特開2010-229562公報
甲第10号証の2:国際公開第2015/012167号
甲第11号証:「オールペーパーガイド-紙の商品事典 上巻・文化産業篇」、株式会社 紙業タイムス社、昭和58年12月1日、109、232頁
甲第12号用:横山隆、外2名、「紙および板紙の面内・板厚方向の引張応力-ひずみ特性」、実験力学、日本実験力学会、Vol.7、No.2、2007年6月、129~135頁
(以下、甲第1号証を「甲1」という。他の甲各号証についても、同様である。)
2 特許異議申立理由についての判断
(1)サポート要件違反について
ア 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下検討する。
イ 本件発明の解決しようとする課題は、従来の樹脂製フィルムからなる包装材の代替として用いることができる軟包装材用紙であって、従来のプラスチック製フィルムと同様の操業条件で製袋機に通して、軟包装体を製造することができ、操業条件を変更する必要がないため、樹脂製フィルムと本発明の軟包装材用紙を切り替えて、素材の異なる軟包装体を製造することが容易であり、紙を主体としているため樹脂材料の使用量を大幅に削減できる軟包装材用紙を提供することである(【0007】)。
そして、発明の詳細な説明の記載によると、本件発明の軟包装材用紙は、
紙基材の厚さが25μm以上100μm以下であることにより、従来のプラスチック製フィルムを用いる製袋機に通すことが容易となり(【0014】)、
前記紙基材が含む全製紙用繊維に対するパルプの割合が90重量%を超えることにより、パルプと比較して柔軟でコシが弱い熱可塑性樹脂繊維を10重量%未満とし(【0011】)、
紙基材のKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBが0.02g・cm/cm以上1.2g・cm/cm以下であること(条件(1))により、ヒステリシス2HBが0.02g・cm/cm未満の際の曲げ加工、罫線加工、折り加工等が難しくなるとともに、軟包装体に反りや丸みが生じ、美粧性や形態維持性が低下すること及び1.2g・cm/cmを超えた際の曲げた後に元に戻りにくくなるため、特に、製袋機のフォーマーと接触して曲げ加工や折り加工の際に負荷が生じる部分にシワが生じやすくなる、また、破れやすくなることを回避することが可能となり(【0020】)、紙基材のKES法によるMD方向の曲げ剛性Bが0.16g・cm2/cm以上1.8g・cm2/cm以下であること(条件(2))により、曲げ剛性Bが0.16g・cm2/cm未満の際の軟包装材用紙が柔らかすぎて、軟包装体としたときに張りがなくなり、所定の包装形態を維持することが難しくなること及び1.8g・cm2/cmを超えた際の製袋時に曲げにくくなり、特に横方向の寸法が設計寸法からズレることを回避することが可能となり(【0023】)、
紙基材の他方の表面が露出しており、露出している面の平滑度(王研式)が50秒以上700秒以下であること(条件(3))により、紙基材と製袋機との摩擦や滑り性が良好となり、生産不良を少なくすることができ、50秒未満の際の摩擦が大きく通紙時に軟包装材用紙に大きな負担がかかり、紙基材が破れやすくなること及び700秒を超える際の摩擦が小さく軟包装材用紙が滑りやすくなるため、軟包装材用紙が製袋機を通る際に蛇行しやすくなり、ヒートシール部や裁断部に位置ずれが起こりやすくなることを回避することが可能(【0026】)とされている。
これについて、紙基材の厚さ及び上記条件(1)を満たす本件発明の実施例1-1~5で得られた軟包装材用紙は、設計寸法に近い横ピロー袋を製造することができ、また、得られた横ピロー袋の外観は実用上問題がないことを確認できる一方、上記(1)を満たさない比較例1-1で得られた軟包装材用紙から得られた横ピロー袋は、横方向に反りが生じていたこと、比較例1-2で得られた軟包装材用紙から得られた横ピロー袋は、大きなしわが発生しているものがあったことを確認している(【0053】)。
また、紙基材の厚さ及び上記条件(2)を満たす本件発明の実施例2-1~6で得られた軟包装材用紙は、設計寸法に近い横ピロー袋を製造することができ、また、得られた横ピロー袋の外観は実用上問題がないことを確認できる一方、上記(2)を満たさない比較例2-1で得られた軟包装材用紙から得られた横ピロー袋は、張りがなく、水平の状態で持ち上げると重力に逆らえずに垂れ下がってしまったこと、比較例2-2で得られた軟包装材用紙から得られた横ピロー袋は、横方向の寸法が設計寸法から25%以上と大きくずれたものが複数個含まれていたことを確認している(【0068】)。
さらに、紙基材の厚さ及び上記条件(3)を満たす本件発明の実施例3-1~5で得られた軟包装材用紙は、破断することなく搬送することができ、得られた横ピロー袋は、設計寸法に近いものであることを確認できる一方、上記条件(3)を満たさない比較例3-1で得られた軟包装材用紙は、製袋途中に破断が生じたこと、比較例3-2の軟包装材用紙は、ヒートシール部のズレが大きかったことを確認している(【0081】)。
そうすると、これらの構成を備える本件発明は、上記の課題を解決すると認識できるものである。すなわち、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、次のa~cを主張する。
a 紙基材の露出している面の平滑性について(申立書18頁)
軟包装材用紙において、紙基材の平滑度を条件(3)の範囲に特定することのみによって、包装機械との接触状態や摩擦係数に関わらず発明の詳細な説明に記載された課題を解決するものと当業者が理解できることはできない。
b ラミネート層との関係について(申立書18頁)
本件発明に係る軟包装材用紙を構成する紙基材は厚さ25μm以上100μm以下であり、ラミネート層の厚さもほぼ同等の20μm以上100μm以下の範囲であること(軟包装材用紙としては45μm以上200μm以下であること)を考慮すると、ラミネート層についてその材料等について何らの特定もない上、その物理的な特性等について何ら特定することなく、さらには、軟包装用紙全体としての特性ではなく、紙基材にのみ注目して、その剛性等を特定することによって、発明の詳細な説明に記載された課題を解決するものと当業者が理解することはできない。
c 特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるかについて(申立書19頁)
本件明細書では、軟包装材用紙を特定の横ピロー包装機を用い、特定の条件で使用した方法のみ評価をしているが、軟包装においては、軟包装材用紙は用途、使用目的に合わせて適宜選択して使用されるものであり(甲1の196~199頁の主な用途、甲5の317~319頁の加工紙の構成一例等)、包装機械についても様々の方式、形態の装置が選択使用され(甲8の1の190~195頁の「13-1 製袋充填包装機」)、また、包装する形状も様々であり(甲8の2の54頁の図1等)、当然のごとく、包装される包装物についても形状、厚み、質量等、様々である。したがって、一つの包装装置、一つの包装条件で良好な結果が得られたとしても、本件特許発明によって、このような多岐に渡る軟包装の全てにおいても課題を解決するものと当業者が理解することはできない。
(イ)主張についての検討
a 上記aの主張について
申立人が主張するように、軟包装材用紙において、包装機械との接触状態や摩擦係数も上記課題を解決するために特定する条件の一つになり得ることが想定されるが、本件発明は、紙基材の厚さ、紙基材が含む全製紙用繊維に対するパルプの割合、紙基材のKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HB、紙基材のKES法によるMD方向の曲げ剛性B、紙基材の平滑度(王研式)を上記課題を解決するために特定したものであって、それにより上記課題を解決できていることは上記イで説示したとおりである。
よって、申立人の上記主張は、採用することはできない。
b 上記bの主張について
本件発明は、そもそも軟包装用紙を構成する紙基材とヒートシール層のうち、紙基材の特性に着目し、これを特定することにより課題を解決しているものである。また、ヒートシール層が含む熱可塑性樹脂層はヒートシール用途に用いられる熱可塑性樹脂を特に制限することなく使用することができることから(【0036】)、ヒートシール層の材料等を特定することを要するものではない。
よって、申立人の上記主張は、採用することはできない。
c 上記cの主張について
本件発明は、上記のように従来のプラスチック製フィルムと同様の操業条件で製袋機に通すことを想定しているものであるが、軟包装の全てにおいて適用されることが求められるものでないことは明らかである。
よって、申立人の上記主張は、採用することはできない。
エ 小括
以上によれば、特許異議申立理由の「1(1)サポート要件違反」は成り立たない。
(2)新規性及び進歩性欠如について
ア 引用文献の記載、引用発明
(ア)甲1について
a 甲1の記載
甲1には以下の記載がある。
「ポリエチレン加工紙の加工にさいしては、ポリエチレン樹脂は勿論であるが、その他にベース・ペーパーとしてクラフト紙、アート紙、模造紙、グラシン紙、セロファン、マニラボール紙、アルミニウム箔などを使用する。」(194頁右欄1~5行)
「ポリエチレン加工紙の製造方法はフィルムラミネート法、メルトコーティング法、ソルベント・コート法、エキストルージョン・コーティング法の4つに大別されるが、この中、つぎに述べる技術的、経済的理由からエキストルージョン・コーティング法(通称ラミネート法)がもっとも有利な加工方法として多く採用されている。」(194頁右欄下14~下8行)
「クラフト紙にポリエチレン加工したものはポリエチレン加工紙の中で最も標準のもので、日本工業規格(JIS)もまたこれを標準として案が作られている。」(196頁右欄下14~下11行)
「5.ポリエチレン加工紙は簡単に熱封緘することができるので、完全密封包装ができ、この性質を利用して、包装操作の簡易化をはかることができ、自動製袋、自動包装などへの応用が容易である。」(197頁左欄11~14行)
「
[図:0001426808000001.jpg]
」(200頁)「商品番号表A」
「(8)熱封緘性(可能)
最近の包装には包装操作の簡易化、完全封緘、自動製袋および自動包装機への応用のために包装紙に熱封緘性を要求しておりますが、ポリラップは、簡単に、しかも非常に強い熱封緘性を得ることができこの種包装用加工紙のうちではもっとも優れたものの1つです。そのために食品や機械部品、医薬品などの自動包装に使用されております。」(201頁左欄11行~右欄1行)
b 甲1発明
上記aを総合し、特に、商品番号表A(シングル・ラミネート)に示されている規格0.9匁/尺2のクラフト紙の加工厚0.02、0.03、0.05m/mに着目すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
[甲1発明]
「クラフト紙にフィルムラミネート法によりポリエチレン加工したポリエチレン加工紙からなる、ポリエチレンの加工厚が20μm、30μm、50μmである包装用加工紙。」
(イ)甲2について
甲2には以下の記載がある。なお、当審において常用漢字に変更した表記がある。
「さらに軟包装に使用される紙についてもほぼ同様で、ほとんどが印刷、塗工、あるいはラミネートなどの加工が施されており、これらの材料の加工やそれを包装用途に使用する際には、どのような物理的性質をもっているかを知ることはきわめて重要なことであり、また目的に応じて十分知らなくては適切な加工とそれの応用はできない。軟包装の物理的性質においてとくに重視される項目は、まず物理的な強度であり、次いで包装機へのかかり易さを左右する腰の強さ、滑り性、寸法安定性あるいはヒートシール性などであろう。」(477頁右欄下6行~478頁左欄6行)
「包装材料の機械適性、すなわち包装機へのかかり易さは、とくに軟質包装材料においては、包装の適応性を支配するもっとも大きなファクターである。とくに複合加工フィルムの使用においては、これが複雑な表面性質や物理的変形を示すことが多く、包装の高速化やライン化にとって機械適性を直接指標する物性要因の解析が重要な意義をもつ。」(479頁右欄下10~下3行)
「軟質包装材料の腰の強さを意味する物性は、機械へのかかり易さだけでなく、包装されたものの堅さ、あるいはだぶつき、たるみなどの外観にも関係する。材料の腰の強さは、Flexibility Stiffness、あるいはRigidityなどの用語で表現されているが、これらのカテゴリーは必ずしも明確ではない。一般的には曲げ抵抗のことを腰の強さという場合が多い。JISでは曲げこわさとしており、紙に対する試験方法として、JIS P-8143(自重曲げ法による紙のこわさ試験方法)およびJIS P-8125(荷重曲げ法による板紙のこわさ試験方法)に定められたものがある。」(480頁左欄下1行~右欄11行)
「包装材料の滑り性は、機械適性因子のなかでも腰の強さとともに重要な性質であるが、とくに腰の弱い材料とか、厚さを薄くすることによって腰の強さが低下する場合には滑り性を高めて包装機へかける必要がある」(481頁右欄4~8行)
(ウ)甲3について
a 甲3の記載
甲3には以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、紙の表印刷での階調表現をプラスチック基材裏印刷に可能な限り近い品質にすることで、安価な上質紙や純白ロール紙などを軟包装の基材として用いるなど、紙の用途を拡大するための積層体およびそれを用いた包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や医薬品などを包装する包装材料として、軟包装分野がある。これはプラスチック基材の裏に印刷し、各種バリアー層、シーラント層などを積層して用いられる。・・・。」
「【0022】
前記紙基材(1)は、上質紙、純白ロール紙、コート紙、混抄紙などがあるが、これに限定されるものではない。・・・。
【0023】
何れの紙も坪量が25~80g/m2でないと、軟包装形態に製袋できなくなる。薄すぎると、突刺し強度にも影響し、製造時の紙切れが懸念される。厚すぎると製袋などの加工が適性に行えない。好ましくは、30~65g/m2であれば、柔軟性と強度のバランスが良くなる。・・・。」
「【0036】
・・・。また、反対面にポリエステル樹脂もしくはポリアミド樹脂に、ヒートシール性のあるポリオレフィン樹脂と相溶化剤をブレンドし、混練押出しフィルム成形されたシーラント層(2)を押出しラミネートする。・・・。」
「【0049】
<実施例1>
図1に示すように、紙基材(1)として、坪量が40g/m2の純白ロール紙に低密度ポリエチレン樹脂(三井・デュポンポリケミカル株式会社製:商品名ミラソン14P)とポリエステル樹脂(東レ株式会社製)を相溶化剤[大阪ガス株式会社製:商品名マリコン(登録商標)]を重量比率で1~10%添加して、混合押出しでシーラント層(2)として30μm形成し、引き続き、前記紙基材(1)表面に水性インキ(東洋インキ製造株式会社製:商品名アクワブライト)を直接印刷して印刷層(3)を設けて本発明の積層体を得た。尚、押し出し加工条件は、ダイ下340℃、加工速度は80m/min、印刷条件は、印刷版は150線、25μmの階調版とし、乾燥温度は80℃、速度は80m/minで行った。尚、条件はあくまでも目安であり、これに限定されるものではない。」
「【0058】
<評価>
以上のようにして得られた実施例1~5、比較例1~3のそれぞれの積層体を用いて、印刷品質、突刺し強度、保香性、ヒートシール強度の評価と縦ピロー包装、横ピロー包装の包装テストを行った際の充填適性を評価した。◎:優、○:良、○+:良よりやや上位、△:可、△+:可よりやや上位、×:不良、××:非常に不良。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
[図:0001426808000002.jpg]
表1は、印刷品質、突刺し強度、保香性、ヒートシール強度の評価結果と縦ピロー包装、横ピロー包装の包装テストを行った際の充填包装適性を評価した結果を示す表である。」
b 甲3発明
上記aを総合し、特に実施例1に着目すると、甲3には以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
[甲3発明]
「紙基材(1)として、坪量が40g/m2の純白ロール紙に低密度ポリエチレン樹脂(三井・デュポンポリケミカル株式会社製:商品名ミラソン14P)とポリエステル樹脂(東レ株式会社製)を相溶化剤[大阪ガス株式会社製:商品名マリコン(登録商標)]を重量比率で1~10%添加して、混合押出しでシーラント層(2)として30μm形成し、引き続き、前記紙基材(1)表面に水性インキ(東洋インキ製造株式会社製:商品名アクワブライト)を直接印刷して印刷層(3)を設けた積層体。」
(エ)甲4について
甲4には以下の記載がある。
「a ポリエチレン加工紙 ポリエチレン加工紙はすでにJISの制定もあり、またJIS制定の目的とするクラフト紙をベースとした重包装用の他に、軽包装用の各種の製品が製造され、日に日にその用途を拡大しております。
ポリエチレン加工紙は、キャリヤーの片面にポリエチレンを加工したものが最も一般的ですが、強度の防湿性や外面効果を持たせるためにアルミニウム箔と紙とを組み合わせたもの印刷効果や表面耐性のためにセロファンと紙とを組み合わせたものなど、複合キャリヤーに加工したものまたさらには二枚のキャリヤの間にサンドウイッチ式にポリエチレンを挟んだもの等があります。」(159頁下7行~160頁下3行)
(オ)甲5について
甲5には以下の記載がある。
「(3) ポリ加工紙
ポリ加工紙は、紙の片面にPEをラミネートする場合と紙と紙の間にPEを挟む。ポリサンドイッチ加工も用途に応じて利用されている。
ラミネート業界は、紙の場合は、一般にエクストルージョンラミネーターにより行われる。ラミネート業界は、140社前後が存在すると考えられラミネートされる品種も多岐に亘っているので、これらを詳細に述べることは困難である。参考例を記載する。
○1 ポリエチレン+クラフト紙(当審注:○1は○の中に1。以下同様。)
重包装袋を始め、液体容器などに使用されており、クラフト紙の特性にポリエチレンの防水、防湿性を与えたもので、粉体、肥料などの包装袋用としての需要増大が見込まれ、重袋加工業者に注目されている。(牛乳、酒容器用としては後述する。)
ターボリン、ポリエチレン、塩ビ袋などとの競合がある。物性の利点と価格競争によって需要増の期待も持てようが、小袋包装用としての期待は薄い。
〇2 ポリエチレン+グラシン紙
冷菓用などに利用されているが、紙容器、HIスチロール、硬質塩ビ、スチロール(二軸延伸)フイルムなどに比較すると価値効果は低下する。需要量の増加は望めない。
〇3 ポリエチレン+純白ロール紙
近年、デパートなどで食品包装用として使用されてきており、需要量は着実に伸びている。高級包装紙としてセルフサービス時代にも拘らず漸増を辿ることが予想される。
紙を基材とするものは、ポリラミネートの内、26.8%を占めており、この中でクラフト紙とのラミネート紙は、約50%といわれる。その他上質紙、純白ロール紙、グラシン紙、板紙などがある。
ポリラミネートクラフト紙の用途別需要は、紙袋用(肥料、化学薬品、合成樹脂、食料品など)40%、感光材料、薬品などの一般包装用15%、各種機械および部品類など22%、粘着テープ、ガムテープ、剥離紙その他23%と推定される。(この数値は弊社で単純推定したものである。)
上質紙、模造紙、純白ロール紙、板紙などを基材としたものは、その大半が食品包装用といわれている。ワックス加工紙の分野であった種々の食品包装分野に広く深く進出している。
クラフトラミネートは、新製品開拓は一段落したとして他の紙基材により紙需要の開拓は活発であり、お茶漬のり、お茶、などの小袋包装(上質紙)、粉末ミルク、紅茶、ミックスケーキなどの紙器(板紙)、バター、チーズ、マーガリンなどの内装(グラシン紙)、牛乳容器、醤油容器などとしての晒クラフト紙、剥離紙、ガムテープ、粘着テープなどの原紙特殊紙として、一般包装用として化粧品、洗剤、薬品容器などに需要が伸長している。」(316頁3行~320頁8行)
(カ)甲6について
甲6には以下の記載がある。
「4.すべり性
包装機械というものは包装作業を迅速でかつ正確に処理する目的を持っていることは無論である。もしその材料が、搬送に大きな障害となるすべり性が悪く、抵抗を示すと非常に非効率的になるわけである。プラスチックフィルムは、従来の防湿セロファン紙に比べ、金属材料でつくられた機械の中では、往々にしてすべりを悪くすることがある。これは非効率的になるばかりか、時により、フィルムが破損したり、機械を停止させねばならない大きな原因となることがある。特に包装を美麗に仕上げるための機械のガイドを非常に細かく調整すると、それがかえって大きな抵抗となって現われてくることがある。すなわち、ガイドを広く調整するとその結果商品が汚なく包装されてくる。そこで最近では、テフロンをガイドにコートすることがあるがテフロン自身非常に高価なものであるのと、どうしてもテフロンを使用できない部分がある場合がある。そんなとき、機能を最初から考案し直さねばならない結果となる。」(147頁左欄24行~下6行)
「6.腰の強さ
包装機械ではフィルムの搬送に腰の強さを必要とする場合が多い。フィルムを所定の長さに繰出し切断する場合の繰出し、また製品を包むためフィルムをそこへ運んで行くとき、もし腰が弱いと機構を従来より複雑化しなければならなくなり、能率を低下させる。またガイドで折る場合ももし腰が弱いと、思うように作業ができないこともある。セロハンや紙、アルミハクなどに比較して、腰の弱いプラスチックフィルムはそのため機械化に大いに障害となることもある。すなわち機械特性が悪いわけで、もしどうしても機械化が必要なときには従来の包装機に使用されている機構を破棄して新しい機構を取り入れたものでなければならない。」(147頁右欄12~24行)
(キ)甲7について
甲7には以下の記載がある。
「1)こわさ
フィルムの腰の強さのことで、柔軟性に対することばである。包装材料としては、これが適当でないと作業性が悪くなる。あまり腰が弱いと取扱いにくく自動包装機などにかからない場合がある。この「こわさ」のあらわし方にいろいろあり、はっきり定義づけられていない。紙の場合においてもE(ヤング率)、E1(ヤング率×慣性能率)、E1/W(E1÷重量)など3とおりのあらわし方がある。包装材料として普通使われているセロハンや酢酸セルロース、ポリプロピレン、ポリエステルなどのフィルムは腰の強さが適当とされている。
2)すべり性
高速度自動機械においてしばしば問題となる、すべり性が適当でないと機械を能率よく運転できなかったり、ロス率が高くなったりする。そこで通常すべり性を知るのに摩擦係数を測定して目安としているが、実際と合わない場合があり、問題となる。」(560頁左欄下1行~右欄16行)
(ク)甲8の1について
甲8の1には以下の記載がある。
「13-1-1 ピロー型製袋充填包装機
ピロー型製袋充填包装機には大別すると横ピロー型と縦ピロー型とがある。
〇1横ピロー型包装機
横ピロー型包装機は高速包装および多品種少量生産品の包装などに適し、製袋充填包装機のうちで最も代表とされる包装機で(写真54)、ロール状の1枚のフィルムを使用して連続的に筒状にしながら被包装物の底面を長手方向に合掌張りし、包み、縦シールを連続して行う。つぎにフィルムの流れと直角方向に横シールを施すと同時につぎの袋部の横シールをなし、その項目から切り離す方式である。図139にその包装工程を示した。」(190頁右欄9~21行)
「
[図:0001426808000003.jpg]
」(191頁)図139
(ケ)甲8の2について
甲8の2には以下の記載がある。
「(1)ピロー包装機 プラスチックトレーに入れられた冷凍コロッケやシュウマイの大部分はPET/PE、OPP/PEのラミネートフィルムでピロー包装されている。
これら冷凍食品の包装機としては、ピロー包装機が使われている。
図6にピロー包装機の工程図13)について示した。図からもわかるように、巻き取られたプラスチックラミネートフィルムは、製袋部でセンターシールされ、袋状になった包装材料に冷凍食品が充填されてから、シールカット部で両端がシールカットされて製品ができあがる。製品の形態は、三方シールされたピロー(枕)状であり、冷凍食品を、1分間に30~150個包装することができる。」(56頁右欄下4行~57頁左欄10行)
「
[図:0001426808000004.jpg]
」(54頁)図1
「
[図:0001426808000005.jpg]
」(57頁)図6
(コ)甲9について
甲9には以下の記載がある。
「
[図:0001426808000006.jpg]
」(17頁)第10図
(サ)甲10の1について
甲10の1には以下の記載がある。
「【請求項1】
クラフトパルプを主原料パルプとし、染料で着色処理されるクラフト紙であって、
密度が0.5g/cm3以上0.9g/cm3以下であり、
古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料に得られる再生粒子を含有し、
灰分率が0.3%以上8%以下であり、
前記染料として下記条件(1)及び(2)を満足する2種類の染料A及び染料Bを含むことを特徴とするクラフト紙。
(1)染料A:Δa*>0、Δb*>0
(2)染料B:Δa*<0、Δb*<0
(上記Δa*及びΔb*は、CIELab色空間における各染料の色座標a*及びb*のJ.TAPPI No.21 A法で規定されている10時間後の差である。)」
(シ)甲10の2について
甲10の2には以下の記載がある。
「[0036](実施例1)
JIS P 8121-2(カナダ標準ろ水度法)に準じてろ水度(所謂フリーネス)を540mlにダブルディスクリファイナーで調整した針葉樹クラフトパルプ(NBKP)と、ろ水度を480mlにダブルディスクリファイナーで調整した広葉樹クラフトパルプ(LBKP)を質量比で50:50となるように混合したパルプスラリーに、カチオン化澱粉0.8部(対パルプ、固形分換算)、硫酸バンド0.6部(対パルプ、固形分換算)、アルキルケテンダイマー(荒川化学工業(株)製、TW-100)0.1部(対パルプ、固形分換算)を攪拌しながら順次添加し、紙料を調整した。
上記で得られた紙料をギャップフォーマー式抄紙機にて900m/分で抄紙し、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の引張強度および破断伸び、MD引裂強度、地合、生産効率、表裏差を表1に示す。」
「[0068]
[表1]
[図:0001426808000007.jpg]
」
(ス)甲11について
甲11には以下の記載がある。
「純白ロール紙
晒の亜硫酸パルプまたはクラフトパルプを原料として、ヤンキー式抄紙機で抄造した片面に光沢のある紙で、白色度、表面光沢、平滑性に優れ、印刷適正がよい。
【製品形態】 坪量は30、35、40、45、50、65g/m2の6種類が標準品で、このうち40、45、50g/m2が多い。製品形態には巻取と平判とがあるが平判の比率が高い。紙幅については業界で紙幅標準規格を定めて適用をはかっている。
【物性】 外観:異物の混入が少なく、地合が均一で光沢がよく、白色度も高いため、外観が美しい。印刷適正:表面の平滑性がよく、表面強度が強く、寸法安定性もよいので印刷適正にすぐれ、どんな印刷方式にも適応性があり、印刷上がりがよい。強度:原料は化学パルプ100%で填料などを使用しないため、各種強度が強く、しかもよくバランスがとれている。また、緊度が高いため紙に腰があり、作業性がよい。加工適正:印刷・製造・貼合などの加工に際しては表面状態がよいこと、厚さ、水分のムラが少ないことから走行性がよい。
【用途】 デパート・小売店などの包装紙、小型紙袋、紙製品、アルミ箔貼合わせ加工紙などに使用されている。」(109頁左欄8~31行)
(セ)甲12について
甲12には以下の記載がある。
「紙および白板紙の引張特性値について、それぞれ5個の引張試験片から得た平均値と標準偏差を、Table 2にまとめて示す。」(133頁左欄8~10行)
「
[図:0001426808000008.jpg]
」(132頁)表2
イ 申立理由2(甲1を主引用例とする進歩性欠如)について
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
・甲1発明の「クラフト紙」は、本件発明1の「紙基材」に相当する。
・甲1発明の「包装用加工紙」は、本件発明1の「軟包装材用紙」に相当する。
・甲1発明の「包装用加工紙」は、「フィルムラミネート法により、ポリエチレン加工した」「ポリエチレンの加工厚が20μm、30μm、50μm」であるから、「ラミネート層」である「ポリエチレンの加工」層を有しているといえ、当該「ポリエチレンの加工」層は、本件発明1の「ヒートシール層」及び「ラミネート層」に相当し、その厚さは、本件発明1の「20μm以上100μm以下」を満たす。
そうすると、本件発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点1>
「紙基材と、ヒートシール層を有し、
前記ヒートシール層が、厚さ20μm以上100μm以下のラミネート層である、
軟包装材用紙。」
<相違点1-1>
本件発明1のヒートシール層は、軟包装材用紙の「少なくとも一方の最表面に」設けられているのに対し、甲1発明ではそのような構成を有しているか不明な点。
<相違点1-2>
本件発明1の紙基材の厚さが「25μm以上100μm以下」であるのに対し、甲1発明では、クラフト紙の厚さが不明な点。
<相違点1-3>
本件発明1では、紙基材が含む全製紙用繊維に対するパルプの割合が「90重量%を超え」るのに対し、甲1発明では、当該割合が不明な点。
<相違点1-4>
本件発明1の紙基材は、下記条件(1)と(3)とを満足するのに対し、甲1発明のクラフト紙は、曲げのヒステリシス2HB、及び平滑度(王研式)が不明な点。
(1)紙基材のKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBが、0.02g・cm/cm以上1.2g・cm/cm以下
(3)紙基材の他方の表面が露出しており、露出している面の平滑度(王研式)が50秒以上700秒以下。
b 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1-4から判断する。
本件発明1では、紙基材のKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBの範囲を特定することにより、曲げ加工、罫線加工、折り加工等が難しくなるとともに、軟包装体に反りや丸みが生じ、美粧性や形態維持性が低下すること及び特に、製袋機のフォーマーと接触して曲げ加工や折り加工の際に負荷が生じる部分にシワが生じやすくなる、また、破れやすくなることを回避することが可能(【0020】)とするものであり、また、平滑度(王研式)の範囲を特定することにより、摩擦が大きく通紙時に軟包装材用紙に大きな負担がかかり、紙基材が破れやすくなること及び摩擦が小さく軟包装材用紙が滑りやすくなるため、ヒートシール部や裁断部に位置ずれが起こりやすくなることを回避することが可能(【0026】)ものであるが、甲1には、紙基材に関する条件(1)、(3)の点について、記載も示唆もない。
この点について、他の証拠にも記載ないし示唆となるものは見当たらず、甲1発明において、当該相違点1-4に係る具体的な数値を得ることが容易想到であったともいえない。
よって、甲1発明において、相違点1-4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
c 申立人の主張について
申立人は、製袋機を使用して包装袋を製造する際に、包装材料の剛性(腰の強さ)やすべり性が、機械へのかかりやすさ、加工時の負荷といった運転状況や製造される包装体の精度等に影響することは、甲2に記載されているほか、本件特許出願の数十年前に発行された周知技術文献に記載されるとおり当該技術分野において技術常識であったところ、甲1に記載された発明において、上記(1)に係る曲げのヒステリシスや(3)の平滑度を満足する包装材用紙をすることは当業者が容易になし得るところである旨主張する(申立書21頁)が、この点は上記bのとおりである。
よって、申立人の上記主張は、採用することはできない。
d 小括
以上によれば、相違点1-1~1-3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定するものであるから、上記(ア)bで説示したのと同様の理由により、甲1発明及び甲2~甲12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)小括
以上によれば、特許異議申立理由の「1(2)a申立理由2(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如)」は成り立たない。
ウ 申立理由3(甲3を主引用例とする新規性及び進歩性欠如)について
(ア)本件発明1について
a 対比
・甲3発明の「純白ロール紙」は、本件発明1の「紙基材」に相当する。
・甲3発明の「低密度ポリエチレン樹脂(三井・デュポンポリケミカル株式会社製:商品名ミラソン14P)とポリエステル樹脂(東レ株式会社製)を相溶化剤[大阪ガス株式会社製:商品名マリコン(登録商標)]を重量比率で1~10%添加して、混合押出しで」形成した「シーラント層(2)」は、本件発明1の「ヒートシール層」及び「ラミネート層」に相当するので、甲3発明の「シーラント層(2)」が「30μm」であることは、本件発明1の「ヒートシール層が、厚さ20μm以上100μm以下のラミネート層」を満たす。
・甲3発明の「積層体」は、本件発明1の「軟包装材用紙」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点2>
「紙基材と、ヒートシール層を有し、
前記ヒートシール層が、厚さ20μm以上100μm以下のラミネート層である、
軟包装材用紙。」
<相違点2-1>
本件発明1のヒートシール層は、軟包装材用紙の「少なくとも一方の最表面に」設けられているのに対し、甲1発明ではそのような構成を有しているか不明な点。
<相違点2-2>
本件発明1の紙基材の厚さが「25μm以上100μm以下」であるのに対し、甲1発明では、純白ロール紙の厚さが不明な点。
<相違点2-3>
本件発明1では、紙基材が含む全製紙用繊維に対するパルプの割合が「90重量%を超え」るのに対し、甲1発明では、当該割合が不明な点。
<相違点2-4>
本件発明1の紙基材は、下記条件(1)と(3)とを満足するのに対し、甲1発明の純白ロール紙は、曲げのヒステリシス2HB、及び平滑度(王研式)が不明な点。
(1)紙基材のKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBが、0.02g・cm/cm以上1.2g・cm/cm以下
(3)紙基材の他方の表面が露出しており、露出している面の平滑度(王研式)が50秒以上700秒以下。
b 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2-4から判断する。
相違点2-4は実質的な相違点であり、本件発明1では、紙基材のKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBの範囲を特定することにより、曲げ加工、罫線加工、折り加工等が難しくなるとともに、軟包装体に反りや丸みが生じ、美粧性や形態維持性が低下すること及び特に、製袋機のフォーマーと接触して曲げ加工や折り加工の際に負荷が生じる部分にシワが生じやすくなる、また、破れやすくなることを回避することが可能(【0020】)とするものであり、また、平滑度(王研式)の範囲を特定することにより、摩擦が大きく通紙時に軟包装材用紙に大きな負担がかかり、紙基材が破れやすくなること及び摩擦が小さく軟包装材用紙が滑りやすくなるため、ヒートシール部や裁断部に位置ずれが起こりやすくなることを回避することが可能(【0026】)ものであるが、甲1には、紙基材に関する条件(1)、(3)の点について、記載も示唆もない。
この点について、他の証拠にも記載ないし示唆となるものは見当たらず、甲1発明において、当該相違点2-4に係る具体的な数値を得ることが容易想到であったともいえない。。
よって、本件発明1は甲3発明ではない。また、甲3発明において、相違点2-4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
c 申立人の主張について
申立人は、本件明細書の実施例が、ほとんど全て(実施例4-3を除く)の実施例の紙基材がヤンキードライヤーで乾燥して得られる紙であり、純白ロール紙もヤンキードライヤーで乾燥した包装用紙であるから、本件特許の実施例に記載された紙基材は、甲3発明の「坪量が40g/m2の純白ロール紙」とほぼ同じ工程によって製造されるものと考えるのが相当であり、そして、本件特許明細書には、甲3発明の「坪量40g/m2」の上下で近接する実施例(例えば、実施例1-2は坪量35.3g/m2、実施例1-4は45.0g/m2)がはじめに示されていることからみても、甲3発明に係る「坪量が40g/m2の純白ロール紙」は、相違点2-4に係るMD方向の曲げのヒステリシス2HB、露出している面の平滑度(王研式)等について満足する蓋然性が高い旨を主張する(申立書32頁)が、ヤンキードライヤーで乾燥していること、本件明細書で同程度の坪量の実施例がはじめに示されることをもって、甲3発明に係る「坪量が40g/m2の純白ロール紙」が、相違点2-4に係る構成を満足する蓋然性が高いとはいえないことは明らかである。
また、申立人は、製袋機を使用して包装袋を製造する際に、包装材料の剛性(腰の強さ)やすべり性が、機械へのかかりやすさ、加工時の負荷といった運転状況や製造される包装体の精度等に影響することは、甲2に記載されているほか、本件特許出願の数十年前に発行された周知技術文献に記載されるとおり当該技術分野において技術常識であったところ、甲3に記載された発明において、上記(1)に係る曲げのヒステリシスや(3)の平滑度を満足する包装材用紙をすることは当業者が容易になし得るところである旨主張する(申立書26頁)が、この点は上記bのとおりである。
よって、申立人の上記主張は、採用することはできない。
d 小括
以上によれば、相違点2-1~2-3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明ではなく、また、甲3発明及び甲1、甲2、甲4~甲12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定するものであるから、上記(ア)bで説示したのと同様の理由により、甲3発明ではなく、甲3発明及び甲1、甲2、甲4~甲12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)小括
以上によれば、特許異議申立理由の「1(2)b申立理由3(甲第3号証を主引用例とする新規性及び進歩性欠如)」は成り立たない。
エ パブリックドメインであることについて
申立人は、上記申立理由1~3に加え、紙基材と、ラミネートによるヒートシール層を有する軟包装材用紙は、遅くとも昭和33年当時から実用化されおり、純白ロール紙を含めた本件特許で用いられているヤンキードライヤーで製造した紙基材もまた、遅くとも昭和33年当時から、適宜選択使用されており、軟包装分野において、包装目的とする包装物に合わせて、紙基材、ラミネート層、包装方法を適宜選択して実施することは、60年以上醸成されてきたパブリックドメインともいえる技術であるから、本件発明は、パブリックドメインであり、製袋機で製袋可能な軟包装材用紙と、この軟包装材用紙を用いた軟包装体を提供することという本件特許発明の課題についても、従来から内在する技術課題でしかない旨主張する(申立書33頁)が、本件発明が、申立人が提出した証拠により新規性、進歩性が否定されないことは、上記ア~ウで説示したとおりである。
よって、申立人の上記主張は、採用することはできない。
第6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができず、また、他に本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700303