特許異議申立
2024-700384
防湿性紙およびその製造方法
- 審判番号
- 2024-700384
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-066898
- 登録番号
- 7366568
- 請求日
- 2024年04月22日
- 審決日
- 2026年01月15日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本製紙株式会社
- 【権利者代理人】齋藤 晴男
- 【権利者代理人】齋藤 貴広
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 田口 傑
- 分類
- P1651.121-YAA(D21H) / P1651.537-YAA(D21H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7366568号発明「防湿性紙およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7366568号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5について訂正することを認める。
特許第7366568号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7366568号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成31年3月29日を出願日とするものであって、令和5年10月13日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和5年10月23日発行)がされ、その後、その特許について、令和6年4月22日に特許異議申立人赤松智信(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和6年11月29日付けで取消理由が通知され、令和7年1月31日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、令和7年4月9日に、この本件訂正請求について、申立人から意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第7366568号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項を含むものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「古紙パルプ配合率が10質量%以上である紙基材と、該紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層と、を備え、透湿度が50g/m2・24h以下であり、前記塗工層は合成樹脂およびワックスを含有し、前記塗工層表面の白色度が20%以上であり、前記塗工層表面の120秒コッブ吸水度が1g/m2以下であり、前記塗工層表面の平滑度が40秒以上であり、前記塗工層の塗工量は20g/m2以下であることを特徴とする防湿性紙。」と記載されるのを、「古紙パルプ配合率が10質量%以上である紙基材と、該紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層と、を備え、透湿度が50g/m2・24h以下であり、前記塗工層はスチレン系樹脂およびアクリル系樹脂と、パラフィンを含む炭化水素系ワックスと、を含有するとともに、無機顔料を含有し、前記塗工層表面の白色度が20%以上であり、前記塗工層表面の120秒コッブ吸水度が1g/m2以下であり、前記塗工層表面の平滑度が40秒以上であり、前記塗工層の塗工量は20g/m2以下であることを特徴とする防湿性紙。」に訂正する。(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記塗工層は、顔料を含有することを特徴とする請求項1に記載の防湿性紙。」と記載されるのを、「前記塗工層における前記無機顔料の含有量は、5質量%以上、40質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の防湿性紙。」に訂正する。(請求項2を直接的に引用する請求項4も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記顔料は、少なくとも無機顔料を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防湿性紙。」と記載されるのを、「前記無機顔料は、アクペクト比が10以上の扁平形状であることを特徴とする請求項1に記載の防湿性紙。」に訂正する。(請求項3を直接的又は間接的に引用する請求項4も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「紙基材と、該紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層と、を備え、透湿度が50g/m2・24h以下であり、前記塗工層表面の白色度が20%以上であり、前記塗工層表面の120秒コッブ吸水度が1g/m2以下であり、前記塗工層表面の平滑度が40秒以上である防湿性紙の製造方法であって、古紙パルプ配合率が10質量%以上である前記紙基材の少なくとも一方の面に、合成樹脂およびワックスを含有する塗工剤を塗工量が20g/m2以下となるようにブレード塗工方式により塗工し、塗工された前記塗工剤を乾燥して前記塗工層とすることを特徴とする防湿性紙の製造方法。」と記載されるのを、「紙基材と、該紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層と、を備え、透湿度が50g/m2・24h以下であり、前記塗工層表面の白色度が20%以上であり、前記塗工層表面の120秒コッブ吸水度が1g/m2以下であり、前記塗工層表面の平滑度が40秒以上である防湿性紙の製造方法であって、古紙パルプ配合率が10質量%以上である前記紙基材の少なくとも一方の面に、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂と、パラフィンを含む炭化水素系ワックスと、を含有するとともに、無機顔料を含有する塗工剤を塗工量が20g/m2以下となるようにブレード塗工方式により塗工し、塗工された前記塗工剤を乾燥して前記塗工層とすることを特徴とする防湿性紙の製造方法。」に訂正する。
(5)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~4は、直接的又は間接的に請求項1を引用するものであるから、訂正後の請求項〔1~4〕は、一群の請求項である。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に係る発明の塗工層に含有される合成樹脂とワックスについて、それぞれ具体的に特定し限定するとともに、塗工層が無機顔料を含有することを限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
この訂正は、本件明細書の【0059】の「溶媒中にスチレン系樹脂およびアクリル系樹脂とパラフィンを含む炭化水素系ワックスが混合分散された防湿剤」との記載、同じく【0026】の塗工層に含有させる顔料について「炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーティッドクレー、タルク、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト、マイカ、モンモリトナイト等の無機顔料を挙げることができ」るとの記載、及び、同じく【0060】の「上記の防湿剤100質量部に消泡剤0.46質量部、高扁平カオリン40質量部、合成マイカ10質量部を添加して塗工剤Bを調製した。」との記載に基づくものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載された顔料を無機顔料に限定し、その無機顔料の含有量を限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
この訂正は、上記(1)における本件明細書の【0026】、【0060】の記載及び本件明細書の【0026】の「塗工層における顔料の含有量は、5質量%以上、40質量%以下、好ましくは10質量%以上、35質量%以下とすることができる。」との記載に基づくもので、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載された顔料を無機顔料と限定し、その無機顔料のアスペクト比を限定するとともに、引用する請求項を減らす訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
この訂正は、上記(1)における本件明細書の【0026】、【0060】の記載及び本件明細書の【0026】の「このような扁平形状の無機顔料は、アスペクト比が10以上であることが好ましい。」との記載に基づくもので、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項5に係る発明の塗工層剤に含有される合成樹脂とワックスについて、それぞれ具体的に特定し限定するとともに、塗工剤が無機顔料を含有することを限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
この訂正は、訂正事項1と同様に、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 本件訂正請求についてのまとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1~4〕、5について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
古紙パルプ配合率が10質量%以上である紙基材と、該紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層と、を備え、透湿度が50g/m2・24h以下であり、前記塗工層はスチレン系樹脂およびアクリル系樹脂と、パラフィンを含む炭化水素系ワックスと、を含有するとともに、無機顔料を含有し、前記塗工層表面の白色度が20%以上であり、前記塗工層表面の120秒コッブ吸水度が1g/m2以下であり、前記塗工層表面の平滑度が40秒以上であり、前記塗工層の塗工量は20g/m2以下であることを特徴とする防湿性紙。
【請求項2】
前記塗工層における前記無機顔料の含有量は、5質量%以上、40質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の防湿性紙。
【請求項3】
前記無機顔料は、アクペクト比が10以上の扁平形状であることを特徴とする請求項1に記載の防湿性紙。
【請求項4】
前記紙基材の坪量は、10g/m2以上、750g/m2以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の防湿性紙。
【請求項5】
紙基材と、該紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層と、を備え、透湿度が50g/m2・24h以下であり、前記塗工層表面の白色度が20%以上であり、前記塗工層表面の120秒コッブ吸水度が1g/m2以下であり、前記塗工層表面の平滑度が40秒以上である防湿性紙の製造方法であって、古紙パルプ配合率が10質量%以上である前記紙基材の少なくとも一方の面に、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂と、パラフィンを含む炭化水素系ワックスと、を含有するとともに、無機顔料を含有する塗工剤を塗工量が20g/m2以下となるようにブレード塗工方式により塗工し、塗工された前記塗工剤を乾燥して前記塗工層とすることを特徴とする防湿性紙の製造方法。」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の要旨
(1)理由1(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)理由2(甲第1号証、甲第4号証を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用刊行物>
甲第1号証:特開2004-238750号公報
甲第2号証:池田康司、「古紙パルプの品質向上」、紙パ技協誌、第59巻、第7号、2005年7月、76~82頁
甲第3号証:後藤英雄、「古紙回収可能な防湿・防水紙の開発」、包装技術、社団法人日本包装技術協会、第20巻、第9号、1982年9月、42~46頁
甲第4号証:特開2006-118108号公報
甲第5号証:特開平10-175674号公報
甲第6号証:「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法) Z0208-1976」、JISハンドブック □63(当審注:四角内に63の数字)包装、財団法人日本規格協会、2008年6月23日、1165~1167頁
甲第7号証:「紙のリサイクルと再生紙~地球にやさしい紙パルプ産業~」、株式会社紙業タイムス社、1992年8月30日、152~168頁
甲第8号証:鴻野銃二郎、「印刷用塗工紙の最近の技術について(I)」、紙パ技協誌、第39巻、第4号、1985年4月、1~12頁
以下、甲第1号証を「甲1」といい、他も同様にいう。
2 理由1(明確性)について
(1)理由1(明確性)の概要
明確性に係る理由1は、請求項1及び請求項5の「透湿度が50g/m2・24h以下」との記載は、測定時の周囲の温度及び湿度が特定されていないため、本件発明は明確でないというものである。
以下、上記記載を含む本件発明が、明確であるか否か検討する。
(2)判断
ア 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
イ そこで、請求項1及び請求項5の「透湿度が50g/m2・24h以下」との記載についてみると、「透湿度」は、「一定時間に単位面積の膜状物質を通過する水蒸気の量」(甲6の「2.定義」の項)をいうから、この記載は、24時間に防湿性紙1平方メートルを通過する水蒸気が50g以下であることを意味すると理解できる。
ウ 他方、本件明細書の記載をみると、「透湿度」は「JIS Z 0208に準拠して測定する。」(段落【0062】)とされている。そして、日本産業規格の「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」として規定される「JIS Z 0208」(甲6)には、測定装置(「3.装置」の項)、試料の形成方法(「5.試験片」の項)、試験方法(「6.操作」の項)等のほか、「この規格では、温度25℃又は40℃において防湿包装材料を境界面とし、一方の側の空気を相対湿度90%、他の側の空気を吸湿剤によって乾燥状態に保ったとき、24時間にこの境界面を通過する水蒸気の質量(g)を,その材料1m2当たりに換算した値をその材料の透湿度と定める。」(「2.定義」の項)と記載され、測定時の温湿度条件を、条件A「温度25±0.5℃ 相対湿度90±2%」か、条件B「温度40±0.5℃ 相対湿度90±2%」のいずれかとして(「3.3恒温恒湿装置」の項)、試験結果を報告する際には、「使用したふん囲気の温湿度条件(A、Bの区分)を報告」(「8.報告」の項)することが規定されている。
エ そうすると、請求項1及び請求項5の「透湿度が50g/m2・24h以下」との記載は、24時間に防湿性紙1平方メートルを通過する水蒸気が50g以下であることを意味すると理解される一方、本件明細書の記載及び出願時の技術常識を踏まえると、透湿度は、「温度25℃ 湿度90%」と「温度40℃ 湿度90%」のどちらかの条件で測定されたものと判断される。その上で、請求項1及び請求項5には、どちらの条件で測定されたものか測定条件が付されていないから、「透湿度が50g/m2・24h以下」との記載は、「温度25℃ 湿度90%」と「温度40℃ 湿度90%」のどちらの条件で測定しても、「透湿度」が「50g/m2・24h以下」を満たす防湿性紙であると理解するのが相当である。
この理解は、特許権者の令和7年1月31日の意見書での説明(「6-4-1 理由1に対する意見」)とも整合する。
オ そして、第三者は、防湿性紙を、「JIS Z 0208」に準拠して、条件A「温度25±0.5℃ 相対湿度90±2%」と条件B「温度40±0.5℃ 相対湿度90±2%」の下で測定し、「透湿度が50g/m2・24h以下」であるか否かを試験することにより、当該構成要件を充足するか否かを判断できるから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
カ よって、本件発明1~5は明確である。
3 理由2(甲1を主引用例とする進歩性)について
当審合議体は以下のとおり、理由2(進歩性)によっては、本件発明1~5に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1には、特に実施例1の水離解性撥水・耐水紙に着目すると、次の「甲1発明1」が記載されている。なお、カッコ内は、理解促進のため特に参酌すべき段落等である。
「スチレン・アクリル酸エステルエマルション(サイビノールEK-61、サイデン化学)と、ポリエチレンワックス(ケミパールW-400、三井化学)と、炭酸カルシウム(ソフトン1200、白石工業)を配合した塗工液を、片面あたり7g/m2となるように上質紙(KYP81.4g/m2、日本製紙)に両面塗工し、乾燥させた撥水・耐水コート層を備え、(【0015】、【0016】、【0022】)
JIS P8140のコッブ吸水度試験方法に準拠して測定したコッブ吸水度(2分間)が、表面、裏面とも0.2g/m2であり、(【0032】、【0036】)
JIS P8119の紙及び板紙のベック試験器による平滑度試験方法に準拠して測定した平滑度が、表面が54秒、裏面が56秒である、(【0034】、【0036】)
水離解性撥水・耐水紙。」
イ また、甲1には、実施例1の水離解性撥水・耐水紙の製造方法に関し、次の「甲1発明2」も記載されている。
「スチレン・アクリル酸エステルエマルション(サイビノールEK-61、サイデン化学)と、ポリエチレンワックス(ケミパールW-400、三井化学)と、炭酸カルシウム(ソフトン1200、白石工業)を配合した塗工液を、片面あたり7g/m2となるように上質紙(KYP81.4g/m2、日本製紙)に両面塗工し、乾燥させて撥水・耐水コート層を形成し、(【0015】、【0016】、【0022】)
JIS P8140のコッブ吸水度試験方法に準拠して測定したコッブ吸水度(2分間)が、表面、裏面とも0.2g/m2であり、(【0032】、【0036】)
JIS P8119の紙及び板紙のベック試験器による平滑度試験方法に準拠して測定した平滑度が、表面が54秒、裏面が56秒である、(【0034】、【0036】)
水離解性撥水・耐水紙の製造方法。」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明1を対比する。
(ア)甲1発明1の「上質紙(KYP81.4g/m2、日本製紙)」と、本件発明1の「古紙パルプ配合率が10質量%以上である紙基材」とは、「紙基材」という限りで一致する。
(イ)甲1発明1の「スチレン・アクリル酸エステルエマルション(サイビノールEK-61、サイデン化学)」と、本件発明1の「スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂」とは、「合成樹脂」という限りで一致する。
甲1発明1の「ポリエチレンワックス(ケミパールW-400、三井化学)」と、本件発明1の「パラフィンを含む炭化水素系ワックス」とは、「ワックス」という限りで一致する。
甲1発明1の「炭酸カルシウム(ソフトン1200、白石工業)」は、本件発明1の「無機顔料」に相当する。
そうすると、甲1発明1の「スチレン・アクリル酸エステルエマルション(サイビノールEK-61、サイデン化学)と、ポリエチレンワックス(ケミパールW-400、三井化学)と、炭酸カルシウム(ソフトン1200、白石工業)を配合した塗工液」を「両面塗工し、乾燥させた撥水・耐水コート層」は、本件発明1の「スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂と、パラフィンを含む炭化水素系ワックスと、を含有するとともに、無機顔料を含有」する「塗工層」と、「合成樹脂、ワックス及び無機顔料を含有する塗工層」という限りで一致する。
(ウ)甲1発明1の「塗工液を、片面あたり7g/m2となるように上質紙(KYP81.4g/m2、日本製紙)に両面塗工し、乾燥させた撥水・耐水コート層」は、本件発明1の「紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層」であって「塗工層の塗工量は20g/m2以下である」ことに相当する。
(エ)甲1発明1の「JIS P8140のコッブ吸水度試験方法に準拠して測定したコッブ吸水度(2分間)が、表面、裏面とも0.2g/m2」であることは、本件発明1の「塗工層表面の120秒コッブ吸水度が1g/m2以下であ」ることに相当する。
(オ)甲1発明1の「水離解性撥水・耐水紙」と本件発明1の「防湿性紙」とは、「紙」という限りで一致する。
イ すると、本件発明1と甲1発明1は、
「紙基材と、該紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層と、を備え、前記塗工層は合成樹脂、ワックス及び無機顔料を含有し、前記塗工層表面の120秒コッブ吸水度が1g/m2以下であり、前記塗工層の塗工量は20g/m2以下である紙。」で一致し、次の相違点A1~相違点A7で相違する。
《相違点A1》
「合成樹脂」に関して、本件発明1が「スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂」であるのに対し、甲1発明1は「スチレン・アクリル酸エステルエマルション(サイビノールEK-61、サイデン化学)」である点。
《相違点A2》
「ワックス」に関して、本件発明1が「パラフィンを含む炭化水素系ワックス」であるのに対し、甲1発明1は「ポリエチレンワックス(ケミパールW-400、三井化学)」である点。
《相違点A3》
「紙基材」に関して、本件発明1の「紙基材」は「古紙パルプ配合率が10質量%以上である」のに対し、甲1発明1の「上質紙(KYP81.4g/m2、日本製紙)」は古紙パルプ配合率について特定されていない点。
《相違点A4》
本件発明1は「透湿度が50g/m2・24h以下であ」るのに対し、甲1発明1は透湿度が特定されていない点。
《相違点A5》
本件発明1は「塗工層表面の白色度が20%以上であ」るのに対し、甲1発明1の「塗工液」の塗工層表面の白色度は特定されていない点。
《相違点A6》
本件発明1は「塗工層表面の平滑度が40秒以上であ」るのに対し、甲1発明1は「JIS P8119の紙及び板紙のベック試験器による平滑度試験方法に準拠して測定した平滑度が、表面が54秒、裏面が56秒である」点。
《相違点A7》
「紙」に関して、本件発明1が「防湿性紙」であるのに対し、甲1発明1は「水離解性撥水・耐水紙」である点。
ウ 上記相違点A1について検討する。
甲1発明1の「スチレン・アクリル酸エステルエマルション(サイビノールEK-61、サイデン化学)」は、甲1(【0022】)の記載によれば、スチレンとアクリル酸エステルの共重合比率が60:40の合成樹脂である。これは、本件明細書の「本発明を構成する塗工層が含有することのできるスチレン系樹脂とは、構造中にスチレン骨格を有するスチレン系単量体の共重合割合が50質量%以上である樹脂」(【0028】)との記載、また、「本発明を構成する塗工層が含有することのできるアクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体であるアクリル系単量体の共重合割合が50質量%以上である樹脂」(【0031】)との記載によれば、「スチレン系樹脂」に該当するものである。
甲1には、塗工液に合成樹脂として「スチレン・アクリル酸エステルエマルション(サイビノールEK-61、サイデン化学)」の他に含有していることは記載されていない。また、甲1に、「スチレン・アクリル酸エステルエマルション(サイビノールEK-61、サイデン化学)」と共にアクリル樹脂を含有させることは記載も示唆もされていない。なお、甲1には、「塗液中に、必要に応じて、更にSBRエマルション、EVAエマルション、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、PVA、澱粉、カゼイン等の水溶性バインダー、増粘剤、増強剤、保水剤、消泡剤等を適宜添加することが出来る。」(【0014】)と記載され、多数の添加剤の中の一例としてポリアクリル酸ナトリウムが例示されるに過ぎず、甲1発明1の「スチレン・アクリル酸エステルエマルション(サイビノールEK-61、サイデン化学)」と共にポリアクリル酸ナトリウムを含有させて塗工層を構成したものは記載されていない。
そうすると、甲1発明1の塗工液に、「スチレン・アクリル酸エステルエマルション(サイビノールEK-61、サイデン化学)」に、敢えてアクリル系樹脂を含有させる動機付けはなく、他の証拠にも動機付けは記載されていない。
よって、本件発明1の相違点A1に係る構成は、甲1発明1に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
エ 以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるところ、上記(2)エで述べたように、本件発明1は、甲1発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~4も、甲1発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明5について
ア 上記3(2)アにおける対比を踏まえて、本件発明5と甲1発明2を対比する。
甲1発明2の「スチレン・アクリル酸エステルエマルション(サイビノールEK-61、サイデン化学)と、ポリエチレンワックス(ケミパールW-400、三井化学)と、炭酸カルシウム(ソフトン1200、白石工業)を配合した塗工液」は、本件発明5の「スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂と、パラフィンを含む炭化水素系ワックスと、を含有するとともに、無機顔料を含有する塗工剤」と、「合成樹脂、ワックス及び無機顔料を含有する塗工剤」という限りで一致する。
甲1発明2の「塗工液を、片面あたり7g/m2となるように上質紙(KYP81.4g/m2、日本製紙)に両面塗工し、乾燥させて撥水・耐水コート層を形成」することは、本件発明5の「紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層」であって「塗工剤を塗工量が20g/m2以下となるように」「塗工し、塗工された前記塗工剤を乾燥して前記塗工層とする」ことに相当する。
その余の構成については、上記3(2)アで対比したとおりである。
イ すると、本件発明5と甲1発明2は、
「紙基材と、該紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層と、を備え、前記塗工層表面の120秒コッブ吸水度が1g/m2以下である紙の製造方法であって、前記紙基材の少なくとも一方の面に、合成樹脂、ワックス及び無機顔料を含有する塗工剤を塗工量が20g/m2以下となるように塗工し、塗工された前記塗工剤を乾燥して前記塗工層とする紙の製造方法。」で一致し、上記相違点A1~相違点A7で相違するほか、次の相違点A8でも相違する。
《相違点A8》
本件発明5が「ブレード塗工方式により塗工」するのに対し、甲1発明2は塗工方式について特定されていない点。
ウ 相違点A1についての判断は、上記3(2)ウで述べたとおりであり、本件発明5の相違点A1に係る構成は、甲1発明2に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
エ 以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 理由2(甲4を主引用例とする進歩性)について
(1)甲4に記載された発明
ア 甲4には、特に実施例1の防湿紙に着目すると、次の「甲4発明1」が記載されている。
「スチレン・アクリル系合成樹脂エマルジョン(商品名:サイビノールX-504-302E-1、サイデン化学(株)製)と、ワックス系エマルジョン(商品名:サイビノールSKP-W、サイデン化学(株)製)と、有機系顔料(商品名:G-200、根上工業(株)製)の混合液を、坪量75g/m2の未晒クラフト紙の片面に、塗工量が16g/m2となるように塗工した防湿層を設け、(【0019】)
透湿度は平坦部で20g/m2・24hr、透水度は平坦部で46g/m2・24hrである、(【0026】)
防湿紙。」
イ また、甲4には、実施例1の防湿紙の製造方法に関し、次の「甲4発明2」も記載されている。
「スチレン・アクリル系合成樹脂エマルジョン(商品名:サイビノールX-504-302E-1、サイデン化学(株)製)と、ワックス系エマルジョン(商品名:サイビノールSKP-W、サイデン化学(株)製)と、有機系顔料(商品名:G-200、根上工業(株)製)の混合液を作製し、この混合液を坪量75g/m2の未晒クラフト紙の片面に、塗工量が16g/m2となるようにエアナイフコーターにて塗工して防湿層を設け、(【0019】)
透湿度は平坦部で20g/m2・24hr、透水度は平坦部で46g/m2・24hrである、(【0026】)
防湿紙の製造方法。」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲4発明1を対比する。
(ア)甲4発明1の「未晒クラフト紙」と、本件発明1の「古紙パルプ配合率が10質量%以上である紙基材」とは、「紙基材」という限りで一致する。
(イ)甲4発明1の「スチレン・アクリル系合成樹脂エマルジョン(商品名:サイビノールX-504-302E-1、サイデン化学(株)製)」と、本件発明1の「スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂」とは、「合成樹脂」という限りで一致する。
甲4発明1の「ワックス系エマルジョン(商品名:サイビノールSKP-W、サイデン化学(株)製)」と、本件発明1の「パラフィンを含む炭化水素系ワックス」とは、「ワックス」という限りで一致する。
甲1発明1の「有機系顔料(商品名:G-200、根上工業(株)製)」と、本件発明1の「無機顔料」とは、「顔料」という限りで一致する。
そうすると、甲4発明1の「スチレン・アクリル系合成樹脂エマルジョン(商品名:サイビノールX-504-302E-1、サイデン化学(株)製)と、ワックス系エマルジョン(商品名:サイビノールSKP-W、サイデン化学(株)製)と、有機系顔料(商品名:G-200、根上工業(株)製)の混合液」を「塗工した防湿層」は、本件発明1の「スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂と、パラフィンを含む炭化水素系ワックスと、を含有するとともに、無機顔料を含有」する「塗工層」と、「合成樹脂、ワックス及び顔料を含有する塗工層」という限りで一致する。
(ウ)甲4発明1の「混合液を、坪量75g/m2の未晒クラフト紙の片面に、塗工量が16g/m2となるように塗工した防湿層」は、本件発明1の「紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層」であって「塗工層の塗工量は20g/m2以下である」ことに相当する。
(エ)甲4発明1の「透湿度は平坦部で20g/m2・24hr」であることは、本件発明1の「透湿度が50g/m2・24h以下」であることに相当する。
(オ)甲4発明1の「防湿紙」は、本件発明1の「防湿性紙」に相当する。
イ すると、本件発明1と甲4発明1は、
「紙基材と、該紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層と、を備え、透湿度が50g/m2・24h以下であり、前記塗工層は合成樹脂、ワックス及び顔料を含有し、塗工層の塗工量は20g/m2以下である防湿性紙。」で一致し、次の相違点B1~相違点B7で相違する。
《相違点B1》
「合成樹脂」に関して、本件発明1が「スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂」であるのに対し、甲4発明1は「スチレン・アクリル系合成樹脂エマルジョン(商品名:サイビノールX-504-302E-1、サイデン化学(株)製)」である点。
《相違点B2》
「ワックス」に関して、本件発明1が「パラフィンを含む炭化水素系ワックス」であるのに対し、甲4発明1は「ワックス系エマルジョン(商品名:サイビノールSKP-W、サイデン化学(株)製)」である点。
《相違点B3》
「顔料」に関して、本件発明1が「無機顔料」であるのに対し、甲4発明1は「有機系顔料(商品名:G-200、根上工業(株)製)」である点。
《相違点B4》
「紙基材」に関して、本件発明1の「紙基材」は「古紙パルプ配合率が10質量%以上である」のに対し、甲4発明1の「未晒クラフト紙」は古紙パルプ配合率について特定されていない点。
《相違点B5》
本件発明1の「塗工層表面の白色度が20%以上であ」るのに対し、甲4発明1の防湿層表面の白色度は特定されていない点。
《相違点B6》
本件発明1は「塗工層表面の120秒コッブ吸水度が1g/m2以下であ」るのに対し、甲4発明1の防湿層表面の120秒コッブ吸水度は特定されていない点。
《相違点B7》
本件発明1は「塗工層表面の平滑度が40秒以上であ」るのに対し、甲4発明1の防湿層表面の平滑度は特定されていない点。
ウ 上記相違点B1について検討する。
甲4発明1の「スチレン・アクリル系合成樹脂エマルジョン(商品名:サイビノールX-504-302E-1、サイデン化学(株)製)」は、甲4の記載(【0009】)によれば、「スチレン及びスチレン誘導体、ブタジエン及びブタジエン誘導体、アクリル酸(メタクリル酸)及び、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステルやメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル等を共重合した樹脂」と理解されるが、これは、「スチレン系樹脂」と「アクリル系樹脂」が塗工層中に共に含有されるものではない。また、甲4に、「スチレン系樹脂」と「アクリル系樹脂」を共に含有することを示唆する記載はなく、敢えて「スチレン系樹脂」と「アクリル系樹脂」を共に含有するようにする動機付けがあるとはいえない。
他の証拠にも動機付けは記載されていない。
よって、本件発明1の相違点B1に係る構成は、甲4発明1に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
エ 以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるところ、上記4(2)エで述べたように、本件発明1は、甲4発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~4も、甲4発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明5について
ア 上記4(2)アにおける対比を踏まえて、本件発明5と甲4発明2を対比する。
甲4発明2の「スチレン・アクリル系合成樹脂エマルジョン(商品名:サイビノールX-504-302E-1、サイデン化学(株)製)と、ワックス系エマルジョン(商品名:サイビノールSKP-W、サイデン化学(株)製)と、有機系顔料(商品名:G-200、根上工業(株)製)の混合液」と、本件発明5の「スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂と、パラフィンを含む炭化水素系ワックスと、を含有するとともに、無機顔料を含有する塗工剤」とは、「合成樹脂、ワックス及び顔料を含有する塗工剤」という限りで一致する。
甲4発明2の「混合液を坪量75g/m2の未晒クラフト紙の片面に、塗工量が16g/m2となるように」「塗工して防湿層を設け」ることは、本件発明5の「紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層」であって「塗工剤を塗工量が20g/m2以下となるように」「塗工し」、「前記塗工層とする」ことに相当する。
その余の構成については、上記4(2)アで対比したとおりである。
イ すると、本件発明5と甲4発明2は、
「紙基材と、該紙基材の少なくとも一方の面に位置する塗工層と、を備える防湿性紙の製造方法であって、前記紙基材の少なくとも一方の面に、合成樹脂、ワックス及び顔料を含有する塗工剤を塗工量が20g/m2以下となるように塗工し、前記塗工層とする防湿性紙の製造方法。」で一致し、相違点B1~相違点B7で相違するほか、次の相違点B8及び相違点B9でも相違する。
《相違点B8》
本件発明5が「ブレード塗工方式により塗工」するのに対し、甲4発明2は塗工方式について特定されていない点。
《相違点B9》
本件発明5が「塗工された前記塗工剤を乾燥して前記塗工層とする」のに対し、甲4発明2は乾燥工程について特定されていない点。
ウ 相違点B1についての判断は、上記4(2)ウで述べたとおりであり、本件発明5の相違点B1に係る構成は、甲4発明2に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
エ 以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、甲4発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、本件明細書の記載には、実施例において特定の防湿剤が例示されるのみであり、また、本件発明には効果を奏さないものも含まれているから、本件発明はサポート要件を満たしていない旨(特許異議申立書17ページ)主張する。
しかし、本件発明の解決しようとする課題は、「防湿性と防水性を兼ね備え、且つ、美粧性に優れた防湿性紙およびその製造方法を提供すること」(本件明細書の【0009】)であるところ、本件明細書の記載を参照すると、「透湿度が50g/m2・24h以下であることにより、優れた防湿性を具備するものであ」(【0016】)り、「塗工層表面の白色度が20%以上」、「塗工層表面の120秒コッブ吸水度が1g/m2以下」、「塗工層表面の平滑度が40秒以上」とすることにより、美粧性に加え、防湿性と防水性を優れたものとすることができると記載されており(【0024】、【0025】、【0036】~【0039】)、これらの事項を特定する本件発明は、上記課題を解決できるものと理解できる。
したがって、申立人のサポート要件に係る上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700384