特許異議申立
2024-700278
重合体粒子
- 審判番号
- 2024-700278
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-053078
- 登録番号
- 7354335
- 請求日
- 2024年03月28日
- 審決日
- 2025年01月17日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】綜研化学株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人エスエス国際特許事務所
- 【異議申立人】平松 由紀子
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 細井 龍史
- 審判官 北澤 健一
- 分類
- P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F) / P1651.536-YAA(C08F) / P1651.537-YAA(C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第131条の2第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7354335号発明「重合体粒子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7354335号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1、2〕について訂正することを認める。
特許第7354335号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7354335号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成30年10月26日に出願された特願2018-201694号に係る出願の一部を新たな出願とした特願2022-53078号に係るものであって、令和5年9月22日にその特許権の設定登録(請求項の数2)がされ、同年10月2日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年3月28日に特許異議申立人 平松 由紀子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続は以下のとおりである。
令和6年 5月30日付け 取消理由通知
同年 7月31日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 9月 4日 訂正請求書の手続補正書(方式)の提出
同年 9月20日付け 訂正請求があった旨の通知
なお、申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和6年7月31日に提出されるとともに同年9月4日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)のとおりである。
なお、当該手続補正書(方式)による補正は、訂正請求書の第2ページ「(2)訂正事項」の「ア 訂正事項1」の「訂正前の請求項1に、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されてなる」を追加する訂正をする。」を、訂正特許請求の範囲の記載どおり「訂正前の請求項1に、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されてなり、」を追加する訂正をする。」(当審注:下線は当審により付与した。以下、同様。)に補正するもので、その要旨を変更するものではないから、特許法第131条の2第1項に適合するものである。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の「・・・・前記多官能モノマーの含有量が0.5~8質量%の範囲であり、下記条件(i)および(ii)を満たす、重合体粒子。」に、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されてなり、」を追加して、「・・・・前記多官能モノマーの含有量が0.5~8質量%の範囲であり、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されてなり、下記条件(i)および(ii)を満たす、重合体粒子。」に訂正をする。
なお、訂正前の請求項1及び2について、請求項2は、請求項1を引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1及び2に対応する訂正後の請求項1及び2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、訂正事項1による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1による訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されてなり、」なる事項を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そして、当該訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0010】及び【0051】に記載されているから、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項1による請求項2についての訂正も同様である。
3 むすび
以上のとおり、請求項1及び2についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項で準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1及び2を総称して「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
スチレン、メチルメタクリレート、および1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマーを含むモノマー成分由来の構成成分を含む重合体粒子であって、前記モノマー成分100質量%中、前記スチレンの含有量が20~65質量%の範囲であり、前記メチルメタクリレートの含有量が30~75質量%の範囲であり、前記多官能モノマーの含有量が0.5~8質量%の範囲であり、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されてなり、下記条件(i)および(ii)を満たす、重合体粒子。
(i)重合体粒子を大気中150℃で1時間加熱した後に測定したYI値が10以下である。
(ii)重合体粒子を窒素雰囲気下10℃/minで昇温し、350℃に到達した際の重量減少率が10重量%以下である。
【請求項2】
前記多官能モノマーが、エチレングリコールジメタクリレートである、請求項1に記載の重合体粒子。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要、証拠方法及び取消理由の概要
1 申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は、以下のとおりである。
(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証ないし甲第7号証に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証ないし甲第7号証に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証ないし甲第7号証に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)申立理由4(甲第4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明及び甲第4号証ないし甲第7号証に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(5)申立理由5(サポート要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(6)申立理由6(実施可能要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(7)申立理由7(明確性要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
2 証拠方法
(1)申立人が提出した証拠
申立人は、特許異議申立書に添付して以下の証拠を提出した。
甲第1号証:特公昭63-2307号公報
甲第2号証:特開平9-40794号公報
甲第3号証:特開2015-221789号公報
甲第4号証:国際公開第2014/119042号
甲第5号証:特開2000-301831号公報
甲第6号証:国際公開第2008/133147号
甲第7号証:国際公開第2017/038731号
以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。
(2)特許権者が提出した証拠
特許権者は、意見書に添付して以下の証拠を提出した。
乙第1号証:安定化技術 根岸 由典 マテリアルライフ学会誌、2003年10月、15巻4号、p.109~115
乙第2号証:特表2006-527153号公報
乙第3号証:特開2013-129692号公報
乙第4号証:特開2016-166233号公報
以下、「乙第1号証」等を「乙1」等という。
3 取消理由通知に記載した取消理由の概要
当審において特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)取消理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(2)取消理由2(実施可能要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
第5 当審の判断
以下に述べるとおり、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、当審において通知した取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
1 証拠方法の記載事項
(1)甲号証の記載事項
ア 甲1に記載された事項
本件特許の原出願の出願前に頒布された甲1には、以下の事項が記載されている。
「1 塗料固形分100重量部あたり、平均粒子径が約1~約50μのスチレン及び/またはメタクリル酸メチルを主とし、これと多官能単量体からなる単量体混合物を共重合して得られる架橋球状微小重合体を0.3~10重量部配合せしめてなることを特徴とする滑り性付与塗料組成物。」(特許請求の範囲)
「 かかる事情に鑑み、本発明者らは塗膜の外観を損うことなく、塗膜の滑り性が大巾に改良される塗料組成物を開発すべく鋭意検討の結果、特定の粒子径のスチレンおよび/またはメタクリル酸メチルを主体とする架橋球状微小重合体を塗料に特定量配合してなる塗料組成物が、この目的に非常にすぐれた効果を奏することを見出し、本発明に至つた。すなわち本発明は、塗料固形分100重量部あたり、平均粒子径が約1~約50μのスチレンおよび/またはメタクリル酸メチルを主体とする架橋球状微小重合体を0.3~10重量部配合せしめてなることを特徴とする滑り性付与塗料組成物を提供するものである。」(第2欄第25行~第3欄第11行)
「実施例 1
フラスコにポリビニルアルコール7部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.01部を溶解した水400部を仕込み、これにスチレン96部、ジビニルベンゼン4部およびラウロイルパーオキシド1部を均一に溶解した溶液を加え、液温を約25℃に保ちながらラボデイスパーザーにて高速で撹拌した。
次に、70℃に保つた水浴にフラスコを入れ、パドル型翼付撹拌機にて撹拌しながら加熱重合を行つた。得られた重合体粒子を別し、水にて洗浄後、メタノール中に分散させて沈降速度の差から簡単な分級を行つた。
このようにして得られた重合体粒子の平均粒子径を遠心沈降粒度分布測定機(堀場製作所製)にて測定したところ15μであり、顕微鏡観察の結果、形状は球状であつた。」(第5欄第30行~第6欄第2行)
「実施例 3
スチレン50部、メタクリル酸メチル50部およびエチレングリコールジメタクリレート3部からなる単量体混合物を実施例1と同様の方法で重合し、分級して平均粒子径が約15μの球状架橋重合体粒子を得た。」(第7欄第16~21行)
イ 甲2に記載された事項
本件特許の原出願の出願前に頒布された甲2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】ポリマー粒子芯材と、該ポリマー粒子芯材の表面に結合したアルキルシラン化合物および/またはカップリング剤とからなることを特徴とするFRP用樹脂粒子。」
「【0009】
【発明の目的】本発明は、FRP成形体に添加される新規な樹脂粒子を提供することを目的としている。
【0010】また、本発明は、樹脂に添加した際に、透明性、着色性、機械的特性、表面光沢、耐煮沸性、低収縮性に優れた樹脂成形体を形成可能なFRP用樹脂粒子を提供することを目的としている。
【0011】さらに、本発明は、樹脂に添加することにより、着色性、透明性、表面光沢などの成形体の外観、および、成形体の機械的強度などは勿論、成形体の耐煮沸性を低下させることなく、成形体成形時の収縮性を低下させることができる樹脂粒子および上記のような樹脂粒子を配合することにより上記のような特性を有する成形体を製造可能なFRP組成物を提供することを目的としている。」
「【0019】本発明では上記のようなモノマーを(共)重合させることにより製造されるポリマー粒子に、架橋構造が形成されていることが好ましい。すなわち、上述のポリマー粒子の膨潤度は、ポリマー粒子中に橋架け構造を形成することにより調整することができ、この架橋構造は、2官能性単量体あるいは多官能性単量体の配合量を調整して制御できる。架橋構造が形成されることにより、このポリマー粒子が、FRP組成物を構成する重合性単量体に対して溶解性は示すことなく、好適な膨潤度を示すようになる。ポリマー粒子中に架橋構造を形成するのに使用される2官能性単量体あるいは多官能性単量体の例としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレートおよびジビニルベンゼンを挙げることができる。」
「【0046】本発明のFRP用樹脂粒子は、さらに、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤等を含有していてもよい。また、ポリマー粒子を製造する段階で使用される化合物等が、本発明のFRP用樹脂粒子中に残存していてもよい。」
「【0066】
【実施例1】ガラス製反応容器にメタクリル酸メチル39.5重量部、スチレン60重量部、ジビニルベンゼン0.5重量部を入れて混合した後、過酸化ベンゾイル1重量部を添加し溶解させた。
【0067】別にイオン交換水300重量部にポリビニルアルコール2重量部を添加し溶解させた溶液を調製し、この溶液を上記のガラス製反応容器に加え、ホモミキサーで激しく撹拌して分散させた。この反応容器に窒素ガス導入管、温度計及びコンデンサーを装着して、窒素ガスを導入してパージした後、分散液を撹拌しながら80℃に加熱した。
【0068】この温度を8時間維持した後、得られた懸濁液を室温まで冷却し、濾過することによりポリマー粒子と分散媒であるポリビニルアルコール水溶液とを分離した。
【0069】得られたポリマー粒子をメチルアルコール100重量部に再分散し、1時間撹拌した後、濾過によりポリマー粒子を分離した。得られたポリマー粒子を80℃に保った乾燥機を用いて8時間かけて乾燥させた後、解砕した。得られたポリマー粒子の平均粒子径は45.1μmであった。」
ウ 甲3に記載された事項
本件特許の原出願の出願前に頒布された甲3には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
抗生物活性化合物と疎水性の重合性ビニルモノマーとから疎水性液を調製し、前記疎水性液を、カチオン性化合物の存在下、水中で乳化させ、前記重合性ビニルモノマーをミニエマルション重合させることにより得られることを特徴とする、粒子。」
「【0006】
本発明の目的は、酸性下における分散安定性に優れるとともに、酸性下かつ高温下における着色を抑制することのできる粒子を提供することにある。」
「【0030】
重合性ビニルモノマーとしては、例えば、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に1つ含有する第1モノマー、例えば、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に2つ以上含有する第2モノマー、例えば、官能基をさらに含有する第3モノマーなどが挙げられる。
2-2(1) 第1モノマー
第1モノマーは、重合性ビニルモノマーに主成分として含有される主モノマーである。第1モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、芳香族ビニルモノマー、ビニルエステル系モノマー、マレイン酸エステル系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、窒素含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、メタクリル酸エステルおよび/アクリル酸エステルであって、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル(MMA/MA)、(メタ)アクリル酸エチル(EMA/EA)、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル(n-BMA/n-BA)、(メタ)アクリル酸iso-ブチル(i-BMA/i-BA)、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸iso-ノニル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル(ラウリル)、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル(ステアリル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのアルキル部分が直鎖状、分岐状または環状の炭素数1~20のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。好ましくは、炭素数1~4のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0032】
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン(Sty)、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。」
「【0040】
第1モノマーの配合割合は、重合性ビニルモノマーに対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、55質量%以上、さらに好ましくは、60質量%以上であり、また、100質量%以下である。
2-2(2) 第2モノマー
第2モノマーは、重合性ビニルモノマーに任意的に含有される副モノマーであって、第1モノマーと共重合可能な架橋性モノマーである。架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(EGDA/EGDMA)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのモノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(PETM/PETA)などのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、アリル(メタ)メタクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレートなどのアリル系モノマー、例えば、ジビニルベンゼンなどのジビニル系モノマーなどが挙げられる。
【0041】
第2モノマーとして、好ましくは、モノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、より好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
第2モノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0043】
第2モノマーの配合割合は、重合性ビニルモノマーに対して、例えば、1質量以上し、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。また、第2モノマーの配合割合は、第1モノマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
2-2(3) 第3モノマー
第3モノマーは、重合性ビニルモノマーに任意的に含有される副モノマーであって、また、第1モノマーと共重合可能な官能基含有ビニルモノマーである。官能基含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸系モノマー、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、重合反応性乳化剤などが挙げられる。」
「【実施例】
【0165】
以下に示す実施例の数値は、上記の実施形態において記載される数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
【0166】
各実施例および各比較例で用いる原料または測定方法の詳細を次に記載する。
【0167】
DIW:脱イオン水
PVA205:商品名、ポリビニルアルコール、けん化度:87.0~89.0%、重合度:500、粘度(4%水溶液、20℃):5.0~6.0mPa・sec、クラレ社製
ネオコールSW-C:商品名、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系乳化剤)の70質量%イソプロパノール溶液、第一工業製薬社製
デモールNL:商品名、β-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩、分散剤、花王ケミカル社製
コータミン86W:ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、有効成分または固形分28質量%、カチオン性界面活性剤、花王ケミカル社製
コータミン24P:ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、有効成分または固形分27質量%、カチオン性界面活性剤、花王ケミカル社製
コータミンD86P:ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、有効成分または固形分75質量%、カチオン性界面活性剤、花王ケミカル社製
コータミン60W:セチルトリメチルアンモニウムクロライド、有効成分または固形分30質量%、カチオン性界面活性剤、花王ケミカル社製
フレッシュメイトDA5:商品名、N,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウムアセテート)(HMDP-Ac、カチオン性抗生物活性化合物)の5質量%水溶液、日本エンバイロケミカルズ社製
IPBC:商品名「ファンギトロール400」、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート、防かび剤、分子量281、融点:60℃、水への溶解度(20℃):150ppm、インターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社製
OIT:商品名「OIT-99」、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、防かび剤、分子量213、融点4℃、水への溶解度(25℃):500ppm、大連百傲化学有限公司社製
MBACT:商品名「DP-2159」、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン、防藻剤、分子量253、融点130℃、水への溶解度(20℃):75ppm、日本曹達社製
プロピコナゾール:商品名「プロピコナゾール」、(2RS,4RS;2RS,4SR)-1-[2-(2,4-ジクロロフェニル)-4-n-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-イルメチル]-1H-1,2,4-トリアゾール、殺菌剤、分子量342、融点180℃(0.013kPa)、水への溶解度(20℃):100ppm、丸善薬品産業社製
テブコナゾール:商品名「テブコナゾール」、(RS)-1-p-クロロフェニル-4,4-ジメチル-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ペンタン-3-オール、防かび剤、分子量307、融点105℃、水への溶解度(20℃):32ppm、丸善薬品産業社製
DCOIT:商品名「DCOIT-97」、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、防かび剤、分子量282、融点45℃、水への溶解度(20℃):3ppm、大連百傲化学有限公司社製
シフルトリン:商品名「CYFLUTHRIN」、[(R)-シアノ-[4-フルオロ-3-(フェノキシ)フェニル]メチル](1R,3R)-3-(2,2-ジクロロエテニル)-2,2-ジメチルシクロプロパン-1-カルボキシラート、分子量434、融点64~106℃(異性体を含む混合物)、水への溶解度(20℃):0.002ppm、杭州尚仇化工有限公司社製
エトフェンプロックス:商品名「エトフェンプロックス」、2-(4-エトキシフェニル)-2-メチルプロピル-3-フェノキシベンジル-エーテル、分子量376、融点37℃、水への溶解度(20℃):0.02ppm、丸善薬品産業社製
BBIT:商品名「DENSIL DN」、n-ブチル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、抗菌防腐剤、分子量207、アーチ・ケミカルズ社製
MMA:メタクリル酸メチル、商品名「アクリエステルM」、水への溶解度:1.6質量%、三菱レイヨン社製
i-BMA:メタクリル酸i-ブチル、水への溶解度:0.06質量%、和光純薬社製
n-BA:アクリル酸n-ブチル、水への溶解度:0.14質量%、和光純薬社製
EA:アクリル酸エチル、水への溶解度:2質量%、和光純薬社製
Sty:スチレン、水への溶解度:0.03質量%、和光純薬社製
MAA:メタクリル酸、和光純薬社製
GMA:メタクリル酸グリシジル、商品名「ブレンマーG」(「ブレンマー」は登録商標)、水への溶解度:0.5~1.0質量%、日油社製
ライトエステルEG:商品名、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、水への溶解度:5.37ppm、共栄社化学社製
パーロイルL:商品名(「パーロイル」は登録商標)、ジラウロイルパーオキシド、日油社製
NV:固形分濃度(質量%)
実施例1
(ミニエマルション重合による、IPBCを含有する粒子の製造)
200mLの容器に、IPBC40.00g、MMA120.00gおよびパーロイルL 0.80gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0168】
別途、1000mLのビーカーに、脱イオン水167.74g、PVA205(10%)水溶液64.00gおよびコータミン86W 7.46gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を調製した。
【0169】
次いで、1000mLビーカーの水溶液に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数10000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製した。
【0170】
その後、調製したミニエマルションを、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mLの4口フラスコに移し、窒素気流下、6cm径の攪拌器により回転数200rpm(周速37.7m/分)で攪拌しながら、4口フラスコをウォーターバスにより、昇温して、ミニエマルション重合を実施した。
【0171】
ミニエマルション重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で3時間、70±2℃で2時間、連続して実施した。
【0172】
続いて、ウォーターバスを昇温して、反応液の温度を80±2℃に昇温し、その温度で2時間、熟成した。
【0173】
その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有する粒子の乳濁液を得た。
【0174】
その後、乳濁液を、100目の濾布で濾過した後、濾液中の粒子のメジアン径を測定したところ、その結果が285nmであった。
【0175】
この乳濁液は、通常のポリマーラテックスと同様に安定したコロイド分散液であり、室温で貯蔵中に粒子の沈降や相分離の傾向は認められなかった。
【0176】
実施例2~34および比較例1~3
表1~表5に準拠して、各成分の配合処方および条件を変更した以外は、実施例1と同様に処理して、実施例2~34および比較例1~3の粒子の乳濁液をそれぞれ得た。
【0177】
(評価)
1. 耐熱酸試験(沈殿および着色)
容量120mLのガラス瓶に0.1Nの塩酸100mLを取り、それに実施例1~34および比較例1~3のそれぞれの乳濁液1gを添加し、レシプロ振とう機で混合して、試料を調製した。
【0178】
その後、この試料を80℃の恒温機に16時間静置した。
【0179】
冷却後、凝集による沈殿および変色を観察し、下記の基準で試料を評価した。その結果を、表1~表5に示す。
【0180】
(1)凝集による沈殿
○:沈殿が観察されなかった。
△:わずかな沈殿が観察された。
×:沈殿が観察された。
【0181】
(2)変色
○:着色(黄変)が観察されなかった。
△:わずかな着色(黄変)が観察された。
×:着色(黄変)が観察された。
【0182】
【表1】
[図:0001422423000001.jpg]
エ 甲4に記載された事項
本件特許の原出願の出願前に頒布された甲4には、以下の事項が記載されている。
「請求の範囲
[請求項1] 色素を含む樹脂粒子であって、
上記色素が、紫外可視吸収スペクトルの最大吸収波長を380~500nmの範囲内に有し、
上記樹脂粒子のb*値が10~80の範囲内であることを特徴とする樹脂粒子。
[請求項2] 請求項1に記載の樹脂粒子であって、
単官能(メタ)アクリル系単量体及び/又は単官能スチレン系単量体に由来する構成単位と、多官能ビニル系単量体に由来する構成単位とを含む重合体を含み、
上記色素が、有機溶剤に溶解可能な色素を含むことを特徴とする樹脂粒子。」
「[0009] 本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、発光デバイス(ディスプレイ、照明デバイス等)の上に配置される光学部材(照明カバー、ディスプレイ表面に配置されるフィルム等)に使用した場合における、大きな色の変化及び色再現性の悪化を抑制しながら、ブルーライトを効率良くカットできる樹脂粒子及びそれを用いた製品(塗料組成物、フィルム、及び樹脂成形体)を提供することにある。」
「[0034] 上記単官能(メタ)アクリル系単量体としては、1つのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられる。これら単官能(メタ)アクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
[0035] 上記単官能スチレン系単量体としては、1つのエチレン性不飽和基を有するスチレン類であれば特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。これら単官能スチレン系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。」
「[0037] 上記樹脂粒子を構成する重合体に架橋構造を付与するための多官能ビニル系単量体としては、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタコンタヘクタエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3-ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコール等の多官能(メタ)アクリル系単量体;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物等が挙げられる。これらの多官能ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
[0038] 上記多官能ビニル系単量体に由来する構成単位の量は、上記単官能(メタ)アクリル系単量体及び/又は単官能スチレン系単量体に由来する構成単位100重量部に対して1~100重量部の範囲内であることが好ましく、また、上記重合体100重量%に対して5~50重量%の範囲内であることが好ましい。上記多官能ビニル系単量体に由来する構成単位の量が上記範囲より少ない場合、上記架橋重合体の架橋度が低くなる。その結果、色素が樹脂粒子内に保持され難くなる恐れがある。また、上記架橋重合体の架橋度が低くなる結果、樹脂粒子を含む塗料組成物を塗工する場合に、樹脂粒子が膨潤して塗料組成物の粘度上昇が起こり塗工の作業性が低下する恐れがある。さらに、上記架橋重合体の架橋度が低くなる結果、樹脂粒子を透明樹脂等と混合して成形する用途(いわゆる練り込み用途)において混合時や成形時に樹脂粒子に熱をかけたときに、樹脂粒子が溶解又は変形しやすくなる。上記多官能ビニル系単量体に由来する構成単位の量が上記範囲より多い場合、多官能ビニル系単量体の使用量に見合った効果(色素を樹脂粒子内に保持する効果)の向上が認められず、生産コストが上昇する場合がある。」
「[0040] 〔樹脂粒子の製造方法〕
上記樹脂粒子は、乳化重合、水性媒体下での懸濁重合、シード重合、ソープフリー乳化重合(界面活性剤を使用しない乳化重合)、分散重合等の公知の重合方法により上記単量体混合物を重合させることによって製造することができる。これら重合方法のうち、水性媒体下での懸濁重合(以下「水系懸濁重合」と称する)、シード重合、乳化重合、及び、ソープフリー乳化重合が好ましい。」
「[0074] 第2のビニル系単量体の重合系には、樹脂粒子の耐熱性を向上させるために、連鎖移動剤を添加してもよい。前記連鎖移動剤としては、例えば、n-オクチルメルカプタン、tert-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類;γ-テルピネン、ジペンテン等のテルペン類;クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジブロモメタン等のハロゲン化炭化水素;α-メチルスチレンダイマー;2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物等が挙げられる。また、第2のビニル系単量体の重合系には、樹脂粒子の耐熱性を向上させるために、酸化防止剤等の添加剤を添加してもよい。」
「[0082] 〔乳化重合による樹脂粒子の製造方法〕
乳化重合による樹脂粒子の製造方法は、単量体混合物を、界面活性剤の存在下で媒体中に乳化させ、重合開始剤の存在下で重合させる方法である。前記単量体混合物は、前記樹脂粒子の製造に使用した原料のうちで重合反応に関与して前記樹脂粒子を形成する全ての成分の量に対して50~95重量%の単官能(メタ)アクリル系単量体及び/又は単官能スチレン系単量体と、前記樹脂粒子の製造に使用した原料のうちで重合反応に関与して前記樹脂粒子を形成する全ての成分の量に対して5~50重量%の多官能ビニル系単量体を含む組成であることが好ましい。また、前記単量体混合物は、上記した他の単官能ビニル系単量体を含んでいてもよい。
[0083] 前記重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物類;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等のアゾ化合物類;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類等が挙げられる。これら重合開始剤は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記過硫酸塩類又は有機過酸化物類と、還元剤とを組み合わせたものを重合開始剤として用いてもよい。このような組み合わせの重合開始剤は、レドックス系重合開始剤と呼ばれる。前記還元剤としては、例えば、ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、過酸化水素、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸又はその塩、第一銅塩、第一鉄塩等が挙げられる。これら還元剤は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。」
「[0152] 〔樹脂粒子の実施例・比較例〕
〔実施例1〕
単官能(メタ)アクリル系単量体としてのメタクリル酸メチル(MMA)63g(単量体混合物100重量%に対して70重量%)と、多官能ビニル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)27g(単官能(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して43重量部;単量体混合物100重量%に対して30重量%)と、色素としてのDAA51(山田化学工業株式会社製)0.09g(重合体100重量部に対して0.1重量部)とに、重合開始剤としての2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.2gを加えて混合して、単量体組成物を調製した。
[0153] 内容積500mlのセパラブルフラスコに、水性媒体としての水270gと、懸濁安定剤としての第3リン酸カルシウム8.7gと、界面活性剤としてのドデシルスルホン酸ナトリウム0.08gとを入れた。このセパラブルフラスコの内容物に、前記単量体組成物を添加した。セパラブルフラスコの内容物を高速攪拌機(商品名「ホモミクサーMARK II 2.5型」、プライミクス株式会社製)により高速で攪拌し、単量体組成物の微小液滴を形成した。セパラブルフラスコの内容物を攪拌しながら50℃で5時間加熱することで重合を行った。得られた樹脂粒子に塩酸を加えて懸濁安定剤を分解した後、水により樹脂粒子を洗浄した。洗浄の後、遠心脱水により固体を分離した。得られた固体を60℃で10時間真空乾燥し、体積平均粒子径が8μmであり、粒子径の変動係数(CV値)が35%である樹脂粒子を得た。」
「[0160] 〔実施例8〕
色素としてDAA51(山田化学工業株式会社製)0.09gに代えて「YELLOW 93」(中央合成化学株式会社製)0.09gを用い、単官能ビニル系単量体として、メタクリル酸メチル(MMA)63gに代えて、単官能(メタ)アクリル系単量体であるメタクリル酸メチル(MMA)36g(単量体混合物100重量%に対して40重量%)と、単官能スチレン系単量体であるスチレン(St)45g(単量体混合物100重量%に対して50重量%)とを用い、多官能ビニル系単量体として、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)27gに代えて、ジビニルベンゼン(DVB)9g(単官能(メタ)アクリル系単量体及び単官能スチレン系単量体100重量部に対して11重量部;単量体混合物100重量%に対して10重量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径が8.1μmであり、粒子径の変動係数(CV値)が37%である樹脂粒子を得た。」
「[0174][表1]
[図:0001422423000002.jpg]
」
オ 甲5の記載事項
本件特許の原出願の出願前に頒布された甲5には、以下の事項が記載されている。
「【請求項5】無機微粒子を主体とするインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、該インクジェット記録用シートが亜硝酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、亜リン酸塩またはチオ硫酸塩を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。」
「【0012】更に、本発明は、無機微粒子を主体とするインク受容層を有するインクジェット記録用シートに亜硝酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、亜リン酸塩またはチオ硫酸塩を含有することによって、保存した場合の白地部の黄変及び印字部の耐光性が大幅に改善することを見いだした。」
「【0014】本発明における化1の化合物、亜硝酸塩、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、亜リン酸塩、及びチオ硫酸塩が白地部の黄変と印字部の退色を大幅に軽減させる理由としては明かではないが、一般に白地部の黄変については1.蛍光剤の分解、2.白地部を構成しているバインダー等有機成分の分解着色、3.白地部を構成している白色微粒子顔料による選択的なファイル等に含まれている酸化防止剤等の有機物の吸着、分解着色が主な原因と考えられている。一方、印字部の光による退色は染料が光により酸化的な分解を受け失活しているものと考えられる。本発明に於ける前記化合物は、これら黄変反応においては何れにも効果があると考えられるが、特に3.の微粒子による反応の阻害が最も効果がある。この理由としては本発明に於ける前記化合物は、化学構造から還元力を有しており、上述した白地部の黄変と印字部の退色の主原因は全て酸化反応が関与していると思われる。よって、特定の化学構造を有する特定の還元剤がこれらの酸化反応の阻害には有効であることを見出し本発明に至った。よって、本発明に於ける前記化合物はその反応が起こるインク受容層中に存在することが最も効率がよいが、その他の層、例えば原紙層、バックコート層に存在したとしても各層中を拡散してほぼ均一に系内に存在することにより目的とする酸化反応を阻害することが出来る。」
「【0036】本発明で用いられる亜硝酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、亜リン酸塩またはチオ硫酸塩としては、一般に市販されているものを用いることができる。これらの円の陽イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属類、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属類、亜鉛、銅、ニッケルなどの遷移金属類またはアルミニウム等の金属イオンやアンモニウムイオンを挙げることができる。また、亜リン酸塩としては、亜リン酸二ナトリウム、亜リン酸水素二ナトリウム、亜リン酸カルシウム等も挙げることができる。」
「【0084】ファイル黄変:ライオン製クリアポケットファイルに実施例又は比較例で作成したインクジェット記録シートを白紙のまま入れて常温、常湿にて2週間保存後、GRETAG社SPECTROLINO CH-8105 にて色差の変化量ΔEを測定した。ΔEの値が大きいほど黄変の度合いが大きいことを示している。
【0085】印字部変色:Y、M、C、R、G、B、K各色を濃度100%の設定で3cm×5cmの大きさに出力し、ファイル黄変に使用したのと同条件で各印字サンプルを保存後、保存前のサンプルと比較して変色の度合いを判定した。価基準は以下の通りである。
【0086】
○:全く変色が無い。
△:やや変色しているが軽度である。
×:明らかに変色している。
【0087】耐光性:上記の印字を行い、印字したインクジェット記録シートを蛍光灯下に放置し、1ヶ月後の画像濃度の変化を目視判定した。評価基準は以下の通りである。
【0088】
○:僅かに画像の退色が認められるが、ほぼ問題ないレベル。
△:画像の退色が認められる。
×:著しい画像の退色が認められる。」
【0089】
【表1】
──────────────────────────────────
試料 添加した化合物 ファイル黄変 印字部変色 耐光性
──────────────────────────────────
実施例1 化3 1.5 ○ ○
実施例2 化4 2.0 ○ ○
実施例3 化5 2.2 ○ ○
実施例4 化8 1.9 ○ ○
実施例5 化16 2.1 ○ ○
実施例6 化19 1.8 ○ ○
実施例7 化3 1.0 ○ ○
実施例8 化4 1.4 ○ ○
実施例9 化16 1.6 ○ ○
実施例10 化3 3.5 ○ ○
比較例1 無添加 19.0 ○ ×
比較例2 無添加 12.0 ○ △
比較例3 無添加 27.0 ○ △
──────────────────────────────────
【0090】表1から結果からも明らかなように、本発明のインクジェット記録用シートはファイル黄変及び耐光性において良好な結果が得られた。
【0091】実施例11~15
前記実施例1~6の記録シートにおいて、化1の化合物に代えて、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜リン酸水素カリウム、あるいはチオ硫酸ナトリウムを加えた。得られた記録シートについて、実施例1~6と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
──────────────────────────────────
試料 添加した化合物 ファイル黄変 印字部変色 耐光性
──────────────────────────────────
実施例11 亜硝酸ナトリウム 2.1 ○ ○
実施例12 亜硫酸ナトリウム 1.4 ○ ○
実施例13 重亜硫酸ナトリウム 1.7 ○ ○
実施例14 亜リン酸水素カリウム 1.8 ○ ○
実施例15 チオ硫酸ナトリウム 1.6 ○ ○
──────────────────────────────────
【0093】上記結果より、無機微粒子を主体に含有するインク受容層に、亜硝酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、亜リン酸塩またはチオ硫酸塩を含有することによって、ファイル黄変及び及び耐光性が改良されることが分かる。
【0094】
【発明の効果】本発明により、優れたインクジェット適性を損なうことなく白紙部の黄変が起こらず、更に耐光性が向上したインクジェット記録用シートを提供出来る。」
カ 甲6の記載事項
本件特許の原出願の出願前に頒布された甲6には、以下の事項が記載されている。
「請求の範囲
[1] 硫黄系酸化防止剤を必須的に含む酸化防止剤を10ppm以上(質量基準)含み、且つ、熱分解開始温度が290℃以上であることを特徴とする有機重合体微粒子。
・・・
[3] 上記酸化防止剤が、さらにヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、およびラクトン系酸化防止剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含み、有機重合体粒子に含まれるこれらの酸化防止剤の合計量が20ppm(質量基準)以上である請求項1または2に記載の有機重合体微粒子。」
「[0006] 本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、その目的は、耐熱性に優れ、初期の色調が良好であることに加え、加熱前後における色調の変化が少ない有機重合体微粒子とその製造方法を提供することである。」
「[0015] 本発明の有機重合体微粒子は、耐熱性が高められているため、加熱環境下においても好ましくない劣化が生じ難いものである。また、本発明の有機重合体微粒子は、初期の色調のみならず、加熱前後における色調変化が生じ難いものである。したがって、本発明の微粒子を含む樹脂組成物は、各種画像表示装置の光拡散板(シート)など無色で高い透明性が求められる光学用途等に好適である。また、本発明によれば、充分量の酸化防止剤を重合体微粒子中に分散させることができるので、優れた耐熱性を有し、この特性の偏析がない有機重合体微粒子を得ることができる。」
「[0019] 上述のように、有機重合体微粒子に対する要求は年々高まる傾向にあり、特に、他の樹脂と混合して使用する観点からは、耐熱性や色調などの物性を一層向上させることが求められている。そこで、まず、耐熱性を向上させる観点から検討を重ねた結果、本発明者らは、特定の酸化防止剤を含有する有機重合体微粒子は、耐熱性のみならず、初期の色調に優れ(無色・透明に近い)、且つ、加熱前後における色調の変化が少ないことを見出し、本発明を完成した。」
「[0053] 本発明の有機重合体微粒子を構成する単量体成分としては、(メタ)アクリル系モノマーや、この(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーがいずれも使用可能である。
[0054] 上記(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル系モノマーは1種を単独で用いてもよく、複数種を組合せて用いてもよい。なお、本発明に係る有機重合体微粒子は、上記(メタ)アクリル系モノマーを主成分とするものであるのが好ましく、具体的には上記(メタ)アクリル系モノマーを50~100質量%含むものが好ましく、より好ましくは60~100質量%を上記(メタ)アクリル系モノマーとすることが推奨される。
[0055] また、上述の(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーとして、分子中に複数の重合性二重結合基を有する架橋性(メタ)アクリル系モノマーを使用してもよい。かかる単量体成分を用いることで、分子間に架橋構造を有する有機重合体微粒子が得られる。このような架橋性(メタ)アクリル系モノマーとしては、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタコンタヘクタエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3-ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコール等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
[0056] さらに、上述の(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーとして、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等のスチレン系モノマー、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、および、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物、N,N-ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等の架橋剤、ポリブタジエンおよび特公昭57-56507号公報、特開昭59-221304号公報、特開昭59-221305号公報、特開昭59-221306号公報、特開昭59-221307号公報等に記載される反応性重合体などを使用してもよい。」
「[0062] 次に、本発明の有機重合体微粒子の製造方法について説明する。上述のように、本発明に係る有機重合体微粒子は、様々な方法(第1の態様、第2の態様、第3の態様)等で製造できるが、これらの中でも、酸化防止剤の存在下で重合反応を行なう方法(第3の態様)により得られるものであるのが好ましい。すなわち、本発明の製造方法とは、酸化防止剤の存在下で、単量体成分のラジカル重合を行うところに特徴を有する方法である。このように、酸化防止剤の存在下で重合反応を進行させれば、生成する重合体内に酸化防止剤が取り込まれるため、酸化防止剤の偏析が生じ難く、生成する有機重合体微粒子中に酸化防止剤が分散し、耐熱性に優れた有機重合体微粒子が得られる。」
「[0132] 実験例1 有機重合体微粒子の作製
<実施例1>
攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(商品名「ハイテノール(登録商標)NF-08」、第一工業製薬株式会社製)1部を溶解した脱イオン水900部を仕込んだ。そこへ予め調製しておいたメタクリル酸メチル75部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)25部、ラウリルパーオキサイド(LPO)2部(モノマーに対して2質量%)および硫黄系酸化防止剤(株式会社ADEKA製、商品名「アデカスタブ(登録商標)AO-412S」、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート))0.5部(モノマーに対して0.5質量%)を仕込み、T.K.ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製)により3500rpmで4分間攪拌して均一な懸濁液とした。
[0133] 次いで、窒素ガスを吹き込みながら反応溶液が65℃になるまで加熱し、65℃で反応容器を保温し、自己発熱により液温が75℃に到達した時点を反応開始とし、この温度で1.5時間攪拌を続けた後、重合液をさらに85℃まで昇温させて2時間撹拌して重合反応を完了させた。その後、反応液(懸濁液)を冷却し、瀘過して、重合生成物を濾取し、これを熱風乾燥機(ヤマト科学株式会社製)で80℃3時間乾燥して有機重合体微粒子を得た。
[0134] 得られた有機重合体粒子は、平均粒径が7.5μm、変動係数が41.0%であった。また、得られた樹脂粒子の色差は、初期b値0.71、加熱試験後のb値は0.72であった。熱分解開始温度は305℃であった。結果および重合反応時の状態を表1に示す。
[0135] <実施例2>
酸化防止剤として、硫黄系酸化防止剤(株式会社ADEKA製、商品名「アデカスタブ(登録商標)AO-412S」)0.4部と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「Irganox(登録商標)1010」、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])0.1部を混合して用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機重合体微粒子を製造した。
得られた有機重合体粒子は、平均粒径が7.1μm、変動係数が40.2%であった。得られた有機重合体粒子の色差、熱分解開始温度等を表1に示す。
[0136] <実施例3>
開始剤を、ABN-V2部に変更したこと以外は、実施例2と同様にして有機重合体微粒子を製造した。
得られた有機重合体粒子は、平均粒径が7.0μm、変動係数が36.8%であった。得られた有機重合体微粒子の色差、熱分解開始温度等を表1に示す。
[0137] <比較例1>
酸化防止剤を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして有機重合体微粒子を製造した。
得られた有機重合体粒子は、平均粒径が6.8μm、変動係数が36.5%であった。得られた有機重合体微粒子の色差、熱分解開始温度等を表1に示す。
[0138] <比較例2>
酸化防止剤を用いなかったこと以外は、実施例2と同様にして有機重合体微粒子を製造した。
得られた有機重合体粒子は、平均粒径が7.0μm、変動係数が37.6%であった。得られた有機重合体微粒子の色差、熱分解開始温度等を表1に示す。
[0139] <比較例3>
酸化防止剤として、リン系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「Irganox(登録商標)168」、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト)0.5部を単独で用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機重合体微粒子を製造した。
得られた有機重合体粒子は、平均粒径が7.3μm、変動係数が41.4%であった。得られた有機重合体微粒子の色差、熱分解開始温度等を表1に示す。
[0140]
[表1]
[図:0001422423000003.jpg]
[0141] 尚、表1中、LPOはラウリルパーオキサイドを示し、ABN-Vは2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を示す。比較例1~3の硫黄酸化防止剤含有量、および、硫黄原子量はいずれも検出限界以下であった。
[0142] 表1より、酸化防止剤の存在下で重合反応を行った実施例1~3の有機重合体微粒子は、酸化防止剤を用いなかった比較例1の有機重合体微粒子に比べて熱分解開始温度が高く、耐熱性に優れるものであることが分かる。また、実施例1~3の有機重合体微粒子はΔb値が低く、加熱試験前後における色調の変化が小さいものであることが分かる。」
キ 甲7の記載事項
本件特許の原出願の出願前に頒布された甲7には、以下の事項が記載されている。
(ア)「[請求項1]
ビニル系単量体由来の構成単位を含む重合体とニトロキシルラジカル化合物とを含み、
粒子径のCV値(変動係数)が15%以上である
有機重合体微粒子。
・・・
[請求項3]
前記ビニル系単量体が、スチレン系単量体を含む
請求項1または2に記載の有機重合体微粒子。」(請求の範囲)
(イ)「発明が解決しようとする課題
従って、本発明の課題は、耐熱性の高い有機重合体微粒子を提供すること、ならびに、懸濁重合により、コストが抑制され、且つ耐熱性の高い有機重合体微粒子を製造できる有機重合体微粒子の製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明者らは、有機重合体微粒子を懸濁重合により製造するに際し、微小粒子の発生を抑制することにより、耐熱性の高い有機重合体微粒子が得られることを見出した。さらに、懸濁重合において特定の化合物を含ませることにより、微小粒子の発生を抑制でき、耐熱性の高い有機重合体微粒子を製造できることを見出した。」(第2ページ第14~25行)
(ウ)「1-1-1-2 スチレン系単量体
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン等のアルキルスチレン類;p-フェニルスチレン等の芳香環含有スチレン類;o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等のハロゲン含有スチレン類;p-ヒドロキシスチレン等のヒドロキシル基含有スチレン類;p-メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類;等が挙げられる。これらのスチレン系単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレンが好適である。
上記スチレン系単量体の含有量は、上記ビニル系単量体100質量部中1~95質量部が好ましく、30~90質量部がより好ましく、さらに好ましくは50~70質量部である。スチレン系単量体の含有量が1質量部以上であれば、有機重合体微粒子の耐熱性が一層高くなり、且つ、芳香族ポリエステル樹脂への親和性、分散性も向上する傾向がある。スチレン系単量体の含有量が95質量部を超えると、架橋性が低くなりやすい。」(第7ページ第26行~第8ページ第13行)
(エ)「1-6 酸化防止剤
本発明に係る有機重合体微粒子は、酸化防止剤を含むものであってもよい。酸化防止剤を含むことにより、耐熱性をより向上できる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、およびビタミンE系酸化防止剤などが挙げられる。
・・・
上記酸化防止剤の中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、およびラクトン系酸化防止剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものであるのが好ましい。特に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、ラクトン系酸化防止剤としては、3-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンの反応生成物が好ましい。
上記酸化防止剤は、本発明に係る有機重合体微粒子中に約10ppm以上含まれていることが好ましく、より好ましくは15ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上である。酸化防止剤の含有量が少なすぎる場合には、耐熱性向上の効果が得られ難い場合がある。上限は特に限定されないが、5%以下であるのが好ましく、より好ましくは3%以下である。」(第14ページ第20行~第21ページ第14行)
(オ)「実施例
以下、実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。また、以下に述べる実施例において記載する「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表すものである。
<評価方法>
(1) 体積平均粒子径
粒度分布測定装置(「コールターマルチサイザーIII型」ベックマンコールター社製)により30,000個の粒子の粒子径を測定し、体積基準の粒子径分布より、体積平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径のCV値(変動係数)を算出した。
粒子径のCV値(%)=100×(粒子径の標準偏差/体積平均粒子径)
(2) 熱分解評価
得られた有機重合体微粒子の熱分解評価は、熱分析装置(「示差熱天秤Thermo plus EV02/TG-DTA」株式会社リガク製)を使用して、試料量10mg、窒素雰囲気中、流量200ml/分、昇温速度10℃/分、230℃または280℃(最高到達温度)で2時間保持する条件で測定した。そして、得られたTG(Thermo gravity)曲線から有機重合体微粒子の耐熱性を評価した。
(3) 化合物の定量
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカルの定量については、ガスクロマトグラフ(6890N(商品名)、Agilent Technologies製、キャピラリーカラムDB-1(商品名);長さ30m×内径0.25mm、膜厚0.25μm)を使用して測定した。得られた有機重合体微粒子0.2部に含まれる4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカルを、抽出媒体としてアセトン1部を用いて抽出し、事前に作成した検量線を使用して求めた。
(4) 懸濁粒子表面に付着している微小粒子の個数
走査型電子顕微鏡(SEM)(「JCM-6000 NeoScope」日本電子株式会社製)を用いて、有機重合体微粒子を5000倍の倍率で観察し、以下の方法で、懸濁粒子表面に付着している微小粒子の個数を算出した。微小粒子は直径が50~300nm、懸濁粒子は直径1μm以上とする。
懸濁粒子を10個観察し、それぞれの懸濁粒子表面に付着している微小粒子の個数を数え、懸濁粒子1個に付着している微小粒子の平均個数を算出した。
(5) ろ液中の微小粒子量の測定(ろ液固形分)
重合反応が完了した重合液をろ紙(定量濾紙「No.5C」アドバンテック東洋株式会社製)を用いてろ過し、微小粒子(ろ液)と懸濁粒子(残渣)を分離した。微小粒子を含むろ液2gをアルミカップに入れ、110℃に加熱したホットプレートで1時間加熱乾燥し、ろ液中の水分を蒸発させて微小粒子を得た。乾燥前後の重量より、ろ液中に含まれる微小粒子(ろ液固形分)の量(%)を下記式に従って算出した。
ろ液固形分(%)
=[ろ液を乾燥後に得た微小粒子の重量(g)]/[ろ液重量(g)]×100
[実施例1]
ビーカーにN-(フェニル)マレイミド(PMI)40部、スチレン(St)100部、メタクリル酸メチル(MMA)40部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)20部、ラウリルパーオキサイド(LPO)1部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「Irganox(登録商標)1010」、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])1部を仕込み、35℃の温浴で固体成分を溶解した。撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(商品名「ハイテノール(登録商標)NF-08」、第一工業製薬株式会社製)2部を溶解した脱イオン水310部を仕込み、ビーカーの溶液を加え、T.K.ホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製)により8000rpmで5分間撹拌して均一な懸濁液とし、さらに4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル(4H-TEMPO、伯東社製「ポリストップ7010」)0.2部、脱イオン水500部を添加した。
次いで、フラスコ内に窒素ガスを吹き込みながら液温が65℃になるまで加熱して、反応容器を65℃に保温した。自己発熱により液温が74℃に到達した時点を反応開始とし、この温度で1時間撹拌を続けた後、重合液をさらに85℃まで昇温させて1.5時間撹拌して重合反応を完了した。その後、撹拌した状態で、85℃で硫酸アルミニウム0.6部を溶解した脱イオン水33.6部を添加し、この温度で1.5時間撹拌した後、反応液を冷却、ろ過し、重合生成物を80℃、12時間熱風乾燥して、有機重合体微粒子を得た。
得られた有機重合体微粒子は、平均粒子径が2.77μm、CV値(変動係数)が40.1%であった。また、得られた有機重合体微粒子は4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル(4H-TEMPO)を660ppm含んでいた。表1に、モノマー組成成分と架橋剤の合計を100質量部とした、各成分の使用割合を記載した。また、得られた有機重合体微粒子の評価結果を表1に示した。なお、表1において、粒子径は体積平均粒子径である。有機重合体微粒子の含水率は1%以下であった。
なお、得られた有機重合体微粒子は乾燥により凝集しているので、スーパージェットミルSJ-500(日清エンジニアリング株式会社製)を使用し、常温下で解砕圧0.4MPaにて解砕した。これにより凝集のない有機重合体微粒子とした。
マスターバッチの作製
得られた有機重合体微粒子10部と、ポリエチレンテレフタレートペレット(SA-8339P ユニチカ株式会社製)90部、酸化防止剤としてのIrganox(登録商標)1010 0.15部、及びIrgafos(登録商標)168 0.15部とを、同方向回転二軸混練押出機(HK-25D 株式会社パーカーコーポレーション製)を用いて混合して、250℃で溶融混練をし、水冷しストランドを得た。得られたストランドを適宜切断することで有機重合体微粒子が10%入ったポリエチレンテレフタレートマスターバッチを作製した。
キャストフィルムの作製
得られたポリエチレンテレフタレートマスターバッチとポリエチレンテレフタレートペレットを用いて2種3層のキャストフィルムを作製した。コア層の両側に有機重合体微粒子添加スキン層を積層する構成を採用した。キャストフィルムの作製にはTダイ押出成形機(株式会社創研製)を用いて、280℃で押出成形を行った。2層の有機重合体微粒子添加スキン層には有機重合体微粒子が10%のマスターバッチ1部、ポリエチレンテレフタレートペレット9部を使用、コア層にはポリエチレンテレフタレートペレットのみを180部使用した。キャストフィルムの厚みは有機重合体微粒子添加スキン層がいずれも16μm、コア層が288μmとなり、合計厚みが320μmのキャストフィルムを得た。
二軸延伸フィルムの作製
得られたキャストフィルムを縦×横=9cm×9cmにカットし、同時2軸延伸機(東洋精機株式会社製)を用いて、130℃の加熱条件で延伸倍率は縦3倍、横3倍の設定で同時二軸延伸を行うことで、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの大きさは22cm×22cmであった。なお、二軸延伸フィルムは中心部分の厚みが平均10μmであるが、フィルム端部分は40μm程度になり、中心部分12cm×12cm~18cm×18cm部分が主にフィルム厚み約10μmとなった。
得られた二軸延伸フィルムの中心部分の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)(「JCM-6000 NeoScope」日本電子株式会社製)を用いて、500倍視野で観察を行った。二軸延伸フィルムの表面に有機重合体微粒子が存在することを確認した。二軸延伸フィルム表面のSEM写真を図1に示す。さらに得られた二軸延伸フィルムの中心部分のヘーズをヘーズメーター(NDH 7000 日本電色工業株式会社製)を用いて測定したところ、0.96であった。
[比較例1]
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル(4H-TEMPO)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして有機重合体微粒子を製造した。得られた有機重合体微粒子の評価結果を表1に示した。
[表1]
[図:0001422423000004.jpg]
表1に示すように、4H-TEMPOを用いて製造し、4H-TEMPOを660ppm含む実施例1の有機重合体微粒子では、走査型電子顕微鏡を用いた観察で微小粒子は平均9個と少なく、ろ液の固形分も0.93%と少なかった。これに対し、4H-TEMPOを用いずに製造し、4H-TEMPOを含まない比較例1の有機重合体微粒子では、走査型電子顕微鏡を用いた観察で微小粒子が平均114個と多く観察され、ろ液の固形分も4.91%と多かった。
図2に、有機重合体微粒子中の懸濁粒子(残渣)と微小粒子(ろ液の固形分)、それぞれの熱分解評価として、窒素雰囲気中、280℃(最高到達温度)で2時間保持する条件で測定したTG(Thermo gravity)曲線を示す。横軸は、測定開始を0分としている。
図2に示すように、懸濁粒子では、280℃到達時から120分経過後の重量減少率は3.54wt%と少なく、微小粒子では8.80wt%と大きいことが分かった。
図3に、実施例1と比較例1の有機重合体微粒子の熱分解評価として、窒素雰囲気中、230℃(最高到達温度)で2時間保持する条件で測定したTG(Thermo gravity)曲線を、表1に所定時間経過後の重量減少率を示す。図3の横軸は、測定開始を0分としている。得られた有機重合体微粒子を熱可塑性樹脂用添加剤として使用する際、230℃のような比較的低い温度領域で分解が進行すると、気泡の発生による樹脂の不透明化やひび割れなどの悪影響が出る。このため、230℃での分析条件で重量減少率の少ないものが樹脂用添加剤として優れている。
図3と表1に示すように、比較例1の有機重合体微粒子では、230℃到達時から120分経過後の重量減少率は2.20wt%(Δwt%は0.44wt%)であった。これに対し、実施例1の有機重合体微粒子では、230℃到達時から120分経過後の重量減少率は1.45wt%(Δwt%は0.13wt%)と少なく、優れた耐熱性を示した。
このように、4H-TEMPOを含み、微小粒子が少なく、ろ液の固形分が少ない有機重合体微粒子では、優れた耐熱性が得られた。以上より、有機重合体微粒子中の微小粒子の発生を抑制することにより、有機重合体微粒子の耐熱性を向上させることができることが分かった。
[実施例2~11]
モノマー組成、酸化防止剤、重合禁止剤、4H-TEMPOならびに開始剤の種類・使用量を、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、有機重合体微粒子をそれぞれ得た。得られた各有機重合体微粒子の熱分解評価結果、ならびに微小粒子の個数(平均)、ろ過固形分、平均粒子径、CV値の評価結果を表2に示した。なお、表2において、粒子径は体積平均粒子径である。
また、得られた各有機重合体微粒子は、実施例1と同様に、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル(4H-TEMPO)を10ppm以上含んでいる。
[実施例12]
モノマー組成、架橋剤、酸化防止剤ならびに開始剤の種類・使用量を、表2に示すように変更し、モノマーに対して5質量%のイソプロピルエーテルを添加しT.K.ホモジナイザーにより10000rpmで13分間撹拌した以外は、実施例1と同様にして、有機重合体微粒子を得た。得られた各有機重合体微粒子の熱分解評価結果、ならびに微小粒子の個数(平均)、ろ過固形分、平均粒子径、CV値の評価結果を表2に示した。
また、得られた各有機重合体微粒子は、実施例1と同様に、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル(4H-TEMPO)を10ppm以上含んでいる。
[実施例13~16]
モノマー組成、架橋剤、酸化防止剤ならびに開始剤の種類・使用量を、表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、有機重合体微粒子を得た。得られた各有機重合体微粒子の熱分解評価結果、ならびに微小粒子の個数(平均)、ろ過固形分、平均粒子径、CV値の評価結果を表3に示した。
また、得られた各有機重合体微粒子は、実施例1と同様に、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル(4H-TEMPO)を10ppm以上含んでいる。
[比較例2~5]
4H-TEMPOを使用せず、モノマー組成を、表4に示す使用割合に変更した以外は、実施例1と同様にして、有機重合体微粒子をそれぞれ得た。比較例2では、4H-TEMPOの代わりに亜硝酸ナトリウムを使用した。得られた有機重合体微粒子の評価結果を表4に示した。なお、表4において、粒子径は、体積平均粒子径である。
表2~表4中、架橋剤DVB570は、DVB570(新日鐵化学社製、ジビニルベンゼン含有量55~60質量%、エチルビニルベンゼン含有量35~40質量%);酸化防止剤AO-412S、PEP-36は、硫黄系酸化防止剤(株式会社ADEKA製、商品名「アデカスタブ(登録商標)AO-412S」、商品名「アデカスタブ(登録商標)PEP-36」である。
また、参考までに、実施例と比較例の有機重合体微粒子における、窒素雰囲気中で、280℃(最高到達温度)で2時間保持した場合の、所定時間経過後の重量減少率を表2~表4に示した。なお、表4において、※1は、微小粒子よりも樹脂状の重合物が多く存在し、粒子のみを単離することができず、評価できなかった。※2は、データを取得できなかった。
[表2]
[図:0001422423000005.jpg]
[表3]
[図:0001422423000006.jpg]
[表4]
[図:0001422423000007.jpg]
表2~表4に示すように、4H-TEMPOを用いて製造した実施例の有機重合体微粒子では、走査型電子顕微鏡を用いた観察で微小粒子は少なく、ろ液の固形分も少なかった。4H-TEMPOを用いることにより、懸濁重合の収率を高くすることができた。
これに対し、4H-TEMPOを用いずに製造した比較例の有機重合体微粒子では、走査型電子顕微鏡を用いた観察で微小粒子が多く観察され、ろ液の固形分も多かった。4H-TEMPOの代わりに亜硝酸ナトリウムを使用した比較例2も同様であった。」(第28ページ第27行~第39ページ第9行)
(2)乙号証の記載事項
ア 乙1の記載事項
本件特許の原出願の出願前に頒布された乙1には、以下の事項が記載されている。
「2.プラスチックの劣化と酸化防止剤の働き
プラスチックの劣化は、図1に示すように、成形加工時の熱、使用時の熱や光、金属などによって開始され、生成したラジカルが酸素を取り込みながら反応する連鎖的な化学反応(自動酸化)によって進行する。プラスチックを効率よく安定化するためには、劣化が開始される前に劣化因子を取
[図:0001422423000008.jpg]
り除く必要がある。プラスチックを安定化させる添加剤は図1に併記したように、劣化因子となる光や金属などの影響を除去するラジカル連鎖開始阻止剤、劣化因子を除去できなかった場合に発生したラジカルを無害化するラジカル捕捉剤、さらに発生したラジカルがプラスチックなどから水素を引き抜いて生成するヒドロペルオキシドを無害化する過酸化物分解剤に大きく分けられる。表1に酸化防止剤の分類、機能や構造についてまとめた。
(第109ページ左欄下から第6行~右欄下から第10行)
「
[図:0001422423000009.jpg]
」(第110ページ)
イ 乙2の記載事項
本件特許の原出願の出願前に頒布された乙2には、以下の事項が記載されている。
「【0052】
・・・酸素の存在下で起こる有機分子の酸化劣化は、しばしば、フリーラジカル連鎖反応の結果である。劣化を広めるラジカル種を捕捉して不活性にすることで各連鎖反応の長さを短くする酸化防止剤、例えばフリーラジカル捕捉剤などを系に添加することで劣化速度を遅くすることができる。チオ硫酸塩が好適なフリーラジカル捕捉剤である。それをチオ硫酸ナトリウムとして系に添加してもよいか或は硫化物(例えばH2SまたはNa2Sに属する)または元素状硫黄と亜硫酸塩を反応させることでそれをインサイチュで生じさせることも可能である。また、そのような工程条件下ではアルコールまたはアルコールアミンが有するヒドロキシル基も有効なフリーラジカル連鎖停止剤である抗酸化剤である。」
ウ 乙3の記載事項
本件特許の原出願の出願前に頒布された乙3には、以下の事項が記載されている。
「【0097】
ラジカル重合禁止剤の具体例としては、例えば、メトキノン(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、ハイドロキノン、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、各種糖類、リン酸系酸化防止剤、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体、ニトロキシルラジカル類、ジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンの重縮合物等が挙げられる。特に、ニトロキシルラジカル類が好ましい。」
エ 乙4の記載事項
本件特許の原出願の出願前に頒布された乙4には、以下の事項が記載されている。
「【0102】
<安定剤>
安定剤は、取扱い性や貯蔵安定性を向上するために、ラジカル重合や酸化重合を防止する機能を持つ化合物であり、通常用いられる重合禁止剤、酸化防止剤を1種または2種以上使用でき、特に限定されるものではない。
このような化合物としては、例えば、フェノール系化合物、有機酸銅塩、フェノチアジン類、ホスファイト類、ホスフィン類、チオエーテル類、ヒンダードアミン系化合物、アスコルビン酸類、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体等を挙げることができる。これらの中では、着色や相溶性等の点でフェノール系化合物が好ましく、具体的には、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、p-メトキシフェノール、6-t-ブチル-2,4-キシレノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等が挙げられる。また、これらフェノール系化合物と、ホスファイト類やチオエーテル類に代表されるいわゆる2次酸化防止剤に分類される安定剤とを併用すると、より重合防止性や着色防止性が高まり、さらに好ましい。」
2 取消理由1(サポート要件)及び申立理由5(サポート要件)について
取消理由1及び申立理由5は、いずれもサポート要件違反を趣旨とするものであるため、併せて検討する。
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)判断
ア 本件特許発明の課題
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】等を参酌すると、本件特許発明の課題は、「高温に晒された際に、分解や黄変が抑制された、耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)に優れた重合体粒子を提供すること」であると認められる。
イ 検討
(ア) 本件特許発明1は、「下記条件(i)および(ii)を満たす、重合体粒子。
(i)重合体粒子を大気中150℃で1時間加熱した後に測定したYI値が10以下である。
(ii)重合体粒子を窒素雰囲気下10℃/minで昇温し、350℃に到達した際の重量減少率が10重量%以下である。」であることを発明特定事項とするものである。
ここで、上記条件(i)および(ii)は、上記特許発明の課題である耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)の意味するところを、物性・特性により具体的に表現したものといえる。
さらに、本件訂正により、本件特許発明1は、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されてなり、」なる事項を発明特定事項とするものである。
一方、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を見てみると、その段落【0051】に、「本発明では、スチレン系モノマーを含むモノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合を行うことにより得られる重合体粒子は、高温に晒された際に、分解や黄変を起こしづらい。すなわち、本発明の製造方法で得られる重合体粒子は、耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)に優れる。この理由は明らかではないが、本発明者らは、チオ硫酸塩と酸化防止剤の相乗効果による活性ラジカル補足能の向上により、本発明の製造方法で得られる重合体粒子が耐熱性に優れると推定した。」と記載されていることから、スチレン系モノマーを含むモノマー成分を、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合を行う」ことにより、本件特許発明の課題を解決し得ることが記載されている。
ついで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【実施例】を見てみると、「スチレン系モノマーを含むモノマー成分を、リン系酸化防止剤(アデカスタブPEP-36:ADEKA製)およびチオ硫酸塩(チオ硫酸ナトリウム)の存在下で重合を行」った実施例1は、「リン系酸化防止剤(アデカスタブPEP-36:ADEKA製)の存在下で重合を行」った比較例1に比べて重量減少量が5.3%から4.2%に減少すると共にYI値が15から5に減少し、本件特許発明の条件(i)および(ii)を満たして、本件特許発明の課題を解決していることが理解できる。
(イ)ところで、乙1(上記1(2)ア参照)に示されるように、高分子の劣化に対する酸化防止剤は、発生したラジカルを無害化する作用を示す「ラジカル捕捉剤」と、発生したラジカルがプラスチックなどから水素を引き抜いて生成するヒドロペルオキシドを無害化する作用を示す「過酸化物分解剤」に大別されることは本件特許の原出願時の技術常識である。
また、上記1の乙2~乙4の記載事項から、「チオ硫酸塩」が「ラジカル捕捉剤」であること、さらに、乙1の表1から「リン系酸化防止剤」が「過酸化物分解剤」であることも本件特許の原出願時の技術常識である。そして、乙4の段落【0102】には、「これらフェノール系化合物と、ホスファイト類やチオエーテル類に代表されるいわゆる2次酸化防止剤に分類される安定剤とを併用すると、より重合防止性や着色防止性が高まり、さらに好ましい。」と記載されている。すなわち、乙4には、「ラジカル捕捉剤」の一種であるフェノール系化合物と「過酸化物分解剤」の一種であるホスファイト類やチオエーテル類を併用することにより着色防止性が高まることが記載されており、「ラジカル捕捉剤」と「過酸化物分解剤」という作用機能の異なる酸化防止剤を併用することにより着色防止性が高まることが期待される。
そこで、実施例の「ラジカル捕捉剤」である「チオ硫酸塩」及び「過酸化物分解剤」である「リン系酸化防止剤」を併用した結果と、上記の技術常識及び乙4の記載事項を踏まえると、「ラジカル捕捉剤」である「チオ硫酸塩」と「リン系酸化防止剤」の上位概念である「過酸化物分解剤」という作用機能の異なる酸化防止剤を併用することにより、本件特許発明の課題を解決し得ることが理解できる。
(ウ)また、甲5の段落「0014」には、「本発明における化1の化合物、亜硝酸塩、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、亜リン酸塩、及びチオ硫酸塩が白地部の黄変と印字部の退色を大幅に軽減させる理由としては明かではないが・・・本発明に於ける前記化合物は、化学構造から還元力を有しており、上述した白地部の黄変と印字部の退色の主原因は全て酸化反応が関与していると思われる。」と記載され、チオ硫酸ナトリウムを添加した実施例14は、無添加の比較例に比べ印字部の変色や退色が防止されている。そうすると、「チオ硫酸塩」が、酸化反応の阻害に有効で、有機成分の分解着色を軽減できることが示されていることが理解できる。そのため、酸化防止剤として、「過酸化物分解剤」ではなく「ラジカル捕捉剤」を用いた場合においても、甲5に記載される「チオ硫酸塩」自体が奏する重合体の分解着色が軽減される作用機能と共に、他の「ラジカル捕捉剤」が奏する作用機能により、本件特許発明の課題を解決し得ることが理解できる。
(エ)してみると、発明の詳細な説明には、「スチレン、メチルメタクリレート、および1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマーを含むモノマー成分由来の構成成分を含む重合体粒子であって、前記モノマー成分100質量%中、前記スチレンの含有量が20~65質量%の範囲であり、前記メチルメタクリレートの含有量が30~75質量%の範囲であり、前記多官能モノマーの含有量が0.5~8質量%の範囲であり、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されてなり、下記条件(i)および(ii)を満たす、重合体粒子。
(i)重合体粒子を大気中150℃で1時間加熱した後に測定したYI値が10以下である。
(ii)重合体粒子を窒素雰囲気下10℃/minで昇温し、350℃に到達した際の重量減少率が10重量%以下である。」である技術的事項により、本件特許発明の課題を解決し得るものと認められる。
そして、本件特許発明1及び2は、上記の技術的事項を発明特定事項として備えるものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(3)取消理由1(サポート要件)及び申立理由5(サポート要件)についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由1及び申立理由5によっては取り消すことはできない。
3 取消理由2(実施可能要件)及び申立理由6(実施可能要件)について
取消理由2及び申立理由6は、いずれも実施可能要件違反を趣旨とするものであるため、併せて検討する。
(1)実施可能要件の判断基準
実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、方法の発明の場合には、その方法を使用することができる程度の記載があるか、物の発明の場合には、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
(2)検討
本件特許明細書の段落【0010】には、「本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定のモノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合することにより得られる重合体粒子は、耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)に優れることを見出し、本発明を完成させた。」と記載され、同段落【0039】及び【0040】には、「本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子の製造においては、上述したモノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合する。
酸化防止剤としてはリン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられるが、高温に晒された際の黄変を効果的に抑制する観点から、リン系酸化防止剤を用いることが好ましい。」と記載されている。さらに、製造条件について、同段落【0052】及び【0053】に、「本発明の重合体粒子の製造方法は、スチレン系モノマーを含むモノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合する。
本発明の製造方法では、前記モノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合すればよく、重合方法としては、特に限定は無いが、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の従来公知の重合法により製造することができる。」と記載され、同段落【0054】~【0067】には、さらなる具体的条件について記載されている。
そして、本件特許明細書の【実施例】には、2つの実施例と3つの比較例があり、実施例1は、MMA(メチルメタクリレート)59質量部、St(スチレン)40質量部、EGDMA(エチレングリコールジメタクリレート)1質量部、酸化防止剤(アデカスタブPEP-36:ADEKA製)0.2質量部、イオン交換水400質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温し、次いで、過硫酸カリウム(KPS)0.3質量部、チオ硫酸ナトリウム0.3質量部を加え、窒素雰囲気下で70℃にて7時間重合反応を行って重合体粒子(A-1)を得ており、当該重合体粒子(A-1)の重量減少率が4.2%、YI値が5となって、条件(i)および(ii)を満たすことが示されている。一方、実施例1と同じモノマー組成で酸化防止剤とチオ硫酸ナトリウムを添加しない比較例2は、重量減少率が5.5%、YI値が23で、実施例1と同じモノマー組成で、酸化防止剤のみを使用した比較例1は、重量減少率が5.3%、YI値が15と条件(i)および(ii)を満たしていない。
この実施例・比較例の結果から、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合する」ことが、条件(i)および(ii)を満たす重合体粒子を製造するための必要条件であることが理解できる。そして、本件特許発明1は、本件訂正により、条件(i)および(ii)を満たす必要条件である「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されて」なることを発明特定事項とするものである。
そうすると、本件特許発明1の重合体粒子の実際例以外の範囲についても、実施例の条件をもとに「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合」を行った上で、同段落【0052】~【0067】の記載を適宜参照することにより、当業者が過度の試行錯誤を要することなく製造することができるものと認められる。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明2を実施することができる程度の記載があるものと認められる。
(3)申立人の主張の検討
申立人は、特許異議申立書において、以下の主張を行っている。
「重合体粒子の構成成分となるモノマー成分の組成だけでなく、様々な要因を調整しなければ、条件(i)及び(ii)を満たす重合体粒子を得ることができないことが明らかであり、実施例1及び実施例1において限定的な具体例が示されていたとしても、本件特許の請求項1及び請求項1に記載された重合体粒子全体についての発明を実施するためには、当業者が過度の試行錯誤を必要とすることは明らかである。」(第41ページ)
しかしながら、上記(2)で説示したとおり、本件特許発明1の重合体粒子の実施例以外の範囲についても、実施例の条件をもとに「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合」を行った上で、同段落【0052】~【0067】の記載を適宜参照することにより、当業者が過度の試行錯誤を要することなく製造することができるものと認められる。
したがって、申立人の上記主張は首肯できない。
(4)取消理由2(実施可能要件)及び申立理由6(実施可能要件)についてのまとめ
よって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由2及び申立理由6によっては取り消すことはできない。
4 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
上記1(1)アに示される甲1の実施例3で製造された球状架橋重合体粒子に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「フラスコにポリビニルアルコール7部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.01部を溶解した水400部を仕込み、これにスチレン50部、メタクリル酸メチル50部およびエチレングリコールジメタクリレート3部からなる単量体混合物およびラウロイルパーオキシド1部を均一に溶解した溶液を加え、液温を約25℃に保ちながらラボデイスパーザーにて高速で撹拌し、次に、70℃に保った水浴にフラスコを入れ、パドル型翼付撹拌機にて撹拌しながら加熱重合を行って得られた重合体粒子を別し、水にて洗浄後、メタノール中に分散させて沈降速度の差から簡単な分級を行って得られた平均粒子径が約15μの球状架橋重合体粒子。」(以下、「甲1発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「スチレン」、「メタクリル酸メチル」および「エチレングリコールジメタクリレート」は、各々本件特許発明1の「スチレン」、「メチルメタクリレート」、および「1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマー」に相当する。また、甲1発明の「スチレン」、「メタクリル酸メチル」および「エチレングリコールジメタクリレート」の含有量は、単量体混合物100質量%に換算すると、各々48.54質量%、48.54質量%および2.92質量%となり、本件特許発明1の「前記モノマー成分100質量%中、前記スチレンの含有量が20~65質量%の範囲であり、前記メチルメタクリレートの含有量が30~75質量%の範囲であり、前記多官能モノマーの含有量が0.5~8質量%の範囲」と重複一致する。
そして、甲1発明の「球状架橋重合体粒子」は、本件特許発明1の「重合体粒子」に相当する。
そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
スチレン、メチルメタクリレート、および1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマーを含むモノマー成分由来の構成成分を含む重合体粒子であって、前記モノマー成分100質量%中、前記スチレンの含有量が20~65質量%の範囲であり、前記メチルメタクリレートの含有量が30~75質量%の範囲であり、前記多官能モノマーの含有量が0.5~8質量%の範囲である重合体粒子。
<相違点1-1>
本件特許発明1は、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されて」なるものであるのに対し、甲1発明は「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合され」たものではない点
<相違点1-2>
本件特許発明1は、「下記条件(i)および(ii)を満たす、
(i)重合体粒子を大気中150℃で1時間加熱した後に測定したYI値が10以下である。
(ii)重合体粒子を窒素雰囲気下10℃/minで昇温し、350℃に到達した際の重量減少率が10重量%以下である。」ものであるのに対し、甲1発明は条件(i)および(ii)を満たすか不明である点
(イ)相違点の検討
<本件特許発明>について
<相違点1-2>に係る条件(i)および(ii)は、本件特許発明の課題である耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)について、物性・特性により具体的に表現したものといえる。そして、本件特許明細書の段落【0051】には、「本発明の製造方法で得られる重合体粒子は、耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)に優れる。この理由は明らかではないが、本発明者らは、チオ硫酸塩と酸化防止剤の相乗効果による活性ラジカル補足能(当審注:「捕捉能」の誤記と認められる。)の向上により、本発明の製造方法で得られる重合体粒子が耐熱性に優れると推定した。」と記載されている。
そうすると、<相違点1-1>に係る「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されて」なる事項は、<相違点1-2>に係る条件(i)および(ii)を満たす必要条件と位置づけることができる。
そこで、<相違点1-1>及び<相違点1-2>を併せて検討する。
<新規性>について
甲1発明には、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合され」たものではないため、<相違点1-1>に係る事項は実質的な相違点である。
また、甲1の他の記載を参酌しても、<相違点1-2>に係る事項を満たすことを示す記載も示唆もないため、<相違点1-2>に係る事項も実質的な相違点である
したがって、本件特許発明1は、甲1発明ではない。
<進歩性>について
a 発明特定事項の容易想到性について
(a)甲4には、「[請求項1] 色素を含む樹脂粒子であって、
上記色素が、紫外可視吸収スペクトルの最大吸収波長を380~500nmの範囲内に有し、
上記樹脂粒子のb*値が10~80の範囲内であることを特徴とする樹脂粒子。
[請求項2] 請求項1に記載の樹脂粒子であって、
単官能(メタ)アクリル系単量体及び/又は単官能スチレン系単量体に由来する構成単位と、多官能ビニル系単量体に由来する構成単位とを含む重合体を含み、
上記色素が、有機溶剤に溶解可能な色素を含むことを特徴とする樹脂粒子。」に関する技術が記載されているところ、その段落[0074]に「第2のビニル系単量体の重合系には、樹脂粒子の耐熱性を向上させるために、酸化防止剤等の添加剤を添加してもよい。」と記載されている。
しかしながら、甲4には、具体的に酸化防止剤を添加した実施例はなく、特に<相違点1-1>に係る「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合」すること、さらに<相違点1-2>に係る条件(i)および(ii)については記載も示唆もされていない。
(b)甲5(段落【0014】及び実施例14)には、インクジェット記録用シートにおいて、チオ硫酸塩を含有させることにより、印字部の変色や退色が防止できることが記載されている。
しかしながら、甲5には、スチレン、メチルメタクリレート、および1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマーを含むモノマー成分由来の構成成分を含む重合体粒子において、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合」すること、さらに<相違点1-2>に係る条件(i)および(ii)については記載も示唆もされていない。
(c)甲6には、「[1] 硫黄系酸化防止剤を必須的に含む酸化防止剤を10ppm以上(質量基準)含み、且つ、熱分解開始温度が290℃以上であることを特徴とする有機重合体微粒子。
・・・
[3] 上記酸化防止剤が、さらにヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、およびラクトン系酸化防止剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含み、有機重合体粒子に含まれるこれらの酸化防止剤の合計量が20ppm(質量基準)以上である請求項1または2に記載の有機重合体微粒子。」(請求の範囲)に関する技術が記載されているところ、その [0062]に、「次に、本発明の有機重合体微粒子の製造方法について説明する。・・・・これらの中でも、酸化防止剤の存在下で重合反応を行なう方法(第3の態様)により得られるものであるのが好ましい。すなわち、本発明の製造方法とは、酸化防止剤の存在下で、単量体成分のラジカル重合を行うところに特徴を有する方法である。このように、酸化防止剤の存在下で重合反応を進行させれば、生成する重合体内に酸化防止剤が取り込まれるため、酸化防止剤の偏析が生じ難く、生成する有機重合体微粒子中に酸化防止剤が分散し、耐熱性に優れた有機重合体微粒子が得られる。」ことが記載されている。そして、硫黄系酸化防止剤(株式会社ADEKA製、商品名「アデカスタブ(登録商標)AO-412S」)と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「Irganox(登録商標)1010」の存在下で重合反応を行った実施例1~3の有機重合体微粒子は、酸化防止剤を用いなかった比較例1の有機重合体微粒子に比べて熱分解開始温度が高く、耐熱性に優れ、Δb値が低く、加熱試験前後における色調の変化が小さいものであることが示されている(表1)。
しかしながら、甲6には、酸化防止剤に加え、「チオ硫酸塩の存在下で重合」すること、さらに<相違点1-2>に係る条件(i)および(ii)を満たすことまでは記載されていない。
(d)また、甲7には、「[請求項1]ビニル系単量体由来の構成単位を含む重合体とニトロキシルラジカル化合物とを含み、粒子径のCV値(変動係数)が15%以上である有機重合体微粒子。・・・
[請求項3]前記ビニル系単量体が、スチレン系単量体を含む請求項1または2に記載の有機重合体微粒子。」に関する技術が記載されているところ、「本発明に係る有機重合体微粒子は、酸化防止剤を含むものであってもよい。酸化防止剤を含むことにより、耐熱性をより向上できる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、およびビタミンE系酸化防止剤などが挙げられる。」(上記1(1)キ(エ))ことが記載されている。そして、実施例においては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「Irganox(登録商標)1010」、硫黄系酸化防止剤(株式会社ADEKA製、商品名「アデカスタブ(登録商標)AO-412S」、商品名「アデカスタブ(登録商標)PEP-36」の存在下で重合反応を行っている。
しかしながら、甲7にも、酸化防止剤に加え、「チオ硫酸塩の存在下で重合」すること、さらに<相違点1-2>に係る条件(i)および(ii)を満たすことまでは記載されていない。
(e)すなわち、甲4~甲7のいずれにも、スチレン、メチルメタクリレート、および1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマーを含むモノマー成分由来の構成成分を含む重合体粒子において、<相違点1-1>に係る「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合」すること、さらに「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合」することによってもたらされる<相違点1-2>に係る条件(i)および(ii)については記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明において、<相違点1-1>及び<相違点1-2>に係る事項とすることは当業者が容易に想到したとはいえない。
b 本件特許発明1の効果について
本件特許明細書の段落【0015】には、「本発明の重合体粒子の製造方法により、耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)に優れる重合体粒子を提供することができる。」ことが記載されている。
そして、本件特許明細書の【実施例】を見てみると、酸化防止剤とチオ硫酸ナトリウムを添加しない比較例2は重量減少率が5.5%、YI値が23であり、比較例2と同じモノマー組成で、酸化防止剤のみを添加した比較例1は重量減少率が5.3%、YI値が15であるのに対し、酸化防止剤とチオ硫酸ナトリウムを添加した実施例1は、重量減少率が4.2%、YI値が5となって、耐熱分解性および耐熱黄変性が向上しており、チオ硫酸塩と酸化防止剤の相乗効果が奏されていることがうかがえる。
そして、本件特許発明1のこのような効果は、甲1、甲4~甲7の記載事項から当業者が予測し得るものとはいえない。
c 小括
したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲4~甲7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
イ 本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲4~甲7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、「・・・これら甲1、甲4~甲7の知見に基づいて、甲1発明に係る重合体粒子において、加熱後の黄変防止や耐熱性向上のために、スチレンの使用量を好適化する、多官能単量体(多官能モノマー)の使用量を好適化する、チオ硫酸塩等の還元剤を含有させる、酸化防止剤を含有させる等の手段の1以上を用い、加熱後の黄変防止及び耐熱性向上を行うことは、当業者が容易に想到することであるか、当業者が適宜なし得ることである。」(第28~29ページ)と主張している。
たしかに、甲5(段落【0014】及び実施例14)には、チオ硫酸塩を含有させることにより、印字部の変色や退色が防止できることや、甲6、7には、酸化防止剤の存在下で重合反応を進行させることにより、耐熱性に優れた有機重合体微粒子が得られることが示されている。
しかしながら、上記(2)ア(イ)で述べたように、甲5~甲7には、酸化防止剤に加え、「チオ硫酸塩の存在下で重合」することは記載されていない。また、仮に、甲1発明において、甲6、甲7の技術的事項と甲5の技術的事項を組み合わせて、酸化防止剤に加え、「チオ硫酸塩の存在下で重合」を行うことができたとしても、甲5~甲7には、<相違点1-2>に係る条件(i)および(ii)を満たすようになることまでは記載されていないし、当該条件(i)および(ii)を満たすことを裏付ける具体的な証拠も示されていない。
したがって、申立人の上記主張は首肯することはできない。
(4)申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ
したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものともいえないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、申立理由1によっては取り消すことはできない。
5 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
上記1(1)イに示される甲2の実施例1に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「ガラス製反応容器にメタクリル酸メチル39.5重量部、スチレン60重量部、ジビニルベンゼン0.5重量部を入れて混合した後、過酸化ベンゾイル1重量部を添加し溶解させ、別にイオン交換水300重量部にポリビニルアルコール2重量部を添加し溶解させた溶液を調製し、この溶液を上記のガラス製反応容器に加え、ホモミキサーで激しく撹拌して分散させ、この反応容器に窒素ガス導入管、温度計及びコンデンサーを装着して、窒素ガスを導入してパージした後、分散液を撹拌しながら80℃に加熱し、この温度を8時間維持した後、得られた懸濁液を室温まで冷却し、濾過することによりポリマー粒子と分散媒であるポリビニルアルコール水溶液とを分離し、得られたポリマー粒子をメチルアルコール100重量部に再分散し、1時間撹拌した後、濾過によりポリマー粒子を分離し、得られたポリマー粒子を80℃に保った乾燥機を用いて8時間かけて乾燥させた後、解砕して得られた平均粒子径は45.1μmのポリマー粒子。」(以下、「甲2発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「スチレン」、「メタクリル酸メチル」および「ジビニルベンゼン」は、各々本件特許発明1の「スチレン」、「メチルメタクリレート」および「1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマー」に相当する。また、甲2発明の「スチレン」、「メタクリル酸メチル」および「ジビニルベンゼン」の含有量は、モノマー成分100質量%に換算すると、各々60.0質量%、39.5質量%および0.5質量%となり、本件特許発明1の「前記モノマー成分100質量%中、前記スチレンの含有量が20~65質量%の範囲であり、前記メチルメタクリレートの含有量が30~75質量%の範囲であり、前記多官能モノマーの含有量が0.5~8質量%の範囲」と重複一致する。
そして、甲2発明の「ポリマー粒子」は、本件特許発明1の「重合体粒子」に相当する。
そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
スチレン、メチルメタクリレート、および1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマーを含むモノマー成分由来の構成成分を含む重合体粒子であって、前記モノマー成分100質量%中、前記スチレンの含有量が20~65質量%の範囲であり、前記メチルメタクリレートの含有量が30~75質量%の範囲であり、前記多官能モノマーの含有量が0.5~8質量%の範囲である重合体粒子。
<相違点2-1>
本件特許発明1は、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されて」なるものであるのに対し、甲2発明は「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合され」たものではない点
<相違点2-2>
本件特許発明1は、「下記条件(i)および(ii)を満たす、
(i)重合体粒子を大気中150℃で1時間加熱した後に測定したYI値が10以下である。
(ii)重合体粒子を窒素雰囲気下10℃/minで昇温し、350℃に到達した際の重量減少率が10重量%以下である。」ものであるのに対し、甲2発明は条件(i)および(ii)を満たすか不明である点
(イ)相違点の検討
事案に鑑み、<相違点2-1>及び<相違点2-2>を併せて検討する。
<新規性>について
甲2発明には、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合され」たものではないため、<相違点2-1>に係る事項は実質的な相違点である。
また、甲2の他の記載を参酌しても、<相違点2-2>に係る事項を満たすことを示す記載も示唆もないため、<相違点2-2>に係る事項も実質的な相違点である
したがって、本件特許発明1は、甲2発明ではない。
<進歩性>について
<相違点2-1>及び<相違点2-2>は、上記2(2)ア(ア)の<相違点1-1>及び<相違点1-2>と同じである。
そうすると、上記2(2)ア(イ)で説示したのと同様、甲2発明においても、<相違点2-1>及び<相違点2-2>に係る事項とすることは当業者が容易に想到したとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲2発明及び甲4~甲7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
イ 本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2は、甲2発明ではないし、甲2発明及び甲4~甲7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ
したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものともいえないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、申立理由2によっては取り消すことはできない。
6 申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲3に記載された発明
上記1(1)ウに示される甲3の実施例6に着目すると、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。
「200mLの容器に、IPBC40.00g、MMA56.40g、Sty56.40g、ライトエステルEG7.20gおよびパーロイルL0.80gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製し、別途、1000mLのビーカーに、脱イオン水167.74g、PVA205(10%)水溶液64.00gおよびコータミン86W7.46gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を調製し、次いで、1000mLビーカーの水溶液に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数10000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製し、その後、調製したミニエマルションを、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mLの4口フラスコに移し、窒素気流下、6cm径の攪拌器により回転数200rpm(周速37.7m/分)で攪拌しながら、4口フラスコをウォーターバスにより、昇温して、ミニエマルション重合を55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で3時間、70±2℃で2時間、連続して実施し、続いて、ウォーターバスを昇温して、反応液の温度を80±2℃に昇温し、その温度で2時間、熟成し、その後、反応液を30℃以下に冷却することにより得られた、IPBCを含有する粒子(メジアン径を測定したところ、その結果が285nm)
PVA205:商品名、ポリビニルアルコール、けん化度:87.0~89.0%、重合度:500、粘度(4%水溶液、20℃):5.0~6.0mPa・sec、クラレ社製
コータミン86W:ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、有効成分または固形分28質量%、カチオン性界面活性剤、花王ケミカル社製
IPBC:商品名「ファンギトロール400」、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート、防かび剤、分子量281、融点:60℃、水への溶解度(20℃):150ppm、インターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社製
MMA:メタクリル酸メチル、商品名「アクリエステルM」、水への溶解度:1.6質量%、三菱レイヨン社製
Sty:スチレン、水への溶解度:0.03質量%、和光純薬社製
ライトエステルEG:商品名、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、水への溶解度:5.37ppm、共栄社化学社製
パーロイルL:商品名(「パーロイル」は登録商標)、ジラウロイルパーオキシド、日油社製
NV:固形分濃度(質量%)」(以下、「甲3発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1
(ア)対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「Sty:スチレン、和光純薬社製」、「MMA:メタクリル酸メチル、商品名「アクリエステルM」」および「ライトエステルEG:商品名、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)」は、各々本件特許発明1の「スチレン」、「メチルメタクリレート」、および「1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマー」に相当する。また、甲3発明の「Sty:スチレン」、「MMA:メタクリル酸メチル」および「エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)」の含有量は、モノマー成分100質量%に換算すると、各々47.0質量%、47.0質量%および6.0質量%となり、本件特許発明1の「前記モノマー成分100質量%中、前記スチレンの含有量が20~65質量%の範囲であり、前記メチルメタクリレートの含有量が30~75質量%の範囲であり、前記多官能モノマーの含有量が0.5~8質量%の範囲」と重複一致する。
そして、甲3発明の「粒子」は、本件特許発明1の「重合体粒子」に相当する。
そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
スチレン、メチルメタクリレート、および1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマーを含むモノマー成分由来の構成成分を含む重合体粒子であって、前記モノマー成分100質量%中、前記スチレンの含有量が20~65質量%の範囲であり、前記メチルメタクリレートの含有量が30~75質量%の範囲であり、前記多官能モノマーの含有量が0.5~8質量%の範囲である重合体粒子。
<相違点3-1>
本件特許発明1は、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されて」なるものであるのに対し、甲3発明は「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合され」たものではない点
<相違点3-2>
本件特許発明1は、「下記条件(i)および(ii)を満たす、
(i)重合体粒子を大気中150℃で1時間加熱した後に測定したYI値が10以下である。
(ii)重合体粒子を窒素雰囲気下10℃/minで昇温し、350℃に到達した際の重量減少率が10重量%以下である。」ものであるのに対し、甲3発明は条件(i)および(ii)を満たすか不明である点
(イ)相違点の検討
事案に鑑み、<相違点3-1>及び<相違点3-2>を併せて検討する。
<新規性>について
甲3発明は、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合され」たものではないため、<相違点3-1>に係る事項は実質的な相違点である。
また、甲3の他の記載を参酌しても、<相違点3-2>に係る事項を満たすことを示す記載も示唆もないため、<相違点3-2>に係る事項も実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は、甲3発明ではない。
<進歩性>について
<相違点3-1>及び<相違点3-2>は、上記2(2)ア(ア)の<相違点1-1>及び<相違点1-2>と同じである。
そうすると、上記2(2)ア(イ)で説示したのと同様、甲3発明においても、<相違点3-1>及び<相違点3-2>に係る事項とすることは当業者が容易に想到したとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲3発明及び甲4~甲7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
イ 本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2は、甲3発明ではないし、甲3発明及び甲4~甲7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ
したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものともいえないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、申立理由3によっては取り消すことはできない。
7 申立理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲4に記載された発明
上記1(1)エに示される甲4の実施例8に着目すると、甲4には、以下の発明が記載されていると認められる。
「単官能(メタ)アクリル系単量体であるメタクリル酸メチル(MMA)36g(単量体混合物100重量%に対して40重量%)と、単官能スチレン系単量体であるスチレン(St)45g(単量体混合物100重量%に対して50重量%)と、多官能ビニル系単量体としてのジビニルベンゼン(DVB)9g(単官能(メタ)アクリル系単量体及び単官能スチレン系単量体100重量部に対して11重量部;単量体混合物100重量%に対して10重量%)と、色素としてのYELLOW 93」(中央合成化学株式会社製)0.09g(重合体100重量部に対して0.1重量部)とに、重合開始剤としての2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.2gを加えて混合して、単量体組成物を調製し、内容積500mlのセパラブルフラスコに、水性媒体としての水270gと、懸濁安定剤としての第3リン酸カルシウム8.7gと、界面活性剤としてのドデシルスルホン酸ナトリウム0.08gとを入れ、このセパラブルフラスコの内容物に、前記単量体組成物を添加し、セパラブルフラスコの内容物を高速攪拌機(商品名「ホモミクサーMARK II 2.5型」、プライミクス株式会社製)により高速で攪拌し、単量体組成物の微小液滴を形成した。セパラブルフラスコの内容物を攪拌しながら50℃で5時間加熱することで重合を行い、得られた樹脂粒子に塩酸を加えて懸濁安定剤を分解した後、水により樹脂粒子を洗浄し、洗浄の後、遠心脱水により固体を分離し、得られた固体を60℃で10時間真空乾燥して得られた、体積平均粒子径が8.1μmであり、粒子径の変動係数(CV値)が37%である樹脂粒子。」(以下、「甲4発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1
(ア)対比
本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「スチレン(St)」、「メタクリル酸メチル(MMA)」および「多官能ビニル系単量体としてのジビニルベンゼン(DVB)」は、各々本件特許発明1の「スチレン」、「メチルメタクリレート」、および「1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマー」に相当する。
また、甲4発明の「樹脂粒子」は、本件特許発明1の「重合体粒子」に相当する。
そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
スチレン、メチルメタクリレート、および1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマーを含むモノマー成分由来の構成成分を含む重合体粒子。
<相違点4-1>
本件特許発明1は、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合されて」なるものであるのに対し、甲4発明は「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合され」たものではない点
<相違点4-2>
本件特許発明1は、「下記条件(i)および(ii)を満たす、
(i)重合体粒子を大気中150℃で1時間加熱した後に測定したYI値が10以下である。
(ii)重合体粒子を窒素雰囲気下10℃/minで昇温し、350℃に到達した際の重量減少率が10重量%以下である。」ものであるのに対し、甲4発明は条件(i)および(ii)を満たすか不明である点
<相違点4-3>
本件特許発明1の「前記モノマー成分100質量%中、前記スチレンの含有量が20~65質量%の範囲であり、前記メチルメタクリレートの含有量が30~75質量%の範囲であり、前記多官能モノマーの含有量が0.5~8質量%の範囲」であるのに対し、甲4発明は、単量体混合物100重量%に対し、スチレン(St)50重量%、メタクリル酸メチル(MMA)40重量%および「多官能ビニル系単量体としてのジビニルベンゼン(DVB)10重量%である点
(イ)相違点の検討
事案に鑑み、<相違点4-1>及び<相違点4-2>を併せて検討する。
<新規性>について
甲4発明には、「酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合され」たものではないため、<相違点4-1>に係る事項は実質的な相違点である。
また、甲4の他の記載を参酌しても、<相違点4-2>に係る事項を満たすことを示す記載も示唆もないため、<相違点4-2>に係る事項も実質的な相違点である。
したがって、<相違点4-3>を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明ではない。
<進歩性>について
<相違点4-1>及び<相違点4-2>は、上記2(2)ア(ア)の<相違点1-1>及び<相違点1-2>と同じである。
そうすると、上記2(2)ア(イ)で説示したのと同様、甲4発明においても、<相違点4-1>及び<相違点4-2>に係る事項とすることは当業者が容易に想到したとはいえない。
したがって、<相違点4-3>を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明及び甲4~甲7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
イ 本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2は、甲4発明ではないし、甲4発明及び甲4~甲7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)申立理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ
したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものともいえないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、申立理由4によっては取り消すことはできない。
8 申立理由7(明確性要件)について
申立人は、特許異議申立書において、以下の主張を行っている。
「請求項1では、条件(i)及び(ii)を満たすための重合体粒子の構成について、「スチレン、メチルメタクリレート、および1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマーを含むモノマー成分由来の構成成分を含む重合体粒子であって、前記モノマー成分100質量%中、前記スチレンの含有量が20~65質量%の範囲であり、前記メチルメタクリレートの含有量が30~75質量%の範囲」を有することが規定されるだけであり、それ以外に重合体粒子がどのような構成等を有すれば条件条件(i)及び(ii)を満たすことになるのかという、課題を解決するための手段が一切記載されていない。
したがって、本件特許の請求項1に係る記載は、特許請求の範囲の記載が「特許を受けようとする発明が明確であること。」との要件に適合しない。」(第41~42行)
しかしながら、明確性要件の判断基準は、「特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。」というものであって、申立人が主張するような「課題を解決するための手段が一切記載されていない」ことは、上記判断基準と何ら関係するものではない。
そして、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明2は明確である。
したがって、申立人の上記主張は首肯できない。
第6 むすび
上記第5のとおり、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、当審において通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700278