特許異議申立
2025-700238
爪用組成物
- 審判番号
- 2025-700238
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-221716
- 登録番号
- 7541416
- 請求日
- 2025年02月27日
- 審決日
- 2026年02月17日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ネイルセレクト
- 【権利者代理人】小野 誠
- 【権利者代理人】金山 賢教
- 【権利者代理人】副島 由加里
- 【権利者代理人】城山 康文
- 【異議申立人】平松 由紀子
- 審判長/審判官
- 審判長 齋藤 恵
- 審判官 新留 豊
- 審判官 野田 定文
- 分類
- P1652.113-YAA(A61K) / P1652.121-YAA(A61K) / P1652.537-YAA(A61K) / P1652.851-YAA(A61K) / P1652.852-YAA(A61K) / P1652.857-YAA(A61K) / P1652.856-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7541416号発明「爪用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7541416号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~9〕、〔2、10〕について訂正することを認める。
特許第7541416号の請求項1及び3~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7541416号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和5年12月27日の出願であって、令和6年8月20日に特許権の設定登録がされ、同年同月28日にその特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1及び3~9に係る特許に対し、令和7年2月27日に、特許異議申立人 平松 由紀子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和7年 4月21日付け 取消理由通知
同年 6月 9日 面接(特許権者)
同年 同月23日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 7月 7日付け 訂正の請求があった旨の通知
同年 9月29日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年12月 1日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
令和8年 1月23日 訂正請求書の手続補正書の提出(特許権者)
なお、令和7年6月23日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「先の訂正請求」という。)は、令和8年1月23日提出の手続補正書により補正された令和7年12月1日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、先の訂正請求についての訂正の請求があった旨の通知に対して、申立人からは指定期間内に応答はなく、取消理由通知(決定の予告)に対してされた本件訂正請求については、申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるといえるから(特許法第120条の5第5項ただし書)、申立人に新たに意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 訂正の請求について
1 訂正の請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、
「特許第7541416号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」
というものであり、本件訂正の内容は、本件訂正請求書の記載及び同請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載からみて、以下の訂正事項1~7からなるものであると認める。
なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「Xは、アクリロイルオキシキ基」
と記載されているのを、
「Xは、アクリロイルオキシ基」
に訂正する。
請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~9も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」
と記載されているのを、
「(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分
ここで、前記(B)成分は、
i)一般式(I)におけるnが1であるとき、前記連結部における炭素原子の数が8~12個であって、前記連結部は、前記ヘテロ原子を含まない直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基からなる連結部、環骨格全体が炭素原子からなる炭素環からなる連結部、複素環からなる連結部、及び炭素環又は複素環と前記ヘテロ原子を含まない直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基を組み合わせてなる連結部からなる群より選ばれる;又は
ii)一般式(I)におけるnが2であるとき、前記Xはメタクリロイルオキシ基であって、前記連結部における炭素原子の数が3~6個である(ただし、下記式(I-a’)で表される化合物を除く)
である。
[図:0001435180000001.jpg]
」
に訂正する。
請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~9も同様に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物である、請求項1に記載の爪用組成物。
【化2】
[図:0001435180000002.jpg]
【化3】
[図:0001435180000003.jpg]
」
と記載されているのを、
「以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分であり、
【化1】
[図:0001435180000004.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物
【化2】
[図:0001435180000005.jpg]
【化3】
[図:0001435180000006.jpg]
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」
に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記(A)成分は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリレートモノマーとを含む、請求項1に記載の爪用組成物。」
と記載されているのを、
「以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分であって、
前記(A)成分は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリレートモノマーとを含む
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分であり、
【化1】
[図:0001435180000007.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物
【化2】
[図:0001435180000008.jpg]
【化3】
[図:0001435180000009.jpg]
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」
に訂正する。
請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~6及び9も同様に訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に、
「前記(A)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上90質量部以下である、請求項1に記載の爪用組成物。」
と記載されているのを、
「以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分であって、
前記(A)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上90質量部以下である
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分であり、
【化1】
[図:0001435180000010.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物
【化2】
[図:0001435180000011.jpg]
【化3】
[図:0001435180000012.jpg]
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」
に訂正する。
請求項7の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に、
「前記(B)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上40質量部以下である、請求項1に記載の爪用組成物。」
と記載されているのを、
「以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分であり、
【化1】
[図:0001435180000013.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物であって、
【化2】
[図:0001435180000014.jpg]
【化3】
[図:0001435180000015.jpg]
前記(B)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上40質量部以下である
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」
に訂正する。
請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。
(7) 訂正事項7
(7-1) 訂正事項7-1
特許請求の範囲の請求項9に、
「ジェルネイルに用いるための、請求項1~8のいずれか一項に記載の爪用組成物。」
と記載されているのを、
「ジェルネイルに用いるための、請求項1及び3~8のいずれか一項に記載の爪用組成物」
に訂正する。
(7-2) 訂正事項7-2
特許請求の範囲の請求項10として、
「 ジェルネイルに用いるための、請求項2に記載の爪用組成物。」
を新たに追加訂正する。
(8) 一群の請求項及び別の訂正単位とする求めについて
本件訂正前の請求項1~9のうち、請求項2~9は、いずれも請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~10についての本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定される「一群の請求項」についてされたものである。
また、本件訂正請求においては、訂正後の請求項2及び10について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることが求められている。
2 訂正事項についての訂正要件の判断
以下、構造式について省略し、単に、「一般式(I)で表される化合物」、「式(1)で表される化合物」、「式(2)で表される化合物」及び「式(I-a’)で表される化合物」ということがある。
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の式(1)の「X」について、「アクリロイルオキシキ基」という有機基の置換基として存在しない名称が記載されていたところ、本件特許の願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「本件当初明細書等」という。)における請求項1及び【0008】の「リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基」との記載などがあることからすれば、これが「アクリロイルオキシ基」の誤記であることは明らかであり、それを本来の正しい記載である「アクリロイルオキシ基」に訂正するものである。
したがって、当該訂正は、誤記を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項1で訂正されたとおり、「X」が「アクリロイルオキシ基」であることは、本件当初明細書等における請求項1及び【0008】に「リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基」と記載されているから、訂正事項1に係る訂正は、本件当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項1に係る訂正は、上記アで述べたとおり、訂正前の請求項1の式(1)の「X」について、「アクリロイルオキシキ基」という有機基の置換基として存在しない名称を記載した誤記があったのを、単に、本来の正しい記載である「アクリロイルオキシ基」に訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2に係る訂正は、請求項1に記載の「(B)成分」が含む「一般式(I)で表される化合物」について、「i)一般式(I)におけるnが1であるとき」及び「ii)一般式(I)におけるnが2であるとき」の場合に分け、それぞれ、更に化合物の構造を限定するものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
(ア) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)には、
「【0053】
上記式(I)において、リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、ここで、連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい。連結部にヘテロ原子が含まれる場合、ヘテロ原子の数は、1つ又は複数である。また、連結部を構成する炭素原子の数は、nが1である場合、6~12個であることが好ましく、8~10個であることが更に好ましく、10個であることが特に好ましい。連結部を構成する炭素原子の数は、nが2である場合、3~6個であることが好ましい。連結部としては、例えば、直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基からなる連結部、環骨格全体が炭素原子からなる炭素環(例えば、シクロヘキサン環、トリシクロデカン環、イソボルナン環、ベンゼン環等)からなる連結部、複素環からなる連結部、炭素環又は複素環と直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基を組み合わせてなる連結部、1つ又は複数のエーテル結合又はエステル結合を含む連結部〔例えば、式:-(R)xO-R-で表される連結部(ここで、Rは2価の炭化水素基であり、xは1以上の整数である)等〕等が挙げられる。」
と記載されているから、「リンカー」である「連結部」は、「直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基からなる連結部」、「環骨格全体が炭素原子からなる炭素環」、「複素環からなる連結部」又は「炭素環又は複素環と直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基を組み合わせてなる連結部」であることが記載されているといえる。
(イ) また、「連結部を構成する炭素原子の数」が、「nが1である場合、6~12個であることが好ましく、8~10個であることが更に好ましく」と記載され、連結部において「ヘテロ原子を含」むことは任意であるから、「i)一般式(I)におけるnが1であるとき」の「炭化水素基」について、「炭素原子の数が8~12個」であって、「ヘテロ原子を含まない」とすることは、本件明細書等に記載された事項といえる。
(ウ) さらに、「連結部を構成する炭素原子の数」が、「nが2である場合、3~6個であることが好ましい」と記載されているから、「ii)一般式(I)におけるnが2であるとき」について、「炭素原子の数が3~6個である」とすることは、本件明細書等に記載された事項である。
そして、「ii)一般式(I)におけるnが2であるとき」の化合物の一態様である
「
[図:0001435180000016.jpg]
」を除くことは、特定の化合物の態様を除外しているだけであり、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(エ) そうすると、訂正事項2による訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項2に係る訂正は、上記アで述べたとおり、特許請求の範囲を減縮したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3) 訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3に係る訂正は、請求項2の記載について、請求項1の記載を引用する部分を、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き換えるとともに、訂正事項1(訂正前の式(1)の「X」について、「アクリロイルオキシキ基」の記載を「アクリロイルオキシ基」に変更)の訂正をするものである。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号及び第4号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項3による訂正は、上記アで述べたとおり、誤記の訂正(上記(1)イを参照)、及び、請求項1の記載を引用する請求項2の記載を請求項1の記載を引用しないものとしただけであるから、本件当初明細書等(前者について)あるいは本件明細書等(後者について)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、本件当初明細書等、及び本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項3に係る訂正は、上記アで述べたとおり、誤記を本来の正しい記載に訂正するとともに、請求項1の記載を引用する請求項2の記載を請求項1の記載を引用しないものとしただけであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4) 訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4に係る訂正は、請求項3の記載について、請求項1の記載を引用する部分を、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き換えるとともに、「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」を、請求項2に記載の「式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物」に限定し、訂正事項1(訂正前の式(1)の「X」について、「アクリロイルオキシキ基」の記載を「アクリロイルオキシ基」に変更)の訂正をするものである。
したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、「誤記又は誤訳の訂正」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
本件明細書等の請求項2には、「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」が、「式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物」であることが記載されており、上記アで述べたとおり、当該誤記の訂正(上記(1)イを参照)、及び、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を請求項1の記載を引用しないものとすることは、本件当初明細書等あるいは本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、本件当初明細書等、及び本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項4に係る訂正は、上記アで述べたとおり、特許請求の範囲を減縮し、誤記を本来の正しい記載に訂正するとともに、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を請求項1の記載を引用しないものとしただけであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(5) 訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5に係る訂正は、請求項7の記載について、請求項1の記載を引用する部分を、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き換えるとともに、「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」を、請求項2に記載の「式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物」に限定し、訂正事項1(訂正前の式(1)の「X」について、「アクリロイルオキシキ基」の記載を「アクリロイルオキシ基」に変更)の訂正をするものである。
したがって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、「誤記又は誤訳の訂正」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
本件明細書等の請求項2には、「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」が、「式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物」であることが記載されており、上記アで述べたとおり、当該誤記の訂正(上記(1)イを参照)、及び、請求項1の記載を引用する請求項7の記載を請求項1の記載を引用しないものとすることは、本件当初明細書等あるいは本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項5に係る訂正は、本件当初明細書等、及び本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項5に係る訂正は、上記アで述べたとおり、特許請求の範囲を減縮し、誤記を本来の正しい記載に訂正するとともに、請求項1の記載を引用する請求項7の記載を請求項1の記載を引用しないものとしただけであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(6) 訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6に係る訂正は、請求項8の記載について、請求項1の記載を引用する部分を、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き換えるとともに、「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」を、請求項2に記載の「式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物」に限定し、訂正事項1(訂正前の式(1)の「X」について、「アクリロイルオキシキ基」の記載を「アクリロイルオキシ基」に変更)の訂正をするものである。
したがって、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、「誤記又は誤訳の訂正」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
本件明細書等の請求項2には、「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」が、「式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物」であることが記載されており、上記アで述べたとおり、当該誤記の訂正(上記(1)イを参照)、及び、請求項1の記載を引用する請求項8の記載を請求項1の記載を引用しないものとすることは、本件当初明細書等あるいは本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項6に係る訂正は、本件当初明細書等、及び本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項6に係る訂正は、上記アで述べたとおり、特許請求の範囲を減縮し、誤記を本来の正しい記載に訂正するとともに、請求項1の記載を引用する請求項8の記載を請求項1の記載を引用しないものとしただけであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(7) 訂正事項7について
(7-1) 訂正事項7-1について
ア 訂正の目的について
訂正事項7-1に係る訂正は、請求項9の記載について、請求項1~8の記載の引用のうち、請求項2の記載の引用を削除し、請求項1及び3~8の記載の引用に限定するものである。
したがって、訂正事項7-1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項7-1による訂正は、上記アで述べたとおり、記載を引用する請求項の一部を限定しただけであるから、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項7-1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項7-1に係る訂正は、上記アで述べたとおり、記載を引用する請求項の一部を限定しただけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項7-1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(7-2) 訂正事項7-2について
ア 訂正の目的について
訂正事項7-2に係る訂正は、訂正事項1を伴う訂正事項3により、請求項2が請求項1の記載を引用しない独立形式の記載に訂正され、かつ、訂正事項7-1により、請求項9が請求項2の記載を引用した場合を削除したことの補完のため、当該削除された事項である請求項1及び請求項2の記載を引用する請求項9の内容について、新たに、請求項1の記載を引用しない独立形式の請求項2の記載を引用する請求項10を記載したものである。
したがって、訂正事項7-2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項7-2による訂正は、上記アで述べたとおり、単に、請求項9において、訂正事項7-1により削除された事項を、新たに請求項10としたものであるから、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項7-2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項7-2に係る訂正は、上記アで述べたとおり、単に、請求項9において、訂正事項7-1により削除された事項を、新たに請求項10としただけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項7-2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(8) 独立特許要件について
ア 訂正前の請求項2に係る特許に対して特許異議の申立てがされていないところ、請求項2についての訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものを含むものである。さらに、訂正後の請求項10は、訂正後の請求項2を引用するものであるから、結果として、請求項2についての特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正を含むものである。
そこで、訂正後の請求項2及び10に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかを検討する。
イ 訂正前の請求項2に係る発明は、拒絶理由を発見しないとして特許されたものであり、訂正事項1による訂正後の請求項2は、上記(3)で検討したとおり、誤記を訂正したにすぎないものであるから、このことによって新たな拒絶理由が生じることはなく、また、請求項2に係る発明について、特許出願の際独立して受けることができるものでないとする特段の事情も存在しない。
ウ 訂正後の請求項10に係る発明は、拒絶理由を発見しないとして特許された訂正前の請求項9の内容について、請求項1の記載を引用しない独立形式の請求項2の記載を引用する部分に係る発明であるから、本件訂正によって新たな拒絶理由が生じることはなく、また、請求項10に係る発明については、特許出願の際独立して受けることができるものでないとする特段の事情も存在しない。
エ したがって、請求項2及び10についての訂正は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定に適合するものである。
3 別の訂正単位とする求めについて
訂正後の請求項2及び10については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、請求項1及び3~9と別の訂正単位とする求めがなされているところ、これを認める。
4 訂正の請求についてのまとめ
以上のとおり、訂正事項1~7からなる本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項、並びに読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~9〕、〔2、10〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件特許に係る発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1~10(以下、請求項の番号順に「本件訂正請求項1」等ということがある。)の記載は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
そして、本件訂正請求項1及び3~9に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び3~9に記載されたとおりのものであると認める(以下、請求項の番号順に「本件訂正発明1」等といい、まとめて「本件訂正発明」いうことがある。)。
「【請求項1】
以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分
【化1】
[図:0001435180000017.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分
ここで、前記(B)成分は、
i)一般式(I)におけるnが1であるとき、前記連結部における炭素原子の数が8~12個であって、前記連結部は、前記ヘテロ原子を含まない直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基からなる連結部、環骨格全体が炭素原子からなる炭素環からなる連結部、複素環からなる連結部、及び炭素環又は複素環と前記ヘテロ原子を含まない直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基を組み合わせてなる連結部からなる群より選ばれる;又は
ii)一般式(I)におけるnが2であるとき、前記Xはメタクリロイルオキシ基であって、前記連結部における炭素原子の数が3~6個である(ただし、下記式(I-a’)で表される化合物を除く)
である。
[図:0001435180000018.jpg]
【請求項2】
以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分であり、
【化1】
[図:0001435180000019.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物
【化2】
[図:0001435180000020.jpg]
【化3】
[図:0001435180000021.jpg]
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分
【請求項3】
以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分であって、
前記(A)成分は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリレートモノマーとを含む
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分であり、
【化1】
[図:0001435180000022.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物
【化2】
[図:0001435180000023.jpg]
【化3】
[図:0001435180000024.jpg]
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分
【請求項4】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、イソボルニル(メタ)アクリレートを含む、請求項3に記載の爪用組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含む、請求項3に記載の爪用組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、イソボルニル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含む、請求項3に記載の爪用組成物。
【請求項7】
以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分であって、
前記(A)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上90質量部以下である
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分であり、
【化1】
[図:0001435180000025.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物
【化2】
[図:0001435180000026.jpg]
【化3】
[図:0001435180000027.jpg]
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分
【請求項8】
以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分であり、
【化1】
[図:0001435180000028.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物であって、
【化2】
[図:0001435180000029.jpg]
【化3】
[図:0001435180000030.jpg]
前記(B)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上40質量部以下である
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分
【請求項9】
ジェルネイルに用いるための、請求項1及び3~8のいずれか一項に記載の爪用組成物。
【請求項10】
ジェルネイルに用いるための、請求項2に記載の爪用組成物。」
第4 特許異議の申立ての理由及び当審において通知した取消理由の概要
1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、証拠方法として、下記(4)に示す甲第1号証~甲第4号証(以下、それぞれ番号順に「甲1」等ということがある。)を添付して提出し、本件特許の請求項1及び3~9に係る特許を取り消すべきとの特許異議の申し立てをしており、その理由(以下「申立理由」という。)の概要は、下記(1)~(3)に示すとおりである。
なお、ここでいう「請求項1」等の表記は、本件訂正前の本件特許の請求項1等を意味するものである。
(1) 申立理由1(特許法第29条第1項第3号:新規性)
(1-1) 申立理由1-1
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1及び3~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(1-2) 申立理由1-2
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1及び3~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(1-3) 申立理由1-3
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1及び3~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(1-4) 申立理由1-4
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1及び3~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2) 申立理由2(特許法第29条第2項:進歩性)
(2-1) 申立理由2-1
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1及び3~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2-2) 申立理由2-2
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1及び3~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2-3) 申立理由2-3
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1及び3~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2-4) 申立理由2-4
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1及び3~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3) 申立理由3(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)
請求項1及び3~9に係る発明は、その特許請求の範囲の記載が、「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」において、「式(1)で表される化合物及び/又は式(2)で表される化合物」以外を含む点で、発明の課題を解決できない場合を含み、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項1及び3~9に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(4) 甲号証等一覧
甲1:特許第7373252号公報
甲2:特許第7104392号公報
甲3:特開2015-209390号公報
甲4:特開2022-111991号公報
2 当審において通知した取消理由の概要
以下に示す甲1~甲4は、それぞれ、申立人が提出した甲第1~4号証である。
(1) 令和7年4月21日付け取消理由通知の取消理由の概要
ア 取消理由1(新規性)
取消理由1-1
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び3~9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
取消理由1-2
請求項1、3、4及び7~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、3、4及び7~9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
取消理由1-3
請求項1、3~7及び9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、3~7及び9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
イ 取消理由2(進歩性)
取消理由2-1
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び3~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
取消理由2-2
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び3~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
取消理由2-3
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び3~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
取消理由2-4
請求項1及び3~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明及び甲1~3に記載された事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び3~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2) 取消理由通知(決定の予告)の取消理由の概要
上記(1)イの取消理由2-4によって、先の訂正請求による訂正後の請求項1及び3~9に係る特許は取り消されるべきものである。
第5 当審合議体の判断
本件訂正請求項1及び3~9に係る特許は、以下に述べるように、当審において通知された上記第4の2(1)に示した取消理由1及び取消理由2、並びに、申立人による申立理由1~申立理由3によっては、取り消すことができないと判断する。
その理由は次のとおりである。
1 取消理由について
(1) 取消理由1-1及び取消理由2-1について
ア 甲1に記載された発明
甲1には、「高温環境下や多湿環境下に置かれることに起因する変質を抑えた人工爪組成物を提供する」ための(【0010】)、
「(A)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有し、リン原子を有しない化合物と、
(B)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物と、
(C)ラジカル重合開始剤とを含有し、
前記(B)成分は、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートアシッドフォスフェート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートアシッドフォスフェート及びヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートアシッドフォスフェートから選択される1種以上を含み、
前記(A)成分のうち、水酸基を有しない(メタ)アクリレートの含有量が人工爪組成物100質量部に対して52質量部以上97質量部以下であり、
前記(B)成分の含有量が人工爪組成物100質量部に対して1質量部以上16質量部以下である、
人工爪組成物。」
について(請求項1)、実施例5として、具体的に人工爪組成物を調製し、市販ジェルネイル専用LEDライトを使用して硬化させた接着性試験等の評価試験結果が記載されている(【0063】~【0087】)。
そうすると、甲1には以下に示す実施例5に係る甲1発明が記載されているといえる。
<甲1発明>
ビスHEA(ポリ(1,4-ブタンジオール)-9/IPDI)コポリマー32重量部、イソボルニルメタクリレート40重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート5重量部、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート5重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレートアシッドフォスフェート16重量部、及び、光重合開始剤である2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド2重量部からなる、市販ジェルネイル専用LEDライトを使用して硬化させるための人工爪組成物。
イ 本件訂正発明と甲1に記載された発明との対比・判断
(ア) 本件訂正発明1について
a 新規性について
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ビスHEA(ポリ(1,4-ブタンジオール)-9/IPDI)コポリマー」、「イソボルニルメタクリレート」、「2-ヒドロキシエチルメタクリレート」及び「2-ヒドロキシプロピルメタクリレート」は、いずれも「酸性基」を有していない「ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物」であるから、本件訂正発明1の「(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分」に相当する。
また、甲1発明の「光重合開始剤である2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド」及び「人工爪組成物」は、それぞれ、本件訂正発明1の「(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」及び「爪用組成物」に相当する。
さらに、甲1発明の「4-ヒドロキシブチルアクリレートアシッドフォスフェート」は、その化学構造が、本件訂正発明1における「下記一般式(I)で表される化合物
【化1】
[図:0001435180000031.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)」
に包含される化合物であって、当該一般式(I)中の「X」、「リンカー」、「a」、「n」、「m」及び「n+m」が、それぞれ、「アクリロイルオキシキ基」、4個の炭素原子からなる連結部である「ブチレン基」、「1」、「1」、「2」及び「3」である化合物に該当するから、本件訂正発明1の「(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、」「一般式(I)で表される化合物を含む成分」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明とは
「以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分
【化1】
[図:0001435180000032.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」
である点で一致し、以下の相違点1で相違する。
<相違点1>
「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」について、本件訂正発明1は、
「i)一般式(I)におけるnが1であるとき、前記連結部における炭素原子の数が8~12個であって、前記連結部は、前記ヘテロ原子を含まない直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基からなる連結部、環骨格全体が炭素原子からなる炭素環からなる連結部、複素環からなる連結部、及び炭素環又は複素環と前記ヘテロ原子を含まない直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基を組み合わせてなる連結部からなる群より選ばれる;又は
ii)一般式(I)におけるnが2であるとき、前記Xはメタクリロイルオキシ基であって、前記連結部における炭素原子の数が3~6個である(ただし、下記式(I-a’)で表される化合物を除く)
である。
[図:0001435180000033.jpg]
」
のに対して、甲1発明は、
「nが1で、連結部における炭素原子の数が4個の炭化水素基」である「4-ヒドロキシブチルアクリレートアシッドフォスフェート」
である点
相違点1について検討する。
甲1には、「4-ヒドロキシブチルアクリレートアシッドフォスフェート」以外に、「(B)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物」として他の化合物も示唆されているが(請求項1、【0042】、【0065】)、比較例を含めても、「n=1」で、「リンカー」の「炭素原子の数」が「2~6個」の「炭化水素基」を有する化合物にとどまるから、相違点1は実質的な相違点である。
よって、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではない。
b 進歩性について
甲1には、本件訂正発明1における「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」において、「nが1であるとき」に「炭化水素基」の「炭素原子の数が8~12個」であることや、「nが2である」ことの記載も示唆もなく、甲1発明において、相違点1に係る本件訂正発明1に係る構成を採用することの動機付けがない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件訂正発明3~8について
本件訂正発明2は、上記第2の2(8)イで述べたとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、本件訂正発明3~8は、本件訂正発明2の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明2を実質的に更に限定するものであるから、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、本件訂正発明1又は本件訂正発明3~8の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明1又は本件訂正発明3~8を更に限定するものであるから、上記(ア)及び(イ)で述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 取消理由1-2及び取消理由2-2について
ア 甲2に記載された発明
甲2には、「天然爪と人工爪との良好な接着性と、人工爪を天然爪の爪甲から除去する際の容易な除去性とを両立した人工爪組成物を提供する」ための(【0006】)、
「 以下の(A)成分から(C)成分を含有する人工爪組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物
(B)成分:以下の式で表される化合物
【化1】
[図:0001435180000034.jpg]
(C)成分:ラジカル重合開始剤」
について(請求項1)、実施例3として、具体的に人工爪組成物を調製し、市販ジェルネイル専用LEDライトを使用して硬化させた接着性試験等の評価試験結果が記載されている(【0048】~【0088】)。
そうすると、甲2には以下に示す実施例3に係る甲2発明が記載されているといえる。
<甲2発明>
ウレタンアクリレートオリゴマー(ポリエーテル系、重量平均分子量:15000)57.4質量部、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート8.0質量部、イソボルニルメタクリレート24.6質量部、メタクリロキシイソプロピルフォスフェート8.0質量部、及び、光重合開始剤である2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド2質量部からなる、市販ジェルネイル専用LEDライトを使用して硬化させるための人工爪組成物。
イ 本件訂正発明と甲2に記載された発明との対比・判断
(ア) 本件訂正発明1について
a 新規性について
本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「ウレタンアクリレートオリゴマー(ポリエーテル系、重量平均分子量:15000)」、「2-ヒドロキシプロピルメタクリレート」及び「イソボルニルメタクリレート」は、いずれも「酸性基」を有していない「ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物」であるから、本件訂正発明1の「(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分」に相当する。
また、甲2発明の「光重合開始剤である2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド」及び「人工爪組成物」は、それぞれ、本件訂正発明1の「(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」及び「爪用組成物」に相当する。
さらに、甲2発明の「メタクリロキシイソプロピルフォスフェート」は、その化学構造が、本件訂正発明1における
「下記一般式(I)で表される化合物
【化1】
[図:0001435180000035.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)」
に包含される化合物であって、当該一般式(I)中の「X」、「リンカー」、「a」、「n」、「m」及び「n+m」が、それぞれ、「メタクリロイルオキシ基」、3個の炭素原子からなる連結部である「イソプロピレン基」、「1」、「1」、「2」及び「3」である化合物」に該当するものであるから、「(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、」「一般式(I)で表される化合物を含む成分」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲2発明とは
「以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分
【化1】
[図:0001435180000036.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」
である点で一致し、以下の相違点2で相違する。
<相違点2>
「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」について、本件訂正発明1は、
「i)一般式(I)におけるnが1であるとき、前記連結部における炭素原子の数が8~12個であって、前記連結部は、前記ヘテロ原子を含まない直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基からなる連結部、環骨格全体が炭素原子からなる炭素環からなる連結部、複素環からなる連結部、及び炭素環又は複素環と前記ヘテロ原子を含まない直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基を組み合わせてなる連結部からなる群より選ばれる;又は
ii)一般式(I)におけるnが2であるとき、前記Xはメタクリロイルオキシ基であって、前記連結部における炭素原子の数が3~6個である(ただし、下記式(I-a’)で表される化合物を除く)
である。
[図:0001435180000037.jpg]
」
のに対して、甲2発明は、
「nが1で、連結部における炭素原子の数が3個の炭化水素基」である「メタクリロキシイソプロピルフォスフェート」
である点
相違点2について検討する。
甲2には、「メタクリロキシイソプロピルフォスフェート」以外に、「(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物」として他の化合物も示唆されている(請求項1、【0030】、【0050】、【0051】)。
しかしながら、比較例を含めても、
「n=1のとき」は、「リンカー」の「炭素原子の数」が「2又は3個」の「炭化水素基」を有する化合物が記載されているにとどまり、
「n=2」のときは、本件訂正発明1で除かれている「式(I-a’)で表される化合物」である「ビス(メタクリロキシイソプロピル)フォスフェート」か、「リンカー」の「炭素原子の数」が「2個」の「炭化水素基」を有する化合物が記載されているにとどまる。
そうすると、相違点2は実質的な相違点である。
よって、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明ではない。
b 進歩性について
甲2には、本件訂正発明1における「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」において、「nが1であるとき」に「炭化水素基」の「炭素原子の数が8~12個」であることや、「nが2であるとき」に「式(I-a’)で表される化合物」に該当せずに、「連結部における炭素原子の数が3~6個である」ことの記載も示唆もなく、甲2発明において、相違点2に係る本件訂正発明1に係る構成を採用することの動機付けがない。
したがって、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件訂正発明3、4、7及び8について
本件訂正発明2は、上記第2の2(8)イで述べたとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、本件訂正発明3、4、7及び8は、本件訂正発明2の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明2を実質的に更に限定するものであるから、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件訂正発明5及び6について
本件訂正発明5及び6は、本件訂正発明3の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明3を更に限定するものであるから、上記(イ)で述べたのと同様の理由により、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ) 本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、本件訂正発明1又は本件訂正発明3~8の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明1又は本件訂正発明3~8を更に限定するものであるから、上記(ア)~(ウ)で述べたのと同様の理由により、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 取消理由1-3及び取消理由2-3について
ア 甲3に記載された発明
甲3には、「光硬化性人工爪組成物において、臭気を低減し、かつ皮膚刺激性が低い組成物を得、被覆後においては、強固な被膜を得て欠けることがなく、使用者自身の爪表面に対してサンディングを行う必要がなく、かつ爪への密着性が高く、その表面にシワが発生することを防止する」ための組成物(【0006】)である、
「 下記(A)(化1)~(化3)で示される化合物のうちの1種以上
[図:0001435180000038.jpg]
[図:0001435180000039.jpg]
[図:0001435180000040.jpg]
及び(B)ラジカル重合開始剤
を含有する光硬化性人工爪組成物。」
について(請求項1)、実施例2として、具体的に光硬化性人工爪組成物を調製し、密着性等の評価試験結果が記載されている(【0025】~【0030】)。
そうすると、甲3には以下に示す実施例2に係る甲3発明が記載されているといえる。
<甲3発明>
ウレタンオリゴマーであるウレタンアクリレート47.80重量%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート9.60重量%、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート9.60重量%、イソボルニルアクリレート9.60重量%、イソピリデンジフェニルビス(メタクリル酸オキシヒドオキシプロピル)9.60重量%、リン酸エステルメタクリレートの混合物(メタクリル酸プロパン酸ペンチルフォスフェート、ビス(メタクリル酸プロパン酸ペンチル)フォスフェート、及びトリ(メタクリル酸プロパン酸ペンチル)フォスフェートの混合物)9.60重量%、IRGACURE184(1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)2.90重量%、並びに、LUCIRIN TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド)1.40重量%からなる、光硬化性人工爪組成物。
イ 本件訂正発明と甲3に記載された発明との対比・判断
(ア) 本件訂正発明1について
a 新規性について
本件訂正発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「ウレタンオリゴマーであるウレタンアクリレート」、「2-ヒドロキシエチルメタクリレート」、「2-ヒドロキシプロピルメタクリレート」、「イソボルニルアクリレート」及び「イソピリデンジフェニルビス(メタクリル酸オキシヒドオキシプロピル)」は、いずれも「酸性基」を有していない「ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物」であるから、本件訂正発明1の「(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分」に相当する。
また、甲3発明の「IRGACURE184(1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)」及び「LUCIRIN TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド)」は、ともに本件訂正発明1の「(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」に相当し、甲3発明の「光硬化性人工爪組成物」は、本件訂正発明1の「爪用組成物」に相当する。
さらに、甲3発明における「リン酸エステルメタクリレートの混合物」の「メタクリル酸プロパン酸ペンチルフォスフェート」及び「ビス(メタクリル酸プロパン酸ペンチル)フォスフェート」は、ともに、その化学構造が、本件訂正発明1における
下記一般式(I)で表される化合物
【化1】
[図:0001435180000041.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)」
に包含される化合物であって、「メタクリル酸プロパン酸ペンチルフォスフェート」は、当該一般式(I)中の「X」、「リンカー」、「a」、「n」、「m」及び「n+m」が、それぞれ、「メタクリロイルオキシ基」、ヘテロ原子である酸素原子を含む8個の炭素原子からなる連結部、「1」、「1」、「2」及び「3」である化合物に該当し、「ビス(メタクリル酸プロパン酸ペンチル)フォスフェート」は、当該一般式(I)中の「X」、「リンカー」、「a」、「n」、「m」及び「n+m」が、それぞれ、「メタクリロイルオキシ基」、ヘテロ原子である酸素原子を含む8個の炭素原子からなる連結部、「1」、「2」、「1」及び「3」である化合物に該当するから、「(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、」「一般式(I)で表される化合物を含む成分」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲3発明とは
「以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分
【化1】
[図:0001435180000042.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」
である点で一致し、以下の相違点3で相違する。
<相違点3>
「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」について、本件訂正発明1は、
「i)一般式(I)におけるnが1であるとき、前記連結部における炭素原子の数が8~12個であって、前記連結部は、前記ヘテロ原子を含まない直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基からなる連結部、環骨格全体が炭素原子からなる炭素環からなる連結部、複素環からなる連結部、及び炭素環又は複素環と前記ヘテロ原子を含まない直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基を組み合わせてなる連結部からなる群より選ばれる;又は
ii)一般式(I)におけるnが2であるとき、前記Xはメタクリロイルオキシ基であって、前記連結部における炭素原子の数が3~6個である(ただし、下記式(I-a’)で表される化合物を除く)
である。
[図:0001435180000043.jpg]
」
のに対して、甲3発明は、
「nが1で、ヘテロ原子を含む炭化水素基」である「メタクリル酸プロパン酸ペンチルフォスフェート」、及び、「nが2で、連結部における炭素原子の数が8個の炭化水素基」である「ビス(メタクリル酸プロパン酸ペンチル)フォスフェート」
である点
相違点3について検討する。
甲3には、「メタクリル酸プロパン酸ペンチルフォスフェート」及び「ビス(メタクリル酸プロパン酸ペンチル)フォスフェート」以外に、「フォスフェート化合物」に関する特段の記載も示唆もない(請求項1、【0010】、【0029】)。
そうすると、相違点3は実質的な相違点である。
よって、本件訂正発明1は、甲3に記載された発明ではない。
b 進歩性について
甲3には、本件訂正発明1における「(B)成分」の「一般式(I)で表される化合物」において、「nが1であるとき」に「炭化水素基」が「ヘテロ原子を含まない」ことや、「nが2であるとき」に「連結部における炭素原子の数が3~6個である」ことの記載も示唆もなく、甲3発明において、相違点3に係る本件訂正発明1に係る構成を採用することの動機付けがない。
したがって、本件訂正発明1は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件訂正発明3~7について
本件訂正発明2は、上記第2の2(8)イで述べたとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、本件訂正発明3~7は、本件訂正発明2の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明2を実質的に更に限定するものであるから、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件訂正発明8について
本件訂正発明2は、上記第2の2(8)イで述べたとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、本件訂正発明8は、本件訂正発明2の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明2を実質的に更に限定するものであるから、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ) 本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、本件訂正発明1又は本件訂正発明3~8の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明1又は本件訂正発明3~8を更に限定するものであるから、上記(ア)~(ウ)で述べたのと同様の理由により、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 取消理由2-4について
ア 甲4に記載された発明
甲4には、「硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)及び密着持続性に優れ、硬化性及び硬化塗膜の美感等の特性にも優れ」、「爪上に形成した硬化塗膜が経時的に白濁する経時白濁が防止され、硬化性及び硬化塗膜の美感等の特性にも優れる」光硬化性人工爪組成物を得るための(【0008】)、
「 (a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物、
(b)(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物、
(c)光重合開始剤、
を含む光硬化性人工爪組成物。」
について(請求項1)、実施例5として、具体的に光硬化性人工爪組成物を調製し、ジェルネイルにおけるベースコート層(ジェルベース)を形成した場合の白濁試験等の評価試験結果が記載されている(【0057】~【0065】)。
そうすると、甲4には以下に示す実施例5に係る甲4発明が記載されているといえる。
<甲4発明>
PA(リン酸2-アクリロイルオキシエチル及びリン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)を含む混合物)4.0質量部、PU(ヒドロキシエチルメタクリレート、イソホロンジイソシアネート及びポリカーボネートジオールから得られるポリカーボネートポリウレタンメタクリレート)35.0質量部、イソボルニルアクリレート15.0質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート38.0質量部、TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド)4.0質量部、並びにHPK(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)4.0質量部からなる、ジェルネイルに用いるための光硬化性人工爪組成物。
イ 本件訂正発明と甲4に記載された発明との対比・判断
(ア) 本件訂正発明1について
本件訂正発明1と甲4発明との対比
甲4発明の「ポリカーボネートポリウレタンメタクリレート」、「イソボルニルアクリレート」及び「ヒドロキシエチルメタクリレート」は、いずれも「酸性基」を有していない「ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物」であるから、本件訂正発明1の「(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分」に相当する。
また、甲4発明の「TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド)」及び「HPK(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)」は、ともに本件訂正発明1の「(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」に相当し、甲4発明の「光硬化性人工爪組成物」は、本件訂正発明1の「爪用組成物」に相当する。
さらに、甲4発明における「リン酸2-アクリロイルオキシエチル及びリン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)を含む混合物」の「リン酸2-アクリロイルオキシエチル」及び「リン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)」は、ともに本件訂正発明1の「(B)成分」に含まれる「分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲4発明とは、
「以下の(A)成分、(B’)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分
(B’)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分」
である点で一致し、以下の相違点4で相違する。
<相違点4>
「(B’)成分」について、本件訂正発明1は、
「一般式(I)で表される化合物」を含み、「i)一般式(I)におけるnが1であるとき、前記連結部における炭素原子の数が8~12個であって、前記連結部は、前記ヘテロ原子を含まない直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基からなる連結部、環骨格全体が炭素原子からなる炭素環からなる連結部、複素環からなる連結部、及び炭素環又は複素環と前記ヘテロ原子を含まない直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基を組み合わせてなる連結部からなる群より選ばれる;又は
ii)一般式(I)におけるnが2であるとき、前記Xはメタクリロイルオキシ基であって、前記連結部における炭素原子の数が3~6個である(ただし、下記式(I-a’)で表される化合物を除く)
である。
[図:0001435180000044.jpg]
」
のに対して、甲4発明は、
「連結部における炭素原子の数が2個の炭化水素基」である、「リン酸2-アクリロイルオキシエチル」及び「リン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)」
である点
相違点4について検討する。
甲4発明は、「リン酸2-アクリロイルオキシエチル」及び「リン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)」を「(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物」として含むものであるところ(請求項4)、甲4には、当該(a)成分は、
「 CH2=CH-COO-R1-P(=O)(OH)2
CH2=CH-COO-R2-P(=O)(OH)-R3-OCO-CH=CH2
(式中R1、R2及びR3は、2価の有機基を表す。)」
で表される化合物であることが記載され(【0014】)、多数の例示化合物(【0014】)が記載されている。
しかしながら、当該多数の例示化合物には、本件訂正発明1の「一般式(I)で表される化合物」において、「nが1であるとき」に「ヘテロ原子を含」まずに「連結部における炭素原子の数が8~12個である炭化水素基」である化合物や、「nが2であるとき」に「Xがメタクリロイルオキシ基」である化合物に該当するものはない。
そうすると、甲4発明において、相違点4に係る本件訂正発明1に係る構成を採用することの動機付けがない。
また、上記(1)~(3)で述べたとおり、甲1~3にも、当該構成について記載も示唆もない。
したがって、本件訂正発明1は、甲4に記載された発明及び甲1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件訂正発明3~8について
本件訂正発明2は、上記第2の2(8)イで述べたとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、本件訂正発明3~8は、本件訂正発明2の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明2を実質的に更に限定するものであるから、甲4に記載された発明及び甲1~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、本件訂正発明1又は本件訂正発明3~8の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明1又は本件訂正発明3~8を更に限定するものであるから、上記(ア)及び(イ)で述べたのと同様の理由により、甲4に記載された発明及び甲1~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5) 小括
したがって、取消理由1及び取消理由2によっては、本件訂正請求項1及び3~9に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(申立理由1-2のうち請求項5及び6に対する理由、申立理由1-3のうち請求項8に対する理由、申立理由1-4、並びに申立理由3)について
(1) 申立理由1-2のうち請求項5及び6に対する理由について
本件訂正発明5及び6は、本件訂正発明3の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明3を更に限定するものであるから、上記1(2)イ(イ)で述べたのと同様の理由により、甲2に記載された発明でない。
(2) 申立理由1-3のうち請求項8に対する理由について
本件訂正発明8は、上記1(3)イ(ウ)で述べたとおりであって、甲3に記載された発明ではない。
(3) 申立理由1-4について
上記(4)イ(ア)で述べたとおり、本件訂正発明1と甲4に記載された発明の間には、実質的な相違点があるから、本件訂正発明1は、甲4に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明3~9は、上記1(4)イ(イ)及び(ウ)で述べたとおり、甲4に記載された発明ではない。
(4) 申立理由3について
ア 本件訂正発明の課題
本件訂正発明が解決しようとする課題は、本件明細書【0006】を含む本件明細書全体の記載からみて、「良好な接着性、良好な耐白濁性及び高い光沢を有する膜の形成が可能であると共に、硬化熱も低い爪用組成物を提供すること」であると認める。
イ 本件明細書の記載
以下、下線は合議体が付したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。
摘記(A) 「【0051】
〔(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分〕
(B)成分は、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分である。リン酸基とは、
-O-P(=O)(OH)2を指す。また、リン酸エステル基とは、リン酸基の水素の1つ又は2つが有機基で置き換わった構造を有する基を指すが、酸性基としてのリン酸エステル基とは、リン酸基の水素の1つが有機基で置き換わった構造を有する基を指し、これをリン酸モノエステル基と称する場合もある。
【0052】
本発明の組成物は、(B)成分として、下記一般式(I)で表される化合物を含む。本発明の組成物には、一般式(I)で表される複数の化合物が含まれていてもよい。
【化5】
[図:0001435180000045.jpg]
(式中、
Xは、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
【0053】
上記式(I)において、リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、ここで、連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい。連結部にヘテロ原子が含まれる場合、ヘテロ原子の数は、1つ又は複数である。また、連結部を構成する炭素原子の数は、nが1である場合、6~12個であることが好ましく、8~10個であることが更に好ましく、10個であることが特に好ましい。連結部を構成する炭素原子の数は、nが2である場合、3~6個であることが好ましい。連結部としては、例えば、直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基からなる連結部、環骨格全体が炭素原子からなる炭素環(例えば、シクロヘキサン環、トリシクロデカン環、イソボルナン環、ベンゼン環等)からなる連結部、複素環からなる連結部、炭素環又は複素環と直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基を組み合わせてなる連結部、1つ又は複数のエーテル結合又はエステル結合を含む連結部〔例えば、式:-(R)xO-R-で表される連結部(ここで、Rは2価の炭化水素基であり、xは1以上の整数である)等〕等が挙げられる。
【0054】
aは、リンカーに結合しているアクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基の数を表す。nが1である場合、aは、1~6であることが好ましく、1~4であることが更に好ましく、1~2であることが特に好ましい。nが2である場合、aは、1~6であることが好ましく、1~4であることが更に好ましく、1~2であることが特に好ましい。
【0055】
本発明の組成物は、一般式(I)で表される化合物として、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化6】
[図:0001435180000046.jpg]
【化7】
[図:0001435180000047.jpg]
【0056】
式(1)の化合物は、メタクリル酸10-(ホスホノオキシ)デシル等と称される化合物である。
式(2)の化合物は、ビス(GDMA)ホスフェート、ビス(グリセリルジメタクリレート)ホスフェート、メタクリル酸ホスフィニコビス(オキシ-2,1,3-プロパントリイル)エステル等と称される化合物であり、CAS番号168191-79-5が付された化合物である。
【0057】
また、一般式(I)で表される化合物としては、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物のメタクリロイルオキシ基をアクリロイルオキシ基に置き換えた化合物、すなわち、
アクリル酸10-(ホスホノオキシ)デシル等と称される化合物、
ビス(グリセリルジアクリレート)ホスフェート、アクリル酸ホスフィニコビス(オキシ-2,1,3-プロパントリイル)エステル等と称される化合物
等も好適である。
【0058】
(B)成分は、酸性基を有する化合物であることから、本発明の組成物から形成される人工爪に良好な接着性を付与することが可能である。(B)成分として使用される一般式(I)の化合物は、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物であり、電気陰性度の観点から炭素と酸素が比較的に強い結合になるため、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基を有しないこと以外は同構造の化合物と比べてプロトン供与力が弱い。このため、一般式(I)の化合物は、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基を有しない低分子の酸性有機化合物に比べて耐水性が良好である。よって、一般式(I)の化合物を用いることで、本発明の組成物から形成される人工爪に白濁を生じにくくすることができる。また、一般式(I)の化合物は、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基とリン酸基又はリン酸エステル基の間に特定の連結部を有することにより硬化熱が分散でき、硬化熱の上昇が抑えられる。また、一般式(I)の化合物は、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基とリン酸基又はリン酸エステル基の間に特定の連結部を有することによって、本発明の組成物を硬化した後のレベリングが良好であり、光沢の高い人工爪が得られる。」
摘記(B) 「【実施例】
【0103】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0104】
<使用した成分>
爪用組成物の調製に用いた成分を以下に示す。
【0105】
〔(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分〕
A1:ウレタンアクリレートオリゴマー(ポリエーテル系)
A2:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
A3:イソボルニルメタクリレート
【0106】
〔(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分〕
B1:メタクリル酸10-(ホスホノオキシ)デシル、式(1)の化合物
B2:ビス(GDMA)ホスフェート、式(2)の化合物
B3:リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル
B4:リン酸ビス〔2-(メタクリロイルオキシ)エチル〕
B5:リン酸2-(アクリロイルオキシ)エチル
B6:リン酸ビス〔2-(アクリロイルオキシ)エチル〕
【0107】
B3~B6の化合物の構造式を以下に示す。
B3:リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル
【化15】
[図:0001435180000048.jpg]
B4:リン酸ビス〔2-(メタクリロイルオキシ)エチル〕
【化16】
[図:0001435180000049.jpg]
B5:リン酸2-(アクリロイルオキシ)エチル
【化17】
[図:0001435180000050.jpg]
B6:リン酸ビス〔2-(アクリロイルオキシ)エチル〕
【化18】
[図:0001435180000051.jpg]
【0108】
〔(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分〕
C1:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
【0109】
<爪用組成物の調製>
表1~表2に示す成分を電子天秤により表1~表2に示す量(質量部)計量し、これら成分を攪拌混合することで、爪用組成物を調製した。爪用組成物の25℃における粘度(Pa・s)を測定し、得られた結果を表1~表2に示す。調製された組成物はいずれもジェル状であった。
【0110】
【表1】
[図:0001435180000052.jpg]
【0111】
【表2】
[図:0001435180000053.jpg]
【0112】
<評価>
爪用組成物の接着性の評価を以下の接着性試験1及び2で行い、爪用組成物の硬化熱の評価を以下の硬化熱試験1で行い、爪用組成物の光沢の評価を以下の光沢試験1で行い、爪用組成物の耐白濁性の評価を以下の耐白濁性試験1及び2で行った。
・・・
【0146】
[試験結果]
接着性試験1及び2、硬化熱試験1、光沢試験1、並びに耐白濁性試験1及び2の評価結果を表9及び表10に示す。
【0147】
【表9】
[図:0001435180000054.jpg]
【0148】
【表10】
[図:0001435180000055.jpg]
【0149】
[考察]
以下に評価結果を考察する。
【0150】
[接着性]
接着性1の評価が「×」又は「××」である爪用組成物は、爪甲表面に対する接着性が低く、短期間で剥離及び/又は脱落を生じると推測される。一方、接着性1の評価が「〇」である爪用組成物は、爪甲表面に対する良好な接着性があり、爪甲表面に対して長期に渡り接着し、剥離及び脱落が生じないと推測される。
【0151】
接着性試験1において、実施例1~16は良好な接着性を示した一方で、比較例1では十分な接着性が得られなかった。
【0152】
接着性2の評価が「×」又は「××」である爪用組成物は、天然爪の爪甲表面に対する接着性が低く、短期間で剥離及び/又は脱落が生じる。一方、接着性2の評価が「〇」又は「◎」である爪用組成物は、爪甲表面に対する良好な接着性があり、少なくとも14日間に亘って爪甲表面に接着し、剥離及び脱落が実質的に生じない。
【0153】
接着性試験2において、実施例1~16は良好な接着性を示した一方で、比較例1では十分な接着性が得られなかった。
【0154】
接着性試験1及び接着性試験2の結果から、実施例1~16の爪用組成物は、天然爪との良好な接着性を有するものと考えられる。
【0155】
実施例1~16では、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる(A)成分の重合反応から得られる高い接着強度と、B1及び/又はB2からなる(B)成分によって得られる被着体との高い密着性によって良好な接着性が得られたものと推察される。
【0156】
一方、比較例1では十分な接着性が得られなかった。これは、比較例1に係る組成物は、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる(B)成分を含有しておらず、被着体との十分な密着性が得られなかったためと推察される。
【0157】
[硬化熱]
硬化熱の評価が「×」である爪用組成物は、施術の際、熱による刺激や痛みが感じられることがあり、場合により施術継続が困難となる可能性も考えられる。一方、硬化熱の評価が「〇」、「◎」又は「◎◎」である爪用組成物は、施術の際、熱を感じるものの、通常であれば耐え得る硬化熱であり、施術を困難にさせるものではないと考えられる。
【0158】
硬化熱試験1において、実施例1~16に係る爪用組成物はいずれも低い硬化熱であった。特に、B1及び/又はB2を一定以上の割合で含む実施例3~16に係る爪用組成物では、硬化熱の最高温度が30℃を下回る結果であった。一方、(B)成分を含まない比較例1に係る爪用組成物や、(B)成分として一般式(I)に該当しない化合物を少量含む比較例2、5、9及び12に係る爪用組成物では、高い硬化熱が観察された。この結果から、B1及びB2の化合物は、硬化の際に組成物内での熱分散効果が高く、硬化熱の最高温度の低下に大きく貢献していると考えられる。
【0159】
[光沢]
光沢の評価が「×」である爪用組成物は、硬化物の艶が少ないため、爪甲表面の鮮やかな見た目を損なう可能性がある。一方、光沢の評価が「〇」、「◎」又は「◎◎」である爪用組成物は、爪甲表面を鮮やかな見た目とすることができ、表面加工や色のアレンジにも適した人工爪を提供することができる。
【0160】
光沢試験1において、実施例1~16に係る爪用組成物はいずれも高い光沢を有する硬化物が得られた。特に、B1を一定の割合で含む実施例3、5、7、9及び13~16に係る爪用組成物では、優れた光沢を有する硬化物が得られた。一方、(B)成分を含まない、又は(B)成分として一般式(I)に該当しない化合物を含む比較例に係る爪用組成物の硬化物はそのほとんどが光沢の低いものであった。この結果から、B1及びB2の化合物、特にB1の化合物は、爪用組成物の硬化物に光沢を付与する効果が高い化合物であると考えられる。
【0161】
[耐白濁性]
耐白濁性1の評価が「××」又は「×」である爪用組成物は、その硬化物の耐水性が悪く白濁が生じ、変色や加水分解反応が発生しやすいと推測される。一方、耐白濁性1の評価が「〇」又は「◎」である爪用組成物は、爪甲表面で安定の色が維持でき、爪甲表面において加水分解反応起因の色ムラ、剥離等の現象が生じないと推測される。
【0162】
耐白濁性試験1において、実施例1~16は良好な耐白濁性を示した一方で、比較例2~15では十分な耐白濁性が得られなかった。特に(B)成分としてB5及び/又はB6の化合物を用いた比較例9~15では、耐白濁性1の評価が最も低いものであった。
【0163】
耐白濁性試験2の評価が「××」又は「×」である爪用組成物は、日常生活の環境によって試験期間中において白濁化等の現象が生じる。一方、耐白濁性試験2が「〇」である爪用組成物は、その硬化物の耐白濁性が良好であり、少なくとも14日間に亘って透明性が持続し、変化は生じない。
【0164】
耐白濁性試験2において、実施例1~16は良好な耐白濁性を示した一方で、比較例11、14、15では十分な耐白濁性が得られなかった。
【0165】
耐白濁性試験1及び耐白濁性試験2から、実施例1~16の爪用組成物は、良好な耐白濁性を有するものと考えられる。
【0166】
(B)成分に該当する化合物は、親水性であるリン酸基又はリン酸エステル基を有するため、一般には耐水性が低い化合物として認識されている。このため、(B)成分を含む組成物から得られる硬化物は、例えば湿気の多い環境下において白濁が生じやすいと考えていたが、耐白濁性試験1及び耐白濁性試験2の結果から、(B)成分に該当する化合物として特定の化合物、即ち一般式(I)の化合物を選択することによって良好な耐白濁性が得られることが分かる。」
ウ 検討
(ア) 摘記(A)の【0053】によれば、本件訂正発明1及び9は、「(B)成分」が含む「一般式(I)で表される化合物」うち、好ましい態様の置換基を限定したものであり、同【0058】によれば、当該「一般式(I)で表される化合物」は、「アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基」によって、「耐水性が良好」で「人工爪に白濁を生じにく」いものであって、「特定の連結部」によって、「硬化熱の上昇」を抑えられ、「硬化した後のレベリングが良好」で、「光沢の高い人工爪」を得られるものであることが理解できる。
また、本件訂正発明3~8は、特定の化合物(式(1)で表される化合物及び/又は式(2)で表される化合物)に限定したものである。
(イ) さらに、摘記(B)によれば、本件訂正発明1及び3~9の「(B)成分」に該当しない「連結部」の「B3~B6」の「リン酸化合物」を用いた比較例に比べ、「式(1)で表される化合物及び/又は式(2)で表される化合物」を用いた本件訂正発明1及び3~9の実施例1~16が、各種試験結果(2種の接着性、硬化熱、光沢、2種の耐白濁性)に優れていることを具体的に確認し、「(B)成分に該当する化合物」の効果を明らかにしている。
(ウ) そうすると、「式(1)で表される化合物及び/又は式(2)で表される化合物」は当然として、「式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物のメタクリロイルオキシ基をアクリロイルオキシ基に置き換えた化合物」を始めとする、本件訂正発明1及び9の「(B)成分」に該当する化合物(摘記(A)の【0053】、【0057】)を用いた場合であっても、「アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基」及び「特定の連結基」を有しているから、上記実施例と同様に、「耐水性が良好」で「人工爪に白濁を生じにく」いものであって、かつ「硬化熱の上昇」を抑えられ、「硬化した後のレベリングが良好」で、「光沢の高い人工爪」を得られることは、当業者が十分認識できる事項といえ、本件訂正発明1及び3~9は、その課題を解決できるものである。
したがって、本件訂正発明1及び3~9は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(エ) 申立人は、特許異議申立書において、「(B)成分」が「極めて広範囲な成分」であり、その技術的裏付けがない旨の主張をしているが、上記(ア)~(ウ)のとおり、本件訂正発明1及び3~9は、当業者がその課題を解決できると認識できるものであるから、申立人の主張は採用できない。
(オ) よって、本件訂正発明1及び3~9は、発明の詳細な説明に記載された発明である。
(5) 小括
したがって、申立理由1-2のうち請求項5及び6に対する理由、申立理由1-3のうち請求項8に対する理由、申立理由1-4、並びに申立理由3によっては、本件訂正請求項1及び3~9に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、本件訂正請求項1及び3~9に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、ほかに本件訂正請求項1及び3~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700238