特許異議申立
2025-700605
包装紙および包装体
- 審判番号
- 2025-700605
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-196554
- 登録番号
- 7597190
- 請求日
- 2025年06月06日
- 審決日
- 2025年09月12日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】王子ホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
- 【異議申立人】平松 由紀子
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 梅本 章子
- 審判官 坂庭 剛史
- 分類
- P1651.113-Y (D21H) / P1651.121-Y (D21H) / P1651.537-Y (D21H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7597190号発明「包装紙および包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7597190号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7597190号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許(以下「本件特許1」~「本件特許7」という。)についての出願は、令和5年11月20日に出願され、令和6年12月2日に特許権の設定登録がされ、令和6年12月10日に特許掲載公報が発行された。その後、令和7年6月6日に特許異議申立人 平松 由紀子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
紙基材上にヒートシール層を有する包装紙であり、
紙基材の原料パルプのカナダ標準ろ水度が、300mL以上700mL以下であり、
紙基材の坪量が60g/m2以下であり、
紙基材の密度が0.8g/cm3以下であり、
包装紙中の紙基材の含有量が50質量%以上であり、
包装紙の不透明度が80%以下であり、
包装紙の縦方向の引張強さが1.2kN/m以上5.0kN/m以下であり、
包装紙の横方向の引張強さが1.2kN/m以上4.0kN/m以下である、
包装紙。
【請求項2】
厚みが90μm以下である、請求項1に記載の包装紙。
【請求項3】
坪量が75g/m2以下である、請求項1または2に記載の包装紙。
【請求項4】
紙基材の原料パルプが広葉樹晒クラフトパルプを含有し、原料パルプ中の広葉樹晒クラフトパルプの含有量が85質量%以上である、請求項1または2に記載の包装紙。
【請求項5】
紙基材とヒートシール層とが、直接積層されてなる、請求項1または2に記載の包装紙。
【請求項6】
ヒートシール層が、坪量20g/m2未満のラミネート層であるか、または坪量3g/m2未満の塗工層である、請求項1または2に記載の包装紙。
【請求項7】
蓋材と、凹部を有する底材とを有し、
前記蓋材および前記底材のヒートシールにより、前記凹部に被収容物を収容して密封可能な包装体であって、
前記蓋材および前記底材が、請求項1または2に記載の包装紙からなる、
包装体。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
申立人が申し立てた理由は、概略以下のとおりである。(以下、理由の番号は当審が付与。)
1 理由1(新規性)
本件特許発明1~6は、甲第6号証に記載された発明であるから、本件特許1~6は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号により取り消すべきものである。
2 理由2(進歩性)
(1)理由2-1
本件特許発明1~6は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、または、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明7は、甲第1号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて、または、甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~7は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号により取り消すべきものである。
(2)理由2-2
本件特許発明1~6は、甲第6号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明7は、甲第6号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~7は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号により取り消すべきものである。
3 理由3(サポート要件)
本件特許1~7は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号により取り消すべきものである。
[証拠方法]
甲第1号証:特開2023-150243号公報
甲第2号証:特開2022-50223号公報
甲第3号証:特開2023-84032号公報
甲第4号証:特開2023-128142号公報
甲第5号証:特開2021-58316号公報
甲第6号証:特開2023-23420号公報
(以下、「甲第1号証」~「甲第6号証」をそれぞれ「甲1」~「甲6」ということがある。)
第4 各甲号証の記載
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載
甲1には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審付与。以下同様。)。
ア 「【0001】
本発明は、衛生用紙が収容されたカートンを包装基材で包装した包装体に関する。」
イ 「【0025】
図2の(b)および(c)の断面図を参照して、紙基材100上に付与されたシール剤は、シール層110を形成しており、包装基材10は、紙基材100と、シール層110と、を含む層構成を有する。本例において、シール層110は、紙基材100の片面を全体的に覆っている。図において、各層の厚さや各寸法は概略的に示されており、正確な縮尺ではない。」
ウ 「【0043】
また、「透明度」とは、光が紙を透過する割合を入射光量の百分率で表したものをいう。透明度の値が大きい程、反対側や内部にあるものが、よりはっきりと透けて見えることを示す。
(略)
【0045】
被包装体である衛生用紙カートン2の包装体1外部からの視認性の観点からは、本発明の実施形態の1つの好ましい態様において、包装基材10の透明度は、60%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上である。包装基材10の透明度が60%以上であると、包装体1に内包される被包装体2の状態(例えば、被包装体2の種類、数量、色や模様、形状を確認しやすい。
【0046】
そのような包装基材10の透明度を実現するための手段としては、透明度の高い紙基材100を採用することが挙げられる。本発明の実施形態の1つの好ましい態様において、紙基材100の透明度は、60%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上である。紙基材100に適用可能な透明度の高い紙の例としては、グラシン紙、パーチメント紙が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
紙基材100および包装基材10の透明度は、ISO5-2に準じて、拡散光透過率計DOT-5(村上色彩技術研究所社製)で測定することができる。なお、包装基材10の透明度の測定は、包装基材10の非接合部(包装体1の非封止部)N12の領域について行う。」
エ 「【0061】
[シール剤]
本発明の実施形態に適用可能なシール剤としては、包装基材10を接合して包装体1を封止することのできる、本技術分野において知られている任意のシール剤を用いることができる。シール剤には、ヒートシール性を発現する任意の材料、すなわちヒートシール剤や、ヒートシール剤以外の接着性を発現する任意の材料、すなわち接着剤を適用することができる。
【0062】
ヒートシール剤としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂や、他の熱可塑性樹脂を使用することができ、これらの中でも、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、アイオノマー、非晶性ポリエステル、ポリプロピレン、スチレン-アクリル共重合体、プロピレン-エチレン共重合体(好ましくはエチレン含有量が10モル%以下の共重合体)、または、ポリプロピレンに不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体等をグラフト重合または共重合したポリプロピレン系樹脂、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。これらの材料は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」
オ 「【0069】
図2の例では、包装基材10のMD方向(縦方向)、ひいては紙基材100のMD方向(縦方向)が、図中のB方向(幅方向)と一致するようにしているが、本実施形態において、包装基材10(紙基材100)を用いる方向は、これに限定されない。包装基材10(紙基材100)を用いる方向は、包装体1を製造する際の加工適性(曲げやすさ)、包装体1とした際の姿勢や強度(破けやすさ)等の観点や、他の所望の特性の観点から、紙の繊維配向に起因する方向性に応じて決定してもよい。」
カ 「【0151】
(実施例1)
紙基材としてグラシン紙を用い、紙基材の片面全体に(図2参照)厚さ15μmのポリエチレン層を押し出し法により製膜してシール層とし、包装基材を得た。グラシン紙のパルプ配合はNBKP:LBKPが80:20(質量比)であり、パルプの叩解度(フリーネス)はNLパルプの混合後で90mLであった。フリーネスは、パルプの採取量を3g/Lから0.3g/Lに変更した以外は、JIS P8121-2:2012に準じて測定した変則フリーネスであった。
【0152】
得られた包装基材で、5個のティシュカートン(227mm×116mm×高さ62mmの紙製の箱に、2プライのティシュを180組、ポップアップ式に積層して収容したもの)を天面と底面とが対接するように高さ方向に積み重ねて配置したものを被包装体(合計重量1210g)とした。被包装体を、包装基材のシール層が包装体の外面側となるようにキャラメル包装形式で包装して、図1に示されるような実施例1の包装体本体を得た。このとき、5個のティシュカートンを積み重ねた高さ方向(図1において矢印Aで示されるA方向)と紙基材のCD方向とが平行になるように包装基材を用いて、被包装体を包んだ。
【0153】
次いで、包装体の包装基材と同じ基材を持ち手基材とする帯状の持ち手の両端部を、ヒートシール層を介して包装体の外面に接合させて、持ち手を設けた。
【0154】
(実施例2~4、比較例1,2)
実施例1の紙基材(グラシン紙)とは坪量の異なる紙基材(グラシン紙)を用い、実施例1と同様にして、実施例2~4ならびに比較例1および2の包装体を得た。
(略)
【0157】
(実施例9)
紙基材としてグラシン紙の代わりに片艶紙を用い、実施例2と同様にして、実施例9の包装体を得た。片艶紙のパルプ配合はNBKP:LBKPが50:50(質量比)であり、パルプの叩解度(フリーネス)はNLパルプの混合後で360mlであった。なお、実施例9の紙基材(片艶紙)の坪量は、実施例2の紙基材(グラシン紙)の坪量より小さかった。
【0158】
シール層は、片艶紙の両面のうち平滑度が相対的に低い面である非艶面全体に付与した。また、片艶紙の両面のうち平滑度が相対的に高い面である艶面を、包装体に内包されるティシュカートンと接する側の面とした。
(略)
【0170】
(包装基材の透明度)
ISO5-2に準拠して、拡散光透過率計DOT-5(村上色彩技術研究所社製)により、包装基材の透明度を測定した(単位:%)。測定は、包装体の封止部(包装基材の接合部)を避けて包装体の非封止部(包装基材の非接合部)の領域について行った。
(略)
【0172】
(包装基材の引張強度)
JIS P8113:2006に準拠して、包装体の高さ方向における包装基材の引張強度および包装体の幅方向における包装基材の引張強度を測定した(単位:kN/m)。測定は、包装体の封止部(包装基材の接合部)を避けて包装体の非封止部(包装基材の非接合部)の領域について行った。
(略)
【0182】
【表2】
[図:0001428019000001.jpg]
」
(2)甲1発明
【0025】より、甲1には、「紙基材」と「シール層」と「を含む層構成を有する」「包装基材10」が記載されている。
【0157】より、実施例9として、甲1には、「紙基材」の「パルプ」の「JIS P8121-2:2012に準じて測定した」「フリーネス」は「360ml」であることが記載されている。また、【0151】、【0154】、【0157】より、実施例9のシール層は、実施例1と同様であるから、実施例9として、甲1には、紙基材の片面全体に厚さ15μmのポリエチレン層を製膜してシール層とすることが記載されている。
【0182】の表2より、実施例9として、甲1には、紙基材の坪量が30.0g/m2であること、包装基材の坪量が44.0g/m2であること、包装基材の厚さが59μmであること、包装基材の透明度が25.3%であることが記載されている。
【0182】の表2より、実施例9として、甲1には、包装体の高さ方向における包装基材の引張強度が1.68kN/mであること、包装体の幅方向における包装基材の引張強度が2.76kN/mであることが記載されている。また、【0069】、【0152】より、「包装体の高さ方向」は「包装基材」のCD方向、つまり、「横方向」と一致し、「包装体の幅方向」は「包装基材」の「縦方向」と一致することが記載されている。したがって、実施例9として、甲1には、包装基材の横方向の引張強度が1.68kN/mであること、包装基材の縦方向の引張強度が2.76kN/mであることが記載されている。
以上から、実施例9に係るものに着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「紙基材とシール層とを含む層構成を有する包装基材であり、
シール層はポリエチレン層であり、
紙基材のパルプのJIS P8121-2:2012に準じて測定したフリーネスは360mlであり、
紙基材の坪量が30.0g/m2であり、
包装基材の厚さが59μmであり、シール層の厚さが15μmであり、
包装基材の坪量が44.0g/m2であり、
包装基材の縦方向の引張強度が2.76kN/mであり、
包装基材の横方向の引張強度が1.68kN/mである、
包装基材。」
2 甲第6号証
(1)甲第6号証の記載
甲6には、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
セルロースパルプを主成分とする紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面に積層された熱可塑性樹脂層とを有する洋傘用ラミネート紙であって、坪量が20g/m2以上70g/m2以下であることを特徴とする洋傘用ラミネート紙。」
イ 「【0001】
本発明は、洋傘用ラミネート紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック製のストローやカップ等の欧米由来のものは、欧州が先立って脱プラスチック、減プラスチックに取組んでおり、その影響が日本にも及んでいる。一方で、ビニール傘は、日本発祥の文化であるが、便利で安価であるが故に、荒天時などは特に、安易に廃棄される場合が多い。環境志向の高まりから、ビニール傘においても脱プラスチック、減プラスチックは、避けることのできない課題であり、現状のビニール傘の加工製造ラインに、そのまま乗せることができるビニールに代わる傘地が求められている。
【0003】
一般にプラスチックの代替素材として紙が注目されている。例えば、特許文献1では、 雨よけ部分が、プラスチック素材がかぶせられた紙、特にポリエチレン被覆の紙で作られた使い捨て用折り畳み傘が提案されている。
【0004】
プラスチック素材がかぶせられた紙であれば、紙の表面に水滴が直接接触することがないため、紙の表面に対して耐水性を付与することができる。しかし、傘地としては、物性面で硬くなる傾向にあり、ごわごわ感が強くなり、しなやかさに欠け、ビニール傘と同様の外観、ハンドリング性に関して、必ずしも満足すべき結果が得られていないのが現状である。
(略)
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビニール傘と同様の外観を有し、ハンドリング性に優れた洋傘用ラミネート紙を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、特定の坪量を有するラミネート紙によって、ビニール傘と同様の外観を有し、ハンドリング性に優れた傘地が得られること、また、紙様の質感(和紙調の質感)を有する傘地が得られることを見出した。さらにまた、現状のビニール傘の加工製造ラインに、そのまま乗せることができることを見出した。本発明はこのような知見を基に完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、以下のような構成を有している。」
ウ 「【0011】
本発明の洋傘用ラミネート紙(以下、単にラミネート紙ともいう)は、セルロースパルプを主成分とする紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面に積層された熱可塑性樹脂層とを有する。熱可塑性樹脂層が積層されているため、ラミネート紙の熱可塑性樹脂層側の表面には耐水性が付与される。以下、ラミネート紙を構成する各素材について説明する。
(略)
【0016】
紙基材を構成するパルプのJIS P 8121-2012に準拠して測定されるカナダ標準濾水度(CSF)は、200~650mlに調整することが好ましい。パルプの濾水度は、前記した少なくとも1種のパルプを叩解して上記範囲に調整すればよい。2種類以上のパルプを使用する場合には、別々に叩解したパルプを混合して上記範囲にしてもよいし、予め混合したパルプを叩解して上記範囲に調整してもよい。パルプの濾水度を200ml以上とすることにより、抄紙工程での脱水を早めて操業性を向上できる。一方、パルプの濾水度を650ml以下とすることにより、傘地の強度を向上することができる。パルプの濾水度は、木材パルプの場合は、より好ましくは300~550mlであり、さらに好ましくは350~500mlである。麻パルプの場合は、パルプ本来の特性として、木材パルプよりも繊維長が長い故に強度面が強い特徴があり、叩解を大幅に弱めて使用できる。より好ましくは550~650mlであり、更に好ましくは600~650mlである。」
エ 「【0039】
[熱可塑性樹脂層]
熱可塑性樹脂層は、紙基材の少なくとも一方の面に積層される。熱可塑性樹脂は、用途に応じて、結晶性樹脂と非結晶性樹脂のいずれの熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(LDPE、MDPE、HDPE、LLDPE等)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル共重合体、非晶質ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、並びにポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、(3-ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)等の生分解性樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独または2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。
(略)
【0043】
熱可塑性樹脂層の厚さは、特に限定されないが、通常は、片面当たり10~50μm程度の厚さである。熱可塑性樹脂層の形成量は、特に限定されないが、片面当たり5~50g/m2が好ましく、10~30g/m2がより好ましい。熱可塑性樹脂層の形成量を5g/m2以上とすることにより、傘地の耐水性を向上できる。熱可塑性樹脂層の形成量を50g/m2以下とすることにより、傘地としての質量が少なくなり、洋傘の軽量化が可能である。」
オ 「【0049】
紙基材と熱可塑性樹脂層とからなるラミネート紙は、片面ラミネートの場合、紙基材の面、熱可塑性樹脂層の面はいずれも白色度が70.0~90.0%が好ましく、75.0~85.0%がより好ましい。また、紙基材と熱可塑性樹脂層とからなるラミネート紙は、紙様の質感を高める観点から、不透明度が0~60%が好ましく、30~60%がより好ましい。これにより、ビニール傘の白色タイプと透明タイプの両方に対応することができる。」
カ 「【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明の効果を詳細に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0062】
以下に、紙基材及びラミネート紙について実施した測定方法を示す。なお、特別な記載が無い限り、測定は、JIS P 8111:1998に記載の温度23℃±1℃、湿度50%±2%の環境で行った。
【0063】
(1)坪量:JIS P 8124:2011に準拠して測定した。
(2)厚さ:JIS P 8118:2014に準拠して、100kPa±10kPaの圧力を試験片の円形領域(200mm2)に加えた際の厚さを測定した。
(3)密度:JIS P 8118:2014に準拠して測定した。厚さは、100kPa±10kPaの圧力を試験片の円形領域(200mm2)に加えた際の厚さを測定した。
(4)白色度:JIS P 8148に準拠して測定した。
(5)不透明度:JIS P 149:2000に準拠して測定した。
(6)クラーク剛度:JIS P 8143に準拠して測定した。
(7)引張強さ、比引張強さ:JIS P 8113:2006に準拠して測定した。比引張強さは、坪量と引張強さから求めた。
(8)破断伸び:JIS P 8113:2006に準拠して測定した。
(9)引裂強さ、比引裂強さ:JIS P 8116:2000に準拠して測定した。比引裂強さは、坪量と引裂強さから求めた。
(10)破裂強さ、比破裂強さ:JIS P 8112に準拠して、破裂強さを求めた。比破裂強さは、坪量と破裂強さから求めた。
(11)湿潤引張強さ:JIS P 8135に準拠して湿潤状態とした試料を、 JIS P8113の引張強さに準拠して測定した。
【0064】
[実施例1]
(紙基材)
市販の麻パルプを常法によりカナダ標準濾水度(CSF)630mLに叩解した後、0.5%濃度のパルプスラリーを得た。このパルプスラリーに、パルプ固形分対比で、カチオン系の湿潤紙力増強剤として、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンを成分とする薬品(商品名:WS4024、星光PMC社製)1.0%、中性サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(商品名:AD1612、星光PMC社製)0.5%、及びアニオン系の乾燥紙力増強剤としてポリアクリルアミドを成分とする薬品(商品名:PS-NH20B、荒川化学社製)1.0%を混合し、撹拌して紙料を得た。この紙料を用いて、傾斜ワイヤー抄紙機で抄紙し、坪量20.6g/m2の紙基材を得た。
【0065】
(熱可塑性樹脂層)
得られた紙基材の一方の面に対し、熱可塑性樹脂としてLDPE(品番:LC522、日本ポリエチレン社製)をラミネートした。熱可塑性樹脂層のラミネートは、押出しラミネート法により、ラミネート温度を330℃、ラミネート速度を200m/分の条件で行った。熱可塑性樹脂層の形成量を17g/m2とし、ラミネート紙を得た。
【0066】
(傘地)
得られたラミネート紙を定型に切り出し、8枚組み合わせて、市販の洋傘用の骨組みを用いて傘地として張り付けて成形した。外観はビニール傘と同様であり、若干の硬さはあるものの、ハンドリング性は優れていた。また、地合いは目視によって紙様の質感を十分に感じさせるものであった。
【0067】
[実施例2]
針葉樹晒クラフトパルプ(ダグラスファー)を常法によりカナダ標準濾水度(CSF)400mLに叩解した後、3.8%濃度のパルプスラリーを得た。このパルプスラリーに、パルプ固形分対比で、アニオン系の乾燥紙力増強剤としてポリアクリルアミドを成分とする薬品(商品名:PS-NH20B、荒川化学製)0.9%、カチオン系の湿潤紙力増強剤として、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンを成分とする薬品(商品名:WS4024、星光PMC製)0.9%、及び中性サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(商品名:AD1612、星光PMC製)0.3%を混合し、撹拌して紙料を得た。この紙料を濃度0.5%に調整し、傾斜ワイヤー抄紙機で抄紙し、坪量39.3g/m2の紙基材を得た。得られた紙基材を用いて、実施例1と同様にしてラミネート紙を得て、傘地として成形した。外観はビニール傘と同様であり、ハンドリング性は優れていた。また、地合いは目視によって紙様の質感を十分に感じさせるものであった。
(略)
【0069】
【表1】
[図:0001428019000002.jpg]
」
(2)甲6発明
【請求項1】、【0011】より、甲6には、「紙基材」と、「前記紙基材の」「一方の面に積層された熱可塑性樹脂層とを有する洋傘用ラミネート紙」が記載されている。
【0067】より、実施例2として、甲6には、「紙基材」を構成する「針葉樹晒クラフトパルプ」の「カナダ標準濾水度」が「400mL」であり、「紙基材」の「坪量」が「39.3g/m2」であることが記載されている。また、【0065】、【0067】より、実施例2では、得られた紙基材を用いて、実施例1と同様にしてラミネート紙を得ることから、甲6には、紙基材の一方の面に対し、熱可塑性樹脂としてLDPEをラミネートし、熱可塑性樹脂層を形成することが記載されている。
【0069】の表1より、実施例2として、甲6には、紙基材の密度が0.61g/cm3であること、ラミネート紙の坪量が56.9g/m2であること、ラミネート紙の不透明度が44.3%であること、ラミネート紙の縦方向の引張強さが3.5kN/mであり、ラミネート紙の横方向の引張強さが2.0kN/mであることが記載されている。
以上から、実施例2に係るものに着目すると、甲6には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
「紙基材と、前記紙基材の一方の面に積層された熱可塑性樹脂層とを有する洋傘用ラミネート紙であり、
熱可塑性樹脂層はLDPEで形成され、
紙基材を構成する針葉樹晒クラフトパルプのカナダ標準濾水度が400mLであり、
紙基材の坪量が39.3g/m2であり、
紙基材の密度が0.61g/cm3であり、
洋傘用ラミネート紙の坪量が56.9g/m2であり、
洋傘用ラミネート紙の不透明度が44.3%であり、
洋傘用ラミネート紙の縦方向の引張強さが3.5kN/mであり、
洋傘用ラミネート紙の横方向の引張強さが2.0kN/mである、
洋傘用ラミネート紙。」
3 甲第2号証~甲第5号証
(1)甲第2号証の記載
甲2には、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
異なるフリーネスを有する2種類のクラフトパルプを含有する原料パルプを抄紙してなり、
JIS P 8124(2011)に準拠した坪量が12~50g/m2であり、
JIS P 8113(2006)に準拠した縦方向の引張強さが2.0kN/m以上であり、
JIS P 8116(2000)に準拠した横方向の引裂強さが150mN/m以上であり、
JAPAN TAPPI No.34に準拠して測定した縦方向のソフトネスが100mN/100mm以上2,000mN/100mm以下、横方向のソフトネスが50mN/1,000mN/100mm以下である、包装用紙。」
イ 「【0023】
(引張強さ)
本実施形態に係る包装用紙の縦方向の引張強さは、2.0kN/m以上である。引張強さは、「紙及び板紙-引裂強さ試験方法」 JIS P 8113(2006)に準拠して測定した値である。包装用紙の縦方向の引張強さが2.0kN/m以上であれば、破断を生じることなくピロー包装を行うことができる。包装用紙の縦方向の引張強さの上限は特に限定されないが、例えば、12.0kN/m以下である。」
(2)甲第3号証の記載
甲3には、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
パルプを主成分とする包装用原紙であって、縦方向の比引張り強さが0.09kN/m以上であり、横方向の比引裂強さが10.0mN・m2/g以上であり、パルプの50質量%以上が針葉樹クラフトパルプであり、離解フリーネスが400~600mlCSFであることを特徴とする包装用原紙。」
イ 「【0025】
本発明の包装用原紙は、縦方向の比引張り強さが0.09kN/m以上、横方向の比引裂強さが10.0mN・m2/g以上となるようにする。比引張り強さと比引裂強さがこのような範囲となるように構成とすることで、包装加工適性に優れ、特に包装加工機での破れ耐性に優れた包装用原紙とすることができる。包装加工機による包装処理ではロール状の包装用原紙から連続的に袋を加工する工程があり、比引張り強さが0.09kN/m未満であると、用紙に部分的に切れ目が生じることでその部位に応力が集中し、連鎖的に破れが生じてロールが断裂することで加工効率が低下するおそれがある。また比引裂強さが10.0mN・m2/g未満であると、包装加工機で紙が切れて破れることにより加工効率が低下するおそれがある。比引張り強さは0.1kN/m以上であればより好ましい。また、比引裂強さは11.0mN・m2/g以上であればより好ましく、12.0mN・m2/g以上であればより好ましい。」
(3)甲第4号証の記載
甲4には、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
シートを収容する包装袋であって、
紙を含む積層体で構成され、
前記積層体は、
坪量が15g/m2以上55g/m2以下である、紙製の基層と、
前記基層の一方の面に積層され、坪量が3g/m2以上20g/m2以下である、熱可塑性樹脂を含む樹脂層と、を有し、
前記樹脂層は、
前記基層側に積層された、分岐状低密度ポリエチレン製の第1層と、
前記第1層の前記基層に接する側と反対側に積層された、前記分岐状低密度ポリエチレンよりも引張衝撃強度が高いポリオレフィン製の第2層と、を有する、
包装袋。」
イ 「【0087】
包装袋10(基材20)の引張強度は、限定されないが、例えば、繊維の縦方向(MD方向)に1.0kN/m以上5kN/m以下、好ましくは1.5kN/m以上4.0kN/m以下より好ましくは2.0kN/m以上3.5kN/m以下である。
【0088】
また、繊維の横方向(CD方向)に0.5kN/m以上5.0kN/m以下、好ましくは1.0kN/m以上4.0kN/m以下より好ましくは1.2kN/m以上3.0kN/m以下である。なお、引張強度は、JIS P 8113(2006)の規定に準拠して測定される。」
(4)甲第5号証の記載
甲5には、以下の記載がある。
ア 「【0019】
図2(A),(B)に示すように、包装体20は、2つのシート状の包装材の間に一つの綿棒1を挟み込んで、綿棒1の周囲を熱圧着することによって形成されたものである。包装体20は、綿棒1が収容される空間である収容空間S、収容空間S内の綿棒1を外部から視認可能な第1面部21と第2面部22(第1面部21に対して反対側の面)、収容空間S内の綿棒1の両端近傍の各々において熱圧着により形成された端縁部25,26、収容空間S内の綿棒1における軸部10の延伸方向に沿って熱圧着により形成された横縁部28a,28b、収容空間S内の綿棒1における軸部10の略中間となる位置に形成された中切込部29、を備えている。つまり、包装体20において、収容空間Sは、端縁部25,26、横縁部28a,28bに囲まれることによって形成されているため、収容された綿棒1の衛生状態を良好に保つことができる。また、中切込部29は、収容空間Sの略中央となる位置で第1面部21と第2面部22と横縁部28a,28bの両面とに亘って形成されており、使用者が包装体20を中切込部29で切断することで収容空間Sに収容されている綿棒1を容易に取り出すことを可能にする。
【0020】
包装体20を形成する包装材は、全光線透過率が約74.8%の厚み45μmのシート状のものであって、植物繊維であるパルプを絡み合わせて膠着させた厚み30μmのグラシン紙に対して、熱可塑性樹脂であるポリエチレンからなる厚み15μmのポリエチレンフィルムが積層されたものである。また、包装材においては、グラシン紙の米坪が30.5g/m2であり、ポリエチレンフィルムの米坪が13.5g/m2である。つまり、包装体20においては、包装材100重量部に対して、グラシン紙が約70重量部であり、ポリエチレンフィルムが約30重量部であるため、グラシン紙の重量部がポリエチレンフィルムの重量部よりも大きいものとなっている。さらに、包装体20の収容空間Sにおいては、ポリエチレンフィルム(熱可塑性樹脂で形成された面)が内面を形成し、グラシン紙(植物繊維で形成された面)が外面を形成するように構成されている。なお、全光線透過率は、JIS K 7361-1およびISO13468-1の規定に準拠した測定方法によって測定された値である。
【0021】
なお、上述した包装材において、全光線透過率が約74.8%の厚み45μmのシート状のものとしたが、第1面部21および第2面部22を包装材で形成したときに、収納空間S内を外部から視認できるものであれば、どのようなものであってもよい。具体的には、全光線透過率が43%以上の包装材であれば、第1面部21および第2面部22を包装材で形成したときに収納空間S内を外部から視認できる(特に、全光線透過率が66%以上の包装材が望ましい。)。また、上述した包装材において、植物繊維で形成されたグラシン紙と、熱可塑性樹脂で形成されたポリエチレンフィルムとが積層されたものとしたが、後述する製造方法にて包装体20を形成できるものであれば、どのようなものであってもよい。具体的には、植物繊維で形成されたものとしては、硫酸紙、透写紙(トレーシングペーパー)、パラフィン紙、レーヨン、和紙等で形成されたものあってもよく、熱可塑性樹脂で形成されたものとしては、ポリプロピレン(延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン)、ポリエチレンテレフタラート等で形成されたものであってもよい。」
イ 「【0024】
次に、ステップS140の綿棒包装工程では、包装体成形器にて一枚の包装材のポリエチレンフィルム側を所定の間隔で撓ませた状態にすることで複数の撓ませた部分を形成し、この複数の撓ませた部分の各々に綿棒1を一つずつ嵌挿する。そして、包装材における複数の撓ませた部分に複数の綿棒1を一つずつ嵌挿した状態で、撓ませた部分に対して蓋をするように別の包装材のポリエチレンフィルム側で覆うとともに、複数の撓ませた部分の各々の周囲を熱圧着することで一つの綿棒1を収容した収容空間Sが複数形成される。なお、この綿棒包装工程における熱圧着とは、二枚の包装材のポリエチレンフィルム側同士を合わせて、ポリエチレンフィルムが溶融する温度(200℃以下)にて圧着することで二枚の包装材間で接着されることである。このようにステップS140の綿棒包装工程では、複数の収容空間Sの各々に一つの綿棒1が収容された状態の第1包装連結体120(後述する図4(A)を参照。)が製造される。」
第5 当審の判断
1 理由1(新規性)・理由2(進歩性)について
(1) 理由2-1(甲1を主引用例とした進歩性)
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
a 甲1発明の「紙基材」及び「包装基材」は、それぞれ本件特許発明1の「紙基材」及び「包装紙」に相当する。また、甲1発明の「シール層」を形成する「ポリエチレン」は、ヒートシール剤として挙げられていることから(甲1の【0062】)、「ヒートシール層」といえる。したがって、甲1発明の「紙基材」と、「ポリエチレン層である」「シール層とを含む層構成を有する包装基材」は、本件特許発明1の「紙基材上にヒートシール層を有する包装紙」に相当する。
b 甲1発明の「JIS P8121-2:2012に準じて測定したフリーネス」は、本件特許発明1の「カナダ標準ろ水度」に相当し、甲1発明の「紙基材のパルプ」の当該「フリーネス」は「360ml」であるから、本件特許発明1で特定する「300mL以上700mL以下」の範囲に含まれる。
c 甲1発明の「紙基材の坪量」は「30.0g/m2」であるから、本件特許発明1で特定する「60g/m2以下」の範囲に含まれる。
d 甲1発明では「包装基材の厚さが59μmであり、シール層の厚さが15μmであ」ることから、甲1発明の「紙基材」の厚さは、59-15=44μmと算出される。そして、甲1発明の「紙基材の坪量は30.0g/m2であ」ることから、甲1発明の「紙基材」の密度は、「紙基材」の坪量と厚さから、30.0/44=0.68g/cm3と算出され、本件特許発明1で特定する「0.8g/cm3以下」の範囲に含まれる。
e 甲1発明では「紙基材の坪量が30.0g/m2であり」、「包装基材の坪量が44.0g/m2であ」ることから、甲1発明の「包装基材」中の「紙基材」の含有量は、「紙基材の坪量」と「包装基材の坪量」から、30.0/44.0×100=68質量%と算出され、本件特許発明1の「包装紙中の紙基材の含有量」として特定される「50質量%以上」の範囲に含まれる。
f 甲1発明の「包装基材の縦方向の引張強度」は、本件特許発明1の「包装紙の縦方向の引張強さ」に相当し、甲1発明では「2.76kN/m」であるから、本件特許発明1で特定する「1.2kN/m以上5.0kN/m以下」の範囲に含まれる。
g 甲1発明の「包装基材の横方向の引張強度」は、本件特許発明1の「包装紙の横方向の引張強さ」に相当し、甲1発明では「1.68kN/m」であるから、本件特許発明1で特定する「1.2kN/m以上4.0kN/m以下」の範囲に含まれる。
h してみれば、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点で一致及び相違する。
(一致点1)
「紙基材上にヒートシール層を有する包装紙であり、
紙基材の原料パルプのカナダ標準ろ水度が、300mL以上700mL以下であり、
紙基材の坪量が60g/m2以下であり、
紙基材の密度が0.8g/cm3以下であり、
包装紙中の紙基材の含有量が50質量%以上であり、
包装紙の縦方向の引張強さが1.2kN/m以上5.0kN/m以下であり、
包装紙の横方向の引張強さが1.2kN/m以上4.0kN/m以下である、
包装紙。」
(相違点1)
本件特許発明1では「包装紙の不透明度が80%以下であ」るのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。
イ 判断
上記相違点1について検討する。
甲1には、包装基材の不透明度について記載はなく、甲1発明の「包装基材」の不透明度が80%以下であることを示す客観的な証拠もない。
また、甲1には、甲1発明において「包装基材」の不透明度を80%以下とすることを示唆する記載もなく、甲2~甲4にもそのような記載はない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明、または、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
また、本件の請求項1を引用する本件特許発明2~7についても、上記相違点1に係る発明特定事項を備えているから、本件特許発明1と同様に、甲1発明、または、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人の主張
申立人は、異議申立書において、概略以下のような主張をしている。
a 本件発明の不透明度は、JIS P 8149:2000に準拠して測定されるもので、不透明度の定義から明らかなように、紙が薄くなると不透明度の値は小さくなる。本件発明の実施例・比較例における紙基材の厚さと不透明度の関係からして、甲1発明の厚さ44μmの片艶紙上に15μmのポリエチレン層を設けた包装基材の不透明度は、本件実施例2と4の不透明度の間である52.6~58.1%程度である蓋然性が高い。
b 甲1には、包装基材の透明度が60%以上であることが好ましいこと、紙基材に用いる透明度の高い紙は、グラシン紙、パーチメント紙に限定されないことが記載されている。してみると、甲1発明において、透明度が60%以上の紙基材を用いることは容易なことである。そして、60%以上もの透明度を有する紙は、当然にJIS P 8149:2000に準拠して測定される不透明度は80%以下である。
(イ)申立人の主張に対する判断
上記aの主張について検討すると、当該主張は、本件特許明細書の記載からの推定に基づき、蓋然性が高いことを主張するにとどまり、甲1発明の包装基材の不透明度が実際に52.6~58.1%程度であることを、客観的な証拠に基づき立証するものではない。
上記bの主張について検討すると、当該主張は、測定方法の異なる甲1発明の透明度と本件特許発明の不透明度との間には関係性があるとの推定に基づく主張にとどまり、甲1発明の透明度と本件特許発明の不透明度との関係を示す客観的な証拠に基づき立証するものではない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(2) 理由1(甲6を主引用例とした新規性)
ア 対比
本件特許発明1と甲6発明を対比する。
a 甲6発明の「紙基材」は、本件特許発明1の「紙基材」に相当する。
甲6発明の「熱可塑性樹脂層」を構成する「LDPE」は、ヒートシール性を発現する材料であることは技術常識であるから、甲6発明の「熱可塑性樹脂層」は、本件特許発明1の「ヒートシール層」に相当する。
甲6発明において「紙基材の一方の面に」「熱可塑性樹脂層」を有することは、本件特許発明1の「紙基材上にヒートシール層を有する」ことに相当する。
甲6発明の「洋傘用ラミネート紙」と本件特許発明1の「包装紙」は、「紙」である点で共通するが、用途について、本件発明は「包装紙」であるのに対し、甲1発明は「洋傘用」である点で相違する。
b 甲6発明の「紙基材を構成する針葉樹晒パルプのカナダ標準濾水度」は「400mL」であるから、本件特許発明1で特定する「300mL以上700mL以下」の範囲に含まれる。
c 甲6発明の「紙基材の坪量」は「39.3g/m2」であるから、本件特許発明1で特定する「60g/m2以下」の範囲に含まれる。
d 甲6発明の「紙基材の密度」は「0.61g/cm3」であるから、本件特許発明1で特定する「0.8g/cm3以下」の範囲に含まれる。
e 甲6発明では「紙基材の坪量が39.3g/m2であり」、「洋傘用ラミネート紙材の坪量が56.9g/m2であ」ることから、甲6発明の「洋傘用ラミネート紙」中の「紙基材」の含有量は、「紙基材の坪量」と「洋傘用ラミネート紙の坪量」から、39.3/56.9×100=69質量%と算出され、本件特許発明1の「包装紙中の紙基材の含有量」として特定される「50質量%以上」の範囲に含まれる。
f 甲6発明の「洋傘用ラミネート紙の不透明度」は「44.3%」であるから、本件特許発明1で特定する「80%以下」の範囲に含まれる。
g 甲6発明の「洋傘用ラミネート紙の縦方向の引張強さ」は「3.5kN/m」であるから、本件特許発明1で特定する「1.2kN/m以上5.0kN/m以下」の範囲に含まれる。
h 甲6発明の「洋傘用ラミネート紙の横方向の引張強度」は「2.0kN/m」であるから、本件特許発明1で特定する「1.2kN/m以上4.0kN/m以下」の範囲に含まれる。
i してみれば、本件特許発明1と甲6発明とは、以下の点で一致及び相違する。
(一致点2)
「紙基材上にヒートシール層を有する紙であり、
紙基材の原料パルプのカナダ標準ろ水度が、300mL以上700mL以下であり、
紙基材の坪量が60g/m2以下であり、
紙基材の密度が0.8g/cm3以下であり、
紙中の紙基材の含有量が50質量%以上であり、
紙の不透明度が80%以下であり、
紙の縦方向の引張強さが1.2kN/m以上5.0kN/m以下であり、
紙の横方向の引張強さが1.2kN/m以上4.0kN/m以下である、
紙。」
(相違点2)
「紙」について、本件特許発明1では「包装紙」であるのに対し、甲6発明では「洋傘用ラミネート紙」である点。
イ 判断
上記アのとおり、本件特許発明1と甲6発明とでは相違点が存在するから、本件特許発明1は甲6に記載された発明ではない。また、本件の請求項1を引用する本件特許発明2~6についても、上記相違点2に係る発明特定事項を備えているから、本件特許発明1と同様に、甲6に記載された発明ではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、異議申立書において、甲6に記載の洋傘用ラミネート紙と本件特許発明1である包装紙は、その用途に一応の相違点は存在するが、紙として区別できないから、同一の発明である旨、主張している。
しかしながら、上記のとおり、本件特許発明1は甲6に記載された発明でないから、申立人の上記主張は採用できない。
(3)理由2-2(甲6を主引用例とした進歩性)
ア 判断
上記相違点2について検討する。
甲6には、洋傘用ラミネート紙を傘地として用いることは記載されているものの、包装紙として用いることは記載も示唆もされていない。加えて、傘地に用いられる紙に求められる性質が、包装紙にも求められる性質であるとの技術常識も認められない。よって、両者が「紙」である点で共通するとしても、洋傘用ラミネート紙に用いられる技術を包装紙に転用することには、動機付けが見出せない。
したがって、本件特許発明1は、甲6発明に基づき当業者が容易に想到することができたものとはいえない。また、本件の請求項1を引用する本件特許発明2~7についても、上記相違点2に係る発明特定事項を備えているから、本件特許発明1と同様に、甲6発明に基づき当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
イ 申立人の主張について
申立人は、異議申立書において、脱プラスチックの流れの中でプラスチックの代替素材として紙を用いることは本件出願時に周知の事項に過ぎないから、ビニール傘に用いられるビニールと同等の透明性と取り扱い性(ハンドリング性)を有する甲6に記載の洋傘用ラミネート紙を、ビニール等のプラスチックフィルムからなる包装材の代替として包装紙とすることは、当業者にとって容易なことである旨、主張している。
しかしながら、どちらも従来ビニール等のプラスチックフィルムが用いられてきた物の代替品用途とはいえ、明らかに対候性、強度、及び、ハンドリング性において求められる性質が異なる、洋傘用ラミネート紙の技術を包装紙に適用することは、上記のとおり、動機付けが見出せない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(4)小括
以上のとおりであるから、申立人が主張する理由1、2はいずれも理由がない。
2 理由3(サポート要件)について
(1)申立人の主張について
申立人は、異議申立書において、本件特許発明1は「包装紙の横方向の引張強さが1.2kN/m以上4.0kN/m以下である」との発明特定事項を備えるが、本件発明の詳細な説明の記載からは、横方向の引張力が1.2kN/m以上4.0kN/m以下である包装紙が、本件発明の詳細な説明に記載された課題を解決できると当業者が理解することができず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている旨、主張している。
(2)判断
本件発明の解決しようとする課題は、「環境への負荷が低減され、包装体とした際の視認性に優れると共に、機械を使用して包装する際、給紙性(端部を所望の速度で引っ張られても破れが生じにくいこと)に優れ、ヒートシール性を有する包装紙、および該包装紙を用いてなる包装体を提供すること」(【0004】)である。
包装紙の横方向の引張強さについて、本件特許明細書の【0068】には「横方向の引張強さは、給紙性の観点から、・・・より好ましくは1.2kN/m以上であり、そして、製造容易性の観点から、・・・よりさらに好ましくは4.0kN/m以下である。」と記載されており、当該記載によれば、包装紙の横方向の引張強さの下限が1.2kN/m以上であれば、給紙性が良好であることから、包装体を提供するとの課題を解決し得ることが認識できるといえる。そして、本件特許明細書の【0070】~【0089】には、包装紙の横方向の引張強さが1.2kN/m以上4.0kN/m以下である場合の実施例1~4が記載され、これらの実施例は課題を解決できるものである。
したがって、本件特許発明1~7は、発明の詳細な説明の記載から当業者が本件課題を解決できると理解できるものであり、発明の詳細な説明に記載したものといえる。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)小括
以上のとおりであるから、申立人が主張する理由3は理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許1~7を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1~7を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700605