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特許異議申立

2024-700197

廃電池の処理方法

審判番号
2024-700197
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-516142
登録番号
7371237
請求日
2024年03月01日
審決日
2025年02月03日
公報発行日
2025年05月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
  • 【権利者代理人】飯田 雅人
  • 【権利者代理人】実広 信哉
  • 【異議申立人】斎藤 明子
審判長/審判官
  • 審判長 粟野 正明
  • 審判官 土屋 知久
  • 審判官 相澤 啓祐
分類
P1652.161-YAA(C22B) / P1652.537-YAA(C22B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条の2、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7371237号発明「廃電池の処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7371237号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4、6、11〕、3、5、〔7、8〕、〔9、10〕について訂正することを認める。 特許第7371237号の請求項1、2、4、6、11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7371237号の請求項1~15に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2020年(令和2年)9月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2019年9月25日 大韓民国、2020年9月23日 大韓民国)を国際出願日とする出願であって、令和5年10月20日にその特許権の設定登録がなされ、同年10月30日に特許掲載公報が発行された。 本件は、その後、令和6年3月1日に特許異議申立人斎藤明子(以下、「申立人」という。)より請求項1、2、4、6、11に係る特許に対してなされた特許異議申立事件であって、同年8月13日付けで取消理由が通知され、これに対し、同年11月13日に意見書が提出されるとともに、訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、同年12月11日に申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正請求について 1 請求の趣旨、及び、訂正の内容 本件訂正請求は、特許第7371237号の特許請求の範囲を、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。なお、訂正箇所には、当審で下線を付した。 1-1 訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記廃電池を大気雰囲気または酸化雰囲気下で650℃以上の温度で熱処理して前記アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させるステップ」と記載されているのを、「前記廃電池を大気雰囲気または酸化雰囲気下で650℃以上の温度で熱処理して前記アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させて粉末化するステップ」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、4、6、11も同様に訂正する)。 1-2 訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「前記廃電池を熱処理する前に廃電池を破砕するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の廃電池の処理方法。」と記載されているのを、「アルミニウム集電体、及び前記アルミニウム集電体の少なくとも一表面に形成された正極活物質層を含む廃正極を含む廃電池を準備するステップと、前記廃電池を大気雰囲気または酸化雰囲気下で650℃以上の温度で熱処理して前記アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させるステップと、前記熱処理された廃電池からアルミニウム酸化物粉末及び正極活物質粉末を回収するステップと、を含むことを特徴とする廃電池の処理方法(前記熱処理された廃電池を炭素の存在下で還元熔融して、スラグと有価金属を含む合金とを得る還元熔融工程を行うもの、および前記熱処理された廃電池に対して過酸化水素と無機酸との混合物による処理を行うものを除く)であって、前記廃電池を熱処理する前に廃電池を破砕するステップをさらに含むことを特徴とする、廃電池の処理方法。」に訂正する。 1-3 訂正事項3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「前記廃電池が電解質を含む電池であり、前記廃電池を準備するステップは、前記廃電池から前記電解質を除去し、前記廃電池を不活性化するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の廃電池の処理方法。」と記載されているのを、「アルミニウム集電体、及び前記アルミニウム集電体の少なくとも一表面に形成された正極活物質層を含む廃正極を含む廃電池を準備するステップと、前記廃電池を大気雰囲気または酸化雰囲気下で650℃以上の温度で熱処理して前記アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させるステップと、前記熱処理された廃電池からアルミニウム酸化物粉末及び正極活物質粉末を回収するステップと、を含むことを特徴とする廃電池の処理方法(前記熱処理された廃電池を炭素の存在下で還元熔融して、スラグと有価金属を含む合金とを得る還元熔融工程を行うもの、および前記熱処理された廃電池に対して過酸化水素と無機酸との混合物による処理を行うものを除く)であって、前記廃電池が電解質を含む電池であり、前記廃電池を準備するステップは、前記廃電池から前記電解質を除去し、前記廃電池を不活性化するステップを含むことを特徴とする、廃電池の処理方法。」に訂正する。 1-4 訂正事項4 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「前記廃電池を準備するステップより後であって、前記アルミニウム集電体を前記アルミニウム酸化物に転換させるステップより前に、前記廃負極の負極活物質層内の炭素を除去するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の廃電池の処理方法。」と記載されているのを、「アルミニウム集電体、及び前記アルミニウム集電体の少なくとも一表面に形成された正極活物質層を含む廃正極を含む廃電池を準備するステップと、前記廃電池を大気雰囲気または酸化雰囲気下で650℃以上の温度で熱処理して前記アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させるステップと、前記熱処理された廃電池からアルミニウム酸化物粉末及び正極活物質粉末を回収するステップと、を含むことを特徴とする廃電池の処理方法(前記熱処理された廃電池を炭素の存在下で還元熔融して、スラグと有価金属を含む合金とを得る還元熔融工程を行うもの、および前記熱処理された廃電池に対して過酸化水素と無機酸との混合物による処理を行うものを除く)であって、前記廃電池は銅集電体を含む廃負極をさらに含み、前記廃電池を準備するステップより後であって、前記アルミニウム集電体を前記アルミニウム酸化物に転換させるステップより前に、前記廃負極の負極活物質層内の炭素を除去するステップをさらに含むことを特徴とする、廃電池の処理方法。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)。 1-5 訂正事項5 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9に「前記廃電池を650℃以上の温度で熱処理するステップは多段昇温方式で行われることを特徴とする、請求項1に記載の廃電池の処理方法。」と記載されているのを、「アルミニウム集電体、及び前記アルミニウム集電体の少なくとも一表面に形成された正極活物質層を含む廃正極を含む廃電池を準備するステップと、前記廃電池を大気雰囲気または酸化雰囲気下で650℃以上の温度で熱処理して前記アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させるステップと、前記熱処理された廃電池からアルミニウム酸化物粉末及び正極活物質粉末を回収するステップと、を含むことを特徴とする廃電池の処理方法(前記熱処理された廃電池を炭素の存在下で還元熔融して、スラグと有価金属を含む合金とを得る還元熔融工程を行うもの、および前記熱処理された廃電池に対して過酸化水素と無機酸との混合物による処理を行うものを除く)であって、前記廃電池を650℃以上の温度で熱処理するステップは多段昇温方式で行われることを特徴とする、廃電池の処理方法。」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する)。 2 訂正の適否についての当合議体の判断 2-1 訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る訂正は、本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)【0032】の記載を根拠として、訂正前の請求項1における「廃電池を大気雰囲気または酸化雰囲気下で650℃以上の温度で熱処理して前記アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させるステップ」について、「アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させて」、新たに「粉末化する」ことを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえず、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の記載から導き出される技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る訂正は、請求項3について、本件訂正前は請求項1を引用するものであったところ、請求項1との引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえず、本件明細書等の記載から導き出される技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3に係る訂正は、請求項5について、本件訂正前は請求項1を引用するものであったところ、請求項1との引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえず、本件明細書等の記載から導き出される技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (4)訂正事項4について 訂正事項4に係る訂正は、請求項7について、本件訂正前は請求項1、6を直接または間接的に引用するものであったところ、請求項1、6との引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえず、本件明細書等の記載から導き出される技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (5)訂正事項5について 訂正事項5に係る訂正は、請求項9について、本件訂正前は請求項1を引用するものであったところ、請求項1との引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえず、本件明細書等の記載から導き出される技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 2-2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~11について、訂正前の請求項2~10は訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~11は一群の請求項である。 一方、請求項3、5、7~10については、当該請求項について訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することが求められている。 したがって、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1、2、4、6、11〕、3、5、〔7、8〕、〔9、10〕を訂正単位とする訂正を請求するものである。 2-3 独立特許要件について 本件は、訂正前の請求項1、2、4、6、11について特許異議の申立てがなされているので、同請求項についての訂正事項である訂正事項1について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 また、訂正前の請求項3、5、7~10について特許異議の申立てがなされていないが、上記2-1で検討したとおり、同請求項についての訂正事項である訂正事項2~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当し、同法同条同項ただし書第1号または第2号を目的とするものではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 2-4 訂正請求のむすび 以上のとおりであるから、令和6年11月13日に特許権者が行った訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2、4、6、11〕、3、5、〔7、8〕、〔9、10〕についての訂正を認める。 第3 本件発明 令和6年11月13日に特許権者が行った請求項1~11についての訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~15に係る発明(以下、「本件発明1」などという。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1、2、4、6、11に係る発明は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 アルミニウム集電体、及び前記アルミニウム集電体の少なくとも一表面に形成された正極活物質層を含む廃正極を含む廃電池を準備するステップと、 前記廃電池を大気雰囲気または酸化雰囲気下で650℃以上の温度で熱処理して前記アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させて粉末化するステップと、 前記熱処理された廃電池からアルミニウム酸化物粉末及び正極活物質粉末を回収するステップと、を含むことを特徴とする廃電池の処理方法(前記熱処理された廃電池を炭素の存在下で還元熔融して、スラグと有価金属を含む合金とを得る還元熔融工程を行うもの、および前記熱処理された廃電池に対して過酸化水素と無機酸との混合物による処理を行うものを除く)。 【請求項2】 前記熱処理は650℃~1080℃で行うことを特徴とする、請求項1に記載の廃電池の処理方法。」 「【請求項4】 前記大気雰囲気または酸素雰囲気は、21モル%~99モル%の酸素を含む雰囲気であることを特徴とする、請求項1に記載の廃電池の処理方法。」 「【請求項6】 前記廃電池は銅集電体を含む廃負極をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の廃電池の処理方法。」 「【請求項11】 前記熱処理された廃電池から回収されたアルミニウム酸化物粉末は、粒径が10mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の廃電池の処理方法。」 第4 申立理由及び取消理由の概要 1 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として次の甲第1号証(以下、「甲1」という。)を提出し、以下の申立理由1、2により、請求項1、2、4、6、11に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。 なお、以下に示す申立理由1、2は、願書に添付された特許請求の範囲及び明細書に対して、なされたものである。 (証拠方法) 甲第1号証:特開2020-64855号公報 (1)申立理由1(サポート要件:取消理由に採用) 本件特許の請求項1、2、4、6、11に係る発明は、課題を解決し得ない発明を含むから、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同発明に係る本件特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(拡大先願:取消理由に不採用) 本件特許の請求項1、2、4、6、11に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願又は実用新案登録出願であって、本件特許の出願後に特許掲載公報の発行若しくは出願公開又は実用新案掲載公報の発行がされた甲1に係る特許出願又は実用新案登録出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面に記載された発明又は考案と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が本件特許の出願前の特許出願又は実用新案登録出願に係る上記の発明又は考案をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許又は実用新案登録出願の出願人と同一でもないから、同発明に係る本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 令和6年8月13日付けで通知した取消理由 当合議体において、上記1の申立理由のうち、申立理由1(上記1の(1)参照。)を採用し、令和6年8月13日付けで取消理由(以下、「取消理由1」という。)を通知した。 第5 当合議体の判断 当合議体においては、次に示すとおり、上記第4の申立理由及び取消理由によっては、本件請求項1、2、4、6、11に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 取消理由1、申立理由1(サポート要件)について (1)サポート要件について ア 本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の記載によれば、「破粉砕/微粉砕装備などのような設備なしに廃電池を粉末化して正極活物質を効率的にリサイクルすることができる廃電池の処理方法」(【0009】)を提供することであると認められる。 イ そして、本件訂正後の本件発明1は、「廃電池を大気雰囲気または酸化雰囲気下で650℃以上の温度で熱処理して前記アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させて粉末化するステップ」「を含む」との発明特定事項を含むものであって、上記アの「破粉砕/微粉砕装備などのような設備なしに廃電池を粉末化」し得るものであり、それにより、「正極活物質を効率的にリサイクルすることができる」ものであるといえる。 ウ よって、本件発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることをその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者、すなわち当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるとはいえないから、発明の詳細な説明に記載されたものである。また、本件発明2、4、6、11も同様に、発明の詳細な説明に記載されたものである。 (2)申立人の主張について ア 申立人は、令和6年12月11日付けの意見書において、本件発明1は、本件訂正後も「二次粉砕」の工程を含み得る表現のままであるから、請求項1、2、4、6、11に係る発明は、いわゆるサポート要件に違反しており、同請求項に係る特許は、取り消されるべきものである旨主張している。 イ 確かに、本件発明1は、本件訂正後も「二次粉砕」を完全に排除するものではないかもしれない。 ウ しかしながら、上記(1)で検討したとおり、本件発明1は、「アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させて粉末化するステップ」「を含む」ものであり、この点により、上記(1)のアの「破粉砕/微粉砕装備などのような設備なしに廃電池を粉末化」するという課題を解決し得るものであるから、仮に上記二次粉砕の工程を行うものであるとして、そのことによってサポート要件違反であるとはいえない。 エ よって、申立人の主張は採用できない。 2 申立理由2(拡大先願) (1)甲1に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明 ア 甲1に記載された実施例1に注目すると、甲1に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(特に、【0045】~【0048】参照。)には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「リチウムイオン二次電池を、熱処理装置としてマッフル炉を用いて、熱処理温度850℃(1H昇温・2H保持)、AIR送気量5L/minの条件で熱処理工程を行い、 次いで、破砕工程では、破砕装置として、ハンマークラッシャーを用い、1回追加破砕し、 分級工程として、篩目の目開きが1.2mmの篩を用いて、前記破砕工程で得られた破砕物を篩分けし、篩分け後の1.2mmの篩上(粗粒)と篩下(細粒)をそれぞれ採取し、 得られた細粒産物については、ドラム型磁選機を用いて、湿式磁選を行い、磁着物と非磁着物スラリーを回収し、この非磁着物のスラリーを固液分離し、固形分を分離後、溶液に炭酸ガスの吹込みを行い、炭酸リチウムを沈殿させ、 一方、粗粒産物については、ハンドマグネットを用いて、乾式磁選を行い、磁着物と非磁着物を回収する方法。」 (2)本件発明1について (2)-1 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1には、「本発明は、製造過程で発生した不良品や使用機器及び電池の寿命などに伴い廃棄されるリチウムイオン二次電池の正極集電体、負極集電体、正極活物質などから有価物を回収可能なリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法に関する」(【0001】)と記載されており、また、甲1発明は、「リチウムイオン二次電池」に対して、「熱処理工程」、「破砕工程」、「分級工程」を行い、「細粒産物については、」「湿式磁選を行い、」「粗粒産物については、」「乾式磁選を行」うものであるから、甲1発明の「リチウムイオン二次電池」は、本件発明1の「廃電池」に相当するといえる。 また、甲1発明の「リチウムイオン二次電池」は、上記のとおり、本件発明1の「廃電池」に相当するから、技術常識に照らせば、集電体及び集電体の一表面に形成された正極活物質層を含むものである。 そうすると、甲1発明は、本件発明1の「集電体」、及び前記「集電体の少なくとも一表面に形成された正極活物質層を含む廃正極を含む廃電池を準備するステップ」「を含む」ものである。 イ 甲1発明の「リチウムイオン二次電池を、熱処理装置としてマッフル炉を用いて、熱処理温度850℃(1H昇温・2H保持)、AIR送気量5L/minの条件で熱処理工程を行」う事項は、本件発明1の「廃電池を大気雰囲気または酸化雰囲気下で650℃以上の温度で熱処理」する「ステップ」「を含む」事項に相当する。 ウ 上記アのとおり、甲1発明の「リチウムイオン二次電池」は、技術常識に照らせば、集電体及び集電体の一表面に形成された正極活物質層を含むものであり、また、「破砕工程で得られた破砕物」は1.2mm径程度の粉末であるといえる。 そうすると、甲1発明の「分級工程として、篩目の目開きが1.2mmの篩を用いて、前記破砕工程で得られた破砕物を篩分けし、篩分け後の1.2mmの篩上(粗粒)と篩下(細粒)をそれぞれ採取」する事項は、本件発明1の「熱処理された廃電池から」「正極活物質粉末を回収するステップ」「を含む」事項に相当する。 エ また、甲1発明は、本件発明1から除かれた「前記熱処理された廃電池を炭素の存在下で還元熔融して、スラグと有価金属を含む合金とを得る還元熔融工程を行うもの、および前記熱処理された廃電池に対して過酸化水素と無機酸との混合物による処理を行うもの」に該当しない。 オ 上記ア~エより、本件発明1と甲1発明とは、 「集電体、及び前記集電体の少なくとも一表面に形成された正極活物質層を含む廃正極を含む廃電池を準備するステップと、 前記廃電池を大気雰囲気または酸化雰囲気下で650℃以上の温度で熱処理するステップと、 前記熱処理された廃電池から正極活物質粉末を回収するステップと、を含む廃電池の処理方法(前記熱処理された廃電池を炭素の存在下で還元熔融して、スラグと有価金属を含む合金とを得る還元熔融工程を行うもの、および前記熱処理された廃電池に対して過酸化水素と無機酸との混合物による処理を行うものを除く)。」で一致し、次の相違点で相違する。 (相違点1) 「少なくとも一表面に」「正極活物質層」が「形成された」「集電体」について、本件発明1は、「アルミニウム集電体」であって、「熱処理して前記アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させて粉末化する」のに対し、甲1発明は、集電体の材質が不明であり、「熱処理工程を行」うものの、酸化物に転換させて粉末化するのか否かが不明である点。 (相違点2) 「熱処理された廃電池から」「回収する」ものとして、本件発明1は、「アルミニウム酸化物粉末」を含むのに対し、甲1発明は、「アルミニウム酸化物粉末」を含むか否かが不明である点。 (2)-2 検討 ア 上記相違点1について検討する。 イ 甲1発明の「リチウムイオン二次電池」は、その集電体の材質が不明である。 ウ 一方、甲1には、次の記載があり、甲1発明の正極集電体がアルミニウムである可能性も考えられる。 「【0029】 所定の熱処理温度で熱処理を行うことにより、例えば、正極集電体がアルミニウムであり、負極集電体が銅である積層体において、アルミニウム箔からなる正極集電体が脆化し、後述する破砕工程において細粒化しやすくなる。この正極集電体の脆化は溶融もしくは酸化反応により生ずる。また、溶融して流れ落ちたアルミニウムは、受け皿に回収される。一方、銅からなる負極集電体は、銅の融点未満の温度で熱処理されるため、溶融することがなく、後述する乾式磁選工程において、高度に選別できるようになる。また、積層体及びリチウムイオン二次電池のいずれかを酸素遮蔽容器に収容して熱処理したときは、アルミニウム箔からなる正極集電体が溶融して脆化し、後述する破砕工程において細粒化しやすくなり、一方、銅からなる負極集電体は、前記酸素遮蔽容器の酸素遮蔽効果および積層体やリチウムイオン二次電池に含まれるカーボン等の負極活物質による還元効果により、酸素分圧が低い状態で熱処理されるため、酸化による脆化が生じない。このため、破砕工程における破砕により、正極集電体は細かく破砕され、負極集電体は、破砕後も粗粒として存在し、後述する分級工程において、より効果的かつ高度に選別できるようになる。」 エ しかしながら、当該記載は、アルミニウム正極集電体が「溶融もしくは酸化反応」するとされているものの、「溶融して流れ落ちたアルミニウムは、受け皿に回収される」とされており、全体として液体状態となっていることから、少なくとも「アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させて粉末化する」(請求項1)ものとはいえない。 オ また、甲1には次の記載があるが、かかる記載は、正極集電体の材質の例が6種類挙げられているだけであって、甲1の実施例である甲1発明の「リチウムイオン二次電池」の正極集電体として、これらの材質のうち、どの材質が用いられているのかが不明である。 「【0018】 正極集電体としては、その形状、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。正極集電体の形状としては、例えば、箔状などが挙げられる。正極集電体の材質としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン、タンタルなどが挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好ましい。」 カ さらに、上記オで例示された材質は融点が様々であり(ステンレススチール:約1400~1500℃、ニッケル:1455℃、アルミニウム:660℃、銅:1085℃、チタン:1666℃、タンタル:2985℃)、その融点の違いにより、甲1発明の「熱処理温度850℃(1H昇温・2H保持)、AIR送気量5L/minの条件」での「熱処理工程」で起こる作用も、粉末化、溶融、非溶融等様々であると考えられる。 キ そうすると、甲1発明において、その正極集電体をアルミニウムとし、熱処理して前記アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させて粉末化することは、周知慣用技術の単なる付加、削除又は転換等であって新たな効果を奏するものでないとはいえないから、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。 ク よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。 (3)本件発明2、4、6、11について ア 本件発明2、4、6、11は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであり、甲1発明とは少なくとも上記相違点1で相違するから、上記(2)の(2)-2で検討した理由と同様の理由により、本件発明2、4、6、11は、甲1に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。 (4)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書(第9頁第13~25行)において、甲1には、アルミニウムの正極集電体上にコバルト等の正極材を有する正極を備えたリチウムイオン電池が記載されているから、本件発明1、2、4、6、11は、甲1発明と同一もしくは実質同一である旨主張している。 イ 確かに、申立人が主張するように、本件明細書【0018】には、正極集電体の6つの材質の例示があり、同【0029】には、正極集電体がアルミニウムである例が記載されている。 ウ しかしながら、これらの記載は1つの発明として具体的な「廃電池の処理方法」の手順が記載されたものではなく、その一部のみを例示したものにすぎないから、甲1に記載された発明として適切なものとはいえない。 エ また、仮に、これらの記載から甲1発明を認定できたとしても、上記(2)の(2)-2のウ、エで検討したとおり、【0029】の記載は、「アルミニウム集電体をアルミニウム酸化物に転換させて粉末化する」(本件請求項1)ものとはいえないし、さらに、【0018】の記載は、正極集電体の材質の例が6種類挙げられており、その中から「アルミニウム」のみを選択した発明が記載されているとはいえない。 オ よって、申立人の意見は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1、2、4、6、11に係る特許は、令和6年8月13日付け取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできず、また、他に本件特許の請求項1、2、4、6、11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700197

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