特許異議申立
2025-700772
接着シート
- 審判番号
- 2025-700772
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-500462
- 登録番号
- 7634074
- 請求日
- 2025年07月28日
- 審決日
- 2026年04月23日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社寺岡製作所
- 【権利者代理人】岡部 讓
- 【権利者代理人】越智 隆夫
- 【権利者代理人】松井 孝夫
- 【異議申立人】斎藤 明子
- 審判長/審判官
- 審判長 光本 美奈子
- 審判官 村守 宏文
- 審判官 渡辺 陽子
- 分類
- P1651.16 -YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第41条第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7634074号発明「接着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7634074号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7634074号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 本件特許に係る出願は、令和3年2月19日を国際出願日とする出願であって、令和7年2月12日に請求項1~6に係る特許の設定登録がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行されたところ、同年7月28日に特許異議申立人 斎藤明子(以下「申立人」という。)により全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
2 その後の手続きは以下のとおりである。
令和7年10月 7日付け 当審において取消理由通知
同年12月 8日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
令和8年 1月23日 訂正請求書の手続補正書(方式)の提出(特許権者)
同年 2月 9日 訂正請求書の手続補正書(方式)の提出(特許権者)
同年 2月25日付け 当審において訂正請求があった旨の通知
同年 3月23日 意見書(申立人)
第2 訂正の適否
1 訂正内容
令和7年12月8日に提出され、令和8年1月23日提出の手続補正書(方式)及び令和8年2月9日提出の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1及び2からなる。下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「18℃において固体状」とあるのを、「周波数10Hz、-20℃~100℃において測定した貯蔵弾性率に対する損失弾性率の割合の値であるtanδのピーク温度が18℃以上」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、「前記アクリル系粘着剤のtanδのピーク温度が20℃以下であり、前記ゴム系粘着剤のtanδのピーク温度が-10℃以下であり、前記シリコーン系粘着剤のtanδのピーク温度が70℃以下であり、」とあるのを、「前記アクリル系粘着剤の前記tanδのピーク温度が2℃以上20℃以下であり、前記ゴム系粘着剤の前記tanδのピーク温度が-20℃以上-10℃以下であり、前記シリコーン系粘着剤の前記tanδのピーク温度が70℃以下であり、」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~6について、請求項2~6はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~6は一群の請求項である。
したがって、本件訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。
3 本件訂正についての検討
(1)訂正事項1について
訂正前の請求項1の「18℃において固体状」との記載について、願書に添付した明細書の段落0035には、「本発明において「固体状」とは、下記の測定方法により得られるtanδのピーク温度が18℃以上であることをいう。」と記載され、「tanδのピーク温度の測定方法」について「動的粘弾性測定の為の粘弾性試験機を用いて、厚さ約2mmの接着剤サンプルを試験機の測定部の平行盤の間に挟み込み、周波数10Hz、-20℃~100℃における貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’を測定した。tanδ(損失係数)=G’’/G’の計算式によりtanδを求め、ピーク温度を解析する。」と記載されている。そして、訂正事項1は、当該願書に添付した明細書の記載に基づき、訂正前の「18℃において固体状」との記載を、「周波数10Hz、-20℃~100℃において測定した貯蔵弾性率に対する損失弾性率の割合の値であるtanδのピーク温度が18℃以上」と特定し、その技術的意義を明確にするものである。
したがって、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「前記アクリル系粘着剤」、「前記ゴム系粘着剤」及び「前記シリコーン系粘着剤」の「tanδのピーク温度」を「前記tanδのピーク温度」と特定し、その技術的意義を明確にするとともに、訂正前の請求項1の「前記アクリル系粘着剤」の「tanδのピーク温度」が「20℃以下」とあるのを「2℃以上20℃以下」と特定し、訂正前の請求項1の「前記ゴム系粘着剤のtanδのピーク温度」が「-10℃以下」とあるのを「-20℃以上-10℃以下」と特定することで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び3号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、願書に添付した明細書の段落0071には、「粘着剤領域(A2R)に使用するアクリル系粘着剤のtanδのピーク温度は、好ましくは20℃以下」であると記載され、同段落0108には、アクリル系粘着剤組成物の調製として「このアクリル系粘着剤組成物のtanδのピーク温度は2℃であった」と記載されており、同段落0075には、「粘着剤領域(A2R)に使用するゴム系粘着剤のtanδのピーク温度は、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃~10℃である」と記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1~6について特許異議申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課される請求項はない。
(4)小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
4 訂正の適否についてのまとめ
したがって、本件特許の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
前記第2のとおり、本件訂正の請求は認められたので、本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのもの(以下「本件訂正発明1」~「本件訂正発明6」といい、まとめて「本件訂正発明」ということもある。)である。
「【請求項1】
周波数10Hz、-20℃~100℃において測定した貯蔵弾性率に対する損失弾性率の割合の値であるtanδのピーク温度が18℃以上である接着剤層(A1L)を有する接着シートであって、
前記接着剤層(A1L)がエポキシ樹脂を含み、
前記接着剤層(A1L)が感温性発泡剤を更に含み、
前記感温性発泡剤が、熱膨張性マイクロカプセルであり、
前記接着剤層(A1L)の少なくとも一方の面に、粘着剤(A2)を部分的に設けることにより形成された粘着剤領域(A2R)を有し、
前記粘着剤(A2)が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択され、
前記アクリル系粘着剤の前記tanδのピーク温度が2℃以上20℃以下であり、前記ゴム系粘着剤の前記tanδのピーク温度が-20℃以上-10℃以下であり、前記シリコーン系粘着剤の前記tanδのピーク温度が70℃以下であり、
前記面において前記粘着剤領域(A2R)が形成されていない領域は、前記接着剤層(A1L)の面が露出している接着剤層露出領域(A1LR)である接着シート。
【請求項2】
接着剤層(A1L)が、5℃においてタックを示さない請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
粘着剤領域(A2R)の面積と接着剤層露出領域(A1LR)の面積の合計面積(100%)に対する粘着剤領域(A2R)の面積の割合が1%~70%である請求項1に記載の接着シート。
【請求項4】
粘着剤領域(A2R)の外側面が接着剤層露出領域(A1LR)の外側面よりも外側に突出している請求項1に記載の接着シート。
【請求項5】
粘着剤領域(A2R)の外側面と接着剤層露出領域(A1LR)の外側面が略同一平面に存在する請求項1に記載の接着シート。
【請求項6】
接着剤層(A1L)の一方の面に粘着剤領域(A2R)を有し、接着剤層(A1L)の他方の面に基材を有する請求項1に記載の接着シート。」
第4 特許異議申立ての理由及び当審において通知した取消理由の概要
1 申立人が申し立てた理由の要旨は、次のとおりである。
(拡大先願)本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものであって同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 当審において令和7年10月7日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(拡大先願)本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、その優先日後に国際公開がされたとみなされた特願2020-207417号(PCT/JP2021/045256(甲第1号証:国際公開第2022/131110号))の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから(同法第184条の13及び同法第41条第3項参照)、本件特許の前記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。(前記1の申立理由に相当)
3 証拠方法等の一覧
(1)特許異議申立書とともに申立人が提出した甲号証は、次のとおりである。
甲第1号証:国際公開第2022/131110号
(2)当審において新たに引用した文献は、次のとおりである。
参考文献1:日本接着学会、「接着ハンドブック」、第3版、日刊工業新聞社、1996年6月28日、第679頁(周知技術を示した文献)
第5 取消理由(拡大先願)についての判断(前記第4 1及び2参照)
1 先願明細書等に記載された発明
(1)本件特許の出願日前の国内優先権主張を伴う日本語特許出願であるPCT/JP2021/045256の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、後記(2)に摘記した事項が記載されており、当該記載事項は、前記国内優先権主張の基礎とされた先の出願である特願2020-207417号(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)にも記載されており、国際公開第2022/131110号(甲第1号証)において国際公開されている。
したがって、特許法第29条の2の規定は、本願の出願前である2020年12月15日に出願された引用出願1について、その出願後に出願公開されたものとみなして判断する(特許法第41条第3項)。
なお、括弧内に示した摘記箇所は、国際公開における段落番号に対応する。
(2)先願明細書等には、接着シートに関する発明の実施態様(実施例、比較例)、粘着剤の種類及びtanδのピーク温度の測定方法について、特に以下の事項が記載されている。
ア 熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)の調製(調製例1)について
「エポキシ樹脂1(BPA型、エポキシ当量8,000g/eq.、固形(25℃)、軟化点200℃以上)を35質量部と、エポキシ樹脂2(変性BPA型、エポキシ当量400g/eq.、140万mPa・s(25℃))を7質量部と、エポキシ樹脂3(ジシクロペンタジエン型、エポキシ当量280g/eq.、固形(25℃)、軟化点100℃)を58質量部と、硬化剤1(ジシアンジアミド、固形)を3.8質量部と、硬化剤2(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、固形)を3質量部と、膨張剤1(熱膨張カプセル、膨張開始温度125℃、固形)を1質量部とをメチルエチルケトン60質量部に溶解することによって、熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)を調整した。」(段落0165)
イ 粘着剤(b-1)の調製(調製例4)について
「n-ブチルアクリレート97.98質量部と、アクリル酸2質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.02質量部とを、アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部を重合開始剤として、酢酸エチル溶液中で、90℃で6時間溶液重合させることによって、重量平均分子量50万のアクリル重合体を得た。
上記アクリル重合体100質量部に対し、「D-135」(荒川化学工業株式会社製、重合ロジンエステル)5質量部と、「KE-100」(荒川化学工業株式会社製、不均化ロジンエステル)20質量部と、「FTR6100」(三井化学株式会社製、石油樹脂)25質量部とを混合し、さらに酢酸エチルを加えることによって固形分40質量%に調整された粘着剤溶液を得た。
上記粘着剤溶液と、「NC40」(DIC株式会社製、イソシアネート系架橋剤)1.2質量部とを混合し撹拌することによって、粘着剤(b-1)を得た。
上記粘着剤(b-1)を用いて得られた粘着剤層のtanδのピーク温度は0℃であり、そのゲル分率は20質量%であった。」(段落0168~0171)
ウ 接着シート(X-1)(実施例1)について
(ア)ポリイミドフィルムの両面に熱硬化性膨張性接着層(A-1)が積層された接着シート(x-1)の形成について
「上記調整例1で得た熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)を、離型ライナー(厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面がシリコーン化合物によって剥離処理されたもの)の表面に、棒状の金属アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが62μmになるように塗工し、上記塗工物を85℃の乾燥機に5分間投入し乾燥することによって、厚さ62μmのシート状の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)が離型ライナーの片面に形成されたシートを得た。該シートを2つ作成した。
上記で得た2つのシートのうち、一方のシートの熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の表面に、厚さ25μmのポリイミドフィルムを重ね、予め50℃に加熱したラミネーターで線圧3N/mmで貼付し、上記熱硬化性膨張性接着層(A-1)の片面にポリイミドフィルムを積層した。
次に、上記積層体のポリイミドフィルム側に、もう一方のシートの上記熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)を重ね、予め50℃に加熱したラミネーターで線圧3N/mmで貼付することで、ポリイミドフィルムの両面に熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)が積層された厚さ149μm(離型ライナーの厚さ除く。以下同様。)の接着シート(x-1)を得た。」(段落0172~0173)
(イ)剥離ライナーの表面における粘着部(B-1)の形成について
「次に、離型ライナー(厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面がシリコーン化合物によって剥離処理されたもの)の表面に、グラビアコーターを用いて、上記粘着剤(b-1)をドット印刷し、85℃で2分間乾燥させることによって、厚さ3μm、1個当たりの面積が0.5mm2の略円・・・状の粘着部(B-1)を複数形成した。2以上の粘着部(B-1)から選択される任意の粘着部(b1)と、上記粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との最短距離は、0.2mmであった。」(段落0174)
(ウ)熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)に粘着部(B-1)が積層された接着シート(X-1)の形成について
「次に、上記接着シート(x-1)の一方の面の離型ライナーを剥がし、上記接着シート(x-1)の一方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)と、上記粘着部(B-1)とを重ね、23℃のラミネーターで線圧3N/mmで貼付することで、接着シート(X-1)を得た。」(段落0175)
(エ)接着シート(X-1)の構造について
「上記接着シート(X-1)の総厚みは152μmであり、上記粘着部(B-1)は、上記熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の一方の面上に積層された状態であった。すなわち、図1(a)に例示したように、接着シート(X-1)の厚さ方向において、粘着部(B-1)の第1面が、一方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の第1の主面より外側に位置し、粘着部(B-1)の第2面が、一方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の第1の主面と接していた。上記接着シート(X-1)の第1の主面の面積に占める、上記粘着部(B-1)の面積の総和の割合は60%であった。」(段落0176)
エ 接着シート(X-2)(実施例2)について
「上記接着シート(x-1)の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)と、上記粘着部(B-1)を重ね、貼付する際のラミネート温度を23℃から50℃に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で接着シート(X-2)を得た。2以上の粘着部(B-1)から選択される任意の粘着部(b1)と、上記粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との最短距離は、0.2mmであった。
上記接着シート(X-2)の総厚みは149μmであり、上記粘着部(B-1)は、上記熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の一方の面に埋め込まれた状態であった。すなわち、図3に例示したように、接着シート(X-2)の厚さ方向において、粘着部(B-1)の第1面が、一方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の第1の主面と同じ位置であり、粘着部(B-1)の第2面が、一方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の第1の主面と第2の主面との間に位置した。上記接着シート(X-2)の第1の主面の面積に占める、上記粘着部(B-1)の面積の総和の割合は60%であった。」(段落0178~0179)
オ 接着シート(X’-2)(比較例2)について
「上記実施例1で得た接着シート(x-1)を接着シート(X‘-2)として評価した。」(段落0196)
「また、接着シートの第1の主面において熱膨張性熱硬化型接着層の表面に粘着部を設けない比較例2では、膨張後の常温及び高温接着力が実施例の接着シートと同等に高かったが、膨張前の仮固定性が得られなかった上、挿入性の評価では試験サンプルを通過させる際に接着シートが剥がれたことに起因して試験サンプルの挿入が阻害され、挿入性も得られなかった。」(段落0215)
カ 粘着剤の種類について
「粘着部を構成する粘着剤組成物は、常温(23℃)において優れた初期接着力(粘着力)を有し、且つ、本発明の接着シートを加熱膨張させた後であっても優れた接着力を発現できるものを使用することが好ましい。このような粘着剤組成物としては、接着樹脂を少なくとも含む組成物が挙げられる。
粘着剤組成物に含有される接着樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等を使用することができる。」(段落0115~0116)
キ tanδのピーク温度の測定方法について
「粘着部の周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルに基づく損失正接は、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用い、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、周波数1Hzでの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)とを測定し、tanδ=(G’’)/(G’)で表される式により算出される。また、上記ピーク温度は、測定温度領域(-50℃から150℃)に対するtanδのスペクトルで確認されたピーク温度を指す。上記試験片としては、上記粘着部の形成に使用する粘着剤を用いて形成された、厚さ0.5mm~2.5mmの粘着剤層を使用することができる。」(段落0098)
ク 膨張剤(膨張性カプセル)について
「また、上記膨張剤としては、例えば炭化水素系溶剤をマイクロカプセル化した膨張性カプセル等を使用することができる。」(段落0087)
(3)前記(2)ア~エ及びキの摘記事項からみて、甲1には以下の発明(以下、接着シート(X-1)に対応する発明を「先願発明A」、接着シート(X-2)に対応する発明を「先願発明B」といい、両者を合わせて「先願発明」ともいう。)が記載されていると認める。
<先願発明A>
「ポリイミドフィルムの両面に熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)が積層され、その一方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の第1の主面上に、略円状の複数の粘着部(B-1)が積層された接着シート(X-1)であって、
前記熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)は、エポキシ樹脂1(BPA型、エポキシ当量8,000g/eq.、固形(25℃)、軟化点200℃以上)を35質量部と、エポキシ樹脂2(変性BPA型、エポキシ当量400g/eq.、140万mPa・s(25℃))を7質量部と、エポキシ樹脂3(ジシクロペンタジエン型、エポキシ当量280g/eq.、固形(25℃)、軟化点100℃)を58質量部と、硬化剤1(ジシアンジアミド、固形)を3.8質量部と、硬化剤2(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、固形)を3質量部と、膨張剤1(熱膨張カプセル、膨張開始温度125℃、固形)を1質量部とをメチルエチルケトン60質量部に溶解することによって調製した、熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)を、剥離シート上に塗工し、85℃で乾燥することによって形成された後、ポリイミドフィルムに50℃で圧着して積層されたものであり、
前記略円状の複数の粘着部(B-1)は、n-ブチルアクリレート97.98質量部と、アクリル酸2質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.02質量部とを、アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部を重合開始剤として、酢酸エチル溶液中で溶液重合させることによって、重量平均分子量50万のアクリル重合体を得て、そのアクリル重合体100質量部に対し、「D-135」(荒川化学工業株式会社製、重合ロジンエステル)5質量部と、「KE-100」(荒川化学工業株式会社製、不均化ロジンエステル)20質量部と、「FTR6100」(三井化学株式会社製、石油樹脂)25質量部とを混合し、さらに酢酸エチルを加えることによって、固形分40質量%に調整された粘着剤溶液を得て、その粘着剤溶液と、「NC40」(DIC株式会社製、イソシアネート系架橋剤)1.2質量部とを混合し撹拌することによって得た、粘着剤(b-1)を、離型ライナーの表面にドット印刷し、85℃で乾燥させることによって形成された後、熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)に23℃で圧着して積層されたものであって、その粘着剤層のtanδ(周波数1Hzでの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)とを測定し、tanδ=(G’’)/(G’)で表される式により算出される値)のピーク温度(測定温度領域(-50℃から150℃)に対するスペクトルで確認されたピーク温度)は0℃であり、
接着シート(X-1)の厚さ方向において、粘着部(B-1)の第1面が、一方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の第1の主面より外側に位置し、粘着部(B-1)の第2面が、一方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の第1の主面と接し、接着シート(X-1)の第1の主面の面積に占める、粘着部(B-1)の面積の総和の割合が60%である、
接着シート(X-1)」
<先願発明B>
「ポリイミドフィルムの両面に熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)が積層され、その一方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の第1の主面上に、略円状の複数の粘着部(B-1)が積層された接着シート(X-2)であって、
前記熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)は、エポキシ樹脂1(BPA型、エポキシ当量8,000g/eq.、固形(25℃)、軟化点200℃以上)を35質量部と、エポキシ樹脂2(変性BPA型、エポキシ当量400g/eq.、140万mPa・s(25℃))を7質量部と、エポキシ樹脂3(ジシクロペンタジエン型、エポキシ当量280g/eq.、固形(25℃)、軟化点100℃)を58質量部と、硬化剤1(ジシアンジアミド、固形)を3.8質量部と、硬化剤2(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、固形)を3質量部と、膨張剤1(熱膨張カプセル、膨張開始温度125℃、固形)を1質量部とをメチルエチルケトン60質量部に溶解することによって調製した、熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)を、剥離シート上に塗工し、85℃で乾燥することによって形成された後、ポリイミドフィルムに50℃で圧着して積層されたものであり、
前記略円状の複数の粘着部(B-1)は、n-ブチルアクリレート97.98質量部と、アクリル酸2質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.02質量部とを、アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部を重合開始剤として、酢酸エチル溶液中で溶液重合させることによって、重量平均分子量50万のアクリル重合体を得て、そのアクリル重合体100質量部に対し、「D-135」(荒川化学工業株式会社製、重合ロジンエステル)5質量部と、「KE-100」(荒川化学工業株式会社製、不均化ロジンエステル)20質量部と、「FTR6100」(三井化学株式会社製、石油樹脂)25質量部とを混合し、さらに酢酸エチルを加えることによって、固形分40質量%に調整された粘着剤溶液を得て、その粘着剤溶液と、「NC40」(DIC株式会社製、イソシアネート系架橋剤)1.2質量部とを混合し撹拌することによって得た、粘着剤(b-1)を、離型ライナーの表面にドット印刷し、85℃で乾燥させることによって形成された後、熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)に50℃で圧着して積層されたものであって、その粘着剤層のtanδ(周波数1Hzでの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)とを測定し、tanδ=(G’’)/(G’)で表される式により算出される値)のピーク温度(測定温度領域(-50℃から150℃)に対するスペクトルで確認されたピーク温度)は0℃であり、
接着シート(X-2)の厚さ方向において、粘着部(B-1)の第1面が、一方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の第1の主面と同じ位置であり、粘着部(B-1)の第2面が、一方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の第1の主面と第2の主面との間に位置し、接着シート(X-2)の第1の主面の面積に占める、粘着部(B-1)の面積の総和の割合が60%である、
接着シート(X-2)」
2 対比・判断
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と先願発明とを対比する。
(ア)先願発明の「熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)」及びそれを有する「接着シート(X-2)」は、本件訂正発明1の「接着剤層(A1L)」及び「接着剤層(A1L)を有する接着シート」に相当する。また、先願発明の「熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)」は、不揮発成分である「エポキシ樹脂1(BPA型)」、「エポキシ樹脂2(変性BPA型)」、「エポキシ樹脂3(ジシクロペンタジエン型)」及び「膨張剤1(熱膨張カプセル)」を含む「熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)」を乾燥して形成したものであるから、先願発明の「熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)」が、前記各エポキシ樹脂と熱膨張カプセルを含むことは明らかであり、「前記接着剤層(A1L)が感温性発泡剤を更に含み」、「前記感温性発泡剤が、熱膨張性カプセルであ」ることを充足する。
(イ)先願発明の「粘着剤(b-1)」は、本件訂正発明1の「粘着剤(A2)」に相当し、先願発明の「粘着剤(b-1)」から形成された、「熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の第1の主面上」の「略円状の複数の粘着部(B-1)」は、本件訂正発明1の「前記接着剤層(A1L)の少なくとも一方の面に、粘着剤(A2)を部分的に設けることにより形成された粘着剤領域(A2R)」に相当する。また、先願発明の「熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の第1の主面上」の「略円状の複数の粘着部(B-1)」以外の領域は、何も積層されておらず、熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)が露出していることは明らかであるから、本件訂正発明1の「前記面において前記粘着剤領域(A2R)が形成されていない領域は、前記接着剤層(A1L)の面が露出している接着剤層露出領域である」ことに相当する。
(ウ)先願発明の「粘着剤(b-1)」は、「アクリル重合体」から調製された「粘着剤溶液」と、「NC40」(イソシアネート系架橋剤)とを混合して得たもの」、すなわちアクリル系粘着剤であり、その点は、本件訂正発明1の「前記粘着剤(A2)が、アクリル系粘着剤を含む群から選択され」ることに相当する。
(エ)してみると、本件訂正発明1と先願発明とは、次の一致点、相違点を有する。
<一致点>
「接着剤層(A1L)を有する接着シートであって、
前記接着剤層(A1L)がエポキシ樹脂を含み、
前記接着剤層(A1L)が感温性発泡剤を更に含み
前記感温性発泡剤が、熱膨張性カプセルであり、
前記接着剤層(A1L)の少なくとも一方の面に、粘着剤(A2)を部分的に設けることにより形成された粘着剤領域(A2R)を有し、
前記粘着剤(A2)が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択され、
前記面において前記粘着剤領域(A2R)が形成されていない領域は、前記接着剤層(A1L)の面が露出している接着剤層露出領域(A1LR)である接着シート。」
で一致し、以下の点で一応相違する。
<相違点1>
本件訂正発明1は、接着剤層(A1L)のtanδのピーク温度が18℃以上(ただし、tanδは、周波数10Hz、-20℃~100℃において測定した貯蔵弾性率に対する損失弾性率の割合の値)であるのに対して、先願発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点2>
本件訂正発明1は、熱膨張性カプセルが、マイクロカプセルであるのに対して、先願発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点3-1>
(本件訂正発明1の粘着剤(A2)が、アクリル系粘着剤である場合)
本件訂正発明1は、前記アクリル粘着剤の前記tanδのピーク温度が2℃以上20℃以下(ただし、前記tanδは、周波数10Hz、-20℃~100℃において測定した貯蔵弾性率に対する損失弾性率の割合の値)であるのに対して、先願発明は、アクリル系粘着剤のtanδのピーク温度が0℃(ただし、tanδは、周波数1Hz、-50℃から150℃において測定した貯蔵弾性率(G’)に対する損失弾性率(G’’)の割合の値)である点。
<相違点3-2>
(本件訂正発明1の粘着剤(A2)が、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤又はそれらの任意の組み合わせである場合)
本件訂正発明1は、粘着剤(A2)が、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤又はそれらの任意の組み合わせであり、前記ゴム系粘着剤の前記tanδのピーク温度が-20℃以上-10℃以下、前記シリコーン系粘着剤の前記tanδのピーク温度が70℃以下(ただし、前記tanδは、周波数10Hz、-20℃~100℃において測定した貯蔵弾性率に対する損失弾性率の割合の値)であるのに対して、先願発明は、粘着剤がアクリル系粘着剤である点。
イ 相違点についての検討
はじめに、相違点1について検討する。
先願明細書等には、本件訂正発明1の接着剤層(A1L)に相当する先願発明の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)及びその層を形成するために用いる熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)について、本件訂正発明1で定義されるtanδ(以下、単に「tanδ」という。)のピーク温度は記載されていない。
先願発明の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)は、「エポキシ樹脂1(BPA型、エポキシ当量8,000g/eq.、固形(25℃)、軟化点200℃以上)を35質量部と、エポキシ樹脂2(変性BPA型、エポキシ当量400g/eq.、140万mPa・s(25℃))を7質量部と、エポキシ樹脂3(ジシクロペンタジエン型、エポキシ当量280g/eq.、固形(25℃)、軟化点100℃)を58質量部と、硬化剤1(ジシアンジアミド、固形)を3.8質量部と、硬化剤2(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、固形)を3質量部と、膨張剤1(熱膨張カプセル、膨張開始温度125℃、固形)を1質量部とをメチルエチルケトン60質量部に溶解することによって調製した」「熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)」を「剥離シート上に塗工し、85℃で乾燥し、ポリイミドフィルムに50℃で圧着して積層された」ものである。
すなわち、先願発明の熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)は、溶媒であるメチルエチルケトンと、25℃で高粘性(粘度140万mPa・s)のエポキシ樹脂2(変性BPA型)を少量(エポキシ樹脂1~3の合計量の7(=7/(35+7+58)×100)質量%)で含むことを除き、含有成分はいずれも25℃で固形であり、また、熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)を形成するために、当該組成物(a-1)を剥離シート上に塗工し、85℃で乾燥し、ポリイミドフィルムに50℃で圧着することで、溶媒であるメチルエチルケトンの揮散とともに、エポキシ樹脂の硬化が進み、固体状の指標であるtanδのピーク温度が高温側にシフトするものと推測される。
しかしながら、「固形(25℃)」との表現をもって直ちにtanδのピーク温度が25℃以上であると解せるような本件特許明細書の記載や本件出願時の技術常識は見当たらず、仮にそうであったとしても、前記熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)の含有成分の大部分が25℃で固形であることをもって、当該組成物のtanδのピーク温度が25℃以上、少なくとも18℃以上であることが技術常識から明らかとまではいえない。さらに、前記のとおり、当該組成物を塗工、85℃で乾燥、50℃で圧着することで、tanδのピーク温度が高温側にシフトすることが推測されるとしても、そのように高温側にシフトしたtanδのピーク温度が18℃以上であることが明らかとはいえない。
したがって、相違点1は実質的な相違点である。
ウ 小括
以上のとおりであるから、前記相違点2、3-1、3-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、先願明細書等に記載された発明と同一ではないし、実質的に同一でもない。
(2)本件訂正発明2~6について
本件訂正発明2~6は、本件訂正発明1を包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、前記(1)で検討したのと同様の理由により、先願明細書等に記載された発明と同一ではないし、実質的に同一でもない。
3 申立人の主張について
申立人は、令和8年3月23日提出の意見書において、前記相違点1について、「先願発明の「熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)」は、25℃において固体でない成分である「エポキシ樹脂2(変性BPA)」をエポキシ樹脂全体中わずか「7質量%」しか含んでなく、エポキシ樹脂全体中の「93質量%」という圧倒的な量は固体のエポキシ樹脂が占めるのである。即ち、「93質量%」の内訳としては、「エポキシ樹脂1(BPA型 、エポキシ当量8,000g・eq.、固形(25℃)、軟化点200℃以上)」が「35質量%」、「エポキシ樹脂3(ジシクロペンタジエン型 、エポキシ当量 280g/eq.、固形 (25℃)、軟化点100℃)が「58質量%」である。
そうすると、先願発明の「熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)」を乾燥し、溶媒除去して得られた「熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)」は、25℃やそれより低温の18℃において固体状である蓋然性が高いとの判断は、極めて技術的合理性があり、特許権者の主張は失当であると言わざるを得ないと考える。」と主張している。
しかしながら、前記申立人の主張は、本件訂正後の「接着剤層(A1L)」が「周波数10Hz、-20℃~100℃において測定した貯蔵弾性率に対する損失弾性率の割合の値であるtanδのピーク温度が18℃以上」との特定事項に基づくものではない。そして、当該特定事項は、前記2(1)イで相違点1として検討したとおり、先願発明との実質的な相違点である。
よって、前記申立人の主張は採用できない。
4 取消理由(拡大先願)についてのまとめ
以上から、本件特許の請求項1~6に係る発明は、先願明細書等に記載された発明と同一ではないし、実質的に同一でもないから、それらの発明に係る特許は、特許法第29条の2の規定(同法第184条の13及び同法第41条第3項参照)に違反してされたものではない。
したがって、本件特許の請求項1~6に係る特許は、取消理由(拡大先願)によって、取り消すことはできない。
第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由について
本件特許の請求項1~6に係る特許に対して、取消理由において採用しなかった特許異議申立ての理由はない。
第7 むすび
前記第5及び第6のとおり、本件特許の請求項1~6に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。さらに、他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700772