特許異議申立
2023-700571
包装材、包装容器及び蓋体
- 審判番号
- 2023-700571
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-024133
- 登録番号
- 7187779
- 請求日
- 2023年06月02日
- 審決日
- 2023年09月22日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
- 【権利者代理人】平澤 賢一
- 【権利者代理人】中谷 将之
- 【異議申立人】柏木 香陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 山崎 勝司
- 審判官 ▲高▼橋 杏子
- 審判官 西本 浩司
- 分類
- P1651.121-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7187779号発明「包装材、包装容器及び蓋体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7187779号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7187779号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成30年2月14日に出願され、令和4年12月5日にその特許権の設定登録がされ、令和4年12月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年6月2日に特許異議申立人柏木香陽子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7187779号の請求項1~10の特許に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」といい、その他の請求項に係る発明も同様に称する。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
プラスチックフィルム、絵柄層及びシーラント層が、この順に外層側から積層されている構成を備えた包装材であって、前記絵柄層の少なくとも一部の領域は、バインダー樹脂及び金属鱗片を含む光輝性印刷層と有彩色下地層とがこの順に外層側から積層されている構成を備え、
前記金属鱗片が、アルミニウム、銀、チタン、ニッケル、ステンレス、及びこれらの合金の中から選択される少なくとも1種からなる鱗片であり、前記有彩色下地層が黄色層であり、
前記光輝性印刷層内の前記金属鱗片以外の380nm以上の大きさの粒子の含有量が、前記光輝性印刷層の全固形分の1質量%以下であり、前記光輝性印刷層が、平均一次粒子径が1nm以上100nm未満の無機粒子を含む、包装材。
【請求項2】
前記金属鱗片がノンリーフィングタイプの金属鱗片である、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記金属鱗片が、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる鱗片である、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項4】
電子レンジ用である、請求項1~3の何れか1項に記載の包装材。
【請求項5】
少なくとも一部が、請求項1~3の何れか1項に記載された包装材で形成されている包装容器。
【請求項6】
前記包装容器がパウチである、請求項5に記載の包装容器。
【請求項7】
収容部を有する容器本体と、前記収容部を封止するように前記容器本体に接合された蓋体とを備えた蓋付容器であり、前記蓋体が前記包装材で形成されている、請求項5に記載の包装容器。
【請求項8】
電子レンジ用である、請求項5~7の何れか1項に記載の包装容器。
【請求項9】
レトルト容器である、請求項5~8の何れか1項に記載の包装容器。
【請求項10】
請求項1~3の何れか1項に記載の包装材で形成されている蓋体。」
第3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として以下の甲第2号証及び従たる証拠として以下の甲第1号証、甲第3号証を提出し、請求項1~10に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~10に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
[証拠方法]
・甲第1号証:特開平9-226825号公報
・甲第2号証:特開2008-137343号公報
・甲第3号証:特開2014-73676号公報
(以下、甲第1号証を「甲1」という。他の甲各号証についても、同様である。)
第4 当審の判断
1 甲1~3に記載された事項・発明
(1)甲2
ア 甲2には、次の事項が記載されている。下線は、理解の便宜のため、当審が付した。以下同様である。
「【請求項1】
透明フィルムの片面に、光透過性を有する金属光沢層と、着色層とを、この順に積層したことを特徴とする金属光沢フィルム。
【請求項2】
透明フィルムの片面に、金属粉を含むインキを印刷して金属光沢層を形成したことを特徴とする請求項1に記載の金属光沢フィルム。
【請求項3】
熱可塑性樹脂シートの少なくとも片面に、請求項1または2に記載の金属光沢フィルムを、金属光沢層と着色層とが形成された側の面を接触させた状態で積層したことを特徴とする熱成形用シート。
【請求項4】
請求項3に記載の熱成形用シートを、熱成形して形成されたことを特徴とする包装用容器。」
「【0015】
本発明の金属光沢フィルムは、透明フィルムの片面に、光透過性を有する金属光沢層と、着色層とを、この順に積層したことを特徴とするものである。前記透明フィルムとしては、従来公知の、種々の透明フィルムが、いずれも使用可能である。前記透明フィルムとしては、例えば、ポリスチレン系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム等の、透明性の高いフィルムが挙げられる。」
「【0020】
印刷法によって形成する金属光沢層の場合に、その元になるインキに含有させる金属粉としては、例えばアルミニウムペーストやアルミニウム粉、銀粉、金粉、銅粉、青銅粉その他の金属や合金の粉末、金属蒸着細片等の、金属光沢成分として従来公知の、種々の形態を有する金属粉が、いずれも使用可能である。また、例えば黄色や赤色の着色剤をブレンドして色調を調整した金属粉を用いることもできる。前記金属粉を含むインキとしては、透明フィルムを形成する樹脂の表面に印刷することができる、油性もしくは水性の種々のインキが、いずれも使用可能である。
【0021】
金属粉を含むインキを印刷するための印刷法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等の、種々の印刷方法が、いずれも採用できる。金属光沢層は、透明フィルムの片面の全面にベタ印刷して形成してもよいし、積層される着色層のパターンに合わせて、任意のメタリック効果が出るように、所定の平面形状にパターン印刷して形成してもよい。印刷法によれば、任意のパターン印刷が、極めて容易に行えるという利点もある。一方、蒸着法によって形成する金属光沢層をパターン化するためには、透明フィルムの片面に、形成するパターンに合わせたマスクを重ねた状態で、金属蒸着層を薄付けして金属光沢層を形成すればよい。
【0022】
着色層は、任意の色目に調色されたインキを、前記金属光沢層上の全面にベタ印刷するか、もしくは所定の平面形状にパターン印刷して形成することができる。前記インキとしては、透明フィルムを形成する樹脂や、金属光沢層を形成する樹脂および/または金属の表面に印刷することができる、油性もしくは水性の種々のインキが、いずれも使用可能である。着色層は、積層する熱可塑性樹脂シートの色目を隠蔽するために、不透明であってもよいし、積層する熱可塑性樹脂シートの色目を合わせて、さらに複雑な色調を表現するために透明または半透明であってもよい。また、着色層は、1層のみ形成してもよいし、色目および平面形状の異なる2層以上を積層してもよい。積層する各着色層は、透明、半透明、不透明のいずれかを、任意に選択してもよい。着色層を形成するための印刷法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等の、種々の印刷方法が、いずれも採用できる。」
「【0025】
熱可塑性樹脂シートの少なくとも片面に、金属光沢フィルムを積層するためには、従来公知の、種々のラミネート方法が、いずれも採用可能である。前記ラミネート方法としては、例えば押出成形直後の、未だ溶融状態の熱可塑性樹脂シートの少なくとも片面に、あらかじめ作製しておいた金属光沢フィルムを重ねることで熱溶着させて積層する押出ラミネート法や、あらかじめ作製しておいた熱可塑性樹脂シートの少なくとも片面に、金属光沢フィルムを重ねた状態で、一対の熱ロール間を通すことで熱溶着させて積層する熱ラミネート法、あるいは低温で、糊剤を用いて、熱可塑性樹脂シートの少なくとも片面に、金属光沢フィルムを積層するドライラミネート法等が挙げられる。」
「【0029】
<<金属光沢フィルムの製造>>
<実施例1>
透明フィルムとして、厚み25μm、ヘーズ値1.8%のポリスチレンフィルム〔旭化成(株)製のOPSフィルム〕を使用し、前記透明フィルムの片面の全面に、網グラビアベタ版(彫刻製版200線、深度25μm)を用いたグラビア印刷法によって、金属光沢層用の高輝度銀インキ〔アクリル樹脂系、大日本インキ化学工業(株)製のファインラップ(登録商標)スーパーメタリックシルバー〕をベタ印刷して金属光沢層を形成した。前記金属光沢層の全光線透過率を、先に説明したJIS K7361-1:1997に則って測定したところ35%であった。
【0030】
次に、前記金属光沢層の上の全面に、同仕様の網グラビアベタ版を用いたグラビア印刷法によって、黄色インキ〔アクリル樹脂系、大日本インキ化学工業(株)製のSTC-TL 407B中黄〕をベタ印刷して着色層を形成して、本発明にかかる実施例1の金属光沢フィルムを製造した。製造した金属光沢フィルムを、透明フィルムの側から観察したところ、従来の金属光沢フィルムでは得られなかった透明感のあるゴールド調の色彩が見られ、また、見る角度によっては銀が強く、角度を変えると金が強く見える効果があることが確認された。」
「【0033】
<<熱成形用シートの製造>>
<実施例2、比較例2>
実施例1で製造した金属光沢フィルムと、厚み0.6mmのポリスチレン系樹脂シートとを、押出ラミネート法によって積層して、実施例2の熱成形用シートを製造した。すなわち、前記ポリスチレン系樹脂シートを、Tダイ法によって、樹脂温度220℃で押出成形しながら、押出成形直後の、未だ溶融状態のポリスチレン系樹脂シートの片面に、金属光沢フィルムの、金属光沢層と着色層とが形成された側の面を重ね合わせることで熱溶着させて、実施例2の熱成形用シートを製造した。また、比較例1で製造した金属光沢フィルムを使用したこと以外は実施例2と同様にして、比較例2の熱成形用シートを製造した。」
「【0036】
<<包装用容器の製造>>
<実施例3>
実施例2で製造した熱成形用シートを真空圧空成形して、包装用容器としての簡易食品容器を製造した。そして、外観を観察したところ、従来の金属光沢フィルムでは得られなかった透明感のあるゴールド調の色彩が見られ、また、見る角度によっては銀が強く、角度を変えると金が強く見える、高級感のある金食器の風合いを出すことができた。また、金属光沢フィルムの着色層を、黄色インキに代えてワインレッド色のインキを用いて形成した場合には、メタリックレッド調の色彩が見られ、この場合にも、見る角度によっては銀が強く見える効果が得られることが確認された。」
イ 甲2に記載された発明
上記(1)ア、特に、実施例1、実施例2に関する記載を総合すると、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「透明フィルムとして、厚み25μm、ヘーズ値1.8%のポリスチレンフィルム〔旭化成(株)製のOPSフィルム〕を使用し、
前記透明フィルムの片面の全面に、網グラビアベタ版(彫刻製版200線、深度25μm)を用いたグラビア印刷法によって、金属光沢層用の高輝度銀インキ〔アクリル樹脂系、大日本インキ化学工業(株)製のファインラップ(登録商標)スーパーメタリックシルバー〕をベタ印刷して金属光沢層を形成し、
次に、前記金属光沢層の上の全面に、同仕様の網グラビアベタ版を用いたグラビア印刷法によって、黄色インキ〔アクリル樹脂系、大日本インキ化学工業(株)製のSTC-TL 407B中黄〕をベタ印刷して着色層を形成して、金属光沢フィルムを製造し、
厚み0.6mmのポリスチレン系樹脂シートに、前記金属光沢フィルムの、金属光沢層と着色層とが形成された側の面を重ね合わせることで熱溶着させて製造した、
熱成形用シート。」
(2)甲1
ア 甲1には、次の事項が記載されている。
「【0008】【課題を解決するための手段】本発明は、プラスチックフィルム又はシート上に、アルミニウム顔料を含むインキを用いた印刷によるコーティング層を形成させた、電子レンジによる加熱調理に適した包装用プラスチックフィルム及びプラスチックシートに関わるものである。
【0009】本発明における必須の条件としては印刷に用いられるインキの顔料としてアルミニウム顔料を使用する事があげられる。プラスチックフィルム上に印刷により形成されたコーティング層は通常膜厚が0.5~2ミクロン程度の層であり、インキのバインダー樹脂中に細かい鱗片状のアルミニウムフレークが幾重にも層をなして分散した構造になっている。通常印刷においてアルミニウム顔料を使用すると、このアルミニウムフレーク層部分によって電磁波である可視光や赤外線を遮断する効果が得られる。発明者らはこの点に着目し鋭意検討の結果、顔料としてアルミニウムを用いたインキによってプラスチックフィルム表面に印刷によるコーティングを行い、このフィルムを食品包装材として使用することによって、電子レンジにおけるマイクロ波を高度に遮断する事が可能である事をつきとめ、本発明に至った。」
「【0018】またアルミニウム顔料は印刷後のコーティング層におけるアルミニウム粒子の配列の仕方から、塗膜表面に集中的にアルミニウムフレーク粒子が配列するリーフィングタイプと、塗膜全体に分散配列するノンリーフィングタイプの2つに分けられるが、いずれのタイプも使用可能である。しかしリーフィングタイプはラミネートした場合、塗膜表面で層間剥離を起こしやすいためノンリーフィングタイプの方が好ましい。」
イ 甲1に記載された技術的事項
上記(2)アの記載を総合すると、甲1には、次の技術的事項(以下「甲1に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「プラスチックフィルム又はシート上に、インキを用いた印刷によりコーティング層を形成させた包装用プラスチックフィルムであって、前記コーティング層はインキのバインダー樹脂中に細かい鱗片状のアルミニウムフレークが幾重にも層をなして分散した構造になっている包装用プラスチックフィルム。」
(3)甲3
ア 甲3には、次の事項が記載されている。「・・・」は文章の省略を示す。
「【請求項1】
着色層の上に、
合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、
平均粒子径1nm以上200nm未満の水分散性シリカを固形分重量比率で0.005重量部以上50重量部以下、
平均粒子径100nm以上300μm以下の光輝性顔料を0.01重量部以上100重量部以下含む光輝層用組成物により形成される光輝層、
を積層したことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記着色層は、平均粒子径0.01mm以上5mm以下の着色粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体。」
「【0020】
本発明における光輝性顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク顔料、蒸着アルミニウムフレーク顔料、金属酸化物被覆アルミニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料、金属酸化物被覆マイカ顔料、金属酸化物被覆合成マイカ顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、金属被覆ガラスフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料、金属酸化物被覆板状酸化鉄、グラファイト、ステンレスフレーク、金属チタンフレーク顔料、板状硫化モリブデン、板状塩化ビスマス、ホログラム顔料、コレステリック液晶ポリマー、金属蒸着高分子フィルムの破砕品等が挙げられる。
本発明では、光輝性顔料としては、平均粒子径が100nm以上300μm以下(好ましくは500nm以上250μm以下、より好ましくは1μm以上200μm未満、さらに好ましくは2μm以上190μm以下)のものを、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し0.01重量部以上100重量部以下(好ましくは0.05重量部以上80重量部以下、さらに好ましくは0.1重量部以上60重量部以下)混合して用いることを特徴とするものである。このような範囲であることにより、着色粒子による意匠性を有しつつ、光輝性顔料のキラキラ感が現れ、高級感のある優れた美観性を付与することができる。
なお、光輝性顔料の平均粒子径は、フィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(「FE-SEMS-4100」株式会社日立製作所製)等によって測定することができる。」
「【0022】
本発明における合成樹脂エマルションは、光輝性顔料等を固定化する役割を担う。このような合成樹脂エマルションとしては、例えば、各種重合性モノマーを共重合することにより得ることができる。・・・」
「【0023】
合成樹脂エマルションの最低造膜温度は、適宜設定することができるが、通常は80℃以下、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。最低造膜温度がこのような範囲内であれば、耐割れ性等の塗膜物性を確保しつつ、耐汚染性を発揮させることが可能となる。
また、合成樹脂エマルションの平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは5nm以上400nm以下、より好ましくは10nm以上300nm以下、さらに好ましくは50nm以上250nm以下、最も好ましくは80nm以上180nm以下である。特に、本発明の合成樹脂エマルションの平均粒子径は、上記光輝性顔料よりも小さく、上記水分散性シリカよりも大きいことが好ましく、このような場合は、奥行き感が表出しやすく、より優れた意匠を形成することができる。
なお、合成樹脂エマルションの平均粒子径は、動的光散乱法によって測定される値である。具体的には、動的光散乱測定装置(「LB-550」株式会社堀場製作所製)等を用いて測定することができる。(測定温度は25℃。)」
イ 甲3に記載された技術的事項
上記(3)アの記載を総合すると、甲3には、次の技術的事項が記載されていると認められる(以下「甲3に記載された技術的事項」という。)。
「着色層の上に、合成樹脂エマルション、平均粒子径1nm以上200nm未満の水分散性シリカ、平均粒子径100nm以上300μm以下のアルミニウムフレーク顔料、金属チタンフレーク顔料等の光輝性顔料を含む光輝層用組成物により形成される光輝層を積層した積層体であって、合成樹脂エマルションの平均粒子径は、好ましくは5nm以上400nm以下、より好ましくは10nm以上300nm以下、さらに好ましくは50nm以上250nm以下、最も好ましくは80nm以上180nm以下である、積層体。」
2 対比
本件発明1と甲2発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲2発明における「透明フィルム」としての「ポリスチレンフィルム」は、本件発明1における「プラスチックフィルム」に相当する。
甲2発明における「金属光沢層用の高輝度銀インキ〔アクリル樹脂系、大日本インキ化学工業(株)製のファインラップ(登録商標)スーパーメタリックシルバー〕をベタ印刷し」た「金属光沢層」は、メタリック効果を付与するものであるので(【0021】)、本件発明1の「光輝性印刷層」に相当する。
甲2発明における「黄色インキ〔アクリル樹脂系、大日本インキ化学工業(株)製のSTC-TL 407B中黄〕をベタ印刷し」た「着色層」は、本件発明1の「黄色層」である「有彩色下地層」に相当する。
甲2発明における「前記金属光沢層の上の全面に、同仕様の網グラビアベタ版を用いたグラビア印刷法によって、黄色インキ〔アクリル樹脂系、大日本インキ化学工業(株)製のSTC-TL 407B中黄〕をベタ印刷して着色層を形成し」ている構成と、本件発明1の「光輝性印刷層と有彩色下地層とがこの順に外層側から積層されている構成」とは、「光輝性印刷層と有彩色下地層とがこの順に積層されている構成」との限りで一致する。
甲2発明における「包装用容器を形成するために用いる熱成形用シート」は、本件発明1における「包装材」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「プラスチックフィルムを備えた包装材であって、光輝性印刷層と有彩色下地層とがこの順に積層されている構成を備え、前記有彩色下地層が黄色層である、包装材。」
[相違点1]
プラスチックフィルムを備えた包装材について、本件発明1は、「プラスチックフィルム、絵柄層及びシーラント層が、この順に外層側から積層されている構成を備え」、「絵柄層の少なくとも一部の領域」が、「光輝性印刷層」と「有彩色下地層」とを「この順に外層側から積層されている構成を備え」ているのに対して、甲2発明は、「ポリスチレンフィルム」、「金属光沢層」、「着色層」はこの順に積層されるものの、「ポリスチレンフィルム」と「着色層」のいずれが外側をなすのか特定されておらず、さらに、シーラント層を有しておらず、さらに「金属光沢層」と「着色層」とが絵柄層をなすものであるのかも不明である点。
[相違点2]
「光輝性印刷層」が、本件発明1は、「バインダー樹脂」を含むのに対し、甲2発明は、バインダー樹脂を含むかどうか不明である点。
[相違点3]
「光輝性印刷層」が、本件発明1は、「アルミニウム、銀、チタン、ニッケル、ステンレス、及びこれらの合金の中から選択される少なくとも1種からなる鱗片」である「金属鱗片」を含み、「金属鱗片以外の380nm以上の大きさの粒子の含有量が、前記光輝性印刷層の全固形分の1質量%以下である」のに対し、甲2発明は、金属鱗片を含むかどうかは不明であり、金属鱗片以外の380nm以上の大きさの粒子の含有量が、金属光沢層の全固形分の1質量%以下であるかどうかも不明である点。
[相違点4]
「光輝性印刷層」が、本件発明1は、「平均一次粒子径が1nm以上100nm未満の無機粒子」を含むのに対し、甲2発明は、「平均一次粒子径が1nm以上100nm未満の無機粒子」を含むかどうか不明である点。
3 判断
事案に鑑みて、上記相違点3について検討する。
甲2発明は、「金属光沢層」の形成に「高輝度銀インキ」を用いることが特定されており、甲2の【0020】を考慮すると、高輝度銀インキに金属粉が含有されている蓋然性が高いが、金属粉が「鱗片」状であるかどうか特定されていない。また、甲2発明は、「金属光沢層」内の粒子の大きさが特定されておらず、「金属光沢層」内の金属粉以外の380nm以上の大きさの粒子の含有量を、「金属光沢層」の全固形分の1質量%以下としていることも、特定されていない。ましてや、本件発明1のように、「反射光の角度分布を正反射方向近傍の狭い範囲に集中させて高レベルの金属光沢を付与しつつ、内層側の有彩色下地層によって金属光沢の色合いの表現幅を広げる」ようにするために(本件特許明細書【0023】)、光輝性印刷層内の金属鱗片以外の380nm以上の大きさの粒子の含有量を、光輝性印刷層の全固形分の1質量%以下とすることは、記載も示唆もされていない。
また、甲1に記載された技術的事項においては、「コーティング層」における、「鱗片状のアルミニウムフレーク」以外の粒子の大きさについては特定されておらず、「コーティング層」内の「鱗片状のアルミニウムフレーク」以外の380nm以上の大きさの粒子の含有量を、「コーティング層」の全固形分の1質量%以下としているかどうかも特定されていない。
更に、甲3に記載された技術的事項においても、「光輝層」内の「光輝性顔料」以外の380nm以上の大きさの粒子の含有量を、「光輝層」の全固形分の1質量%以下とすることは特定されていない。甲3に記載された技術的事項においては、「光輝層」内の「光輝性顔料」以外の粒子として、例えば、「水分散性シリカ」及び「合成樹脂エマルション」の「平均粒子径」が記載されているものの、380nm以上の大きさの粒子を含有するか否かは特定されていない。つまり、甲3に記載された技術的事項は、「光輝層」内に「光輝性顔料」以外の380nm以上の大きさの粒子を光輝層の全固形分の1質量%より多く含有させることを排除するものではない。
そして、本件発明1は、上記相違点3に係る発明特定事項を採用することにより、「反射光の角度分布を正反射方向近傍の狭い範囲に集中させて高レベルの金属光沢を付与しつつ、内層側の有彩色下地層によって金属光沢の色合いの表現幅を広げる」(本件特許明細書【0023】)との効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、甲1に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。
4 本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記3で検討したものと同じ理由により、本件発明2~10は、甲2発明、甲1に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。
5 小括
したがって、本件発明1~10は、甲2発明、甲1に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700571